以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態は、航空機の舵面を駆動する複数の油圧作動式のアクチュエータと、複数のアクチュエータの作動をそれぞれ制御する複数の制御系統と、を備える、航空機アクチュエータの制御装置に関して、広く適用することができるものである。
図1は、本発明の一実施の形態に係る航空機アクチュエータの制御装置1を模式的に示す油圧回路図である。航空機アクチュエータの制御装置1(以下、単に「制御装置1」ともいう)は、図示しない航空機の舵面100を駆動する複数(本実施形態では、2つ)の油圧作動式のアクチュエータ(11、12)と、複数のアクチュエータ(11、12)の作動をそれぞれ制御する複数の制御系統(13、14)とを備えて構成されている。尚、舵面100は、航空機の動翼(操縦翼面)として設けられており、例えば、主翼に設けられるエルロン(補助翼)や、水平尾翼に設けられる昇降舵(エレベータ)、垂直尾翼に設けられる方向舵(ラダー)、等として構成される。
制御装置1では、アクチュエータ(11、12)として、第1アクチュエータ11と第2アクチュエータ12とが備えられている。第1及び第2アクチュエータ(11、12)のそれぞれは、舵面100に連結されており、独立して舵面100を駆動可能なシリンダ機構として構成されている。
第1アクチュエータ11は、ロッド15と、ロッド15が軸方向に移動自在な状態で貫通するシリンダ16と、ロッド15に固定されたピストン17とが設けられている。シリンダ16内は、ピストン17により、一対の油室(16a、16b)に区画されている。また、第1アクチュエータ11には、ロッド15のシリンダ16に対する位置を検出する位置センサ18が設置されている。そして、第2アクチュエータ12は、ロッド19と、ロッド19が軸方向に移動自在な状態で貫通するシリンダ20と、ロッド19に固定されたピストン21とが設けられている。シリンダ20内は、ピストン21により、一対の油室(20a、20b)に区画されている。また、第2アクチュエータ12には、ロッド19のシリンダ20に対する位置を検出する位置センサ22が設置されている。
また、制御装置1では、制御系統(13、14)として、第1制御系統13と第2制御系統14とが備えられている。第1制御系統13は、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)と、第1系統油圧源101及びリザーバ回路102とを連通可能に構成されている。一方、第2制御系統14は、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)と、第2系統油圧源103及びリザーバ回路104とを連通可能に構成されている。
第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103のそれぞれは、圧油(作動油)を供給する油圧ポンプを備えて構成され、図示しない航空機の機体側に設置されている。そして、第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103は、互いに独立した系統として設けられている。尚、上記油圧源(101、103)が設置される航空機においては、第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103のそれぞれからの圧油が供給されることで、舵面100を駆動する第1及び第2アクチュエータ(11、12)と、舵面100以外の舵面(図示せず)を駆動するアクチュエータ(図示せず)とが作動するように構成されている。
リザーバ回路102は、第1系統油圧源101からの圧油として供給された後に第1アクチュエータ11から排出される圧油が流入して戻るタンク(図示せず)を備えるとともに、第1系統油圧源101に連通するように構成されている。また、リザーバ回路102から独立した系統として構成されるリザーバ回路104は、第2系統油圧源103からの圧油として供給された後に第2アクチュエータ12から排出される圧油が流入して戻るタンク(図示せず)を備えるとともに、第2系統油圧源103に連通するように構成されている。このように構成されていることで、リザーバ回路102に戻った油は、第1系統油圧源101で昇圧され、第1制御系統13を介して第1アクチュエータ11に供給される。一方、リザーバ回路104に戻った油は、第2系統油圧源103で昇圧され、第2制御系統14を介して第2アクチュエータ12に供給される。
図2は、制御装置1の一部について詳しく示す油圧回路図であって、第1制御系統13及び第1アクチュエータ11について示す図である。図1及び図2に示す第1制御系統13は、制御弁23、状態切替弁24、電磁弁25、逆止弁(29a、29b)、検査用オリフィス回路30、供給油路31、排出油路32、パイロット圧油路33、給排油路(34a、34b、35a、35b)、等を備えて構成されている。また、図1に示す第2制御系統14は、制御弁26、状態切替弁27、電磁弁28、逆止弁(29a、29b)と同様に構成される逆止弁(図示せず)、検査用オリフィス回路30と同様に構成される検査用オリフィス回路(図示せず)、供給油路36、排出油路37、パイロット圧油路38、給排油路(39a、39b、40a、40b)、等を備えて構成されている。
第1制御系統13の供給油路31は、第1系統油圧原101と制御弁23とを接続して第1系統油圧源101からの圧油を供給する油路として設けられている。また、供給油路31には、油中の異物を除去するためのフィルター101a、第1系統油圧源101からの圧油の流れを許容し第1系統油圧源101へ逆流する方向の流れを規制する逆止弁101b、が設けられている。第1制御系統13の排出油路32は、制御弁23とリザーバ回路102とを接続し、制御弁23から排出された油をリザーバ回路102に排出する油路として設けられている。また、排出油路32には、リリーフ弁を備えて構成される蓄圧器102aが設けられている。蓄圧器102aが排出油路32に設けられていることで、蓄圧器102aの上流側(リザーバ回路102が連通する側と反対側)における第1制御系統13及び第1アクチュエータ11の回路内の圧油の圧力が、蓄圧器102aのリリーフ弁によるリリーフ圧以上に維持されることになる。
第2制御系統14の供給油路36は、第2系統油圧原103と制御弁26とを接続して第2系統油圧源103からの圧油を供給する油路として設けられている。供給油路31には、第1制御系統13のフィルター101a及び逆止弁101bと同様に構成されるフィルター及び逆止弁(図示せず)が設けられている。第2制御系統14の排出油路37は、制御弁26とリザーバ回路104とを接続し、制御弁26から排出された油をリザーバ回路104に排出する油路として設けられている。排出油路37には、第1制御系統13の蓄圧器102aと同様に構成される蓄圧器(図示せず)が設けられている。
第1制御系統13の給排油路(34a、34b)は、制御弁23と状態切替弁24とを接続し、第1系統油圧源101から供給される圧油とリザーバ回路102へ排出される圧油とが流動する油路として設けられている。第1制御系統13の給排油路(35a、35b)は、状態切替弁24と第1アクチュエータ11とを接続し、第1アクチュエータ11へ供給される圧油と第1アクチュエータ11から排出される圧油とが流動する油路として設けられている。尚、給排油路35aは第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)のうちの一方の油室16aに接続し、給排油路35bは他方の油室16bに接続するように構成されている。
第2制御系統14の給排油路(39a、39b)は、制御弁26と状態切替弁27とを接続し、第2系統油圧源103から供給される圧油とリザーバ回路104へ排出される圧油とが流動する油路として設けられている。第2制御系統14の給排油路(40a、40b)は、状態切替弁27と第2アクチュエータ12とを接続し、第2アクチュエータ12へ供給される圧油と第2アクチュエータ12から排出される圧油とが流動する油路として設けられている。尚、給排油路40aは第2アクチュエータ11における一対の油室(20a、20b)のうちの一方の油室20aに接続し、給排油路40bは他方の油室20bに接続するように構成されている。
第1制御系統13のパイロット圧油路33は、状態切替弁24のパイロット圧室24eと電磁弁25とを接続し、状態切替弁24を作動させるためのパイロット圧油を供給及び排出する油路として設けられている。また、電磁弁25は、油路33aを介して供給油路31に接続し、油路33bを介して排出油路32に接続している。そして、電磁弁25は、例えば励磁した状態では図1及び図2に示すように供給位置25aに切り替えられており、油路33aとパイロット圧油路33とを接続し、第1系統油圧源101からのパイロット圧油を状態切替弁24のパイロット圧室24eに供給可能に構成されている。一方、電磁弁25は、例えば消磁した状態では排出位置25bに切り替えられ、油路33aを遮断し、パイロット圧油路33と油路33bとを接続する。これにより、パイロット圧室24eに供給されたパイロット圧油をリザーバ回路102に排出可能に構成されている。
第2制御系統14のパイロット圧油路38は、状態切替弁27のパイロット圧室(図示せず)と電磁弁28とを接続し、状態切替弁27を作動させるためのパイロット圧油を供給及び排出する油路として設けられている。また、電磁弁28は、油路38aを介して供給油路36に接続し、油路38bを介して排出油路37に接続している。そして、電磁弁28は、例えば励磁した状態では図1に示すように供給位置28aに切り替えられており、油路38aとパイロット圧油路38とを接続し、第2系統油圧源103からのパイロット圧油を状態切替弁27のパイロット圧室に供給可能に構成されている。一方、電磁弁28は、例えば消磁した状態では排出位置28bに切り替えられ、油路38aを遮断し、パイロット圧油路38と油路38bとを接続する。これにより、状態切替弁27のパイロット圧室に供給されたパイロット圧油をリザーバ回路104に排出可能に構成されている。
第1制御系統13の逆止弁29aは、給排油路35aと油路33bとを接続する油路41aに設置され、油路41aにおいて油路33bに接続する側から油路35aに接続する側への圧油の流れを許容してその逆方向の圧油の流れを規制するように設けられている。これにより、油路35aが接続する一方の油室16aにおいて圧油の圧力低下が生じた際に、蓄圧器102aによって維持された所定のリリーフ圧以上の圧油が油室16aに導入されるように構成されている。また、逆止弁29bは、給排油路35bと油路33bとを接続する油路41bに設置され、油路41bにおいて油路33bに接続する側から油路35bに接続する側への圧油の流れを許容してその逆方向の圧油の流れを規制するように設けられている。これにより、油路35bが接続する他方の油室16bにおいて圧油の圧力低下が生じた際に、蓄圧器102aによって維持された所定のリリーフ圧以上の圧油が油室16bに導入されるように構成されている。尚、図示を省略するが、第2制御系統14においても、第1制御系統13の逆止弁(29a、29b)と同様に構成される2つの逆止弁が設けられている。
第1制御系統13の制御弁23は、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路を切り替え、第1アクチュエータ11の作動を制御する電油サーボ弁として設けられている。この制御弁23は、第1アクチュエータ11の動作を制御するアクチュエータコントローラ42aからの指令信号に基づいて駆動される。そして、アクチュエータコントローラ42aは、舵面100の動作を指令する更に上位のコンピュータであるフライトコントローラ43からの指令信号に基づいて第1アクチュエータ11を制御する。尚、フライトコントローラ43は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース等を備えて構成されている。
第2制御系統14の制御弁26は、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路を切り替え、第2アクチュエータ12の作動を制御する電油サーボ弁として設けられている。この制御弁26は、第2アクチュエータ12の動作を制御するアクチュエータコントローラ42bからの指令信号に基づいて駆動される。そして、アクチュエータコントローラ42bは、フライトコントローラ43からの指令信号に基づいて第2アクチュエータ12を制御する。
フライトコントローラ43には、第1アクチュエータ11に設けられた位置センサ18で検出されたロッド15の位置検出信号と、第2アクチュエータ12に設けられた位置センサ22で検出されたロッド19の位置検出信号とが、入力されるように構成されている。そして、フライトコントローラ43により、上記位置検出信号に基づくロッド15の位置のフィードバック制御が行われるように、アクチュエータコントローラ42a及び制御弁23を介して、一対の油室(16a、16b)に対する圧油の供給及び排出が制御され、舵面100の動作が制御される。同様に、フライトコントローラ43により、上記位置検出信号に基づくロッド19の位置のフィードバック制御が行われるように、アクチュエータコントローラ42b及び制御弁26を介して、一対の油室(20a、20b)に対する圧油の供給及び排出が制御され、舵面100の動作が制御される。
また、図2に示すように、第1制御系統13の制御弁23は、中立位置23aと、第1切替位置23bと、第2切替位置23cとの間で、比例的に位置を切替可能に設けられている。中立位置23aに切り替えられている状態では、制御弁23は、供給油路31及び排出油路32と、給排油路(34a、34b)とを遮断しており、一対の油室(16a、16b)に対する圧油の供給及び排出が停止され、第1アクチュエータ11のロッド15が停止した状態が維持される。
制御弁23が中立位置23aから第1切替位置23bに切り替えられると、供給油路31と給排油路34aとが接続されて一方の油室16aに圧油が供給され、排出油路32と給排油路34bとが接続されて他方の油室16bから圧油が排出される。一方、制御弁23が中立位置23aから第2切替位置23cに切り替えられると、供給油路31と給排油路34bとが接続されて他方の油室16bに圧油が供給され、排出油路32と給排油路34aとが接続されて一方の油室16aから圧油が排出される。尚、制御弁23が第1切替位置23bに切り替えられた状態と第2切替位置23cに切り替えられた状態では、ロッド15は逆方向に移動し、舵面100も逆方向に動作するように駆動されることになる。第2制御系統14の制御弁26については、第1制御系統13の制御弁23と同様に構成されて同様に作動するため、説明を省略する。
第1制御系統13の状態切替弁24は、制御弁23と第1アクチュエータ11との間において制御弁23及び第1アクチュエータ11を連通可能に配置されている。そして、状態切替弁24は、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)に対して連通可能なオリフィス24fを有するとともに、第1アクチュエータ11の作動状態を切り替える弁として構成されている。また、第2制御系統14の状態切替弁27は、制御弁26と第2アクチュエータ12との間において制御弁26及び第2アクチュエータ12を連通可能に配置されている。そして、状態切替弁27は、第2アクチュエータ12の一対の油室(20a、20b)に対して連通可能なオリフィス(図示せず)を有するとともに、第2アクチュエータ12の作動状態を切り替える弁として構成されている。
第1制御系統13の検査用オリフィス回路30は、状態切替弁24のオリフィス24fの性能の検査に用いられる検査用オリフィス30aを有するとともに、状態切替弁24を介して第1アクチュエータ11に連通可能な油圧回路として設けられている。この検査用オリフィス回路30は、状態切替弁24における後述の検査用ポート(24j、24j)にそれぞれ両端側の各出口で接続する1本の油路として構成され、その油路の途中に検査用オリフィス30aが設けられている。この検査用オリフィス回路30は、状態切替弁24に対して一体の筐体に設けられた油圧回路として構成されてもよく、また、状態切替弁24とは別体の筐体に設けられた油圧回路として構成されてもよい。
検査用オリフィス30aは、検査用オリフィス回路30における状態切替弁24の検査用ポート(24j、24j)に連通する油路において、その油路を流動する圧油の流量を絞ることが可能なように油路の断面積が減少した部分として構成されている。また、検査用オリフィス30aは、状態切替弁24のオリフィス24fと同じ仕様のオリフィスとして構成されている。即ち、オリフィス24f及び検査用オリフィス30aは、設置直後の使用されていない状態ではオリフィスとしての性能が同一の状態である。そして、オリフィス24fの使用によってオリフィス24fの性能の劣化が進行すると、検査用オリフィス30aとの性能の差異が生じることになる。このため、検査用オリフィス30aの性能を基準として比較されるオリフィス24fの性能の検査が行われることで、制御装置1は、オリフィス24fの性能の劣化の程度を検出可能に構成されている。
また、第2制御系統14の検査用オリフィス回路(図示せず)は、状態切替弁27のオリフィス(図示せず)の性能検査に用いられる検査用オリフィス(図示せず)を有するとともに、状態切替弁27を介して第2アクチュエータ12に連通可能な油圧回路として設けられている。第2制御系統14の検査用オリフィス回路における検査用オリフィスは、状態切替弁27のオリフィスと同じ仕様のオリフィスとして構成されている。尚、第2制御系統14の検査用オリフィス回路は、第1制御系統13の検査用オリフィス回路30と同様に構成されるため、その詳しい説明を省略する。
ここで、第1制御系統13の状態切替弁24について更に詳しく説明する。尚、第2制御系統14の状態切替弁27は第1制御系統13の状態切替弁24と同様に構成されるため、状態切替弁27についての更に詳しい説明は省略する。
図2に示すように、状態切替弁24は、アクチュエータ接続位置24aと、ダンピング位置24bと、検査オリフィス位置24cと、全遮断位置24dと、の間で、位置を切替可能に設けられている。図3及び図4は、状態切替弁24の作動について説明するための油圧回路図であり、図2における状態切替弁24及びその近傍の油圧回路を示す図である。尚、図3(a)は状態切替弁24がアクチュエータ接続位置24aに切り替えられた状態を、図3(b)は状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられた状態を、図4(a)は状態切替弁24が検査オリフィス位置24cに切り替えられた状態を、図4(b)は状態切替弁24が全遮断位置24dに切り替えられた状態をそれぞれ示している。
また、図2乃至図4に示すように、状態切替弁24には、パイロット圧室24e、オリフィス24f、操作レバー24g、制御弁用ポート(24h、24h)、アクチュエータ用ポート(24i、24i)、検査用ポート(24j、24j)、等が設けられている。尚、状態切替弁24は、スリーブ(図示せず)内でスプール(図示せず)の位置が変更されることにより、各ポート(24h、24h、24i、24i、24j、24j)間の油路の接続状態及び遮断状態が切り替えられるように構成されている。そして、操作レバー24gが設けられている端部側からパイロット圧室24eが設けられている端部側に向かってスプールの位置が順番に変更されることにより、アクチュエータ接続位置24aと、ダンピング位置24bと、検査オリフィス位置24cと、全遮断位置24dと、の間で、この順番で、位置の切り替えが行われるように構成されている。
パイロット圧室24eは、電磁弁25及びパイロット圧油路33を介して供給されるパイロット圧油が導入される油室として設けられている。そして、パイロット圧室24eに圧油が供給された状態では、バネ24kのバネ力に抗して作用するパイロット圧油の付勢力によって状態切替弁24がアクチュエータ接続位置24aに切り替えられることになる(図3(a)参照)。一方、パイロット圧室24eからパイロット圧油が排出されることで、バネ24kのバネ力によって状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられることになる(図3(b)参照)。
オリフィス24fは、状態切替弁24におけるダンピング位置24bを構成する油路であって給排油路35aと給排油路35bとを連通可能な油路に配置されている。そして、オリフィス24fは、例えば、給排油路(35a、35b)を連通可能な油路において、給排油路(35a、35b)の一方から他方へ流動する圧油の流量を絞ることが可能なように断面積が減少した部分として構成されたノッチとして設けられている。
操作レバー24gは、図示しない作業者が手動操作で状態切替弁24の位置を切り替えるための機構として設けられている。そして、この操作レバー24gによる状態切替弁24の位置の切替操作は、電磁弁25が排出位置25bに切り替えられることでパイロット圧室24eからパイロット圧油が排出されて状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられた状態(図3(b)に示す状態)から行われる。
また、操作レバー24fは、状態切替弁24の位置を2段階に切替可能に構成されている。操作レバー24gの1段階目の切替操作では、状態切替弁24がダンピング位置24bから検査オリフィス位置24cに切り替えられる(図4(a)参照)。そして、操作レバー24gの2段階目の切替操作では、状態切替弁24が検査オリフィス位置24cから全遮断位置24dに切り替えられる(図4(b)参照)。このように、状態切替弁24は、操作レバー24gの手動操作が行われることで、検査オリフィス位置24c及び全遮断位置24dのそれぞれへの切替操作が行われるように構成されている。
尚、状態切替弁24は、ダンピング位置24bにおいて、例えば、操作レバー24gが手動でパイロット圧室24e側に向かって付勢されることで、スプールの位置が移動してスリーブ等に当接して停止し、検査オリフィス位置24cに切り替えられる。そして、状態切替弁24は、検査オリフィス位置24cにおいて、例えば、操作レバー24fがスプールの軸中心に対して回転方向に手動で回転操作された後に更に手動でパイロット圧室24e側に向かって付勢されることで、スプールの位置が更に移動してスリーブ等に当接して停止し、全遮断位置24dに切り替えられる。
制御弁用ポート(24h、24h)は、制御弁23に連通するポートとして設けられ、一方が給排油路34aに接続して他方が給排油路34bに接続するように構成されている。アクチュエータ用ポート(24i、24i)は、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)に連通するポートとして設けられ、一方が給排油路35aに接続して他方が給排油路35bに接続するように構成されている。検査用ポート(24j、24j)は、検査用オリフィス回路30に連通するポートとして設けられ、各ポート(24j、24j)が検査用オリフィス回路30の両端側の出口のそれぞれに接続するように構成されている。
アクチュエータ接続位置24aは、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)のそれぞれと制御弁23との間で圧油が流動するように第1アクチュエータ11と制御弁23とを接続する位置として構成されている。即ち、図3(a)に示すように、状態切替弁24がアクチュエータ接続位置24aに切り替えられた状態では、給排油路(34a、34b)にそれぞれ接続されている制御弁用ポート(24h、24h)と、給排油路(35a、35b)にそれぞれ接続されているアクチュエータ用ポート(24i、24i)とがそれぞれ連通する。
状態切替弁24がアクチュエータ接続位置24aに切り替えられている状態では、アクチュエータコントローラ42aを介してフライトコントローラ43からの指令信号に基づいて制御弁23が作動する。これにより、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)に対する圧油の供給及び排出が制御され、第1アクチュエータ11の作動の制御が行われる。
ダンピング位置24bは、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)のそれぞれから排出される圧油がオリフィス24fを通過可能にするとともに一対の油室(16a、16b)を連通させる位置として構成されている。即ち、図3(b)に示すように、状態切替弁24は、ダンピング位置24bに切り替えられることで、一対の油室(16a、16b)をオリフィス24fを介して連通させるように互いに接続する。尚、状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられた状態では、給排油路(35a、35b)にそれぞれ接続されているアクチュエータ用ポート(24i、24i)がオリフィス24fを介してそれぞれ連通する。
例えば、第1系統油圧源101の機能の喪失又は低下等が発生した場合、フライトコントローラ43からの指令信号に基づいてアクチュエータコントローラ42aが電磁弁25を消磁させる。これにより、電磁弁25が排出位置25bに切り替えられてパイロット圧油がパイロット圧室24eから排出され、バネ24kのバネ力によって状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられる。
状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられると、第1アクチュエータ11は、第2アクチュエータ12によって駆動される舵面100に作用する外力(第2アクチュエータ12による駆動力等)に追従するように作動することになる。そして、この作動時におけるロッド15の移動に伴って、一対の油室(16a、16b)間において圧油がオリフィス24fを通過して流動し、オリフィス24fによるダンピング機能(減衰機能)が発揮されることになる。これにより、制御装置1において、第2系統油圧源103の機能の喪失等が発生しておらず正常に作動可能な第2アクチュエータの動作を阻害するような第1アクチュエータ11の動作が抑制されることになる。
また、第1系統油圧源101及び第2系統油圧源103の両方において機能の喪失等が発生した場合、第1制御系統13の状態切替弁24と第2制御系統14の状態切替弁27がともにダンピング位置に切り替えられる。この場合、第1アクチュエータ11及び第2アクチュエータ12は、舵面100に作用する外力(飛行時の航空機の翼に作用する風力等)に追従するように作動することになる。そして、この作動時におけるロッド(15、19)の移動に伴って、一対の油室(16a、16b)間及び一対の油室(20a、20b)間において圧油がオリフィスを通過して流動し、オリフィスによるダンピング機能が発揮されることになる。これにより、舵面100がフラッター現象のように過度に動いてしまうような舵面100の異常な動作を抑制することができる。
検査オリフィス位置24cは、第1アクチュエータ11の一対の油室(16a、16b)のそれぞれから排出される圧油が検査用オリフィス30aを通過可能なように一対の油室(16a、16b)と検査用オリフィス回路30とを連通させる位置として構成されている。即ち、図4(a)に示すように、状態切替弁24は、検査オリフィス位置24cに切り替えられることで、一対の油室(16a、16b)を検査用オリフィス30aを介して連通させるように互いに接続する。よって、状態切替弁24が検査オリフィス位置24cに切り替えられた状態では、給排油路(35a、35b)にそれぞれ接続されているアクチュエータ用ポート(24i、24i)と、検査用オリフィス回路30にそれぞれ接続されている検査用ポート(24j、24j)とがそれぞれ連通する。尚、状態切替弁24における検査オリフィス位置24cへの位置の切替は、後述するようにオリフィス24fの性能検査の際に行われ、操作レバー24gの手動操作によって行われる。
全遮断位置24dは、状態切替弁24における制御弁ポート(24h、24h)とアクチュエータ用ポート(24i、24i)と検査用ポート(24j、24j)との全てのポートを遮断する位置として構成されている。即ち、図4(b)に示すように、状態切替弁24は、全遮断位置24dに切り替えられることで、全てのポート(24h、24h、24i、24i、24j、24j)間の接続を遮断し、給排油路(34a、34b)と給排油路(35a、35b)と検査用オリフィス回路30とを相互に遮断する。尚、状態切替弁24における全遮断位置24dへの位置の切替は、後述するように状態切替弁24及び第1アクチュエータ11に接続する油圧回路の性能検査の際に行われ、操作レバー24gの手動操作によって行われる。
次に、第1制御系統13におけるオリフィス24fの性能検査と、第1制御系統13における状態切替弁24及び第1アクチュエータ11に接続する油圧回路の性能検査と、について説明する。本実施形態では、第1制御系統13における状態切替弁24及び第1アクチュエータ11に接続する油圧回路は、給排油路(35a、35b)と、逆止弁(29a、29b)が設けられた油路(41a、41b)と、を有して構成された油圧回路44(図2参照)として構成されている。尚、第2制御系統14におけるオリフィスの性能検査と、第2制御系統14における状態切替弁27及び第2アクチュエータ12に接続する油圧回路の性能検査と、については、第1制御系統13におけるオリフィス24fの性能検査及び油圧回路44の性能検査と同様であるため、説明を省略する。
尚、オリフィス24fの性能検査と、第2制御系統14のオリフィスの性能検査と、油圧回路44の性能検査と、第2制御系統14における状態切替弁27及び第2アクチュエータ12に接続する油圧回路の性能検査とについては、検査作業者(図示せず)による操作と、フライトコントローラ43による制御とに基づいて行われる。フライトコントローラ43においては、図1に示すように、CPUとメモリに格納されたプログラムとによって性能検査実行部43aが構成され、メモリによって記憶部43bが構成されている。
性能検査実行部43aは、検査作業者による指令入力操作に基づいて、オリフィス24fの性能検査と、第2制御系統14のオリフィスの性能検査と、油圧回路44の性能検査と、第2制御系統14における状態切替弁27及び第2アクチュエータ12に接続する油圧回路の性能検査と、を実行する。また、記憶部43bは、性能検査実行部43aによって実行される性能検査に必要な情報と、性能検査実行部43aによる性能検査中に取得される情報とを記憶する。尚、性能検査実行部43aでの検査結果については、例えば、フライトコントローラ43に対して接続されたディスプレイ装置(図示せず)の画面上に表示されるように構成されている。
第1制御系統13におけるオリフィス24fの性能検査は、例えば、航空機のメンテナンス作業の際などに行われる。この検査が行われる際には、例えば、フライトコントローラ43に対して、図示しない入力機器(例えば、入力操作用タッチパネル、入力操作用スイッチ、入力操作用ポインティングデバイス、等)を介した検査作業者の入力操作によって、オリフィス24fの性能検査を実行させるための指令が入力される。そして、フライトコントローラ43からの指令に基づいてアクチュエータコントローラ42aが電磁弁25を消磁させて排出位置25bに切り替え、パイロット圧油がパイロット圧室24eから排出される。これにより、状態切替弁24が、ダンピング位置24bに切り替えられた状態となる。また、このとき、第2制御系統14においては、電磁弁28については供給位置28aの状態が維持され、状態切替弁27についてはアクチュエータ接続位置の状態が維持される。
上記の状態において、フライトコントローラ43の性能検査実行部43aからの指令信号に基づいて、アクチュエータコントローラ42bが制御弁26を作動させ、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路が切り替えられる。これにより、第2アクチュエータ12が、予め設定された所定の検査動作を行うように制御され、第2アクチュエータ12の作動によって舵面100が駆動される。このとき、第1制御系統13の状態切替弁24はダンピング位置24aに切り替えられているため、第1アクチュエータ11は、舵面100に作用する第2アクチュエータ12の駆動力に追従するように作動することになる。このため、一対の油室(16a、16b)から排出される圧油がオリフィス24fを通過するように流動し、オリフィス24fによるダンピング機能が発揮されることになる。
状態切替弁24がダンピング位置24bの状態で第1アクチュエータ11が上記のように舵面100に追従して作動している間、第1アクチュエータ11の位置センサ18からフライトコントローラ43に対して、ロッド15の位置検出信号が入力される。また、フライトコントローラ43には、時間を計測するタイマ(図示せず)が設けられている。そして、性能検査実行部43aにおいて、位置センサ18からのロッド15の位置検出結果とタイマでの時間計測結果とに基づいて、第1アクチュエータ11の作動速度(即ち、ロッド15のシリンダ16に対する変位速度)が、第1アクチュエータ11の作動中に亘って継続して繰り返し演算される。第1アクチュエータ11の作動中に亘って性能検査実行部43aにて繰り返し演算された第1アクチュエータ11の作動速度のデータは、その各演算時の時間データ(即ち、各作動速度データ取得時の各時間データ)とともに、記憶部43bに記憶される。これにより、性能検査時における状態切替弁24がダンピング位置24bのときのオリフィス24fによるダンピング機能の性能データが取得されることになる。
上記の処理が終了すると、検査作業者による手動操作によって操作レバー24gが操作され、状態切替弁24がダンピング位置24bから検査オリフィス位置24cに切り替えられる(図4(a)参照)。尚、操作レバー24gの手動操作による切替に際しては、制御装置1において、フライトコントローラ43によるガイダンスが行われるように構成されていてもよい。この場合、例えば、ダンピング位置24aでの第1アクチュエータ11の作動速度データの取得が完了したことのメッセージが、フライトコントローラ43の制御に基づいて、フライトコントローラ43に接続されたディスプレイ装置の画面上に表示される形態であってもよい。そして、上記のメッセージを確認した検査作業者が操作レバー24gの操作を行い、その後に、検査作業者による前述の入力機器を介した入力操作によって検査継続の指令がフライトコントローラ43に入力される形態であってもよい。
上記のように状態切替弁24がダンピング位置24bから検査オリフィス位置24cに切り替えられると、フライトコントローラ43の性能検査実行部43aからの指令信号に基づいて性能検査が継続される。このとき、第2制御系統14においては、電磁弁28については供給位置28aの状態が維持され、状態切替弁27についてはアクチュエータ接続位置の状態が維持されている。そして、性能検査実行部43aからの指令信号に基づいて、アクチュエータコントローラ42bが制御弁26を作動させ、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路が切り替えられる。
上記により、第2アクチュエータ12が、状態切替弁24がダンピング位置24bの状態で行われた検査動作と同じ動作である所定の検査動作を行うように制御され、第2アクチュエータ12の作動によって舵面100が駆動される。このとき、第1制御系統13の状態切替弁24は検査オリフィス位置24cに切り替えられているため、第1アクチュエータ11は、舵面100に作用する第2アクチュエータ12の駆動力に追従するように作動することになる。このため、一対の油室(16a、16b)から排出される圧油が検査用オリフィス30aを通過するように流動し、検査用オリフィス30aによるダンピング機能が発揮されることになる。
状態切替弁24が検査オリフィス位置24cの状態で第1アクチュエータ11が上記のように舵面100に追従して作動している間、第1アクチュエータ11の位置センサ18からフライトコントローラ43に対して、ロッド15の位置検出信号が入力される。そして、性能検査実行部43aにおいて、位置センサ18からのロッド15の位置検出結果とフライトコントローラ43のタイマでの時間計測結果とに基づいて、第1アクチュエータ11の作動速度(即ち、ロッド15のシリンダ16に対する変位速度)が、第1アクチュエータ11の作動中に亘って継続して繰り返し演算される。第1アクチュエータ11の作動中に亘って性能検査実行部43aにて繰り返し演算された第1アクチュエータ11の作動速度のデータは、その各演算時の時間データ(即ち、各作動速度データ取得時の各時間データ)とともに、記憶部43bに記憶される。これにより、性能検査時における状態切替弁24が検査オリフィス位置24cのときの検査用オリフィス30aによるダンピング機能の性能データが取得されることになる。
上記の処理が終了すると、性能検査実行部43aにおいて、状態切替弁24がダンピング位置24bのときの第1アクチュエータ11の作動速度と、状態切替弁24が検査オリフィス位置24cのときの第1アクチュエータ11の作動速度とが比較される。このとき、第1アクチュエータ11の作動速度については、第1アクチュエータ11の作動開始からの経過時間に対する変化の状況を含めて比較される。例えば、第1アクチュエータ11の作動開始からの経過時間が同じタイミングにおいて、ダンピング位置24bのときの第1アクチュエータ11の作動速度と、検査オリフィス位置24cのときの第1アクチュエータ11の作動速度とが比較される。そして、これらの作動速度の比較は、第1アクチュエータ11の作動開始から終了までに亘って行われる。
上記の比較により、例えば、ダンピング位置24bのときの第1アクチュエータ11の作動速度と、検査オリフィス位置24cのときの第1アクチュエータ11の作動速度との速度乖離値(作動速度のずれ量の値)が、所定の閾値を超えているかどうかが、性能検査実行部43aによって判定される。性能検査実行部43aは、第1アクチュエータ11の作動開始から終了までにおいて、上記の速度乖離値が所定の閾値を超えているデータがある場合、例えば、オリフィス24fの性能の劣化が進行して正常なダンピング機能が損なわれる可能性があると判定し、その判定結果をディスプレイ装置の画面に検査結果として表示する。
尚、性能検査実行部43aは、上記のような判定を行わずに、検査結果として異なる形態の表示をディスプレイ装置の画面上に表示させてもよい。例えば、第1アクチュエータ11の作動開始からの経過時間を表す同一の時間軸に対して、ダンピング位置24bのときの第1アクチュエータ11の作動速度の変化と、検査オリフィス位置24cのときの第1アクチュエータ11の作動速度の変化とを重ねて表示した比較結果のグラフがディスプレイ装置の画面上に表示される形態であってもよい。ダンピング位置24bのときの第1アクチュエータ11の作動速度と、検査オリフィス位置24cのときの第1アクチュエータ11の作動速度とが比較され、フライトコントローラ43又は検査作業者によって、オリフィス24fの性能の劣化が進行して正常なダンピング機能が損なわれる可能性があると判定されると、状態切替弁24の交換等の対応が図られることになる。
上記のように、制御装置1においては、複数のアクチュエータ(11、12)のうちのいずれかである第2アクチュエータ12によって舵面100が駆動される状態で、舵面100を駆動する第2アクチュエータ12とは異なる他の第1アクチュエータ11に対応する検査対象の第1制御系統13においてオリフィス24fの性能検査が行われることになる。そして、制御装置1におけるオリフィス24fの性能検査においては、検査対象の第1制御系統13とそれに対応する第1アクチュエータ11とについて、状態切替弁24がダンピング位置24bに切り替えられたときにおける第1アクチュエータ11の作動速度が、状態切替弁24が検査オリフィス位置24cに切り替えられたときにおける第1アクチュエータ11の作動速度と比較されることで、この検査が行われる。
また、第1制御系統13のオリフィス24fの性能検査と重複する説明となるため本実施形態での詳しい説明を省略したが、同様に、第2制御系統14のオリフィスの性能検査も行われることになる。即ち、制御装置1においては、複数のアクチュエータ(11、12)のうちのいずれかである第1アクチュエータ11によって舵面100が駆動される状態で、舵面100を駆動する第1アクチュエータ11とは異なる他の第2アクチュエータ12に対応する検査対象の第2制御系統14においてオリフィスの性能検査が行われることになる。そして、制御装置1においては、第2制御系統14のオリフィスの性能検査においては、検査対象の第2制御系統14とそれに対応する第2アクチュエータ12とについて、状態切替弁27がダンピング位置に切り替えられたときにおける第2アクチュエータ12の作動速度が、状態切替弁27が検査オリフィス位置に切り替えられたときにおける第2アクチュエータ12の作動速度と比較されることで、この検査が行われるように構成されている。
続いて、第1制御系統13における油圧回路44の性能検査について説明する。油圧回路44の性能検査は、例えば、航空機のメンテナンス作業の際などに行われる。この検査が行われる際には、例えば、フライトコントローラ43に対して、前述の入力機器を介した検査作業者の入力操作によって、油圧回路44の性能検査を実行させるための指令が入力される。そして、フライトコントローラ43からの指令に基づいてアクチュエータコントローラ42aが電磁弁25を消磁させて排出位置25bに切り替え、パイロット圧油がパイロット圧室24eから排出される。これにより、状態切替弁24が、ダンピング位置24bに切り替えられた状態となる。また、このとき、第2制御系統14においては、電磁弁28については供給位置28aの状態が維持され、状態切替弁27についてはアクチュエータ接続位置の状態が維持される。
上記の状態において、検査作業者による手動操作によって操作レバー24gが操作され、状態切替弁24がダンピング位置24bから検査オリフィス位置24cを経て全遮断位置24dに切り替えられる(図4(b)参照)。状態切替弁24が全遮断位置24dに切り替えられると、フライトコントローラ43の性能検査実行部43aからの指令信号に基づいて性能検査が継続される。そして、性能検査実行部43aからの指令信号に基づいて、アクチュエータコントローラ42bが制御弁26を作動させ、第2アクチュエータ12における一対の油室(20a、20b)のそれぞれへ供給及び排出される圧油の経路が切り替えられる。
上記により、第2アクチュエータ12が、舵面100を駆動するように作動することになる。しかし、このとき、第1制御系統13の状態切替弁24は全遮断位置24dに切り替えられているため、油圧回路44が正常に作動していれば、第1アクチュエータ11は、舵面100に作用する第2アクチュエータ12の駆動力に追従するように作動することがなく、停止したままとなる。このため、油圧回路44が正常に作動していれば、舵面100も停止したままとなる。
一方、油圧回路44に故障等の異常が発生している場合、例えば、逆止弁(29a、29b)の少なくともいずれかに漏れ等が発生しているような場合であれば、油圧回路44の正常な作動が確保されないことになってしまう。この場合、例えば、舵面100に作用する第2アクチュエータ12の駆動力に対して徐々に追従するように第1アクチュエータ11が作動してしまうことになる。このため、舵面100の停止状態が維持されず、舵面100が動いてしまうことになる。よって、上述した油圧回路44の性能検査においては、舵面100が停止しているかどうかが判断されることで、油圧回路44の正常な作動が確保されているかどうかが確認されることになる。油圧回路44の正常な作動が確保されていないことが確認されると、逆止弁(29a、29b)の交換等の対応が図られることになる。
尚、舵面100が停止しているかどうかについての判断は、検査作業者の目視確認によって行われてもよく、また、フライトコントローラ43の性能検査実行部43aによって行われてもよい。フライトコントローラ43によって舵面100の停止判断が行われる場合、性能検査実行部43aからの指令信号に基づいて制御弁26が作動して第2アクチュエータ12への圧油の供給及び排出の経路が切り替えられている間、第1アクチュエータ11の位置センサ18からフライトコントローラ43に対してロッド15の位置検出信号が入力される。そして、性能検査実行部43aによって、例えば、制御弁26の作動中に亘ってロッド15の位置検出結果の変動量の値が所定の閾値の範囲内であるかどうかが判定される。ロッド15の位置検出結果の変動量の値が、所定の閾値以下の場合は、舵面100が停止していると判断され、所定の閾値を超えている場合は、舵面100が動いていると判断される。この判断結果については、ディスプレイ装置の画面に検査結果として表示される。尚、この場合、制御弁26の作動中におけるロッド15の位置検出結果のグラフもディスプレイ装置の画面上に表示されてもよい。
上記のように、制御装置1においては、複数のアクチュエータ(11、12)のうちのいずれかである第2アクチュエータ12に圧油が供給される状態で、圧油が供給される第2アクチュエータ12とは異なる他の第1アクチュエータ11に対応する検査対象の第1制御系統13において状態切替弁24及び第1アクチュエータ11に接続する油圧回路44の性能検査が行われる。そして、制御装置1における油圧回路44の性能検査においては、舵面100が停止しているかどうかが判断されることでこの検査が行われる。
以上説明したように、制御装置1によると、アクチュエータ(11、12)の作動状態を切り替える状態切替弁(24、27)が、アクチュエータ接続位置と、ダンピング位置と、検査用オリフィスを有する検査用オリフィス回路に連通させる検査オリフィス位置と、の間で位置を切替可能に構成される。そして、ダンピング位置及び検査オリフィス位置にそれぞれ切り替えられたときのアクチュエータ(11又は12)の作動速度が比較されることで、オリフィスの性能検査が行われる。このため、アクチュエータ(11、12)における一対の油室(16a及び16b、20a及び20b)の各ポートに対応させて検査用の圧力センサを設置する必要がなく、センサ点数の増大を抑制できる。そして、検査用の圧力センサからの信号を取得して処理することで作動が正常であるか否かを判断するための信号配線や演算処理装置もそもそも不要となり、アクチュエータ(11、12)の制御系統(13、14)の作動の検査を行うための機構が複雑化してしまうことを抑制できる。これにより、低コスト化を図ることができる。また、正常な作動を判断するための基準となる検査用オリフィスを直接的に用いて作動が正常か否かを判断することができるため、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
従って、本実施形態によると、センサ点数の増大を抑制できるとともに、アクチュエータ(11、12)を制御する制御系統(13、14)の作動の検査を行うための機構が複雑化してしまうことを抑制でき、更に、検査結果の信頼性も向上させることができる、航空機アクチュエータの制御装置1を提供することができる。
また、制御装置1によると、状態切替弁(24、27)がダンピング位置に切り替えられた状態では、一対の油室(16a及び16b、20a及び20b)は、オリフィスを介して互いに接続される。このため、アクチュエータ(11、12)を舵面100に作用する外力に追従させるダンピング機能(減衰機能)が効率よく発揮されることになる。よって、効率の良いダンピング機能の発揮が可能な状態切替弁(24、27)におけるオリフィスの性能検査の信頼性向上を図れ、センサ点数の増大及び検査機構の複雑化の抑制を図ることができる航空機アクチュエータの制御装置1を得ることができる。
また、制御装置1によると、状態切替弁(24、27)において、操作レバーによる手動操作によって検査オリフィス位置への切替操作が行われる。このため、手動操作によって容易且つ確実にオリフィスの性能検査を行うことができる。
また、制御装置1によると、状態切替弁(24、27)が、アクチュエータ接続位置とダンピング位置と検査オリフィス位置とに加えて、全てのポートを遮断する全遮断位置にも位置を切替可能に構成される。そして、全遮断位置に切り替えられたときに舵面100が停止しているかどうかが判断されることで、状態切替弁(24又は27)及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路の性能検査が行われる。このため、状態切替弁(24、27)に全遮断位置を設けるという簡素な構成によって、オリフィスの性能検査に加えて、状態切替弁(24又は27)及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路の性能検査も行うことができる。これにより、オリフィスと、状態切替弁(24又は27)及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路とについて、それぞれ分離して作動が正常が否かを判断することができ、更に信頼性の高い検査結果を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のような変形例を実施してもよい。
(1)前述の実施形態においては、2つのアクチュエータと、2つのアクチュエータの作動をそれぞれ制御する2つの制御系統と、を備える、航空機アクチュエータの制御装置を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。3つ以上のアクチュエータと、3つ以上のアクチュエータの作動をそれぞれ制御する3つ以上の制御系統と、を備える、航空機アクチュエータの制御装置を実施してもよい。この場合においても、前述の実施形態と同様に、各制御系統のそれぞれが、制御弁と、状態切替弁と、検査用オリフィス回路とを有して構成されることになる。そして、3つ以上のアクチュエータのうちの少なくともいずれかによって舵面が駆動される状態で、舵面を駆動するアクチュエータとは異なる他のアクチュエータに対応する検査対象の制御系統においてオリフィスの性能検査が行われることになる。また、3つ以上のアクチュエータのうちの少なくともいずれかに圧油が供給される状態で、圧油が供給されるアクチュエータとは異なる他のアクチュエータに対応する検査対象の制御系統において状態切替弁及びアクチュエータに接続する油圧回路の性能の検査が行われることになる。
(2)また、前述の実施形態においては、状態切替弁として、操作レバーが設けられている端部側からパイロット圧室が設けられている端部側に向かってスプールの位置が順番に変更されることにより、アクチュエータ接続位置と、ダンピング位置と、検査オリフィス位置と、全遮断位置と、の間で、この順番で、位置の切り替えが行われるように構成されている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。図5は、変形例に係る状態切替弁を示す油圧回路図であり、第1制御系統13の状態切替弁45を示す油圧回路図である。尚、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図5において同一の符号を付すことで、又は前述の実施形態における説明の符号を引用することで、説明を省略する。また、図示を省略するが、この変形例においては、第2制御系統14においても、状態切替弁45と同様に構成される状態切替弁が備えられている。
図5に示す変形例に係る状態切替弁45は、前述の実施形態における状態切替弁24とは、検査オリフィス位置24c及び全遮断位置24dの位置が異なっている。即ち、状態切替弁45は、操作レバー24gが設けられている端部側からパイロット圧室24eが設けられている端部側に向かってスプール(図示せず)の位置が順番に変更されることにより、アクチュエータ接続位置24aと、ダンピング位置24bと、全遮断位置24dと、検査オリフィス位置24cと、の間で、この順番で、位置の切り替えが行われるように構成されている。尚、状態切替弁24及び状態切替弁45で例示した位置の順番に限らず、アクチュエータ接続位置、ダンピング位置、検査オリフィス位置及び全遮断位置の順番については、種々変更して実施してもよい。
(3)図6は、他の変形例に係る状態切替弁を示す油圧回路図であり、第1制御系統13の状態切替弁(46、47)を示す油圧回路図である。図6(a)に状態切替弁46の油圧回路図を、図6(b)に状態切替弁47の油圧回路図をそれぞれ示している。尚、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図5において同一の符号を付すことで、又は前述の実施形態における説明の符号を引用することで、説明を省略する。
図6(a)に示す変形例に係る状態切替弁46は、アクチュエータ接続位置24aとダンピング位置24bと検査オリフィス位置24cとの間で位置を切替可能に設けられている。ただし、状態切替弁46は、全遮断位置24dが設けられていない点において、前述の状態切替弁24とは異なっている。このように、アクチュエータ接続位置24a、ダンピング位置24b及び検査オリフィス位置24cのみが設けられた状態切替弁46を実施してもよい。また、図示を省略するが、この変形例においては、第2制御系統14においても、状態切替弁46と同様に構成される状態切替弁が備えられている。
図6(b)に示す変形例に係る状態切替弁47は、アクチュエータ接続位置24aとダンピング位置24bと全遮断位置24dとの間で位置を切替可能に設けられている。また、図示を省略するが、この変形例においては、第2制御系統14においても、状態切替弁47と同様に構成される状態切替弁(この状態切替弁についても「状態切替弁47」と称する)が備えられている。ただし、状態切替弁(47、47)は、検査オリフィス位置24cが設けられていない点において、前述の状態切替弁(24、27)とは異なっている。また、状態切替弁(47、47)が設けられた航空機アクチュエータの制御装置は、検査用オリフィス回路が設けられていない点においても、前述の航空機アクチュエータの制御装置1とは異なっている。この変形例においては、複数のアクチュエータ(11、12)のうちのいずれかに圧油が供給されることで、舵面100を駆動するアクチュエータ(11及び12の一方)とは異なる他のアクチュエータ(11及び12の他方)に対応する制御系統(13又は14)において状態切替弁47及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路の性能の検査が行われる。そして、上記油圧回路の性能検査においては、舵面100が停止しているかどうかが判断されることでこの検査が行われる。
この変形例によると、アクチュエータ(11、12)の作動状態を切り替える状態切替弁47が、アクチュエータ接続位置24aと、ダンピング位置24bと、全てのポート(24h、24h、24i、24i)を遮断する全遮断位置24dと、の間で位置を切替可能に構成される。そして、全遮断位置24dに切り替えられたときに舵面100が停止しているかどうかが判断されることで、状態切替弁47及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路の性能検査が行われる。このため、状態切替弁47に全遮断位置24dを設けるという簡素な構成によって、状態切替弁47及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路の性能検査を行うことができる。これにより、アクチュエータ(11、12)における一対の油室(16a及び16b、20a及び20b)の各ポートに対応させて検査用の圧力センサを設置する必要がなく、センサ点数の増大を抑制できる。そして、検査用の圧力センサからの信号を取得して処理することで作動が正常であるか否かを判断するための信号配線や演算処理装置もそもそも不要となり、アクチュエータ(11、12)の制御系統(13、14)の作動の検査を行うための機構が複雑化してしまうことを抑制できる。これにより、低コスト化を図ることができる。また、全てのポート(24h、24h、24i、24i)を強制的に遮断することで状態切替弁47及びアクチュエータ(11又は12)に接続する油圧回路の作動が正常か否かを直接的に判断することができるため、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
(4)図7は、更に他の変形例に係る状態切替弁を示す油圧回路図であり、第1制御系統13の状態切替弁(48、49)を示す油圧回路図である。図7(a)に状態切替弁48の油圧回路図を、図7(b)に状態切替弁49の油圧回路図をそれぞれ示している。尚、前述の実施形態と同様に構成される要素については、図7において同一の符号を付すことで、又は前述の実施形態における説明の符号を引用することで、説明を省略する。
図7(a)に示す変形例に係る状態切替弁48は、前述の実施形態の状態切替弁24とは、ダンピング位置24bの構成において異なっている。この状態切替弁48は、ダンピング位置24bに切り替えられることで、第1アクチュエータ11における一対の油室(16a、16b)をオリフィス(24f、24f)を介して制御弁23における油の排出系統側(本変形例では、給排油路34b側)に接続するように構成されている。即ち、状態切替弁48がダンピング位置24bに切り替えられた状態では、給排油路(35a、35b)にそれぞれ接続されているアクチュエータ用ポート(24i、24i)が、それぞれオリフィス24fを介して制御弁用ポート(24h、24h)の一方(給排油路34bに接続する方の制御弁用ポート24h)に連通する。尚、状態切替弁48がダンピング位置24bに切り替えられた状態では、制御弁23が第1切替位置23bに切り替えられた状態に維持され、給排油路34bと排出油路32bとの接続状態が維持される。
また、図示を省略するが、この変形例においては、第2制御系統14においても、状態切替弁48と同様に構成される状態切替弁(この状態切替弁についても「状態切替弁48」と称する)が備えられている。この変形例によると、前述の実施形態と同様に、状態切替弁48がダンピング位置24bに切り替えられた状態では、アクチュエータ(11、12)を舵面100に作用する外力に追従させるダンピング機能(減衰機能)が効率よく発揮されることになる。
図7(b)に示す変形例に係る状態切替弁49は、前述の実施形態の状態切替弁24とは、更にバイパス位置49aが設けられている点において異なっている。この状態切替弁49は、操作レバー24gが設けられている端部側からパイロット圧室24eが設けられている端部側に向かってスプール(図示せず)の位置が順番に変更されることにより、アクチュエータ接続位置24aと、バイパス位置49aと、ダンピング位置24bと、検査オリフィス位置24cと、全遮断位置24dと、の間で、この順番で、位置の切り替えが行われるように構成されている。また、状態切替弁49は、ソレノイドの励磁状態及び消磁状態の切替とパイロット圧油の供給及び排出の切替とによって、アクチュエータ接続位置24aと、バイパス位置49aと、ダンピング位置24bとの間で位置を切替可能に構成されている。そして、状態切替弁49は、操作レバー24gの手動操作によって、検査オリフィス位置24c及び全遮断位置24dへ位置を切替可能に構成されている。
また、バイパス位置49aは、ダンピング位置24bのようにオリフィス24fを通過させることなく、一対の油室(16a、16b)を接続して連通させる位置として構成されている。即ち、状態切替弁49がバイパス位置49aに切り替えられた状態では、給排油路(35a、35b)にそれぞれ接続されているアクチュエータ用ポート(24i、24i)がオリフィスを介さずに連通する。また、図示を省略するが、この変形例においては、第2制御系統14においても、状態切替弁49と同様に構成される状態切替弁が備えられている。尚、状態切替弁49として例示した位置の順番に限らず、アクチュエータ接続位置、バイパス位置、ダンピング位置、検査オリフィス位置及び全遮断位置の順番については、種々変更して実施してもよい。