以下本発明の実施の形態を図1〜図14に基づいて説明する。図1に第1実施形態の車輪用軸受装置を示し、この車輪用軸受装置は、ハブ輪1と、複列の転がり軸受2と、等速自在継手3とが一体化されるとともに、ハブ輪1と、ハブ輪1の孔部22に嵌挿される等速自在継手3の外側継手部材の軸部12とが凹凸嵌合構造Mを介して分離可能に結合されてなる。
等速自在継手3は、外側継手部材としての外輪5と、外輪5の内側に配された内側継手部材としての内輪6と、外輪5と内輪6との間に介在してトルクを伝達する複数のボール7と、外輪5と内輪6との間に介在してボール7を保持するケージ8とを主要な部材として構成される。内輪6はその軸孔内径に、図8等に示すように、シャフト10の端部10aを圧入することによりスプライン嵌合してシャフト10とトルク伝達可能に結合されている。なお、シャフト10の端部10aには、シャフト抜け止め用の止め輪9が嵌合されている。
外輪5はマウス部11とステム部(軸部)12とからなり、マウス部11は一端にて開口した椀状で、その内球面13に、軸方向に延びた複数のトラック溝14が円周方向等間隔に形成されている。内輪6は、その外球面15に、軸方向に延びた複数のトラック溝16が円周方向等間隔に形成されている。
外輪5のトラック溝14と内輪6のトラック溝16とは対をなし、各対のトラック溝14,16で構成されるボールトラックに1個ずつ、トルク伝達要素としてのボール7が転動可能に組み込んである。ボール7は外輪5のトラック溝14と内輪6のトラック溝16との間に介在してトルクを伝達する。ケージ8は外輪5と内輪6との間に摺動可能に介在し、外球面にて外輪5の内球面13と接し、内球面にて内輪6の外球面15と接する。なお、この場合の等速自在継手は、ツェパー型を示しているが、各トラック溝14、16の溝底に直線状のストレート部を有するアンダーカットフリー型等の他の等速自在継手であってもよい。
また、マウス部11の開口部はブーツ18にて塞がれている。ブーツ18は、大径部18aと、小径部18bと、大径部18aと小径部18bとを連結する蛇腹部18cとからなる。大径部18aがマウス部11の開口部に外嵌され、この状態でブーツバンド19aにて締結され、小径部18bがシャフト10のブーツ装着部10bに外嵌され、この状態でブーツバンド19bにて締結されている。
ハブ輪1は、図1と図6に示すように、筒部20と、筒部20の反継手側の端部に設けられるフランジ21とを有する。筒部20の孔部22は、軸部嵌合孔22aと、反継手側のテーパ孔22bとを有し、軸部嵌合孔22aとテーパ孔22bとの間に、内径方向へ突出する内壁22cが設けられている。すなわち、軸部嵌合孔22aにおいて、後述する凹凸嵌合構造Mを介して等速自在継手3の外輪5の軸部12とハブ輪1とが結合される。なお、この内壁22cの反軸部嵌合孔側の端面には凹窪部51が設けられている。
孔部22は、軸部嵌合孔22aよりも反内壁側の開口側に大径部46と、軸部嵌合孔22aよりも内壁側に小径部48とを有する。大径部46と軸部嵌合孔22aとの間には、テーパ部(テーパ孔)49aが設けられている。このテーパ部49aは、ハブ輪1と外輪5の軸部12を結合する際の圧入方向に沿って縮径している。
転がり軸受2は、ハブ輪1の筒部20の継手側に設けられた段差部23に嵌合する内輪24と、ハブ輪1の筒部20乃至内輪24に跨って外嵌される外方部材25とを備える。外方部材25は、その内周に2列の外側軌道面(アウターレース)26、27が設けられ、第1外側軌道面26とハブ輪1の軸部外周に設けられる第1内側軌道面(インナーレース)28とが対向し、第2外側軌道面27と、内輪24の外周面に設けられる第2内側軌道面(インナーレース)29とが対向し、これらの間に転動体30としてのボールが介装される。このため、この車輪用軸受装置では、ハブ輪1と内輪24とで転がり軸受2の内方部材39を構成する。なお、外方部材25の両開口部にはシール部材S1,S2が装着されている。
また、外方部材25である外輪には、図示省略の車体の懸架装置から延びるナックル34が取り付けられている。すなわち、外方部材25の外面全体を円筒面とし、この円筒面25aをナックル34が圧入される圧入面とする。これによって、外方部材25をナックルの円筒状内径面34aに圧入することができる。この場合、ナックル圧入面25aとナックル内径面34aとの締代によって、ナックル34と外方部材25との相対的な軸方向及び周方向のずれを規制するように設定するのが好ましい。例えば、外方部材25とナックル34との間の嵌合い面圧×嵌合い面積を嵌合い荷重としたときに、この嵌合い荷重をこの転がり軸受の等価ラジアル荷重で割った値をクリープ発生限界係数とし、このクリープ発生限界係数を予め考慮して、外方部材25の設計仕様、すなわち外方部材25とナックル34の嵌合締代が設定される。
このため、外方部材25のナックル圧入面25aとナックル34のナックル内径面34aとの締代によって、外方部材25の軸方向の抜け及び周方向のクリープを防止できる。ここで、クリープとは、嵌合締代の不足や嵌合面の加工精度不良等により軸受が周方向に微動して嵌合面が鏡面化し、場合によってはかじりを伴い焼き付きや溶着することをいう。なお、外方部材25のナックル圧入面25aと、ナックル34の内径面34aとにそれぞれ周方向溝を設け、これらの周方向溝の間に抜け止め用の止め輪59を装着するのが好ましい。
この場合、ハブ輪1の継手側の端部を加締めて、その加締部31にて内輪24をアウトボード側へ押圧することによって、この軸受2に予圧を付与するものである。これによって、内輪24をハブ輪1に締結することができる。またハブ輪1のフランジ21にはボルト装着孔32が設けられて、ホイールおよびブレーキロータをこのフランジ21に固定するためのハブボルト33がこのボルト装着孔32に装着される。
外輪5の軸部12には、その軸心部に反継手側(反マウス側)の端面に開口するねじ孔50が設けられている。このねじ孔50は、その開口部が開口側に向かって拡開するテーパ部50aとされている。また、軸部12の反継手側(反マウス側)の端部には小径部12bが設けられている。すなわち、軸部12は大径の本体部12aと小径部12bとを備える。
凹凸嵌合構造Mは、図2と図3に示すように、例えば、軸部12に設けられて軸方向に延びる凸部35と、ハブ輪1の孔部22の内径面(この場合、軸部嵌合孔22aの内径面37)に形成される凹部36とからなり、凸部35とその凸部35に嵌合するハブ輪1の凹部36との嵌合接触部位38全域が密着している。すなわち、軸部12の反マウス部側の外周面に、複数の凸部35が周方向に沿って所定ピッチで配設され、ハブ輪1の孔部22の軸部嵌合孔22aの内径面37に凸部35が嵌合する複数の凹部36が周方向に沿って形成されている。つまり、周方向全周にわたって、凸部35とこれに嵌合する凹部36とがタイトフィットしている。
この場合、各凸部35は、その断面が凸アール状の頂点を有する三角形状(山形状)であり、各凸部35の嵌合接触部位(凹部嵌合部位)38とは、図3(b)に示す範囲Aであり、断面における山形の中腹部から山頂にいたる範囲である。また、周方向の隣合う凸部35間において、ハブ輪1の内径面37よりも内径側に隙間40が形成されている。
このように、ハブ輪1と等速自在継手3の外輪5の軸部12とを凹凸嵌合構造Mを介して連結できる。この際、前記したように、ハブ輪1の継手側の端部を加締めて、その加締部31にて転がり軸受2に予圧を付与するものであるので、外輪5のマウス部11にて内輪24に予圧を付与する必要がない。
この場合、外輪5のマウス部11の底部裏面11aを加締部31の端面31aに当接させているが、外輪5のマウス部11の底部裏面11aと加締部31の端面31aとが非接触であってもよい。すなわち、外輪5のマウス部11の底部裏面11aと加締部31の端面31aとが当接している場合、当接面同士が擦れ合うことが原因で異音が発生するおそれがある。このため、非接触とすることによって、異音の発生を無くすようにできる。しかしながら、当接した状態であっても、その当接力、当接面の材質、当接面の仕上がり状態等によっては異音が発生しないように設定できる。このため、本発明では、当接(接触)させている。
接触させた場合、ハブ輪1の加締部31とマウス部11の底部裏面(バック面)11aとの接触面圧が100MPaを越えると、異音を発生するおそれがある。すなわち、大トルク負荷時に、等速自在継手3の外輪5とハブ輪1との捩れ量に差が生じ、この差により、等速自在継手3の外輪5とハブ輪1との接触部に急激なスリップが生じて異音が発生する。これに対して、接触面圧が100MPa以下であれば、急激なスリップが生じることを防止できて、異音の発生を抑えることができる。これによって、静粛な車輪用軸受装置を構成することができる。なお、接触面圧が100MPa以下であっても、シール構造を構成することができる面圧以上である必要がある。
ハブ輪1の加締部31の外端面31aとマウス部11のバック面11aとの接触部の面圧は、ボルト部材54の締付けトルクの大きさに左右されるが、締付けトルクにより発生する軸力は、凹凸嵌合部の軸方向摩擦力や凹凸嵌合部をさらに成形する力(凹凸嵌合部成形時の圧入荷重)で消費されるため、それ以上の軸力をかけた場合にしか接触面圧は高くならない。従って容易に接触面圧を100MPa以下に抑えることができ、スティックスリップ音は発生しない。
また、反継手側から軸部12のねじ孔50にボルト部材54を螺着している。ボルト部材54は、図1と図6に示すように、フランジ付き頭部54aと、ねじ軸部54bとからなる。ねじ軸部54bは、基端側の非ねじ部55aと、先端側のねじ部55bとを有する。この場合、内壁22cにボルト挿通孔56が設けられ、このボルト挿通孔56にボルト部材54の軸部54bが挿通されて、ねじ部55cが軸部12のねじ孔50に螺着される。図8に示すように、ボルト挿通孔56の孔径D2は、軸部54bの非ねじ部55aの外径D1よりも僅かに大きく設定される。具体的には、0.05mm<D1−D2<0.5mm程度とされる。なお、ねじ部55cの最大外径は、大径の基部55aの外径と同じか基部55aの外径よりも僅かに小さい程度とする。
本車輪用軸受装置では、図2に示すように、圧入時に軸部12の圧入のガイドを行う軸部圧入ガイド部M1を凸部圧入開始側に設けている。この場合、孔部22のテーパ部49aに設けられる雌スプライン44からなる。すなわち、図4(a)に示すように、テーパ部49aの軸部嵌合孔22a側に周方向に沿って所定ピッチ(この場合、凸部35の配置ピッチと同一ピッチ)にガイド用凹部44aを設ける。
この場合、図6に示すように、ガイド用凹部44aの底部径寸法D6を凸部35の最大外径、つまりスプライン41の山部41aである前記凸部35の頂点を結ぶ円の直径寸法(外接円直径)D3よりも大きくして、凸部35の頂部とガイド用凹部44aの底部との間に、図4(a)に示すように、径方向隙間C1を形成している。
次に、凹凸嵌合構造Mの嵌合方法を説明する。この場合、図6に示すように、軸部12の外径部には熱硬化処理を施し、この硬化層Hに軸方向に沿う山部41aと谷部41bとからなるスプライン41を形成する。このため、スプライン41の山部41aが硬化処理されて、この山部41aが凹凸嵌合構造Mの凸部35となる。このスプライン41は、軸部12の本体部12aの小径部側に設けられている。なお、この実施形態での硬化層Hの範囲は、クロスハッチング部で示すように、スプライン41の外端縁から外輪5のマウス部11の底壁の一部までである。この熱硬化処理としては、高周波焼入れや浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。ここで、高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。また、浸炭焼入れとは、低炭素材料の表面から炭素を浸入/拡散させ、その後に焼入れ行う方法である。軸部12のスプライン41のモジュールを0.5以下の小さい歯とする。ここで、モジュールとは、ピッチ円直径を歯数で割ったものである。
ハブ輪1の孔部22の内径面37(つまり、軸部嵌合孔22aの内径面)側においては熱硬化処理を行わない未硬化部(未焼き状態)とする。外輪5の軸部12の硬化層Hとハブ輪1の未硬化部との硬度差は、HRCで20ポイント以上とする。さらに、具体的には、硬化層Hの硬度を50HRCから65HRC程度とし、未硬化部の硬度を10HRCから30HRC程度とする。
この際、凸部35の突出方向中間部位が、凹部形成前の凹部形成面(この場合、孔部22の軸部嵌合孔22aの内径面37)の位置に対応する。すなわち、図6に示すように、軸部嵌合孔22aの内径面37の内径寸法(ハブ輪内径)D4を、凹凸嵌合構造Mにおける軸部12の最大直径寸法、つまりスプライン41の山部41aである前記凸部35の頂点を結ぶ円の直径寸法(外接円直径)D3よりも小さく、軸部12の凸部間に形成された谷部の最小直径寸法、つまりスプライン41の谷部41bの底を結ぶ円の直径寸法D5よりも大きく設定される。すなわち、D5<D4<D3とされる。また、孔部22の大径部46の孔径寸法D7よりもD3を小さく設定する。
スプライン41は、従来からの公知公用の手段である転造加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することがきる。また、熱硬化処理としては、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。なお、スプライン41を形成することによって構成された凸部35の圧入開始端面35aは、軸部12の軸線方向に対して直交する平坦面とされる。
そして、図6に示すように、ハブ輪1の軸心と等速自在継手3の外輪5の軸心とを合わせた状態とする。この状態で、ハブ輪1に対して、外輪5の軸部12を挿入(圧入)していく。すなわち、軸部圧入ガイド部M1の各ガイド用凹部44aに、軸部12の各凸35を嵌合させる。これによって、ハブ輪1の軸心と外輪5の軸心とが一致した状態となる。この際、各ガイド用凹部44aの凹凸嵌合構造側の端部が、圧入方向に対して直交する平坦面77a(図2参照)であるので、凸部35の圧入開始端面35aを受けることができ、この状態から圧入していくことができる。この際、前記したように、軸部嵌合孔22aの内径面37の径寸法D4と、スプライン41の最大直径寸法D3と、スプライン41の最小直径寸法D5とが前記のような関係であり、しかも、凸部35の硬度が内径面37の硬度よりも30ポイント以上大きいので、軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入していけば、この凸部35が内径面37に食い込んでいき、凸部35が、この凸部35が嵌合する凹部36を、軸方向に沿って形成していくことになる。
この圧入は、マウス部11の底部裏面11aがハブ輪1の加締部31の端面31aに当接するまで行われる。この際、図5に示すように、軸部12の小径部12bの端面52が内壁22cの端面53に当接しない状態に維持される。このように圧入されれば、図3(a)(b)に示すように、軸部12の端部の凸部35と、これに嵌合する凹部36との嵌合接触部位38の全体が密着している。すなわち、相手側の凹部形成面(この場合、孔部22の軸部嵌合孔22aの内径面37)に凸部35の形状の転写を行うことになる。この際、凸部35が孔部22の内径面37に食い込んでいくことによって、孔部22が僅かに拡径した状態となって、凸部35の軸方向の移動を許容し、軸方向の移動が停止すれば、孔部22が元の径に戻ろうとして縮径することになる。言い換えれば、凸部35の圧入時にハブ輪1が径方向に弾性変形し、この弾性変形分の予圧が凸部35の歯面(凹部嵌合部位の表面)に付与される。このため、凸部35の凹部嵌合部位の全体がその対応する凹部36に対して密着する凹凸嵌合構造Mを確実に形成することができる。すなわち、軸部12側のスプライン(雄スプライン)41によって、ハブ輪1の孔部22の内径面に、雄スプライン41に密着する雌スプライン42が形成される。
このように、凹凸嵌合構造Mが構成されるが、この場合の凹凸嵌合構造Mは転がり軸受2の軌道面26、27、28、29の避直下位置に配置される。ここで、避直下位置とは、軌道面26、27、28、29のボール接触部位置に対して径方向に対応しない位置である。
圧入後には、反継手側から軸部12のねじ孔50にボルト部材54を螺着する。このように、ボルト部材54を軸部12のねじ孔50に螺着することによって、ボルト部材54の頭部54aのフランジ部60が内壁22cの凹窪部51に嵌合する。これによって、ボルト部材54の頭部54aと凹凸嵌合構造Mとで、またはボルト部材54の頭部54aとマウス部11の底部底面(バック面)11aとでハブ輪1を挟持する状態となって、ハブ輪1と等速自在継手3とが一体化される。このように、ボルト部材54と、このボルト部材54が螺合するねじ孔50等をもって、ハブ輪1と外輪5の軸部12とが連結される装置軸心上のボルト結合手段M5が構成される。
この場合、ボルト挿通孔56の孔径D2とボルト部材54の非ねじ部55aの軸径D1との径差(直径隙間)をΔdとし、凹凸嵌合構造Mにおける軸部12の最大直径寸法D3と凹凸嵌合構造Mにおけるハブ輪の孔部22の最小直径寸法D4(雌スプライン42の山部の頂点を結んだ円の直径寸法:図8参照)との径差をΔd2としたときに、0<Δd<Δd2とする。
この場合、ボルト部材54の座面60aと内壁22cとの間をシール材(図示省略)を介在させてもよい。例えば、ボルト部材54の座面60aに、塗布後に硬化して座面60aと内壁22cの凹窪部51の底面との間において密封性を発揮できる種々の樹脂からなるシール材(シール剤)を塗布すればよい。なお、このシール材としては、この車輪用軸受装置が使用される雰囲気中において劣化しないものが選択される。また、シール材を、内壁22c側に塗布するようにしても、座面60a側および内壁22c側に塗布するようにしてもよい。
加締部31と、外輪5のマウス部11の底部底面11aとを接触させることによって、軸部方向の曲げ剛性が向上して、曲げに強くなって、耐久性に優れた高品質な製品となる。しかも、この接触によって、圧入時の位置決めを構成できる。これによって、この車輪用軸受装置の寸法精度が安定するとともに、軸方向に沿って配設される凹凸嵌合構造Mの軸方向長さを安定した長さに確保することができ、トルク伝達性の向上を図ることができる。さらに、この接触によってシール構造を構成でき、この加締部31側から凹凸嵌合構造Mへの異物の浸入を防止でき、凹凸嵌合構造Mは長期にわたって安定した嵌合状態を維持できる。
また、加締部31の端面31aと、マウス部11の底部裏面11aとが接触しているが、この加締部31の端面31aとマウス部11の底部裏面11aとの間に、前記シール材(シール剤)を介在させてもよい。この場合、端面31a側にシール材を塗布しても、底部裏面11a側にシール材を塗布しても、端面31a側及び底部裏面11a側にシール材を塗布してもよい。
このように、本発明では、軸部12の凸部35とハブ輪1の凹部36との嵌合接触部位38全域が密着する凹凸嵌合構造Mを確実に形成することができる。しかも、凹部36が形成される部材には、スプライン部等を形成しておく必要がなく、生産性に優れ、しかもスプライン同士の位相合わせを必要とせず、組立性の向上を図るとともに、圧入時の歯面の損傷を回避することができ、安定した嵌合状態を維持できる。
凹凸嵌合構造Mは、凸部35と凹部36との嵌合接触部位38の全体が密着しているので、この嵌合構造Mにおいて、径方向及び円周方向においてガタが生じる隙間が形成されない。このため、嵌合部位の全てが回転トルク伝達に寄与し、安定したトルク伝達が可能であり、しかも、異音の発生も生じさせない。
軸部圧入ガイド部M1を設けたので、軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入する際には、軸部圧入ガイド部M1に沿って圧入させていくことができる。
ところで、軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入していけば、形成されるはみ出し部45は、図2と図5に示すように、カールしつつ軸部12の小径部12bの外径側に設けられる空間からなる空間の収納部57に収納されて行く。ここで、はみ出し部45は、凸部35が嵌入(嵌合)する凹部36の容量の材料分であって、形成される凹部36から押し出されたもの、凹部36を形成するために切削されたもの、又は押し出されたものと切削されたものの両者等から構成される。このため、孔部22の内径面から削り取られたり、押し出されたりした材料の一部であるはみ出し部45が収納部57内に入り込んでいく。
このように、前記圧入による凹部形成によって生じるはみ出し部45を収納する収納部57を設けることによって、はみ出し部45をこの収納部57内に保持(維持)することができ、はみ出し部45が装置外の車両内等へ入り込んだりすることがない。すなわち、はみ出し部45を収納部57に収納したままにしておくことができ、はみ出し部45の除去処理を行う必要がなく、組立作業工数の減少を図ることができて、組立作業性の向上及びコスト低減を図ることができる。
ボルト結合手段M5によって、ハブ輪1からの軸部12の軸方向の抜けが規制され、長期にわたって安定したトルク伝達が可能となる。
ハブ輪1の端部が加締られて転がり軸受2に対して予圧が付与されるので、外輪5のマウス部11によって予圧を付与する必要がなくなる。このため、転がり軸受2への予圧を考慮することなく、外輪5の軸部12を圧入することができ、ハブ輪1と外輪5との連結性(組み付け性)の向上を図ることができる。
ハブ輪1と外輪5の軸部12とのボルト固定を行うボルト部材54の座面60aと、内壁22cとの間にシール材を介在させたり、加締部31の端面31aとマウス部11の底部裏面11aとの間にシール材を介在させたりすることによって、このボルト部材54からの凹凸嵌合構造Mへ雨水や異物の侵入が防止され、品質向上を図ることができる。
また、凸部35の突出方向中間部位が、凹部形成前の凹部形成面上に配置されるようにすることによって、凸部35が圧入時に凹部形成面に食い込んでいき、凹部36を確実に形成することができる。すなわち、凸部35の相手側に対する圧入代を十分にとることができる。これによって、凹凸嵌合構造Mの成形性が安定し、圧入荷重のばらつきも無く、安定した捩り強度が得られる。
図1等に示す実施形態では、外輪5の軸部12に凹凸嵌合構造Mの凸部35を設けるとともに、この凸部35の軸方向端部の硬度をハブ輪1の孔部内径部よりも高くして、軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入するものであれば、軸部側の硬度を高くでき、軸部の剛性を向上させることができる。
凹凸嵌合構造Mを転がり軸受2の軌道面の避直下位置に配置することによって、軸受軌道面におけるフープ応力の発生を抑える。これにより、転がり疲労寿命の低下、クラック発生、及び応力腐食割れ等の軸受の不具合発生を防止することができ、高品質な軸受2を提供することができる。
前記実施形態のように、軸部12に形成するスプライン41は、モジュールが0.5以下の小さい歯を用いたので、このスプライン41の成形性の向上を図ることができるとともに、圧入荷重の低減を図ることができる。なお、凸部35を、この種のシャフトに通常形成されるスプラインをもって構成することができるので、低コストにて簡単にこの凸部35を形成することができる。
ところで、図1に示す状態から、ボルト部材54を螺退させることによって、ボルト部材54を取外せば、ハブ輪1から外輪5を引き抜くことができる。すなわち、凹凸嵌合構造Mの嵌合力は、外輪5に対して所定力以上の引き抜き力を付与することにより引き抜くことができるものである。
例えば、図7に示すような治具70にてハブ輪1と等速自在継手3とを分離することができる。治具70は、基盤71と、この基盤71のねじ孔72に螺進退可能に螺合する押圧用ボルト部材73と、軸部12のねじ孔50に螺合されるねじ軸76とを備える。基盤71には貫孔74が設けられ、この貫孔74にハブ輪1のボルト33が挿通され、ナット部材75がこのボルト33に螺合される。この際、基盤71とハブ輪1のフランジ21とが重ね合わされて、基盤71がハブ輪1に取り付けられる。
このように基盤71をハブ輪1に取り付けた後、又は基盤71を取り付ける前に、基部76aが内壁22cから反継手側へ突出するように、軸部12のねじ孔50にねじ軸76を螺合させる。この基部76aの突出量は、凹凸嵌合構造Mの軸方向長さよりも長く設定される。ねじ軸76と、押圧用ボルト部材73とは、同一軸心上(この車輪用軸受装置の軸心上)に配設される。
その後は、押圧用ボルト部材73を反継手側から基盤71のねじ孔72に螺着し、この状態で、矢印のようにねじ軸76側へ螺進させる。この際、ねじ軸76と、押圧用ボルト部材73とは、同一軸心上(この車輪用軸受装置の軸心上)に配設されているので、この螺進によって、押圧用ボルト部材73がねじ軸76を矢印方向へ押圧する。これによって、外輪5がハブ輪1に対して矢印方向へ移動して、ハブ輪1から外輪5が外れる。
また、ハブ輪1から外輪5が外れた状態からは、例えば、ボルト部材54を使用して再度、ハブ輪1と外輪5とを連結することができる。すなわち、ハブ輪1から基盤71を取外すとともに、軸部12からねじ軸76を取外した状態として、図10(a)に示すように、軸部12の凸部35をガイド用凹部44aに嵌合させる。これによって、軸部12側の雄スプライン41と、前回の圧入によって形成されたハブ輪1の雌スプライン42との位相が合う。この際、図4(a)に示すように、凸部35の頂部とガイド用凹部44aの底部との間に径方向隙間C1が形成される。
この状態で、図9に示すように、ボルト部材54をボルト挿通孔56を介して軸部12のねじ孔50に螺合させ、ボルト部材54をねじ孔50に対して螺進させる。これによって、図10(b)に示すように、軸部12がハブ輪1内へ嵌入していく。この際、孔部22が僅かに拡径した状態となって、軸部12の軸方向の進入を許容し、マウス部11の底部裏面11aが加締部31の端面31aに当接するまで侵入する。この場合、同時に図10(c)に示すように、凸部35の端面35aが凹部36の端面36aに当接する。軸方向の移動が停止した状態となれば、孔部22が元の径に戻ろうとして縮径することになる。これによって、前回の圧入と同様、凸部35の凹部嵌合部位の全体がその対応する凹部36に対して密着する凹凸嵌合構造Mを確実に再構成することができる。
なお、軸部12のねじ孔50の開口部が開口側に向かって拡開するテーパ部50aとさているので、ねじ軸76やボルト部材54をねじ孔50に螺合させ易い利点がある。
ところで、1回目(孔部22の内径面37に凹部36を成形する圧入)では、圧入荷重が比較的大きいので、圧入のために、プレス機等を使用する必要がある。これに対して、このような再度の圧入では、圧入荷重を1回目の圧入荷重よりも小さいため、プレス機等を使用することなく、安定して正確に軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入することができる。このため、現場での外輪5とハブ輪1との分離・連結が可能となる。
しかも、ボルト挿通孔56の孔径D2とボルト部材54の非ねじ部55aの軸径D1との径差(直径隙間)をΔdとし、凹凸嵌合構造Mにおける軸部12の最大直径寸法D3と凹凸嵌合構造Mにおけるハブ輪の孔部22の最小直径寸法D4との差をΔd2としたときに、0<Δd<Δd2としている。従って、ボルト挿通孔56の孔径D2とボルト部材54の非ねじ部55aの軸径D1との径差は、軸部12の前記最大直径寸法D3とハブ輪の前記最小直径寸法D4との径差よりも小さくなる。これにより、ボルト挿通孔56が外輪5の軸部12の再圧入時に軸部の圧入方向をガイドする軸部圧入ガイド構造部M3となるので、再圧入時には軸部圧入ガイド構造部M3によって、芯ずれすることなく、軸部の圧入が案内される。このため、安定した再圧入が可能であり、前回形成した凹部36に凸部35がずれることなく嵌入していくことになって、再組立性の向上を図ることができる。
このように、外輪5の軸部12に軸方向の引き抜き力を付与することによって、ハブ輪1の孔部22から外輪5を取外すことができるので、各部品の修理・点検の作業性(メンテナンス性)の向上を図ることができる。しかも、各部品の修理・点検後に再度外輪5の軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入することによって、凸部35と凹部36との嵌合接触部位38全域が密着する凹凸嵌合構造Mを構成することができる。このため、安定したトルク伝達が可能な車輪用軸受装置を再度構成することができる。
軸部圧入ガイド部M1では、凸部35の位相と、他方の凹部36の位相とを一致させるガイド用凹部44aを有しているので、再度、外側手部材の軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入する際に、前回の圧入によって形成された凹部36に嵌入して行き、凹部36を損傷させることがない。このため、再度、径方向及び円周方向においてガタが生じる隙間が生じない凹凸嵌合構造Mを高精度に構成することができる。
凸部35の頂部とガイド用凹部44aの底部との間等に隙間を形成することによって、圧入前工程での凸部35のガイド用凹部44aへの嵌入を容易にでき、しかも、ガイド用凹部44aが凸部35の圧入の妨げにならない。このため、組立性の向上を図ることができる。
なお、ボルト挿通孔56の軸方向長さとしても、短すぎると、安定したガイドを発揮できず、逆に長すぎると、内壁22cの厚さ寸法が大となって、凹凸嵌合構造Mの軸方向長さを確保できないとともに、ハブ輪1の重量が大となる。このため、これらを考慮して種々変更することができる。
前記実施形態では、図4(a)に示すように、凸部35の頂部とガイド用凹部44aの底部との間に径方向隙間C1が形成されているが、図4(b)に示すように、凸部35の側部とガイド用凹部44aの側部との間に周方向隙間C2、C2を形成するようにしてもよい。また、図4(c)に示すように、凸部35の頂部とガイド用凹部44aの底部との間に径方向隙間C1、および凸部35の側部とガイド用凹部44aの側部との間に周方向隙間C2を形成するようにしてもよい。このような隙間を形成することによって、圧入前工程での凸部35のガイド用凹部44aへの嵌入を容易にでき、しかも、ガイド用凹部44aが凸部35の圧入の妨げにならない。
前記図2に示すスプライン41では、山部41aのピッチと谷部41bのピッチとが同一設定される。このため、前記実施形態では、図2(b)に示すように、凸部35の突出方向中間部位の周方向厚さLと、周方向に隣り合う凸部35間における前記中間部位に対応する位置での周方向寸法L0とがほぼ同一となっている。
これに対して、図11(a)に示すように、凸部35の突出方向中間部位の周方向厚さL2を、周方向に隣り合う凸部35間における前記中間部位に対応する位置での周方向寸法L1よりも小さいものであってもよい。すなわち、軸部12に形成されるスプライン41において、凸部35の突出方向中間部位の周方向厚さ(歯厚)L2を、凸部35間に嵌合するハブ輪1側の山部43の突出方向中間部位の周方向厚さ(歯厚)L1よりも小さくしている。
このため、軸部12側の全周における凸部35の歯厚の総和Σ(B1+B2+B3+・・・)を、ハブ輪1側の山部43(凸歯)の歯厚の総和Σ(A1+A2+A3+・・・)よりも小さく設定している。これによって、ハブ輪1側の山部43のせん断面積を大きくすることができ、ねじり強度を確保することができる。しかも、凸部35の歯厚が小であるので、圧入荷重を小さくでき、圧入性の向上を図ることができる。凸部35の周方向厚さの総和を、相手側の山部43における周方向厚さの総和よりも小さくする場合、全凸部35の周方向厚さL2を、周方向に隣り合う凸部35間における周方向の寸法L1よりも小さくする必要がない。すなわち、複数の凸部35のうち、任意の凸部35の周方向厚さが周方向に隣り合う凸部間における周方向の寸法と同一であっても、この周方向の寸法よりも大きくても、総和で小さければよい。
なお、図11(a)における凸部35は断面台形(富士山形状)としているが、凸部35の形状としては、図11(b)に示すように、インボリュート歯形状であってもよい。
軸部圧入ガイド部M1としては、図12に示すものであってもよい。図12(a)では、ガイド用凹部44aの凹凸嵌合構造M側の端部が、圧入方向(圧入進行方向)に沿って縮径する傾斜する傾斜面77bとしている。すなわち、傾斜面77bの傾斜角度θとしては、例えば45°程度としている。
図12(b)(c)は、ガイド用凹部44aの径方向深さ寸法が圧入方向に沿って縮径するものである。また、図12(b)では、凹凸嵌合構造M側の端部を圧入方向に直交する平坦面77aとし、図12(c)では、凹凸嵌合構造M側の端部を圧入方向(圧入進行方向)に沿って縮径する傾斜する傾斜面77bとしている。
ガイド用凹部44aの凹凸嵌合構造側の端部が、圧入方向に直交する平坦面77aであれば、軸部12を孔部22に圧入する際において、この平坦面77aで軸部12を受けることができる。また、傾斜面77bであれば、凸部35をガイド用凹部44aから相手側の凹部36へ安定して嵌入させることができる。ガイド用凹部44aの径方向深さが圧入方向に沿って縮径するものであっても、凸部35をガイド用凹部44aから相手側の凹部36へ安定して嵌入させることができる。
次に、図13は第2実施形態を示し、この場合、ハブ輪1に内壁22cを設けず、この内壁22cの代わりに、リング体80をハブ輪1の孔部22に装着している。すなわち、ハブ輪1の孔部22にリング嵌合用切欠部81を設け、このリング嵌合用切欠部81にリング体80を嵌合させている。この際、リング嵌合用切欠部81の切欠端面81aにリング体80が係合する。リング体80は、その外径とリング嵌合用切欠部81の内径とのクリアランスを極力詰めるかリング体80をリング嵌合用切欠部81に圧入するのが好ましい。
また、リング体80には、ボルト部材54が挿通されるボルト挿通孔82が形成される。このボルト挿通孔82は、前記第1実施形態のボルト挿通孔56と同様、孔径D2とボルト部材54の非ねじ部55aの軸径D1との径差Δdとし、凹凸嵌合構造Mにおける外輪5の軸部外径D3と凹凸嵌合構造Mにおけるハブ輪内径D4との径差をΔd2としたときに、0<Δd<Δd2としている。
図13に示す車輪用軸受装置の他の構成は、図1に示す車輪用軸受装置と同様であるので、図1と同一部材を図1と同一の符号を附してそれらの説明を省略する。
このため、図13に示す車輪用軸受装置であっても、図1に示す車輪用軸受装置と同様の作用効果を奏する。しかも、ボルト挿通孔82をハブ輪1とは別部材のリング体80に形成するものであるので、ボルト挿通孔82を高精度に安定して形成することができる。また、リング体80が損傷等した場合にも、交換することができ、ハブ輪1全体を交換する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
ところで、前記各実施形態では、軸部12側に凸部35を構成するスプライン41を形成するとともに、この軸部12のスプライン41に対して硬化処理を施し、ハブ輪1の内径面を未硬化(生材)としている。これに対して、図14に示すように、ハブ輪1の孔部22の内径面に硬化処理を施されたスプライン61(山部61a及び谷部61bとからなる)を形成するとともに、軸部12には硬化処理を施さないものであってもよい。なお、このスプライン61も公知公用の手段であるブローチ加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することがきる。また、熱硬化処理としても、高周波焼入れ、浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。
この場合、凸部35の突出方向中間部位が、凹部形成前の凹部形成面(軸部12の外径面)の位置に対応する。すなわち、スプライン61の山部61aである凸部35の頂点を結ぶ円の直径寸法(凸部35の最小直径寸法)D8を、軸部12の外径寸法D6よりも小さく、スプライン61の谷部61bの底を結ぶ円の直径寸法(凸部間の最大直径寸法)D9を軸部12の外径寸法D10よりも大きく設定する。すなわち、D8<D10<D9とされる。
軸部12をハブ輪1の孔部22に圧入すれば、ハブ輪1側の凸部35によって、軸部12の外周面にこの凸部35が嵌合する凹部36を形成することができる。これによって、凸部35とこれに嵌合する凹部との嵌合接触部位38の全体が密着している。
ここで、嵌合接触部位38とは、図14(b)に示す範囲Bであり、凸部35の断面における山形の中腹部から山頂にいたる範囲である。また、周方向の隣合う凸部35間において、軸部12の外周面よりも外径側に隙間62が形成される。
この図14に示すものでも、軸部圧入ガイド部M1を設けるのが好ましい。この場合、軸部12側にガイド用凹部44bを設ければよい。また、凸部35の頂部とガイド用凹部44aの底部との間に径方向隙間C1を形成したり、凸部35の側部とガイド用凹部44aの側部との間に周方向隙間C2、C2を形成したり、さらには、径方向隙間C1及び周方向隙間C2、C2を形成したりすることができる。
図14に示す場合であっても、圧入によってはみ出し部45が形成されるので、このはみ出し部45を収納する収納部57を設けるのが好ましい。はみ出し部45は軸部12のマウス側に形成されることになるので、収納部をハブ輪1側に設けることになる。
このように、ハブ輪1の孔部22の内径面37に凹凸嵌合構造Mの凸部35を設けるとともに、この凸部35の軸方向端部の硬度を外輪5の軸部12の外径部よりも高くして、圧入するものでは、軸部側の硬度処理(熱処理)を行う必要がないので、等速自在継手の外側継手部材(外輪5)の生産性に優れる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、凹凸嵌合構造Mの凸部35の形状として、前記図2に示す実施形態では断面三角形状であり、図11(a)に示す実施形態では断面台形(富士山形状)であるが、これら以外の半円形状、半楕円形状、矩形形状等の種々の形状のものを採用でき、凸部35の面積、数、周方向配設ピッチ等も任意に変更できる。すなわち、スプライン41を形成し、このスプライン41の山部(凸歯)41aをもって凹凸嵌合構造Mの凸部35とする必要はなく、キーのようなものであってもよく、曲線状の波型の合わせ面を形成するものであってもよい。要は、軸方向に沿って配設される凸部35を相手側に圧入し、この凸部35にて凸部35に密着嵌合する凹部36を相手側に形成することができて、凸部35とこれに嵌合する凹部との嵌合接触部位38の全体が密着し、しかも、ハブ輪1と等速自在継手3との間で回転トルクの伝達ができればよい。
ハブ輪1の孔部22としては円孔以外の多角形孔等の異形孔であってよく、この孔部22に嵌挿する軸部12の端部の断面形状も円形断面以外の多角形等の異形断面であってもよい。さらに、ハブ輪1に軸部12を圧入する際に凸部35の圧入始端部のみが、凹部36が形成される部位より硬度が高ければよいので、凸部35の全体の硬度を高くする必要がない。図3等では隙間40が形成されるが、凸部35間の谷部まで、ハブ輪1の内径面37が食い込むようなものであってもよい。なお、凸部35側と、凸部35にて形成される凹部形成面側との硬度差としては、HRCで20ポイント以上とするのが好ましいが、凸部35が圧入可能であれば20ポイント未満であってもよい。
凸部35の端面(圧入始端)は前記実施形態では軸方向に対して直交する面であったが、軸方向に対して、所定角度で傾斜するものであってもよい。この場合、内径側から外径側に向かって反凸部側に傾斜しても凸部側に傾斜してもよい。
さらに、ハブ輪1の孔部22の内径面37に、周方向に沿って所定ピッチで配設される小凹部を設けてもよい。小凹部としては、凹部36の容積よりも小さくする必要がある。このように小凹部を設けることによって、凸部35の圧入性の向上を図ることができる。すなわち、小凹部を設けることによって、凸部35の圧入時に形成されるはみ出し部45の容量を減少させることができて、圧入抵抗の低減を図ることができる。また、はみ出し部45を少なくできるので、収納部57の容積を小さくでき、収納部57の加工性及び軸部12の強度の向上を図ることができる。なお、小凹部の形状は、半楕円状、矩形等の種々のものを採用でき、数も任意に設定できる。
軸受2の転動体30として、ローラを使用したものであってもよい。また、前記実施形態では、第3世代の車輪用軸受装置を示したが、第1世代や第2世代さらには第4世代であってもよい。なお、凸部35を圧入する場合、凹部36が形成される側を固定して、凸部35を形成している側を移動させても、逆に、凸部35を形成している側を固定して、凹部36が形成される側を移動させても、両者を移動させてもよい。なお、等速自在継手3において、内輪6とシャフト10とを前記各実施形態に記載した凹凸嵌合構造Mを介して一体化してもよい。
ハブ輪1と軸部12とのボルト固定を行うボルト部材54の座面60aと、内壁22cとの間に介在されるシール材は、前記実施形態ではボルト部材54の座面60a側に樹脂を塗布して構成していたが、逆に、内壁22c側に樹脂を塗布するようにしてもよい。また、座面60a側および内壁22c側に樹脂を塗布するようにしてもよい。なお、ボルト部材54を螺着した際において、ボルト部材54の座面60aと、内壁22cの凹窪部51の底面とが密着性に優れるものであれば、このようなシール材を省略することも可能である。すわなち、凹窪部51の底面を研削することによって、ボルト部材54の座面60aとの密着性を向上させたりすることができる。もちろん、凹窪部51の底面を研削することなく、いわゆる旋削仕上げ状態であっても、密着性を発揮できれば、シール材を省略することができる。
ガイド用凹部44aとしては、図4(a)(b)(c)に示すように、凸部35との間に隙間C1、C2が形成されることになるが、これらの隙間寸法としては、圧入時に芯ずれや芯傾きが生ぜず、しかも、凸部35がガイド用凹部44aの内面に圧接して圧入荷重の増大を招かないものであればよい。また、ガイド用凹部44aの軸方向長さとしても任意に設定でき、長ければ、芯合わせ上好ましいが、ハブ輪1の孔部22の軸方向長さからその上限は限られる。逆にハブ輪1の孔部22の軸方向長さが短ければ、ガイドとして機能せずに、芯ずれや芯傾きが生じるおそれがある。このため、ガイド用凹部44aの軸方向長さをこれらを考慮して決定する必要がある。
また、ガイド用凹部44aの断面形状としては、凸部35が嵌合可能なものであればよく、図4に示すものに限るものではない。凸部35の断面形状等に応じて種々変更できる。ガイド用凹部44aの数としても、凸部35の数に合わせることなく、凸部35の数よりも少なくても、多くてもよい。要は、いくつかの凸部35がいくつかのガイド用凹部44aに嵌合して、凸部35の位相と、前回の圧入で形成された凹部36の位相とが一致すればよい。
ガイド用凹部44aの端部の傾斜面77bの傾斜角度θやガイド用凹部44aの底部の傾斜角度θ1も任意に変更できる。傾斜面77bの傾斜角度θが90°に近ければ、圧入方向に直交する平坦面77aと機能的に同じとなり、傾斜角度θが小さければ、ガイド用凹部44aが長くなって、凹凸嵌合構造Mの軸方向長さが短くなる。また、底部の傾斜角度θ1が大きくなれば、ガイド用凹部44aの構成が困難となり、逆に小さければ、傾斜させる場合の機能を発揮できない。このため、各傾斜角度θ、θ1をこれらを考慮して設定する必要がある。
前記実施形態における転がり軸受2の外方部材25では車体取付用フランジを有さないものであったが、外方部材25として車体取付用フランジを備えたものであってもよい。