JP5660927B2 - 硬化性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、酸素による重合阻害が少ないため、酸素遮断下で重合させることの困難な歯科用として好適に使用できる、表面未重合量の低減された硬化性組成物を提供する。
硬化性材料は、基本的に、重合性単量体と重合開始剤から成る材料である。重合開始剤がラジカル重合性である場合、重合工程を空気中で行うと、硬化した組成物の空気に露出した表面に未重合層が生じる。これは、硬化性材料の空気に露出した表面では空気中の酸素が硬化性材料と結合して過酸化物ラジカルとなり、重合の進行が停止するからである。そして、この現象は、特に、ラジカル重合開始剤が、複数の成分を反応させてラジカルを発生させる化学重合系のものの場合、反応時間が長く空気中の酸素の影響を大きく受けるため顕著である。
従来、表面に未重合層を有しない硬化性材料を提供するためには、窒素雰囲気下や水中での硬化、酸素遮断材を用いて酸素遮断層を設けるなどして、空気との接触を断ち、硬化性材料をラジカル重合させる方法が行われてきた(例えば、特許文献1、2参照)。
(メタ)アクリレート系重合性単量体をラジカル重合で硬化させる方法は、歯科の分野で広く利用されており、このような方法を使用したものとしては、歯科用セメント、歯科用接着材(ボンディング材)、コンポジットレジン、レジン歯科材料表面の滑沢性付与材、義歯床用裏装材、歯牙のマニキュア等が挙げられる。これらの歯科用修復物が硬化体表面に未重合層を有していると、表面硬度や着色性の低下が引き起こされる。また、表面に未重合層があると硬化体の研磨・研削を行う際に未重合層が研磨バーに絡みつくために、その研磨性は低下する。
このような材料を用いた歯科治療は直接口腔内で硬化させて使用することが多く、水中や窒素雰因気下で硬化させることによって、未重合を減少させる方法であると、硬化性材料を一旦口腔内から取り出すことが必要となり、口腔内で形成した形状が変形してしまう。酸素遮断層を形成するのが困難な症例は多くあり、また、ボンディング材などの粘性の低い材料には酸素遮断材を利用することができない。
このため、酸素遮断層を設けることなく硬化時の酸素の影響を低減させる技術が求められていた。
こうした中、界面活性剤および水を配合させた硬化性材料により、表面未重合を低減する方法が開発された(特許文献3〜6参照)。この方法によれば、ラジカル重合性単量体からなるマトリックス中に水が分散されており、このような水が分散された状態でラジカル重合による硬化が行われ、硬化体が形成される。即ち、水が、界面活性剤とともに分散されている状態でラジカル重合が行われるため、重合の進行とともに形成される硬化体の表面に適度の水層(界面活性剤含有)が形成され、この水層が本硬化材料と空気が直接接することを防ぎ、且つラジカル重合性単量体と口腔粘膜が直接接することを抑制する働きを示すものと推測される作用により、表面の重合性を大きく向上させることができ、その表面未重合量を著しく低減させることができる。
該文献において、配合される界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が例示されており、その中でもエステル結合を有するアニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム等を配合すると高い効果が得られることが記載されている。
また、界面活性剤を硬化性組成物に配合することによって、歯牙などの生体硬組織に対して高い接着力を示し、かつ刺激や侵襲を低減する効果が得られることについても記載されている(特許文献7参照)。
特開2000−128723号公報 特開2004−284969号公報 特開2006−291168号公報 特開2007−008972号公報 特開2007−063332号公報 特開2008‐285645号公報 特開平7−316391号公報
しかしながら、上記硬化性組成物では、ラジカル重合性単量体に水と共に配合する界面活性剤として、前記エステル結合を有するアニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム等の対イオンがNaイオンであるアニオン性界面活性剤を用いた場合、使用前に材料が空気暴露されると界面活性剤が空気接触界面に析出し、表面未重合量を低減する効果が十分に発揮されなくなる問題が生じていた。すなわち、硬化性組成物の液を容器に密閉して収容している際は問題にならないが、使用に際してカップに取り出したり、容器の蓋を閉め忘れたりすると、短時間で界面活性剤が析出し、表面未重合量の低減効果が弱まる不具合があった。
このため、界面活性剤および水を配合させた硬化性組成物において、使用前に空気暴露されても界面活性剤が析出し難く、表面未重合量を低減する効果が長期間安定的に維持できるように改善することが求められていた。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行なった。その結果、ラジカル重合性単量体および水と共に配合するアニオン性界面活性剤として、対イオンがLiイオンであるものを用いることにより、得られる硬化性組成物は、使用前の空気暴露下においても該界面活性剤が析出し難く、表面未重合量を低減する効果を長期間安定的に維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)ラジカル重合性単量体100質量部、(B)水0.1〜10質量部、(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤0.1〜10質量部を含んでなる硬化性組成物である。
さらに本発明は、(A)ラジカル重合性単量体、(B)水、(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤を含んでなる液材と、樹脂粉末を主成分とする粉材とからなる硬化性組成物のキットも提供する。
本発明の硬化性組成物は、酸素が存在する環境下で、酸素遮断材を用いるなどの特別の手段を用いなくても、表面未重合層を生じ難い状態で硬化する。そして、該硬化性組成物は、空気暴露下においても含有される界面活性剤が析出し難く、長期保存しても、上記表面未重合量の低減効果を安定的に維持することができる。
本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合性単量体、水および対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤を必須成分として含んでいる。この組成によって、空気暴露下においても界面活性剤が析出し難く、表面未重合量の低減効果が長期間維持できる効果が発現する理由は、必ずしも定かではないが、本発明者らは次のように推定している。
すなわち、アニオン性界面活性剤として、従来から最も汎用的であり、界面活性剤および水を配合させた硬化性組成物に関する従来技術でも使用されている硫酸エステル塩は、対イオンがNaイオンのものが通常使用されている。しかし、Naイオン(495.8kJ/mol)よりもLiイオン(513.3kJ/mol)の方が、第一イオン化エネルギーが大きく、そのためアニオン性界面活性剤の対イオンはNaイオンであるよりもLiイオンである方が、該アニオン性界面活性剤を硬化性組成物中で安定なイオン状態とすることができると考えられる。この結果、対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤を配合した硬化性組成物では、空気暴露下においても該成分の析出が大幅に抑制されると推察される。
本発明の硬化性組成物において、これら水や対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤は、表面未重合の低減効果を十分に発現させるためには一定量が必要であるが、あまり多すぎても硬化体強度が低下したり、場合によっては全く硬化しなくなったりする。こうした観点から、ラジカル重合性単量体100質量部対して、水を0.1〜10質量部、対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤を0.1〜10質量部の範囲で含有させることが必要である。以下、これら各成分につき詳述する。
本発明の歯科用硬化性組成物に配合されるラジカル重合性単量体としては、歯科用として使用可能なラジカル重合性単量体が特に制限無く使用することができる。このようなラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル系の重合性単量体が一般的である。
代表的な(メタ)アクリル系重合性単量体を例示すれば、下記(I)〜(IV)に示されるものが挙げられる。
(I)単官能性単量体
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;あるいはアクリル酸、メタクリル酸、p−メタクリロイルオキシ安息香酸、N−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−N−フェニルグリシン、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、及びその無水物、6−メタクリロイルオキシヘキサメチレンマロン酸、10−メタクリロイルオキシデカメチレンマロン酸、2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、10−メタクリロイルオキシデカメチレンジハイドロジェンフォスフェート、2−ヒドロキシエチルハイドロジェンフェニルフォスフォネート等の酸性基含有重合性単量体。
(II)二官能性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパンおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
(ii)脂肪族化合物系のもの
モノエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量400のポリエチレングリコールのジメタクリレート、平均分子量600のポリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ノナメチレンジオールメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート; 2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト; 無水アクリル酸、無水メタクリル酸、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル、ジ(2−メタクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等の酸性基含有重合性単量体。
(III)三官能性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(IV)四官能性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
これらのラジカル重合性単量体は単独で用いることもあるが、2種類以上を混合して使用することもできる。なお、本発明の歯科用硬化性組成物においては、前記(メタ)アクリル系重合性単量体に加えて、しばしば重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性の調節のために、上記(メタ)アクリル系重合性単量体以外の他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。これら他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これら他の重合性単量体は単独でまたは二種以上を一緒に使用することができる。
本発明の硬化性組成物に用いることのできる(B)水は、従来公知のものを何ら制限無く使用することができるが、不純物を実質的に含有していないものを使用することが好適であり、蒸留水またはイオン交換水を使用することがより好適である。
本発明における(B)水の配合量は、(A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.1〜10質量部である。より好ましくは、(A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.3〜8質量部であり、更に好ましくは0.5〜5質量部である。(B)水の配合量が、(A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.1質量部に満たない場合には、表面未重合の低減効果を十分得ることができなくなる他、空気暴露下において、界面活性剤が短時間で析出するようになる。他方、水の配合量が、10質量部を超えて配合された場合には、硬化体の曲げ強度などの機械的物性が著しく低下してしまう。
本発明の硬化性組成物において、(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤を具体的に例示すると、高級脂肪酸リチウム、アルキル硫酸リチウム、アルキルスルホン酸リチウム、アルキルアリールスルホン酸リチウムが好適なものとして例示できる。
高級脂肪酸リチウムとしては、カプロン酸リチウム、カプリル酸リチウム、カプリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、ミリスチン酸リチウム、パルミチン酸リチウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸リチウム等の炭素数8〜20の脂肪酸のリチウム塩が例示できる。
アルキル硫酸リチウムとしては、ヘキシル硫酸リチウム、オクチル硫酸リチウム、デシル硫酸リチウム、ドデシル硫酸リチウム、テトラデシル硫酸リチウム、ヘキサデシル硫酸リチウム、オクタデシル硫酸リチウム等の炭素数6〜18のアルキル硫酸リチウムが例示できる。
アルキルスルホン酸リチウムとしては、ヘキシルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、デシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸リチウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム等の炭素数6〜18のアルキルスルホン酸リチウムが例示できる。
アルキルアリールスルホン酸リチウムとしては、ヘキシルベンゼンスルホン酸リチウム、オクチルベンゼンスルホン酸リチウム、デシルベンゼンスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸リチウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸リチウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の芳香族環を除いた炭素数が6〜18のアルキルアリールスルホン酸リチウムが例示できる。
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、使用前の空気暴露下において析出しにくい効果がより高いことから、炭素数6〜18のアルキル硫酸リチウムが好適であり、特に、炭素数8〜16の当該化合物が好適である。
本発明で利用できる(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤はこれらに限られず、それぞれ単独で使用するだけでなく、必要に応じて複数の種類を組み合わせて併用することもできる。また、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、すなわち、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤等を併用しても良い。
本発明における(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤(の配合量は、ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.001〜5質量部である。より好ましくは、ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.01質量部〜4質量部であり、更に好ましくは0.05〜3質量部である。
(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤の配合量がラジカル重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部に満たない場合には、表面未重合の低減効果を十分得ることができなくなり、5質量部を超えて配合された場合には、硬化体の曲げ強度などの機械的物性が著しく低下してしまう。
本発明の硬化性組成物には、前記ラジカル重合性単量体を重合させるために、通常は、ラジカル重合開始剤が配合される。当該ラジカル重合開始剤としては、用いるラジカル重合性単量体を重合、硬化させることができるものであれば何ら制限なく使用可能であり、公知の当該重合開始剤が使用可能である。歯科分野で用いられるラジカル重合開始剤としては、化学重合型(常温レドックス開始剤)、光重合型、熱重合型等があるが、口腔内で硬化させることを考慮すると、化学重合型及び/又は光重合型が好ましい。
化学重合型のラジカル重合開始剤(化学重合開始剤)は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、アミン化合物/有機過酸化物系のものが代表的である。
該アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどの芳香族アミン化合物が例示される。
代表的な有機過酸化物としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類される有機過酸化物が好ましい。
より具体的には、ケトンパーオキサイド類としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。ハイドロパーオキサイド類としては、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等が挙げられる。ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、スクシニックアシッドパーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド類が挙げられる。パーオキシカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
パーオキシエステル類としては、α,α−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
また、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等も好適な有機過酸化物として使用できる。
使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、硬化性組成物としたときの保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
該有機過酸化物と該アミン化合物からなる開始剤系にさらに、ベンゼンスルフィン酸やp−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸を加えた系、5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸系開始剤を配合しても何ら問題なく使用できる。
また、アリールボレート化合物が酸により分解してラジカルを生じることを利用した、アリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤を用いることもできる。
アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、その中でも、保存安定性を考慮すると、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いや合成・入手の容易さから4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物がより好ましい。
1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物として、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す)の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
また、1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物として、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素〔ただし、いずれの化合物においてもアルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかを示す〕の、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩又はブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
これらアリールボレート化合物は2種以上を併用しても良い。
上記の酸性化合物としては、酸性基含有ラジカル重合性単量体が好適に使用でき、1分子中に少なくとも1つの酸性基、又は当該酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造、あるいは酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基と、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有す化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで酸性基とは、該基を有すラジカル重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈す基を示す。当該酸性基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}等、並びにこれらの基が酸無水物や酸ハロゲン化物等となったものが例示される。このような酸性基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、前記本発明におけるラジカル重合性単量体において例示した通りである。
またこのようなアリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤に更に、有機過酸化物及び/又は遷移金属化合物を組み合わせて用いることも好適である。有機過酸化物としては前記した通りである。遷移金属化合物としては+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物が好適である。該+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物を具体的に例示すると、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)、等のバナジウム化合物が挙げられる。
光重合型のラジカル重合開始剤(光重合開始剤)としては2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド誘導体、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル;2,4−ジエトキシチオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン誘導体;ベンゾフェノン、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体が好適に使用される。
これら光重合開始剤は1種あるいは2種以上を混合して用いても差し支えない。上記光重合開始剤の中でも、重合活性の良さ、生体への為害性の少なさ等の点からα−ジケトン類が好ましい。またα−ジケトンを用いる場合には、第3級アミン化合物と組み合わせて用いることが好ましい。α−ジケトンと組み合わせて用いることのできる第3級アミン化合物としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。
本発明において、上記(D)ラジカル重合開始剤の配合量は、前記ラジカル重合性単量体を重合し、本発明の硬化性組成物を硬化させる量であれば特に限定されず、用いたラジカル重合開始剤やラジカル重合性単量体の種類に応じて、公知の配合量を適宜選択すればよい。一般的には、ラジカル重合性単量体100質量部に対して、ラジカル重合開始剤が0.01〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。但し、前記酸性基含有ラジカル重合性単量体のように、ラジカル重合性の化合物をラジカル重合開始剤の一成分として用いる場合には、該化合物以外のラジカル重合開始剤を構成する成分の量を上記範囲とすることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、上記(A)ラジカル重合性単量体、(B)水、(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤、及び必要に応じて配合される(D)ラジカル重合開始剤やフィラーなどの任意成分が、使用時に均一に混合されたものとなる。ここで均一とは、全成分が交互に溶解した状態のみならず、ラジカル重合性単量体中に水が乳濁した状態や、フィラーのような不溶性成分が分散した状態であってもよく、肉眼で相分離等が確認できない程度の均一さでよい。また、保存安定性などを考慮して、使用直前まで2つ以上に分割しておいてもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、そのままで、各種レジン系歯科材料表面の滑沢性付与、歯牙のマニキュアおよび変色歯の補修等の目的で使用される表面滑沢材や接着材として用いることが出来るが、フィラーと組み合わることにより、より広範な用途に用いることができる。例えば、有機フィラーと組み合わせた場合には、義歯の補修材料、裏装用の材料、治療経過途中に一旦患者を帰してから治療を再開するまでの数日間、窩洞に充填される仮封材及び暫間的なクラウン、並びにブリッジの作製材料等として好適に使用される。また、無機フィラーと組み合わせた場合には、コンポジットレジン、硬質レジン、インレー、アンレー、クラウン等、歯科用修復材料として好適に使用される。
好適に使用できる代表的なフィラーを具体的に例示すれば、有機フィラーとしてポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
また、代表的な無機フィラーを具体的に例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに無機フィラーの内、カチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これらもまた、一種または二種以上を混合して用いても何等差し支えない。
また、これら無機フィラーに重合性単量体を予め添加し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合フィラーを用いる場合もある。
これらフィラーの粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm〜100μmの平均粒子径のフィラーが目的に応じて適宜使用できる。また、フィラーの屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用フィラーが有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
さらに、上記したフィラーの中でもとりわけ球状の無機フィラーを用いると、得られる硬化体の表面滑沢性が増し、優れた修復材料となり得る。
上記した無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
これらのフィラーの割合は、使用目的に応じて、重合性単量体と混合した時の粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、一般的には、ラジカル重合性単量体100質量部に対して50〜1500質量部、好ましくは70〜1000質量部の範囲で用いられる。最も好適には100〜500質量部の範囲である。
本発明の歯科用硬化性組成物には、さらに歯牙や歯肉の色調に合わせるため、顔料、蛍光顔料等の着色材料を配合したり、紫外線に対する変色防止のため紫外線吸収剤を添加したりしてもよい。また、保存安定性を向上させるために、重合禁止剤を配合することも好ましい。
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。尚、実施例中に示した、実施例および比較例で使用した化合物の略称は次の通りである。
[ラジカル重合性単量体]
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
14G;分子量600のポリエチレングリコールのジメタクリレート
ND;1,9−ノナンジオールジメタクリレート
AAEM;アセトアセトキシエチルメタクリレート
HPr;2−メタクリルロイルオキシエチルプロピオネート
[ラジカル重合開始剤]
(有機過酸化物)
BPO;ベンゾイルパーオキサイド
パーオクタH;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
(アミン化合物)
DEPT;N,N−ジエタノール−p−トルイジン
DMBE;ジメチル安息香酸エチル
(α−ジケトン)
CQ;カンファーキノン
(アリールボレート化合物)
PhBTEOA;テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩
(バナジウム化合物)
VOAA;酸化バナジウム(IV)アセチルアセトナート
[樹脂粉末]
PEMA;ポリエチルメタクリレート平均粒径:35μm、重量平均分子量:50万
〔界面活性剤の析出試験〕
ラバーカップに、硬化性組成物の液を採取してから、空気に開放状態で界面活性剤が析出するまでの時間を目視にて観察した。析出物が液表面の3割を占める時間を析出時間とし、硬化性組成物が第一液と第二液の二種類の液成分の場合は両者の平均析出時間を析出時間とした。
〔表面未重合重量測定方法〕
硬化性組成物は、ラバーカップに液を採取してから五分後のものを使用した。直径50mm、厚さ1mmの孔を有するポリアセタール製の型に、各実施例或いは比較例で調製された硬化性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置することにより硬化を行った。但し、実施例23および比較例8では可視光線照射器(トクヤマ社製、パワーライト)により光照射を30秒間行うことにより硬化を行った。
その後、得られた硬化体の表面をエタノールで洗浄して未重合層を除去した。型内に填入した硬化材料の重量から、未重合層が除去された硬化体の重量を引いたものを未重合量とし、表面積あたりの重さとして求めた。
〔曲げ強さ測定方法〕
硬化性組成物は、ラバーカップに液を採取してから五分後のものを使用した。幅4mm、厚さ2mm、長さが40mmの長方形の孔を有するポリアセタール製の型に、硬化性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置し硬化させた。強度試験機(島津製作所社製、オートグラフ)によりクロスヘッド速度1mm/分、スパン距離15mmの条件で3点曲げ試験を行い曲げ強さを求めた。
実施例1
ラジカル重合性単量体として、3Gを用いて評価を行った。即ち、100質量部の3Gに、3質量部の水、1.5質量部のラウリン酸リチウム及び1.5質量部のDEPTを混合した第一液と、同じく100質量部の3Gに、3質量部の水、1.5質量部のラウリン酸リチウム及び3質量部のBPOを混合した第二液とを調製した。この第一液と第二液とからなる歯科用硬化性組成物について、界面活性剤の析出試験を行なった。
次いで、この第一液と第二液とを、質量比で104.5:107となるように計りとって混合して硬化させ、表面未重合重量測定、および曲げ強さ測定を行なった。
以上の結果、界面活性剤の析出時間は10.5分、表面未重合量は15.6μg/mm、曲げ強さは80.2MPaであった。
実施例2〜24,比較例1〜9
実施例1と同様の方法にて調製した歯科用硬化性組成物の評価を行った。その組成(量は質量部)と結果を表1に示した。
また、他の比較対象として実施例1と同様の方法にてそれぞれ調製した歯科用組成物(量は質量部)の比較試験を行なった。その組成と結果を表2に示した。
Figure 0005660927
Figure 0005660927
実施例2〜24は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、界面活性剤の析出時間、表面未重合重量、曲げ強さのいずれも良好な値が得られた。
これに対して、比較例1〜2は、界面活性剤として対イオンがNaイオンであるアニオン性界面活性剤を用いた場合であるが、いずれの場合も界面活性剤の析出時間が早くなり、表面未重合量も増加した。
また、比較例3は水の配合量が少ない場合であるが、界面活性剤の析出時間が早くなり、表面未重合量も増加した。
比較例4は、水の配合量が多くなっているため、硬化体の強度が低くなり、曲げ強さが著しく低下した。
比較例5は、界面活性剤を添加しない場合であるが、界面活性剤の析出は起こりえないが、表面未重合量が著しく増大した。
比較例6は、界面活性剤を過剰に添加した場合であるが、界面活性剤の析出時間が大幅に早くなり、表面未重合量も増大した。
比較例7〜9は、界面活性剤として対イオンがNaイオンであるアニオン性界面活性剤を用いた場合であるが、いずれも界面活性剤の析出時間が早くなり、表面未重合量が増加した。
実施例25
ラジカル重合性単量体として、NDおよび14Gを用いて評価を行った。即ち、70質量部のNDと30質量部の14Gに、3質量部の水、1.5質量部のドデシル酸リチウム及び1質量部のDEPTを混合した液と、樹脂粉末としてPEMA100質量部に対して、1質量部のBPOを混合した粉とを調製した。この液と粉からなる歯科用硬化性組成物の液について、界面活性剤の析出試験を行なった。
次いで、この液と粉とを、質量比で105.5:202となるように計りとって混合して硬化させ、表面未重合重量測定、および曲げ強さ測定を行なった。
以上の結果、界面活性剤の析出時間は12.0分、表面未重合量は6.7μg/mm、曲げ強さは135.1MPaであった。
実施例26,比較例10および11
実施例25と同様の方法にて調製した歯科用硬化性組成物の評価を行った。その組成(量は質量部)と結果を表3に示した。
Figure 0005660927
実施例25および26は、各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、界面活性剤の析出、表面未重合重量、曲げ強さのいずれも良好な値が得られた。
これに対して、比較例10および11は、界面活性剤として対イオンがNaイオンであるアニオン性界面活性剤を用いた場合であるが、いずれの場合も界面活性剤の析出時間が早くなり、表面未重合量も増加した。

Claims (5)

  1. (A)ラジカル重合性単量体100質量部、(B)水0.1〜10質量部、(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤0.001〜5質量部を含んでなる硬化性組成物。
  2. さらに、(D)有効量のラジカル重合開始剤を含んでなる請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 歯科用である、請求項1または請求項2に記載の硬化性組成物。
  4. (A)ラジカル重合性単量体、(B)水、(C)対イオンがLiイオンであるアニオン性界面活性剤を含んでなる液材と、樹脂粉末を主成分とする粉材とからなる硬化性組成物のキット。
  5. 歯科用である、請求項4に記載の硬化性組成物のキット。
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