JP2796461B2 - グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末及びその製造方法 - Google Patents

グラスアイオノマーセメント用ガラス粉末及びその製造方法

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JP2796461B2 JP3285511A JP28551191A JP2796461B2 JP 2796461 B2 JP2796461 B2 JP 2796461B2 JP 3285511 A JP3285511 A JP 3285511A JP 28551191 A JP28551191 A JP 28551191A JP 2796461 B2 JP2796461 B2 JP 2796461B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主に歯科用グラスアイオ
ノマーセメントの粉末成分として使用されるアルミノシ
リケートガラス粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯科用グラスアイオノマーセメントはア
ルミノシリケートガラス粉末(以下、ガラス粉末)とポ
リアルケン酸(以下、ポリ酸)とを水の存在下で練和
し、反応硬化せしめることによって得られる。この硬化
物は歯髄に対する為害作業が非常に少く又、エナメル質
や象牙質などの歯質に対してもすぐれた接着力を有し、
長期間の辺縁封鎖性にもすぐれている。さらに硬化した
セメントからは長期に渉り、微量のフッ素が放出され続
けられるので、耐ウ蝕性が発現される。
【0003】このようにグラスアイオノマーセメントは
すぐれた特徴を有するが、実際に市場に受け入れられる
ためには、これ以外の性状、例えば破砕抗力、崩壊率、
透光度などの理工学的性状、更には、これらの性状と同
等或いはそれ以上の比重で臨床での使い易さ、すなわち
操作性が重要である。操作性とはガラス粉末、ポリ酸及
び水を練和し始めてからある一定の時間までの練和物の
特性を言い、この中には操作時間、凝固時間、稠度など
がJISやBSなどによって定義されている。実際の臨
床では歯科衛生士や医師が余裕をもって作業を行うため
に操作時間が可能な限り長く、一方口腔内に装入した時
点で急激に硬化するようなセメントが望まれている。
【0004】それ故、この操作性、換言すれば操作時間
と凝固時間をともに満足させるため、多くの努力がなさ
れてきた。例えば、酒石酸などを調整剤として利用する
手法(特公昭55−8019)、ガラス粉末を酸で洗浄
し、表面近傍に存在する可溶性カルシウムなどを除去
し、ポリ酸との硬化反応を実質的に遅延させる方法(特
公昭59−5536)、ポリ酸溶液に無機酸を添加する
方法(特公昭56−37964)、又ガラス塊を酒石酸
の存在下で微粉砕し、表面処理する方法(特開昭63−
225567)等が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のごとくグラスア
イオノマーセメントの操作性を向上すべく数多くの提案
がなされてきたが、未だ十分とは言い難い。特に多くの
臨床家が長い間リン酸亜鉛セメントに習熟しているため
このセメントの操作性と比較すると不足がちと思われ、
グラスアイオノマーセメントの普及を妨げる一因となっ
ている。又、操作性の向上、特に操作時間の延長化は歯
科の分野のみならず、外科ひいては工業的分野例えば水
道工事(漏水対策)や建築内装工事への適用も可能にな
り、その利用は大きく広がるものと期待される。尚、酒
石酸などの第三成分を単に添加し、操作性の向上をはか
る手法ではガラス粉末やポリ酸溶液に多量に加える必要
があり、硬化物の理工学的物性、特に破砕抗力の低下を
おこす原因となる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、製造工程の
大幅な変更や増設をひきおこすことなく、又第三成分の
多量添加によるセメント硬化体の物性値低下を招くこと
なく操作性を単純な手段で向上すべく鋭意研究を進めた
結果、意外にもグラスアイオノマーセメントの粉末成分
としてのガラス粉末に水の存在下でカルボン酸を混在さ
せて熱処理することにより、その後のセメント液成分
(ポリアルケン酸)との練和・硬化反応における操作性
が著しく向上することを見い出した。通常、操作時間を
長くしようとすると凝固(硬化)時間も著しく長くなり
JIS規格(T6602)の凝固時間の上限8分を越え
てしまう場合が多い。しかし、本発明によれば極めて簡
便な処理によって凝固時間をJIS規格の範囲内に維持
しつつ操作時間を大幅に延長できる。
【0007】尚、本明細書において操作時間とは英国標
準規格“歯科用グラスアイオノマーセメント”BS60
39(1981)に準拠する。
【0008】本発明はグラスアイオノマーセメント用ガ
ラス、即ちグラスアイオノマーセメントの粉末成分とし
て使用されるアルミノシリケートガラス粉末に広く適用
可能である。このガラス粉末は、通常シリカ(Si
2)、アルミナ(Al23)、カルシウム(CaO)
を主成分とし、さらにフッ素成分(F)、リン成分(P
25)、ナトリウム成分(Na2O)等が含まれてい
る。例えば、特公昭50−24328、同59−553
6を参照されたい。もっとも、これらに限定する趣旨で
はなく、本発明による操作性向上効果が得られる限り、
種々の組成のアルミノシリケートガラス粉末を包含す
る。グラスアイオノマーセメント用ガラスは、通例に従
って、例えば次のように製造される。即ち、原料を所定
の重量比で秤量し、十分に混合したあと、1100℃以
上の高温で熔融される。均質に溶けた融体は急冷されガ
ラスフリットにされる。ガラスフリットは通常の粉砕方
法、例えばボールミル、ジェットミル、振動ミル等で微
粉砕されるが、ガラス粉末の粒径は最大でも50μm以
下好ましくは40μm以下、特に合着に使用する際には
25μm以下にすることが望ましい。一方、1μm以下
の微粉が多くなると理工学的特性は向上するが操作性等
は逆に低下する。そして、こうして得られたガラス粉末
に本発明の所定の熱処理を施す。
【0009】本発明に適するガラス粉末は、微粉砕され
未処理の状態で(本発明による処理をしない状態で)、
慣用のポリ酸溶液と練和された時、例えば英国規格(B
S)6039に定める方法で操作時間が3分以内、好ま
しくは2分以内、より好ましくは1分以内、又凝固時間
も7分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは4分
以内の比較的早い性状を示すガラス粉末に対し、その効
果が特に顕著に発揮される。
【0010】本発明にて使用されるカルボン酸としては
ガラス粉末とポリ酸との硬化反応を始(初)期段階で遅
延させることによって操作性を向上させる一方、セメン
ト硬化物特性に対して悪影響を及ぼさないものを選択す
る。カルボン酸は分子内にカルボキシル基(−COO
H)を有する有機酸であり、例えば、カルボキシル基1
個の乳酸、酢酸、グルコン酸、サリチル酸、同2個のシ
ュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、同
3個のクエン酸、同4個のエチレンジアミン四酢酸(E
DTA)などが挙げられ、最も好ましいものはd、l、
(dl)酒石酸である。又、これらの混合物であっても
よい。性状は固体、液体を問わず、水溶性であることが
好ましい。上記カルボン酸の多くのものが常温にて固体
(粉末)である。粉末の場合、その粒径は少量でガラス
粉末と均一な混合状態を早く達成するには細かい方が有
利である。
【0011】こうした固体又は液体カルボン酸の所定量
をガラス粉末に添加して混合する。この場合、リボン型
やV型混合機などで乾式で機械的に単に混合するだけで
は操作性は殆ど向上しない。多量、例えばガラス粉末重
量に対し5%を越える量をもって添加したときのみ若干
その効果が認められるが、上述したごとく硬化物特性は
大幅に低下してしまう。しかし、水の存在下でガラス粉
末にカルボン酸を混在させた後、熱処理することによ
り、カルボン酸の添加量が少量であっても操作性の向上
効果が明確に認められる。即ち、ガラス粉末に対して
0.1wt%以上、好ましくは0.3wt%以上で充分
効果があり、熱処理条件等によっては2%の添加では十
分すぎる場合もある。4%程度添加すると硬化時間が長
くなりすぎる傾向があり、通例5%以下で十分である。
市販のセメントセット(パック)にはガラス粉末あるい
は硬化用ポリ酸溶液中に殆んどすべてキレート化剤とし
て酒石酸などが3〜15%もの大量に含まれており、使
用時(練和時)に添加されるので、これにさらに多量の
カルボン酸添加は好ましくない。少量で十分なる効果を
発揮できるのは、カルボン酸が存在する水に溶解してイ
オンとなり、ガラス粉末の表面に急速によく到達し、表
面に存在する1価〜3価の陽イオン特にカルシウム、バ
リウム、ストロンチウムなどの2価アルカリ土類金属イ
オンと効率よく選択的に反応し、ポリ酸との反応を抑制
しているためと考えられる。カルボン酸が液体である場
合(例えば酢酸:融点17℃)であっても、同様に水を
存在させることにより、少量のカルボン酸で充分な効果
を発揮できる。
【0012】又、ガラス表面のカルシウム塩等の生成を
検出する手段としては、少量の生成量、粉体表面での生
成という点から拡散反射法によるフーリエ変換式赤外分
光分析(DRFT−IR)が適し、カルボン酸等の有機
物の状態変化が測定できる。
【0013】水はカルボン酸の水溶液として、少量なら
ばガラス粉末にスプレー等で均一に散布する方法、多い
ときはペースト状やスラリー状になるほど添加しても良
い。この場合、水溶液の濃度は適宜調整して差支えない
が、通例1〜10wt/vol%(カルボン酸のg数/
水100ml)程度で使用するとよい。又別法としてガ
ラス粉末とカルボン酸をあらかじめ混合したあと、水を
添加しても良い。ガラス粉末、カルボン酸、及び水の混
合物は例えば90〜95℃で一度余剰となった水を除去
するため、乾燥してもよい。もっとも、乾燥工程は必須
ではなく、ガラス粉末とカルボン酸及び水との混合物を
乾燥することなく次の熱処理に供してもよい。次いでこ
の混合物はオーブンに移され、100℃以上〜400℃
以下の温度で熱処理される。温度が100℃未満ではカ
ルボン酸添加による効果が十分に発揮されず、一方40
0℃を越えると比較的短時間でもカルボン酸等の熱分解
により、ガラス粉末が灰色から黒色を呈し、著しく商品
価値が損なわれ、凝固時間も長くなりすぎる傾向があ
る。ガラス粉末の組成、カルボン酸の種類、セメントの
使用目的等によって処理温度、保持時間を適宜選択する
とよいが、通常150℃から250℃の熱処理温が好ま
しく、その温度が高いほど操作時間が長くなる。又、処
理時間は0.1時間では少すぎ、好ましくは4時間から2
4時間である。温度と同様に時間も長い方が効果が大き
くなる。
【0014】
【実施例1】X線透過法で平均粒径4.7μmのフルオロ
アルミノシリケートガラス粉末(原料組成(wt%)S
iO2:31,Al23、:28,CaO:9,Ba
O:11,F:12,P25:7,ZnO:2)100
重量部(以下部)にd−酒石酸の1.0wt/vol%水
溶液(酒石酸1g/水100ml)100部を加えてス
ラリー状となし、92℃で24時間乾燥し水分を除去し
た。続いてこの乾燥物を所定の温度にあるオーブンに移
し、8時間保持して熱処理を行った後、デシケーター中
で放冷した。このように熱処理されたガラス粉末と市販
のポリ酸溶液((株)松風、ハイボンドC 登録商標
ポリアクリル酸系共重合体、酒石酸約8%入)を粉/液
比(=P/L)1.5/1の重量比で練和し、操作性及び
硬化セメントの各種理工学的性質を調べた。操作時間は
BS6039で、凝固時間、破砕抗力、被膜厚さはJI
S6602に準拠して求めた。その結果を表1に示す。
尚、比較例試料1は何ら処理を施していないガラス粉末
(カルボン酸溶液による処理及び熱処理を行なっていな
いもの)、比較例試料2は92℃乾燥後のガラス粉末
(水の存在下でのカルボン酸による処理は行ったが、熱
処理を行なっていないもの)を用いた例である。
【0015】
【表1】
【0016】表1によれば、何ら処理を施していないガ
ラス粉末(比較例試料1)に比べて、d−酒石酸を添加
して処理してなる各ガラス粉末(実施例試料1〜7、比
較例試料2)は操作時間が延長している。そして単に室
温(R.T)にて処理したガラス粉末(比較例試料2)
に比べて、100℃以上の各温度で熱処理したガラス粉
末(実施例試料1〜7)の方が、操作時間をより延長で
きることがわかる。尚、凝固時間についても延長してい
るが、殆どの実施例がJIS規格の8分以内に収ってい
る。但し、熱処理温度が400℃以上になると、凝固時
間が大幅に延長し、硬化体の物性等がかなり劣化してく
るため(実施例試料7)、熱処理温度としては本例の条
件の場合400℃未満が好ましいことがわかる。因に、
被膜厚さは薄ければ薄い程、接着強度が高くなり、長持
ちし、違和感がなくなり好ましいのであるが、この点に
おいても本実施例のガラス粉末は極めて優れている。
【0017】
【実施例2】実施例1のフルオロアルミノシリケートガ
ラス粉末100部にd−酒石酸(固体)を所定量添加
し、乾式にて乳バチ中で30分間混合した。これに水を
35部滴下しペースト状となした後、90℃で16時間
乾燥した。次いで200℃、8時間の熱処理を行った
後、放冷した。そして、上記実施例1と同様に市販のポ
リ酸溶液と練和・硬化させて、各特性を調べた。その結
果を表2に示す。尚、比較例試料1は酒石酸を添加せず
に熱処理のみを行ったガラス粉末、及び比較例試料2,
同3は酒石酸は添加したが室温(R.T)に保持するだ
けで熱処理を行なわなかったガラス粉末を用いた例であ
る。
【0018】
【表2】
【0019】表2によれば、酒石酸の添加量が僅か0.
25部でも(実施例試料8)、熱処理を行なった場合に
は、操作時間をかなり延長できることがわかる。又、被
膜厚さの点においても、本実施例試料のいずれもが比較
例試料3に比べて格段に優れている。但し、酒石酸の添
加量が4.0部になると、凝固時間がJIS規格の上限
8分を越え、破砕抗力もかなり低下してくるため(実施
例試料12)、酒石酸の添加量としては本例の条件下で
は4.0部未満が好ましいことがわかる。
【0020】
【実施例3】平均粒径4.3μmのフルオロアルミノシリ
ケートガラス粉末(原料組成SiO2:28wt%,A
23:19%,AlPO4:10%,CaF2:25
%,AlF3:12%,Na3AlF6:6%)100部
にl−酒石酸の8wt/vol%水溶液を、ガラス粉末
100部に対し酒石酸1部になるようにスプレーで均一
に散布し十分にガラス粉末の表面を濡らした。これを8
5℃で20時間乾燥させ、次いで200℃で所定時間熱
処理した後、放冷した。そして、上記実施例1と同様に
市販のポリ酸溶液と練和・硬化させて、各特性を調べ
た。その結果を表3に示す。尚、比較例試料1は何ら処
理を施していないガラス粉末、比較例試料2はl−酒石
酸1部を添加し乳バチ中で30分間乾式混合しただけで
熱処理を施していないガラス粉末を用いた例である。
【0021】
【表3】
【0022】表3によれば、何ら処理を施していないガ
ラス粉末(比較例試料1)に比べて、l−酒石酸を添加
して熱処理してなる各ガラス粉末(実施例試料14〜1
8、比較例試料2)は操作時間が延長しており、熱処理
時間が長くなる程より延長できることがわかる。又、酒
石酸と乾式混合しただけで熱処理を施していないガラス
粉末(比較例試料2)に比べて、酒石酸の水溶液を用い
て処理しかつ熱処理を施してなるガラス粉末(実施例試
料16)の方が操作時間を大幅に延長でき、更に熱処理
時間を短くしても操作時間を延長できることがわかる
(比較例試料2vs.実施例試料14,同15)。尚、凝
固時間についても延長しているが、いずれの実施例試料
もJIS規格の上限8分以内に収まっている。又、被膜
厚さの点においても本実施例試料14〜18のいずれも
が比較例試料1,同2に比べて優れている。
【0023】
【実施例4】表4に示すように、化学組成及び平均粒径
の異なるフルオロアルミノシリケートガラス粉末A、B
及びCを用意した。
【0024】
【表4】
【0025】これらガラス粉末A,B,C100部にd
−酒石酸1部、水100部を加えて均一なスラリー状と
した。これを90℃で15時間乾燥させ、次いで200
℃で8時間の熱処理を行った。この熱処理ガラス粉末1.
5部をポリ酸(アクリル酸−マレイン酸共重合体、酒石
酸11%入)水溶液1部で練和し、操作時間及び凝固時
間を調べた。その結果を表5に示す。尚、比較例試料
1,同2,同3は微粉砕したままの何ら処理を施してい
ないガラス粉末A,B及びCを用いた例である。
【0026】
【表5】
【0027】表5によれば、各種のフルオロアルミノシ
リケートガラス粉末について、酒石酸及び水を添加して
熱処理した場合、操作時間を延長できることがわかる。
これらの本実施例試料19〜21においても、凝固時間
はJIS規格の上限8分以内である。これに対して、本
発明の処理を何も施していない比較例1,2及び3はい
ずれも操作時間が1分ないしはそれ以下であり極めて短
い。因に、ガラス粉末Aは当初から粘度が高くだらだら
と硬化し、ガラス粉末Bはポリ酸液と混ぜるとすぐに急
速に硬化し、ガラス粉末Cは粉末B程ではないが急速に
硬化してしまう。
【0028】
【実施例5】実施例1と同様のフルオロアルミノシリケ
ートガラス粉末100部に各種のカルボン酸を所定の添
加量で溶解又は分散せしめた水溶液50部を加えて均一
なスラリーとした。これを97℃で10時間乾燥させ、
次いで200℃×8時間の熱処理を行った。この熱処理
ガラス粉末を実施例1と同様のポリ酸溶液にて粉/液比
1.5/1で練和した。その結果を表6に示す。尚、比較
例試料1はカルボン酸水溶液を添加せずに、単に熱処理
されたガラス粉末、及び比較例試料2,同3は単にカル
ボン酸水溶液を添加するだけで熱処理を行なわなかった
ガラス粉末を用いた例である。
【0029】
【表6】
【0030】表6によれば、カルボン酸水溶液を添加せ
ずに単に熱処理されただけのガラス粉末(比較例試料
1)に比べて種々のカルボン酸を添加して熱処理してな
るガラス粉末(実施例試料22〜34)は、カルボン酸
の添加量が僅か0.5〜2.0部程度でも、操作時間を
充分に延長できることがわかる。又、この操作時間の延
長は、カルボン酸の種類に拘らず認められる。又、凝固
時間についても、シュウ酸1.0部添加の場合を除き、
全ての実施例試料がJIS規格の上限8分以内に収って
おり、殆どの実施例試料がより好ましい凝固時間である
6分以内に収っている。
【0031】
【実施例6】SiO2:26wt%(以下単に%),A
23:15%,CaF2:23%,AlF3:12%,
ZnO:12%,AlPO4:12%の組成を持ち、平
均粒径3.7μmのガラス粉末100部に各種カルボン
酸と水50部を添加し、これを190℃に保持したオー
ブンに直接入れ、12時間熱処理した。この処理済粉末
を市販のポリ酸溶液((株)而至歯科工業 登録商標
フジアイオノマー I)を用いて粉液比1.5/1で練
和し、熱処理の効果を調べた(表7)。
【0032】
【表7】
【0033】表7によれば、本組成のガラス粉末につい
て乾燥工程がなくても、カルボン酸及び水を添加して熱
処理してなるガラス粉末(実施例試料35〜39)は、
カルボン酸の添加量が僅か0.5〜2.0部程度でも操
作時間を充分に延長できることがわかる。
【0034】
【実施例7】SiO2:30wt%(以下単に%),A
23:24%,SrF2:33%,AlPO4:12
%,Na2O:1%の組成で各種平均粒径のガラス粉末
100(重量)部に酒石酸1部を加え、さらに水40部
を加えて混合し、次いで95℃で10時間乾燥した。こ
れを以下実施例6と同様に処理し、熱処理の効果を調べ
た(表8)。
【0035】尚、比較例試料1〜4は、夫々実施例試料
40〜43に対応する平均粒径を有するガラス粉末を酒
石酸無添加で熱処理したものである。
【0036】
【表8】
【0037】表8によれば、各種粒度のガラス粉末につ
いて酒石酸及び水を添加して熱処理した場合において
も、同様に凝固時間をJIS規格の8分以内に収めつつ
操作時間を著しく延長できることがわかる。
【0038】
【実施例8】a)酒石酸(純度98%以上)、b)ガラ
ス粉末(実施例1試料1の組成を有するもの)、及び
c)酒石酸及び水を添加したガラス粉末(実施例1試料
1の組成を有し、酒石酸5部を含み水を加えてペースト
状となし、90度で16時間乾燥したもの)について、
200℃で8時間熱処理する前後で、拡散反射法フーリ
エ変換式赤外分光分析(DR−FT−IR)スペクトル
を調べた。それらの結果を図1〜図5に示す。
【0039】即ち、図1はa)酒石酸(常温時、熱処理
前)、図2はa)酒石酸(熱処理後)、図3はb)ガラ
ス粉末(熱処理前:熱処理後も同じ)、図4はc)酒石
酸及び水を添加したガラス粉末(熱処理前)、そして図
5はc)酒石酸及び水を添加したガラス粉末(熱処理
後)のDRFT−IRスペクトル図である。図4及び5
を図3と対比すれば明らかなように、実施例に係る試料
c)は1700〜1600cm-1の間に明確な吸収ピー
クが認められる。因みに、特開昭63−225567号
(粉砕時にカルボン酸を添加するが熱処理を施さないも
の)では酒石酸1%以上の添加で約3400〜3300
cm-1に鋭い吸収ピークが示されているが、本実施例に
係る試料では現われなかった。
【0040】
【実施例9】a)酒石酸、及びc)実施例1試料1の組
成を有するガラス粉末に酒石酸を5部含み水を加えてペ
ースト状となし、90℃で16時間乾燥したものを、空
気中5℃/分の速度で300℃まで加熱したときの状態
変化(重量、発熱、分解など)を重量・示差熱分析法
(TG−DTA)で調べた。
【0041】図6はa)酒石酸についてのTG−DTA
曲線である。この図6から、172℃付近に酒石酸の融
解に一致する変化があり、これ以上の温度では酒石酸の
分解蒸発が観察される。一方、図7はc)酒石酸及び水
を添加したガラス粉末についてのTG−DTA曲線であ
る。この図7から、図6のような酒石酸単独の状態変化
に起因する変化は認められない。即ち、添加した酒石酸
はガラス粉末と反応して安定な化合物を生成し、そのT
G線によれば300℃でもその化合物が残存するものと
認められる。因みに、純ガラス粉末についてのTG−D
TA曲線では変化は認められなかった。
【0042】
【発明の効果】水の存在下でカルボン酸を混在させて熱
処理するという極めて簡便な処理によって、硬化セメン
トの物性に殆ど悪影響を与えることなく、グラスアイオ
ノマーセメント用ガラス粉末の操作時間を著しく延長で
きる。又、用途に応じて、カルボン酸の種類・量、水の
存在状態或いは加熱温度・時間等を変えることによって
グラスアイオノマーガラス粉末の操作時間や凝固時間を
容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DRFT−IRスペクトル図(酒石酸:常温
時、熱処理前)
【図2】DRFT−IRスペクトル図(酒石酸:熱処理
後)
【図3】DRFT−IRスペクトル図(ガラス粉末:熱
処理前、熱処理後も同じ)
【図4】DRFT−IRスペクトル図(酒石酸及び水添
加ガラス粉末:熱処理前)
【図5】DRFT−IRスペクトル図(酒石酸及び水添
加ガラス粉末:熱処理後)
【図6】TG−DTA曲線(酒石酸)
【図7】TG−DTA曲線(酒石酸及び水添加ガラス粉
末)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野々川 秀樹 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番 36号 株式会社ノリタケカンパニーリミ テド内 (72)発明者 増原 英一 東京都文京区本駒込2−5−11 (72)発明者 小宮 重夫 埼玉県浦和市南浦和3−7−10 (72)発明者 中村 哲也 茨城県つくば市春日2−20−3 (72)発明者 後藤 義隆 茨城県つくば市梅園2−24−5 (72)発明者 中山 雅陽 茨城県土浦市永国1132−9 (56)参考文献 特開 昭63−225567(JP,A) 特開 昭56−17943(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 6/06 C03C 3/062 C03C 12/00 C03C 17/28 C04B 28/28

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス粉末の表面がカルボン酸で熱処理さ
    れていることを特徴とするグラスアイオノマーセメント
    用ガラス粉末。
  2. 【請求項2】熱処理用のカルボン酸が分子内にカルボキ
    シル基を1個から4個含むカルボン酸である請求項1に
    記載のガラス粉末。
  3. 【請求項3】処理前のガラス粉末が操作時間2分以内、
    凝固時間5分以内である請求項1に記載のガラス粉末。
  4. 【請求項4】熱処理されたガラス粉末が拡散反射法フー
    リエ変換式赤外分光分析で1700〜1600cm-1の間
    に明確な吸収ピークを示す請求項1に記載のガラス粉
    末。
  5. 【請求項5】ガラス粉末を水の存在下でカルボン酸と混
    在させ、熱処理することを特徴とするグラスアイオノマ
    ーセメント用ガラス粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】熱処理用カルボン酸が分子内にカルボキシ
    ル基を1個から4個含むカルボン酸である請求項5に記
    載の製造方法。
  7. 【請求項7】処理前のガラス粉末が操作時間2分以内、
    凝固時間5分以内である請求項5に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】ガラス粉末の重量に基づき、カルボン酸を
    0.01〜5.0wt%添加する請求項5に記載の製造
    方法。
  9. 【請求項9】ガラス粉末にカルボン酸水溶液を添加する
    請求項5に記載の製造方法。
  10. 【請求項10】ガラス粉末にカルボン酸及び水を添加す
    る請求項5に記載の製造方法。
  11. 【請求項11】ガラス粉末に水の存在下でカルボン酸を
    混在させた後、乾燥により水を除去し、次いで熱処理す
    る請求項5に記載の製造方法。
  12. 【請求項12】熱処理温度が100℃〜400℃の範囲
    にある請求項5に記載の製造方法。
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