JP3378264B2 - グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末の製造方法 - Google Patents
グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末の製造方法Info
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Description
オノマーセメントの粉末成分として利用されるアルミノ
シリケートガラス粉末に関するものである。
はアルミノシリケートガラス粉末(以下、ガラス粉末)
とポリアクリル酸などのポリアルケン酸(以下、ポリ
酸)とを水の存在下で練和し、反応硬化させることによ
って得られる。この硬化物は歯髄に対する為害性が低
く、エナメル質や象牙質などの歯質に対してもすぐれた
接着力を有している。さらに硬化物からは長期間に渉
り、微量のフッ素イオンが口腔内で放出されるためエナ
メル質および象牙質に耐ウ蝕性を与える効果が認められ
ている。
は、他の歯科用セメント例えばリン酸亜鉛セメントにな
いすぐれた特徴を有するが、このセメントが実際に市場
に広く受け入れられるか否かは、これらの性状以外に
も、破砕抗力、崩壊率、透光性などの理工学的性状は勿
論、これらの性状と同等或いはそれ以上の比重で臨床で
の使い易さ、すなわち操作性が重要視されている。操作
性とは所定の重量比でガラス粉末、ポリ酸、及び水の練
和を開始してからある一定時間までの練和物の諸性状を
表わし、この中には操作時間、硬化(凝固)時間、稠度
などがあり、これらの測定方法などについての規格がJ
ISやBSなどに詳しく定められている。実際の臨床で
は、歯科衛生士や医師が余裕をもって作業を行うために
操作時間は可能な限り長く、逆に口腔内に装入(着)し
てからはすぐに硬化し実用に耐えるセメントが望まれて
いる。
の研究がなされてきた。例えば、酒石酸を調整剤として
ポリ酸溶液中に添加し、操作時間を延長させる手法(特
公昭55−8019)、ガラス粉末を酸で洗浄し、粉末
表面に存在する陽イオン、例えばカルシウムイオンを除
去し、ポリ酸との硬化反応を実質的に遅延させる方法
(特公昭59−5536)、ポリ酸溶液にフルオロ錯塩
を添加させる方法(特公昭56−37964)、さらに
ガラスフリットを酒石酸の存在下、乾式にて微粉砕し、
酒石酸とガラス粉末とをメカノ・ケミカル的に処理する
方法(特開昭63−225567)などが提案されてい
る。
の操作性向上のために、数多くの提案がなされてきた
が、未だ十分であるとは言い難い。特に多くの臨床家
(歯科医)は、歴史のあるリン酸亜鉛セメントに習熟し
使い慣れているため、このセメントの操作性と比較する
と不足と考えられ、グラスアイオノマーセメントの普及
を妨げる一因となっている。又、操作性の向上、特に操
作時間の延長化は歯科の分野のみならず、外科ひいては
工業的分野例えば水道工事(漏水対策)や建築内装工事
への適用も可能になり、その利用は大きく広がるものと
期待される。尚、第三成分の単なる添加による方法で
は、これらを多量に加える必要があり、ひいては硬化セ
メントの物性を著しく低下させる原因になりやすい。
ざし、ガラス粉末の性状について鋭意研究を進めた結
果、意外にもグラスアイオノマーセメントの粉末成分と
してのガラス粉末であって、酒石酸を含む市販のポリ酸
溶液と練和した時の操作時間が2分以内、かつ凝固時間
が5分以内の特性を示す微粉末のガラス粉末をカルボン
酸の存在下で100℃以上400℃以下の温度で加熱処
理することにより、その後のセメント液成分(ポリアル
ケン酸)との練和・硬化反応における、操作性が著しく
向上することを見い出し、本発明を完成するに到った。
通常、操作時間を長くしようとすると凝固(硬化)時間
も著しく長くなりJIS規格(T6602)の凝固時間
の上限8分を越えてしまう場合が多い。しかし、本発明
によれば極めて簡便な処理によって凝固時間をJIS規
格の範囲内に維持しつつ操作時間を大幅に延長できる。
尚、本明細書において操作時間とは英国標準規格“歯科
用グラスアイオノマーセメント”BS6039(198
1)に準拠する。
ガラス、即ちグラスアイオノマーセメントの粉末成分と
して使用されるアルミノシリケートガラス粉末に広く適
用可能である。このガラス粉末は、通常、シリカ(Si
O2)、アルミナ(Al2O3)及びカルシウム成分
(CaO)を主成分とし、さらに0〜20wt%のフッ
素成分(F)、0〜10wt%のリン成分(P
2O5)、0〜10wt%のナトリウム成分(Na
2O)等が含まれる。例えば、特公昭50−2432
8、同59−5536を参照されたい。もっとも、これ
らに限定する趣旨ではなく、本発明による操作性向上効
果が得られる限り、種々の組成のアルミノシリケートガ
ラス粉末を包含する。グラスアイオノマーセメント用ガ
ラスは、常法にしたがって、例えば次のように製造され
る。即ち、天然或いは人工の原料を所定の重量で秤量
し、十分に混合する。次いで、この混合物を1100℃
〜1500℃の高温で均質に溶解した後、急冷却し、ガ
ラスフリットを作製する。このガラスフリットは通常の
粉砕方法、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル
等で乾式微粉砕されるが、最終的な粉末粒度は最大でも
50μm以下、好ましくは40μm、合着用に際しては
25μm以下にするのが望ましい。一方、1μm以下の
微粉が多くなると、理工学的特性は向上するが操作性等
は逆に低下する。そして、こうして得られたガラス粉末
に本発明のカルボン酸存在下での熱処理を施す。このガ
ラス粉末は未処理の状態で(本発明による処理をしない
状態で)、酒石酸を含む市販のポリ酸溶液と練和した
時、例えば英国規格(BS)6039に定める方法で操
作時間が3分以内、凝固時間が7分以内であれば使用可
能であるが、本発明においては操作時間が2分以内、凝
固時間が5分以内の特性を示すガラス粉末を用いること
によって、その効果が顕著に発揮される。
ボン酸はガラス粉末とポリ酸との初期硬化反応を若干遅
延させることにより、操作性を向上し、反応終期におけ
るセメント硬化物の特性に影響を及ぼさないものを選択
する。カルボン酸は分子内にカルボキシル基(−COO
H)を有する有機酸であり、例えば、カルボキシル基1
個の酢酸、乳酸、サリチル酸、グルコン酸、同2個のシ
ュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、同
3個のクエン酸、同4個のエチレンジアミン四酢酸(E
DTA)酸等が挙げられる。又、これらの混合物であっ
てもよい。性状は固体、液体を問わず、例えば酒石酸、
コハク酸など上記カルボン酸の多くのものが常温にて固
体(粉末)である。粉末の場合、その平均粒径はガラス
粉末と均一な混合状態を少量で効率よく達成するために
は細かい方が好ましく、ガラス粉末の平均粒径以下が望
ましい。
をガラス粉末に添加して、両者を混合する。ガラス粉末
とカルボン酸との混合はV型やリボン型の混合機を用い
ても可能であるが、カルボン酸が粉末の場合、粉体間の
比重差や出発粒径が違うため十分に混合するには、せん
断力、或いは衝撃力を伴う振動ミル、ボールミルなどを
利用するのが好ましい。次いでこの混合物をオーブン或
いは熱処理炉に移し、100℃以上400℃以下の温度
で所定時間熱処理する。100℃未満では長時間でも加
熱による効果が少く、一方400℃を越えると比較的短
時間でもカルボン酸等の熱分解により、熱処理物が灰色
から黒色に着色するため、著しくその商品価値が減じら
れる。セメントの使用目的や利用するカルボン酸の種類
によって処理温度、保持時間を適宜選択するとよいが、
通常150〜250℃の温度で数時間保持することによ
り操作性の向上が十分に認められる。処理時間は0.1時
間では短すぎ、好ましくは4〜24時間である。所要の
カルボン酸量については、ガラス粉末重量に対して0.1
wt%未満ではその効果が不足であり、又10wt%を
越えるとセメント硬化体の物性に対して影響を及ぼすた
め、好ましくは0.2%以上5%以下である。
不明であるが、ガラス表面近傍に存在するカルシウム
(Ca)等の2価アルカリ土類金属と添加したカルボン
酸が加熱により反応してある種の化合物、たとえばカル
シウム塩を生成するため、通常のポリ酸とカルシウム等
との硬化、重合反応が抑制されるためと思われる。又、
カルシウム塩の生成を検出する手段としては、少量の生
成量及び粉末表面に存在するという点から、拡散反射法
によるフーリエ変換式赤外分光分析法(DRFT−I
R)が適し、カルボン酸等の有機物の状態変化が測定で
きる。そして、本発明製法によって得られるグラスアイ
オノマーガラス粉末はDRFT−IRにおいて1700
〜1600cm-1の間に明確な吸収ピークが認められた
(図4参照)。
らに詳しく説明する。
ロアルミノシリケートガラス粉末(具体的組成(wt
%)SiO2:31,Al2O3:28,CaO:9,B
aO:11,F:12,P2O5:7,ZnO:2)に、
d-酒石酸(純度98%以上)を所定量添加し、メノー
乳鉢中で30分間乾式混合した。次いで、この混合物を
オーブンに移し、各温度で5時間加熱した後、とり出し
デシケーター中で放冷した。この熱処理ガラス粉末を市
販の硬化用ポリ酸溶液((株)松風製 登録商標ハイボ
ンドC ポリアクリル酸共重合体、酒石酸約8%入)を
用いて粉/液比1.5/1で練和し、その時のセメント
(ペースト)の操作時間をBS6039で、凝固時間を
JIS T6602に準拠して調べた。
添加量と操作時間及び凝固時間との関係を表1に示す。
なお比較例はガラス粉末を単に熱処理した(酒石酸無添
加)場合である。
べて、酒石酸を0.5〜5%添加して熱処理してなる実
施例試料No.1〜4の熱処理ガラス粉末は操作時間が
延長している。そして、単に室温(R.T)にて酒石酸
で処理するのに比べて、150℃〜300℃の各温度で
熱処理した場合、操作時間を更に延長できることがわか
る。
酒石酸の添加量が多く(5.0wt%)かつ熱処理温度
が高い(300℃)場合を除いて全てJIS規格の8分
以内に収まっている。又、殆どの実施例がより好ましい
凝固時間である6分以内に収まっている。
リケートガラス粉末(組成 SiO2:30wt%,A
l2O3:24%,SrF2:33%,AlPO4:12
%,Na2O:1%)に各種のカルボン酸を加え、25
0℃、7時間の熱処理を行った。そして、この熱処理ガ
ラス粉末を用いて上記実施例と同様に硬化用ポリ酸溶液
と練和して、セメントの操作時間及び凝固時間を調べ
た。結果を表2に示す。
酸を添加して熱処理された熱処理ガラス粉末について
も、同様に凝固時間をJIS規格の8分以内(全ての実
施例が6分以内)に収めつつ操作時間の著しい延長が認
められた。
料(ガラス粉末に酒石酸を添加せずに単に熱処理したも
の)について引きつづき硬化(凝固)したセメントの理
工学的性状をJIS6602に準拠して調べた。結果を
表3に示す。
較例試料と同程度の理工学的性状を示していることがわ
かる。 因に、被膜厚さは薄ければ薄い程、接着強度が
高くなり、長持ちし、違和感がなくなり好ましいのであ
るが、この点においても実施例のガラス粉末は極めて優
れている。
ス粉末(実施例1の試料No.1の組成を有するも
の)、及びc)実施例1試料No.4と同様な組成を有
する酒石酸添加ガラス粉末を、 夫々ガラス製シャーレ
中で秤量し、軽くフタをした後、200℃×8時間熱処
理した。処理後の重量変化と残留物を拡散反射法フーリ
エ変換赤外分光分析(DRFT−IR)で調べた。それ
らの結果を表4及び図1〜4に示す。
る酒石酸添加ガラス粉末は、a)酒石酸単独のものに比
べて、3倍以上カルボン酸(酒石酸)が残留しているこ
とがわかる。
であり、図1はa)酒石酸(常温時)、図2はa)酒石
酸(200℃×8hr熱処理後)、図3はb)がガラス
粉末(常温時:熱処理後も同じ)、そして、図4はc)
実施例1試料4と同様な組成を有する酒石酸添加ガラス
粉末(200℃×8hr熱処理後)についての結果を示
す。図3と図4との対比から明らかなように、実施例に
係る試料c)は、1700〜1600cm-1の間にCO
に基因すると思われる明確な吸収ピークが認められる。
因に、特開昭63−225567号(粉砕時にカルボン
酸を添加するが熱処理を施さないもの)では酒石酸1%
添加以上で約3300と3400cm-1に鋭い吸収ピー
クが示されているが、本実施例の試料では現われなかっ
た。
試料である酒石酸5%添加ガラス粉末について、空気中
5℃/分で300℃まで加熱したときの状態変化(重
量、発熱、分解など)をTG−DTA(重量、示差熱分
析法)で調べた。
である。この図5から酒石酸は約170℃まで安定に存
在し約172℃で融解することがわかる。しかし、17
5℃からTG曲線が右下りに変化し、257℃からより
急激となり、275℃以上で0となる。一方DTA曲線
は172℃で大きな吸収ピーク、すなわち吸熱ピーク
(融解)を示し、275℃で第2の吸熱ピークを示して
いる。これらのことから酒石酸単独では175℃から分
解を始め257℃で急激になり、270℃以上で消散し
てしまうことが理解される。
である酒石酸5%添加ガラス粉末についてのTG−DT
A曲線である。図5と同様、未反応の酒石酸が約175
℃で融解する。これ以上の温度では酒石酸の分解による
TG曲線の右下がり(重量減少を示す。)が明らかに見
えるが、200℃以上の分解速度は図5の場合よりも遅
くなり、300℃でも4%の重量減少(酒石酸のみの場
合5%の重量減少)であり、すなわち酒石酸が1%残
る。
減少速度が遅く、又300℃加熱によっても酒石酸が残
存していることがこの点よりも明らかである。
ラス粉末100部に対し、酒石酸を5部加え、十分に乾
式混合した。次いでこの混合物を200℃、8時間化熱
処理し、粉液比1.5/1でセメントを作製し、その時
の操作時間と凝固時間を調べた(表5)。
いて酒石酸を添加して熱処理した場合においても、同様
に凝固時間をJIS規格の8分以内に収めつつ操作時間
を著しく延長できることがわかる。
%,CaF2:23%,AlF3:12%,ZnO:12
%,AlPO4:12%の組成を持つ、平均粒径3.2
μmのガラス粉末を実施例2と同様に処理し、カルボン
酸添加の熱処理効果を調べた(表6)、尚、比較例はカ
ルボン酸を添加せずに同様に熱処理したものである。
添加した場合においても、同様に凝固時間をJIS規格
の8分以内に収めつつ操作時間を著しく延長できること
がわかる。
う極めて簡便な処理によって、硬化セメントの物性に殆
ど悪影響を与えることなく、グラスアイオノマーガラス
粉末の操作時間を著しく延長できる。又、用途に応じ
て、カルボン酸の種類・量或いは加熱温度・時間等を変
えることによってグラスアイオノマーガラス粉末の操作
時間や凝固時間を容易に調整できる。
時)
℃×8hr熱処理後)
温時、熱処理後も同じ)
の組成を有する酒石酸添加ガラス粉末:200℃×8h
r熱処理後)
する酒石酸添加ガラス粉末)
Claims (4)
- 【請求項1】ガラス粉末とカルボン酸の混合物を、10
0℃以上400℃以下の温度で加熱処理してグラスアイ
オノマーセメント用ガラス粉末を製造する方法であっ
て、前記熱処理前のガラス粉末が英国規格BS6039
に定める方法で操作時間2分以内、かつJIS規格(T
6602)に定める方法で凝固時間5分以内の特性を示
す微粉末のガラス粉末であり、前記混合物が無溶媒で加
熱処理されることを特徴とするグラスアイオノマーセメ
ント用ガラス粉末の製造方法。 - 【請求項2】熱処理用のカルボン酸が分子内にカルボキ
シル基を1から4個含むカルボン酸である請求項1に記
載の製造方法。 - 【請求項3】ガラス粉末の重量に基づき、カルボン酸を
0.1〜10wt%添加する請求項1に記載の製造方
法。 - 【請求項4】熱処理されたガラス粉末が拡散反射法フー
リエ変換式赤外分光分析で1700〜1600cm−1
の間に明確な吸収ピークを示す請求項1に記載の製造方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28551091A JP3378264B2 (ja) | 1991-10-07 | 1991-10-07 | グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28551091A JP3378264B2 (ja) | 1991-10-07 | 1991-10-07 | グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0597622A JPH0597622A (ja) | 1993-04-20 |
JP3378264B2 true JP3378264B2 (ja) | 2003-02-17 |
Family
ID=17692465
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP28551091A Expired - Lifetime JP3378264B2 (ja) | 1991-10-07 | 1991-10-07 | グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3378264B2 (ja) |
-
1991
- 1991-10-07 JP JP28551091A patent/JP3378264B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0597622A (ja) | 1993-04-20 |
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