JP5609972B2 - 自動車のダッシュパネル構造 - Google Patents

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Description

本発明は、
エンジンルームと車室を仕切るダッシュパネルに索状体が配索され、
前記索状体とは別の部品がブラケットを介して前記ダッシュパネルに固定されている自動車のダッシュパネル構造に関する。
前記索状体の一例として、特許文献1に開示されているように、自動車のバッテリーに接続されたハーネスがある。このハーネスはエンジンルームから車両後方側に延び、ダッシュパネルの前面の近くで車幅方向に折曲するとともに、前記前面に沿って車幅方向に延び、さらに下方に折曲し車両後方側に折曲して車両後方側に延びている。
従来、前記ダッシュパネルの前面の近くのハーネスは、断面L字形のブラケットに支持されて断面コの字状のプロテクタに覆われていた。
特許第3019640号公報
この種の自動車のダッシュパネル構造では、前記L字形のブラケットやプロテクタは一般的にダッシュパネルよりも剛性が低く、そのために、自動車が衝突した際にブラケットやプロテクタと共にハーネスがダッシュパネルとエンジンなどに挟まれて損傷することがあった。
本発明の目的は、ダッシュパネルに配索された索状体の衝突時の損傷を防止できその耐久性を向上させることができる自動車のダッシュパネル構造を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る自動車のダッシュパネル構造は、
エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルに索状体が配索され、前記索状体とは別の部品がブラケットを介して前記ダッシュパネルに固定されている構造において、
前記索状体が前記ブラケットに固定され、前記索状体と前記別の部品とが前記ブラケットを介して前記ダッシュパネルに固定されており、
前記ブラケットは、前記ダッシュパネルへの固定部に対してエンジン側に位置した対向面を有し、前記対向面よりも車両後方側に前記索状体が配置され、
前記固定部が固定される前記ダッシュパネルの被固定部の剛性が、前記ブラケットの剛性よりも低く設定され、それにより、前記ブラケットの前記対向面が前記エンジンによって車両後方側に押された場合に、前記ダッシュパネルの前記被固定部が前記ブラケットよりも早く変形するように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、前記ブラケットの固定部が固定される前記ダッシュパネルの被固定部の剛性が前記ブラケットの剛性よりも低く設定されて、前記ブラケットが前記エンジンに車両後方側に押されると、前記ダッシュパネルの被固定部が前記ブラケットよりも早く変形するから、自動車の衝突の際には、ブラケットの形状を保って索状体の占めるスペースを確保することができ、索状体がエンジンとダッシュパネルに挟まれることを防止することができて、索状体の損傷を防止することができる。
また、索状体とは別の部品をダッシュパネルに固定するためのブラケットを介して索状体がダッシュパネルに固定されているから、索状体をダッシュパネルに固定する為の専用のブラケットを設ける必要がなくなって、部品点数を削減できるとともに、製作コストを削減することができる。
本発明の好適な態様では、前記ブラケットは、前記固定部を複数備え、前記複数の固定部は、前記ダッシュパネルの広がり方向に、前記索状体及び別の部品を挟んで、互いに離れて位置し、前記ダッシュパネルには、前記複数の固定部に対応して、前記被固定部が互いに離れて複数設けられている。
この構成により、ブラケットの固定強度を強くすることができ、自動車が衝突した際のブラケットの曲がり変形等を抑えて、ブラケットと索状体が自動車の衝突後においても衝突前と同じ隙間を確保した状態にすることができる。索状体がブラケットに固定されていない場合、他の部品との干渉を避ける為、索状体の位置のバラつきを考慮し、隙間を広めに取る設計寸法とする必要があるが、本発明の様に、ブラケットに索状体を固定することにより、ブラケットと索状体の設計隙間を狭くすることができ、ブラケットの小型化・コストの削減化・軽量化を図ることができる。また、周辺部品のレイアウトの自由度も向上させることができる。
本発明の他の好適な態様では、前記ブラケットは、前記ダッシュパネル側からエンジン側に突出した2つの側壁を有しかつ前記2つの側壁の先端が前記対向面で連結された断面ハット形状に形成されており、前記索状体は、前記側壁の何れかに固定されている。
この構成により、前記ブラケットは、車両前後方向の力に対して強い構造にすることができ、このような強い構造のブラケットの側壁に索状体が固定されているから、自動車の衝突後においても索状体の占めるスペースを確保することができ、索状体がエンジンとダッシュパネルに挟まれることおよびそれに伴う索状体の損傷を防止できる。
本発明のさらに他の好適な態様では、前記ダッシュパネルの前記被固定部およびその周囲が一枚板状に形成されている。
パネルが2枚以上重なる場合、多くは強度向上や相手側部品との合わせのバラつきを考慮して面がピッタリ重ならないようにしているが、その場合、間に隙間ができ、単純に溶接位置で両面の電極を合わせることができないので、電極の位置を選択しながら溶接を行わなければならず、自動溶接が困難である。しかし、上記構成では、ダッシュパネルの被固定部が一枚であるので、ブラケット取り付け用のボルトを溶接固着する場合に、溶接ロボットによる自動溶接が可能になり、人件費・製造費を削減することができる。
本発明に係る自動車のダッシュパネル構造によれば、ダッシュパネルに配索された索状体の損傷を防止でき索状体の耐久性を向上させることができる。
エンジンルームを取り除いてダッシュパネルを露出させた状態の自動車の斜視図 (a)はダッシュパネルの正面図、(b)はウォーターポンプを車体に固定する為のブラケット、及び、走行用モータを駆動する為の電気を供給するワイヤーハーネスの配置を示す図 図2(b)のA−A断面図 (a)は衝突前の図2(b)のA−A断面に対応する図(b)は衝突後の図2(b)のA−A断面に対応する図 ウォーターポンプブラケットの斜視図 別実施形態を示す図
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、自動車のエンジンルームと車室を仕切るダッシュパネル3に、車両前後方向に並んだ2本の高電圧のワイヤーハーネス4(索状体に相当)が配索されている。ワイヤーハーネス4の一端部は自動車の後部に搭載されたバッテリーに接続し、このバッテリーから延びたワイヤーハーネス4がフロアトンネル近傍のダッシュパネル3を車両後方側Rrから貫通して上方に延びている。さらに、前記ワイヤーハーネス4が車幅方向の一端部側(左端部側)に延びて、ワイヤーハーネス4の他端部が走行用の電動モータに接続している。
上下方向に沿うワイヤーハーネス部分4Aの上下方向中間部は樹脂製の第1ハーネスカバー5に覆われ、上下方向に沿うワイヤーハーネス部分4Aに近い側の車幅方向に沿うワイヤーハーネス部分4Bは樹脂製の第2ハーネスカバー6に覆われている。図3に示すように、第2ハーネスカバー6はウォーターポンプブラケット20に取り囲まれてウォーターポンプブラケット20に固定されている。
図3に示すように、第2ハーネスカバー6は、車両前方側Frが開放した縦断面コの字状のカバー本体8と、カバー本体8の開口周縁部に着脱自在な蓋材9とから成る。
第2ハーネスカバー6は前記2本のワイヤーハーネス4を取り囲む。2本のワイヤーハーネス4は車両前後方向に並んでいるので、縦断面におけるカバー本体8の上側の側壁10と下側の側壁11の長さはカバー本体8の後壁12の長さよりも長く、後壁12のほぼ2倍の長さに設定されている。
図4に示すように、前記蓋材9にはカバー本体8の下側の側壁11よりも下方に延びる延出片9Aが形成されている。
また、図2(b)に示すように、上下方向に沿うワイヤーハーネス部分4Aに近い側の車幅方向に沿うワイヤーハーネス部分4Bの下方にウォーターポンプブラケット20が位置し、このウォーターポンプブラケット20を介してウォーターポンプ19(索状体とは別の部品に相当)がダッシュパネル3に固定されている。ウォーターポンプ19はキャビン内の暖房用の水(エンジンを冷却するための水)を圧送する。
図3,図5に示すように、ウォーターポンプブラケット20は、車幅方向から見てダッシュパネル3側からエンジンE側に突出する断面ハット形状に形成され、上側の側壁28と下側の側壁29の基端部の折曲した取り付け片28A,29A(固定部に相当)にボルト挿通孔Sがそれぞれ形成されている。このウォーターポンプブラケット20の板厚はダッシュパネル3よりも厚く設定されている。
図5に示すように、前記上側の側壁28の取り付け片28Aは、上側の側壁28とは別部材であるL字形部材60を前記上側の側壁28に接合して構成されている。詳しくは、上側の側壁28の基端部から側壁28の幅方向外方側に第1延出部61が延出し、この第1延出部61の延出端部の上面にL字形部材60の一片60Aが溶接接合されて、前記上側の側壁28の取り付け片28Aが形成されている。
前記第1延出部61の長手方向中間部から車両前方側Frに第2延出部62が延出し、この第2延出部62に三角形状の係合孔21が形成されている。L字形部材60の幅方向両端部にはフランジ60Fが形成されている。これにより、L字形部材60の剛性・強度が向上している。前記フランジ60Fに換えてビードが形成されていてもよい。また、前記上側の側壁28と下側の側壁29とこれらを連結する頂壁65との幅方向両端部にフランジが形成されていてもよい。
これにより、前記上側の側壁28と下側の側壁29と頂壁65の剛性・強度を向上させることができる。その結果、ウォーターポンプ19の駆動時の振動がダッシュパネル3を通じて車室内に伝わりにくくすることができ、乗員が不快にならないようにすることができる。
そして、図3に示すように、ダッシュパネル3に固着された一対のスタッドボルトBが前記ボルト挿通孔Sに挿通し、スタッドボルトBにナットが螺合して前記取り付け片28A,29Aがダッシュパネル3に固定されている。
このウォーターポンプブラケット20の下半部内にウォーターポンプ19が挿通している。そして、2本のワイヤーハーネス4を取り囲んだ第2ハーネスカバー6がウォーターポンプブラケット20の上半部に取り囲まれ、第2ハーネスカバー6のカバー本体8の上側の側壁10に形成された断面L字状の係合部16の係合爪が、ウォーターポンプブラケット20の上側の側壁28の係合孔21(図5参照)に係合し、ワイヤーハーネス4がウォーターポンプブラケット20に固定されている。つまり、ワイヤーハーネス4はウォーターポンプブラケット20の上側の側壁28に固定されている。
このように、ワイヤーハーネス4がウォーターポンプブラケット20に固定されて、ワイヤーハーネス4とウォーターポンプ19がウォーターポンプブラケット20を介してダッシュパネル3に固定されている。ウォーターポンプ19の車両前方側FrにはエンジンEが配置され、ワイヤーハーネス4は、エンジンEに対するウォーターポンプブラケット20の対向面20Mよりも車両後方側Rrに配置されている。前記ウォーターポンプブラケット20の対向面20Mはほぼ鉛直方向に沿っており、この対向面20Mが対向するエンジンEの後面31もほぼ鉛直方向に沿っている。
ウォーターポンプブラケット20の複数の取り付け片28A,29Aは、互いに離れて位置するように車両前後方向から見てワイヤーハーネス4及びウォーターポンプ19を挟んで位置し、上側の取り付け片28Aがワイヤーハーネス4の上方に、下側の取り付け片29Aがワイヤーハーネス4の下方に位置する。
ウォーターポンプブラケット20の取り付け片28A,29Aが固定されるダッシュパネル3の被固定部3Kは複数(取り付け片28A,29Aと同数)設けられるとともに、複数の被固定部3Kが複数の取り付け片28A,29Aに対応して互いに離れて位置している(図3参照)。また、被固定部3Kを含むウォーターポンプブラケット20の周りのダッシュパネル部分が一枚板状に形成されている。従って、前記ダッシュパネル部分に補強材などは存在しない。
そして、ウォーターポンプブラケット20の取り付け片28A,29Aが固定されるダッシュパネル3の被固定部3K(スタッドボルトBの基端部の周りのダッシュパネル部分)の剛性がウォーターポンプブラケット20の剛性よりも低く設定されて、ウォーターポンプブラケット20がエンジンEに車両後方側Rrに押されると、前記ダッシュパネル3の被固定部3Kがウォーターポンプブラケット20よりも早く変形するよう構成されている。
上記の構造によれば、自動車が走行中に前方の障害物に衝突した際、図4(a),図4(b)に示すように、エンジンEは障害物に押されて後方に移動するが、ワイヤーハーネス4は強度の高いウォーターポンプブラケット20に前方を保護される。
すなわち、自動車の衝突の際には、ウォーターポンプブラケット20の形状を保ってワイヤーハーネス4の占めるスペースを確保することができ、ワイヤーハーネス4がエンジンEとダッシュパネル3に挟まれることを防止することができて、ワイヤーハーネス4の損傷を防止することができる。
また、ワイヤーハーネス4とは別の部品であるウォーターポンプ19をダッシュパネル3に固定するためのウォーターポンプブラケット20を介してワイヤーハーネス4が(別の部品と共に)ダッシュパネル3に固定されているから、ワイヤーハーネスをダッシュパネルに固定する為の専用のブラケットを設ける必要がなくなって、部品点数を削減できるとともに、製作コストを削減することができる。
すなわち、通常、車輌組み付けバラ付き(車両ごとのワイヤーハーネス4の組み付け状態にばらつきがあること)を低減するための専用のブラケットや溶接ボルト・締付けナットなどでワイヤーハーネス4が固定されるが、本発明の上記の構造によれば、ウォーターポンプブラケット20にワイヤーハーネス4を固定しているので、専用のブラケットや溶接ボルト・締付けナットなどが不要となり、部品点数を削減できるとともに、製作コストを削減することができる。
そして、ウォーターポンプブラケット20とワイヤーハーネス4の設計隙間を狭くすることができ、それによってウォーターポンプブラケット20の小型化が可能であり、コスト削減・重量低減効果がある。また、周辺部品のレイアウト自由度も向上する。さらに、前記スタッドボルトBを溶接するダッシュパネル3の領域は1枚の板金である為、スタッドボルトBをロボットにより自動溶接することができて人件費・製造コストを削減できる。
ウォーターポンプブラケット20はダッシュパネル3側からエンジンE側に突出する断面ハット形状に形成されているから、ウォーターポンプブラケット20を車両前後方向の力に対して強い構造にすることができる。このような強い構造のウォーターポンプブラケット20の上側の側壁28にワイヤーハーネス4が固定されているから、自動車の衝突後においてもワイヤーハーネス4の占めるスペースを確保することができ、ワイヤーハーネス4がエンジンEとダッシュパネル3に挟まれることを防止することができて、ワイヤーハーネス4の損傷を防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、前記ワイヤーハーネス4を固定するためのブラケットはウォーターポンプ19を固定するためのブラケットである必要はなく、エンジンルーム1に配置されるどのようなブラケット、例えばキャニスタのブラケットなどでも良い。
また、前記索状体は燃料ホース等のフレキシブルなホースなどでも良い。
さらに、図6に示すように、前記ワイヤーハーネス4をウォーターポンプブラケット20で完全に覆わずに、ウォーターポンプブラケット20の近傍(例えば上方)に配置した構造でもよい。
この実施形態では、ウォーターポンプブラケット20の上方に位置する断面L字形のブラケット71の一片70とウォーターポンプブラケット20の取り付け片28Aとがダッシュパネル3に前記スタッドボルトBにより固定され、断面L字形のブラケット71にハーネスカバー6が支持されている。そして、ウォーターポンプブラケット20の車両後方側Rrの面20M(対向面)がハーネスカバー6の車両後方側Rrの面よりもエンジンE側に位置している。この実施形態の構造によれば、ハーネス4の組付け作業の作業性を向上させることができる。
3 ダッシュパネル
3K 被固定部
4 索状体(ワイヤーハーネス)
19 別の部品(ウォーターポンプ)
20 ブラケット(ウォーターポンプブラケット)
20M 対向面
28 ブラケットの側壁(上側の側壁)
28A,29A 固定部(ブラケットの取り付け片)
E エンジン
Rr 車両後方側

Claims (4)

  1. エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルに索状体が配索され、前記索状体とは別の部品がブラケットを介して前記ダッシュパネルに固定されている自動車のダッシュパネル構造において、
    前記索状体が前記ブラケットに固定され、前記索状体と前記別の部品とが前記ブラケットを介して前記ダッシュパネルに固定されており、
    前記ブラケットは、前記ダッシュパネルへの固定部に対してエンジン側に位置した対向面を有し、前記対向面よりも車両後方側に前記索状体が配置され、
    前記固定部が固定される前記ダッシュパネルの被固定部の剛性が、前記ブラケットの剛性よりも低く設定され、それにより、前記ブラケットの前記対向面が前記エンジンによって車両後方側に押された場合に、前記ダッシュパネルの前記被固定部が前記ブラケットよりも早く変形するように構成されていることを特徴とする自動車のダッシュパネル構造。
  2. 前記ブラケットは、前記固定部を複数備え、前記複数の固定部は、前記ダッシュパネルの広がり方向に、前記索状体及び別の部品を挟んで、互いに離れて位置し、前記ダッシュパネルには、前記複数の固定部に対応して、前記被固定部が互いに離れて複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のダッシュパネル構造。
  3. 前記ブラケットは、前記ダッシュパネル側からエンジン側に突出した2つの側壁を有しかつ前記2つの側壁の先端が前記対向面で連結された断面ハット形状に形成されており、前記索状体は、前記側壁の何れかに固定されていることを特徴とする請求項または2に記載の自動車のダッシュパネル構造。
  4. 前記ダッシュパネルの前記被固定部およびその周囲が一枚板状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の自動車のダッシュパネル構造。
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