JP5663936B2 - 永久磁石式回転電機 - Google Patents
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Description
この永久磁石式回転電機の一例しとして埋込磁石式回転電機が挙げられる。
この埋込磁石式回転電機は、回転子を構成する回転子コア内に埋込んだ永久磁石を備えている。この永久磁石から発生する磁束を固定子に備える励磁コイルとの鎖交磁束量に応じて発生するマグネットトルクに加えて、回転子鉄心の磁気抵抗を利用したリラクタンスを利用した回転電機である。
この種の埋込磁石式回転電機としては、1極当たりの永久磁石をロータ半径方向に2層以上に分割し、永久磁石の夫々の端部がロータ外周に近接する位置まで延びるようにロータ中心側に凸の円弧形状に構成し、永久磁石間に磁束の通路を設けるようにした永久磁石埋め込みモータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、リラクタンストルクを向上させながら製造コストを低減することができる永久磁石式回転電機を提供することを目的としている。
そして、前記回転子は、回転子コア内に軸方向に貫通して形成された回転中心軸側から外周側に向かって開くV字形状に配置された一対のスロットが半径方向に2層構造となるように形成されている。各スロット内には、円周方向に隣接する磁極が異極性となり且つ当該スロット内の両端に空隙を形成するように永久磁石が挿入保持されている。
また、本発明の他の形態に係る永久磁石式回転電機は、前記回転子の磁極数を6に設定し、前記最適距離指標γがγ≦0.14に設定されている。
また、本発明の他の形態に係る永久磁石式回転電機は、前記外周側永久磁石の回転子外周側の空隙が三角形状に形成され、前記内周側永久磁石の回転子外周側の空隙が四角形状に形成されている。
図1は本発明に係る永久磁石式回転電機の概要を示す断面図である。
この図1において、1は埋込磁石式回転電機で構成されている永久磁石式回転電機である。この永久磁石式回転電機1は、例えば円筒状の固定子2と、この固定子2の内周面に所定の空隙3を介して対向し、回転軸4に取付けられて回転自在に支持された回転子5とを備えている。
磁極12には、回転子コア11の外周面から内側に頂部が回転中心側となり、外周側に向かって開く内側角φが鈍角のV字形状となるように一対の永久磁石スロット13a,13b及び14a,14bが半径方向に2層構造で軸方向に貫通して形成されている。これら永久磁石スロット13a,13b及び14a,14bは、磁極12の円周方向の中心線Lcを中心として線対称に形成されている。
ここで、永久磁石スロット13a,13b及び14a,14b内の永久磁石15a,15b及び16a,16bの内側端部には三角形状の空隙17iが形成され、外側端部には正方形の空隙17oが形成されている。
T=PnΨaiq+Pn(Ld−Lq)idiq …………(1)
ここで、Pnは極対数、Ψaは永久磁石による電機子鎖交磁束、idはd軸電流、iqはq軸電流、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンスである。
この(1)式において、右辺第1項は永久磁石の作る磁束によるトルクとなり、右辺第2項はリラクタンストルクとなる。
本発明での着眼点は、リラクタンストルクの最大化であり、すなわちd軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差を大きくすることである。通常、d軸電流idは負とするので、リラクタンストルクを増加させるにはq軸インダクタンスLqを大きくし、d軸インダクタンスLdを小さくする。
このため、内周側永久磁石15a,15bと外周側永久磁石16a,16bとの磁石間距離βの大きさによってq軸磁束Ψqの流れ易さが変化することは明らかである。
そこで、回転子5の半径をα〔mm〕とし、内周側永久磁石15a,15bと外周側永久磁石16a,16bとの磁石間距離をβ〔mm〕としたとき、磁石間距離比率(β/α)に基づいてトルクを最大する最適距離指標γを決定し、決定した最適距離指標γとなるように磁石間距離β及び回転子5の半径αを設定する。
この図3の構成を有する永久磁石式回転電機1について磁界解析によってq軸インダクタンスLqを求める。
また、比較のため、図4に示す1層モデルすなわち内周側永久磁石15a,15bと外周側永久磁石16a,16bとの間の磁石間距離βを“0”に設定して1対の永久磁石18a,18bを有する永久磁石式回転電機1についても磁界解析を行った。
この図5から明らかなように、最適距離指標γの増加によりq軸インダクタンスLqが増加することが分かる。しかし、最適距離指標γが0.1を超えるとq軸インダクタンスLqは、飽和特性を示し、1.4倍程度までしか増加しないことが分かる。なお、ここでは図示を省略するがd軸インダクタンスLdは最適距離指標γが増加しても略一定値であった。
図6に、電流値を一定としたときのトルク解析結果を示す。電流位相は、10度刻みで変化させて解析を実施した。ここでも、図3の1層モデル(最適距離指標γ=0)のトルクを“1”としている。
この図6から明らかなように、最適距離指標γがおよそ0から0.02までの間は、直線状にトルクが増加し、0.02〜0.04では略一定となった後、再び増加する。ここで、トルクが最大となった電流位相につき、最適距離指標γが0.02までは電流位相が30度でトルクが最大となり、最適距離指標γが0.04付近においては、トルクが最大となる電流位相が30度から40度の間にあるため、最適距離指標γが0.02〜0.04の間でトルクが一定となっていると考えられる。
そして、最適距離指標γがおよそ0.083でトルクが最大となり、その後最適距離指標γの増加に対してトルクが低下していくことが分かる。これは最適距離指標γの増加により、q軸インダクタンスLqが増加してリラクタンストルクが増加する一方、マグネットトルクが低下するためと考えられる。
以上の結果から、トルク増大効果が十分に得られる最適距離指標γを下記(2)式のように選定することにより、トルクが大きくなる埋込磁石式回転電機を得ることができる。
γ≦0.14 …………(2)
より好ましくは最適距離指数γをトルクが1.05以上となる下記(3)式の範囲内に設定することが好ましい。
0.02≦γ≦0.14 …………(3)
なお、図1〜図4及び図7に示す回転子5の隣接する磁極間のブリッジは、漏れ磁束を低減する上で可能な限り細くすることが望ましい。しかし、遠心力による破壊を防止する上で、回転子コアに用いる電磁鋼板の板厚の1倍〜5倍程度に設定することが望ましい。
なお、上記実施形態においては、6極36スロットの永久磁石式回転電機1を構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意の極数且つスロット数で永久磁石式回転電機1を構成することができる。
Claims (4)
- 励磁コイルを巻装した固定子と、該固定子と所定の空隙を隔てて対向して回転自在に支持され永久磁石が埋め込まれた回転子とを備えた永久磁石式回転電機であって、
前記回転子は、回転子コア内に軸方向に貫通して形成された回転中心軸側から外周側に向かって開くV字形状に配置された一対のスロットを半径方向に2層構造となるように形成し、
前記各スロット内に、円周方向に隣接する磁極が異極性となり且つ当該スロット内の両端に空隙を形成するように永久磁石を挿入保持し、
前記回転子の半径をα〔mm〕とし、2層構造の外周側永久磁石と内周側永久磁石との磁石間距離をβ〔mm〕としたとき、磁石間距離比率(β/α)で表される最適距離指標γを設定し、電流値を一定とし、電流位相を所定角度刻みで変化させたときに、トルクが最大となった電流位相について最適距離指標γ及びトルクの関係を表す磁界解析結果を参照して、必要とするトルクに応じた最適距離指標γを決定し、決定した最適距離指標γとなるように磁石間距離β及び前記回転子の半径αを設定した
ことを特徴とする永久磁石式回転電機。 - 前記磁石間距離βを大きくして、前記外周側永久磁石を外周面側へ設置する場合の当該磁石間距離βの上限値が、当該外周側永久磁石の軸方向断面形状が正方形となるときの前記磁石間距離βに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記回転子の磁極数を6に設定し、前記最適距離指標γをγ≦0.14に設定したことを特徴とする請求項2に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記外周側永久磁石の回転子外周側の空隙を三角形状に形成し、前記内周側永久磁石の回転子外周側の空隙を四角形状に形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
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