JP2009198420A - 磁気エンコーダ及び前記磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニット - Google Patents

磁気エンコーダ及び前記磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニット Download PDF

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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C41/00Other accessories, e.g. devices integrated in the bearing not relating to the bearing function as such
    • F16C41/007Encoders, e.g. parts with a plurality of alternating magnetic poles

Abstract

【課題】耐熱性に優れる等の利点を有するポリフェニレンサルファイド樹脂を含むバインダを用いつつ、強度低下を抑え、亀裂等が発生し難く信頼性をより高めた磁気エンコーダ、並びに高性能で信頼性の高い転がり軸受ユニットを提供する。
【解決手段】 磁性体粉と該磁性体粉のバインダとを含む磁性材料を円環状に形成した磁石部と、磁性材料からなるスリンガとを一体接合してなる磁気エンコーダにおいて、
前記バインダが、ポリフェニレンサルファイド樹脂と、分子構造中にグリシジルメタクリレートを3〜20質量%の割合で含有するエチレン系共重合体からなるタフ化剤とを含有する磁気エンコーダ、並びに固定輪と、回転輪と、前記固定輪及び前記回転輪との間で周方向に転動自在に配設された複数の転動体とを備え、前記磁気エンコーダを前記回転輪に固定した転がり軸受ユニット。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転体の回転数を検出するために用いられる磁気エンコーダ、及び前記磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニットに関する。
従来、自動車のスキッドを防止するためのアンチスキッド用、または有効に駆動力を路面に伝えるためのトラクションコントロール用等に用いられる回転数検出装置として、磁性によりパルス発生をなす磁気エンコーダと、この磁気エンコーダの磁性パルスを感知する感知センサとから構成されるものが多く用いられている。この回転数検出装置では、軸受を密封するシール装置に磁気エンコーダを併設して配置し、密封手段と回転数検出手段とを一体化して回転数検出装置付きシールを構成しているものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
回転数検出装置付きシールの一例を図11に示すが、外輪101aに取り付けられたシール部材102と、内輪101bに嵌合されたスリンガ103と、スリンガ103の外側面に取り付けられて磁気パルスを発生する磁気エンコーダ104と、磁気エンコーダ104に近接して配置されて磁気パルスを検出するセンサ105とから構成されている。このシール付回転数検出装置が取り付けられた軸受ユニットでは、シール部材102とスリンガ103とにより、埃、水等の異物が軸受内部に侵入することを防止し、軸受内部に充填された潤滑剤が軸受外部に漏洩することを防止している。また、磁気エンコーダ104は、内輪101bが1回転する間に、極数に対応した数の磁気パルスを発生させ、この磁気パルスをセンサ105により検出することで内輪101bの回転数を検出している。
また、磁気エンコーダ104は、ゴムや樹脂等の弾性素材に磁性体粉を混入させた弾性磁性材料からなる磁石部が、型内で接着剤が塗布されたスリンガ103のフランジ部103aにプレス造形することで接合されている。弾性磁性材料として、フェライトを含有したニトリルゴムが一般に用いられており、ロールで練られることで、機械的に磁性体粉が配向された状態になっている。
近年、車輪の回転数をより正確に検出するために、磁気エンコーダ104の円周方向の極数を増す(多極化)傾向にある。しかしながら、従来の機械配向法によるフェライト含有ゴム磁石からなる磁気エンコーダ104では、一極当たりの磁束密度が小さくなりすぎ、回転数を精度よく検出するためには、センサ105と磁気エンコーダ104との隙間(即ち、エアギャップ)を小さくする必要がある。また、磁気エンコーダ104は、自動車の高性能化に伴い、自動車の足回りに使用されるため、120℃程度の高温環境や−40℃程度の低温環境に曝されたり、泥水、融雪剤、グリースや油等の油脂類が表面に付着することが想定される。
上記の対策として、エアギャップ量を増大させるには、磁石部の磁気特性を向上させる必要があるが、磁気特性の高い磁性材料として一般的な希土類系磁性粉は高価であることに加え、耐酸化性もフェライト系磁性粉に比べて低いため、上記のような環境で使用すると酸化劣化して磁気特性が大幅に低下する可能性がある。また、フェライト磁性粉とプラスチックからなるプラスチック磁石を用いることにより、ゴム磁石よりも多量に磁性粉を充填でき、磁気特性の向上を図ることができるが、磁石部の強度が低下するとともに、伸びやたわみが減少する。このため、自動車等で想定される高温環境・低温環境に繰り返し曝されると、磁石部の変形がスリンガ103の変形(寸法変化)に追従できず、最悪の場合、接合部分の弱い部分を起点として磁石部に亀裂等が発生するおそれがある。
ブラスチック磁石材料として、耐熱性が求められる場合、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂をバインダに用いることが知られているが、一般的なバインダであるポリアミド12やポリアミド6等のポリアミド系樹脂を用いた場合に比べて靭性に劣るため、上記した亀裂等が発生し易い傾向にある。この点を改良すべく本出願人は先に、ポリフェニレンサルファイド樹脂をバインダとするプラスチック磁石材料に、加硫ゴム粒子を含有させることを提案している(特許文献2参照)。しかしながら、加硫ゴム粒子を含有させることでプラスチック磁石材料に柔軟性が付与され、亀裂発生を防止する効果が向上したものの、ポリフェニレンサルファイド樹脂と加硫ゴム粒子との間の相互作用が十分に働かないため、プラスチック磁石材料の強度低下を招くおそれがあり、改善効果が十分満足いくものではなかった。
特開2001−255337号公報 特開2006−317168号公報
そこで本発明は、耐熱性に優れる等の利点を有するポリフェニレンサルファイド樹脂を含むバインダを用いつつ、強度低下を抑え、亀裂等が発生し難く信頼性をより高めた磁気エンコーダを提供することを目的とする。また、本発明は、前記磁気エンコーダを備え高性能で信頼性の高い転がり軸受ユニットを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の磁気エンコーダ及び転がり軸受ユニットを提供する。
(1)磁性体粉と該磁性体粉のバインダとを含む磁性材料を円環状に形成した磁石部と、磁性材料からなるスリンガとを一体接合してなる磁気エンコーダにおいて、前記バインダが、ポリフェニレンサルファイド樹脂と、分子構造中にグリシジルメタクリレートを3〜20質量%の割合で含有するエチレン系共重合体からなるタフ化剤とを含有することを特徴とする磁気エンコーダ。
(2)前記バインダが、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エスエル系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を該バインダ全量の0.1〜2.0質量%含有することを特徴とする上記(1)記載の磁気エンコーダ。
(3)固定輪と、回転輪と、前記固定輪及び前記回転輪との間で周方向に転動自在に配設された複数の転動体とを備える転がり軸受ユニットにおいて、上記(1)または(2)に記載の磁気エンコーダが、前記回転輪に固定されていることを特徴とする転がり軸受ユニット。
本発明の磁気エンコーダは、プラスチック磁石材料が、ポリフェニレンサルファイド樹脂が持つ耐熱性等の利点を有するとともに、強度低下が抑えられ、高性能で、より信頼性に優れるものとなる。また、この磁気エンコーダを備える本発明の転がり軸受ユニットもまた、高性能で信頼性の高いものとなる。
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
本発明の磁気エンコーダは、磁性体粉と、後述する特定のバインダとを含む磁性材料を円環状に形成した磁石部と、磁性材料からなるスリンガとを一体に接合して構成される。
磁性材料を形成する磁性体粉としては、磁気特性や耐候性を考慮して、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト等のフェライト系磁性体粉、サマリウム−鉄−窒素、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ボロン等の希土類磁性体粉を好適に用いることができる、これら磁性体粉はそれぞれ単独で、あるいは複数種を組み合わせて使用することができる。尚、主たる使用環境が高温(例えば150℃程度)である場合、高い磁気特性(BHmaxで2.0MGOe超)が必要な場合には希土類磁性体粉を使用し、低い磁気特性(BHmaxで1.6〜2.0MGOe)でよい場合には、コストを考慮して、フェライト系磁性体粉を主成分とする配合が好ましい。また、使用環境が高湿の場合、バインダとして用いるポリフェニレンサルファイド樹脂はポリアミド樹脂系バインダに比べて低吸水性であるものの、高い磁気特性を目的として希土類系磁性体粉を用いる場合には、磁石部に防湿コーティングを施すことが好ましい。磁性材料における磁性体粉の含有量は、磁性体粉の種類により異なるが、70〜92質量%の範囲であれば実用上問題はない。但し、磁石部の成形は、バインダであるポリフェニレンサルファイド樹脂の融点以上の温度で行われるため、サマリウム−鉄−窒素を用いる場合は、この成形温度で減磁が見込まれるため、含有量を多めにすることが好ましい。
また、磁性体粉は、分散性向上及びバインダとの相互作用を向上させるために、磁性材料にアミノ基やエポキシ基等の有機官能基を有するシランカップリング剤を混入することが好ましい。
バインダは、ポリフェニレンサルファイド樹脂に、タフ化剤を添加したものである。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、直鎖型及び架橋分岐型の何れも使用できるが、靭性を考慮すると直鎖型が好適である。また、ポリフェニレンサルファイド樹脂は、磁性体粉と混合して押出機等でペレット化する際の分散性、材料の均質性を考慮すると、パウダー品が好ましい。
タフ化剤は、ポリフェニレンサルファイド樹脂の柔軟性等を改善して強度低下を防ぐために配合されるが、本発明では分子構造中にグリシジルメタクリレートを有するエチレン系共重合体を用いる。具体的には、エチレンとグリシジルメタクリレートとの二元共重合体の他、エチレン、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニルからなる三元共重合体、エチレン、グリシジルメタクリレート、アクリル酸メチルからなる三元共重合体、エチレンとグリシジルメタクリレートとの二元共重合体に他のポリマー部分をグラフト化したもの等が挙げられる。尚、グラフト化するポリマー鎖としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体等が挙げられ、その比率はエチレン系共重合体全体の20〜40質量%が好ましい。この分子構造中にグリシジルメタクリレートを有するエチレン系共重合体は、ポリフェニレンサルファイド樹脂に対して強い反応性を有するため、EPDMや加硫ゴム微粒子等の従来のタフ化剤に比べて強度低下を抑制し、靭性の改良効果が高い。
エチレン系共重合体におけるグリシジルメタクリレートの含有量は3〜20質量%であり、好ましくは5〜13質量%である。グリシジルメタクリレートの含有量が3質量%未満では、ポリフェニレンサルファイド樹脂への反応性が低すぎてポリフェニレンサルファイド樹脂との接合度合があまり向上せず、柔軟性や延性等の改善が思わしくないので実用性が低い。それに対してグリシジルメタクリレートの含有量が20質量%を超えると、逆に反応性が高すぎてポリフェニレンサファイド樹脂や磁性体粉との混練時に、タフ化剤同士あるいはタフ化剤とポリフェニレンサルファイド樹脂分子との反応が起こり易く、それによって溶融粘度の急激な上昇が起こる可能性があり、均一な分散状態の樹脂ペレットを製造するのが難しくなるため好ましくない。
タフ化剤は、ポリフェニレンサルファイド樹脂との合計量の10〜35質量%の割合で添加することが好ましく、より好ましくは15〜25質量%である。タフ化剤の添加量が10質量%未満では、少なすぎて耐衝撃性の改善効果が少なく好ましくない。添加量が35質量%を超える場合は、耐衝撃性は向上するものの、相対的にポリフェニレンサルファイド樹脂の量が少なくなり、引張強度等が低下するため実用性が低くなる。
また、バインダには、劣化防止を目的として、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エスエル系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を添加することが好ましい。これら酸化防止剤の添加量は、バインダ全量の0.1〜2.0質量%が好ましく、0.1質量%未満では劣化防止効果が十分ではなく、2.0質量%を超えると劣化防止効果が飽和するとともに、相対的にポリフェニレンサルファイド樹脂及びタフ化剤の量が少なくなり、機械的強度が低下するため、好ましくない。
アミン系酸化防止剤としては、4,4´−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4´−ジオクチルジフェニルアミン等のジフェニルアミン系化合物、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系化合物を用いることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、テトラキス−〔メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒロドシンナマミド等のヒンダードフェノール系化合物、4,4´−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のチオビスフェノール系化合物を用いることができる。
硫黄系酸化防止剤としては、ビス〔2−メチル−4−{3−n−アルキル(C12またはC14)チオプロピオニルオキシ}−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、ジラウリル・チオジプロピオネート等の硫黄系化合物を用いることができる。
亜リン酸系酸化防止剤としては、トリス(ノニル・フェニル)ホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)等の亜リン酸エステル系化合物を用いることができる。
上記以外にも、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のヒドロキノン誘導体、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノン等のキノリン系酸化防止剤も用いることができる。
これら酸化防止剤の中でも、芳香族アミン系酸化防止剤がポリフェニレンサルファイド樹脂及びタフ化剤の劣化防止に有効に働き、最も好適である。
上記バインダを含有する磁性材料は、23℃での曲げたわみ量(t=3.0mm、ASTM D790;スパン間距離50mm)が2〜15mmの範囲に入る。たわみ性に優れることで、耐亀裂性が高くなり、高温と低温とに繰り返し曝されても磁石部に亀裂等の破損が発生し難くなる。
一方、スリンガの材質としては、磁石材料の磁気特性を低下させず、尚且つ使用環境から、一定レベル以上の耐食性を有するフェライト系ステンレス(SUS430等)、マルテンサイト系ステンレス(SUS410等)等の磁性材料が最も好ましい。また、スリンガの表面の少なくとも磁石接合面は、磁石材料との接合性を向上させるために、化学エッチング処理を伴う粗面化処理、ショットブラストによる粗面化処理、スリンガのプレス成形時の金型凸部転写による凹面化処理等が行われていることが好ましい。尚、樹脂製のセンサーキャップと組み合わせて使用する部位で使用するコンコーダ(シールとの組み合わせ無し;図5参照)では、耐食性をそれほど要求されないため、コストを考慮してスリンガの材質を冷延鋼板(SPCC)等としてもよい。
磁気エンコーダの製造は、先ず、予め接着剤を焼き付けたスリンガをコアにして、上記磁性材料をインサート成形する。このとき、ディスクゲート方式の射出成形機を用いることが好ましい。溶融した磁性材料はディスク状に広がってから、内径厚み部にあたる部分の金型に流入することで、中に含有する燐片状の磁性体粉が面に対して平行に配向する。特に、内径厚み部近傍の、回転センサが検出する内径部と外径部との間の部分はより配向性が高く、厚さ方向に配向されたアキシアル異方性に非常に近くなっている。また、成形時、金型に厚さ方向に磁場をかけるようにすると(磁場成形)、異方性はより完全に近いものとなる。これに対し、磁場成形を行ってもサイドゲートとした場合、徐々に固形化に向かって溶融した磁性材料の粘度が上がって行く過程で、ウェルド部での配向を完全に異方化するのは困難であり、それによって、磁場特性が低下するとともに、機械的強度が低下するウェルド部に長期間の使用によって、亀裂等が発生する可能性があり好ましくない。
スリンガに焼き付ける接着剤としては、溶剤での稀釈が可能で、2段階に近い硬化反応が進むフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が好ましい。これらの接着剤は、耐熱性、耐薬品性、ハンドリング性等にも優れるという利点を有する。
フェノール樹脂系接着剤は、ゴムの加硫接着剤として用いられているものが好適であり、組成としては特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を、メタノールやメチルエチルケトン等の溶解させたものが使用できる。また接着性を向上させるために、これらにノボラック型エポキシ樹脂を混合したものであってもよい。
エポキシ樹脂系接着剤としては、原液としては一液型エポキシ系接着剤で、溶剤への希釈が可能なものが好適である。この一液型エポキシ系接着剤は、溶剤を蒸発させた後、適当な温度・時間でスリンガ表面に、インサート成形時の高温高圧の溶融プラスチック磁石材料によって流失されない程度の半硬化状態となり、インサート成形時の溶融磁性材料からの熱、及び2次加熱によって完全に硬化状態となるものである。
一液型エポキシ系接着剤は、少なくともエポキシ樹脂と硬化剤とからなり、硬化剤は室温近辺ではほとんど硬化反応が進まず、例えば80〜120℃程度で半硬化状態となり、120〜180℃の高温の熱を加えることによって完全に熱硬化反応が進むものである。この接着剤には、反応性希釈剤として使用されるその他のエポキシ化合物、熱硬化速度を向上させる硬化促進剤、耐熱性や耐硬化歪み性を向上させる効果がある無機充填材、応力がかかった時に変形する可撓性を向上させる架橋ゴム微粒子等を更に添加してもよい。
前記エポキシ樹脂としては、分子中に含まれるエポキシ基の数が2個以上のものが、充分な耐熱性を発揮し得る架橋構造を形成することができる等の点から好ましい。また、4個以下、さらに3個以下のものが低粘度の樹脂組成物を得ることができる等の点から好ましい。分子中に含まれるエポキシ基の数が少なすぎると、硬化物の耐熱性が低くなる、強度が弱くなる等の傾向が生じ易くなり、多すぎると、樹脂組成物の粘度が高くなる、硬化収縮が大きくなる等の傾向が生じ易くなる。
また、前記エポキシ樹脂の数平均分子量は、200〜5500、さらには200〜1000が物性のバランスの面から好ましい。数平均分子量が少なすぎると、硬化物の強度が弱くなる、耐湿性が小さくなる等の傾向が生じ易くなり、大きすぎると、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業性調整のために反応性希釈剤の使用が多くなる等の傾向が生じ易くなる。
更に、エポキシ当量が100〜2800、特に100〜500のエポキシ樹脂が、硬化剤の配合量が適正範囲になる等の点から好ましい。エポキシ当量が小さすぎると、硬化剤の配合量が多くなりすぎ、硬化物の物性悪くなる等の傾向が生じ易くなり、大きすぎると、硬化剤の配合量が少なくなると共にエポキシ樹脂自体の分子量が大きくなって樹脂組成物の粘度が高くなる等の傾向が生じ易くなる。
このようなエポキシ樹脂の具体例としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエステル変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂のような他のポリマーとの共重合体等が挙げられる。これらのうちでは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が、比較的低粘度で、硬化物の耐熱性と耐湿性に優れるので好ましい。
前記硬化剤としては、アミン系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤等を用いることができる。
アミン系硬化剤は、アミン化合物であり、硬化反応によりエステル結合を生成しないため、酸無水物系硬化剤を用いた場合に比べて、優れた耐湿性を有するようになり好ましい。アミン化合物としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンのどれでもよいが、芳香族アミンが配合物の室温での貯蔵安定性が高いと共に、硬化物の耐熱性が高いので最も好ましい。芳香族アミンの具体例としては、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミンと3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミンとの混合物等が挙げられる。
ポリアミド系硬化剤は、ポリアミドアミンとも呼ばれ、分子中に複数の活性なアミノ基を持ち、同様にアミド基を一個以上持つ化合物である。ポリエチレンポリアミンから合成されるポリアミド系硬化剤は、二次的な加熱によりイミダジリン環を生じ、エポキシ樹脂との相溶性や機械的性質が向上するので好ましい。ポリアミド系硬化剤は、少量のエポキシ樹脂を予め反応させたアダクト型のものでもよく、アダクト型にすることで、エポキシ樹脂との相溶性に優れ、硬化乾燥性や耐水・耐薬品性が向上し好ましい。このポリアミド系硬化剤を用いることで、エポキシ樹脂との架橋により特に可撓性に富んだ強靭な硬化樹脂となるので、本発明の磁気エンコーダに求められる耐ヒートショック性に優れるようになり、好適である。
酸無水物系硬化剤で硬化した硬化物は、耐熱性が高く、高温での機械的・電気的性質が優れているが、やや脆い傾向があるが、第三級アミン等の硬化促進剤と組み合わせることで改善が可能である。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチレンエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂との混合系において、常温での貯蔵安定性に優れ、一定温度以上の条件下にて速やかに硬化するものであり、実際の形態としては、エポキシ樹脂の硬化剤になり得る酸性または塩基性化合物の中性塩又は錯体で加熱時に活性化するもの、マイクロカプセル中に硬化剤が封入され圧力により破壊するもの、結晶性で高融点かつ室温でエポキシ樹脂と相溶性がない物質で加熱溶解するもの等がある。潜在性硬化剤の具体例としては、高融点の化合物である1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、エイコサン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジドは、エポキシ樹脂との架橋により特に可撓性に富んだ強靭な硬化樹脂となるので、本発明の磁気エンコーダに求められる耐ヒートショック性に優れるようになり、好適である。
前記反応性希釈剤としては、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を用いることができ、添加することで、硬化物に適度な可撓性も付与され好適である。但し、これらの反応性希釈剤は、多量に使用すると、硬化物の耐湿性や耐熱性を低下させるので、主体となるエポキシ樹脂に対して30質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは20質量%以下とする。
前記硬化促進剤としては、常温では硬化促進剤として作用せず充分な保存安定性を有し、100℃以上の高温になったときに速やかに硬化反応を進行させるものが好ましく、例えば、分子内の1−アルコキシエタノールとカルボン酸の反応により生じるエステル結合を一個以上有する化合物等がある。この化合物は、例えば一般式(I):
[COO−CH(OR)−CH] (I)
(式中、Rは炭素数2〜10個で、窒素原子、酸素原子等の1種以上が含まれていてもよいn価の炭化水素基、Rは炭素数1〜6個で、窒素原子、酸素原子等の1種以上が含まれていてもよい1価の炭化水素基、nは1〜6の整数)で表される化合物である。その具体例としては、下記式(A)
Figure 2009198420
で表される化合物、Rが2価のフェニル基でRがプロピル基の化合物、Rが3価のフェニル基でRがプロピル基の化合物、Rが4価のフェニル基でRがプロピル基の化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは式(A)で表される化合物が硬化反応性と貯蔵安定性のバランスの点から、最も好ましい。
上記以外にも、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物を硬化促進剤として用いても良い。
また、硬化促進剤として、エポキシ基と反応し、開環反応を引き起こすような活性水素を有する化合物として、アジピン酸等のカルボン酸類を使用してもよい。アジピン酸を使用することで、エポキシ樹脂のエポキシ基及び硬化剤のアミノ基と反応し、得られた硬化物は、アジピン酸の添加量が増えるに従って可撓性を有するようになる。可撓性を発現させるためには、アジピン酸の添加量は、接着剤全量に対して、10〜40質量%、より好ましくは20〜30質量%である。添加量が10質量%未満の場合は、充分な可撓性が発現しない。それに対して、添加量が40質量%を越えると、その分エポキシ樹脂の接着剤中での全体量が減り、接着力、機械的強度が低下し、好ましくない。
更に、硬化促進剤として、エポキシ基の開環反応を促進する触媒として働く、ジメチルベンジルアミン等の3級アミン、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、3−(3’,4’−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素等のアルキル尿素等を添加してもよい。
上記説明したアミン類等も含めて、この開環反応で生成したOH基は、スリンガの表面の水酸基と水素結合を形成して強固な接着状態を保つことができる。
前記無機充填材としては、従来から使用されているものであれば特に限定なく使用することができる。具体例としては、例えば溶融シリカ粉末、石英ガラス粉末、結晶ガラス粉末、ガラス繊維、アルミナ粉末、タルク、アルミニウム粉末、酸化チタン等が挙げられる。
前記架橋ゴム微粒子としては、エポキシ基と反応しうる官能基を有するものが好ましく、具体的には分子鎖中にカルボキシル基を有する加硫されたアクリロニトリルブタジエンゴムが最も好ましい。粒子径はより細かいものが好ましく、平均粒子径で30〜200nm程度の超微粒子のものが、分散性と安定した可撓性を発現させるために最も好ましい。
上記の一液型エポキシ接着剤は、常温ではほとんど硬化反応が進まず、例えば80〜120℃程度で半硬化状態となり、120〜180℃の高温の熱を加えることによって完全に熱硬化反応が進むものである。より好ましくは、150〜180℃で比較的短時間で硬化反応が進むものが好ましく、180℃程度の高周波加熱での接着が可能なものが最も好ましい。
以上説明したフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤の熱硬化後の硬化物は、物性として、曲げ弾性率あるいはヤング率が0.02〜5GPa、より好ましくは0.03〜4GPaの範囲、あるいは硬度(デュロメーターDスケール;HDD)が40〜90、より好ましくは60〜85の範囲内に入るものである。曲げ弾性率あるいはヤング率が0.02GPa未満、あるいは、硬度(HDD)が40未満の場合は、接着剤自体が柔らかすぎて、自動車等の走行時の振動によって変形しやすく、それによって、磁石部が動き易くなる。その結果、回転数の検出精度が低下するおそれがあり、好ましくない。それに対して、曲げ弾性率あるいはヤング率が5GPaを越える、あるいは硬度(HDD)が90を越える場合は、接着剤が剛体すぎて、磁石部とスリンガとの線膨張係数の差を吸収するように変形するのは難しく、最悪の場合、磁石部に亀裂等が発生することが予想され好ましくない。また、接着剤は、自動車での使用を前提とすると、耐ヒートショック性が求められ、硬化物の状態で可撓性(応力がかかったときに変形する)を有するものがより好ましい。
上記説明したフェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤以外にも、使用する環境、接着力等を考慮に入れて、磁石部とスリンガとの接着剤を選定可能である。他の接着剤の具体例としては、レゾルシノール樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリエーテルイミド系接着剤、ポリエーテルアミド系接着剤、ポリイミドシロキサン系接着剤、ポリベンズイミダゾール系接着剤、シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド樹脂系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤等が挙げられる。
但し、耐熱性や耐水性を考慮すると、一液エポキシ系接着剤が最も好適である。
上記の如く金型中に磁性材料を充填した後、金型中での冷却時に着磁方向と逆方向の磁界で脱磁を行う。次に、ゲート部を除去してから、接着剤を完全に硬化させた後、オイルコンデンサ式等の脱磁機を用いて、2mT以下、より好ましくは1mT以下の磁束密度まで更に脱磁する。
次いで、ゲートカットを行い、接着剤を完全に硬化させるために、恒温槽等で一定温度、一定時間加熱する。場合によっては、高周波加熱等の高温での短時間加熱を行うこともできる。
その後、着磁ヨークと重ね合わせて円周方向に多極着磁(図3参照)して磁気エンコーダが得られる。極数は70〜130極程度、好ましくは90〜120極である。極数が70極未満の場合は、極数が少なすぎて回転数を精度良く検出することが難しくなる。それに対して、極数が130極を越える場合は、各ピッチが小さくなりすぎて、単一ピッチ誤差を小さく抑えることが難しく、実用性が低い。
尚、上記では、磁気エンコーダを、スリンガをコアとして磁性材料をインサート成形して作製する形態を示したが、スリンガと磁石部とをそれぞれ別体で作製し、スリンガと磁石部とを接着剤で接合してよい。
また、上記磁気エンコーダは、高温に加え湿度が高い環境で使用される場合、吸水による磁性体粉の劣化を防止するために磁石部の露出面に防湿被膜を成膜することが好まく、希土類磁性体粉を用いる場合に特に効果的となる。尚、防湿被膜材料としては、非晶性フッ素樹脂、硬化型ウレタン樹脂、硬化型アクリル樹脂、硬化型エポキシ樹脂、ポリパラキシレン誘導体等が好適であるが、樹脂自体に撥水性を有する非晶性フッ素樹脂、ポリパラキシレン誘導体が、水分の浸透を抑える効果が高く特に好適である。
非晶性フッ素樹脂は、主鎖に含フッ素脂肪族エーテル環構造を有する重合体であり、具体的には、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)やパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等のアルケニルビニルエーテルからなるモノマーを環化重合したり、これらのモノマーをテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等のラジカル重合性モノマーと共重合することにより得られる。この非晶性フッ素樹脂は、磁石部との接着性(密着性)を向上させるために、カルボキシル基等の官能基を末端等に導入した構造のものが好ましい。また、この非晶性フッ素樹脂は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のパーフルオロ溶剤に溶解することから、成膜に際し、非晶性フッ素樹脂をパーフルオロ溶剤に1〜10質量%程度溶解した溶液に浸漬し、乾燥すればよい。このとき、被膜の膜厚は、この浸漬溶液の濃度に依存し、所望の膜厚となるように適宜濃度調整を行う。十分な防湿性を維持するために、被膜の膜厚は0.1〜10μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましい。被膜の膜厚が0.1μm未満では、このような薄い被膜を安定して成膜することが難しく、十分な防湿性を確保するのが困難となる。一方、被膜の膜厚が10μmを越えると、防湿性が変わらないことに加え、このような厚い被膜を均一に成膜するのが難しく、コスト高になり好ましくない。尚、磁石部との接着性をより向上させるために、成膜後に100〜120℃程度で0.5〜2時間程度熱処理を行ったり、予めプライマー処理を行うと更に効果的である。
硬化型ウレタン樹脂、硬化型アクリル樹脂、硬化型エポキシ樹脂は、構造中に熱または紫外線で硬化する官能基を有するものである。被膜の膜厚は、非晶性フッ素樹脂と同程度である。尚、硬化型ウレタン樹脂、硬化型アクリル樹脂、硬化型エポキシ樹脂は、樹脂自体に撥水性が無く、水分を遮断する能力に優れるわけではないので、これら樹脂からなる被膜の間に金属蒸着膜を介在させる構成としてもよい。金属蒸着膜の種類としてはアルミニウム、クロム、ニッケル等が適当である、膜厚は0.008〜0.1μmが好ましく、0.01〜0.05μmがより好ましい。膜厚が0.008μm未満では、このような薄い膜を安定して成膜するのが難しく、十分な防湿性を確保するのが困難となる。一方、0.1μmを越えると、防湿性が変わらないことに加え、コストアップ、重量増も想定され、好ましくない。但し、金属蒸着膜を磁石部に直接成膜して十分な膜強度と接着性とを得ることが難しいため、下地層として硬化型ウレタン樹脂や硬化型アクリル樹脂、硬化型エポキシ樹脂を介在させると、より好ましい。
ポリパラキシリレン誘導体は以下の化学式(2)で表され、化学式(3)で表される(2,2)−パラシクロファン化合物を化学蒸着することにより成膜される。
Figure 2009198420
尚、化学式(2)、(3)において、X、Xはハロゲン原子である。また、化学式(2)で表されるポリパラキシレン誘導体の具体例としては、ポリパラキシリレン、ポリモノクロロパラキシリレン、ポリジクロロパラキシリレン等が挙げられ、耐熱性は塩素置換基が多いものの方がより高く、磁気エンコーダの使用温度を想定すると、常用最高使用温度が120℃程度のポリモノクロロパラキシリレンと、150℃程度のポリジクロロパラキシリレンがより好適である。
また、化学式(2)で表されるポリパラキシリレン誘導体の一部の水素をフッ素化した下記一般式(4)で表される化合物は、常用最高使用温度が約250℃と非常に高く、好ましい防湿被膜である。
Figure 2009198420
このポリパラキシリレン誘導体からなる被膜の膜厚は0.5〜5μmが好ましく、膜厚が0.5μm未満では十分な防湿性を確保するのが困難となり、5μmを越えても防湿性は変わらずコスト高となり、好ましくない。
次に、上記の如く構成される磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニットの実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は磁気エンコーダが組み付けられた転がり軸受の一例を示す断面図であり、図2は磁気エンコーダ周辺の拡大図である。図示される転がり軸受10は、固定輪である外輪11と、回転輪(回転体)である内輪12と、外輪11及び内輪12により画成された環状隙間に転動自在に配置され且つ保持器14により円周方向に等間隔に保持された複数の転動体である玉13と、環状隙間の開口端部に配設された密封装置15と、内輪12の回転数を検出するための磁気エンコーダ20とを備えている。
密封装置15は、外輪11の内周面に固定されたシール部材16と、シール部材16よりも開口端部外側に配置され、且つ内輪12の外周面に固定されたスリンガ17とを備えている。密封装置15は、シール部材16とスリンガ17との摺接によって、環状隙間の開口端部を塞ぎ、埃等の異物が軸受内部に侵入することを防止すると共に、軸受内部に充填された潤滑剤が軸受外部に漏洩することを防止している。尚、シール部材16は、断面略L字形の円環状に形成された芯金18により、同じく断面略L字形の円環状に形成されたゴムシール19を補強して構成されており、ゴムシール19の先端部を分岐して複数のシールリップ19a,19b,19cとし、スリンガ17の表面に摺接させている。
一方、磁気エンコーダ20は、スリンガ17と、このスリンガ17の外側面(磁石接合面)に取り付けられ、上記磁性材料からなる磁極形成リング21とを有して構成されており、磁極形成リング21はスリンガ17を固定部材として内輪12に固定されている。
スリンガ17は、フェライト系ステンレス(SUS430等)、マルテンサイト系ステンレス(SUS410等)等の薄板からなり、内輪12に外嵌される円筒部17aと、円筒部17aの軸方向端部に湾曲部17bを介して連設され、半径方向外方に広がるように形成された鍔状のフランジ部17cを有する。磁極形成リング21は、図3に示すように、多極磁石であり、その周方向には、交互にN極とS極が形成されている。磁極形成リング21の極数は、70〜130極程度、好ましくは、90〜120極である。そして、この磁極形成リング27には磁気センサ(図示せず)が対面配置される。
(第2実施形態)
図4は、独立懸架式のサスペンションにおいて、従動輪を支持するための車輪支持用転がり軸受ユニット100への適用例を示す一部断面図である。
転がり軸受ユニット100の内輪107は、ハブ103の内端部に形成した小径段部106に外嵌され、ハブ103の内端部を径方向外方にかしめ広げることにより形成したかしめ部109により、ハブ103に結合固定されている。そして、このハブ103と内輪107は回転輪(回転体)102を構成している。また、車輪は、このハブ103の外端部で、固定輪である外輪101の外端部から突出した部分に形成した取付フランジ104に円周方向に所定間隔で植設されたスタッド105によって、結合固定自在としている。これに対して外輪101は、その外周面に形成した結合フランジ111により、懸架装置を構成する、図示しないナックル等に結合固定自在としている。外輪101とハブ103及び内輪107との間には、保持器113によって案内された複数の転動体である玉112が周方向に転動自在に配置されている。
更に、外輪101の両端部内周面と、ハブ103の中間部外周面及び内輪106の内端部外周面との間には、それぞれ密封装置15,115が設けられる。これら各密封装置15,115は、外輪101の内周面とハブ103及び内輪106の外周面との間で、各玉112を設けた空間と外部空間とを遮断している。そして、この密封装置15を構成するスリンガ17の外側面に磁極形成リング21が取り付けられ、図1の形態と同様に、磁気エンコーダ20を構成している。なお、磁気エンコーダ20の軸方向外方には磁気センサ114が対向配置されており、磁束密度の変化を検出して車輪の回転速度を検出ことができる。
(第3実施形態)
図5は同じく独立懸架式のサスペンションにおいて従動輪を支持するための車輪支持用転がり軸受ユニット100への適用例を示す一部断面図であり、図6は磁気エンコーダ周辺の拡大図である。尚、図4に示した車輪支持用転がり軸受ユニット100と同部材には同一の符号を付し、説明を省略する。
図示される車輪支持用転がり軸受ユニット100では、図4に示した車輪支持用転がり軸受ユニット100から密封装置15を取外し、その代わりにセンサキャップ115で全体を密封した構成となっている。センサキャップ115は、外輪101で囲まれた開口部を覆うように装着される樹脂製の蓋部材であり、センサ114はこのセンサキャップ115に固定されている。
(第4実施形態)
図7は、磁気エンコーダ20とセンサ114とがラジアル方向に対向した構成である。本実施形態の磁気エンコーダ20では、内輪107の内端部外周面に固定部材である円環状のスリンガ17が外嵌固定されており、内輪107から軸方向に延びるスリンガ17の内周面には、磁石部である磁極形成リング21が取り付けられている。また、外輪101の外周面には、静止部材であるカバー部材115が固定されており、カバー部材115に形成された開口部にはセンサ114が磁極形成リング21とラジアル方向に対向するようにして取り付けられている。
このような構成によれば、上記したようなアキシアル方向に対向する磁気エンコーダに比べて、同一スペースに対して被検出面の径を大きくできるので、ピッチ数が同一の場合、各ピッチ幅を大きくでき、製作しやすい。
また、図示の例では、磁気エンコーダ20は軸端に配置されているが、磁気ンコーダ20は列間に配置することもできる。列間に配置する場合は、耐熱性を考慮して使用材料を適宜選定する。また、軸橋に配置する場合も、耐水性を考慮して使用材料を適宜選定する。更に、図の例では、センサ114が磁気エンコーダ20の内方に配置されているが、外方に配置してもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、図8に示すように、磁極形成リング21をV字状に着磁したラジアル対向タイプとすることができる。尚、V字状の磁極において、左右の傾き(α、β)は必ずしも同一でなくてもよく、V字をなす磁極の境界も直線に限らず曲線や、波線状でもよい。また、着磁方法も一極または複数極毎に着磁を繰り返す単極着磁、または一度で全ての磁極を着磁する多極着磁の何れもよい。
また、磁極の形状は、図9に示すように、台形状でもよい。更には、上記した第4実施態様において、図10に示すような台形状に着磁した磁石部とすることもできる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に明確にする。
(実施例1〜3、比較例1〜2)
表1に示す如く、磁性体粉及びバインダを混練して磁性材料を調製し、内径66mm、外径76mm、厚さ0.9mmの円環状に成形して磁石部を作製した。また、フェライト系ステンレス(SUS430)製で、厚さ0.6mmの薄板を内径66mm、外径76mmの円環状に成形し、更に磁石接合面をエアーブラストにより算術平均高さRa1.3〜1.6μmに粗面化してスリンガを作製した。尚、その他の部分は未処理である(表面仕上げ2B;Ra0.06程度)。そして、磁石部とスリンガとを一液型エポキシ樹脂系接着剤(セメダイン製「super X2」)で貼り合わせ、24時間放置して接着剤を完全に硬化させて磁気エンコーダを作製した。
作製した磁気エンコーダを各10個、熱衝撃試験機に入れ、120℃で30分保持及び−40℃で30分保持を一サイクルとする熱負荷を与え、50サイクル毎に磁石部を観察して亀裂の発生の有無を確認した。結果を表1に示す。
Figure 2009198420
表1から、タフ化剤として分子構造中にグリシジルメタクリレートを3〜20質量%の割合で含有するエチレン系共重合体を用いることにより、ポリフェニレンサルファイド樹脂単独、更には加硫アクリルゴム超微粒子を添加する場合に比べて材料自体の曲げたわみ量が大きくなり、耐亀裂性が向上し、それにより耐熱衝撃性が格段に良くなることがわかる。また、酸化防止剤を含有させることにより、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びタフ化剤の劣化を効果的に防止し、信頼性が向上していることがわかる。向上効果は、アミン系酸化防止剤が特に大きいことがわかる。
磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニットの一例を示す断面図である。 図1の磁気エンコーダの周辺を示す断面図である。 円周方向に多極磁化された磁石部の一例を示す模式図である。 磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニットの一例を示す断面図である。 磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニットの他の例を示す断面図である。 図5に示す転がり軸受ユニットの磁気エンコーダの周辺を示す断面図である。 磁気エンコーダと磁気センサとをラジアル方向に配置した例を示す断面図である。 磁極の他の例を示す模式図である。 磁極の更に他の例を示す模式図である。 磁極の更に他の例を示す模式図である。 従来の磁気エンコーダを備える転がり軸受ユニットを示す断面図である。
符号の説明
10 転がり軸受ユニット
11 外輪
12 内輪
13 玉
14 保持器
15 密封装置
16 シール部材
17 スリンガ
20 磁気エンコーダ
21 磁極形成リング

Claims (3)

  1. 磁性体粉と該磁性体粉のバインダとを含む磁性材料を円環状に形成した磁石部と、磁性材料からなるスリンガとを一体接合してなる磁気エンコーダにおいて、
    前記バインダが、ポリフェニレンサルファイド樹脂と、分子構造中にグリシジルメタクリレートを3〜20質量%の割合で含有するエチレン系共重合体からなるタフ化剤とを含有することを特徴とする磁気エンコーダ。
  2. 前記バインダが、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、亜リン酸エスエル系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種を該バインダ全量の0.1〜2.0質量%含有することを特徴とする請求項1記載の磁気エンコーダ。
  3. 固定輪と、回転輪と、前記固定輪及び前記回転輪との間で周方向に転動自在に配設された複数の転動体とを備える転がり軸受ユニットにおいて、
    請求項1または2に記載の磁気エンコーダが、前記回転輪に固定されていることを特徴とする転がり軸受ユニット。
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