JP5279404B2 - 歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は歯科医療分野において、金属、有機高分子、セラミックス、又はこれらの複合材料等からなる歯科用修復物と歯質とを接着するための歯科用接着性組成物に関する。
齲蝕等により損傷を受けた歯質において、それが、初中期の比較的小さい窩洞の場合には、審美性、操作の簡略性や迅速性の点から、コンポジットレジンによる直接修復を行うことが多い。一方、比較的大きな窩洞の修復には、金属やセラミックス、或いは歯科用レジンで作られた補綴物が多用されている。
これらコンポジットレジンや補綴物等の歯科用修復物は歯質への接着性を有していないため、これを歯質へ接着させるには、通常、メタクリレート系重合性単量体を主成分とする重合性単量体組成物からなる接着材が併用される。しかし、その歯質への接着力は十分ではなかった。例えば、コンポジットレジンの接着用であれば、該コンポジットレジンの硬化に際して発生する内部応力、即ち、歯質とコンポジットレジンとの界面に生じる引っ張り応力に打ち勝つだけの接着強度に達していないことが多かった。更に、咬合によって掛かる力に対しても耐えられる接着強度に達していないことが多かった。
以上から、これら接着材の接着強度を向上させるために、その使用に先立って、歯面に対して次のような前処理を施している。すなわち、1)硬い歯質(主にヒドロキシアパタイトを主成分とするエナメル質)をエッチングするための前処理材を塗布し、さらに、2)プライマーと呼ばれる、歯質中に対する浸透促進剤としての前処理材の塗布を行っている。
ここで、前者のエッチング用の前処理材としては、歯の表面を脱灰する酸水溶液が一般的であり、リン酸、クエン酸、マレイン酸等の水溶液が用いられている。
一方、後者のプライマーとしては、酸水溶液により脱灰して粗造化したエナメル質表面や、脱灰後に象牙質表面に露出したスポンジ状のコラーゲン繊維の微細な隙間に接着材を浸透させる必要があるため、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等の上記歯質との親和性の良い親水性の(メタ)アクリレート系重合性単量体と有機溶媒とを主成分とする組成物が用いられている。
こうした中、より高い接着強度と、上記操作の煩雑さの軽減を目的として、歯科用接着材において、歯質に対して接着性を有する重合性単量体を含有させたものが開発されている。すなわち、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分の少なくとも一部として、歯質(ヒドロキシアパタイトやコラーゲン)に対して高い親和性を有する、リン酸基、カルボン酸基等の酸性基を有する単量体(酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体)を含有させた接着材である。この接着材は、さらに水を共存させることにより、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体が有する酸性基の作用により、酸水溶液の脱灰機能とプライマーの浸透促進機能とを併せ備えたものにすることができ大変好適である。すなわち、この場合、得られる接着材は、1回の塗布操作のみで使用でき、操作性に優れたセルフエッチングプライマーとして有利に使用できる(特許文献1を参照)。
さらに最近、エッチング、プライミング、ボンディングを同時に行える、操作性に究極に優れる1ステップ型接着材が開発されている。この1ステップ型接着材は、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体、水、および有機溶媒を含有するものであり、その接着性はかなり良好なものであるが、それでもまだ、実用的には今一歩満足できるものではなく、さらに向上させる必要性があった。
また、斯様な1ステップ型接着材やセルフエッチングプライマーでは、接着力において、製造直後に達成されていた値が、保存中に徐々に低下していく問題もあった。特に、これらの接着性組成物が、歯科医院において冷蔵保存されずに室温下で放置されたり、さらには歯科医院等への輸送の際には高温に曝され易く、こうした際には上記接着力低下の問題はより顕著に表出していた。しかして、この保存中における接着力低下の原因は、次の作用によるものと推定される。すなわち、これらの接着性組成物は、(メタ)アクリレート系重合性単量体、特に、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を含有しており、これらが有する、エステル結合部位や酸性基の結合部位は加水分解や加溶媒分解を受け易い箇所である。係る状況にあって、該組成物中には、上記酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基から電離した多量の水素イオンが溶存しており、該水素イオンは、上記加水分解反応や加溶媒分解反応に対して促進作用を有する。しかも、これらの接着性組成物には、前述のように通常、多量の水も含有されている。かくして、これらの要因が作用しあって、上記接着性組成物では、保存中に、(メタ)アクリレート系重合性単量体の分解が進行し、接着力が低下するものと考えられる。
こうした状況にあって、1ステップ型接着材の接着力を大きく向上させる方法として、多価金属イオンを配合させることが提案されている(特許文献2〜5を参照)。すなわち、この1ステップ型接着材では、硬化時に、(メタ)アクリレート系重合性単量体の重合と共に、上記多価金属イオンが、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体が有する酸性基にイオン結合し、これによりイオン架橋が生じて、硬化体の強度が大きく向上する。しかも、斯様な1ステップ型接着材では、上記酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基が、多価金属イオンとイオン架橋するため、酸性度が弱められ、組成物中に電離する水素イオン量が少なくなり、上記(メタ)アクリレート系重合性単量体成分の分解に伴う接着力低下の問題もかなり低減される。
しかしながら、それでも、このイオン架橋を、接着材が酸性を呈さなくなるまで、その酸性基の全てに対して生じさせることは、脱灰作用の保持の要求からできず、この方法では、前記(メタ)アクリレート系重合性単量体成分の分解による接着力低下の問題を完全に解消することは困難であった。
なお、上記1ステップ型接着材において、保存時の経時的な硬化(ゲル化)を防止するため、酸化アルミニウムを配合することが知られている(特許文献6を参照)。しかし、このものには、前記多価金属イオンを配合し、その接着力を高めることは何も記載されておらず、係る酸化アルミニウムの配合効果も、ゲル化防止であり、前記本発明が課題とする、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分の分解とは無関係の問題に過ぎなかった。
特開平7−82115号公報 特願2006−147203号公報 特開平10−236912号公報 特開平11−130465号公報 特開2008−156262号公報 特開2004−352698号公報
本発明は、上記技術課題を解決すべく、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を含有する、1ステップ型接着材やセルフエッチングプライマーの接着性組成物において、接着強度が高く、該酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の保存中の分解も高度に抑制されて、該接着強度の持続性に優れるものを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記技術課題を克服すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分として、酸性基を含有する単量体を含む接着性組成物に対して、多価金属イオン、および等電点が6.5〜11.0であるフィラーを配合することにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、前記した多価金属イオンを含有させた1ステップ型接着材の従来例の多くには、その他の任意成分として各種フィラーを配合させることが記載されているが、上記等電点が6.5〜11.0であるフィラーを具体的に組合せて使用した例が示されるものは皆無である。
即ち、本発明は、
(A)a1)酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む(メタ)アクリレート系重合性単量体成分
(B)多価金属イオン
(C)等電点が6.5〜11.0であるフィラー
を含んでなり、組成物中に含まれるa1)酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数に対する、組成物中に含まれる(B)多価金属イオンの総イオン価数の割合が0.2〜1.0未満であることを特徴とする歯科用接着性組成物である。
本発明の接着性組成物は、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分の一部として酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を含み、該酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基に対して特定量に当る多価金属イオンが含有されている。そしてさらに、等電点が6.5〜11.0であるフィラーも共存されている。このような組成である結果、本発明の接着性組成物は、高い接着強度を有し、長期保存、特に室温から50℃程度で長期保存しても、この高い接着強度が良好に持続されるものになる。したがって、本発明の接着性組成物は、コンポジットレジンや補綴物の歯科用修復物と歯質とを接着させる際に使用される、1ステップ型接着材やセルフエッチングプライマーとして有利に使用できる。
本発明において、このような優れた効果が発揮される原因は、次のような作用によるものと推測される。すなわち、本発明の接着性組成物は、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基と多価金属イオンとがイオン結合し、それによりイオン架橋が高度に形成され、硬化体の強度が大きく高められる。しかしながら、その組成中において、多価金属イオンの総イオン価数は、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数に対して0.2〜1.0未満の割合であるため、上記イオン架橋を形成する酸性基はその一部に留められ、残存する酸性基から、組成中に水素イオンが電離する。しかして、本発明の接着性組成物の組成中には、さらに、等電点が6.5〜11.0であるフィラーが共存しているため、この電離した水素イオンは、該フィラーの表面に吸着され易く、このフィラー表面に多くが吸着・蓄積された状態で、ここから脱離・放出されたものが、組成中に存在することになる。
したがって、接着性組成物を歯質に塗布した際には、この組成中に存在する水素イオンにより、脱灰作用は良好に発揮され、これにより消費されても上記フィラー表面に吸着されたものが脱離して、該脱灰作用は持続される。その一方で、組成中に存在する水素イオンは、大幅に低減できるため、前記した(メタ)アクリレート系重合性単量体の加水分解や加溶媒分解は大幅に低減できるものと考えられる。
以下、本発明の歯科用接着性組成物に含有される各成分について説明する。
<(A)(メタ)アクリレート系重合性単量体成分>
〔a1)酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体〕
本発明で用いられる酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体は、1分子中に少なくとも1つの酸基を有する(メタ)アクリレート化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで、酸基としては、公知のものが制限なく挙げられ、これらは酸無水物基であっても良い。具体的には、次に示すようなものを挙げることができる。
Figure 0005279404
本発明で用いられる酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体として好適に使用できる化合物を例示すれば、下記式に示す化合物が挙げられる。
Figure 0005279404
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Figure 0005279404
Figure 0005279404
Figure 0005279404
但し上記化合物中、Rは水素原子またはメチル基を表す。これらの化合物は単独で又は二種以上を混合して用いることができるが、その中でも分子内において酸の価数が2価以上になるものが、イオン結合向上の観点から好ましい。分子内における、酸の価数が2価以上の酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体は、分子内に1価の酸基を2個以上有する形態であってもよいし、2価の酸基であれば分子内に1個有するだけで、この要件は満足される。さらに、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体は、基−O−P(=O)(OH)、基(−O−)P(=O)OH等のリン酸系、または−P(=O)(OH)、基(−)P(=O)OH等ホスホン酸系の基を含有している重合性単量体を上記組み合わせで使用することがより好ましい。このような系では、歯質の脱灰作用(主に酸性度の強い基を有する為と思われる)が高いばかりでなく、本質的な結合力も高く、特に高い接着強度が得られる。
(メタ)アクリレート系重合性単量体成分中において、上記酸性基を含有するものの配合量は特に制限はなく、その全体が酸性基を含有するものであってもよいが、接着材の歯質に対する浸透性を調節したり、硬化体の強度を向上させる観点から、酸性基を有しない重合性単量体(以下、「非酸性(メタ)アクリレート系重合性単量体」と略する)と併用するのが好適である。こうした非酸性(メタ)アクリレート系重合性単量体を併用する場合においても、エナメル質及び象牙質の両方に対する接着強度を良好にする観点から、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分を100とする場合、これら酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体は5質量%以上の範囲で使用するのが好適であり、より好ましくは5〜80質量%、特に10〜60質量%の範囲で使用するのが好適である。酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の配合量が少ないと、エナメル質に対する接着強度が低下する傾向があり、多いと逆に象牙質に対する接着強度が低下する傾向がある。
なお、接着性組成物中に存在する、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の種類および含有量の確認は、分取用高速液体クロマトグラフィーにより組成物中から酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を単離し、質量分析からその分子量を測定し、また、核磁気共鳴分光(NMR)測定して、構造を決定することにより実施すればよい。
〔a2)非酸性(メタ)アクリレート系重合性単量体〕
本発明で用いることのできる、非酸性(メタ)アクリレート系重合性単量体は、分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリレート基を有することが必須である。具体例を示すと、メチル(メタ)アクリレート(メチルアクリレート又はメチルメタクリレートの意である。以下も同様に表記する。)、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルオキシエチルアセチルアセテート等のモノ(メタ)アクリレート系単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系単量体等を挙げることができる。
また、歯質への浸透性を高め、接着強度を向上させる観点からは、上記非酸性(メタ)アクリレート系重合性単量体として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリレート等からなる両親媒性の単量体を含有させるのが好ましい。特に、非酸性(メタ)アクリレート系重合性単量体として、疎水性の高いものを多量に含有させた場合には、このような両親媒性の単量体を含有させるのが効果的である。斯様な両親媒性の単量体の好ましい配合量は特に制限されるものではないが、吸水性の観点から酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体100質量部中55質量部未満、好適には50質量部以下が好ましい。
本発明の歯科用接着性組成物では、発明の効果が保持される少量であるならば、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分の一部を、(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体で置き換えても良い。このような(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体の配合量は、(メタ)アクリレート系重合性単量体の配合量のうちの、20%以内、より好適には10%以内とするのが、本発明の効果をより明確に発揮させる観点から好ましい。このような(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレン、α−メチルスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。なお、該(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体としては、下記式に例示するような酸性基を含有するものも使用でき、これらにおいては、前記酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体と同様に、酸性基の加水分解や加溶媒分解が抑えられる効果が発揮され好ましい。
Figure 0005279404
Figure 0005279404
但し上記化合物中、Rは水素原子またはメチル基を表す。

<(B)多価金属イオン>
次に、多価金属イオンについて説明する。該多価金属イオンは、本発明の接着性組成物中に溶存しており、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基とイオン結合しイオン架橋を形成し硬化体の強度を大きく向上させる。
本発明において多価金属イオンとは、前記酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基とイオン結合可能な2価以上の金属イオンのことであり、代表的なものを例示すれば、2価の金属イオンとしてカルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、亜鉛イオン、銅(II)イオン、錫(II)イオン等が挙げられ、3価の金属イオンとしては、アクチニウムイオン、鉄(III)イオン、アルミニウムイオン、イッテルビウムイオン、ランタンイオン等が挙げられ、4価以上の金属イオンとしては、チタンイオン、ジルコニウムイオン、タングステン(IV)イオン等が挙げられる。これら多価金属イオンは二種以上を混合して用いることができる。
これら多価金属イオンのうち、より高い接着強度が得られる観点から、3価以上の金属イオンを少なくとも一部として含有させるのが好ましく、中でも土類金属イオンまたは4価以上の金属イオンを含有させるのがより好ましい。本発明において、土類金属イオンとは、周期律表の第3族と第13族に属する金属イオンであり、具体的には、イットリウムイオン、スカンジウムイオン、及びランタノイド類イオン(ランタンイオン、セリウムイオン、プラセオジムイオン、ネオジウムイオン、プロメチウムイオン、サマリウムイオン、ユウロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオン、ジスプロシウムイオン、ホルミウムイオン、エルビウムイオン、ツリウムイオン、イッテルビウムイオン、ルテチウムイオン)等の希土類金属イオン;アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン等のアルミニウム族イオンが挙げられる。このうち、より効果が高く有用な土類金属イオンとしては、アルミニウムイオン、およびランタノイド類イオンが挙げられ、中でもアルミニウムイオンおよびランタンイオンが好ましい。
一方、4価以上の金属イオンとしては、チタンイオンがより効果が高く好ましい。
本発明の接着性組成物において、上記多価金属イオンの含有量は、組成物中に含まれるa1)酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数に対して0.2〜1.0未満(「多価金属イオンの総イオン価数」/「酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数」=0.2〜1.0未満)となるように配合されることが重要である。この比が0.2より小さくなると、十分量のイオン架橋を形成することができず、接着強度が低下し、一方、この割合が、1.0以上になると、組成物中に含まれる酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基のほぼ全てが多価金属イオンとイオン結合して中和されてしまい、実質的に酸性を呈さなくなり、歯質に対する脱灰作用が発揮されなくなる。上記「多価金属イオンの総イオン価数」/「酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数」は、好ましくは、0.3〜0.9さらに好ましくは0.4〜0.7である。
ここで、上記「酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数」とは、接着性組成物中に含まれる酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体のモル数と、該酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体中の酸価数を掛けた値である。例えば、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体がリン酸二水素モノ(2−メタクリルオキシエチル)エステルであれば、酸価数は2価であり、リン酸水素ジ(2−メタクリルオキシエチル)エステルであれば1価になる。また、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体がこれら2価のものと1価のものの混合物である場合は、それぞれの酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体ごとに酸の総価数を求めて、これらを合計して求めればよい。
他方、「多価金属イオンの総イオン価数」とは、接着性組成物中に含まれる金属イオンのモル数と、該金属イオンのイオン価数を掛けたものである。例えば、金属イオンがカルシウムイオンであれば、イオン価数は2であり、アルミニウムイオンであれば、イオン価数は3である。また、多価金属イオンが2価のものと3価のものの混合物である場合は、それぞれの金属イオンごとにイオンの総価数を求めて、これらを合計して求めればよい。
なお、本発明の接着性組成物には、接着性組成物の酸性が維持される配合範囲内で、上記の多価金属イオンの他に、1価金属イオンが含有されていても良い。こうした1価金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオンが挙げられる。多価金属イオンによるイオン架橋を良好に発達させる観点からは、これら1価金属イオンの総イオン価数は、全金属イオンの総イオン価数に対して0.5以下、より好ましくは0.2以下の割合に留めるのが好適である(「1価金属イオンの総イオン価数」/「全金属イオンの総イオン価数」<0.5、好適には<0.2)。
歯科用接着性組成物中における、多価金属イオンの種類および含有量は、固体成分を除いた後、誘導結合型プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて測定し求めることができる。具体的な方法を示すと、接着性組成物を水溶性有機溶媒で濃度1質量%まで希釈し、得られた希釈液をシリンジフィルター等で用いてろ過し、固体成分を除去する。得られた濾液のイオン種および濃度をICP発光分析装置で測定し、接着性組成物中の多価金属イオン種と量を算出する。なお、多価金属イオン以外の金属イオン種およびその含有量も、同様な方法によって測定することができる。
本発明の接着性組成物において、組成物中に多価金属イオンを共存させる方法は、特に制限されるものではなく、接着性組成物を調製する際に、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む(メタ)アクリレート系重合性単量体成分に、上記多価金属イオンのイオン源となる物質を配合または接触させて、系中に該多価金属イオンを前記説明したような十分な量で放出させれば良い。多価金属イオン源としては、多価の金属単体も使用可能ではあるが、通常は、多価金属化合物、または多価金属イオン溶出性フィラー等が好適に使用される。
〔b1)多価金属化合物〕
ここで、多価金属化合物としては、水酸化物や水素化物、アルコキシドも使用できる。これらの多価金属化合物のなかでも、多価金属イオンの溶出が早く、副生物が常温で気体或いは水や低級アルコール等の、接着強度に影響がなく除去容易なものであることから、水酸化物、水素化物、炭酸塩、或いは炭素数4以下の低級アルコキシドが好ましい。更に、取り扱いが容易な点から水酸化物、アルコキシド、炭酸塩がより好ましい。
これらの好ましい多価金属化合物の具体例を示すと、2価金属イオン源として炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムエトキシド、炭酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ストロンチウムエトキシド、炭酸バリウム、水酸化バリウム、バリウムイソプロポキシド、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛エトキシメトキシド、銅(II)メトキシド、スズ(II)メトキシド等が挙げられ、3価金属イオン源としてはアルミニウムメトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、ガリウムエトキシド、インジウムエトキシド、スカンジウムイソプロポキシド、イットリウムイソプロポキシド、ランタンメトキシド、ランタンエトキシド、ランタンイソプロポキシド、ランタンヒドロキシド、炭酸ランタン、セリウムイソプロポキシド、プラセオジウムイソプロポキシド、プロメチウムイソプロポキシド、ネオジウムイソプロポキシド、サマリウムイソプロポキシド、ユーロピウムイソプロポキシド、ガドリニウムイソプロポキシド、テルビウムエトキシド、テルビウムメトキシド、ジスプロシウムイソプロポキシド、ホルミウムイソプロポキシド、エルビウウムイソプロポキシド、ツリウムイソプロポキシド、イッテルビウムイソプロポキシド、イッテルビウムエトキシド、イッテルビウムイソプロポキシド、ルテチウムイソプロポキシド、鉄(III)エトキシド、アクチニウムエトキシド等が挙げられ、4価以上の金属イオン源としてはチタニウムイソプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、タングステン(IV)メトキシド等が挙げられる。このうち、アルミニウムメトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムヒドロキシド、ランタンメトキシド、ランタンエトキシド、ランタンイソプロポキシド、炭酸ランタン、チタンイソプロポキシド等が、特に好ましい。
なお、これらの多価金属化合物において、塩を用いる場合は、上記酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基のpKa値(リン酸等、多段階に解離するものは第一解離に基づくpKa値)より高いpKaを有する酸、即ち、該酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体より弱酸の金属塩を選定して用いることが好適である。すなわち、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体よりも強酸の塩を用いても、遊離した多価金属イオンと酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸性基とのイオン結合が十分に生じないため好ましくない。
さらに、多価金属イオン源として、アルミニウムやランタンの酸化物、及びカルボン酸塩は、重合性単量体または有機溶媒に不溶性のものが多く、一般には、水の存在下であっても、前記した必要量の該多価金属イオンの溶出には極めて長時間を要するため、多価金属イオン源としては不適である。特に、アルミニウムおよびランタンの酸化物は、水の存在下であっても殆ど対応する多価金属イオンを溶出しないため、多価金属イオン源としての使用は通常は使用困難である。
〔b2)多価金属イオン溶出性フィラー〕
一方、多価金属イオンを溶出するイオンを含んでなる多価金属イオン溶出性フィラーは、歯科用接着性組成物中で、上記多価金属イオンを溶出させることができるものである。通常は、歯科用接着性組成物がより酸性を呈している場合ほど、多価金属イオンを溶出させ易い。これらは、上記性状を有する公知のものが制限なく使用できるが、一般には、鎖状、層状、網様構造の骨格を有するガラス類において、その骨格の隙間に多価金属イオンを含む金属イオンを保持したものが好適に使用される。好ましい例を挙げると、鎖状、層状、網様構造の骨格を有するガラス類としては、酸化物ガラス、フッ化物ガラス等を挙げることができる。酸化物ガラスからなるものとしてはアルミノシリケートガラス、多価金属が含まれるホウケイ酸ガラス、同様にソーダ石灰ガラス等からなるものがあげられ、フッ化物ガラスとしては同様にフッ化ジルコニウムガラス等からなるものを挙げることができる。
なお、これらのガラス類からなる多価金属イオン溶出性フィラーは、多価金属イオンを溶出させた後は、凝集粒子や、粒径の大きいものについて、沈降したものを濾別する等して少なくとも一部を除去しても良いが、そのまま多孔性の粒子として歯科用接着性組成物中に残留させておくと、充填材として硬化体の強度の向上に寄与するため好ましい。
上記多価金属イオン溶出性フィラーの中でも、アルミノシリケートガラスからなるものが好適に使用され、さらに歯質を強化するフッ化物イオンを接着後に徐々に放出する、所謂フッ素徐放性を有するフルオロアルミノシリケートガラスからなるものが最も好適に用いられる。
斯様なフルオロアルミノシリケートガラス等の多価金属イオン溶出性フィラーは、通常は、水を存在させることにより、前記説明した十分量で、多価金属イオンを溶出させることが可能になる。したがって、多価金属イオン溶出性フィラーを多価金属イオン源として用いた場合、得られる接着性組成物は、水を含有したものになり、この水は歯質の脱灰、及び酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体と多価金属イオンとのイオン架橋の促進に有利に作用する。ただし、後述するように水は必須成分ではなく、必要に応じて、多価金属イオンを溶出した後に除去して、接着性組成物を調整してもよい。
好適に使用できる上記のフルオロアルミノシリケートガラスは、歯科用セメント、例えば、グラスアイオノマーセメント用として使用される公知のものが使用できる。フルオロアルミノシリケートガラスには、通常、上記多価金属イオンとして、土類金属イオンである、アルミニウムイオンが多量に含有されており、その他、場合によりランタン等のその他の土類金属イオンも含まれている。一般に使用されている、フルオロアルミノシリケートガラスの組成は、イオン質量パーセントで、珪素、10〜33;アルミニウム、4〜30;アルカリ土類金属、5〜36;アルカリ金属、0〜10;リン、0.2〜16;フッ素、2〜40及び残量酸素のものが例示される。本発明において使用するのに、より好ましい組成範囲のものを例示すると、珪素、15〜25;アルミニウム、及びランタン10〜40;アルカリ土類金属、5〜10;アルカリ金属、0〜1;リン、0.5〜5;フッ素、4〜40及び残量酸素である。更に必要に応じて、上記アルミニウムの一部をスカンジウム、イットリウム、イッテルビウム等、他の土類金属で置き換えたものも好適に使用可能である。
多価金属イオン溶出性フィラーとして、上記フルオロアルミノシリケートガラスを用いる場合、このものには前記好適な組成から明らかなように、相当量のフッ化物イオンが含有されており、これは多価金属イオンと共に溶出して系中の酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体と反応してフッ化水素を生成する。したがって、斯様にフルオロアルミノシリケートガラスを用いる場合には、使用する酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体は、酸性基が、その第一解離に基づくpKa値が、該フッ化水素のpKa値である3.14よりも小さい、すなわち、該フッ化水素よりも強酸であるものを選定して用いることが好適である。その上で、フッ化物イオンの溶出量も加味して、接着性組成物の酸性度を調整すれば良い。
これらの多価金属イオン溶出性フィラーの形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られるような粉砕形粒子、あるいは球状粒子でもよく、必要に応じて板状、繊維状等の粒子を混ぜることもできる。
本発明の接着性組成物は、酸性を呈しており、歯質に対する脱灰作用を良好に有しているものであるが、その作用をより良好には発揮させるためには、以下の方法で測定したpH値で示される酸性度が、6.0以下であるのが好ましく、組成物の酸性度が強くなりすぎると、(メタ)アクリレート系重合性単量体の加水分解や加溶媒分解が顕著に生じ始める為、この方法で測定したpHが3.0以上、より好ましくは3.5〜5.5であるのが良好である。すなわち、接着性組成物の酸性度は、該接着性組成物を10質量%の濃度でエタノールに混合し、その混合液のpHを測定することにより実施する。pHの測定は、従来公知の方法で測定可能であるが、25℃において、中性リン酸塩pH標準液(pH6.86)とフタル酸塩pH標準液(pH4.01)で校正したpH電極を用いたpHメーターで測定する方法が簡便で好ましい。希釈するのに用いるエタノールは純度が99.5%以上であり、該エタノール単独のpH値が上記に示す方法で測定したときに4.8〜5.0であれば特に問題ない。

<(C)等電点が6.5〜11.0であるフィラー>
等電点が6.5〜11.0であるフィラーについて説明する。本発明において、等電点が6.5〜11.0であるフィラーは、組成物中の水素イオンを吸着・蓄積すると考えられ、この蓄積された水素イオンは吸着―脱離平衡反応により組成物中の水素イオンが、歯質の脱灰等により減少すると放出され、組成物の酸性を維持するように作用する。かくして、本発明の接着性組成物では、保存中は、水素イオンの溶存量を大幅に低減でき、前記した(メタ)アクリレート系重合性単量体の加水分解や加溶媒分解は高度に抑制でき、一方で、歯質の脱灰作用も十分な強さで両立させ、強い接着強度を実現できる。
上記水素イオンの吸着・放出機能を十分に発揮させようとすると、フィラーの等電点は6.5〜11.0であることが必須である。この等電点が6.5より小さいと水素イオンの吸着力が低く、本発明の効力を発揮せず、11.0より大きいと、歯面に塗布した際、水素イオンを脱離しにくくなり、脱灰力が低下するために高い接着強度が得られなくなる。フィラーの等電点は、好ましくは7.0〜10.0、さらに好ましくは7.5〜9.5である。
本発明において、フィラーの等電点は、水系分散液中の粒子のゼータ電位が0mVとなるときのpHを示す。ゼータ電位は、レーザードップラー速度測定法により測定した値を言う。粒子が帯電している場合、水系分散液に電場をかけると、粒子は電極に向かって移動する。粒子の移動速度は、粒子の荷電量に比例する。そのため、粒子の移動速度を測定することによって、ゼータ電位を求めることができる。等電点をもつ粒子の水系分散液は、pHを変化させると、あるpHでゼータ電位が0mVとなる。従って、水系分散液に酸あるいはアルカリを添加してpHを連続的に変化させながらゼータ電位を追跡し、得られた測定データを、X軸にpH、Y軸にゼータ電位をプロットし、得られたプロットを考慮して線を描き、ゼータ電位が0mVとなる点を粒子の等電点とする。
このように等電点が6.5〜11.0であるフィラーは、従来公知のものが何ら制限無く利用できるが、例示すると、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ニッケル等の金属酸化物、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−チタニア、ジルコニア−チタニア等の複合金属酸化物が挙げられる。
上記等電点が6.5〜11.0であるフィラーの形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られるような粉砕形粒子、あるいは球状粒子でもよく、必要に応じて板状、繊維状等の粒子を混ぜることもできる。
また、該等電点が6.5〜11.0であるフィラーの粒径は、従来公知のものが何ら制限無く利用できるが、フィラーの沈降を防ぐ観点から、好ましくは平均1次粒径が0.001〜10μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。平均粒径は、粒度分布計を用い、レーザー回折−光散乱法により測定した値をいう。また、フィラーの比表面積は、特に制限されものではないが、フィラー表面での水素イオンの吸着性を高める観点から、好ましくは50m/g以上、より好ましくは70m/g以上、さらに好ましくは100〜300m/gのものである。ここで、比表面積はBET法を用いて測定した値をいう。
本発明において、等電点が6.5〜11.0であるフィラーの配合量は、特に制限されないが、前記した本発明の効果を良好に発揮させ、且つ組成物の粘度も適度に抑える観点から、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分100重量部に対して、1〜15重量部、特に3〜12質量部であるのが好ましい。

<(D)水>
本発明においては、上述した(B)多価金属イオン溶出性フィラーから所定量の多価金属イオンを放出させるためには、通常、(C)水が必要になる。水が存在しないと、上記多価金属イオン溶出性フィラーが多量に配合されていたとしても多価金属イオンが放出されないからである。
本発明において、上記のような水は、本発明の接着性組成物を歯面に塗布した際に、該組成物の硬化に先立って、エアブローにより除去させることが、硬化を十分に進行させる観点から好ましい。また、多価金属イオンを溶出させた後に減圧留去等により、組成物中から取り除いてしまうことも可能である。
本発明の歯科用接着性組成物が適用される口腔内環境にはある程度の水分が存在しているため、本発明の接着性組成物においては、水が含有されていない場合であっても、歯科用接着性組成物所定の脱灰作用により歯質の脱灰が行われ、良好な接着力が発揮されるが、より十分な歯質の脱灰を行うためには水が含有されていることが好ましい。
本発明において、このような水は、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分100質量部に対して、3〜150質量部、特に5〜100質量部の量で配合するのが好ましい。

<(E)重合開始剤>
本発明の接着性組成物は歯科用途において、歯質の接着用に有用である。特に、コンポジットレジンや補綴物等の歯科用修復物を歯質に接着させる際に使用される歯科用接着材、ブラケット等の歯列矯正用器具を歯面へ接着させる際に使用される歯科用接着材、歯質用前処理材として有用である。
歯科用接着材として用いる場合、このものには有効量の重合開始剤を配合される。このような重合開始剤としては、化学重合開始剤であっても良いが、任意のタイミングで重合硬化させることができることから、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としてはカンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等のα−ジケトン類、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン等のα−アミノアセトフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド誘導体等が好適に使用される。
また、重合促進剤を添加してもよい。重合促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等のメルカプト化合物を挙げることができる。
こうした重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分100質量部に対して、0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
更に上記に重合開始剤、重合促進剤に加え、ヨードニウム塩、トリハロメチル置換S−トリアジン、フェナンシルスルホニウム塩化合物等の電子受容体を加えても良い。
こうした重合開始剤は、歯質用前処理材にも配合させてもよい。

<その他の配合成分>
また、本発明の接着性組成物を歯科用接着材として用いる場合には、前記(C)等電点が6.5〜11.0であるフィラーに加えて他の充填剤を添加することも有効な態様である。当該充填剤として、無機充填剤を例示すると、シリカを基材とし、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化ホウ素、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、リン酸等を含有するセラミックスやガラスの類、特にランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス、亜鉛ガラス、フルオロアルミナムボロシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、バイオガラス等が挙げられる。さらには結晶石英、ヒドロキシアパタイト、酸化イットリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム等も好適に用いられる。特に好適なフィラーとしては、平均粒径0.1μmの以下のコロイダルシリカが挙げられる。これらのフィラーは、1種類または数種類の組み合わせで配合される。当該無機充填剤の形状は何ら制限されず、不定形、球状の何れであってもよい。
これらの無機充填剤は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で疎水化することで重合性単量体とのなじみを良くし、機械的強度や耐水性を向上させることができる。疎水化の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが好適に用いられる。
これらの他の無機充填剤の配合量は、通常、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分100質量部に対して2〜400質量部の範囲、より好ましくは5〜100質量部である。特にコンポジットレジン用接着材として調整する場合は、2〜20質量部の範囲、より好ましくは5〜10質量部である。
また、これらの接着性組成物には、揮発性有機溶媒が配合されても良い。ここで、揮発性有機溶媒は、室温で揮発性を有し、水溶性を示すものを使用することができる。ここで言う揮発性とは、760mmHgでの沸点が100℃以下であり、且つ20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを言う。また、水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であり、好ましくは該20℃において水と任意の割合で相溶することを言う。このような揮発性の水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これら有機溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。生体に対する毒性を考慮すると、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンが好ましい。
なお、これらの揮発性有機溶媒も、水と同様に、本発明の接着性組成物を歯面に塗布した際に、該接着性組成物を硬化させる前にエアブローすることにより除去させて使用される。
これらの揮発性有機溶媒の配合量は、通常、(メタ)アクリレート系重合性単量体成分100質量部に対して2〜400質量部の範囲、より好ましくは5〜100質量部である。
本発明の接着性組成物の用途は、歯科用の接着に使用される限り特に限定されるものではなく、具体的には歯科用前処理材、歯科用接着材、歯科用セメント、歯科用コート材、小窩裂溝填塞材等として用いられる。
本発明の歯科用接着性組成物には、これらの用途に応じ、増粘剤、重合禁止剤、重合調整剤、紫外線吸収剤、金属塩や金属錯体等の金属化合物、有機溶媒、帯電防止剤、染料、顔料、酸化剤、還元剤、香料等を、適宜単独で、あるいは組み合わせて配合してもよい。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。尚、実施例中に示した、略称、略号については以下の通りである。
略称及び略号
(1)略称及び略号
[酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体]
PM:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート(PM1)とビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート(PM2)の2:1の混合物
MAC−10:11−メタクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
HP:
Figure 0005279404
4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
[非酸性重合性単量体]
BisGMA:2、2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
[多価金属イオン源]
Al(O−i−Pr):アルミニウムトリイソプロポキシド
Ti(O−i−Pr):チタニウムテトライソプロポキシド
Sc(O−i−Pr):スカンジウムトリイソプロポキシド
Yb(O−i−Pr):イッテルビウムトリイソプロポキシド
La(O−i−Pr):ランタントリイソプロポキシド
MF:フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクソーアイオノマー、トクヤマデンタル社製)を湿式の連続型ボールミル(ニューマイミル、三井鉱山社製)を用いて平均粒径0.5μmまで粉砕し、その後粉末1gに対して、20gの5.0N塩酸でフィラー表面を15分間処理して得た、多価金属イオン溶出性フィラー。(平均粒径:0.5μm、24時間溶出多価金属イオン量:27meq/g−フィラー)
[等電点が6.5〜11.0であるフィラー]
Alu C:アルミナ、等電点9.0、比表面積100m/g、平均一次粒径0.02μm(日本アエロジル製、AEROXIDE Alu C)
PH:ジルコニア、等電点8.0、比表面積60m/g、平均一次粒径0.028μm(日本アエロジル製、VPZirconium Oxide PH)
P25:チタニア、等電点7.0、比表面積50m/g、平均一次粒径0.03μm(日本アエロジル製、AEROXIDE P25)
[その他のフィラー]
SS:ゾルゲルシリカ、等電点2.0、比表面積70m/g、平均一次粒径0.06μm
MMA−1;架橋ポリメチルメタクリレート(積水化成品工業社製:MB30X−5)
g−1;不定形シリカ−ジルコニア、等電点3.5、比表面積9.0m/g、平均一次粒径0.8μm
[揮発性の水溶性有機溶媒]
IPA:イソプロピルアルコール
[重合開始剤]
CQ:カンファーキノン
DMBE:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
BTPO:ビス(2,4,6−トリメチルベンソイル)−フェニルホスフィンオキサイド
[重合禁止剤]
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
また、以下の実施例および比較例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(1)金属イオンの測定方法
本発明の接着性組成物を調整し、24時間攪拌した後、100mlのサンプル管に0.2gを計り取り、IPAを用いて1質量%に希釈した。この液をシリンジフィルターでろ過し、ろ液をICP(誘導結合型プラズマ)発光分光分析を用いて、重合性単量体1g当りに含まれる各金属イオン濃度(mmol/g)を測定した。
(2)接着性組成物の水素イオンの測定方法
接着性組成物1gを無水エタノール9gと混合し、中性リン酸塩pH標準液(pH6.86)とフタル酸塩pH標準液(pH4.01)で校正したpH電極(GTS−5211C、東亜ディーケーケー社製)を用いて、速やかにそのpHを測定した。
(3)接着耐久性の試験方法
a)接着試験片の作成方法I(歯科用接着性組成物が歯科用接着材の場合に適用)
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、#600のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、これらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、エナメル質および象牙質のいずれかの平面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定し、ついで厚さ0.5mm直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを上記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞内に歯科用接着材を塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥し、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射した。更にその上に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクイック、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、接着試験片Iを作製した。
b)接着試験片の作成方法II(歯科用接着性組成物が歯科用前処理材の場合に適用)
上記a)接着試験片の作成方法Iと同様の方法により形成した模擬窩洞内に歯質用前処理材を塗布し、20秒放置後圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥し、その上に2ステップ型コンポジットレジン用接着材(トクソーマックボンドIIのボンディング材、トクヤマ社製)を塗布し、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射した。更にその上に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクイック、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、接着試験片IIを作製した。
C)接着試験方法
接着試験片Iまたは接着試験片IIを熱衝撃試験器に入れ、4℃の水槽に1分間浸漬後、60℃の水槽に移し1分間浸漬し、再び4℃の水槽に戻す操作を、6000回繰り返した。
その後、引張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引張り、エナメル質または象牙質とコンポジットレジンの引張り接着強度を測定した。1試験当り、4本の引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を耐久試験後の接着強度を測定し、接着耐久性を評価した。
(4)接着材保存後の接着耐久性の測定
調製した接着材を50℃のインキュベーターに20日保存し、(3)と同様の方法により、試験片を作製し、接着強度を測定し、接着耐久性を評価した。
実施例1
重合性単量体として2.5gのPM、3.0gのBisGMA、2.0gの3G及び2.5gのHEMAと、多価金属イオン源として0.15gのMF、等電点が6.5〜11.0であるフィラーとして0.5gのAlu Cと、重合開始剤として0.1gのCQ、0.15gのDMBEと、8.5gのIPA、1.5gの蒸留水、及びその他成分としてBHTを0.003g用い、これらを24時間攪拌混合して本発明の1ステップ型コンポジットレジン用接着材を得た。
得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材について、金属イオン、酸性基含有重合性単量体及び水素イオンの各測定を実施した後、各々を用いてエナメル質および象牙質に対する接着耐久性の試験を行った。また、得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材を保存し、同様の接着耐久性の試験を行った。1ステップ型コンポジットレジン用接着材の原料組成を表1に、結果を表2に示した。
実施例2〜23
実施例1の方法に準じ、表1に示した組成の異なる1ステップ型コンポジットレジン用接着材を調整した。
得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材について、金属イオン及びpHの各測定を実施した後、エナメル質および象牙質に対する接着耐久性の試験を行った。また、得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材を保存し、同様の接着耐久性の試験を行った。1ステップ型コンポジットレジン用接着材の組成を表1に、結果を表2に示した。
実施例24
2.5gのPM、0.3gのMF、8.5gのIPA、1.5gの蒸留水、及びその他成分としてBHTを0.003g用い、これらを24時間攪拌混合した。攪拌後、水及びIPAをロータリーエバポレーターで留去し、更に真空ポンプを用いて2時間減圧乾燥した。乾燥物に、3.0gのBisGMA、2.0gの3G、及び2.5gのHEMAと、重合開始剤として0.1gのカンファーキノン、0.15gのDMBEと、等電点が6.5〜11.0であるフィラーとして0.5gのAlu Cと、10.0gのIPAを加え均一になるまで攪拌し、接着材を調整した。
得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材について、金属イオン及びpHの各測定を実施した後、エナメル質および象牙質に対する接着耐久性の試験を行った。また、得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材を保存し、同様の接着耐久性の試験を行った。1ステップ型コンポジットレジン用接着材の組成を表1に、結果を表2に示した。
比較例1〜5
実施例1の方法に準じ、表1に示した組成の異なる1ステップ型コンポジットレジン用接着材を調整した。
得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材について、金属イオン及びpHの各測定を実施した後、エナメル質および象牙質に対する接着耐久性の試験を行った。また、得られた1ステップ型コンポジットレジン用接着材を保存し、同様の接着耐久性の試験を行った。1ステップ型コンポジットレジン用接着材の組成を表3に、結果を表4に示した。
実施例1〜24は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合された1ステップ型コンポジットレジン用接着材を用いたものであるが、初期及び保存した1ステップ型コンポジットレジン用接着材の接着耐久性の試験結果は、いずれの場合においても、エナメル質、及び象牙質のいずれに対しても良好であった。
これに対して、比較例1〜5は、多価金属イオンが規定の範囲から外れているか、または等電点が6.5〜11.0であるフィラーが含まれないか、酸性基含有重合性単量体が含まれていないかのいずれかの場合であり、エナメル質、象牙質に対する、初期または保存後の1ステップ型コンポジットレジン用接着材の接着耐久性のいずれかが十分得られないものであった。
Figure 0005279404
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実施例25〜28
表5に記載した原料組成の前処理材を、実施例1の接着材と同様の方法により調整した。得られた前処理材を、2ステップ型コンポジットレジン用接着材の前処理材として用いた。
得られた前処理材について、金属イオン及びpHの各測定を実施した後、各々を用いてエナメル質および象牙質に対する接着耐久性を試験した。また、得られた前処理材を保存し、同様の接着耐久性の試験を行った。前処理材の原料組成を表5に、結果を表6に示した。
比較例6〜8
表7に記載した原料組成の前処理材を、実施例1の接着材と同様の方法により調整した。得られた前処理材を、2ステップ型コンポジットレジン用接着材の前処理材として用いた。
得られた前処理材について、金属イオン及びpHの各測定を実施した後、各々を用いてエナメル質および象牙質に対する接着耐久性を試験した。また、得られた前処理材を保存し、同様の接着耐久性の試験を行った。前処理材の原料組成を表7に、結果を表8に示した。
実施例25〜28は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合された歯質前処理材を用いたものであるが、所期及び保存後の前処理材の接着耐久性の試験結果は、いずれの場合においても、エナメル質、及び象牙質のいずれに対しても良好であった。
比較例6〜8は、多価金属イオンが規定の範囲から外れているか、または等電点が6.5〜11.0であるフィラーが含まれないか、酸性基含有重合性単量体が含まれていないかのいずれかの場合であり、エナメル質、象牙質に対する、初期または保存後の前処理材の接着耐久性のいずれかが十分得られないものであった。
Figure 0005279404
Figure 0005279404
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Claims (8)

  1. (A)a1)酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体を含む(メタ)アクリレート系重合性単量体成分
    (B)多価金属イオン
    (C)等電点が6.5〜11.0であるフィラー
    を含んでなり、組成物中に含まれるa1)酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体の酸の総価数に対する、組成物中に含まれる(B)多価金属イオンの総イオン価数の割合が0.2〜1.0未満であることを特徴とする歯科用接着性組成物。
  2. (C)等電点が6.5〜11.0であるフィラーの含有量が、(A)(メタ)アクリレート系重合性単量体成分100質量部に対して1〜15質量部である請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  3. (C)等電点が6.5〜11.0であるフィラーが、アルミナ、ジルコニア、およびチタニアから選ばれる少なくとも1種である請求項1または請求項2に記載の歯科用接着性組成物。
  4. (B)多価金属イオンが、土類金属イオンまたは4価以上の金属イオンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
  5. (D)水を含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
  6. (E)重合開始剤を含有してなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物からなる歯科用接着材。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物からなる歯科用前処理材。
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