JP2008115461A - Co−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 原子比における組成式が(CoX−Fe100−X)100−(Y+Z)−ZrY−MZ、20≦X≦70、2≦Y≦15、2≦Z≦10で表され、前記組成式のM元素が(Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si、Al、Mg)から選ばれる1種または2種以上の元素であるスパッタリングターゲット材であって、ミクロ組織におけるHCP−Coからなる相とFeを主体とする合金相とが微細に分散しているCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材である。
【選択図】 図1
Description
このため、最近では、上記合金膜の代替候補としてCo−Fe−Zr系合金膜が特に有望視されている。
本発明の目的は、強い漏洩磁束が得られる透磁率が低く使用効率が高いCo−Fe−Zr系合金ターゲット材およびその製造方法を提供することである。
すなわち、本発明は原子比における組成式が(CoX−Fe100−X)100−(Y+Z)−ZrY−MZ、20≦X≦70、2≦Y≦15、2≦Z≦10で表され、前記組成式のM元素が(Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si、Al、Mg)から選ばれる1種または2種以上の元素であるスパッタリングターゲット材であって、ミクロ組織においてHCP−Coからなる相とFeを主体とする合金相とが微細に分散しているCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材である。
また、前記合金粉末は、Fe、Co、ZrおよびM元素を合金化処理したものでもよい。
また、前記合金化処理は、合金溶湯の急冷凝固処理であることが好ましい。
従来、強磁性体であるCoあるいはFeを多量に含む合金の透磁率を低減するには、非磁性元素を添加し合金化する手法が採られている。また、FeとCoの両方を含む合金の場合には、FeとCoとの合金化によって磁気モーメントが増加するのを防止するため、FeとCoとの合金化を抑制した焼結組織とすることも考えられている。
本発明者は、Co−Fe−Zr系合金ターゲットの漏洩磁束向上のため、上述の手法の適用を試みたが、透磁率を十分に低減することが出来ず、また強い漏洩磁束を得ることが出来なかった。
そこで、本発明者は更なる検討を行い、本来強磁性体であるCoに対してはターゲット材の構成元素であるZr等を合金化させずに純Co粉末とし、一方、Feに対しては積極的にターゲット材の構成元素を添加して合金化した合金粉末とし、これらを混合して焼結した組織とすることで、従来では到達しえなかった極めて低い透磁率を持ったターゲットとなることを見出し、本発明に到達したのである。
一般的に、多結晶体の透磁率には磁気モーメントと磁気異方性が大きく影響し、「磁気モーメント大、磁気異方性小」の場合は高透磁率になり、「磁気モーメント小、磁気異方性大」の場合は低透磁率になることが知られている。
他方、CoとFeとを含む合金相の結晶構造には、HCP(六方最密格子)、FCC(面心立方格子)、BCC(体心立方格子)があり、これらの中で最も結晶磁気異方性が大きいのはHCP相である。また、純Coは約422℃付近の結晶構造変態点を境として変態点以下ではHCP、変態点以上ではFCCとなることが知られているが、Coに他の元素を添加して合金化すると室温領域でも結晶磁気異方性が小さいFCCやBCCとなる場合がある。
なお、本発明においてHCP−Coからなる相とは、不可避的不純物と周囲の拡散層を除いてCoからなり結晶構造はHCPからなる相のことである。HCP−Co相の結晶構造は、例えば、X線回折法によって判定できる。
また、本発明においてFeを主体とする合金相とは、原子比で50%以上のFeと、Zr、M元素から構成される合金相、あるいは原子比で50%以上のFeと、Zr、M元素、Coから構成される合金相である。
例えば、Coの組成比率が低い場合、HCP−Coからなる相とFeを主体とする合金相とが分散した組織となり、Coの組成比率が高い場合、HCP−Coからなる主相に、Feを主体とする合金相が分散した組織となる。いずれの場合も上述の効果が得られることは言うまでもない。
CoとFeとの組成比Xを20≦X≦70としたのは、Co−Fe二元系合金膜において、Co含有量を原子比で20〜70%にすることで高い飽和磁化を持ち軟磁気特性に優れた薄膜を生成できるためである。
Zrの添加量Yを2≦Y≦15としたのは、Zrをこの範囲で添加することで、軟磁気特性に優れたアモルファス相の薄膜を生成できるためである。この理由はZrの添加量が2原子%未満であると薄膜が結晶化して、優れた軟磁気特性が得られ難く、15原子%を越えると飽和磁化が低下するためである。さらに高い飽和磁化を得るためには、Zrの添加量Yを2≦Y≦8とすることがより好ましい。
M元素(Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si、Al、Mg)から選ばれる1種または2種以上の元素の添加量Zを2≦Z≦10としたのは、M元素から選ばれる1種または2種以上の元素をこの範囲で添加することで、薄膜の磁歪を低減し、軟磁気特性を向上させる効果や、耐食性を向上させる効果があるためである。M元素の中でもNb、Taは、特に薄膜の磁歪を低減し、軟磁気特性を向上させる効果がある元素である。また、Ti、V、Cr、Mo、W、Si、Al、Mgは、特に薄膜の耐食性を向上させる効果がある元素である。
なお、この場合でも、合金粉末に含まれるCo量はターゲット全体の10原子%程度である。
なお、加圧焼結時の最高温度は800℃以上、1200℃の以下の温度に設定することが好ましい。この理由は焼結温度が800℃を下回ると、緻密な焼結体が得られ難く、1200℃を超えると焼結中に合金粉末が溶解する場合があるためである。さらに、最高温度が高過ぎると混合粉末同士の拡散が進み過ぎて、HCP−Co相を十分に残存させづらくなるため、さらに好ましくは900℃から1100℃の範囲に設定すると良い。
また、加圧焼結時の最高圧力は20MPa以上に設定することが好ましい。その理由は最高圧力が20MPaを下回ると緻密な焼結体が得られないためである。
以下の実施例では合金組成は全てCo−27.6Fe−4Zr−4Nb(原子%)とした。表1に示す各粉末をArガスを用いたガスアトマイズ法によって作製した後、得られたアトマイズ粉末を60メッシュのふるいで分級した。それぞれのアトマイズ粉末を表1の組み合わせで混合粉末の組成がCo−27.6Fe−4Zr−4Nb(原子%)となるように、秤量し、混合した後、軟鋼カプセルに充填して脱気封止した。次いで、圧力122MPa、温度950℃、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレス法により焼結体を作製し、機械加工により直径190mm、厚さ12mmのCo−Fe−Zr系合金ターゲット材を得た。
また、溶解鋳造により同一組成のインゴットを作製した後、機械加工を施して直径190mm、厚さ12mmのCo−Fe−Zr系合金ターゲット材を得た。
また、図3に試料4のミクロ組織の走査型電子顕微鏡像を、図4に試料4のX線回折パターンを示す。図3から試料4(比較例3)のミクロ組織は典型的な溶解鋳造組織を示し、濃灰色の初晶部と薄灰色の共晶部からなることがわかる。さらに、図4に示す試料4(比較例3)のX線回折パターンは、α(Co−Fe)相とその他Co2Nb金属間化合物に近い相をそれぞれ反映したピークを呈していることから、ミクロ組織の初晶部はα(Co−Fe)相であり、同じく共晶部はα(Co−Fe)相と金属間化合物相とからなると同定できる。なお、α(Co−Fe)は主にCoとFeからなる固溶体でBCC構造の相である。
(PTF)=100×(ターゲット材を置いた状態での磁束の強さ)÷(ターゲット材を置かない状態での磁束の強さ) (%)
以上より、HCP−Coからなる相とFeを主体とする合金相とが微細に分散したミクロ組織からなる本発明のCo−Fe−Zr系合金ターゲット材は、他の製法のターゲット材に比べ著しく低い透磁率を有し、強い漏洩磁束が得られることが確認できた。
Claims (6)
- 原子比における組成式が(CoX−Fe100−X)100−(Y+Z)−ZrY−MZ、20≦X≦70、2≦Y≦15、2≦Z≦10で表され、前記組成式のM元素が(Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si、Al、Mg)から選ばれる1種または2種以上の元素であるスパッタリングターゲット材であって、ミクロ組織においてHCP−Coからなる相とFeを主体とする合金相とが微細に分散していることを特徴とするCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材。
- 原子比における組成式が(CoX−Fe100−X)100−(Y+Z)−ZrY−MZ、20≦X≦70、2≦Y≦15、2≦Z≦10で表され、前記組成式のM元素が(Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si、Al、Mg)から選ばれる1種または2種以上の元素であるスパッタリングターゲット材であって、ミクロ組織においてHCP−Coからなる主相中にFeを主体とする合金相が微細に分散していることを特徴とするCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材。
- 前記HCP−Coからなる相および前記Feを主体とする合金相は平均粒径が200μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材。
- 請求項1または2に記載のCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材の製造方法において、Co粉末と、Fe、ZrおよびM元素を合金化処理した合金粉末とを混合した混合粉末を加圧焼結することを特徴とするCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材の製造方法。
- 請求項1または2に記載のCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材の製造方法において、Co粉末と、Fe、Co、ZrおよびM元素を合金化処理した合金粉末とを混合した混合粉末を加圧焼結することを特徴とするCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材の製造方法。
- 前記合金化処理は、合金溶湯の急冷凝固処理であることを特徴とする請求項4または5に記載のCo−Fe−Zr系合金スパッタリングターゲット材の製造方法。
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