JP5559025B2 - ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法 - Google Patents

ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法、並びにその製造方法で得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を用いた繊維複合材、繊維質基材積層体及び人工皮革に関する。
(メタ)アクリル系重合体は、有用な高分子として広く利用されている。この(メタ)アクリル系重合体を製造するにあたり、製造環境の点、及び使用上の安全面から、水系で重合反応を行う乳化重合法がよく用いられる。
しかし、乳化重合は、乳化剤を用いるため、得られる樹脂組成物の物性や耐水性に悪影響を与える場合がある。それを解決するために、無乳化剤乳化重合や反応性乳化剤を使用する方法や、自己分散性樹脂による方法などにより、物性や耐水性を向上させる手法が行われている。
また、ウレタン樹脂の製造に際しては、有機溶剤が多量に用いられることが多く、作業環境などで問題となることがあり、自己分散性の水性ポリウレタン樹脂の有用性が注目されている。このような自己分散性の水性ポリウレタン樹脂については、本来有する基材への密着性、耐摩耗性、耐寒性等の長所を活かしつつ、耐候性や耐溶剤性の欠点を補うため、近年、アクリル樹脂との複合による機能化が行われている。
ウレタン樹脂は、ジオールと多価イソシアネートとを重縮合させてなる樹脂であり、(メタ)アクリル系重合体とは異なる性質を有しており、両者を複合化することで双方の樹脂の利点を活かすものとすることができる。(メタ)アクリル系重合体とウレタン樹脂との複合樹脂を得るには、両者を単純に混合する方法(いわゆるポリマーブレンド)の他に、ウレタン樹脂と(メタ)アクリル系重合体とは重合の仕方が違うため、予め重合させたウレタン樹脂のエマルジョンにアクリル系単量体を添加して、ウレタン樹脂をシードとしてアクリル系単量体の重合を行う方法が知られている。
また、反応容器に仕込んだウレタンの水分散体に、アクリル系単量体を加えてシード重合してウレタン−アクリル系重合体の粒子内混合物のエマルジョンを得、次いで、さらにこのエマルジョンに、アクリル系単量体を添加して、前記の粒子内混合物をシードとして重合したウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合エマルジョンが知られている(特許文献1、請求項1、[0007])。
さらに、芯部を構成するアクリル系重合体と殻部を構成するウレタン系重合体からなる複合樹脂が知られている(特許文献2)。そして、この複合樹脂の製造方法としては、反応容器に仕込んだウレタン系重合体のエマルジョンに、アクリル系単量体を添加して乳化重合する方法、反応容器に仕込んだアクリル系重合体の存在下に、ラジカル重合基を有するウレタン系プレポリマーや、ウレタン系重合体をウレタン系単量体に溶解したものを添加して重合する方法等が記載されている。
特開2005−120304号公報 特開平9−111132号公報
ところで、繊維処理用に、ウレタン樹脂やアクリル系樹脂等が用いられる場合があるが、ウレタン樹脂を用いると、耐洗濯性が十分でないことがあり、また、アクリル系樹脂を用いると、摩擦堅牢度、耐ブロッキング性、柔軟性が不十分となる傾向がある。
これに対し、特許文献1や2に記載の方法で得られるエマルジョンを用いることが考えられる。しかし、この場合、ウレタン樹脂単独やアクリル系樹脂単独の場合に比べ、それぞれの問題点は多少改善されるものの、十分ではない。
また、人工皮革にウレタン樹脂が使用されているが、コスト面の問題からウレタン樹脂の使用量を減らすことが検討されている。この方法としては、例えばアクリル樹脂等の他の樹脂をブレンドする方法があげられる。
しかし、ウレタン樹脂とアクリル樹脂とを単純にブレンドした場合、耐候性や人工皮革としての実用上の強度や屈曲性、耐加水分解性が不十分となる傾向がある。
そこで、この発明は、ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を製造するにあたり、繊維処理用に使用した場合において、十分な耐洗濯性、摩擦堅牢度、耐ブロッキング性、柔軟性を得ること、及び人工皮革として使用した場合において、十分な強度と屈曲性を有するとともに、耐加水分解性も優れたものを得ることを目的とする。
この発明は、1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を予め分散した原料乳化液を、水系媒体中に逐次的又は連続的に添加することにより、ウレタン樹脂の存在下で、上記1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を乳化重合して、(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を製造する方法であって、添加される上記原料乳化液として、互いに異なる組成を有する少なくとも2種類の原料乳化液を用い、一つの原料乳化液の添加が終了した後、次の原料乳化液の添加を開始し、上記の少なくとも2種類の原料乳化液のうち、少なくとも最初に上記反応容器中に添加する原料乳化液にはウレタン樹脂を含有させることにより、上記の課題を解決したのである。
この発明にかかる製造方法によると、複数種の原料乳化液を、順次添加していくことにより、得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を繊維処理用に使用した場合に、十分な耐洗濯性、摩擦堅牢度、耐ブロッキング性、柔軟性を得ることができる。さらに、人工皮革として使用した場合に、十分な強度と屈曲性を持ち、しかも耐加水分解性の優れた複合樹脂を得ることができる。
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、反応容器中に、1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を予め分散した原料乳化液を、水系媒体に逐次的又は連続的に添加することにより、ウレタン樹脂の存在下で、上記1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を乳化重合して、(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を製造する方法にかかる発明である。なお、この発明において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を示す。
上記(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル基を有する単量体である。その中でも、主成分として用いる単量体としては、ウレタン樹脂の末端と反応するのを防止するため、イソシアネート基に対して反応性を有さない単量体、すなわち、活性水素基を含まない単量体が好ましい。他方、乳化重合の安定化のためには、親水性基(水酸基、カルボキシル基、エーテル基等)を有する単量体を併用することが好ましい。
なお、主成分とは、その使用量が全単量体量の50%を超えるか、又は3種類以上の単量体を用いる場合、その中で最も使用量が多いものを言う。
上記の(メタ)アクリル系単量体のうち(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸s−ペンチル、(メタ)アクリル酸1−エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸t−ペンチル、(メタ)アクリル酸3−メチルブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−ヘプチル、(メタ)アクリル酸3−ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチルが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素原子数が1〜24の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、とりわけアルキル基の炭素原子数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
上記の親水性基を有する単量体としては、以下の単量体を例示することができる。カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2−アクリロイルオキシプロピオン酸等があげられる。
また、水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル系単量体等が挙げられる。
さらに、エーテル基含有単量体としては、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、アリルアルコール等が挙げられる。
上記親水性基含有単量体の含有割合は、単量体混合物に含有される単量体の全量を100重量部としたとき、0.5重量部以上がよく、1重量部以上が好ましい。0.5重量部より少ないと、乳化重合の安定性が十分に向上しない傾向がある。一方、含有割合の上限は、20重量部がよく、15重量部が好ましい。20重量部より多いと、重合中にゲル化しやすくなり、重合が困難となる場合がある。
これらの成分は1種類のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
また、上記の(メタ)アクリル系単量体混合液には、(メタ)アクリル系単量体とともに、重合性二重結合を有するその他の単量体を含んでいてもよい。このようなその他の単量体としては、エステル基含有ビニル単量体、スチレン誘導体、ビニルエーテル系単量体が挙げられる。
上記エステル基含有ビニル単量体の具体例としては、炭素原子数が1〜8の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステル類、酢酸ビニル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、(メタ)アクリル酸ビニル等の疎水性ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル、ラジカル重合性不飽和基含有シリコンマクロモノマー等の不飽和基含有マクロモノマー等が例示される。
上記(メタ)アクリル系単量体は、使用する(メタ)アクリル系単量体から得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が、−80℃以上となるように選択するのが好ましく、−65℃以上となるように選択するのがより好ましい。−80℃より低い(メタ)アクリル系単量体組成では、反応が困難となるという問題点を生じるおそれがある。一方、ガラス転移温度(Tg)の上限は、110℃が好ましく、80℃がより好ましい。110℃を超えると、最低造膜温度が高くなり、本願発明で得られる複合樹脂を用いても、均一な皮膜が形成されないことがある。
また、上記スチレン誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン等があげられる。さらに、上記ビニルエーテル系単量体の具体例としては、ビニルメチルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が例示される。
さらにまた、得られるウレタン−(メタ)アクリル複合樹脂から形成される皮膜の強度を向上させるため、上記(メタ)アクリル系単量体混合液には、上記の1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体に加え、ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体を添加してもよい。これから得られる複合樹脂を、多価ヒドラジド化合物により架橋すると効果的である。
上記ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセチルアセトン(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は複数種をあげることができる。
このケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体の含有割合としては、上記(メタ)アクリル系単量体に含まれる全単量体を100重量部としたとき、0.1重量部以上がよく、0.3重量部以上が好ましい。0.1重量部より少ないと、添加による効果が十分得られない場合がある。一方、使用量の上限としては、30重量部がよく、20重量部が好ましい。30重量部より多いと、反応系が不安定となり、重合を阻害する場合がある。
上記ウレタン樹脂は、ジオール成分と多価イソシアネート化合物とを反応させた重合体であって、上記(メタ)アクリル系単量体と混合可能な平均粒子径及び分子量を有するものであり、水分散性のものが好ましい。このようなウレタン樹脂としては、市販のウレタン水性エマルジョンをそのまま用いてもよい。具体的には、大日本インキ化学工業(株)製:ハイドランHW−301、HW−310、HW−311、HW−312B、HW−333、HW−340、HW−350、HW−375、HW−920、HW−930、HW−940、HW−950、HW−970、AP−10、AP−20、ECOS3000、三洋化成工業(株)製:ユープレンUXA−3005、ケミチレンGA−500、第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス110、スーパーフレックス150、スーパーフレックス260S、スーパーフレックス210、スーパーフレックス420、スーパーフレックス500M、アデカ社製:アデカボンタイターUHX−210、アデカボンタイターUHX−280、住化バイエルウレタン(株)製:ディスパコールU53,ディスパコールU54、ディスパコールU56、ディスパコールU42、インプラニールDLU,インプラニールDLS等の市販品を用いてもよい。
上記ジオール成分とは、1分子中に2つのヒドロキシル基を有する有機化合物をいい、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のジオール類、又はこれらのジオール類の少なくとも一種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸の少なくとも一種とを重縮合して得られるポリエステルジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリエーテルジオール類、その他、ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリアクリル酸エステルジオール等があげられる。
上記多価イソシアネート化合物とは、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物をいい、脂肪族、脂環式、芳香族等の多価イソシアネート化合物を用いることができる。このような多価イソシアネート化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等をあげることができる。これらの内で、脂肪族又は脂環式のイソシアネートは黄変が少ない点で好適である。
上記ウレタン樹脂を製造するウレタン生成反応は、無溶媒下でも行うことができるが、反応を均一に行うために、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、その他のイソシアネート基に対して不活性で水との親和性の大きい有機溶媒を使用してもよい。
また、イソシアネート基に対して反応性のない、すなわち、活性水素基を含まない上記(メタ)アクリル系単量体やその他の単量体をこのウレタン樹脂の製造の際に存在させてもよい。この場合、この上記(メタ)アクリル系単量体やその他の単量体によって反応系が希釈されて反応を均一に行うことができる。このウレタン生成反応は、50〜100℃程度で、0.5〜20時間程度行えばよい。
上記ウレタン生成反応における、ジオール成分と多価イソシアネート化合物との使用割合は、特に限定されるものではないが、当量比で、ジオール成分:多価イソシアネート化合物=1:1.1〜2がよく、1:1.2〜1.9が好ましい。
多価イソシアネート化合物の割合を、上記範囲より高くすると、水分散の際に残存するイソシアネートと水との反応により、炭酸ガスの発生が顕著に起こり、発泡や凝集が起こるという問題点を生じる場合がある。一方、上記範囲より少なくすると、生成するウレタンプレポリマーが高粘度化してしまい、ゲル状になることがあり、作業上問題になる場合がある。
上記ウレタン樹脂の製造に使用される触媒としては、一般にウレタン化反応に使用される触媒が使用できる。具体例としては、ジブチル錫ジラウレートやジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の有機アミン又はその塩等があげられる。
上記のウレタン樹脂の重量平均分子量は500以上であるとよく、1000以上であると好ましい。重量平均分子量が500未満であると、得られる複合樹脂を用いて製造した皮膜が硬くなり、所望の物性(伸度等)が得られ難くなるおそれがある。一方で、重量平均分子量は、50万以下であるとよく、10万以下であると好ましい。50万より大きいと、シードそのものの粘度が高くなり、ゲル化したり、安定な(メタ)アクリル系単量体混合液が得られなくなったりする場合がある。
上記のウレタン樹脂を後述する水系媒体に分散させて、ウレタン樹脂エマルジョンを生成させると、上記(メタ)アクリル系単量体を混合して得られる、上記(メタ)アクリル系単量体混合液を水分散液とすることができる。この水分散液は、(メタ)アクリル系単量体の乳化重合反応にそのまま供与することができ、乳化重合時の反応系をより安定させることが可能となり、得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂エマルジョンの分散系を安定化させることができる。また、この場合、乳化重合時に生じやすい凝集物の生成を抑制させることが可能となる。
上記ウレタン樹脂エマルジョンを生成する場合、ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入しておくと、自己分散性樹脂としてエマルジョン化が可能となり好ましい。また、必要に応じて、乳化剤を用いると、エマルジョンをより安定化させることができ、好ましい。
上記乳化剤は、通常、重合モノマー全量に対して、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で用いられる。この乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の界面活性剤を用いることができる。そして、これらの乳化剤は、1種又は2種以上を選択して用いることができる。
上記のアニオン性界面活性剤の具体例としては、オレイン酸カリウム、ラウリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリル燐酸エステル等の非反応性界面活性剤、及びアルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば三洋化成(株)製:エレミノール(登録商標)JS−2、例えば花王(株)製:ラテムル(登録商標)S−180A、S−180等があげられる。)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば第一工業製薬(株)製:アクアロン(登録商標)HS−10,HS−5,BC−10,BC−5等があげられる)、α−スルホ−ω−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(例えば旭電化工業(株)製:アデカリアソープ(登録商標)SE−10,SE−1025A等があげられる)、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(例えば第一工業製薬(株)製:アクアロン(登録商標)KH−10等があげられる)、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(例えば旭電化工業(株)製:アデカリアソープ(登録商標)SR−10,SR−1025等があげられる)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩(例えば花王(株)製:ラテムル(登録商標)PD−104等があげられる)等の反応性界面活性剤等があげられる。
上記のカチオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等の非反応性界面活性剤等が挙げられる。
上記のノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピルブロックポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非反応性界面活性剤、α−ヒドロ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル))(旭電化工業(株)製:アデカリアソープER−10,ER−20,ER−30,ER−40)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(第一工業製薬(株)製:アクアロンRN−20,RN−30,RN−50)、ポリオキシアルキルアルケニルエーテル(花王(株)製:ラテムルPD−420,PD−430,PD−450)等の反応性界面活性剤等があげられる。
さらに、上記乳化剤としては、上記したもの以外に、両イオン性成分として、両イオン性の界面活性剤を用いることができる。
上記両イオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ステアリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ステアリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルヒドロキシスルホベタイン等の非反応性界面活性剤があげられる。
上記ウレタン樹脂エマルジョン中の水分散体の平均粒子径は、30nm以上であると好ましく、50nm以上であるとより好ましい。30nm未満では小さすぎて、水分散液の粘度が高くなり、流動性が低下するおそれがある。一方、1500nm以下であると好ましく、1000nm以下であるとより好ましい。1500nmを超えると、得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂の平均粒子径が大きくなり、保存中に分離・沈降するおそれがある。このような条件を満たすウレタン樹脂エマルジョンの例としては、前述した市販されている水分散性ウレタン樹脂があげられる。
上記水系媒体としては、水や、水とメタノール、エタノール等の水と相溶可能な有機溶媒との混合溶液等を用いることが出来る。この中でも、環境的な側面から水を用いるのが好ましい。
上記ウレタン樹脂エマルジョンの固形分含有率は、10重量%以上であるとよく、25重量%以上であると好ましい。10重量%より少ないと、(メタ)アクリル系単量体との分散液の濃度が低くなり、結果として得られる複合樹脂分散液の濃度が低くなって、塗布後の乾燥のために、時間やエネルギーが多く必要となり、作業性が悪化するおそれがある。一方、上限は、70重量%がよく、60重量%が好ましい。70重量%より多いと、分散液の粘度が高くなり、作業性が悪化する傾向がある。
なお、上記ウレタン樹脂の生成を有機溶媒環境下で行った場合、有機溶媒から上記水系媒体に転相させて、有機溶媒を除去しておくと、その後の乳化重合を阻害しなくなるので望ましい。
次に、本願発明にかかる乳化重合について説明する。
本願発明は、上記の通り、水系媒体の存在下で、反応容器中に原料乳化液を逐次的又は連続的に添加して、ウレタン樹脂の存在下で、上記1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を乳化重合して、(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を製造する方法である。
上記原料乳化液とは、1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を、上記した水系媒体と同様の水系媒体に乳化分散した(メタ)アクリル系単量体のエマルジョンである。分散させることにより、後述する乳化重合反応において、(メタ)アクリル系単量体の水系媒体中への分散がより容易となり、分散系を安定させることができる。そして、分散系の安定により、乳化重合時に生じやすい凝集物の生成を抑制することができる。
上記の分散をする場合、分散性を向上させるため、乳化剤を用いるのが好ましい。この乳化剤としては、上記した乳化剤と同様の乳化剤を用いることができる。
また、この乳化剤の含有量は、上記(メタ)アクリル系単量体に対して、0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上が好ましい。0.05重量%未満であると、乳化分散が十分に行われず、添加後の反応が不安定となる可能性が高くなる。一方、上限は、10重量%が好ましく、5重量%がより好ましい。10重量%を超えると、乳化剤により、生成する皮膜の耐水性や吸水性が悪くなる傾向が生じるおそれがある。
上記反応容器に添加される上記原料乳化液としては、互いに異なる組成を有する少なくとも2種類の原料乳化液を用いるのがよい。そして、一つの原料乳化液の添加後に次の原料乳化液を添加する、すなわち、一つの原料乳化液の添加が終了した後、次の原料乳化液の添加を開始することが好ましい。このように、複数の原料乳化液を順番に添加していくことにより、得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を繊維処理用に使用したとき、十分な耐洗濯性、摩擦堅牢度、耐ブロッキング性、柔軟性を得ることができる。
上記の複数の原料乳化液を順番に添加していく場合において、一つの原料乳化液中の(メタ)アクリル系単量体組成から得られる重合体のガラス転移温度(Tg1)と、上記次の原料乳化液中の(メタ)アクリル系単量体組成から得られる重合体のガラス転移温度(Tg2)とは、Tg2がTg1より高い温度であることがよく、その差(Tg2−Tg1)は、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。10℃より低いと、複数の原料乳化液に分割して添加することによる効果が十分に得られないことがある。一方、差の上限は、150℃が好ましく、100℃がより好ましい。150℃より高いと、得られる皮膜が硬くなり、繊維処理用として不向きとなる傾向がある。
また、上記ウレタン樹脂は、上記の少なくとも2種類の原料乳化液のうち、少なくとも最初に上記反応容器中に添加する原料乳化液に含有される。より均一なウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂分散液を得るためには、組成比を調整した上で、他の原料乳化液に上記ウレタン樹脂を含有させることも好ましい態様である。
なお、上記ウレタン樹脂のウレタン生成反応時に、(メタ)アクリル系単量体を添加する場合、このウレタン樹脂を含有させる原料乳化液を製造する際に使用される(メタ)アクリル系単量体の使用量は、上記ウレタン生成反応時に使用した(メタ)アクリル系単量体量を差し引けばよい。
上記の原料乳化液のウレタン樹脂と(メタ)アクリル系単量体との合計含有割合は、30重量%以上であるとよく、40重量%以上であると好ましい。30重量%未満であると、得られる複合樹脂の固形分濃度が低くなり、皮膜を形成させる際に、乾燥のためのエネルギーや時間が多く必要となり、作業上の問題点が生じるおそれがある。一方、上限は、80重量%がよく、70重量%が好ましい。80重量%を超えると、上記の混合液や分散液の粘度が高くなり、流動性が低下するおそれがある。
上記の原料乳化液を、上記した条件の下、順番に水系媒体の存在下で反応容器中に添加して、乳化重合を実施する。この水系媒体としては、上記と同様のものを用いることができる。
上記水系媒体中には、予め乳化剤を含ませておくと、乳化重合の反応系を安定させることができるので好ましい。ここで用いる乳化剤としては、上記と同様のものを用いることができる。
上記の反応容器中の水系媒体に含まれる上記乳化剤の量は、上記(メタ)アクリル系単量体に対して0.05重量%であると好ましく、0.1重量%以上であるとより好ましい。0.05重量%未満であると、反応系での分散が十分にされず、反応系が不安定となる可能性が高くなる。一方で、上記(メタ)アクリル系単量体に対して10重量%以下であると好ましく、5重量%以下であるとより好ましい。10重量%を超えると、乳化剤により、得られる皮膜の耐水性や吸水性が悪化するおそれがある。
上記乳化重合において、ラジカル重合開始剤は、前もって上記水系媒体に加えておいてもよく、上記の原料乳化液の滴下にあわせて、ラジカル重合開始剤を滴下してもよく、その両方を行ってもよい。
このラジカル重合開始剤としては、慣用のラジカル重合開始剤を用いればよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、t−ブチルハイドロパーオキサイドやジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物系開始剤を用いることができる。また、有機過酸化物系開始剤や過硫酸塩系開始剤と、アスコルビン酸、ロンガリット又は亜硫酸金属塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤も好ましく用いられる。上記ラジカル重合開始剤の使用量は、上記(メタ)アクリル系単量体及び上記その他の単量体の合計量に対して、0.01〜5重量%程度、好ましくは0.05〜2重量%程度とすればよい。
上記乳化重合の重合温度は10〜90℃で行うのがよく、30〜70℃で行うとより好ましい。この重合は、通常、発熱が終了した後、40〜90℃程度に30分〜3時間程度維持することによって、ほぼ完了する。これにより、ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂の水性エマルジョンが得られる。
ところで、上記ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体を用いる場合、乳化重合後に、末端に複数のヒドラジド基を有する化合物(下記式(1)、以下、「多価ヒドラジド化合物」と称することがある。)を添加すると、自己架橋性が発現する点で好ましい。このようにすると、皮膜形成時に架橋構造が形成されて、得られるウレタン−(メタ)アクリル複合樹脂から生成する皮膜の強度の向上を図ることができる。また、多価ヒドラジド化合物を含むウレタン−(メタ)アクリル複合樹脂の分散液は、自己架橋性を有しつつ、安定的に長期保存が可能である。
Figure 0005559025
なお、上記式(1)中、Rは、直接結合、炭素数1〜8の2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルケニレン基等)、又は下記式(2)で表される基を示す。
Figure 0005559025
上記末端にヒドラジド基を複数有する化合物(多価ヒドラジド化合物)としては、分子中に2個ヒドラジド基を有するヒドラジン誘導体があげられる。具体的には、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等があげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アジピン酸ジヒドラジド及び1,3−ビス(ヒドラジドカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインが水への溶解性が良好である点から好ましく、さらにアジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
このような多価ヒドラジド化合物の使用量は、上記のケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体の使用量に対し、0.1倍当量以上が好ましく、0.3倍当量以上がより好ましい。0.1倍当量より少ないと、架橋不足となり、所望の効果が十分得られない場合がある。一方、使用量の上限は1.5倍当量が好ましく、1.2倍当量がより好ましい。1.5倍当量より多いと、未反応で残留する多価ヒドラジド化合物が、塗膜欠陥(ブツ、フクレ等)の原因となる場合がある。
なお、多価ヒドラジド化合物の添加時期は、乳化重合終了後であれば、特に限定されず、例えば、乳化重合が終了し、未反応単量体の除去後、分散液の移送中やその前後、あるいは、酸化防止剤、充填剤、安定剤等の各種助剤添加時やその前後、などがあげられる。
なかでも、本発明の特徴である保存安定性を活かしつつ、使用の利便性を考慮すると、未反応単量体の除去後や、生成分散液の移送中又はその前後に添加するのが、多価ヒドラジド化合物の均一な分散・溶解と、それによる皮膜形成時の均一な架橋構造形成の点で好ましい。
この発明にかかる製造方法で得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂中の、ウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル系樹脂成分との重量比率は、2/98以上がよく、5/95以上が好ましい。2/98より小さいと、ウレタン樹脂由来の特徴が十分発現しない傾向がある。一方、重量比率の上限は、55/45がよく、30/70が好ましい。55/45より大きいと、ウレタン樹脂の比率が過度に高くなり、(メタ)アクリル系単量体の重合を阻害することがある。
この発明にかかる製造方法で得られた得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液中のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂の平均粒子径は、10nm以上がよく、30nm以上が好ましい。10nmより小さいと、エマルジョンが高粘度となって、作業性が悪化する傾向となる。一方、平均粒子径の上限は、1000nm(1μm)がよく、300nmが好ましい。1000nmより大きいと、得られる複合樹脂分散液の安定性が低下したり、捺染染料を配合した時の発色が悪化することがある。
この発明にかかる製造方法で得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂から形成される皮膜は、十分な強度及び伸度等の機械的物性値が得られ、また、耐水性や吸水性も優れている。
特に、上述のように、ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体を共重合させ、かつ、これと多価ヒドラジド化合物を併用すると、架橋構造形成による皮膜の強度の向上を図ることができて好ましい。
この発明にかかる製造方法で得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂のJIS−K−7161〜7162に従って測定した最大伸びは、200%以上とすることができ、900%以上とすることが好ましい。200%未満であると、柔軟性が不足することがある。一方、伸度の上限は、3000%であるとよく、2500%であると好ましい。3000%より大きいと、弾性が低く、織布等に塗布した場合の追従性が悪化する傾向となる。
この発明にかかる製造方法で得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂のJIS−K−7161〜7162に従って測定した破断強度は、2MPa以上であるとよく、5MPa以上であると好ましい。2MPa未満であると、皮膜強度が不足し、実用性に劣ることとなる。
この発明にかかる製造方法で得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂の吸水率は、30%以下とすることができ、20%以下とすることが好ましい。30%を超えると、皮膜の耐水性が不足するおそれがある。なお、この吸水率は、後述する耐水性評価方法にしたがって測定することができる。
この発明にかかるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂は、繊維加工用処理剤や人工皮革として有用に使用することができる。
上記繊維加工用処理剤が適用される繊維素材としては、絹繊維、綿繊維、麻繊維等の天然繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維、セルロース繊維等の半合成繊維等があげられる。そして、この繊維素材を上記繊維加工用処理剤により処理することにより、繊維複合材を得ることができる。この処理方法としては、塗布、浸漬等があげられる。
浸漬方法としては、繊維素材に樹脂を含浸後、凝固させたり乾燥を行う方法を用いることができる。
また、塗布方法としては、繊維素材または繊維素材に樹脂を含浸処理したものに、グラビアコート法、ナイフコート法、ロールコート法等、公知の方法により表面処理層を形成することができる。
このようにして得られた繊維複合材は、十分な剥離強度、屈曲性、耐久性を得ることができる。
上記人工皮革とは、樹脂を含浸させた織布や不織布からなる繊維質層、またはこれに、発泡樹脂からなる発泡層を積層した繊維質基材積層体からなり、発泡層の外表面をエンボス加工等の表面処理を行ったり、この外表面に、エンボス加工等の表面処理を行った表面処理層を積層したシートである。
上記発泡層は、予め樹脂分散液を撹拌等によって機械的に発泡させたものを基材に塗布しても、樹脂分散液に炭酸水素ナトリウムやアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤を加えた上で基材に塗布した後、加熱して発泡させて形成してもよい。
上記発泡層として、上記の製造方法で製造されるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液に含有されるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂からなる層を用いると、弾力等の触感に優れた良好な積層体が得られる。
上記人工皮革に使用される不織布や織布を構成する繊維としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン等の溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染型変性ポリエチレンテレフタレート等の溶融紡糸可能なポリエステル類、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維等の合成繊維やセルロース系繊維等の半合成繊維、再生繊維等があげられる。
上記の繊維質層に含浸される樹脂は、人工皮革としたときの強度、耐久性、柔軟性を考慮して、一般のウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂や、上記の製造方法で製造されるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液に含有されるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂を含むこれらの複合体または混合物の中から任意の樹脂を用いることができる。この含浸用樹脂として上記ウレタン−(メタ)アクリル複合樹脂を用いると、耐摩耗性や耐寒性に優れた人工皮革を得ることができ好ましい。
また別の態様である繊維質基材の積層体からなる人工皮革は、まず、繊維質基材、具体的には、織布、不織布、不織布上に織布を載せたものに、上記樹脂を含浸させ、次いで、その表面に上記の製造方法で製造されるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を塗工して、発泡成形をし、次いで、必要に応じて、直接、表面処理を行うか、表面処理をした表面層(スキン層)を積層させるか、又はスキン層の積層後に表面処理をすることにより、表面処理されたスキン層を有する繊維質素材(繊維質基材積層体)を製造することができ、これを人工皮革として用いることもできる。
この発明にかかる製造方法で得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂は、上記の通り、ウレタン樹脂の存在下で、2種の異なる(メタ)アクリル系の原料乳化液を十分に重合させるので、最大伸びや剥離強度等の強度が向上し、表面タックが少なく、耐久性の良好なものとすることができる。
以下、この発明を、実施例を用いてより具体的に示す。なお、この発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<<第1実験例(繊維複合材について)>>
まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
ビニル共重合体中の各構成単量体(重合性単量体)a,b,…の構成重量分率をWa,Wb,…とし、各構成単位a,b,…の単独重合体のガラス転移温度をTga,Tgb,…としたとき、下記に示すFOXの式で、共重合であるビニル重合体のTgの値を求めた。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+…
[強度、伸度の測定方法]
得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を、ポリプロピレン樹脂製テストプレート(日本テストパネル(株)製:標準試験片)上に皮膜厚が200μmとなるように、テープにてギャップを作成した上、ガラス棒を用いて塗布し、室温で3日間乾燥した。得られた皮膜を用い、JIS−K−7161〜7162の方法にしたがって、最大伸び及び破断強度を測定した。詳細には、得られた皮膜を0.5cm幅の短冊形となるように切り出し、試験片とし、これを、オートコムC型万能機((株)キーエスイー製)を用いて、23℃、50%RHの測定雰囲気下、クロスヘッドスピード200mm/min、チャック間隔20mmの条件で、引張試験を行い、最大伸び(%)及び破断強度(MPa)を測定した。
[平均粒子径測定]
ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を、フィルター(アドバンテック社製:DISMIC−25cs)でろ過したイオン交換水で10000倍に希釈する。それを測定用セルに充填し、動的光散乱法(大塚電子(株)製:ELS−8000を使用)にて、平均粒子径を測定した。
なお、ウレタンの水分散液についても、同様の方法で平均粒子径を測定した。
[摩擦堅牢度試験]
下記の配合で調製した捺染糊を用いて、綿ブロードに捺染加工し、25℃にて24時間乾燥して、試験片を作製した。
・共重合体(水性分散液として)…20重量部
・青色含量ペースト…5重量部
・レデューサー…75重量部
得られた試験片を、JIS L 0849(摩擦堅牢度試験)にしたがって、学振型試験器(大栄科学(株)製)を用いて下記の摩擦条件にて、摩擦堅牢度を評価した。
・摩擦子…45R、カナキン被覆(乾式ではそのまま、湿式ではカナキンを水で十分に濡らす。)
・荷重…200g
・回数…100回
評価は、下記の基準で行った。
・◎…摩擦子への色落ちがほとんどない。
・○…摩擦子への色落ちが少しある。
・△…摩擦子への色落ちがある。
・×…摩擦子への色落ちが著しい。
[耐洗濯性試験]
上記摩擦堅牢度試験で作成した試験片について、JIS L 8044(洗濯に対する染色堅牢度試験)のA−4にしたがって、70℃、45分間、試験を実施した。
評価は、下記の基準で行った。
・◎…ほとんど色落ちが見られない。
・○…やや色落ちが見られる。
・△…色落ちが見られる。
・×…色落ちが著しい。
[耐ブロッキング性]
上記摩擦堅牢度試験と同様にして調整した捺染糊を、綿ニットに、0.3mmのアプリケーターにて塗布し、23℃×50%RHの条件で24時間養生したものを試験片とした。
この試験片を3cm×3cmに切断して、2枚の試験片を重ね合わせ、50g/cmの荷重下、40℃×65%RHの恒温恒湿下で24時間静置した後、解圧し、試験片を剥離する際の状況及び剥離後の塗布面の状態を下記の基準で評価した。
◎…抵抗なく剥がれる。
○…ほとんど抵抗なく剥がれる。
△…抵抗がある。
×…強い抵抗があるか、又は剥離後の塗布面に糊残りがある。
[追従性]
上記耐ブロッキング性試験と同様にして、3cm×3cmの試験片を作成し、伸縮方向に手で引き伸ばして、捺染糊の追従性を確認後、手を離して、綿ニットを放置した際の戻る状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎…引き伸ばしに追従し、解放後、元通り戻る。
○…引き伸ばしにほぼ追従し、解放後、元通り戻る。
△…引き伸ばしに追従しにくく、また、解放後も、多少伸びが残る。
×…引き伸ばしに追従せず、解放後も、伸びが残る。
<原材料>
[ウレタン樹脂]
・大日本インキ化学(株)製:ハイドランHW−940…平均粒子径336nm、固形分50.0重量%、ポリエステル系無黄変タイプ、以下「HW−940」と称する。
・大日本インキ科学(株)製:ハイドランHW−930…平均粒子径200nm、固形分50.0重量%、ポリエステル系無黄変タイプ、以下「HW−930」と称する。
[(メタ)アクリル系単量体]
・メタクリル酸メチル…三菱レイヨン(株)製、以下「MMA」と略する。
・アクリロニトリル…ダイヤニトリックス(株)製、以下「AN」と略する。
・アクリル酸エチル…三菱化学(株)製、以下「EA」と略する。
・アクリル酸ブチル…三菱化学(株)製、以下「BA」と略する。
・メタクリル酸…三菱レイヨン(株)製、以下「MAA」と略する。
・イタコン酸…磐田化学工業(株)製、以下「IA」と略する。
[ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体]
・N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド…日本化成(株)製:ジアセトンアクリルアミド、以下、「DAAm」と略する。
[多価ヒドラジド化合物]
・アジピン酸ジヒドラジド…大塚化学(株)製:以下、「ADH」と略する。
[ラジカル重合開始剤]
・過硫酸カリウム…(株)ADEKA製、以下「KPS」と略する。
・無水重亜硫酸ナトリウム…(有)戸川化学工業所、以下「SBS」と略する。
[乳化剤]
・エマルゲン1135S−70…花王(株)製、以下「E1135S−70」と略する。
(実施例1〜4、比較例1〜2)
表1の第1段目に記載の種類及び量のウレタン樹脂に、表1の第1段目の種類及び量の(メタ)アクリル系単量体を添加・混合し、次いで、乳化剤として、E1135S−70を2.8g加え、液全体の固形分が60重量%になるようにイオン交換水を添加し、第1段目の原料乳化液を得た。同様に表1の第2段目の添加・混合物にE1135S−70を1.4g加え、液全体の固形分を53重量%になるようにイオン交換水を添加し、第2段目の原料乳化物を得た。
また、攪拌翼を有する、容積2リットルの反応容器に、イオン交換水180gを加え、次いで、この反応容器の攪拌翼を60rpmで回転させて攪拌しつつ、60℃に昇温した。
そして、開始剤として、過硫酸カリウム5%水溶液を12.3g及び無水重亜硫酸ナトリウム10%水溶液を4.9g添加して、上記第1段目の原料乳化液を3時間かけて連続的に滴下した。また、反応開始より30分後から、過硫酸カリウム2.5%水溶液を56gと無水重亜硫酸ナトリウム2%水溶液を56gを第2段目の原料乳化液滴下終了まで、各々を連続的に滴下した。第1段目の原料乳化液の滴下終了後、続いて第2段目の原料乳化液を1時間半かけて滴下し、その後、2時間温度を保持して重合を完結させた。
得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表1に示す。
(比較例3、4)
比較例1で得られた分散液と比較例2で得られた分散液を、比較例1/比較例2で、5/95(固形分比)(比較例3)、又は20/80(固形分比)(比較例4)の割合で混合し、水性分散液を得た。
得られた水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例3で用いた第1段目及び第2段目の原料乳化液の両者を合わせたものに相当する組成の液を第1段目の原料乳化液として使用し、第2段目の原料乳化液を用いなかったこと、及び原料乳化液の滴下時間を4時間半としたこと以外は実施例3と同様にして乳化重合を行った。
得られた水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0005559025
<<第2実験例(人工皮革について)>>
まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
<原材料>
[ブロッキング防止剤]
・ジメチルシリコーンオイル…MOMENTIVE社製:TSF451−100
[凝固剤]
・ポリエーテル変性シリコーンオイル…MOMENTIVE社製:TPA4380
[起泡剤]
・スルホコハク酸N−アルキルモノアミドジナトリウム…(株)花王製:ペレックスTA
[製泡剤]
・ステアリン酸アンモニウム水分散液…サンノブコ(株)製:DC−100A
[顔料]
・60%酸化チタン分散液…中央理化工業(株)製:T−60
[硬化剤]
・脂肪酸ポリグリシジルエーテル…中央理化工業(株)製:リカボンドEX−8
[増粘剤]
・アルカリ増粘性アクリル共重合体…中央理化工業(株)製:リカボンドFK−600S
[繊維質層]
・ポリエステルフェルト…ダイソー(株)製:ポリエステルフェルト
<評価方法>
各種水分散性樹脂を固形分で100重量部になるように採取し、下記の配合で調整した塗工液を繊維質層のポリエステルフェルトに1mm厚に塗布して、140℃熱風乾燥機により、塗膜を乾燥させて、試験片を作成した。
[塗工液]
下記の各原材料をディスパーにより良く撹拌混合し、増粘剤を添加して、配合物粘度が13,000〜20,000mPa・sとなるように増粘させた。その後、ハンドミキサーにより、機械発泡させ、混合物密度を0.72〜0.75g/mlに調整したものを塗工液とした。
・共重合体(固形分)…100重量部
・ブロッキング防止剤…0.73重量部
・凝固剤…0.94重量部
・起泡剤…4.1重量部
・製泡剤…5.0重量部
・顔料…7.5重量部
・硬化剤…3.0重量部
[最大剥離強度]
上記作製の試験片を2.5cm幅に切断し、発泡層面にシアノアクリレート接着剤を塗布し、アクリル板に圧着させ、24時間室温乾燥したものを最大剥離強度用試験片とした。
この最大剥離強度用試験片をオートコムC型万能機((株)キーエスイー製)を用いて、23℃、50%RHの測定雰囲気下、クロスヘッドスピード100mm/minで、180°剥離試験を行い、1cm幅あたりの最大強度を測定した。
[屈曲性]
上記作製の試験片を屈曲させた後、自然に戻した際の屈曲部の折れ曲がり状態を目視観察により評価を行った。
○…屈曲前の状態に戻り、屈曲部にも屈曲による痕跡は見られない
×…屈曲前の状態に戻らないか、又は屈曲部に折れ目やひび割れが発生した
[表面タック性]
上記作製の試験片の表面を指触によりタックの有無を確認し、以下の評価によって判定した。
○…タックなし
×…タックあり
[耐摩耗性]
上記作製の試験片の発泡層面を学振型試験器(大栄科学(株)製)を用いて、摩擦子にCC−280耐水研磨紙(理研コランダム株式会社製)を用い、荷重1kg、回数5000回で試験を実施した。
○…変化なし
△…僅かに摩耗変化あり
×…発泡層が削れる
[耐加水分解性]
上記作製の試験片を80℃、90%RHの雰囲気下に300時間処理し、その後、表面層の状態を処理前と処理後で目視観察し状態変化を確認した。
○…変化なし
×…変化あり
(実施例5〜6)
下記表2に記載の種類及び量のウレタン樹脂に、表2に記載の種類及び量の(メタ)アクリル系単量体を添加・混合し、第1段目の樹脂混合物、及び第2段目の樹脂混合物を調整した。次いで、それらに乳化剤として、E1135S−70を第1段目に20重量部、第2段目に10重量部を加え、さらに、液全体の固形分が55重量%となるようにイオン交換水を添加し、第1段目の原料乳化液及び第2段目の原料乳化液を得た。
また、撹拌翼を有する容積2リットルの反応容器に、乳化重合後のエマルジョンの固形分が47重量%となるように水を加え、次いで、この反応容器の撹拌翼を60rpmで回転させて撹拌しつつ、60℃に昇温した。
そして、まず、上記第1段目の原料乳化液を3時間かけて連続的に滴下した。次いで、第1段目の原料乳化液の滴下終了後、続いて、第2段目の原料乳化液を1時間半かけて滴下し、その後、2時間温度を保持して、重合を完結させた。
得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例6〜8)
下記表2に記載の種類及び量の(メタ)アクリル系単量体を添加・混合し、次いで、それらに乳化剤として、E1135S−70を30重量部加え、さらに、液全体の固形分が70重量%となるようにイオン交換水を添加し、原料乳化液を得た。
また、撹拌翼を有する容積2リットルの反応容器に、乳化重合後のエマルジョンの固形分が55重量%となるように水を加え、次いで、この反応容器の撹拌翼を60rpmで回転させて撹拌しつつ、60℃に昇温した。
そして、まず、原料乳化液を6時間かけて連続的に滴下した。その後、3時間温度を保持して、重合を完結させた。
得られた(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例9)
下記表2に記載の種類及び量のウレタン樹脂について、上記の各種測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例10)
実施例5で用いた第1段目及び第2段目の原料乳化液の両者を合わせたものに相当する組成の液を第1段目の原料乳化液として使用し、第2段目の原料乳化液を用いなかったこと、及び原料乳化液の滴下時間を4時間半としたこと以外は実施例5と同様にして乳化重合を行った。
得られた水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表2に示す。
(比較例11、12)
比較例5又は6における原料乳化液に、表2に記載の種類及び量のウレタン樹脂を加えた以外は、比較例5又は6と同様の方法を用いて重合し、得られたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液について、上記の各種測定を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0005559025

Claims (13)

  1. 1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を予め分散した原料乳化液を、水系媒体の存在下、反応容器中に逐次的又は連続的に添加することにより、ウレタン樹脂の存在下で、上記1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体を乳化重合して、(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を製造する方法であって、
    添加される上記原料乳化液として、互いに異なる組成を有し、前記(メタ)アクリル系単量体の乳化重合で得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が−80℃以上、110℃以下である少なくとも2種類の原料乳化液を用い、
    一つの原料乳化液の添加が終了した後、次の原料乳化液の添加を開始し、
    かつ、上記一つの原料乳化液中の(メタ)アクリル系単量体組成から得られる重合体のガラス転移温度Tg1と、上記次の原料乳化液中の(メタ)アクリル系単量体組成から得られる重合体のガラス転移温度Tg2との差が、10℃以上150℃以下であり、
    上記Tg2が上記Tg1より高い温度であって、
    上記の少なくとも2種類の原料乳化液のうち、少なくとも最初に上記反応容器中に添加する原料乳化液にはウレタン樹脂を含有する、ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  2. 上記(メタ)アクリル系単量体混合液は、ウレタン樹脂と1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体に加え、ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体を、全単量体に対して、0.1〜30重量%含有させた混合液であり、かつ、乳化重合後に、末端に複数のヒドラジド基を有する化合物を加える請求項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  3. 上記ケト基又はアルデヒド基に基づくカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する重合性単量体は、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセチルアセトン(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は複数種である請求項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  4. 上記互いに異なる組成を有する少なくとも2種類の原料乳化液が、最初に添加する原料乳化液に加えて、他の原料乳化液にもウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  5. 上記原料乳化液に用いる乳化剤がノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  6. 上記原料乳化液の滴下にあわせてラジカル重合開始剤を滴下することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  7. 得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂中の、ウレタン樹脂成分と(メタ)アクリル系樹脂成分との重量比率が、2/98〜55/45である請求項1〜6のいずれか1項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  8. 得られるウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液中のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂の平均粒子径が10nm以上1000nm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  9. 上記ウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂の、JIS−K−7161,7162に従って測定した機械物性値は、最大伸びが200%以上であり、かつ、破断強度が2MPa以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載のウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液を用いて、繊維素材を処理して得られる繊維複合材。
  11. 上記繊維素材は、織布又は不織布である請求項10に記載の繊維複合材。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたウレタン−(メタ)アクリル系複合樹脂水性分散液から得られる発泡層を繊維又は不織布からなる繊維質層に積層した繊維質基材積層体。
  13. 請求項12に記載の繊維質基材積層体からなる人工皮革。
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