JP5568438B2 - 着磁パルサリング及び転がり軸受装置 - Google Patents
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Description
この着磁パルサリングは、例えばインサート成形により製造される。すなわち、支持部材のうち磁石部材の接合部分に接着剤を塗布し、この支持部材を金型内に配置する。そして、磁石部材を構成するための磁石材料を前記金型内に射出し、当該磁石材料を硬化させることにより、磁石部材を支持部材に一体接合させた着磁パルサリングが得られる。
このため、磁石部材が支持部材に一体接合されている着磁パルサリングでは、温度変化に起因して磁石部材と支持部材との間に変形量の差が生じ、特に温度変化が大きいと変形量の差も大きくなって、磁石部材が支持部材から剥がれる等、着磁パルサリングが破損するおそれがある。
本発明によれば、磁石部材は、磁性体粉及び樹脂であるバインダの他に、微小ガラス材が含まれた磁石材料によって形成されているので、従来の磁性体粉及びバインダのみからなる磁石部材よりも、線膨張係数を低くすることができる。このため、磁石部材の線膨張係数と金属製である支持部材の線膨張係数との差を小さくし、温度変化に起因して支持部材と磁石部材との間に生じる変形量の差を小さくすることができる。この結果、磁石部材が支持部材から剥がれる等の着磁パルサリングの破損を防ぐことが可能となる。
また、仮に支持部材のフランジ部から磁石部材の本体部が剥がれたとしても、磁石部材の回り込み部がフランジ部の外周縁部に引っ掛かって、フランジ部から磁石部材が脱落するのを防止することができる。
また、前記微小ガラス材は、ガラス粉とすることも可能ではあるが、前記微小ガラス材は、ガラス繊維であるのが好ましく、この場合、磁石部材の線膨張係数を低くすると共に、強度(特に引張強度)を高めることができる。
また、前記支持部材は、鋼製であるのが好ましい。
微小ガラス材が15%を超えると、バインダ及び磁性体粉が少なくなる。バインダが少ないと、着磁パルサリングを例えばインサート成形する際に、磁石部材を構成する磁石材料の流動性が低下する。また、磁性体粉が少ないと、必要な磁力が得られにくくなる。一方、微小ガラス材が5%未満であると、磁石部材の線膨張係数を低下させる作用が弱くなる。
この場合、フランジ部の裏面に、例えばシール部材のシールリップ等の別部材が接触する場合であっても、回り込み部が邪魔となるのを防ぐことができる。
本発明によれば、上記説明したように、着磁パルサリングにおいて、金属製である支持部材に固定されている磁石部材は、磁性体粉及びバインダの他に、微小ガラス材を含む磁石材料によって形成されているので、温度変化に起因して支持部材と磁石部材との間に生じる変形量の差を小さくすることができる。このため、磁石部材が支持部材から剥がれる等の破損を防ぐことが可能となり、信頼性の高いセンサ付き転がり軸受装置が得られる。
〔1.転がり軸受装置〕
図1は、本発明の転がり軸受装置の断面図である。この転がり軸受装置1は、自動車等の車両本体側にある懸架装置(図示せず)に固定されるものであり、この懸架装置に対して、車輪を回転可能に支持することができる。
この着磁パルサリング11は、例えば、支持部材20をコアとして金型内に設置し、磁石部材12を構成する磁石材料を前記金型内に射出するインサート成型によって製造することができる。着磁パルサリング11については、さらに後で説明する。
そして、制御装置は、磁気センサSから取得した検出信号に基づいて、内軸2の回転速度を求め、車両のアンチロックブレーキシステム等の制御に反映することができる。
図2は、着磁パルサリングを説明する断面図である。この着磁パルサリング11は、複数の磁極が周方向に沿って所定間隔で配列された環状の磁石部材12と、回転体を構成する内輪部材9(図1参照)に一体回転可能に固定される支持部材20とを備えている。また、本実施形態では、支持部材20(後述のフランジ部22)と磁石部材12との間には接着剤による接着層30が介在している。接着剤は、熱硬化型であるフェノール系又はエポキシ系とすることができる。
図1と図2において、支持部材20は、内輪部材9の外周面に外嵌して固定されることで内軸2と一体回転可能となる。このため、支持部材20に固定されている磁石部材12も、内軸2に対して一体回転可能となる。
なお、本実施形態では、フランジ部22は、軸方向に直交する平面に沿った円環形状を有し、このフランジ部22の表面22aは、車両内側(図1では右側)であり、裏面22bは、車両外側(図1では左側)である。
さらに、支持部材20は、前記のとおり鋼板等の磁性材料によって構成されており、フランジ部22は、磁石部材12に対するバックヨークとして機能し、磁気センサSに向かう磁束ループの磁束密度を高めることができる。
また、バインダは、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料であり、この磁石部材12はガラス繊維を含む樹脂磁石材料からなる。バインダは、磁性体粉同士、及び、ガラス繊維と磁性体粉とを結合する機能を有する。
磁性体粉の含有率は、磁石部材12の全重量の内の80%以上で90%以下であり、残りが樹脂バインダである。例えば、ガラス繊維が15%の場合、磁性体粉は80%であり、その残りが樹脂成分である。また、ガラス繊維が5%の場合、磁性体粉は80%以上で90%以下であり、その残りが樹脂成分となる。
従来の磁性体粉及び樹脂バインダのみからなる磁石材料による磁石部材の線膨張係数は、8.3×10−5cm/cm・℃であるのに対し、本発明のガラス繊維を含む磁石部材12の線膨張係数は、4.4×10−5cm/cm・℃となる。なお、この場合のガラス繊維の含有率は、重量あたり1〜5%であり、磁性体粉の含有率は80〜85%であり、残りが樹脂である。
支持部材20がSUS430の場合、その線膨張係数は、1.03×10−5cm/cm・℃である。
磁性体粉及び樹脂バインダのみからなる磁石部材が支持部材に固定されている従来の着磁パルサリング(従来例)では、磁石部材の線膨張係数は、支持部材の線膨張係数の約8倍であり、両者の差は非常に大きい。
これに対して、ガラス繊維を含む磁石部材12が支持部材20に固定されている着磁パルサリング11(実施例)では、磁石部材12の線膨張係数は、支持部材20の線膨張係数の約4.3倍であり、両者の差は小さくなる。
また、着磁パルサリング11はインサート成型されることにより、高温状態から低温状態へと変化するため、磁石部材12には残留応力が生じるが、ガラス繊維が含まれていることにより、この応力による破損を抑制することができる。
図2において、前記のとおり、着磁パルサリング11の支持部材20は、内輪部材9(図1参照)に外嵌固定される円筒部21と、この円筒部21から径外方向へ延び表面22a側に磁石部材12の本体部13が固定されている環状のフランジ部22とを有している。図3は、この着磁パルサリング11の外周側部分の拡大図である。この図3において、フランジ部22の外周縁部23の裏面22b側には、欠損部24が形成されている。本実施形態の欠損部24は、鋼板がプレスされて製造された支持部材20の前記外周縁部23の、図3では破線で示した角部Eに対して、凸となるアール加工が施されて、当該角部Eが取り除かれたアール加工部24aである。
欠損部24,25は、支持部材20をプレス成型する際に同時に形成されてもよく、又は、プレス成型後の外周縁部23に対して機械加工等を行って形成してもよい。
前記のとおり、着磁パルサリング11は、支持部材20を金型内に設置して、磁石部材12を構成する磁石材料を射出するインサート成型によるため、当該磁石材料が、支持部材の外周縁部23に沿って流れて金型内で欠損部24及びその周囲に充填されることにより、前記回り込み部14を形成することができる。これにより、回り込み部14は、欠損部24に密着して嵌っている構成となる。なお、支持部材20に接着剤が設けられている場合、回り込み部14と欠損部24との間には、接着剤による接着層が介在していてもよい。
そして、この磁石部材12の回り込み部14によれば、仮に支持部材20のフランジ部22から、磁石部材12の本体部13が剥がれたとしても、当該回り込み部14(爪部17)がフランジ部22の外周縁部23に引っ掛かって、フランジ部22から磁石部材12が脱落するのを防止することができる。
このため、前記のとおり、フランジ部22の裏面22bには、シール部材7(シールリング10a)のシールリップ10bが接触するが(図2参照)、回り込み部14が邪魔とならない。
また、着磁パルサリングは、図1に示した車輪用の転がり軸受装置1以外の回転機器に適用することも可能である。
Claims (9)
- 回転体に一体回転可能に取り付けられる環状の金属製支持部材と、
前記支持部材に固定されかつ複数の磁極が周方向に配列されている環状の磁石部材と、を備え、
前記磁石部材は、磁性体粉と、樹脂であるバインダと、微小ガラス材とが含まれた磁石材料によって形成され、
前記支持部材は、前記回転体に取り付けられる円筒部と、前記円筒部から径外方向へ延び前記磁石部材が固定されている環状のフランジ部と、を有し、
前記フランジ部は、その外周縁部の表面側及び裏面側に欠損部が形成されており、
前記磁石部材は、前記フランジ部の表面側に設けられている円環板状の本体部と、前記本体部から前記裏面側の前記欠損部まで前記外周縁部を回り込んでいる回り込み部と、を有しており、
前記フランジ部の表面側から裏面側に向けて延在する部分は、前記回り込み部による一箇所であることを特徴とする着磁パルサリング。 - 前記微小ガラス材は、ガラス繊維である請求項1に記載の着磁パルサリング。
- 前記支持部材は、鋼製である請求項1又は2に記載の着磁パルサリング。
- 前記磁石部材の線膨張係数は、前記支持部材の線膨張係数の4.5倍以下で3倍以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の着磁パルサリング。
- 前記微小ガラス材は、前記磁石部材の全重量の内の1%以上で15%以下の重量で含まれている請求項1から4のいずれか一項に記載の着磁パルサリング。
- 前記外周縁部の表面側及び裏面側に形成されている欠損部は、アール形状である請求項1から5のいずれか一項に記載の着磁パルサリング。
- 前記外周縁部の表面側及び裏面側に形成されている欠損部は、面取り部である請求項1から5のいずれか一項に記載の着磁パルサリング。
- 前記回り込み部は、前記フランジ部の裏面と同一平面となる平坦な側端面を有している請求項1から7のいずれか一項に記載の着磁パルサリング。
- 同心状に配置されている固定輪及び回転輪と、
前記固定輪と回転輪との間に転動自在に配置された複数の転動体と、
前記回転輪に一体回転可能に取り付けられた着磁パルサリングと、
前記着磁パルサリングの磁極の変化を検出することにより前記回転輪の回転状態を検出するための磁気センサと、
を備え、
前記着磁パルサリングは、請求項1から8のいずれか一項に記載の着磁パルサリングであることを特徴とする転がり軸受装置。
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