本発明においては、縫製枠の歪みを防止して縫製枠を高精度に位置決めすることができるミシンを提供することであり、特に、縫製枠の長辺の歪みを防止して縫製枠を高精度に位置決めすることができるミシンを提供するという目的を以下のようにして実現した。
本発明に基づく実施例1のミシン5は刺繍用のミシンであり、図1〜図7に示すように構成され、フレーム部10と、テーブル30と、縫製枠50と、縫製枠駆動部60と、制御回路200とを有している。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
ここで、フレーム部10は、ミシン5における機枠をなし、前後方向(Y1−Y2方向)に形成され、左右方向(X1−X2方向)の両側に設けられた基台部11と、基台部11に立設した支柱としての縦フレーム部12、14と、一対の縦フレーム部12、14間に横方向に設けられた横フレーム部16と、横フレーム部18と、台部20とを有している。横フレーム部16は、一対の縦フレーム部12、14における高さ方向の途中位置に水平に設けられ、その両側が縦フレーム部12と縦フレーム部14に固定して設けられている。また、横フレーム部18は、横フレーム部16よりも上方の位置に横フレーム部16に平行に設けられ、その両側が縦フレーム部12と縦フレーム部14に固定して設けられている。台部20は、板状で、横フレーム16の上面に水平に支持されている。この台部20は、前後方向駆動部70や左右方向駆動部130を設置するために設けられているので、前後方向駆動部70や左右方向駆動部130の下側の位置に設けられている。例えば、前後方向駆動部70については、前後方向駆動部70を設置できるだけの幅の板状部材が前後方向に設けられている。なお、この台部20は、平面視において、開口部40の領域には設けられていない。
この横フレーム部18の正面側には、周知の構成のミシンヘッド(刺繍ヘッドとしてもよい)22が設けられ、ミシンヘッド22には、複数の針棒(この針棒には、縫い針が固定されている)を上下動可能に支持した針棒ケース(図示せず)と、縫い針に挿通される上糸を引き上げるとともに元に戻す動作を繰り返して揺動する天秤(図示せず)と、ミシンヘッド22の下端位置には、縫い動作を行なう際に加工布を押さえる布押さえ(図示せず)とが設けられ、針棒の上下運動に連動して布押さえも上下動される。これらの縫い針、天秤、布押さえは、回転駆動する釜(図示せず)との協動により加工布の縫製(特に、刺繍縫製)を行なう。該釜は、テーブル30の下方に設けられるとともに台部20に支持されている。
また、テーブル30は、略長方形状の板状をなし、一対の縦フレーム部12、14間に水平に設けられている。すなわち、横フレーム16の上面に断面略コ字状の複数のフレーム材(図示せず)が所定の間隔で前後方向に設けられていて、テーブル30は、このフレーム材の上面に設けられている。これにより、テーブル30は、台部20と上下方向に所定の間隔を介して設けられている。なお、テーブル30の左右両側には、縦フレーム部12、14を配置させるための切欠部32が設けられている。また、台部20と該フレーム材とは、ともに横フレーム16の上面に設けられているが、互いに横フレーム16の上面の異なる領域に設けられている。
テーブル30には、縫製枠駆動部60を構成するボールネジ機構部80、100、130の突出部材(具体的には、軸部90)が移動可能に挿通するように、スリット状の切欠部34a、34bと、スリット状の開口部36a、36bとが設けられている。すなわち、一対の長辺側の辺部からは前後方向に複数のスリット状の切欠部34a、34bが内側に向けてY1−Y2方向に形成されていて、前側の長辺側の辺部に形成された切欠部34aと後側の長辺側の辺部に形成された切欠部34bとは、互いに対向した位置に形成され(つまり、左右方向には同じ位置に形成され)、切欠部34aの延長線上に切欠部34bが形成されている。互いに対向した切欠部34a、34bにより切欠部対が設けられていて、図の例では、3つの切欠部対が設けられている。また、スリット状の開口部36a、36bは、テーブル30の左右の端部領域に左右方向に形成されていて、左側の領域には開口部36aが形成され、右側の領域には開口部36bが形成されている。開口部36aは、複数の切欠部34a、34bの中で最も左側にある切欠部34a、34bよりも外側(左側)に形成され、また、開口部36bは、複数の切欠部34a、34bの中で最も右側にある切欠部34a、34bよりも外側(右側)に形成されている。また、開口部36aと開口部36bとは、互いに対向した位置に形成され(つまり、前後方向には同じ位置に形成され)、開口部36aの延長線上に開口部36bが形成されている。互いに対向した開口部36a、36bにより開口部対が設けられていて、図の例では、2つの開口部対が設けられている。切欠部34a、34bの方向と開口部36a、36bの方向とは互いに直角をなしている。また、切欠部34aの幅と切欠部34bの幅とは同一幅に形成され、開口部36aの幅と開口部36bの幅とは同一幅に形成され、また、切欠部34a、34bの幅と開口部36a、36bの幅とは同一幅に形成されている。
また、テーブル30の上面側における切欠部34a、34bと開口部36a、36bの周囲の領域は、テーブル30の上面に対して凹んだ凹状部が形成されていて、該凹状部にスリットを有する板状部材であるスリット板38が設けられている。このスリット板38は、平面視において略コ字状を有する板状部材であり、その上面は、テーブル30の上面と面一になっている。なお、スリット板38のスリットの幅は、切欠部34a、34bや開口部36a、36bの幅よりも狭く形成されている。
また、テーブル30の前後方向における略中央位置には、左右方向に所定間隔で開口部40が形成され、この開口部40の位置に釜(図示せず)が設けられるとともに、開口部40の上方に縫い針(図示せず)が位置するようになっている。
また、縫製枠(布保持枠、可動枠、刺繍枠としてもよい)50は、加工布を張設保持するための枠状部材であり、テーブル30の上方に設けられている。この縫製枠50は、縫製枠本体51と、クリップ部59とを有している。
縫製枠本体51は、平面視において長方形状の枠状を呈し、前側の長辺部52と後側の長辺部54と、左側の短辺部56と、右側の短辺部58とを有し、長辺部52、54と短辺部56、58はともに、平面視細長帯状を呈し、その横断面形状は略コ字状を呈している。具体的には、図6に示すように、長辺部54は、水平の板部54aと、板部54aの長手辺から連設された垂直の板部54b、54c(板部54bと板部54cとは互いに平行となっている)と、板部54bと板部54c間で板部54aの下面から下方に向けて形成された一対の板部55と、板部54bの下端と板部54bに隣接する板部55の下端との間に設けられた板部54d(この板部54dは、板部54aと平行で、板部54bと板部55間の空間を封止している)と、板部54cの下端と板部54cに隣接する板部55の下端との間に設けられた板部54e(この板部54eは、板部54aと平行で、板部54cと板部55間の空間を封止している)を有している。一対の板部55間の溝部Mは係合ローラ配置空間であり、縫製枠駆動部60における係合ローラ112が配置される。一対の板部55は互いに平行で、板部54b、54cと平行となっている。長辺部54の断面形状は上記のとおりであるが、長辺部52、短辺部56、58の断面形状も同様に形成されている。なお、長辺部52、54と短辺部56、58との境界位置では、垂直方向の板部(例えば、長辺部54の例では、板部54b、54c、55)は隣接する辺部における対応する板部と直角に当接している。以上のようにして、縫製枠本体51は、全体に一体に形成されていて、縫製枠駆動部60における移動部材87、107、137に支持されている。
また、クリップ部59は、縫製枠本体51の内側に形成され、縫製枠本体51の内側の下端から連設された枠状の板状部59aと、板状部59aの上面に形成された帯状の突部59bと、突部59bに着脱自在のキャップ部59cとを有し、突部59bとキャップ部59c間に加工布を挟んで張設するようになっている。
また、縫製枠駆動部60は、縫製枠50を左右方向及び前後方向に駆動するものであり、縫製枠50を前後方向に駆動する前後方向(Y方向)駆動部70と、縫製枠50を左右方向に駆動する左右方向(X方向)駆動部130とを有している。前後方向駆動部70の数は、テーブル30に設けられた切欠部対の数に応じて設けられていて、図の例では、3つの前後方向駆動部70が設けられている。また、左右方向駆動部130の数は、テーブル30に設けられた開口部対の数に応じて設けられていて、図の例では、2対(計4つ)の左右方向駆動部130が設けられている。
ここで、前後方向駆動部70は、図4に示すように、ボールネジ機構部80、100と、カップリング120、122と、連結部材124とを有している。
ボールネジ機構部80は、台部20の上面に取り付けられたブラケット(「支持フレーム」としてもよい。他においても同じ)82と、モータ84(第1モータ)と、ブラケット82に回転可能に支持されるとともに、モータ84にその一端が結合されてモータ84により回転されるボールネジ86(第1ボールネジ)と、ボールネジ86が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材87(第1移動部材)とを有している。
ここで、ブラケット82は、細長長方形状の略板状で水平に設けられた水平部材82aと、水平部材82aの一方の端部(モータ側の端部)から立設した板状の立設部82bと、水平部材82aの他方の端部から立設した板状の立設部82cとを有し、水平部材82aは、細長長方形状の板状を呈する板状部82a−1と、板状部82a−1の上面に長手方向にボールネジ86と平行に設けられたレール部82a−2とを有している。また、立設部82b、82cはボールネジ86を回転可能に軸支している。具体的には、立設部82b、82cには、ベアリング(図示せず)が設けられ、このベアリングにボールネジ86が軸支されている。
また、ボールネジ86は、その周面に移動部材87に螺合するための螺子溝が形成され、モータ84側とは反対側の端部は、立設部82cよりも突出して形成されている。つまり、ボールネジ86は、立設部82cのモータ側とは反対側に突出して形成されている。ボールネジ86は、前後方向(Y1−Y2方向)に設けられている。
また、移動部材87は、ナット88と、軸部90と、係合ローラ(係合部材)92とを有し、ナット88は、ボールネジ86に螺着されたナット本体88aと、ナット本体88aの下面に固着され、レール部82a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部82a−2に沿って摺動するスライダ88bとを有している。ナット本体88aには、ボールネジ86が螺合するための螺子穴が設けられている。これにより、ボールネジ86が回転することにより、ナット88がボールネジ86に沿って移動するように構成されている。例えば、モータ84が右回転することにより移動部材87は、前側に移動し、左回転することにより後側に移動するように構成されているが、その逆であってもよい。
また、軸部90は、ナット本体88aの上面に固着され、テーブル30の切欠部34aとスリット板38のスリットに遊通し、テーブル30の上面よりも突出して設けられる。また、係合ローラ92は、軸部90に対して回転可能に軸着され、テーブル30の上面よりも上方に設けられている。
また、ボールネジ機構部100は、ボールネジ機構部80と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。すなわち、ボールネジ機構部100は、台部20の上面に取り付けられたブラケット102と、モータ104(第2モータ)と、ブラケット102に回転可能に支持されるとともに、モータ104にその一端が結合されてモータ104により回転されるボールネジ106(第2ボールネジ)と、ボールネジ106が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材107(第2移動部材)とを有している。ブラケット102と、モータ104と、ボールネジ106とは、ブラケット82と、モータ84と、ボールネジ86と同様の構成であり、ブラケット102は、板状部102a−1とレール部102a−2とを有する水平部材102aと、立設部102b、102cとを有している。ボールネジ106は、前後方向(Y1−Y2方向)に設けられている。また、移動部材107は、移動部材87と同様の構成であり、ナット108と、軸部110と、係合ローラ(係合部材)112とを有し、ナット108は、ボールネジ106に螺着されたナット本体108aと、ナット本体108aの下面に固着され、レール部102a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部102a−2に沿って摺動するスライダ108bとを有し、これにより、ボールネジ106が回転することにより、ナット108がボールネジ106に沿って移動するように構成されている。例えば、モータ104が右回転することにより移動部材107は、後側に移動し、左回転することにより前側に移動するように構成されているが、その逆であってもよい。
なお、1つの前後方向駆動部70において、ボールネジ機構部80とボールネジ機構部100とは互いに対向するように設けられている。つまり、ボールネジ機構部80、100ともに、モータ84、104が設けられている側を外側にして設けられている。
また、カップリング120、122は軸継手であり、カップリング120は、ボールネジ86と連結部材124とを同軸上に連結するものであり、カップリング122は、ボールネジ106と連結部材124とを同軸上に連結するものである。具体的には、図7に示すように、ボールネジ86の先端に突出した軸部86aがカップリング120の一方の穴部に嵌合され、ボールネジ106の先端に突出した軸部106aがカップリング122の一方の穴部に嵌合されている。また、連結部材124は、軸状部材であり、例えば、円柱状の軸状に形成されている。連結部材124は、ボールネジ86のボールネジ106側の端部とボールネジ106のボールネジ86側の端部の間を連結している。具体的には、図7に示すように、連結部材124の一方の端部から突出した軸部124aがカップリング120の他方の穴部に嵌合され、連結部材124の他方の端部から突出した軸部124bがカップリング122の他方の穴部に嵌合されている。
なお、連結部材124とカップリング120、122とを1つのカップリング(連結部材)により構成してもよい。すなわち、図8に示すように、ボールネジ86の先端に突出した軸部86aが、カップリング123の一方の穴部に嵌合され、ボールネジ106の先端に突出した軸部106aが、カップリング123の他方の穴部に嵌合された構成としてもよい。
以上により、ボールネジ86と、連結部材124と、ボールネジ106とは全体に一体に形成され、1つの軸状部材が形成される。ボールネジ86と連結部材124とボールネジ106とは、それらの軸線が一致するように連結されている。
なお、複数の前後方向駆動部70は前後方向に互いに平行に設けられ、複数の前後方向駆動部70において、移動部材87、107が互いに平行に移動するように構成されている。複数の前後方向駆動部70における各前後方向駆動部70は同じ構成となっている。
また、前後方向駆動部70には、モータ84とモータ104の2つのモータが設けられているが、モータ84とモータ104の駆動に際しては、同期して駆動されることになる。
また、左右方向駆動部130は、ボールネジ136が立設部132cから突出していない点を除き、ボールネジ機構部80、100と同様の構成である。すなわち、台部20の上面に取り付けられたブラケット132と、モータ134(第3モータ)と、ブラケット132に回転可能に支持されるとともに、モータ134にその一端が結合されてモータ134により回転されるボールネジ136(第3ボールネジ)と、ボールネジ136が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材137(第3移動部材)とを有している。ブラケット132と、モータ134とは、ブラケット82と、モータ84と同様の構成であり、ブラケット132は、板状部132a−1とレール部132a−2とを有する水平部材132aと、立設部132b、132cとを有している。また、ボールネジ136は、その周面に移動部材137に螺合するための螺子溝が形成され、モータ134側とは反対側の端部は、立設部132cからは突出していない。また、移動部材137は、移動部材87と同様の構成であり、ナット138と、軸部140と、係合ローラ142とを有し、ナット138は、ボールネジ136に螺着されたナット本体138aと、ナット本体138aの下面に固着され、レール部132a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部132a−2に沿って摺動するスライダ138bとを有し、これにより、ボールネジ136が回転することにより、ナット138がボールネジ136に沿って移動するように構成されている。例えば、モータ134が右回転することにより移動部材137は、モータ134側に移動し、左回転することによりモータ134側とは反対側に移動するように構成されているが、その逆であってもよい。
また、1つの開口部対に対応する一対の左右方向駆動部130は、互いに対向するように設けられ、互いに対向する左右方向駆動部130において、一方のボールネジ136は他方のボールネジ136の延長線上にあるように構成されている。短辺部56に対応して設けられた左右方向駆動部130(図1における左側の左右方向駆動部)と、短辺部58に対応して設けられた左右方向駆動部130(図1における右側の左右方向駆動部)とにおける一方が、特許請求の範囲における「一方の短辺部に応じて設けられた第1左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部130におけるボールネジ136が特許請求の範囲における第3ボールネジに当たり、また、短辺部56に対応して設けられた左右方向駆動部130と、短辺部58に対応して設けられた左右方向駆動部130とにおける他方が、特許請求の範囲における「他方の短辺部に応じて設けられた第2左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部130におけるボールネジ136が特許請求の範囲における第4ボールネジに当たる。
また、前後方向駆動部70におけるボールネジ86、106の方向と、左右方向駆動部130におけるボールネジ136の方向とは、平面視において互いに直角に構成されている。複数の左右方向駆動部130における各左右方向駆動部130は同じ構成となっている。
なお、前後方向駆動部70におけるボールネジ機構部80の係合ローラ92は、縫製枠50の長辺部52の溝部Mに係合し、ボールネジ機構部100の係合ローラ112は、縫製枠50の長辺部54の溝部Mに係合し、左側のボールネジ機構部130の係合ローラ142は、縫製枠50の短辺部56の溝部Mに係合し、右側のボールネジ機構部130の係合ローラ142は、縫製枠50の短辺部58の溝部Mに係合する。
なお、縫製枠駆動部60を構成するボールネジ86、106、136は、いずれもその周面に形成されたネジ溝は同じピッチで同じ回転方向に形成されている。
また、制御回路200は、縫製枠駆動部60におけるモータ84、104、134の動作を制御する回路であり、縫製枠駆動部60における全てのモータに接続され、各モータの動作を制御する。すなわち、前後方向駆動部70におけるモータ84、104の動作制御に関しては、制御回路200は、前後方向駆動部70における全てのモータ84、104について同期制御を行い、特に、1つの前後方向駆動部70におけるモータ84とモータ104は、ボールネジ86、106と連結部材124とが全体に一体に形成されているので、同期制御される。また、複数の前後方向駆動部70における各モータ84も同期制御され、各モータ104も同期制御される。なお、1つの前後方向駆動部70におけるモータ84とモータ104は、ボールネジ86とボールネジ106とが連結されているので、回転方向は逆となるように制御される。つまり、長辺部52を駆動するボールネジ機構部80のモータ84と長辺部54を駆動するボールネジ機構部100のモータ104とは回転方向が互いに逆となるように制御される。このようにして、複数の前後方向駆動部70における全ての前後方向駆動部70において移動部材87、107の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ84、104の動作が制御される。
また、左右方向駆動部130におけるモータ134の動作制御に関しても、制御回路200は、左右方向駆動部130における全てのモータについて同期制御する。なお、短辺部56を駆動するボールネジ機構部130のモータ134と短辺部58を駆動するボールネジ機構部130のモータ134とは回転方向が互いに逆となるように制御される。すなわち、左右方向駆動部130における移動部材137の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ134の動作が制御される。
この制御回路200は、実際には、モータの動作を制御するためのプログラムを記憶した記憶装置と、該記憶装置に記憶されたプログラムに従いモータを制御するCPU等を有している。
上記構成のミシン5の動作について説明する。縫製枠50に加工布を張設した状態で、縫製枠50を前後方向及び左右方向に移動させつつ、ミシンヘッド22に設けられ上下往復動する針と、回転駆動する釜との協動により加工布を縫製(特に、刺繍縫製)する。
縫製枠50に加工布を張設するには、突部59bとキャップ部59c間に加工布を挟むことにより行なう。
また、ミシン5においては、制御回路200による制御に従い、縫製枠50が前後方向及び左右方向に移動する。すなわち、制御回路200の制御に従い、前後方向駆動部70におけるモータ84、104が動作し、モータ84、104が動作するに伴い、ボールネジ86、106が回転し、ボールネジ86、106が回転するに伴い、移動部材87、107が移動する。すなわち、移動部材87が、ボールネジ86及びレール部82a−2に沿って前後方向に移動し、移動部材107が、ボールネジ106及びレール部102a−2に沿って前後方向に移動する。また、制御回路200の制御に従い、左右方向駆動部130におけるモータ134が動作し、モータ134が動作するに伴い、ボールネジ136が回転し、ボールネジ136が回転するに伴い、移動部材137が左右方向に移動する。
軸部90を介してナット88に支持された係合ローラ92は、縫製枠50の長辺部52に係合し、軸部110を介してナット108に支持された係合ローラ112は、縫製枠50の長辺部54に係合しているので、移動部材87、107が移動することにより縫製枠50は前後方向に移動する。その際、短辺部56、58に係合している係合ローラ142は、係合ローラ142が係合している短辺部56、58の溝部Mに沿って摺動する。また、軸部140を介してナット138に支持された係合ローラ142は、縫製枠50の短辺部56、58に係合しているので、移動部材137が移動することにより縫製枠50は、左右方向に移動する。その際、長辺部52に係合している係合ローラ92は、係合ローラ92が係合している長辺部52の溝部Mに沿って摺動し、長辺部54に係合している係合ローラ112は、係合ローラ112が係合している長辺部54の溝部Mに沿って摺動する。
本実施例のミシン5によれば、縫製枠50における全ての4つの辺部(一対の長辺部52、54と一対の短辺部56、58)について移動部材により支持することにより、縫製枠50の全ての辺部に駆動機構が設けられているので、縫製枠50の歪みを極めて小さくすることができ、縫製枠を高精度に位置決めすることができる。
また、縫製枠の全ての辺部に駆動機構を設けて、縫製枠の全ての辺部を能動的に位置決めすることにより、縫製による加工布の引張力により内側に引っ張られても縫製枠の歪みを防止することができる。また、ボールネジは一般的に剛性が高いので、縫製による引張力によってもボールネジ86、106と連結部材124からなる軸状部材は剛性を高くすることができ、この軸状部材が撓むおそれは小さい。
また、特に、縫製枠50の長辺部52、54を支持する前後方向駆動部70においては、ボールネジ86とボールネジ106とが連結部材124を介して一体に形成されているので、縫製枠50が歪む(特に、内側に歪む)ことによりモータの力に抗してナットが移動しようとしても、ナットが螺合するボールネジは他方のボールネジと一体に構成されているので、モータの力に抗して移動してしまうことがない。つまり、加工布に縫製を行なうに従って加工布が内側に引っ張られると、縫製枠50における長辺部52、54も内側に引っ張られるが、仮に、連結部材124によりボールネジ86とボールネジ106とが一体に構成されていない場合には、ナット88、108がモータの力に抗してボールネジ86、106を回転させてしまい、ナット88、108が移動するおそれがあるが、本実施例の場合には、長辺部52、54が内側に引っ張られると、ナット88とナット108とはともに内側に移動しようとするが、ナット88が内側に移動しようとする場合のボールネジ86の回転方向とナット108が内側に移動しようとする場合のボールネジ106の回転方向とは逆方向であるので、ナット88とナット108とが内側に移動することがない。よって、縫製枠50の長辺部52、54が歪むおそれが極めて小さい。
また、前後方向駆動部70においては、ナット88(108)は、ボールネジ86(106)とレール部82a−2(102a−2)によりその動きが規制されるのみであるので、ナット88、108の移動を円滑に行なうことができる。つまり、特許文献3、4のようにナットに連結バーを設けた構成の場合には、ナットは、連結バーによってもその動きを規制されるため、連結バーの方向がボールネジと正確に平行になっていない場合には、ナットが円滑に移動することができないが、本実施例の場合には、ナットに連結バーは設けられていないので、連結バーにその動きを規制されることがなく、円滑に移動することができる。
また、ボールネジ86、106と連結部材124からなる軸状部材は、立設部82b、102bのみならず立設部82c、102cによっても軸支されているので、該軸状部材が撓むのを防止することができる。
なお、上記の説明においては、ボールネジ86とボールネジ106とを連結部材124により連結するものとして説明したが、全体を1つのボールネジにより構成してもよい。
また、図4の例の場合や、該軸状部材を1つのボールネジにより構成する場合に、図2、図4に示すように、前後方向駆動部70において2つのブラケットとするのではなく、図9に示すように、1つのブラケットにより構成してもよい。すなわち、図9に示す前後方向駆動部70’は、台部20の上面に取り付けられたブラケット82’と、ブラケット82’の一方の端部に設けられたモータ84と、ブラケット82’の他方の端部に設けられたモータ104と、ブラケット82’に回転可能に支持されるとともに、モータ84にその一端が結合されるとともにモータ104に他端が結合され、モータ84とモータ104により回転されるボールネジ86’と、ボールネジ86’が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材87、107とを有するものであり、ブラケット82’は、細長長方形状の略板状で水平に設けられた水平部材82a’と、水平部材82a’の一方の端部から立設した板状の立設部82b’と、水平部材82a’の他方の端部から立設した板状の立設部82c’とを有し、水平部材82a’は、細長長方形状の板状を呈する板状部82a−1’と、板状部82a−1’の上面に長手方向にボールネジ86’と平行に設けられたレール部82a−2’とを有している。前後方向駆動部を図9に示す前後方向駆動部70’のような構成とすることによっても、図4に示す前後方向駆動部70と同様の作用・効果を得ることができる。
なお、上記の構成において、1つの前後方向駆動部70には、モータ84とモータ104の2つのモータが設けられているが、いずれか1つとしてもよく、その場合でも、縫製枠50の前後方向への駆動は可能である。ただし、モータをいずれか一方のみとした場合には、軸状部材又は全体を1つのボールネジで構成した場合のボールネジにおいて、モータ接続側の端部に回転力が付与されることにより、軸状部材(又はボールネジ)が回転するが、モータが接続された側とは反対側は従動することになるので、軸状部材(又はボールネジ)がわずかに捻れることによりモータ接続側とは反対側に位置する移動部材の動きの応答性が若干遅れる可能性があり、その意味では、上記のように、1つの前後方向駆動部70の両側にモータを設けるのが好ましい。
また、上記の説明においては、縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部とはボールネジ機構を用いるものとしたが、これには限られず、タイミングベルト機構を用いてもよい。
すなわち、上記の実施例において、縫製枠駆動部60において、前後方向駆動部70の代わりに、図10、図11に示す前後方向駆動部140を用い、左右方向駆動部130の代わりに、図10、図11に示す左右方向駆動部195を用いるのである。
ここで、前後方向駆動部140は、図10に示すように、タイミングベルト機構部150、170と、連結部材190とを有している。
タイミングベルト機構部150は、台部の上面に取り付けられた略筒状のフレーム部152と、フレーム部152の一方の端部に取り付けられた支持部154と、支持部154に回転自在に取り付けられた回転プーリ156と、フレーム部152の他方の端部の側面に取り付けられたモータ158(第1モータ)と、モータ158の出力端に取り付けられた回転プーリ160と、無端状のタイミングベルト162(第1タイミングベルト)と、タイミングベルト162に固定して取り付けられるとともに、フレーム部152のレール部152bに沿ってスライドする移動部材163(第1移動部材)とを有している。
ここで、フレーム部152は、四角筒状を呈し、内部に挿通穴153を有するフレーム部本体152aと、フレーム部本体152aの上面中央にフレーム部本体152aの長手方向に沿って設けられたレール部152bとを有している。このフレーム部152は、前後方向に設けられている。また、支持部154は一対設けられ、フレーム部本体152aの両側の側壁の後端位置から後側(Y2側)にそれぞれ設けられ、略L字状の部材により形成され、回転プーリ156を回転自在に軸支できるようになっている。また、回転プーリ156は、支持部154に対して回転自在に設けられ、フレーム部152の長手方向に対して直角方向(すなわち、左右方向(X1−X2方向))の軸線を介して回転可能となっている。
また、モータ158は、フレーム部本体152aの側面に取付け可能なフランジを有し、その回転軸の方向は、フレーム部152の長手方向に対して直角方向となっていて、モータ158により回転する回転プーリ160もフレーム部152の長手方向に対して直角方向(すなわち、左右方向)の軸線を介して回転可能となっている。回転プーリ156と回転プーリ160の周面には、タイミングベルト162と係合するための凹凸が形成されている。
また、タイミングベルト162は、その両側が、回転プーリ156と回転プーリ160とに懸架され、その上側の部分はフレーム部152の上側に位置し、その下側の部分はフレーム部152の挿通穴153内に位置している。このタイミングベルト162は、実際には帯状のベルトの両端を当接させて無端状としたものであり、ベルトを挿通穴153に挿通するとともに、ベルトの両端を当接された状態でベルト挟み板164bと固定具164cにより挟んで固定する(その際、ベルトの両端の当接部分はベルト挟み板164bと固定具164cの間に位置する)ことにより構成される。タイミングベルト162の内側には、凹凸が形成されている。
また、移動部材163は、移動部材本体164と、軸部166と、係合ローラ168とを有し、移動部材本体164は、レール部152bに係合する溝部を下面側に有し、レール部152bに沿って摺動する略板状のスライダ164aと、略板状を呈し、その上面にタイミングベルト162の内側の凹凸と係合する凹凸が形成されたベルト挟み板164bと、下面側にタイミングベルト162を配置するための浅い溝部を有し、ベルト挟み板164bとともにタイミングベルト162を挟んで固定する固定具164cとを有し、固定具164cとベルト挟み板164bとでタイミングベルト162を挟んだ状態でベルト挟み板164bをスライダ164aの上面に重ねて一体にネジ止めすることにより移動部材本体164が構成される。
また、軸部166は、固定具164cの上面に固着され、テーブル30の切欠部34aとスリット板38のスリットに遊通し、テーブル30の上面よりも突出して設けられる。また、係合ローラ168は、軸部166に対して回転可能に軸着され、テーブル30の上面よりも上方に設けられている。
また、タイミングベルト機構部170は、タイミングベルト機構部150と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。すなわち、タイミングベルト機構部170は、台部の上面に取り付けられた略筒状のフレーム部172と、フレーム部172の一方の端部に取り付けられた支持部174と、支持部174に回転自在に取り付けられた回転プーリ176と、フレーム部172の他方の端部の側面に取り付けられたモータ178(第2モータ)と、モータ178の出力端に取り付けられた回転プーリ180と、無端状のタイミングベルト182(第2タイミングベルト)と、タイミングベルト182に固定して取り付けられるとともに、フレーム部172のレール部に沿ってスライドする移動部材183(第2移動部材)とを有している。
ここで、フレーム部172と、支持部174と、回転プーリ176と、モータ178と、回転プーリ180と、タイミングベルト182と、移動部材183の構成は、タイミングベルト機構部150における各部、すなわち、フレーム部152と、支持部154と、回転プーリ156と、モータ158と、回転プーリ160と、タイミングベルト162と、移動部材163と同様の構成である。
また、連結部材190は、略棒状を呈し、移動部材163と移動部材183間に固定して設けられ、一方の端部が移動部材163の固定具164cに固定され、他方の端部が移動部材183の固定具184cに固定されている。
前後方向駆動部140において、タイミングベルト機構部150のタイミングベルト162とタイミングベルト機構部170のタイミングベルト182とは同一線上に設けられともに前後方向に設けられ、タイミングベルト162の上側である移動部材163の移動路の延長線上にタイミングベルト182の上側である移動部材183の移動路が存在する。また、連結部材190は、タイミングベルト162、182と同じ方向(前後方向)に設けられている。
なお、複数の前後方向駆動部140は前後方向に互いに平行に設けられ、複数の前後方向駆動部140において、移動部材163、183が互いに平行に移動するように構成されている。複数の前後方向駆動部140における各前後方向駆動部140は同じ構成となっている。
また、左右方向駆動部195は、タイミングベルト機構部150と同様の構成であるの詳しい説明を省略する。すなわち、左右方向駆動部195は、台部の上面に取り付けられた略筒状のフレーム部195−2と、フレーム部195−2の一方の端部に取り付けられた支持部195−4と、支持部195−4に回転自在に取り付けられた回転プーリ195−6と、フレーム部195−2の他方の端部の側面に取り付けられたモータ195−8(第3モータ)と、モータ195−8の出力端に取り付けられた回転プーリ195−10と、無端状のタイミングベルト195−12(第3タイミングベルト)と、タイミングベルト195−12に固定して取り付けられるとともに、フレーム部195−2のレール部に沿ってスライドする移動部材195−13(第3移動部材)とを有している。
ここで、フレーム部195−2と、支持部195−4と、回転プーリ195−6と、モータ195−8と、回転プーリ195−10と、タイミングベルト195−12と、移動部材195−13の構成は、タイミングベルト機構部150における各部、すなわち、フレーム部152と、支持部154と、回転プーリ156と、モータ158と、回転プーリ160と、タイミングベルト162と、移動部材163と同様の構成である。
また、一対の開口部対に対応する一対の左右方向駆動部195は、互いに対向するように設けられ、互いに対向する左右方向駆動部195において、一方のタイミングベルト195−12は他方のタイミングベルト195−12の延長線上にあるように構成されている。短辺部56に対応して設けられた左右方向駆動部195と、短辺部58に対応して設けられた左右方向駆動部195とにおける一方が、特許請求の範囲における「一方の短辺部に応じて設けられた第1左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部195におけるタイミングベルト195−12が特許請求の範囲における第3タイミングベルトに当たり、また、短辺部56に対応して設けられた左右方向駆動部195と、短辺部58に対応して設けられた左右方向駆動部195とにおける他方が、特許請求の範囲における「他方の短辺部に応じて設けられた第2左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部195におけるタイミングベルト195−12が特許請求の範囲における第4タイミングベルトに当たる。
また、前後方向駆動部140におけるタイミングベルト162、182の方向と、左右方向駆動部195におけるタイミングベルト195−12の方向とは、平面視において互いに直角に構成されている。
なお、前後方向駆動部140におけるタイミングベルト機構部150の係合ローラ168は、縫製枠50の長辺部52の溝部Mに係合し、タイミングベルト機構部170の係合ローラ188は、縫製枠50の長辺部54の溝部Mに係合し、左側の左右方向駆動部195の係合ローラ195−18は、縫製枠50の短辺部56の溝部Mに係合し、右側の左右方向駆動部195の係合ローラ195−18は、縫製枠50の短辺部58の溝部Mに係合する。
なお、縫製枠駆動部60を構成するタイミングベルト162、182、195−12は、いずれもその内側の凹凸のピッチは同一に形成されている。
縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部を図10、図11に示すようにタイミングベルト機構により構成した場合には、縫製枠駆動部60における前後方向駆動部と左右方向駆動部の構成が異なる以外は、上記と同様の構成である。
なお、制御回路200も上記と同様に構成され、制御回路200は、縫製枠駆動部60におけるモータ158、178、195−8の動作を制御し、縫製枠駆動部60における全てのモータに接続され、各モータの動作を制御する。すなわち、前後方向駆動部140におけるモータ158、178の動作制御に関しては、制御回路200は、前後方向駆動部140における全てのモータ158、178について同期制御を行い、特に、1つの前後方向駆動部140におけるモータ158とモータ178は、移動部材163と移動部材183とが連結部材190により連結されているので、同期制御される。また、複数の前後方向駆動部140における各モータ158も同期制御され、各モータ178も同期制御される。なお、1つの前後方向駆動部140におけるモータ158とモータ178は、移動部材163と移動部材183が連結部材190により連結されているので、回転方向は逆となるように制御される。つまり、長辺部52を駆動するタイミングベルト機構部150のモータ158と長辺部54を駆動するタイミングベルト機構部170のモータ178とは回転方向が互いに逆となるように制御される。このようにして、複数の前後方向駆動部140における全ての前後方向駆動部140において移動部材163、183の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ158、178の動作が制御される。
また、左右方向駆動部195におけるモータ195−8の動作制御に関しても、制御回路200は、左右方向駆動部195における全てのモータについて同期制御する。なお、短辺部56を駆動する左右方向駆動部195のモータ195−8と短辺部58を駆動するボールネジ機構部195のモータ195−8とは回転方向が互いに逆となるように制御される。すなわち、左右方向駆動部195における移動部材195−13の移動方向及び移動量が同じとなるようにモータ195−8の動作が制御される。
縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部を図10、図11に示すようにタイミングベルト機構により構成した場合のミシンの動作について説明すると、縫製枠50に加工布を張設した状態で、縫製枠50が前後方向及び左右方向に移動させつつ、ミシンヘッド22に設けられ上下往復動する針と、回転駆動する釜との協動により加工布の縫製が行われる。縫製枠50に加工布を張設するには、突部59bとキャップ部59c間に加工布を挟むことにより行なう。
また、制御回路200による制御に従い、縫製枠50が前後方向及び左右方向に移動する。すなわち、制御回路200の制御に従い、前後方向駆動部140におけるモータ158、178が動作し、モータ158、178が動作するに伴い、タイミングベルト162、182が周回し、タイミングベルト162、182が周回するに伴い、移動部材163、183が移動する。すなわち、移動部材163、183が前後方向に移動する。また、制御回路200の制御に従い、左右方向駆動部195におけるモータ195−8が動作し、モータ195−8が動作するに伴い、タイミングベルト195−12が周回し、移動部材195−13が左右方向に移動する。
係合ローラ168は、縫製枠50の長辺部52に係合し、係合ローラ188は、縫製枠50の長辺部54に係合しているので、移動部材163、183が移動することにより縫製枠50は前後方向に移動する。その際、短辺部56、58に係合している係合ローラ195−18は、係合ローラ195−18が係合している短辺部56、58の溝部Mに沿って摺動する。また、係合ローラ195−18は、縫製枠50の短辺部56、58に係合しているので、移動部材195−13が移動することにより縫製枠50は、左右方向に移動する。その際、長辺部52に係合している係合ローラ163は、係合ローラ163が係合している長辺部52の溝部Mに沿って摺動し、長辺部54に係合している係合ローラ11183は、係合ローラ183が係合している長辺部54の溝部Mに沿って摺動する。
縫製枠駆動部60を構成する前後方向駆動部と左右方向駆動部を図10、図11に示すようにタイミングベルト機構により構成した場合においても、縫製枠50における全ての4つの辺部(一対の長辺部52、54と一対の短辺部56、58)について移動部材により支持することにより、縫製枠50の全ての辺部に駆動機構が設けられているので、縫製枠50の歪みを極めて小さくすることができ、縫製枠を高精度に位置決めすることができる。
また、縫製枠の全ての辺部に駆動機構を設けて、縫製枠の全ての辺部を能動的に位置決めすることにより、縫製による加工布の引張力により内側に引っ張られても縫製枠の歪みを防止することができる。
また、特に、縫製枠50の長辺部52、54を支持する前後方向駆動部140においては、移動部材163と移動部材183とが連結部材190を介して一体に形成されているので、縫製枠50が歪む(特に、内側に歪む)ことによりモータの力に抗して移動部材が移動しようとしても、連結部材190により移動が規制されてモータの力に抗して移動してしまうことがない。つまり、加工布に縫製を行なうに従って加工布が内側に引っ張られると、縫製枠50における長辺部52、54も内側に引っ張られ、移動部材163、183はともに内側に引っ張られるが、移動部材163、183はともに連結部材190に固定されているので、内側に移動することがない。よって、縫製枠50の長辺部52、54が歪むおそれが極めて小さい。
なお、上記の説明では、前後方向駆動部70をボールネジ機構部80、100により構成した場合に、左右方向駆動部130もボールネジ機構部により構成するとしたが、左右方向駆動部130の代わりにタイミングベルト機構により構成された左右方向駆動部195により構成してもよい。また、上記の説明では、前後方向駆動部140をタイミングベルト機構部150、170により構成した場合に、左右方向駆動部195もタイミングベルト機構部により構成するとしたが、左右方向駆動部195の代わりにボールネジ機構により構成された左右方向駆動部130により構成してもよい。
次に、実施例2のミシン205は刺繍用のミシンであり、図12〜図17に示すように構成され、上記実施例1と比べて、縫製枠と前後方向駆動部の構成が異なる。
すなわち、ミシン205は、フレーム部10と、テーブル30と、縫製枠250と、縫製枠駆動部260と、制御回路200とを有している。
ここで、フレーム部10とテーブル30の構成は、上記実施例1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
また、縫製枠250は、実施例1の縫製枠50と略同様の構成であるが、長辺部が短辺部に対してスライド可能に形成されている点が異なる。
すなわち、縫製枠250は、加工布を張設保持するための枠状部材であり、テーブル30の上方に設けられ、縫製枠本体251と、クリップ部259とを有している。
縫製枠本体251は、平面視において長方形状の枠状を呈し、前側の長辺部252と後側の長辺部254と、左側の短辺部256と、右側の短辺部258とを有している。
ここで、長辺部252、254はともに、平面視細長帯状を呈し、その横断面形状は略コ字状を呈している。具体的には、図16に示すように、長辺部252は、水平の板部252aと、板部252aの長手辺から連設された垂直の板部252b、252c(板部252bと板部252cとは互いに平行となっている)と、板部252bと板部252c間で板部252aの下面から下方に向けて形成された一対の板部253と、板部252bの下端と板部252bに隣接する板部253の下端との間に設けられた板部252d(この板部252dは、板部252aと平行で、板部252bと板部253間の空間を封止している)と、板部252cの下端と板部252cに隣接する板部253の下端との間に設けられた板部252e(この板部252eは、板部252aと平行で、板部252cと板部253間の空間を封止している)を有している。
ここで、板部252aは板部252b、252cよりも長く形成され、板部252aは、板部252b、252cの両側に突出して形成されている。つまり、板部252aの長手方向(X1−X2)の端部は、図15に示すように、短辺部258の短辺部本体258−1の近傍(つまり、板部258−1cの近傍)の位置にまで形成されているが、板部252b、252cの長手方向の端部は、長辺部252が短辺部258に対して前後方向にスライドした際に板部252b、252cが短辺部258の支持部258−2及びクリップ部259が接触しないように、板部252b、252cは、クリップ部259よりも内側の位置にまで形成されている。また、図16に示すように、一対の板部253間の溝部Mは係合ローラ配置空間であり、縫製枠駆動部260における係合ローラ292が配置される。一対の板部253は互いに平行で、板部252b、252cと平行となっている。
また、長辺部252における水平方向の板部252aの左右両側の下面側には、短辺部256、258における支持部256−2、258−2に係合するための係合ローラが設けられている。つまり、板部252aの短辺部258側の端部を例にとると、板部252aの下面には軸部253aが設けられ、該軸部253aに対して回転可能に係合ローラ253bが設けられている。この係合ローラ253bは、支持部258−2の溝部Mに係合することにより、長辺部252が短辺部258に対してスライド可能に構成されている。なお、長辺部252の短辺部256側の端部においても同様な構成により軸部と係合ローラが設けられている。
また、長辺部254も、長辺部252と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。
また、短辺部256、258の構成も長辺部252、254と略同様の構成であるが、長辺部をスライド可能に支持するための支持部が設けられている点が異なる。すなわち、短辺部256と短辺部258とは線対称に構成されている点を除き同様の構成であるので、短辺部258を例にとって説明すると、短辺部258は、短辺部本体258−1と支持部258−2とを有していて、短辺部本体258−1は、平面視細長帯状を呈し、その横断面形状は略コ字状を呈している。具体的には、図15に示すように、短辺部本体258−1は、水平の板部258−1aと、板部258−1aの長手辺から連設された垂直の板部258−1b、258−1c(板部258−1bと板部258−1cとは互いに平行となっている)と、板部258−1bと板部258−1c間で板部258−1aの下面から下方に向けて形成された一対の板部257と、板部258−1bの下端と258−1bに隣接する板部257の下端との間に設けられた板部258−1d(この板部258−1dは、板部258−1aと平行で、板部258−1bと板部257間の空間を封止している)と、板部258−1cの下端と板部258−1cに隣接する板部257の下端との間に設けられた板部258−1e(この板部258−1eは、板部258−1aと平行で、板部258−1cと板部257間の空間を封止している)を有している。
板部258−1aと板部258−1bと板部258−1cとは長手方向(Y1−Y2方向)に同じ長さに形成されている。また、一対の板部257間の溝部Mは係合ローラ配置空間として左右方向駆動部330における係合ローラ342が配置される。一対の板部257は互いに平行で、板部258−1b、258−1cと平行となっている。また、短辺部258の長手方向の端部の開口端は、板部258−1b、258−1cに直角な板部(例えば、板部258−1f)により封止されている。
また、支持部258−2は、板部258−1cの下端から水平に連設された板部258−2aと、該板部258−2aの内側の端部から直角に立設した板部258−2bと、板部258−1cと板部258−2b間で板部258−2aの上面から上方に向けて形成された一対の板部257(一対の板部257は互いに平行で、板部258−1c、258−2bと平行になっている)と、板部258−2bの上端と板部258−2bに隣接する板部257の上端との間に設けられた板部258−2c(この板部258−2cは、板部258−2と平行で、板部258−2bと板部257間の空間を封止している)と、板部258−1cに隣接する板部257の上端から板部258−1cに接続して形成された板部258−2d(この板部258−2dは、板部258−2と平行で、板部258−1cと板部257間の空間を封止している)と、を有している。
支持部258−2の長手方向の長さは、短辺部本体258−1の長手方向の長さと同じに形成されている。また、一対の板部257間の溝部Mは係合ローラ配置空間として長辺部252、254における係合ローラ253bが配置される。
縫製枠本体251が以上のように構成されることにより、長辺部252は、短辺部256、258に対してスライド可能であり、長辺部254は、短辺部256、258に対してスライド可能となっている。
また、クリップ部259は、縫製枠本体251の内側に形成されている。すなわち、長辺部252、254と短辺部256、258の内側の板部の下端からクリップ部259が連設されていて、クリップ部259の構成は上記クリップ部59と同様の構成となっている。例えば、長辺部252においては、図14、図16に示すように、板部252cの下端から連設された枠状の板状部259aと、板状部259aの上面に形成された帯状の突部259bと、突部259bに着脱自在のキャップ部259cとを有し、突部259bとキャップ部259c間に加工布を挟んで張設するようになっている。なお、短辺部256、258においては、図14、図15に示すように、支持部258−2、258−1の内側の板部の下端からクリップ部259が連設されている。例えば、短辺部258においては、支持部258−2の板部258−2bの下端からクリップ部259が連設されている。
次に、縫製枠駆動部260は、前後方向駆動部270と、左右方向駆動部330とを有している。
ここで、前後方向駆動部270は、上記前後方向駆動部70と略同様の構成であるが、連結部材の中間位置にクラッチが設けられていて、その両側を結合した接続状態(結合状態)と分離した分離状態とを切換え可能に形成されている。
すなわち、前後方向駆動部270は、図13に示すように、ボールネジ機構部280、300と、クラッチ326とを有している。なお、複数の前後方向駆動部270における各前後方向駆動部270は同じ構成となっている。
ここで、ボールネジ機構部280は、ボールネジ機構部80と同様の構成であり、台部20の上面に取り付けられたブラケット282と、モータ284(第1モータ)と、ブラケット282に回転可能に支持されるとともに、モータ284にその一端が結合されてモータ284により回転されるボールネジ286(第1ボールネジ)と、ボールネジ286が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材287(第1移動部材)とを有している。ブラケット282と、モータ284と、ボールネジ286は、ブラケット82と、モータ84と、ボールネジ86と同様の構成であり、ブラケット282は、板状部282a−1とレール部282a−2とを有する水平部材282aと、立設部282b、282cとを有している。また、移動部材287は、移動部材87と同様の構成であり、ナット288と、軸部290と、係合ローラ292とを有し、ナット288は、ボールネジ286に螺着されたナット本体288aと、ナット本体288aの下面に固着され、レール部282a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部282a−2に沿って摺動するスライダ288bとを有し、これにより、ボールネジ286が回転することにより、ナット288がボールネジ286に沿って移動するように構成されている。
また、ボールネジ機構部300は、ボールネジ機構部100と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。すなわち、ボールネジ機構部300は、台部20の上面に取り付けられたブラケット302と、モータ304(第2モータ)と、ブラケット302に回転可能に支持されるとともに、モータ304にその一端が結合されてモータ304により回転されるボールネジ306(第2ボールネジ)と、ボールネジ306が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材307(第2移動部材)とを有している。ブラケット302と、モータ304と、ボールネジ306とは、ブラケット102と、モータ104と、ボールネジ106と同様の構成であり、ブラケット302は、板状部302a−1とレール部302a−2とを有する水平部材302aと、立設部302b、302cとを有している。また、移動部材307は、移動部材107と同様の構成であり、ナット308と、軸部310と、係合ローラ312とを有し、ナット308は、ボールネジ306に螺着されたナット本体308aと、ナット本体308aの下面に固着され、レール部302a−2に係合する溝部を下面側に有し、レール部302a−2に沿って摺動するスライダ308bとを有し、これにより、ボールネジ306が回転することにより、ナット308がボールネジ306に沿って移動するように構成されている。
また、クラッチ326は、ボールネジ286とボールネジ306間に設けられ、両側の接続と分離とを切換え可能なクラッチ機構を有し、例えば、電磁クラッチにより構成されている。つまり、図17に示すように、ボールネジ286の先端に突出した軸部286aがクラッチ326の一方の側の穴部に嵌合され、ボールネジ306の先端に突出した軸部306aがクラッチ326の他方の側の穴部に嵌合されている。ボールネジ286とボールネジ306とは同軸上に設けられている。例えば、クラッチ326が、乾式単板電磁クラッチでVCE型のクラッチの場合には、ロータ(回転部)とコイルを内蔵したフィールド(静止部)が玉軸受で支持されて一体としたフィールド・ロータ組立がボールネジ286とボールネジ306のいずれか一方の側となり、アーマチュア組立(回転部)が他方の側となる。そして、コイルに通電するとアーマチュアはロータに吸引されてクラッチ機構が接続状態となり、通電を停止するとアーマチュアは板ばねによりロータから切り離されて分離状態となる。これにより、クラッチ機構が接続状態の場合には、クラッチ326を介した一方の側(Y1側とY2側のいずれかの一方の側)の回転力がクラッチ326を介して他方の側(Y1側とY2側のいずれかの他方の側)に伝達され、分離状態の場合には、回転力が伝達されない。つまり、クラッチ326が分離状態の場合には、ボールネジ286とボールネジ306とは互いに独立して回転することができ、移動部材287と移動部材307とは独立して移動することができる。クラッチ326が接続状態の場合には、ボールネジ286と、クラッチ326と、ボールネジ306とは全体に一体に形成され、1つの軸状部材が構成される。なお、クラッチ326は、「第1ボールネジの第2ボールネジ側の端部と第2ボールネジの第1ボールネジ側の端部の間に設けられ、両側の接続と分離とを切換え可能なクラッチ機構を有する切換え手段」に相当する。
また、左右方向駆動部330は、上記実施例1における左右方向駆動部130と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。すなわち、左右方向駆動部330は、ブラケット332と、モータ334と、ブラケット332に回転可能に支持されるとともに、モータ334にその一端が結合されてモータ334により回転されるボールネジ336と、ボールネジ336が回転することにより螺動可能に螺合した移動部材337とを有し、移動部材337は、ナット338と軸部340と係合ローラ342を有している。この場合に、短辺部256に対応して設けられた左右方向駆動部330(図12における左側の左右方向駆動部)と、短辺部258に対応して設けられた左右方向駆動部330(図12における右側の左右方向駆動部)とにおける一方が、特許請求の範囲における「一方の短辺部に応じて設けられた第1左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部330におけるボールネジ336が特許請求の範囲における第3ボールネジに当たり、また、短辺部256に対応して設けられた左右方向駆動部330と、短辺部258に対応して設けられた左右方向駆動部330とにおける他方が、特許請求の範囲における「他方の短辺部に応じて設けられた第2左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部330におけるボールネジ336が特許請求の範囲における第4ボールネジに当たる。
また、制御回路200は、上記実施例1の制御回路200と同様の構成であるが、加工布を縫製枠250に展張して装着する際には、加工布展張モードとして、クラッチ326と縫製枠駆動部260(特に、前後方向駆動部270)を以下のように制御する。すなわち、加工布を縫製枠250に装着する際に、クラッチ326を切断して、前後方向駆動部270における一対の移動部材287、307が別個に移動可能とした後に、長辺部252、254間の距離を縮める。その状態で、加工布を縫製枠250に装着し、その後、長辺部252、254間の距離をもとに戻した後に、クラッチ326を接続させる。縫製作業において、縫製枠駆動部260におけるモータの動作を制御する方法は上記実施例1と同様である。
また、制御回路200は、加工布が適切に展張された場合の所定のモータのトルクの値を保持している。つまり、制御回路200は、縫製枠250に加工布が装着された状態で一対の長辺部間の距離を長くしていき、加工布が縫製枠250に適切な張り具合で展張された際のモータ284とモータ304の少なくともいずれかである対象モータのトルクの値を保持しており(例えば、記憶装置に該トルクの値が記憶されている)、一対の長辺部252、254間の距離を長くするようにモータ284及び/又はモータ304の動作の制御を行なう場合に、対象モータのトルクの値が上記保持されたトルクの値になった場合に、一対の長辺部252、254間の距離を長くするために駆動されていたモータの駆動を停止して一対の長辺部間の距離を固定するように制御する。
上記構成のミシン205の動作について説明する。まず、加工布を縫製枠250に装着する。すなわち、制御回路200の制御に従い、前後方向駆動部270におけるクラッチ326を分離状態として、移動部材287と移動部材307とがそれぞれ独立して移動できるようにする。その後、前後方向駆動部270におけるモータ284とモータ304のいずれか又は両方を駆動させて、移動部材287と移動部材307間の距離を若干縮める。例えば、移動部材287、307のいずれかを内側に若干移動させる。例えば、モータ284を駆動させて移動部材287を移動部材307側に若干移動させる。すると、移動部材287に支持された長辺部252が短辺部256、258に対してスライドし、長辺部254側に移動する。なお、長辺部252と長辺部254の両方を内側にスライドさせてもよい。
この状態で、縫製枠250に加工布を装着する。すなわち、長辺部252、254と短辺部256、258に設けられたクリップ部259により加工布を装着する。
その後、移動部材287と移動部材307間の距離を長くさせ、対象モータのトルクの値が上記保持されたトルクの値になった場合に、一対の長辺部252、254間の距離を長くするために駆動されていたモータの駆動を停止させる。
例えば、モータ304を駆動させずにモータ284を駆動させて移動部材287を移動部材307側に若干移動させることにより、一対の長辺部252、254間の距離を短くするものとし、加工布を縫製枠250に装着した後に移動部材307を移動させて一対の長辺部252、254間の距離を長くし、加工布が縫製枠250に適切な張り具合で展張された際のモータ284(対象モータ)のトルクの値が制御回路200に保持されているとした場合に、以下のように動作される。
すなわち、まず、モータ284を駆動させて移動部材287を移動部材307側に若干移動させることにより、長辺部252を長辺部254側に移動させて、一対の長辺部252、254間の距離を短くさせる(図18参照)。その後、クリップ259により縫製枠250に加工布を装着した後に、モータ284を駆動させて移動部材287を移動部材307側と反対側に移動させて、一対の長辺部252、254間の距離を長くする。その際、モータ284のトルクを検出して、保持されているトルクの値になった場合には、モータ284の駆動を停止する。
このようにすることにより、加工布を縫製枠250に対して弛(たる)みなく十分に展張することができる。また、このようにすることにより、加工布を適度な張りで展張でき、過度に展張して加工布を損傷することがない。
なお、長辺部252、254間の距離をもとに戻しても十分展張されない場合には、再度上記操作をやり直し、長辺部252、254間の距離を縮めた状態でより張った状態で加工布を装着し、その後、長辺部252、254間の距離を広げる。
加工布が弛みなく十分展張されたら、切断されていたクラッチを接続して接続状態とし、加工布展張モードを完了する。つまり、一対の長辺部252、254間の距離を長くするために駆動されていたモータの駆動を停止させた後に、切断されていたクラッチを接続して接続状態とする。
以上のように、加工布を縫製枠に展張したら、その後は、上記実施例1における動作と同様に、縫製枠250が前後方向及び左右方向に移動させつつ、ミシンヘッド22に設けられ上下往復動する針と、回転駆動する釜との協動により加工布を縫製する。
つまり、制御回路200の制御に従い、前後方向駆動部270におけるモータ284、304が動作し、モータ284、304が動作するに伴い、ボールネジ286、306が回転し、ボールネジ286、306が回転するに伴い、移動部材287、307が移動する。すなわち、移動部材287が、ボールネジ286及びレール部282a−2に沿って前後方向に移動し、移動部材307が、ボールネジ306及びレール部302a−2に沿って前後方向に移動する。また、制御回路200の制御に従い、左右方向駆動部330におけるモータ334が動作し、モータ334が動作するに伴い、ボールネジ336が回転し、ボールネジ336が回転するに伴い、移動部材337が左右方向に移動する。
軸部290を介してナット288に支持された係合ローラ292は、縫製枠250の長辺部252に係合し、軸部310を介してナット308に支持された係合ローラ312は、縫製枠250の長辺部254に係合しているので、移動部材287、307が移動することにより縫製枠250は前後方向に移動する。その際、短辺部256、258に係合している係合ローラ342は、係合ローラ342が係合している短辺部256、258の溝部Mに沿って摺動する。また、軸部340を介してナット338に支持された係合ローラ342は、縫製枠250の短辺部256、258に係合しているので、移動部材337が移動することにより縫製枠250は、左右方向に移動する。その際、長辺部252に係合している係合ローラ292は、係合ローラ292が係合している長辺部252の溝部Mに沿って摺動し、長辺部254に係合している係合ローラ312は、係合ローラ312が係合している長辺部254の溝部Mに沿って摺動する。
本実施例のミシン205によれば、上記実施例1のミシン5と同様の効果が得られる。すなわち、縫製枠250における全ての4つの辺部(一対の長辺部252、254と一対の短辺部256、258)について移動部材により支持することにより、縫製枠250の全ての辺部に駆動機構が設けられているので、縫製枠250の歪みを極めて小さくすることができ、縫製枠を高精度に位置決めすることができる。
また、縫製枠の全ての辺部に駆動機構を設けて、縫製枠の全ての辺部を能動的に位置決めすることにより、縫製による引張力により内側に引っ張られても縫製枠の歪みを防止することができる。また、ボールネジは一般的に剛性が高いので、縫製による引張力によってもボールネジ286、306と連結部材324a、324bからなる軸状部材は剛性を高くすることができ、この軸状部材が撓むおそれは小さい。
また、特に、縫製枠250の長辺部252、254を支持する前後方向駆動部270においては、クラッチ326が接続された状態では、ボールネジ286とボールネジ306とが連結部材324a、324bを介して一体に形成されているので、縫製枠250が歪む(特に、内側に歪む)ことによりモータの力に抗してナットが移動しようとしても、ナットが螺合するボールネジは他方のボールネジと一体に構成されているので、モータの力に抗して移動してしまうことがない。
また、前後方向駆動部270においては、ナット288(308)は、ボールネジ286(306)とレール部282a−2(302a−2)によりその動きが規制されるのみであるので、ナット288、308の移動を円滑に行なうことができる。
また、ボールネジ286、306と連結部材324a、324bからなる軸状部材は、立設部282b、302bのみならず立設部282c、302cによっても軸支されているので、該軸状部材が撓むのを防止することができる。
また、本実施例においては、長辺部252、254が短辺部256、258に対してスライド可能であり、ボールネジ286、306と連結部材324a、324bからなる軸状部材の中間位置にクラッチ326が設けられていて、長辺部252、254間の距離を縮めた状態で加工布を装着した後に、長辺部252、254間の距離を長くすることにより、加工布を弛みなく十分展張できる。また、モータのトルクを検出することにより加工布を適度な張り具合にして展張することができる。
なお、本実施例においては、長辺部252と長辺部254間の距離を調整できるので、加工布のサイズに応じて長辺部252、254間の距離を調整することができる。つまり、加工布の大きさが小さい場合には、長辺部252と長辺部254間の距離を短くして加工布を展張することができる。すなわち、従来においては、加工布の大きさが小さい場合には、縫製枠の短辺部間に懸架部材を設け、長辺部の一方と該懸架部材の間に加工布を展張したり、複数種類の大きさの縫製枠を準備して適切な縫製枠を使用するようにしていたが、本実施例の場合には、長辺部252、254間の距離を調整することにより小さな加工布にも対応できるので、従来のような懸架部材が必要なく、また、複数種類の縫製枠を準備する必要がない。
なお、大きさの小さい加工布を縫製枠に展張する際には、該小さい加工布の大きさに合うように長辺部252、254間の距離を短くして加工布を装着した後に、上記と同様に、長辺部252、254間の距離を長くさせてモータのトルクが所定のトルクになった場合にモータの駆動を停止させる。
なお、上記実施例2において、ボールネジ286とカップリング320と連結部材324aとを1つのボールネジにより構成してもよく、また、ボールネジ306とカップリング322と連結部材324bとを1つのボールネジにより構成してもよい。
また、上記実施例1の場合と同様に、前後方向駆動部270において2つのブラケットとするのではなく、1つのブラケットにより構成してもよい。
なお、上記の説明では、前後方向駆動部270をボールネジ機構部280、300により構成した場合に、左右方向駆動部330もボールネジ機構部により構成するとしたが、左右方向駆動部330の代わりにタイミングベルト機構により構成された左右方向駆動部195により構成してもよい。その場合、短辺部256に対応して設けられた左右方向駆動部195と、短辺部258に対応して設けられた左右方向駆動部195とにおける一方が、特許請求の範囲における「一方の短辺部に応じて設けられた第1左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部195におけるタイミングベルト195−12が特許請求の範囲における第3タイミングベルトに当たり、また、短辺部256に対応して設けられた左右方向駆動部195と、短辺部258に対応して設けられた左右方向駆動部195とにおける他方が、特許請求の範囲における「他方の短辺部に応じて設けられた第2左右方向駆動部」に当たり、その左右方向駆動部195におけるタイミングベルト195−12が特許請求の範囲における第4タイミングベルトに当たる。
なお、実施例2における上記の説明においては、移動部材287、307、337には、1つの係合ローラと係合ローラを支持する軸部が設けられているとしたが、一対の係合ローラと軸部が設けられるものとしてもよい。つまり、例えば、移動部材337を例にとると、図19に示すように、一対の係合ローラ342が移動部材337の移動方向に対して直角方向に並んで軸部340に軸支されている。移動部材337をこのように構成することにより、短辺部本体258−1には、板部257は形成されず断面略コ字状を呈し、一方の係合ローラ342は、板部258−1aと板部258−1bに接し、他方の係合ローラ342は、板部258−1aと板部258−1cに接する。移動部材287、307において、一対の係合ローラと軸部を設ける場合には上記と同様の構成となり、その場合には、長辺部252、254においても板部253が省略されて断面略コ字状に形成され、短辺部256の短辺部本体256−1も同様に形成される。
また、長辺部252に設けられる係合ローラ253bについても、図19に示すように、一対の係合ローラ253bを長辺部252、254の移動方向(スライド方向)に対して直角方向に並んで軸部253aに軸支されるものとし、支持部258−2において板部257を省略するようにしてもよい。なお、図19は、長辺部252の短辺部258側における係合ローラ253bの構成を示すものであるが、短辺部256側についても対象の構成として同様の構成とし、長辺部254についても同様の構成とする。
また、上記のように、移動部材において一対の係合ローラと軸部を設ける例を実施例1の移動部材87、107、137にも適応してもよく、その場合にも、長辺部52、54や短辺部56、58の内側に設けられる板部55は省略されることになる。
また、上記実施例1及び実施例2の説明において、ミシン5(205)には3つの前後方向駆動部70(270)と2対(左右に2つずつ)の左右方向駆動部130(330)が設けられるとしたが、これには限られず、複数の前後方向駆動部70(270)と複数の左右方向駆動部130(330)が設けられる構成であればよい。なお、縫製枠50の歪みを防止する意味では、前後方向駆動部70(270)の数を左右方向駆動部130(330)の対の数よりも多くするのが好ましい。つまり、実施例1の例でも、前後方向駆動部70(270)の数(3つ)は左右方向駆動部130(330)の対の数(2つ)よりも多くなっているが、そのように構成するのが好ましい。
なお、上記の説明では、モータの回転力を往復の直線運動に変換する機構として、ボールネジやタイミングベルトを例にとって説明したが、モータの回転力を往復の直線運動に変換する機構であれば他の機構でもよく、例えば、ラックとピニオン、リニアアクチュエータ等が挙げられる。
なお、上記の説明において、ボールネジ86、86’、106、136、286、306、336は、その名称を「ボールネジシャフト」又は「ボールネジ軸」としてもよい。