JP5554845B2 - リチウムイオン二次電池負極材用粉末、これを用いたリチウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池負極材用粉末、これを用いたリチウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、放電容量が大きく、かつサイクル特性が良好であるリチウムイオン二次電池を得ることができる負極材用粉末に関する。また本発明は、この負極材用粉末を用いたリチウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン二次電池に関する。
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化および軽量化の観点から、高エネルギー密度の二次電池の開発が強く要望されている。現在、高エネルギー密度の二次電池として、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池およびポリマー電池等がある。このうち、リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比べて格段に高寿命かつ高容量であることから、その需要は電源市場において高い伸びを示している。
図1は、コイン形状のリチウムイオン二次電池の構成例を示す図である。リチウムイオン二次電池は、同図に示すように、正極1、負極2、電解液を含浸させたセパレータ3、および正極1と負極2の電気的絶縁性を保つとともに電池内容物を封止するガスケット4から構成されている。充放電を行うと、リチウムイオンがセパレータ3の電解液を介して正極1と負極2の間を往復する。
正極1は、対極ケース1aと対極集電体1bと対極1cとで構成され、対極1cにはコバルト酸リチウム(LiCoO)やマンガンスピネル(LiMn)が主に使用される。負極2は、作用極ケース2aと作用極集電体2bと作用極2cとで構成され、作用極2cに用いる負極材は、一般に、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な活物質(負極活物質)と導電助剤およびバインダーとで構成される。
従来、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、カーボン系材料が用いられている。また、カーボン系材料よりもリチウムイオン二次電池を高容量とする新たな負極活物質として、リチウムとホウ素の複合酸化物、リチウムと遷移金属(V、Fe、Cr、Mo、Ni等)との複合酸化物、Si、GeまたはSnとNおよびOを含む化合物、化学蒸着により表面を炭素層で被覆したSi粒子等が提案されている。
しかし、これらの負極活物質はいずれも、充放電容量を向上させ、エネルギー密度を高めることができるものの、リチウムイオンの吸蔵、放出時の膨張や収縮が大きくなる。そのため、これらの負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電の繰り返しによる放電容量の維持性(以下「サイクル特性」という。)が不十分である。
これに対し、負極活物質としてSiO等、SiO(0<x≦2)で表される酸化珪素の粉末を用いることが、試みられている(特許文献1)。この提案された酸化珪素は、その結晶構造中または非晶質構造内にリチウムを含有し、非水電解質中で電気化学反応によってリチウムイオンを吸蔵および放出可能となるようにリチウムと珪素との複合酸化物を構成する。酸化珪素とは、二酸化珪素と珪素との混合物を加熱して生成した一酸化珪素ガスを冷却し、析出させて得られた珪素非晶質の酸化物の総称であり、蒸着材料として実用化されている。
酸化珪素は、充放電時のリチウムイオンの吸蔵、放出による結晶構造の崩壊や不可逆物質の生成等の劣化が小さいことから、有効な充放電容量がより大きな負極活物質となり得る。そのため、酸化珪素を負極活物質として用いることにより、カーボンを用いた場合と比較して高容量であり、SiやSn合金といった高容量負極材を用いた場合と比較してサイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られる。
特許第2997741号公報
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載のリチウムイオン二次電池では、現在要求される放電容量を十分満足せず、また、最初の充放電時における、充電容量に対する放電容量の比の値(以下「初期効率」という。)が低いという問題があった。
本発明は、この問題に鑑みてなされたものであり、放電容量および初期効率に優れ、かつサイクル特性が良好であるリチウムイオン二次電池の負極材用粉末、この負極材用粉末を用いたリチウムイオン二次電池負極、およびリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、酸化珪素の処理方法について検討した。その結果、SiO(0.4≦x≦1.2)粉末に対して、SiCl(1≦X≦4)を用いて改質処理を行うことにより、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を維持しつつ、放電容量および初期効率を向上させることができることを知見した。
さらに検討し、SiClによる改質処理によって、SiO粉末に不可避的に含有されるHについての核磁気共鳴分光法(NMR;Nuclear Magnetic Resonance)によって測定されるスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下である場合に放電容量および初期効率が向上し、1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、95%以下である場合にはさらに向上することを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記(1)および(2)のリチウムイオン二次電池負極材用粉末、下記(3)のリチウムイオン二次電池負極、ならびに下記(4)のリチウムイオン二次電池にある。
(1)SiO(0.4≦x≦1.2)からなり、不可避的に含有されるHについての核磁気共鳴分光法によって測定されるスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池負極材用粉末。
(2)Hについての核磁気共鳴分光によって測定されるスペクトルにおいて、1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、95%以下であることを特徴とする前記(1)に記載のリチウムイオン二次電池負極材用粉末。
(3)前記(1)または(2)に記載のリチウムイオン二次電池負極材用粉末を用いたリチウムイオン二次電池負極。
(4)前記(3)に記載のリチウムイオン二次電池負極を用いたリチウムイオン二次電池。
本発明のリチウムイオン二次電池負極材用粉末、およびリチウムイオン二次電池負極を用いることにより、放電容量および初期効率に優れ、かつサイクル特性が良好であるリチウムイオン二次電池を得ることができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、放電容量および初期効率に優れ、かつサイクル特性が良好である。
図1はコイン形状のリチウムイオン二次電池の構成例を示す図である。 図2はSiO粉末のNMRスペクトルを示す図であり、図2(a)は本発明の規定を満足しない場合、図2(b)は本発明の規定を満足する場合を示す。 図3は酸化珪素の製造装置の構成例を示す図である。
1.本発明のリチウムイオン二次電池負極材用粉末
本発明のリチウムイオン二次電池負極材用粉末は、SiO(0.4≦x≦1.2)からなり、不可避的に含有されるHについての核磁気共鳴分光法(NMR)によって測定されるスペクトル(以下、単に「NMRスペクトル」ともいう。)において、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下であることを特徴とする。
核磁気共鳴とは、磁気モーメントを有する原子核(例えばH、13C)を含む物質を磁場の中におき、これに共鳴条件を満足する周波数の電磁波を印加したときに生じる共鳴現象である。NMRで測定されるスペクトルによれば、磁気モーメントを有する原子核について、周囲の原子との結合状態を化学シフトとして検知することができる。
SiO粉末には、原料または製造過程においてH原子が混入しており、一般的な製造方法(後述する製造方法を含む。)によれば約80質量ppmのHが不可避的に混入する。本発明者らは、検討の結果、このH原子と周囲の原子との結合状態が、このSiO粉末を負極材用粉末として用いたリチウムイオン二次電池の放電容量および初期効率に影響を及ぼすことを知見した。
すなわち、NMRスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下とすることにより、このSiO粉末を負極材用粉末として用いたリチウムイオン二次電池の放電容量および初期効率を向上させることができる。
さらに、NMRスペクトルにおいて、1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、95%以下とすることにより、放電容量および初期効率をさらに向上させることができる。
図2は、SiO粉末のNMRスペクトルを示す図であり、同図(a)は本発明の規定を満足しない場合、同図(b)は本発明の規定を満足する場合を示す。同図(a)に示すSiO粉末は、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、それぞれピーク全体の面積の3%であり、本発明の規定を満足しない。1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積は、ピーク全体の面積の22%である。また、同図(b)に示すSiO粉末は、0.2〜0.4ppmの化学シフトおよび1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、それぞれピーク全体の面積の20%および67%であり、本発明の規定を満足する。
H原子と周囲の原子との結合状態は、後述するSiCl(1≦X≦4)を用いたSiO粉末の改質処理により制御することが可能である。この改質処理でSiO粉末の表面に付着したCl原子はリチウムイオン二次電池の放電容量、初期効率およびサイクル特性に悪影響を及ぼす。そのため、Clは少ないほど好ましく、SiO粉末全体における割合として1質量%以下が好ましい。
2.NMR測定方法
NMRによるスペクトルの測定条件は、表1に示す通りとする。試料は、真空下で250℃に3時間保持して乾燥処理を施した後、密封型の試料管に入れ、その状態で測定する。
Figure 0005554845
そして、得られたスペクトルについて、ガウス分布でピーク分離を行い、各ピークの中心値、高さ、および分散をそれぞれμ、A、σとして、下記(1)式で表されるピーク関数f(x)を求める。
(x)=A[1/{(2π)1/2σ}exp{−(x−μ)/(2σ)}] …(1)
ピーク関数f(x)から各ピークの面積SをS=∫f(x)dxとして算出する。各ピークの面積Sの合計ΣSを、ピーク全体の面積Sとして、ピーク全体の面積に対する各ピーク面積の比をS/Sとして算出する。
3.本発明のリチウムイオン二次電池負極材用粉末の製造方法
3−1.SiO粉末の製造方法
図3は、酸化珪素の製造装置の構成例を示す図である。この装置は、真空室5と、真空室5内に配置された原料室6と、原料室6の上部に配置された析出室7とを備える。
原料室6は円筒体で構成され、その中心部には、円筒状の原料容器8と、原料容器8を囲繞する加熱源10が配置される。加熱源10としては、例えば電熱ヒーターを用いることができる。
析出室7は、原料容器8と軸が一致するように配置された円筒体で構成される。析出室7の内周面には、原料室6で昇華して発生した気体状の酸化珪素を蒸着させるためのステンレス鋼からなる析出基体11が設けられる。析出基体11も、加熱源(不図示)によって加熱される。
原料室6と析出室7とを収容する真空室5には、雰囲気ガスを排出するための真空装置(図示せず)が接続されており、矢印A方向にガスが排出される。
図3に示す製造装置を用いてSiOを製造する場合、原料としてSi粉末とSiO粉末とを所定の割合で配合し、混合、造粒および乾燥した混合造粒原料9を用いる。この混合造粒原料9を原料容器8に充填し、不活性ガス雰囲気または真空中で加熱源10によって加熱してSiOを生成(昇華)させる。昇華により発生した気体状のSiOは、原料室6から上昇して析出室7に入り、周囲の析出基体11上に蒸着し、SiO析出物12として析出する。その後、析出基体11からSiO析出物12を取り外し、ボールミル等を使用して粉砕することにより、SiO粉末が得られる。SiO粉末の粒度は、D50=1μm〜30μmとする。D50とは、レーザー光回折法による粒度分布測定において、累積重量が全重量の50%となるときの粒子径またはメジアン径である。
析出基体11の温度は、450℃以上、800℃以下とし、SiO析出物12の厚さは10mm以下とする。析出基体11の温度が450℃未満の場合には、析出基体11上のSiO析出物12が過冷却状態となり、デンドライトが生成するため、SiO析出物12がポーラス(多孔質)となる。ポーラスなSiO粉末を負極材に用いたリチウムイオン二次電池では、充放電を繰り返したときのSiO粉末の膨張による構造崩壊がポーラスでない場合と比較して早期に生じるため、充放電容量の低下が早く、サイクル特性に劣る。
析出基体11の温度が800℃よりも高いと、SiOの不均化反応によって結晶性Siクラスターが生成する。リチウムイオン二次電池の充電時におけるSiの膨張係数は、SiOの4.4倍と大きい。そのため、結晶性Siクラスターが生成したSiO粉末を負極材に用いたリチウムイオン二次電池では、充放電による構造崩壊がSiOと比較して生じやすく、サイクル特性に劣る。
SiO析出物12が10mmよりも厚くなると、SiO自体の熱伝導率が低いことにより、SiO析出物12の表面温度を検知することが困難となる。そのため、析出基体11の温度が800℃以下であっても、SiO析出物12の表面温度が800℃よりも高くなり、SiOの不均化反応が生じるおそれがある。
3−2.SiO粉末の改質処理方法
次に、SiClを用いてSiO粉末の改質処理を行う。上記方法で得られたSiO粉末を、耐熱容器に入れ、加熱装置を用いてAr雰囲気中で500℃以上、900℃以下に加熱する。そして、SiO粉末の温度よりも100℃以上、500℃以下高い温度に加熱されたSiCl(1≦X≦4)とArの混合ガス(SiClの含有率が0.5体積%以上、50体積%以下)を、加熱装置内に導入する。この処理によって、SiO粉末に不可避的に含有されるHについてのNMRスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積を、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下とすることができる。
処理時間が長い場合には、SiO粉末の表面において下記(2)式で表されるSiCl不均化反応が生じ、SiO粉末の表面にSiの皮膜が生成する場合がある。
SiCl → mSi + nSiCl …(2)
ここで、mおよびnは係数であり、(2)式を満たす実数である。
Si皮膜は、厚さが1nm未満であれば、リチウムイオン二次電池の性能に影響を及ぼさず、1nm以上30nm以下ではリチウムイオン二次電池の放電容量を向上させる。しかし、厚さが30nmを超えると、リチウムイオン二次電池の充電時にSi皮膜が膨張して破壊されるため、改質処理の効果が相殺され、電池のサイクル特性を低下させることとなる。また、Si皮膜が生成した場合には、SiO粉末にSi皮膜を含めた状態で、SiOのxが、0.4≦x≦1.2を満足すればよい。
このSiO粉末の改質処理では、SiClガスを均一に接触させるため、SiO粉末を攪拌する必要がある。そのため、キルン等の装置を用いることが好ましいが、これには限定されない。
3−3.熱処理方法
続いて、改質処理を施したSiO粉末から表面に付着したCl原子を除去するための熱処理を行う。改質処理を施したSiO粉末を、Ar雰囲気中で、空気に触れないよう真空熱処理装置に入れ、真空ポンプで1Pa以上、10000Pa以下に減圧する。Ar雰囲気中で、Arを2L/min〜10L/minの流量で流しながら、装置内部の温度を100℃以上、400℃以下に保持する。装置内部の温度は150℃以上、250℃以下が好ましい。保持時間は特に限定しないものの、1時間以上、5時間以下が好ましい。ただし、好ましい保持時間はSiO粉末の量によって変化する。
4.リチウムイオン二次電池の構成
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材用粉末を用いた、コイン形状のリチウムイオン二次電池の構成例を、前記図1を参照して説明する。同図に示すリチウムイオン二次電池の基本的構成は、上述の通りである。
負極2を構成する作用極2cに用いる負極材は、本発明の負極材用粉末(活物質)とその他の活物質と導電助材とバインダーとで構成することができる。負極材中に占める本発明の負極材用粉末の含有率(負極材の構成材料のうち、バインダーを除いた構成材料の合計質量に対する本発明の負極材用粉末の質量の割合)は20質量%以上とする。負極材用粉末の他の活物質は必ずしも添加しなくてもよい。導電助材としては、例えばアセチレンブラックやカーボンブラックを使用することができ、バインダーとしては例えばポリフッ化ビニリデンを使用することができる。
本発明の効果を確認するため、以下の試験を行い、その結果を評価した。
1.試験条件
珪素粉末と二酸化珪素粉末とを配合し、混合、造粒および乾燥した混合造粒原料を原料とし、前記図3に示す装置を用いて析出基板上にSiOを析出させた。SiO析出物は、アルミナ製ボールミルを使用して粉砕し、D50=50μmの粉末とした。この粉末は、O/Simol比(SiOのxの値)が1.02であった。これは、粉末の表面に酸化膜が形成されたためである。この粉末に、SiClを用いたSiO粉末の改質処理および熱処理を、表2に示す条件で施した。また表2には、HについてのNMRによって測定したスペクトルにおける、0.2〜0.4ppmおよび1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積の、ピーク全体の面積に対する比の値(化学シフトピーク面積比)、ならびに熱処理後の粉末のO/Simol比も示した。
Figure 0005554845
表2に示す試験番号1〜4は本発明例であり、NMRスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下であった。さらに、試験番号1、3および4は、NMRスペクトルにおいて、1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、95%以下であった。試験番号5および6は比較例であり、NMRスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%未満、または40%よりも大きかった。
これらのSiO粉末を負極活物質として使用し、これに導電助剤であるカーボンブラックと、バインダーを配合し、負極材を作製した。負極材原料の配合比は、SiO粉末:カーボンブラック:バインダー=7:2:1とした。この負極材と、正極材としてLi金属を用いて、前記図1に示すコイン状のリチウムイオン二次電池を作製した。
2.試験結果
上記条件で作製したリチウムイオン二次電池について、初期効率およびサイクル容量維持率を指標として評価を行った。これらの結果を、試験条件と併せて表2に示す。ここで、初期効率とは、1回の充放電を1サイクルとした場合に、1サイクル目の充放電における、充電容量に対する放電容量の比の値(%)である。サイクル容量維持率とは、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比の値(%)である。
比較例のうち、試験番号6は、NMRスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の40%よりも大きく、初期効率が50.2%、サイクル容量維持率が64.1%といずれも低い値であった。また、試験番号5は、NMRスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%未満であり、初期効率が45.5%と低い値であったものの、サイクル容量維持率が88.5%と試験番号6よりも良好な値であった。
本発明例である試験番号1〜4は、初期効率が80.1〜97.8%、サイクル容量維持率が90.2〜97.2%といずれも優れた値であった。特に、試験番号1、3および4は、1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、95%以下であり、初期効率が85.5〜97.8%、サイクル容量維持率が94.7〜97.2%とより優れた値であった。
また、試験番号1〜4のリチウムイオン二次電池は、試験番号5および6のものより1回目の放電容量が大きかったことを確認した。
本発明のリチウムイオン二次電池負極材用粉末、およびリチウムイオン二次電池負極を用いることにより、放電容量および初期効率に優れ、かつサイクル特性が良好であるリチウムイオン二次電池を得ることができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、放電容量および初期効率に優れ、かつサイクル特性が良好である。したがって、本発明は、二次電池の分野において有用な技術である。
1:正極、 1a:対極ケース、 1b:対極集電体、 1c:対極、
2:負極、 2a:作用極ケース、 2b:作用極集電体、
2c:作用極、 3:セパレータ、 4:ガスケット、 5:真空室、
6:原料室、 7:析出室、 8:原料容器、 9:混合造粒原料、
10:加熱源、 11:析出基体、 12:酸化珪素

Claims (4)

  1. SiO(0.4≦x≦1.2)からなり、不可避的に含有されるHについての核磁気共鳴分光法によって測定されるスペクトルにおいて、0.2〜0.4ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、40%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池負極材用粉末。
  2. Hについての核磁気共鳴分光によって測定されるスペクトルにおいて、1.1〜2.0ppmの化学シフトのピーク面積が、ピーク全体の面積の5%以上、95%以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池負極材用粉末。
  3. 請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池負極材用粉末を用いたリチウムイオン二次電池負極。
  4. 請求項3に記載のリチウムイオン二次電池負極を用いたリチウムイオン二次電池。
JP2012551852A 2011-01-07 2012-01-04 リチウムイオン二次電池負極材用粉末、これを用いたリチウムイオン二次電池負極およびリチウムイオン二次電池 Active JP5554845B2 (ja)

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