JP5656104B2 - Fe−Co−Ni系合金スパッタリングターゲット材 - Google Patents
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Description
このような磁気記録媒体の軟磁性膜としては、優れた軟磁気特性が要求されることから、アモルファス軟磁性合金が採用されている。代表的な軟磁性膜用アモルファス合金として、Fe、CoあるいはFe−Co合金に添加元素を含む合金膜、Co−Zr−Nb合金膜、Co−Zr−Ta合金膜などが既に実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
このような要求に対して、スパッタリング後の軟磁性膜としては飽和磁束密度大きいが、ターゲット材としては十分な漏洩磁束が得られ、飽和磁束密度が低くなる材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明のスパッタリングターゲット材は、その焼結組織中に、35原子%以下のNi、15原子%以下のCoを含有するFeを主体とする結晶相を有し、ターゲット材の10mm2以上の領域をX回折強度測定した時の当該Feを主体とする結晶相のFeを主体とするfcc相の(200)面からのX線回折ピーク強度(Ifcc(200))とFeを主体とするbcc相の(200)面からのX線回折ピーク強度(Ibcc(200))との比Ifcc(200)/Ibcc(200)が10以上になるように組織制御を行う。
本発明のFeを一定組成比以上含むFe−Co−Ni合金においては、Feが最も磁気モーメントが高いため、Feを主体とする結晶相の磁化を低減することが、Fe−Co−Ni系合金スパッタリングターゲット材の透磁率の低減において重要となる。
一般にFeは磁気モーメントの大きいbcc相が安定であるが、fcc相は比較的磁気モーメントが小さい相となる。そこで、本発明においては、Feを主体とする結晶相において、fcc相の(200)面からのX線回折ピーク強度(Ifcc(200))とbcc相の(200)面からのX線回折ピーク強度(Ibcc(200))との比Ifcc(200)/Ibcc(200)が10以上となるように、Feを主体とする結晶相として安定的にfcc相を形成することで透磁率のさらなる低減を実現するものである。
なお、X線回折強度は、ターゲット材の10mm2以上の面積の領域にX線を照射した場合の回折強度として測定する。
なお、本来、最密面であるfcc相(111)面とbcc相(110)面のX線回折ピーク強度比を比較することが好ましいが、fcc相(111)面とbcc相(110)はピーク位置が隣接するため、bcc相からのピークはfcc相からのいずれのピークとも隣接しない(200)面を選定した。また、bcc(200)面のピーク強度は比較的弱いためIfcc(200)/Ibcc(200)が10以上でなければターゲット材の磁化低減に十分なfcc相の量比とはならない。
本発明のFe−Co−Ni系合金スパッタリングターゲット材は、Feを主体とする結晶相として安定的にfcc相を形成することに特徴を有するため、ターゲットを焼結法で作製する際には、Feはfcc構造を有する原料粉末として用いるのが良い。例えば、35原子%以下のNi、15原子%以下のCoを含有する残部Feからなるfcc構造のFeを主体とする合金粉末を必須の原料粉末とする。
焼結に適用する原料粉末の組合せとしては、上記のFeを主体とする合金粉末とその他の1種の合金粉末で所望のターゲット組成になることが好ましいが、Feを主体とする合金粉末と複数の合金粉末や純金属粉末を用いても本発明の効果は得られる。
本発明のターゲット材は、Feを主体とする合金粉末を必須で用い、所望のターゲット組成となるように準備した複数の粉末を混合して焼結を行うことで得られる。焼結方法としては、焼結温度800℃〜1100℃、加圧圧力50MPa以上の加圧焼結法、具体的には熱間静水圧プレス、ホットプレス、通電焼結、押し出し焼結等を用いることが可能である。さらに、焼結後の冷却過程で550℃以上かつ焼結温度以下の温度から水冷等の急冷を行うか、一旦冷却した後に550℃以上かつ焼結温度以下に加熱を行いその後の冷却過程で水冷等の急冷を行うことで、Feを主体とする結晶相をfcc相としてより安定して形成可能になる。
Fe−29原子%Ni、Co−25原子%Zr、Co−20原子%Nb、純Co、純Niのガスアトマイズ粉末を準備した。
まず、試料1では、上記で準備したFe−29原子%Ni、Co−25原子%Zr、Co−20原子%Nb、純Co、純Niのガスアトマイズ粉末をそれぞれ網目250μmの篩で篩い分けをして、篩を通過した粉末を原料粉末とした。上記の原料粉末を((Fe66−Ni34)38−Co62)92−Nb4−Zr4(原子%)[原子比でFe:Ni=66:34かつ(Fe+Ni):Co=38:62、Nb:4原子%、Zr:4原子%]となるよう原料粉末を秤量、混合して混合粉末を作製した。得られた混合粉末を、軟鋼カプセルに充填し脱気封止した後、温度950℃、圧力100MPa、保持時間2時間の条件で熱間静水圧プレス(HIP)によって加圧焼結し、焼結体を作製した。
また、試料2の焼結体の一部を切り出し600℃に加熱後30分保持し、水冷で常温まで冷却した焼結体を試料3とした。
なお、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)による観察から、試料2および3のターゲット材のFeを主体とする結晶相は、Niを29原子%含有するFeを主体とする相であることを確認した。
試料4では、まず、Co−10原子%Ta−2原子%Zr粉末(−250μm)、Co−19原子%Al粉末(−250μm)のガスアトマイズ粉末と、実施例1の試料2で使用した篩分けをしたFe−29原子%Ni(74−250μm)、Co−25原子%Zr(−250μm)、純Co(−250μm)、純Ni(−250μm)のガスアトマイズ粉末を準備した。これらの各粉末を((Fe65−Ni35)37−Co63)90−Ta3−Zr5−Al2(原子%)[原子比でFe:Ni=65:35かつ(Fe+Ni):Co=37:63、Ta:3原子%、Zr:5原子%、Al:2原子%]となるよう原料粉末を秤量、混合して混合粉末を作製した。得られた混合粉末を、軟鋼カプセルに充填し脱気封止した後、温度950℃、圧力100MPa、保持時間2時間の条件で熱間静水圧プレス(HIP)によって加圧焼結し、焼結体を作製した。
また、試料4の焼結体の一部を切り出し600℃に加熱後30分保持し、水冷で常温まで冷却した焼結体を試料5とした。
なお、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)による観察から、試料4および5のターゲット材のFeを主体とする結晶相は、Niを29原子%含有するFeを主体とする相であることを確認した。
試料6では、まず、Co−10原子%Zr(−250μm)、Co−37原子%B(−250μm)のガスアトマイズ粉末、純Ti粉末(−250μm)と、実施例1の試料2で使用した篩分けをしたFe−29原子%Ni(74−250μm)、純Co(−250μm)のガスアトマイズ粉末を準備した。これらの各粉末を((Fe71−Ni29)65−Co35)92−Zr3−B3−Ti2(原子%)[原子比でFe:Ni=71:29かつ(Fe+Ni):Co=65:35、Zr:3原子%、B:3原子%、Ti:2原子%]となるよう原料粉末を秤量、混合して混合粉末を作製した。得られた混合粉末を、軟鋼カプセルに充填し脱気封止した後、温度950℃、圧力100MPa、保持時間2時間の条件で熱間静水圧プレス(HIP)によって加圧焼結し、焼結体を作製した。
また、試料6の焼結体の一部を切り出し600℃に加熱後30分保持し、水冷で常温まで冷却した焼結体を試料7とした。
なお、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)による観察から、試料6、7のターゲット材のFeを主体とする結晶相は、Niを29原子%含有するFeを主体とする相であることを確認した。
Claims (2)
- 原子比でFe:Ni=90:10〜65:35、かつ(Fe+Ni):Co=90:10〜10:90の組成比を有する焼結体からなるFe−Co−Ni系合金スパッタリングターゲット材であって、
前記ターゲット材の焼結組織中に、35原子%以下のNi、15原子%以下のCoを含有するFeを主体とする結晶相を有し、かつターゲット材の10mm2以上の領域をX線回折強度測定した時の前記Feを主体とする結晶相のFeを主体とするfcc相の(200)面からのX線回折ピーク強度(Ifcc(200))とFeを主体とするbcc相の(200)面からのX線回折ピーク強度(Ibcc(200))の比Ifcc(200)/Ibcc(200)が10以上、最大透磁率が27以下であることを特徴とするFe−Co−Ni系合金スパッタリングターゲット材。 - (Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、B、Al、Si)から選ばれる1種もしくは2種以上の元素を10原子%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のFe−Co−Ni系合金スパッタリングターゲット材。
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