JP2016149170A - Fe−Co−Nb系合金スパッタリングターゲット材および軟磁性膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 原子比における組成式が、(Fea−Co1−a)100−b−c−Nbb−Mc、0.05≦a≦0.75、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、Mo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、で表され、残部が不可避的不純物からなり、且つFe、Co、NbおよびM元素の外殻電子数をそれぞれNFe、NCo、NNb、NMとしたときに、下記の数式1で算出される外殻電子数Nが7.90≦N≦8.30を満たすFe−Co−Nb系合金スパッタリングターゲット材。
【数1】
【選択図】 図1
Description
このような軟磁性膜の形成には、一般的にスパッタリングターゲット材を用いたスパッタリング法が適用されており、例えば、Fe−Co合金に、Ta、Nb、Mo、CrおよびW等を添加したFe−Co系合金のスパッタリングターゲット材が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1に開示される組成範囲のFe−Co系合金スパッタリングターゲット材を用いて軟磁性膜を形成したところ、飽和磁束密度が低いために、磁気ヘッドからの書き込み磁界の引き込み性が悪くなる場合があることを確認した。
本発明の目的は、スパッタリング時のスパッタリングターゲット材の割れを抑制した上で、高い飽和磁束密度を有する軟磁性膜を形成するためのFe−Co−Nb系合金スパッタリングターゲット材およびそのターゲット材を用いて得られる軟磁性膜を提供することである。
本発明のスパッタリングターゲット材のベースとなるFe−Co合金は、原子比における組成式が(Fea−Co1−a)、0.05≦a≦0.75で表される組成範囲にすることで、スパッタリングして得られる軟磁性膜で高い飽和磁束密度を確保することができる。中でも、Fe添加量(組成式中のa)としては、上記と同様の理由から、0.20≦a≦0.65の範囲が好ましい。
また、Nbは、電位−pH図においてpHの広範囲に亘って緻密な不動態被膜を形成することが示されていることから、得られる軟磁性膜の耐食性を向上させる効果を有する。
本発明では、Nbの添加量を3原子%以上にすることにより、形成される軟磁性膜をアモルファス構造にすることができる上、耐食性を向上させることもできる。また、本発明では、Nbの添加量を14原子%以下にすることにより、高い飽和磁束密度を得ることができる。中でも、Nb添加量(組成式中のb)としては、上記と同様の理由から、4≦b≦12の範囲が好ましい。尚、本発明では、Nbを一部または全てをTa、Vと置換が可能である。
また、本発明では、M元素の添加量を19原子%以下とし、且つM元素とNbとの合計を24原子%以下にすることで、得られる軟磁性膜で高い飽和磁束密度を得ることができる。中でも、M元素の添加量(組成式中のc)としては、上記と同様の理由から、6≦c≦16の範囲が好ましく、Nbとの複合添加量(組成式中のb+c)としては、16≦b+c≦20の範囲が好ましい。
外殻電子数Nは、スレーター・ポーリング曲線でも示されるように、磁気特性と強い相関があり、結晶合金の場合には、FeとCoの比が65:35における外殻電子数Nが8.35付近で最大の飽和磁束密度を示すことが知られている。
一方、本発明者の検討によると、アモルファス合金の場合には、結晶合金とは異なり、外殻電子数Nが8.00で最大の飽和磁束密度が得られ、外殻電子数Nが8.00よりも小さいか大きいと、飽和磁束密度が低下することを確認した。
そして、スパッタリングターゲット材の外殻電子数Nが7.90未満では、キュリー温度が低下することに伴って、飽和磁束密度が急峻に低下してしまう。一方、スパッタリングターゲット材の外殻電子数Nが8.00より大きい場合には、緩やかに飽和磁束密度が低下するものの、スパッタリングターゲット材の外殻電子数Nが8.30を超える場合には、飽和磁束密度の低下量が大きくなってしまう。このため、本発明では、スパッタリングターゲット材の外殻電子数Nを7.90≦N≦8.30の範囲にする。これにより、本発明のスパッタリングターゲット材は、高い飽和磁束密度を得ることができる。より好ましい外殻電子数Nは、7.95≦N≦8.20の範囲である。
Fe−Coに対するNiの置換量としては、原子比で0.30以下であることが好ましい。0.30を超えると飽和磁束密度が低下する。より好ましくは原子比で0.25以下である。
尚、本発明のFe−Co−Nb系合金スパッタリングターゲット材は、Ti、Zr、Hf、B、Al、CおよびSiから選ばれる1種以上を0〜10原子%含有させることができる。これは、Ti、Zr、Hf、B、Al、CおよびSiの添加により形成される軟磁性膜おいて、安定なアモルファス構造が得られ、硬度も向上させる補助的な役割を有するからである。Ti、Zr、Hf、B、Al、CおよびSiの添加量が10原子%を超えると軟磁気特性が低下する。
また、粉末焼結法では、原料粉末を例えば熱間静水圧プレス、ホットプレス、放電プラズマ焼結、押し出しプレス焼結等の加圧焼結することにより製造できる。中でも、熱間静水圧プレスは、以下に述べる加圧焼結条件を安定して実現できるため、好適である。
また、最終組成に調整した粉末を加圧焼結する方法では、Nbを含有する金属間化合物相を安定的に微細で均一分散できる効果を有する。本発明では、最終組成の合金粉末の紛体組成物を加圧焼結することが好ましい。
また、上述の加圧焼結における加圧圧力は、100MPa以上にすることで、焼結の進行を助長し、空孔の発生を抑制することができる。また、加圧圧力を200MPa以下にすることで、焼結時にスパッタリングターゲット材への残留応力の導入が抑制され、焼結後の割れの発生を抑制することができる。このため、本発明では、加圧圧力を100〜200MPaとすることが好ましい。尚、より空孔の形成を最小限に低減し、残留応力の導入をさらに抑制するためには、120〜160MPaの加圧圧力で焼結することがより好ましい。
また、上述の加圧焼結における焼結時間は、1時間以上にすることで、焼結の進行を助長し、空孔の発生を抑制することができる。また、焼結時間を10時間以下とすることで、製造効率を悪化させないでNbを含有する金属間化合物相の成長を抑制して製造できる。このため、本発明では、焼結時間を1〜10時間とすることが好ましい。尚、より空孔の形成を最小限に低減し、Nbを含有する金属間化合物相の成長をさらに抑制するためには、1〜3時間の焼結時間で焼結することがより好ましい。
純度99.9%以上の純Coガスアトマイズ粉末とFe53−Co29−Nb9−Mo9(原子%)合金ガスアトマイズ粉末と、純度99.9%以上のNb粉末およびMo粉末を準備し、(Fe0.45−Co0.55)82−Nb9−Mo9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが8.00となるように、秤量、混合して混合粉末を作製した。
上記の混合粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度950℃、圧力120MPa、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレス法により焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの本発明例1となるスパッタリングターゲット材を得た。
純度99.9%以上の純Coアトマイズ粉末とFe52.65−Co28.35−Nb10−Mo9(原子%)合金ガスアトマイズ粉末と、Co80−Nb20(原子%)合金ガスアトマイズ粉末と純度99.9%以上のMo粉末を準備し、(Fe0.30−Co0.70)80−Nb9−Mo9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが8.12となるように、秤量、混合して混合粉末を作製した。
上記の混合粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度950℃、圧力120MPa、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレス法により焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの本発明例2となるスパッタリングターゲット材を得た。
それぞれ純度99.9%以上のFe53.3−Co28.7−Nb9−W9(原子%)、Fe24.6−Co57.4−Nb9−W9(原子%)合金組成となるガスアトマイズ粉末を準備し、(Fe0.45−Co0.55)82−Nb9−W9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが8.00となるように、秤量、混合して混合粉末を作製した。
上記の混合粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度950℃、圧力120MPa、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレス法により焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの本発明例3となるスパッタリングターゲット材を得た。
純度99.9%以上のFe24.6−Co57.4−Nb9−W9(原子%)合金ガスアトマイズ粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度950℃、圧力120MPa、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレス法により、Fe24.6−Co57.4−Nb9−W9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが8.12の焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの本発明例4となるスパッタリングターゲット材を得た。
それぞれ純度99.9%以上のFe24.6−Co57.4−Nb9−W9(原子%)、Co80−Nb20(原子%)、Co95−Nb5(原子%)合金組成となる各ガスアトマイズ粉末と、純度99.9%以上のW粉末を準備し、(Fe0.15−Co0.85)82−Nb9−W9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが8.25となるように、秤量、混合して混合粉末を作製した。
上記の混合粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度950℃、圧力120MPa、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレス法により焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの実施例5となるスパッタリングターゲット材を得た。
純度99.9%以上のFe53−Co29−Nb9−Mo9(原子%)合金ガスアトマイズ粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度1250℃、圧力120MPa、保持時間2時間の条件で熱間静水圧プレス法により、Fe53−Co29−Nb9−Mo9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが7.84の焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの従来例1となるスパッタリングターゲット材を得た。
純度99.9%以上の(Fe0.65−Co0.35)82−Nb9−W9(原子%)合金ガスアトマイズ粉末を軟鋼製の加圧容器に充填し脱気封止した後に、温度1250℃、圧力120MPa、保持時間2時間の条件で熱間静水圧プレス法により、(Fe0.65−Co0.35)82−Nb9−W9(原子%)合金組成で外殻電子数Nが7.84の焼結体を作製した。この焼結体を機械加工により直径180mm、厚さ7mmの従来例2となるスパッタリングターゲット材を得た。
そして、寸法75mm×25mmのガラス基板上に膜厚40nmの軟磁性膜を形成し、X線回折測定用の試料を作製した。
また、寸法10mm×10mmのSiウエハ基板上に膜厚300nmの軟磁性膜を形成し、磁気特性評価用の試料を作製した。
尚、軟磁性膜を形成するスパッタリングは、Arガス圧0.6Pa、投入電力1kWの条件で行った。
Claims (2)
- 原子比における組成式が、(Fea−Co1−a)100−b−c−Nbb−Mc、0.05≦a≦0.75、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、Mo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、で表され、残部が不可避的不純物からなり、且つFe、Co、NbおよびM元素の外殻電子数をそれぞれNFe、NCo、NNb、NMとしたときに、下記の数式1で算出される外殻電子数Nが7.90≦N≦8.30を満たすことを特徴とするFe−Co−Nb系合金スパッタリングターゲット材。
- 請求項1に記載のFe−Co−Nb系合金スパッタリングターゲット材をスパッタリングして形成された軟磁性膜であって、前記軟磁性膜の飽和磁束密度が505emu/cc以上であることを特徴とする軟磁性膜。
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