JP6408683B2 - 歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科治療に用いられる歯科用接着性組成物に関する。
齲蝕等により損傷を受けた歯質において、それが、初中期の比較的小さい窩洞の場合には、審美性、操作の簡略性や迅速性の点から、コンポジットレジンによる直接修復を行うことが多い。一方、比較的大きな窩洞の修復には、金属やセラミックス、或いは歯科用レジンで作られた補綴物が多用されている。
これらコンポジットレジンや補綴物等の歯科用修復物は、一般に歯質への接着性を有していないため、これを歯質へ接着させるには、コンポジットレジンに対しては歯科用の接着材が、補綴物に対しては歯科用のセメント材が併用される。なお、通常これらの接着材やセメント材は、メタクリレート系重合性単量体を主成分とする重合性単量体組成物から構成される。
また、これら接着材やセメント材は、一般に歯質への接着力が十分でなく、特に、歯質の損傷に応じて、エナメル質と象牙質のそれぞれに対して、高い接着力が求められることから、その使用に先立ち、歯面に対して次のような前処理が施されている。即ち、(1)硬い歯質(主にヒドロキシアパタイトを主成分とするエナメル質)をエッチングするエッチング材を塗布し、更に、(2)プライマーと呼ばれる、歯質中に対する浸透促進剤としての前処理材の塗布を行っている。
ここで、前者のエッチング材としては、歯の表面を脱灰する酸水溶液が一般的であり、リン酸、クエン酸、マレイン酸等の水溶液が用いられている。また、後者のプライマーとしては、酸水溶液により脱灰して粗造化したエナメル質表面や、脱灰後に象牙質表面に露出したスポンジ状のコラーゲン繊維の微細な隙間に接着材を浸透させる必要があるため、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)等の歯質との親和性の良い親水性の(メタ)アクリレート系重合性単量体と有機溶媒とを主成分とする組成物が用いられている。
また、前記(1)、(2)の機能を併せ持つセルフエッチングプライマー(以降、歯科用前処理材とも言う)も提案されている。この歯科用前処理剤では一部に酸性基を有する重合性単量体を含み、この酸性基の作用により、一回の塗布操作のみで酸水溶液の脱灰機能とプライマーの浸透促進機能とを付与することができる。なお、歯科用前処理材塗付後、修復物がコンポジットレジンの場合は、その上に接着材を塗布して重合硬化させ(例えば、特許文献1参照)、補綴物の場合は、その上に歯科用セメントを塗布して重合硬化させ、それぞれ歯質に接着させる(例えば、特許文献2参照)。これらは、歯科用前処理材による処理後、修復物に応じて、コンポジットレジン用接着材又は歯科用セメントによる処理を行うため、2ステップ型の処理となる。
こうした中、前述のような前処理材に関する操作性の煩雑さの軽減を目的として、歯科用接着材において、歯科用前処理材を用いずとも高い接着性を示す、歯科用一液型接着材(以降、単に歯科用接着材とも言う)が提案されている。この歯科用接着材では一部に酸性基を有する重合性単量体を含み、この酸性基の作用により、一回の塗布操作のみで酸水溶液の脱灰機能とプライマーの浸透促進機能とを付与することができ、更に、重合硬化させることで高い接着性を発現する。この歯科用接着材は、歯科用前処理材が不要なため、操作性に優れた接着材として用いることができる(例えば、特許文献3〜6参照)。
更に、最近では、さらなる操作の煩雑さの軽減を目的として、前記歯科用前処理材や歯科用接着材の機能を付与したコンポジットレジン(以降、単に自己接着性歯科用コンポジットレジンとも言う)や、前処理材の機能を付与した歯科用セメント(以降、単に自己接着性歯科用セメントとも言う)が提案されている(例えば、特許文献7〜9参照)。
しかしながら、自己接着性歯科用コンポジットレジン及び自己接着性歯科用セメントにおいては、操作性と引き換えに、依然として接着性が低く、より強力な接着性が求められている。また、2ステップ型とする場合や歯科用一液型接着材を用いる場合においても、優れた接着性が得られるものの、エナメル質、象牙質に対する接着性に一長一短があり、エナメル質及び象牙質のいずれに対しても、満足できる接着性が求められている。更に、これらの接着性は、施術後、長期間に渡り安定していることが求められるが、耐水性、耐熱性、耐衝撃性(耐咀嚼性)が求められる口腔内においては、必ずしも十分ではなく、より安定した接着性が求められている。
こうした中、より強固で安定的な接着性を実現する歯科用接着性組成物として、リン酸から誘導される酸性基を含有する重合性単量体と、多価金属イオンとを配合させた歯科用接着性組成物が提案されている(例えば、特許文献10,11参照)。このような歯科用接着性組成物によれば、重合硬化時に、酸性基と多価金属イオンとがイオン結合して形成されるイオン架橋により、高い接着強度が得られる。
しかしながら、こうした歯科用接着性組成物においても、過酷な口腔環境下で求められる接着性の要求を満足せず、特に、エナメル質及び象牙質のいずれに対しても満足できる接着性が依然として求められているのが現状である。
即ち、エナメル質は、ほとんどを無機質であるヒドロキシアパタイトで構成されている一方、象牙質は、ヒドロキシアパタイト以外に有機質であるコラーゲン繊維と水を多く含んで構成され、両歯質は、異なった構成とされる。象牙質では、前述の前処理により、接着成分としての重合性単量体が浸透され易くなるものの、構成自体の変化を伴うものではなく、両歯質の構成は、異なったままである。そのため、エナメル質及び象牙質のそれぞれに対して有効な接着性を示す接着組成が明らかにされなければならないが、このような接着組成の検討は、十分に進んでいないというのが現状である。
特開平7−82115号公報 特開2003−012430号公報 特開平10−236912号公報 特開平11−130465号公報 特開2007−137798号公報 国際公開第2007/139207 特開2012−171885号公報 特表2008−510038号公報 特開2008−260753号公報 特開2008−201726号公報 国際公開第2010/010901号
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、エナメル質及び象牙質のいずれに対しても強固で安定的な接着性を示す歯科用接着性組成物を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討し、以下の知見を得た。
即ち、長鎖状のリン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び短鎖状のリン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の組み合わせに対して、酸性基としてのリン酸二水素モノエステル基及びリン酸水素ジエステル基と結合する多価金属化合物を配合すれば、エナメル質及び象牙質のいずれに対しても強固で安定的な接着性を示す歯科用接着性組成物が得られることの知見を得た。
本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも、(A)下記一般式(1)で表されるリン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体と、(B)下記一般式(2)で表されるリン酸水素ジエステル基含有重合性単量体と、(C)多価金属アルコキシド、多価金属フッ化物、多価金属炭酸塩、多価金属水素化物及びアルキル多価金属の少なくともいずれかから選ばれる多価金属化合物と、を混合して得られる混合物、前記(A)及びリン酸二水素物エステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体以外のその他の重合性単量体、並びに、重合開始剤を含む歯科用接着性組成物であって、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和が、前記(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数より大きく、前記全重合性単量体成分中の前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体の含有量が10質量%〜50質量%であるとともに、前記全重合性単量体成分中の前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の含有量が3質量%〜10質量%であり、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数を、前記(C)多価金属化合物中の前記多価金属の総価数で割った値が、1.0〜1.75であり、歯科用接着材、自己接着性歯科用コンポジットレジン及び自己接着性歯科用セメントのいずれかとして用いられることを特徴とする歯科用接着性組成物。
ただし、前記一般式(1)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを示し、Xは、直鎖又は分岐していてもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す。
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、相互に独立して、水素原子及びメチル基のいずれかを示し、Y及びYは、相互に独立して、酸素原子、−NH−、−NCH−及び−NCHCH−のいずれかを示し、Z及びZは、相互に独立して、直鎖又は分岐していてもよい炭素数2又は3の炭化水素基を示す。
<2> (A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和を、(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数で割った値が、3.76以上である前記<1>に記載の歯科用接着性組成物。
<3> (C)多価金属化合物が、多価金属アルコキシドである前記<1>から<2>のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
<4> (C)多価金属化合物が、第四族金属化合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
<5> 更に、(C)多価金属化合物の多価金属原子に対するフッ素原子のモル比、フッ素原子/多価金属原子が、0.4〜4.0となるようにフッ素含有化合物を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
<6> 実質的に水を含有しない前記<1>から<5>のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
<7> 歯科用接着材として用いられる前記<1>から<6>のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、エナメル質及び象牙質のいずれに対しても強固で安定的な接着性を示す歯科用接着性組成物を提供することができる。
(歯科用接着性組成物)
本発明の歯科用接着性組成物は、少なくとも、(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体と、(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体と、(C)多価金属化合物とを混合して得られ、必要に応じて、水、重合開始剤、フッ素含有化合物、その他の成分を含む。
<(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体>
前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体は、下記一般式(1)で表される。
ただし、前記一般式(1)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを示し、Xは、炭素数4以上の炭化水素基を示す。
なお、前記炭化水素基の炭素数の上限としては、特に制限はないが、15程度である。
前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体は、前記一般式(1)中のXで示される前記炭化水素基の炭素数に応じて長鎖状の構造をなす。この(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体を配合することで、歯質における象牙質との接着性を向上させることができる。
なお、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体の具体的な化合物としては、公知の化合物が特に制限はなく利用できる。中でも、メタクリレート基を有する化合物(前記一般式(1)中、Rがメチル)が、保存安定性の点から特に有用である。好ましい化合物としては、例えば、下記構造の化合物が挙げられる。
中でも、前記式(1)中、Xで示される前記炭化水素基の炭素数が6〜12の化合物が好ましく、8〜12の化合物がより好ましく、10の化合物が特に好ましい。
前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体及び後述するその他の重合性単量体を含む全重合性単量体成分における、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体の含有量としては、特に制限はないが、3質量%〜50質量%が好ましく、15質量%〜35質量%がより好ましい。前記含有量が3質量%未満であると、象牙質に対する接着強度が低下することがあり、50質量%を超えると、硬化体強度が低下することがある。
<(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体>
前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体は、下記一般式(2)で表される。
ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、相互に独立して、水素原子及びメチル基のいずれかを示し、Y及びYは、相互に独立して、酸素原子、−NH−、−N(CH)−及び−N(CHCH)−のいずれかを示し、Z及びZは、相互に独立して、直鎖又は分岐していてもよい炭素数2又は3の炭化水素基を示す。
前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体は、前記式(2)中のZ、Zで示される前記炭化水素基の炭素数に応じて短鎖状の構造をなす。この(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体は、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体に比べて酸性度が高く、前記(C)多価金属化合物との結合性が高く、塩を形成しやすい。この塩が、ヒドロキシアパタイト結合することで、エナメル質との強固で安定的な接着性を付与する。
なお、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の具体的な化合物としては、公知の化合物が特に制限はなく利用できる。中でも、入手のし易さから、対称ジエステル化合物(前記式(2)中、R及びR、Y及びY、Z及びZがそれぞれ同一)が好ましい。このような化合物としては、例えば、下記構造の化合物が挙げられる。
中でも、メタクリルエステル化合物(式(2)中、R及びRがメチル、及びY及びYが酸素原子)が好ましく、炭素数2がより好ましい。
前記全重合性単量体成分における前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の含有量としては、特に制限はないが、0.3質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、3質量%〜10質量%が特に好ましい。前記含有量が0.3質量%未満であると、エナメル質に対する接着強度が低下することがあり、30質量%を超えると、象牙質に対する接着強度が低下することがある。
<(C)多価金属化合物>
前記(C)多価金属化合物は、多価金属アルコキシド、多価金属フッ化物、多価金属炭酸塩、多価金属水素化物、及びアルキル多価金属の少なくともいずれかから選択される化合物である。
前記多価金属アルコキシドにおける有機基としては、特に制限はなく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、オクチル等が挙げられ、中でも、炭素数4以下のアルキル基が好ましい。
前記アルキル多価金属におけるアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。
これらの中でも、保存安定性が高く、より接着強度に優れることから、前記多価金属アルコキシドが好ましい。
なお、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記多価金属化合物を構成する金属元素としては、特に制限はなく、周期律表の第2族〜第13族の金属元素が挙げられるが、接着強度に優れることから、第四族の金属元素が好ましく、中でも、チタンが特に好ましい。
なお、前記多価金属化合物の価数としては、特に制限はなく、二価以上であればよい。
前記多価金属アルコキシドの具体的な化合物としては、例えば、マグネシウムジエトキシド、カルシウムジイソプロポキシド、バリウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ガリウムトリエトキシド、スカンジウムトリイソプロポキシド、ランタントリイソプロポキシド、イッテルビウムトリイソプロポキシド、イットリウムテトライソプロポキシド、セリウムテトライソプロポキシド、サマリウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ハフニウムテトライソプロポキシド、タンタル(V)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシド、モリブデン(V)エトキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、鉄(III)エトキシド、銅(II)エトキシド、亜鉛(II)エトキシド等が挙げられ、前記多価金属フッ化物の具体的な化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化アルミニウム、フッ化チタン、フッ化ランタン、フッ化ジルコニウム、フッ化亜鉛等が挙げられ、前記多価金属炭酸塩の具体的な化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸アルミニウム、炭酸ランタン、炭酸イットリウム、炭酸ジルコニウム、炭酸亜鉛等が挙げられ、前記多価金属水素化物の具体的な化合物としては、例えば、水素化カルシウム、水素化アルミニウム、水素化ジルコニウム等が挙げられ、前記アルキル多価金属の具体的な化合物としては、例えば、ジエチルマグネシウム、トリメチルアルミニウム等が挙げられる。
前記(C)多価金属化合物の前記歯科用接着性組成物中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、脱灰作用が高く、安定した接着強度が得られることから、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和が、前記(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数よりも大きくなる範囲であることが好ましい。
ここで、前記「多価金属化合物中の多価金属の総価数」とは、前記歯科用接着性組成物に含まれる前記多価金属化合物全量のモル数と、該多価金属化合物の価数を掛け合わせたものである。
上記範囲の中で、更に、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数と、前記多価金属の総価数との比(リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体/多価金属の総価数)が、0.3〜2.5であることが好ましく、0.75〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.75であることが特に好ましい。
なお、前記歯科用接着性組成物中における、前記(C)多価金属化合物は、前述のように優先的に前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体と結合し、塩を形成するものであり、添加した多価金属化合物中の多価金属の殆どが有効成分として作用するものである。未反応の前記(C)多価金属化合物を除去した場合等の前記多価金属の種類及び含有量は、誘導結合型プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて測定することができる。
また、同様に、前記歯科用接着性組成物中における、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の種類及び含有量は、分取用高速液体クロマトグラフィーにより前記歯科用接着性組成物中から前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体を単離して含有量を測定し、また、単離したリン酸系モノマーの質量分析及び核磁気共鳴分光(NMR)により構造を測定することができる。特に、31PのNMRを測定することで、その化学シフト値から、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の種類を同定することができる。
<水>
一般に、酸性基を有する重合性単量体は、水と共存させることにより、歯科用接着性組成物に高い接着性を付与する。これは、前記酸性基による歯質の脱灰作用が水の存在によって強まり、接着性成分の歯質への浸透作用が促進されるためであると考えられている。
しかしながら、前記歯科用接着性組成物中に、高い脱灰作用を付与するのに十分な水を含有させると、前記酸性基が加水分解して、接着性の低下や粘度の上昇を招き、保存安定性に劣ることがある。
本発明に係る前記歯科用接着性組成物では、口腔内に含まれる水分のみで十分な接着性を示し、実質的に水を含まない態様で保存することができる。また、歯科治療の際に、前記歯科用接着性組成物を水と混合させて用いる必要がないので、優れた操作性を付与する。
なお、前記「実質的に水を含まない」とは、前記歯科用接着性組成物中に水を添加しないことを意味し、組成物中に最初から含有されている微量の水分、或いは前記歯科用接着性組成物中の組成同士が反応して生成されることのある、わずかな水分の含有を排除するものではない。
本発明に係る前記歯科用接着性組成物では、実質的に水を含まない態様を一つの態様とする。
ただし、前記歯科用接着性組成物の用途に応じて、前記酸性基による歯質の脱灰作用を促進させ、より確実な接着性を得る観点から、前記歯科用接着性組成物の他の態様では、前記水を含むこととしてもよい。
この場合、前記水としては、生体適合性及び接着性を低下させる不純物を実質的に含まないことが好ましく、脱イオン水、蒸留水等を用いることが好ましい。
水の配合量としては、特に制限されないが、全重合性単量体100質量部に対して、5質量部〜50質量部が好ましく、10質量部〜30質量部がより好ましい。
<重合開始剤>
前記重合開始剤としては、特に制限はなく、光重合型、化学重合型、加熱重合型のいずれも用いることができるが、任意のタイミングで重合硬化させることができることから、光重合開始剤が好ましい。なお、前記重合開始剤は、重合促進剤を併用して用いることができる。
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等のα−ジケトン類、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン等のα−アミノアセトフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等のアシルフォスフィンオキシド誘導体などを挙げることができる。
前記重合促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等のメルカプト化合物が挙げられる。
更に、前記重合開始剤、前記重合促進剤に加え、ヨードニウム塩、トリハロメチル置換S−トリアジン、フェナンシルスルホニウム塩化合物等の電子受容体を加えてもよい。
前記歯科用接着性組成物には、化学重合開始剤を配合してもよい。前記化学重合開始剤とは、複数の成分からなり、これらの成分が接触せしめられた場合に、重合開始種(ラジカル)を生成するものを言う。具体的には、アリールボレート化合物及び酸性化合物からなる系;スルフィン酸(又はスルフィン酸塩)及び酸性化合物からなる系;有機過酸化物及びアミン化合物からなる系;アゾ化合物及び有機過酸化物からなる系;ピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物、及び金属イオン形成化合物からなる系等で構成される化学重合開始剤が挙げられる。
中でも、前記アリールボレート化合物及び酸性化合物からなる系、前記スルフィン酸(又はスルフィン酸塩)及び酸性化合物からなる系、前記有機過酸化物及びアミン化合物からなる系で構成される化学重合開始剤は、重合活性が高く、生体への安全性にも優れているために好ましい。
更に、酸性基含有重合性単量体を含む組成物の重合活性が高いという理由から、前記アリールボレート化合物及び酸性化合物からなる系、前記スルフィン酸(又はスルフィン酸塩)及び酸性化合物からなる系で構成される化学重合開始剤が好ましい。
また、このアリールボレート化合物及び酸性化合物からなる系においては、重合促進剤として、有機過酸化物に対する分解促進剤である+II価、+III価、+IV価、+V価の金属化合物、好ましくは、+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物、及び/又は酸化剤である有機過酸化物を併用するのが好ましい。なお、この分解促進剤として添加可能な金属化合物は、前述した(C)多価金属化合物と区別される。
前記有機過酸化物としては、公知のハイドロパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、アルキルシリルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等が利用できる。
より具体的には、前記ハイドロパーオキサイド類としては、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
前記パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
前記ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
前記アルキルシリルパーオキサイド類としては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルトリメチルシリルパーオキサイド、t−ヘキシルトリメチルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
前記ジアシルパーオキサイド類としては、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
前記パーオキシエステル類としては、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
前記アリールボレート化合物としては、公知のものを制限なく配合することができる。特に好適なものを例示するならば、テトラフェニルホウ酸、テトラ(p−フルオロフェニル)ホウ酸、テトラ(p−クロロフェニル)ホウ酸、トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ酸、トリアルキル(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ酸、ジアルキルジフェニルホウ酸等の三級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。
前記スルフィン酸(又はスルフィン酸塩)類としては、公知のものを制限なく配合することができる。特に好適なものを例示するならば、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などの芳香族スルフィン酸又はその塩類としてベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、m−ニトロベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−フルオロベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
前記重合開始剤の配合量としては、特に制限はないが、前記全重合性単量体成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.1質量部〜5質量部がより好ましい。
<フッ素含有化合物>
前記フッ素含有化合物は、前記歯科用接着性組成物の保存安定性及び接着強度を向上させる観点から用いられる。
前記フッ素含有化合物としては、特に制限はなく、例えば、フッ化水素酸、1価の金属フッ化物、フッ化アンモニウム類等が挙げられる。また、前記多価金属化合物として、前記多価金属フッ化物を用いる場合、これらの化合物も前記フッ素含有化合物として作用する。
なお、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記フッ素含有化合物の配合量としては、特に制限はないが、前記(C)多価金属化合物中の多価金属原子に対する前記フッ素含有化合物中のフッ素原子のモル比、フッ素原子/多価金属原子が、0.4〜4.0となる量が好ましい。前記(C)多価金属化合物として、前記多価金属フッ化物を選択する場合は、これに含まれるフッ素原子を含む全フッ素原子の量が前述のモル比の範囲であることが好ましい。
なお、通常は、配合した前記フッ素含有化合物の殆どが有効成分として前記歯科用接着性組成物中に存在するところ、未反応の前記フッ素含有化合物を除去した場合等のフッ素原子含有量としては、陰イオンクロマトグラフィーにより測定することができる。
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体以外のその他の重合性単量体、無機充填剤、揮発性有機溶媒等が挙げられる。
−その他の重合性単量体−
前記その他の重合性単量体とは、分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を含有し、重合反応によって高分子を形成し得る化合物を指し、前記重合性不飽和基としては、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基、アリル基、エチニル基、スチリル基等の基を挙げることができる。中でも、硬化速度の速さから、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基等が好ましく、アクリレート基、メタクリレート基が特に好ましい。
−−その他の酸性基含有重合性単量体−−
前記その他の重合性単量体としては、その他の酸性基含有重合性単量体を含む。前記その他の酸性基含有重合性単量体は、分子中に少なくとも1つの酸性基を有するものであり、該酸性基としては、pKa(25℃)が5より小さく、活性プロトンを解離可能な官能基を指し、好適には、リン酸二水素モノエステル基、リン酸水素ジエステル基、ピロフォスフェート基、ホスホン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基が挙げられる。具体的には、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体以外のリン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体として、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンフォスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパン−2−イルジハイドロジェンフォスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン−2−イルジハイドロジェンフォスフェート等が挙げられ、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体以外のリン酸水素ジエステル基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシブチル]ハイドロジェンフォスフェート、ビス[6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]ハイドロジェンフォスフェート、ビス[8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル]ハイドロジェンフォスフェート、ビス[10−(メタ)アクリロイルオキシデシル]ハイドロジェンフォスフェート等が挙げられ、ホスホン酸基含有重合性単量体としては、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルホスホン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノプロピオネート等が挙げられ、カルボキシル基含有重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−[10−(メタ)アクリロイルオキシデシル]マロン酸等が挙げられ、スルホン酸基含有重合性単量体としては、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸等が挙げられる。
前記その他の酸性基含有重合性単量体の配合量としては、特に制限はないが、多量に配合すると接着強度が低下することがあるので、前記全重合性単量体100質量部中、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
また、前記その他の重合性単量体としては、前記酸性基を有しない非酸性基含有重合性単量体を用いることができる。前記非酸性基含有重合性単量体とは、少なくとも一つの前記重合性不飽和基を有する前記その他の重合性単量体のうち、前記酸性基を有しない化合物を指し、公知の化合物から適宜選択して用いることができる。中でも、前記重合性不飽和基を複数有する多官能重合性単量体が、硬化速度、硬化体の機械的物性、耐水性、及び耐着色性等を良好にする観点から好適に用いられる。また、(メタ)アクリレート系重合性単量体が好適に使用される。多官能性の前記(メタ)アクリレート系重合性単量体の代表例としては、下記(1)〜(3)に示される、二官能重合性単量体、三官能重合性単量体、四官能重合性単量体が挙げられる。
(1)二官能重合性単量体
前記二官能重合性単量体としては、芳香族化合物系の重合性単量体、脂肪族化合物系の重合性単量体が挙げられる。
前記芳香族化合物系の重合性単量体としては、例えば、2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2−[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−2‐[4−(メタ)クリロイルオキシトリエトキシフェニル]プロパン、2−[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル]−2−[4−(メタ)クリロイルオキシトリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)クリロイルオキシプロポキシフェニル]プロパン;及びOH基含有ビニルモノマーと脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等が挙げられる。
なお、前記OH基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート、これらメタクリレートに対応するアクリレート等が挙げられる。また、前記ジイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
前記脂肪族化合物系の重合性単量体としては、例えば、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート等のメタクリレート、これらメタクリレートに対応するアクリレート等;並びにOH基含有ビニルモノマーと脂肪族ジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等が挙げられる。
なお、前記OH基含有ビニルモノマーとしては、先に例示したものと同様のものを挙げることができ、前記脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。
(2)三官能重合性単量体
前記三官能重合性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート;及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等が挙げられる。
(3)四官能重合性単量体
前記四官能重合性単量体としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート;及びジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等が挙げられる。
なお、前記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等を挙げることができる。
なお、これらの多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、必要に応じて、単官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体を用いてもよい。
前記単官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、前記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。
このような重合性単量体としては、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレン系化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物;などが挙げられる。
前記歯科用接着性組成物中に水及び有機溶媒が含有されない場合、2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン等の芳香族二官能且つOH基を含有する重合性単量体が含まれることが好ましいが、一方ではこのような重合性単量体が多く含まれると粘度が上昇し、歯質への浸透が阻害されるため、前記全重合性単量体100質量部中、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
また、前記歯科用接着性組成物中に水が含有される場合、前記重合性単量体として、疎水性が高いものを多く含む場合には、両親媒性重合性単量体を併用することが好ましい。
前記両親媒性重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコール重合度9〜50)、1,2,3,4−ブタンテトラオール−1,4−ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような両親媒性重合性単量体が配合されることにより、組成の均一性を確保することができ、象牙質への浸透性がより向上する。その結果、安定して高い接着強度を得ることができる。
なお、前記非酸性基含有重合性単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲で適当な量を配合することができる。
−充填剤−
前記歯科用接着性組成物は、用途に応じて、充填剤(フィラー)を適宜配合して用いることが可能であり、特に制限はなく、公知の化合物から適宜選択して用いることができる。
前記充填剤としては、無機充填剤、有機−無機充填剤、有機充填剤が挙げられる。
前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等が挙げらる。
前記無機充填剤は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で疎水化することで重合性単量体とのなじみを良好とし、機械的強度や耐水性を向上させることができる。
前記疎水化の方法としては、特に制限はなく、公知の方法が挙げられる。即ち、前記シランカップリング剤として、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を用いた疎水化が挙げられる。
また、前記有機−無機複合充填剤としては、前記無機充填剤に重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕して得られる粒状物、或いは、前記無機充填剤の凝集粒子に前記重合性単量体を含浸させた後に重合させた粒状物が使用される。
また、前記有機充填剤としては、前記重合性単量体を重合して得られた粒状物が使用される。
これら充填剤の平均粒径としては、特に制限はなく、一般的に歯科用材料として使用されている大きさの0.01μm〜100μmでよいが、0.01μm〜5μmが好ましい。また、前記充填剤の屈折率としても、特に制限はなく、一般的な歯科用の充填材が有する1.4〜1.7でよい。なお、前記充填剤としては、1種単独で用いてもよいが、粒径範囲や平均粒径、屈折率、材質の異なる複数の充填剤を併用して用いてもよい。
これら充填剤の形状としては、特に制限はなく、不定形、球状、略球状のいずれであってもよいが、中でも、球状の無機フィラーを用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた歯科用充填修復材料となり得ることから、球状が好ましい。
前記充填剤の配合量としては、特に制限はなく、組成物の用途に応じて、粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、自己接着性歯科用コンポジットレジンや自己接着性歯科用セメントとして用いる場合には、前記全重合性単量体100質量部に対して30質量部〜1,500質量部が好ましく、50質量部〜1,000質量部がより好ましい。また、コンポジットレジン用歯科用接着材やプライマーとして用いる場合には、前記全重合性単量体成分100質量部に対して0.5質量部〜100質量部が好ましく、5質量部〜50質量部がより好ましい。
−揮発性有機溶媒−
また、前記歯科用接着性組成物としては、接着に有効な成分を歯質に浸透させるとともに、浸透後、自身を気化させて除去可能とする観点から、前記揮発性有機溶媒が配合されてもよい。
前記揮発性有機溶媒は、室温で揮発性を有し、水溶性を示すものを使用することができる。ここで前記「揮発性」とは、760mmHgでの沸点が100℃以下であり、且つ20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを示す。また、前記「水溶性」とは、20℃での水への溶解度が20g/100mL以上であり、20℃において水と任意の割合で相溶することが好ましい。
このような揮発性の水溶性有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。中でも、生体に対する毒性を考慮すると、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンが好ましい。なお、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記揮発性有機溶媒の含有量としては、特に制限はなく、前記全重合性単量体100質量部に対して2質量部〜400質量部が好ましく、5質量部〜100質量部がより好ましい。
なお、これらの揮発性有機溶媒は、前記歯科用接着性組成物を歯面に塗布後、該歯科用接着性組成物を重合硬化させる前にエアブローすることにより除去して使用される。
更に、前記歯科用接着性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物などの有機増粘材を添加することが可能である。また、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料等の各種添加剤を必要に応じて選択して使用することもできる。
前記歯科用接着性組成物の調製方法としては、前記水を配合する場合以外は特に制限されず、各々の成分を秤量し、混合すればよいが、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体と、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体と、前記(C)多価金属化合物と、場合により、前記フッ素含有物とを先に均一になるまで攪拌混合し、次いで、これら以外の成分を添加する方法が好ましく、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体と、前記(C)多価金属化合物と、場合により、前記フッ素含有物とを先に均一になるまで攪拌混合し、次いで、これら以外の成分を添加する方法がより好ましい。
一方、前記水を加える場合は、上記の調製方法により前記水以外の成分を予め混合し、最後に前記水を添加する方法が好ましい。
また、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体、又は前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体等のリン酸エステル基含有重合性単量体と、前記(C)多価金属化合物を混合した場合、アルコール類等の揮発性の成分が生成することがあるが、これら揮発性成分は、何ら接着性に影響するものではない。一方、前記歯科用接着性組成物をコンポジットレジン等に応用する場合、これら揮発成分が徐々に揮発し、コンポジットレジン等の流動性が経時的に変化する場合があるので、予め前記揮発性成分を、加熱や真空ポンプ、ロータリーエバポレーター等による減圧等で取り除いてもよい。
<用途>
前記歯科用接着性組成物は、歯質に対する接着成分の浸透性を向上させる目的で使用される歯科用前処理材、コンポジットレジンや補綴物等の歯科用修復物を歯質に接着させる目的で使用される歯科用接着材、歯科用接着材とコンポジットレジンの機能を併せ持つ自己接着性歯科用コンポジットレジン、歯科用前処理材と歯科用セメントの機能を併せ持つ自己接着性歯科用セメントとして、有用に用いることができる。特に、水を含有せずとも高い接着強度を示すことから、エアブローを必要とせず操作が簡略化された歯科用接着材、自己接着性歯科用コンポジットレジン、又は自己接着性歯科用セメントとして好適に利用でき、中でも自己接着性歯科用コンポジットレジンとして最も好適に利用できる。
また、前記歯科用接着性組成物は、混合させた状態で、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体を優先的に前記多価金属化合物と強く結合させることができ、使用に供することができる。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明の技術的思想は、これらにより何ら制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例の製造に用いた各成分並びにそれらの略称、略号については、以下の通りである。
(各成分並びにそれらの略称及び略号)
<(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体>
<(B)リン酸水素ジエステル基を有する重合性単量体>
<その他の重合性単量体>
D−2.6E:2,2−ビス[(4−メタクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン
Bis−GMA:2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
<(C)多価金属化合物>
CaH:水素化カルシウム
CaCO:炭酸カルシウム
Ca(O−i−Pr):カルシウムジイソプロポキシド
Ba(O−i−Pr):バリウムジイソプロポキシド
Al(Me):トリメチルアルミニウム
Al(O−i−Pr):アルミニウムトリイソプロポキシド
Sc(O−i−Pr):スカンジウムトリイソプロポキシド
La(O−i−Pr):ランタントリイソプロポキシド
Yb(O−i−Pr):イッテルビウムトリイソプロポキシド
Ti(OMe):チタニウムテトラメトキシド
Ti(OEt):チタニウムテトラエトキシド
Ti(O−i−Pr):チタニウムテトライソプロポキシド
Ti(OBu):チタニウムテトラブトキシド
Zr(O−i−Pr):ジルコニウムテトライソプロポキシド
Hf(O−i−Pr):ハフニウムテトライソプロポキシド
AlF:フッ化アルミ
TiF:フッ化チタン
<フッ素含有化合物>
NaF:フッ化ナトリウム
TMAF:フッ化テトラメチルアンモニウム
<揮発性の水溶性有機溶媒>
IPA:イソプロピルアルコール
<重合開始剤(光重合開始剤)>
CQ:カンファーキノン
DMBE:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
BTPO:ビス(2,6−ジメチルベンソイル)フェニルホスフィンオキサイド
TAZ:2,4,6−テトラキストリクロロメチル−s−トリアジン
DMPT:ジメチルアミノ−p−トルイジン
<重合禁止剤>
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
HQME:ハイドロキノンモノメチルエーテル
<フィラー>
FS1:ヒュームドシリカ(平均粒径0.018μm、比表面積220m/g、表面シラノール基量5.0/nm
FS2:ヒュームドシリカ(平均粒径0.007μm、比表面積230m/g、表面シラノール基量1.2/nm、ジメチルジクロロシラン処理物)
F1:石英(平均粒径3μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したもの
F2:不定形シリカジルコニア(平均粒径3μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したもの
F3:60質量部のBis−GMAと40重量部の3Gの混合物100質量部に対して、予め重合開始剤として0.5質量部のアゾビスイソブチロニトリルを溶解させたもの25質量部と、75質量部のF5を、メノウ乳鉢で混合し、ペースト化し、これを95℃、窒素雰囲気下で1時間加熱重合硬化させた後、振動ボールミルを用いて粉砕したもの(平均粒径;12μm)
F4:球状シリカ(平均粒径0.13μm)
F5:球状シリカ−ジルコニア(平均粒径0.2μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより疎水化処理したもの
前記各成分のうち、DMPP,DMIPP,DMBP,DMHP,DMDP,DAEP,DMAEP,DEAEPについては、市販品を利用せず、以下の通り、合成した。
<DMPPの合成>
100mlの脱水テトラヒドロフランに30.7g(0.2mol)の塩化ホスホリルを溶解させ、該溶液に、氷浴にて冷却下、57.7g(0.4mol)の3−メタクリロイルオキシプロパノールと40.5g(0.4mol)のトリエチルアミンを1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に室温にて3時間攪拌し、3.6g(0.2mol)の水と20.3g(0.2mol)のトリエチルアミンを滴下し、1時間攪拌した。攪拌終了後、0.5規定塩酸100mlを加え、ジエチルエーテル50mlで3回抽出した。更にジエチルエーテル層を0.5規定塩酸50mlで1回、蒸留水で2回洗浄し、粒状シリカゲルで乾燥した。乾燥後、ジエチルエーテルをロータリーエバポレーターで留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMPP(49.7g、収率71%)を得た。なお、得られたDMPPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 1.76(m,4H),1.93(s,6H),3.53(t,4H),4.15(t,4H),5.58(s,2H),6.15(s,2H)
<DMIPPの合成>
DMPPの合成と同様に57.7g(0.4mol)の3−メタクリロイルオキシプロパン−2−オールを反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMIPP(35.0g、収率50%)を得た。なお、得られたDMIPPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 1.21(d,6H),1.92(s,6H),3.99(m,2H),4.30(d,4H),5.58(s,2H),6.15(s,2H)
<DMBPの合成>
DMPPの合成と同様に63.3g(0.4mol)の4−メタクリロイルオキシブタノールを反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMBP(65.2g、収率65%)を得た。なお、得られたDMBPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 1.48−1.57(m,8H),1.93(s,6H),3.53(d,4H),4.15(d,4H),5.58(s,2H),6.15(s,2H)
<DMHPの合成>
DMPPの合成と同様に74.5g(0.4mol)の6−メタクリロイルオキシヘキサノールを反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMHP(62.6g、収率72%)を得た。なお、得られたDMHPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 1.29−1.58(m,16H),1.93(s,6H),3.52(d,4H),4.14(d,4H),5.58(s,2H),6.15(s,2H)
<DMDPの合成>
DMPPの合成と同様に96.9g(0.4mol)の10−メタクリロイルオキシデカノールを反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMDP(84.2g、収率77%)を得た。なお、得られたDMDPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 1.22−1.59(m,32H),1.93(s,6H),3.53(d,4H),4.14(d,4H),5.58(s,2H),6.15(s,2H)
<DAEPの合成>
100mlの脱水テトラヒドロフランに30.7g(0.2mol)の塩化ホスホリルを溶解させ、該溶液に、氷浴にて冷却下、46.1g(0.4mol)のアミノエタノール−N−アクリルアミドと40.5g(0.4mol)のトリエチルアミンを1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に室温にて3時間攪拌し、3.6g(0.2mol)の水と20.3g(0.2mol)のトリエチルアミンを滴下し、1時間攪拌した。攪拌終了後、濃塩酸0.5mlを加え、粒状シリカゲルで乾燥した。乾燥後、テトラヒドロフランをロータリーエバポレーターで留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DAEP(17.5g、収率30%)を得た。なお、得られたDAEPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 3.15(d,4H),3.80(d,4H),5.71(d,2H),6.17(d,2H),6.48(m,2H),8.0(t,2H)
<DMAEPの合成>
DAEPの合成と同様に51.7g(0.4mol)のN−メチルアミノエタノール−N−アクリルアミドを反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMAEP(26.9g、収率42%)を得た。なお、得られたDMAEPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 2.90(s,6H),3.15(d,4H),3.79(d,4H),5.55(d,2H),6.12(d,2H),6.62(m,2H)
<DMEEPの合成>
DAEPの合成と同様に57.3g(0.4mol)のN−エチルアミノエタノール−N−アクリルアミドを反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、DMEEP(30.0g、収率43%)を得た。なお、得られたDMEEPのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ 1.20(m,6H),3.00(t,6H),3.12(d,4H),3.78(d,4H),5.55(d,2H),6.12(d,2H),6.62(m,2H)
(水を含有しない歯科用接着材/実施例1〜52、参考例1〜14及び比較例1〜11)
<実施例1>
5gのDMEPと0.82gのカルシウムジイソプロポキシドを、室温にて24時間攪拌混合した。その後、真空ポンプにて減圧し、揮発成分を取り除いた。その後、25gのMDP、30gのD−2.6E、20gのBis−GMA、20gの3G、0.4gのCQ、及び1.0gDMBEを加え、均一になるまで室温にて攪拌混合し、実施例1に係る歯科用接着性組成物を製造した。この歯科用接着性組成物は、歯科用接着材用途の組成として製造し、また、実質的に水を含まない構成としている。
<実施例2〜52、参考例1〜14、比較例1〜11>
後掲の表1−1〜表1−4に記載の組成に基づいて製造したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜52、参考例1〜14及び比較例1〜11に係る各歯科用接着性組成物を製造した。
(接着試験/水を含有しない歯科用接着材)
実施例1〜52、参考例1〜14及び比較例1〜11の各歯科用接着性組成物(歯科用接着材)に対し、以下に説明する接着試験片Iの作製に基づく、接着試験を実施した。
先ず、屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、#600のエメリーペーパーで唇面と平行になるようにエナメル質及び象牙質平面を削り出した。
次に、これら平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、エナメル質及び象牙質のいずれかの平面に直径3mmの円孔の開いた両面テープを固定した。
次に、厚さ0.5mm、直径8mmの孔の開いたパラフィンワックスを前記円孔上に同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。
次に、それぞれの模擬窩洞内に実施例1〜52、参考例1〜14及び比較例1〜11に係る各歯科用接着性組成物を塗布し、20秒間放置後、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射した。更に、その上に歯科用コンポジットレジン(エステライト、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射した。
これにより、接着試験に用いる接着試験片Iを作製した。
接着試験片Iを37℃水中に24時間浸漬した後、金属製の治具を取り付け、引張試験機(島津社製オートグラフAG5000)を用いて、クロスヘッドスピード2mm/minの条件で引張り、エナメル質、象牙質−前記歯科用コンポジットレジン間での引張り接着強度を測定した。
なお、この接着強度の測定は、前記歯科用接着組成物ごとに接着試験片Iを8本ずつ作製して行い、その平均値を接着強度の値とした。
以上の接着試験の試験結果を下記表1−1〜表1−4に示す。なお、これらの表中に示す「リン酸エステルモル数/(多価金属モル数×価数)」は、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和、又は(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数を、前記多価金属化合物全量のモル数と、該多価金属化合物の価数を掛け合わせた前記多価金属の総価数で割ったものを示し、また、「ジエステル/多価金属×価数」は、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数を、前記多価金属化合物全量のモル数と、該多価金属化合物の価数を掛け合わせた前記多価金属の総価数で割った値を示し、「(モノエステル+ジエステル)/(多価金属×総価数)」は、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和を、前記多価金属化合物全量のモル数と、該多価金属化合物の価数を掛け合わせた前記多価金属の総価数で割った値を示す。
前掲の表1−1〜表1−4に示すように、前記(C)多価金属化合物を含まない比較例1に係る歯科用接着性組成物、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体及び前記(C)多価金属化合物を含まない比較例2に係る歯科用接着性組成物、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(C)多価金属化合物を含まない比較例3に係る歯科用接着性組成物、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体を含まない比較例4に係る歯科用接着性組成物のそれぞれに対し、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体及び前記(C)多価金属化合物の全てを含む実施例1〜52、参考例1〜14に係る各歯科用接着性組成物では、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、より高い接着強度を示すことができている。
前掲の表1−1,表1−4に示すように、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体の比較成分である短鎖状のリン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体(MEP,MPP)を用いた比較例5,7に係る各歯科用接着性組成物に対し、長鎖状の前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体(MDP)を用いた実施例12に係る歯科用接着性組成物では、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、より高い接着強度を示すことができている。なお、この結果は、フィラーを含む実施例48に係る歯科用接着性組成物及び比較例6に係る歯科用接着性組成物においても同様である(前掲の表1−3,表1−4参照)。
また、前掲の表1−1,表1−2,表1−4に示すように、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の比較成分である長鎖状のリン酸水素ジエステル基含有重合性単量体(DMBP,DMHP,DMDP)を用いた比較例8〜10に係る各歯科用接着性組成物に対し、短鎖状の前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体(DMEP,DMPP,DMIPP,DAEP,DMAEP,DMEEP)を用いた実施例12,20〜27及び参考例1〜7に係る各歯科用接着性組成物では、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、より高い接着強度を示すことができている。
また、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のそれぞれについて、比較成分(MEP,DMDP)を用いた比較例11に係る歯科用接着性組成物に対して、実施例12,20〜27及び参考例1〜7に係る各歯科用接着性組成物では、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、より高い接着強度を示すことができている。
前掲の表1−1に示すように、前記(C)多価金属化合物として、前記多価金属アルコキシド(カルシウムジイソプロポキシド)を用いた実施例1に係る歯科用接着性組成物は、前記多価金属水素化物(水素化カルシウム)、前記多価金属炭酸塩(炭酸カルシウム)を用いた実施例2,3に係る各歯科用接着性組成物よりも、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。
また、同様に、前記(C)多価金属化合物として、前記多価金属アルコキシド(アルミニウムトリイソプロポキシド)を用いた実施例6に係る歯科用接着性組成物は、前記アルキル多価金属(トリメチルアルミニウム)を用いた実施例5に係る歯科用接着性組成物よりも、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。
また、前掲の表1−1に示すように、前記(C)多価金属化合物として、第四族の前記多価金属アルコキシド(チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド)を用いた実施例10〜14に係る各歯科用接着性組成物は、第四族以外の前記多価金属アルコキシド(バリウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、スカンジウムトリイソプロポキシド、ランタントリイソプロポキシド、イッテルビウムトリイソプロポキシド)を用いた実施例4,6〜9に係る各歯科用接着性組成物よりも、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。なお、第四族の前記多価金属アルコキシドとして、チタニウムテトライソプロポキシドを用いた実施例12に係る歯科用接着性組成物は、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ハフニウムテトライソプロポキシドを用いた実施例14,15に係る各歯科用接着性組成物と比べ、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。
前掲の表1−1,1−2に示すように、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和が、前記(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数よりも大きい実施例12,25〜27及び参考例1〜6に係る各歯科用接着性組成物では、前記モル数の和が、前記(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数よりも小さい参考例7と比べ、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。なお、「多価金属化合物中の多価金属の総価数」とは、前記歯科用接着性組成物に含まれる前記多価金属化合物全量のモル数と、該多価金属化合物の価数を掛け合わせたものである。
また、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数と、前記多価金属の総価数との比(リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体/多価金属の総価数)が、0.3〜2.5である実施例12,25〜27及び参考例2〜5に係る各歯科用接着性組成物では、前記比が、0.3〜2.5から外れる参考例1,6,7に係る各歯科用接着性組成物と比べ、参考例6に係る歯科用接着性組成物の象牙質に対する接着強度が、参考例2に係る歯科用接着性組成物の象牙質に対する接着強度と同等であることを除き、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。
前掲の表1−1,表1−3に示すように、前記多価金属化合物の前記多価金属原子に対する前記フッ素原子のモル比、フッ素原子/多価金属原子が、0.4〜4.0となるように前記フッ素含有化合物(フッ化ナトリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム)を含む実施例38,39に係る各歯科用接着性組成物では、これを含まない実施例12に係る歯科用接着性組成物よりも、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。また、前記フッ素含有化合物でもある、前記(C)多価金属化合物としての前記多価金属フッ化物を用い、前記モル比が、0.4〜4.0となるように前記フッ素含有化合物を含む実施例40〜45に係る歯科用接着性組成物では、前記モル比が0.4〜4.0から外れる実施例46に係る歯科用接着性組成物と比べ、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示している。
(水を含有しない歯科用接着性コンポジットレジン/実施例53〜56及び比較例12〜16)
<実施例53>
33gの実施例12に係る歯科用接着性組成物と、40gのF1、及び27gのF4をメノウ乳鉢で混合し、真空下にて脱泡することで実施例53に係る歯科用接着性組成物を製造した。この歯科用接着性組成物は、歯科用接着性コンポジットレジン用途の組成として製造し、また、実質的に水を含まない構成としている。
<実施例54〜56、比較例12〜16>
後掲の表2に記載の組成に基づいて製造したこと以外は、実施例53と同様にして、実施例54〜56及び比較例12〜16に係る各歯科用接着性組成物を製造した。
(接着試験/歯科用接着性コンポジットレジン)
実施例53〜56及び比較例12〜16に係る各歯科用接着性組成物(歯科用接着性コンポジットレジン)に対し、以下に説明する接着試験片IIの作製に基づく、接着試験を実施した。
即ち、接着試験片Iの作製方法と同様の方法により形成した模擬窩洞内に実施例53〜56及び比較例12〜16に係る各歯科用接着性組成物を充填し、20秒間放置後、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射して、接着試験片IIを作製した。
この接着試験片IIに対して、接着試験片Iに対する接着試験と同様の接着試験を行い、接着強度を測定した。
接着試験の試験結果を下記表2に示す。
前掲の表2に示すように、実施例12に係る歯科用接着性組成物を用いて、歯科用接着性コンポジットレジン用途に構成した実施例53〜56に係る各歯科用接着性組成物では、比較例1〜5に係る各歯科用接着性組成物を用いて、歯科用接着性コンポジットレジン用途に構成した比較例12〜16に係る各歯科用接着性組成物よりも、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、高い接着強度を示すことができている。
(水を含有する歯科用接着性組成物/実施例57,58及び比較例17〜21)
<実施例57>
5gのDMEPと0.88gのチタニウムテトライソプロポキシドを、室温にて24時間攪拌混合した。その後、25gのMDP、20gのHEMA、30gのBis−GMA、20gの3G、1.3gのCQ、1.3gDMBE、10gのFS2を加え、均一になるまで室温にて攪拌混合した。その後、85gのIPA及び19g水を加え、均一になるまで室温にて攪拌混合し、実施例57に係る歯科用接着性組成物を製造した。この歯科用接着性組成物は、歯科用接着材用途の組成として製造し、また、水を含む構成としている。
<実施例58,比較例17〜21>
後掲の表3に記載の組成に基づいて製造したこと以外は、実施例57と同様にして、実施例57及び比較例17〜21に係る各歯科用接着性組成物を製造した。
(接着試験/水を含有する歯科用接着材)
実施例57,58及び比較例17〜21に係る各歯科用接着性組成物(歯科用接着性コンポジットレジン)に対し、以下に説明する接着試験片IIIの作製に基づく、接着試験を実施した。
即ち、接着試験片Iの作製方法と同様の方法により形成した模擬窩洞内に実施例57,58及び比較例17〜21に係る各歯科用接着性組成物を塗布し、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥し、20秒間放置後、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて10秒間光照射した。更に、その上に歯科用コンポジットレジン(エステライト、トクヤマデンタル社製)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射した。
これにより、接着試験に用いる接着試験片IIIを作製した。
この接着試験片IIIに対し、熱衝撃試験器に入れ、4℃の水槽に1分間浸漬後、60℃の水槽に移し1分間浸漬し、再び4℃の水槽に戻す操作を5,000回繰り返した後、引張り強度の測定を行ったこと以外は、接着試験片Iに対する接着試験と同様の接着試験を行い、接着強度を測定した。
接着試験の試験結果を下記表3に示す。
前掲の表3に示すように、前記(C)多価金属化合物を含まない比較例17に係る歯科用接着性組成物、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体及び前記(C)多価金属化合物を含まない比較例18に係る歯科用接着性組成物、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(C)多価金属化合物を含まない比較例19に係る歯科用接着性組成物、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体を含まない比較例20に係る歯科用接着性組成物のそれぞれに対し、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量、前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体及び前記(C)多価金属化合物の全てを含む実施例57,58に係る各歯科用接着性組成物では、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、より高い接着強度を示すことができている。
また、同様に、前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体の比較成分である短鎖状のリン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体(MEP)を用いた比較例21に係る歯科用接着性組成物に対し、長鎖状の前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体(MDP)を用いた実施例57,58に係る各歯科用接着性組成物では、エナメル質及び象牙質のそれぞれで、より高い接着強度を示すことができている。

Claims (7)

  1. 少なくとも、(A)下記一般式(1)で表されるリン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体と、(B)下記一般式(2)で表されるリン酸水素ジエステル基含有重合性単量体と、(C)多価金属アルコキシド、多価金属フッ化物、多価金属炭酸塩、多価金属水素化物及びアルキル多価金属の少なくともいずれかから選ばれる多価金属化合物と、を混合して得られる混合物、前記(A)及びリン酸二水素物エステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体以外のその他の重合性単量体、並びに、重合開始剤を含む歯科用接着性組成物であって、
    前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和が、前記(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数より大きく、
    前記全重合性単量体成分中の前記(A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体の含有量が10質量%〜50質量%であるとともに、前記全重合性単量体成分中の前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体の含有量が3質量%〜10質量%であり、
    前記(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数を、前記(C)多価金属化合物中の前記多価金属の総価数で割った値が、1.0〜1.75であり、
    歯科用接着材、自己接着性歯科用コンポジットレジン及び自己接着性歯科用セメントのいずれかとして用いられることを特徴とする歯科用接着性組成物。
    ただし、前記一般式(1)中、Rは、水素原子及びメチル基のいずれかを示し、Xは、直鎖又は分岐していてもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す。
    ただし、前記一般式(2)中、R及びRは、相互に独立して、水素原子及びメチル基のいずれかを示し、Y及びYは、相互に独立して、酸素原子、−NH−、−NCH−及び−NCHCH−のいずれかを示し、Z及びZは、相互に独立して、直鎖又は分岐していてもよい炭素数2又は3の炭化水素基を示す。
  2. (A)リン酸二水素モノエステル基含有重合性単量体及び(B)リン酸水素ジエステル基含有重合性単量体のモル数の和を、(C)多価金属化合物中の多価金属の総価数で割った値が、3.76以上である請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  3. (C)多価金属化合物が、多価金属アルコキシドである請求項1から2のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
  4. (C)多価金属化合物が、第四族金属化合物である請求項1から3のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
  5. 更に、(C)多価金属化合物の多価金属原子に対するフッ素原子のモル比、フッ素原子/多価金属原子が、0.4〜4.0となるようにフッ素含有化合物を含む請求項1から4のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
  6. 実質的に水を含有しない請求項1から5のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
  7. 歯科用接着材として用いられる請求項1から6のいずれかに記載の歯科用接着性組成物。
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