まず、本発明の化合物(I)について説明する。本発明の化合物(I)は、下記一般式(1)で表される。
化合物(I)は、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド骨格を有する。これにより、化合物(I)を重合性単量体と組み合わせて組成物とした場合に、組成物に、接着操作間のばらつきの小さい安定した接着性が付与される。
一般式(1)において、R1〜R15は、それぞれ独立して水素原子、下記一般式(2)で表される基、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表し、R1〜R15のうち少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基である。化合物(I)が一般式(2)で表される基を有することによって、コラーゲン内部への高い浸透性を有し、化合物(I)を重合性単量体と組み合わせて組成物とした場合に、組成物に、歯質に対する高い接着性を付与できる。
一般式(2)において、R16は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表し、R17は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R18)−(R18は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基)を表す。
R1〜R18で表される炭素数1〜20の有機基は、脂肪族であっても芳香族であってもよく、また飽和又は不飽和であってよい。また、分岐構造を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。有機基は、炭化水素基に限られず、炭化水素基に、カルボニル炭素、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挿入された基であってもよい。炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリールアルキル基、アルケニルアリール基等が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプタニル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロオクタニル基、n−ノニル基、シクロノナニル基、n−デシル基等が挙げられる。
アルケニル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
アルキニル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−エチル−2−プロピニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−3−ブチニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、1−エチル−2−ブチニル基、3−ヘキシニル基、1−メチル−2−ペンチニル基、1−メチル−3−ペンチニル基、4−メチル−1−ペンチニル基、3−メチル−1−ペンチニル基、5−ヘキシニル基、1−エチル−3−ブチニル基等が挙げられる。
アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
アルキルアリール基の例としては、低級アルキル基(特に、炭素数1〜6のアルキル基)で置換されたアリール基が挙げられ、具体的には、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジブチルフェニル基、メチルナフチル基等が挙げられる。
アリールアルキル基の例としては、アリール基で置換された低級アルキル基(特に、炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられ、具体的にはベンジル基等が挙げられる。
アルキルアリールアルキル基の例としては、低級アルキル基(特に、炭素数1〜6のアルキル基)で置換されたアリール基を置換基として有する低級アルキル基(特に、炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられ、具体的には、メチルベンジル基等が挙げられる。
アルケニルアリール基の例としては、低級アルケニル基(特に、炭素数1〜6のアルケニル基)で置換されたアリール基が挙げられ、具体的には、スチリル基、アリルフェニル基等が挙げられる。
R1〜R18で表される有機基が有する置換基の数及び種類は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、置換基の例として、アミノ基、水酸基、アルコキシ基、アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
R1〜R15で表される有機基は、重合性組成物にした際の硬化性の観点から、その炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜7であることがさらに好ましい。
重合性組成物にした際の保存安定性及び硬化性の観点から、R1〜R15として、一般式(2)で表される基以外で好ましくは、水素原子、炭素数1〜7の炭化水素基、及び炭素数1〜7のアルコキシ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、及びエトキシ基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、及びエトキシ基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基である。また、R1〜R15のうち一般式(2)で表される基の数は、1〜5個が好ましく、1〜2個がより好ましい。
R16で表される有機基は、重合性組成物とした際の硬化性及び接着性の観点から、その炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜7であることがさらに好ましい。
重合性組成物とした際の硬化性の観点から、R16として好ましくは、水素原子である。
R17で表される有機基は、重合性組成物とした際の硬化性の観点から、その炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜9であることがさらに好ましい。
重合性組成物とした際の硬化性の観点から、R17として好ましくは、エーテル酸素、ケト基、水酸基、又はこれらの組み合わせとして酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜12の炭化水素基である。エーテル酸素、ケト基、水酸基、又はこれらの組み合わせとして酸素原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、アルキル基、水酸基を有するアルキル基、環状エーテル基、鎖状エーテル基、エステル結合を含むアルキル基が好ましい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R18)−(R18は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基)を表す。R18として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、及びフェニル基である。重合性組成物とした際の歯質への浸透性の観点から、Xとして好ましくは、酸素原子、及び−N(R18)−であり、より好ましくは、酸素原子である。
化合物(I)は、公知方法を組み合わせて製造することができる。
例えば、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド骨格については、欧州特許第0007508号明細書、米国特許第4298738号明細書、米国特許第4710523号明細書等に記載のように、下記の反応式(3)で表される反応により形成することができる。
(式中、Zは、塩素原子又は臭素原子であり、R’は、低級アルキル基等である。)
また、フェニル基に種々の置換基を導入する方法も公知であり、このような公知方法を組み合わせることによって、化合物(I)を製造することができる。
より具体的には、一般式(2)において、R16が、水素原子であり、Xが、酸素原子又は硫黄原子である化合物(I)は、例えば、以下の反応式(4)に示すように、イソシアネート基で置換されたフェニル基を有する化合物を原料に用いてイソシアネート基を有するベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド化合物を合成し、このイソシアネート基にアルコール化合物又はチオール化合物を反応させることによって、製造することができる。
反応式(4)において、Zは、塩素原子又は臭素原子であり、R’は、低級アルキル基等であり、X’は、酸素原子又は硫黄原子であり、R17は、前記と同義である。各フェニル基は、置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基で置換されていてもよい。
一般式(2)において、R16が、置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基である化合物(I)は、例えば、以下の反応式(4)に示すように、アミノ基を有するベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド化合物と、酸クロライド型構造(クロロフォーメート等)を含む化合物を反応させることによって、製造することができる。
反応式(5)において、X及びR17は、前記と同義である。各フェニル基は、置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基で置換されていてもよい。
一般式(2)において、R16が、水素原子であり、Xが、−N(R18)−である化合物(I)は、例えば、以下の反応式(6)に示すように、イソシアネート基で置換されたフェニル基を有する化合物を原料に用いてイソシアネート基を有するベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド化合物を合成し、このイソシアネート基にアミン化合物を反応させることによって、製造することができる。
反応式(6)において、Zは、塩素原子又は臭素原子であり、R’は、低級アルキル基等であり、R17は、前記と同義である。各フェニル基は、置換基を有してもよい炭素数1〜20の有機基で置換されていてもよい。
本発明の化合物(I)を、化合物(I)によって重合が開始される重合性単量体と組み合わせて重合性組成物とした場合には、当該重合性組成物は、歯質に対して高い接着性を示し、また、接着操作間のばらつきが小さく、安定した接着性を示す。
そこで、本発明はまた、上述の化合物(I)、及び重合性単量体(II)を含む重合性組成物である。
重合性単量体(II)は、化合物(I)によりその重合が開始される限り特に制限はなく、酸性基を有する重合性単量体(II−a)、酸性基を有さず、かつ1個の重合性基を有する重合性単量体(II−b)、及び、酸性基を有さず、かつ2個以上の重合性基を有する重合性単量体(II−c)に大別される。重合性単量体(II)としては、反応性及び生体に対する安全性の観点から、(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物が好ましく、(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
酸性基を有する重合性単量体(II−a)としては、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有し、且つアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合性基を少なくとも1個有する重合性単量体が挙げられる。酸性基を有する重合性単量体(II−a)は、被着体との親和性を有するとともに、歯質に対しては脱灰作用を有する。以下、酸性基を有する重合性単量体(II−a)の具体例を下記する。
リン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
ピロリン酸基含有重合性単量体としては、ピロリン酸ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
チオリン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
ホスホン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が例示される。
スルホン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレートが例示される。
カルボン酸基含有重合性単量体としては、分子内に1つのカルボキシル基を有する重合性単量体と、分子内に複数のカルボキシル基を有する重合性単量体とが挙げられる。
分子内に1つのカルボキシル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート及びこれらの酸ハロゲン化物が例示される。
分子内に複数のカルボキシル基を有する重合性単量体としては、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、9−(メタ)アクリロイルオキシノナン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデカン−1,1−ジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート及びこれらの酸無水物又は酸ハロゲン化物が例示される。
上記の酸性基を有する重合性単量体(II−a)は、一種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。これらの酸性基を有する重合性単量体(II−a)の中でも、歯質との接着強度が大きい点で、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートアンハイドライド、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸が好ましい。
酸性基を有さず、かつ1個の重合性基を有する重合性単量体(II−b)は、重合性組成物の成分の歯質への浸透を促進するとともに、自らも歯質に浸透して歯質中の有機成分(コラーゲン)に接着する。
酸性基を有さず、かつ1個の重合性基を有する重合性単量体(II−b)は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。重合性単量体(II−b)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等が挙げられるが、これらの中でも、象牙質のコラーゲン層への浸透性の改善の観点からは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−アクリロイルモルホリンが好ましく、特に好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
酸性基を有さず、かつ2個以上の重合性基を有する重合性単量体(II−c)は、重合性組成物の機械的強度、取り扱い性などを向上させる。
酸性基を有さず、かつ2個以上の重合性基を有する重合性単量体(II−c)は、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用することができる。酸性基を有さず、かつ2個以上の重合性基を有する重合性単量体(II−c)としては、特に限定されないが、芳香族化合物系の二官能性重合性単量体、脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体、三官能性以上の重合性単量体などが挙げられる。
芳香族化合物系の二官能性重合性単量体の例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「BisGMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテートなどが挙げられる。
脂肪族化合物系の二官能性重合性単量体の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)等が挙げられる。
三官能性以上の重合性単量体の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、及び1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
次に、これらの重合性単量体の配合量について説明する。重合性単量体(II−a)の配合量は、実施態様に応じて適宜決定すればよく、概して、重合性単量体(II)100重量部中において、0.5〜95重量部が好ましく、1〜70重量部がより好ましい。重合性単量体(II−a)の配合量が0.5重量部より少ないと、脱灰効果を十分に得られず接着強度が低下するおそれがある。一方、重合性単量体(II−a)の配合量が95重量部より多いと、十分な硬化性が得られずに接着強度が低下するおそれがある。
重合性単量体(II−b)の配合量は、実施態様に応じて適宜決定すればよく、概して、重合性単量体(II)100重量部中、1〜95重量部が好ましく、3〜80重量部がより好ましい。重合性単量体(II−b)の配合量が1重量部より少ないと、重合性単量体(c−1)による象牙質のコラーゲン層への浸透効果が十分に得られず接着強度が低下するおそれがある。一方、重合性単量体(II−b)の配合量が95重量部より多いと、十分な硬化性が得られずに接着強度が低下するおそれがある。
重合性単量体(II−c)の配合量は、実施態様に応じて適宜決定すればよく、概して、重合性単量体(II)100重量部中、1〜95重量部が好ましく、3〜90重量部がより好ましい。重合性単量体(II−c)の配合量が1重量部より少ないと、重合性単量体(II−c)による接着強度向上効果を十分に得られないおそれがある。一方、重合性単量体(II−c)の配合量が95重量部より多いと、組成物の象牙質のコラーゲン層への浸透が不十分となり、高い接着強度が得られなくなるおそれがある。
化合物(I)と重合性単量体(II)の配合量については、重合性組成物は、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.01〜30重量部を含有することが好ましい。配合量が0.01重量部より少ないと、重合が十分に進行せず高い接着強度が得られなくなるおそれがある。一方、配合量が30重量部を超える場合、組成物から析出するおそれがある。
本発明の重合性組成物は、その用途に応じて、重合促進剤(III)、フィラー(IV)、溶媒(V)、化合物(I)以外の重合開始剤(VI)等を含有していてもよい。
重合促進剤(III)
本発明の重合性組成物は、その重合硬化を促進するために、重合促進剤(III)を含んでいてもよい。本発明に用いられる重合促進剤(III)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ尿素化合物などが挙げられる。
重合促進剤(III)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
重合促進剤(III)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
重合促進剤(III)として用いられるボレート化合物は、好ましくはアリールボレート化合物である。好適に使用されるアリールボレート化合物を具体的に例示すると、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物として、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びモノアルキルトリ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基又はn−ドデシル基等から選択される1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p−フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p−ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素及び(p−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の観点から、1分子中に3個又は4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。また、これらアリールボレート化合物は1種又は2種以上を混合して用いることも可能である。
重合促進剤(III)として用いられるバルビツール酸誘導体としては、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−1−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−メチルバルビツール酸、5−プロピルバルビツール酸、1,5−ジエチルバルビツール酸、1−エチル−5−メチルバルビツール酸、1−エチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジエチル−5−ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−メチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−オクチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−ヘキシルバルビツール酸、5−ブチル−1−シクロヘキシルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウム等が例示される。
特に好適なバルビツール酸誘導体としては、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩が挙げられる。
重合促進剤(III)として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が例示される。
上記で例示したトリアジン化合物の中で特に好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
重合促進剤(III)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
重合促進剤(III)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
重合促進剤(III)として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)等の特開2003−96122号公報に記載されている化合物が挙げられる。
重合促進剤(III)として用いられるハロゲン化合物としては、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド等が好適に用いられる。
重合促進剤(III)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
重合促進剤(III)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
重合促進剤(III)として用いられる亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
重合促進剤(III)として用いられる亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。
重合促進剤(III)として用いられるチオ尿素化合物としては、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素等が挙げられる。
本発明に用いられる重合促進剤(III)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体(II)100重量部に対して、重合促進剤(III)を0.001〜30重量部含有してなることが好ましい。重合促進剤(III)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、接着力の低下を招くおそれがあり、より好適には0.05重量部以上である。一方、重合促進剤(III)の配合量が30重量部を超える場合、重合促進剤自体の重合性能が低い場合には、十分な接着強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には20重量部以下である。
フィラー(IV)
本発明の重合性組成物に、実施態様に応じて、さらにフィラー(IV)を配合してもよい。このようなフィラーは、通常、有機フィラー、無機フィラー及び有機−無機複合フィラーに大別される。有機フィラーの素材としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
無機フィラーの素材としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。無機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記無機フィラーの平均粒子径は0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
無機フィラーの形状としては、不定形フィラー及び球状フィラーが挙げられる。組成物の機械強度を向上させる観点からは、前記無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。さらに、前記球状フィラーを用いた場合、本発明の重合性組成物を歯科用コンポジットレジンとして用いた場合に、表面滑沢性に優れたコンポジットレジンが得られるという利点もある。ここで球状フィラーとは、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略す)でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーである。前記球状フィラーの平均粒子径は好ましくは0.1〜5μmである。平均粒子径が0.1μm未満の場合、組成物中の球状フィラーの充填率が低下し、機械的強度が低くなるおそれがある。一方、平均粒子径が5μmを超える場合、前記球状フィラーの表面積が低下し、高い機械的強度を有する硬化体が得られないおそれがある。
前記無機フィラーは、組成物の流動性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明で用いられる有機−無機複合フィラーとは、上述の無機フィラーにモノマー化合物を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。前記有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。前記有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる組成物のハンドリング性及び機械強度などの観点から、前記有機−無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001〜50μmであることが好ましく、0.001〜10μmであることがより好ましい。
本発明に用いられるフィラー(IV)の配合量は特に限定されず、重合性単量体(II)100重量部に対して、フィラー(IV)を1〜2000重量部が好ましい。フィラー(IV)の好適な配合量は、用いられる実施態様によって大幅に異なるので、後述する本発明の重合性組成物の具体的な実施態様の説明と併せて、各実施態様に応じたフィラー(IV)の好適な配合量を示すこととする。
溶媒(V)
本発明の重合性組成物は、その具体的な実施態様によっては、溶媒(V)を含むことが好ましい。溶媒としては、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
本発明の重合性組成物が水を含む場合には、優れた接着強度を示すとともに優れた接着耐久性を示す。水の含有量としては、重合性単量体(II)100重量部に対して6〜2000重量部が好ましい。水の含有量が6重量部未満の場合、歯面の脱灰が不十分となり、接着強度が低下する。一方、水の含有量が2000重量部を超える場合、モノマーの重合性が低下し、接着強度が低下するとともに接着耐久性が低下する。水の含有量は、7重量部以上であることがより好ましく、10重量部以上であることがさらに好ましい。また、水の含有量は、1500重量部以下であることがより好ましい。水は、悪影響を及ぼすような不純物を含有していないことが好ましく、蒸留水又はイオン交換水が好ましい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、生体に対する安全性と、揮発性に基づく除去の容易さの双方を勘案した場合、有機溶媒が水溶性有機溶媒であることが好ましく、具体的には、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、アセトン、及びテトラヒドロフランが好ましく用いられる。前記有機溶媒の含有量は特に限定されず、実施態様によっては前記有機溶媒の配合を必要としないものもある。前記有機溶媒を用いる実施態様においては、重合性単量体(II)100重量部に対して、有機溶媒を1〜2000重量部含有してなることが好ましい。溶媒(V)の好適な配合量は、用いられる実施態様によって大幅に異なるので、後述する本発明の重合性組成物の具体的な実施態様の説明と併せて、各実施態様に応じた溶媒の好適な配合量を示すこととする。
重合開始剤(VI)
本発明の重合性組成物は、重合開始剤として化合物(I)を含有しているが、さらに他の重合開始剤(VI)を含有していてもよい。重合開始剤(VI)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられ、これらの具体的な化合物としては、国際公開第2008/087977号パンフレットに記載のものを挙げることができる。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられ、これらの具体的な化合物としては、国際公開第2008/087977号パンフレットに記載のものを挙げることができる。
本発明に用いられる重合開始剤(VI)の配合量は特に限定されないが、重合性単量体(II)100重量部に対して、化合物(I)と重合開始剤(VI)との合計で30重量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることが好ましい。
この他、本発明の重合性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲でpH調整剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、抗菌剤、香料等を配合してもよい。
本発明の重合性組成物は、例えば、生体硬組織、金属材料、有機高分子材料、セラミック等用の接着材料として用いることができる。歯質に対する接着性が高く、接着操作間のばらつきが小さいことから、本発明の重合性組成物は、歯科用組成物として特に好適に用いられる。当該歯科用組成物は、例えば、プライマー、ボンディング材、コンポジットレジン、セメント(レジンセメント、レジン強化型グラスアイオノマーセメント)、小窩裂溝填塞材、義歯床用レジン等の歯科用材料に用いることができ、中でも、プライマー、ボンディング材、コンポジットレジン、又はセメントとして好適に用いられる。このとき、重合性組成物の成分を2つに分けた2剤型として用いてもよい。以下、重合性組成物を歯科用材料に適用する場合の具体的な態様を示す。
歯科用プライマー
歯科用材料の接着システムは、象牙質表面を酸性成分で溶かす脱灰工程、モノマー成分が象牙質のコラーゲン層に浸透する浸透工程、浸透したモノマー成分が固まってコラーゲンとのハイブリッド層(樹脂含浸層)を形成する硬化工程を含む。基本的には、浸透工程に用いられる製品がプライマーである。プライマーとしては、近年前記脱灰工程と前記浸透工程とを併せて一段階で行うセルフエッチングプライマーもある。
プライマーは、光ラジカル重合開始剤を含む公知のプライマーの、光ラジカル重合開始剤の一部又は全部を化合物(I)に置き換えることにより、構成することができる。セルフエッチングプライマーの組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)1〜80重量部、重合性単量体(II−b)0〜80重量部、重合性単量体(II−c)0〜80重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)2〜80重量部、重合性単量体(II−b)5〜80重量部、重合性単量体(II−c)1〜70重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜20重量部を含み、好ましくは0.01〜10重量部を含む。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜10重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜10重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、溶媒(V)を6〜2000重量部含むことが好ましく、7〜1000重量部含むことがより好ましい。
歯科用ボンディング材
上記の硬化工程に用いられる製品がボンディング材である。近年では、浸透工程、脱灰工程、及び硬化工程を併せて一段階で行う1ステップ型のボンディング材も開発されている。また、ボンディング材は、2剤を使用直前に混和して用いる2液型と、1剤をそのまま使用可能な1液型とに分かれるが、現在は1液型が主流である。
ボンディング材は、光ラジカル重合開始剤を含む公知のボンディング材の、光ラジカル重合開始剤の一部又は全部を化合物(I)に置き換えることにより、構成することができる。2ステップ型の1液型ボンディング材の組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)0〜80重量部、重合性単量体(II−b)0〜80重量部、重合性単量体(II−c)1〜80重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)2〜60重量部、重合性単量体(II−b)2〜60重量部、重合性単量体(II−c)5〜80重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜20重量部を含み、好ましくは0.01〜10重量部を含む。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜10重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜10重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、フィラー(IV)を0〜30重量部含むことが好ましく、1〜20重量部含むことがより好ましい。また、通常、溶媒(V)を使用しないが、溶媒(V)を使用してもよい。
1ステップ型の1液型ボンディング材の組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)1〜80重量部、重合性単量体(II−b)0〜80重量部、重合性単量体(II−c)1〜80重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)2〜60重量部、重合性単量体(II−b)2〜70重量部、重合性単量体(II−c)3〜70重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜20重量部を含み、好ましくは0.01〜10重量部を含む。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜10重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜10重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、フィラー(IV)を0〜30重量部含むことが好ましく、1〜20重量部含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、溶媒(V)を1〜1000重量部含むことが好ましく、5〜500重量部含むことがより好ましい。
歯科用コンポジットレジン
コンポジットレジンは、通常、う蝕発生部位を切削し窩洞を形成した後に、前記窩洞に充填される形態で用いられる歯科用材料である。近年は、上記の浸透作用、脱灰作用、及び硬化作用を有する自己接着性コンポジットレジンも開発されており、自己接着性コンポジットレジンによれば、ボンディング材等を用いなくても充填修復が可能である。
コンポジットレジンは、光ラジカル重合開始剤を含む公知のコンポジットレジンの、光ラジカル重合開始剤の一部又は全部を化合物(I)に置き換えることにより、構成することができる。コンポジットレジンの組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)0〜40重量部、重合性単量体(II−b)0〜80重量部、重合性単量体(II−c)1〜100重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)0〜20重量部、重合性単量体(II−b)0〜70重量部、重合性単量体(II−c)10〜100重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜20重量部を含み、好ましくは0.005〜10重量部を含む。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜20重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜10重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、フィラー(IV)を50〜2000重量部含むことが好ましく、100〜1500重量部含むことがより好ましい。また、通常、溶媒(V)を使用しないが、溶媒(V)を使用してもよい。
また、近年、ボンディング材の使用が不要の自己接着性コンポジットレジンも開発されている。自己接着性コンポジットレジンの組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)1〜80重量部、重合性単量体(II−b)0〜80重量部、重合性単量体(II−c)1〜99重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)2〜60重量部、重合性単量体(II−b)3〜70重量部、重合性単量体(II−c)5〜95重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜20重量部を含み、好ましくは0.005〜10重量部を含む。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜20重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜10重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、フィラー(IV)を50〜2000重量部含むことが好ましく、100〜1500重量部含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、溶媒(V)を0〜20重量部含むことが好ましく、0〜10重量部含むことがより好ましい。
歯科用セメント
歯科用セメントは、通常、インレーやクラウンと呼ばれる金属やセラミックス製の歯冠用修復材料を歯牙に固定する際の合着材として用いられる歯科用材料である。脱灰作用を有する化合物(例、重合性単量体(II−a))を配合することにより、自己接着性セメントを構成することも可能である。セメントとしては、レジンセメント及びレジン強化型グラスアイオノマーセメントがある。
セメントは、光ラジカル重合開始剤を含む公知のセメント(デュアルキュア型レジンセメント、光硬化型グラスアイオノマーセメント等)の、光ラジカル重合開始剤の一部又は全部を化合物(I)に置き換えることにより、構成することができる。
デュアルキュア型レジンセメントの組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)0〜80重量部、重合性単量体(II−b)0〜80重量部、重合性単量体(II−c)1〜100重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)0〜60重量部、重合性単量体(II−b)3〜70重量部、重合性単量体(II−c)1〜97重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜30重量部、及び化学重合型の重合開始剤(VI)0.001〜30重量部を含み、化合物(I)0.01〜15重量部、及び化学重合型の重合開始剤(VI)0.01〜15重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜20重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜10重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、フィラー(IV)を50〜2000重量部含むことが好ましく、100〜1500重量部含むことがより好ましい。また、通常、溶媒(V)を使用しないが、溶媒(V)を使用してもよい。
なお、レジンセメントにおいては、保存安定性の観点から、化合物(I)及び重合開始剤(VI)と、重合促進剤(III)とを、それぞれ別々の容器に保存する2剤型とすることが好ましい。
グラスアイオノマーセメントは、典型的にはフルオロアルミノシリケートガラスのような無機フィラーと、ポリアクリル酸のようなポリアルケン酸とが酸−塩基反応によって反応、硬化するものである。そして、前記ポリアルケン酸と歯質を構成するハイドロキシアパタイト中のカルシウムとが相互作用することにより、接着機能が発現すると考えられている。光硬化型グラスアイオノマーセメントは、グラスアイオノマーセメントに光重合開始剤を含むレジン成分を加え、光硬化も可能にしたものである。
光硬化型グラスアイオノマーセメントの組成の例としては、重合性単量体(II)100重量部中において、重合性単量体(II−a)1〜50重量部、重合性単量体(II−b)1〜98重量部、重合性単量体(II−c)1〜98重量部が配合され、好ましくは、重合性単量体(II−a)1〜30重量部、重合性単量体(II−b)5〜93重量部、重合性単量体(II−c)5〜93重量部が配合される。そして、重合性単量体(II)100重量部に対し、化合物(I)0.001〜20重量部を含み、好ましくは0.005〜10重量部を含む。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、重合促進剤(III)0〜20重量部を含むことが好ましく、重合促進剤(III)0.001〜20重量部を含むことがより好ましい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、ポリアルケン酸1〜200重量部、及びフルオロアルミノシリケートガラス50〜500重量部を含むことが好ましく、ポリアルケン酸5〜100重量部、及びフルオロアルミノシリケートガラス80〜400重量部を含むことがより好ましい。また、フルオロアルミノシリケートガラス以外のフィラー(IV)を0〜2000重量部、好ましくは10〜1000重量部添加してもよい。また、重合性単量体(II)100重量部に対し、溶媒(V)を1〜500重量部含むことが好ましく、10〜50重量部含むことがより好ましい。
グラスアイオノマーセメントにおいては、保存安定性の観点から、ポリアルケン酸と、フルオロアルミノシリケートガラスとを、それぞれ別々の容器に保存する2剤型とすることが好ましい。また、化合物(I)及び重合開始剤(VI)と、重合促進剤(III)とを、別々の容器に保存することが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。以下で用いる略記号は次のとおりである。
[酸性基を有する重合性単量体]
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
[酸性基を有さず、かつ1個の重合性基を有する重合性単量体]
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
[酸性基を有さず、かつ2個以上の重合性基を有する重合性単量体]
BisGMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン
NPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート
[光重合開始剤]
A−1:
A−2:
A−3:
A−4:
A−5:
A−6:
TMDPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
[アミン類]
アミン1:トリエタノールアミン
[無機フィラー]
無機フィラー1:日本アエロジル製「R972」
[化合物(I)の合成]
<実施例1(A−1の合成)>
アルミホイルで遮光した100mlナスフラスコに、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド3.0g(13.4mmol)をとり、減圧して窒素置換した後、乾燥テトラヒドロフラン50mlを加えて溶解した。この溶液に対して、65℃でメトキシジフェニルホスフィン2.7ml(13mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサン50mlで2回共沸し、減圧乾燥して、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物5.5gを得た。アルミホイルで遮光した100mlナスフラスコに、メタノール20mlをとり、減圧して窒素置換した後、40℃で撹拌した。ここに、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物1.0gを窒素雰囲気下でテトラヒドロフラン5mlに溶解した溶液を5分間かけて添加し、40℃で5時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去した後、遮光下、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって目的化合物1.0gを得た(収率97%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 8.01〜7.93 (m, 4H), 7.57〜7.46 (m, 6H), 6.89 (s, 1H), 6.05 (s, 1H), 3.71 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 1.94 (s, 6H).
<実施例2(A−2の合成)>
アルミホイルで遮光した200mlナスフラスコに、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド6.0g(26.8mmol)をとり、減圧して窒素置換した後、乾燥テトラヒドロフラン107mlを加えて溶解した。この溶液に対して、65℃でメトキシジフェニルホスフィン5.4ml(27mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサン107mlで2回共沸し、減圧乾燥して、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物11.9g を得た。得られた3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物をアルミホイルで遮光した100mlナスフラスコにとり、減圧して窒素置換した後、ジメチルホルムアミド40ml、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール6.6ml(53mmol)を順次添加した。この溶液を50℃で11.5時間撹拌した後、n−ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒200mlで希釈した。この溶液を水で洗浄した後、ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒100mlで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別した後、ろ液を減圧下濃縮して得られた残渣を、遮光下、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、目的化合物7.8gを得た(収率56%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 7.96 (m, 4H), 7.53 (m, 6H), 6.89 (s, 1H), 6.20 (s, 1H), 4.4〜3.4 (m, 5H), 2.4〜1.7 (m, 9H), 1.43(s, 3H), 1.39(s, 3H).
<実施例3(A−3の合成)>
アルミホイルで遮光した100mlナスフラスコに、3−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシカルボニルアミノ]−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド7.9g(15.1mmol)をとり、室温でテトラヒドロフラン60ml、3M塩酸15mlを順次添加し、1時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、テトラヒドロフラン60mlで2回共沸し、減圧乾燥した。得られた残渣を、遮光下、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、目的化合物4.9g(収率68%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 7.96 (m, 4H), 7.53 (m, 6H), 6.90 (s, 1H), 6.44 (s, 1H), 4.4〜3.4 (m, 5H), 2.4〜1.7 (m 9H).
<実施例4(A−4の合成)>
アルミホイルで遮光した100mlナスフラスコに、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド3.0g(13.4mmol)をとり、減圧して窒素置換した後、乾燥テトラヒドロフラン50mlを加えて溶解した。この溶液に対して、65℃でメトキシジフェニルホスフィン2.7ml(13mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサン50mlで2回共沸し、減圧乾燥して、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物5.5gを得た。得られた3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物1.0gをアルミホイルで遮光した50mlナスフラスコにとり、減圧して窒素置換した後、ジメチルホルムアミド10ml、ジエチレングリコールモノメチルエーテル3.1g(26mmol)を順次添加した。この溶液を50℃で10時間撹拌した後、n−ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒50mlで希釈した。この溶液を水で洗浄した後、ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒20mlで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別した後、ろ液を減圧下濃縮して得られた残渣を、遮光下、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって、目的化合物4.2gを得た(収率63%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 8.00〜7.92 (m, 4H), 7.55〜7.44 (m, 6H), 6.91 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 4.25(s,2H), 3.81〜3.57(m,6H), 3.50〜3.25(m,2H), 3.10(s, 3H), 2.19 (s, 3H), 1.92 (s, 6H).
<実施例5(A−5の合成)>
アルミホイルで遮光した200mlナスフラスコに、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド6.0g(26.8mmol)をとり、減圧して窒素置換した後、乾燥テトラヒドロフラン107mlを加えて溶解した。この溶液に対して、65℃でメトキシジフェニルホスフィン5.4ml(27mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサン107mlで2回共沸し、減圧乾燥して、3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド粗生成物11.9gを得た。そのうち、10.5gの粗生成物をアルミホイルで遮光した100mlナスフラスコに入れ、減圧して窒素置換した後、ジメチルホルムアミド40ml、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル6.5ml(53mmol)を順次添加した。この溶液を50℃で13時間撹拌した後、ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒200mlで希釈した。この溶液を水で洗浄した後、ヘキサン/酢酸エチルの1:1(体積比)混合溶媒100mlで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別した後、ろ液を減圧下濃縮して得られた残渣を、遮光下、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。減圧下濃縮して得られた白色固体に、酢酸エチルを添加し、懸濁液をろ過することによって、目的化合物3.0gを得た(収率22%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) 8.02〜7.95 (m, 4H), 7.58〜7.47 (m, 6H), 6.90 (s, 1H), 6.3〜6.0 (m, 2H), 5.57 (s, 1H), 4.36 (s, 4H), 2.21 (s, 3H), 1.95 (s, 9H).
[セルフエッチング1液型歯科用組成物の調製]
<実施例6>
下記の各成分を常温下で混合してセルフエッチング1液型歯科用組成物である1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質及び牛歯象牙質との接着強度を測定した。
1液型ボンディング材組成物:
MDP 10重量部
BisGMA 30重量部
HEMA 30重量部
A−1 3重量部
無機フィラー1 5重量部
水 15重量部
エタノール 15重量部
[牛歯エナメル質及び牛歯象牙質との接着性評価方法]
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、エナメル質の平坦面を露出させたサンプル及び象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたそれぞれのサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙株式会社製)でさらに研磨した。研磨終了後、表面の水をエアブローすることで乾燥した。乾燥後の平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規制した。
上記作製した1液型ボンディング材組成物を上記の丸穴内に筆を用いて塗布し、20秒間放置した後、表面をエアブローすることで、塗布した1液型ボンディング材組成物の流動性が無くなるまで乾燥した。次いで、歯科用可視光線照射器「JETライト3000」(J.Morita USA製)にて20秒間光照射することにより、塗布した1液型ボンディング材組成物を硬化させた。
得られた1液型ボンディング材組成物の硬化物の表面に歯科充填用コンポジットレジン(クラレメディカル株式会社製、商品名「クリアフィルAP−X」(登録商標))を塗布し、離型フィルム(ポリエステル)で被覆した。次いで、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけることで、前記コンポジットレジンの塗布面を平滑にした。続いて、前記離型フィルムを介して、前記コンポジットレジンに対して前記照射器「JETライト3000」を用いて20秒間光照射を行い、前記コンポジットレジンを硬化させた。
得られた歯科充填用コンポジットレジンの硬化物の表面に対して、市販の歯科用レジンセメント(クラレメディカル株式会社製、商品名「パナビア21」)を用いてステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着した。接着後、当該サンプルを30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬した。得られた蒸留水に浸漬したサンプルを、37℃に保持した恒温器内に24時間静置することで、接着試験供試サンプルを作製した。
10個の接着試験供試サンプルの引張接着強度を、万能試験機(株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定した。平均値を引張接着強度とし、ばらつきの指標として各測定値から標準偏差を算出した。得られた結果を表1にまとめて示す。
<実施例7>
実施例6において、重合開始剤である「A−1」を3重量部用いる代わりに、「A−2」を3重量部用いた以外は実施例6と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
<実施例8>
実施例6において、重合開始剤である「A−1」を3重量部用いる代わりに、「A−3」を3重量部用いた以外は実施例6と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
<実施例9>
実施例6において、重合開始剤である「A−1」を3重量部用いる代わりに、「A−4」を3重量部用いた以外は実施例6と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
<実施例10>
実施例7において、重合開始剤である「A−1」を3重量部用いる代わりに、「A−5」を3重量部用いた以外は実施例6と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
<比較例1>
実施例6において、重合開始剤である「A−1」を3重量部用いる代わりに、「A−6」を3重量部用いた以外は実施例6と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
<比較例2>
実施例6において、重合開始剤である「A−1」を3重量部用いる代わりに、TMDPOを3重量部用いた以外は実施例6と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
[ウェットボンディング1液型歯科用組成物の調製]
<実施例11>
下記の各成分を常温下で混合してウェットボンディング1液型歯科用組成物である1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質及び牛歯象牙質との接着強度を測定した。
ウェットボンディング1液型ボンディング材組成物:
MDP 20重量部
HEMA 15重量部
BisGMA 20重量部
NPG 10重量部
A−3 3重量部
エタノール 15重量部
[牛歯エナメル質及び牛歯象牙質との接着性評価方法]
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、エナメル質の平坦面を露出させたサンプル及び象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたそれぞれのサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙株式会社製)でさらに研磨した。研磨終了後、平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規制した。
リン酸エッチング剤(クラレメディカル株式会社製、商品名「KエッチャントGEL」)を上記の丸穴内に筆を用いて塗布し、15秒間放置した後、流水で10秒間洗浄した。歯質表面の湿潤状態を維持したまま、上記作製した1液型ボンディング材組成物を上記の丸穴内に筆を用いて塗布し、表面をエアブローすることで、塗布した1液型ボンディング材組成物の流動性が無くなるまで乾燥した。次いで、歯科用可視光線照射器「JETライト3000」(J.Morita USA製)にて20秒間光照射することにより、塗布した1液型ボンディング材組成物を硬化させた。
得られた1液型ボンディング材組成物の硬化物の表面に歯科充填用コンポジットレジン(クラレメディカル株式会社製、商品名「クリアフィルAP−X」(登録商標))を塗布し、離型フィルム(ポリエステル)で被覆した。次いで、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけることで、前記コンポジットレジンの塗布面を平滑にした。続いて、前記離型フィルムを介して、前記コンポジットレジンに対して前記照射器「JETライト3000」を用いて20秒間光照射を行い、前記コンポジットレジンを硬化させた。
得られた歯科充填用コンポジットレジンの硬化物の表面に対して、市販の歯科用レジンセメント(クラレメディカル株式会社製、商品名「パナビア21」)を用いてステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着した。接着後、当該サンプルを30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬した。得られた蒸留水に浸漬したサンプルを、37℃に保持した恒温器内に24時間静置することで、接着試験供試サンプルを作製した。
10個の接着試験供試サンプルの引張接着強度を、万能試験機(株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定した。平均値を引張接着強度とし、ばらつきの指標として各測定値から標準偏差を算出した。得られた結果を表2にまとめて示す。
<実施例12>
実施例11において、重合開始剤である「A−3」を3重量部用いる代わりに、「A−4」を3重量部用いた以外は実施例11と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
<実施例13>
実施例11において、重合開始剤である「A−3」を3重量部用いる代わりに、A−5を3重量部用いた以外は実施例11と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
<実施例14>
下記の各成分を常温下で混合してウェットボンディング1液型歯科用組成物である1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質及び牛歯象牙質との接着強度を測定した。
ウェットボンディング1液型ボンディング材組成物:
MDP 10重量部
HEMA 30重量部
BisGMA 30重量部
A−3 3重量部
[牛歯エナメル質及び牛歯象牙質との接着性評価方法]
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙株式会社製)で研磨して、エナメル質の平坦面を露出させたサンプル及び象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたそれぞれのサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙株式会社製)でさらに研磨した。研磨終了後、平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規制した。
リン酸エッチング剤(クラレメディカル株式会社製、商品名「KエッチャントGEL」)を上記の丸穴内に筆を用いて塗布し、15秒間放置した後、流水で10秒間洗浄した。歯質表面の湿潤状態を維持したまま、上記作製した1液型ボンディング材組成物を上記の丸穴内に筆を用いて塗布し、表面を軽くエアブローすることで、塗布した1液型ボンディング材組成物の薄膜を形成した。次いで、歯科用可視光線照射器「JETライト3000」(J.Morita USA製)にて20秒間光照射することにより、塗布した1液型ボンディング材組成物を硬化させた。
得られた1液型ボンディング材組成物の硬化物の表面に歯科充填用コンポジットレジン(クラレメディカル株式会社製、商品名「クリアフィルAP−X」(登録商標))を塗布し、離型フィルム(ポリエステル)で被覆した。次いで、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけることで、前記コンポジットレジンの塗布面を平滑にした。続いて、前記離型フィルムを介して、前記コンポジットレジンに対して前記照射器「JETライト3000」を用いて20秒間光照射を行い、前記コンポジットレジンを硬化させた。
得られた歯科充填用コンポジットレジンの硬化物の表面に対して、市販の歯科用レジンセメント(クラレメディカル株式会社製、商品名「パナビア21」)を用いてステンレス製円柱棒(直径7mm、長さ2.5cm)の一方の端面(円形断面)を接着した。接着後、当該サンプルを30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬した。得られた蒸留水に浸漬したサンプルを、37℃に保持した恒温器内に24時間静置することで、接着試験供試サンプルを作製した。
10個の接着試験供試サンプルの引張接着強度を、万能試験機(株式会社島津製作所製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定した。平均値を引張接着強度とし、ばらつきの指標として各測定値から標準偏差を算出した。得られた結果を表2にまとめて示す。
<比較例3>
実施例11において、重合開始剤である「A−3」を3重量部用いる代わりに、A−6を3重量部用いた以外は実施例11と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
<比較例4>
実施例11において、重合開始剤である「A−3」を3重量部用いる代わりに、TMDPOを3重量部用いた以外は実施例11と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
<比較例5>
実施例14において、重合開始剤である「A−3」を3重量部用いる代わりに、TMDPOを3重量部用いた以外は実施例14と同様にして1液型ボンディング材組成物を調製し、牛歯エナメル質との接着強度及び牛歯象牙質との引張接着強度を測定した。得られた結果を表2にまとめて示す。
実施例6〜10と比較例1、及び、実施例11〜13と比較例3の比較により、本発明の化合物は、公知の水溶性アシルホスフィンオキサイド化合物と比較して、接着操作間のばらつきが少なく、再現性良く高い接着性を示すことが分かる。実施例6〜10と比較例2、実施例11〜13と比較例4、及び、実施例14と比較例5の比較により、本発明の化合物は、公知のアシルホスフィンオキサイド化合物と比較して、接着性に優れていることがわかる。