以下本発明の実施の形態を図1〜図23に基づいて説明する。図1に第1実施形態の車輪用軸受装置を示し、この車輪用軸受装置は、ハブ輪1と、このハブ輪1の外周側に配設される複数の外側軌道面26、27と、この複数の外側軌道面26、27に対向する複数の内側軌道面28、29と、対向する外側軌道面26、27と内側軌道面28、29との間に配置された複数列の転動体30とを有する複列の転がり軸受2を備え、ハブ輪1の孔部22に嵌挿される等速自在継手3の外側継手部材の軸部12が凹凸嵌合構造Mを介してハブ輪1に一体化されたものである。
等速自在継手3は、外側継手部材としての外輪5と、外輪5の内側に配された内側継手部材としての内輪6と、外輪5と内輪6との間に介在してトルクを伝達する複数のボール7と、外輪5と内輪6との間に介在してボール7を保持するケージ8とを主要な部材として構成される。内輪6はその軸孔内径6aにシャフト10の端部10aを圧入することによりスプライン嵌合してシャフト10とトルク伝達可能に結合されている。なお、シャフト10の端部10aには、シャフト抜け止め用の止め輪9が装着されている。
外輪5はマウス部11とステム部(軸部)12とからなり、マウス部11は一端にて開口した椀状で、その内球面13に、軸方向に延びた複数のトラック溝14が円周方向等間隔に形成されている。そのトラック溝14はマウス部11の開口端まで延びている。内輪6は、その外球面15に、軸方向に延びた複数のトラック溝16が円周方向等間隔に形成されている。
外輪5のトラック溝14と内輪6のトラック溝16とは対をなし、各対のトラック溝14,16で構成されるボールトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール7が転動可能に組み込んである。ボール7は外輪5のトラック溝14と内輪6のトラック溝16との間に介在してトルクを伝達する。ケージ8は外輪5と内輪6との間に摺動可能に介在し、外球面8aにて外輪5の内球面13と接し、内球面8bにて内輪6の外球面15と接する。なお、この場合の等速自在継手は、各トラック溝14、16の溝底に直線状のストレート部を有するアンダーカットフリー型を示しているが、ツェパー型等の他の等速自在継手であってもよい。
また、マウス部11の開口部はブーツ60にて塞がれている。ブーツ60は、大径部60aと、小径部60bと、大径部60aと小径部60bとを連結する蛇腹部60cとからなる。大径部60aがマウス部11の開口部に外嵌され、この状態でブーツバンド61にて締結され、小径部60bがシャフト10のブーツ装着部10bに外嵌され、この状態でブーツバンド62にて締結されている。
ハブ輪1は、筒状の軸部20と、軸部20の反継手側の端部に設けられるフランジ21とを有する。軸部20の孔部22は、軸方向中間部の軸部嵌合孔22aと、反継手側のテーパ孔22bと、継手側の大径孔22cとを備える。すなわち、軸部嵌合孔22aにおいて、後述する凹凸嵌合構造Mを介して等速自在継手3の外輪5のステム軸12とハブ輪1とが結合される。また、軸部嵌合孔22aと大径孔22cとの間には、テーパ部(テーパ孔)22dが設けられている。このテーパ部22dは、ハブ輪1と外輪5のステム軸12を結合する際の圧入方向に沿って縮径している。テーパ部22dのテーパ角度θ1(図4参照)は、例えば15°〜75°とされる。
転がり軸受(車輪用軸受)2は、ハブ輪1の軸部20の継手側に設けられた段差部23に嵌合する内輪24と、軸部20乃至内輪24に跨って外嵌される外方部材25とを備える。外方部材25は、その内周に2列の外側軌道面(アウターレース)26、27が設けられ、第1外側軌道面26とハブ輪1の軸部外周に設けられる第1内側軌道面(インナーレース)28とが対向し、第2外側軌道面27と、内輪24の外周面に設けられる第2内側軌道面(インナーレース)29とが対向し、これらの間に転動体30としてのボールが介装される。このため、この実施形態では、ハブ輪1と内輪24とで、その外周に内側軌道面28、29を有する内方部材39を構成することになる。なお、外方部材25の両開口部にはシール部材S1,S2が装着されている。
この場合、ハブ輪1の継手側の端部を加締めて、その加締部31にて内輪24を押圧して軸受2に予圧を付与するものである。これによって、内輪24をハブ輪1に締結することができる。またハブ輪1のフランジ21にはボルト装着孔32が設けられて、ホイールおよびブレーキロータをこのフランジ21に固定するためのハブボルト33がこのボルト装着孔32に装着される。
凹凸嵌合構造Mは、図2に示すように、例えば、等速自在継手3の外輪5のステム軸12の端部に設けられて軸方向に延びる凸部35と、ハブ輪1の孔部22の内径面(この場合、軸部嵌合孔22aの内径面37)に形成される凹部36とからなり、凸部35とその凸部35に嵌合するハブ輪1の凹部36との嵌合接触部位38の全体が密着している。すなわち、ステム軸12の反マウス部側の外周面に、複数の凸部35が周方向に沿って所定ピッチで配設され、ハブ輪1の孔部22の軸部嵌合孔22aの内径面37に凸部35が嵌合する複数の凹部36が周方向に沿って形成されている。つまり、周方向全周にわたって、凸部35とこれに嵌合する凹部36とがタイトフィットしている。
この場合、各凸部35は、その断面が凸アール状の頂点を有する三角形状(山形状)であり、嵌合接触部位38とは、図2(b)に示す範囲Aであり、断面における山形の中腹部から山頂にいたる範囲である。また、周方向の隣合う凸部35間において、ハブ輪1の内径面37よりも内径側に隙間40が形成されている。
このように、ハブ輪1と等速自在継手3の外輪5のステム軸12とを凹凸嵌合構造Mを介して連結できる。この際、ハブ輪1の継手側の端部を加締めて、その加締部31にて軸受けに予圧を付与するものであるので、外輪5のマウス部11にて予圧を付与する必要がない。本発明では、ハブ輪1の端部(この場合、加締部31の外端面31a)とマウス部11のバック面11aとを接触させている。この場合の接触面圧を100MPa以下としている。
ところで、この車輪用軸受装置では、凹凸嵌合構造Mへの異物侵入防止手段Wを、凹凸嵌合構造Mよりも反継手側(インボード側、つまり車両に取付けた状態で車両の内側とな
る方)、及び凹凸嵌合構造Mよりも継手側(アウトボード側、つまり車両に取付けた状態で車両の外側となる方)にそれぞれ設けている。
アウトボード側の異物侵入防止手段W2は、係合部である後述するテーパ状係止片65と、テーパ孔22bの内径面との間に介在されるシール材(図示省略)にて構成することできる。この場合、テーパ状係止片65にシール材が塗布されることになる。すなわち、塗布後に硬化してテーパ状係止片65と、テーパ孔22bの内径面の間において密封性を発揮できる種々の樹脂からなるシール材(シール剤)を塗布すればよい。なお、このシール材としては、この車輪用軸受装置が使用される雰囲気中において劣化しないものが選択される。
インボード側の異物侵入防止手段W1は、ハブ輪1の加締部31の外端面31aとマウス部11のバック面11aとを接触させることによって構成することができる。なお、外端面31aとバック面11aの少なくとも一方にシール材(シール剤)を塗布するようにしてもよい。
凸部35と凹部36との嵌合接触部位38、隙間40にシール材を介在し、これによって、異物侵入防止手段W(W3)を構成してもよい。この場合、凸部35の表面に、塗布後に硬化して、嵌合接触部位38において密封性を発揮できる種々の樹脂からなるシール材(シール剤)を塗布すればよい。
外輪5のステム軸12の端部とハブ輪1の内径面37との間に前記軸部抜け止め構造M1が設けられている。この軸部抜け止め構造M1は、外輪5のステム軸12の端部から反継手側に延びてテーパ孔22bに係止する前記テーパ状係止片65からなる。すなわち、テーパ状係止片65は、継手側から反継手側に向かって拡径するリング状体からなり、その外周面65a(図3参照)の少なくとも一部がテーパ孔22bに圧接乃至接触している。
ところで、この車輪用軸受装置を組み立てる場合、後述するように、ハブ輪1に対して外輪5のステム軸12を圧入することによって、凸部35によって凹部36を形成するようにしている。この際圧入していけば、凸部35にて形成される凹部36から材料がはみ出してはみ出し部45(図3参照)が形成される。はみ出し部45は、凸部35の凹部嵌合部位が嵌入(嵌合)する凹部36の容量の材料分であって、形成される凹部36から押し出されたもの、凹部36を形成するために切削されたもの、又は押し出されたものと切削されたものの両者等から構成される。このため、前記図1等に示す車輪用軸受装置では、はみ出し部45を収納するポケット部(収納部)50をステム軸12に設けている。
ステム軸12のスプライン41の軸端縁に周方向溝51を設けることによって、ポケット部(収納部)50を形成している。周方向溝51よりも反スプライン側は、前記軸部抜け止め構造M1を構成する端部拡径加締部(テーパ状係止片)65が形成されている。
次に、凹凸嵌合構造Mの嵌合方法を説明する。この場合、図4に示すように、等速自在継手3の外輪5のステム軸12の外径部には熱硬化処理を施し、この硬化層Hに軸方向に沿う山部41aと谷部41bとからなるスプライン41を形成する。このため、スプライン41の山部41aが硬化処理されて、この山部41aが凹凸嵌合構造Mの凸部35となる。なお、この実施形態での硬化層Hの範囲は、クロスハッチング部で示すように、スプライン41の外端縁から外輪5のマウス部11の底壁の一部までである。この熱硬化処理としては、高周波焼入れや浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。ここで、高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。また、浸炭焼入れとは、低炭素材料の表面から炭素を浸入/拡散させ、その後に焼入れを行う方法である。また、ハブ輪1の外径側に高周波焼入れによる硬化層H1を形成するとともに、ハブ輪の内径側を未焼き状態としたものである。この実施形態での硬化層H1の範囲は、クロスハッチング部で示すように、フランジ21の付け根部から内輪24が嵌合する段差部23の加締部近傍までである。
高周波焼入れを行えば、表面は硬く、内部は素材の硬さそのままとすることができ、このため、ハブ輪1の内径側を未焼き状態に維持できる。このため、ハブ輪1の孔部22の内径面37側においては熱硬化処理を行わない未硬化部(未焼き状態)とする。外輪5のステム軸12の硬化層Hとハブ輪1の未硬化部との硬度差は、HRCで20ポイント以上とする。具体的には、硬化層Hの硬度を50HRCから65HRC程度とし、未硬化部の硬度を10HRCから30HRC程度とする。
この際、凸部35の突出方向中間部位が、凹部形成前の凹部形成面(この場合、ハブ輪1の孔部22の内径面37)の位置に対応する。すなわち、図4に示すように、孔部22の内径面37の内径寸法Dは、凸部35の最大外径寸法、つまりスプライン41の山部41aである前記凸部35の頂点を結ぶ円の直径寸法(外接円直径)D1よりも小さく、凸部間の軸部外径面の最小外径寸法、つまりスプライン41の谷部41bの底を結ぶ円の直径寸法D2よりも大きく設定される。すなわち、D2<D<D1とされる。
スプライン41は、従来からの公知公用の手段である転造加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することがきる。また、熱硬化処理としては、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。
また、図4に示すように、圧入前においては、ステム軸12の端面12aの外周縁部から前記テーパ状係止片65を構成するための短円筒部66を軸方向に沿って突出させている。短円筒部66の外径D4は孔部22の嵌合孔22aの内径寸法Dよりも小さく設定している。すなわち、この短円筒部66が後述するように、ステム軸12のハブ輪1の孔部22への圧入時の調芯部材となる。
そして、ハブ輪1の軸心と等速自在継手の外輪5の軸心とを合わせた状態で、ハブ輪1に対して、外輪5のステム軸12を挿入(圧入)していく。また、凸部35の表面にシール材を塗布しておく。この際、ハブ輪1の孔部22に圧入方向に沿って縮径するテーパ部22dを形成しているので、このテーパ部22dが圧入開始時のガイドを構成することができる。また、孔部22の内径面37の径寸法Dと、凸部35の最大外径寸法D1と、スプライン41の谷部の最小外径寸法D2とが前記のような関係であり、しかも、凸部35の硬度が孔部22の内径面37の硬度よりも20ポイント以上大きいので、シャフト10を内輪6の孔部22に圧入していけば、この凸部35が内径面37に食い込んでいき、凸部35が、この凸部35が嵌合する凹部36を軸方向に沿って形成していくことになる。
このように圧入されることによって、図3に示すように、形成されるはみ出し部45は、カールしつつポケット部50内に収納されて行く。すなわち、孔部22の内径面から削り取られたり、押し出されたりした材料の一部がポケット部50内に入り込んでいく。
また、圧入によって、図2に示すように、ステム軸12の端部の凸部35と、これに嵌合する凹部36との嵌合接触部位38の全体が密着している。すなわち、相手側の凹部形成面(この場合、孔部22に内径面37)に凸部35の形状の転写を行うことになる。この際、凸部35が孔部22の内径面37に食い込んでいくことによって、孔部22が僅かに拡径した状態となって、凸部35の軸方向の移動を許容し、軸方向の移動が停止すれば、孔部22が元の径に戻ろうとして縮径することになる。言い換えれば、凸部35の圧入時にハブ輪1が径方向に弾性変形し、この弾性変形分の予圧が凸部35の歯面(凹部嵌合部位の表面)に付与される。このため、凸部35の凹部嵌合部位の全体がその対応する凹部36に対して密着する凹凸嵌合構造Mを確実に形成することができる。
また、凸部35と凹部36との嵌合接触部位38間が凸部35の表面に塗布されたシール材にて密封される。
ところで、外輪5のステム軸12をハブ輪1の孔部22に圧入する際には、外輪5のマウス部11の外径面に、図1等に示すように段差面Gを設け、圧入用治具55をこの段差面Gに係合させて、この圧入用治具55から段差面Gに圧入荷重(軸方向荷重)を付与すればよい。なお、この段差面Gは、マウス部11の外径面に設けられる周方向溝にて構成することができる。
また、圧入用治具55は、例えば割り型からなるリング状体56にて構成することができる。すなわち、リング状体56は、複数(少なくとも2個)のセグメント56aからなり、セグメント56aを組み合わせることによって、リング状に形成される。セグメント56aがリング状に組み合わされてなるリング状体56は、本体円環部57と、この本体円環部57に連設されたテーパ部58と、このテーパ部58から内径側へ突出する内鍔部59とからなる。
このため、圧入用治具55の内鍔部59を周方向溝にて構成される段差面Gに当接状とし、この状態で、図1の矢印A方向(軸方向)の荷重(押圧力)を圧入用治具55に付与する。これによって、段差面Gに係合している内鍔部53を介してこの荷重を外輪5に付与することができ、ハブ輪1の孔部22に対して外輪5のステム軸12を圧入することができる。なお、圧入用治具55への軸方向荷重の付与は、例えば、プレス機構、シリンダ機構、ボールネジ機構等の種々の軸方向往復動機構を用いることができる。また、段差面Gとしては、周方向溝で構成することなく、周方向に沿って所定ピッチで配設される凹部でもって構成することができ、さらには、溝や凹部ではなく、凸条や凸部で構成してもよい。
また、ドライブシャフトアッセンブリの状態ではなく、図22に示すように等速自在継手3の外輪5単品で、または図23に示すように外輪5、内輪6、ボール7、ケージ8がアッセンブリされた状態で、ステム軸12をハブ輪1の孔部22に圧入する際には、外輪5のインボード側端面5aに圧入荷重を付与する方法でよく、外輪5の外径面に段差面Gを設けなくとも圧入することができる。なお、図22と図23では、各トラック溝14、16の溝底が円弧部からなるツェパー型の等速自在継手を示したが、このように外輪5単体等で圧入する場合であっても、各トラック溝14、16の溝底が直線状のストレート部を有するアンダーカットフリー型等の他の等速自在継手であってもよい。
このように、凹凸嵌合構造Mが構成されるが、この場合の凹凸嵌合構造Mは車輪用軸受2の軌道面26、27、28、29の避直下位置に配置される。ここで、避直下位置とは、軌道面26、27、28、29に対して径方向に対応しない位置である。
また、外輪5のステム軸12とハブ輪1の孔部22に圧入して、凹凸嵌合構造Mを介して外輪5のステム軸12とハブ輪1とが一体化された状態では、図5に示すように、短円筒部66が嵌合孔22aからテーパ孔22b側に突出する。
そこで、図5で示すような治具67を使用してこの短円筒部66を拡径することになる。治具67は、円柱状の本体部68と、この本体部68の先端部に連設される円錐台部69とを備える。治具67の円錐台部69は、その傾斜面69aの傾斜角度がテーパ孔22bの傾斜角度と略同一され、かつ、その先端の外径が短円筒部66の内径と同一乃至僅かに短円筒部66の内径よりも小さい寸法に設定されている。そして、治具67の円錐台部69をテーパ孔22bを介して嵌入することによって矢印α方向の荷重を付加し、これによって、図6に示す短円筒部66の内径側にこの短円筒部66が拡径する矢印β方向の拡径力を付与する。この際、治具67の円錐台部69によって、短円筒部66の少なくとも一部はテーパ孔22bの内径面側に押圧され、テーパ孔22bの内径面に、異物侵入防止手段W2を構成するシール材を介して圧接乃至接触した状態となり、前記軸部抜け止め構造M1を構成することができる。なお、治具67の矢印α方向の荷重を付加する際には、この車輪用軸受装置が矢印α方向へ移動しないように、固定する必要があるが、ハブ輪1や等速自在継手3等の一部を固定部材にて受ければよい。ところで、短円筒部66の内径面は軸端側に拡径するテーパ形状でも良い。このような形状にしておけば、鍛造で内径面を成形することも可能であり、コスト低減に繋がる。
また、治具67の矢印α方向の荷重を低減させるため、円筒部66に切り欠きを入れても良いし、治具67の円錐台69の円錐面を周方向で部分的に配置するものでも良い。円筒部66に切り欠きを入れた場合、円筒部66を拡径し易くなる。また、治具67の円錐台69の円錐面を周方向で部分的に配置するものである場合、円筒部66を拡径させる部位が円周上の一部になるため、治具67の押し込み荷重を低減させることができる。
この凹凸嵌合構造Mでは、図7に示すように、ステム軸12の外径寸法D1と、ハブ輪1の孔部22の嵌合孔22aの内径寸法Dとの径差(D1−D)をΔdとし、ステム軸12の外径面に設けられた凸部35の高さをhとし、その比をΔd/2hとしたときに、0.3<Δd/2h<0.86とする。これによって、凸部35の突出方向中間部位(高さ方向中間部位)が、凹部形成前の凹部形成面上に確実に配置されるようにすることによって、凸部35が圧入時に凹部形成面に食い込んでいき、凹部36を確実に形成することができる。
ところで、軸受2の外方部材25の外周面25aが車体側のナックル(図示省略)に嵌合組込まれる。ここでいう嵌合組込みは、外方部材25をナックルに嵌合することにより両者の組込みが完了することを意味する。この組込みは、例えば外方部材25の円筒面状の外周面25aをナックルの円筒状内周面に圧入することにより行うことができる。
凹凸嵌合構造Mは、凸部35と凹部36との嵌合接触部位38の全体が密着しているので、この嵌合構造Mにおいて、径方向及び円周方向においてガタが生じる隙間が形成されない。このため、嵌合部位の全てが回転トルク伝達に寄与し、安定したトルク伝達が可能であり、しかも、異音の発生も生じさせない。
凹部36が形成される部材(この場合、ハブ輪1)には、スプライン部等を形成しておく必要がなく、生産性に優れ、かつスプライン同士の位相合わせを必要とせず、組立性の向上を図るとともに、圧入時の歯面の損傷を回避することができ、安定した嵌合状態を維持できる。
加締部31と、外輪5のマウス部11のバック面11aとを接触させることによって、ステム軸方向の曲げ剛性が向上して、曲げに強くなって、耐久性に優れた高品質な製品となる。しかも、この接触によって、圧入時の位置決めを構成できる。これによって、この車輪用軸受装置の寸法精度が安定するとともに、軸方向に沿って配設される凹凸嵌合構造Mの軸方向長さを安定した長さに確保することができ、トルク伝達性の向上を図ることができる。さらに、この接触によってシール構造を構成でき、この加締部31側から凹凸嵌合構造Mへの異物の浸入を防止でき、凹凸嵌合構造Mは長期にわたって安定した嵌合状態を維持できる。
ハブ輪1の端部が加締られて軸受2に対して予圧が付与されるので、外輪5のマウス部11によって予圧を付与する必要がなくなる。このため、予圧を考慮することなく、外輪5のステム軸12を圧入することができ、ハブ輪1と外輪5との連結性(組み付け性)の向上を図ることができる。
ハブ輪1の加締部31とマウス部11のバック面11aとの接触面圧が100MPaを越えると、異音を発生するおそれがある。すなわち、大トルク負荷時に、等速自在継手3の外輪5とハブ輪1との捩れ量に差が生じ、この差により、等速自在継手3の外輪5とハブ輪1との接触部に急激なスリップが生じて異音が発生する。これに対して、本発明にように、接触面圧が100MPa以下であれば、急激なスリップが生じることを防止できて、異音の発生を抑えることができる。これによって、静粛な車輪用軸受装置を構成することができる。なお、接触面圧が100MPa以下であっても、シール構造を構成することができる面圧以上である必要がある。
ステム軸12の外径寸法とハブ輪1の孔部22の内径寸法との径差をΔdとし、凸部の高さをhとし、その比をΔd/2hとしたときに、0.3<Δd/2h<0.86としので、凸部35の圧入代を十分にとることができる。すなわち、Δd/2hが0.3以下である場合、捩り強度が低くなり、また、Δd/2hが0.86を越えれば、微小な圧入時の芯ずれや圧入傾きにより、凸部35の全体が相手側に食い込み、凹凸嵌合構造Mの成形性が悪化し、圧入荷重が急激に増大する。凹凸嵌合構造Mの成形性が悪化した場合、捩り強度が低下するだけでなく、ハブ輪外径の膨張量も増大するため、ハブ輪1に装着される軸受2の機能に影響し、回転寿命が低下する等の問題もある。これに対して、Δd/2hを0.3〜0.86にすることにより、凹凸嵌合構造Mの成形性が安定し、圧入荷重のばらつきも無く、安定した捩り強度が得られる。
テーパ部22dが圧入開始時のガイドを構成することができるので、ハブ輪1の孔部22に対して外輪5のステム軸12を、ズレを生じさせることなく圧入させることができ、安定したトルク伝達が可能となる。さらに、短円筒部66は、円筒部66の外径D4は孔部22の嵌合孔22aの内径寸法Dよりも小さく設定しているので、調芯部材となり、芯ずれを防止しつつ軸部をハブ輪に圧入することができ、より安定した圧入が可能となる。
凹凸嵌合構造Mを軸受2の軌道面の避直下位置に配置することによって、軸受軌道面におけるフープ応力の発生を抑える。これにより、転がり疲労寿命の低下、クラック発生、及び応力腐食割れ等の軸受の不具合発生を防止することができ、高品質な軸受を提供することができる。
軸部抜け止め構造M1によって、外輪5のステム軸12がハブ輪1の孔部22からの抜け(特にシャフト側への軸方向の抜け)を有効に防止できる。これによって、安定した連結状態を維持でき、車輪用軸受装置の高品質化を図ることができる。また、軸部抜け止め構造M1がテーパ状係止片65であるので、従来のようなねじ締結を省略できる。このため、ステム軸12にハブ輪1の孔部22から突出するねじ部を形成する必要がなくなって、軽量化を図ることができるとともに、ねじ締結作業を省略でき、組立作業性の向上を図ることができる。しかも、テーパ状係止片65では、外輪5のステム軸12の一部を拡径させればよく、軸部抜け止め構造M1の形成を容易に行うことができる。なお、外輪5のステム軸12の反継手方向への移動は、ステム軸12をさらに圧入する方向への押圧力が必要であり、外輪5のステム軸12の反継手方向への位置ズレは極めて生じにくく、かつ、たとえこの方向に位置ズレしたとしても、外輪5のマウス部11の底部がハブ輪1の加締部31に当接して、ハブ輪1から外輪5のステム軸12が抜けることがない。
等速自在継手の外輪5のステム軸12の凸部の軸方向端部の硬度をハブ輪1の孔部内径部よりも高くして、ステム軸12をハブ輪1の孔部22に凸部35の軸方向端部側から圧入するので、ハブ輪1の孔部内径面への凹部形成が容易となる。また、軸部側の硬度を高くでき、ステム軸12の捩り強度を向上させることができる。
なお、凸部35を、この種のシャフトに通常形成されるスプラインをもって構成することができるので、低コストにて簡単にこの凸部35を形成することができる。
また、ステム軸12をハブ輪1に圧入していくことによって、凹部36を形成していくと、この凹部36側に加工硬化が生じる。ここで、加工硬化とは、物体に塑性変形(塑性加工)を与えると,変形の度合が増すにつれて変形に対する抵抗が増大し,変形を受けていない材料よりも硬くなることをいう。このため、圧入時に塑性変形することによって、凹部36側のハブ輪1の内径面37が硬化して、回転トルク伝達性の向上を図ることができる。
ハブ輪1の内径側は比較的軟かい。このため、外輪5のステム軸12の外径面の凸部35をハブ輪1の孔部内径面の凹部36に嵌合させる際の嵌合性(密着性)の向上を図ることができ、径方向及び円周方向においてガタが生じるのを精度良く抑えることができる。
異物侵入防止手段Wを設けることにより凹凸嵌合構造Mへの異物の侵入を防止できる。すなわち、異物侵入防止手段Wによって、雨水や異物の侵入が防止され凹凸嵌合構造Mへの雨水や異物等による密着性の劣化を回避することができる。
凸部35と凹部36との嵌合接触部位38間にシール材が介在されるので、嵌合接触部位38間においての異物の侵入を防止でき、異物侵入防止の信頼性が向上する。
凹凸嵌合構造Mよりも反継手側において、ハブ輪1の内径面(この場合、テーパ孔22bの内径面)にシール材(異物侵入防止手段W2を構成するシール部材)を介して係合する端部拡径加締部(テーパ状係止片)65を設けているので、凹凸嵌合構造Mよりも反継手側からの異物の侵入を防止することができる。すなわち、アウトボード側からの異物侵入を回避することができる。
また、凹凸嵌合構造Mよりもインボード側においては、加締部31の外端面31aと、外輪5のマウス部11のバック面11aとの接触にてシール構造(異物侵入防止手段W1)を構成することができ、このシール構造にてインボード側からのからの異物侵入を回避することができる。
このように、前記実施形態のように、凹凸嵌合構造Mよりも継手側及び凹凸嵌合構造Mよりも反継手側に異物侵入防止手段W1、W2を設けることになり、凹凸嵌合構造Mの軸方向両端側からの異物の侵入が防止される。このため、密着性の劣化をより安定して長期にわたって回避することができる。
圧入による凹部形成によって生じるはみ出し部45を収納するポケット部50を設けることによって、はみ出し部45をこのポケット部50内に保持(維持)することができ、はみ出し部45が装置外の車両内等へ入り込んだりすることがない。すなわち、はみ出し部45をポケット部50に収納したままにしておくことができ、はみ出し部45の除去処理を行う必要がなく、組み立て作業工数の減少を図ることができて、組み立て作業性の向上及びコスト低減を図ることができる。
また、圧入時には、等速自在継手3の外輪5の外径面の段差面Gを介して軸方向押圧力を外輪5に付与することができる。すなわち、軸方向押圧力付与部位を確保できるとともに、圧入軸である外輪5のステム軸近傍を押圧することができ、安定した圧入が可能となる。
等速自在継手3の外輪5の外径面に凹溝を設け、この凹溝の径方向端面を段差面Gとしたものであっても、前記外輪5の外径面に突起部を設け、この突起部径方向端面を段差面Gとしたものであってもよい。これらの場合には、軸方向押圧力付与部位の確保の信頼性が向上して、一層安定した圧入作業を行うことができる。
また、ドライブシャフトアッセンブリ状態でなく、ブーツやシャフトが取り付いていない状態で圧入する場合で、外輪5のインボード側端面5aに圧入荷重を付与して圧入作業を行えば、外輪5の外径面に段差面Gを設ける必要が無くなり、低コストに圧入することができる。
図8は第2実施形態を示し、この車輪用軸受装置の軸部抜け止め構造M1は、図4に示すような短円筒部66を予め形成することなく、ステム軸12の一部を外径方向へ突出するテーパ状係止片70を設けることによって構成している。
この場合、図9に示す治具71を使用する。治具71は、円柱状の本体部72と、この本体部72の先端部に連設される短円筒部73とを備え、短円筒部73の外周面の先端に切欠部74が設けられている。このため、治具71には先端くさび部75が形成されている。図10に示すように、先端くさび部75を打ち込めば(矢印α方向の荷重を付加すれば)、この先端くさび部75の断面形状が外径側が傾斜面であり、この傾斜面を形成する切欠部74によって、ステム軸12の端部の外径側が拡径することになる。
これによって、このテーパ状係止片70の少なくとも一部がテーパ孔22bの内径面に圧接乃至接触することになる。このため、このようなテーパ状係止片70であっても、前記図1等に示すテーパ状係止片65と同様、外輪5のステム軸12がハブ輪1の孔部22から軸方向に抜けることを有効に防止できる。これによって、安定した連結状態を維持でき、車輪用軸受装置の高品質化を図ることができる。なお、先端くさび部75の内径面がテーパ形状であってもよい。
図11は第3実施形態を示し、この車輪用軸受装置の軸部抜け止め構造M1は、ステム軸12の一部を外径方向へ突出するように加締めることによって形成する外鍔状係止片76にて構成している。この場合、ハブ輪1の孔部22は、嵌合孔22aとテーパ孔22bとの間に段付面22eが設けられて、この段付面22eに外鍔状係止片76が係止している。
この軸部抜け止め構造M1では、図12に示す治具77を使用することになる。この治具77は円筒体78を備える。円筒体78の外径D5をステム軸12の端部の外径D7よりも大きく設定するとともに、円筒体78の内径D6をステム軸12の端部の外径D7より小さく設定している。
このため、この治具77と外輪5のステム軸12との軸心を合わせ、この状態で治具77の端面77aによって、ステム軸12の端面12aに矢印α方向に荷重を付加すれば、図13に示すように、ステム軸12の端面12aの外周側が圧潰して、外鍔状係止片76を形成することができる。
このような外鍔状係止片76であっても、外鍔状係止片76が段付面22eに係止することになるので、前記図1等に示すテーパ状係止片65と同様、外輪5のステム軸12がハブ輪1の孔部22から軸方向に抜けることを有効に防止できる。これによって、安定した連結状態を維持でき、車輪用軸受装置の高品質化を図ることができる。
図12に示すような治具77を使用すれば、図14(a)に示すように、外鍔状係止片76は円周方向に沿って形成される。このため、治具として押圧部が周方向に沿って所定ピッチ(例えば、90°ピッチ)で配設されるものであれば、図14(b)に示すように、複数の外鍔状係止片76が周方向に沿って所定ピッチで配置される。図14(b)に示すように、複数の外鍔状係止片76が周方向に沿って所定ピッチで配設されたものであっても、外鍔状係止片76が段付面22eに係止することになるので、外輪5のステム軸12がハブ輪1の孔部22から軸方向に抜けることを有効に防止できる。
軸部抜け止め構造M1としては、第4実施形態の図15に示すようにボルトナット結合を用いても、第5実施形態の図16に示すように、止め輪を用いても、第6実施形態の図17に示すように溶接等の結合手段を用いてもよい。
図15では、ステム軸12にねじ軸部80を連設し、このねじ軸部80にナット部材81を螺着している。そして、ナット部材81を孔部22の段付面22eに当接させている。これによって、ステム軸12のハブ輪1の孔部22からのシャフト側への抜けを規制している。
図16では、スプライン41よりも反継手側に軸延長部83を設けるとともに、この軸延長部83に周方向溝84を設け、この周方向溝84に止め輪85を嵌着している。そして、ステム軸12にハブ輪1の孔部22において、嵌合孔22aとテーパ孔22bとの間に前記止め輪85が係止する段部22fを設ける。これによって、止め輪85が段部22fに係止してステム軸12のハブ輪1の孔部22からのシャフト側への抜けを規制している。
図17では、ステム軸12の端部外周面と嵌合孔22aの段付面22e側の開口部端縁部とを溶接にて接合している。これによって、ステム軸12のハブ輪1の孔部22からのシャフト側への抜けを規制している。この場合、溶接部位108として全周にわたっても、周方向に沿って所定ピッチに配設してもよい。
本発明の車輪用軸受装置においては、第7実施形態を示す図18に示すように、軸部抜け止め構造M1を設けないものであってもよい。この場合、図19に示すように、周方向溝51は、そのスプライン41側の側面51aが、軸方向に対して直交する平面であり、反スプライン側の側面51bは、溝底51cから反スプライン側に向かって拡径するテーパ面である。周方向溝51の側面51bよりも反スプライン側には、調芯用の円盤状の鍔部52が設けられている。鍔部52の外径寸法D4aが孔部22の嵌合孔22aの孔径と同一乃至嵌合孔22aの孔径よりも僅かに小さく設定される。この場合、鍔部52の外径面52aと孔部22の嵌合孔22aの内径面との間に微小隙間tが設けられている。
ポケット部50の軸方向反凸部側にハブ輪1の孔部22との調芯用の鍔部52を設けることによって、ポケット部50内のはみ出し部45の鍔部52側への飛び出しがなくなって、はみ出し部45の収納がより安定したものとなる。しかも、鍔部52は調芯用であるので、芯ずれを防止しつつステム軸12をハブ輪1に圧入することができる。このため、外側継手部材5とハブ輪1とを高精度に連結でき、安定したトルク伝達が可能となる。
鍔部52は圧入時の調芯用であるので、その外径寸法は、ハブ輪1の孔部22の嵌合孔22aの孔径よりも僅かに小さい程度に設定するが好ましい。すなわち、鍔部52の外径寸法が嵌合孔22aの孔径と同一や嵌合孔22aの孔径よりも大きければ、鍔部52自体を嵌合孔22aに圧入することになる。この際、芯ずれしていれば、このまま凹凸嵌合構造Mの凸部35が圧入され、ステム軸12の軸心とハブ輪1の軸心とが合っていない状態でステム軸12とハブ輪1とが連結されることになる。また、鍔部52の外径寸法が嵌合孔22aの孔径よりも小さすぎると、調芯用として機能しない。このため、鍔部52の外径面52aと孔部22の嵌合孔22aの内径面との間の微小隙間tとしては、0.01mm〜0.2mm程度に設定するのが好ましい。
なお、図18と図19に示すように、軸部抜け止め構造M1を有しない場合において、ステム軸12の調芯用としての鍔部52を省略したものであってもよい。
前記図2に示すスプライン41では、山部41aのピッチと谷部41bのピッチとが同一設定される。このため、前記実施形態では、図2(b)に示すように、凸部35の突出方向中間部位の周方向厚さLと、周方向に隣り合う凸部35間における前記中間部位に対応する位置での周方向寸法L0とがほぼ同一となっている。
これに対して、図20(a)に示すように、凸部35の突出方向中間部位の周方向厚さL2は、周方向に隣り合う凸部35間における前記中間部位に対応する位置での周方向寸法L1よりも小さいものであってもよい。すなわち、ステム軸12に形成されるスプライン41において、凸部35の突出方向中間部位の周方向厚さ(歯厚)L2を、凸部35間に嵌合するハブ輪1側の山部43の突出方向中間部位の周方向厚さ(歯厚)L1よりも小さくしている。
このため、ステム軸12側の全周における凸部35の歯厚の総和Σ(B1+B2+B3+・・・)を、ハブ輪1側の山部43(凸歯)の歯厚の総和Σ(A1+A2+A3+・・・)よりも小さく設定している。これによって、ハブ輪1側の山部43のせん断面積を大きくすることができ、ねじり強度を確保することができる。しかも、凸部35の歯厚が小であるので、圧入荷重を小さくでき、圧入性の向上を図ることができる。凸部35の周方向厚さの総和を、ハブ輪側の山部43における周方向厚さの総和よりも小さくする場合、全凸部35の周方向厚さL2を、周方向に隣り合う凸部35間における周方向の寸法L1よりも小さくする必要がない。すなわち、複数の凸部35のうち、任意の凸部35の周方向厚さが周方向に隣り合う凸部間における周方向の寸法と同一であっても、この周方向の寸法よりも大きくても、総和で小さければよい。
図20(a)における凸部35は、断面台形(富士山形状)としているが、図20(b)に示すように、インボリュート歯形状であってもよい。
ところで、前記各実施形態では、ステム軸12側に凸部35を構成するスプライン41を形成するとともに、このステム軸12のスプライン41に対して硬化処理を施し、ハブ輪1の内径面を未硬化(生材)としている。これに対して、第8実施形態を示す図21に示すように、ハブ輪1の孔部22の内径面に硬化処理を施されたスプライン111(山部111a及び谷部111bとからなる)を形成するとともに、ステム軸12には硬化処理を施さないものであってもよい。なお、このスプライン111も公知公用の手段であるブローチ加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することがきる。また、熱硬化処理としても、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。
この場合、凸部35の突出方向中間部位が、凹部形成前の凹部形成面(ステム軸12の外径面)の位置に対応する。すなわち、スプライン111の山部111aである凸部35の頂点を結ぶ円の直径寸法(スプライン111の最小径寸法)D8を、ステム軸12の外径寸法D10よりも小さく、スプライン111の谷部111bの底を結ぶ円の直径寸法(スプライン111の最大直径寸法)D9をステム軸12の外径寸法D10よりも大きく設定する。すなわち、D8<D10<D9とされる。この場合も、ステム軸12の外径寸法D10とハブ輪1の孔部22の内径寸法D9との径差をΔdとし、凸部35の高さをhとし、その比をΔd/2hとしたときに、0.3<Δd/2h<0.86とする。
ステム軸12をハブ輪1の孔部22に圧入すれば、ハブ輪1側の凸部35によって、ステム軸12の外周面にこの凸部35が嵌合する凹部36を形成することができる。これによって、凸部35とこれに嵌合する凹部との嵌合接触部位38の全体が密着している。
ここで、嵌合接触部位38とは、図21(b)に示す範囲Bであり、凸部35の断面における山形の中腹部から山頂にいたる範囲である。また、周方向の隣合う凸部35間において、ステム軸12の外周面よりも外径側に隙間62が形成される。
この場合であっても、圧入によってはみ出し部45が形成されるので、このはみ出し部45を収納する収納部97を設けるのが好ましい。はみ出し部45はステム軸12のマウス側に形成されることになるので、収納部をハブ輪1側に設けることになる。
前記第2〜第8実施形態においても、ハブ輪1の加締部31の外端面31aとマウス部11のバック面11aとを接触させるものであって、図1の第1実施形態の車輪用軸受装置と同様の作用効果を奏する。また、各実施形態において、軸部抜け止め構造M1でもって異物侵入防止手段W(W2)を構成することができる。この場合、図17に示す車輪用軸受の異物侵入防止手段W(W2)ではシール材(剤)を必要としない。なお、第2〜第7実施形態では、図示していないが、ハブ輪1及び外輪5のステム軸12には硬化層H1、Hが形成されている。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、凹凸嵌合構造Mの凸部35の形状として、前記図2に示す実施形態では断面三角形状であり、図20(a)に示す実施形態では断面台形(富士山形状)であるが、これら以外の半円形状、半楕円形状、矩形形状等の種々の形状のものを採用でき、凸部35の面積、数、周方向配設ピッチ等も任意に変更できる。すなわち、スプライン41、111を形成し、このスプライン41、111の山部(凸歯)41a、111aをもって凹凸嵌合構造Mの凸部35とする必要はなく、キーのようなものであってもよく、曲線状の波型の合わせ面を形成するものであってもよい。要は、軸方向に沿って配設される凸部35を相手側に圧入し、この凸部35にて凸部35に密着嵌合する凹部36を相手側に形成することができて、凸部35とこれに嵌合する凹部との嵌合接触部位38の全体が密着し、しかも、ハブ輪1と等速自在継手3との間で回転トルクの伝達ができればよい。
また、ハブ輪1の孔部22としては円孔以外の多角形孔等の異形孔であってよく、この孔部22に嵌挿するステム軸12の端部の断面形状も円形断面以外の多角形等の異形断面であってもよい。さらに、ハブ輪1にステム軸12を圧入する際に凸部35の圧入始端部のみが、凹部36が形成される部位より硬度が高ければよいので、凸部35の全体の硬度を高くする必要がない。図2等では隙間40が形成されるが、凸部35間の谷部まで、ハブ輪1の内径面37が食い込むようなものであってもよい。なお、凸部35側と、凸部35にて形成される凹部形成面側との硬度差としては、前記したようにHRCで20ポイント以上とするのが好ましいが、凸部35が圧入可能であれば20ポイント未満であってもよい。
凸部35の端面(圧入始端)は前記実施形態では軸方向に対して直交する面であったが、軸方向に対して、所定角度で傾斜するものであってもよい。この場合、内径側から外径側に向かって反凸部側に傾斜しても凸部側に傾斜してもよい。
また、ポケット部50の形状としては、生じるはみ出し部45を収納(収容)できるものであればよく、そのため、ポケット部50の容量として、生じるはみ出し部45に対応できるものであればよい。
また、ハブ輪1の孔部22の内径面37に、周方向に沿って所定ピッチで配設される小凹部を設けてもよい。小凹部としては、凹部36の容積よりも小さくする必要がある。このように小凹部を設けることによって、凸部35の圧入性の向上を図ることができる。すなわち、小凹部を設けることによって、凸部35の圧入時に形成されるはみ出し部45の容量を減少させることができて、圧入抵抗の低減を図ることができる。また、はみ出し部45を少なくできるので、ポケット部50の容積を小さくでき、ポケット部50の加工性及びステム軸12の強度の向上を図ることができる。なお、小凹部の形状は、三角形状、半楕円状、矩形等の種々のものを採用でき、数も任意に設定できる。
図17に示す結合手段としては、溶接の結合手段を用いていたが、溶接に代えて接着剤を使用してもよい。また、軸受2の転動体30として、ローラを使用したものであってもよい。さらに、前記実施形態では、第3世代の車輪用軸受装置を示したが、第1世代や第2世代であってもよい。なお、凸部35を圧入する場合、凹部36が形成される側を固定して、凸部35を形成している側を移動させても、逆に、凸部35を形成している側を固定して、凹部36が形成される側を移動させても、両者を移動させてもよい。なお、等速自在継手3において、内輪6とシャフト10とを前記各実施形態に記載した凹凸嵌合構造Mを介して一体化してもよい。