JP5587644B2 - ホタルルシフェラーゼ、その遺伝子、およびホタルルシフェラーゼの製造法 - Google Patents

ホタルルシフェラーゼ、その遺伝子、およびホタルルシフェラーゼの製造法 Download PDF

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Description

本発明は、変異型ホタルルシフェラーゼ、変異型ホタルルシフェラーゼ遺伝子、新規な組換え体DNAおよび変異型ホタルルシフェラーゼの製造法に関し、具体的には、発光量が向上したホタルルシフェラーゼ、その遺伝子、および発光量が向上したホタルルシフェラーゼの製造法に関する。
ホタルルシフェラーゼは、マグネシウムイオンおよび酸素の存在下で、アデノシン三リン酸(ATP)、D−ルシフェリンおよび酸素を、アデノシン一リン酸(AMP)、オキシルシフェリンおよび二酸化炭素に変換し、光を生成する酵素である。ホタルルシフェラーゼの発光原理を応用すれば、微量の酵素反応基質を極めて感度良く測定することができる。そのため、ホタルルシフェラーゼは、例えば、ATPを指標とした飲食料品中の微生物検出や、手指や器具類に付着した食物残渣や汚れの判定、あるいは、各種抗体技術や遺伝子増幅技術を利用した高感度測定法等に広く用いられている。
しかしながら、一般的に、ホタルルシフェラーゼ等の甲虫類ルシフェラーゼは、熱に対して不安定なため、試薬として保存する際に失活しやすいという欠点を有する。また一般的に、甲虫類ルシフェラーゼは、反応直後に発光量がピークに達した後、急激に発光量が減衰するため、長時間反応による高感度測定が困難であるという課題を有している。そのため、かかる欠点を克服し、良好な発光持続性、安定性あるいは高い発光量を有するルシフェラーゼ、より望ましくはそれら複数の優れた点を兼ね備えたルシフェラーゼを得るための試みが継続されている。
その試みのひとつは、測定試薬中に塩等を添加して、ある程度の発光持続性と保存安定性と高い発光量を確保するという配合組成の工夫である。しかし、この方法は、それぞれに試薬組成上の制約を伴う各種の用途・試薬に対し広範に適用できるというものではなく、また、多くの場合、塩類の添加は、ルシフェラーゼ反応に何らかの反応障害を惹起しがちであるという欠点を有する。
試薬組成の工夫の他に試みられている、より好ましいアプローチのひとつは、好ましい性質を有する変異ルシフェラーゼの探索である。そして、その試みの中で、342位のアミノ酸がアラニンに変異された北米産ホタルルシフェラーゼが取得され、このホタルルシフェラーゼの発光持続性が向上していることが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、出願人は、当該342位のアミノ酸の変異体に相当するヘイケボタルルシフェラーゼの変異体、すなわち344位のアミノ酸(ロイシン)がアラニンに変異されたヘイケボタルルシフェラーゼ(以下344Aルシフェラーゼという)を取得し、この変異ホタルルシフェラーゼにおいても同様に発光持続性が向上していることを確認している。しかし、その一方で、この変異ホタルルシフェラーゼの安定性は、変異を導入する前と比較して非常に低くなっている。
別途、出願人は、ヘイケボタルルシフェラーゼの287位のアミノ酸がアラニンに変異された変異や、326位のアミノ酸がセリンに変異された変異を含む安定性向上変異ホタルルシフェラーゼを見出している。そして、この知見をもとに、344Aルシフェラーゼにおいて287位のアミノ酸がアラニンに変異され、326位のアミノ酸がセリンに変異され、かつ467位のアミノ酸がイソロイシンに変異された安定性向上変異ヘイケボタルルシフェラーゼ(BLU‐Y‐A3T)を新たに取得し、この変異ルシフェラーゼが発光持続性と安定性を兼ね備えた優れた性質を有することを確認している。
しかしながら、発光持続性および安定性という産業上有用な性質が向上したBLU‐Y‐A3Tにおいても、その発光量が変異導入前と比較して非常に低くなっているという課題が存在する。すなわち、変異ホタルルシフェラーゼ(BLU‐Y‐A3T)を、高感度測定等へと好適に応用するためには、発光量が低いという課題を解決することが望まれている。
このように、好ましい性質を有する変異ルシフェラーゼの探索においては、ある1つの性質を向上させる変異を見出しても、その変異が別の性質を逆に悪化させてしまうことが多くみられる。すなわち、個々には有用と思われる変異を複数導入しても、単純にそれらの好ましい性質が相加的あるいは相乗的に付与されるとはいいがたく、このような背景が、例えば、発光持続性と安定性、発光量等、実用上で好ましい複数の性質を兼ね備えた変異ルシフェラーゼの取得を一層困難にしている。
Biochemistry 2003年、42巻、p10429−10436
本発明は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子配列中の特定の塩基に変異を導入することにより、発光持続性、安定性および発光量という全ての観点において好ましい性質を有するホタルルシフェラーゼを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ヘイケボタルルシフェラーゼ(BLU‐Y‐A3T)に対し、75位のアミノ酸をアラニンに置換する変異(以下、75A変異という)を組み合わせた変異ホタルルシフェラーゼ(BLU‐Y‐A3T−1)が、発光持続性、安定性、発光量という全ての観点において好ましい性質を併せ持つことを見出した。さらに、BLU‐Y‐A3T−1に対し、293位のアミノ酸をメチオニンに置換する変異(以下、293Mという)、または351位のアミノ酸をバリンに置換する変異(以下、351Vという)、または172位のアミノ酸をグルタミン酸に置換する変異(以下、172Eという)および259位のアミノ酸をイソロイシンに置換する変異(以下、259Iという)、または359位のアミノ酸をバリンに置換する変異(以下359Vという)および490位のアミノ酸をグルタミンに置換する変異(以下490Qという)、から選択される変異を組み合わせた変異ホタルルシフェラーゼ(順に、BLU‐Y‐A3T−2、BLU‐Y‐A3T−3、BLU‐Y‐A3T−4、BLU‐Y‐A3T−5)では、BLU‐Y‐A3T−1よりさらに発光量の向上がみられることを確認し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に関する。
(1)ホタルルシフェラーゼにおいて、ヘイケボタルルシフェラーゼの344位に相当するアミノ酸がアラニンに変異され、287位に相当するアミノ酸がアラニンに変異され、326位に相当するアミノ酸がセリンに変異され、467位に相当するアミノ酸がイソロイシンに変異され、かつ75位に相当するアミノ酸がアラニンに変異されているホタルルシフェラーゼ。
(2)ヘイケボタルルシフェラーゼの293位に相当するアミノ酸がメチオニンに変異されている上記(1)記載のホタルルシフェラーゼ。
(3)ヘイケボタルルシフェラーゼの351位に相当するアミノ酸がバリンに変異されている上記(1)記載のホタルルシフェラーゼ。
(4)ヘイケボタルルシフェラーゼの172位に相当するアミノ酸がグルタミン酸に変異され、かつ259位に相当するアミノ酸がイソロイシンに変異されている上記(1)記載のホタルルシフェラーゼ。
(5)ヘイケボタルルシフェラーゼの359位に相当するアミノ酸がバリンに変異され、かつ490位に相当するアミノ酸がグルタミンに変異されている上記(1)記載のホタルルシフェラーゼ。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のホタルルシフェラーゼをコードするホタルルシフェラーゼ遺伝子。
(7)上記(6)記載のホタルルシフェラーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組換え体DNA。
(8)上記(6)記載のホタルルシフェラーゼ遺伝子または上記(7)記載の組換え体DNAを含み、ホタルルシフェラーゼ生産能を有する微生物を培養し、該培養物よりホタルルシフェラーゼを採取することを特徴とする、ホタルルシフェラーゼの製造法。
各種ホタルルシフェラーゼにおける、発光量の相対的比較を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
(ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびその組換え体DNA)
本発明のホタルルシフェラーゼ遺伝子およびその組換え体DNAとしては、任意のホタル由来のものを用いることができる。例えば、ヘイケボタル、ゲンジボタル、北米産ホタル等由来のホタルルシフェラーゼを用いることができる。あるいは、各種のホタル由来のルシフェラーゼ遺伝子をもとに作製されたキメラ遺伝子を用いてもよい。
さらに、本発明のホタルルシフェラーゼ遺伝子には、本発明の変異以外の変異を含んでもよい。前記変異は、何らかの特定の効果を意図して人為的に導入されたものでもよく、ランダムに、あるいは非人為的に導入されたものでもよい。特定の効果を意図して導入された変異としては、例えば、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の発現量を増強するための配列の付加や改変、ホタルルシフェラーゼタンパクの精製効率を向上させるための改変等の他、ホタルルシフェラーゼに実用上好ましい特性を付与する各種の変異も含まれ得る。そのような公知の変異の例としては、特開2000−197484号公報に記載されるような発光持続性を高める変異、特許第2666561号公報または特表2003−512071号公報に記載されるような発光波長を変化させる変異、特開平11−239493号公報に記載されるような界面活性剤耐性を高める変異、国際公開第99/02697号パンフレット、特表平10−512750号公報または特表2001−518799号公報に記載されるような基質親和性を高める変異、もしくは、特許第3048466号公報、特開2000−197487号公報、特表平9−510610号公報および特表2003−518912号公報に記載されるような、安定性を高める変異等が挙げられる。
これらの遺伝子およびその組換え体DNAは、公知の方法に従って調製することができる。例えば、ヘイケボタルルシフェラーゼ遺伝子およびその組換え体DNAは、特公平7−112434号公報に記載の方法により調製することが可能であり、ゲンジボタルルシフェラーゼ遺伝子およびその組換え体DNAは、特開平1−51086号公報に記載の方法により調製することが可能であり、また更に、北米産ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびその組換え体DNAは、プロメガ社より購入することが可能である。
(本発明における遺伝子変異および相当するアミノ酸配列変異)
本発明のホタルルシフェラーゼ遺伝子は、上述の任意のホタルルシフェラーゼ遺伝子に特定の変異を導入することを特徴とする。本発明の変異遺伝子のひとつは、具体的には、ヘイケボタルまたはゲンジボタルの場合、ルシフェラーゼの344位のアミノ酸(野生型の場合は、ロイシンである)がアラニンに変異された344A変異、287位のアミノ酸(野生型の場合は、バリンである)がアラニンに変異された287A変異、326位のアミノ酸(野生型の場合は、グリシンである)がセリンに変異された326S変異、467位のアミノ酸(野生型の場合は、フェニルアラニンである)がイソロイシンに変異された467I変異、さらに75位のアミノ酸(野生型の場合は、バリンである)がアラニンに変異された75A変異を有する変異ホタルルシフェラーゼをコードする変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子である。
さらに、前記の5重変異に加えて293位のアミノ酸(野生型の場合は、ロイシンである)がメチオニンに変異された293M変異アミノ酸配列をコードする変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子、もしくは、351位のアミノ酸(野生型の場合は、イソロイシンである)がバリンに変異された351V変異アミノ酸配列をコードする変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子、もしくは、172位のアミノ酸(野生型の場合は、リジンである)がグルタミン酸に変異された172E変異および259位のアミノ酸(野生型の場合は、スレオニンである)がイソロイシンに変異された259I変異を含む変異アミノ酸配列をコードする変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子、もしくは、359位のアミノ酸(野生型の場合は、アスパラギン酸である)がバリンに変異された359V変異および490位のアミノ酸(野生型の場合は、グルタミン酸である)がグルタミンに変異された490Q変異を含む変異アミノ酸配列をコードする変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子である。
ヘイケボタルルシフェラーゼまたはゲンジボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列中に75A変異、351V変異、172E変異かつ259I変異、359V変異かつ490Q変異のうち、1箇所以上のアミノ酸変異を有することにより、ホタルルシフェラーゼの発光量が顕著に向上する。また、本発明のホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列は、ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、発光量を低下させる別の変異、例えば344A変異と組み合わせた場合、低下した発光量を効果的に回復することができる。また、別の変異、例えば287A変異、326S変異および467I変異と組み合わせて導入することによっても、すぐれた発光量向上効果を奏する。
ヘイケボタルルシフェラーゼまたはゲンジボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列中に75A変異、293M変異、351V変異、172E変異および259I変異、あるいは359V変異および490Q変異を有することにより、ホタルルシフェラーゼの発光量が顕著に向上する。本発明のホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列は、ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、少なくとも上記のうち1箇所の上記の置換を有するものが好ましく、より好ましくは、2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上の置換を有するものが好ましい。これら複数の変異を導入することにより、ホタルルシフェラーゼの発光量を段階的に高めることができる。具体的には、75A変異に加えて、293M変異、351V変異、172E変異および259I変異、あるいは359V変異および490Q変異の1以上を組み合わせることにより、ホタルルシフェラーゼの発光量の向上度合がより高まる。
そして、これらの変異は、導入することによってホタルルシフェラーゼの発光量を低下させる別の変異、例えば、344A変異等と組み合わせた場合、低下した発光量を効果的に回復することができる。特に、344A変異を有するホタルルシフェラーゼに、75A変異を組み合わせて導入することや、さらに293M変異、351V変異、172E変異および259I変異、あるいは359V変異および490Q変異の1以上を組み合わせて導入することは、ホタルルシフェラーゼの低下した発光量を回復させる。すなわち、本発明の変異は、変異導入前と比較してホタルルシフェラーゼの発光量を向上させ、また、別の変異、例えば287A変異、326S変異および467I変異と組み合わせて導入することによってもすぐれた発光量向上効果を奏する。
なお、本発明における発光量とは、特に断らない限り、当該ホタルルシフェラーゼを、ATP,2価金属イオンおよび酸素の存在下でホタルルシフェリンと反応させた場合における発光強度を意味する。発光量が大きいほど、当該ホタルルシフェラーゼのホタルルシフェラーゼ活性が強いと判断することができる。当該ホタルルシフェラーゼの発光量は、所望の発光測定装置、例えば、ルミノメーター(ベルトールド社製、LB9507あるいはLB96V)を用いて得られる相対発光強度(RLU)を指標に評価することができる。本発明における発光量向上とは、ホタルルシフェラーゼを所定の条件で作用させた際の発光量が、本発明の変異を導入しないものに対して1.2倍以上の向上を示す場合を言う。本発明における、このような発光量の向上度合は、ホタルルシフェラーゼの発光量を向上させるために変異を導入する試みにおいて顕著なものであり、容易に達成することが困難であって、ホタルルシフェラーゼの実用上、有用な改善である。
(ホタルルシフェラーゼの遺伝子配列およびアミノ酸配列における番号)
本発明における、ホタルルシフェラーゼの遺伝子配列およびアミノ酸配列における変異の位置を示す番号は、野生型ヘイケボタルルシフェラーゼまたはゲンジボタルルシフェラーゼにおける番号を基準とする。すなわち、野生型ヘイケボタルルシフェラーゼ以外のルシフェラーゼに本発明を適用する場合には、その遺伝子配列およびアミノ酸配列における変異位置は、野生型ヘイケボタルルシフェラーゼまたはゲンジボタルルシフェラーゼにおいて相当する位置に置き換えた場合に各種ホタルルシフェラーゼで該当する位置である。具体的な例として、ヘイケボタルルシフェラーゼまたはゲンジボタルルシフェラーゼの75位、293位、351位、172位、259位、359位、および490位に相当する位置のアミノ酸の位置は、北米産ホタルルシフェラーゼにおいては、73位、291位、349位、170位、、257位、357位、および488位である。
これらの対応関係は、例えば、既成のアミノ酸の相同性解析用ソフト、例えば、GENETYX−Mac(Software Development社製)等を用いて、各種ルシフェラーゼのアミノ酸配列とヘイケボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列とを比較することにより、容易に知ることができる。実際に、ヘイケボタルルシフェラーゼ、ゲンジボタルルシフェラーゼ、北米産ホタルルシフェラーゼにはアミノ酸配列上の共通性や、それに基づく構造上の共通点が見出されており、相当するそれぞれの位置に同様の変異を導入することが、ホタルルシフェラーゼの性質に対し同様の効果を奏する例も知られている。したがって、ヘイケボタルルシフェラーゼにおいて示された本発明の変異の知見を利用して、ゲンジボタルルシフェラーゼ、あるいは北米産ホタルルシフェラーゼにおいて同様の効果を得るための方策として、相当する位置に同様の変異を導入する試みを容易に行うことができる。
(変異の導入)
上記の変異型ホタルルシフェラーゼ遺伝子は、公知の任意の方法でホタルルシフェラーゼ遺伝子を改変することにより、適宜得ることができる。遺伝子改変方法としては、部位特異的に変異を導入する方法、ランダムに変異を導入する方法、変異原となる薬剤を作用させる方法、紫外線照射法、蛋白質工学的手法等を広く用いることができる。
上記変異処理に用いられる変異原となる薬剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロソグアニジン(NTG)、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン、蟻酸、5−ブロモウラシル等を挙げることができる。薬剤処理は、用いる薬剤の種類等に応じ好適な条件を採用することが可能であり、所望の変異をホタルルシフェラーゼ遺伝子に惹起することができる限り、特に限定されない。例えば、0.5〜12Mの上記薬剤濃度で、20〜80℃、10分以上、具体的には10〜180分間処理することにより、所望の変異を惹起可能である。
紫外線照射は、例えば、現代化学、pp24〜30、1989年6月号に記載される方法等、公知の方法を用いて行うことができる。
蛋白質工学的手法を駆使する方法としては、一般的に、サイト−スペシフィックミュータジェネシス(Site−specific Mutagenesis)として知られる手法を用いることができる。例えば、Kramer法(Kramer,W.et al.,Nucleic Acids Res,vol.12,pp.9441−9456(1984):Kramer,W.et al.,Methods Enzymol,vol.154,pp.350−367(1987):Bauer,C.E.et al.,Gene,vol.37,pp.73−81(1985)),Eckstein法(Taylor,J.W.et al.,Nucleic Acids Res,vol.13,p.8749−8764(1985):Taylor,J.W.et al.,Nucleic Acids Res,vol.13.pp.8765−8785(1985):Nakamaye,K.L.et al.,Nucleic Acids Res,vol.14,pp.9679−9698(1986)),Kunkel法(Kunkel,T.A.,Proc.Natl.Acids Sci.U.S.A.,vol.82,pp.488−492(1985):Kunkel,T.A.et al.,Methods Enzymol,vol.154,pp.367−382(1987)等が挙げられる。
また、一般的にポリメラーゼ チェイン リアクション(Polymerase Chain Reaction)として知られる手法を用いることもできる〔Technique,1,p.11(1989)〕。
上記遺伝子改変法の他に、有機合成法または酵素合成法により、直接所望の改変ホタルルシフェラーゼ遺伝子を合成し得ることも、もちろん可能である。上記方法により得られる所望のホタルルシフェラーゼ遺伝子における塩基配列の決定・確認は、例えば、マキサム−ギルバートの化学修飾法〔Maxam−Gilbert,Meth.Enzym.,vol.65,pp.499−560(1980)〕やM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法〔Messing et al.,Gene,vol.19,pp.269−276(1982)〕等により行い得る。
(ベクターの作製および形質転換体の作製)
上記のように得られた変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子を、常法により、バクテリオファージ、コスミド、または原核細胞若しくは真核細胞の形質転換に用いられるプラスミド等のベクターに組み込み、宿主に対して常法によりそのベクターを用いて、形質転換または形質導入を行わせることができる。
宿主には任意のものを用いることができるが、例えば微生物が好ましい。具体的には、エッシェリヒア属等に属する微生物が利用可能である。エッシェリヒア属に属する微生物の例としては、大腸菌K−12、JM109、DH5α、HB101、BL21等が挙げられる。
そして、得られた形質転換体もしくは形質導入された宿主から、所望の変異を有するホタルルシフェラーゼの生産能を有する菌株をスクリーニングすることにより、変異型ホタルルシフェラーゼ生産能を有する菌株を得ることができる。このようにして得られた菌株から純化された新規な組換え体DNAを得るには、例えば、Guerryの方法〔J.Bacteriology,116,p.1604(1973)〕、Clewellの方法〔J.Bacteriology,110,p.667(1972)〕等を用いることができる。
得られた組換え体DNAから、変異型ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含有するDNAを得るには、公知の方法、例えば、該プラスミドDNAに対し、各種の制限酵素を、反応温度30〜40℃で1〜24時間作用させて、反応終了液をアガロースゲル電気泳動法に供する等の方法を用いればよい(Molecular Cloning,150,Cold Spring Harbor Laboratory(1982)参照)。
(変異ホタルルシフェラーゼの製造)
上記のようにして得られた、本発明の変異ホタルルシフェラーゼの生産能を有する菌株を用いて変異型ホタルルシフェラーゼを生産するために、変異ホタルルシフェラーゼの生産能を有する菌株を各種公知の方法で培養する。培養は、固体培養法でもよいが、好ましくは液体培養法を採用して培養する。
上記菌株を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、あるいは大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄あるいは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、さらに必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。
培地の初発pHは、pH7〜9に調整するのが適当である。また培養は30〜40℃、好ましくは37℃前後で4〜24時間、好ましくは6〜8時間で、通気攪拌培養、振盪培養、静置培養等により実施するのが好ましい。培養終了後、培養物より、安定性が向上したホタルルシフェラーゼを採取するには、通常の公知の酵素採取手段を用いればよい。
具体的には、常法により菌体を超音波破砕処理、磨砕処理等に供するか、またはリゾチーム等の溶菌酵素を用いて、発光量が向上したホタルルシフェラーゼを抽出する、またはトルエン等の有機溶媒存在下で振盪もしくは放置して自己消化を行わせ、ホタルルシフェラーゼを菌体外へ排出させることができる。得られた抽出液もしくは自己消化物を濾過、遠心分離等に供して固形成分を除去し、必要によりストレプトマイシン硫酸塩、プロタミン硫酸塩、硫酸マンガン等により核酸を除去したのち、これに硫酸アンモニウム、アルコール、アセトン等を添加して分画し、粗酵素を得る。
上記粗酵素を、例えば、セファデックス、ウルトロゲルもしくはバイオゲル等を用いるゲル濾過法;イオン交換体を用いる吸着溶出法;ポリアクリルアミドゲル等を用いる電気泳動法;ヒドロキシアパタイトを用いる吸着溶出法;蔗糖密度勾配遠心法等の沈降法;アフィニティークロマト法;分子ふるい膜若しくは中空糸膜等を用いる分画法等の公知技術を適宜選択し、任意に組み合わせて実施することにより、さらに精製度を高めた酵素標品とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
1.プラスミドpET16b−BLU−Yの作製
ビオチン化ルシフェラーゼ構造遺伝子を増幅するための全長用プライマー(配列番号1)を合成した。特許第3466765号記載のプラスミドpHLf248(本プラスミドを包含する大腸菌JM101[pHLf248]は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM BP−5081として寄託されている。)を鋳型とし、上記全長用プライマーおよび市販のM13−M4プライマー(タカラバイオ社製)を用いたPCRにより、DNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、NdeIとHindIIIを用いて消化した後、アガロースゲル電気泳動に供し、1.9kbのバンドからDNA断片を精製した。
次いで、上記DNA断片を、NdeI、HindIII消化したプラスミドベクターpET16b(ノバジェン社製)へと定法により挿入して、プラスミドpET16b−BLU−Yを作製した。
さらに、作製したプラスミドpET16b−BLU−Yを、大腸菌JM109株に導入し、形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミドを精製した後に、DNA配列を確認した。このDNA配列中含まれるホタルルシフェラーゼ遺伝子から演繹されるホタルルシフェラーゼ(BLU−Y)のアミノ酸配列は、特許第3466765号記載のものと同一であった。
2.変異ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドの作製
ヘイケボタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において344番目のアミノ酸残基であるロイシンがアラニンに変異し(344A変異)、287番目のアミノ酸残基であるバリンアラニンに変異し(287変異)、326番目のアミノ酸残基であるグリシンがセリンに変異し(G326S変異)、467番目のアミノ酸残基であるフェニルアラニンがイソロイシンに変異した(F467I)ルシフェラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミド(pHLfA3T)を、以下のように作製した。
まず、344番目のアミノ酸残基であるロイシンをアラニンに変換するように設計したPCRプライマー(pHLf344A F−344A(配列番号2)、pHLf344A R−344A(配列番号3))を合成した。これらのプライマーを用いて、pET16b−BLU−Yを鋳型とするPCR増幅を行った(反応手順、条件は定法による)。増幅後のPCR反応液をDpnIで消化し、キナーゼ処理によりPCR産物の末端をリン酸化した。次いで、Ligation Convenience Kit(ニッポンジーン社製)を用いて、DpnIおよびキナーゼ処理後のPCR産物反応物をセルフライゲーションさせてpHLf344Aを得た。続いて、287番目のアミノ酸残基であるバリンをアラニンに変換するように設計したPCRプライマー(pHLf287A F−287A(配列番号4)、pHLf287A R−287A(配列番号5))を合成した。これらのプライマーを用いてpHLf344Aを鋳型とするPCR増幅を行い、上記の方法に従ってpHLf344A/287Aを得た。引き続き、326番目のアミノ酸残基であるグリシンをセリンに変換するように設計したプライマー(pHLf326S F−326S(配列番号6)、pHLf326S R−326S(配列番号7))さらに、467番目のアミノ酸であるフェニルアラニンをイソロイシンに変換するように設計したプライマー(pHLf467I F−467I(配列番号8)、pHLf467I R−467I(配列番号9))を用いてそれぞれPCR増幅を行い、上記の方法に従ってpHLf−BLU−Y−A3Tを得た。
D.M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology,68,p.326−331,1979)に従い、このpHLf−BLU−Y−A3Tを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、得られた形質転換体JM109株よりプラスミドを精製して、pHLf−BLU−Y−A3T中の変異ルシフェラーゼをコードするDNA配列を確認した(配列番号10)。このDNA配列より演繹されるアミノ酸配列は、実施例1で得られたpET16b−BLU−Y中に含まれるルシフェラーゼ遺伝子に対応するアミノ酸配列の、344番目のアミノ酸残基であるロイシンがアラニンに変換され、287番目のアミノ酸残基であるバリンがアラニンに置換され、326番目のアミノ酸残基であるグリシンがセリンに置換され、467番目のアミノ酸残基であるフェニルアラニンがイソロイシンに置換されたものであった。
本発明において見出された変異を人為的に組み合わせたルシフェラーゼ、あるいは、本発明において見出された変異を別のアミノ酸に置換したルシフェラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドは、いずれも上記の手順に準じて作製した。
3.発光量向上変異ホタルルシフェラーゼの取得
実施例2記載の組換え体プラスミドpHLf−BLU−Y−A3Tを鋳型とし、変異ルシフェラーゼ遺伝子領域の上流、下流に設計したプライマー(配列番号11および12)を用いてエラープローンPCRを行った。具体的には、これらのプライマーを終濃度0.2μMにて用い、マンガンイオン濃度0.1mM、マグネシウムイオン濃度6.5mM下でEx−Taq(タカラバイオ社製)を使用して、pHLf−BLU−Y−A3T遺伝子領域に対するPCR増幅反応を行うことにより、種々の変異が導入されたホタルルシフェラーゼ遺伝子断片を得た。次いでこれらを、NdeI,HindIIIにて制限酵素処理したのち、アガロースゲル電気泳動により分離し、RECO−CHIP(タカラバイオ社製)を用いて電気泳動後のゲルからDNA断片を回収した。得られたDNA断片を、pHLf−BLU−Y−A3TをNdeIおよびHindIII処理して得られたpHLf−BLU−Y−A3Tベクターに、Ligation Convenience Kit(ニッポンジーン社製)を用いてライゲーションさせた。ライゲーション終了後、上述の方法に準じて、変異が導入された組換え体プラスミドDNAを用いて大腸菌(E.coli)BL21(DE3)(インビトロジェン社製)を形質転換し、変異体ライブラリーを作製した。この形質転換株をLB−amp寒天培地〔1%(w/v) バクトトリプトン、0.5%(w/v) 酵母エキス、0.5%(w/v) NaCl、および50μg/ml アンピシリン、および1.4%(w/v)寒天〕に接種し、37℃で平板培養した。
12時間後、出現してきた各々のコロニーをLB−amp液体培地〔1%(w/v) バクトトリプトン、0.5%(w/v) 酵母エキス、0.5%(w/v) NaCl、および50μg/ml アンピシリン〕に接種し、96穴プレートにて37℃で静置培養した。12〜18時間培養した後、溶菌剤(バグバスター、ノバジェン社製)を用いて菌体を溶菌させ、次いで活性測定試薬〔50mM Tricine−NaOH,4mM ATP,2mM Luciferin,10mM MgSO4,pH7.8〕に供し、ルミノメーター(ベルトールド社製、LB96V)を用いて各々の菌株に含まれるホタルルシフェラーゼの活性を確認した。上記の測定において、ホタルルシフェラーゼの活性すなわち発光量が変異導入前の親株と比較して1.2倍以上に増大したホタルルシフェラーゼを、発光量向上変異体の候補として選択した。
4.変異位置の確認
実施例3で選択した株を、2mlのLB−IPTG−amp培地中で培養した。18〜24時間の培養後、遠心分離にて菌体を回収して50mM リン酸カリウムバッファー,0.2%(w/v) BSA(和光純薬工業社製),pH7.5にて菌体を懸濁し、超音波破砕を行って、粗酵素液を得た。上記粗酵素液を、活性測定試薬〔50mM Tricine−NaOH,4mM ATP,2mM Luciferin,10mM MgSO,pH7.8〕を用いて、ルシフェラーゼ粗酵素の活性を測定した。ルシフェラーゼ活性は、ルミノメーター(ベルトールド社製、LB96V)を用いて1秒間の積算にて得られる発光量にて評価した。活性が親株より大きい候補株を発光量向上変異体とし、CEQ2000 DNA Sequencing System(ベックマンコールター社製)を用いて、安定性向上変異体中のプラスミドがコードするホタルルシフェラーゼ遺伝子の配列を決定した。
その結果、5種の候補株中の該当する遺伝子配列が、それぞれ、75位のバリンがアラニンに置換されたアミノ酸配列(配列番号13)、または/さらに、293位のロイシンがメチオニンに置換されたアミノ酸配列(配列番号14、15)、351位のイソロイシンがバリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号16)、172位のリジンがグルタミン酸に置換され、かつ259位のスレオニンがイソロイシンに置換されたアミノ酸配列(配列番号17)、あるいは359位のアスパラギン酸がバリンに置換され、かつ490位のグルタミン酸がグルタミンに置換されたアミノ酸配列(配列番号18)からなる変異型ホタルルシフェラーゼをコードしていることが確認された。344位のロイシンがアラニンに、287位のバリンがアラニンに、326位のグリシンがセリンに、467位のフェニルアラニンがイソロイシンに、さらに75位のバリンがアラニンに置換されたホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を配列番号19に示す。
さらに、得られた変異株における変異点の情報を利用し、先の実施例に記載の方法に準じて、上記変異を複数組み合わせた変異を有する新たな変異株や、変異を別のアミノ酸に置換した変異株を作製し、各種の変異ホタルルシフェラーゼを取得した。
5.変異ホタルルシフェラーゼの発光量評価
実施例4記載の方法に準じ、得られた各種のアミノ酸配列を有する変異ホタルルシフェラーゼのルシフェラーゼ活性測定を行って、発光量を評価した。その結果を図1に示す。
本発明の変異を含まないもの(BLU−Y A3T)では粗酵素の発光量が85,0670RLUであったのに対し、75A変異を有するもの(BLU−Y−A3T−1、図中B−A3T−1と記載)では1,101,574RLUと、顕著に(1.3倍)向上していた。これにより、75A変異がホタルルシフェラーゼの発光量向上にとって効果が大きいことがわかった。また、75A変異および293M変異を有するもの(BLU−Y−A3T−2、図中B−A3T−2と記載)では1,334,766RLU、75A変異および351V変異を有するもの(BLU−Y−A3T−3、図中B−A3T−3と記載)では1,581,320RLU、75A変異、172E変異および259I変異を有するもの(BLU−Y−A3T−4、図中B−A3T−4と記載)では2,135,263RLU、さらに75A変異、359V変異および490N変異を有するもの(BLU−Y−A3T−5、図中B−A3T−5と記載)では1,327,261RLUと、本発明の変異を含まないものと比較して顕著に(1.5〜2.5倍)発光量が向上していた。これにより、本発明の変異はホタルルシフェラーゼの発光量向上にとって効果が大きいことがわかった。
6.変異ホタルルシフェラーゼの発光持続性
ルミノメーター(ベルトールド社製、LB96V)を用いて実施例5で試験した各変異体の発光持続性を確認した〔反応試薬:50mM Tricine−NaOH,0.8mM ATP,0.5mM Luciferin,10mM MgSO,0.2% BSA,2% Sucrose,1mM EDTA〕。発光持続性は、測定開始後1.2秒後から60秒後の測定値をとり、1.2秒後の測定値に対する60秒後の測定値の割合(発光率持続率)で比較した。すなわち、1.2秒後の測定値に対する60秒後の測定値の割合が低いほど、発光減衰の度合が大きく、発光持続性は悪いということになる。
その結果、L344A変異を含まないホタルルシフェラーゼ(BLU−Y)では、発光持続率が27.8%であり、60秒後で発光量が3分の1未満に減衰したのに対し、発光持続変異であるL344A変異を含む全ての変異ホタルルシフェラーゼでは、発光持続率が100〜150%であった。すなわち、本発明の安定性変異を含み、かつL344A変異を含む変異体の全てにおいて、発光量向上効果を発揮しつつも、L344A変異の効果である発光持続性が良好に保持されていることが判明した。
7.変異ホタルルシフェラーゼの熱安定性
実施例5で試験した各変異体の粗酵素液を、0.3M Tricine−NaOH,0.2% BSA,5% Glycerol,pH7.8に1〜10μl添加したものを、47℃反応温度下にて90分の熱処理に供した。そして、活性測定試薬〔50mM Tricine−NaOH,4mM ATP,2mM Luciferin,10mM MgSO4,pH7.8〕を用いて、熱処理前後のルシフェラーゼ粗酵素の活性を測定した。ルシフェラーゼ活性は、ルミノメーター(ベルトールド社製、LB96V)を用いて1秒間の積算にて得られる発光量にて評価し、熱処理前の発光量に対する熱処理後の発光量値の比を、「活性残存率」として算出した。
その結果、BLU−Y A3Tでは、活性残存率が34.4%であったのに対し、BLU−A3T−1では37.3%、B−A3T−2では38.3%、B−A3T−3では50.7%、さらにBLU−A3T−4では50.6%、BLU−A3T−5では52.7%であった。すなわち、75A変異という発光量向上変異、または75A変異に加えて293M変異、351V変異、172E変異および259I変異、あるいは359V変異および490Q変異の1以上を組み合わせた発光量向上変異を導入しても、344A変異、287A変異、326S変異、さらに467I変異の効果である高い熱安定性は良好に保持され、むしろ、さらに向上する傾向をも示すことが判明した。
これらの結果からわかるように、本発明の方法により、発光量にすぐれたホタルルシフェラーゼを提供することができる。また、発光持続性等の性質と安定性、高い発光量を兼ね備えたホタルルシフェラーゼを提供することができる。本発明により、発光量の優れたホタルルシフェラーゼが提供され、高感度発光測定系や微量ATP測定系等のキット中に有利に利用することができ、また、発光持続性変異、安定性向上変異等他の有用な変異と組み合わせることによっても、さらに広範な利用が期待される。

Claims (8)

  1. ホタルルシフェラーゼにおいて、ヘイケボタルルシフェラーゼの344位に相当するアミノ酸がアラニンに変異され、287位に相当するアミノ酸がアラニンに変異され、326位に相当するアミノ酸がセリンに変異され、467位に相当するアミノ酸がイソロイシンに変異され、かつ75位に相当するアミノ酸がアラニンに変異されているホタルルシフェラーゼ。
  2. ヘイケボタルルシフェラーゼの293位に相当するアミノ酸がメチオニンに変異されている、請求項1記載のホタルルシフェラーゼ。
  3. ヘイケボタルルシフェラーゼの351位に相当するアミノ酸がバリンに変異されている、請求項1記載のホタルルシフェラーゼ。
  4. ヘイケボタルルシフェラーゼの172位に相当するアミノ酸がグルタミン酸に変異され、かつ259位に相当するアミノ酸がイソロイシンに変異されている、請求項1記載のホタルルシフェラーゼ。
  5. ヘイケボタルルシフェラーゼの359位に相当するアミノ酸がバリンに変異され、かつ490位に相当するアミノ酸がグルタミンに変異されている、請求項1記載のホタルルシフェラーゼ。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のホタルルシフェラーゼをコードするホタルルシフェラーゼ遺伝子。
  7. 請求項6記載のホタルルシフェラーゼ遺伝子をベクターDNAに挿入したことを特徴とする組換え体DNA。
  8. 請求項6記載のホタルルシフェラーゼ遺伝子または請求項7記載の組換え体DNAを含み、ホタルルシフェラーゼ生産能を有する微生物を培養し、該培養物よりホタルルシフェラーゼを採取することを特徴とする、ホタルルシフェラーゼの製造法。
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