JP3669563B2 - 歯科用接着性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本名発明は歯科用接着剤に関する。詳しくは歯科医療分野における歯冠修復に際し、歯冠修復材料と歯質とを高い強度で接着し、しかもフッ素徐放性を有する歯科用接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
齲蝕や事故等により機能を失った歯牙をインレーやクラウンと呼ばれる金属やセラミックス製の歯冠用修復材料を用いて修復するに際し、歯冠用修復材料の歯牙への固定には歯科用セメントが用いられる。かかる歯科用セメントにはフルオロアルミノシリケートセメント(一般にグラスアイオノマーセメントと呼ばれる。)やレジンセメントが広く用いられてきた。
【0003】
グラスアイオノマーセメントは、多価金属イオンを溶出する粉成分とカルボキシル基を有するポリマー溶液からなり、これら粉と液とを混合した時に溶出する多価金属イオンとポリマーがキレート架橋することにより硬化する。
【0004】
かかるセメントは、歯質の前処理を行わないために操作が簡単であり、また、歯質の耐酸性を向上させるフッ素を長期間徐放するといった特長を有する。しかしながら歯質への接着力が低く、歯冠用修復材料を固定するためには機械的な保持力に頼らざる得ず、そのためには健全な歯質まで削除しなければならないといった問題があった。さらに、感水性を有すること、即ち硬化時に唾液等の水と接触することにより物性が低下することも問題となっていた。
【0005】
一方、レジンセメントは重合性単量体と無機あるいは有機フィラーとからなり、ラジカル重合開始剤を用いることにより重合硬化する。かかるレジンセメントは、重合性単量体に機能性重合性単量体を配合することにより歯質、金属との強固な接着を可能としている。また、無機フィラーを高密度に充填した製品では、機械的強度や耐久性に優れるといった特長を有している。
【0006】
しかしながら、レジンセメントを用いる場合には、酸水溶液、あるいは酸性基を有する重合性単量体と水とからなるセルフエッチングプライマー等の各種前処理剤による被着面の前処理を必要とし、接着操作が煩雑であった。また、接着不良を起こした場合に、歯質とセメントとの隙間に齲蝕原因菌が侵入して2次齲蝕を起こす恐れがあり、これを防止するために歯質の耐酸性を向上させるフッ素徐放性の付与が望まれていた。
【0007】
レジンセメントにフッ素徐放性を付与する目的で、特開昭57−88106号公報にはフッ素ポリマーを配合した組成物が、特開平10−36116号公報、特開平11−158021号公報、及び特開平11−209213号公報にはフッ化ナトリウム等を配合した組成物が開示されている。しかしながら、これら組成物におけるフッ素徐放性は、グラスアイオノマーと比較してその徐放量は遥かに少なく、徐放期間も短いといった問題があった。
【0008】
また、近年、レジン強化型グラスアイオノマーと呼ばれるグラスアイオノマーの組成にレジンセメントの成分である重合性単量体を配合したセメントが開発され上市されている。かかるセメントは、レジンを配合することによりグラスアイオノマーの欠点であった感水性を低減している。また、歯面処理を行うことにより歯質への接着力の向上を図った製品も開発されている。しかしながら、その歯質接着力は尚十分なものではなく、特に歯面処理を行わない製品では従来のグラスアイオノマーを用いたときと同様に低い接着力しか得られなかった。
【0009】
このように、歯質の前処理を何ら行うことなく歯質と強固に接着し、且つフッ素を長期間徐放可能なセメントは未だになく、その開発が望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酸水溶液等を用いた前処理を必要とすることなく、エナメル質、象牙質の双方に対して高い接着強度と長期間持続するフッ素徐放性を有する歯科用接着剤を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、まず、レジンセメントに長期間安定したフッ素徐放性を与えるために、グラスアイオノマーの粉成分であるフルオロアルミノシリケートガラスを配合することを考え、検討を行った。その結果、フッ素徐放性については所期の目的が達せられるものの、フルオロアルミノシリケートガラスとレジンセメントの重合触媒として広く使用されている過酸化物系触媒とを共存させて保存した場合には、過酸化物系触媒が保存中に分解してしまうという新たな問題があることが分かった。
【0012】
そして、この問題を解決すべく更に検討を行った結果、上記問題の発生がフルオロアルミノシリケートガラスの塩基性と関係があることをつきとめ、該フルオロアルミノシリケートガラスの塩基性を低減させた場合には、過酸化物の分解が防止できる知見を得、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、(A)酸性基含有重合性単量体{以下、単に(A)成分とも言う。}、(B)水溶性重合性単量体{以下、単に(B)成分とも言う。}、(C)第三級アミン化合物{以下、単に(C)成分とも言う。}、(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー{以下、単に(D)成分とも言う。}、(E)有機過酸化物{以下、単に(E)成分とも言う。}、及び(F)アリールボレート化合物{以下、単に(F)成分とも言う。}又は(G)スルフィン酸或いはその塩{以下、単に(G)成分とも言う。}を含有する組成物からなり、該組成物中の(A)成分100重量部に対する(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の重量割合がそれぞれ50〜500重量部、0.1〜50重量部、及び100〜5000重量部であり、該組成物中の(D)成分100重量部に対する(E)成分、及び(F)成分又は(G)成分の重量割合がそれぞれ0.1〜10重量部、及び0.1〜10重量部であり、かつ上記(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーが、その表面の一部又は全部がポリマーで被覆されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーであることを特徴とする歯科用接着剤である。
【0015】
上記本発明の歯科用接着剤の中でも、(D)成分及び(E)成分を含有する実質的に固体状の組成物と、(D)成分及び(E)成分を含まない1又は2以上の組成物とからなる歯科用接着剤は、取扱い性が良いばかりでなく、使用時に各組成物を練和するときの操作性が良好であるという特徴がある。
【0016】
特に、〔I〕(A)成分100重量部に対して(B)成分を50〜500重量部、及び(C)成分を0.1〜50重量部の割合で含む重合性単量体含有組成物100重量部、並びに〔II〕(D)成分100重量部に対して(E)成分を0.1〜10重量部、(F)成分び/又は(G)成分を0.1〜10重量部の割合で含むフィラー含有組成物100〜900重量部からなる歯科用接着剤は、さらに重合性単量体成分の保存安定性が高いという特徴がある。
【0017】
さらに、上記〔I〕の重合性単量体含有組成物及び〔II〕のフィラー含有組成物2種の組成物から成る本発明の歯科用接着剤において、フィラー含有組成物がさらに(H)球状フィラーを(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー100重量部に対して3〜100重量部の割合で含み、且つ重合性単量体含有組成物がさらに(I)酸性基含有重合性単量体及び水溶性重合性単量体以外の重合性単量体を(A)酸性基含有重合性単量体100重量部に対して50〜500重量部の割合で含むものは、更にセメントの硬化体強度や流動性が向上するという効果がある。
【0018】
【発明の実施形態】
本発明の歯科用接着剤は、前記(A)成分〜(E)成分、及び(F)成分又は(G)成分が特定の割合で配合された組成物からなる。該歯科用接着剤は使用時にこれら成分が混合された形で使用されるものであるが、使用前においては保存中に重合硬化が起こらないように、2以上の組成物に分けて保存されるのが普通である。この場合に於いて、その取扱いの容易さから(E)成分と(D)成分は共存させることが多いのであるが、これら両成分を含む組成物が実質的に固体状の組成物である場合には、使用時に各組成物を練和するときの操作性が良好であるという特徴がある。
【0019】
ここで、実質的に固体状であるとは、僅かに液体成分を含んでいても良いが外見上は粉末状等の固体状であることを意味する。この様な状態の組成物であれば、単に練和時の操作性が良いばかりでなく、例えばフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの表面の一部又は全部をポリマーで被覆する方法により(D)成分を調整した場合でも、液体成分中にポリマーが溶け出すことがなく長期間ポリマーの被覆効果が良好に保たれる。
【0020】
また、本発明の歯科用接着剤においては、重合性単量体成分の保存安定性の観点から、上記〔I〕に示される特定の重合性単量体含有組成物(以下、単にモノマー組成物ともいう。)と上記〔II〕に示される特定のフィラー含有組成物とからなる態様が好適に採用される。
【0021】
以下、該態様を例に、各構成成分及びその配合割合等について詳しく説明する。
【0022】
まず、モノマー組成物について説明する。
【0023】
本発明の歯科用接着剤のモノマー組成物において使用する(A)酸性基含有重合性単量体{(A)成分}は、1分子中に少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つの重合性不飽和基を持つ重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで、酸性基とはそれ自体が酸性を示す基、又は水と反応して酸性を示す基を意味する。該酸性基は特に限定されないが、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、ホスホ基{−PO2}、酸無水物骨格を有する基{−C(=O)−O−C(=O)−}、スルホ基(−SO3H)、−P(=S)(OH)2基、−P(=S)Cl2基、及び−P(=S)Cl(OH)基、及びこれら基を有する基等が好ましい。
(A)成分として好適に使用できる酸性基含有重合体としては下記一般式(1)
【0024】
【化1】
【0025】
{式中、R1は水素原子又はメチル基であり、Wはエステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、又はフェニレン基(−C6H4−)を表し、R2は単なる結合手、又はエーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよい2〜6価の炭素数1〜30の有機残基であり、R2はWがエステル結合(基−COO−)又はアミド結合(基−CONH−)のときはエーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよい2〜6価の炭素数1〜30の有機残基であり、Xはホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、ホスホ基{−PO2}、酸無水物骨格を有する基{−C(=O)−O−C(=O)−}、スルホ基(−SO3H)、−P(=S)(OH)2基、−P(=S)Cl2基、及び−P(=S)Cl(OH)基の中から選ばれる少なくとも一つの基を含有する1価又は2価基の有機残基であり、qは1〜4の整数であり、m及びnは1又は2であり、p、m、及びnはR2の価数をrとした場合に(r−q)×m=nの関係を満足する。}
で示される化合物が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)中、Xはホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)2}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、ホスホ基{−PO2}、酸無水物骨格を有する基{−C(=O)−O−C(=O)−}、スルホ基(−SO3H)、−P(=S)(OH)2基、−P(=S)Cl2基、及び−P(=S)Cl(OH)基の中から選ばれる少なくとも一つの基を含有する1価又は2価基の有機残基であり、その構造は特に限定されることはないが、好ましい基を具体的に例示すれば次の通りである。
【0027】
【化2】
【0028】
上記一般式(1)中、R2は、単なる結合手、またはエーテル結合及び/またはエステル結合を有してもよい2〜6価の炭素数1〜30の有機残基である。ただし、Wがエステル結合(基−COO−)又はアミド結合(基−CONH−)のときは、単なる結合手とはならず、エーテル結合及び/又はエステル結合を有していてもよい2〜6価の炭素数1〜30の有機残基である。好適に採用さるこの様な有機残基を具体的に例示すると次の通りである。
【0029】
【化3】
【0030】
(式中、m1、m2、及びm3は、1〜5の整数である。)
前記一般式(1)で表される酸性基含有重合性単量体の好ましい具体例を挙げると次の通りである。
【0031】
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
{式中、R1は、前記一般式(1)と同義である。}
これらの酸性基含有重合性単量体は単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0037】
前記モノマー組成物において使用する(B)水溶性重合性単量体{(B)成分}とは、1分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を持ち、かつ、水溶性の化合物を意味する。ここで水溶性とは、23℃1気圧で化合物10gが水100gに均一に溶解できることをいう。(B)成分の水溶性重合性単量体は、このような定義を満足するものならば既存のものが制限なく使用できる。
【0038】
好適に使用できる代表的な水溶性重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2.3−ジ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2.3−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2.4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチルー3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチルメタクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート及びこれらに対応するアクリレート体等の多価アルコールあるいはポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル類;N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミノアルコールの(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロモイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクロレン、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0039】
上記の水溶性重合性単量体の中でも、高い歯質接着強度が得られる理由から、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。
上記の水溶性重合性単量体は、単独で又は2種以上を混合して用いても良い。
【0040】
前記モノマー組成物における上記の水溶性重合性単量体{(B)成分}の配合量は、(A)成分100重量部に対して50〜500重量部、より好ましくは100〜400重量部、最も好ましくは150〜300重量部の範囲である。(A)成分100重量部に対する(B)成分の配合量が50重量部より少ないと、象牙質への接着強度が低下し、逆に500重量部より多いと接着強度の耐久性が低下する。
【0041】
前記モノマー組成物に使用する(C)第三級アミン化合物{(C)成分}としては、公知のものが制限なく用いられる。その中でも、アミノ基がアリール基に結合した第三級アミンが好ましく、このような第三級アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチルーp−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルーp−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)ーp−トルイジン等が挙げられる。そのなかでも、高い歯質接着強度が得られる理由から、N,N−ジメチルーp−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)ーp−トルイジンが特に好ましい。
上記の第三級アミン化合物は、必要に応じて複数の種類を混合して用いても良い。
【0042】
前記モノマー組成物における(C)成分の配合量は、セメントの接着強度や硬化時間を考慮すると、(A)成分100重量部に対して0.1〜50重量部、より好ましくは0.2〜25重量部の範囲である。(A)成分100重量部に対する(C)成分の配合量が0.1重量部より少ないと、象牙質の接着強度が低下し、逆に50重量部より多いと使用時の硬化時間が短くなり操作性に問題が生じる。
【0043】
さらに、本発明の歯科用接着剤のモノマー組成物には、粘度を調節する目的で、前記(A)〜(C)成分の他に、(I)酸性基含有重合性単量体及び水溶性重合性単量体以外の重合性単量体{以下、単に(I)成分ともいう。}を添加することもできる。
【0044】
(I)成分となる重合性単量体としては、(A)成分及び(B)成分のいずれの重合性単量体にも属さない重合性単量体であれば公知の重合性単量体が何ら制限なく用いられる。好適に使用できる重合性単量体としてはアクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する重合可能な重合性単量体が挙げられ、この様な重合性単量体の具体例としては次のような重合性単量体が挙げられる。
【0045】
単官能性重合性単量体:
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート。
【0046】
二官能性重合性単量体:
(i) 芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0047】
(ii) 脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等。
【0048】
三官能性重合性単量体:
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
【0049】
四官能性重合性単量体:
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
【0050】
さらに、貴金属製の歯冠用修復物との接着性を向上させる目的で、(I)成分として、貴金属と結合する官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。この様な重合性単量体として好適に使用できるものを例示すれば、チオウラシル誘導体、トリアジンジチオン誘導体、メルカプトチアゾール誘導体等の官能基を有する重合可能な重合性単量体が挙げられ、この様な重合性単量体の具体例としては下記一般式に示される各重合性単量体が使用できる。
【0051】
即ち、下記一般式I1〜I5に示される互変異性によりメルカプト基を生じ得る重合性単量体:下記一般式I6〜I9に示されるジスルフィド基を有する重合性単量体;下記一般式I10〜I11で示される鎖状もしくは環状のチオエーテル基を有する重合性単量体が挙げられる。
【0052】
【化9】
【0053】
{式中、R3は水素原子またはメチル基であり、R4は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基、−CH2−C6H4−CH2−基、−(CH2)o−Si(CH3)2OSi(CH3)2−(CH2)p−基(o及びpは、それぞれ独立に1〜5の整数である。)、または−CH2CH2OCH2CH2−基であり、Zは−OC(=O)−基、−OCH2−基、または−OCH2−C6H4−基であり(いずれの基も右端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子が基R4に結合する。)、Z’は−OC(=O)−基、−C2H4−基、または結合手であり(−OC(=O)−基の場合、右端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子が基R4に結合する。)、Yは−S−、−O−、または−N(R’)−である(R’は水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基である)。}なお、基Z’が結合手の場合とは基R4と不飽和炭素が直接結合した状態をいう。
【0054】
これら化合物を具体的に例示すれば、前記一般式I1〜I5に示される互変異性によりメルカプト基を生じ得る重合性単量体としては次に示すものが挙げられる。
【0055】
【化10】
【0056】
【化11】
【0057】
【化12】
【0058】
また、前記一般式I6〜I9に示されるジスルフィド基を有する重合性単量体としては、次に示す化合物等が挙げられる。
【0059】
【化13】
【0060】
さらに、前記一般式I10〜I11に示される鎖状もしくは環状のチオエーテル基を有する重合性単量体としては、次に示す化合物等が挙げられる。
【0061】
【化14】
【0062】
これらの(I)成分である重合性単量体は単独で使用してよく、また、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0063】
前記モノマー組成物に(I)成分を配合する場合の配合量は、モノマー組成物の粘度及び硬化体の機械的強度を考慮して配合すればよいが、一般的には(A)成分100重量部に対して50〜500重量部、より好ましくは50〜300重量部、最も好ましくは100〜250重量部の範囲である。
【0064】
本発明で使用する、モノマー組成物には、本発明の歯科用接着剤の性能を低下させない範囲で、保存安定性に問題のない範囲で、水、有機溶媒や増粘剤等を添加することも可能である。当該有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、酢酸エチル等があり、増粘剤としてはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物や微粉シリカが例示される。
【0065】
次にフィラー含有組成物〔II〕(以下、単にフィラー組成物ともいう。)について説明する。
【0066】
フィラー組成物における(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー{(D)成分}とは、フルオロアルミノシリケートガラスフィラーの表面にある塩基性点を被覆したり潰したりして該フィラーの塩基性が低減されたものを意味する。
【0067】
ここで、フルオロアルミノシリケートガラスフィラーは、アルミニウム及び珪素の酸フッ化物ガラスのフィラーであれば特に限定されず、歯科用接着剤等においてイオン溶出性フィラーとして一般に使われているものが何ら制限なく使用できる。例えば、その組成が、イオン重量%で、珪素10〜33重量%;アルミニウム4〜30重量%;アルカリ土類金属5〜36重量%;アルカリ金属0〜10重量%;リン0.2〜16重量%;フッ素としては2〜40重量%で残量酸素のものが好適に使用される。
【0068】
なお、上記アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが好ましい。また、上記アルカリ金属としてはナトリウム、リチウム、カリウムが好適であり、中でもナトリウムが特に好適である。更に必要に応じて、上記アルミニウムの一部をチタン、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ランタン等で置き換えたものも使用可能である。
【0069】
このようなフルオロアルミノシリケートガラスフィラーは、例えば、シリカ、アルミナ、フルオライト、クリオライト、フッ化アルミニウム等の金属化合物を混合して1100〜1300℃で焼結し、次いで粉砕する方法、或いはゾルゲル法などにより製造できる。
【0070】
このようにして得られるフルオロアルミノシリケートガラスフィラーを後述する塩基性低減処理に供することとなるが、該塩基性低減処理においてフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの粒子径や粒子形状は基本的に変化しないので、塩基性低減処理前に粒子性状を整えておくことが好適である。勿論、塩基性低減処理と同時に粉砕等を行うことも出来るが、操作の簡便性から予め粒子性状を整えておくことが好ましい。
【0071】
塩基性低減処理後のフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの粒子径としては、補綴物の適合性を高める必要から、その平均粒子径は、0.1μm〜50μmであるのが好ましい。より好適な平均粒子径は0.1μm〜25μmであり、最も好適な平均粒子径は0.1μm〜10μmである。また、粒子の形状は、通常の粉砕により得られるような不定形粒子でもよく、ゾルゲル法により製造されるような球状粒子でもよい。したがって、塩基性低減処理に供するフルオロアルミノシリケートガラスフィラーについても上記のような粒子性状としておくことが望ましい。
【0072】
一般に、フルオロアルミノシリケートガラスは、シリカとアルミナとの複合酸化物を基本構造としており、ケイ素の一部がアルミニウムで一部置換された構造をとり(その他の多価金属イオンは、この構造の隙間に含まれている)、アルミニウム元素の部位が電気的に負に帯電するため、塩基性を示す。
【0073】
前記(D)成分は、フルオロアルミノシリケートガラスフィラーを処理してその塩基性を低減させたものである。塩基性低減処理を行わないフルオロアルミノシリケートガラスフィラーをそのまま用いた場合には、後述する有機過酸化物を混合してフィラー組成物としたときに、該フィラー組成物の保存中に有機過酸化物が分解してしまい所期の接着強度が得られない。塩基性低減の程度は、フィラー表面に存在する塩基点のうち、酸解離定数pKaが5以上である塩基性点の量が、フィラー1g当たり2mmol/gより少なく、さらに1.5mmol/gより少なくなるように処理するのが好適である。なお、塩基性低減処理前後のフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの塩基量は、メチルレッド等の指示薬を用いて、滴定により調べることが出来る。
【0074】
本発明の歯科用接着剤に用いるフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの塩基性を低減する方法は、高分子化合物でフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの一部又は全部を被覆する方法である。この様な方法によれば、簡単にしかも効率よくフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの塩基性を低減させることが出来る。
【0075】
高分子化合物でフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの表面の一部又は全部を被覆する方法において使用する高分子化合物は、有機過酸化物と反応しない化合物であれば、何ら制限なく用いることができる。
【0076】
好適に使用できる高分子化合物を具体的に例示すると、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(ジオール型)、ポリプロピレングリコール(トリオール型)、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体、ポリテトラメチレンオキシド、ポリ塩化テルフェニル、ポリ塩化ビニル、ポリ(ε―カプロラクトン)、ポリジメチルシラン、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ビスフェノールAカルボナート)、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルエチルエーテル)、ポリ(2−ビニルナフタレン)、ポリ(4−ビニルビフェニル)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリブタジエン、ポリプレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸―2−ヒドロキシエチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルホルマール、(メタ)アクリル酸メチルー(メタ)アクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリ(メタ)アクリル酸メチル、架橋型(メタ)アクリル酸エチル、エチレンー酢酸ビニル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、アクリロニトリルースチレン共重合体等が挙げることが出来る。
【0077】
このなかでも、取り扱いが容易な点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンが好ましい。これらの高分子化合物は単独、又は、2種以上を混合して使用することもできる。
【0078】
上記高分子化合物の平均分子量は特に限定されないが、取り扱い易い理由からフィラー組成物とモノマー組成物の練和性の点から、10,000〜1,000,000の範囲のものが好ましい。また、高分子化合物のフルオロシリケートガラスフィラーに対する処理量(該ガラスを被覆するのに使用する高分子化合物量)は、有機過酸化物の保存安定性及び歯質に対する接着強度等の物性に及ぼす影響を考慮して決定すれば良いが、好ましくはフルオロシリケートガラスフィラー100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲であり、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲であり、特に好ましくは0.2〜3重量部の範囲である。0.05重量部より少ないと塩基性低減処理が低く、10重量部より多いと接着強度が低下したり、練和性に問題が生じる。
【0079】
フルオロアルミノシリケートガラスフィラーの表面の一部又は全部を高分子化合物で被覆する方法は特に限定されないが、(i)高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液にフルオロアルミノシリケートガラスフィラーを浸漬し、分散させたのちに溶媒を留去するか、又は濾過或いはデカンテーション等の方法により取り出し溶媒を除去し、次いで乾燥する方法、(ii) 高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液をフルオロアルミノシリケートガラスフィラーに噴霧し、その後溶媒を除去し乾燥する方法などにより行うことが出来る。
【0080】
高分子を溶解する溶媒は、用いる高分子の種類に応じて該高分子を溶解する溶媒を適宜選択すればよい。好適に使用できる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2―ブタノール、2−メチルー1−プロパノール、2−メチルー2−プロパノール、2−メチルー2−ブタノール、1−ペンタノール、2−プロペンー1−オール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−エタングジオール、1,2−プロパンジオール、1.3−ブタンジオール、グリセロール、1.2.6−ヘキサントリオール等のアルコール類;ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の(環状)エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ベンゼン等の炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0081】
上記(i)の方法で、フルオロアルミノシリケートガラスフィラーを高分子溶液に分散させる方法としては、攪拌、超音波、攪拌と超音波との組み合わせ等が挙げられる。また、上記(i)及び(ii)の方法における乾燥は、箱型乾燥器、トンネル型乾燥器、ハンド型乾燥器、流動乾燥器、気流乾燥器等を用いて行うことができる。乾燥温度、乾燥時間等は特に限定されるものでないが、高分子にあたえる影響が小さいことから、200℃以下で処理することが望ましい。
【0090】
フィラー組成物に使用する(E)有機過酸化物{(E)成分}は、公知のものが何ら制限なく使用することができる。好適に使用できる有機過酸化物を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジt−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ジアセチル、過安息香酸t−ブチル、過イソ酪酸t−ブチル、過酸化ジイソブチル、過カプリル酸t−アミル、過酸化ジデカノイル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を配合して使用することが出来る。これら有機過酸化物の中でも、保存安定性及び取り扱いが容易な点から、ベンゾイルパーオキサイドを用いるのが最も好適である。
【0091】
フィラー組成物における(E)成分の配合量は、(D)成分100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲、特に接着強度の点から、0.2〜5重量部の範囲である。(D)成分100重量部に対する(E)成分の配合量が0.1重量部より少ないと、象牙質の接着強度が低下し、逆に10重量部より多いと機械的強度が低下する。
【0092】
前記フィラー組成物における、前記(D)成分及び(E)成分以外の必須成分は、(F)アリールボレート化合物{(F)成分}又は(G)スルフィン酸或いはその塩類{(G)成分}である。これら(F)成分と(G)成分とは併用することもできる。
【0093】
本発明で(F)成分として好適に使用できるであるアリールボレート化合物としては、下記一般式(2)で示される1分子中に少なくとも1個はホウ素−アリール結合を有するボレート化合物が挙げられる。
【0094】
【化15】
【0095】
{式中、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換の炭素数1〜12(但し置換基の炭素数は含まない。)のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜10(但し置換基の炭素数は含まない。)のアリール基、置換若しくは非置換の炭素数2〜6(但し置換基の炭素数は含まない。)のアラルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数2〜6(但し置換基の炭素数は含まない。)のアルケニル基であり、前記置換基はアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシル基から選ばれる少なくとも1種の置換基であり、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換若しくは非置換の炭素数1〜8(但し置換基の炭素数は含まない。)のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜8(但し置換基の炭素数は含まない。)のアルコキシル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基であり、前記置換基はアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシル基から選ばれる少なくとも1種の置換基あり、L+は、金属陽イオン、4級アンモニウムイオン、4級ピリジニウムイオン、4級キノリニウムイオン又はホスホニウムイオンである。}
ホウ素−アリール結合をまったく有さないボレート化合物は保存安定性が極めて悪く、空気中の酸素と容易に反応して分解するため好ましくない。
【0096】
好適に使用される上記一般式(2)で示されるアリールボレート化合物を具体的に例示すると、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物として、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
【0097】
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基は上記と同様)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0098】
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基は上記と同様)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0099】
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素 、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p−フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5−ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p−ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p−オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(アルキル基は上記と同様)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等が挙げられる。
【0100】
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の点から、1分子中に3個または4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。
【0101】
これらアリールボレート化合物は1種または2種以上を混合して用いることも可能である。
【0102】
本発明に使用する(G)成分は、スルフィン酸、又はその塩である。スルフィン酸の塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、或いはアンモニウム塩を使用することが出来る。
【0103】
好適に使用できるスルフィン酸としては、エタンスルフィン酸、プロパンスルフィン酸、ヘキサンスルフィン酸、オクタンスルフィン酸、デカンスルフィン酸等のアルキルスルフィン酸、シクロヘキサンスルフィン酸、シクロオクタンスルフィン酸等の脂環式スルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、m−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、2.3−ジメチルベンゼンスルフィン酸、3,5−ジメチルスルフィン酸、α―ナフタリンスルフィン酸、β―ナフタリンスルフィン酸を挙げることが出来る。
【0104】
また、好適に使用できるスルフィン酸のアルカリ金属塩としては、上記スルフィン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることが出来、好適に使用できるスルフィン酸のアルカリ土類金属塩としては上記スルフィン酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等を挙げることが出来る。
【0105】
さらに、好適に使用できるスルフィン酸のアミン塩としては上記スルフィン酸のメチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、アニリン塩、トルイジン塩、フェニレンジアミン塩、キシレンジアミン塩等の1級アミン塩;ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、ジブチルアミン塩、ピペリジン塩、N−メチルアニリン塩、N−エチルアニリン塩、ジフェニルアミン塩、N−メチルトルイジン塩等の2級アミン塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、N,N−ジ(β―ヒドロキシエチル)アニリン塩、N,N−ジエチルアニリン塩、N,N−ジメチルトルイジン塩、N,N−ジ(β―ヒドロキシエチル)トルイジン塩等の3級アミン塩を例示することができる。
【0106】
また、スルフィン酸のアンモニウム塩化合物としては、上記スルフィン酸のアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩等を例示することができる。
【0107】
この様なスルフィン酸の塩類を具体的に例示すれば、エタンスルフィン酸ナトリウム、エタンスルフィン酸リチウム、プロパンスルフィン酸ナトリウム、ヘキサンスルフィン酸カルシウム、オクタンスルフィン酸ナトリウム、デカンスルフィン酸ナトリウム、ドデカンスルフィン酸ナトリウム等のアルキルスルフィン酸塩、シクロヘキサンスルフィン酸ナトリウム、シクロオクタンスルフィン酸等の脂環式スルフィン酸塩、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンセンスルフィン酸ナトリウム、ベンセンスルフィン酸マグネシウム、ベンセンスルフィン酸カルシウム、ベンセンスルフィン酸ナトリウム、ベンセンスルフィン酸カリウム、ベンセンスルフィン酸マグネシウム、ベンセンスルフィン酸カルシウム、ベンセンスルフィン酸ストロンチウム、ベンセンスルフィン酸バリウム、ベンセンスルフィン酸ブチルアミン塩、ベンセンスルフィン酸アニリン塩、ベンセンスルフィン酸トルイジン塩、ベンセンスルフィン酸フェニレンジアミン塩、ベンセンスルフィン酸ジエチルアミン塩、ベンセンスルフィン酸ジフェニルアミン塩、ベンセンスルフィン酸トリエチルアミン塩、ベンセンスルフィン酸テトラメチルアンモニウムアンモニウム塩、ベンセンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウム塩、o−トルエンスルフィン酸リチウム、o−トルエンスルフィン酸ナトリウム、o−トルエンスルフィン酸カルシウム、o−トルエンスルフィン酸シクロへキシルアミン塩、o−トルエンスルフィン酸アニリン塩、o−トルエンスルフィン酸アンモニウム、o−トルエンスルフィン酸テトラエチルアンモニウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸バリウム、p−トルエンスルフィン酸エチルアミン塩、p−トルエンスルフィン酸トルイジン塩、p−トルエンスルフィン酸―N−メチルアニリン塩、p−トルエンスルフィン酸ピリジン塩、p−トルエンスルフィン酸アンモニウム、p−トルエンスルフィン酸テトラブチルアンモニウム、β―ナフタリンスルフィン酸ナトリウム、β―ナフタリンスルフィン酸リチウム、β―ナフタリンスルフィン酸ストロンチウム、β―ナフタリンスルフィン酸トリエチルアミン塩、β―ナフタリンスルフィン酸―N−メチルトルイジン塩、β―ナフタリンスルフィン酸アンモニウム、β―ナフタリンスルフィン酸トリメチルベンジルアンモニウム等を挙げることができる。
【0108】
これらスルフィン酸又はその塩類の中でも、得られる硬化体の色調変化や保存時の安定性の点、及び入手の容易さ等から、芳香族スルフィン酸類のナトリウム塩、リチウム塩を用いるのが好適である。
これらのスルフィン酸又はその塩類は単独、又は、2種以上を混合して使用することもできる。
【0109】
前記フィラー組成物における前記(F)成分又は(G)成分の配合量は、(D)成分100重量部に対して0.1〜10重量部である。また、(F)成分と(G)成分とを併用する場合には両者の合計重量が(D)成分100重量部に対して0.1〜10重量部となるように配合する必要がある。(D)成分100重量部に対するこれら成分の配合量が0.1重量部より少ないと、象牙質の接着強度が低下し、逆に10重量部より多いと硬化体の機械的強度が低下したり使用時の硬化時間が短くなり操作性に問題が生じたりする。接着強度、硬化体強度、及び操作性の観点から、上記の様な基準で表した(F)成分及び/又は(G)成分の配合量は0.2〜5重量部であるのが特に好適である。なお、(F)成分及び(G)成分は、硬化時間を調節する目的で、高分子化合物等でカプセル化して用いてもよい。
【0110】
本発明で用いるフィラー組成物には、フィラー組成物とモノマー組成物の練和性を良くするために、(H)球状フィラー{以下、単に(H)成分ともいう。}を配合するのが好適である。
【0111】
上記(H)成分は、必ずしも完全な真球である必要はなく、例えば、走査型電子顕微鏡で粉体の写真をとり、その単位視野内に観察される粒子についてその最大径に直行する方向の粒子径をその最大径で除した平均均斉度が0.6以上のものであれば充分使用することが出来る。
【0112】
(H)成分としての球状フィラーとしては、公知の球状フィラーが特に制限なく用いられる。このようなフィラーは、通常、有機フィラーと無機フィラーに大別される。
【0113】
好適に使用できる代表的な有機球状フィラーを具体的に例示すれば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0114】
また、代表的な無機球状フィラーを具体的に例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。これらもまた、一種または二種以上を混合して用いても何等差し支えない。
【0115】
さらに、モノマー組成物との練和性を改良する目的で、上記の無機球状フィラーの表面を疎水化するほうが好ましい。かかる疎水化処理は特に限定されるものではなく、公知の方法が制限なく採用される。代表的な疎水化処理方法を例示すれば、疎水化剤としてシランカップリング剤、例えばγ―メタクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の有機珪素化合物による処理や、チタネート系カップリング剤を用いる方法、粒子表面に前期重合性単量体をグラフトさせる方法がある。
【0116】
これらのフィラーの中でも、(H)成分としては、硬化体の強度を向上させ、練和性を改善する理由から、球状の疎水処理をした無機フィラーを用いるのが特に好適である。
これらの球状フィラーの粒径は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm〜20μmのものが制限なく使用できる。特に歯質と歯冠用修復物の適合性の観点から、0.01μm〜10μm、更に0.01μm〜5μmの平均粒子径のフィラーを用いるのが好適である。
【0117】
(H)成分の配合量は、特に限定されないが、(D)成分100重量部に対して、3〜100重量部、特に接着強度の点から5〜50重量部であるのが好適である。3重量部以下では、フィラー組成物とモノマー組成物の練和性に効果がなく、又100重量部以上であると、フッ素徐放性が低下する傾向にある。
【0118】
本発明の歯科用接着剤は、基本的に(C)成分である第三級アミン化合物、(E)成分である有機過酸化物、(F)成分であるアリールボレート化合物、及び/又は(G)成分であるスルフィン酸化合物の組み合わせからなる重合触媒を使用するが、物性の調節等のために他のラジカル重合開始剤を使用することもできる。これらラジカル重合開始剤は、その成分に応じて、保存期間中にモノマー組成物が重合してしまわないような形で、液状成分ならばモノマー組成物、固体成分であればフィラー組成物かモノマー組成物に溶解させて配合しても良い。例えば数種類の成分を組み合わせたときに初めて重合触媒として機能するものであれば、構成成分をその性状に応じてフィラー組成物とモノマー組成物に分けて配合することにより、保存期間中の重合を避けることが出来る。
【0119】
このような重合開始剤は通常、化学重合開始剤と光重合開始剤に大別される。化学重合開始剤としては、5−ブチルバルビツール酸/ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド/アセチルアセトン銅等のバルビツール酸誘導体/第四級アンモニウムハライド/銅化合物の組み合わせからなるレドックス型の重合開始剤や、さらに接着強度を向上させる目的で、上記したレドックス型の重合開始剤に酸素や水と反応して重合を開始するトリフェニルボラン等の有機ホウ素化合物、チタノセン誘導体等の有機金属型の重合開始剤も挙げられる。
【0120】
光重合開始剤としては、化合物そのもの自身が光照射にともない分解して重合可能なラジカル種を生成するカンファキノン、ベンジル、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等が好適に使用され、これにN,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等の重合促進剤を加えることも好適である。さらに、色素/光酸発生剤/ボレート類、及び色素/光酸発生剤/スルフィン酸塩類の3元系からなるものが挙げられる。これに使用される色素としては、3−チエノイルクマリン、3−ベンゾイルクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン等のクマリン系色素が好適に用いられる。また、光酸発生剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体が好適に用いられる。ボレート類やスルフィン酸塩類は、(F)成分(G)成分として具体的に例示されたものが使用できる。
【0121】
これらの重合開始剤の添加量は、使用目的に応じて、操作余裕時間や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよい。
【0122】
また、本発明で使用する、モノマー組成物又はフィラー組成物には、必要に応じて、更に公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、重合禁止剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの成分は、フィラー組成物、モノマー組成物のどちらに配合しても良く、その添加量は操作余裕時間や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよい。
【0123】
さらに、本発明で使用する、フィラー組成物には、本発明の歯科用接着剤の性能を低下させない範囲で、増粘剤等を添加することも可能である。増粘剤としてはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子化合物や微粉シリカが例示される。
これらの成分は、保存安定性等に問題がないかぎり、液状成分ならばモノマー組成物、固体成分であればフィラー組成物か、モノマー組成物に溶解させて配合しても良い。
【0124】
本発明の歯科用接着剤におけるモノマー組成物とフィラー組成物との割合は、モノマー組成物100重量部に対してフィラー組成物が100〜900重量部{任意成分の配合量を考慮して、この量比から(A)成分100重量に対する(D)成分の重量を求めると約100〜5000重量部となる。}である必要がある。モノマー組成物100重量部に対するフィラー組成物の重量が100重量部未満では硬化体の機械的強度が低下し、又900重量部を越える場合には歯質への接着力が低下する。モノマー組成物とフィラー組成物の練和性の観点から、上記基準で表したフィラー組成物の配合量は、100〜600重量部、特に150〜400重量部であるのが好適である。
【0125】
本発明の歯科用接着剤の使用方法は特に限定されないが、例えば次のようにして好適に使用することが出来る。
【0126】
すなわち、歯面にモノマー組成物とフィラー組成物分とを混合して得られたペースト状組成物を塗布した後、種々の修復材料を接触させ、ついで接着剤を重合硬化させることにより歯と修復材料とを接着することができる。
【0127】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例中に使用した化合物の略称又は構造を以下に示す。
【0128】
(1) 略号
〔(A)成分の酸性基含有重合性単量体〕
PM:2−メタクリロイルオキシエチル ジハイドロジェンホスフェート
PM2:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェート
AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
MAC−10:11−メタクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸
【0129】
〔(B)成分の水溶性重合性単量体〕
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:3−ヒドロキシプロピルメタクリレート
【0130】
〔(C)成分の第三級アミン化合物〕
DMPT:N,N−ジメチルアミノーp−トルイジン
DEPT:N,N−ジ(2―エタノール)アミノーp−トルイジン
【0131】
〔(I)成分の重合性単量体〕
UDMA:1.6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4,−トリメチルヘキサン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
MTU−6:6−メタクリロイルオキシヘキシルー2−チオウラシル−5−カルボキシレート
4−META:2−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
【0132】
〔(D)成分の塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー〕
F2〜F10:フルオロアルミノシリケートガラスフィラー{トクソーグラスアイオノマーセメントパウダー(トクヤマ社製):以下F1と略記する。}を用い、後述する製造例1〜9に従って調製したフィラー。
【0133】
〔(E)成分の有機過酸化物〕
BPO:過酸化ベンゾイル
IBPO:過酸化イソブチル
【0134】
〔(F)成分のアリールボレート化合物〕
PBNa:テトラフェニルホウ素のナトリウム塩
PBTEOA:テトラフェニルホウ素のトリエタノールアンモニウム塩
3PBBuNBu4:トリフェニルブチルホウ素のテトラブチルテトラメチルアンモニウム塩
【0135】
〔(G)成分のスルフィン酸の塩類〕
PTSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
BSNa:ベンセンスルフィン酸ナトリウム
【0136】
〔(H)成分の球状フィラー〕
G1:、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理球状シリカ−ジルコニア、平均粒子径;0.52μm
【0137】
〔その他の重合触媒〕
CQ:カンファーキノン
【0138】
〔塩基性低減処理用高分子〕
PEG ポリエチレングリコール 平均分子量 20000
PEG−2 ポリエチレングリコール 平均分子量 50000
PEG−3 ポリエチレングリコール 平均分子量 100000
PVA ポリビニルアルコール 平均重合度 3500
PVA−2 ポリビニルアルコール 平均重合度 5000
PST ポリスチレン 平均分子量 300000
PMMA ポリメタクリル酸メチル 平均分子量 200000
PEMA ポリメタクリル酸エチル 平均分子量 200000
【0139】
(2)フルオロアルミノシリケートガラスフィラーの塩基性低減処理
(i)高分子を用いた塩基性低減処理(製造例1〜9)
PEG 1.0gを蒸留水100mlに溶解させ、高分子溶液を調製した。得られた上記溶液にF1 100gを加え、30分超音波処理をすることによって分散させた。次に、溶媒である水を留去し、減圧乾燥(40℃)し、塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー(F2)を得た。
【0140】
F1およびF2についてその塩基性をpKaが5以上である塩基性点の量で評価したところ、その量はF1が4.10mmol/gでF2が1.55mmol/gであり、上記の処理により塩基性が低減されていることが確認された。なお、pKaが5以上である塩基性点の量は、0.01M安息香酸のベンゼン溶液が所定量入った複数のサンプル管(ベンゼン溶液の量を0.5mlから0.5mlづつ増やした複数のサンプル管)のそれぞれにフィラーを0.1g加え、この溶液に、0.01Mのメチルレッド(pKa=5)溶液1滴を添加し、塩基性低減処理したフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの表面を観察し、フィラーの表面が赤色から黄色になる安息香酸溶液量より、pKa=5以上の塩基量を求めた。
【0141】
上記と同様の方法で、塩基性低減剤として表1に示す高分子及び溶媒を用いて、塩基性低減処理フィラーF3〜F10を作製した。
【0142】
【表1】
【0145】
参考例1
後述する参考比較例1に示すように、未処理のフルオロアルミノシリケートガラスフィラーと有機過酸化物を共存させた場合には、保存中に有機過酸化物が分解してしまい、その濃度が低下する。したがって、本発明のフィラー組成物において(C)成分に変えて未処理のフルオロアルミノシリケートガラスフィラーを用いた場合には、長期間保存後にモノマー組成物を組み合わせて歯科用接着剤として使用すると所期の接着強度が得られない。
【0146】
塩基性低減処理したフルオロアルミノシリケートガラスフィラーを用いた場合には、上記のような有機過酸化物の分解が抑制できるかどうかを確認するために次のような測定を行った。
【0147】
すなわち、塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーF2 100重量部にBPO 0.5重量部を混合し、両者が均一に分散しあった混合粉末を調製した。該混合粉末について調製直後および調整後37℃で10日間保存した後に該混合粉末中に含まれるBPOの量を測定した。なお、測定は、該混合粉末0.500gから、アセトニトリル5.000gを用いBPOを抽出し、抽出液を高速液体クロマトグラフ(以下HPLC)を用いて、粉末中に含まれるBPOの濃度を定量することにより行った。HPLCの条件は下記の通りである。
【0148】
溶離液 アセトニトリル/0.1%りん酸水溶液=65/35
流速 1ml/min
保持時間 13.5分
カラム イナートシルODS−2(GLサイエンス社製)
測定結果は、調製直後のBPO濃度が0.500wt%、10日後のBPO濃度が0.47wt%であった。
【0149】
参考例2〜9
参考例1においてF2に代えてF3〜F10を用いる他は参考例1と同様にして測定を行った。その結果及び各フィラーのpKaが5以上である塩基性点の量を表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
参考比較例1
参考例1においてF2に代えて未処理のF1を用いる他は参考例1と同様にして測定を行った。結果を表2に示す。
【0152】
参考比較例においては、10日間保存後ではBPO濃度が調製直後の66%に低下しているのに対し、参考例1〜9のBPO残存率は98〜94%と高い。このことから、(D)成分を用いたフィラー組成物は保存安定性が良好なことが分かる。
【0153】
実施例1
7.0gのPM、13.0gのPM2、50.0gのHEMA、30.0gのUDMA及び0.5gのDMPTからなるモノマー組成物Aを調整した。又、10.0gのF2、1.0gのG1、0.05gのBPO、及び0.10gのPTSNaからなるフィラー組成物aを別個に調整し、使用直前にフィラー組成物とモノマー組成物液とを3:1の比で練和して、歯科用接着剤とした。調製した接着剤を用いて接着強度、フッ素徐放性、及び圧縮強度を測定した。
【0154】
その結果、エナメル質に対して14.3MPa、象牙質に対して12.3MPaの高い歯質接着強度を得た。また、単位面積当たりのフッ素徐放量は4.8μg/cm2であった。圧縮強度は180MPaであった。
【0155】
なお、接着強度、フッ素徐放性、及び圧縮強度は、それぞれ次のようにして測定した。
【0156】
▲1▼ エナメル質、象牙質接着強度測定
屠殺後24時間以内牛前歯を抜去し、注水下、#800のエメリーペーパーで唇面に平行になるようにエナメル質または象牙質平面を削り出した。次にこれらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した後、この平面に直径3mmの孔のあいた両面テープを固定した。この穴に使用直前に調整した前記接着剤を塗布し、ステンレス製アタッチメントを圧接した。
【0157】
上記接着試験片を37℃、湿度100%の恒温層に1時間、37度の水中に24時間浸漬した後、引っ張り試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード2mm/minにて引っ張り、歯牙との引っ張り接着強度(単に「接着強度」ともいう。)を測定した。
【0158】
尚、測定は、それぞれ同一条件で作製した8本の試験片について引っ張り接着強度を測定し、その時の引っ張り接着強度の平均値および標準偏差(S.D.)を以って接着強度とした。
【0159】
▲2▼ フッ素徐放性測定
使用直前に調製した接着剤を直径10mm、高さ1mmのモールドに充填し、37℃湿潤下に1時間放置し硬化体を作製した。得られた硬化体に蒸留水10ml加え、37℃の恒温で、24時間放置した。放置後、蒸留水中に含まれるフッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフを用いて測定し、硬化体単位面積当たりのフッ素徐放量を評価した。イオンクロマトグラフの条件は以下の通りである。
【0160】
溶離液 3.5M NaCO3/1.0M NaHCO3 水溶液
流速 1.2ml/min
保持時間 3.1分
カラム IONPAC AG14/AS14
▲3▼ 圧縮強度測定
使用直前に調製した接着剤を直径4mm、高さ3mmのモールドに充填し、37℃湿潤下に1時間放置し硬化体を作製した。得られた硬化体に蒸留水を加え、37℃の恒温に、24時間放置した後、圧縮試験機(オートグラフ、島津製作所製)を用いてクロスヘッドスピード10mm/minにてセメントの圧縮強度を測定した。
【0161】
尚、測定は、同一条件で作製した4個の試験片について圧縮強度を測定し、その時の圧縮強度の平均値を以って圧縮強度とした。
【0162】
実施例2〜9
表3に示す粉組成のフィラー組成物a〜gを用い、フィラー組成物とモノマー組成物の量比を表4に示すように変えた他は実施例1と同様にして各種測定を行った。なお、表3における各成分の欄の数字はフィラー100重量部に対する配合量(重量部)を表す。その結果を表4に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
・
【0165】
表4に示されるように、本発明の歯科用接着剤の範囲内であれば、フィラー組成物における有機過酸化物、スルフィン酸塩類、アリールボレート化合物の種類によらず、また、モノマー組成物とフィラー組成物の重量比によらず高い接着強度、高いフッ素徐放量、及び高い圧縮強度が得られることが分かる。
【0166】
実施例10〜21
表5に示す組成のモノマー組成物B〜Mを用いる他は実施例1と同様にして各種測定を行った。その結果を表6に示す。
【0167】
【表5】
【0168】
【表6】
【0169】
表6に示されるように、本発明の歯科用接着剤の範囲内であれば、モノマー組成物の組成によらず高い接着強度、高いフッ素徐放量、及び高い圧縮強度が得られることが分かる。
【0170】
実施例22〜27
実施例1においてフィラー組成物aに代えて表3に示すフィラー組成物h〜mを用いる他は実施例1と同様にして各種物性を測定した。その結果を表7に示す。
【0171】
【表7】
【0172】
表7に示されるように、本発明の歯科用接着剤の範囲内であれば、(C)成分として用いるフィラーの種類(塩基性低減処理に用いる低減処理剤の種類)によらず高い接着強度、高いフッ素徐放量、及び高い圧縮強度が得られることが分かる。
【0173】
実施例28〜45
実施例1においてフィラー組成物として表3に示すフィラー組成物a〜vを用い、モノマー組成物として表5に示すモノマー組成物A〜Vを用い、これらを表8に示す組み合わせ及び割合で用いる他は実施例1と同様にして各種物性を測定した。その結果を表8に示す。
【0176】
【表8】
【0177】
表8中、実施例28、29は、球状フィラーを含まないフィラー組成物uを用い、モノマー組成物として表5に示すモノマー組成物A、Bを用いる他は実施例1と同様にして各種物性を測定した結果である。
【0178】
球状フィラーを含むフィラー組成物vを用い、モノマー組成物として表5に示すモノマー組成物Aを用いた実施例30と比較して、硬化体の圧縮強度(実施例28:象牙質 10.3MPa、エナメル質11.7MPa、圧縮強度153MPa)が低くなることが分かる。
【0179】
又、表8中、実施例34、35は、酸性基含有重合性単量体及び水溶性重合性単量体以外の重合性単量体(以下 I成分)を含まないモノマー組成物Oを用い、フィラー組成物として表3に示すフィラー組成物a、lを用いる他は実施例1と同様にして各種物性を測定した結果である。
【0180】
I成分を含むモノマー組成物P、Q、S、を用い、フィラー組成物として表5に示すモノマー組成物aを用いた実施例36、37、39と比較して、歯質に対する接着強度(実施例34:象牙質 10.4MPa、エナメル質11.1MPa)が低くなることが分かる。
【0181】
比較例1〜2
実施例1においてモノマー組成物A100重量部に対するフィラー組成物aの使用量を1000重量部(比較例1)及び50重量部(比較例2)とする他は実施例1と同様にして各種物性を測定した。その結果を表9に示す。
【0182】
【表9】
【0183】
なお、比較例1では、得られた歯科用接着剤は滑らかなペースト状ではなかったので各種物性は測定しなかった。また、比較例2では、フッ素徐放性が著しく低下し、圧縮強度も著しく低下した。
【0184】
比較例3〜8
実施例1において、フィラー組成物aに代えて表3に示すフィラー組成物ad〜aiを用いる他は実施例1と同様にして各種物性を測定した。その結果を表9に示す。
【0185】
表3に示されるように、フィラー組成物における有機過酸化物が、D成分100重量部に対して20重量部(比較例3)、0.05重量部(比較例4)、スルフィン酸塩類が20重量部(比較例5)、0.05重量部(比較例6)、アリールボレート化合物が20重量部(比較例7)、0.05重量部(比較例8)である場合、象牙質・エナメル質に対する接着強度が10MPa以下であり、圧縮強度も150MPa以下であることが分かった。又、単位面積当たりのフッ素徐放量は3.5μg/cm2以上であった。
【0186】
比較例9〜12
実施例1において、モノマー組成物Aに代えて表5に示すモノマー組成物W〜Zを用いる他は実施例1と同様にして各種物性を測定した。その結果を表9に示す。
【0187】
表5記載の組成、及び上記表9の結果に示されるように、モノマー組成物における水溶性重合性単量体が、酸性基含有重合性単量体100重量部に対して600重量部(比較例9)、40重量部(比較例10)、3級アミンが60重量部(比較例11)、0.01重量部(比較例12)である場合、象牙質・エナメル質に対する接着強度が10MPa以下であり、圧縮強度も150MPa以下であることが分かった。又、単位面積当たりのフッ素徐放量は3.5μg/cm2以上であった。
【0188】
【発明の効果】
本発明の歯科用接着剤は、一切の前処理操作がなく、フッ素徐放性とエナメル質・象牙質双方に対して高い接着強度を有する。従って、歯科用接着剤として有効であり、特に金属、セラミックス等の歯冠用修復物と歯質との接着に有効である。
Claims (6)
- (A)酸性基含有重合性単量体、(B)水溶性重合性単量体、(C)第三級アミン化合物、(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー、(E)有機過酸化物、及び(F)アリールボレート化合物又は(G)スルフィン酸あるいはその塩類を含有する組成物からなり、該組成物中の(A)酸性基含有重合性単量体100重量部に対する(B)水溶性重合性単量体、(C)第三級アミン化合物、及び(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの重量割合がそれぞれ50〜500重量部、0.1〜50重量部、及び100〜5000重量部であり、該組成物中の(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー100重量部に対する(E)有機過酸化物、及び(F)アリールボレート化合物又は(G)スルフィン酸あるいはその塩類の重量割合がそれぞれ0.1〜10重量部、及び0.1〜10重量部であり、かつ上記(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーが、その表面の一部又は全部がポリマーで被覆されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーであることを特徴とするペースト状の歯科用接着剤。
- さらに(H)球状フィラーを、(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー100重量部に対して3〜100重量部の割合で含む請求項1記載の歯科用接着剤。
- さらに(I)酸性基含有重合性単量体及び水溶性重合性単量体以外の重合性単量体を、(A)酸性基含有重合性単量体100重量部に対して50〜500重量部の割合で含む請求項1又は請求項2記載の歯科用接着剤。
- 〔I〕(A)酸性基含有重合性単量体、(B)水溶性重合性単量体、(C)第三級アミン化合物、並びに必要に応じて(I)酸性基含有重合性単量体及び水溶性重合性単量体以外の重合性単量体を含んでなる重合性単量体含有組成物と、
〔 II 〕(D)塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー、(E)有機過酸化物、(F)アリールボレート化合物及び/又は(G)スルフィン酸あるいはその塩類、並びに必要に応じて(H)球状フィラーを含むフィラー含有組成物と
の2つの組成物に分割して調製・保存され、使用時に、重合性単量体含有組成物100重量部に対してフィラー含有組成物100〜900重量部の割合で混合してペースト状にして用いることを特徴とする請求項1乃至3記載の歯科用接着剤。 - 歯科用接着剤用であり、使用時まで有機過酸化物と混合した状態で保存されるフルオロアルミノシリケートガラスフィラーであって、その表面の一部又は全部がポリマーで被覆されており、酸解離定数(pKa)が5以上である塩基性点の量が、フィラー1g当たり2mmol/gより少ないことを特徴とする塩基性低減処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラー。
- 高分子化合物を溶媒に溶解させた溶液にフルオロアルミノシリケートガラスフィラーを浸漬し、分散させたのちに溶媒を除去し、次いで乾燥する、請求項5記載のフルオロアルミノシリケートガラスフィラーの製造方法。
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