JP6340066B2 - 歯科用重合性組成物、歯科用仮着セメント、歯科用充填材、義歯床裏装材、及び歯科用粘膜調整材 - Google Patents

歯科用重合性組成物、歯科用仮着セメント、歯科用充填材、義歯床裏装材、及び歯科用粘膜調整材 Download PDF

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Description

本発明は、歯科用重合性組成物と、その歯科用重合性組成物を含む、歯科用仮着セメント、歯科用充填材、義歯床裏装材、及び歯科用粘膜調整材とに関する。
歯牙の修復治療のために、様々な歯科材料が使用されており、無機系の材料や有機系の材料がある。これらの中でも有機系の材料として、(メタ)アクリル酸エステル、重合開始剤、及びフィラーなどを含む重合性組成物が汎用されている。そして、歯牙の修復治療のための重合性組成物として、硬化後の硬さの面で2種類に大別できる。その一つは、義歯床用の裏装材、仮封材等のように口腔組織との粘着材、衝撃吸収材などに用いられ、硬化物が柔軟である軟質系材料である。近年の歯科医療の発達により、新たな軟質系材料が必要となってきている。
例えば、高齢などにより歯を喪失した患者に対し、義歯を装着することが一般的である。義歯の使用にあたっては、長期に渡る義歯の保持、顎への衝撃緩和などの使用感を向上させるために義歯床裏装材又は粘膜調整材が使用される。これらの義歯床裏装材又は粘膜調整材には、適度な柔軟性及び衝撃吸収性が必要である。
また、同じく高齢などにより歯を喪失した患者に対し、インプラントの埋入による治療が普及している。インプラントは顎骨に直接埋め込まれる人工歯根部と、上部の歯冠部と、人工歯根部と歯冠部とを連結するアバットメントと呼ばれる歯台部とから構成され、これらを接着させて使用される。この接着には、仮着セメントが使用されることがあるが、インプラントは洗浄等のメンテナンスのために取り外すことがあるため、接着部には可徹性が必要とされる。そのため、仮着セメントには、その硬化物が適度な柔軟性を有することが要求されている。また、生体の歯根部には歯根膜といわれる組織が存在し、咬合による衝撃はこの組織で吸収され、顎骨への伝播が緩和される。しかし、インプラント治療部にはこの歯根膜がなく、顎骨に衝撃が伝播してしまうため、人工歯根において咬合による衝撃を緩和することが要求されている。
歯科用重合性組成物の硬化物に柔軟性や衝撃吸収性を付与する方法として、柔軟性があるポリマーを配合することが知られている。例えば、特許文献1には、アクリル系のブロック共重合体を配合させることによって硬化物の柔軟性が改良された、仮着セメント又は動揺歯固定材に適した重合性組成物が記載されている。特許文献2には、特定の範囲のガラス転移温度を有するアクリル系ポリマー粉末が配合された歯科用粘膜調整材が記載されている。この歯科用粘膜調整材は、初期の柔軟性が維持されるという特性を有している。特許文献3には、長鎖アルキル(メタ)アクリレートと短鎖アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体であって、特定の範囲のガラス転移温度及び特定の範囲の融点を有する共重合体を含有する歯科用接着材が記載されている。この歯科用接着材は、良好な可徹性及び接着性を有している。特許文献4には、軟質材料が用いられ、特定の範囲の、37℃での正弦正接を有する歯科用インプラント保護材が記載されている。この歯科用インプラント保護材は、咬合によるインプラントのフィクスチャーへの荷重負荷を低減させている。すなわち、この歯科用インプラント保護材は良好な衝撃緩和性を有している。特許文献5には、特定のスチレン系ブロック共重合体を含有する歯科用仮着セメント組成物が記載されている。この歯科用仮着セメントは、金属及びセラミックに対して仮着に適した良好な接着性を有する。
国際公開2011/048802号 特開2006−225281号公報 特開2006−136649号公報 特開2009−254808号公報 特開2013−203718号公報
特許文献1の重合性組成物は、ハードセグメントとして機能する重合体ブロックを有するアクリル系ブロック共重合体を含むので、重合性組成物の硬化物を柔軟化させる効果は限定的である。また、特許文献1においては、重合性組成物の硬化物の衝撃吸収性については何ら記載されていない。
特許文献2に記載の歯科用粘膜調整材、特許文献3に記載の歯科用接着材のように重合性でない材料は、一般に、色素などが侵入しやすく耐着色性が劣る可能性がある。
特許文献4に記載の歯科用インプラント保護材は、分子量10000以下の液状ポリマー及び分子量500以下のオリゴマー成分を含有するので、形状保持性が低下しやすい、又は、水分の侵入により透明性が低下しやすいという課題を有する可能性がある。
特許文献5に記載の歯科用仮着セメント組成物では、スチレン系ブロック共重合体と(メタ)アクリル酸エステルとの極性差によりスチレン系ブロック共重合体の(メタ)アクリル酸エステルへの溶解が困難となる可能性がある。このため、特許文献5に記載の歯科用仮着セメント組成物では、スチレン系ブロック共重合体を(メタ)アクリル酸エステルに溶解させる場合に、使用可能な(メタ)アクリル酸エステルが制限される。
そこで本発明は、硬化したときの柔軟性及び衝撃吸収性に優れ、歯科用仮着セメント、歯科用充填材、義歯床裏装材、及び歯科用粘膜調整材に好適な重合性組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、当該歯科用重合性組成物を含む歯科用仮着セメント、歯科用充填材、義歯床裏装材、及び歯科用粘膜調整材を提供することを目的とする。
本発明は、
ガラス転移温度が25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー、及び/又は、ホモポリマーのガラス転移温度が37℃より高い(メタ)アクリル酸エステルとホモポリマーのガラス転移温度が37℃より低い(メタ)アクリル酸エステルとのランダム共重合体を含み、25℃〜50℃の範囲のガラス転移温度を有し、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδが0.10以上であり、融点を有さない(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、
(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドを含む重合性単量体(b)と、
重合開始剤(c)と、を含有する
歯科用重合性組成物を提供する。
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が、前記重合性単量体(b)に溶解していることが好ましい。
前記歯科用重合性組成物は、重合促進剤(d)をさらに含むことが望ましい。
本発明はまた、上記の歯科用重合性組成物を含む、歯科用仮着セメントを提供する。
本発明はまた、上記の歯科用重合性組成物を含む、歯科用充填材を提供する。
本発明はまた、上記の歯科用重合性組成物を含む、義歯床裏装材を提供する。
本発明はまた、上記の歯科用重合性組成物を含む、歯科用粘膜調整材を提供する。
本発明の歯科用重合性組成物は、硬化したときの柔軟性及び衝撃吸収性に優れる。このため、本発明の歯科用重合性組成物は、義歯床裏装材及び歯科用粘膜調整材として特に適しており、歯科用仮着セメント及び歯科用充填材としても好適に用いることができる。
本発明の歯科用重合性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)と、重合開始剤(c)と、を含有している。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、ガラス転移温度が25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー、及び/又は、ホモポリマーのガラス転移温度が37℃より高い(メタ)アクリル酸エステルとホモポリマーのガラス転移温度が37℃より低い(メタ)アクリル酸エステルとのランダム共重合体を含んでいる。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、25℃〜50℃の範囲のガラス転移温度を有する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)において、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδが0.10以上である。さらに、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、融点を有さない。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は非晶性高分子に属する。重合性単量体(b)は、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドを含んでいる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)は、本発明の歯科用重合性組成物において、歯科用重合性組成物の硬化物に柔軟性及び衝撃吸収性を付与するために用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)のガラス転移温度(Tg)が37℃に近いほど、本発明の歯科用重合性組成物の硬化物の柔軟性及び衝撃吸収性が優れる。このため、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)のTgは、30℃〜45℃であることが好ましく、35℃〜40℃であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδが大きいほど、本発明の重合性組成物の硬化物の衝撃吸収性が優れる。メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の37℃におけるtanδは、0.10以上であり、0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の37℃におけるtanδの上限は特に制限されないが、例えば、1.0である。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を構成するための(メタ)アクリル酸エステルは、ホモポリマーのTgが25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルであってもよいし、ホモポリマーのTgが37℃より高い(メタ)アクリル酸エステルとホモポリマーのTgが37℃より低い(メタ)アクリル酸エステルとの混合物であってもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を構成するための(メタ)アクリル酸エステルが、ホモポリマーのTgが25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルである場合、その重合形態は、ホモポリマーのTgが25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマーである。そのホモポリマーの結合形式は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。それらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の製造の容易性から、直鎖状又は分岐状のホモポリマーが好ましく用いられる。
ホモポリマーのTgが25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸フェネチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、及びメタクリル酸グリシジルが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、及びメタクリル酸ネオペンチルは、これらを用いて得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の重合性単量体(b)に対する溶解性が優れるので好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を構成するための(メタ)アクリル酸エステルが、ホモポリマーのTgが37℃より高い(メタ)アクリル酸エステルとホモポリマーのTgが37℃より低い(メタ)アクリル酸エステルとの混合物である場合、その重合形態は、ランダム共重合体である。そのランダム共重合体の結合形式は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組合わさった結合形式のいずれでもよい。それらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の製造の容易性から、直鎖状又は分岐状のランダム共重合体が好ましく用いられる。
ホモポリマーのTgが37℃より高い(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタアクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及びメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。これらの中で、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びメタクリル酸テトラヒドロフルフリルは、これらを用いて得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の重合性単量体(b)に対する溶解性が優れるので好ましい。
ホモポリマーのTgが37℃より低い(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、及びアクリル酸sec−ブチルが挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、を用いた場合には、得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の重合性単量体(b)に対する溶解性が優れるので好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が、上記のランダム共重合体を含む場合、本発明の効果を損なわない範囲で、そのランダム共重合体は、上記以外のアクリル酸エステル単位を含んでいてもよく、さらに、他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有するビニル系モノマー;(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマー;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系モノマー等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、重合性単量体(b)に対する溶解性及び重合性組成物の硬化物の衝撃吸収性の観点から、10000〜2000000の範囲内であることが好ましく、20000〜1000000の範囲内であることがより好ましく、30000〜500000の範囲内であることがさらに好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の製造方法は、化学構造に関する本発明の条件を満足する重合体が得られる限りにおいて、特に限定されることはなく、公知の手法に準じた方法を採用できる。
重合性単量体(b)
重合性単量体(b)に含まれる、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能性の、又は、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドが例示される。
単官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタクリレート)、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、及びこれらの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性が良く、歯科用重合性組成物の硬化物の柔軟性が優れる点で、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)メタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、本発明の歯科用重合性組成物は、色素などに対する耐着色性の調整を目的として、重合性単量体(b)として、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルを含んでもよい。このようなフッ素含有(メタ)アクリル酸エステルの例としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロー3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの中でも、耐着色性に優れる点で、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートがより好ましく用いられる。
フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルの重合性単量体(b)における含有量は特に限定されないが、耐着色性の観点から、20〜100重量%であることが好ましく、30〜100重量%であることがより好ましく、40〜100重量%であることがさらに好ましい。
また、本発明の歯科用重合性組成物は、金属、他のレジン、又は歯質に対する接着強さの調整を目的として、重合性単量体(b)として、酸性基含有(メタ)アクリル酸エステルを含んでいてもよい。このような酸性基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドとしては、芳香族化合物系の二官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド、脂肪族化合物系の二官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド、三官能性以上の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
芳香族化合物系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの例としては、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「Bis−GMA」)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、及びこれらの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性が良く、歯科用重合性組成物の硬化物の形状保持性が優れる点で、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。中でも、エトキシ基の平均付加モル数が2.6である化合物(通称「D2.6E」)が好ましい。
脂肪族化合物系の二官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの例としては、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、及びこれらの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性が良く、得られる歯科用重合性組成物の硬化物の形状保持性が優れる点で、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンオールジ(メタ)アクリレート、及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレートが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン、及びこれらの(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)との混和性に優れる点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
重合性単量体(b)として、上記の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの1種を単独で用いてもよいが、歯科用重合性組成物の硬化性及びその硬化物の柔軟性の観点から、二官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドと、単官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドとを併用することが好ましい。それらを併用する場合の各(メタ)アクリル酸エステル又は各(メタ)アクリルアミドの比率は特に限定されないが、重合性単量体(b)の総量を100重量%とした場合に、二官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの配合量が1〜90重量%であることが好ましく、2.5〜80重量%であることがより好ましく、5〜70重量%であることがさらに好ましい。二官能性の、(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドの配合量が70重量%以下であると、歯科用重合性組成物の硬化物の柔軟性が高くなるので、その硬化物は破壊しにくい。なお、本明細書において、重合性単量体(b)の総量とは、歯科用重合性組成物全体に含有される(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドの総量のことを意味し、例えば、本発明の歯科用重合性組成物が2剤型の形態をとる場合、各剤に含有される(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリルアミドの重量との合計を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の量は、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドの総量100重量部に対し、5〜500重量部であることが好ましく、10〜250重量部であることがより好ましい。
重合開始剤(c)
本発明に用いられる重合開始剤(c)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合開始剤(c−1)及び化学重合開始剤(c−2)を、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用できる。
光重合開始剤(c−1)としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
これらの光重合開始剤(c−1)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類及びその塩と、α−ジケトン類とからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視光域及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、及びキセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す歯科用重合性組成物が得られる。
上記光重合開始剤(c−1)として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルホスフィンオキサイド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドカリウム塩、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドのアンモニウム塩が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキサイド類としては、例えば、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、及びビス(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドを挙げることができる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物を挙げることができる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩を光重合開始剤(c−1)として用いることが特に好ましい。
上記光重合開始剤(c−1)として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、及びアセナフテンキノンが挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
重合開始剤(c)のうち、化学重合開始剤(c−2)としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。化学重合開始剤(c−2)として使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネートが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、及びシクロヘキサノンパーオキサイドが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、及びラウロイルパーオキサイドが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステルが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、及びt−ブチルパーオキシバレリックアシッドが挙げられる。
上記化学重合開始剤(c−2)として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、及びジアリルパーオキシジカーボネートが挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性と、保存安定性と、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の存在下におけるラジカル生成能力との総合的なバランスから、ハイドロパーオキサイドが化学重合開始剤(c−2)として好ましく用いられる。その中でもクメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが化学重合開始剤(c−2)として特に好ましく用いられる。
本発明の歯科用重合性組成物における重合開始剤(c)の配合量は特に限定されないが、得られる歯科用重合性組成物の硬化性等の観点から、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドの総量100重量部に対し、重合開始剤(c)が0.001〜30重量部含有されることが好ましい。重合開始剤(c)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、べとつきを招くおそれがある。重合開始剤(c)の配合量は、0.05重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、重合開始剤(c)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、歯科用重合性組成物からの析出を招くおそれがある。重合開始剤(c)の配合量は、20重量部以下がより好ましく、15重量部以下がさらに好ましく、10重量部以下がとりわけ好ましい。
本発明の歯科用重合性組成物は、上記の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)、重合性単量体(b)、及び重合開始剤(c)を含有していれば特に限定はなく、例えば、これ以外の成分を含んでいてもよい。本発明の歯科用重合性組成物は、公知の方法に準じて製造できる。
重合促進剤(d)
本発明の歯科用重合性組成物は、重合促進剤(d)を含むことが好ましい。重合促進剤(d)としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、アルデヒド類、チオ尿素化合物、有機リン化合物、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、バナジウム化合物、銅化合物、スズ化合物、及びハロゲン化合物チオール化合物を挙げることができる。
重合促進剤(d)として用いられるアミン類は、脂肪族アミンと芳香族アミンとに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンが挙げられる。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、及び4−ジメチルアミノ安息香酸ブチルが挙げられる。これらの中でも、歯科用重合性組成物に優れた硬化性を付与する観点から、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1つが好ましく用いられる。
重合促進剤(d)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムが挙げられる。
重合促進剤(d)として用いられる亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが挙げられる。
重合促進剤(d)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒド及びベンズアルデヒド誘導体が挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが挙げられる。
重合促進剤(d)として用いられるチオ尿素化合物としては、例えば、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、エチルチオ尿素、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジ−n−プロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ−n−プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ−n−プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素、3,3−ジメチルエチレンチオ尿素、及び4,4−ジメチル−2−イミダゾリンチオンが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の存在下における歯科用重合性組成物の硬化性の観点から、1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素又は4,4−ジメチル−2−イミダゾリンチオンが重合促進剤(d)として好ましく用いられる。
重合促進剤(d)として用いられる有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、2−メチルトリフェニルホスフィン、4−メチルトリフェニルホスフィン、2−メトキシトリフェニルホスフィン、4−メトキシトリフェニルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、及びトリt−ブチルホスフィンが挙げられる。
重合促進剤(d)として用いられるバナジウム化合物としては、IV価及び/又はV価のバナジウム化合物が好ましい。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物としては、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、バナジルアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、及びメタバナジン酸アンモン(V)が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の存在下における歯科用重合性組成物の硬化性の観点から、バナジルアセチルアセトナート(IV)が重合促進剤(d)として好ましく用いられる。
重合促進剤(d)として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、及び臭化第2銅が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)の存在下における歯科用重合性組成物の硬化性の観点から、アセチルアセトン銅又は酢酸第2銅が重合促進剤(d)として好ましく用いられる。
重合促進剤(d)として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、及びジ−n−ブチル錫ジラウレートが挙げられる。中でも、ジ−n−オクチル錫ジラウレート又はジ−n−ブチル錫ジラウレートが重合促進剤(d)として好ましく用いられる。
重合促進剤(d)として用いられるコバルト化合物としては、例えば、アセチルアセトンコバルト、酢酸コバルト、オレイン酸コバルト、塩化コバルト、及び臭化コバルトが挙げられる。
これらの重合促進剤(d)の中でも、チオ尿素化合物、バナジウム化合物、及び銅化合物が特に好ましく用いられ、さらにこれらの中でも1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素、4,4−ジメチル−2−イミダゾリンチオン、バナジルアセチルアセトナート(IV)、アセチルアセトン銅、及び酢酸第2銅が重合促進剤(d)として最も好ましく用いられる。
重合促進剤(d)の歯科用重合性組成物における配合量は特に限定されないが、得られる歯科用重合性組成物の硬化性等の観点から、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミドの総量100重量部に対して、重合促進剤(d)が0.001〜30重量部含有されていることが好ましい。重合促進剤(d)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、べとつきを招くおそれがある。重合促進剤(d)の配合量は、0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、重合促進剤(d)の配合量が30重量部を超える場合、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、歯科用重合性組成物からの重合開始剤の析出を招くおそれがある。重合促進剤(d)の配合量は、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
また、本発明においては、化学重合開始剤(c−2)と重合促進剤(d)とを組み合わせてレドックス重合開始剤としてもよい。このとき、保存安定性の観点から、化学重合開始剤(c−2)及び重合促進剤(d)は、それぞれ、別の容器に保存される。この場合、歯科用重合性組成物は、化学重合開始剤(c−2)を含有する第1剤と重合促進剤(d)を含有する第2剤とを少なくとも含んで提供される。歯科用重合性組成物は、その第1剤とその第2剤とからなる2剤型の形態で用いられるキットとして提供されることが好ましい。この場合、歯科用重合性組成物は、第1剤及び第2剤のいずれもがペースト状である、2ペースト型の形態で用いられるキットとして提供されることがより好ましい。歯科用重合性組成物が2ペースト型の形態のキットとして提供される場合、それぞれのペーストはペースト同士が隔離された状態で保存され、使用直前にその2つのペーストが混練されて化学重合が進行する。歯科用重合性組成物に光重合開始剤がさらに含有されている場合には、化学重合に加えて光重合を進行させて、歯科用重合性組成物を硬化させることが好ましい。
フィラー(e)
本発明の歯科用重合性組成物には、ペースト性状を調整するために、又は、歯科用重合性組成物の硬化物の機械的強度を高めるために、フィラー(e)がさらに配合されていてもよい。フィラー(e)として、例えば、有機フィラー、無機フィラー、及び有機−無機複合フィラー等が挙げられる。
有機フィラーの材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、及びアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられ、これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用できる。
無機フィラーの材料としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、及びストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスが挙げられる。これらもまた、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。無機フィラーの形状は特に限定されず、不定形フィラー又は球状フィラーなどを適宜選択して使用できる。
上記の無機フィラーは、重合性単量体(b)との混和性を調整するため、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。かかる表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
表面処理の方法としては、公知の方法を特に限定されずに用いることができ、例えば、無機フィラーを激しく攪拌しながら上記の表面処理剤をスプレー添加する方法、適当な溶媒へ無機フィラーと上記の表面処理剤とを分散又は溶解させた後、溶媒を除去する方法、又は水溶液中で上記の表面処理剤のアルコキシ基を酸触媒により加水分解してシラノール基へ変換し、該水溶液中で無機フィラー表面に付着させた後、水を除去する方法などがある。いずれの方法においても、通常50℃〜150℃の範囲で加熱することにより、無機フィラー表面と上記の表面処理剤との反応を完結させ、表面処理を行うことができる。
有機−無機複合フィラーは、例えば、上記の無機フィラーにモノマーを予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することによって得ることができる。有機−無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパンメタクリレートとシリカフィラーとを混和、重合させた後に粉砕して得られるフィラー)を用いることができる。有機−無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径は適宜選択できる。
フィラー(e)の平均粒子径は、得られる歯科用重合性組成物の取り扱い性及びその硬化物の機械的強度などの観点から、0.001〜100μmであることが好ましく、0.001〜50μmであることがより好ましい。なお、本明細書において、フィラー(e)の平均粒子径は、当業者に公知の任意の方法により測定でき、例えば、レーザー回折型粒度分布測定装置により測定できる。
フィラー(e)の配合量は特に限定されないが、得られる歯科用重合性組成物の取り扱い性及びその硬化物の機械的強度の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドとの総量100重量部に対して、500重量部以下であることが好ましく、250重量部以下であることがより好ましく、100重量部以下であることがさらに好ましい。フィラー(e)の含有量が500重量部以下であると歯科用重合性組成物の硬化物の柔軟性が良好に保たれる。
本発明の歯科用重合性組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、柔軟性、流動性などの改質を目的として他の重合体、例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム及びその水素添加物、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、又はスチレン系エラストマーを添加することができる。添加可能な他の重合体の具体例としては、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)ブロック共重合体、ポリ(p−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(p−メチルスチレン)ブロック共重合体、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
本発明の歯科用重合性組成物は、必要に応じて、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、及び、パラフィン、落花生油、ロジン等の植物油系軟化剤が挙げられる。これらの軟化剤は単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。軟化剤の含有量は、本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドとの総量100重量部に対して300重量部以下であり、好ましくは100重量部以下である。
また、本発明の歯科用重合性組成物には、性能を低下させない範囲内で、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、有機溶媒、及び増粘剤が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、及び3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンが挙げられる。重合禁止剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドとの総量100重量部に対して0.001〜1.0重量部が好ましい。
本発明の歯科用重合性組成物は、硬化後の柔軟性と衝撃吸収性とに優れる。従って、本発明の歯科用重合性組成物は、このような利点が生かされる用途に適用でき、特に、義歯床裏装材及び歯科用粘膜調整材に最適であり、また、歯科用仮着セメント、根管充填材及び仮封材などの歯科用充填材にも好適である。
義歯床裏装材、歯科用粘膜調整材、歯科用仮着セメント、及び歯科用充填材の好適な構成の一例を示す。義歯床裏装材は、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドの総量100重量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)を5〜250重量部、重合開始剤(c)を0.05〜15重量部、重合促進剤(d)を0.05〜20重量部含み、かつ、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドとの総量100重量部に対してフィラー(e)を0〜300重量部含むことが好ましい。また、義歯床裏装材は、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミド100重量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(a)を10〜250重量部、重合開始剤(c)を0.1〜15重量部、重合促進剤(d)を0.1〜10重量部含み、かつ、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、重合性単量体(b)としての(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドとの総量100重量部に対してフィラー(e)を0〜150重量部含むことがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例の歯科用重合性組成物の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)に用いるために、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4を製造した。また、比較例の歯科用重合性組成物に用いるために、(メタ)アクリル酸エステル系ブロック共重合体1(クラレ社製、クラリティL2250、Mw:78000)及びスチレン系ブロック共重合体1(クラレ社製、ハイブラー5127、Mw:120000)を準備し、さらに(メタ)アクリル酸エステル系重合体1及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体2を製造した。
<GPC測定>
製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4、(メタ)アクリル酸エステル系重合体1、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体2の重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn(数平均分子量))を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算により求めた。GPC測定装置としては、東ソー社製のGPC測定装置(HLC−8020)を用いた。東ソー社製の「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」、及び「G5000HXL」をこの順番で直列に連結して分離カラムとして用いた。溶離液としてのテトラヒドロフランを用い、流量1.0ml/分で分離カラムに供給した。検出方法は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4については、紫外線吸収率に基づいて検出を行い、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4以外の上記の重合体については示差屈折率に基づいて検出を行った。
<Tg及び37℃におけるtanδの測定>
製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4、(メタ)アクリル酸エステル系重合体1、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体2について、それぞれ適切な温度範囲でレオメータ(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「AR2000」)を用いて動的粘弾性測定を行い、各重合体のTg及び37℃におけるtanδを求めた。この動的粘弾性測定において、せん断速度は、100Hzに設定した。tanδがピークをとる温度をガラス転移温度Tgと決定した。
<融点測定>
製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4、(メタ)アクリル酸エステル系重合体1、及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体2について、それぞれ適切な温度範囲で示差走査熱量計DSC(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「Q2000」)を用いて融点測定を行った。昇温速度は10℃/minに設定した。いずれの重合体においても吸熱ピークが観測されず、いずれの重合体も融点を有しないことが確認された。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1を以下のように製造した。1リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン390g、N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.4ml、及びイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム11mmolを含有するトルエン溶液18mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム2.2mmolを含有する、シクロヘキサンとn−ヘキサンとの混合溶液1.7mlを加えた。これにメタクリル酸ネオペンチル150mlを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液にメタノール1gを添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノール90重量%)に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1を得た。
このようにして製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−1について、上記の方法でMw、Mw/Mn、Tg、及び37℃におけるtanδを測定した。Mwは75,000、Mw/Mnは1.15、Tgは36.2℃、37℃におけるtanδは0.72であった。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2を以下のように製造した。1リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン390g、N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.0ml、及びイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム11mmolを含有するトルエン溶液12mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム2.2mmolを含有する、シクロヘキサンとn−ヘキサンとの混合溶液1.3mlを加えた。これにメタクリル酸メチル12重量%/メタクリル酸n−ブチル88重量%の混合溶液150mlを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液にメタノール1gを添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノール90重量%)に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2を得た。
このようにして製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−2について、上記の方法でMw、Mw/Mn、Tg、及び37℃におけるtanδを測定した。Mwは120,000、Mw/Mnは1.18、Tgは37.5℃、37℃におけるtanδは0.57であった。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3を以下のように製造した。1リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン390g、N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.4ml、及びイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム11mmolを含有するトルエン溶液10mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム2.2mmolを含有する、シクロヘキサンとn−ヘキサンとの混合溶液1.0mlを加えた。これにメタクリル酸イソブチル33重量%/メタクリル酸n−ブチル67重量%の混合溶液150mlを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液にメタノール1gを添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノール90重量%)に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3を得た。
このようにして製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−3について、上記の方法でMw、Mw/Mn、Tg、及び37℃におけるtanδを測定した。Mwは180,000、Mw/Mnは1.2、Tgは35.8℃、37℃におけるtanδは0.68であった。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4を以下のように製造した。1リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン390g、N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン0.8ml、及びイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム11mmolを含有するトルエン溶液8mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム2.2mmolを含有する、シクロヘキサンとn−ヘキサンとの混合溶液0.8mlを加えた。これにメタクリル酸イソブチル70重量%/メタクリル酸2−エチルヘキシル30重量%の混合溶液150mlを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液にメタノール1gを添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノール90重量%)に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4を得た。
このようにして製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)−4について、上記の方法でMw、Mw/Mn、Tg、及び37℃におけるtanδを測定した。Mwは250,000、Mw/Mnは1.21、Tgは35.6℃、37℃におけるtanδは0.59であった。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体1>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体1を以下のように製造した。1リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン390g、N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.4ml、及びイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム11mmolを含有するトルエン溶液18mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム2.2mmolを含有する、シクロヘキサンとn−ヘキサンとの混合溶液1.7mlを加えた。これにメタクリル酸メチル150mlを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液にメタノール1gを添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノール90重量%)に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収して、(メタ)アクリル酸エステル系重合体1を得た。
このようにして製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体1について、上記の方法でMw、Mw/Mn、Tg、及び37℃におけるtanδを測定した。Mwは74,000、Mw/Mnは1.13、Tgは103℃、37℃におけるtanδは0.09であった。
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体2>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体2を以下のように製造した。1リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン390g、N,N’,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン1.4ml、及びイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム11mmolを含有するトルエン溶液18mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム2.2mmolを含有する、シクロヘキサンとn−ヘキサンとの混合溶液1.7mlを加えた。これにメタクリル酸2−エチルヘキシル150mlを加え、室温で10時間撹拌した。この反応液にメタノール1gを添加して重合を停止した。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノール90重量%)に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体2を得た。
このようにして製造した(メタ)アクリル酸エステル系重合体2について、上記の方法でMw、Mw/Mn、Tg、及び37℃におけるtanδを測定した。Mwは79,000、Mw/Mnは1.16、Tgは−11℃、37℃におけるtanδは0.07であった。
次に、実施例又は比較例に係る重合性組成物に用いた各成分を略号とともに以下に説明する。
[重合性単量体(b)]
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
D−2.6E:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
UDMA:2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
DFHM:1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート
BEM:ブトキシエチルメタクリレート
[光重合開始剤(c−1)]
CQ:カンファーキノン
BAPO:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
[化学重合開始剤(c−2)]
THP:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
[重合促進剤(d)]
PDE:N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
PTU:1−(2−ピリジル)−2−チオ尿素
DMETU:4,4−ジメチル−2−イミダゾリンチオン
VOAA:バナジルアセチルアセトナート(IV)
CUA:酢酸第2銅
[フィラー(e)]
フィラー(e)−1:コロイドシリカ粉(日本アエロジル社製「アエロジルOX50」)
フィラー(e)−2:コロイドシリカ粉(日本アエロジル社製「アエロジル380」)
[重合禁止剤]
BHT:3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
表1に示す分量で各成分を常温(20℃±15℃、JIS(日本工業規格) Z 8703)下で混合して、実施例1〜7に係る歯科用重合性組成物としてのAペースト及びBペーストを調製した。また、各実施例についてAペーストとBペーストとを混練し、光照射器を用いてAペーストとBペーストとの混練物に光照射を行い、実施例1〜7に係る硬化物を得た。
表2に示す分量で各成分を常温下で混合して、比較例1〜4に係る歯科用重合性組成物としてのAペースト及びBペーストを調製した。比較例2において、スチレン系ブロック共重合体は、重合性単量体(b)に溶解させることができなかった。比較例1、比較例3、及び比較例4についてAペーストとBペーストとを混練し、光照射器を用いてAペーストとBペーストとの混練物に光照射を行い、比較例1、比較例3、比較例4に係る硬化物を得た。
<柔軟性試験>
各実施例及び各比較例に係る硬化物について、直径1.5cm×厚さ0.2cmの円盤状の試験片を作製した。その試験片を用いて、JIS K7215に基づいて、タイプAデュロメータで37℃における硬化物の硬度(A硬度)を測定し、柔軟性の指標とした。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。この測定において、37℃におけるA硬度が50以下である場合、その硬化物は柔軟性に優れるということができる。
<衝撃吸収性(tanδ)>
レオメータ(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:AR2000)に各実施例及び各比較例に係る硬化物を載せ、直径20mmのパラレルプレートを用い、0〜60℃の範囲でせん断速度100Hzで一定方向に回転させて、tanδを測定した。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。この測定において37℃におけるtanδの値が0.10以上の硬化物は衝撃吸収性に優れるということできる。
<形状保持性(圧縮永久歪み)>
各実施例及び各比較例に係る硬化物について、直径1.5cm×厚さ0.5cmの円盤状の試験片を作製した。その試験片を用いて、温度37℃、圧縮変形量25%の条件下に24時間放置した後の圧縮永久歪みを測定した。圧縮永久歪みは以下の式で算出した。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。なお、この測定において37℃における圧縮永久歪みが30%以下である場合、その硬化物は形状保持性に優れるということができる。
圧縮永久歪み[%]={0.5−(試験後の厚さ)}/0.1×100
<透明性試験>
各実施例及び各比較例に係る歯科用重合性組成物(ペーストA及びペーストB)を混練してSUS製の金型(寸法2mm×20mmφ)に充填した後、金型に充填した歯科用重合性組成物の上下をスライドガラスで圧接した。次に、金型に充填した歯科用重合性組成物の両面を、歯科用可視光照射器(株式会社モリタ製、ペンキュア2000)によって、片面6箇所で10秒間ずつ光照射して歯科用重合性組成物を硬化させた。得られた硬化物について、分光測色計(日本電色工業社製、SE2000、D65光源)を用いて、透明性ΔLを測定した。透明性ΔLは以下の式で定義される。なお、高い審美性を確保するために、透明性(ΔL)が50以上である必要がある。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
ΔL=L*W−L*B
L*Wは、白背景で測定されるL*a*b*表色系における明度指数L*を表し、L*Bは、黒背景で測定されるL*a*b*表色系における明度指数L*を表す。
<耐着色性試験>
透明性試験で得られた硬化物について、分光測色計(日本電色工業社製、SE2000、D65光源)を用いて測色を行い、測定された色度を耐着色性試験前の色度とした。次に、1重量%のコーヒー顆粒を分散させたコーヒーに、その硬化物を37℃で1日間浸漬した後再度測色を行った。このとき測定された色度を耐着色性試験後の色度とした。耐着色性試験前の色度からの耐着色試験後の色度の変化をΔEとして評価した。ΔEは以下の式で定義される。歯科用重合性組成物の硬化物の色調安定性を確保するために、ΔEが3以下である必要がある。結果を表1及び表2にそれぞれ示す。
ΔE={(L*1−L*2)2+(a*1−a*2)2+(b*1−b*2)21/2
L*1、a*1、b*1、L*2、a*2、b*2は、分光測色計にて測定したL*a*b*表色系での色度(L*、a*、b*)を表す値であり、色度(L*1、a*1、b*1)は、耐着色性試験後の色度を表し、色度(L*2、a*2、b*2)は、耐着色性試験前の色度を表す。
表1及び表2に示す通り、実施例1〜7における歯科用重合性組成物の硬化物は、柔軟性、衝撃吸収性、形状保持性、透明性、及び耐着色性に優れていた。特に、実施例1〜7に係る歯科用重合性組成物の硬化物の柔軟性は、比較例1及び比較例3に係る歯科用重合性組成物の硬化物よりも優れていた。実施例1〜7に係る歯科用重合性組成物の硬化物の衝撃吸収性は、比較例1、比較例3及び比較例4に係る歯科用重合性組成物の硬化物の衝撃吸収性よりも優れていた。実施例1〜7に係る歯科用重合性組成物の硬化物の形状保持性は、比較例3及び比較例4に係る歯科用重合性組成物の硬化物の形状保持性よりも優れていた。実施例1〜7に係る歯科用重合性組成物の硬化物の耐着色性は、比較例4に係る歯科用重合性組成物の硬化物の耐着色性よりも優れていた。
Figure 0006340066
Figure 0006340066
本発明の歯科用重合性組成物は、硬化したときの柔軟性及び衝撃吸収性に優れるので、義歯床裏装材及び歯科用粘膜調整材に特に適している。また、歯科用仮着セメント、根管充填材又は仮封材などの歯科用充填材にも適している。

Claims (8)

  1. ガラス転移温度が25℃〜50℃となる(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー、及び/又は、ホモポリマーのガラス転移温度が37℃より高い(メタ)アクリル酸エステルとホモポリマーのガラス転移温度が37℃より低い(メタ)アクリル酸エステルとのランダム共重合体を含み、25℃〜50℃の範囲のガラス転移温度を有し、動的粘弾性測定により求まる37℃におけるtanδが0.10以上であり、融点を有さない(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)と、
    (メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリルアミドを含む重合性単量体(b)と、
    重合開始剤(c)と、を含有する歯科用重合性組成物。
  2. 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(a)が、前記重合性単量体(b)に溶解している、請求項1に記載の歯科用重合性組成物。
  3. 重合促進剤(d)をさらに含む、請求項1に記載の歯科用重合性組成物。
  4. 重合促進剤(d)をさらに含む、請求項2に記載の歯科用重合性組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用重合性組成物を含む、歯科用仮着セメント。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用重合性組成物を含む、歯科用充填材。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用重合性組成物を含む、義歯床裏装材。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用重合性組成物を含む、歯科用粘膜調整材。
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