JP5672073B2 - エポキシ樹脂用硬化剤、硬化性樹脂組成物、およびその硬化物 - Google Patents
エポキシ樹脂用硬化剤、硬化性樹脂組成物、およびその硬化物 Download PDFInfo
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Description
ここでいう電気積層板とは、プリント配線板、ビルドアップ積層板、フレキシブル積層板、レジスト材やシール材などを含む、絶縁基板に用いられる積層板を指す。
また、樹脂金属被覆物とは、電気機器・電力機器内に用いられる金属導体を樹脂で被覆して絶縁したものなどを指し、繊維強化複合材料とは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)などを含む、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂として用いた複合材料を指す。
複数のR1〜R 5 は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Xは、単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、メチレン基、2,2−プロピリデン基またはオキシメチレン基を示す。)
[2] 前記ビスイミドフェノール化合物(a)が、下記構造式(a−1)〜(a−8)で表される化合物から選ばれる[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[ビスイミドフェノール化合物(a)]
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、下記一般式(I)で表され、ケトン系溶剤に対して60℃で0.5重量%以上の溶解度を有するビスイミドフェノール化合物(a)(以下「本発明のビスイミドフェノール化合物(a)」と称す場合がある。)を必須成分とするものである。
R6は、炭素数1〜10の有機基を示すが、隣接する2つの基が結合してベンゼン環に縮合する炭素数20以下の環を形成してもよい。
複数のR1〜R6は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Xは、単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、または炭素数1〜20の二価の有機基から選ばれる基を示す。
nは0〜3の整数である。)
これに対して、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤に用いられる本発明のビスイミドフェノール化合物(a)は上記一般式(I)で表され、ケトン系溶剤に対する溶解度が高く、各種エポキシ樹脂との相溶性が高いため、硬化性樹脂組成物を容易に調製することが可能であり、また、分子中のイミド基濃度が高いことから、得られる樹脂硬化物に低線膨張性や耐熱性を付与するための硬化剤として有用である。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)のケトン系溶剤に対する溶解度は、60℃で0.5重量%以上であり、好ましくは3.0重量%以上、特に好ましくは6.0重量%以上であり、最も好ましくは8.0重量%以上である。
以上に挙げたケトン系溶剤の中でもシクロヘキサノンが好ましく、ビスイミドフェノール化合物(a)は、シクロヘキサノンに対する溶解度が60℃で0.5重量%以上であることが好ましく、3.0重量%以上であることがより好ましく、6.0重量%以上であることが特に好ましく、8.0重量%以上であることが最も好ましい。
サンプル瓶に、ビスイミドフェノール化合物(a)とケトン系溶剤を入れ、時々手で振り混ぜながら、油浴中で60℃で2時間加熱した際の溶解性を目視で確認する。高濃度から測定を開始し、溶け残りがある場合には少量ずつ溶剤を足して濃度を下げ、完全に溶解した時点の濃度を溶解度とする。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)が溶剤に対する溶解性に優れたものとなり得る理由の詳細は明らかではないが、以下のように推定される。
(1) 一般式(I)において、イミド基のオルト位に適切な大きさの置換基R1を導入することで、イミド基を含む共役平面が捻れを持ち、分子間のスタッキング構造が適度に阻害される。
(2) 一般式(I)において、イミド基の両オルト位を非対称(R1≠R5)とすることで結晶性が低下する。
(3) 一般式(I)において、連結基部分Xにトリフルオロメチレン基を導入した場合には、フッ素原子の静電反発作用により、フタル酸部分の分子間相互作用が適度に弱められることにより、上述の共役平面の捻れのみの場合よりも更に溶解性を向上させることができる。
ただし、捻れを生じさせる置換基R1が大きすぎる場合は、イミド化合物の特徴である分子間のスタッキングを完全に阻害してしまい、十分な物性を得られない可能性があるため、該置換基R1は適度な大きさにとどめるのが好ましい。
従って、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)の溶剤溶解性を確保するために、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)は、前記一般式(I)において、R1は、以下に定義される|α|が45°以上、90°以下となる一価の官能基であり、R5は、水素原子または以下に定義される|α|が0°以上、45°未満となる一価の官能基であることが好ましい。
|α|とは、下記式(I−1)に示す構造において、理論計算に基づいた最安定構造を算出した際、2つの共役平面の成す二面角αの絶対値である。
αとしては、隣接する4つの原子、C(イミドのカルボニル炭素)−N(イミドの窒素)−C(芳香環)−C(芳香環)の成す以下の(1)〜(4)の4種の二面角の内、絶対値が最小のものとする。なお、C1〜C5は下記式(I−Ia)に示される。
(1) C1−C2−N−C4
(2) C1−C2−N−C5
(3) C3−C2−N−C4
(4) C3−C2−N−C5
以下に、一般式(I)において、特に、R1,R5が上記の好適な基である場合を例示して、一般式(I)で表される本発明のビスイミドフェノール化合物(a)を説明する。
一般式(I)において、R1は、好ましくは上記|α|が45゜以上、90゜以下の、ハロゲン原子、水素原子、水酸基以外の一価の官能基である。R1の|α|の下限は、分子間の重なりによる溶剤溶解性低下が起こりにくいことから、好ましくは48°、より好ましくは51°である。一方、|α|の上限は、置換基がイミド化合物の特徴である分子間のスタッキングの起きる適度な大きさであることから、好ましくは75°、より好ましくは60°である。
一般式(I)において、R5は、好ましくは水素原子または上記|α|が0°以上、45°未満のハロゲン原子以外の一価の官能基である。|α|が0°となるのは、R5がイミド基のカルボニル酸素と強く相互作用するルイス酸性を有した置換基の場合であり、こうした場合にはR1による二面角の形成をR5が阻害し、十分な溶解性を確保できない可能性があることから、|α|の下限は、好ましくは10°、より好ましくは20°である。また、大きな捻れを生じさせる置換基は、R1によって生じた二面角を更に増大し、好ましい範囲を逸脱させるおそれがあることから、|α|の上限は、好ましくは43°である。
一般式(I)において、R2〜R4は、各々独立に、水素原子、水酸基、または炭素数1〜10の一価の有機基を示すが、R2〜R4のうち、隣接する2つの基が互いに結合してベンゼン環に縮合する、炭素数20以下の環を形成してもよい。
R2〜R4としての炭素数1〜10の有機基としては、特に限定されないが、各基の分子量が大きくなると相対的なイミド基含量が低下するため、炭素数3以下の有機基であることが好ましい。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)においては、R2〜R5のうち、少なくとも一つは水酸基である必要がある。
これは、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)をエポキシ樹脂用硬化剤として用いてエポキシ樹脂の硬化を行なう場合に、反応可能な置換基が無いと硬化が進行しないこと、また、最も汎用性の高い反応性の置換基が水酸基であることによる。
ただし、一分子中の水酸基が多すぎると、ビスイミドフェノール化合物(a)自体の合成が困難であるので、一分子中のイミド基に結合した2個のベンゼン環に各々1〜2個、好ましくは1個ずつの水酸基が結合していることが望ましい。
また、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)は、そのフェノール性水酸基当量が200〜600g/eq.、特に250〜400g/eq.であることが好ましい。
一般式(I)において、R6は、各々独立に、炭素数1〜10の一価の有機基を示し、1つのベンゼン環上でR6が隣接する位置にある場合、隣接する2つのR6は互いに結合してベンゼン環に縮合する、炭素数20以下の環を形成していてもよい。
R6としては、炭素数1〜10の有機基であれば、特に限定されないが、各基の分子量が大きくなると、相対的なイミド基含量が低下するため、炭素数3以下の有機基であることが好ましい。
一般式(I)において、Xは単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、または置換されていてもよい炭素数1〜20の二価の有機基を示す。Xが二価の有機基の場合、その分子量が大きくなると相対的にイミド基含量が低下するため、炭素数1〜10の有機基であることが好ましく、炭素数1〜3の有機基であることが好ましい。炭素数1〜3の二価の有機基としては具体的には、メチレン基、2,2−プロピリデン基、オキシメチレン基等が挙げられる。
一般式(I)において、nは0〜3の整数であるが、nが大きく、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)の分子量が大きくなると、相対的なイミド基含量が低下するため、nは0または1が好ましい。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)において、連結基Xで連結される左右の環構造のベンゼン環部分に結合するR1〜R6と、R6の個数を表すnは、左右で各々同一でも異なってもよいが、同一の方が分子の対称性がよく、高分子量化した際にイミドの特徴である凝集力を損なわないことから好ましい。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)の分子量の下限は504であるが、その上限としては、1200以下、特に1000以下、とりわけ800以下であることが好ましい。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)の分子量が過度に小さいと、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)の分子設計が不可能であり、逆に過度に大きいと、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)中のイミド基含量が小さくなり、好ましくない。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)のイミド基含量(本発明のビスイミドフェノール化合物(a)1g当たりのイミド基のモル量)は、イミド基含量の多い、耐熱性、低線膨張性に優れた各種材料のエポキシ樹脂用硬化剤として有用となり得ることから、0.22mmol/g以上、特に0.8mmol/g以上、とりわけ1.5mmol/g以上であることが好ましい。なお、イミド基含量の最大値は、理論的には4.0mmol/gである。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)として特に好適な、溶剤溶解性の高いビスイミドフェノール化合物(a)としては、以下のようなものが挙げられるが、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)は、何ら以下のものに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、上述の本発明のビスイミドフェノール化合物(a)のみからなるものであってもよく、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)と共に、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)以外の化合物よりなる硬化性樹脂用硬化剤(b)(以下「他の硬化剤(b)」と称す場合がある。)を含有するものであってもよい。
他の硬化剤(b)としては、多価フェノール類、アミン化合物類、酸無水物類等が挙げられ、具体的には、以下に例示するようなものを用いることができる。
具体的には、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ル、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾ−ル類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレ−ト、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−ト、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−トなどのイミダゾリウム塩、2,4−6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレ−トなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどのジアザビシクロ化合物などが挙げられる。また、これらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレ−ト、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩など、さらにはトリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6 −陰イオン(ここでMは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形の周期表第VIb族元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩等を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の形態は、他の硬化剤(b)の配合の有無、用いる他の硬化剤(b)の種類、その配合量によっても異なるが、液状であってもよく、固形であってもよい。
本発明のビスイミドフェノール化合物(a)と必要に応じて配合される前述の他の硬化剤(b)とを含む本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、そのイミド基含量(エポキシ樹脂用硬化剤1g当たりのイミド基のモル量)が、0.1mmol/g以上、特に0.4mmol/g以上、とりわけ0.8mmol/g以上であることが、本発明の目的を達成する上で好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の本発明のエポキシ樹脂用硬化剤とエポキシ樹脂を含むものであり、必要に応じて、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、硬化促進剤、充填剤、溶媒、その他の成分を含んでいてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物が含み得るエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、イミド骨格含有エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とグリオキサールやヒドロキシベンズアルデヒドやクロトンアルデヒド等のアルデヒド類との縮合ノボラック類にエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、鎖状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。なお、ここでいうイミド骨格含有エポキシ樹脂は、本発明のビスイミドフェノール化合物(a)を原料とするエポキシ樹脂であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物中の本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の含有量は、用いる硬化剤の種類によっても異なるが、通常全エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜200重量部、好ましくは1〜150重量部の範囲内である。本発明の硬化性樹脂組成物中の本発明のエポキシ樹脂用硬化剤の含有量が多すぎると樹脂との混ざりが悪くなり、少なすぎると全組成物の相対的なイミド基含量が下がるため好ましくない。
なお、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、予めエポキシ樹脂などとの混合物として用いてもよい。
硬化促進剤としては、一般のエポキシ樹脂組成物に用いられるものをいずれも用いることができ、例えばベンジルジメチルアミン、各種のイミダゾール系化合物等のアミン類、トリフェニルホスフィンなどの三級ホスフィン類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、シアネートエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂などを使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物が含み得る溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類などが挙げられる。成形性をよくするためには、溶解性のよいケトン系溶媒ならびにアミド系溶媒を用いることが好ましい。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物が含み得る充填剤としては、無機充填剤であっても有機充填剤であってもよく、無機充填剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物、ガラスビーズ等の透明フィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、その他、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなどが挙げられる。有機充填剤としては、セルロースファイバーなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他、保存安定性向上のための紫外線防止剤、可塑剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤、着色剤や顔料、難燃性を付与するための、ハロゲン系、リン系、窒素系、シリコン系等の難燃剤、ガラス繊維等の補強材等、通常のエポキシ樹脂組成物に配合し得る、各種の添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を含む本発明の硬化性樹脂組成物のイミド基含有量(組成物1g当たりのイミド基のモル量)は、線膨張率の低下に寄与することから、0.05mmol/g以上、特に0.2mmol/g以上、とりわけ0.5mmol/g以上が好ましい。
硬化性樹脂組成物中のイミド基含量を上げるためには、エポキシ樹脂にもイミド骨格が含まれていることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、接着剤、塗料、土木建築材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で有効に利用することができるが、特にその優れた耐熱性と低線膨張性、並びに成形加工性から、多層電気積層板やビルドアップ法などの新方式プリント配線板に好適に使用される。特に、ビルドアップ法多層プリント配線板用材料として使用される樹脂付き銅箔、接着フィルムなどの形態での使用が好ましい。また、フレキシブル積層板用途、レジスト材、シール材等にも使用できる。その他、電線の絶縁被覆処理用、各種複合材料(CFRPなどを含む)にも使用することができる。
本発明の樹脂硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、100〜200℃で60〜180分の加熱条件が挙げられる。この加熱は100〜130℃で10〜30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも50〜80℃高い150〜200℃で60〜150分の二次加熱との二段処理で行なうことが、硬化不良を少なくするという点で好ましい。
本発明の積層体は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる本発明の樹脂硬化物と導電性金属との積層体であり、好ましくは、ビルドアップ積層板におけるビルドアップ層としての導電性金属箔付きフィルムである。
本発明の樹脂金属被覆物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる本発明の樹脂硬化物で金属、特に導電性金属に被覆してなるものであり、好ましくは電線における絶縁処理用としての樹脂金属被覆物である。この樹脂金属被覆物の導電性金属としては、銅、アルミニウム等の電線が用いられる。
本発明の繊維強化複合材料は、樹脂硬化物と強化繊維とを含むものであり、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなる繊維強化複合プリプレグを硬化して得られる。この繊維強化複合プリプレグは、後述の実施例の項に示すように、本発明の硬化性樹脂組成物をガラス繊維などの強化繊維に含浸させ、所定の加熱・加圧条件で半硬化させて製造することができる。
e:jERキュア DICY7(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
ジシアンジアミド)
f:jERキュア YLH129(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
ビスフェノール型ノボラック樹脂、フェノール性水酸基当量:117g/eq)
g:レヂトップ PSM−6200(群栄化学(株)商品名、
フェノールノボラック樹脂、フェノール性水酸基当量:103g/eq)
h:メチルナジック酸無水物(和光純薬(株)試薬、
酸無水物当量:178g/eq.)
i:ジアミノジフェニルスルフォン(和光純薬(株)試薬、
活性水素当量:62g/eq.)
j:jER 828(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:186g/eq.、
可鹸化塩素濃度:40ppm)
k:jER YX4000(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量:186g/eq.、
可鹸化塩素濃度:40ppm)
l:jER157S70(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:210g/eq.)
m:jER 1032S50(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:175g/eq.)
n:jER 604(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、
グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量:119g/eq.)
o:上記kに示されるエポキシ樹脂と上記aに示されるビスイミドフェノール
との反応物(エポキシ当量:600g/eq.)
p:YX6954BH30(ジャパンエポキシレジン(株)商品名、特殊高分子量エポ
キシ樹脂、重量平均分子量Mw.:39,000、エポキシ当量:13,000g
/eq.)
q:上記kに示されるエポキシ樹脂と上記aに示されるビスイミドフェノールとの反応
物(重量平均分子量Mw.:33,000、エポキシ当量:14,000g/eq.)
AroCy B−30:Huntsuman(株)商品名、
ビスフェノールA ジシアネート樹脂
B103:日本軽金属(株)商品名、水酸化アルミニウム、平均粒径8μm
表5に示した配合でビスイミドフェノール化合物(a)または他のビスイミドフェノール化合物と、他の硬化剤(b)とを攪拌機付き耐熱反応容器に入れ(ただし、実施例6ではビスイミドフェノール化合物(a)のみ)、窒素ガス雰囲気下、100〜150℃で攪拌を行ない、エポキシ樹脂用硬化剤を得た。
このエポキシ樹脂用硬化剤のイミド基含量は、表5に示す通りであった。
市販のエポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂用硬化剤として実施例1〜6および比較例1で得られたエポキシ樹脂用硬化剤を用い、さらに硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールまたはトリフェニルホスフィンを用い(実施例8では更に他の熱硬化性樹脂、実施例13では更に充填剤)、それらを表6に記載の組み合わせで配合して各種の硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物について、以下の性状分析を行い、結果を表6に示した。
配合組成物1g当たりのイミド基のモル量として算出した。
<樹脂硬化物の作成>
以下の硬化方法I、IIで樹脂硬化物を作成した。
なお、比較例2は、比較例1で作成した硬化剤の溶解性が低く、他成分との配合が困難であるため、均一な硬化物を作成できず、評価できなかった。
表6に示す配合割合で、エポキシ樹脂と硬化剤とを100〜200℃の温度で5分間加熱混合した後(実施例8では更に他の熱硬化性樹脂も)、硬化促進剤を素早く混合して硬化性樹脂組成物を得た。この硬化性樹脂組成物を減圧下で脱泡した後、型の中に流し込み、120〜200℃で2〜5時間加熱して樹脂硬化物を得た。
表6に示す配合割合でエポキシ樹脂、硬化剤、および硬化促進剤を混合してワニスを作成し(実施例13では更に充填剤も)、スリット幅300μmのアプリケーターを用いて、PTFEテープ(中興化成工業(株):チューコーフロー(登録商標) スカイブドテープ MSF−100)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、更に200℃で90分保持して、60〜100μmの厚みの樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物のガラス転移温度および線膨張係数(30〜150℃での平均値)を以下の方法で測定した。
SIIナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100装置」を使用し、圧縮・膨張モードおよび引張モードにて、20〜250℃まで5℃/minで昇温し、30〜150℃の平均線膨張係数およびガラス転移温度を測定した。
なお、実施例14の樹脂硬化物のTMAチャートを図に示す。
<プリプレグの作成(実施例11のみ)>
表6の実施例11に示す配合割合でワニスを作成してガラス強化繊維布(スタイル7628:旭シュエーベル(株)商品名、処理AS750、厚み0.180mm)に含浸させた後、150℃の乾燥室中でその含浸布を8分間乾燥させ、Bステージ状のプリプレグを得た。
得られたプリプレグのガラス転移温度および線膨張係数(30〜150℃での平均値)を以下の方法で測定した。
SIIナノテクノロジー(株)製「TMA/SS6100装置」を使用し、フィルム引っ張りモードにて、20℃〜250℃まで5℃/min.で昇温し、30℃〜150℃の平均線膨張係数およびガラス転移温度を測定した。
<積層体の作成(実施例14、比較例3)>
表6の実施例14および比較例3に示した配合割合のワニスをそれぞれ用い、300μmのアプリケーターを用いて、銅箔(F3−WS:古川サーキットホイル(株)商品名、電解銅箔、厚み18μm)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、60〜180μmの厚みの銅箔付Bステージ状半硬化樹脂を作成し、この銅箔付Bステージ状半硬化樹脂を2枚重ね合わせ、加熱プレス機にて、200℃、2.9MPaの圧力で90分間保持し、銅箔付硬化樹脂積層体を作成した。
表6の実施例14に示す配合割合でワニスを作成し、300μmのアプリケーターを用いて、銅箔(古川サーキットホイル(株)商品名、F3−WS電解銅箔、厚み18μm)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて200℃で90分間保持し、60〜100μm厚みの銅箔付硬化樹脂の樹脂金属被覆物を作成した。
また、表6の比較例3に示す配合割合でワニスを作成し、300μmのアプリケーターを用いて、銅箔(F3−WS:古川サーキットホイル(株)商品名、電解銅箔、厚み18μm)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて170℃で30分間保持し、更に200℃で90分間保持して、60〜100μmの厚みの銅箔付硬化樹脂の樹脂金属被覆物を作成した。
上記積層体および樹脂金属被覆物について、JIS C6481に準じて測定した。
Claims (11)
- エポキシ樹脂と、下記一般式(I)で表され、ケトン系溶剤に対して60℃で0.5重量%以上の溶解度を有するビスイミドフェノール化合物(a)を含むエポキシ樹脂用硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物。
複数のR1〜R 5 は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Xは、単結合、−SO2−、−O−、−CO−、−C(CF3)2−、−S−、メチレン基、2,2−プロピリデン基またはオキシメチレン基を示す。) - 前記エポキシ樹脂用硬化剤が、前記ビスイミドフェノール化合物(a)100重量部と、該ビスイミドフェノール化合物(a)以外の化合物よりなる硬化性樹脂用硬化剤(b)900重量部以下とからなる請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記ビスイミドフェノール化合物(a)が、シクロヘキサノンに対して60℃で0.5重量%以上の溶解度を有するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、更に、硬化促進剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、更に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂および/または充填剤を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、プリント配線板に使用されることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
- 請求項8に記載の樹脂硬化物と導電性金属との積層体。
- 請求項8に記載の樹脂硬化物で金属を被覆してなる樹脂金属被覆物。
- 請求項8に記載の樹脂硬化物と強化繊維とを含む繊維強化複合材料。
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