本発明の球状複合酸化物粒子は、屈折率が1.49〜1.7、より好適には1.49〜1.68、さらに好ましくは1.51〜1.65である。歯牙修復材料に使用される重合性単量体は、後述するようにベンゼン骨格を有するものが多く、これらを硬化させて形成した有機マトリックスの屈折率は、一般に1.50〜1.64、さらには1.51〜1.60の範囲の高めの値になる。本発明の球状複合酸化物粒子は、該歯牙修復材料の硬化体における有機マトリックスと、屈折率が近似した範囲であるため、これを該材料の充填剤として使用すると、得られる歯牙修復材料を用いて形成させた歯牙修復物は、天然歯質に近い透明性を有する審美性に優れるものになる。
なお、本発明において上記球状複合酸化物粒子の屈折率の値は、液浸法により測定した値をいう。
また、本発明の球状複合酸化物粒子は、厚さ2.00±0.03mmに圧縮成形した試料片をJIS T6514に規定されるX線造影性試験に準じた方法らより評価した際に、そのX線不透過性が3.0mmアルミニウム板以上である。このように高いX線透過性を有しているため、これを用いて得られる歯牙修復材料はX線造影性が付与され,予後の診断等において有利なものになる。
ここで、JIS T6514に規定されるX線造影性試験は、X線フィルムを2.0mm以上の厚さの鉛シートの上に置き、フィルム中央に2.0mmの試験片とX線造影性を対比するアルミニウム板を置き、該試験片、アルミニウム板X線フィルムに、40cmの距離から管電圧60kVpのX線を、現像した時に試験片の周囲のフィルムの部分とアルミニウム板の部分の映像が完全に現れるような適切な時間、一般には0.3秒間照射し、現像、定着後、試験片の映像の濃さをアルミニウム板の映像の濃さと比較する試験である。
上記X線造影性試験は、歯科充填用コンポジットレジンにおいて、その硬化体のX線造影性を評価する試験であるが、本発明では、こうしたコンポジットレジン等の歯牙修復材料に該X線造影性を付与している上記球状複合酸化物粒子自体の同性質を評価するのに、この測定方法に準じた方法を適用する。X線造影性を対比するアルミニウム板は、上記JIS T6514に規定される方法では2.0mmのものが使用されるが、本発明では3.0mmのものが使用される。すなわち、本発明では、該JIS T6514に規定されるX線造影性試験に準じた方法により、厚さ3.0mmのアルミニウム板を用いて、試料片のX線造影性を評価するものである。該厚さ3.0mmのアルミニウム板の映像よりも、試験片の映像の方が、より黒色であれば、試験片の方がX線不透過性が強いと評価される。この試験片のX線不透過性の強さをより明瞭に評価するために、アルミニウム板は厚さ2.00±0.03mmのものだけでなく、2.00±0.03mmから5.00±0.03mmまでの範囲で0.1mm間隔で厚みが異なるものを複数用意して、X線不透過性を同時に同じフィルム上で測定し、比較するのが好ましい。この場合において、本発明の球状複合酸化物粒子は、X線不透過性が3.5mmアルミニウム板以上であるのが特に好ましい。
また、上記JIS T6514に規定されるX線造影性試験において使用する試料片は、厚さ2.0±0.1mmの歯科充填用コンポジットレジンの硬化体であるが、本発明では、厚さ2.00±0.03mmに圧縮成形した球状複合酸化物粒子の圧縮成形体を用いる。この球状複合酸化物粒子の厚さ2.00±0.03mmの圧縮成形体は、該球状複合酸化物粒子を、1cm×1cm以上の形状の型に入れ、例えば手動油圧プレス機を用いて、厚さ2.00±0.03mmになるようプレス成形し、1cm×1cmに切り出すことにより作製する。
測定に供するX線発生装置は、JIS Z4711の規定に適合する診断用一体型X線発生装置であり、管電圧60kVpで1.5mmのアルミニウム板を全透過する能力のものである。
本発明の球状複合酸化物粒子は、シランカップリング剤により表面処理されている。該シランカップリング剤による表面処理により、上記充填材粒子は、歯科修復材料中において、重合性単量体が重合して形成される硬化体との界面強度等に優れたものになる。また、後述するように、本発明の球状複合酸化物粒子は、通常、シリカと、X線不透過性の金属酸化物との複合酸化物により形成されているが、シランカップリング剤は該シリカが有するシラノール基と縮合反応することにより、該シラノール基に起因した酸点を低減させる効果も発揮している。
本発明の球状複合酸化物粒子の最大の特徴は、前記したようにこれが配合される歯科修復材料等の有機マトリックスに近似した屈折率と、高いX線不透過性を有する粒子でありながら、強酸点を含めて、その酸点が極めて少ないことにある。すなわち、上記したように、斯様な屈折率とX線不透過性の性状を有する複合酸化物粒子の表面には、これを構成するシリカおよび金属酸化物に起因して酸点が多数に存在する。このうちシリカのシラノール基に由来する酸点は上記したようにシランカップリング剤による表面処理で低減可能であるが、それだけでは、金属酸化物に由来した強酸点が残存してしまう。こうした状況にありながら、本発明の充填剤粒子は、この金属酸化物に由来した強酸点も著しく低減されている新規なものであり、これを充填剤として用いて製造される歯科用修復材料は、前記した酸点に起因する種々の不具合が大きく改善されたものになる。
本発明において、上記球状複合酸化物粒子の酸点の少なさは、無水トルエン中における、メチルレッド滴下前後のΔa*値の小ささにより表される。シラノール基やそれよりも強い酸点が存在すると、メチルレッドはオレンジ色から赤紫色に呈色するため、その変化をΔa*値として測定する。本発明の複合酸化物粒子は、このメチルレッド滴下前後のΔa*値が10以下しかなく、好ましくはこの値を7〜2の小さい値にすることもできる。
ここで、メチルレッドを用いた上記酸点の測定は、常法に従えばよいが、通常は、次の方法により実施する。すなわち、まず、複合酸化物粒子を100℃で3時間以上乾燥後、五酸化ニ燐を収容したデシケーター中にて保管し、その1gをサンプル管ビンに入れ、次いで、無水トルエン3gを入れて激しく振盪し、凝集物の無い様に分散させる。分散後、サンプル管ビンを静置し、複合酸化物粒子を沈降させる。完全に沈降した後、予め白背景にてスタンダードを測定しておいた色差計の測定孔がサンプル管ビンの底の中心に位置するように置き、黒背景にて色差を測定し、このときのa*値をa* nbとする。色差測定後、該サンプル管ビンに、遮光下で保存した0.004mol/lのメチルレッドの無水トルエン溶液を一滴(約0.016g)加え、同様に振盪、静置した後に色差を測定し、このときのa*値をa* mbとし、メチルレッド溶液滴下後のa*値をa* maとし、下記式
Δa* m=a* ma−a* mb
よりΔa* mを求める方法である。
上記説明した各物性を備えた複合酸化物粒子は、歯牙修復材料の充填材等として使用された際にペーストの粘度を過度に上昇させないために、球状のものが使用される。ここで、本発明において、粒子が球状とは、略球状まで含んだ概念であり、必ずしも完全な真球である必要はない。一般には、走査型電子顕微鏡で粒子の写真を撮り、その中から任意に30個を選定し、それぞれの粒子について、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で徐した平均均斉度が0.6以上、好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上のものであればよい。
この他、本発明の球状複合酸化物粒子は、歯牙修復材料等の用途に使用することを考慮すると、その平均粒子径が0.03μm〜100μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることが特に好ましい。また比表面積も特に限定されないが、一般的には、0.1〜200m2/gであり、好適には1〜50m2/gである。
以上のような特徴的な性状を有する本発明の球状複合酸化物粒子は如何なる方法により製造したものであっても良いが、具体的には以下の2法により製造することができる。すなわち、第一製造方法としては、a)粒子の屈折率が1.49〜1.70、好適には1.51〜1.65であり、
b)厚さ2.00±0.03mmの厚さに圧縮成形した試料片をJIS T6514に規定されるX線造影性試験に準じた方法により評価した際に、そのX線不透過性が3.0mmアルミニウム板以上である、
シリカとX線不透過性の金属酸化物との複合酸化物からなる球状複合酸化物粒子を、
2000〜3000℃で処理した後、シランカップリング剤により表面処理する方法である。
また、第二製造方法としては、a)粒子の屈折率が1.50〜1.71、好適には1.52〜1.66であり、
b)厚さ2.00±0.03mmの厚さに圧縮成形した試料片をJIS T6514に規定されるX線造影性試験に準じた方法により評価した際に、そのX線不透過性が3.0mmアルミニウム板以上である、
シリカとX線不透過性の金属酸化物との複合酸化物からなる球状複合酸化物粒子
の表面を、シリカにより3nm以上且つ該粒子半径の40%以下の厚みで被覆し、得られたシリカ被覆粒子を、シランカップリング剤により表面処理する方法である。メチルレッド滴下前後のΔa*値が特に好ましい7〜2の範囲である球状複合酸化物粒子を製造可能であるという理由等から、第一製造方法よりも、第ニ製造方法の方がより好ましい。
これらの表面処理された球状複合酸化物粒子において、シリカと複合化させるX線不透過性の金属酸化物は、シリカと複合化可能な金属酸化物であって、屈折率が1.60〜2.60であり、且つそのX線不透過性が厚さ0.10mm±0.05mmに成形した試料片に0.5オングストロームのX線を照射したときのX線透過性が60%以下のものが使用される。ここで、金属酸化物の屈折率は、前記球状複合酸化物粒子の屈折率と同様に液浸法により測定した値をいうが、空気中の水分に対して不安定な金属酸化物であり、屈折率測定の困難な場合は、該金属酸化物とシリカの複合酸化物とし、安定化した物の屈折率から、該金属酸化物の屈折率を見積もった値を用いてもよい。この値の具体値は、例えば山根正之著、「セラミックス基礎講座4 はじめてガラスを作る人のために」、内田老鶴圃出版、発行年1989年、90〜97ページ等に開示されており、この値を適宜に採用すればよい。本発明において、この屈折率の値は、X線不透過性を付与するために複合酸化物粒子を歯牙修復材料に多量に配合可能なように、1.60〜2.40であるのがより好ましい。
一方、金属酸化物のX線透過性は、次のようにして測定する。すなわち、試験片としては、例えば10mm×10mm形状の型に入れ、例えば手動油圧プレス機により形成させた、厚さ0.10±0.05mmの金属酸化物の膜状物を用いる。そして、波長0.5オングストロームのX線を発生し得る適当な発生源(例えばタングステン球管)を用い、該金属酸化物の膜状物を透過させない上記波長のX線強度(I0)と、透過させた同波長X線強度(I)を測定することで、下記式
X線透過性(%)=100×I/I0
より計算された値として求める。I/I0は下記式
I/I0=exp(−μρx)
μ=ΣμiWi
ρ:酸化物の密度(gcm−1)
x:酸化物の厚さ(cm)
μ:質量吸収係数(cm2g−1)
μi:成分元素iの0.5オングストロームにおけるX線質量吸収係数
Wi:成分元素iの重量分率
により計算して求めることもできる。
ここで、酸化物密度(ρ)は、比重法にしたがって実測値によって求めてもよく、測定が困難な場合は該比重法によって求められた公知の文献値を用いても良い。また、シリカと複合酸化物を成した場合のモル容積から計算される値も、実質的に同じ値になるため代用できる。具体的には、下記式
ρ=Mi/Vi
Mi:化学式量(g/mol)
Vi:モル容積(cm3/mol)
により計算して求めることができる。このようなモル容積は組成比の異なる幾つかの複合酸化物から実験的に求められたものとして示される文献値を利用すればよく、例えば、前記した「セラミックス基礎講座4 はじめてガラスを作る人のために」に記載されるアッペンによる加成性因子等に示されている。また、μiの値は公知の文献値を利用すればよい。例えば、日本化学会編、「化学便覧基礎編II改訂3版」、出版 丸善株式会社 、発行年1984年、634〜645ページ等である。
こうしたシリカと複合化する金属酸化物のX線透過性は、好ましくは50%以下、特に好ましくは30%以下であるのがより好ましい。
このようなX線不透過性の金属酸化物としては、例えば、SrO、BaO、ZrO2、HfO2、La2O3、Y2O3、ZnO、Sb2O3等が挙げられ、このうち、X線不透過性に特に優れ、強酸点が多数形成され、本発明の効果が顕著であることから、ZrO2、HfO2、La2O3、Y2O3、ZnOが好ましい。また、金属イオンの溶出のし難さの観点からは、ZrO2、HfO2等の3価以上の価数を持つ金属の酸化物が好ましい。後述するゾルゲル法による複合酸化物粒子の製造方法における原料である金属アルコキサイドの入手容易さからは、ZrO2が最も好ましい。これらシリカと結合可能な金属酸化物は同一複合酸化物中に2種類以上混合して用いても良い。
複合酸化物粒子中におけるこれら金属酸化物の量は、特に制限されず、用いる重合性単量体や、該重合性単量体が硬化した後の屈折率に合わせればよい。より具体的には第一製造方法に用いる粒子であれば屈折率が1.49〜1.70になるようにし、また、第ニ製造方法に用いるものであれば屈折率が1.50〜1.71になるように含有させれば良い。例えば、第ニ製造方法に用いる粒子であれば、シリカが30〜98モル%、より好適には50〜92モル%であり、該金属酸化物が70〜2モル%、より好適には50〜8モル%である範囲から採択されるのが普通である。
なお、この複合酸化物粒子には、前記屈折率とX線透過性の要件を満足しない、他の金属酸化物、具体的には、Li2O、Na2O等のアルカリ金属酸化物や、B2O3、TiO2等も、効果に大きな影響を与えない範囲で少量配合しても良い。一般には、その配合量は全体の10モル%以下、より好ましくは3モル%以下であるのが望ましい。
前記したとおりこの複合酸化物粒子は球状をしており、こうした球状複合酸化物粒子は、如何なる方法により製造しても良いが、例えば、溶射法、火炎分解法、ゾルゲル法等により製造される。歯科用として好適な粒子径のそろった球状粒子を得やすい点で、ゾルゲル法で製造することが好ましい。該ゾルゲル法で球状粒子を製造する方法としては、例えば、前記特開昭59−54616号公報、特開昭60−4561号公報、特開昭63−159214号公報、特開昭63−40717号公報等に詳細に説明されている。
ゾルゲル法については、後述するシリカによる表面被覆の手法としても詳述するが、これらの球状複合酸化物粒子を製造するための方法について、簡単に述べておくと、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4等のケイ素のアルコキサイド、或いはその部分加水分解物と、Ba(OC3H7)2、Ca(OC3H7)2、Al(OC3H7)3、Y(OC3H7)3、Sr(OC3H7)2、Sn(OCH3)2、Sb(OC3H7)3、La(C3H7)3、Zr(OC4H9)4或いはHf(OC4H9)4等の、その金属酸化物が前記性状を満足するものになる金属のアルコキサイドとの混合物を、加水分解の後、重縮合させる方法である。
なお、ゾルゲル法により製造された球状複合酸化物粒子は、緻密な酸化物粒子とするために、700℃から1500℃の温度で焼成しても良い。
上記した球状複合酸化物粒子は、前述の通りその表面に、シリカのシラノール基に由来する酸点と他の金属酸化物に由来した強酸点が、それぞれ多数に存在する。このうち該シラノール基に由来する酸点は、前記したメチルレッド滴下前後のΔa*値を測定することにより、その存在量が確認でき、これらはシランカップリング剤による表面処理で低減させることが可能である。
一方、他の金属酸化物に由来した強酸点は、前記シラノール基に由来した酸点の測定方法において、メチルレッドに代えて、4−フェニルアゾナフチルアミンを用いた同様の測定を行うことにより、その存在の程度を表すことができる。すなわち、4−フェニルアゾナフチルアミンは、シラノール基のように酸強度がpKa4.1〜4.3程度の酸点が存在していても呈色せず、前記金属酸化物に由来するような酸強度がpKa4.0以下の強酸点が存在して呈色する。よって、この4−フェニルアゾナフチルアミン滴下の前後の色差を、滴下前のa*値をa* nbとし、滴下後をa* naとして、下記式
Δa* n=a* na−a* nb
よりΔa* mを求め、その強酸点の存在の程度を表すことができる。評価することができる。
しかして、この強酸点は、上記シランカップリング材による表面処理では完全に消失できないものであり、前記説明した、本発明の表面処理された球状複合酸化物粒子を製造するためには、該複合酸化物粒子に対して表面処理を施す前に、該金属酸化物に由来した強酸点の低減処理を施すことが必要になる。これにより、前記した強酸点の存在量が少ない球状粒子として製造することが可能になる。
この強酸点の低減処理法としては、前記した第一製造方法と第ニ製造方法で各施している2つの方法が考えられる。このうち、第一製造方法で実施しているのは、球状複合酸化物粒子を2000〜3000℃で熱処理する方法である。この高温加熱により、該複合酸化物粒子を構成する他の金属酸化物は、結晶性が高まり、その強酸点が著しく減少する。一方で、シリカに由来するシラノール基も、こうした加熱処理である程度には減少するのが普通であるが、シランカップリング剤と結合するために必要十分量のシラノールは残留する。したがって、この第一製造方法によれば、前記説明した本発明の表面処理された球状複合酸化物粒子を製造するのに好適な中間体粒子として、a)屈折率が1.49〜1.70であり、
b)厚さ2.00±0.03mmに圧縮成形した試料片をJIS T6514に規定されるX線造影性試験に準じた方法により評価した際に、そのX線不透過性が3.0mmアルミニウム板以上であり、且つ
d’)無水トルエン中において、4−フェニルアゾナフチルアミン滴下前後のΔa* n値が15以下であり、無水トルエン中において、メチルレッド滴下前後のΔa* m値が10以上である、
シリカとX線不透過性の金属酸化物との複合酸化物からなる球状複合酸化物粒子が得られる。
上記第一製造方法における球状複合酸化物粒子の熱処理温度は2300〜2800℃がより好ましい。また、加熱処理時間は、温度や方法により異なるが、焼成炉中で加熱する場合、十分に効果を発揮させようとすると2時間以上は設定することが好ましく、特に、2〜8時間設定するのが好ましい。この加熱処理は、上述のように焼成炉中に球状複合酸化物粒子を収容して実施しても良いが、粒子同士が焼結する虞もあるため、予め液中に分散させた該粒子を火炎中に噴霧する方法により実施するのが好ましい。
一方、強酸点の低減させるもう一つの方法は、前記複合酸化物粒子の表面を、シリカにより3nm以上且つ該粒子半径の40%以下の厚みで被覆する方法である。このようにシリカの薄層で被覆してやれば、上記強酸点は埋没し、製造された充填材粒子を歯科修復材用途に供した場合において、有機マトリックスの変質を始めとした前記した種々の不具合を引き起こす心配がなくなる。また、このような薄層であれば、粒子の屈折率の低下は僅かであり、シリカ被覆球状複合酸化物粒子の屈折率は前記本発明で特定した範囲内のものになる。したがって、この第ニ製造方法によれば、前記説明した本発明の表面処理された球状複合酸化物粒子を製造するのに好適な中間体粒子として、表面がシリカにより3nm以上且つ該粒子半径の40%以下の厚みで被覆されてなる、シリカとX線不透過性の金属酸化物との複合酸化物からなるシリカ被覆球状複合酸化物粒子であって、
a)屈折率が1.49〜1.65であり、
b)厚さ2.00±0.03mmに圧縮成形した試料片をJIS T6514に規定されるX線造影性試験に準じた方法により評価した際に、そのX線不透過性が3.0mmアルミニウム板以上であり、且つ
d’)無水トルエン中において、4−フェニルアゾナフチルアミン滴下前後のΔa* n値が15以下であり、無水トルエン中において、メチルレッド滴下前後のΔa* m値が10以上である
シリカ被覆球状複合酸化物粒子が得られる。
この第二製造方法において、シリカの被覆層の厚みが3nmより薄いと、強酸点を埋没させる効果が低減する。他方、このシリカの被覆層の厚みが該粒子半径の40%より厚くなると、このシリカの被覆層の影響により粒子全体の屈折率の低下量が大きくなる。強酸点の埋没効果をより高め、且つシリカの被覆層による屈折率低下の影響をより低減させる観点からは、シリカの被覆層の厚みは5nm〜該粒子半径の30%であるのが特に好ましい。
なお、上記シリカによる被覆層は、シリカの単独層であるのが最も好ましいが、得られる中間体粒子のΔa* nの値及びΔa* mの値が上述の範囲に入る限りにおいて、他の金属酸化物が少量含有されていても許容される。例えば、表面に存在する酸点がシリカと比較して
である、Li2O、Na2O等のアルカリ金属酸化物であれば、10モル%まで含有させても良い。一方、表面に強酸点が生じてしまう、TiO2等のX線不透過性の金属酸化物は、極力含有されないのが好ましく、含有されていたとしても、通常、その上限は5モル%であり、好ましくは1モル%以下である。
このように複合酸化物粒子の表面をシリカにより被覆する方法は、公知の方法が何ら制限なく利用できる。例えば、球状複合酸化物粒子の表面に該複合酸化物粒子より小さなシリカ粒子を、静電的引力や、機械手法により吸着させる方法や、ゾルゲル法により該球状複合酸化物の表面に他のシリカを成長させる方法等がある。均一なコーティング膜が得られることからゾルゲル法が好ましい。
ゾルゲル法とは、金属アルコキサイドを加水分解の後、重縮合させることにより、金属酸化物を成長させる方法である。ゾルゲル法により球状複合酸化物粒子にシリカを被覆する具体的方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、アンモニア、メチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等で塩基性にした、メタノール、エタノール等のアルコール、或いは他の水と混合可能な水性有機溶媒中に、球状複合酸化物粒子を超音波等で分散させ1〜20質量部の分散液とする。或いは、前記した、ゾルゲル法により塩基性溶媒中で調製した球状複合酸化物粒子を、該塩基性溶媒から分離せずに、そのまま分散液として用いてもよい。
塩基性溶媒中でゾルゲル法により調製した、該分散液にSi(OCH3)4、Si(OC2H5)4等のテトラアルコキシシラン又はその部分加水分解物、又はこれらのアルコール等の有機溶媒溶との混合液を滴下する。滴下後、10分から2時間撹拌を続け、撹拌後ろ過によりシリカで被覆された球状複合酸化物粒子が得られる。更に、より緻密なシリカコートとするために700℃から1500℃の温度で焼成することが好ましい。
得られたシリカ被覆球状複合酸化物粒子において、そのシリカ被覆層の厚みを測定する方法は、一般にX線不透過性を有する金属酸化物は、シリカに比べて電子線を透過しにくいため、シリカ被覆球状複合酸化物粒子を、透過型電子顕微鏡にてその透過像を撮影することで、測定すればよい。即ち、この場合、複合酸化物粒子部分は、シリカ単体に比べて電子線を透過しにくいため濃い影となって撮影され、一方その表面のシリカ被覆層はより淡い影となって撮影されるため、この淡い影となって撮影された部分の厚みを測定することで、シリカ被覆層の厚みが算出される。また、シリカ被覆を施す前の球状複合酸化物粒子の粒子径を、走査型電子顕微鏡等で測定しておき、シリカ被覆後に同粒子径を同方法で測定し、その差から被覆層の厚みを算出する方法によっても、シリカ被覆層の厚みを求めることができる。
上記説明した第一製造方および第二製造方法により強酸点の低減させた球状酸化物粒子は、無水トルエン中において、4−フェニルアゾナフチルアミン滴下前後のΔa* n値が15以下であり、無水トルエン中において、メチルレッド滴下前後のΔa* m値が10以上の性状を有するものになる。ここで、Δa* nの値は、該中間体粒子を用いて製造した複合酸化物粒子を含む重合性組成物の保存安定性と良く相関し、該値が低いほど保存安定性が向上する。また、有機マトリックスの変質や、該粒子同士の凝集、更には歯牙修復材料に含有されるその他の微量成分の該粒子表面への吸着等も低減できるようになる。これらの効果の良好さを勘案すると、Δa* nの値は−2〜15の範囲であるのが好ましく、さらには−2〜10の範囲であるのが好ましく、最も好ましくは−2〜7の範囲である。
一方、この強酸点の低減させた球状酸化物粒子において、メチルレッド滴下前後のΔa* m値の具体的値は、後述のシランカップリング剤の反応性を勘案すれば、10〜40が好ましく、特に13〜40が好ましく、さらに15〜40が最も好ましい。この中間体粒子を後述するシランカップリング処理すれば、前記したとおりこのシラノール基に由来する酸点も、本発明が規定するメチルレッド滴下前後のΔa*値で示す要件を満足するものになり、かくして本発明が特定する表面処理された球状複合酸化物粒子が得られるものになる。
上記中間体粒子のシランカップリング処理において使用するシランカップリング剤は、公知の物が何ら制限なく利用可能であり、具体的に例示すると、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−(ペンタフルオロフェニル)プロピルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、(ドデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アセトキシメチルトリメトキシシラン、アセトキシメチルトリエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−ベンゾイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)クリロオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)クリロオキシメチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)エトキシシラン、6−(メタ)アクリルオキシヘキシルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリルオキシウンデカノイルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリルオキシウンデカノイルトリエトキシシラン、11−(メタ)アクリルオキシウンデカノイルメチルジメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ビス[(3−メチルジメトキシシリル)プロピル]ポリプロピレンオキシド、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビストリエトキシシリルメタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)−1,7−オクタジエン、1,4−ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン、1,3−ジオクチルテトラメトキシジシロキサン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、3−(ペンタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、11−ブロモウンデシルトリメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン、[(クロロメチル)フェニルエチル]トリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリ−n−プロポキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ヨードメチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−エチル−3−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチルオキセタン、3−メチル−3−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチルオキセタン等が挙げられる。
特に得られる硬化体の強度がより高く、マトリックスとの馴染みがよい点から該シランカップリング剤分子中に重合性官能基を有するものが好適に使用される。このようなシランカップリング剤としては、ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤として3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)クリロオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)クリロオキシメチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)エトキシシラン、6−(メタ)アクリルオキシヘキシルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリルオキシウンデカノイルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリルオキシウンデカノイルトリエトキシシラン等が挙げられ、また、カチオン重合性官能基を有するシランカップリング剤としては、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−エチル−3−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチルオキセタン、3−メチル−3−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチルオキセタン等が挙げられる。これらシランカップリング剤は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
これらシランカップリング剤を用いて中間体粒子を処理する方法は、従来公知の方法が制限なく利用可能であり、湿式で行っても乾式で行ってもよい。湿式で行う場合には、シランカップリング剤を溶媒に溶解しておき、それを中間体粒子に噴霧や滴下する方法、中間体粒子を溶媒に分散させておき、そこへシランカップリング剤を溶媒に溶解した溶液、あるいは溶媒に溶解せずにそのままの状態で加える方法などが使用できる。中間体粒子の表面がシランカップリング剤で均一に処理されやすい点で、湿式法で混合することが好ましい。
該湿式法としてより好ましい方法を具体的に例示すると、まず中間体粒子を、メタノール等のアルコール類や塩化メチレン等の有機溶媒中、或いは水中に分散させ、中間体粒子の濃度が5〜50質量%の懸濁液を調製する。該分散に際してはボールミル、超音波等を用いればよい。ついで、該懸濁液にシランカップリング剤を所定量加える。該シランカップリング剤はそのまま加えても、溶液で加えてもよい。
シランカップリング剤を中間体粒子の懸濁液に加える前に、酸性又は塩基性の溶液中で加水分解してシラノール基を生じさせておいたり、あるいは上記懸濁液を酸性又は塩基性にしておき、混合後に加水分解させることも好ましい。該加水分解に際して、溶液及び/又は懸濁液を酸性にするためには酢酸、トリフルオロ酢酸、或いは塩酸等の酸を用いればよく、塩基性にするためには、アンモニアやアミン類を用いればよい。また、シランカップリング剤を加えた懸濁液は、室温〜用いた溶媒の沸点以下の温度で1〜300分(好ましくは10〜180分)ほど攪拌し、その後、乾燥させることで溶媒をとりのぞけばよい。当該乾燥方法は、特に制限されるものではなく、公知の乾燥方法を採用でき、具体的には、送風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、スプレードライによる乾燥等、及びこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
これらシランカップリング剤の使用量は、シランカップリング処理後のΔa* mの値が前記の範囲内になる量であれば何ら制限は無い。一般的に好ましい範囲は、用いる中間体粒子の比表面積と、シランカップリング剤の被覆面積で決めることができる。即ち、粒子の比表面積をXm2/g、シランカップリング剤の被覆面積Ym2/g、用いる粒子をxg、用いるシランカップリング剤をygとしたときYy/Xxの値が0.5〜2になるように用いればよく、より好ましくは0.7〜1.5最も好ましくは0.9〜1.3の範囲である。
また、粒子の比表面積はBET法等で測定した値を用いればよく、シランカップリング剤の被覆面積は、下記式
より計算して求めることができる。
このようにして製造される、表面処理された球状複合酸化物粒子は、歯牙修復材料用充填材粒子として好適に使用される。この場合において、歯牙修復材料に用いる重合性単量体は公知の物が何ら制限無く利用できる。例えば付加重合型の重合性単量体として、ビニルアルコールのエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリレート類、スチレン類、α―シアノアクリレート類、マレイン酸エステル類、無水マレイン酸、フマル酸エステル類、塩化ビニル等が、開環重合性モノマーとして、エポキシ類、オキセタン類、テトラヒドロフラン、オキセパン、ビシクロオルトエステル類、スピロオルトエステル類の双環状オルトエステル化合物、スピロオルトカーボネート、環状カーボネート、1,3,5−トリオキサン、1,3−ジオキソラン、オキセパン、1,3−ジオキセパン、4−メチル−1,3−ジオキセパン、1,3,6−トリオキサシクロオクタン、2,6−ジオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジオキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン等が挙げられる。中でも、歯科用途として見た場合、重合速度の観点から、ラジカル重合性、或いはカチオン重合性の単量体が好ましい。特に好ましいラジカル重合性単量体としては(メタ)アクリレート類が挙げられ、また特に好ましいカチオン重合性単量体としては、エポキシ類、オキセタン類が挙げられる。
ラジカル重合性単量体として好適な(メタ)アクリレート類を具体的に例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
一方、カチオン重合性単量体として好適なオキセタン類を例示するとトリメチレンオキサイド、3−メチル−3−オキセタニルメタノール、3−エチル−3−オキセタニルメタノール、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3,3−ジエチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシ)オキセタン等の1つのオキセタン環を有すもの、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)ベンゼン、2,2′−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)ビフェニール、4,4′−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)ビフェニール、4,4′−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシメチル)ビフェニール、ビス[4−(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)フェニル]メタン、ビス[2−(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)フェニル]メタン、[2−(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)フェニル] [4−(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)フェニル]メタン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等、あるいは下記に示す化合物
等のオキセタン環を2つ以上有す化合物が挙げられる。
特に得られる硬化体の物性の点から、単量体1分子中にオキセタン環を2つ以上有するものが好適に使用される。
同様にエポキシ化合物を具体的に例示すると、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、ブタジエンモノオキサイド、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール、2−メチルグリシドール、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、グリシジルプロピルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロオクテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、シクロドデカンエポキシド、エキソ−2,3−エポキシノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキシド、リモネンオキサイド、スチレンオキサイド、(2,3−エポキシプロピル)ベンゼン、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジル2−メチルフェニルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−クロロフェニルグリシジルエーテル、グリシジル4−メトキシフェニルエーテル等のエポキシ官能基を一つ有するもの、また、1,3−ブタジエンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンメタノールジグリシジルエーテル、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルピメレート、ジグリシジルスベレート、ジグリシジルアゼレート、ジグリシジルセバケート、2,2−ビス[4−グリシジルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−グリシジルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシド、リモネンジエポキシド、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)グルタレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)スベレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ゼレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)セバケート、1,4−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシメチル)ビフェニル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)スルホン、メチルビス[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]フェニルシラン、ジメチルビス[(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メチル]シラン、メチル[(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)メチル][2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]シラン、1,4−フェニレンビス[ジメチル[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]]シラン、1,2−エチレンビス[ジメチル[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]]シラン、ジメチル[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]シラン、1,3−ビス[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、2,5−ビシクロ[2.2.1]ヘプチレンビス[ジメチル[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]]シラン、1,6−へキシレンビス[ジメチル[2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)エチル]]シラン等のエポキシ官能基を二つ有する化合物、或いはグリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル、更に
等のエポキシ官能基を三つ以上有するものが挙げられる。これらエポキシ化合物は、複数種のものを併用しても良い。
特に得られる硬化体の物性の点から、1分子中にエポキシ官能基を2つ以上有するものが好適に使用される。
これらのカチオン重合性単量体は単独、または二種類以上を組み合わせて用いることができる。とりわけ、1分子平均a個のオキセタン官能基を有するオキセタン化合物をAモルと、1分子平均b個のエポキシ官能基を有するエポキシ化合物をBモルとを混合して用いた場合、(a×A):(b×B)が90:10〜45:55の範囲になるように調製したものが、硬化速度が速く、水分による重合阻害を受けにくい点で好適である。
また、その他同一分子内にラジカル重合性官能基とカチオン重合性官能基を併せ持つ重合性単量体を用いてもよい。このような重合性単量体の具体例を挙げると、グリシジルオキシ(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチルオキセタン−3−イル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記重合性単量体は2種類組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の球状複合酸化物粒子を、上記重合性単量体と組み合わせて硬化性組成物として用いる場合には、該組成物を重合硬化させるために、硬化剤が配合されていることが好ましい。特に硬化剤として、上記(メタ)アクリレート類を重合硬化させるためにはラジカル重合開始剤が配合されていることが好ましい。一方、オキセタン類、エポキシ類を硬化させるためには、カチオン重合開始剤が配合されていることが好ましい。
(メタ)アクリレート類を重合硬化させるためのラジカル重合開始剤は特に限定されるものではなく、公知の如何なるラジカル重合開始剤でもよく、紫外線或いは可視光、赤外線を照射することで重合開始種を発生させることのできる光ラジカル重合開始剤(組成)の他、非光照射下において、2種、或いはそれ以上の化合物の反応によって、重合開始種を発生させることのできる所謂化学重合開始剤組成、或いは加熱によって重合開始種を発生させることのできる熱重合開始剤(組成)等が利用できる。中でも、口腔内で硬化させる場合が多い歯科用途では光ラジカル重合開始剤(組成)、又は化学重合開始剤組成が好ましく、混合操作の必要が無く簡便な点から、光ラジカル重合開始剤(組成)が好ましい。このような光ラジカル重合開始剤の具体例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノ)−2−ブタノ−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9−フルオレノン、3,4−ベンゾ―9−フルオレノン、2―ジメチルアミノ―9−フルオレノン、2−メトキシ―9―フルオレノン、2−クロロ―9−フルオレノン、2,7−ジクロロ―9―フルオレノン、2−ブロモ―9―フルオレノン、2,7−ジブロモ―9―フルオレノン、2−ニトロ−9−フルオレノン、2−アセトキ−9−フルオレノン、ベンズアントロン、アントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ジメチルアミノアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,5−ジクロロアントラキノン、1,2−ジメトキシアントラキノン、1,2−ジアセトキシ−アントラキノン、5,12−ナフタセンキノン、6、13−ペンタセンキノン、キサントン、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、9(10H)−アクリドン、9−メチル−9(10H)−アクリドン、ジベンゾスベレノン等のジアリールケトン類、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、アセチルベンゾイル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン類、3−ベンゾイルクマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)7−メトキシ−3−クマリン、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3,3’−クマリノケトン、3,3’−ビス(7−ジエチルアミノクマリノ)ケトン等のケトクマリン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルオキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのビスアシルホスフィンオキサイド類、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等のチタノセン類等が使用できる。中でも、370〜500nmに吸収を持つものが好適に用いられる。
なお、光ラジカル重合開始剤には、しばしば還元性の化合物が添加されるが、その例としては、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N−トリルジエタノールアミン、3−ジメチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、ジメチルアミノアセトフェノン、ジメチルアミノベンズアルデヒドなどの第3級アミン類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などの含イオウ化合物、テトラフェニルホウ酸、テトラキス(p−フロルオロフェニル)ホウ酸、ブチルトリフェニルホウ酸等のナトリウム塩、トリエタノールアミン塩等のテトラアルキルホウ酸塩化合物、N−フェニルアラニンなどを挙げることができる。
更に、上記光ラジカル重合開始剤、還元性化合物に加えて光酸発生剤を加えて用いる例がしばしば見られる。このような光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換−S−トリアジン有導体、ピリジニウム塩系化合物等が挙げられる。
一方、自身に重合開始能が無い場合であっても、上記還元性化合物と光酸発生剤とを組み合わせ3元系開始剤としたときに高い重合開始能を発揮する色素を用いてもよい。このような色素としては、その他クマリン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、スチリル系色素、キサンテン系色素等が挙げられる。
また、その他、光ラジカル重合開始剤以外の利用できるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩類等が挙げられる。なお、これら光ラジカル重合開始剤以外の利用できるラジカル重合開始剤と、上記還元性の化合物を添加しても何ら差し支えない。
これらラジカル重合開始剤は単独で用いることもあるが、2種以上を混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の添加量は目的に応じて選択すればよいが、(メタ)アクリレート単量体100質量部に対して通常0.01〜10質量部の割合であり、より好ましくは0.1〜5質量部の割合で使用される。
一方、オキセタン類、エポキシ類を硬化させるためのカチオン重合公知の如何なるカチオン重合開始剤でもよい。このようなカチオン重合開始剤としては、ルイス酸或いはブレンステッド酸、又は加熱や光照射によりルイス酸或いはブレンステッド酸を生じる化合物などが知られている。本発明の球状複合酸化物粒子をカチオン重合性単量体と組み合わせて歯科用に用いることを考慮すると、口腔内などの環境で速やかに重合させることが容易な点で、光照射によりルイス酸或いはブレンステッド酸を生じる、所謂、光酸発生剤を採用することが特に好適である。
当該光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換−S−トリアジン有導体等が挙げられる。
これらの中でも、ジアリールヨードニウム塩系化合物及びスルホニウム塩系化合物が、重合活性が特に高い点で優れている。これらのジアリールヨードニウム塩系化合物及びスルホニウム塩系化合物の具体例は、例えば特開2004−196949号公報に開示されているものが好適に使用できる。
これら光酸発生剤の使用量は、光照射により重合を開始しうる量であれば特に制限されることはないが、適度な重合の進行速度と得られる硬化体の各種物性(例えば、耐候性や硬度)を両立させるために、一般的にはカチオン重合性単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部を用いればよく、好ましくは0.05〜5質量部を用いるとよい。
上記のような光酸発生剤は通常、近紫外〜可視域には吸収の無い化合物が多く、重合反応を励起するためには、特殊な光源が必要となる場合が多い。そのため、近紫外〜可視域に吸収をもつ化合物を増感剤として、上記光酸発生剤に加えてさらに配合することが好ましい。
このような増感剤として用いられる化合物は、例えばアクリジン系色素、ベンゾフラビン系色素、アントラセン、ペリレン等の縮合多環式芳香族化合物、フェノチアジン等が挙げられる。
これら増感剤のなかでも、重合活性が良好な点で、縮合多環式芳香族化合物が好ましく、さらに、少なくとも1つの水素原子を有する飽和炭素原子が縮合多環式芳香族環と結合した構造を持つ縮合多環式芳香族化合物が好適である。この縮合多環式芳香族化合物の具体例も、前記した特開2004−196949に号公報示されるものが好適に使用できる。
縮合多環式芳香族化合物の添加量も、組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常は前期した光酸発生剤1モルに対し、縮合多環式芳香族化合物が0.001〜20モルであり、0.005〜10モルであることが好ましい。
さらに上記縮合多環式芳香族化合物に加えて、酸化型の光ラジカル発生剤を配合すると、より一層重合活性が向上し好ましい。酸化型の光ラジカル発生剤とは、光照射により励起してラジカルを発生する化合物であって、励起により水素供与体から水素を引き抜いてラジカルを生成するいわゆる水素引き抜き型のラジカル発生剤、励起により自己開裂を起こしてラジカルを発生し(自己開裂型ラジカル発生剤)、次いで該ラジカルが電子供与体から電子を引き抜くタイプのもの、及び光照射により励起して電子供与体から直接電子を引き抜いてラジカルとなるもの等の、光照射による励起によって活性ラジカル種を発生させる機構が酸化剤的な作用による(自らは還元される)ものである光ラジカル発生剤である。これら酸化型の光ラジカル発生剤は特に制限されず、公知の化合物を用いれば良いが、光照射を行った際の重合活性が他の化合物に比してより高い点で、水素引き抜き型の光ラジカル発生剤が好ましく、なかでも上述の光ラジカル重合開始剤中の、ジアリールケトン化合物、α−ジケトン化合物又はケトクマリン化合物が特に好ましい。
これら酸化型の光ラジカル発生剤は単独または2種類以上を混合して用いて使用できる。また、添加量も組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常は前記した光酸発生剤1モルに対し、光ラジカル発生剤が0.001〜20モルであり、0.005〜10モルであることが好ましい。
本発明の球状複合酸化物粒子を用いた歯牙修復材料には、上記した成分に加えて、該歯牙修復材料として使用される硬化性組成物、特に歯科用コンポジットレジンの配合成分として公知の他の成分が配合されていてもよい。例えば、有機フィラー、有機−無機複合フィラー、重合禁止剤、フェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料、有機溶媒や増粘剤等が挙げられる。更に単量体成分中にヒンダードアミン等の塩基性物質を添加しても良く、pKa値が7以下の有機酸の塩類を添加してもよい。これら他の成分は2種類以上組み合わせて用いても良い。
本発明の球状複合酸化物粒子用い、硬化性組成物を製造する方法は特に制限されるものではなく、硬化性組成物の製造方法として公知の製造方法を適宜採用すればよい。具体的には、本発明の球状複合酸化物粒子の他、硬化性組成物を構成する重合開始剤、重合性単量体ならびに必要に応じて配合されるその他の配合成分を所定量秤取り、これらを混合すればよい。
本発明の球状複合酸化物粒子を用いた歯牙修復材料の包装形態は特に制限されるものではなく、その目的や保存安定性を考慮して適宜決定すればよい。例えば、重合開始剤として光重合開始剤(組成)を配合した際には、本発明の歯牙修復材料を構成する全ての成分を遮光状態で一つの包装とすればよい。一方、光照射を行わずとも、2種類の化合物を混合することで重合を開始する化学重合開始剤を重合開始剤として用いる場合には、保存中に重合・硬化してしまわないように、2つ以上の包装に分割しておき、使用直前に両者を混合するような形態が好ましい。
本発明の球状複合酸化物粒子は上記のような歯科修復材料として特に好適に使用されるが、それに限定されるものではなく、その他の硬化性組成物の用途にも使用できる。その用途としては、例えば工業用接着材、塗料、コーティング材、フォトレジスト材料、印刷製版材料、ホログラム材料等が挙げられる。
本発明の球状複合酸化物粒子を用いた硬化性組成物を硬化させる手段としては用いた重合開始剤の重合開始機構に従い適宜、公知の重合手段を採用すればよく、具体的には、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、蛍光灯、太陽光、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の光源による光照射、或いは加熱重合器等を用いた加熱、またはこれらを組み合わせた方法等が何等制限なく使用される。光照射により重合させる場合には、その照射時間は、光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておけばよいが、一般には、照射時間が5〜60秒程度の範囲になるように、各種成分の配合割合を調整しておくことが好ましい。同様に加熱時間及び加熱温度も予備的な実験によって予め決定しておけばよい。
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではない。尚、実施例および比較例中に使用した化合物の名称および構造を下に示す。
1.シランカップリング剤
2.メタクリレート重合性単量体
3.カチオン重合性単量体
3.光酸発生剤
4.光重合開始剤
5.第3級アミン
6.フェノール化合物
7.縮合多環芳香族化合物
8.紫外線吸収剤
9.有機酸塩化合物
次に、実施例および比較例で実施した球状複合酸化物粒子に関する物性測定の方法は、それぞれ以下のとおりである。
(1)複合酸化物粒子の平均粒子径および粒子径の変動係数
走査型電子顕微鏡(日本電子社製、T−330A)で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される30個を選定して粒子径を測定し、測定値に基づき下記式により平均粒子径および変動係数を算出した。各複合酸化物粒子の平均粒子径、変動係数を表1に示した。
(2)複合酸化物粒子の平均均斉度
走査型電子顕微鏡で粉体の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子の中から30個を選定し、それぞれの粒子について、粒子の最大径である長径(Li)と、該長径に直交する方向の径である短径(Bi)を求め、下記式により算出した。各複合酸化物粒子の平均均斉度を表1に示した。
(3)シリカ被覆層の厚みの算出方法
後述する球状複合酸化物粒子の合成において、溶液(A)滴下後の生成粒子をサンプリングし、その平均粒子径Xaを測定した。更に溶液(B)滴下後の粒子をサンプリングし平均粒子径Xbを測定した。一方、焼成後の平均粒子径Xを測定し、下記式より焼成後のシリカ被覆層の厚さを算出した。各複合酸化物粒子のシリカ被覆層の厚さを表1に示した。
シリカ被覆層の厚み=(Xb−Xa)X/2Xb
(4)球状複合酸化物粒子の比表面積測定
比表面積測定装置「フローソーブII2300」(島津製作所製)を用い、BET法にて測定した。なお、窒素30%ヘリウム70%混合気を用い、冷媒として液体窒素を用いた。各複合酸化物粒子の比表面積測定を表1に示した。
(5)Δa* nの測定
100℃で3時間以上乾燥後、五酸化ニ燐を収容したデシケーター内で保管した複合酸化物粒子の1gを、内径約16mmのサンプル管に入れ、次いで無水トルエン3gを入れて激しく振盪し、凝集物の無いように分散させた後、サンプル管ビンを静置し、複合酸化物粒子を沈降させた。完全に沈降した後、予め白背景にてスタンダードを測定しておいた色差計(TC−1800MKII、東京電色社製)の測定孔がサンプル管ビンの底の中心に位置するように置き、黒背景にて色差を測定し、このときのa*値をa* nbとした。色差測定後、該サンプル管ビンに、遮光下で保存した0.004mol/lの4−フェニルアゾナフチルアミン(東京化成品)の無水トルエン溶液を一滴(約0.016g)加え、同様に振盪、静置した後に色差を測定し、このときのa*値をa* naとした。下記式より、Δa* nを求めた。
Δa* n=a* na−a* nb
(6)Δa* mの測定
上記したΔa* nの測定において、4−フェニルアゾナフチルアミンを用いる代わりにメチルレッドを用いて同様の操作により測定した。すなわち、遮光下で保存した0.004mol/lのメチルレッド(東京化成品)の無水トルエン溶液を用いて同様な試験を行い、メチルレッドの無水トルエン溶液滴下前のa*値をa* mbとし、メチルレッドの無水トルエン溶液滴下後のa*値をa* maとし、下記式よりΔa* mを求めた。
Δa* m=a* ma−a* mb
(6)屈折率の測定
23℃の恒温室において、100mlサンプルビン中、複合酸化物粒子1gを無水トルエン50ml中に分散させる。この分散液をスターラーで攪拌しながら1−ブロモトルエンを少しずつ滴下し、分散液が最も透明になった時点の分散液の屈折率をアッベ屈折率計にて測定し、得られた値を複合酸化物粒子の屈折率とした。
(7)粒子のX線造影性の測定
約7cm×2cmの充填部を有する厚さ2mmのSUS製の型に複合酸化物粒子を充填し、約10cm×5cm、厚さ5mmのSUS製の板で挟み、手動の油圧プレス機で約50kg/cm2でのプレスを繰り返しながら、成形体の厚さが2mmなるように複合酸化物粒子を追加し圧縮成形した。最後に約150kg/cm2でプレスし、得られた成形体について、厚みが2.00±0.03mmであることをマイクロメーターで確認した。この成形体を約1cm×1cmに切り出し、X線造影性試験用の試験片とした。
次に、X線フィルム(コダック社製超高感度歯科用X線フィルム)を2.0mm以上の厚さの鉛シートの上に置き、フィルム中央に上記試験片と、その周囲に、1.80±0.03mmから2.60±0.03mmまでの範囲で0.1mm間隔で厚みが異なる1cm×1cmアルミニウム板8枚を置き、該試験片、アルミニウム板X線フィルムに、40cmの距離から管電圧60kVpのX線(YOSHIDA社製 PANPAS−E)を、0.3秒間照射した後、フィルムを現像し、更に印画紙に焼き付けた。同様に、2.70±0.03mmから3.40±0.03mmまでの範囲で0.1mm間隔で厚みが異なる1cm×1cmアルミニウム板8枚、3.50±0.03mmから4.20±0.03mmまでの範囲で0.1mm間隔で厚みが異なる1cm×1cmアルミニウム板8枚、4.30±0.03mmから5.00±0.03mmまでの範囲で0.1mm間隔で厚みが異なる1cm×1cmアルミニウム板8枚を用いて、それぞれ同様な操作を行って、試料片の黒色量を肉眼で比較した。以上の操作の結果、試験片と同じ黒色量を示すアルミニウム板の厚みを求めた。
(8)金属酸化物のX線透過性
厚さ0.01cmの金属酸化物の0.5オングストロームのX線不透過性を下記式より計算した。
X線透過性(%)=100×I/I0
I/I0=exp(−μρx)
μ=ΣμiWi
ρ:酸化物の密度(gcm−1)
x:酸化物の厚さ(cm)
μ:質量吸収係数(cm2g−1)
μi:成分元素iの0.5オングストロームにおけるX線質量吸収係数
Wi:成分元素iの重量分率
酸化物密度(ρ)は、下記式
ρ=Mi/Vi
Mi:化学式量(g/mol)
Vi:モル容積(cm3/mol)
により計算して求め、Mi、Viは、「セラミックス基礎講座4 はじめてガラスを作る人のために」に記載されるアッペンによる加成性因子を用いた。また、μiの値は、日本化学会編、「化学便覧基礎編II改訂3版」、出版 丸善株式会社 、発行年1984年、634〜645ページに記載のものを用いた。
実施例1
0.06%の硫酸水溶液5mlとテトラエトキシシラン180gをイソブタノール500mlに溶かし、この溶液を40℃で約8時間撹拌しながら加水分解した。その後この溶液に68gテトラブチルジルコネートを添加し、溶液(A)とした。
一方、テトラエトキシシラン50gとメタノール300mlの混合物を溶液(B)とした。
次に撹拌機能付きの内容量3lのガラス製容器にメタノール800ml、イソブタノール200ml、28%アンモニア水300mlを入れ、この容器を40℃に保ち、撹拌しながら上記溶液(A)を6時間かけて滴下し、終了後溶液(B)を約2時間かけて滴下した。滴下終了後、析出した白色の生成物をろ過によって分取し更に乾燥して粉末を得た。
得られた粉末を1000℃で3時間焼成し、シリカ83モル%とZrO217モル%の複合酸化物粒子がシリカにより被覆されてなる白色粉末を得た。得られた白色粉末をPF1とした。このPF1の粒径、変動係数、均斉度、シリカ被覆層の厚み、及び比表面積を表1に示した。
次に、得られたPF1のΔa* n及びΔa* mを測定した後、その20gを、イオン交換水40ml中に超音波を使って分散させた。一方、シランカップリング剤A−174を、下記式
シランカップリング剤使用量:y(g)=20(g)X/Y
X:複合酸化粒子の批評面積(m2/g)
Y:シランカップリング剤の被覆面積(m2/g)
より計算された量に該当する1.15gを図り取り、pH4.0に調整した酢酸100ml中で、2時間かけて加水分解させた。このシランカップリング剤A−174の加水分解物を、上記PF1の分散液に混合し、1時間撹拌した。撹拌後、ロータリーエバポレーターにより水を除去し、得られた白色固体を、真空下80℃で15時間乾燥し、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF1−1を得た。このSPF1−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF1のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF1−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
実施例2
実施例1において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例1と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF1−2を得た。結果を表2に示した。
実施例3
実施例1において、球状複合酸化物粒子を合成するに際して溶液(B)のテトラエトキシシランを20gに減らした以外は、実施例1と同様に実施して、シリカ83モル%とZrO217モル%の複合酸化物粒子がシリカにより被覆されてなる白色粉末PF2を製造した。このPF2の粒径、変動係数、均斉度、シリカ被覆層の厚み、及び比表面積を表1に示した。
また、このPF2のΔa* n及びΔa* mを測定した後、実施例1と同様にして、シランカップリング剤としてA−174に表面処理し、球状複合酸化物粒子SPF2−1を得た。このSPF2−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF2のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF2−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
実施例4
実施例3において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例3と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF2−2を得た。結果を表2に示した。
実施例5
実施例1において、球状複合酸化物粒子を合成するに際して溶液(B)のテトラエトキシシランを100gに増やした以外は、実施例1と同様に実施して、シリカ83モル%とZrO217モル%の複合酸化物粒子がシリカにより被覆されてなる白色粉末PF3を製造した。このPF3の粒径、変動係数、均斉度、シリカ被覆層の厚み、及び比表面積を表1に示した。
また、このPF3のΔa* n及びΔa* mを測定した後、実施例1と同様にして、シランカップリング剤としてA−174に表面処理し、球状複合酸化物粒子SPF3−1を得た。このSPF3−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF3のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF3−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
実施例6
実施例5において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例1と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF3−2を得た。結果を表2に示した。
実施例7
実施例1において、球状複合酸化物粒子を合成するに際して溶液(A)として、以下の溶液を用いる以外は、実施例1と同様に合成を実施して粉末を得た。すなわち、溶液(A)として、0.06%の硫酸水溶液5mlとテトラエトキシシラン180gをイソブタノール500mlに溶かし、この溶液を40℃で約8時間撹拌しながら加水分解し、その後この溶液に68gテトラブチルジルコネートを添加したものを用いた。
得られた粉末を920℃で3時間焼成し、シリカ81モル%とZrO217モル%、Na2O2モル%の複合酸化物粒子がシリカにより被覆されてなる白色粉末を得た。得られた白色粉末をPF4とした。このPF4の粒径、変動係数、均斉度、シリカ被覆層の厚み、及び比表面積を表1に示した。
また、このPF4のΔa* n及びΔa* mを測定した後、実施例1と同様にして、シランカップリング剤としてA−174に表面処理し、球状複合酸化物粒子SPF4−1を得た。このSPF4−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF4のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF4−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
実施例8
実施例7において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例1と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF4−2を得た。結果を表2に示した。
比較例1
実施例1において、球状複合酸化物粒子を合成するに際して溶液(B)のテトラエトキシシランを10gに減らした以外は、実施例1と同様に実施して、シリカ83モル%とZrO217モル%の複合酸化物粒子がシリカにより被覆されてなる白色粉末PF5を製造した。このPF5の粒径、変動係数、均斉度、シリカ被覆層の厚み、及び比表面積を表1に示した。
また、このPF5のΔa* n及びΔa* mを測定した後、実施例1と同様にして、シランカップリング剤としてA−174に表面処理し、球状複合酸化物粒子SPF5−1を得た。このSPF5−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF5のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF5−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
比較例2
比較例1において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例1と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF5−2を得た。結果を表2に示した。
比較例3
撹拌機能付きの内容量3lのガラス製容器にメタノール800ml、イソブタノール200ml、28%アンモニア水300mlを入れ、この容器を40℃に保ち、撹拌しながら実施例1で使用したものと同じ溶液(A)を6時間かけて滴下した。滴下終了後、析出した白色の生成物をろ過によって分取し更に乾燥して粉末を得た。
得られた粉末を1000℃で3時間焼成し、シリカ83モル%とZrO217モル%の複合酸化物粒子からなる白色粉末を得た。得られた白色粉末をPF6とした。このPF6の粒径、変動係数、均斉度、シリカ被覆層の厚み、及び比表面積を表1に示した。
また、このPF6のΔa* n及びΔa* mを測定した後、実施例1と同様にして、シランカップリング剤としてA−174に表面処理し、球状複合酸化物粒子SPF6−1を得た。このSPF6−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF6のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF6−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
比較例4
比較例3において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例1と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF6−2を得た。結果を表2に示した。
比較例5
0.06%の硫酸水溶液5mlとテトラエトキシシラン180gをイソブタノール500mlに溶かし、この溶液を40℃で約8時間撹拌しながら加水分解した。その後この溶液に37gのテトラブチルチタネートを添加し、溶液(A)とした。
次に撹拌機能付きの内容量3lのガラス製容器にメタノール800ml、イソブタノール200ml、28%アンモニア水300mlを入れ、この容器を40℃に保ち、撹拌しながら上記溶液(A)を6時間かけて滴下した。滴下終了後、析出した白色の生成物をろ過によって分取し更に乾燥して粉末を得た。
得られた粉末を1000℃で3時間焼成し、シリカ89モル%とTiO211モル%の複合酸化物粒子がシリカにより被覆されてなる白色粉末を得た。得られた白色粉末をPF1とした。得られた白色粉末をPF7とした。このPF7の粒径、変動係数、均斉度、及び比表面積を表1に示した。
また、このPF7のΔa* n及びΔa* mを測定した後、実施例1と同様にして、シランカップリング剤としてA−174に表面処理し、球状複合酸化物粒子SPF7−1を得た。このSPF7−1についてΔa* mを測定し、先に測定したシランカップリング剤による表面処理前のPF7のΔa* n及びΔa* mの値と共に、表2に示した。
さらに、SPF7−1について、屈折率、及びX線造影性を測定し、表2に示した。
比較例6
比較例5において、使用するシランカップリング剤としてA−174に代えてTESOXを用いる以外は、実施例1と同様に実施して、表面処理された球状複合酸化物粒子SPF7−2を得た。結果を表2に示した。
実施例9〜20、比較例7〜15
表3に示すような各成分を暗所下で加えて8時間以上攪拌・溶解し、硬化性組成物からなるマトリックスA〜Cを調製した。
このマトリックスA〜Cと前記実施例1〜8、比較例1〜5で製造した各表面処理された球状複合酸化物粒子を、表4に示した組合わせで配合して歯牙修復材料(コンポジットレジン)を製造した。この配合は、表面処理された球状複合酸化物粒子73質量部と、マトリックス27質量部をメノウ乳鉢で混合し、真空下において脱泡することにより実施した。
得られた各歯牙修復材料を用いて、イ)50℃保存でのペーストの保存安定性試験、ロ)50℃保存での硬化不良を生じるまでの保存安定性試験、及びハ)曲げ強度試験を実施した。それぞれの試験は、以下に示す方法に従って実施した。
イ)50℃保存でのペースト性状の保存安定性試験
歯牙修復材料を50℃恒温器内で保存し、該歯牙修復材料を、1日置きに恒温器から取り出し、暗室中で放冷後、金属製スパチュラで検査した。この際に金属製スパチュラで容易に附形することが出来れば未ゲル化状態と判定した。そして、流動性が失われ金属製スパチュラで附形することが出来ないほどにゲル化したり、或いは該充填材料がパサついて割れてしまうようになった状態をペーストの保存安定性不良状態と判定し、ここまでに至る日数を測定した。最大30日まで測定し、30以内に不良化しなかったものは「良好」とした。
ロ)曲げ強度試験
調製直後の歯牙修復材料を2×2×25mmの金型に充填し、ポリプロピレンフィルムで覆い、光照射器にて1.5分間光照射し硬化させた。硬化物を水中37℃で一晩保存した後、オートグラフ(島津製作所社製)を使用し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分で3点曲げ強度を各々5個の硬化物について測定し、その平均値を算出した。
以上の各試験の測定結果を表4に示した。