JP5802960B2 - 歯質用接着材 - Google Patents

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Description

本発明は、象牙質及び/またはエナメル質に対して歯科用修復材を接着するための歯質用接着材に関する。
齲蝕等により損傷を受けた歯の修復には、コンポジットレジンと呼ばれる歯科用修復材料が用いられる。コンポジットレジンは歯の窩洞に充填後、重合硬化して使用されるのが一般的である。
ところが、コンポジットレジンは、歯質に対する接着性がほとんどない。従って、歯質に対する接着性を向上させるため、重合性単量体組成物からなる歯質用接着材を、コンポジットレジンを歯の窩洞に充填する前に塗布し硬化させておくことが行なわれる。そして、この歯質用接着材の窩洞面への塗布に先だって、歯質に対する接着強度を十分に向上させるために、酸水溶液を用いた歯の表面の脱灰や、歯質内部への浸透性に優れた重合性単量体を用いたプライミングなどの前処理(エッチング剤、プライマー)が、通常、行なわれる。しかし、これらの前処理を施すことは、歯質用接着材を用いた歯の修復において、操作を煩雑にしていた。
これに対して、近年、こうした操作の煩雑さの軽減を目的として、上記歯質用接着材において、歯質に対する接着性を有する重合性単量体を含有させたものが開発されている。すなわち、重合性単量体成分の少なくとも一部として、歯質(ヒドロキシアパタイトやコラーゲン)に対して、脱灰機能および高い親和性を有する酸性基(リン酸基、カルボン酸基等)を有する重合性単量体(酸性基含有重合性単量体)を含有させることで、より高い接着強度を発現させたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
こうした酸性基含有重合性単量体は、水を共存させることにより、歯質用接着材に対して高い接着力を与える。これは、酸性基による歯質の脱灰機能が水の存在によって強くなるため、また重合性組成物の歯質への浸透作用が促進されるためと考えられている。そのため、このような接着材は、脱灰機能と浸透機能を兼ね備えた、換言すれば、1回の塗布操作のみで使用できる、操作性に優れた接着材(1ステップ型接着材)として有利に使用されている(例えば、特許文献2〜4を参照)。
ところが、こうした酸性基含有重合性単量体を含有する接着材は、強い酸性を示すゆえに、長期に保管していると、該酸性基含有のものを始めとして加水分解性の化合物の分解反応を促進する問題があった。特に、斯様な加水分解反応は、その名のとおり水の存在下で加速され、分解物による液の粘度の上昇等が生じる場合もある。したがって、水を含む1液型の歯科用接着性組成物では、前記高い接着強度を長期間保持できなかった。
これに対し、加水分解に安定な重合性単量体を用いることで、保存安定性を向上させることが試みられている(例えば、特許文献5、6を参照)。しかし、一定の効果は見られるものの、いまだ満足できていなかった。
特開昭52−113089号公報 特開2004−352698号公報 特開平10−236912号公報 特開2001−72523号公報 特表2008−516951号公報 特表2005−514338号公報 特開2010−202625号公報
以上から、酸性基含有重合性単量体を含有する歯質用接着材において、長期間保管しても、加水分解性の化合物の分解が低く抑えられ、その優れた接着力が持続できるものを開発することが大きな課題であった。
本発明者らは、上記課題を克服すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、酸性基を有する重合性単量体を、重合性単量体の少なくとも一部として含んでなる歯科用接着性組成物において、その組成に、特定のシリカ系粒子を共存させ、且つ水を含有させないことにより、上記の課題が解決できること見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、
(A)酸性基を有する重合性単量体を少なくとも一部として含んでなる重合性単量体成分、及び
(B)シリカ系粒子としてフュームドシリカ
を含有する歯質用接着材であって、
前記シリカ系粒子が、比表面積が50〜500m/gであり、表面にシラノール基を少なくとも3.5個/nm2含むシリカ系粒子であり、且つ水を含まない1液の歯質用接着材が提供される。

本発明の歯質用接着材は、酸性基含有重合性単量体を含有するため、歯質に対する脱灰機能と浸透機能を良好に兼ね備えており、歯質に対して高い接着強度を有している。しかも、保存安定性に優れ、長期間保管しても、加水分解性の化合物の分解が低く抑えられ、粘度上昇等の性状変化もなく、上記高い接着強度が高度に保たれる有利なものである。
本発明の歯質用接着材は、(A)重合性単量体と、(B)シリカ系粒子とを必須成分として含有し、(A)重合性単量体はその少なくとも一部に酸性基含有重合性単量体を含み、他方、(B)シリカ系粒子は比表面積が50〜500m/gであり、表面にシラノール基を少なくとも3.5個/nm含んでいる。そして、この歯質用接着材は、水を含有していない点に大きな特徴を有している。
このように、比表面積が大きく、表面にシラノール基を多数有するシリカ系粒子が配合されているため、本発明の接着材は、水を含んでいなくても、歯質への親和性が高く、歯質内部まで良く浸透する。また、酸性基含有重合性単量体の酸性基が、口腔中の水分の存在により、歯質の脱灰機能を良好に発揮する。これらから、歯質に対して高い接着性を有する。
そうして、本発明の歯科用接着材は、上記組成に水を含んでいないため、酸性環境でありながら、接着性低下の主原因である酸性基含有重合性単量体を始めとした、加水分解性化合物の分解が大幅に抑制される。したがって、長期間保管しても、上記歯質に対する高い接着強度が良好に維持できる。
なお、本発明において、接着材が水を含んでいないとは、組成の一成分として意識的に水を加えないことだけでなく、組成物中に含まれる水分量が極めて少ないことも意味する。すなわち、原料成分の不純物や吸湿等として、若干量の水が不可避的に混入していても、効果に実質的に影響しない程度であれば、本発明では許容される。具体的には、歯科用接着材中において2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.1質量%未満で含有されていても許容される。
以下、本発明の歯質用接着材に含まれる各成分について、順次詳細に説明する。
(A)重合性単量体成分
本発明において重合性単量体は、分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を含有し、重合反応によって高分子を形成し得る化合物が制限なく使用できる。ここで、重合性不飽和基を例示すれば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エチニル基、スチリル基などを挙げることができる。特に、硬化速度の速さから、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が好ましく、アクリロイル基、メタクリロイル基が最も好ましい。
(A1)酸性基含有重合性単量体
本発明において、(A1)酸性基含有重合性単量体は、上記重合性単量体において、分子中に少なくとも1つの酸性基を有するものであり、該酸性基としては、pKa(25℃)が5より小さく、活性プロトンを解離可能な官能基を言う。好適には、次に示すような基を挙げることができる。
Figure 0005802960
本発明において、酸性基含有重合性単量体の具体例としては、下記式で表される化合物が代表的である。
Figure 0005802960
Figure 0005802960
Figure 0005802960
Figure 0005802960
(但し上記化合物中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
また、これら化合物以外にも、ビニル基に直接ホスホン酸基が結合したビニルホスホン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸等を使用することができる。
酸性基含有重合性単量体のうち、重合性不飽和基に、炭素数が6〜20個の鎖長の脂肪族炭化水素基を介して酸性基が結合された構造の化合物は、疎水性が高いため、接着界面に水が浸入しにくくなり、接着耐久性がより向上するため、より好ましい。重合性不飽和基と酸性基との間に介在する脂肪族炭化水素基は、その炭素数が8〜12個の鎖長であるのが、特に好ましい。
ここで、脂肪族炭化水素基の鎖長とは、上記重合性不飽和基と酸性基とを繋ぐ鎖部分(主鎖)の炭素数であり、脂肪族炭化水素基が側鎖を有するものであってもその炭素数は数えない。こうした長鎖の脂肪族炭化水素基は、不飽和であってもよいが、化学的安定性から飽和しているのが好ましい。脂肪族炭化水素基が分岐鎖状であって、1つの酸性基または重合性不飽和基と、複数の重合性不飽和基または酸性基を有する酸性基含有重合性単量体の場合、複数存在する重合性不飽和基と酸性基とを繋ぐ各鎖の中で、少なくとも1つが上記炭素数の長鎖であれば良いが、こうした長鎖がより多い数になる方が好ましい。なお、脂肪族炭化水素基が分岐鎖状であって、酸性基および重合性不飽和基の両方を複数有する酸性基含有重合性単量体の場合、重合性不飽和基と酸性基とを繋ぐ脂肪族炭化水素基の鎖長は、一方の基に対する最も遠い位置にある他方の基との間に介在する鎖部分の炭素数とする。
上記炭素数の要件を満足する長鎖の脂肪族炭化水素基として特に好ましいのを挙げれば、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基等のアルキレン基である。
このような長鎖の脂肪族炭化水素基が介在する酸性基含有重合性単量体として、好適なものを例示すれば、7−メタクリロイルオキシ−1,1−ヘプタンジカルボン酸、9−メタクリロイルオキシ−1,1−ノナンジカルボン酸、11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、13−メタクリロイルオキシ−1,1−トリデカンジカルボン酸、15−メタクリロイルオキシ−1,1−ペンタデカンジカルボン酸、17−メタクリロイルオキシ−1,1−ヘプタデカンジカルボン酸、18−メタクリロイルオキシ−1,1−オクタデカンジカルボン酸、6−メタクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、8−メタクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、12−メタクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、14−メタクリロイルオキシテトラデシルジハイドロジェンホスフェート、16−メタクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、18−メタクリロイルオキシオクタデシルジハイドロジェンホスフェート、20−メタクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。
以上説明した(A1)酸性基含有重合性単量体は、それぞれ単独で又は二種以上を混合して用いることができるが、これらの中でも分子内において酸の価数が2価以上になるものが、多価金属イオンとのイオン結合性の向上の観点から好ましい。分子内における、酸の価数が2価以上の酸性基含有重合性単量体は、分子内に1価の酸性基を2個以上有する形態であってもよいし、2価の酸性基であれば分子内に1個を有する形態であってもよい。このように分子内において、酸の価数が2価以上になる酸性基含有重合性単量体のみを用いた場合、上記のように強度向上の観点から好ましいが、保存安定性は若干低下する傾向がある。このため、分子内において同酸の価数が1価の酸性基を有する酸性基含有重合性単量体と、2価以上の酸性基を有する酸性基含有重合性単量体とを組み合わせて使用することがより好ましい。その中でも、
Figure 0005802960
の各酸性基を組み合わせて使用することが最も好ましい。このような系では、歯質の脱灰作用が高い(これらが、酸性度の強いリン酸系基であるためと思われる)ばかりでなく、歯質との本質的な結合力にも優れ、特に高い接着強度が得られ、更に、保存安定性も良好なものが得られる。
酸性基含有重合性単量体の含有量は、特に制限されるものではなく、重合性単量体成分全体が該酸性基含有重合性単量体で占められても良いが、接着材の歯質に対する浸透性を調節したり、硬化体の強度を向上させたりする観点からは、酸性基を有しない重合性単量体(非酸性基含有重合性単量体)と併用するのが好適である。非酸性基含有重合性単量体を併用する場合においても、酸性基含有重合性単量体は、歯質に対して高い接着強度を保つ観点から、全重合性単量体成分中において5質量%以上含有させるのが好適である。酸性基含有重合性単量体は、5〜80質量%含有させるのがより好ましく、10〜60質量%含有させるのが特に好ましい。酸性基含有重合性単量体の配合量が足りないと、脱灰が十分行われないために、エナメル質に対する接着強度が低下する傾向があり、逆に多すぎると、脱灰しすぎて象牙質の接着面が壊れ、この部分に対する接着強度が低下する傾向がある。
(A2)非酸性基含有重合性単量体
非酸性基含有重合性単量体は、少なくとも一つの重合性不飽和基を有する重合性単量体の内、酸性基を有しない公知のものが制限無く使用できる。複数の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体は、硬化速度、硬化体の機械的物性、耐水性、および耐着色性等を良好にする観点から好適に用いられる。また、(メタ)アクリレート系重合性単量体が好適に使用される。多官能性の(メタ)アクリレート系重合性単量体の代表例としては、下記(1)〜(3)に示されるものが挙げられる。
(1)二官能重合性単量体
(1−1)芳香族化合物系のもの
2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−2[4−(メタ)クリロイルオキシトリエトキシフェニル]プロパン、2[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル]−2−[4−(メタ)クリロイルオキシトリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)クリロイルオキシプロポキシフェニル]プロパン;上記の各種メタクリレートに対応するアクリレート;及びOH基含有ビニルモノマーと、脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(上記OH基含有ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、あるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートを例示できる。また、上記ジイソシアネートとしては、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを例示できる。)
(1−2)脂肪族化合物系のもの
1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;およびOH基含有ビニルモノマーと、脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(上記のOH基含有ビニルモノマーとしては、先に例示したものと同様のものを挙げることができ、脂肪族ジイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。)
(2)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート;及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(3)四官能重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;及びジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等;
(上記のジイソシアネート化合物としては、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。
これらの多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体は、それぞれ単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
さらに、必要に応じて、単官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体を用いても良い。こうした単官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体を混合して用いることも可能である。このような他の重合性単量体としては、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレン系化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物;などを挙げることができる。
また、本発明において、(A)重合性単量体成分が、前記長鎖の脂肪族炭化水素基が介在する酸性基含有重合性単量体等の疎水性が高いものを多く含む場合には、併せて2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の両親媒性の重合性単量体を併用することが好適である。このような両親媒性の重合性単量体が配合されることにより、組成の均一性を確保することができ、象牙質への浸透性がより向上する。その結果、安定して高い接着強度を得ることができる。

(B)シリカ系粒子
本発明において(B)シリカ系粒子は、比表面積が50〜500m/gであり、表面にシラノール基を少なくとも3.5個/nm含むものが使用される。歯科用接着材にシリカ系粒子をフィラー等として配合することは公知であるが、その場合に用いられるものは上記比表面積を満足しないものも多く、また、満足しているものについても、表面のシラノール基量は上記範囲を大きく下回るのが普通である。例えば、特許文献7には、酸性基含有重合性単量体を含有する歯科用接着材に対して、フュームドシリカを配合することが開示されているが、このヒュームドシリカは、係る表面のシラノール基量は0.1個/nm以上であり、上限は2個/nmになっている。
しかして、斯様に表面のシラノール基量が小さいシリカ系粒子を配合したのでは、歯質への親和性が不足し、水を含んでいない本発明の歯科用接着材では、歯質内部までの浸透性が低下し、高い接着強度が得られなくなる。ここで、シリカ系粒子表面のシラノール基量は、歯質への親和性により優れるものにする観点から、4個/nm以上あるのが好ましく、4.5個/nm以上あるのが特に好ましい。なお、シリカ系粒子表面のシラノール基量があまり大きいと、シリカの吸水性が高くなり、接着耐久性が低下する傾向があるため、6.5個/nm以下であるのが好ましく、6.0個/nm以下であるのが特に好ましい。
また、シリカ系粒子の比表面積が50m/gより小さい場合も、歯質への親和性が低下し、歯質内部への浸透性が十分でなくなる。他方、シリカ系粒子の比表面積が500m/gより大きい場合、凝集しやすくなり、沈降が生じるようになる。
本発明において、シリカ系粒子の比表面積は、BET法を用いて測定した値をいう。他方、シリカ系粒子表面のシラノール基量は、カールフィッシャー法により測定した値をいう。即ち、シリカ試料を25℃、相対湿度80%の雰囲気中に45日放置する。その後、試料を120℃で12時間乾燥した後、このシリカ試料をメタノール溶媒中に分散し、カールフィッシャー水分計(例えば、京都電子工業社製「MKS-210型」)を使用して、水分量を滴定する。滴定試薬には、例えば、「HYDRANAL COMPOSITE 5K」(Riedel−deHaen社製)を用いる。表面シラノール基量は、上記の方法で測定された水分量(質量%)から、以下の手法により計算して求める。すなわち、まず、シリカ1g当たりのシラノールの数(個/g)を、下記式により求める。

シリカ1g当たりのシラノールの数(個/g)=水分量(質量%)×0.01×水分子1個を生成するシラノールの数(=2)×アボガドロ定数/水の分子量
=水分量(質量%)×0.01×2×6.02×1023/18.0
=水分量(質量%)×6.689×1020

次いで、得られたシリカ1g当たりのシラノールの数(個/g)から下記式により、単位非表面積当たりのシラノール基数(個/nm;表面シラノール基量)を求める。

表面シラノール基量(個/nm)=水分量(質量%)×6.689×1020/(非表面積(m/g)×1018
=668.9×水分量(wt%)×非表面積(m/g)

本発明において使用するシリカ系粒子の平均粒子径は特に限定されないが、前記比表面積の範囲の要件を満足させるためには、平均1次粒子径が1〜100nm、平均二次粒子径が0.01μm〜100μmのものが好ましい。さらに、平均二次粒子径は、0.02〜10μmのものが最も好ましい。こうしたシリカの平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡にて撮影した画像を画像解析して求めたものである。具体的には、倍率10万倍において、走査電子顕微鏡にて視野を変えて50の画像を撮影し、これを用いて2500個の原体シリカ微粒子について平均一次粒子径を画像解析し、個数平均を求めた値である。また、平均二次粒子径は、遠心沈降式光透過法の粒度分布計(例えば、ブルックヘブン社製「BI−DCP」)を用いて求めた体積平均粒子径である。
本発明おいてにシリカ系粒子とは、シリカの他、シリカ−チタニア、シリカジルコニア等のシリカを主成分(10モル%以上、より好適には50モル%以上)とする他の金属酸化物との複合金属酸化物を言う。これらは結晶質であっても良いが、通常は、非晶質のものが使用される。これらのシリカ系粒子は、前記の比表面積や表面のシラノール基量の要件が満足される限り、火炎加水分解法、火炎溶融法等の乾式法、沈殿法、ゾルゲル法等の湿式法等のいずれの方法で得たものであっても良い。なかでも、上記に示した比表面積と表面シラノール基量を満足するものが得易いことから、火炎加水分解法によって製造されたフュームドシリカと呼ばれる乾式法で製造したものが最も好ましい。また、フュームドシリカは、緩やかな3次凝集構造を有しており、歯質用接着材が、後述するような酸性基を有する重合性単量体の一部が多価金属塩を形成し、イオン架橋が生じているものである場合、このイオン架橋構造と上記フュームドシリカの凝集構造とが絡んで、硬化体の接着強度が向上する効果が発揮されるため、より好ましい。
上記比表面積と表面のシラノール基量を満足するシリカは、既存のシリカの中から、これら要件を共に満足するものを選定して用いれば良い。前記したように通常のシリカ系粒子の多くは、表面シラノール基量の要件を満足しない。したがって、適切なものが入手困難な場合には、水熱処理により表面のシラノール基を増やしたり、シランカップリング剤に代表される表面処理剤でその数を減らしたりすることによって調節して、該表面シラノール基量の要件を満足するものにして用いれば良い。水熱処理は、オートクレーブに水溶液に浸したシリカ試料を入れて、通常のpH調整剤例えばリン酸塩系、クエン酸塩系の緩衝剤で液のpHを4.0〜9.0好ましくは5.5〜8.5の範囲に調整し、50 〜 200 ℃、好ましくは70〜180℃の温度で、上記所望のシラノール基量になる時間(一般には、0.5 〜 100時間の範囲から採択)静置して実施すれば良い。
表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
表面処理材の使用量は、一般に、シリカ100質量部に対して、0.5〜60質量部、より好ましくは1〜25質量部の範囲から採択される。
本発明において、(B)シリカ系粒子の配合量は、表面にあるシラノール基の機能を十分発揮させ、接着強度を向上させつつ、組成物の粘度も一定範囲に押さえて、歯質への浸透性を保持する観点から、(A)重合性単量体成分100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部の範囲であり、より好ましくは20〜60質量部であり、最も好ましくは22〜40質量部である。
(C)酸性基含有重合性単量体の多価金属塩
本発明の歯質用接着材において、(A1)酸性基含有重合性単量体は、その一部を多価金属塩として含有させても良い。特に、多価金属塩を形成する(C)多価金属イオンが、酸性基含有重合性単量体が有する酸性基の酸の価数よりも大きいイオン価の金属イオンである場合には、一個の多価金属イオンに対して、複数の酸性基含有重合性単量体がイオン結合するものになるため、硬化体では酸性基と多価金属イオンとの架橋構造が形成される。しかも、本発明においては(B)シリカ系粒子が配合されているため、該シリカ系粒子の隙間を、係るイオン架橋した重合体が絡むことになる。そして、多価金属イオンは、このシリカ系粒子上のシラノール基とも結合し、これらからより強固で密度の高い架橋ネットワークが形成されると考えられる。これらから、得られる硬化体の耐水性は大きく向上し、歯質に対する接着強度も著しく高くでき好ましい。
酸性基含有重合性単量体が、酸の価数が異なる複数の酸性基を有する場合は、多価金属イオンは、最も小さい価数の酸性基に対して、そのイオン価が上回る関係であれば好適であるが、架橋構造をより密に形成する観点からは、他の酸性基に対しても、該イオン価は上回っているのがより好ましい。
本発明において、酸性基含有重合性単量体と多価金属塩を形成する多価金属イオンは、酸性基含有重合単量体が有している酸性基と結合可能な2価以上の金属イオンである。具体例を示すと、2価の金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、銅(II)、スズ(II)、等のイオンが挙げられ、3価の金属イオンとしては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、鉄(III)、アクチニウム等のイオンが挙げられ、4価以上の金属イオンとしては、チタニウム、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、タングステン(IV)等のイオンが挙げられる。これらのうち、3価以上のイオンは、接着性の高さの他、生体への安全性などの観点から、より好ましい。中でもアルミニウムイオン、ランタンイオン、チタニウムイオンが特に好ましく、チタニウムが最も好ましい。これら多価金属イオンは二種以上を混合して用いることができる。
酸性基含有重合性単量体において、斯様に多価金属塩とする量は、特に制限はないが、あまり多くを占め遊離酸が少なくなると、歯質の脱灰機能が低下して十分な接着強度が得られなくなるため、酸性基含有重合性単量体が有する酸性基の価数の総数に対して、多価金属塩を形成させる多価金属イオンのイオン価の総数が、5〜95%、より好ましくは10〜60%であるのが好ましい。
ここで、多価金属塩を形成している酸性基含有重合性単量体の量、および多価金属イオンの種類は、仕込み原料として使用した多価金属イオンのイオン源から確認すれば良いが、これが明らかでない場合には、下記手法により確認すれば良い。すなわち、接着材において、固体成分を除いた後、蛍光X線(XRF)分析装置を用いて、塩を形成する多価金属イオンの量と種類を測定することにより求めることができる。具体的な方法を示すと、歯科用接着材をシリンジフィルター等で濾過し、固体成分を除去し、得られた濾液のイオン種および濃度をXRF分析装置で測定し、接着材中のイオン種と量を算出する方法である。
本発明の歯質用接着材において、酸性基含有重合性単量体の一部を多価金属塩とする方法は、特に制限されるものではなく、酸性基が遊離酸の酸性基含有重合性単量体と、該酸性基が多価金属イオンと塩を形成している酸性基含有重合性単量体とを直接的に混合する方法であっても良い。通常は、歯質用接着材を調製する際に、(A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体成分に、塩を形成する多価金属イオンのイオン源となる物質を配合または接触させて、組成中に該多価金属イオンを溶出させることにより実施するのが好ましい。多価金属イオン源としては、金属単体を用いても良いが、イオン化が容易な多価金属化合物が好適に用いられる。
多価金属化合物としては、少なくとも酸性基含有重合性単量体の酸性基の第一解離に基づくpKa値より高いpKaを有する酸、即ち、酸性基含有重合性単量体より弱酸の金属塩を用いることが好適である。酸性基含有重合性単量体よりも強酸の塩を用いた場合には、遊離した多価金属イオンと酸性基含有重合性単量体の酸性基とのイオン結合が十分に生じないため好ましくない。
このような酸性基含有重合性単量体より弱酸の多価金属塩としては、炭酸塩、1,3−ジケトンのエノール塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ハロゲン化物、マロン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、酢酸塩、メトキシ酢酸塩等が挙げられる。なお、これらの弱酸の多価金属塩の中には、多価金属の種類によっては、溶解性が著しく低いものがあるため、予備実験などで確認した上で用いればよい。また、こうした多価金属化合物としては、水酸化物、水素化物、アルコキシドも使用できる。これらの多価金属化合物の中でも、多価金属イオンの溶出が早く、副生成物が常温で気体或は水や低級アルコール等の、接着性に影響がなく除去が容易なものであることから、多価金属の炭酸塩、水酸化物、水素化物、フッ化物、または炭素数4以下の低級アルコキシドが好ましい。さらに、取り扱いが容易な点から、多価金属の水酸化物、フッ化物、アルコキシドがより好ましい。
好ましい多価金属化合物の具体例を示すと、2価金属イオン源としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムエトキソド、炭酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ストロンチウムエトキシド、炭酸バリウム、水酸化バリウム、バリウムイソプロポキシド、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛エトキシメトキシド、銅(II)メトキシド、スズ(II)メトキシド等が挙げられる。3価金属イオン源としては、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、フッ化アルミニウム、ガリウムエトキシド、インジウムエトキシド、スカンジウムイソプロポキシド、イットリウムイソプロポキシド、ランタンメトキシド、ランタンエトキシド、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンヒドロキシド、炭酸ランタン、フッ化ランタン、セリウムイソプロポキシド、プラセオジウムイソプロポキシド、プロメチウムイソプロポキシド、ネオジウムイソプロポキシド、サマリウムイソプロポキシド、ユーロピウムイソプロポキシド、ガドリニウムイソプロポキシド、テルビウムエトキシド、テルビウムメトキシド、ジスプロシウムイソプロポキシド、ホルミウムイソプロポキシド、エルビウムイソプロポキシド、ツリウムイソプロポキシド、イッテルビウムイソプロポキシド、鉄(III)エトキシド、アクチニウムエトキシド等が挙げられる。4価以上の金属イオン源としては、チタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、チタニウムヒドロキシド、フッ化チタニウム、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、タングステン(IV)メトキシド、タングステン(IV)イソプロポキシド、タングステン(IV)ブトキシド等が挙げられる。
このうち、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムヒドロキシド、フッ化アルミニウム、ランタンメトキシド、ランタンエトキシド、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンヒドロキシド、炭酸ランタン、フッ化ランタン、チタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、チタニウムヒドロキシド、フッ化チタニウム等が特に好ましい。
(D)重合開始剤
本発明の歯質用接着材には、有効量の重合開始剤を配合させるのが好適である。このような重合開始剤としては、光重合型、化学重合型、加熱重合型、いずれも使用できるが、任意のタイミングで重合効果させることができ、必ずしも混合の必要性がないことから、光重合型の重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としてはカンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等のα―ジケトン類;2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類;2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジルージメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン等α−アミノアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド誘導体等が好適に使用される。その中でも、α−ジケトン類及びアシルフォスフィンオキシド誘導体等が最も好ましい。
重合促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−じーn−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等のメルカプト化合物を挙げることができる。
化学重合型重合開始剤とは、複数の成分からなり、これらの成分が接触せしめられた場合に、重合開始種(ラジカル)を生成するものを言う。具体的には、アリールボレート化合物および酸性化合物からなる系;有機過酸化物およびアミン化合物からなる系;アゾ化合物および有機過酸化物からなる系;ピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物、および金属イオン形成化合物からなる系等が挙げられる。中でもアリールボレート化合物および酸性化合物からなる系、スルフィン酸(もしくはスルフィン酸塩)および酸性化合物からなる系、有機過酸化物およびアミン化合物からなる系は、重合活性が高く、生体への安全性にも優れているために好ましい。さらに酸性基含有重合性単量体を含む組成物の重合活性が高いという理由から、アリールボレート化合物および酸性化合物からなる系、スルフィン酸(もしくはスルフィン酸塩)および酸性化合物からなる系が好ましい。また、このアリールボレート化合物および酸性化合物からなる系においては、重合促進剤として、有機過酸化物に対する分解促進剤である+II価、+III価、+IV価、+V価の金属化合物、好ましくは、+IV価及び/または+V価のバナジウム化合物、及び/または酸化剤である有機過酸化物を併用するのが好ましい。なお、この分解促進剤として添加可能な金属化合物は、(C)多価金属イオンが実質的に(ほとんど)溶出されないものであり、前述した多価金属化合物と区別される。
当該アリールボレート化合物としては、公知のものを制限なく配合することができる。特に好適なものを例示するならば、テトラフェニルホウ酸、テトラ(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラ(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジフェニルホウ素等のアミン塩やナトリウム塩などが挙げられる。
スルフィン酸(もしくはスルフィン酸塩)類としては、公知のものを制限なく配合することができる。特に好適なものを例示するならば、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸またはその塩類としてベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、m−ニトロベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−フルオロベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、酸性化合物としては、別途に添加しなくても、本発明の歯科用接着材に含まれる(A1)酸性基含有重合性単量体を利用することができる。前記したように酸性基含有重合性単量体を多価金属塩として配合する場合も、その量は、酸性基含有重合性単量体の一部に留め、遊離酸の状態のものも残存させる。したがって、こうした酸性基含有重合性単量体により、上記「酸性」機能を兼ねさせることができる。もちろん、係る酸性基含有重合性単量体の酸性基では酸性化合物量が足りない場合には、十分な酸性を呈するまで他の酸性化合物を配合してもよい。こうした他の酸性化合物としては、水に溶解或は懸濁させた際に、該水溶液または水懸濁液が酸性を示すものであれば特に限定されず公知の無機酸、有機酸が使用できる。好適には、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸等の公知の酸性化合物を接着性に阻害がない範囲で配合することが可能である。ただし、酸性基含有重合性単量体よりも強酸の酸性化合物を添加する場合、前述したように接着性に悪影響を与える虞があるため、弱酸のものを用いるのが好ましい。
アリールボレート化合物及び酸性化合物からなる系で重合促進剤として使用される、+II価、+III価、+IV価、+V価の金属化合物としては、前述した多価金属化合物に該当しない公知のものを配合することができ、バナジウム化合物、鉄化合物、銅化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、タングステン化合物、スズ化合物が好適であり、具体的に例示すると、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV),オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)、等のバナジウム化合物が挙げられる。
同じく重合促進剤である有機酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が例示されるが、特にジアシルパーオキサイド類またはハイドロパーオキサイド類が好ましい。具体的には、ジアシルオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド類が挙げられ、ハイドロパーオキサイド類としては、p−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド類が挙げられる。
こうした重合開始剤の配合量は、重合性単量体全成分100質量部に対して、0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部が好ましい。さらに、重合開始活性をより高める目的で、上記の重合開始剤、重合促進剤に加え、ヨードニウム塩、トリハロメチル置換S−トリアジン、フェナンシルスルホニウム塩化合物等の電子受容体を加えても良い。

(その他の成分)
本発明の歯質用接着材には、さらに揮発性有機溶媒を配合しても良い。揮発性有機溶媒は、室温で揮発性を有し水溶性を示すものを好適に使用することができる。ここで言う揮発性とは、760mmHgでの沸点が100℃以下であり、且つ20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを言う。また、水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であり、好ましくは該20℃において水と任意の割合で相溶することを言う。このような揮発性の水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等を挙げることができる。これら有機溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。生体に対する毒性を考慮すると、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンが好ましい。
これらの揮発性有機溶媒の配合量は、通常、重合性単量体全成分の100質量部に対して2〜400質量部の範囲、より好ましくは5〜100質量部である。なお、これらの揮発性有機溶媒は、本発明の歯質用接着材を歯面に塗布した際に、該接着材を硬化させる前にエアブローすることにより除去されるものである。
さらに、歯質用接着材として使用した後の、硬化体からのフッ素徐放による齲蝕の予防及び二次齲蝕の抑制という観点から、本発明の歯質用接着材には、フッ化物を配合しても良い。フッ化物の配合量は、目的に応じて適宜調製して配合すればよい。
フッ化物イオン源となるフッ化物としては、フッ化物イオンを放出可能なものであれば何ら制限されない。具体的には、フッ化水素酸、金属フッ化物、フッ化アンモニウム類、フルオロアルミノシリケートガラス等が利用でき、特に好ましくは金属フッ化物である。好ましい金属フッ化物を例示すると、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化リチウム等のアルカリ金属フッ化物であり、最も好ましくはフッ化ナトリウムである。
また、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属フッ化物;フッ化アルミニウム、フッ化イットリウム、フッ化ランタン、フッ化イッテルビウム等の土類金属フッ化物;フッ化チタン、フッ化ジルコニウム等の第四族元素のフッ化物;フッ化亜鉛等は、前記した酸性基含有重合性単量体の一部を多価金属塩とするために使用できる多価金属化合物であるが、これらをしようするとフッ化物イオン源としても機能させることができる。
本発明の歯質用接着材には、用途に関わらずに必要に応じて、その性能を低下させない範囲で、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアルキルメタクリレート等の高分子化合物等の有機増粘剤を添加することが可能である。また、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料、重合禁止剤等の各種添加剤を必要に応じて選択して配合することができる。
本発明の歯質用接着材は、上述した各種成分を均―に混合し製造すれば良い。1液の状態、即ち、ワンパッケージの形態で長期間保管できるため、使用に際して、各成分を混合する面倒な操作が必要なく、歯科医師などの労力を軽減し、しかも、安定して高い接着強度を確保することができる。このようにして得られる本発明の接着材は、コンポジットレジン、補綴物、矯正用ブラケット等の歯質への接着に使用できる。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。尚、実施例中に示した略称、略号については以下の通りである。
略称及び略号
[(A)酸性基を有する重合性単量体を少なくとも一部として含んでなる重合性単量体]
(A1)酸性基含有重合性単量体
SPM:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェートの混合物
MAC−10:11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
(A2)非酸性基含有重合性単量体
BisGMA:2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート

[(B)シリカ]
FS1:フュームドシリカ、平均1次粒子径18nm、比表面積220m/g、表面シラノール基量5.0個/nm
FS2:フュームドシリカ、平均1次粒子径7nm、比表面積230m/g、表面シラノール基量1.2個/nm、ジメチルジクロロシラン処理
SS:ゾルゲルシリカ、平均1次粒子径60nm、比表面積70m/g、表面シラノール基量3.0個/nm、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン処理
PS:沈降シリカ、平均1次粒子径30nm、比表面積180m/g、表面シラノール基量6.0個/nm、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン処理
MS:溶融シリカ、平均1次粒子径0.4μm、比表面積8m/g、表面シラノール基量2個/nm、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン処理

なお、シリカの表面シラノール基量は、次のような手法で測定した。すなわち、シリカ試料を25℃、相対湿度80%の雰囲気中に45日放置した後、120℃で12時間乾燥した。次いで、このシリカ試料を、メタノール溶媒中に分散し、カールフィッシャー水分計(例えば、京都電子工業社製「MKS-210型」)により、滴定試薬として、「HYDRANAL COMPOSITE 5K」(Riedel−deHaen社製)を用いて水分量を滴定した。測定された水分量から、下記式により表面シラノール基量を計算して求めた。
表面シラノール基(個/nm)=668.9×水分量(wt%)/比表面積(m/g)

[(C)多価金属イオンの供給源]
Ti(O−nBu):チタニウムテトラブトキシド
Ti(O−iPr):チタニウムテトライソプロポキシド
TiF :フッ化チタニウム
TiO :酸化チタン
W(O−iPr) :タングステン(IV)テトライソプロポキシド
ZrO :酸化ジルコニウム
Al(O−iPr):アルミニウムトリイソプロポキシド
AlF :フッ化アルミニウム
La(O−iPr):ランタントリイソプロポキシド
La(OH) :ランタンヒドロキシド
Sc(O−iPr):スカンジウムトリイソプロポキシド
Yb(O−iPr):イッテルビウムトリイソプロポキシド
Fe(O−Et) :鉄(III)エトキシド
Ca(OH) :カルシウムヒドロキシド

[(D)重合開始剤]
CQ:カンファーキノン
DMBE:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド

[その他成分]
[フッ化物イオン源]
NaF:フッ化ナトリウム

[重合禁止剤]
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
HQME:ハイドロキノンモノメチルエーテル

[揮発性の水溶性有機溶媒]
IPA:イソプロピルアルコール
アセトン

また、以下の実施例及び比較例において、得られた歯科用接着材の物性の測定は以下の方法により実施した。

(1)初期接着強度の試験方法
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、#600のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質及び象牙質平面を削りだした。次に、これらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、エナメル質及び象牙質のいずれかの平面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定し、次いで、厚さ0.5mm直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを上記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞内に歯質用接着材を塗布し、10秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥し、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射した。さらにその上に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクリック、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光照射器により10秒間光照射して、接着試験片を作製した。
上記接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、引張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引張り、エナメル質及び象牙質のそれぞれとコンポジットレジンとの引張り接着強度を測定した。1試験当たり、4本の引張り接着強さを上記方法で測定し、その平均値を接着強度とした。

(2)保存安定性の試験方法
歯科用接着材を、調製後50℃のインキュベーター内で2ヶ月間保存した。この接着材を用いて、上記初期接着強度測定方法と同様の方法により接着強度を測定し、保存前の初期接着強度と比較した。
実施例1
重合性単量体として25.0gのSPM、30gのBisGMA、20gの3G及び25gのHEMAと、シリカとして20gのFS1と、重合開始剤として1.25gのカンファーキノン、1.25gのDMBE、1.0gのTPOと、及びその他成分としてIPAを85g、NaFを0.84g、BHTを0.63g、HQMEを0.1g用い、これらを均一になるまで攪拌混合して本発明の歯質用接着材を調製した。
得られた接着材について、エナメル質、象牙質に対する初期接着強度を測定した。また、この接着材について、50℃のインキュベーター内で2ヶ月間保存し、保存安定性を評価した。接着材組成を表1に、評価結果を表2に示した。
実施例2〜5
実施例1の方法に準じ、表1に示した、組成の異なる接着材を各調製した。得られた歯質用接着材について、エナメル質、象牙質に対する初期接着強度を各測定した。また、こられの接着材について、50℃のインキュベーター内で2ヶ月間保存し、保存安定性を評価した。接着材組成を表1に、評価結果を表2にそれぞれ示した。
実施例1〜5は、酸性基含有重合性単量体とシリカが、本発明で示される構成を満足するように配合された歯科用接着材であるが、いずれも初期接着強度は、エナメル質、及び象牙質のいずれに対しても高く、これらは保存安定性の試験によっても、良好に保持できる結果であった。
Figure 0005802960
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実施例6
酸性基含有重合性単量体として25.0gのSPMと多価金属イオン源として5.2gのチタニウムテトラブトキシドを均一になるまで撹拌混合した後、30gのBisGMA、20gの3G及び25gのHEMAと、シリカとして20gのFS1と、重合開始剤として1.25gのカンファーキノン、1.25gのDMBE、1.0gのTPOと、及びその他成分としてIPAを85g、NaFを0.84g、BHTを0.63g、HQMEを0.1g用い、これらを均一になるまで攪拌混合して本発明の歯質用接着材を調製した。
得られた接着材について、エナメル質、象牙質に対する初期接着強度を測定した。また、この接着材について、50℃のインキュベーター内で2ヶ月間保存し、保存安定性を評価した。接着材組成を表3に、評価結果を表4に示した。
実施例7〜32,比較例1〜7
実施例6の方法に準じ、表3及び表5に示した、組成の異なる接着材を各調製した。得られた歯質用接着材について、エナメル質、象牙質に対する初期接着強度を各測定した。また、こられの接着材について、50℃のインキュベーター内で2ヶ月間保存し、保存安定性を評価した。接着材組成を表3及び表5に、評価結果を表4及び表6にそれぞれ示した。
実施例6〜32は、酸性基含有重合性単量体とシリカが、本発明で示される構成を満足するように配合され、さらに、多価金属化合物が配合され、上記酸性基含有重合性単量体の一部が、多価金属塩を形成している歯科用接着材であるが、いずれも初期接着強度は、エナメル質、及び象牙質のいずれに対しても、実施例1〜5に比して更に顕著に高く、これらは保存安定性の試験によっても、良好に保持できる結果であった。
これに対して、比較例1,2はシリカが全く含まれない場合であり、いずれもエナメル質、象牙質双方に対して十分な初期接着強度が得られなかった。また、比較例3は酸性基含有重合性単量体が全く含まれない場合であり、脱灰性能がなく、エナメル質、象牙質双方に対して十分な初期接着強度が得られなかった。
また、比較例4〜6は、シリカとして比表面積と表面シラノール基量の本発明の範囲外のものを用いた場合であり、いずれの場合においても、いずれもエナメル質、象牙質双方に対して十分な初期接着強度が得られなかった。
さらに、比較例7は、実施例7の歯科用接着材に対して水を含有させた場合であり、エナメル質、及び象牙質のいずれに対しても初期接着強度は極めて高い値であったが、保存安定性を評価したところ、50℃のインキュベーター内で2ヶ月間保存後、エナメル質、象牙質双方に対して接着強度が大きく低下した。
Figure 0005802960
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Claims (5)

  1. (A)酸性基を有する重合性単量体を少なくとも一部として含んでなる重合性単量体成分、及び
    (B)シリカ系粒子としてフュームドシリカ
    を含有する歯質用接着材であって、
    前記フュームドシリカが、比表面積が50〜500m/gであり、表面にシラノール基を少なくとも3.5個/nm2含むフュームドシリカであり、
    且つ水を含まないことを特徴とする1液の歯質用接着材。
  2. 前記(A)重合性単量体100質量部としたとき、(B)フュームドシリカの含有量が10〜100質量部である請求項1に記載の歯質用接着材。
  3. さらに、酸性基を有する重合性単量体の一部が、多価金属塩を形成している請求項1または請求項2に記載の歯質用接着材。
  4. 多価金属塩を形成する(C)多価金属イオンが、酸性基を有する重合性単量体が有する酸性基の酸の価数よりも大きいイオン価の金属イオンである請求項3に記載の歯質用接着材。
  5. さらに、(D)重合開始剤を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の歯質用接着材。
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