JP5567847B2 - 補償光学装置、補償光学方法、撮像装置 - Google Patents
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Description
OCTには、主に、TD−OCT(Time Domain OCT:タイムドメイン法)と、SD−OCT(Spectral Domain OCT:スペクトラルドメイン法)がある。
このとき、眼底を撮像する場合には、角膜や水晶体等の眼の光学組織を通して撮像をすることになる。
高解像度化が進むに連れて、これら角膜や水晶体の収差の影響が撮像画像の画質に大きく影響するようになってきた。
そこで、眼の収差を測定し、その収差を補正する補償光学系(AO:Adaptive Optics)を光学系に組み込んだ、AO−SLOやAO−OCTの研究が進められている。
中でも、非特許文献1にはシャックハルトマン波面センサー方式によって眼の波面を測定するAO−OCTが開示されている。
シャックハルトマン波面センサー方式とは、眼に測定光を入射し、その反射光をマイクロレンズアレイを通してCCDカメラに受光することによって波面を測定するものである。
そして、このように測定した波面を補正するように可変形状ミラーや、空間位相変調器のような波面補正デバイスを駆動し、それらを通して眼底の撮像を行うことにより、高分解能な撮像が可能となる。
測定光の収差を補正することによって撮像画像の信号強度や分解能が向上し、撮像する画質が向上するが、一方で収差測定のために測定光の一部を分岐することによって、眼底撮像の信号強度が低下してしまうこととなる。
眼に入射する光のパワーは安全規格上の制限があるため、分岐した光の信号強度を補うように入射光を強めることには限界がある。
一方で、AOは収差測定と収差補正を高速で繰り返すことによって行うので、収差測定も短時間であることが望ましく、そのためには収差測定に用いる光量を多くする必要がある。
収差測定に用いる光量を多くするためには、測定光のかなりの割合を収差測定に用いなければならず、本来の眼底撮像に供する光量が少なくなる。
さらに、収差補正による画質向上の程度は、撮像する分解能や被検眼の収差、収差の時間変動等の撮像条件によって異なる。
撮像条件によっては、収差測定のための光分岐による画質低下の影響が、収差補正による画質の向上の効果を上回ってしまい、AOを用いることによって逆に画質低下を招くこととなる。
本発明の補償光学装置は、光路に対して挿脱可能に設けられ、前記光路に挿入されている状態において測定光を照射した測定対象からの戻り光を第1の光と第2の光とに分割する分割手段と、
前記第1の光の収差を測定する収差測定手段と、
前記測定された収差に基づいて、前記測定光と前記戻り光とのうち少なくとも一方の収差を補正する収差補正手段と、
前記収差補正手段により補正された収差を示す情報に基づいて、前記分割手段を前記光路から離脱させる制御手段と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置は、上記した補償光学装置を有する前記測定対象を撮像する撮像装置であって、
前記収差補正手段による収差補正の効果を維持し且つ前記分割手段を前記光路から離脱した状態で前記測定対象からの戻り光に基づいて該測定対象の画像を取得する画像取得手段を有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置は、上記した補償光学装置を有する前記測定対象を撮像する撮像装置であって、
前記収差補正手段により収差補正をしながら且つ前記分割手段を前記光路に挿入した状態で前記第2の光に基づいて該測定対象の画像を取得する画像取得手段を有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置は、上記した補償光学装置を有する前記測定対象を撮像する撮像装置であって、
前記測定対象からの戻り光に基づいて該測定対象の画像を取得する画像取得手段を有し、
前記制御手段は、前記画像を得る差異に前記画像取得手段が出力した信号が所定の条件を満たさない場合に前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする。
また、本発明の補償光学方法は、光路に対して挿脱可能であって前記光路に挿入されている状態にある分割手段により測定光の測定対象からの戻り光が分割された、第1の光と第2の光における第1の光に基づいて、前記測定対象で生じる収差を測定する工程と、
前記測定された収差に基づいて、前記測定光と前記記戻り光とのうちの少なくとも一方の収差を補正する工程と、
前記収差を補正する工程において補正された収差を示す情報に基づいて、前記分割手段を前記光路から離脱させる工程と、
を有することを特徴とする。
該補償光学系に導かれた戻り光の収差を該補償光学系で測定して該収差を補正し、前記被検査物の光画像を撮像する撮像装置を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
但し、本発明は以下に説明する各実施例の構成よって何ら限定されるものではない。
実施例1として、本発明の構成を補償光学機能付きの走査型レーザ検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)に適用した構成例について説明する。
図1は、上記SLOの構成例を示す模式図である。
図1において、101は光源であり、本実施例では波長840nmのSLD光源(Super Luminescent Diode)を用いた。
光源101の波長は特に制限されるものではないが、眼底撮像用としては被検者の眩しさの軽減と分解能維持のために、800〜1500nm程度が好適に用いられる。
本実施例においてはSLD光源を用いたが、このような光源の他にレーザ等を用いることができる。
また、本実施例では、眼底撮像と波面測定のための光源を共用しているが、それぞれを別光源とし、途中で合波する構成としてもよい。
照射された測定光105はビームスプリッタからなる光分岐部104を透過し、分解能設定部117に入射する。
分解能設定部117は、入射した測定光105のビーム径を変化させて出射することにより撮像分解能を変更する。
ビーム径を7mmから1mm程度の範囲で変更することにより、眼底上の3μmから20μm程度の撮像分解能の設定が可能となる。
撮像分解能は、広画角撮像時にデータ量を抑えるために分解能を低くしたり、被検眼の収差に応じて分解能を調整したり、撮像方法によっては細いビームで透過率の低い部位を避けて撮像したりするために、可変としておくことが有用である。
分解能設定部117としては複数のレンズを用いてその位置関係を調整する構成等が好適に用いられ、分解能を連続的に変更する構成や離散的に変更する構成が可能である。
分解能設定部117を透過した測定光105は、補償光学系に導光される。
補償光学系は、光分岐部(実施例において分岐手段に相当する)106、波面センサー(実施例において収差測定手段に相当する)115、波面補正デバイス108(実施例において収差補正手段に相当する)および、それらに導光するための反射ミラー107−1〜4から構成される。光分岐部106と波面センサー115は、不図示のステージ上に設置され、後述するように測定光105の光路中に挿入される構成となっている。
ここで、反射ミラー107−1〜4は、少なくとも眼の瞳と波面センサー115、波面補正デバイス108とが光学的に共役関係になるように設置されている。また、光分岐部106として、本実施例ではビームスプリッタを用いた。
光分岐部106を透過した測定光105は、波面補正デバイス108に入射する。
波面補正デバイス108で反射された測定光105は、反射ミラー107−3に出射する。
図2(a)に、空間位相変調器の一例として本実施例で用いられる反射型液晶光変調器の模式図を示す。
この反射型液晶光変調器は、ベース部122とカバー123に挟まれた空間に液晶分子125が封入されている構造となっている。
ベース部122には複数の画素電極124を有し、カバー123には不図示の透明な対向電極を有している。
電極間に電圧を印加していない場合には、液晶分子は125−1のような配向をしており、電圧を印加すると125−2のような配向状態に遷移し、入射光に対する屈折率が変化する。
各画素電極の電圧を制御して各画素の屈折率を変化させることにより、空間的な位相変調が可能となる。
例えば、入射光126が素子に入射した場合、液晶分子125−2を通過する光は液晶分子125−1を通過する光よりも位相が遅れ、結果として図中127で示すような波面を形成する。
一般的に、反射型液晶光変調器は、数万〜数十万個の画素から構成されている。また、液晶素子は偏光特性を有するため、入射光の偏光を調整するための偏光素子を具備することもある。
可変形状ミラーとは、局所的に光の反射方向を変えることができるものであり、様々な方式のものが実用化されている。
例えば、その断面は図2(b)に示すようなデバイスである。
入射光を反射する変形可能な膜状のミラー面129と、ベース部128と、これらに挟まれて配置されたアクチュエータ130と、ミラー面129を周囲から支持する不図示の支持部から構成されている。
アクチュエータ130の動作原理としては、静電力や磁気力、圧電効果を利用したものがあり、動作原理によってアクチュエータ130の構成は異なる。
アクチュエータ130はベース部128上に二次元的に複数配列されていて、それらを選択的に駆動することにより、ミラー面129を自在に変形できるようになっている。一般的に可変形状ミラーは数十〜数百のアクチュエータで構成されている。
本実施例では走査光学系109に主走査用(眼底水平方向)と副走査用(眼底垂直方向)として2つのガルバノスキャナーを用いた。
より高速な撮像のために、走査光学系109の主走査側に共振スキャナーを用いることもある。
構成によっては、走査光学系109内の各スキャナーを光学的な共役状態にするために、各スキャナーの間にミラーやレンズといった光学素子を用いる場合もある。
走査光学系109で走査された測定光105は、接眼レンズ110−1および110−2を通して眼111に照射される。
眼111に照射された測定光は、眼底で反射もしくは散乱されて戻り光となる。接眼レンズ110−1および110−2の位置を調整することによって、眼111の視度にあわせて最適な照射を行うことが可能となる。
ここでは、接眼部にレンズを用いたが、球面ミラー等で構成してもよい。
眼111の網膜から反射もしくは散乱された戻り光による反射散乱光は、入射した時と同様の経路を逆向きに進行し、光分岐部106によって一部は波面センサー115に反射され、光線の波面を測定するために用いられる。
図2(c−1)にシャックハルトマンセンサーの模式図を示す。
131が波面を測定する光線であり、マイクロレンズアレイ132を通して、CCDセンサー133上の焦点面134に集光される。
図2(c−1)のA−A’で示す位置から見た様子を示す図が、図2(c−2)である。
マイクロレンズアレイ132が、複数のマイクロレンズ135から構成されている様子を示したものである。光線131は各マイクロレンズ135を通してCCDセンサー133上に集光されるため、光線131はマイクロレンズ135の個数分のスポットに分割されて集光される。
各マイクロレンズを通過した光線はスポット136に集光される。そして、この各スポット136の位置から、入射した光線の波面を計算する。
例えば、図2(e−1)に球面収差を持つ波面を測定した場合の模式図を示す。光線131は137で示すような波面で形成されている。
光線131はマイクロレンズアレイ132によって、波面の局所的な垂線方向の位置に集光される。
この場合のCCDセンサー133の集光状態を図2(e−2)に示す。
光線131が球面収差を持つため、スポット136は中央部に偏った状態で集光される。
この位置を計算することによって、光線131の波面が分かる。本実施例では波面センサーにシャックハルトマンセンサーを用いたが、それに限定されるものではなく、曲率センサーのような他の波面測定手段や、結像させた点像から逆計算で求めるような方法を用いてもよい。
光強度センサー114で光は電気信号に変換され、制御部118によって眼底画像として画像に構成されて、ディスプレイ119に表示される。
波面センサー115は補償光学制御部116に接続され、受光した波面を補償光学制御部116に伝える。
波面補正デバイス108も補償光学制御部116に接続されており、補償光学制御部116から指示された変調を行う。
補償光学制御部116は波面センサー115から取得した波面を基に、収差のない波面へと補正するような変調量を計算し、波面補正デバイス108にそのように変調するように指令する。
波面の測定と波面補正デバイスへの指示は繰り返し処理され、常に最適な波面となるようにフィードバック制御が行われる。
収差補正を行うためには光分岐部106において、信号光の一部を分岐して波面を測定しなければいけない。
本実施例では、光分岐部106に分岐比80(透過):20(反射)のビームスプリッタを用いたので、波面センサー115で波面を測定するために光を分岐する場合には、眼底撮像の光量が20%低下する。
収差補正を行うことによる画質向上の効果が、この20%の光量減少を上回る場合に、眼底撮像中も補正を行う。
光分岐部106を測定光105の光路に対して挿入することによって、光路の分岐を行う。
まず、ステップS101で制御を開始する。
次に、ステップS102で分解能を設定する。
具体的には、制御部118が分解能制御部120を通して分解能設定部117を制御し、測定光のビーム径を変更することにより設定する。
次に、ステップS103で収差補正を行うために、制御部118の制御により光分岐部106を測定光105の光路中に挿入し、波面センサーへ光を分岐する。そして、次のステップS104以降においては、補償光学系による処理が行われる。
補償光学系の基本的なフローは、光分岐部106で波面センサー115に光を分岐した状態において、ステップS104で波面センサー115により収差を測定する。
次に、ステップS106で上記測定した結果を元にして、補償光学制御部116により補正量を計算する。
次に、ステップS107で補償光学制御部116の制御に基づき補正デバイス108を駆動する。補償光学系の処理として、これらが繰り返し行われる。
その際、ステップS104で収差を測定した後に、ステップS105で収差量が予め設定された基準値を下回っているかを、補償光学制御部116により確認する。
基準値は装置固有の値でも良いし、撮像者が設定しても良い。
収差量が基準値を上回っている場合(収差量が所定値以上の場合)には、ステップS106以降の処理が実行される。
ステップS108では、前記20%の光量ロスがあっても、収差補正を継続することによって画質が向上するかを判断する。
本実施例では、画質向上の判断に、分解能と撮像信号強度という二つのパラメータを用いた。
収差を補正することによって、分解能が向上し、受光効率が向上することによって画質は向上するが、一方で分岐によって受光量は20%減少し、この光量減少に伴って画質は低下する。この両者から最終的に画質が向上するか否かを判断する。
これらの判断は、本実施例のSLOの制御を司る制御部118で行われる。このような制御部118はコンピュータシステムにより構成することができる。
図4(A)、図4(B)は信号強度のみで画質向上を判断する例である。
図4(A)において、138−1が収差補正を行わない場合の信号強度である。収差測定のために測定光を分岐することによって、受光量は20%低下し、信号強度は元の強度138−1から138−2に示す強度まで低下する。
但し、収差補正を行うと受光効率が向上して信号強度は増加するので、138−3に示す強度まで信号強度は向上する。
すなわち、補正しない場合の信号強度138−1よりも補正した場合の信号強度138−3の方が上回っているので、補正を継続した方が画質向上すると判断される。
一方で、補正による信号強度の向上が見込めない場合を、図4(B)に示す。
図4(A)と同じように、補正のために光分岐を行うため、元の信号強度139−1から139−2まで受光強度が低下する。
そして、補正を行うことによって信号強度は向上するが、補正による効果が小さく139−3の強度までしか向上しない。この場合には、元の強度139−1よりも139−3の方が、受光強度が低く画質低下が生じるので、補正を継続することによるメリットはなく、補正を行わないと判断する。
図4(C)において、140−1が補正しない場合の信号強度と分解能である。収差補正のために測定光を分岐しても分解能は低下せずに受光量のみ低下するので、信号強度は140−2で示す状態となる。
そして、補正を行うと受光効率が向上して信号強度が向上しかつ、分解能も向上し、140−3で示す状態となる。
画質の向上は、信号強度と分解能を統合して判断するので、画質向上の判断は図4(C)、図4(D)の破線141で示すような閾値を基準とする。
140−3は初期の140−1と対比して、信号強度はそれ程向上していないが分解能は向上しており、判断の基準となる閾値を超えているため、補正の効果があると判断される。
一方で、図4(D)においては、初期142−1から光分岐によって142−2まで信号強度は低下し、補正を行うことによって142−3で示す位置まで信号強度と分解能が向上する。
しかし、142−3では判断基準である閾値に未達なので、補正の効果がないと判断される。
信号強度と分解能を合わせた画質の閾値は、信号強度と分解能にそれぞれに重み付けをして決定すればよく、重み付けの比率は取得したい画像によって異なる。例えば、高倍率撮像に適した強度向上よりも分解能向上を優先するモードと、広範囲撮像に適した分解能よりも信号強度の向上を優先するようなモードを具備しておき、操作者に選択させても良い。
また、図4においては、閾値が画質の初期値を含むように設定しているが、求める画質の程度によっては、閾値を初期値よりも高画質になるように設定しても良い。
ここで、ステップS108で補正の効果が分岐の光量ロスを上回ると判断される場合には、ステップS117に進み、上回らないと判断された場合には、ステップS109に進み波面センサー115への光分岐を解除する。
ステップS109で光分岐を解除した時に、補正デバイス108の形状は、解除する直前の形状を維持する。
これにより、収差補正の効果をある程度維持しつつ分岐ロスを抑えた構成とすることができる。
また、補正デバイス108を、デバイスの初期状態となるようにしてもよい。この場合、収差補正による波面補正の影響を受けることはなくなる。
そして、ステップS110で撮像を行い、ステップS111で撮像終了要求を確認する。
終了要求が来ていなければステップS110に戻って撮像を繰り返し、終了要求がきている場合にはステップS112に進み制御を終了する。
終了要求が来ていない場合には、ステップS113からステップS116の補償光学系の処理が行われ、再度ステップS117で撮像を行う。
本実施例においては、撮像と収差補正の処理をシーケンシャルに行っているが、両者を平行して行うことも可能である。
ステップS118で終了要求が確認された場合には、ステップS119で光分岐を解除し、ステップS112で制御を終了する。
このように本実施例によれば、撮像条件に応じて、補償光学系の動作を適切に制御することが可能となる。
また、撮像する条件に応じた適切な収差補正を実行することができ、高画質な眼底撮像が可能となり、また、収差補正による画質の低下を防止することができる。
また、収差補正の効果がないと判断した時に、無駄な光となる収差を測定するための光の分岐を止めることが可能となる。
実施例2として、本発明の構成をSLOに適用した実施例1とは異なる構成例について説明する。
本実施例の装置構成は、図1の模式図で示す実施例1の構成と同様である。
本実施例は、予め動的な補正が必要なビーム径の閾値を決めておき、測定ビーム径によって収差測定へ分岐するか否かを判断するようにした点に特徴を有する例である。
まず、ステップS101で制御を開始する。
次に、ステップS102で分解能を設定する。
次に、ステップS103で収差補正を行うために、光分岐部106を測定光105の光路中に挿入し、波面センサー115へ光を分岐する。
そして、次のステップS104以降において、補償光学系の処理を行う。
補償光学系の基本的なフローは実施例1と同様で、光分岐部106で波面センサー115に光を分岐した状態において、ステップS104からS107を繰り返すことによって行う。
その際、ステップS104で収差を測定した後に、ステップS105で収差量が予め設定された基準値を下回っているかを補償光学制御部116により確認する。
収差量が基準値を上回っている場合には、ステップS106以降の処理が実行される。
ステップS120では、測定しているビーム径が、動的補正が必要なビーム径閾値を超えているかどうかを確認する。
測定するビーム径が大きいほど収差が画質に及ぼす影響が大きく、収差を補正する効果が大きい。
反対に測定するビーム径が小さいと、収差補正を行ってもそれ程画質は向上せず、光分岐による受光量の損失の方が大きくなってしまう。
このため、測定しているビーム径によって、動的な収差補正が必要かどうか判断可能である。
動的補正を必要とするビーム径の閾値は、眼が持つ一般的な収差情報、装置の補正性能から算出しても良いし、測定した測定眼の収差情報も併せて算出することも可能である。
測定するビーム径が閾値を超えている場合にはステップS117に進み、上回らないと判断された場合には、ステップS109に進む。
ステップS109では波面センサー115への光分岐を解除し、ステップS110で撮像を行う。
ステップS111で撮像終了要求を確認し、終了要求が来ていなければステップS110に戻って撮像を繰り返し、終了要求がきている場合にはステップS112に進んで制御を終了する。
終了要求が来ていない場合には、ステップS113からステップS116の補償光学系の処理が行われ、再度ステップS117で撮像を行う。
本実施例においては、撮像と収差補正の処理をシーケンシャルに行っているが、両者を平行して行うことも可能である。
ステップS118で終了要求が確認された場合には、ステップS119で光分岐を解除し、ステップS112で制御を終了する。
このように本実施例によれば、撮像条件に応じて、補償光学系の動作を適切に制御することが可能となる。
また、撮像する条件に応じた適切な収差補正を実行することができ、高画質な眼底撮像が可能となり、また、収差補正による画質の低下を防止することができる。特に、収差補正の有効性を予め決めた値で判断するために、計算負荷を減らすことができる。
実施例3として、本発明の構成をSLOに適用した実施例1、2とは異なる構成例について、図6を用いて説明する。
本例の装置構成は、図1の模式図で示す実施例1の構成と基本的に同様であるが、分解能設定部117は具備しておらず、特定の分解能で測定されるように構成されている。
つぎに、本実施例の光画像撮像装置の制御方法の手順について、図7のフローチャートを用いて説明する。
本実施例は、収差補正中に測定した収差の時間変動から、動的補正の画質向上効果を判断するようにした点に特徴を有する例である。
まず、ステップS101で制御を開始する。
次に、ステップS103で収差補正を行うために、光分岐部106を測定光105の光路中に挿入し、波面センサー115へ光を分岐する。
そして、次のステップS104以降において、補償光学系の処理を行う。
補償光学系の基本的なフローは実施例1と同様で、光分岐部106で波面センサー115に光を分岐した状態において、ステップS104からS107を繰り返すことによって行う。
ここで、ステップS104で収差を測定した後に、ステップS121で測定した収差データを不図示の記録装置に記録する。
そして、ステップS105で測定した収差量が予め設定された基準値を下回っているかを補償光学制御部116により確認し、収差量が基準値を上回っている場合には、ステップS106以降の処理が実行される。
ステップS122では、ステップS121で記録したデータから収差の時間変動を算出し、時間変動が閾値を超えているかどうかを確認する。
時間変動が大きいと、眼底撮像中に収差が大きく変動して画質が大きく低下する可能性があるので、動的な収差補正が必要である。
一方で、収差の変動量が少なくあまり変動していない場合には、眼底撮像中も収差が大きく変動することはないと思われるので、動的な収差補正は必要ないと判断する。
収差の変動が閾値を超えている場合にはステップS117に進み、上回らないと判断された場合には、ステップS109に進む。
ステップS109では、戻り光の光路に挿入されていた分岐部を該光路から離脱(抜去)するように分岐制御して波面センサー115への光分岐を解除し、ステップS110で撮像を行う。
ステップS111で撮像終了要求を確認し、終了要求が来ていなければステップS110に戻って撮像を繰り返し、終了要求がきている場合にはステップS112に進んで制御を終了する。
終了要求が来ていない場合には、ステップS113からステップS116の補償光学系の処理が行われ、再度ステップS117で撮像を行う。
本実施例においては、撮像と収差補正の処理をシーケンシャルに行っているが、両者を平行して行うことも可能である。
ステップS118で終了要求が確認された場合には、ステップS119で光分岐を解除し、ステップS112で制御を終了する。
このように本実施例によれば、撮像条件に応じて、補償光学系の動作を適切に制御することが可能となる。
また、撮像する条件に応じた適切な収差補正を実行することができ、高画質な眼底撮像が可能となり、また、収差補正による画質の低下を防止することができる。
特に、実際の画質に対する影響を考慮することにより、より正確な有効性の判断が可能となる。
実施例4として、本発明の構成を補償光学機能付きの光干渉断層装置(OCT:Optical Coherent Tomography)に適用した構成例について説明する。
図8は、上記OCTの構成例を示す模式図である。
図8において、101は光源であり、本実施例では波長840nmのSLD光源を用いた。
光源101は低干渉性のものであれば良く、波長幅30nm以上のSLDが好適に用いられる。また、チタンサファイアレーザなどの超短パルスレーザなどを光源に用いることもできる。
光源101から照射された光は、単一モード光ファイバー102を通って、ファイバーカプラー143まで導光される。
ファイバーカプラー143によって、信号光経路144と参照光経路145に分岐される。ファイバーカプラーは10:90の分岐比のものを使用し、投入光量の10%が信号光経路144に行くように構成する。
コリメータ103以降の構成は実施例1と同様であり、補償光学系や走査光学系を通して眼111に照射し、眼111からの反射散乱光は再度同様の経路をたどって光ファイバー144に導光されてファイバーカプラー143に到達する。
但し、本実施例では、分解能設定部117を光分岐部106よりも眼の方向に設置した。
これは、分解能を変更しても波面センサー115に入るビーム径を変更しないためである。
ファイバーカプラー143に到達した信号光と参照光は合波され、光ファイバー148を通して分光器149に導光される。
分光器149によって分光された干渉光情報をもとに、制御部118によって眼底の断層像が構成される。
制御部118は光路長可変部147を制御し、所望の深さ位置の画像を取得できる。
実施例1と同様に波面センサー115で波面を測定し、その波面収差をキャンセルするように波面補正デバイス108を駆動する。
OCTでは断層画像が得られるが、入射光のNAを大きくして分解能を高めると被写界深度が浅くなり、一つの断層画像中に合焦している部分と合焦していない部分が出来てしまう。
そこで、深さ方向の撮像範囲を被写界深度程度の幅に分割して撮像した後に、個々の深さの画像を結合し、全範囲でフォーカスが合った断層画像を得るという方法を取ることも可能である。
この場合、図3のステップS102で変更された分解能に応じて1回の撮像で取得する深さ方向の範囲を変更することにより、合焦範囲の広い画像を速く容易に撮像することが可能となる。
このように本実施例によれば、撮像条件に応じて、補償光学系の動作を適切に制御することが可能となる。
また、眼底断層撮像においても適切な収差補正方法を実行することができ、高画質な眼底断層撮像が可能となり、また、画質の低下を防止することができる。
また、以上で説明した各実施例での光画像撮像装置の制御方法において、これらの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを作製し、このプログラムを記憶媒体に記憶させ、コンピュータに読み取らせるように構成することができる。
102:光ファイバー
103:コリメータ
104:光分岐部
105:測定光
106:光分岐部
107:反射ミラー
108:波面補正デバイス
109:走査光学系
110:接眼レンズ
111:眼
112:コリメータ
113:光ファイバー
114:光強度センサー
115:波面センサー
116:補償光学制御部
117:分解能設定部
118:制御部
119:ディスプレイ
148:光ファイバー
149:分光器
Claims (25)
- 光路に対して挿脱可能に設けられ、前記光路に挿入されている状態において測定光を照射した測定対象からの戻り光を第1の光と第2の光とに分割する分割手段と、
前記第1の光の収差を測定する収差測定手段と、
前記測定された収差に基づいて、前記測定光と前記戻り光とのうち少なくとも一方の収差を補正する収差補正手段と、
前記収差補正手段により補正された収差を示す情報に基づいて、前記分割手段を前記光路から離脱させる制御手段と、
を有することを特徴とする補償光学装置。 - 前記補正された収差を示す情報が、前記測定された収差量であり、
前記制御手段が、前記測定された収差量に基づいて前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項1に記載の補償光学装置。 - 前記補正された収差を示す情報が、前記測定された収差の時間に対する変動量であり、
前記制御手段が、前記変動量が所定値未満の場合に前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項1に記載の補償光学装置。 - 前記補正された収差を示す情報が、前記測定された収差量及び前記測定された収差の時間に対する変動量であり、
前記制御手段が、前記測定された収差量及び前記測定された収差の時間に対する変動量に基づいて前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項1に記載の補償光学装置。 - 前記測定光の径を変更する変更手段を有し、
前記制御手段は、前記変更された径が所定値未満の場合に前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の補償光学装置。 - 前記変更手段が、前記測定された収差量が所定値以上の場合に前記補正された光の径を小さくすることを特徴とする請求項5に記載の補償光学装置。
- 前記収差測定手段が、シャックハルトマンセンサーによって構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の補償光学装置。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の補償光学装置を有する前記測定対象を撮像する撮像装置であって、
前記収差補正手段による収差補正の効果を維持し且つ前記分割手段を前記光路から離脱した状態で前記測定対象からの戻り光に基づいて該測定対象の画像を取得する画像取得手段を有することを特徴とする撮像装置。 - 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の補償光学装置を有する前記測定対象を撮像する撮像装置であって、
前記収差補正手段により収差補正をしながら且つ前記分割手段を前記光路に挿入した状態で前記第2の光に基づいて該測定対象の画像を取得する画像取得手段を有することを特徴とする撮像装置。 - 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の補償光学装置を有する前記測定対象を撮像する撮像装置であって、
前記測定対象からの戻り光に基づいて該測定対象の画像を取得する画像取得手段を有し、
前記制御手段は、前記画像を得る際に前記画像取得手段が出力した信号が所定の条件を満たさない場合に前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする撮像装置。 - 前記分割手段が前記光路から離脱した状態で前記画像取得手段が前記戻り光に基づいて出力した信号と前記分割手段を前記光路に挿入した状態で前記画像取得手段が前記戻り光に基づいて出力した信号との比較結果に応じて、前記制御手段が前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
- 前記所定の条件は、前記測定光の径と前記信号の強度とのうち少なくとも一方であることを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
- 光路に対して挿脱可能に設けられ、前記光路に挿入されている状態において測定光を照射した被検眼からの戻り光を第1の光と第2の光とに分割する分割手段と、
前記第1の光の収差を測定する収差測定手段と、
前記測定された収差に基づいて、前記測定光と前記戻り光とのうち少なくとも一方の収差を補正する収差補正手段と、
前記分割手段が前記光路に挿入されている場合には前記第2の光に基づいて前記被検眼の画像を取得し、前記分割手段が前記光路から離脱されている場合には前記戻り光に基づいて前記被検眼の画像を取得する画像取得手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。 - 光路に対して挿脱可能であって前記光路に挿入されている状態にある分割手段により測定光の測定対象からの戻り光が分割されて得た第1の光と第2の光における第1の光に基づいて、前記測定対象で生じる収差を測定する工程と、
前記測定された収差に基づいて、前記測定光と前記記戻り光とのうちの少なくとも一方の収差を補正する工程と、
前記収差を補正する工程により補正された収差を示す情報に基づいて、前記分割手段を前記光路から離脱させる工程と、
を有することを特徴とする補償光学方法。 - 前記補正された収差を示す情報が、前記測定された収差量であり、
前記離脱させる工程において、前記測定された収差量に基づいて前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項14に記載の補償光学方法。 - 前記補正された収差を示す情報が、前記測定された収差の時間に対する変動量であり、
前記離脱させる工程において、前記変動量が所定値未満の場合に前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項14に記載の補償光学方法。 - 前記補正された収差を示す情報が、前記測定された収差量及び前記測定された収差の時間に対する変動量であり、
前記離脱させる工程において、前記測定された収差量及び前記測定された収差の時間に対する変動量に基づいて前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項14に記載の補償光学方法。 - 前記測定光の径を変更する工程を有し、
前記離脱させる工程において、前記変更された径が所定値未満の場合に前記分割手段を前記光路から離脱させることを特徴とする請求項14に記載の補償光学方法。 - 前記変更する工程において、前記測定された収差量が所定値以上の場合に前記測定光の径を小さくすることを特徴とする請求項18に記載の補償光学方法。
- 前記戻り光或いは前記戻り光の一部に基づいて前記測定対象の画像を取得する手段が前記画像に応じた撮像信号を出力する工程を有し、
前記離脱させる工程における前記分割手段の離脱は、
前記分割手段による光量減少時の前記撮像信号と、前記収差の補正の実行後の前記撮像信号とを対比の結果に基づいて、行われることを特徴とする請求項14乃至19のいずれか1項に記載の補償光学方法。 - 請求項14乃至20のいずれか1項に記載の補償光学方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
- 請求項14乃至20のいずれか1項に記載の補償光学方法の各工程を有し、前記測定対象を撮像する撮像方法であって、
前記収差の補正の効果を維持し且つ前記分割手段を前記光路から離脱した状態で前記測定対象からの戻り光に基づいて該測定対象の画像を取得する工程を有することを特徴とする撮像方法。 - 請求項14乃至20のいずれか1項に記載の補償光学方法の各工程を有し、前記測定対象を撮像する撮像方法であって、
前記収差の補正をしながら且つ前記分割手段を前記光路に挿入した状態で前記第2の光に基づいて該測定対象の画像を取得する工程を有することを特徴とする撮像方法。 - 光路に対して挿脱可能であって前記光路に挿入されている状態にある分割手段により測定光を照射した被検眼からの戻り光が分割されて得た第1の光と第2の光のうち第1の光の収差を測定する工程と、
前記測定された収差に基づいて、前記測定光と前記戻り光とのうち少なくとも一方の収差を補正する工程と、
前記分割手段が前記光路に挿入されている場合には前記第2の光に基づいて前記被検眼の画像を取得し、前記分割手段が前記光路から離脱されている場合には前記戻り光に基づいて前記被検眼の画像を取得する工程と、
を有することを特徴とする撮像方法。 - 請求項22乃至24のいずれか1項に記載の撮像方法の各工程をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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