JP5660650B1 - イオン徐放性熱可塑性シート組成物 - Google Patents

イオン徐放性熱可塑性シート組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】マウスガードや歯軋り防止又は歯列矯正用に用いるスプリット等に用いて、齲蝕の予防効果が期待でき、更には装着時の適合性に優れた熱可塑性シート組成物の提供。【解決手段】イオン徐放性ガラスを含む材料を用いた、マウスガード又はスプリット作製用熱可塑性シート組成物。イオン徐放性ガラスがフッ化物イオンを徐放し、更にアルミニウムイオン、ストロンチウムイオン、ホウ酸イオン等の2〜4価のイオンを徐放するガラスである。【効果】前記熱可塑性シート組成物を用いると、低い温度での成型が可能となり、加熱に起因した歪みが低減し、成型品を装着した時の適合性が向上する。亦、熱可塑性シート組成物に含まれるイオン徐放性ガラスからフッ化物イオン及び2〜4価の金属イオンが徐放するため口腔内への適用時には歯質強化、二次齲蝕抑制、脱灰抑制、再石灰化等の働きにより口腔内環境の健全化に対して優れた効果を発現する。【選択図】なし

Description

本発明は、イオン徐放性ガラスを含有する熱可塑性シート組成物に関する。さらに詳しくは、熱可塑性シート組成物に含まれるイオン徐放性ガラスからフッ化物イオンが口腔内に供給されることにより、齲蝕の予防効果が期待でき、さらには装着時の適合性に優れた熱可塑性シート組成物に関する。
熱可塑性シートは、スポーツ選手を口腔外傷から守るマウスガード、歯軋り防止または歯列矯正用として用いるスプリント等に代表される口腔内装着装置を作製するために用いられる。
熱可塑性シートを用いて作製したマウスガードは、ボクシング、ラグビー等のコンタクトスポーツの選手が口腔内に装着することにより、競技中に生じる衝撃によって発生する口腔外傷を予防する目的で使用される。
近年では小学校の体育授業や運動会においても、口腔外傷の予防を目的にマウスガードが使用されるようになり、専門的にコンタクトスポーツをする大人から子供にまで使用する年齢層が拡大している。
マウスガードを装着することにより、口腔外傷を予防する効果が得られてきたが、一方で装着したマウスガードによって歯列が覆われることから、唾液による自浄作用が得られず、齲蝕の危険性が高くなることが課題であった。特に、エナメル質が成熟していない子供においては、齲蝕の危険性がさらに高くなることが課題であった。
また、競技中に飲用するスポーツドリンクはpHが低く、スポーツドリンクを飲用した後には、口腔内が低いpHの環境にさらされ、エナメル質が脱灰されることが知られている。特にマウスガードを装着した歯列においては、唾液による自浄作用が得られないことから、pHが低い環境が維持され、エナメル質の脱灰が促進されることが課題であった。
歯軋り防止用スプリントは、口腔内に装着することにより、上下の歯が直接接触して咬耗することを防止するために用いられる。歯列矯正用スプリントは、あらかじめ理想とする歯列形状に成型されたスプリントを口腔内に装着することにより、スプリント形状の誘導に従って歯列を目的の位置に移動させるために使用されることもある。
これらのスプリントは、いずれも長時間装着することによってその効果が得られるが、一方でスプリント装着時には、歯列がスプリントによって覆われているため、唾液による自浄作用が得られず齲蝕の危険性が高くなる。特に歯軋り防止用スプリントは、唾液の分泌量が少なくなる睡眠時に使用されることが多いことから、齲蝕の原因菌の繁殖活動を活性化し、齲蝕の危険性が高くなることが課題であった。また、歯列矯正用スプリントは飲食を伴う日中に使用されることから、摂取した食物および飲料がスプリント内面に滞留することで、齲蝕の危険性がさらに高くなることが課題であった。
前述のマウスガード、スプリント等の口腔内装着装置は加熱成型によって作製される。具体的には、熱可塑性シートの上面からヒーターによって加熱することで熱可塑性シートを軟化させ、十分に軟化した熱可塑性シートを歯列石膏模型に対して上部から圧接し、歯列石膏模型下部より真空吸引することによって、熱可塑性シートを歯列形状に成型する。しかしながら、熱可塑性シートは熱伝導性が悪いため、加熱時に熱可塑性シート上面は温度が高くなっているが、シート下面は温度が低いという現象が生じ、このことが成型した口腔内装着装置を装着したときの適合性に悪影響を及ぼす要因となっている。例えば、シート上面温度は適切な成型温度に達しているが、シート下面は適切な成型温度よりも低い状況で口腔内装着装置の成型を行った場合には、得られた口腔内装着装置は歯列形状を細部まで再現しておらず十分な保持力を維持的ないために適合性が悪くなる。一方、シート下面が成型温度に達した状態で口腔内装着装置の成型を行った場合には、熱可塑性シートの上面は成型温度以上に高温となっており、得られた口腔内装着装置は熱収縮に伴う成型歪みが大きく、装着時の適合性が悪くなる。特に厚い熱可塑性シートを用いた場合には顕著に適合性が悪くなる。
本発明は、イオン徐放性ガラスから放出されたイオンによる齲蝕予防効果が付与されると同時に、装着時の適合性に優れる熱可塑性シート組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前述した課題の解決を目的として鋭意検討した結果、ガラスを添加した本発明の熱可塑性シート組成物は、熱伝導性が向上することにより加熱時のシート上下面における温度差が解消した結果、より低温で熱可塑性シート組成物を成型できることを見出した。
また、熱可塑性シート組成物に添加するガラスがフッ化物イオン徐放性ガラスである場合には、本発明の熱可塑性シート組成物からフッ化物イオンが放出されること、さらに熱可塑性シート組成物に添加するガラスが2〜4価のイオン徐放性ガラスの場合には、フッ化物イオンの徐放に加え、2〜4価のイオンが長期間徐放されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の熱可塑性シート組成物を用いることで、低い温度での成型が可能となり、成型時の熱可塑性シートの加熱に起因した歪みが低減することで、成型品を装着した時の適合性が向上する。また、本発明の熱可塑性シート組成物に含まれるイオン徐放性ガラスからフッ化物イオン及び2〜4価の金属イオンが徐放するため口腔内への適用時には歯質強化、二次齲蝕抑制、脱灰抑制、再石灰化等の働きにより口腔内環境の健全化に対して優れた効果を発現することが期待できる。さらに別の効果として特定のイオン徐放性ガラスを含有することによりストロンチウムイオンあるいはアルミニウムイオンが口腔内に徐放される。これらの多価金属イオンは、口腔内環境が酸性の場合、中性へ移行させることができることから齲蝕の抑制効果が期待される。
本発明の熱可塑性シート組成物は熱可塑性樹脂(a)にイオン徐放性ガラス(b)を含むことを特徴とする。熱可塑性樹脂(a)及びイオン徐放性ガラス(b)を100重量部としたとき、熱可塑性樹脂(a)の配合量が60〜80重量部、イオン徐放性ガラス(b)の配合量が20〜40重量部である。
本発明の熱可塑性シート組成物に用いることができる熱可塑性樹脂は、熱軟化性を示す樹脂であれば何等制限なく用いることができるが、熱成型性の観点から、軟化点が50〜300℃であることが好ましい。更に好ましくは60〜150℃である。
熱可塑性樹脂の具体的な例として、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロプレン(PP)、ポリエチレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマーが挙げられる。
マウスガード作製用としては、衝撃吸収性を有する点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン樹脂が好ましく、マウスガードに含まれるイオン徐放性ガラスからのイオン放出性を促す点からは、吸水性に優れるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が最も好ましい。
また、スプリント作製用としては、材料の耐久性および強度の観点から、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
イオン徐放性ガラスからのイオン徐放とはイオン徐放性ガラスを構成する元素に基因したイオンの持続的な徐放を意味するものであり、金属フッ化物等の水への溶解によって一時的に多量を放出するものとは異なる。大量に放出されたイオンは塩を形成し、本発明の効果をもたらす事はできない。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスはガラス骨格を形成する1種類以上のガラス骨格形成元素とガラス骨格を修飾する1種類以上のガラス修飾元素を含んだガラスであれば何等制限なく用いることができる。また、本発明においてはガラス組成によってガラス骨格形成元素又はガラス修飾元素になりうる元素、いわゆるガラス両性元素はガラス骨格形成元素の範疇として含めるものである。イオン徐放性ガラスに含まれるガラス骨格形成元素を具体的に例示するとシリカ、アルミニウム、ボロン、リン等が挙げられるが、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。また、ガラス修飾元素を具体的に例示するとフッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン類元素、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属類元素、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属類元素等が挙げられるが、単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でもガラス骨格形成元素としてシリカ、アルミニウム、ボロンを含み、且つガラス修飾元素としてフッ素、ナトリウム、ストロンチウムを含むことが好ましく、具体的にはストロンチウム、ナトリウムを含んだシリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラス等が挙げられる。さらに、フッ化物イオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ホウ酸イオンを徐放する観点から、より好ましくはナトリウム、ストロンチウムを含んだフルオロアルミノボロシリケートガラスであり、そのガラス組成範囲はSiO2 15〜35質量%、Al2O3 15〜30質量%、B2O3 5〜20質量%、SrO 20〜45質量%、F 5〜15質量%、Na2O 0〜10質量%となる。このガラス組成は元素分析、ラマンスペクトルおよび蛍光X線分析等の機器分析を用いることにより確認することができるが、いずれかの分析方法による実測値がこれらの組成範囲に合致していれ何等問題はない。
これらのガラスの製造方法においては特に制限はなく、溶融法あるいはゾルーゲル法等の製造方法で製造することができる。その中でも溶融炉を用いた溶融法で製造する方法が原料の選択も含めたガラス組成の設計のし易さから好ましい。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスは非晶質構造であるが、一部結晶質構造を含んでいても何等問題はなく、さらにそれらの非晶質構造を有するガラスと結晶構造を有するガラスの混合物であっても何等問題はない。ガラス構造が非晶質であるか否かの判断はX線回折分析や透過型電子顕微鏡等の分析機器を用いて行うことができる。その中でも本発明に用いるイオン徐放性ガラスは外部環境におけるイオン濃度との平衡関係により各種イオンが徐放することから、均質な構造である非晶質構造であることが好ましい。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスからの各種イオンの徐放はガラスの粒子径によって影響を受けるため湿式又は/及び乾式の粉砕、分級、篩い分け等の方法により粒子径を制御する必要がある。そのため本発明に用いるイオン徐放性ガラスの粒子径(50%)は0.01〜100μmの範囲であれば特に制限はないものの、好ましくは0.01〜50μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜5μmの範囲である。また、ガラスの形状は球状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状でよく、特に何等制限はないが、好ましくは球状あるいは破砕状である。
さらにイオン徐放性ガラスからのイオン徐放性を高めるために、ガラス表面を表面処理することにより機能化してイオン徐放性を向上させることが好ましい態様である。表面処理に用いる表面処理材を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、モノマー、ポリマー、各種カップリング材、シラン化合物、金属アルコキシド化合物及びその部分縮合物等が挙げられる。好ましくは酸性ポリマー及びシラン化合物を表面処理材として用いることである。
この酸性ポリマー及びシラン化合物を表面処理材として用いてイオン徐放性ガラスを表面処理する製造方法、具体的にはシラン化合物によりイオン徐放性ガラス表面を被覆した後に、酸性ポリマーにより表面処理する方法を以下に例示する。

粉砕等によって所望の平均粒径に微粉砕されたイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体中に、一般式(I)
Figure 0005660650
(式中、ZはRO-、Xはハロゲン、YはOH-、Rは炭素数が8以下の有機基、n、m、Lは0から4の整数で、n+m+L=4である)で表されるシラン化合物を混合し、これを系中で加水分解または部分加水分解してシラノール化合物を経て、次いでこれを縮合させて、イオン徐放性ガラス表面を被覆する。
上記のポリシロキサン処理方法は、シラン化合物の加水分解及び縮合とガラス表面へのポリシロキサン処理を同一系内で同時に行っているが、シラン化合物の加水分解及び縮合を別の系で行って低縮合シラン化合物(オリゴマー)を生成させ、それをイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体に混合する表面処理方法でも効率よくイオン徐放性ガラス表面にポリシロキサン被膜を形成することが可能である。より好ましくは市販の低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用い、低縮合生成過程を経ず混合するポリシロキサン処理方法である。この方法が好ましい理由としては、シラン化合物単量体を用いる場合はポリシロキサン処理工程で多量の水が存在することから、縮合が3次元的に起こり、自己縮合が優位に進行し、均一なポリシロキサン被膜をガラス表面に形成することができないと考えられる。
一方低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用いる場合は、ある長さのポリシロキサン主鎖を有するユニット単位でガラス表面にポリシロキサン被膜を均一に形成することが可能と考えられる。またこの低縮合シラン化合物(オリゴマー)の形状は特に制限はないが3次元体のものよりも直鎖状の方が良く、またその重合度においても長いものほど縮合反応性が劣り、イオン徐放性ガラス表面上のポリシロキサン被膜の形成が悪くなることから、好ましい重合度は2〜20の範囲であり、より好ましくは2〜6である。その時の分子量は500〜600の範囲である。
上記水性分散体中でのポリシロキサン処理は比較的低速の撹拌状態下で行われ、温度は室温から100℃の範囲、より好ましくは室温から50℃の範囲であり、撹拌時間は通常数分から数十時間、より好ましくは30分〜4時間の範囲で行われる。撹拌は特別な方法を必要とするものではなく、一般業界で通常に使用されている設備を採用して行うことができる。例えば万能混合撹拌機やプラネタリーミキサー等のスラリー状のものを撹拌できる撹拌機を用いて撹拌すればよい。撹拌温度は水性媒体が揮発しない温度、つまり水性媒体の沸点以下の温度であれば何等問題はない。撹拌時間はシラン化合物または低縮合シラン化合物の種類または添加量、ガラスの種類、粒子径及びその水性分散体中に占める割合、水性媒体の種類及び水性分散体中に占める割合により、縮合して形成するゲル化速度が影響を受けることから、調節しなければならなく、またゲルが形成されるまで行わなければならない。撹拌速度は速すぎるとゲル構造が崩れ、均一な被膜が形成されないため、低速で行う必要がある。
また上記の水性媒体とは水及びアルコールから構成される。アルコールを加えることにより乾燥工程においてイオン徐放性ガラスフィラーの凝集性を軽減させ、より解砕性を向上させる多大な効果がある。好ましいアルコールとしては炭素数2〜10のアルコール類であるが、炭素数が10以上のアルコールの添加は沸点が高く溶媒を乾燥除去するために長時間を要する。具体的なアルコールとしては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、iso−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコールn−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコールが挙げられ、より好ましくは炭素数2〜4のアルコール、例えばエチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが好適に使用される。上記アルコールの添加量は水に対して5〜100重量部、好ましくは5〜20重量部である。添加量が100重量部以上になると乾燥工程が複雑になる等の問題が生じる。またガラスの含有量は水性媒体に対して25〜100重量部の範囲であり、好ましくは30〜75重量部の範囲である。含有量が100重量部を超える場合は縮合によるゲル化速度が速く、均一なポリシロキサン被膜層を形成しにくく、また25重量部より少ない場合、撹拌状態下でガラスが沈降したり水性媒体中で相分離が発生したりする。また、シラン化合物の添加量はガラスの粒子径に依存するが、ガラスに対してSiO2 換算で0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜4重量部である。添加量が0.1重量部以下の場合は、ポリシロキサン被膜層形成の効果がなく、一次粒子まで解砕できず凝集したものになり、10重量部以上では乾燥後の固化物が硬すぎて解砕することができない。
「ゲル」状態にある系を、乾燥し水性媒体を除去して固化させる。乾燥は、熟成と焼成の2段階からなり、前者はゲル構造の生長と水性媒体の除去を、後者はゲル構造の強化を目的としている。前者はゲル構造にひずみを与えず、かつ水性媒体を除去することから静置で行う必要があり、箱型の熱風乾燥器等の設備が好ましい。熟成温度は室温から100℃の範囲で、より好ましくは40〜80℃の範囲である。温度がこの範囲以下の場合は、水性媒体除去が不十分であり、範囲以上の場合は急激に揮発し、ゲル構造に欠陥が生じたり、ガラス表面から剥離したりする恐れがある。熟成時間は乾燥器等の能力にもよるため、水性媒体が充分除去できる時間ならば何等問題はない。
一方焼成工程は昇温と係留に分かれ、前者は目標温度まで徐々に長時間かけて昇温する方がよく、急激な温度はゲル分散体の熱伝導が悪いため、ゲル構造内にクラックが生じる可能性がある。後者は一定温度での焼成である。焼成温度は100〜350℃の範囲であり、よりこのましくは100〜200℃である。
以上のように乾燥によりゲルから水性媒体を除去し、収縮した固化物が得られる。固化物はイオン徐放性ガラスの凝集状態ではあるが、単なるイオン徐放性ガラスの凝集物ではなく、個々の微粒子の境界面には縮合により形成されたポリシロキサンが介在している。したがって次の工程としてこの固化物をポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラス相当に解砕すると、その表面がポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスが得られる。ここで「ポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラス相当に解砕する」とは、ポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスの一次粒子に解砕することであり、元のイオン徐放性ガラスと異なる点は個々の微粒子がポリシロキサンで被覆されていることである。ただし、問題ない程度なら2次凝集物を含んでもよい。固化物の解砕は、せん断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては、例えばヘンシェルミキサー、クロスロータリミキサー、スーパーミキサー等を用いて行いことができる。
一般式(I)で表されるシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)等が例示でき、より好ましくはテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランである。また一般式(I)で表されるシラン化合物で示される凝集体であることがより好ましい。
また一般式(I)で表されるシラン化合物の低縮合体であることがより好ましい。例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランを部分加水分解して縮合させた低縮合シラン化合物である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。
またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部としてオルガノシラン化合物も添加することができる。具体的にオルガノシロキサン化合物を例示すると、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が例示でき、特に好ましくはメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシランである。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。しかしこれらはポリシロキサン層内において有機基が存在するため、ポリシロキサン層形成時のひずみを受ける可能性があり、機械的強度に問題が生じることがある。このため少量の添加にとどめておく必要がある。またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部として、他の金属のアルコキシド化合物、ハロゲン化物、水和酸化物、硝酸塩、炭酸塩も添加することができる。
前記工程で得られたポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスは酸性ポリマーと反応させる酸性ポリマー処理を施すことによって本発明の最も好ましい表面処理イオン徐放性ガラスを得ることができる。酸性ポリマー処理は乾式流動型の撹拌機であれば業界で一般に使用されている設備を用いることができ、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー等が挙げられる。ポリシロキサン被膜が形成されたイオン徐放性ガラスへの酸性ポリマーの反応は、酸性ポリマー溶液を含浸や噴霧等により接触させることにより行うことができる。例えばポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを乾式流動させ、その流動させた状態で上部から酸性ポリマー溶液を分散させ、十分撹拌するだけでよい。このとき酸性ポリマー溶液の分散法は特に制限はないが、均一に分散できる滴下またはスプレー方式がより好ましい。また反応は室温付近で行うことが好ましく、温度が高くなると酸反応性元素と酸性ポリマーの反応が速くなり、酸性ポリマー相の形成が不均一になる。
熱処理後、熱処理物の解砕は剪断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては上記反応に用いた設備などで行うことができる。
反応に用いる酸性ポリマー溶液の調製に用いる溶媒は、酸性ポリマーが溶解する溶媒であれば何等問題はなく、水、エタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは水であり、これは酸性ポリマーの酸性基が解離し、イオン徐放性ガラスの表面と均一に反応することができる。
酸性ポリマー溶液中に溶解したポリマーの重量分子量は2000〜50000の範囲であり、5000〜40000の範囲にある。2000未満の重量平均分子量を有する酸性ポリマーで処理した表面処理イオン徐放性ガラスはイオン徐放性が低くなる傾向にある。50000を超える重量平均分子量を有する酸性ポリマーは酸性ポリマー溶液の粘性が上がり、酸性ポリマー処理を行うことが困難となる。また酸性ポリマー溶液中に占める酸性ポリマー濃度は3〜25重量%の範囲が好ましく、より好ましくは8〜20重量%の範囲である。酸性ポリマー濃度3重量%未満になると上記で述べた酸性ポリマー相が脆弱になる。また酸性ポリマー濃度が25重量%を超えるとポリシロキサン層(多孔質)を拡散しにくくなる反面、イオン徐放性ガラスに接触すると酸−塩基反応が速く、反応中に硬化が始まり凝集が起こる等の問題が生じる。またポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー溶液の添加量は6〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。この添加量で換算するとポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー量は1〜7重量%、また水量は10〜25重量%の範囲が最適値である。
上記の方法によりポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスの表面に酸性ポリマー反応相を形成するために用いることのできる酸性ポリマーは、酸性基として、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基、スルホン酸基等の酸性基を有する重合性単量体の共重合体または単独重合体である。このような重合性単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、グルタコン酸、シトラコン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2-ジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2'-ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、ピロリン酸ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が列挙できる。これらの重合体の中でも酸反応性元素との酸-塩基反応が比較的遅い、α-β不飽和カルボン酸の単独重合体または共重合体が好ましい。より好ましくはアクリル酸重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-イタコン酸共重合体である。
本発明に用いるイオン徐放性ガラスはガラス組成に基因したイオン種を持続的に徐放することが特徴であり、金属フッ化物等の水への溶解によって一時的に多量を放出するものとは異なるものである。
以下の手法によってイオン徐放性ガラス又は他のフィラーがイオン徐放性を有しているか否かを判断することができる。
蒸留水100gに対してイオン徐放性ガラス又は他のフィラーを0.1g加え、1時間撹拌させた時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオン種に起因した元素濃度(F1)と、2時間撹拌した時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオン種に起因した元素濃度(F2)が下式(1)の関係を満足する場合をイオン徐放とみなすことができる。
F2 > F1 ・・・・式(1)

イオン徐放性ガラスから徐放するイオンが複数ある場合は、すべてのイオン濃度又は元素濃度が式(1)を満足する必要はなく、少なくとも一つのイオン濃度又は元素濃度が式(1)を満足した場合をイオン徐放とみなすことができる。

本発明に用いるイオン徐放性ガラスはイオン徐放の効果に基因する酸中和能を有していることが好ましい。酸中和能はpHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラスを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定することにより確認することできる。その時のpHが5.5以上、より好ましくは6.0以上、最も好ましくは6.5以上を示したとき酸中和能が発現するとみなすことができる。
本発明の熱可塑性シート組成物の大きさは、特に限定されるものではないが100〜150mmの四角形もしくは直径100〜150mmの円形であることが好ましく、厚みは0.2〜5mmであり、好ましくは0.5〜4mmである。
また、本発明の熱可塑性シート組成物の層構造は、イオン徐放性ガラスを含むものであれば何等問題はなく、単層構造はもちろんのこと、2層以上からなる多層構造であっても良い。
2層以上の多層構造の場合には、イオン徐放性ガラスを含むシート層が歯面側、あるいは歯面と反対側のいずれの向きで使用しても良く、イオン徐放性ガラスを含むシート層を歯面側とした場合には歯質強化が期待される。また、イオン徐放性ガラスを含むシート層が歯質と反対側とした場合には、口腔内環境の健全化が期待される。
本発明に用いる熱可塑性樹脂は着色されていてもよく、その際に使用される着色剤は一般的に利用されているものを用いることができるが、好ましくは有機顔料である。
顔料として不透明化剤を用いることが好ましい。代表的な不透明化剤は酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄であり、好ましくは酸化チタンである。好ましい顔料の配合は熱可塑性樹脂に対して、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.3〜5重量部である。
顔料の割合は、顔料全体に対して不透明化剤を5〜80重量部含むことが好ましい。不透明化剤が100重量部の時は白色となる。
以下に本発明の実施例及び比較例について具体的に説明する実施例及び比較例にて調製した熱可塑性シート組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。
[イオン徐放性ガラス及び各種フィラーから徐放されるイオンに基因した元素量の測定]
蒸留水100gに対してイオン徐放性ガラスまたは各種フィラーを0.1g加えて1時間撹拌後、分析用シリンジフィルター(クロマトディスク25A,ポアサイズ0.2μm:ジーエルサイエンス社)でろ過した溶液中に徐放した各イオンに基因する元素濃度をF1とした。また、同様に蒸留水100gに対してイオン徐放性ガラスまたは各種フィラーを0.1g加えて2時間撹拌後、同じ操作を行いろ過した溶液中に徐放した各イオンに基因した元素濃度をF2とした。フッ素はフッ素イオン複合電極(Model 9609:オリオンリサーチ社)及びイオンメータ(Model 720A:オリオンリサーチ社)を用いてフッ化物イオンを測定し、その値を用いてフッ素元素濃度に換算した。測定時にイオン強度調整剤としてTISABIII(オリオンリサーチ社製)を0.5ml添加した。検量線の作成は0.1、1、10、50ppmの標準液を用いて行った。他の元素(Na,B,Al,Sr)に関しては誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICPS-8000:島津社製)を用いて、測定により算出した。検量線の作成は0.1、1、10、50ppmの標準液を用いて行った。
[イオン徐放性ガラス及び各種フィラーの酸中和能の評価]
本発明に用いるイオン徐放性ガラスの酸中和能を以下の方法で評価した。pHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラス及び各種フィラーを0.1g加え、5分間撹拌した後のpHをpHメーター(D-51:堀場製作所)を用いて測定することにより評価した。
[熱可塑性シート組成物から放出されるイオンに基因した元素量の測定]
各種可塑性シート組成物を用いて丸板状(φ20×2mm)に成型した。この丸板状試験片を9.4mLの蒸留水中に浸漬し、1日後に試験体を取り出した。前述と同じ測定方法によって、この抽出溶液中の各イオンに基因した元素量を測定した。
[熱可塑性シート組成物の酸中和能の評価]
各種可塑性シート組成物を用いて丸板状(φ20×2mm)に成型した。この丸板状試験片をpHを4.0に調整した乳酸水溶液9.4mLに浸漬し、24時間経過後のpHをpHメーター(D-51:堀場製作所)を用いて測定することにより評価した。
[熱可塑性シート組成物の成型下限温度の評価]
10℃間隔で100〜200℃に加熱した可塑性シート組成物を用いて口腔内装着装置の成型を行った。温度の計測位置は、可塑性シート組成物の下面中央部とし、温度計測には非接触式温度計を用いた。成型の合否判定は、歯列模型の歯冠乳頭部(中切歯間、右側第1第2大臼歯間および左側第1第2大臼歯間の計3箇所)が成型後の口腔内装着装置に鮮明に印記されたものを合格、不鮮明に印記されているものを不合格とした。本手法によって合格と判断された中から、最も低い成型温度を成型下限温度とした。
[熱可塑性シート組成物を用いて成型した口腔内装着装置の適合性評価]
各種可塑性シート組成物を用いて口腔内装着装置を成型した。なお、各種可塑性シート組成物の成型温度は先述の試験において評価した成型下限温度で行った。成型した口腔内装着装置を石膏模型に装着したまま、右側第1大臼歯の中央部を頬舌方向に切断した。デジタルマイクロスコープVH-8000(KEYENCE社製)を用いて、切断面の臼歯裂溝部における口腔内装着装置と石膏模型の間隙量を計測した。
本発明の実施例及び比較例に使用した成分名およびその略号を以下に示す。
SOC5:シリカフィラー「アドマファイン SO−C5(アドマテックス社)」
NaF:フッ化ナトリウム粉末(ナカライテスク社)
エバフレックス EV360:エチレン-酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製)
[イオン徐放性ガラス1の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料(ガラス組成:SiO2 23.8質量%、Al2O3 16.2質量%、B2O3 10.5質量%、SrO 35.6質量%、Na2O 2.3質量%、F11.6質量%)をボールミルを用いて均一に混合し原料混合品を調製した後、その原料混合品を溶融炉中で1400℃にて溶融した。その融液を溶融炉から取り出し冷鋼板上、ロールまたは水中で冷却してガラスを生成した。4連式振動ミルのアルミナポット(内容積3.6リットル)中に直径6mmφのアルミナ玉石4kgを投入後、上記で得たガラスを500g投入して40時間粉砕を行い、イオン徐放性ガラス1を得た。このイオン徐放性ガラス1の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.2μmであった。このイオン徐放性ガラス1から放出されるイオンに基因した元素量(フッ化物イオンのみイオン量)を測定し、(1)式への適合性を確認した。その結果を表1に示した。
[イオン徐放性ガラス2の製造]
以下に示すポリシロキサン処理及び酸性ポリマー処理を行い表面処理したイオン徐放性ガラス2を得た。
前述のイオン徐放性ガラス1を500g、シラン化合物(予めテトラメトキシシラン5g、水1000g及びエタノール100gを2時間室温で撹拌し得られたシラン化合物の低縮合物)を万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを得た。このポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラス500gを撹拌しつつ、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量%、重量平均分子量20000;ナカライ社製)をヘンシェルミキサーを用いて噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、表面処理したイオン徐放性ガラス2を製造した。このイオン徐放性ガラス2の50%平均粒子径をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.3μmであった。この表面処理したイオン徐放性ガラス2から放出されるイオンに基因した元素量(フッ化物イオンのみイオン量)を測定し、(1)式への適合性を確認した。その結果を表1に示した。
[イオン徐放性ガラス3の製造]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、1400℃にてその混合物を溶融してガラス(ガラス組成:SiO2 19.8質量%、Al2O3 19.8質量%、B2O3 11.7質量%、SrO 35.0質量%、Na2O 2.3質量%、F11.4質量%)を得た。次に生成したガラスを振動ミルを用いて10時間粉砕し、ガラス3を得た。前述のガラス3を500g、シラン化合物(予めテトラメトキシシラン10g、水1500g、エタノール100g、メタノール70g及びイソプロパノール50gを2時間室温で撹拌し得られたシラン化合物の低縮合物)を万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサンで被覆したイオン徐放性ガラスを得た。このポリシロキサンで被覆したガラス500gを撹拌しつつ、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量%、重量平均分子量20000;ナカライ社製)をヘンシェルミキサーを用いて噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、表面処理したイオン徐放性ガラス3を製造した。
この表面処理したイオン徐放性ガラス3から放出されるイオンに基因した元素量(フッ化物イオンのみイオン量)を測定し、(1)式への適合性を確認した。その結果を表1に示した。
[実施例1] マウスガード用熱可塑性シート1
エバフレックス EV360:2000gおよびイオン徐放性ガラス1:500gを加圧ニーダーに投入し、110℃で10分間混合することイオン徐放性ガラスとエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物を得た。この混合物をあらかじめ100℃に加温した7インチオーブンロールに巻き付け、シート状に加工した。
シート状の加工物を金型(300x300x4mm)に填入し、160℃で5分間プレス成型した後、冷却することでマウスガード用熱可塑性シート1を得た。
[実施例2] マウスガード用熱可塑性シート2
エバフレックス EV360:2000gおよびイオン徐放性ガラス2:500gを用いた以外は実施例1と同様にして、マウスガード用熱可塑性シート2を得た。
[実施例3] マウスガード用熱可塑性シート3
エバフレックス EV360:2000gおよびイオン徐放性ガラス3:500g用いた以外は実施例1と同様にして、マウスガード用熱可塑性シート3を得た。
[実施例4] マウスガード用熱可塑性シート4
エバフレックス EV360:1500gおよびイオン徐放性ガラス3:1000gを用いた以外は実施例1と同様にして、マウスガード用熱可塑性シート4を得た。
[比較例1] マウスガード用熱可塑性シート5
エバフレックス EV360:2500gを用いた以外は実施例1と同様にして、マウスガード用熱可塑性シート5を得た。
[比較例2] マウスガード用熱可塑性シート6
エバフレックス EV360:2000gおよびNaF:500gを用いた以外は実施例1と同様にして、マウスガード用熱可塑性シート6を得た。
[比較例3] マウスガード用熱可塑性シート7
エバフレックス EV360:2000gおよびSOC5:500gを用いた以外は実施例1と同様にして、マウスガード用熱可塑性シート7を得た。
[実施例5]スプリント用熱可塑性シート1
ポリエチレンテレフタレート:2000gおよびイオン徐放性ガラス1:500gを加圧ニーダーに投入し、200℃で30分間混合することでイオン徐放性ガラス1とポリエチレンテレフタレートの混合物を得た。得られた混合物を押し出し成型機にて厚さ1mmのシート状に加工し、これを300x300x1mmにカットすることで、スプリント用熱可塑性シート1を得た。
[実施例6]スプリント用熱可塑性シート2
ポリエチレンテレフタレート:2000gおよびイオン徐放性ガラス2:500gを用いた以外は実施例5と同様にして、スプリント用熱可塑性シート2を得た。
[実施例7]スプリント用熱可塑性シート3
ポリエチレンテレフタレート:2000gおよびイオン徐放性ガラス3:500gを用いた以外は実施例5と同様にして、スプリント用熱可塑性シート3を得た。
[実施例8]スプリント用熱可塑性シート4
ポリエチレンテレフタレート:1500gおよびイオン徐放性ガラス3:1000gを用いた以外は実施例5と同様にして、スプリント用熱可塑性シート4を得た。
[比較例4]スプリント用熱可塑性シート5
ポリエチレンテレフタレート:2000gを用いた以外は実施例5と同様にして、スプリント用熱可塑性シート5を得た。
[比較例5]スプリント用熱可塑性シート6
ポリエチレンテレフタレート:2000gおよびNaF:500gを用いた以外は実施例5と同様にして、スプリント用熱可塑性シート6を得た。
[比較例6]スプリント用熱可塑性シート7
ポリエチレンテレフタレート:2500gおよびSOC5:500gを用いた以外は実施例5と同様にして、スプリント用熱可塑性シート7を得た。
マウスガード用熱可塑性シート組成物の評価結果を表2、スプリント用熱可塑性シート組成物の評価結果を表3にそれぞれ示す。
Figure 0005660650
pHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラス及び各種フィラーを0.1g加え、5分間撹拌した結果、イオン徐放性ガラスはpHが6.5以上となり、酸中和能を有しているのに対して、非イオン徐放性フィラーはpHが4.1とほとんど変化しておらず、酸中和能を有していないことを確認した。また、イオン徐放性ガラスから徐放される元素量(フッ化物イオンのみイオン量)は式(1)に適合し、一方、非イオン徐放性フィラーから徐放される元素量(フッ化物イオンのみイオン量)は式(1)に適合しないことが確認された。
Figure 0005660650
イオン徐放性および酸中和性
イオン徐放性ガラスを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(実施例1〜4)を浸漬した乳酸水溶液(pH4.0)は24時間経過後のpHが上昇しており、酸中和性を有していることが確認された。一方、非イオン徐放性フィラーを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(比較例1〜3)を浸漬した乳酸水溶液(pH4.0)は24時間経過後のpHに変化がなく、酸中和性を有さないことが確認された。
イオン徐放性ガラスを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(実施例1〜4)から徐放される元素量(フッ化物イオンのみイオン量)は式(1)に適合し、一方、非イオン徐放性フィラーを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(比較例1〜3)から徐放される元素量(フッ化物イオンのみイオン量)は式(1)に適合しないことが確認された。
成型下限温度および適合性
イオン徐放性ガラスを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(実施例1〜4)は、いずれも非イオン徐放性フィラーを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(比較例1〜3)と比べて、成型時における成型下限温度が低く、また成型後の口腔内装着装置と石膏模型との適合性に優れることが確認された。
Figure 0005660650
イオン徐放性および酸中和性
イオン徐放性ガラスを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(実施例5〜8)を浸漬した乳酸水溶液(pH4.0)は24時間経過後のpHが上昇しており、酸中和性を有していることが確認された。一方、非イオン徐放性フィラーを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(比較例4〜6)を浸漬した乳酸水溶液(pH)は24時間経過後のpHに変化がなく、酸中和性を有さないことが確認された。
イオン徐放性ガラスを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(実施例5〜8)から徐放される元素量(フッ化物イオンのみイオン量)は式(1)に適合し、一方、非イオン徐放性フィラーを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(比較例4〜6)から徐放される元素量(フッ化物イオンのみイオン量)は式(1)に適合しないことが確認された。
成型下限温度および適合性
イオン徐放性ガラスを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(実施例5〜8)は、いずれも非イオン徐放性フィラーを配合したマウスガード用熱可塑性シート組成物(比較例4〜6)と比べて、成型時における成型下限温度が低く、また成型後の口腔内装着装置と石膏模型との適合性に優れることが確認された。

Claims (1)

  1. 熱可塑性樹脂(a)にイオン徐放性ガラス(b)が含まれ、
    イオン徐放性ガラス(b)のガラス組成範囲は
    SiO2 15〜35質量%、
    Al2O3 15〜30質量%、
    B2O3 5〜20質量%、
    SrO 20〜45質量%、
    F 5〜15質量%、
    Na2O 0〜10質量%
    を含み、
    フッ化物イオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ホウ酸イオンを徐放し、
    熱可塑性樹脂(a)及びイオン徐放性ガラス(b)を100重量部としたとき、熱可塑性樹脂(a)の配合量が60〜80重量部、イオン徐放性ガラス(b)の配合量が20〜40重量部であることを特徴とするマウスガード又はスプリント作製用熱可塑性シート組成物。
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