JP5669753B2 - 歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は歯科医療分野において、金属、有機高分子、セラミックス、又はこれらの複合材料等からなる歯科用修復物を歯質に接着するために使用する歯科用接着性組成物に関する。
齲蝕等により歯質が損傷を受けた場合において、窩洞が比較的小さいときには、審美性、操作の簡略性、迅速性の点から、コンポジットレジンを用いた直接修復が行われる。一方、窩洞が比較的大きいときには、金属、セラミックス、レジン硬化物で作られた補綴物を用いた間接修復が行われる。
コンポジットレジンや補綴物等の歯科修復材は、歯質への接着性がないため、これらの歯質への接着は、重合性組成物からなる接着材(通常、メタクリレート系単量体が主成分)が用いられる。しかし、その歯質への接着力は十分ではなく、例えばコンポジットレジンであれば、その硬化に際して発生する内部応力(歯質とコンポジットレジンとの界面に生じる引っ張り応力)に打ち勝つだけの接着強度が得られていない。更に、噛み合いによって掛かる力に対しても耐えられる接着強度に達していないことが多かった。
このため、接着材の接着強度を向上させるために、使用に際して、
(a)硬い歯質(主にヒドロキシアパタイトを主成分とするエナメル質)をエッチング処理し、さらに、
(b)歯質の中へ、プライマーと呼ばれる接着性向上成分を浸透せしめる、
という二段階の前処理が歯面に対して行われている。
ここで、前記(a)の前処理に用いる材(エッチング処理用前処理材)としては、酸水溶液を用いるのが一般的であり、具体的には、リン酸、クエン酸、マレイン酸等の水溶液が用いられる。この処理により歯質は脱灰されて粗造化し、エナメル質やスポンジ状のコラーゲン繊維からなる象牙質が歯面に露出する。
しかるに、十分な接着強度を確保するためには、表面に露出したエナメル質や象牙質の内部まで接着成分を十分に浸透させる必要がある。このため、前記(b)の前処理(プライマー処理)がなされるわけであり、このような前処理材(プライマー)としては、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等の歯質への親和性に優れる親水性モノマーの有機溶液が用いられる。なお、このようなプライマー自体には、通常、重合開始剤は含有されていないが、プライマーの上に塗布される接着材の光硬化反応時に、該接着材で生じたラジカルが作用して、該プライマー中に配合されている重合性単量体成分が重合する。
こうした前処理が行われる中で、より高い接着強度と、前処理操作の煩雑さの軽減を目的として、歯質に対する接着性を有する重合性単量体を含有させた歯科用接着材組成物が種々開発されている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、重合性単量体成分の少なくとも一部として、酸性基含有重合性単量体を含む歯科用接着材組成物が提案されている。この接着材組成物では、リン酸基、カルボン酸基等の酸性基を分子中に有している酸性基含有重合性単量体が歯質(ヒドロキシアパタイトやコラーゲン)に対して高い親和性を示すため、高い接着強度が得られる。
また、特許文献3〜6には、上記酸性基含有重合性単量体が水と共存している接着材組成物が提案されている。このような接着材組成物は、酸水溶液のエッチング機能とプライマーの浸透促進機能を共に備えており、別個に前処理剤を塗布する必要が無く、1回の塗布操作のみで使用でき、操作性に優れた接着材(1ステップ型接着材)として有利である。また、このような酸性基含有重合性単量体と水とを含む接着性組成物は、接着材としてだけでなく、前記エッチング機能と浸透促進機能を兼ね備えたセルフエッチングプライマーとしても使用されている(例えば特許文献7および特許文献8を参照)。
こうしたなか、一層に高い接着強度を有する接着材やセルフエッチングプライマーとして、酸性基含有重合性単量体と水の含有に加えて、さらに多価金属イオン溶出性フィラー等を配合することにより、多価金属イオンを含有させた液状の接着性組成物が知られている(例えば、特許文献9および特許文献10を参照)。すなわち、これらの接着性組成物では、上記酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体が重合するだけでなく、上記多価金属イオンが、該酸性基含有重合性単量体の酸性基とイオン結合して補強構造を形成する。その結果、硬化体の機械的強度は大きく高められると推定されている。
ここで、上記多価金属イオンとしては、アルカリ土類金属イオンやアルミニウムイオン等が挙げられている。また、好適な酸性基含有重合性単量体としては、酸性度の高さや歯質への親和性の強さ等からリン酸系の酸性基を有するものが知られている。中でも、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート等のリン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体は2官能性であり、高い酸性度や歯質に対する親和性に加えて、化学結合による架橋構造を硬化体に付与し、硬化体の機械的強度を一層向上させることができるため最も好適である。こうしたリン酸水素ジエステル基を有する2官能性重合性単量体は、通常、単官能の酸性基含有重合性単量体((2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート等)との混合物として使用されている。
特開昭52−113089号公報 特開昭58−21687号公報 特開2004−352698号公報 特開平9−263604号公報 特開平10−236912号公報 特開2001−72523号公報 特開平7−82115号公報 特開2000−159621号公報 国際公開第2007/139207号パンフレット 国際公開第2008/102489号パンフレット
しかしながら、上記のような多価金属イオンを含む液状の接着性組成物では、接着力を高めるため、リン酸水素ジエステル基を有する酸性基含有重合性単量体が多量に配合されていると、保存安定性に問題を生じてしまう。すなわち、このような接着性組成物では、その保管中から、前記多価金属イオンと酸性基含有重合性単量体とのイオン結合が生成している。このようなイオン結合は、適度な生成であれば塗布性を高め、接着強度にも好影響であるが、過剰に生じると、逆に接着強度を低下させ、最終的には液状の接着性組成物がゲル化して使用不能(塗布できない)にまで至らしめる。
したがって、このようなゲル化の問題を生じさせないためには、特許文献9や特許文献10に記載されているように、水溶性有機溶媒を加えて、一定の条件を満足するように酸性基含有重合性単量体及び多価金属イオンの濃度を希釈し、接着性組成物の保存段階ではイオン結合が適度な範囲でしか生成しないように調整するのが効果的である。しかるに、酸性基含有重合性単量体としてリン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物が使用されている場合には、接着性組成物のゲル化を防止することは可能であるとしても、液状の接着性組成物が白濁するという特有の問題がある。
即ち、上記の白濁は、液状の接着性組成物の保存中に、該組成物中の水溶性有機溶媒に不溶な白色沈殿が生じることによるものであり、このような白濁は、外観を損ね、接着性組成物の商品価値を低下させるばかりか、該組成物中の多価金属イオン量の不足をもたらし、接着強度を低下せしめる。また、このような液状の接着性組成物は、一般に、滴ビン(dropping bottle)に収容されて保存され、使用時に該滴ビンの排液ノズルから排出されて塗布されるが、上記のような白濁が生じていると、排液ノズルでの詰まりを生じてしまうこともあり、その改善が必要である。
従って、本発明の目的は、酸性基含有重合性単量体として、リン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物を含み、更に、多価金属イオンを含有する液状の歯科用接着性組成物であって、保存時におけるゲル化は勿論のこと、沈殿物の生成(白濁)も効果的に防止された歯科用接着性組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記のようなリン酸系化合物と多価金属イオンとを含む歯科用接着性組成物について鋭意研究を重ねてきた結果、多価金属イオンと共に特定量のフッ化物イオンを存在させることにより、保存時におけるゲル化や白濁の問題が効果的に解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン(B)、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン(E)を含み、酸性を呈する歯科用接着性組成物において、
前記酸性基含有重合性単量体(A)の少なくとも35モル%がリン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物であり、
前記フッ化物イオン(E)及び多価金属イオン(B)の含有量が、下記式(1):
=V/TV (1)
式中、
は、組成物中に含まれるフッ化物イオン(E)の価数量であり、
TVは、組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数量であ
る、
で定義される価数比(R)が、0.2〜2.0の範囲を満足するように設定されていることを特徴とする歯科用接着性組成物が提供される。
本発明の歯科用接着性組成物においては、以下の態様が好適に採用される。
1.前記多価金属イオン(B)及び酸性基重合性単量体(A)の含有量が、下記式(2):
=TV/TV (2)
式中、
TVは、組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数量であ
り、
TVは、組成物中に含まれる酸性基重合性単量体(A)が有する酸
性基の総価数量である、
で定義される価数比(R)が0.1〜1.5の範囲を満足するように設定されていること。
2.前記リン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物が、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェートであること。
3.酸性基含有重合性単量体(A)の一部が、リン酸二水素モノエステル基を有するリン酸系化合物であること。
4.前記リン酸二水素モノエステル基を有するリン酸系化合物が、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートであること。
5.更に、酸性基を有していない非酸性重合性単量体(F)を含有していること。
6.水(C)の含有量が、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り10乃至120質量部であること。
7.水溶性有機溶媒(D)の含有量が、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り100〜600質量部であること。
8.非酸性重合性単量体(F)の含有量が、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り500質量部以下であること。
9.更に、有効量の光重合開始剤(G)を含み、歯科用接着材として使用されること。
10.歯科用接着材塗布前の歯質前処理材として使用されること。
また、本発明によれば、酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン(B)、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン(E)を含む歯科用接着性組成物の製造方法において、
前記酸性基含有重合性単量体(A)の少なくとも35モル%として、リン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物を使用し、
前記多価金属イオン(B)の供給源として、多価金属イオン放出性成分(B’)を使用し、
前記フッ化物イオン(E)の供給源として、フッ化物イオン放出性成分(E’)を使用し、
酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン放出性成分(B')、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)を混合し且つ該混合物を熟成することにより、下記式(1):
=V/TV
式中、
は、混合物中に含まれるフッ化物イオン(E)の価数量であり、
TVは、混合物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数量であ
る、
で表される価数比(R)が0.2〜2.0の範囲となるように、前記多価金属イオン放出性成分(B’)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)から多価金属イオン及びフッ化物イオンを放出させることを特徴とする歯科用接着性組成物の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、前記多価金属イオン放出性成分(B’)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)の何れもが、多価金属イオンとフッ化物イオンとを放出するマルチイオン放出性成分(B'E’)であってよい。
本発明の歯科用接着性組成物は、酸性基含有重合性単量体成分として、歯質に対する脱灰作用や親和性が高いリン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体を高濃度(35モル%以上)で含んでいると同時に、多価金属イオンを含有している。この結果、この組成物を硬化させると、得られる硬化体には、該多価金属イオンと酸性基含有重合性単量体の酸性基とのイオン結合による補強構造が形成され、歯質に対して高い接着強度が発現する。特に、酸性基含有重合性単量体(A)として使用されるリン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物が、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートである場合には、歯質に対する接着性は一層向上する。
また、本発明の歯科用接着性組成物は液状であり、各成分を混合してワンパッケージで保存することができ、このような保存形態において、ゲル化を生じることがないばかりか、白濁(溶媒に不溶な白色沈殿)を生じることもなく、白濁による接着強度や外観特性の低下を生じることはなく、更には、滴ビンの排出ノズルの目詰まり等の塗布特性の低下も有効に防止されている。
例えば、従来のワンパッケージ形態の歯科用接着性組成物においては、重合性単量体と多価金属イオンが共存する際、長期保存によるゲル化は抑制されていたものの、酸性基としてリン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体が使用されている場合には、白濁(即ち、溶媒に不溶な白色沈殿)の生成を抑制することができず、このような白濁により、接着強度、外観特性及び塗布特性等の低下が生じていたが、本発明では、このような不都合が有効に防止されている。
本発明の歯科用接着性組成物は、基本成分として、酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン(B)、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン(E)を含有するものであるが、成分(B)及び成分(E)のイオン成分以外に1価の金属イオンを含有していてもよいし、必要により、非酸性重合性単量体(F)、光重合開始剤(G)等を含有していてもよく、更には、歯科の分野においてそれ自体公知の各種配合剤が配合されていてよい。
<酸性基含有重合性単量体(A)>
本発明において用いる酸性基含有重合性単量体(A)は、重合により硬化してコンポジットレジンや各種の補綴物等に対する接着付与するために使用される成分であるが、後述する多価金属イオン(B)とイオン架橋を形成するために、分子中に重合性基(重合性不飽和基)と共に酸性基とを有しているものである。
例えば、重合性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エチニル基、スチリル基等を有しており、特に硬化速度の点から好ましい重合性不飽和基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基であり、最も好ましくはアクリロイル基、メタクリロイル基である。
(A−1)リン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体
本発明においては、上記の酸性基含有重合性単量体(A)の35モル%以上として、酸性基としてリン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物(以下単にリン酸ジエステル単量体と呼ぶ)を使用することが必要である。
リン酸水素ジエステル基は、下記式;
(−O−)P(=O)OH
で表わされる基であり、このようなリン酸から誘導される酸性基を有するリン酸ジエステル単量体(A−1)は、歯質の脱灰作用が高いばかりでなく、歯質に対して高い結合力を示す。また、エステル結合で結合している炭化水素基を2個有している。従って、この炭化水素基の何れもが重合性不飽和基を有している時には、この単量体(A−1)は2官能性であり、化学結合による架橋構造を硬化体に付与することができ、更なる接着強度の増大を図ることができる。例えば、リン酸から誘導される酸性基であっても、リン酸水素ジエステル基以外の酸性基(ホスフィン酸基、ホスホン酸基、ホスホン酸水素モノエステル基、リン酸二水素モノエステル基など)を有する重合性単量体では、リン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体(A−1)を用いた場合ほど高い接着強度は得られない。
即ち、酸性基としてリン酸水素ジエステル基を有するリン酸ジエステル単量体(A−1)を多量に使用することにより、歯質等に対する接着強度を向上させることができるのであるが、反面、係る重合性単量体(A−1)の使用は、溶媒に不溶な白色沈殿(白濁)の生成という特有の問題が生じている。
このため、本発明においては、接着強度の増大と白濁防止とを両立させるため、酸性基含有重合性単量体(A)の35〜60モル%、特に40〜60モル%、最も好ましくは45〜50モル%の量で、リン酸ジエステル単量体(A−1)を用いるのがよい。
本発明において、上記のリン酸ジエステル単量体(A−1)の好適例として、下記一般式で示される2官能性単量体又は1官能性単量体を挙げることができる。
尚、下記式において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、nおよびmは、それぞれ独立に1〜10の整数を表す。
2官能性単量体;
Figure 0005669753
1官能性単量体;
Figure 0005669753
上記一般式で示される2官能性単量体であるリン酸ジエステル単量体(A−1)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェン
ホスフェート
ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]ハイドロジェン
ホスフェート
ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシデシル]ハイドロジェン
ホスフェート
2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2’−(メタ)アクリロイル
オキシヘキシルハイドロジェンホスフェート
また、上記一般式で示される1官能性単量体であるリン酸ジエステル単量体(A−1)の具体例としては、以下の化合物等が挙げられる。
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェン
ホスフェート
6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェン
ホスフェート
また、上記で例示した2官能又は1官能性単量体以外に、下記の化合物を、リン酸ジエステル単量体(A−1)として使用することもできる。
3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェン
ホスフェート
ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}
ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート
本発明において、上記で例示したリン酸ジエステル単量体(A−1)は、それぞれ単独で又は二種以上を混合して用いることができるが、これらの中でも、前述の理由から、2官能性単量体が好ましい。沈殿物の発生をより顕著に抑制できるという点で、該2官能性単量体を示す一般式中のnおよびmが同じ整数である左右対象の化合物が、更に好適である。
本発明において、最も好適なリン酸ジエステル単量体(A−1)は、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェートである。
(A−2)他の酸性基含有重合性単量体
本発明の歯科用接着性組成物は、酸性基含有重合性単量体(A)の所定割合が前述したリン酸ジエステル単量体(A−1)である限りにおいて、他の酸性基含有重合性単量体(A−2)を含有していてもよく、このような重合性単量体(A−2)が有する酸性基としては、リン酸二水素モノエステル基、即ち、下記式;
−O−P(=O)(OH)
で表わされる基が代表的である。
上記のリン酸二水素モノエステル基を有する重合性単量体の例としては、以下の化合物を挙げることができる。
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート
6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェン
ホスフェート
10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェン
ホスフェート
1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェン
ホスフェート
これらの化合物の中では、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートが最も好ましい。
また、リン酸二水素モノエステル基以外の他の酸性基としては、
カルボキシル基(−COOH)
スルホン酸基(−SOH)
ホスフィニコ基{>P(=O)OH}
酸無水物基{(−CO)O}
酸ハロゲン化物基(−COX)
を挙げることができる。
このような酸性基を有する重合性単量体としては、以下の化合物を例示することができる。
酸性基として一つのカルボキシル基を有する化合物;
(メタ)アクリル酸
N−(メタ)アクリロイルグリシン
N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸
N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート
酸性基として複数のカルボキシル基を有する化合物;
11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸
10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸
12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸
4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート
4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート
4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート
酸性基としてホスフィニコ基を有する化合物;
ビニルホスホン酸
p−ビニルベンゼンホスホン酸
酸性基としてスルホン酸基を有する化合物;
2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
p−ビニルベンゼンスルホン酸
ビニルスルホン酸
また、上記で例示したカルボキシル基を一つ或いは複数有する化合物から誘導される酸無水物や酸ハロゲン化物も他の酸性基含有重合性単量体(A−2)として使用することができる。
本発明においては、前述した他の酸性基の中では、リン酸二水素モノエステル基が特に好ましく、係る酸性基を有する化合物を他の重合性単量体(A−2)としてリン酸ジエステル単量体(A−1)と組み合わせることが最適である。
即ち、リン酸二水素モノエステル基は、リン酸ジエステル基と同様に歯質に対して高い接着性を有するリン酸系の酸性基であり、しかも、リン酸二水素モノエステル基を有する他の単量体(A−2)は、リン酸ジエステル単量体(A−1)を製造する際に、副生物として生成するものであり、リン酸ジエステル単量体(A−1)との混合物として得ることもできるからである。さらに、リン酸二水素モノエステル基は2価の酸性基であり、後述する多価金属イオンとイオン結合する反応点が2箇所あるため、イオン結合による補強構造がより緻密になる効果も得られる。
よって、本発明においては、リン酸二水素モノエステル基を有する単量体(A−2)のイオン結合による補強効果と、前記リン酸ジエステル単量体(A−1)の化学結合による補強効果とが発揮されて接着強度が更に向上するという観点から、リン酸ジエステル単量体(A−1)とリン酸二水素モノエステル基を有する単量体(A−2)との混合物を酸性基含有重合性単量体(A)として用いるのが最も好ましい。
<多価金属イオン(B)>
本発明では、上述した酸性基含有重合性単量体(A)に含まれるリン酸ジエステル単量体(A−1)が多価金属イオン(B)と共存していることが重要であり、かかる多価金属イオン(B)がリン酸ジエステル重合性単量体(A−1)と共存することにより、イオン結合による補強構造が十分に発達し、高い接着強度が発現する。
この多価金属イオン(B)とは、前記酸性基含有重合性単量体(A)が有している酸性基(例えばリン酸水素ジエステル基)とイオン結合可能な2価以上の金属イオンであり、酸性基と結合可能である限り、任意の多価金属イオンであってよい。その具体例としては、以下の2価の金属或いは3価の金属のイオンを挙げることができる。
2価の金属;
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、
銅(II)、スズ(II)等。
3価の金属;
アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、
ランタン、セリウム、プラセオジウム、プロメチウム、ネオジウム、
サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、
ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、
イッテルビウム、鉄(III)、アクチニウム等。
本発明においては、接着強度の観点から上記で例示した多価金属のイオンの中で3価の金属のイオンが好適であり、特に、全多価金属イオン(B)の内の60モル%以上が3価の金属イオンであることが好ましい。
また、上記で例示した3価の金属のイオンの中では、特に、土類金属イオン、すなわち、周期律表の第3族及び第13族に属する金属のイオンが好ましい。具体的には、アルミニウムイオンや、イットリウム、スカンジウム及びランタノイド等の希土類金属のイオンが好ましく、これらの中でも、アルミニウムイオンおよびランタンイオンが最適である。
本発明の接着性組成物中に存在する多価金属イオン(B)の量は、特に制限されるものではないが、下記式(2):
=TV/TV (2)
式中、
TVは、組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数量であ
り、
TVは、組成物中に含まれる酸性基含有重合性単量体(A)が有す
る酸性基の総価数量である、
で定義される総価数量比(R)が0.1〜1.5、特に0.2〜0.9の範囲にあることが好ましい。
なお、前記総価数量比(R)を示す式(2)において、接着性組成物中に含まれる酸性基含有重合性単量体(A)が有する酸性基の総価数量(TV)は、下記式(2a):
TV=ΣP×A (2a)
式中、
kは、1,2,3……,nであり、
nは、組成物中に含まれる酸性基含有重合性単量体の種類の数であり

は、組成物中に含まれる各酸性基含有重合性単量体のモル数であ
り、
は、各酸性基含有重合性単量体が有する酸性基の価数である、
により算出される。
例えば、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート等のリン酸水素ジエステル単量体(A−1)では、酸性基の価数は1価になる。また、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート等のリン酸二水素ジエステル単量体(A−2)では、酸性基の価数は2価である。
また、接着性組成物中に含まれている酸性基含有重合性単量体(A)が、リン酸ジエステル単量体(A−1)の1種類のみの場合には、上記式(2a)により、このリン酸ジエステル単量体(A−1)について算出された価数量が総価数量(TV)となり、組成物中に該リン酸ジエステル重合性単量体を含めて複数種の酸性基含有重合性単量体が含有されている場合には、各酸性基含有重合性単量体について、価数量を算出し、その合計値が総価数量(TV)となる。
他方、該組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数量(TV)は、下記式(2b):
TV=ΣI×B (2b)
式中、
kは、1,2,3……,nであり、
nは、組成物中に含まれる金属イオンの種類の数であり、
は、該組成物中に含まれる各多価金属イオンのモル数であり、
は、各多価金属イオンの価数である、
により算出される。
本発明の歯科用接着性組成物中に存在する多価金属イオン(B)の種類および含有量は、固体成分を除いた後、誘導結合型プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて測定することにより求めることができる。具体的には、接着性組成物を水溶性有機溶媒で濃度1質量%まで希釈し、得られた希釈液をシリンジフィルター等で用いてろ過し、固体成分を除去する。次いで、得られた濾液のイオン種およびイオン濃度をICP発光分析装置で測定し、接着性組成物中の多価金属イオン種と量を算出する。
また、歯科用接着性組成物中の酸性基含有重合性単量体(A)が有する酸性基の種類および含有量は、分取用高速液体クロマトグラフィーにより組成物中から各酸性基含有重合性単量体を単離し、それぞれの酸性基含有重合性単量体の質量分析からその分子量を測定し、また、核磁気共鳴分光(NMR)により構造を決定することにより、酸性基の同定や含有量の算出を行うことができる。
例えば、31PのNMRを測定することで、その化学シフト値から、リン酸水素ジエステル基を同定することができる。即ち、リン酸水素ジエステル基を有する既知の化合物、具体的には、リン酸水素ジメチルエステルを標準物質として使用し、これらの標準物質について、同条件(希釈溶媒、濃度、温度)で31P−NMRを測定し、接着性組成物について測定された31P−NMRとを比較することにより化学シフト値を決定することができる。
尚、酸性基としてリン酸二水素モノエステル基を有する重合性単量体(A−2)の標準物質としてはリン酸二水素モノメチルエステルが使用される。
また、組成物中の酸性基含有重合性単量体の量は、分取用高速液体クロマトグラフィーにより単離した各単量体から、標準物質との検量線を作成し、上記ろ液の一部に内標準物質を添加して高速液体クロマトグラフィーで測定することで求めることができる。
本発明において、酸性基含有重合性単量体(A)と共存する多価金属イオン(B)の量は、先に述べた様に、前記式(2)で示される総価数量比(R)が0.1〜1.5、特に0.2〜0.9となるように調整されていることが好ましい。
即ち、接着性組成物中に存在している多価金属イオン(B)の一部が酸性基含有重合性単量体(A)とイオン結合を形成するのであり、多価金属イオン(B)の全量がイオン結合を形成するわけではなく、イオン結合を十分に発達させるためには、酸性基含有重合性単量体(A)が有する酸性基に対して、一定のバランスで多価金属イオン(B)が存在していることが必要である。
例えば、共存する多価金属イオン(B)の量が酸性基含有重合性単量体(A)に比して少なく、総価数量比(R)が上記範囲よりも小さい場合には、イオン結合の発達が不十分であり、高い接着強度が発現し難くなる。
また、酸性基含有重合性単量体(A)に比して多価金属イオン(B)の量が多く、総価数量比(R)が上記範囲よりも大きい場合には、酸性基の量が少ないためにイオン結合の発達が不十分であり、さらには、ゲル化などが生じ易く、酸性基含有重合性単量体(A)の脱灰作用が低下してしまい、やはり高い接着強度が発現し難くなる。また、たとえある程度に高い接着強度が発現したとしても、硬化物の接着耐久性が不満足となる恐れがある。即ち、硬化物の耐水性が不足しがちになってしまい、比較的短時間で接着強度の低下を生じてしまう。
尚、酸性基含有重合性単量体(A)として、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート(A−1)と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート(A−2)との混合物が使用され且つ多価金属イオン(B)の60モル%以上が3価の金属イオンである本発明の接着性組成物においては、この多価金属イオン(B)の量は、該混合物100質量部当り、20〜500mmolの範囲、より好ましくは30〜300mmolの範囲、最も好ましくは50〜150mmolの範囲から採択されるのがよい。
また、既に述べたように、多価金属イオン(B)としては、3価の金属イオンが好ましく、例えば、該3価の金属イオン以外の多価金属イオンの総価数量は、該接着性組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数量の50%以下、特に20%以下に制限されていることが好ましい。換言すると、3価の金属イオン(特に、土類金属イオン)の多価金属イオンに対する総価数量比(R)は、下記式(3):
=TV/TV (3)
式中、
TVは、組成物中に含まれる3価の金属イオンの総価数量であり、
TVは、前記のとおり、組成物中に含まれる多価金属イオンの総価
数量である、
で表されるが、この総価数量比(R)は、0.5以上、特に0.8以上の範囲であることが好適である。
<水(C)>
本発明において、水(C)は、各種成分を均一に分散させるための溶媒としての機能を有すると同時に、歯質の脱灰や、酸性基含有重合性単量体(A)と多価金属イオン(B)とのイオン結合の促進の為に必要である。
水(C)としては、貯蔵安定性及び医療用成分に有害な不純物を実質的に含まない蒸留水や脱イオン水が好適に使用される。このような水(C)は、接着性組成物が歯質に塗布されて脱灰が十分に進行した後は、エアブローにより乾燥されるため、通常、重合反応時には除去されている。
水(C)の量は、前記酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り、10〜120質量部、特に50〜100質量部が好適である。水(C)の配合量がこの範囲よりも少ないと、歯質の脱灰やイオン結合が不十分となり、高い接着強度が得難くなる。また、上記範囲よりも多量に使用されると、この接着性組成物を歯面に塗布した後のエアブローによって水分を除去することが困難となり、歯面に水が多く残存するようになり、十分な接着強度が得られなくなる恐れがある。
<水溶性有機溶媒(D)>
本発明において、水溶性有機溶媒(D)は、所謂希釈溶媒であり、接着性組成物の保存中に酸性基含有重合性単量体(A)と多価金属イオン(B)とがイオン結合を過剰に発達させることを防止し、該接着性組成物の増粘やゲル化を防止する機能を有する。即ち、水溶性有機溶媒(D)の配合により、接着性組成物を、全ての成分が配合された1液状態(即ち、ワンパッケージの形態)で保存することが可能となる。
また、水溶性有機溶媒(D)も、前記水(C)と同様に、接着性組成物が歯質に塗布された後のエアブローにより乾燥される。水溶性有機溶媒(D)および前記水(C)の乾燥により、酸性基含有重合性単量体(A)と多価金属イオン(B)とは濃縮され、この結果、両者の間のイオン結合はさらに促進して形成され、高い歯質への接着性が達成される。
従って、本発明において使用する水溶性有機溶媒(D)は、水溶性を有していると同時に、室温で揮発性を有するものでなければならない。
尚、本明細書において、「揮発性」とは、760mmHgでの沸点が100℃以下であり、且つ20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを言う。また、「水溶性」とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であることを言う。
このような揮発性の水溶性有機溶媒(D)としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これら有機溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。生体に対する毒性を考慮すると、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンが好適である。
水溶性有機溶媒(D)の配合量は、前記酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り、100〜600質量部であるのが好適であり、更に、歯質への接着性と増粘抑制効果のバランスを考慮すると、200〜500質量部が、より好ましい。水溶性有機溶媒(D)の配合量が、この範囲より少ない場合には、増粘の抑制が不十分となり、塗布性も低下し、歯質への接着強度が低下傾向を示す。また、上記範囲よりも多量に配合されると、過度のエアブローをしなければ水溶性有機溶媒(D)が歯面に残留し、十分な接着力を得難くなる。更には、接着成分の濃度が希薄となる為、エアブロー処理後に歯質表面に残存する成分中の接着成分が不足しがちとなり、十分な接着強度が得難くなる。
<フッ化物イオン(E)>
本発明の歯科用接着性組成物の最大の特徴は、前述した成分(A)〜(D)と共に、フッ化物イオン(E)を含んでいる点にあり、係るフッ化物イオンF(E)は多価金属イオン(B)の総価数量に対する価数比(R)が0.2〜2.0、特に0.3〜1.0の範囲となる量で接着性組成物中に存在している。
この価数比(R)は、下記式(1):
=V/TV (1)
式中、
は、組成物中に含まれるフッ化物イオンの価数量(モル数)であ
り、
TVは、前記のとおり、該組成物中に含まれる多価金属イオン(B
)の総価数量である、
で定義される。
上記式(1)において、フッ化物イオンFは1価の陰イオンであるため、その価数量Vは、組成物中に含まれるフッ化物イオンFのモル数と同じである。また、多価金属イオン(B)の総価数量TVは、前記式(2b)に示したとおり、各多価金属イオン(B)のモル数とその多価金属イオン(B)のイオン価数とを掛けた値(積値)の総和で求めることができる。
本発明の歯科用接着性組成物は、価数比(R)が上記範囲となるような量でフッ化物イオンF(E)が存在しているため、酸性基含有重合性単量体(A)としてリン酸水素ジエステル単量体(A−1)が使用されているにもかかわらず、保存中における白色沈殿物の発生が高度に抑制されている。その理由は、必ずしも定かではないが、本発明者らは、次のような作用によるものと推定している。
例えば、成分(E)のフッ化物イオンFは、酸性基含有重合性単量体(A)の酸性基と共に、多価金属イオン(B)にイオン結合する複数の陰イオンの一部となり、得られるイオン結合物(塩)に取り込まれ、この結果、該イオン結合物(塩)の結晶性が低下すると考えられる。つまり、フッ化物イオンFは、フッ化水素酸の共役塩基イオンであるところ、該フッ化水素酸はpKa値が3.17の比較的に強い酸である。このpKa値は、リン酸ジエステル基の第一解離に基づくpKa値(2.15)よりは大きいものの、イオン半径が小さいため、フッ化物イオンFの多価金属イオン(B)に対するイオン結合性は高い。また、分子量の大きさを考えれば、酸性基含有重合性単量体(A)が多価金属イオン(B)に対して複数のイオン結合を形成する際には大きな立体障害が生じる。
従って、接着性組成物中に一定量のフッ化物イオンFが配合されていると、上記のイオン結合物(塩)には、酸性基含有重合性単量体(A)の酸性基だけではなく、少なくとも一つのフッ化物イオンFが結合した状態になり易い。この結果、酸性基含有重合性単量体(A)と多価金属イオン(B)とのイオン結合物(塩)の結晶性が低下し、これにより該イオン結合物(沈殿)が析出し難い構造に変化し、かくして、保存中の白濁(不溶な白色沈殿の生成)が有効に防止されるものと推定される。
ここで、フッ化物イオンFの配合量が前述した範囲に満たない場合には、保存中における沈殿物の抑制効果が不十分となり、接着強度の低下や滴ビンに収容した際の排液ノズルの詰まり等の問題が生じるようになる。一方、フッ化物イオンFの配合量が上記範囲より多い場合にも、多価金属イオン(B)と酸性基含有重合性単量体(A)とが円滑にイオン結合できなくなり、歯質への接着強度が低下してしまう。
本発明において、接着性組成物中のフッ化物イオンFの量は、上述した範囲内である限り、特に制限されないが、例えば、酸性基含有重合性単量体(A)として、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート(A−1)と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート(A−2)との混合物が使用され且つ多価金属イオン(B)の60モル%以上が3価の金属イオンである接着性組成物では、該混合物(即ち、酸性基含有重合性単量体(A))100質量部当り、20〜800mmol、より好ましくは30〜300mmol、最も好ましくは50〜200mmolの範囲にあるのがよい。
本発明において、接着性組成物中のフッ化物イオンFの量は、陰イオンクロマトグラフィにより測定して求めることができる。具体的な方法を示すと、純水で濃度1%まで希釈し、得られた希釈液をシリンジフィルターで濾過し、固体成分を除去する。得られ濾液に含まれるフッ化物イオン濃度を陰イオンクロマトグラフィにより測定し、歯科用接着性組成物中のフッ化物イオン量を算出すれば良い。
<その他の成分>
先にも述べたように、本発明の歯科用接着性組成物には、上述した(A)〜(E)の必須成分以外にも、1価の金属イオンや、非酸性重合性単量体(F)、光重合開始剤(G)及び歯科の分野においてそれ自体公知の各種配合剤等が配合されていてよい。
他の金属イオン(1価金属イオン);
本発明の接着性組成物は、本発明の効果を大きく損なわない限りにおいて、多価金属イオン(B)やフッ化物イオン(E)以外のイオン成分として、1価金属イオンを含んでいてもよい。例えば、接着性組成物中に含まれるこのような1価金属イオンの総価数量は、該組成物中に含まれる全金属イオンの総価数量(多価金属イオン(B)の総価数量と1価の金属イオンの総価数量との合計値)に対して50%以下、特に30%以下の割合であるのが好適である。即ち、1価の金属イオンの全金属イオンに対する総価数量比(R)は、下記式(4):
=TV/TV (4)
式中、
TVは、組成物中に含まれる1価の金属イオンの総価数量であり、
TVは、組成物中に含まれる全金属イオンの総価数量である、
で表されるが、この総価数量比(R)は、0.5以下、特に0.3以下の範囲であることが好適である。
1価の金属イオンが多量に共存していると、1価の金属イオンと酸性基含有重合性単量体(A)の酸性基との中和反応によって、多価金属イオン(B)によるイオン結合の発達が損なわれ、接着強度の低下を招く虞がある。
非酸性重合性単量体(F);
また、本発明の歯科用接着性組成物には、重合性単量体成分として、前記酸性基含有重合性単量体(A)の他に、酸性基を有していない重合性単量体、即ち、非酸性重合性単量体(F)が配合されていても良い。このような非酸性重合性単量体(F)は、接着界面の強度及び前処理材の歯質に対する浸透性を調節し、歯質に対してより優れた接着強度を得る等の目的に応じて、種々のものを使い分ければ良い。
このような非酸性重合性単量体(F)としては、公知のものを何等制限無く使用できる。特に、その一例として、下記の各種(メタ)アクリレート系単量体を挙げることができる。
モノ(メタ)アクリレート系単量体;
メチル(メタ)アクリレート
エチル(メタ)アクリレート
グリシジル(メタ)アクリレート
2−シアノメチル(メタ)アクリレート
ベンジル(メタ)アクリレート
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート
アリル(メタ)アクリレート
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
グリシジル(メタ)アクリレート
3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート
グリセリルモノ(メタ)アクリレート
2−(メタ)アクリルオキシエチルアセチルアセテート
多官能(メタ)アクリレート系単量体;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート
プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート
ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート
2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]
プロパン
2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ
フェニル]プロパン
2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−
ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート
更に、非酸性重合性単量体(F)として、上記(メタ)アクリレート系単量体以外の重合性単量体を混合して重合することも可能である。これらの他の重合性単量体の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレン系化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物;を例示することができ、これらの重合性単量体は単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
また、疎水性の高い重合性単量体を用いる場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の両親媒性の単量体を使用し、水の分離を防ぎ、均一な組成とした方が接着強度の点で好適である。
本発明において、酸性基含有重合性単量体(A)の配合効果を十分に発揮させる観点から、このような非酸性重合性単量体(F)の配合量は、前記酸性基含有重合性単量体(A)100質量部に対して500質量部以下、より好ましくは350質量部以下であるのが好ましい。
光重合開始剤(G);
本発明の接着性組成物は、既に述べたように、歯質用前処理材や歯科用接着材として使用することができるが、歯科用接着材として使用する場合には、それ自体を硬化させるために、光重合開始剤(G)を配合することが必要である。
このような光重合開始剤(G)としては、自身が光照射によってラジカル種を生成する化合物や、これらに重合促進剤を加えた混合物が使用される。自身が光照射にともない分解して重合可能なラジカル種を生成する化合物としては、以下のものを例示することができる。
α−ジケトン類;
カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、
ナフトキノン、1,4−フェナントレンキノン、
3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等。
チオキサントン類;
2,4−ジエチルチオキサントン等。
α−アミノアセトフェノン類;
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
ブタノン−1、
2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
ブタノン−1、
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
プロパノン−1、
2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
プロパノン−1、
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
ペンタノン−1、
2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
ペンタノン等。
アシルフォスフィンオキシド誘導体;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペン
チルフォスフィンオキシド等。
また、上記した重合促進剤としては、第三級アミン類、バルビツール酸類、メルカプト化合物などが使用される。その具体例は以下の通りである。
第三級アミン類;
N,N−ジメチルアニリン、
N,N−ジエチルアニリン、
N,N−ジ−n−ブチルアニリン、
N,N−ジベンジルアニリン、
N,N−ジメチル−p−トルイジン、
N,N−ジエチル−p−トルイジン、
N,N−ジメチル−m−トルイジン、
p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、
m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、
p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、
p−ジメチルアミノアセトフェノン、
p−ジメチルアミノ安息香酸、
p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、
p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、
N,N−ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、
N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、
N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、
p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、
p−ジメチルアミノスチルベン、
N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、
4−ジメチルアミノピリジン、
N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、
N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、
トリブチルアミン、
トリプロピルアミン、
トリエチルアミン、
N−メチルジエタノールアミン、
N−エチルジエタノールアミン、
N,N−ジメチルヘキシルアミン、
N,N−ジメチルドデシルアミン、
N,N−ジメチルステアリルアミン、
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、
2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等。
バルビツール酸類;
5−ブチルバルビツール酸、
1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等。
メルカプト化合物;
ドデシルメルカプタン、
ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等。
光重合開始剤(G)の配合量は、接着性組成物を硬化できるだけの有効量であれば特に限定されず、適宜設定すれば良いが、一般的には、全重合性単量体[(A)+(F)]100質量部当り、0.1〜20質量部、特に1〜10質量部の範囲とするのがよい。0.1質量部未満では重合が不十分になり易く、20質量部を越えると、生成重合体の強度が低下し好ましくない。
その他の各種配合材;
本発明においては、上記の成分以外にも、歯科の分野においてそれ自体公知の各種配合剤を配合することができる。このような各種配合剤としては、無機充填剤(H)が代表的であり、更に、pH調整用酸性物質も広く使用されている。
無機充填剤(H)は、硬化後の接着性組成物(例えば、前処理材或いは接着材)の強度を高め、特に接着耐久性を向上させるために使用される。
この無機充填剤(H)は、前述した多価金属イオン(B)やフッ化物イオン(E)の供給源として使用される成分(例えば後述する成分(B’)、(E’)、(B’E’))とは、これらイオンを溶出するものでない点で異なっており、その具体例としては、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・アルミナなどの複合無機酸化物や、シリカなどを挙げることができる。
このような無機充填剤(H)の粒径は特に制限されないが、好ましくは1次粒径が5μm以下、より好ましくは0.001〜1μm、もっとも好ましくは0.01〜0.5μmである。また、粒子形状は何ら制限されず、不定形、球状の何れであってもよい。
これらの無機充填剤(H)は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で疎水化することで酸性基含有重合性単量体(A)とのなじみを良くし、機械的強度や耐水性をさらに向上させることができる。
このような疎水化に使用されるシランカップリング剤としては、以下の化合物が好適に用いられる。
メチルトリメトキシシラン、
メチルトリエトキシシラン、
メチルトリクロロシラン、
ジメチルジクロロシラン、
トリメチルクロロシラン、
ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、
ビニルトリクロロシラン、
ビニルトリアセトキシシラン、
ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)
シラン、
γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、
γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、
ヘキサメチルジシラザン等。
上述した無機充填剤(H)の配合量は、特に制限されることはないが、通常、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り、10〜200質量部の範囲、特に20〜100質量部の範囲が好適である。
また、本発明の接着性組成物は、酸性基含有重合性単量体(A)が配合されているため、酸性を呈しており、よって、そのままで歯質脱灰能を兼ね備えており、エッチング操作を行わなくても、高い接着強度が発揮される。さらに、前処理剤として使用することも可能である。従って、この利点を最大限に活かすためには、その酸性度が高いことが好ましく、例えば、接着性組成物のpHは、4.8以下、特に0.5〜4.0、特に好ましくは1.0〜3.0の範囲にあることが好適である。
ところで、酸性基含有重合性単量体(A)に対して、多価金属イオン(B)が比較的多く存在する場合や、該多価金属イオン(B)と共に1価の金属イオンも多量に共存する場合には、十分な酸性を呈さなくなることもある。このような場合には、pH調整用酸性物質によって組成物のpHを上記範囲に調整することが好適である。
尚、接着性組成物のpHは、10質量%の濃度でエタノールに混合し、中性リン酸塩pH標準液(pH6.86)とフタル酸塩pH標準液(pH4.01)で校正したpH電極を用いたpHメータにより、25℃で測定した値である。希釈に用いるエタノールは純度が99.5質量%以上であり、該エタノール単独のpH値が4.8〜5.0であればよい。
本発明において、上記のpH調整用酸性物質としては、酸性基含有重合性単量体(A)が有する酸性基、特に、リン酸水素ジエステル基よりも弱酸性の基を有する酸性化合物が使用される。
例えば、リン酸水素ジエステル基のpKa値は、水中25℃において2.15であり、これを越えるpKa値を有する弱酸性化合物が使用される。その理由は、リン酸水素ジエステル基よりも強酸性物質を使用すると、多価金属イオン(B)とリン酸ジエステル単量体(A−1)のリン酸水素ジエステル基とのイオン結合が形成されなくなってしまうからである。
また、フッ化物イオンFと多価金属イオン(B)とのイオン結合性を阻害せず、沈殿防止能を維持させるという観点から、用いるpH調整用酸性物質は、フッ化水素酸の上記pKa値3.17をも越えるpKa値の弱酸性化合物であることがより好ましい。
更に、歯質に対する脱灰機能が強いという観点から、pH調整用酸性物質のpKa値は、6.0以下、特に4.0以下であることが好適である。
このようなpH調整用酸性物質の適当な例としては、クエン酸、酒石酸、マロン酸、グリコール酸、乳酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メトキシ酢酸等が挙げられる。
上記のとおりpH調整用酸性物質は、リン酸水素ジエステル基よりも弱酸性物質であり、加えてこれらの弱酸性物質のイオンは、そのイオン半径の大きさから、フッ化物イオン(E)に比較して、多価金属イオン(B)に対するイオン結合性がかなり弱いのが普通である。
しかしながら、pH調整のために、必要以上に多量に配合されると、多価金属イオン(B)に対して、酸性基含有重合性単量体(A)の酸性基、特に、リン酸ジエステル単量体(A−1)のリン酸水素ジエステル基、さらにはフッ化物イオン(E)が円滑にイオン結合することを阻害するおそれがある。従って、このような酸性化合物を用いてpH調整を行う場合には、pH調整用酸性物質の含有量が、酸性化合物全体(酸性基含有重合性単量体(A)+フッ化物イオン(E)+pH調整用酸性物質)当り、15モル%以下、特に10モル%以下であることが好ましい。
また、無機充填剤(H)やpH調整用酸性物質以外の配合剤として、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機増粘材や、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等を、接着性組成物の性能を低下させない範囲で適宜配合することもできる。
<歯科用接着性組成物の製造>
本発明の歯科用接着性組成物は、前述した酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン(B)、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン(E)、並びに適宜配合される各種の成分を所定の量割合を満足するように混合し、熟成を行なって、前述した価数比(R)を所定の範囲に設定することにより製造される。この場合において、多価金属イオン(B)の供給源としては、多価金属イオン放出性成分(B’)が使用され、フッ化物イオン(E)の供給源としては、フッ化物イオン放出性成分(E’)が使用されるが、これらの成分(B’)及び(E’)として、多価金属イオンとフッ化物イオンとを放出するマルチイオン放出性成分(B’E’)を使用することもできる。
(1)多価金属イオン放出性成分(B’);
多価金属イオン放出性成分(B’)は、他の成分との混合により接着性組成物を調製したときに、価数比(R)を所定の範囲に設定し得るような量で前述した多価金属イオン(B)を放出するものであれば制限なく使用できる。
具体的には、多価金属単体、多価金属化合物、及び多価金属イオン溶出性フィラーを使用することができる。多価金属単体は、水に対する溶解性がかなり低く、前述した酸性基含有重合性単量体(A)に十分量溶解するまでに著しく長時間を要する(即ち、熟成に要する時間が著しく長い)。従って、本発明では、多価金属化合物及び多価金属イオン溶出性フィラーが好適である。
(1−1)多価金属化合物;
多価金属化合物としては、少なくともリン酸水素ジエステル基の第一解離に基づくpKa値より高いpKa値を有する酸、即ち、リン酸水素ジエステル基より弱酸の金属塩を用いることができる。リン酸水素ジエステル基よりも強酸の塩を用いた場合には、遊離した多価金属イオンとリン酸水素ジエステル重合性単量体のリン酸水素ジエステル基とのイオン結合が十分に生じないためである。
リン酸水素ジエステル基より弱酸の多価金属塩としては、炭酸塩、1,3−ジケトンのエノール塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、酢酸塩、メトキシ酢酸塩等が挙げられる。
尚、後述するように、これらの弱酸の多価金属塩の中には、水に対する溶解性が著しく低いものがあるため、予め予備実験等でその溶解性を確認し、所定の総価数量比(R)を満足する量で多価金属イオン(B)が放出されるか否かを確認した上で用いればよい。
また、多価金属化合物は、水酸化物や水素化物、アルコキシドも使用できる。
本発明においては、上述した多価金属化合物のなかでも、多価金属イオン(B)の溶出が早く(熟成時間が短い)、副生物が常温で気体或いは水や低級アルコール等であり、歯質の表面等に組成物を施したときに副生物を容易に除去でき、接着強度に悪影響を及ぼさないことから、水酸化物、水素化物、炭酸塩、或いは炭素数4以下の低級アルコキシドが好ましい。更に、取り扱いが容易な点から水酸化物、アルコキシド、炭酸塩がより好ましい。
本発明において、多価金属イオン放出性成分(B’)として特に好適に使用される多価金属化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
アルミニウムメトキシド、
アルミニウムイソプロポキシド、
アルミニウムヒドロキシド、
アルミニウムアセチルアセトナート、
ガリウムエトキシド、
インジウムエトキシド、
スカンジウムイソプロポキシド、
イットリウムイソプロポキシド、
ランタンメトキシド、
ランタンエトキシド、
ランタンイソプロポキシド、
ランタンヒドロキシド、
炭酸ランタン、
セリウムイソプロポキシド、
プラセオジウムイソプロポキシド、
プロメチウムイソプロポキシド、
ネオジウムイソプロポキシド、
サマリウムイソプロポキシド、
ユーロピウムアセチルアセトナート、
ガドリニウムアセチルアセトナート、
テルビウムアセチルアセトナート、
ジスプロシウムアセチルアセトナート、
ホルミウムアセチルアセトナート、
エルビウウムアセチルアセトナート、
ツリウムアセチルアセトナート、
イッテルビウムイソプロポキシド、
イッテルビウムアセチルアセトナート、
ルテチウムアセチルアセトナート等。
本発明においては、上記で例示した化合物の中でも、以下の多価金属化合物が最も好ましい。
アルミニウムメトキシド、
アルミニウムイソプロポキシド、
アルミニウムヒドロキシド、
ランタンメトキシド、
ランタンエトキシド、
ランタンイソプロポキシド、
ランタンヒドロキシド
炭酸ランタン等。
なお、アルミニウムやランタンの酸化物、及びカルボン酸塩は、重合性単量体または有機溶媒に不溶のものが多く、一般には、水の存在下であっても、前記した必要量の多価金属イオン(B)の溶出には極めて長時間を要するため、多価金属イオン源である多価金属イオン放出性成分(B’)としては不適である。特に、アルミニウムおよびランタンの酸化物は、水の存在下であっても殆ど対応する金属イオンを溶出しないため、多価金属イオン放出性成分(B’)としての使用は通常困難である。
(1−2)多価金属イオン溶出性フィラー;
多価金属イオン(B)の供給源として使用される多価金属イオン溶出性フィラーは、酸性を呈する歯科用接着性組成物中で、多価金属イオン(B)を溶出させることができ、且つリン酸水素ジエステル基の第一解離に基づくpKa値以下のpKa値を有する強酸の共役塩基イオンを実質的に溶出させないフィラーである。
一般に、このようなフィラーとしては、鎖状、層状、網様構造の骨格を有するガラス類(例えば、酸化物ガラス)であって、その骨格の隙間に少なくとも多価金属イオン(B)を保持するものが好適に使用される。例えば、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラスなどの酸化物ガラスなどである。また、多価金属イオンを含んでいるソーダ石灰ガラスなども使用することができる。
上述した多価金属イオン溶出性フィラーは、形状が特に限定されるものではなく、粉砕により得られる不定形粒子、あるいは球状粒子でもよく、必要に応じて板状、繊維状等の粒子を混ぜることもできる。その平均粒子径は、均質な接着性組成物を容易に製造できるという観点から、例えばレーザ回折散乱法で測定した体積換算での平均粒子径(D50)が0.01μm〜5μm、特に0.05μm〜3μm、最も好適には0.1μm〜2μmの範囲であるのがよい。
更に、価数比(R)を前述した範囲に容易に調整できるという観点から、多価金属イオン溶出性フィラーは、10重量%マレイン酸水溶液10ml中に該フィラー0.1gを温度23°Cで24時間浸漬保持した時の多価金属イオン溶出量が、5.0〜500meq/g−フィラー、特に10〜100meq/g−フィラーであるものが好適である。
ここで、上記の多価金属イオン溶出量(meq)は、1gの酸性基含有重合性単量体(A)にイオン結合できる多価金属イオン(B)の量(ミリ当量)に相当するものである。
また、多価金属イオン溶出フィラーから溶出された酸性基含有重合性単量体(A)1g当りの多価金属イオン(B)の総価数量は、各多価金属イオン(B)の酸性基含有重合性単量体(A)1g当りの量(mmol/g)に、それぞれの多価金属イオンの価数をかけて得られる値の総和となる。
また、各多価金属イオン濃度は、ICP発光分光分析や原子吸光分析等で測定することができる。
多価金属イオン溶出フィラーからの多価金属イオン(B)の溶出は、通常、多価金属イオン溶出フィラーを酸性基含有重合性単量体(A)に配合後、室温(23℃)にて3時間〜12時間も経過させればほぼ全てが溶出する。その溶出量が本発明で必要とする量よりも多すぎる場合には、一般に知られている方法により多価金属イオン溶出フィラーを前処理し、溶出特性を制御するのが好ましい。すなわち、代表的な方法として、多価金属イオン溶出フィラーを酸で適度に前処理することにより、フィラー表層部の多価金属イオン(B)をあらかじめ除去し、その溶出総量を低下させる方法が挙げられる。
また、本発明において、多価金属イオン溶出フィラーが、フルオロアルミノシリケートガラスなどのフッ化物イオン(E)の供給源にもなる、後述するマルチイオン放出性成分(B'E’)の場合、該フッ化物イオン(E)の溶出性は、上記多価金属イオン(B)の溶出性に比べると大きく低下するものになる。このため多価金属イオン溶出フィラーをそのまま酸性基含有重合性単量体(A)に配合したのでは、たとえ粒子にフッ化物イオンは十分量が含有されていたとしても、前記多価金属イオン(B)の場合とは逆にフッ化物イオン(E)は不足したものになり易い。従って、やはりフッ化物イオン(E)の溶出特性を制御するのが好ましく、これも上記多価金属イオン溶出フィラーを酸で前処理する同じ操作により達成される。すなわち、多価金属イオン溶出フィラーを酸で適度に前処理することにより、フッ化物イオンの溶出し易さを大きく向上させることが可能になる。
この方法に用いられる酸は塩酸、硝酸等の無機酸、マレイン酸、クエン酸等の有機酸など一般的に知られている酸が用いられる。酸の濃度、処理時間等は除去する多価金属イオンの量や、向上させるフッ化物イオンの溶出性によって適宜決定すればよい。酸処理は、過剰に処理し過ぎると、多価金属イオン(B)、さらにはフッ化物イオン(E)も除去し過ぎたものになり本発明の規定値を満足しなくなるため注意を要する。
また、上述したガラス類からなる多価金属イオン溶出性フィラーは、多価金属イオン(B)が溶出した後は、一般に、多孔性の粒子となり、そのまま組成物中に残留させておくと、補強材として硬化体の強度の向上に寄与する。しかし、このような多孔性粒子は、凝集したり或いは粒径が大きい等のために、組成物中で沈降してしまうこともあり、場合によっては、濾別等により取り除くことが好ましい。
(2)フッ化物イオン放出性成分(E’);
フッ化物イオン(E)の供給源であるフッ化物イオン放出性成分(E’)は、他の成分との混合により接着性組成物を調製した時、価数比(R)を所定の範囲に設定し得るような量でフッ化物イオンFを放出するものであり、例えば、フッ化水素酸、アルカリ金属フッ化物、フッ化アンモニウム類等が使用される。
特に好ましいフッ化物イオン放出性成分(E’)は、アルカリ金属フッ化物、具体的には、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム等である。
フッ化物イオン放出性成分(E’)として、上記アルカリ金属フッ化物を使用する場合、フッ化物イオンの他に、1価の金属イオンであるアルカリ金属イオンが組成物中に放出される。前述したとおり、斯様な1価の金属イオンは、その総イオン価数量が、組成物中に含まれる全金属イオンの総価数量(多価金属イオンの総価数量と1価の金属イオンの総価数量との合計値)に対して0.5以下、特に0.3以下の割合になるように、フッ化物イオン放出性成分(E’)の配合量を調整するのがよい。
(3)マルチイオン放出性成分(B’E’)
本発明においては、多価金属イオン(B)とフッ化物イオン(E)とが、共通の放出源から供給されるものであってもよい。即ち、前述した多価金属イオン放出成分(B’)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)に代えて、或いはこれらの成分と共に、多価金属イオンとフッ化物イオンとを放出し得るマルチイオン放出性成分(B’E’)を使用することができる。
このような成分(B’E’)としては、フルオロアルミナシリケートガラス、フッ化ジルコニウムガラス等のフッ化物ガラス;フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属フッ化物;フッ化アルミニウム、フッ化イットリウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム等の土類金属フッ化物;フッ化亜鉛;等を挙げることができる。
尚、上記フッ化物ガラスとしては、フルオロアルミナシリケートガラスを用いることが好ましく、該フルオロアルミノシリケートガラスは、歯科用セメント、例えば、グラスアイオノマーセメント用として使用される公知のものが使用できる。フルオロアルミノシリケートガラスには、多価金属イオンとして、アルミニウムイオンが多量に含有されており、その他、場合によりランタン等のその他の多価金属イオンも含まれている。
代表的なフルオロアルミノシリケートガラスの組成は、以下の通りである。
珪素:10〜33質量%
アルミニウム:4〜30質量%
アルカリ土類金属:5〜36質量%
アルカリ金属:0〜10質量%
リン:0.2〜16質量%
フッ素:2〜40質量%
酸素:残量
本発明において、最も好適に使用されるフルオロアルミノシリケートガラスの組成は、以下の通りである。
珪素:15〜25質量%
アルミニウム及びランタン:10〜40質量%
アルカリ土類金属:5〜10質量%
アルカリ金属:0〜1質量%
リン:0.5〜5質量%
フッ素:4〜40質量%
酸素:残量
更に必要に応じて、上記アルミニウムの一部をスカンジウム、イットリウム、イッテルビウム等、他の土類金属で置き換えたものも好適に使用可能である。
尚、上記のフッ化物ガラスからの多価金属イオンやフッ化物イオンFの溶出量は、前記したとおりフッ化物イオンが多価金属イオンに比べて溶出し難いため、前述した多価金属イオン溶出性フィラーと同様の各成分を混合した後、室温(23℃)で10時間以上、好適には12時間以上熟成することにより、一定の関係値に安定する。なお、フッ化物ガラスは、前述したように酸処理等の前処理によりフッ化物イオンが溶出し易く調整されたものが使用される。また、この熟成時間は、適宜加熱することにより短縮することができる。多価金属イオン及びフッ化物イオンの溶出量から算出される価数比(R)が所定の範囲の値(0.2〜2.0)とならない場合には、適宜、前述した多価金属イオン放出成分(B’)やフッ化物イオン放出成分(E’)を混合し、価数比(R)が所定の範囲となり得るように設定することができる。
また、フッ化物ガラスは、前述した多価金属イオン溶出性フィラーと同様の平均粒子径(D50)を有する粉末の形で使用することが好適である。
(4)各成分の混合及び熟成;
本発明の歯科用接着性組成物は、上述した多価金属イオン放出性成分(B’)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)(及び/又はマルチイオン放出性成分(B’E’))を、他の基本成分(A)、(C)及び(D)、並びに適宜使用される他の成分と、前述した量割合で均一に混合し、熟成することにより得られる。
各成分の混合に際して、多価金属イオン(B)やフッ化物イオン(E)の供給源として使用される多価金属イオン放出性成分(B’)、フッ化物イオン放出性成分(E’)或いはマルチイオン放出性成分(B’E’)の量は、所定時間の熟成により放出され得る多価金属イオンやフッ化物イオンの量及び他の成分の配合量に応じて、価数比(R)が所定の範囲の値となり、さらに好ましくは、総価数量比(R)も所定の範囲の値となるように設定される。
また、各成分の混合方法は、歯質用前処理材や歯科用接着材で採用されている公知の方法に従えばよく、一般的には、赤色光などの不活性光下に、配合される全成分を秤取り、均一溶液になるまでよく攪拌すればよい。
また、各成分を混合した後の熟成は、多価金属イオン(B)やフッ化物イオン(E)の供給源(前記成分(B’)、(E’)、(B’E’))の種類や組成に応じて、少なくとも放出し得るイオン量の全量が放出されるまでの時間、適宜、加熱或いは攪拌下に各成分の混合物を保持しておけばよい。この場合、各種フィラーやガラスが使用されている場合には、先にも述べたように、室温(23℃)で10時間以上、好適には12時間以上であり、30〜40℃程度に加熱することにより、この熟成時間を短縮することができる。また、金属塩などが供給源として使用されている場合には、熟成時間は室温下で数分程度であり、アルコキシドなどが使用されている場合でも、室温下で数分程度である。何れも、予め試験を行なって適度な熟成時間を決定しておけばよい。
このようにして製造される本発明の歯科用接着性組成物は、1液の状態、即ち、ワンパッケージの形態であるため、使用に際して、各成分を混合する面倒な操作が必要なく、歯科医師などの労力を軽減し、しかも、安定して一定の接着強度を確保することができる。
<歯科用接着性組成物の使用>
このようにして得られる本発明の接着性組成物は、光重合開始剤(G)が配合されているものは、それ自体で歯科用接着材、例えば、コンポジットレジン用接着材、ブラケット用接着材、補綴物用接着材として使用することができる。
また、光重合開始剤(G)が配合されていないものは、歯質前処理剤として使用される。この前処理剤は、歯質のエッチング処理及び歯質への浸透促進処理の両方の機能を備えており、セルフエッチングプライマーとして、コンポジットレジンやブラケットの他、補綴物等の歯質への接着に利用される。即ち、補綴物等を歯質に接着するために用いる接着材の塗布前に、この前処理剤を歯質に塗布して使用すればよい。
上記の歯科用接着材は、化学重合型でも良いが、コンポジットレジン用およびブラケット用接着材については操作簡便性等から光硬化型が好ましい。光硬化型の歯科用接着材は、従来公知のものが何ら制限無く利用できるが、例えばコンポジットレジン用のものとしては、特開平6−9327号公報、特開平6−24928号公報、特開平8−319209号公報等に記載のものが使用できる。また、ブラケット用接着材としては、例えば、特表2005−529637号公報、特表2004−510796号公報、特開平5−85912号公報等に記載のものが使用できる。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。実施例中に示した、略称、略号については以下の通りである。
酸性基含有重合性単量体(A)
(以下、「酸性単量体」と呼ぶ。)
リン酸水素ジエステル単量体(A−1)
PM2:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェン
ホスフェート
6PPH:6−メタクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェン
ホスフェート
その他の酸性基含有重合性単量体(A−2)
PM1:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェン
フォスフェート
MAC−10:11−メタクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカ
ルボン酸
非酸性重合性単量体(F)
(以下、「非酸性単量体」と呼ぶ。)
BisGMA:2,2′−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリル
オキシプロポキシ)フェニル]プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
多価金属イオン放出性成分(B’)
Al(O−i−Pr):アルミニウムトリイソプロポキシド
La(O−i−Pr):ランタントリイソプロポキシド
フッ化物イオン放出性成分(E’)
FNa:フッ化ナトリウム
マルチイオン放出性成分(B’E’)
MF1:
フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー
、トクヤマデンタル社製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイ
ミル、三井鉱山社製)を用いて平均粒径0.5μmまで粉砕し、そ
の後粉末1gに対して、20gの5.0N塩酸でフィラー表面を1
5分間処理して得た、イオン溶出性フィラー。
平均粒径:0.5μm
24時間溶出イオン量:27meq/g−フィラー
MF2:
フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、
トクヤマデンタル社製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミ
ル、三井鉱山社製)を用いて平均粒径0.5μmまで粉砕し、その
後粉末1gに対して、20gの5.0N塩酸でフィラー表面を40
分間処理して得た、イオン溶出性フィラー。
平均粒径:0.5μm
24時間溶出イオン量:10meq/g−フィラー
MF3:
フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、
トクヤマデンタル社製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミ
ル、三井鉱山社製)を用いて平均粒径0.5μmまで粉砕した、イ
オン溶出性フィラー。
平均粒径:0.5μm
24時間溶出イオン量:50meq/g−フィラー
水溶性有機溶媒(D)
IPA:イソプロピルアルコール
光重合開始剤(G)
CQ:カンファーキノン
DMBE:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
無機充填剤(H)
F1:粒径0.02μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理
物)
F2:粒径0.4の球状シリカ−ジルコニア(γ−メタクリロイルオキ
シプロピルトリメトキシシラン疎水化処理物)と、粒径0.08
μmの球状シリカ−チタニア(γ−メタクリロイルオキシプロピル
トリメトキシシラン疎水化処理物)との質量比70:30の混合物
また、以下の実施例および比較例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(1)多価金属イオンの測定方法
本発明の接着性組成物を調整し、24時間攪拌した後、100mlのサンプル管に0.2gを計り取り、IPAを用いて0.1質量%に希釈した。この液をシリンジフィルターでろ過し、ろ液をICP(誘導結合型プラズマ)発光分光分析を用いて、重合性単量体100質量部当りに含まれる各金属イオン濃度(mmol/g)を測定した。なお、各金属イオン濃度は、各イオンの標準試料(1ppm、2.5ppm、6ppm)から求めた検量線を用いて換算した。
(2)フッ素イオンの測定方法
接着性組成物2gと水100g、ジエチルエーテル10gを激しく混合し、静置後、水相をシリンジフィルターでろ過し、ろ液をイオンクロマトグラフィにより測定し、重合性単量体100質量部当りに含まれるフッ素イオン濃度(mmol/g)を測定した。なお、フッ素イオン濃度は、フッ素イオンの標準試料(10ppm、25ppm、50ppm)から求めた検量線を用いて換算した。
(3)歯質接着性の評価
(a)接着試験片の作成;
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、流水下、#600のエメリーペーパーで唇面(labial face)に平行になるようにエナメル質および象牙質平面を削り出して強度試験用歯を作製した。
次に、強度試験用歯の上記面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、エナメル質および象牙質のいずれかの面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定し、ついで厚さ0.5mm直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを上記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。
この模擬窩洞内に試料の接着性組成物を塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥し、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射した。更にその上に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣ、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、接着試験片を作製した。
(b)接着試験方法
上記接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引張り、歯牙とコンポジットレジンの引張り接着強度を測定した。1試験当り、4つの試験片について、引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を、エナメル質或いは象牙質に対する接着強度として、歯質接着性を評価した。
(4)保存安定性試験
(a)塩析出性の評価
接着性組成物を調整後、20mlガラス瓶に、10g量り入れ、37℃インキュベーター内に保管した。接着性組成物から、白色固体析出の有無を経時的に目視評価することで、該塩の析出時期を下記3段階にて評価した。
◎:2ヶ月後においても塩析出が見られなかった。
○:僅かに析出した(ガラス瓶底に沈降)。析出するまでに要した日数
を記録した。
×:3日以内に白色固体が大量に析出した(液が白濁)。
(b)ゲル形成性の評価
試料の接着性組成物を、20mlガラス瓶に、10g量り入れ、37℃インキュベーター内に保管した。接着性組成物のゲル化の有無を経時的に目視評価することで、ゲル形成時期を下記3段階にて評価した。
◎:2ヶ月後においても液のゲル化が見られなかった。
○:1ヶ月以上液がゲル化しなかった。ゲル化するまでに要した日数を
記録した。
×:3日以内に液がゲル化した。
<実施例1>
下記処方により、各成分を量りとり、室温(23℃)で24時間攪拌混合して歯科用接着材を調製した。
10gのPM2/リン酸水素ジエステル単量体(A−1)
2gのAl(O−i−pr)/多価金属イオン源(B’)
0.4gのFNa/フッ化物イオン源(E’)
34gのIPA/水溶性有機溶媒(D)
7.6gの水
0.4gのCQおよび0.4gのDMBE/光重合開始剤(G)
この接着材について、多価金属イオン量、及びフッ素イオン量の測定した後、この接着材についての接着試験を行いエナメル質および象牙質に対する接着性を評価し、更に保存安定性試験を行い、塩析出性とゲル形成性について評価を行った。接着材の組成を表1に、各種の測定結果を表2、3に示した。
<実施例2〜22>
実施例1の方法に準じ、表1に示した組成の歯科用接着材を調製した。
得られた接着材について、多価金属イオン量及びフッ素イオン量を測定した後、実施例1と同様にして接着性および保存安定性の試験を行い、その結果を表2、3に示した。
<比較例1〜12>
実施例1の方法に準じ、表4に示した組成の接着材を調製した。
得られた接着材について、多価金属イオン量、及びフッ素イオン量を測定した後、実施例1と同様にして接着性および保存安定性の試験を行い、その結果を表5、6に示した。
Figure 0005669753
Figure 0005669753
Figure 0005669753
Figure 0005669753
Figure 0005669753
Figure 0005669753
本発明例である実施例1〜22の歯科用接着材は、いずれも、エナメル質や象牙質に対する接着性、塩析出性およびゲル形成性について良好な結果を示した。
これに対して、比較例1〜比較例3の歯科用接着材は、酸性基含有重合性単量体(A)として、リン酸水素ジエステル単量体(A−1)を含有しておらず、その他の酸性基含有重合性単量体(A−2)のみを含んでいる例であるが、塩の析出およびゲルの形成は抑制されているものの、多価金属イオン(B)とその他の酸性基含有重合性単量体(A−2)とのイオン架橋および硬化体の架橋構造の形成が不十分なためか、歯質に対する接着性が低下している。なお、比較例2は、さらにフッ化物イオン(E)を配合していない例であるが、塩の析出は同様に良好に抑制されており、これにより、かかる塩の析出の問題が、酸性基含有重合性単量体(A)としてリン酸水素ジエステル単量体(A−1)を用いた場合に特有に生じる問題であることが確認できた。
また、比較例4はリン酸水素ジエステル単量体(A−1)の配合量が本発明で示される要件を満たしていない場合であるが、歯質に対する接着性が不十分である。
比較例5は多価金属イオン(B)を全く含まない場合であるが、イオン架橋による接着性向上効果が得られず、歯質接着性が大きく低下している。
比較例6はフッ化物イオン(E)を全く含まない場合であるが、酸性基含有重合性単量体と多価金属イオンから成る塩を大量に析出し、歯質に対する接着性も低下している。
比較例7および比較例8は、価数比(R)が所定の範囲内(0.2〜2.0)となるようにフッ化物イオン(E)を含んでいない。例えば、比較例7は、フッ化物イオン(E)を十分に含んでおらず、このため、酸性基含有重合性単量体(A)と多価金属イオン(B)から成る塩の生成を抑制できず、歯質への接着強度も低い。また、比較例8は、フッ化物イオン(E)を多く含み過ぎているため、多価金属イオン(B)と酸性基含有重合性単量体(A)とが円滑にイオン結合できず、やはり歯質への接着強度が低下している。
比較例9は、水(C)を全く含まない場合であるが、多価金属イオン(B)が溶出されない為、接着性の向上効果が全く得られない。
比較例10は、水溶性有機溶媒(D)を全く含まない場合であるが、液の増粘による塗布性の低下を伴い、歯質への接着性が低下傾向を示した。また、塩の析出および、液のゲル化も生じた。
比較例11は、多価金属イオン(B)およびフッ化物イオン(E)の溶出源として、酸処理を40分間施したマルチイオン放出性成分(B’E’)MF2を用いた場合であるが〔実施例13〜16で使用しているマルチイオン放出性成分(B’E’)MF1の酸処理時間15分〕、長い酸処理によってフッ化物イオン(E)が多く除去されてしまった為、フッ化物イオンの溶出量が少なく、本発明要件である価数比(R)が所定の範囲(0.2〜2.0)を満たしていないものであった。このため、酸性基含有重合性単量体(A)と多価金属イオン(B)から成る塩の生成を抑制できず、得られた接着材では塩の析出が生じた。
比較例12は、多価金属イオン(B)およびフッ化物イオン(E)の溶出源として、酸処理を施していないマルチイオン放出性成分(B’E’)MF3を用いた場合であるが、フッ化物イオンの溶出速度が極めて遅い為、ほとんど溶出されず、本発明要件である価数比(R)が所定の範囲(0.2〜2.0)を満たしていない。このため得られた接着材では、塩の析出が生じた。

Claims (13)

  1. 酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン(B)、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン(E)を含み、酸性を呈する歯科用接着性組成物において、
    前記酸性基含有重合性単量体(A)の少なくとも35モル%がリン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物であり、
    前記フッ化物イオン(E)及び多価金属イオン(B)の含有量が、下記式(1):
    =V/TV (1)
    式中、
    は、組成物中に含まれるフッ化物イオン(E)の価数量で
    あり、
    TVは、組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数
    量である、
    で定義される価数比(R)が、0.2〜2.0の範囲を満足するように設定されていることを特徴とする歯科用接着性組成物。
  2. 前記多価金属イオン(B)及び酸性基重合性単量体(A)の含有量が、下記式(2):
    =TV/TV (2)
    式中、
    TVは、組成物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数
    量であり、
    TVは、組成物中に含まれる酸性基重合性単量体(A)が有
    する酸性基の総価数量である、
    で定義される価数比(R)が0.1〜1.5の範囲を満足するように設定されている請求項1記載の歯科用接着性組成物。
  3. 前記リン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物が、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェートである請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  4. 酸性基含有重合性単量体(A)の一部が、リン酸二水素モノエステル基を有するリン酸系化合物である請求項3に記載の歯科用接着性組成物。
  5. 前記リン酸二水素モノエステル基を有するリン酸系化合物が、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートである請求項4に記載の歯科用接着性組成物。
  6. 更に、酸性基を有していない非酸性重合性単量体(F)を含有している請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  7. 水(C)の含有量が、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り10乃至120質量部である請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  8. 水溶性有機溶媒(D)の含有量が、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り100〜600質量部である請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  9. 非酸性重合性単量体(F)の含有量が、酸性基含有重合性単量体(A)100質量部当り500質量部以下である請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  10. 更に、有効量の光重合開始剤(G)を含み、歯科用接着材として使用される請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  11. 歯科用接着材塗布前の歯質前処理材として使用される請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  12. 酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン(B)、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン(E)を含む歯科用接着性組成物の製造方法において、
    前記酸性基含有重合性単量体(A)の少なくとも35モル%として、リン酸水素ジエステル基を有するリン酸系化合物を使用し、
    前記多価金属イオン(B)の供給源として、多価金属イオン放出性成分(B’)を使用し、
    前記フッ化物イオン(E)の供給源として、フッ化物イオン放出性成分(E’)を使用し、
    酸性基含有重合性単量体(A)、多価金属イオン放出性成分(B')、水(C)、水溶性有機溶媒(D)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)を混合し且つ該混合物を熟成することにより、下記式(1):
    =V/TV
    式中、
    は、混合物中に含まれるフッ化物イオン(E)の価数量で
    あり、
    TVは、混合物中に含まれる多価金属イオン(B)の総価数
    量である、
    で表される価数比(R)が0.2〜2.0の範囲となるように、前記多価金属イオン放出性成分(B’)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)から多価金属イオン及びフッ化物イオンを放出させることを特徴とする歯科用接着性組成物の製造方法。
  13. 前記多価金属イオン放出性成分(B’)及びフッ化物イオン放出性成分(E’)の何れもが、多価金属イオンとフッ化物イオンとを放出するマルチイオン放出性成分(B'E’)である請求項12に記載の歯科用接着性組成物の製造方法。
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