JP5914071B2 - 歯科用接着性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は歯科用接着性組成物、詳しくは、歯科用プライマー、歯科用ボンディング材、接着性コンポジットレジン、歯科用レジンセメント等として有用な歯科用接着性組成物に関する。
歯科材料分野において、齲蝕等により欠損を生じた歯質の修復には、重合性単量体に無機粒子からなる充填材を高配合したコンポジットレジンが使用される。ただし、コンポジットレジンは歯牙に対してほとんど接着性を有さないため、その使用に先立って、修復歯面に対して、エッチング処理及びプライミング処理を施し、さらにその上に、歯科用ボンディング材の塗布・硬化を行うことが必要である。
近年は、重合性単量体として、酸性基を含有するものが、歯質を脱灰し切削表面にあるスメア層を溶かし、さらに、歯質との親和性も高いため、これに水と、必要に応じて親水性溶媒や少量の無機充填材を配合して歯科用プライマーとして用いれば、エッチング処理とプライミング処理とを同時に施すことができることが見出されている(セルフエッチング型プライマー)。また、この知見を発展させて、酸性基含有重合性単量体を、ボンディング材の重合性単量体成分に含有させることにより、これら煩雑な前処理の一切を必要せずとも歯牙に対して高い接着性が得られることも確認されている(セルフエッチング型ボンディング材;特許文献1〜2参照)。
さらに、該酸性基含有重合性単量体を、前記コンポジットレジンにまで含有させて、ボンディング材も使用しなくても、歯牙と直に接着する、所謂、接着性コンポジットレジンも提案されるに至っている(特許文献3参照)。
この他、インレー、クラウン等の補綴物を、歯牙の窩洞に接合する際にも、酸性基含有重合性単量体を含んだ、無機充填材が高配合の硬化性組成物からなるレジンセメントが使用されている。
これらの歯牙に接着させる用途に使用される硬化性組成物、即ち、歯科用接着性組成物において、まず、上記接着性コンポジットレジンやレジンセメントには、前記したとおり充填材として無機粒子が高配合されている。また、歯科用プライマーや歯科用ボンディング材に対しても、硬化体の機械的強度の向上等を目的として、無機粒子を含有させることが適宜行なわれている。しかし、これらの無機粒子は、そのまま配合するか、或いは表面処理するにしても、重合性単量体に対する親和性の向上や化学結合形成を目的にシランカップリング剤による処理を行うことしか知られていない。
なお、歯科用硬化性組成物において、重合硬化反応を促進する触媒成分として、スルホン酸基を表面に有する無機粒子を含有させることが知られている(特許文献4参照)。しかしながら、この歯科用硬化性組成物の用途は、具体的には、義歯床裏装用材料であり(〔0014〕)、上記歯牙に対する接着性が求められる用途ではなく、そのため重合性単量体成分としても、前記歯牙との接着性を高めるのに有効な酸性基を含有するものは配合の必要性がなく、刺激や酸味を感じさせることから、むしろ含有させるのは好ましくないと説明されている(〔0030〕)。
特開2008−189579 特開2005−263630 特開2008−189579 特開2005−263630
前記したように重合性単量体と無機充填材が配合された歯科用接着性組成物において、重合性単量体成分の少なくとも一部として酸性基含有重合性単量体を含有させたものは、歯牙に対する接着性が大きく向上し好適である。しかし、それでも接着力は、未だ十分ではなく、さらに向上させることが望まれていた。特に、硬化体自身の機械的強度を高めるため、無機充填材を高配合した場合には、相対的にその分だけ、酸性基含有重合性単量体の含有量が少なくなるため上記接着力の低下は大きく問題であった。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、無機充填材として配合する無機粒子の少なくとも一部に、表面に酸性基を有するものを用いることにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分(A)、及び
表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分(B)
を含有してなることを特徴とする歯科用接着性組成物である。
本発明によれば、酸性基含有重合性単量体を含んでなる重合性単量体成分、及び無機充填材成分を含有してなる歯科用接着性組成物において、該無機充填材成分の少なくとも一部に、表面に酸性基を有するものを用いているため、歯牙に対する接着力を大きく高めることができる。このように表面に酸性基を有する無機粒子を使用することにより、歯牙に対する接着力が向上する理由は、歯牙との接触界面において酸性基量が増えることもあるが、さらに、該酸性基による歯質の脱灰やスメア層の溶解により生成するカルシウムイオンのトラップ能が高まることも大きいと予想される。
すなわち、酸性基による歯質の脱灰やスメア層の溶解は、該作用により生成するカルシウムイオンが、歯科用接着性組成物層中に存在する酸性基を伝って内部に拡散・除去されないと、その効果は大きくならない。しかして、該歯科用接着性組成物層に、充填材である無機粒子が分散していると、その存在部分では、該カルシウムイオンのトラップ能は妨げられてしまい、カルシウムイオンは歯面との接触界面に留まり、前記脱灰やスメア層の溶解作用は均一に発現しなくなる。これに対して、本発明では、係る無機粒子の表面にも酸性基が存在しているため、この妨げが改善され、カルシウムイオンのトラップ能が層中で均質化して、前記歯質の脱灰やスメア層の溶解性が大きく向上するためと考えられる。
このように歯牙に対して高い接着力を有する本発明の歯科用接着性組成物は、歯科用プライマー、歯科用ボンディング材、接着性コンポジットレジン、歯科用レジンセメント等として、極めて有用である。
以下、本発明の歯科用接着性組成物の各成分について説明する。
〔(A)重合性単量体成分〕
本発明の歯科用接着性組成物において重合性単量体は、ラジカル重合性単量体やカチオン重合性単量体等の公知の重合性化合物が特に制限なく使用できる。歯科用途として見た場合、重合速度の観点から、ラジカル重合性単量体を用いるのが好ましい。好ましいラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、または(メタ)アクリロイルチオ基などの(メタ)アクリロイル基の誘導体基、ビニル基、あるいはスチリル基などが挙げられる。なかでも重合性の観点から(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、または(メタ)アクリロイルアミノ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
a1)酸性基含有重合性単量体
本発明の歯科用接着性組成物では、重合性単量体成分の少なくとも一部として、酸性基含有重合性単量体を含んでいる。酸性基含有重合性単量体は、1分子中に少なくとも1つの酸性基を有している重合性単量体であれば制限なく使用できる。ここで、酸性基とは、pKaが5より小さく、活性プロトンを解離可能な官能基であり、具体的には、リン酸基(リン酸モノエステル基あるいはリン酸ジエステル基)、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン基などを挙げることができる。そのなかでも、歯質に対する接着性が高い酸性基として、カルボキシル基、リン酸基がより好ましく、リン酸基が最も好ましい。
そのような酸性基含有ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、ビス((メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基含有ラジカル重合性単量体類;ビニルホスホン酸などのホスホン酸基含有ラジカル重合性単量体類;2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクロイルオキシエチル−1,1−ウンデカンジカルボン酸、2−(メタ)アクロイルオキシエチル−3’−メタクロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、4−(2−(メタ)アクロイルオキシエチル)トリメリテートアンハイドライド、N−(メタ)アクロイルグリシン、N−(メタ)アクロイルアスパラギン酸などのカルボン酸基含有ラジカル重合性単量体類;スチレンスルホン酸、3−スルホプロパン(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有ラジカル重合性単量体類などが挙げられる。また、これら酸性基含有ラジカル重合性単量体は、必要に応じて2種以上のものを併用しても良い。
これら酸性基含有重合性単量体a1)は、その配合量に制限はなく、重合性単量体成分の全体が該酸性基含有重合性単量体のみであっても良い。プライマーやボンディング材において歯質に対する浸透性を調節したり、硬化体の機械的強度を向上させたりする観点から、酸性基非含有重合性単量体a2)と併用するのが好適である。
a2)酸性基非含有重合性単量体
酸性基非含有重合性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルプロピオネート、または2−メタクリロキシエチルアセトアセテートなどの重合性不飽和基を1つ有する非水溶性の(メタ)アクリレート系単量体類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、またはエトキシ化ウンデセノール(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を1つ有する水溶性の(メタ)アクリレート系単量体類;ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ドデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、またはペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を複数有する水溶性の(メタ)アクリレート系単量体類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタンジメタクリレートなどの重合性不飽和基を複数有する脂肪族系の非水溶性(メタ)アクリレート系単量体類;あるいは、2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、または2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなどの重合性不飽和基を複数有する芳香族系の非水溶性(メタ)アクリレート系単量体類が挙げられる。
これらの酸性基非含有重合性単量体の中でも、重合性不飽和基を二つ以上有する多官能のものが好適に用いられる。これら酸性基を有しない重合性単量体も、単独で用いても良いし、あるいは2種類以上を併用しても良い。
〔(B)無機充填材成分〕
b1)表面に酸性基を有する無機粒子
酸性基を表面に有する無機粒子において、核粒子となる無機粒子は、公知のものが特に制限なく適用でき、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属もしくはそれらの酸化物あるいはハロゲン化物、硫酸塩もしくはこれらの混合物もしくは複合塩などから選択することができる。具体的には、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の金属又は半金属の単独酸化物、もしくは複合酸化物が挙げられる。複合酸化物としては、さらにナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属を含むものも好適である。これらのなかでも特に、化学的安定性に優れ、またシランカップリング剤等で表面処理が容易な点から、ケイ素の単独酸化物、又はケイ素を構成元素として含む複合酸化物(以下、ケイ素系酸化物)が好ましい。また、無機粒子の屈折率は特に制限されないが、歯科用接着性組成物を接着性コンポジットレジンとして用いる場合には、得られる硬化体と歯牙との色調適合性の観点から、一般的な歯科用の無機充填材が有する1.4〜1.7の範囲のものが好ましい。
ケイ素系酸化物をより具体的に例示すると、石英、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、ゾルゲルシリカ等のシリカ類;シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−バリウムオキサイド、シリカ−ランタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−カルシア、シリカ−ストロンチウムオキサイド、シリカ−マグネシア、シリカ−チタニア−ナトリウムオキサイド、シリカ−チタニア−カリウムオキサイド、シリカ−ジルコニア−ナトリウムオキサイド、シリカ−ジルコニア−カリウムオキサイド、シリカ−アルミナ−ナトリウムオキサイド、またはシリカ−アルミナ−カリウムオキサイド等の複合酸化物類;ケイ酸カルシウム、タルク、ゼオライト、モンモリロナイト等のケイ酸塩類が挙げられる。中でも歯科用途では屈折率やX線造影性の観点から、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアが望ましい。
上記無機粒子の形状は特に制限されず、使用目的に合わせて適宜選択すればよい。例えば、球状、板状、層状、ウィスカー状、或いは不定形等の如何なる形状であっても適用可能である。歯科用接着性組成物を接着性コンポジットレジンとして用いる場合には、硬化体の表面滑沢性が増すことから球形が好ましい。
また、無機粒子の平均粒子径や粒径分布も用途に応じて適宜選択すれば良く、特に制限されるものではない。平均一次粒子径は0.005〜50μmであるのが好ましく、0.007〜5μmであるのがより好ましい。歯科用接着性組成物が、接着性コンポジットレジンまたはレジンセメントの場合、硬化体の機械的強度やペースト粘度等の観点から、上記平均一次粒子径の無機粒子は、凝集せずに単分散しているのが好ましい。ここで、無機粒子の平均一次粒子径は、透過電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡にて測定した粒子に関し、観察された一次粒子300個の長径の平均値とする。
また、無機粒子は、凝集していても良く、特に、歯科用接着性組成物が、プライマーおよびボンディング材の場合、重合性単量体、溶媒等への分散性やペースト粘度等の観点から、凝集粒子として使用するのが好適な態様である。凝集粒子の平均粒子径は0.01〜0.2μmが好ましく用いられる。かかる凝集粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱型の粒度分布計を用いて測定した平均粒子径d50である。
また、無機粒子の比表面積は、歯科用接着性組成物がプライマーやボンディング材であれば、重合性単量体、溶媒等への分散性等の観点から、80〜400m/gであるのが好ましく、さらには100〜300m/gであるのがより好ましい。レジンセメントや接着性コンポジットレジンであれば、ペースト化した際の操作性とペースト粘度等の観点から、0.2〜60m/gであるのが好ましく、さらには0.6〜40m/gであるのがより好ましい。なお、本発明において、無機粒子の比表面積は、BET法にて測定した値である。
こうした無機粒子の表面に存在する酸性基は、前記酸性基含有重合性単量体で説明したのと同様に、pKaが5より小さく、活性プロトンを解離可能な官能基が該当する。具体的には、リン酸基、ピロリン酸基、ホスホン酸基、チオリン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられる。粒子表面に付与する際の安定性の観点から、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましく、カルシウムイオンのトラップ能が高く、歯牙に対する接着力が特に高くなることから、リン酸基、スルホン酸基がより好ましい。
これら酸性基は、無機粒子の表面全体に均一に導入されているだけでなく、散在または部分的に導入されているものであっても良い。無機粒子の表面に存在する酸性基の量は、歯科用接着性組成物の歯牙に対する接着性を向上させる観点から、0.3μmol/m以上であるのが好ましく、1.2μmol/m以上であることがより好ましい。また、無機粒子の表面に存在する酸性基の量は、あまり多いと歯科用接着性組成物が、重合性単量体成分として酸性基非含有重合性単量体(特に、疎水性のもの)を含有する場合において馴染みが悪く分散不良になる虞があるため、20μmol/m以下であるのが好ましく、5μmol/m以下であることがより好ましい。ここで、無機粒子表面に存在する酸性基量は、0.5mol/Lの濃度の塩化ナトリウム水溶液50ml中に、粒子3gを添加し24h攪拌することにより酸性基の対イオンをナトリウムイオンに交換してプロトンを遊離させた後、粒子をろ別し、得られたろ液を水酸化ナトリウム水溶液により中和滴定する方法により求めた値である。また、上記無機粒子の表面に存在する酸性基量を求めるのに適用する比表面積は、原料無機粒子の比表面積ではなく、該表面に酸性基を導入した後の無機粒子についての値(BET法)である。
次に、本発明において上記特徴的成分として配合される、表面に酸性基を有する無機粒子の製造方法について説明する。表面に酸性基を有する無機粒子の製造方法は、既に種々公知であり、例えば、無機粒子を、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランや3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤により表面処理し、得られた、表面にメルカプト基を有する無機粒子を過酸化水素処理することにより、該メルカプト基をスルホン酸基に変換する方法により、表面の酸性基がスルホン酸基である無機粒子を製造することができる。
本発明において、表面に酸性基を有する無機粒子の製造方法として特に好適なのは、無機粒子の表面を、酸性基または酸性基を導入可能な官能基を有する重合性単量体及び重合開始剤を含む重合性組成物で被覆し、該重合性組成物を重合硬化させることで重合体被覆無機粒子を得、さらに前記重合性組成物として、酸性基を導入可能な官能基を有するものを用いた場合には、該官能基に酸性基を導入する方法が挙げられる。この方法は、粒子表面に、酸性基または酸性基を導入可能な官能基を有する重合性単量体を付着させれば酸性基を導入できるため、水酸基と反応させることが必要なシランカップリング剤を用いた表面処理方法と比べて、粒子の種類を選ばず幅広く適用できるため有利である。また、酸性基を有する単量体が複数の重合性基を有する場合や、酸性基含有重合性単量体と共に複数の重合性基を有する酸性基非含有重合性単量体を用いる場合は、得られる硬化体が架橋重合体となるため、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性等に優れた被覆層になり、粒子表面から酸性基が脱落し難くなり好適である。一方で、シランカップリング剤を反応させた粒子表面は、表面水酸基とシランカップリング剤との結合が加水分解し易いことが知られている。
この製造方法において、表面にリン酸基を有する無機粒子を製造するのであれば、リン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート等が使用できる。
また、表面にホスホン酸基を有する無機粒子を製造するのであれば、リン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート、ビニルホスホン酸等が使用できる。
さらに、表面にカルボキシル基を有する無機粒子を製造するのであれば、カルボキシル基を有する重合性単量体としては、例えば、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2−(メタ)アクリオイルオキシエチル等が使用できる。
さらに、表面にスルホン酸基を有する無機粒子を製造するのであれば、スルホン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸等が使用できる。
なお、こうした表面に酸性基を有する無機粒子を、酸性基を導入可能な官能基を有する重合性単量体を用いて製造する場合であれば、これに使用する該重合性単量体としては、例えば、酸性基がスルホン酸基であれば、スチレンやジビニルベンゼン等の芳香族炭化水素系の重合性単量体やメルカプト基を有する重合性単量体等を用いれば良い。前者の芳香族炭化水素系の重合性単量体を重合硬化させて、芳香族炭化水素系重合体で被覆された無機粒子を得た後、濃硫酸や三酸化硫黄等で処理することにより、該芳香族炭化水素系重合体の芳香環にスルホン酸基を導入できる。さらに、後者のメルカプト基を有する重合性単量体を重合硬化させて、メルカプト基含有重合体で被覆された無機粒子を得た後、過酸化水素処理することにより、該メルカプト基をスルホン酸基に変換できる。また、前記各酸性基を有する重合性単量体において酸性基が塩になっている化合物も、これを重合硬化させて、酸性基の塩を有する重合体とした後、該酸性基を遊離化させることにより、上記酸性基を導入可能な官能基を有する重合性単量体として使用することができる。
無機粒子の表面を被覆する重合性組成物には、上記酸性基または酸性基に導入可能な官能基を有する重合性単量体の他に、架橋性単量体も併用するのが好ましい。重合性組成物に架橋性単量体を含有させることにより、前述したとおり、得られる硬化体が架橋重合体になり、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性等に優れる被覆層にすることができる。架橋性単量体は、2つ以上の重合性基を有する単量体であれば適宜使用可能で、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の多官能の芳香族ビニル系重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンジ(メタ)アクリルアミド等の多官能の(メタ)アクリル系重合性単量体等を挙げることができる。
架橋性重合性単量体の使用量は、酸性基または酸性基に導入可能な官能基を有する重合性単量体100重量部に対して0.1〜50重量部が望ましく、より好ましくは1〜30重量部である。
無機粒子の表面を、上記重合性組成物で被覆した後、これを重合硬化させるために、該重合性単量体には重合開始剤が配合される。重合開始剤としては、用いる重合性単量体に応じて公知のものから適宜に選択すれば良いが、重合操作の簡便性から熱重合開始剤であるのが望ましい。こうした熱重合開始剤としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2,−アゾビスイソブチロニトリル、2,2,−アゾビス−(2,4,−ジメルバレロニトリル)等のアゾビス系重合開始剤などが挙げられる。これらの中から、重合温度に応じて、適当な半減期のものを1種又は2種以上組合せて使用すれば良い。重合温度は50〜230℃が好ましいが、用いる処理装置の耐用温度、得られる粒子の均質性、表面に導入される酸性基の耐熱性等の観点から70〜120℃がさらに好ましい。
これら重合開始剤の使用量は、有効量であれば特に制限はないが、一般には重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部であり、より好適には0.5〜10質量部である。
この他、無機粒子の表面を被覆する重合性組成物には、任意成分として、その他の重合性単量体、水、親水性溶媒等を配合しても構わない。例えば、強親水性の酸性基である、スルホン酸基を有する重合性単量体を用いた場合には、2−ヒドロシキエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロシキプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する重合性単量体や、水、アルコール類、アセトン等を配合することで、架橋性重合性単量体や重合開始剤との親和性を改善することができる。なお、水や親水性溶媒を含有させる場合、その使用量が多すぎると粒子同士の凝集を生じ易くなる。従って、その使用量は、重合性組成物を無機粒子と接触した際に、無機粒子の粉体性状が維持(ペースト状や液状にならない)される量に抑えるのが好ましい。一般には、重合性組成物に含まれる全重合性単量体に対して30質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
さらに、重合性組成物には、重合禁止剤、重合抑制剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合させることができる。
無機粒子の表面に対する、上記重合性組成物の被覆量は、特に制限されるものではないが、無機粒子の表面に導入する酸性基量が前記好適な範囲になるように適宜調整すれば良い。重合性組成物の具体的な被覆量は、使用する無機粒子の比表面積や粒子径等とも関係し一概には言えないが、一般には、無機粒子の単位比表面積当り0.1〜2mg/mであるのが好ましい。重合性組成物による無機粒子の被覆は、被覆量があまり多くなると、粒子同士の凝集が激しくなるため、上記無機粒子の単位比表面積当りの0.3〜1mg/mで被覆するのがより好ましい。なお、重合性組成物の被覆は、無機粒子の表面が露出しないように、その全面に及んで実施しても良いが、このような酸性基の導入に好適な被覆量で実施した場合、厳密にはその表面状態は、被覆された部分と被覆されずに無機粒子の表面が露出する部分とが、海島状等に混在する状態であると推測される。
無機粒子表面への重合性組成物の被覆方法は、特に制限されるものではなく、例えば、酸性基または酸性基に導入可能な官能基を有する重合性単量体(またはこれに任意成分を配合した混合物)と無機粒子とを、攪拌下で接触させる方法が挙げられる。また、無機粒子に、上記酸性基または酸性基に導入可能な官能基を有する重合性単量体を噴霧または滴下等により添加する方法も好適である。噴霧に際しては公知のスプレーノズル等が好適に使用できる。滴下の場合は液滴が小さくなるよう、口径が小さい滴下チューブを用いたり、チューブの先端に注射針やキャピラリー管を接続する等したりするのが好適である。添加速度は、粒子の凝集を防止する観点からは、無機粒子100g当たり1〜5ml/min程度が望ましい。添加の温度条件も特に制限されないが、重合性単量体を無機粒子間に十分に行き渡らせる必要性や、重合性単量体が熱重合を起こさないようにする観点から、0〜40℃が好ましい。
無機粒子の表面を被覆した、前記重合性単量体の重合硬化は、粒子を攪拌下に加熱することにより実施するのが好ましい。また、窒素やアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で反応を進めるのが望ましい。このような条件を満足して重合が行なえる装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、ロッキングミキサー、ドラムミキサーなどの粉体攪拌装置の他、オートクレーブや造粒機なども利用できる。反応容器内の圧力は、特に制限されず、加圧でもよいし、常圧でもよいし、減圧でもよい。用いた重合性単量体の種類にもよるが、それらの中で常圧またはやや加圧した状態が好ましい。やや加圧した状態とは、添加した重合性単量体およびその他任意成分等が常温から加熱状態になる際に、それらの一部が蒸気となることで、反応容器内部の圧力が上昇した際の圧力であり、概ね0.005〜0.2MPa程度である。重合時間も上記したような他の条件に合わせて適宜設定すればよく、一般的には、30〜180分程度である。
以上により、酸性基または酸性基を導入可能な官能基を有する重合体により被覆された無機粒子が得られる。この重合体による無機粒子の被覆は、その外表面を覆った状態だけでなく、粒子が細孔を有している場合には、該細孔の壁面を覆った状態や、あるいは該細孔を埋めるように存在している状態、さらにはそれらが組み合わさった状態も含む。
酸性基を導入可能な官能基を有する重合体により被覆された無機粒子を得た場合には、該官能基には前記したような常法により酸性基を導入すれば良い。また、以上説明した製造方法は、溶媒の使用量は使用しても少量に抑えた乾式での処理方法について記載している。表面に酸性基を有する無機粒子は湿式法で製造しても良いが、乾式法は溶媒を多量に用いる湿式法に比べると、得られた重合体被記覆粒子を溶媒から分離し乾燥させる必要がなく有利である。
b2)その他の無機充填材
本発明の歯科用接着性組成物において、無機充填材成分は、上記表面に酸性基を有する無機粒子のみを用いても良いが、表面への酸性基の付与処理を施していない通常の無機充填材と混合して用いても良い。特に、接着性コンポジットレジンや歯科用レジンセメントに用いる場合は、これらはペースト性状であり、無機充填材が高配合されているため、表面に酸性基非導入の無機充填材と併用するのが好ましい。
こうした無機充填材も、前記した表面に酸性基を有する無機粒子で核粒子として掲げた粒子が好適に使用できる。ケイ素系酸化物が好適である点も同様である。また、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラスなどのガラス類も好適に使用できる。
これら無機充填材は、重合性単量体成分として酸性基非含有重合性単量体(特に、疎水性のもの)を含有する場合において馴染みを良くし、機械的な物性を向上させるために、疎水性を高める表面処理を施しても良い。こうした表面処理剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、環状シロキサン、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤等が好適に用いられる。
なお、歯科用接着性組成物の用途が、接着性コンポジットレジンや歯科用レジンセメントの場合、重合性単量体と化学的に結合し、機械的強度が向上することから、特に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤を使用するのがより好ましい。
〔(C)水〕
本発明の歯科用接着性組成物は、水を含有していなくても、歯牙に接着する用途に使用した場合、その接触界面では口腔内の水分により、酸性基含有重合性単量体による脱灰(エッチング)作用が良好に進行する。さらに、水を含有させることにより、この歯質の脱灰(エッチング)作用が高まり、また、歯質への親和性も高まり、歯質との接着力が大きく向上するため好ましい。特に水は、歯科用プライマーや歯科用ボンディング材に対して含有させるのが効果的である。
配合する水は、不純物を含んでいないことが望まれ、蒸留水またはイオン交換水を用いるのが好適である。
〔(D)重合開始剤〕
本発明の歯科用接着性組成物において、用途が歯科用ボンディング材、接着性コンポジットレジン、および歯科用レジンセメントである場合には、重合開始剤が配合される。重合開始剤は、化学重合型と光重合型に分類され、目的に応じて適宜選定すれば良い。通常、化学重合開始剤は歯科用レジンセメントに使用され、光重合開始剤は歯科用ボンディング材、接着性コンポジットレジン、および歯科用レジンセメントに使用される。
化学重合開始剤は、2つ以上の成分の組み合わせからなり、2包装以上に分けて調製した歯科用接着性組成物のそれぞれの包装に各成分を分配しておき、使用時に各包装を混合(接触)した際にラジカルを発生させて使用する。例えば、有機過酸化物/アミン類、有機過酸化物/アミン類/有機スルフィン酸類、有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類、アリールボレート類/酸性化合物、及びバルビツール酸誘導体/銅化合物/ハロゲン化合物等の各種組み合わせからなるものが挙げられる。
本発明においては、歯牙に対する高い接着強度が得られ、また取扱いが容易な理由から、有機過酸化物/アミン類、及び有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類からなる化学重合開始剤が好適である。代表的な有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキササイド等のケトンパーオキサイド類;2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキシド;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等のパーオキシケタール類;α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオコシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシマレリックアシッド等のパーオキシエステル類;ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類などが挙げられる。これらの有機過酸化物の中でもラジカル生成能力と安定性の観点から、ベンゾイルパーオキサイドが特に好適に用いられる。
他方、有機過酸化物と組み合わせるアミン類としては特に制限されるものではないが、アミノ基がアリール基又はピリジル基等の芳香族基に結合した第2級または第三級芳香族アミンが挙げられる。例えば好適に使用できる第二級芳香族アミンとしては、N−メチルアニリン、N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられる。また、好適に使用できる第三級芳香族アミンとしては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アニリン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン等が挙げられる。
これらのアミン類の中でも硬化性の観点からが特にp−トリルジエタノールアミン、N,N−ジメチル−p−トルイジンが好適に用いられる。
アリールボレート類は、1分子中に1〜4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物であり、好ましくは1分子中に3〜4個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物である。
具体的には、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するボレートの塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等の金属塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等のアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩等のピリジニウム塩、またはメチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等のキノリニウム塩等を挙げることができる。ここで、1分子中に3個のホウ素−アリール結合を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素を例示することができる。また、1分子中に4個のホウ素−アリール結合を有するボレートとしては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素を例示することができる。尚、上記のボレートにおいて、アルキルはn−ブチル、n−オクチル又はn−ドデシルのいずれかである。
これらのアリールボレート類の中でも硬化性の観点からが特にテトラフェニルホウ素のトリエタノールアンモニウム塩が好適に用いられる。
有機過酸化物/アミン類からなる化学重合開始剤においては、有機過酸化物1モル当り、アミン類を0.01〜4モル、特に0.05〜3モルの量で使用するのがよい。
有機過酸化物/アミン類/アリールボレート類では、有機過酸化物1モル当り、アミン類を0.01〜4モル、特に0.05〜3モルの量で使用し、アリールボレート類を0.01〜3モル、特に0.05〜2モルの量で使用するのがよい。
光重合開始剤としては、特に、歯科用照射器の照射波長として用いられることの多い380〜500nmの光照射によりラジカルを発生するものが好ましい。そのような光重含開始剤として、たとえば、α−ケトカルボニル化合物、あるいはアシルフオスフィンオキサイド化合物などが挙げられる。
α−ケトカルボニル化合物としては、たとえば、α−ジケトン、α−ケトアルデヒド、あるいはα−ケトカルボン酸エステルなどが挙げられる。具体的には、ジアセチル、2,3−ペンタジオン、2,3−ヘキサジオン、ベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−ジエトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、4,4’−ジクロルベンジル、4,4’−ニトロベンジル、α−ナフチル、β−ナフチル、カンファーキノン、カンファーキノンスルホン酸エステル、カンファーキノンカルボン酸エステルあるいは2,2’−シクロヘキサンジオンなどのα−ジケトン、メチルグリオキザールあるいはフェニルグリオキザールなどのα−ケトアルデヒド、ピルビン酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル、フェニルピルビン酸メチルあるいはフェニルピルビン酸ブチルなどのα−ケトカルボン酸エステルなどが挙げられる。
これらα−ケトカルボニル化合物のなかでは、安定性などの面からα−ジケトンを使用することが好ましく、α−ジケトンのなかではジアセチル、ベンジルあるいはカンファーキノンがより好ましく、カンファーキノンが特に好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、たとえば、ベンゾイルジメトキシホスフィンオキサイド、ベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
上述の光重合開始剤のなかでも、硬化深度の点からα−ケトカルボニル化合物がより好ましい。これらの光重合開始剤は単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合において、その重合開始能を向上および重合反応の促進させるために、重合促進剤を併用するのが好ましい。特に、光重合開始剤としてα−ケトカルボニル化合物を用いる場合には、アミン類のような還元性化合物を配合するのが効果的である。アミン類を具体的に例示すると、前記した化学重合開始剤において、有機過酸化物に組み合わせるものとして示した第三級芳香族アミンが好適に使用できる。
これらの中でも、塩基性が比較的低く、組成物中に含まれる酸性基含有重合性単量体の酸性基との中和反応が生じ難いことから、対応するアンモニウムイオンの25℃水中でのpKa値が9以下、特に好ましくはpKa値7以下のアミン化合物を用いるのが良好である。このような塩基性の低いアミン類は、一般には、第三級芳香族アミン化合物が該当し、上記例示したものの中から適宜採択すれば良い。中でもp−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが好適に用いられる。
これら光重合開始剤と組合せて使用するアミン類の配合量は、光重合開始剤の0.1〜10倍、より好ましくは0.3〜5倍の範囲であるのが一般的である。
〔歯科用接着性組成物〕
以上の各成分及び各種任意成分の所定量を十分に混練して、必要に応じて減圧下脱泡等することにより、本発明の歯科用接着性組成物が得られる。各成分の配合量は、特に制限されるものではなく、歯科用接着性組成物の用途に応じて、それぞれ有効量を配合すれば良い。酸性基含有重合性単量体a1)を酸性基非含有重合性単量体a2)と併用する場合であれば、(A)重合性単量体成分中において、酸性基含有重合性単量体a1)は、エナメル質及び象牙質の両方に対する接着強度を良好にする観点から、5質量%以上、より好ましくは5〜60質量%の範囲、特に好ましくは10〜40質量%の範囲で含有するのが好適である。また、本発明の特徴的成分である、表面に酸性基を有する無機粒子b1)は、歯牙への接着性の向上効果を十分に発揮させるためには、(A)酸性基含有重合性単量体を含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して5質量部以上、特に好適には15質量部以上、最も好適には20質量部以上の割合で配合するのが良好である。また、あまり多量に配合しても効果は頭打ちになり、且つ組成物が高粘度となるため、A)酸性基含有重合性単量体を含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して500質量部以下、特に300質量部以下の割合で配合するのが好ましい。
さらに、その他の任意成分の配合量を一般化して示せば、(B)無機充填材成分として、上記表面に酸性基を有する無機粒子b1)と共に、その他の無機充填材b2)も併用する場合は、その合計量は、あまり多量でも組成物が高粘度となることから、上記表面に酸性基を有する無機粒子b1)の好適な配合量の下限は満足しつつ、上限を超えない範囲で一部を代替して配合するのが好ましい。
また、(C)水は、多すぎると硬化体の機械的強度の低下や組成物の保存安定性低下の傾向があるため、その配合効果とのバランスを考えると、(A)酸性基含有重合性単量体を含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して、110質量部以下の範囲で使用するのが好ましい。また、(D)重合開始剤は、有効量であれば特に制限されるものではないが、(A)酸性基含有重合性単量体を含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して0.001〜10質量部であるのが好ましく、0.01〜5重量部であるのがより好ましい。
歯科用接着性組成物の用途別に、好ましい組成を示せば、歯科用プライマーの場合、
(A)酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分、
(B)表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分、及び
(C)水
とを含有する組成になる。各成分の配合割合は、
(A)酸性基含有重合性単量体a1)を5質量%以上含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して、
(B)無機充填材成分5〜35質量部であり、このうち5質量部以上を表面に酸性基を有する無機粒子b1)により占めるものとする。
(C)水15〜110重量部
であるのが好適である。さらに、これら歯科用プライマーには、操作性の向上と水の分散性を高めるために、親水性有機溶媒を配合することが望ましい。たとえば、アセトン、エタノールあるいはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒は揮発性が高く、後述の乾燥が容易になるため、好適に用いられる。親水性の有機溶媒の含有量は、上記した(A)重合性単量体成分100質量部に対して20〜400質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましい。
また、歯科用接着性組成物の用途が歯科用ボンディング材の場合、好ましい組成は、
(A)酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分、
(B)表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分、及び
(D)重合開始剤
とを含有する組成になる。各成分の配合割合は、
(A)酸性基含有重合性単量体a1)を5質量%以上含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して、
(B)無機充填材成分5〜35質量部であり、このうち5質量部以上を表面に酸性基を有する無機粒子b1)により占めるものとする
(D)有効量の重合開始剤
であるのが好適である。さらに、これら歯科用ボンディング材にも、セルフエッチング能を高めるために(C)水を含有させるのが好ましく、その配合量は、上記した(A)重合性単量体成分100質量部に対して2〜25重量部であるのが好ましい。さらに、係る歯科用ボンディング材にも、歯科用プライマーの場合と同様に親水性有機溶媒を同程度含有させるのが好ましい。
さらに、歯科用接着性組成物の用途が接着性コンボジットレジンの場合、好ましい組成は、
(A)酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分、
(B)表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分、及び
(D)重合開始剤
とを含有する組成になる。その配合割合は、(A)酸性基含有重合性単量体a1)を5質量%以上含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して、
(B)無機充填材成分100〜500質量部(より好ましくは120〜300質量部)であり、このうち15質量部以上を表面に酸性基を有する無機粒子b1)により占めるものとする
(D)有効量の重合開始剤
であるのが好適である。さらに、これら接着性コンポジットレジンにも、セルフエッチング能を高めるために(C)水を含有させるのが好ましく、その配合量は、上記した(A)重合性単量体成分100質量部に対して0.5〜10重量部であるのが好ましい。
さらに、歯科用接着性組成物の用途が歯科用レジンセメント場合、好ましい組成は、
(A)酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分、
(B)表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分、及び
(D)重合開始剤
とを含有する組成になる。その配合割合は、(A)酸性基含有重合性単量体a1)を5質量%以上含んでなる重合性単量体成分100質量部に対して、
(B)無機充填材成分100〜500質量部(より好ましくは120〜300質量部)であり、このうち30質量部以上を表面に酸性基を有する無機粒子b1)により占めるものとする
(D)有効量の重合開始剤
であるのが好適である。さらに、これら歯科用レジンセメントにも、セルフエッチング能を高めるために(C)水を含有させるのが好ましく、その配合量は、上記した(A)重合性単量体成分100質量部に対して0.5〜10重量部であるのが好ましい。
歯科用レジンセメントの場合、上記重合開始剤としては、通常、化学重合型、または該化学重合型と光重合型とが併用される。前記したとおり化学重合型重合開始剤は、2つ以上の成分からなり、使用時にこれらが混合されることにより、重合開始能が発揮されるようになるものであるため、その包装形態は2包装以上に分けたものになる。この場合、一方の包装には、酸性基含有重合性単量体a1)と表面に酸性基を有する無機系粒子b1)とが含有され、他方の包装には酸性基非含有重合性単量体b2)とその他の無機充填材b2)とが含有されるように、組成を分割するのが保存安定性の観点から好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。まず、使用した化合物とその略称、および各物性値の測定方法について説明する。
(1)使用した化合物とその略称
[酸性基含有重合性単量体]
PM:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェートおよびビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェートを質量比2:1の割合で混合した混合物
MHP:6−メタクリルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェートおよびビス(2−メタクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェートを質量比2:1の割合で混合した混合物
[酸性基非含有重合性単量体]
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
Bis−GMA:2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
[無機粒子]
F1:ヒュームドシリカ((株)トクヤマ製レオロシールQS−102、平均一次粒径0.01μm)。
F2:球状シリカ−ジルコニア(平均粒径0.4μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより表面処理したものと、球状シリカ−チタニア(平均粒径0.08μm)をγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランにより表面処理したものとを質量比7:3にて混合した混合物
[光重合開始剤]
CQ:カンファーキノン
BPO:ベンゾイルパーオキシド
[アミン類]
DMBE:p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
DEPT:p−トリルジエタノールアミン
[アリールボレート類]
PBTEOA:テトラフェニルホウ素のトリエタノールアンモニウム塩
[揮発性の親水性有機溶媒]
アセトン
[重合禁止剤]
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
(2)各物性値の測定方法
[無機粒子の平均一次粒子径]
無機粒子の平均一次粒子径は透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定した粒子に関し、観察された一次粒子300個の長径の平均値とした。
[無機粒子の比表面積]
無機粒子の表面に存在する酸性基量を求めるのに適用する比表面積は、比表面積測定装置(島津製作所製:フローソーブ2−2300型)を用いて、BET法(1点法)により求めた。粉体は予め窒素ガスフロー中で100℃で乾燥処理を1時間実施したものを測定に用いた。
[無機粒子の表面に存在する酸性基量の測定方法]
無機粒子表面に存在する酸性基量は、0.5mol/Lの濃度の塩化ナトリウム水溶液50ml中に、粒子3gを添加し24h攪拌することにより酸性基の対イオンをナトリウムイオンに交換してプロトンを遊離させた後、粒子をろ別し、得られたろ液を水酸化ナトリウム水溶液により中和滴定する方法により求めた値である。
[接着強度試験方法]
(歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験)
屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質および象牙質平面を削り出した。次に、削り出した平面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた。次に、この平面に直径3mmの穴を有する両面テープを貼り付け、さらに、厚さ0.5mmおよび直径8mmの穴を有するパラフィンワックスを、先に貼り付けられた両面テープの穴の中心に、パラフィンワックスの穴の中心をあわせて固定することで、模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に、歯科用プライマーを塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。更にその上に歯科用ボンディング材(3MESPE製スコッチボンド)を塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させ、さらに可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により可視光を10秒間照射した。さらにコンポジットレジン(トクヤマデンタル製エステライトシグマクイック)を充填し、ポリエステルシートで圧接し、充填後同じく可視光を10秒間照射して硬化させて、接着試験片を作製した。
上述の接着試験片のコンポジットレジン硬化体上面にレジンセメント(トクヤマデンタル製ビスタイトII)を塗布し、さらに直径8mm、長さ25mmの円筒状のSUS製アタッチメントを接着させた。37℃で15分レジンセメントを硬化させた後、試験片を37℃の水中に24時間浸漬した。その後試験片を万能試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/minにて引っ張り、歯牙とコンポジットレジン硬化体との引張り接着強度を測定した。引張接着強度の測定は、各実施例あるいは各比較例につき、各種試験片4本についてそれぞれ測定した。その4回の引張接着強度の平均値を、該当する実施例もしくは比較例の接着強度とした。
(歯科用接着性組成物が歯科用ボンディング材である場合における接着強度試験)
上述の歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法と同様に、研磨された牛の抜去前歯を用意し、両面テープとパラフィンワックスで同様の直径3mmの接着面を有する模擬窩洞を作製した。この模擬窩洞に、ボンディング材を塗布し、20秒間放置後、圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥した。可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により可視光照射を10秒間行いボンディング材を硬化させた。更にその上にコンポジットレジン(トクヤマデンタル製エステライトシグマクイック)を充填し、ポリエステルシートで圧接し、充填後同じく可視光を10秒間照射して硬化させて、接着試験片を作製した。
この接着試験片を用いて、上述の歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法と同様にして、歯牙とコンポジットレジン硬化体との接着強度を求めた。
(歯科用接着性組成物が接着性コンポジットレジンである場合における接着強度試験)
上述の歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法と同様にして、研磨された牛の抜去前歯を用意し、両面テープとパラフィンワックスで同様の直径3mmの接着面を有する模擬窩洞を作製した。この模擬窩洞に接着性コンポジットレジンを充填し、ポリエステルシートで圧接し、充填後30秒経過後に可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)により可視光照射を30秒間行い接着性コンポジットレジンを硬化させて、接着試験片を作製した。
この接着試験片を用いて、上述の歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法と同様にして、歯牙と接着性コンポジットレジン硬化体との接着強度を求めた。
(歯科用接着性組成物が歯科用レジンセメントである場合における接着強度試験)
上述のプライマーを用いた接着強度試験方法と同様に、研磨された牛の抜去前歯を用意し、該研磨した平面上に直径3mmの穴を有する両面テープを張り付けた。歯科用レジンセメントのペースト(1)とペースト(2)を等量ずつ採取し、30秒練和したペーストを、両面テープで作製した直径3mmの穴に填入し、その上面に直径8mmのSUS製アタッチメントを接着させた。試験片を37℃湿度100%で1時間保持後、37℃の水中に24時間浸漬し、歯科用レジンセメントを硬化させて、接着試験片を作製した。
この接着試験片を用いて、上述の歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法と同様にして、歯牙と歯科用レジンセメント硬化体との接着強度を求めた。
製造例1
平均一次粒径が0.01μmのヒュームドシリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS−102」)粉末50gをポリテトラフルオロエチレンでライニングされた内容積1.5Lの円筒容器に入れ、攪拌状態にした。窒素ガスをフローし容器内の空気を窒素に置換した後、攪拌状態を継続した。2−メタクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート5g、トリエチレングリコールジメタクリレート1g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.25gの混合液体を攪拌状態のヒュームドシリカ粉体上に噴霧後、2時間混合、攪拌することで、粒子粉末全体に均一に液体をなじませた。その後、窒素雰囲気下で100℃2時間加熱攪拌することで、粒子表面の液体を重合させ、リン酸基を表面に有する重合体で被覆されたフュームドシリカ粒子を得た。得られたフュームドシリカ粒子の比表面積を測定したところ170m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ2.52μmol/mであった。
製造例2
ゾルゲル法にて合成した平均粒子径が0.2μmのシリカ−ジルコニア粒子(屈折率nD=1.52)の粉末100gをポリテトラフルオロエチレンでライニングされた内容積0.5Lの円筒容器に入れ、攪拌状態にした。容器内の空気を真空排気後に窒素ガスを導入し常圧に戻す操作を5回繰り返し、内部の空気を窒素に置換した。2−メタクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート0.63g、トリエチレングリコールジメタクリレート0.17g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.06gの混合液体をシリカ−ジルコニア粉体上に噴霧後、2時間混合攪拌することで、粒子粉末全体に均一に液体をなじませた。その後、窒素雰囲気下で100℃2時間加熱攪拌することで、粒子表面の液体を重合させ、リン酸基を表面に有する重合体で被覆されたシリカ−ジルコニア粒子を得た。
得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ12.8m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ2.11μmol/mであった。
製造例3
2−メタクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート0.12g、トリエチレングリコールジメタクリレート0.033g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.012gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、リン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ14.6m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ0.35μmol/mであった。
製造例4
2−メタクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート0.3g、トリエチレングリコールジメタクリレート0.08g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.03gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、リン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ14.1m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ0.91μmol/mであった。
製造例5
2−メタクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート0.4g、トリエチレングリコールジメタクリレート0.11g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.04gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、リン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ13.5m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ1.27μmol/mであった。
製造例6
2−メタクリロキシエチルジハイドロジェンホスフェート1g、トリエチレングリコールジメタクリレート0.27g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、リン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ12.1m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ3.54μmol/mであった。
製造例7
2−メタクリロキシエチルジビドロキシフォスフェートを0.63gの代わりにビニルホスホン酸0.32gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、ホスホン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ13.2m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ2.05μmol/mであった。
製造例8
2−メタクリロキシエチルジビドロキシフォスフェート0.63gの代わりに2−メチル2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸0.47gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.13gと水0.1gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、スルホン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ13.3m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ1.35μmol/mであった。
製造例9
2−メタクリロキシエチルジビドロキシフォスフェート0.63gの代わりに2−メチル2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸0.81gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.22gと水0.17gを使用する以外は製造例2に記載した方法で処理し、スルホン酸基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ12.1m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ2.54μmol/mであった。
製造例10
2−メタクリロキシエチルジビドロキシフォスフェート0.63gの代わりにメタクリル酸0.26gを使用する以外は製造例5に記載した方法で処理し、カルボキシル基を表面に有するシリカ−ジルコニア粒子100gを得た。得られたシリカ−ジルコニア粒子の比表面積を測定したところ13.9m/gであった。また、その表面に存在する酸性基量を測定したところ1.94μmol/mであった。
実施例1及び2
製造例1で製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用い、表1に示した組成の歯科用プライマーをそれぞれ調整した。得られた各歯科用プライマーについて、歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表1にそれぞれ示した。
比較例1
実施例2において、製造例1で製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用いるのに代えて、表面処理を施していないヒュームドシリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS−102」)を同量使用する以外は同様にして歯科用プライマーを調製した。得られた歯科用プライマーについて、歯科用接着性組成物が歯科用プライマーである場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表1に示した。
Figure 0005914071
実施例3〜4
製造例1で製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用い、表2に示した組成の歯科用ボンディング材をそれぞれ調整した。得られた各歯科用ボンディング材について、歯科用接着性組成物が歯科用ボンディング材である場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表2にそれぞれ示した。
比較例2
実施例4において、製造例2で製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用いるのに代えて、表面処理を施していないヒュームドシリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS−102」)を同量使用する以外は同様にして歯科用ボンディング材を調製した。得られた歯科用ボンディング材について、歯科用接着性組成物が歯科用ボンディング材である場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表2に示した。
Figure 0005914071
実施例5〜21
製造例2〜10のいずれかで製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用い、表3に示した組成の接着性コンポジットレジンをそれぞれ調整した。得られた各接着性コンポジットレジンについて、歯科用接着性組成物が接着性コンポジットレジンである場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表3にそれぞれ示した。
比較例3〜4
実施例8および10において、製造例2で製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用いるのに代えて、表面にメタクリロキシ基を有する粒子F2を使用し、該粒子F2を総量で230質量部使用する以外は同様にして接着性コンポジットレジンをそれぞれ調製した。得られた各接着性コンポジットレジン材について、歯科用接着性組成物が歯科用ボンディング材である場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表3にそれぞれ示した。
Figure 0005914071
実施例22〜38
製造例2〜10のいずれかで製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用い、表4に示した組成のペースト(1)と表5示した組成のペースト(2)とからなる歯科用レジンセメントをそれぞれ調製した。得られた各歯科用レジンセメントについて、歯科用接着性組成物が歯科用レジンセメントである場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表6にそれぞれ示した。
比較例5〜6
実施例25および27において、製造例2で製造した表面に酸性基を有する無機粒子b1)を用いるのに代えて、表面にメタクリロキシ基を有する粒子F2を使用し、該粒子F2を総量で115質量部使用する以外は同様にして歯科用レジンセメントをそれぞれ調製した。得られた各歯科用レジンセメント材について、歯科用接着性組成物が歯科用レジンセメントである場合における接着強度試験方法を実施した。結果を表6にそれぞれ示した。
Figure 0005914071
Figure 0005914071
Figure 0005914071

Claims (11)

  1. 酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分(A)、及び
    表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分(B)
    を含有してなる歯科用接着性組成物であって、
    表面に酸性基を有する前記無機粒子b1)が、複数の重合性基を有する重合性単量体を含む重合性組成物を重合硬化した架橋重合体で被覆された無機粒子であることを特徴とする歯科用接着性組成物。
  2. 表面に酸性基を有する前記無機粒子b1)が、複数の重合性基を有する酸性基含有重合性単量体を含む重合性組成物、又は酸性基含有重合性単量体と複数の重合性基を有する酸性基非含有重合性単量体とを含む重合性組成物を重合硬化した架橋重合体で被覆された無機粒子である、請求項1に記載の歯科用接着性組成物。
  3. 表面に酸性基を有する無機系粒子b1)の酸性基が、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2記載の歯科用接着性組成物。
  4. 酸性基含有重合性単量体a1)の酸性基が、リン酸基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
  5. さらに、水(C)を含有してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
  6. 請求項5記載の歯科用接着性組成物からなる歯科用プライマー。
  7. さらに、重合開始剤(D)を含有してなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用接着性組成物。
  8. 請求項7記載の歯科用接着性組成物からなる歯科用ボンディング材。
  9. 請求項7記載の歯科用接着性組成物からなる接着性コンポジットレジン。
  10. 請求項7記載の歯科用接着性組成物からなる歯科用レジンセメント。
  11. 酸性基含有重合性単量体a1)を含んでなる重合性単量体成分(A)、及び表面に酸性基を有する無機粒子b1)を含んでなる無機充填材成分(B)を含有してなる歯科用接着性組成物の製造方法であって、
    表面に酸性基を有する前記無機粒子b1)が、酸性基を導入可能な官能基を有する重合性単量体と2つ以上の重合性基を有する架橋性単量体とを含む重合性組成物を重合硬化させることで架橋重合体で被覆された無機粒子を得、該官能基に酸性基を導入する方法で製造されたことを特徴とする請求項1に記載の歯科用接着性組成物の製造方法。
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