本発明においては、縫製枠の歪みを防止して縫製枠を高精度に位置決めすることができるミシンを提供することであり、特に、縫製枠の長辺の歪みを防止して縫製枠を高精度に位置決めすることができるミシンを提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明に基づく実施例のミシン5は刺繍用のミシンであり、図1〜図10に示すように構成され、フレーム部10と、テーブル30と、縫製枠50と、縫製枠駆動部60と、制御回路200とを有している。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。縫製枠駆動部60と制御回路200とで、ミシン用縫製枠駆動装置が構成される。
ここで、フレーム部10は、ミシン5における機枠をなし、前後方向(Y1−Y2方向)に形成され、左右方向(X1−X2方向)の両側に設けられた基台部11と、基台部11に立設した支柱としての縦フレーム部12、14と、一対の縦フレーム部12、14間に横方向に設けられた横フレーム部16と、横フレーム部18と、台部20とを有している。横フレーム部16は、一対の縦フレーム部12、14における高さ方向の途中位置に水平に設けられ、その両側が縦フレーム部12と縦フレーム部14に固定して設けられている。また、横フレーム部18は、横フレーム部16よりも上方の位置に横フレーム部16に平行に設けられ、その両側が縦フレーム部12と縦フレーム部14に固定して設けられている。台部20は、板状で、横フレーム16の上面に水平に支持されている。この台部20は、前後方向駆動部70や左右方向駆動部130を設置するために設けられているので、前後方向駆動部70や左右方向駆動部130の下側の位置に設けられている。例えば、前後方向駆動部70については、前後方向駆動部70を設置できるだけの幅の板状部材が前後方向に設けられている。また、左右方向方向駆動部130については、3つの左右方向駆動部130が台部20の上面に設けられている。なお、この台部20は、平面視において、開口部40の領域には設けられていない。
この横フレーム部18の正面側には、周知の構成のミシンヘッド(刺繍ヘッドとしてもよい)22が設けられ、ミシンヘッド22には、複数の針棒(この針棒には、縫い針が固定されている)を上下動可能に支持した針棒ケース(図示せず)と、縫い針に挿通される上糸を引き上げるとともに元に戻す動作を繰り返して揺動する天秤(図示せず)と、ミシンヘッド22の下端位置には、縫い動作を行なう際に加工布を押さえる布押さえ(図示せず)とが設けられ、針棒の上下運動に連動して布押さえも上下動される。これらの縫い針、天秤、布押さえは、回転駆動する釜(図示せず)との協動により加工布の縫製(特に、刺繍縫製)を行なう。該釜は、テーブル30の下方に設けられるとともに台部20に支持されている。
また、テーブル30は、略長方形状の板状をなし、一対の縦フレーム部12、14間に水平に設けられている。すなわち、横フレーム16の上面に断面略コ字状の複数のフレーム材(図示せず)が所定の間隔で前後方向に設けられていて、テーブル30は、このフレーム材の上面で、台部20の上方に設けられている。これにより、テーブル30は、台部20と上下方向に所定の間隔を介して設けられている。なお、テーブル30の左右両側には、縦フレーム部12、14を配置させるための切欠部32が設けられている。また、台部20と該フレーム材とは、ともに横フレーム16の上面に設けられているが、互いに横フレーム16の上面の異なる領域に設けられている。
テーブル30には、縫製枠駆動部60を構成するボールネジ機構部80、100の突出部材(具体的には、軸部90、110)が挿通して横方向(Y1−Y2方向)に移動可能となるように、スリット状の切欠部34a、34bが設けられ、左右方向駆動部130の突出部材(具体的には、支持部材139)が挿通して横方向(X1−X2方向)に移動可能となるように、スリット状の開口部36a、36bが設けられている。すなわち、一対の長辺側の辺部からは前後方向に複数のスリット状の切欠部34a、34bが内側に向けてY1−Y2方向に形成されていて、前側の長辺側の辺部に形成された切欠部34aと後側の長辺側の辺部に形成された切欠部34bとは、互いに対向した位置に形成され(つまり、左右方向には同じ位置に形成され)、切欠部34aの延長線上に切欠部34bが形成されている。互いに対向した切欠部34a、34bにより切欠部対が設けられている。本実施例における縫製枠駆動部60においては、後述するように、2つの前後方向駆動部70が設けられているので、テーブル30の長辺側の一方の辺部からは2つのスリット状の切欠部34aがY1−Y2方向に形成され、他方の辺部からは2つのスリット状の切欠部34bがY1−Y2方向に形成されている。切欠部34aと切欠部34bとは互いに対向した位置に形成され(左右方向には同じ位置に形成され)、2つの切欠部34a間の距離は、4つの前後方向駆動部70、71における隣接する前後方向駆動部間の距離が略同一となる長さに形成されている。つまり、図1における左側の前後方向駆動部71と2つの前後方向駆動部70における左側の前後方向駆動部70間の距離と、2つの前後方向駆動部70間の距離と、図1における右側の前後方向駆動部71と2つの前後方向駆動部70における右側の前後方向駆動部70間の距離とが略同一となるように、2つの切欠部34a間の距離が設定されている。
また、スリット状の開口部36a、36bは、テーブル30の左右の端部領域に左右方向に形成されていて、左側の領域には開口部36aが形成され、右側の領域には開口部36bが形成されている。開口部36aは、複数の切欠部34a、34bの中で最も左側にある切欠部34a、34bよりも外側(左側)に形成され、また、開口部36bは、複数の切欠部34a、34bの中で最も右側にある切欠部34a、34bよりも外側(右側)に形成されている。また、開口部36aと開口部36bとは、互いに対向した位置に形成され(つまり、前後方向には同じ位置に形成され)、開口部36aの延長線上に開口部36bが形成されている。互いに対向した開口部36a、36bにより開口部対が設けられている。本実施例における縫製枠駆動部60においては、後述するように、3つの左右方向駆動部130が設けられているので、テーブル30の短辺側の一方の端部領域(左側の端部領域)には、3つのスリット状の開口部36aが形成され、テーブル30の短辺側の他方の端部領域(右側の端部領域)には、3つのスリット状の開口部36bが形成されている。また、開口部36aは、複数の切欠部34a、34bの中で最も左側にある切欠部34a、34bよりも外側(左側)に形成され、また、開口部36bは、複数の切欠部34a、34bの中で最も右側にある切欠部34a、34bよりも外側(右側)に形成されている。また、開口部36aと開口部36bとは、互いに対向した位置に形成され(つまり、前後方向には同じ位置に形成され)、開口部36aの延長線上に開口部36bが形成され、開口部36aと該開口部36aに対応する開口部36bとにより開口部対が形成される。3つの開口部36aにおける中央の開口部36aは、前後方向には、切欠部34aと切欠部34bの略中間位置に設けられ、他の2つの開口部36aは、中央の開口部36aと略等距離に設けられている。同様に、3つの開口部36bにおける中央の開口部36bは、前後方向には、切欠部34aと切欠部34bの略中間位置に設けられ、他の2つの開口部36bは、中央の開口部36bと略等距離に設けられている。
切欠部34a、34bの方向と開口部36a、36bの方向とは互いに直角をなしている。また、切欠部34aの幅と切欠部34bの幅とは同一幅に形成され、開口部36aの幅と開口部36bの幅とは同一幅に形成されている。
また、テーブル30の上面側における切欠部34a、34bと開口部36a、36bの周囲の領域は、テーブル30の上面に対して凹んだ凹状部が形成されていて、該凹状部にスリットを有する板状部材であるスリット板38が設けられている。このスリット板38は、平面視において略コ字状を有する板状部材であり、その上面は、テーブル30の上面と面一になっている。なお、切欠部34a、34bに設けられるスリット板38のスリットの幅は、切欠部34a、34bや開口部36a、36bの幅よりも狭く形成されていて、また、開口部36a、36bに設けられるスリット板38のスリットの幅は、開口部36a、36bの幅以下(又は、開口部36a、36bの幅よりも小さく)に形成されるとともに、切欠部34a、34bに設けられるスリット板38のスリット幅よりも大きく形成されている。つまり、切欠部34a、34bに設けられるスリット板38のスリットからは、軸部90、110が突出するのに対して、開口部36a、36bに設けられるスリット板38のスリットからは、一対の支持部材139が突出するので、開口部36a、36bのスリット板38のスリット幅の方が切欠部34a、34bのスリット板38のスリット幅よりも大きく形成されている。これに伴い、開口部36a、36bの幅は、切欠部34a、34bの幅よりも大きく形成されている。
また、テーブル30の前後方向における略中央位置には、左右方向に所定間隔で開口部40が形成され、この開口部40の位置に釜(図示せず)が設けられるとともに、開口部40の上方に縫い針(図示せず)が位置するようになっている。
また、縫製枠(布保持枠、可動枠、刺繍枠としてもよい)50は、加工布を張設保持するための枠状部材であり、テーブル30の上方に設けられている。この縫製枠50は、縫製枠本体51と、クリップ部59とを有している。
縫製枠本体51は、平面視において長方形状の枠状を呈し、前側の長辺部52と後側の長辺部54と、左側の短辺部56と、右側の短辺部58とを有し、長辺部52、54と短辺部56、58はともに、平面視細長帯状を呈し、その横断面形状は略コ字状の枠状を呈している。具体的には、図8に示すように、長辺部54は、水平の板部54aと、板部54aの長手辺から連設された垂直の板部54b、54c(板部54bと板部54cとは互いに平行となっている)と、板部54bと板部54c間で板部54aの下面から下方に向けて形成された一対の板部55と、板部54bの下端と板部54bに隣接する板部55の下端との間に設けられた板部54d(この板部54dは、板部54aと平行で、板部54bと板部55間の空間を封止している)と、板部54cの下端と板部54cに隣接する板部55の下端との間に設けられた板部54e(この板部54eは、板部54aと平行で、板部54cと板部55間の空間を封止している)を有している。一対の板部55間の溝部Mは係合ローラ配置空間であり、縫製枠駆動部60における係合ローラ112が配置される。一対の板部55は互いに平行で、板部54b、54cと平行となっている。長辺部54の断面形状は上記のとおりであるが、長辺部52、短辺部56、58の断面形状も同様に形成されている。なお、長辺部52、54と短辺部56、58との境界位置では、垂直方向の板部(例えば、長辺部54の例では、板部54b、54c、55)は隣接する辺部における対応する板部と直角に当接している。以上のようにして、縫製枠本体51は、全体に一体に形成されていて、縫製枠駆動部60における移動部材87、107、137に支持されている。
また、クリップ部59は、縫製枠本体51の内側に形成され、縫製枠本体51の内側の下端から連設された枠状の板状部59aと、板状部59aの上面に形成された帯状の突部59bと、突部59bに着脱自在のキャップ部59cとを有し、突部59bとキャップ部59c間に加工布を挟んで張設するようになっている。
また、図1〜図4に示すように、縫製枠50と前後方向駆動部71の移動部材87、107とを接続する接続部材49が、縫製枠50に設けられている。つまり、縫製枠50の縫製枠本体51における長辺部52と長辺部54の長手方向の端部領域の上面(短辺部56、58の長手方向の端部領域の上面であるともいえる)に接続部材49が設けられ(つまり、縫製枠50には、計4つの接続部材49が取り付けられている)、該接続部材49が、前後方向駆動部71の移動部材87、107に取り付けられている。なお、接続部材49を短辺部56、58の上面(長辺部52、54に近い側の上面が好ましい)に取り付けるようにしてもよい。接続部材49は、細長四角形状の板状部材をL字状に折曲した形状を呈し、水平部材49aと垂直部材49bとによりL字状に形成されている。
次に、縫製枠駆動部60は、縫製枠50を左右方向及び前後方向に駆動するものであり、縫製枠50を前後方向に駆動する前後方向駆動部70、71と、縫製枠50を左右方向に駆動する左右方向駆動部130とを有している。すなわち、前後方向駆動部70は、テーブル30に設けられた切欠部対の数に応じて設けられていて、2つの前後方向駆動部70が設けられている。また、2つの前後方向駆動部71が設けられている。さらに、左右方向駆動部130は、テーブル30に設けられた開口部対の数に応じて設けられていて、3対(計6つ)の左右方向駆動部130が設けられている。
ここで、前後方向駆動部70(第1前後方向駆動部)は、図5に示すように、ボールネジ機構部80、100と、カップリング120、122と、連結部材124とを有している。
ボールネジ機構部80は、台部20の上面に取り付けられたブラケット(「支持フレーム」としてもよい。他においても同じ)82と、モータ84(第1モータ)と、ブラケット82に回転可能に支持されるとともに、モータ84にその一端が結合されてモータ84により回転されるボールネジ86(第1ボールネジ)と、ボールネジ86が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材87(第1移動部材)とを有している。
ここで、ブラケット82は、細長長方形状の略板状で水平に設けられた水平部材82aと、水平部材82aの一方の端部(モータ側の端部)から立設した板状の立設部82bと、水平部材82aの他方の端部から立設した板状の立設部82cとを有し、水平部材82aは、細長長方形状の板状を呈する板状部82a−1と、板状部82a−1の上面に長手方向にボールネジ86と平行に設けられたレール部82a−2とを有している。また、立設部82b、82cはボールネジ86を回転可能に軸支している。具体的には、立設部82b、82cには、ベアリング(図示せず)が設けられ、このベアリングにボールネジ86が軸支されている。モータ84は、立設部82bの外側の固定され、その出力軸がボールネジ86の端部に固定されている。
また、ボールネジ86は、その周面に移動部材87に螺合するための螺子溝が形成され、モータ84側とは反対側の端部は、立設部82cよりも突出して形成されている。つまり、ボールネジ86は、立設部82cのモータ側とは反対側に突出して形成されている。
また、移動部材87は、ナット88と、軸部90と、係合ローラ(係合部材)92とを有し、ナット88は、ボールネジ86に螺着されたナット本体88aと、ナット本体88aの下面に固着され、レール部82a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部82a−2に沿って摺動するスライダ88bとを有している。ナット本体88aには、ボールネジ86が螺合するための螺子穴が設けられている。これにより、ボールネジ86が回転することにより、ナット88がボールネジ86に沿って移動するように構成されている。例えば、モータ84が右回転することにより移動部材87は、前側に移動し、左回転することにより後側に移動するように構成されているが、その逆であってもよい。
また、軸部90は、ナット本体88aの上面に固着され、テーブル30の切欠部34aとスリット板38のスリットに遊通、すなわち、遊びがある状態に挿通し、テーブル30の上面よりも突出して設けられる。つまり、軸部90は、切欠部34aの縁部やスリット板38の縁部と間隔を介した状態で挿通している。また、係合ローラ92は、軸部90に対して回転可能に軸着され、テーブル30の上面よりも上方に突出して設けられ、軸部90に対して回転可能に設けられた係合ローラ92は、縫製枠50の長辺部52の溝部に係合する。
また、ボールネジ機構部100は、ボールネジ機構部80と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。すなわち、ボールネジ機構部100は、台部20の上面に取り付けられたブラケット102と、モータ104(第2モータ)と、ブラケット102に回転可能に支持されるとともに、モータ104にその一端が結合されてモータ104により回転されるボールネジ106(第2ボールネジ)と、ボールネジ106が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材107(第2移動部材)とを有している。ブラケット102と、モータ104と、ボールネジ106とは、ブラケット82と、モータ84と、ボールネジ86と同様の構成であり、ブラケット102は、板状部102a−1とレール部102a−2とを有する水平部材102aと、立設部102b、102cとを有している。また、移動部材107は、移動部材87と同様の構成であり、ナット108と、軸部110と、係合ローラ(係合部材)112とを有し、ナット108は、ボールネジ106に螺着されたナット本体108aと、ナット本体108aの下面に固着され、レール部102a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部102a−2に沿って摺動するスライダ108bとを有し、これにより、ボールネジ106が回転することにより、ナット108がボールネジ106に沿って移動するように構成されている。例えば、モータ104が右回転することにより移動部材107は、後側に移動し、左回転することにより前側に移動するように構成されているが、その逆であってもよい。移動部材107は、移動部材87と間隔を介して設けられている。なお、前後方向駆動部70の軸部110は、テーブル30の切欠部34bとスリット板38のスリットに遊通し、テーブル30の上面よりも突出して設けられ、軸部110に対して回転可能に設けられた係合ローラ112は、縫製枠50の長辺部54の溝部に係合する。
なお、1つの前後方向駆動部70において、ボールネジ機構部80とボールネジ機構部100とは互いに対向するように設けられている。つまり、ボールネジ機構部80、100ともに、モータ84、104が設けられている側を外側にして設けられている。なお、前後方向駆動部70におけるモータ84とモータ104とにより請求の範囲における第1駆動部が構成される。
また、カップリング120、122は軸継手であり、カップリング120は、ボールネジ86と連結部材124とを同軸上に連結するものであり、カップリング122は、ボールネジ106と連結部材124とを同軸上に連結するものである。具体的には、図9に示すように、ボールネジ86の先端に突出した軸部86aがカップリング120の一方の穴部に嵌合され、ボールネジ106の先端に突出した軸部106aがカップリング122の一方の穴部に嵌合されている。また、連結部材124は、軸状部材であり、例えば、円柱状の軸状に形成されている。連結部材124は、ボールネジ86のボールネジ106側の端部とボールネジ106のボールネジ86側の端部の間を連結している。具体的には、図9に示すように、連結部材124の一方の端部から突出した軸部124aがカップリング120の他方の穴部に嵌合され、連結部材124の他方の端部から突出した軸部124bがカップリング122の他方の穴部に嵌合されている。
なお、連結部材124とカップリング120、122とを1つのカップリング(連結部材)により構成してもよい。すなわち、図10に示すように、ボールネジ86の先端に突出した軸部86aが、カップリング123の一方の穴部に嵌合され、ボールネジ106の先端に突出した軸部106aが、カップリング123の他方の穴部に嵌合された構成としてもよい。
以上により、ボールネジ86と、連結部材124と、ボールネジ106とはカップリング120、122により全体に一体に形成され、1つの軸状部材125が形成される。ボールネジ86と連結部材124とボールネジ106とは、それらの軸線が一致するように連結されている。この前後方向駆動部70における該軸状部材125が、請求の範囲における「第1前後方向駆動部用ボールネジ」、「第1間隔維持手段」に当たる。また、前後方向駆動部70におけるモータ84、104と移動部材87、107以外の構成が、第1駆動部(モータ84、104)を支持するとともに、第1移動部材(移動部材87)と第2移動部材(移動部材107)とを前後方向に移動可能に支持する支持部である。また、ボールネジ機構部80において、ブラケット82とボールネジ86とが、第1駆動部(モータ84)を支持するとともに、第1移動部材を前後方向に移動可能に支持する支持部であり、ボールネジ機構部100において、ブラケット102とボールネジ106とが、第1駆動部(モータ104)を支持するとともに、第2移動部材を前後方向に移動可能に支持する支持部である。
なお、複数の前後方向駆動部70は前後方向に互いに平行に設けられ、複数の前後方向駆動部70において、移動部材87、107が互いに平行に移動するように構成されている。複数の前後方向駆動部70における各前後方向駆動部70は同じ構成となっている。
また、前後方向駆動部70には、モータ84とモータ104の2つのモータが設けられているが、モータ84とモータ104の駆動に際しては、同期して駆動されることになる。なお、前後方向駆動部70におけるボールネジ機構部80の係合ローラ92は、縫製枠50の長辺部52の溝部Mに係合し、ボールネジ機構部100の係合ローラ112は、縫製枠50の長辺部54の溝部Mに係合している。
また、前後方向駆動部71(第2前後方向駆動部)は、前後方向駆動部70と略同様の構成であるが、図4に示すように、ブラケット72を構成する板状部72a−1が一体に構成されている点が異なる。
すなわち、前後方向駆動部71は、ブラケット72(支持部、支持フレーム)と、モータ84(第3モータ)と、ボールネジ86(第3ボールネジ)と、移動部材87(第3移動部材)と、モータ104(第4モータ)と、ボールネジ106(第4ボールネジ)と、移動部材107(第4移動部材)と、カップリング120、122と、連結部材124とを有している。
ここで、ブラケット72は、細長長方形状の略板状で水平に設けられた水平部材72aと、水平部材72aの一方の端部(モータ84側の端部)から立設した板状の立設部72bと、水平部材72aの他方の端部(モータ104側の端部)から立設した板状の立設部72eと、水平部材72aの上面の立設部72bと立設部72e間に間隔を介して設けられた板状の立設部72c、72dとを有している。水平部材72aは、細長長方形状の板状を呈し立設部72bから立設部72eまでの長さを有する板状部72a−1と、板状部72a−1の上面の立設部72bと立設部72c間に長手方向にボールネジ86と平行に設けられたレール部72a−2と、板状部72a−1の上面の立設部72dと立設部72e間に長手方向にボールネジ106と平行に設けられたレール部72a−3とを有している。
立設部72b、72cはボールネジ86を回転可能に軸支し、また、立設部72d、72eはボールネジ106を回転可能に軸支している。具体的には、立設部72b、72c、72d、72eには、ベアリング(図示せず)が設けられ、このベアリングにボールネジ86、106が軸支されている。すなわち、前後方向駆動部70におけるブラケット82とブラケット102とにおいて、板状部82a−1と板状部102a−1とを連結して1つの板状部72a−1により構成することにより、ブラケット82とブラケット102とを一体にした構成となっている。このブラケット72が、「第3ボールネジと第3モータと第4ボールネジと第4モータとを支持する支持部」に当たる。
また、モータ84と、ボールネジ86と、モータ104と、ボールネジ106と、カップリング120、122は、前後方向駆動部70におけるそれらの構成と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。なお、移動部材87は、前後方向駆動部70におけるナット88と同じ構成であり、移動部材107は、前後方向駆動部70におけるナット108と同じ構成である。移動部材87と移動部材107とは間隔を介して設けられている。なお、前後方向駆動部71におけるモータ84とモータ104とにより請求の範囲における第2駆動部が構成される。
なお、前後方向駆動部71においては、移動部材87、107の上面には、前後方向駆動部70の移動部材87、107と異なり、軸部は設けられていない。移動部材87、107の縫製枠50側の側面には、接続部材49が取り付けられ、この接続部材49を介して縫製枠50の短辺部56、58に固定されている。すなわち、図3、図6に示すように、移動部材87と短辺部56との接続状態を例にとると、移動部材87の縫製枠50側の側面には板状部材をL字状に折曲した形状の接続部材49における板状の垂直部材49bが固定され、接続部材49における板状の水平部材49aが縫製枠50の短辺部56に固定されることにより、移動部材87と短辺部56とが接続して固定される。移動部材107と短辺部56、移動部材87と短辺部58、移動部材107と短辺部58についても同様に接続部材49により接続して互いに固定されている。以上のようにして、縫製枠50と前後方向駆動部71とは略同じ高さに設けられ、具体的には、縫製枠50の下端とブラケット72の下端とは略同じ高さに設けられる。つまり、前後方向駆動部71のブラケット72は、テーブル30の上面よりも若干上方に設けられている。なお、図1〜図4においては、接続部材49は、縫製枠50の角部(つまり、短辺部と長辺部とが接する部分)に接続されているが、該角部の部分が短辺部56、58にも長辺部52、54にも含まれると考えると、接続部材49は長辺部52、54の長手方向の端部に取り付けられているといえる。なお、接続部材49を縫製枠50の角部以外の短辺部56、58に取り付けてもよい。また、長辺部52、54を左右方向に短辺部56、58の端部よりも長く伸ばして、その長辺部52、54の長手方向の端部に接続部材49を取り付けてもよい。以上のようにして、一方の前後方向駆動部71は、縫製枠50の側方の外側に短辺部56に沿って設けられ、該一方の前後方向駆動部71における移動部材87、107は、接続部材49を介して縫製枠50に接続されており、また、他方の前後方向駆動部71は、縫製枠50の側方の外側に短辺部58に沿って設けられ、他方の前後方向駆動部71における移動部材87、107は、接続部材49を介して縫製枠50に接続されている。
前後方向駆動部71においても、前後方向駆動部70と同様に、ボールネジ86と、連結部材124と、ボールネジ106とはカップリング120、122により全体に一体に形成され、1つの軸状部材125が形成される。ボールネジ86と連結部材124とボールネジ106とは、それらの軸線が一致するように連結されている。この前後方向駆動部71における該軸状部材125が請求の範囲における「第2前後方向駆動部用ボールネジ」、「第2間隔維持手段」に当たる。また、前後方向駆動部71におけるモータ84、104と移動部材87、107以外の構成(つまり、ブラケット72と、ボールネジ86、106と、カップリング120、122と、連結部材124)が、「第2駆動部(モータ84、104)を支持するとともに、第3移動部材(移動部材87)と第4移動部材(移動部材107)とを前後方向に移動可能に支持する支持部支持部71A」を構成する。
2つの前後方向駆動部70と2つの前後方向駆動部71は、互いに平行に設けられ、前後方向駆動部70におけるボールネジ86、106と前後方向駆動部71におけるボールネジ86、106とは互いに平行に設けられている。前後方向駆動部70、71における移動部材87、107は前後方向に移動可能に設けられている。
なお、短辺部56に沿って設けられた前後方向駆動部71は、開口部36aに対応して設けられた左右方向駆動部130の移動部材137(厳密には、支持部材139)に支持され、また、短辺部58に沿って設けられた前後方向駆動部71は、開口部36bに対応して設けられた左右方向駆動部130の移動部材137(厳密には、支持部材139)に支持されている。
また、左右方向駆動部130は、ボールネジ136が立設部132cから突出していない点や移動部材137の構成が移動部材87、107と異なる点を除き、ボールネジ機構部80、100と同様の構成である。すなわち、左右方向駆動部130は、台部20の上面に取り付けられたブラケット132と、モータ134(第3駆動部)と、ブラケット132に回転可能に支持されるとともに、モータ134にその一端が結合されてモータ134により回転されるボールネジ136(第5ボールネジ)と、ボールネジ136が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材137(第5移動部材)とを有している。ブラケット132と、モータ134とは、ブラケット82と、モータ84と同様の構成であり、ブラケット132は、板状部132a−1とレール部132a−2とを有する水平部材132aと、立設部132b、132cとを有している。また、ボールネジ136は、その周面に移動部材137に螺合するための螺子溝が形成され、モータ134側とは反対側の端部は、立設部132cからは突出していない。すなわち、移動部材137(第5移動部材)は、ナット138と、ナット138の両側に固着された一対の支持部材139とを有し、ナット138は、ボールネジ136に螺着されたナット本体138aと、ナット本体138aの下面に固着され、レール部132a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部132a−2に沿って摺動するスライダ138bとを有し、これにより、ボールネジ136が回転することにより、ナット138がボールネジ136に沿って移動するように構成されている。例えば、モータ134が右回転することにより移動部材137は、モータ134側に移動し、左回転することによりモータ134側とは反対側に移動するように構成されているが、その逆であってもよい。
支持部材139は、図4に示すように、細長四角形状の板状部材をL字状に折曲した形状を呈し、垂直方向に設けられた板状の垂直部材139aと、垂直部材139aの上端から水平方向に設けられた板状の水平部材139bとにより略L字状に形成されている。一対の支持部材139は、垂直部材139aがそれぞれナット138(特に、ナット本体138a)の両側の側部(移動部材137の移動方向とは直角方向の側部)に固着され、水平部材139bは、連設した垂直部材139aに対して外側に向けて設けられている。2つの水平部材139bは、同じ高さに形成され、2つの水平部材139bの上面は、前後方向駆動部71の板状部72a−1の下面に固着されている。
左右方向駆動部130は、開口部36aと開口部36bとからなる開口部対ごとに一対設けられ、3対(計6つ)の左右方向駆動部130が設けられている。1つの開口部対に対応する一対の左右方向駆動部130は、互いに対向するように設けられ(図1、図3に示すように、一対の左右方向駆動部130においては、モータはそれぞれ外側に設けられている)、互いに対向する左右方向駆動部130において、一方のボールネジ136は他方のボールネジ136の延長線上にあるように構成されている。各左右方向駆動部130は同じ構成となっている。
開口部36aに対応して設けられた3つの左右方向駆動部130は、互いに平行に設けられ、3つの左右方向駆動部130における中央の左右方向駆動部130は、前後方向には、前後方向駆動部70の前後方向の長さの略中間位置に設けられ、他の2つの左右方向駆動部130は、中央の左右方向駆動部130と略等距離に設けられている。開口部36aに対応して設けられた左右方向駆動部130(つまり、短辺部56側の左右方向駆動部130)におけるボールネジ136が第5ボールネジに当たる。同様に、開口部36bに対応して設けられた3つの左右方向駆動部130は、互いに平行に設けられ、3つの左右方向駆動部130における中央の左右方向駆動部130は、前後方向には、前後方向駆動部71の前後方向の長さの略中間位置に設けられ、他の2つの左右方向駆動部130は、中央の左右方向駆動部130と略等距離に設けられている。開口部36bに対応して設けられた左右方向駆動部130(つまり、短辺部58側の左右方向駆動部130)におけるボールネジ136が第6ボールネジに当たる。開口部36aに対応して設けられた左右方向駆動部130と、開口部36bに対応して設けられた左右方向駆動部130とにおける一方が、第1左右方向駆動部となり、他方が第2左右方向駆動部となる。第1左右方向駆動部におけるモータ134が第5モータとなり、第2左右方向駆動部におけるモータ134が第6モータとなる。なお、上記第15の構成においては、左右方向駆動部130におけるモータ134は第5モータとなる。
以上のように、前後方向駆動部71は、3つの左右方向駆動部130の移動部材137により支持されている。
また、前後方向駆動部70、71におけるボールネジ86、106の方向と、左右方向駆動部130におけるボールネジ136の方向とは、平面視において互いに直角に構成されている。
なお、縫製枠駆動部60を構成するボールネジ86、106、136は、いずれもその周面に形成されたネジ溝は同じピッチで同じ回転方向に形成されている。
また、制御回路200は、縫製枠駆動部60におけるモータ84、104、134の動作を制御する回路であり、縫製枠駆動部60における全てのモータに接続され、各モータの動作を制御する。すなわち、前後方向駆動部70及び前後方向駆動部71におけるモータ84、104の動作制御に関しては、制御回路200は、前後方向駆動部70、71における全てのモータ84、104について同期制御を行い、特に、1つの前後方向駆動部70、71におけるモータ84とモータ104は、ボールネジ86、106と連結部材124とが全体に一体に形成されているので、同期制御される。また、複数の前後方向駆動部70及び前後方向駆動部71における各モータ84も同期制御され、複数の前後方向駆動部70及び前後方向駆動部71における各モータ104も同期制御される。なお、1つの前後方向駆動部70、71におけるモータ84とモータ104は、ボールネジ86とボールネジ106とが連結されているので、回転方向は逆となるように制御される。つまり、前後方向駆動部70において、長辺部52を駆動するボールネジ機構部80のモータ84と長辺部54を駆動するボールネジ機構部100のモータ104とは回転方向が互いに逆となるように制御され、同様に、前後方向駆動部71においても、モータ84とモータ104とは回転方向が互いに逆となるように制御される。このようにして、複数の前後方向駆動部70、71における全ての前後方向駆動部70、71において、前後方向駆動部70の移動部材87、107や前後方向駆動部71の移動部材87、107の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ84、104の動作が制御される。
また、左右方向駆動部130におけるモータ134の動作制御に関しても、制御回路200は、左右方向駆動部130における全てのモータについて同期制御する。なお、短辺部56と接続された前後方向駆動部71を駆動する左右方向駆動部130のモータ134と短辺部58と接続された前後方向駆動部71を駆動する左右方向駆動部130のモータ134とは回転方向が互いに逆となるように制御される。すなわち、左右方向駆動部130における移動部材137の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ134の動作が制御される。
この制御回路200は、実際には、モータの動作を制御するためのプログラムを記憶した記憶装置と、該記憶装置に記憶されたプログラムに従いモータを制御するCPU等を有している。
上記構成のミシン5の動作について説明する。縫製枠50に加工布を張設した状態で、縫製枠50を前後方向及び左右方向に移動させつつ、ミシンヘッド22に設けられ上下往復動する針と、回転駆動する釜との協動により加工布を縫製(特に、刺繍縫製)する。
縫製枠50に加工布を張設するには、突部59bとキャップ部59c間に加工布を挟むことにより行なう。
また、ミシン5においては、制御回路200による制御に従い、縫製枠50が前後方向及び左右方向に移動する。すなわち、制御回路200の制御に従い、前後方向駆動部70、71におけるモータ84、104が動作し、モータ84、104が動作するに伴い、ボールネジ86、106が回転し、ボールネジ86、106が回転するに伴い、移動部材87、107が移動する。すなわち、前後方向駆動部70においては、移動部材87が、ボールネジ86及びレール部82a−2に沿って前後方向に移動し、移動部材107が、ボールネジ106及びレール部102a−2に沿って前後方向に移動し、前後方向駆動部71においては、移動部材87が、ボールネジ86及びレール部72a−2に沿って前後方向に移動し、移動部材107が、ボールネジ106及びレール部72a−3に沿って前後方向に移動する。また、制御回路200の制御に従い、左右方向駆動部130におけるモータ134が動作し、モータ134が動作するに伴い、ボールネジ136が回転し、ボールネジ136が回転するに伴い、移動部材137が左右方向に移動する。
前後方向駆動部70において、軸部90を介してナット88に支持された係合ローラ92は、縫製枠50の長辺部52に係合し、軸部110を介してナット108に支持された係合ローラ112は、縫製枠50の長辺部54に係合し、また、前後方向駆動部71において、移動部材87、107が縫製枠50に接続部材49を介して接続されているので、移動部材87、107が移動することにより縫製枠50は前後方向に移動する。また、左右方向駆動部130における移動部材137は前後方向駆動部71のブラケット72に固着されているので、移動部材137が移動することにより縫製枠50は、左右方向に移動する。その際、長辺部52に係合している係合ローラ92は、係合ローラ92が係合している長辺部52の溝部Mに沿って摺動し、長辺部54に係合している係合ローラ112は、係合ローラ112が係合している長辺部54の溝部Mに沿って摺動する。
本実施例のミシン5によれば、縫製枠50における全ての4つの辺部について移動部材により支持する(つまり、一対の長辺部52、54については、前後方向駆動部70の移動部材87、107により支持し、一対の短辺部56、58については、前後方向駆動部71の移動部材87、107により支持している)ことにより、縫製枠50の全ての辺部に駆動機構が設けられているので、縫製枠50の歪みを極めて小さくすることができ、縫製枠を高精度に位置決めすることができる。
また、縫製枠の全ての辺部に駆動機構を設けて、縫製枠の全ての辺部を能動的に位置決めすることにより、縫製による加工布の引張力により内側に引っ張られても縫製枠の歪みを防止することができる。また、ボールネジは一般的に剛性が高いので、縫製による引張力によってもボールネジ86、106と連結部材124からなる軸状部材は剛性を高くすることができ、この軸状部材が撓むおそれは小さい。
また、特に、縫製枠50の長辺部52、54を支持する前後方向駆動部70や短辺部56、58を支持する前後方向駆動部71においては、ボールネジ86とボールネジ106とが連結部材124を介して一体に形成されているので、縫製枠50が歪む(特に、内側に歪む)ことによりモータの力に抗してナット(前後方向駆動部71においては、移動部材)が移動しようとしても、ナット(移動部材)が螺合するボールネジは他方のボールネジと一体に構成されているので、モータの力に抗してナットが移動してしまうことがない。つまり、加工布に縫製を行なうに従って加工布が内側に引っ張られると、縫製枠50における長辺部52、54も内側に引っ張られるが、仮に、連結部材124によりボールネジ86とボールネジ106とが一体に構成されていない場合には、ナット88、108(前後方向駆動部71においては、移動部材87、107)がモータの力に抗してボールネジ86、106を回転させてしまい、ナット88、108(移動部材87、107)が移動するおそれがあるが、本実施例の場合には、長辺部52、54が内側に引っ張られると、ナット88とナット108とはともに内側に移動しようとするが、ナット88が内側に移動しようとする場合のボールネジ86の回転方向とナット108が内側に移動しようとする場合のボールネジ106の回転方向とは逆方向であるので、ナット88とナット108とが内側に移動することがない。前後方向駆動部71においても、長辺部52、54が内側に引っ張られると、移動部材87と移動部材107とはともに内側に移動しようとするが、移動部材107が内側に移動しようとする場合のボールネジ86の回転方向と移動部材107が内側に移動しようとする場合のボールネジ106の回転方向とは逆方向であるので、移動部材87と移動部材107とが内側に移動することがない。よって、縫製枠50の長辺部52、54が歪むおそれが極めて小さい。
また、前後方向駆動部70においては、ナット88(108)は、ボールネジ86(106)とレール部82a−2(102a−2)によりその動きが規制されるのみであるので、ナット88、108の移動を円滑に行なうことができる。同様に、前後方向駆動部71においても、移動部材87(107)は、ボールネジ86(106)とレール部72a−2(72a−3)によりその動きが規制されるのみであるので、移動部材87、107の移動を円滑に行なうことができる。つまり、特許文献3、4のようにナットに連結バーを設けた構成の場合には、ナットは、連結バーによってもその動きを規制されるため、連結バーの方向がボールネジと正確に平行になっていない場合には、ナットが円滑に移動することができないが、本実施例の場合には、ナットに連結バーは設けられていないので、連結バーにその動きを規制されることがなく、円滑に移動することができる。
また、前後方向駆動部70においては、ボールネジ86、106と連結部材124からなる軸状部材は、立設部82b、102bのみならず立設部82c、102cによっても軸支され、また、前後方向駆動部71においては、ボールネジ86、106と連結部材124からなる軸状部材は、立設部72b、72eのみならず立設部72c、72dによっても軸支されているので、該軸状部材が撓むのを防止することができる。
また、本実施例においては、前後方向駆動部71が短辺部56、58に接続され、前後方向駆動部71が左右方向駆動部130により左右方向に駆動する構成となっているので、短辺部56、58が撓むのを防止でき、短辺部56、58が撓むのを防止できることによって長辺部52、54が撓むのを防止することができる。つまり、前後方向駆動部71が設けられておらず、左右方向駆動部130における移動部材137が移動部材87と同様の構成で、係合ローラが短辺部56、58に係合する構成の場合には、縫製枠50における長手方向の端部領域(つまり、短辺部56、58に近い領域)は、前後方向駆動部70に支持されていないので、加工布に縫製を行うに従って加工布が内側に引っ張られると、縫製枠50における長手方向の端部領域は前後方向に内側に撓むおそれがあるが、本実施例においては、前後方向駆動部71が短辺部56、58に接続されていて、縫製枠50における長手方向の端部領域が前後方向駆動部により支持されているので、縫製枠50における長手方向の端部領域が前後方向に撓むおそれがない。
なお、上記の説明においては、前後方向駆動部70や前後方向駆動部71において、ボールネジ86とボールネジ106とを連結部材124により連結するものとして説明したが、図11、図12に示すように、全体を1つのボールネジにより構成してもよい。
すなわち、図12に示す前後方向駆動部70’は、台部20の上面に取り付けられたブラケット82’と、ブラケット82’の一方の端部に設けられたモータ84と、ブラケット82’の他方の端部に設けられたモータ104と、ブラケット82’に回転可能に支持されるとともに、モータ84にその一端が結合されるとともにモータ104に他端が結合され、モータ84とモータ104により回転されるボールネジ86’と、ボールネジ86’が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材87、107とを有するものであり、ブラケット82’は、細長長方形状の略板状で水平に設けられた水平部材82a’と、水平部材82a’の一方の端部から立設した板状の立設部82b’と、水平部材82a’の他方の端部から立設した板状の立設部82c’とを有し、水平部材82a’は、細長長方形状の板状を呈する板状部82a−1’と、板状部82a−1’の上面に長手方向にボールネジ86’と平行に設けられたレール部82a−2’とを有している。前後方向駆動部を図12に示す前後方向駆動部70’のような構成とすることによっても、図5に示す前後方向駆動部70と同様の作用・効果を得ることができる。
また、図11に示す前後方向駆動部71’は、ブラケット72と、ブラケット72の一方の端部(立設部72b)に設けられたモータ84と、ブラケット72の他方の端部(立設部72e)に設けられたモータ104と、ブラケット72に回転可能に支持されるとともに、モータ84にその一端が結合されるとともにモータ104に他端が結合され、モータ84とモータ104により回転されるボールネジ86と、ボールネジ86が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材87、107とを有するものであり、ブラケット72は、細長長方形状の略板状で水平に設けられた水平部材72aと、水平部材72aの一方の端部から立設した板状の立設部72bと、水平部材72aの他方の端部から立設した板状の立設部72eとを有し、水平部材72aは、細長長方形状の板状を呈する板状部72a−1と、板状部72a−1の上面に長手方向にボールネジ86と平行に設けられたレール部72a−2とを有している。前後方向駆動部を図11に示す前後方向駆動部71’のような構成とすることによっても、図4に示す前後方向駆動部71と同様の作用・効果を得ることができる。
ここで、前後方向駆動部70’におけるモータ84、104と移動部材87、107以外の構成が、第1駆動部(モータ84、104)を支持するとともに、第1移動部材と第2移動部材とを前後方向に移動可能に支持する支持部であり、前後方向駆動部71’におけるモータ84、104と移動部材87、107以外の構成(ブラケット82’とボールネジ86’)が、「第2駆動部(モータ84、104)を支持するとともに、第3移動部材(移動部材87)と第4移動部材(移動部材107)とを前後方向に移動可能に支持する支持部71A’」を構成する。また、図2、図5の例では、前後方向駆動部70において2つのブラケット82、102を設けるものとしたが、図12に示すように、1つのブラケットにより構成してもよい。
なお、上記の構成において、1つの前後方向駆動部70、71には、モータ84とモータ104の2つのモータが設けられているが、いずれか1つとしてもよく、その場合でも、縫製枠50の前後方向への駆動は可能である。ただし、モータをいずれか一方のみとした場合には、軸状部材又は全体を1つのボールネジで構成した場合のボールネジにおいて、モータ接続側の端部に回転力が付与されることにより、軸状部材(又はボールネジ)が回転するが、モータが接続された側とは反対側は従動することになるので、軸状部材(又はボールネジ)がわずかに捻れることによりモータ接続側とは反対側に位置する移動部材の動きの応答性が若干遅れる可能性があり、その意味では、上記のように、1つの前後方向駆動部70の両側にモータを設けるのが好ましい。
また、上記の説明においては、前後方向駆動部70が2つ設けられ、また、左右方向駆動部130が左右に3つずつ設けられるものとして説明したが、前後方向駆動部70は、1つ以上であればよく(3つ以上であってもよい)、また、左右方向駆動部130は、2つ以上であればよい。
また、本実施例のミシン5においては、縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部とはボールネジ機構を用いるものとしたが、これには限られず、タイミングベルト機構を用いてもよい。
すなわち、本実施例のミシン5における縫製枠駆動部60において、前後方向駆動部70の代わりに、図14、図15に示す前後方向駆動部140(第1前後方向駆動部)を用い、前後方向駆動部71の代わりに、図13に示す前後方向駆動部141(第2前後方向駆動部)を用い、さらに、左右方向駆動部130の代わりに、図13に示す左右方向駆動部195を用いるのである。
ここで、前後方向駆動部140は、図14に示すように、タイミングベルト機構部150、170と、連結部材190とを有している。
タイミングベルト機構部150は、台部20の上面に取り付けられた略筒状のフレーム部(支持フレーム)152と、フレーム部152の一方の端部に取り付けられた支持部154と、支持部154に回転自在に取り付けられた回転プーリ156と、フレーム部152の他方の端部の側面に取り付けられたモータ158(第1モータ)と、モータ158の出力端に取り付けられた回転プーリ160と、無端状のタイミングベルト162(第1タイミングベルト)と、タイミングベルト162に固定して取り付けられるとともに、フレーム部152のレール部152bに沿ってスライドする移動部材163(第1移動部材)とを有している。
ここで、フレーム部152は、図13、図14に示すように、四角筒状を呈し、内部に挿通穴153を有するフレーム部本体152aと、フレーム部本体152aの上面中央にフレーム部本体152aの長手方向に沿って設けられたレール部152bとを有している。このフレーム部152は、前後方向に設けられている。また、支持部154は一対設けられ、フレーム部本体152aの両側の側壁の後端位置から後側(Y2側)にそれぞれ設けられ、略L字状の部材により形成され、回転プーリ156を回転自在に軸支できるようになっている。また、回転プーリ156は、支持部154に対して回転自在に設けられ、フレーム部152の長手方向に対して直角方向(すなわち、左右方向(X1−X2方向))の軸線を介して回転可能となっている。
また、モータ158は、フレーム部本体152aの側面に取付け可能なフランジを有し、その回転軸の方向は、フレーム部152の長手方向に対して直角方向となっていて、モータ158により回転する回転プーリ160もフレーム部152の長手方向に対して直角方向(すなわち、左右方向)の軸線を介して回転可能となっている。回転プーリ156と回転プーリ160の周面には、タイミングベルト162と係合するための凹凸が形成されている。
また、タイミングベルト162は、その両側が、回転プーリ156と回転プーリ160とに懸架され、その上側の部分はフレーム部152の上側に位置し、その下側の部分はフレーム部152の挿通穴153内に位置している。このタイミングベルト162は、実際には帯状のベルトの両端を当接させて無端状としたものであり、ベルトを挿通穴153に挿通するとともに、ベルトの両端を当接された状態でベルト挟み板164bと固定具164cにより挟んで固定する(その際、ベルトの両端の当接部分はベルト挟み板164bと固定具164cの間に位置する)ことにより構成される。タイミングベルト162の内側には、凹凸が形成されている。
また、移動部材163は、移動部材本体164と、軸部166と、係合ローラ168とを有し、移動部材本体164は、レール部152bに係合する溝部を下面側に有し、レール部152bに沿って摺動する略板状のスライダ164aと、略板状を呈し、その上面にタイミングベルト162の内側の凹凸と係合する凹凸が形成されたベルト挟み板164bと、下面側にタイミングベルト162を配置するための浅い溝部を有し、ベルト挟み板164bとともにタイミングベルト162を挟んで固定する固定具164cとを有し、固定具164cとベルト挟み板164bとでタイミングベルト162を挟んだ状態でベルト挟み板164bをスライダ164aの上面に重ねて一体にネジ165によりネジ止めすることにより移動部材本体164が構成される。固定具164cの四隅とベルト挟み板164bの四隅にはネジ165を挿通するための穴部が設けられ、スライダ164aの四隅にはネジ165が螺着するためのネジ穴が設けられている。
また、軸部166は、固定具164cの上面に固着され、テーブル30の切欠部34aとスリット板38のスリットに遊通、すなわち、遊びがある状態で挿通され、テーブル30の上面よりも突出して設けられる。また、係合ローラ168は、軸部166に対して回転可能に軸着され、テーブル30の上面よりも上方に設けられている。
また、タイミングベルト機構部170は、タイミングベルト機構部150と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。すなわち、タイミングベルト機構部170は、台部20の上面に取り付けられた略筒状のフレーム部(支持フレーム)172と、フレーム部172の一方の端部に取り付けられた支持部174と、支持部174に回転自在に取り付けられた回転プーリ176と、フレーム部172の他方の端部の側面に取り付けられたモータ178(第2モータ)と、モータ178の出力端に取り付けられた回転プーリ180と、無端状のタイミングベルト182(第2タイミングベルト)と、タイミングベルト182に固定して取り付けられるとともに、フレーム部172のレール部に沿ってスライドする移動部材183(第2移動部材)とを有している。
ここで、フレーム部172と、支持部174と、回転プーリ176と、モータ178と、回転プーリ180と、タイミングベルト182と、移動部材183の構成は、タイミングベルト機構部150における各部、すなわち、フレーム部152と、支持部154と、回転プーリ156と、モータ158と、回転プーリ160と、タイミングベルト162と、移動部材163と同様の構成である。
すなわち、移動部材183は、移動部材本体184と、軸部186と、係合ローラ188とを有し、移動部材本体184は、スライダ164aと同様の構成のスライダ184aと、ベルト挟み板164bと同様の構成のベルト挟み板184bと、固定具164cと同様の構成の固定具184cとを有し、固定具184cとベルト挟み板184bとでタイミングベルト182を挟んだ状態でベルト挟み板184bをスライダ184aの上面に重ねて一体にネジ止めすることにより移動部材本体184が構成される。軸部186は、軸部166と同様の構成であり、係合ローラ188は、係合ローラ168と同様の構成である。移動部材183は、移動部材163と間隔を介して設けられている。なお、前後方向駆動部140におけるモータ158とモータ178とにより請求の範囲における第1駆動部が構成される。
また、連結部材190は、略棒状を呈し、移動部材163と移動部材183間に固定して設けられ、一方の端部が移動部材163の固定具164cに固定され、他方の端部が移動部材183の固定具184cに固定されている。この前後方向駆動部140における連結部材190が、請求の範囲における「第1間隔維持手段」に当たる。また、前後方向駆動部140におけるモータ158、178と移動部材163、183以外の構成が、第1駆動部(モータ158、178)を支持するとともに、第1移動部材(移動部材163)と第2移動部材(移動部材183)とを前後方向に移動可能に支持する支持部である。また、タイミングベルト機構部150において、フレーム部152と、支持部154と、回転プーリ156、160とが、第1駆動部(モータ158)を支持するとともに、第1移動部材を前後方向に移動可能に支持する支持部であり、タイミングベルト機構部170において、フレーム部172と、支持部174と、回転プーリ176、180とが、第1駆動部(モータ178)を支持するとともに、第2移動部材を前後方向に移動可能に支持する支持部である。
前後方向駆動部140において、タイミングベルト機構部150のタイミングベルト162とタイミングベルト機構部170のタイミングベルト182とは同一線上に設けられともに前後方向に設けられ、タイミングベルト162の上側である移動部材163の移動路の延長線上にタイミングベルト182の上側である移動部材183の移動路が存在する。また、連結部材190は、タイミングベルト162、182と同じ方向(前後方向)に設けられている。
なお、複数の前後方向駆動部140は前後方向に互いに平行に設けられ、複数の前後方向駆動部140において、移動部材163、183が互いに平行に移動するように構成されている。複数の前後方向駆動部140における各前後方向駆動部140は同じ構成となっている。
また、前後方向駆動部71の代わりに用いる前後方向駆動部141は、図14、図15に示す前後方向駆動部140と略同様の構成であるが、図13に示すように、フレーム部152とフレーム部172とを一体に構成するとともに、移動部材163から軸部166と係合ローラ168の構成を除くとともに、移動部材183から軸部186と係合ローラ188の構成を除いた構成である。
つまり、フレーム部152における四角筒状のフレーム部本体152aの底面を構成する底面部152a−1(図15参照)とフレーム部172における四角筒状のフレーム部本体の底面を構成する底面部とを一つの板状部により構成することにより、フレーム部152とフレーム部172とが一体に構成される。すなわち、図13に示すように、フレーム部(支持フレーム)151は、細長長方形状の板状部151aと、該板状部151aの前後方向の一方(Y1側)の領域に設けた断面略コ字状のフレーム構成部151b(図15に示すフレーム部152から底面部152a−1を除いたものと同一の構成となっている)と、該板状部151aの前後方向の他方(Y2側)の領域に設けた断面略コ字状のフレーム構成部151c(フレーム構成部151bと同一の構成となっている)とを有する構成となっている。ここで、板状部151aは、フレーム構成部151bの一方の端部からフレーム構成部151cの他方の端部までの長さを有している。
また、前後方向駆動部141における移動部材163は、スライダ164aと、ベルト挟み板164bと、固定具164cとから構成され(つまり、移動部材163は、タイミングベルト機構部150における移動部材本体164に当たる)、移動部材163(特に、移動部材163における固定具164c)の縫製枠50側の側面には、上記接続部材49が取り付けられ、この接続部材49を介して縫製枠50の短辺部56、58に固定される。つまり、接続部材49の垂直部材49bが移動部材163(特に、移動部材163における固定具164c)に固着され、また、水平部材49aが縫製枠50の短辺部56、58に固定されることにより、移動部材163と縫製枠50とが接続される。同様に、移動部材183は、スライダ184aと、ベルト挟み板184bと、固定具184cとから構成され(つまり、移動部材183は、タイミングベルト機構部170における移動部材本体184に当たる)、移動部材183(特に、移動部材183における固定具184c)の縫製枠50側の側面には、上記接続部材49が取り付けられ、この接続部材49を介して縫製枠50の短辺部56、58に固定される。つまり、接続部材49の垂直部材49bが移動部材183(特に、移動部材183における固定具184c)に固着され、また、水平部材49aが縫製枠50の短辺部56、58に固定されることにより、移動部材183と縫製枠50とが接続される。以上のようにして、前後方向駆動部141、前後方向駆動部71と同様に、縫製枠50と略同じ高さに設けられる。なお、図13においては、接続部材49は、縫製枠50の角部(つまり、短辺部と長辺部とが接する部分)に接続されているが、該角部の部分が短辺部56、58にも長辺部52、54にも含まれると考えると、接続部材49は長辺部52、54の長手方向の端部に取り付けられているといえる。なお、接続部材49を縫製枠50の角部以外の短辺部56、58に取り付けてもよい。また、長辺部52、54を左右方向に短辺部56、58の端部よりも長く伸ばして、その長辺部52、54の長手方向の端部に接続部材49を取り付けてもよい。以上のようにして、一方の前後方向駆動部141は、縫製枠50の側方の外側に短辺部56に沿って設けられ、該一方の前後方向駆動部141における移動部材163、183は、接続部材49を介して縫製枠50に接続されており、また、他方の前後方向駆動部141は、縫製枠50の側方の外側に短辺部58に沿って設けられ、他方の前後方向駆動部141における移動部材163、183は、接続部材49を介して縫製枠50に接続されている。1つの前後方向駆動部141において、移動部材163と移動部材183とは間隔を介して設けられている。前後方向駆動部140、141において、移動部材163、183は前後方向に移動可能に設けられている。
なお、前後方向駆動部141におけるモータ158、178と移動部材163、183以外の構成(フレーム部151と支持部154、174と回転プーリ156、160、176、180とタイミングベルト162、182と連結部材190)が、「第2駆動部(モータ158、178)を支持するとともに、第3移動部材(移動部材163)と第4移動部材(移動部材183)とを前後方向に移動可能に支持する支持部141A」を構成する。また、前後方向駆動部141におけるタイミングベルト162が第3タイミングベルトに当たり、前後方向駆動部141におけるタイミングベルト182が第4タイミングベルトに当たる。また、前後方向駆動部141におけるモータ158が第3モータに当たり、前後方向駆動部141におけるモータ178が第4モータに当たる。また、前後方向駆動部141における移動部材163が第3移動部材に当たり、前後方向駆動部141における移動部材183が第4移動部材に当たる。また、フレーム部151と、支持部154、回転プーリ156、回転プーリ160、支持部174、回転プーリ176、回転プーリ180とが、「第3モータと第4モータとを支持するとともに、第3タイミングベルトと第4タイミングベルトとを周回可能に支持する支持部」を構成する。また、前後方向駆動部141におけるモータ158とモータ178とにより請求の範囲における第2駆動部が構成される。この前後方向駆動部141における連結部材190が、請求の範囲における「第2間隔維持手段」に当たる。
また、左右方向駆動部130の代わりに用いる左右方向駆動部195は、図14に示すタイミングベルト機構部150と略同様の構成であるが、図14における移動部材163から軸部と係合ローラの構成を除くとともに、図4の左右方向駆動部130の移動部材137に設けられた支持部材139を設けた構成となっている。各左右方向駆動部195は、同じ構成となっている。
すなわち、左右方向駆動部195は、台部20の上面に取り付けられた略筒状のフレーム部195−2と、フレーム部195−2の一方の端部に取り付けられた支持部195−4と、支持部195−4に回転自在に取り付けられた回転プーリ195−6と、フレーム部195−2の他方の端部の側面に取り付けられたモータ195−8(第3駆動部)と、モータ195−8の出力端に取り付けられた回転プーリ195−10と、無端状のタイミングベルト195−12(第3タイミングベルト)と、タイミングベルト195−12に固定して取り付けられるとともに、フレーム部195−2のレール部に沿ってスライドする移動部材195−13(第3移動部材)とを有している。
ここで、フレーム部195−2と、支持部195−4と、回転プーリ195−6と、モータ195−8と、回転プーリ195−10と、タイミングベルト195−12の構成は、タイミングベルト機構部150における各部、すなわち、フレーム部152と、支持部154と、回転プーリ156と、モータ158と、回転プーリ160と、タイミングベルト162と同様の構成である。
また、一対の開口部対(開口部36aと開口部36bからなる開口部対)に対応する一対の左右方向駆動部195は、互いに対向するように設けられ、互いに対向する左右方向駆動部195において、一方のタイミングベルト195−12は他方のタイミングベルト195−12の延長線上にあるように構成されている。左右方向駆動部195は、左右に3つずつ設けられ、3つの左右方向駆動部195は互いに平行に設けられ、3つの左右方向駆動部195において、移動部材195−13は、互いに平行に移動するように構成されている。
また、移動部材195−13は、移動部材本体195−13aと、一対の支持部材139とから構成されている。つまり、移動部材本体195−13aの両側にL字状の板状の支持部材139における垂直部材139aが取り付けられている。この移動部材本体195−13aは、前後方向駆動部141における移動部材163と同様の構成であり、支持部材139の垂直部材139aは、移動部材本体195−13aの両側(特に、固定具(固定具164cと同様の構成の固定具)の両側)に取り付けられている。支持部材139の水平部材139bは前後方向駆動部141の板状部151aの下面に固着されている。
なお、左右方向駆動部195における移動部材195−13が第5移動部材に当たる。また、開口部36aに対応して設けられた左右方向駆動部195(つまり、短辺部56側の左右方向駆動部195)におけるタイミングベルト195−12が第5タイミングベルトに当たり、また、開口部36bに対応して設けられた左右方向駆動部195(つまり、短辺部58側の左右方向駆動部195)におけるタイミングベルト195−12が第6タイミングベルトに当たる。開口部36aに対応して設けられた左右方向駆動部195と、開口部36bに対応して設けられた左右方向駆動部195とにおける一方が、第1左右方向駆動部となり、他方が第2左右方向駆動部となる。第1左右方向駆動部におけるモータ195−8が第5モータとなり、第2左右方向駆動部におけるモータ195−8が第6モータとなる。なお、上記第16の構成においては、左右方向駆動部195におけるモータ195−8は第5モータとなる。
また、前後方向駆動部140、141におけるタイミングベルト162、182の方向と、左右方向駆動部195におけるタイミングベルト195−12の方向とは、平面視において互いに直角に構成されている。
なお、前後方向駆動部140におけるタイミングベルト機構部150の係合ローラ168は、縫製枠50の長辺部52の溝部Mに係合し、タイミングベルト機構部170の係合ローラ188は、縫製枠50の長辺部54の溝部Mに係合する。
なお、縫製枠駆動部60を構成するタイミングベルト162、182、195−12は、いずれもその内側の凹凸のピッチは同一に形成されている。
以上のように、タイミングベルト機構を用いた場合においても、前後方向駆動部140が2つ設けられ、また、左右方向駆動部195が左右に3つずつ設けられている。縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部を図13〜図17に示すようにタイミングベルト機構により構成した場合には、縫製枠駆動部60における前後方向駆動部と左右方向駆動部の構成が異なる以外は、上記と同様の構成である。
なお、制御回路200は、縫製枠駆動部60におけるモータ158、178、195−8の動作を制御し、縫製枠駆動部60における全てのモータに接続され、各モータの動作を制御する。すなわち、前後方向駆動部140及び前後方向駆動部141におけるモータ158、178の動作制御に関しては、制御回路200は、前後方向駆動部140、141における全てのモータ158、178について同期制御を行い、特に、1つの前後方向駆動部140、141におけるモータ158とモータ178は、移動部材163と移動部材183とが連結部材190により連結されているので、同期制御される。また、複数の前後方向駆動部140及び前後方向駆動部141における各モータ158も同期制御され、複数の前後方向駆動部140及び前後方向駆動部141における各モータ178も同期制御される。なお、1つの前後方向駆動部140、141におけるモータ158とモータ178は、移動部材163と移動部材183が連結部材190により連結されているので(図14参照)、回転方向は逆となるように制御される。つまり、前後方向駆動部140において、長辺部52を駆動するタイミングベルト機構部150のモータ158と長辺部54を駆動するタイミングベルト機構部170のモータ178とは回転方向が互いに逆となるように制御され、同様に、前後方向駆動部141においても、モータ158とモータ178とは回転方向が互いに逆となるように制御される。このようにして、複数の前後方向駆動部140、141における全ての前後方向駆動部140、141において移動部材163、183の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ158、178の動作が制御される。
また、左右方向駆動部195におけるモータ195−8の動作制御に関しても、制御回路200は、左右方向駆動部195における全てのモータについて同期制御する。なお、短辺部56と接続された前後方向駆動部141を駆動する左右方向駆動部195のモータ195−8と短辺部58と接続された前後方向駆動部141を駆動する左右方向駆動部195のモータ195−8とは回転方向が互いに逆となるように制御される。すなわち、左右方向駆動部195における移動部材195−13の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ195−8の動作が制御される。
この制御回路200は、実際には、モータの動作を制御するためのプログラムを記憶した記憶装置と、該記憶装置に記憶されたプログラムに従いモータを制御するCPU等を有している。
縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部を図13〜図17等に示すようにタイミングベルト機構により構成した場合のミシンの動作について説明すると、縫製枠50に加工布を張設した状態で、縫製枠50が前後方向及び左右方向に移動させつつ、ミシンヘッド22に設けられ上下往復動する針と、回転駆動する釜との協動により加工布の縫製が行われる。縫製枠50に加工布を張設するには、突部59bとキャップ部59c間に加工布を挟むことにより行なう。
また、制御回路200による制御に従い、縫製枠50が前後方向及び左右方向に移動する。すなわち、制御回路200の制御に従い、前後方向駆動部140、141におけるモータ158、178が動作し、モータ158、178が動作するに伴い、タイミングベルト162、182が周回し、タイミングベルト162、182が周回するに伴い、移動部材163、183が移動する。すなわち、移動部材163、183が前後方向に移動する。また、制御回路200の制御に従い、左右方向駆動部195におけるモータ195−8が動作し、モータ195−8が動作するに伴い、タイミングベルト195−12が周回し、移動部材195−13が左右方向に移動する。
前後方向駆動部140において、係合ローラ168は、縫製枠50の長辺部52に係合し、係合ローラ188は、縫製枠50の長辺部54に係合し、また、前後方向駆動部141において、移動部材163、183が縫製枠50に接続部材49を介して接続されているので、移動部材163、183が移動することにより縫製枠50は前後方向に移動し、また、左右方向駆動部195における移動部材195−13は前後方向駆動部141のフレーム部151に固着されているので、移動部材195−13が移動することにより縫製枠50は、左右方向に移動する。
縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部を図13等に示すようにタイミングベルト機構により構成した場合においても、縫製枠50における全ての4つの辺部について移動部材により支持する(つまり、一対の長辺部52、54については、前後方向駆動部140の移動部材163、183により支持し、一対の短辺部56、58については、前後方向駆動部141の移動部材163、183により支持している)ことにより、縫製枠50の全ての辺部に駆動機構が設けられているので、縫製枠50の歪みを極めて小さくすることができ、縫製枠を高精度に位置決めすることができる。
また、縫製枠の全ての辺部に駆動機構を設けて、縫製枠の全ての辺部を能動的に位置決めすることにより、縫製による加工布の引張力により内側に引っ張られても縫製枠の歪みを防止することができる。
また、特に、縫製枠50の長辺部52、54を支持する前後方向駆動部140や短辺部56、58を支持する前後方向駆動部141においては、移動部材163と移動部材183とが連結部材190を介して一体に形成されているので、縫製枠50が歪む(特に、内側に歪む)ことによりモータの力に抗して移動部材が移動しようとしても、連結部材190により移動が規制されてモータの力に抗して移動してしまうことがない。つまり、加工布に縫製を行なうに従って加工布が内側に引っ張られると、縫製枠50における長辺部52、54も内側に引っ張られ、移動部材163、183はともに内側に引っ張られるが、移動部材163、183はともに連結部材190に固定されているので、内側に移動することがない。よって、縫製枠50の長辺部52、54が歪むおそれが極めて小さい。
また、本実施例においては、前後方向駆動部141が短辺部56、58に接続され、前後方向駆動部141が左右方向駆動部195により左右方向に駆動する構成となっているので、短辺部56、58が撓むのを防止でき、短辺部56、58が撓むのを防止できることによって長辺部52、54が撓むのを防止することができる。つまり、前後方向駆動部141が設けられておらず、左右方向駆動部195における移動部材195−13が前後方向駆動部140の移動部材163と同様の構成で、係合ローラが短辺部56、58に係合する構成の場合には、縫製枠50における長手方向の端部領域(つまり、短辺部56、58に近い領域)は、前後方向駆動部140に支持されていないので、加工布に縫製を行うに従って加工布が内側に引っ張られると、縫製枠50における長手方向の端部領域は前後方向に内側に撓むおそれがあるが、本実施例においては、前後方向駆動部141が短辺部56、58に接続されていて、縫製枠50における長手方向の端部領域が前後方向駆動部により支持されているので、縫製枠50における長手方向の端部領域が前後方向に撓むおそれがない。
なお、上記の説明において、前後方向駆動部140や前後方向駆動部141は、2つのタイミングベルト機構部により構成されるとしたが、1つのタイミングベルト機構部により構成し、1つのタイミングベルト(第2前後方向駆動部用タイミングベルト)に2つの移動部材を間隔を介して固定し、該2つの移動部材間に連結部材(連結部材190と同様の構成の連結部材)を設けるようにしてもよい。この場合には、タイミングベルトを駆動するモータの個数は1つとなる。ただし、タイミングベルトの両側にモータを設けるようにしてもよい。
例えば、前後方向駆動部141を1つのタイミングベルト機構部により構成した場合には、図16に示すように構成される。すなわち、前後方向駆動部141’は、略筒状のフレーム部151と、フレーム部151の一方の端部に取り付けられた支持部154と、支持部154に回転自在に取り付けられた回転プーリ156と、フレーム部151の他方の端部の側面に取り付けられたモータ158(第2駆動部)と、モータ158の出力端に取り付けられた回転プーリ160と、無端状のタイミングベルト162(第2前後方向駆動部用タイミングベルト)と、タイミングベルト162に固定して取り付けられるとともに、フレーム部151のレール部に沿ってスライドする移動部材163(第3移動部材)及び移動部材183(第4移動部材)とを有している。つまり、フレーム151は、前後方向駆動部141におけるフレーム部151全体の長さと略同じ長さを有し、全体を筒状としたものであり、前後方向駆動部141’においては、1つのタイミングベルト162が設けられ、このタイミングベルト162に移動部材163と移動部材183が間隔を介してタイミングベルト162に固定して取り付けられている。また、移動部材163と移動部材183間には、略棒状の連結部材190が固定して設けられている。前後方向駆動部141’におけるモータ158と移動部材163、183以外の構成(フレーム部151と支持部154と回転プーリ156、160とタイミングベルト162)が、「第2駆動部(モータ158)を支持するとともに、第3移動部材(移動部材163)と第4移動部材(移動部材183)とを前後方向に移動可能に支持する支持部141A’」を構成する。
また、例えば、前後方向駆動部140を1つのタイミングベルト機構部により構成した場合には、図17に示すように構成される。すなわち、前後方向駆動部140’は、略筒状のフレーム部152と、フレーム部152の一方の端部に取り付けられた支持部154と、支持部154に回転自在に取り付けられた回転プーリ156と、フレーム部152の他方の端部の側面に取り付けられたモータ158(第1駆動部)と、モータ158の出力端に取り付けられた回転プーリ160と、無端状のタイミングベルト162(第1前後方向駆動部用タイミングベルト)と、タイミングベルト162に固定して取り付けられるとともに、フレーム部152のレール部に沿ってスライドする移動部材163(第1移動部材)及び移動部材183(第2移動部材)とを有している。つまり、フレーム152は、前後方向駆動部141におけるフレーム部151全体の長さと略同じ長さを有し、全体を筒状としたものであり、前後方向駆動部140’においては、1つのタイミングベルト162が設けられ、このタイミングベルト162に移動部材163と移動部材183が間隔を介してタイミングベルト162に固定して取り付けられている。また、移動部材163と移動部材183間には、略棒状の連結部材190が固定して設けられている。前後方向駆動部140’におけるモータ158と移動部材163、183以外の構成が、第1駆動部(モータ158)を支持するとともに、第1移動部材と第2移動部材とを前後方向に移動可能に支持する支持部である。なお、図16の前後方向駆動部141’や図17の前後方向駆動部140’においては、モータ158が1つのみ設けられているが、回転プーリ156の側にもモータを設けてもよい。
なお、上記の説明では、前後方向駆動部70をボールネジ機構部80、100により構成し、前後方向駆動部71をボールネジ86、106により構成した場合に、左右方向駆動部130もボールネジ136により構成するとしたが、左右方向駆動部130の代わりにタイミングベルト機構により構成された左右方向駆動部195により構成してもよい。また、上記の説明では、前後方向駆動部140をタイミングベルト機構部150、170により構成し、前後方向駆動部141をタイミングベルト162、182により構成した場合に、左右方向駆動部195も195−12により構成するとしたが、左右方向駆動部195の代わりにボールネジ機構により構成された左右方向駆動部130(図4参照)により構成してもよい。
なお、上記の説明において、ボールネジ86、106、136、86’286、306、336は、その名称を「ボールネジシャフト」又は「ボールネジ軸」としてもよい。
また、上記の説明においては、前後方向駆動部140が2つ設けられ、また、左右方向駆動部195が左右に3つずつ設けられるものとして説明したが、前後方向駆動部140は、1つ以上であればよく(3つ以上であってもよい)、また、左右方向駆動部195は、2つ以上であればよい。