JPWO2009063967A1 - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
(A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体成分;
(B)水;及び
(C)ラジカル発生種と、該ラジカル発生種と反応してラジカルを発生せしめる反応種とからなる化学重合開始剤成分;
を含み、複数のパッケージに分けて保存され、各パッケージに収容されている成分を混合することにより、重合硬化が行われる歯科用硬化性組成物において、
前記パッケージの内の一つのパッケージ(I)は、前記(A)成分と(B)成分とを含み、且つ該パッケージ(I)には、該パッケージ中に含まれる重合性単量体成分(A)1g当り、0.3〜10meqの量で多価金属イオンが存在しており、
前記化学重合開始剤(C)は、ラジカル発生種と反応種とが接触しないように、少なくとも2つのパッケージにわけて保存されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記の硬化性組成物からなる歯科用接着材が提供される。
以下、本発明の歯科用硬化性組成物に使用される各成分について、包装形態を考慮して説明する。
本発明において、重合性単量体成分(A)(以下、単に「単量体成分」と呼ぶ)は、ラジカル重合性のものであり、後述する化学重合開始剤によって発生する重合開始種(ラジカル)によって重合硬化して、エナメル質や象牙質などの歯質及びコンポジットレジンや補綴物(特に金属製のもの)などの修復材に対して接着性の高い硬化物を形成するための基本成分である。
本発明において、酸性基含有重合性単量体、即ち酸性モノマー(a1)は、1分子中に少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
このような酸性モノマー(a1)が分子中に有している酸性基としては次に示すようなものを挙げることができる。
基−O−P(=O)(OH)2、
基(−O−)2P(=O)OH
などのリン酸系の基が最も好ましい。このような酸性基を含む酸性モノマーを用いた場合には、歯質の脱灰作用が高く(主にリン酸系の基は酸性度が強い為と思われる)、しかも歯質への結合力も高く、特に高い接着強度が得られる。
多塩基酸モノマー/単価モノマー=0.3〜2、
の範囲にあることが好ましい。このような系では、歯質の脱灰作用が高いばかりでなく、歯質等に対する本質的な結合力も高く、特に高い接着強度が得られ、更に保存安定性も良好である。
酸性モノマー(a1)と併用され得る酸性基を含有していない重合性単量体(a2)、即ち非酸性モノマーは、酸性基を含有しておらず且つ分子中に少なくとも一つの重合性不飽和基を有しているという条件を満足している限り、公知の化合物を何等制限無く使用できる。かかる重合性単量体が有している重合性不飽和基としては、前述した酸性単量体(A1)で例示したものと同様のものを挙げることができるが、特にアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましい。
メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、
グリシジル(メタ)アクリレート、
2−シアノメチル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
アリル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
グリシジル(メタ)アクリレート、
3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
グリセリルモノ(メタ)アクリレート、
2−(メタ)アクリルオキシエチルアセチルアセテート等。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、
2,2’−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プ
ロパン、
2,2’−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポ
キシ]フェニル}プロパン、
1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、
ウレタン(メタ)アクリレート、
エポキシ(メタ)アクリレート等。
本発明において、上述した単量体成分(A)は、後述する水(B)との同一パッケージ(I)に保存されるが、この単量体成分(A)の一部を他のパッケージに保存することもできる。即ち、他のパッケージにも単量体成分(A)の一部を収容することにより、他のパッケージに収容される成分の量を増量して、該パッケージ(I)に収容されている成分の量と同レベルにすることにより、各パッケージに収容されている成分を混合する作業が容易となる。
成分(B)の水は、各種成分を均一に分散させるための溶媒としての機能を有すると同時に、歯質の脱灰や、酸性モノマー(a1)と多価金属イオンとのイオン架橋の促進の為に必要である。この水は、貯蔵安定性及び医療用成分に有害な不純物を実質的に含まない蒸留水や脱イオン水が好適に使用される。
成分(C)の化学重合開始剤は、ラジカル発生種と、該ラジカル発生種と反応してラジカル(重合開始種)を発生せしめる反応種とからなるものであり、種々のものが知られており、本発明では、何れの組成の化学重合開始剤も使用することができるが、代表的には、アリールボレート化合物(ラジカル発生種)/酸性化合物(反応種)、有機過酸化物(ラジカル発生種)/アミン化合物(反応種)などの組成のものが使用されるが、最も好適には、前述した酸性モノマー(a1)による活性低下のないアリールボレート系の化学重合開始剤が使用される。例えば、有機過酸化物をラジカル発生種として用いる化学重合開始剤は、反応種に用いるアミン化合物が酸性モノマー(a1)と反応し易く、活性低下を来たすおそれがあるからである。
R1、R2及びR3は、それぞれ、アルキル基、アリール基、アラルキル基、
またはアルケニル基であり、
R4及びR5は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アル
コキシ基、またはフェニル基であり、
L+は、金属陽イオン、4級アンモニウムイオン、4級ピリジニウムイオン、4級
キノリニウムイオン、またはホスホニウムイオンである。
フェニル基、
1−又は2−ナフチル基、
1−、2−又は9−アンスリル基、
1−、2−、3−、4−又は9−フェナンスリル基、
p−フルオロフェニル基、
p−クロロフェニル基、
(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル基、
3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロ
ピル)フェニル基、
p−ニトロフェニル基、
m−ニトロフェニル基、
p−ブチルフェニル基、
m−ブチルフェニル基、
p−ブチルオキシフェニル基、
m−ブチルオキシフェニル基、
p−オクチルオキシフェニル基、
m−オクチルオキシフェニル基等。
ホウ素化合物の例:
トリアルキルフェニルホウ素、
トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、
トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ素、
トリアルキル(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、
トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メト
キシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、
トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、
トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、
トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、
トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、
トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、
トリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素など。
(上記のアルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)。
また、上記ホウ素化合物の塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
ホウ素化合物の例:
ジアルキルジフェニルホウ素、
ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(p−フルオロフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、
ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メト
キシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、
ジアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、
ジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素など。
(上記のアルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)。
また、その塩としては、1分子中に1個のアリール基を有するアリールボレート化合物について例示したものを挙げることができる。
ホウ素化合物の例:
モノアルキルトリフェニルホウ素、
モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、
モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2
−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、
モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、
モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素など。
(上記のアルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)。
また、その塩としては、1分子中に1個のアリール基を有するアリールボレート化合物について例示したものを挙げることができる。
ホウ素化合物の例:
テトラフェニルホウ素、
テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、
テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、
テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、
テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキ
シ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、
テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、
テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、
テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、
テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、
テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、
テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、
テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素
(上記のアルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)。
また、その塩としては、1分子中に1個のアリール基を有するアリールボレート化合物について例示したものを挙げることができる。
このような無機酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が代表的であり、有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、安息香酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸およびトリメリット酸等のカルボン酸類;p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸類;メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のリン酸類;などが代表的である。
また、フェノール類、チオール類の他、酸性イオン交換樹脂、酸性アルミナ等の固体酸も、反応種として機能する酸性化合物として使用することができる。
四酸化二バナジウム(IV)、
酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、
シュウ酸バナジル(IV)、
硫酸バナジル(IV)、
オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、
ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、
メタバナジン酸ナトリウム(V)、
メタバナジン酸アンモン(V)など。
本発明で使用できる代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類される各種有機過酸化物が挙げられ、これら有機過酸化物の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
メチルエチルケトンパーオキサイド、
シクロヘキサノンパーオキサイド、
メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、
メチルアセトアセテートパーオキサイド、
アセチルアセトンパーオキサイド等。
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、
2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、
n−ブチル 4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等。
P−メンタンハイドロパーオキサイド、
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、
1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、
クメンハイドロパーオキサイド、
t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、
t−ブチルハイドロパーオキサイド等。
α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、
ジクミルパーオキサイド、
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、
t−ブチルクミルパーオキサイド、
ジ−t−ブチルパーオキサイド、
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等。
イソブチリルパーオキサイド、
2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、
3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、
オクタノイルパーオキサイド、
ラウロイルパーオキサイド、
ステアリルパーオキサイド、
スクシニックアシッドパーオキサイド、
m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、
ベンゾイルパーオキサイド等。
ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、
ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、
ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、
ジー2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、
ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、
ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等。
α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、
クミルパーオキシネオデカノエート、
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、
1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、
t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、
t−ブチルパーオキシネオデカノエート、
t−ヘキシルパーオキシピバレート、
t−ブチルパーオキシピバレート、
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、
2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、
1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、
t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、
t−ブチルパーオキシイソブチレート、
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、
t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、
t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、
t−ブチルパーオキシラウレート、
2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、
t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、
t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、
2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、
t−ブチルパーオキシアセテート、
t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、
t−ブチルパーオキシベンゾエート、
ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等。
また、かかる有機過酸化物は、先にも述べたように、上記の金属化合物と併用することが最も好適である。
本発明において、上述した化学重合開始剤成分(C)は、特にラジカル発生種と反応種とに分けて保存すること、換言すると別個のパッケージに保存することが必要である。即ち、ラジカル発生種と反応種とが共存すると、重合開始種であるラジカルが保存中に発生してしまい、保存中にゲル化が生じたり、或いは発生したラジカルが消耗してしまい、使用時に重合開始機能が発現しなくなってしまうからである。
例えば、アリールボレート系化学重合開始剤を用いたときには、ラジカル発生種であるアリールボレート化合物は、前述したパッケージ(I)とは異なるパッケージに保存される。即ち、パッケージ(I)中に保存されている酸性モノマー(a1)が反応種として機能するため、パッケージ(I)にアリールボレート化合物を保存すると、このパッケージ(I)での保存中にラジカルが発生し、ゲル化を生じてしまうからである。
また、この系における反応種として、酸性モノマー(a1)以外の酸性化合物を使用する場合には、このような酸性化合物はパッケージ(I)中に保存されることとなる。
本発明においては、酸性モノマー(1a)を含む単量体成分(A)及び水が収容されるパッケージ(I)においては、多価金属イオン濃度が、該パッケージ(I)中の単量体成分(a)1g当り0.3〜10.0meqとなるように調整される。即ち、多価金属イオン濃度を、このような範囲に調整することにより、パッケージ(I)中での保存中に十分なイオン架橋が形成され、従って、各パッケージ中の成分を混合して使用に供した場合において、直ちに化学重合が開始されたとしても、既に十分なイオン架橋が形成されているため、高強度の硬化物が形成され、優れた接着性及び接着耐久性を確保することができるからである。例えば、多価金属イオン濃度が、上記範囲(0.3meq)よりも低い場合には、イオン架橋が不十分になり、歯質に対する接着強度が低下してしまう。また、上記範囲(10meq)よりも高濃度である場合には、酸性モノマー(a1)による歯質脱灰力が低下してしまうおそれがある。より十分なイオン架橋を形成させ、特に高強度の硬化物が形成させる観点からは、多価金属イオン濃度はパッケージ(I)中の単量体成分(a)1g当り、好ましくは1.0〜10.0meq、より好ましくは1.0〜7.0meq、最も好ましくは1.5〜6.8meqとなるように調整される。
他方、多価金属イオンが高濃度になるにしたがって、パッケージ(I)内でゲル化が生じ易くなる傾向もあるため、硬化物の強度の良好さを勘案しつつも、長期間の保存安定性をより重視するならば、多価金属イオン濃度はパッケージ(I)中の単量体成分(a)1g当り好ましくは0.4〜6.0meq、最も好ましくは0.6〜3.0meqとなるように調整される。
アルミニウムトリイソプロポキシド
マグネシウムヒドロキシド
カルシウムヒドロキシド
バリウムヒドロキシド
ランタントリイソプロポキシド
スカンジウムトリイソプロポキシド
イッテルビウムトリイソプロポキシド
クロミウムトリイソプロポキシド
チタニウムテトライソプロポキシド
ジルコニウムテトライソプロポキシド
鉄(III)エトキシド
銅(II)エトキシド
亜鉛ビス(2−メトキシエトキシド)
サリチル酸アルミニウム
塩化アルミニウム
水酸化アルミニウム
水酸化カルシウム
水酸化ランタン
水酸化マグネシウム
水酸化バリウム
酸化アルミニウム
バナジウム(III)テトラキスアセチルアセトナト
マンガン(III)テトラキスアセチルアセトナト
コバルト(III)テトラキスアセチルアセトナト
ニッケル(II)テトラキスアセチルアセトナト
珪素;10〜33%、特に15〜25%
アルミニウム;4〜30%、特に7〜20%
アルカリ土類金属;5〜36%、特に8〜28%
アルカリ金属;0〜10%、特に0〜10%
リン;0.2〜16%、特に0.5〜8%
フッ素;2〜40%、特に4〜40%
酸素;残量
本発明においては、形成される硬化物の強度を向上させるために、無機フィラーを使用することができる。このような無機フィラーは、多価金属イオンを溶出するために使用されるものではなく、従って、多価金属イオン非溶出性である点において、前述した多価金属イオン溶出性フィラーとは明確に区別されるものであり、本発明の硬化性組成物を、直接修復に用いるコンポジットレジンを歯質に接着固定するための接着材、或いはこのようなコンポジットレジンそのものとして使用する場合に好適な成分である。
シランカップリング剤;
メチルトリメトキシシラン
メチルトリエトキシシラン
メチルトリクロロシラン
ジメチルジクロロシラン
トリメチルクロロシラン
ビニルトリメトキシシラン
ビニルトリエトキシシラン
ビニルトリクロロシラン
ビニルトリアセトキシシラン
ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン
γ−クロロプロピルトリメトキシシラン
γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
ヘキサメチルジシラザン
本発明においては、硬化性組成物の浸透性を高め、さらには、各パッケージに収容される成分の保存安定性を高めるために、揮発性の水溶性有機溶媒を使用することができる。この有機溶媒は、本発明の硬化性組成物を、低粘度の液状組成物の形態で使用する場合(例えば直接修復材用接着材等として用いる場合)に特に有用である。
ここで、揮発性とは、760mmHgでの沸点が100℃以下であり、且つ20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを言う。また、水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であることを言う。
α≧10・X(特に20・X、最も好ましくは25・X) …(3)
式中、αは、有機溶媒(F)のパッケージ(I)中の単量体成分(A)100質量部
当りの配合量であり、
Xは、パッケージ(I)中の多価金属イオンの量であって、上記の単量体成分
(A)1g当りの量(meq)を示す数である、
で表される条件を満足するような量であることが好ましい。即ち、有機溶媒(F)の配合量が上記範囲よりも少ないと、パッケージ(I)中でイオン架橋によるゲル化を生じ易なるおそれがあるが、上記の量で有機溶媒(F)を使用することにより、ゲル化を有効に防止することができる。
本発明においては、上述した成分以外にも、種々の配合剤を用いることができる。例えば、必要により、光重合開始剤を使用することにより、光照射によって重合硬化を行うことができ、その適用性を広げることができる。特に光重合開始剤が配合されている場合には、光が届きにくい部位で硬化を行う場合であっても、光照射を行うことにより、重合硬化時間を速めることができ、例えば支台築造等の用途に本発明の硬化性組成物を用いる場合において有利となる。
カンファーキノン
ベンジル
α−ナフチル
アセトナフテン
ナフトキノン
1,4−フェナントレンキノン
3,4−フェナントレンキノン
9,10−フェナントレンキノン
チオキサントン類;
2,4−ジエチルチオキサントン
α−アミノアセトフェノン類;
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
プロパノン−1
2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
プロパノン−1
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
ペンタノン−1
2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−
ペンタノン
アシルフォスフィンオキシド誘導体;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフ
ィンオキシド
上述した各成分からなる本発明の硬化性組成物は、複数のパッケージに分けて保存され、使用に際しては、各パッケージ中に保存されている成分を混合して重合硬化が行われ、これにより硬化物が形成される。特に酸性モノマー(a1)、水(B)及び多価金属イオンを含むパッケージ(I)では、酸性モノマー(a1)が有する酸性基と発達したイオン架橋が形成されており、十分なイオン架橋が形成された状態で他のパッケージの成分と混合されて化学重合による重合硬化が行われるため、混合後に迅速に重合硬化が進行するにもかかわらず、イオン架橋による緻密化が十分に発揮され、高強度でしかも接着耐久性の高い硬化物が形成されることとなる。
[(a−1)酸性基含有重合性単量体(酸性モノマー)]
PM:
2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェートとビス(2−メ
タクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートの混合物
MDP:
10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
MAC−10:
11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
尚、上記の酸性モノマー(a−1)は、アリールボレート系の化学重合開始剤成分中の反応種としても機能する。
BisGMA:
2,2‘−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニ
ル]プロパン
3G:
トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:
2−ヒドロキシエチルメタクリレート
PhBTEOA:テトラフェニルボレートトリエタノールアミン塩
BPO:過酸化ベンゾイル
DEPT:N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン
POH:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
BMOV:ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)
[多価金属イオン溶出性フィラー(多価金属フィラー)]
F−1:製造例1で得た多価金属フィラー
平均粒径;0.5μm、
24時間溶出イオン量;10 meq/g−フィラー
F−2:製造例2で得た多価金属フィラー
平均粒径:0.5μm
24時間溶出イオン量;25 meq/g−フィラー
F−3:製造例3で得た多価金属フィラー
平均粒径;0.5μm
24時間溶出イオン量;50 meq/g−フィラー
FS1:ヒュームドシリカ(メチルトリクロロシラン処理物)
平均1次粒径;18nm
BET比表面積;120m2/g
M値;47
FS2:ヒュームドシリカ(ジメチルジクロロシラン処理物)
平均1次粒径;7nm
BET比表面積;230m2/g
M値;52
MS:溶融シリカ(3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン処理物)
平均1次粒径0.4μm
BET比表面積;8m2/g
SS:ゾルゲルシリカ(3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン処理物)
平均1次粒径;60nm
BET比表面積;70m2/g
GF:不定形シリカ−ジルコニア
(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理物)
平均粒径;3.0μm
PF:球状シリカ−ジルコニア
(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理物)
平均粒径;0.15μm
即ち、試料のシリカ0.2gを、容量250mlのビーカーに入れられている50mlの水に添加し、次いで、マグネティックスターラーで攪拌しながら、ビュレットによりメタノールをシリカの全量が懸濁分散するまで滴下した。
シリカの全量が懸濁分散したときを終点とし、このときのビーカー中の液体混合物におけるメタノールの容量百分率をM値とした。
IPA:イソプロピルアルコール
EtOH:エチルアルコール
CQ:カンファーキノン
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
DMBE:N,N−ジメチル−p−アミノ安息香酸エチル
DEPT:N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン
各成分を均一に混合して試料の硬化性組成物を調製し、この組成物を2mm×2mm×25mmのモールドに入れ、37℃で1時間硬化させて試験片となる硬化物を作製した。1時間後に、試験片(硬化物)をモールドから取出し、精製水中で24時間保管した。
次いで、この試験片の表面を1500番の耐水研磨紙で研磨した後、この試験片を万能試験機(島津製作所製オートグラフ)に装着し、JIST6514に従って、支点間距離20mm、で万能試験機により、クロスヘッドスピード1mm/minで、3点曲げ強度を測定した。
模擬窩洞の作製;
屠殺後24時間以内に牛前歯を抜去し、注水下、#600のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、削り出されて露出した平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥して歯のモデルを作製した。
上記モデルの平面に直径3mmの孔の開いた両面テープを固定し、ついで直径8mmの大きさの孔の開いたパラフィンワックス(厚さ0.5mm、)を、両面テープの孔とワックスの孔とが同一中心となるように固定して模擬窩洞を形成した。
試料の硬化性組成物(接着材)を上記の模擬窩洞内に塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。この上に、歯科用の化学重合硬化型コンポジットレジン(トクヤマデンタル社製パルフィーク)を充填し、37℃で1時間保管して該コンポジットレジンを硬化させて接着試験片とした。
上記の接着試験片を37℃の水中に24時間浸漬した後、歯科用レジンセメント(トクヤマデンタル社製ビスタイトII)を用いて接着試験片をステンレス製アタッチメントに固定し、万能試験機(島津製作所製オートグラフ)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引張り試験を行い、歯牙におけるエナメル質または象牙質とコンポジットレジンとの引張り接着強度を測定した。
各試料につき、4本の接着試験片を作製して引張り接着強度を測定し、その平均値を接着強度とした。
試料の硬化性組成物(接着材)を上記の模擬窩洞内に塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。次いで、可視光線照射器(パワーライト、トクヤマデンタル社製)にて10秒間光照射し、試料の接着材を硬化させた。硬化した接着材の上に、歯科用光硬化型コンポジットレジン(トクヤマデンタル社製パルフィークエステライトΣ)を充填し、可視光線照射器により30秒間光照射して、該コンポジットレジンを硬化させて接着試験片とした。
このようにして作製された接着試験片について、先の化学重合硬化型コンポジットレジンを用いた場合と全く同様にして引張り接着強度を測定した。
試料の硬化性組成物(前処理剤)を上記の模擬窩洞内に塗布し、20秒間放置し、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。更にその上に、化学重合硬化型セメントの練和物を用いてSUS304製の金属アタッチメントを接着固定して接着試験片とした。
この接着試験片を37℃で24時間保管した後、先の試験と全く同様にして引張り接着強度を測定した。
試料の硬化性組成物(化学重合硬化型セメント)を上記の模擬窩洞内に塗布し、この上にSUS304製の金属アタッチメントを接着し固定して接着試験片とした。
この接着試験片を37℃で24時間保管した後、先の試験と全く同様にして引張り接着強度を測定した。
上記の接着強度の各試験と同様にして作製された接着試験片を用意し、この接着試験片を熱衝撃試験器に入れ、4℃の水槽に1分間浸漬後、60℃の水槽に移して1分間浸漬し、再び4℃の水槽に戻す操作を3000回繰り返した。
上記のようにして熱衝撃を加えられた接着試験片について、先の接着強度の試験と全く同様にして、引張り接着強度を測定した。
各試料の硬化性組成物のうち、パッケージ(I)に収容する成分のみの混合液(I)−1〜41を調製し、24時間攪拌した後、100mlのサンプル管に0.2g計り取り、この液をイソプロパノール(IPA)を用いて1%に希釈した。
この希釈液について、ICP(誘導結合型プラズマ)発光分光分析を用いて、パッケージ(I)に含まれる重合性単量体成分(A)1g当りのAl、La、Caイオン濃度(mmol/g)を測定した。
得られた各イオン濃度にそれぞれのイオン価数をかけた値の総和を計算することで、パッケージ(I)に含まれる(A)成分1gに対するイオン結合量、即ち多価金属イオン量/meqを求めた。
なお、本実施例及び比較例で使用したフィラーから溶出する多価金属イオンは、上記したAl、La、Caイオンのみであり、これ以外のものは検出されなかった。
硬化性組成物の成分を2つのパッケージ(I)及び(II)に分けて収容し、これらのパッケージを37℃のインキュベーター内で1ヶ月保存した後、パッケージ(I)とパッケージ(II)とに収容されている成分を混合して試料の硬化性組成物を調製し、この試料について、上述した方法で各種の接着強度(37℃、1か月保存後の接着強度)を測定し、37℃保存前にパッケージ(I)とパッケージ(II)との成分を混合して調製された硬化性組成物の接着強度と比較して、保存安定性を評価した。
また、硬化性組成物のパッケージ(I)を50℃に保存し、ゲル化(粘度が著しく上昇し、液の流動性が無くなった状態)するまでの日数を目視により測定して、保存安定性を評価した。評価は1週目は毎日行い、2週目以降は1週間ごとに行なった。
製造例1:
フルオロアルミノシリケートガラス粉末(トクヤマデンタル社製トクソーアイオノマー)を湿式の連続型ボールミル(三井鉱山社製ニューマイミル)を用いて平均粒径0.5μmまで粉砕し、その後粉末1gに対して、20gの5.0N塩酸でフィラー表面を40分間処理して多価金属フィラー(F−1)を得た。
この結果、この多価金属フィラー(F−1)の24時間溶出イオン量は10meq/g−フィラー(Al3+=6.7、La3+=2.8、Ca2+=0.5)であった。
5.0N塩酸での処理時間を20分間とした以外は製造例1と全く同様にして、多価金属フィラー(F−2)を得た。
ICP発光分光分析の結果、この多価金属フィラー(F−2)の24時間溶出イオン量は、25meq/g−フィラー(Al3+=16.7、La3+=6.9、Ca2+=1.4)であった。
塩酸での処理を全く行なわなかった以外は製造例1と全く同様にして、多価金属フィラー(F−3)を得た。
ICP発光分光分析の結果、この多価金属フィラー(F−3)の24時間溶出イオン量は、50meq/g−フィラー(Al3+=33.4、La3+=14.0、Ca2+=2.6)であった。
下記処方により、各成分を混合して組成物(I)−1を調製し、パッケージ(I)に保存した。
(a−1)成分: PM 40g
(a−2)成分: Bis−GMA 24g
3G 16g
HEMA 20g
(D)成分: F−2 10g(多価金属イオン供給源)
(B)成分: 水 20g
(C)成分: BMOV 0.1g(ラジカル発生促進剤)
(a−2)成分: Bis−GMA 40g
3G 20g
HEMA 40g
(C)成分: PhBTEOA 2.5g(ラジカル発生種)
POH 1g(ラジカル発生促進剤)
その結果、曲げ強度は143.1MPaであった。
パッケージ(I)に保存される組成物(I)−1に変えて表1に示した組成物(I)−2〜8を調製し、また、パッケージ(II)に保存される組成物(II)−1に変えて表2に示した組成の組成物(II)−2〜4を調製し、これらを表3に示した組合せで混合する以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を調製して曲げ強度を測定した。
その結果を、表1〜3に示した。
パッケージ(I)に保存される組成物(I)−1に変えて表1に示した組成物(I)−7,8を調製し、また、パッケージ(II)に保存される組成物(II)−1に変えて表2に示した組成物(II)−4を調製した。これらを表3に示した組合せで混合する以外は、実施例1と同様に硬化性組成物を調製して曲げ強度を測定したが、パッケージ(I)に保存された組成物(I)−7及び(I)−8が硬化しており、曲げ強度の試験を行うことができなかった。
また、比較例1〜3では、実施例1〜3と比較して曲げ強度が低かった。
下記処方により、組成物(I)−9を調製し、パッケージ(I)に保存した。
(a−1)成分: PM 40g
(a−2)成分: Bis−GMA 24g
3G 16g
HEMA 20g
(D)成分: F−2 10g(多価金属イオン供給源)
(B)成分: 水 20g
(C)成分: BMOV 0.03g(ラジカル発生促進剤)
(E)成分: FS−1 10g
(F)成分: アセトン 200g
(C)成分: PhBTEOA 2.5g(ラジカル発生種)
(F)成分: アセトン 97.5g
パッケージ(I)に保存される組成物として、表4に記載の組成物(I)−10〜26を調製し、パッケージ(II)に保存される組成物として、表5に記載の組成物(II)−5〜12を調製した以外は、実施例4と同様に、パッケージ(I)及びパッケージ(II)に各組成物を保存した。
上記のパッケージ(I)及び(II)に保存された組成物を用いて、実施例4と同様にして、化学重合硬化型コンポジットレジンについての接着強度、熱衝撃試験後の接着強度、パッケージ(I)及び(II)を37℃1ヶ月保存した後の接着強度を測定し、その結果を表6に示した。
下記処方により、組成物(I)−27を調製し、パッケージ(I)に保存した。
(a−1)成分: PM 20g
(a−2)成分: Bis−GMA 30g
3G 20g
HEMA 30g
(D)成分: F−2 10g(多価金属イオン供給源)
(B)成分: 水 20g
(C)成分: BMOV 0.1g(ラジカル発生促進剤)
(E)成分: FS−1 10g
(F)成分: アセトン 10g
(C)成分: PhBTEOA 2.5g(ラジカル発生種)
POH 1g(ラジカル発生促進剤)
(F)成分: アセトン 96.5g
表7に示す処方により、組成物(I)−28〜44を調製し、実施例25と同様にパッケージ(I)に保存した。
また、表5に示されている組成物(II)−6を調製し、パッケージ(II)に保存した。
上記2つのパッケージを作製して24時間後に、両パッケージに保存された組成物を、実施例23と同様に1:1の重量比で混合し、得られた硬化性組成物について、化学重合硬化型コンポジットレジンについての接着強度、熱衝撃試験後の接着強度、およびパッケージ(I)及び(II)を37℃1ヶ月保存した後の接着強度、パッケージ(I)を50℃保存した際のゲル化日数を測定し、その結果を表8に示した。
一方、比較例9〜10、12は、本発明の必須成分である(a−1)成分の酸性モノマー及び(B)成分の水が使用されておらず、しかもパッケージ(I)の組成物に多価金属イオンが導入されていないため、高い接着強度が得られなかった。また、比較例11は多価金属イオンが過剰に配合された場合であるが、歯質脱灰力が低下する為に高い接着力が得られず、さらにパッケージ(I)及び(II)を37℃で保存した際には20日、パッケージ(I)を50℃保存した際には1日でゲル化した。
表4に示した組成物(I)−21〜24を、それぞれパッケージ(I)に保存し、表5に示されている組成物(II)−6、9を、それぞれパッケージ(II)に保存した。
上記2つのパッケージを作製して24時間後に、両パッケージに保存された組成物を表9に示す組み合わせで1:1の重量比で混合し、得られた硬化性組成物について、光重合硬化型コンポジットレジンについての接着強度、熱衝撃試験後の接着強度、およびパッケージ(I)及び(II)を37℃1ヶ月保存した後の接着強度を測定し、その結果を表9に示した。
(セメント組成物の調製)
60gのBis−GMAと40gの3Gとを含む重合性単量体混合物100gに、化学重合開始剤の反応種として第3級アミンであるDEPTを2g添加し、セメント用マトリックスを調製した。該マトリックスに、無機フィラーとして200gのGFと120gのPFを加え、暗所でメノウ乳鉢により均一になるまで混合してセメント組成物(CRA−1)を調製した。
また、60gのBis−GMAと40gの3Gを含有する重合性単量体混合物100gに、化学重合開始剤のラジカル発生種として有機過酸化物であるBPOを2g添加し、マトリックスを作製した。該マトリックスに、無機フィラーとして200gのGFと120gのPFとを加え、暗所でメノウ乳鉢により均一になるまで混合してセメント組成物(CRB−1)を調製した。
前述した組成物(I)−10をパッケージ(I)に入れ、さらに組成物(II)−6をパッケージ(II)に入れ、これらのパッケージを24時間保存した後、1:1の重量比で、これらのパッケージに収容されている成分を混合して、前処理剤として用いる硬化性組成物を調製した。
先に調製されたセメント組成物(CRA−1)と(CRB−1)とを混合して化学重合硬化型セメントを調製した。
上記の硬化性組成物を前処理剤として使用し、上記で調製された化学重合硬化型セメントの接着強度を測定した(接着強度の評価3参照)。また、熱衝撃試験後の接着強度も併せて測定した。その結果は、以下の通りであった。
エナメル質における接着強度:21.5(3.2)MPa
象牙質における接着強度:22.3(4.6)MPa
熱衝撃試験後の接着強度:
エナメル質;20.6(2.9)MPa
象牙質;23.4(4.1)MPa
下記処方により、パッケージ(I)用の組成物(SAA−1)を調製し、これをパッケージ(I)に保存した。
(a−1)成分: PM 25g
(a−2)成分: Bis−GMA 20g
3G 45g
HEMA 10g
(D)成分: F−2 10g
(B)成分: 水 10g
(C)成分: BMOV 0.1g(ラジカル発生促進剤)
(E)成分: MS 200g
(a−2)成分: Bis−GMA 30g
3G 70g
(C)成分: PhBTEOA 2.5g(ラジカル発生種)
POH 2g(ラジカル発生促進剤)
(E)成分: MS 200g
この硬化性組成物を化学重合硬化型セメントとして用いて、前処理剤なしの化学重合硬化型セメントの接着強度を測定した(接着強度の評価4参照)。また、熱衝撃試験後の接着強度も併せて測定した。その結果は、以下の通りであった。
エナメル質における接着強度:17.8(7.3)MPa
象牙質における接着強度:10.1(5.4)MPa
熱衝撃試験後の接着強度:
エナメル質;15.6(3.8)MPa
象牙質;9.4(3.1)MPa
Claims (13)
- (A)酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体成分;
(B)水;及び
(C)ラジカル発生種と、該ラジカル発生種と反応してラジカルを発生せしめる反応種とからなる化学重合開始剤成分;
を含み、複数のパッケージに分けて保存され、各パッケージに収容されている成分を混合することにより、重合硬化が行われる歯科用硬化性組成物において、
前記パッケージの内の一つのパッケージ(I)は、前記(A)成分と(B)成分とを含み、且つ該パッケージ(I)には、該パッケージ中に含まれる重合性単量体成分(A)1g当り、0.3〜10meqの量で多価金属イオンが存在しており、
前記化学重合開始剤(C)は、ラジカル発生種と反応種とが接触しないように、少なくとも2つのパッケージにわけて保存されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物。 - 前記酸性基含有重合性単量体の全量が前記パッケージ(I)に含まれている請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記ラジカル発生種がアリールボレート化合物であり、前記反応種が酸性化合物であり、該アリールボレート化合物は、前記酸性基含有重合性単量体を含んでいないパッケージに保存されている請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記化学重合開始剤成分(C)として、何れかのパッケージにラジカル発生促進剤を含み、該ラジカル発生促進剤が、+IV価又は+V価のバナジウム化合物及び有機過酸化物から選択された少なくとも1種である請求項3に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記+IV価又は+V価のバナジウム化合物は、前記パッケージ(I)に含まれている請求項4に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記有機過酸化物は、前記パッケージ(I)及び前記酸性化合物を含んでいるパッケージとは異なるパッケージに含まれている請求項4に記載の歯科用硬化性組成物。
- (D)多価金属イオン供給源をさらに含み、該多価金属イオン供給源として、多価金属イオン溶出性フィラーが前記パッケージ(I)に含まれている請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
- 多価金属イオン溶出性フィラーがフルオロアルミノシリケートガラスである請求項7に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記パッケージ(I)に含まれる水(B)の量は、該パッケージ(I)中の重合性単量体成分(A)100質量部当り3〜30質量部である請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
- (E)多価金属イオン非溶出性の無機フィラーを、何れかのパッケージに含有している請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記無機フィラーがヒュームドシリカである請求項10に記載の歯科用硬化性組成物。
- 前記パッケージ(I)は、揮発性の水溶性有機溶媒(F)を含んでいる請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
- 請求項1に記載の歯科用硬化性組成物からなる歯科用接着材。
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