JP5040948B2 - 多針ミシン - Google Patents
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Description
一方、多針ミシンにあっては、複数の針棒を上下動可能に支持する針棒ケースを備えており、ミシン本体に対して針棒ケースを移動させることで、複数の針棒のうち1つの針棒を針落ち位置に対して選択的に切換えるようになっている。従って、ミシン本体と針棒ケースとの間にコード類(配線)を掛け渡す場合には、針棒ケースの移動によってコード類が弛んでもミシンの各部材に引っ掛らないように配線する必要があるが、有効な手段や方法がなかった。
請求項4の多針ミシンは、請求項2の発明において、前記保持部材は、2つの滑車と前記滑車を回動可能に支持する支持部材とを有し、前記第1配線及び前記第2配線を、前記2つの滑車にて夫々独立して滑動するように配置したことを特徴とする。
請求項4の多針ミシンによれば、請求項2の発明の効果に加え、針棒ケースの移動の際、滑車によって保持部材に対する第1配線及び第2配線の相対的な移動を円滑にすることができる。また、この滑車により、第1配線及び第2配線の夫々の途中部がなだらかな屈曲形状をなすようにして保持されると共に、両配線との間の摩擦を低減させることができるので、第1配線及び第2配線の途中部における損耗等を防止することができる。
以下、本発明を多針式刺繍ミシン(以下、多針ミシンMと称す)に適用した第1実施形態について、図1〜図13を参照しながら説明する。図1は、多針ミシンMの正面図であり、使用者(ユーザ)が位置する方向を前方として説明する。
図1に示すように、多針ミシンMは、このミシン全体を支持する左右1対の脚部1と、その脚部1の後端部から立設された脚柱部2と、その脚柱部2の上部から前方に延びるアーム部3と、脚柱部2の下端部から前方に延びるシリンダベッド4と、アーム部3の前端部に装着された針棒ケース5とを備えている。
脚部1の上側には、左右方向向きのキャリッジ8が配置されており、このキャリッジ8の内部には、当該キャリッジ8の前側に設けられた枠取付台(図示略)をX方向(左右方向)に駆動させるX方向駆動機構(図示略)が設けられている。左右の脚部1内には、キャリッジ8をY方向(前後方向)に駆動させるY方向駆動機構が設けられている。刺繍縫製に供する加工布(図示略)は、矩形枠状の刺繍枠(図示略)に保持され、この刺繍枠が、前記枠取付台に取付けられる。こうして、刺繍枠は、Y方向駆動機構及びX方向駆動機構が夫々駆動されることにより、キャリッジ8と同期してY方向に移動し、或は枠取付台と共にX方向に移動して、加工布が布送りされる。
針棒ケース5は、側面視にて略逆L字状をなしており、その上側後端部には、左右方向に延びるコロ用取付板15が設けられている。コロ用取付板15には、6本の針棒10に対応する6本のコロ軸17aが、針棒10間のピッチと同じピッチで配置されている。コロ軸17aは前後方向に突出しており、コロ軸17aの後部には円筒状のコロ17bが回動可能に設けられている。
尚、図3に示すように、針棒ケース移動機構25はアーム部3の上部に位置し、略矩形容器状をなす上部カバー26により覆われている。詳細な説明は省略するが、上部カバー26の前部には、コロ17bを収容するように配置するための開口部26aと、後述する第1配線30及び第2配線31の自由な移動を許容する配線用開口部(図示略)とが形成されている。
図6(a)、(b)及び図7は、この配線係止具32a,32bを拡大して示す側面図、平面図及び斜視図である。配線係止具32aと配線係止具32bは互いに同一のものであり、螺子孔36aを有し針棒ケース5の側壁に沿って屈曲形成されたL字状の固定部36bと、第1配線30或は第2配線31が挿通されるフック状の挿通部36cとを一体に備えた金属板からなる。配線係止具32a,32bは、螺子孔36aに挿通された螺子35(図3参照)により針棒ケース5前部の左右両側部に夫々取付けられている。
図8(a)、(b)及び図9は、この針棒ケース側係止部材33a,33bを拡大して示す正面図、側面図及び斜視図である。針棒ケース側係止部材33aと針棒ケース側係止部材33bは互いに同一のものであり、針棒ケース5の上部に沿う垂直部37と水平部38とを有し、合成樹脂材料から全体として逆L字状に形成されている。垂直部37と水平部38との間には、正面視(図8(a)参照)にて左側に張出す張出部39が一体に設けられている。垂直部37及び水平部38は右面が開放され、張出部39は左面が開放された形状をなしている。垂直部37及び水平部38と張出部39とは、仕切り壁40により左右に仕切られると共に、この仕切り壁40に挿通溝40a,40bが形成されている。また、垂直部37の奥壁部37aには螺子用孔37bが形成され、前壁部37cには、螺子用孔37bに対応する部分を切欠いた切欠部37dが形成されている。水平部38の底壁部38aには螺子用孔38bが形成され、上壁部38cには、螺子用孔38bに対応する部分を切欠いた切欠部38dが形成されている。また、垂直部37及び水平部38には、夫々の開放面(右面)を覆う方向に突出する複数のリブ41a〜41dが形成されている。
図10(a)、(b)及び図11は、本体側係止部材45を拡大して示す平面図、背面図及び斜視図である。本体側係止部材45は、金属板の屈曲形成により略T字状に形成されており、一対の螺子用孔46aを有して上下方向に延びる固定部46と、この固定部46の上端部において左右方向に延びる左側延出部47及び右側延出部48とを一体に有する。左側延出部47及び右側延出部48には、蟻溝状をなす複数の溝部47a〜48cが相互に左右方向に離間して形成されている。このうち、左側延出部47において、左端部の溝部47aは左側が開放され、他の溝部47b、47cは前側が開放されている。右側延出部48において、右端部の溝部48aは右側が開放され、他の溝部48b,48cは後側が開放されている。
第1配線30及び第2配線31は、本体側係止部材45と針棒ケース側係止部材33a,33bとの間において、平面視(図12(a)、(b)参照)にて相互に屈曲するように交差して略X字状をなし、且つ側面視(図3参照)にて略水平方向に延びるように配線されている。即ち、両配線30,31は、4つの係止部42a,42b,47a,48aにより適度な張力を維持するように係止された状態で、針棒ケース移動機構25の上面側にて弛みが生じないように互いに交差している。この場合、両配線30,31は、4つの係止部42a〜48aを夫々係止点として仮想直線で結んだ仮想四角形(図13(a)の2点鎖線参照)の略中央で交差する。これにより、第1配線30が2つの係止部42a,47a間で「X字」の左半部を描くように配線されると共に、第2配線31が2つの係止部42b,48a間で「X字」の右半部を描くように配線され、両配線30,31の屈曲部分(交差部分)POが前記仮想四角形の中心部に位置する。従って、図13(a)に示すように、第1配線30において、係止部42aと屈曲部分POとの間の長さ(線長)をL1F、屈曲部分POと係止部47aとの間の線長をL1R、第2配線31において、係止部42bと屈曲部分POとの間の線長をL2F、屈曲部分POと係止部48aとの間の線長をL2Rとしたとき、次の関係式が成り立つ。
L1F+L1R=L2F+L2R ・・・(1)
図12(a)に示すように、多針ミシンMによる刺繍縫製の際、針棒ケース移動機構25により、右端から3番目(或は4番目)の針棒10を針落ち位置に対して切換えた状態にあっては、針棒ケース5は、左端位置と右端位置との間の略中間位置に在る。また、この状態では、本体側係止部材45と針棒ケース側係止部材33a,33bとが前後方向に対向しており、両配線30,31は、4つの係止部42a〜48aによって弛まないように係止されている。ここで、針棒ケース移動機構25により、右端或は左端の針棒10を針落ち位置に対して切換えるべく、針棒ケース5を中間位置から左端位置、或は右端位置(図12(b)参照)に移動させると、針棒ケース側係止部材33a,33bも同方向に(矢印D1方向或はD2右方に)一体に移動する。このとき、両配線30,31は、4つの係止部42a〜48aにより係止されているため、弛みを生じさせることなく一平面内(略水平面内)を移動する。
L1F+L1R=L2F+L2R=(A2+B2)1/2 ・・・(2)
L1R´=L2F´=[{(A+C)2+B2}1/2]1/2 ・・・(3)
L1F´=L2R´=[{(A−C)2+B2}1/2]1/2 ・・・(4)
図14(a)、(b)は、本発明の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なるところを説明する。ここで、図14(a)及び(b)は両配線30,31の屈曲部分POを拡大して示す平面図及び正面図であり、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。
本第2実施形態の第1配線30及び第2配線31は、夫々の途中部30a,31aにおいてリング状部材51により保持されている。リング状部材51は、例えば合成樹脂材料からなり、両配線30,31の挿通が可能な中空部52が形成された環状の保持部材として構成されている。図14(b)に示すように、リング状部材51の上面部51aと下面部51bは、リング状部材51の高さ寸法hを抑えるべく、左右の側面部51c,51dよりも厚みが小さくなるように形成されている。リング状部材51は、中空部52に挿通された両配線30,31を相互に屈曲させて近接する状態で保持する。また、リング状部材51の内周部51eは、なだらかな曲面状に形成されていて、リング状部材51に対する両配線30,31の相対的な移動が円滑に行われるようになっている。そして、両配線30,31は、前記仮想四角形の略中央でリング状部材51に保持されるように配置してある。
また、両配線30,31について、仮想四角形の略中央で、リング状部材51を用いて一平面内に収まるよう互いに適度な張力を作用させた状態で配線することができる。従って、両配線30,31の余裕長を相等しく設定することができる等、第1実施形態と同様の効果を奏する。
第1実施形態では、両配線30,31が、その交差部分(屈曲部分PO)で上下に重なることとなる。これに対し、本実施形態では、高さ寸法hを抑えたリング状部材51によって両配線30,31が非接触状態で保持されるため、両配線30,31を交差させた場合よりも、屈曲部分POの上下方向の厚みを小さくすることができる。
図15(a)、(b)は、本発明の第3実施形態を示すものであり、第2実施形態と異なるところを説明する。ここで、図15(a)及び(b)は両配線30,31の屈曲部分POを拡大して示す平面図及び正面図であり、第1実施形態と同一部分には同一符号を付している。
本第3実施形態の第1配線30及び第2配線31は、夫々の途中部30a,31aにおいて保持部材53により保持されている。保持部材53は、2つの滑車54とこの滑車54を回動可能に支持する支持部材55とを有する。滑車54は円板状をなしており、その周縁部には、正面視にて(図15(b)参照)径方向内側に円弧状に窪むガイド凹部54aが形成されている。支持部材55は、滑車54を回動可能に支持する2つの貫通軸55aと、これら貫通軸55aの上下両端部に夫々配置され且つ当該貫通軸55aを左右両端部にて支持する2つの支持板55bとからなる。
図15(a)に示すように、支持部材55は、2つの滑車54のガイド凹部54aにて、両配線30,31の途中部30a,31aを相互に屈曲させて近接する状態で保持する。これにより、両配線30,31は、保持部材53に対する相対的な移動が許容されると共に、2つの滑車54にて夫々独立して滑動するように配置される。また、両配線30,31は、前記仮想四角形の略中央で保持部材53に保持される。
第1配線30及び第2配線31は、上記リード線に限定されるものではなく、他のコード類(信号等を伝達する各種の配線)により構成してもよい。また、第1配線及び第2配線は、夫々単数でも複数の配線を束ねたものでもよい。
両配線30,31を、ミシン本体7側或は針棒ケース5側で係止するための係止手段は、本体側係止部材45或は針棒ケース側係止部材33a,33bに限定されるものではない。つまり、両配線30,31をミシン本体7側で夫々係止する為の2つの係止部と、両配線30,31を針棒ケース5側で夫々係止する為の2つの係止部とを各別に配設し、これら4つの係止部により係止手段を構成してもよい。
電装品は、照明具27a、27bに限定されるものではなく、他の電気関係の部品に適宜変更してもよい。
5 針棒ケース
7 ミシン本体
10 針棒
11 縫針
25 針棒ケース移動機構
27a,27b 電装品
30 第1配線
31 第2配線
33a,33b 針棒ケース側係止部材
42a,42b 係止部
45 本体側係止部材
47a,48a 係止部
51 リング状部材(保持部材)
53 保持部材
54 滑車
55 支持部材
Claims (4)
- 下端部に縫針を夫々装着した複数の針棒と、
前記複数の針棒を上下動可能に支持する針棒ケースと、
前記針棒ケースをミシン本体に対して移動させることにより、前記複数の針棒のうち1つの針棒を針落ち位置に対して選択的に切換える針棒ケース移動機構と、を備えた多針ミシンにおいて、
前記針棒ケースに設けられた電装品に対して接続され、且つ前記ミシン本体と前記針棒ケースとの間に掛け渡される第1配線及び第2配線と、
前記第1配線及び前記第2配線を前記ミシン本体側で夫々係止する為の2つの係止部を有する本体側係止部材と、
前記第1配線及び前記第2配線を前記針棒ケース側で係止する為の係止部を有する2つの針棒ケース側係止部材と、を備え、
前記第1配線及び前記第2配線を、
前記本体側係止部材の2つの係止部と前記2つの針棒ケース側係止部材の係止部とにより前記針棒ケースの移動方向に相互に離間させた位置で係止すると共に、前記本体側係止部材の2つの係止部と前記2つの針棒ケース側係止部材の係止部とを夫々仮想直線で結んだ仮想四角形の略中央で、前記第1配線の途中部と前記第2配線の途中部とが相互に屈曲するように交差させたことを特徴とする多針ミシン。 - 下端部に縫針を夫々装着した複数の針棒と、
前記複数の針棒を上下動可能に支持する針棒ケースと、
前記針棒ケースをミシン本体に対して移動させることにより、前記複数の針棒のうち1つの針棒を針落ち位置に対して選択的に切換える針棒ケース移動機構と、を備えた多針ミシンにおいて、
前記針棒ケースに設けられた電装品に対して接続され、且つ前記ミシン本体と前記針棒ケースとの間に掛け渡される第1配線及び第2配線と、
前記第1配線及び前記第2配線を前記ミシン本体側で夫々係止する為の2つの係止部を有する本体側係止部材と、
前記第1配線及び前記第2配線を前記針棒ケース側で係止する為の係止部を有する2つの針棒ケース側係止部材と、
前記第1配線及び前記第2配線を、前記本体側係止部材の2つの係止部と前記2つの針棒ケース側係止部材の係止部とにより前記針棒ケースの移動方向に相互に離間させた位置で係止すると共に、前記第1配線の途中部と前記第2配線の途中部とを相互に屈曲させて近接する状態で保持する保持部材と、を備え、
前記第1配線及び前記第2配線を、前記本体側係止部材の2つの係止部と前記2つの針棒ケース側係止部材の係止部とを夫々仮想直線で結んだ仮想四角形の略中央で、前記保持部材により相対的な移動が許容されるように保持することを特徴とする多針ミシン。 - 前記保持部材は、前記第1配線及び前記第2配線の挿通が可能なリング状部材であることを特徴とする請求項2記載の多針ミシン。
- 前記保持部材は、2つの滑車と前記滑車を回動可能に支持する支持部材とを有し、
前記第1配線及び前記第2配線を、前記2つの滑車にて夫々独立して滑動するように配置したことを特徴とする請求項2記載の多針ミシン。
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