JP5552273B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents

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本発明は、インクジェット記録用紙に関するものである。特に、基材を薄物化しても、インクジェット記録適性に劣ることのないインクジェット記録用紙に関するものである。
インクジェット記録方式は、フルカラー化が容易であり、記録時の騒音が小さいため、このインクジェット記録方式に適したインクジェット記録用紙が、現在では、汎用されている。この種のインクジェット記録用紙に対しては、滲みが少なくインク吸収性に優れること、紙面の平滑性や光沢性に優れること、印字濃度が高いこと、印字耐水性が高いことなどが要求される。
一般的にインクジェット記録用紙は、基材に顔料及びバインダーを構成成分とする塗工液を、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータなどを用いて塗工することにより得られる。この際に使用する顔料としては、例えば、非晶質シリカや、合成シリカ、クレー、炭酸カルシウムなど、様々なものが存在するが、比表面積の大きいシリカを使用すれば、インクの吸収性が高くなるため、好ましいとされている。
例えば、特許文献1は、吸油量150〜350ml/100gの微粒子合成珪酸と水溶性高分子接着剤とを主成分とし、密度が0.70〜0.75g/cm3のインク受容性被覆層が設けられたインクジェット記録用紙を開示する。
しかしながら、これら従来のインクジェット記録用紙に、業務用のインクジェットプリンターを用いて記録する場合は、家庭用のインクジェットプリンターを用いて記録する場合と異なり、その高速性ゆえに、インクジェットインクの吸収性が必ずしも十分ではなくなり、滲み防止の点でも満足できるものではなくなる。
そこで、インクジェットインクの吸収性向上や滲み防止のために、水等の親水性溶剤を使用した水系インクではなく、非水系溶剤に顔料を溶解又は分散させて調整した非水系インクを使用し、もって高速印刷を可能にしたインクジェットプリンターが開発されている。
しかしながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンター記録においても、多量のインクジェットインクを使用した記録時には、インクジェットインクの吸収性や滲みの問題、更には、いわゆる裏抜けの問題が生じ、また、インクジェット記録用紙の波打ちが生じ易くなり、結果、インクジェットプリンターの用紙入口でインクジェット記録用紙が引っ掛かったり、ライン状のインクヘッドに擦れたりする場合がある。
また、非水系インクは、顔料と非水系溶剤との親和性が高いため、当該顔料が塗工層上に留まりにくく、非水系溶剤とともに塗工層内部、場合によっては基材にまで浸透し、インクの裏抜けや印字濃度の低下の問題を生じ易い。
この点、例えば、前述特許文献1などは、「本発明のインクジェット記録用紙は、インク受容性被覆層が低塗工量で、且つインク受容性被覆層のインク吸収性を高くするために、記録されたインクがインク受容性被覆層のみならず紙層内部に吸収され、その結果として見掛け上乾燥した状態になる」としているが、非水系インクを使用すると、当該原理が逆に裏抜け等の問題点となって表れるため、インクジェット記録用紙を、「水性」インクジェット記録用紙に限定している。
このようなことから、非水系インクを使用する業務用のインクジェットプリンターを用いてインクジェット記録を行うにあたっては、インクジェット記録用紙として、坪量80〜95g/m2の用紙が主に使用されている(例えば、特許文献2参照)。この引用文献2は、顔料と結着剤を主成分とするインク受理層をカーテン塗工方式又はダイ塗工方式から選ばれる少なくとも一つの塗工方式によってインク受理層の塗工量が2〜10g/m2となるように設けられ、かつ前記インク受理層に含有される顔料は吸油量150〜250ml/100gの合成非晶質シリカであることを特徴とし、段落0034の実施例において基紙の坪量が80g/m2とされたインクジェット記録用紙が開示されている。そして、この引用文献2は、段落0023で「カーテン塗工方式及びダイ塗工方式は膜厚の均一な塗工層を得るのに最も適したコーターであり、また、基紙の状態( すなわち表面性) が悪く、凹凸が大きかったり湿潤状態であったりしても、これらにあまり影響されることなくインク受理層を塗布することができる」とし、また、段落0026で「本発明においては、インク受理層を両面に設けて両面印字する際に発生する「裏抜け」とよばれる問題を防止することができる。この理由は明らかではないが、カーテン塗工方式及びダイ塗工方式で形成したインク受理層は均一であるため、インク中の着色顔料が基紙中に浸透しにくくなるためと考えられる」としている。
しかしながら、坪量が75g/m2以下の低坪量のインクジェット記録用紙においては、基材の厚みが薄くなるため、均一な塗工層膜を基材上に設けるのみでは、基材表面の凹凸や基材の地合いムラにより浸透性の高い非水系インクの浸透ムラが生じ、裏抜けの問題が発現する。
なお、インクジェット記録用紙を業務用としても用いることができるようにするためには、従来から電子写真記録方式において多用されている電子写真記録用紙と同様な手肉感、作業性を有するインクジェット記録用紙とすることが肝要であり、好ましくは坪量を64g/m2程度に低減する必要がある。しかしながら、単に坪量を低減したのみでは、浸透性の高い非水系インクが塗工層を経て基材に至り易く、裏抜けの問題が発現する。
特開平5‐139023号公報 特開2006‐240270号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じない非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を提供することにある。
本発明者等は、以上の現状に鑑み鋭意研究した結果、インクジェット記録用紙の、特に記録面に設ける塗工層の構成を特定し、塗工層の密度を高くすることにより、坪量を60〜75g/m2と低坪量化しても、十分な裏抜け防止効果、手肉感(剛度)が得られ、しかも印字ムラの抑制が図れ、インクジェットプリンターにおける搬送性にも優れることを見出し、次に示す本発明を完成するに至った。
なお、本発明において、基材の「記録面」とは、塗工層を介してインクジェット記録される側の面を意味し、インクジェット記録等がされている面を意味するものではない。
〔請求項1に記載の発明〕
基材の少なくとも記録面に塗工層を有する坪量60〜75g/m2非水系インク用のインクジェット記録用紙であって、
前記塗工層は、ポリビニルアルコール系重合体をバインダーとして含有し、沈降性シリカを微粒子充填剤として含有し、かつ、前記塗工層の密度が0.9〜2.0g/cm3であり、
JIS P 8143に準拠したクラーク剛度(横方向)が15〜30cm3/100で、かつ、
下記条件で測定した、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度、
トルエン吸油度が30〜100秒、
ブリストー吸水度が200〜300mm(50mm/sec)である、
ことを特徴とする非水系インク用のインクジェット記録用紙。
[動的接触角]
非水系インクとして「ORPHIS純正専用インク、RISO X インクのブラック」を使用し、4μl滴下したときの1秒後の接触角
[トルエン吸油度]
試験油としてトルエン(米山薬品工業(株)製)を使用し、旧JIS P 8130の吸油度試験方法に準拠して、測定した値
[ブリストー吸水度]
J.TAPPI試験法No.51に準拠して、25mm/secにて、記録用紙の塗工層側面の流れ方向で測定した、測定長さの値
〔請求項2に記載の発明〕
前記基材中に、填料として古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とし、この主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕の各工程を経て得られる再生填料が含有されている請求項1記載の非水系インク用のインクジェット記録用紙。
〔請求項3に記載の発明〕
前記沈降性シリカは、嵩密度が0.05〜0.20g/cm3、吸油量が100〜300ml/100gであり、
前記ポリビニルアルコール系重合体は、重合度が500〜1500の完全ケン化ポリビニルアルコールである、
請求項1又は請求項2記載の非水系インク用のインクジェット記録用紙。
本発明によると、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙となる。
製造設備の概要図である。 第2燃焼炉の概要図で、(a)は縦断面図、(b)は内面の展開図である。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
本形態のインクジェット記録用紙は、基材の一方又は両方の記録面にポリビニルアルコール系重合体をバインダー成分として含有し、かつ沈降性シリカを微粒子充填剤として含有する塗工層を有し、坪量が60〜75g/m2であり、塗工層の密度が0.9〜2.0g/cm3であり、クラーク剛度(横方向)が15〜30cm3/100で、かつ非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度である、との特徴を有する。
〔用紙坪量及び塗工層密度等〕
本形態のインクジェット記録用紙は、現状のインクジェト記録用紙の薄物化として、坪量が既存の普通紙やPPC用紙に近く、坪量が60〜75g/m2で、かつ、塗工層の密度が0.9〜2.0g/cm3である。好ましくは、坪量が65〜75g/m2で、かつ、塗工層の密度が1.0〜1.5g/cm3である。
坪量を60〜75g/m2と低坪量とすることで、塗工層に対する平坦化処理時の物理的圧縮力が掛かりやすくなり、かつ、塗工層が、ポリビニルアルコール系重合体をバインダー成分として含有し、沈降性シリカを微粒子充填剤として含有することで、塗工層その物の密度が高くなりやすくなり、塗工層の密度を後述する平坦化処理手段で0.9〜2.0g/cm3とすることが容易になるとともに、インクジェット記録用紙の薄物化において、特に、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いて記録した際のインクの裏抜けや印字濃度低下の問題、インクジェットプリンターでの搬送性の問題が改善される。
また、本形態によると、塗工層を平坦化手段で高密度にするため、単位厚みあたりの塗工層成分の構成ムラや偏在が是正され、塗工層の乾燥時に当該塗工層中に含有させる沈降性シリカが基材側に偏在することが少ない。また、記録手段に用いるインクジェット記録インクが非水系インクの場合、疎水性バインダー成分が表面に偏在してしまっても、インクによる滲み等が発生しにくく、インクを均一に分散させたまま乾燥することができる。つまり、非水系インクの吸収乾燥性において好ましい。
より詳細には、坪量が60g/m2未満ではインクの裏抜けが十分に防止されず、他方、坪量が75g/m2を超えると所望の手肉感が得られず、業務用の記録用紙として使用し難いという問題を解決できなくなる。また、坪量が75g/m2を超えると市場のニーズとしての薄物化での作業性を満足することができなくなり、しかも嵩張るため物資搬送性に欠けることになる。
一方、塗工層密度が0.90g/cm3未満では非水系インクの吸収性は良くなるが、インクが塗工層で広がらずドット径が小さくなり、裏抜けの問題や印字濃度が落ちてしまうとの問題が生じる。他方、塗工層密度が2.0g/cm3を超えると、非水系インクの吸収性が悪くなるため、インクの滲みにより印字等がぼけてしまうおそれや、乾燥が遅く高速インクジェット記録においてヘッド部にインクが付着し、装置のみならず印刷物が汚れてしまうおそれがある。
また、本形態のように、坪量を60〜75g/m2とし(薄物化)、浸透乾燥するインクジェット記録をする場合は、必然的に裏抜けの問題が生じやすくなる。しかしながら、塗工層が、被膜性の高いポリビニルアルコール系重合体をバインダー成分として含有し、沈降性シリカを充填剤として含有すること、より好適には、沈降性シリカ100質量部に対して、前記ポリビニルアルコール系重合体を10〜30質量部、定着剤を10〜50質量部含有する構成とすることで、平坦化処理手段にて塗工層の密度を0.90〜2.0g/m2にすることが可能となり、坪量を60〜75g/m2と薄物化しても、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いたインクジェット記録において、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙となる。
また、本形態のインクジェット記録用紙において、塗工層は、密度が0.9〜2.0g/cm3であれば特に限定されないが、この範囲においても、塗工層の厚さが1.0〜35.0μmであるとより好ましく、厚さが5.0〜35.0μmであると特に好ましい。塗工層の厚さが1.0μm未満であると、インクが塗工層中で止まらずに裏抜けの問題が生じる。他方、塗工層の厚さが35.0μmを超えると、浸透性の高い非水系インクが塗工層で広がり過ぎ、印字濃度が落ちてしまう問題が生じる。
本発明者等の知見では、坪量を60〜75g/m2と薄物化するにおいて、浸透乾燥する非水系インクを用いたインクジェット記録手段を用いた場合、塗工層表層近傍で非水系インクの吸収乾燥を迅速に図ることが、課題となるインクの裏抜けや印字濃度低下に対し有効であり、更に薄物化による記録装置での搬送性低下に対しても、塗工層の構成が要点となることから、坪量を60〜75g/m2と薄物化するとともに、塗工層の密度を0.9〜2.0g/cm3とし、塗工層を構成するバインダー成分にポリビニルアルコール系重合体を用い、更に塗工層中に沈降性シリカを含有させることによる相乗効果により、本件発明の課題であるインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙を得る技術を見出したものである。
〔沈降性シリカ〕
本形態のインクジェット記録用紙は、塗工層が沈降性シリカを充填剤(顔料)として含有する。従来からインクジェット記録方式に供せられるインクジェット記録用紙のインク受容層には、各種シリカが用いられているが、本発明者らが鋭意検討を行なった結果、各種シリカの中でも非晶質シリカが本件発明におけるインク受容層に含有させる顔料として、ポリビニルアルコールや定着剤との組合せ、非水系インクに対するインク吸収乾燥性に優れ、更に、非晶質シリカの中でも特に沈降法シリカは、ポーラスな凝集構造を形成しているため、加圧に対して易変型性を有する微粒子充填剤であり、外圧がかかるとその形状が変化する。その結果、カレンダー等による平坦化処理により、塗工層の密度が密になり、坪量を60〜75g/m2と薄物化した場合でも、塗工層の密度を0.9〜2.0g/cm3とし、塗工層を構成するバインダー成分にポリビニルアルコール系重合体を用い、更に塗工層中に沈降性シリカを含有させることによる相乗効果により、本件発明の課題であるインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙を得ることができる。
つまり、前述したように、インクジェット記録用紙の薄物化において、特に、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いて記録した際のインクの裏抜けや印字濃度低下の問題、インクジェットプリンターでの搬送性の問題を改善するためには、塗工層の密度を所望の範囲に調整する必要があり、所望の塗工層密度を得るために、用紙坪量と塗工層密度との組み合わせにおいて、沈降性シリカを塗工層顔料として用いること、更に、塗工層のバインダー成分にポリビニルアルコール系重合体を用いることが必要であり、このポリビニルアルコール系重合体による強固な結合力により、著しい造膜性を発現する結果、卓越した用紙表面のバリヤー性を発揮し、組合せとして塗工層中に沈降性シリカを含有させること、より好ましくは定着剤にポリアミン系定着剤を用いることによる相乗効果により、本件発明の課題であるインクの裏抜けや印字ムラ、印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙となる。
本形態の沈降法シリカは、嵩密度が0.05〜0.20g/cm3、吸油量が100〜300ml/100gであるのが好ましい。より好ましくは、嵩密度が0.07〜0.15g/cm3、吸油量が150〜275ml/100g、特に好ましくは、嵩密度が0.09〜0.10g/cm3、吸油量が200〜250ml/100gである。沈降法シリカの嵩密度が0.05g/cm3未満であると、用紙の表面強度が低くなり過ぎるおそれがあり、他方、0.20g/cm3を超えると、塗工液の分散時に安定性を失ってしまうおそれがある。
なお、本形態において、嵩密度とは、JIS H 1902に準拠して、測定した値である。
一方、沈降法シリカの吸油量が100ml/100g未満であると塗工層のインク吸収性が低くなり過ぎ、裏抜けの要因となるおそれがあり、他方、吸油量が300ml/100gを超えると非水系顔料インクが使用された場合に印字濃度が低くなり過ぎるおそれがあり、しかも塗工層の表面強度が低くなり過ぎるおそれがある。
なお、本形態において、吸油量とは、JIS K 5101顔料試験方法に基づいて、測定した値である。
〔ポリビニルアルコール系重合体〕
本形態のインクジェット記録用紙は、塗工層が水溶性組成物としてのポリビニルアルコール系重合体をバインダー成分として含有する。ポリビニルアルコール系重合体としては、特にポリビニルアルコール(PVA)が好適に選択される。
本発明者らは、塗工層の好適な構成である、微細粒子としての沈降性シリカや、定着剤としてのポリアミン系樹脂と所定の割合で組み合わせて用いるにあたり、好ましくはケン化度90%以上のポリビニルアルコールによると、その強固な結合力により著しい造膜性を発現する結果、卓越した用紙表面のバリヤー性を発揮するため、水性組成物(塗工液)中に含まれる沈降性シリカ、定着剤との組み合わせによる相乗効果により、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙を得ることができる。
ポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールや、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール等が市販されている。しかしながら、本発明者らの知見では、塗工層の密度を所望の範囲に調整するために、低粘調である重合度500〜1500のポリビニルアルコールが好適である。ポリビニルアルコールの重合度が500〜1500であると、前述沈降性シリカの均一分散性に優れ、また、塗工層密度を平坦化処理によって所望の範囲に調整し易くなる。
ポリビニルアルコールの重合度が500未満であるとインク吸収性は向上するが、顔料インクが使用された場合に印字濃度が低下する傾向があり、他方、重合度が1500を超えると高い粘調を呈するため、沈降性シリカの均一な分散が得られにくく、平坦化処理においても塗工層の密度変化が乏しく、所望の密度を得がたくなるおそれがある。
より好適には、ポリビニルアルコールとして、完全ケン化ポリビニルアルコールを、更に好適には、ケン化度90〜100のポリビニルアルコールを、特に好適には、ケン化度97〜100のポリビニルアルコールを用いる。ケン化度が90未満のポリビニルアルコールは、吸湿性や溶解度が高く、非水系インクを用いた場合に、過度に塗工層や基材へインクが浸透したり滲みが生じたりするおそれがある。また、ケン化度90〜100のポリビニルアルコールを使用することで、その強固な結合力により著しい造膜性を発現する結果、卓越した用紙表面のバリヤー性を発揮し、塗工層表面が耐水性・耐熱性を有して被膜性に優れることとなり、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いて記録した際のインクの裏抜けや印字濃度低下の問題、インクジェットプリンターでの搬送性の問題を改善することができ、剛度の向上やインクの転移も防ぐことができるとともに、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙となる。
〔定着剤〕
本形態の塗工層には、以上のポリビニルアルコール系重合体、沈降性シリカのほか、インクの塗工層への定着を良くするという観点から、定着剤を含有させると、好適である。
定着剤の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、二級アミン、三級アミン、及び四級アンモニウム塩としてポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルアミンアクリルアミド共重合体塩、ポリスチレンの四級アンモニウム塩等を用いることができる。
本形態のインクジェット記録用紙に好適に用いることができる非水系インクジェットインクに対しては、変性のポリアミン系定着剤が好適に用いられ、より好適には2種類の性状の異なる定着剤を組み合わせて用いることが好ましい。
また、理由は定かではないが、塗工層中における定着剤の含有割合が比較的多い場合(例えば、30質量%を超える場合)は、分子量が150万を超える高分子量のポリアミン系定着剤を、定着剤の含有割合が少ない場合(例えば、30質量%未満の場合)は、分子量が150万以下の低分子量のポリアミン系定着剤を用いることが、多種の非水系インクを組み合わせてフルカラー記録する場合に定着性を向上させることができ好ましいとともに、ポリビニルアルコール系重合体、沈降性シリカと組み合わせ、多次元的な塗工層を構成し、塗工層密度を0.9〜2.0g/m2の範囲に調整するに好ましい挙動を示すことが知見された。
分子量の異なるポリアミン系定着剤としては、分子量が約100万の水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6850 星光PMC社製)や、分子量が約300万の水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6852 星光PMC社製)が例示される。
〔塗工層の含有割合〕
本形態の塗工層は、沈降性シリカ100質量部に対して、ポリビニルアルコール系重合体を10〜30質量部、定着剤を10〜50質量部含有するのが好ましく、ポリビニルアルコール系重合体を13〜25質量部、定着剤を20〜40質量部含有するのがより好ましい。ポリビニルアルコール系重合体が10質量部未満では、バインダー不足により塗工層へのキズや紙粉が発生しやすくなり、他方、30質量部を超えるとインク吸収性がやや低下する。一方、定着剤が10質量部未満では、インクの定着性が十分でなく、印刷後の退色(色あせ)が発生しやすい。他方、50質量部を超過すると塗工層中でインクが拡散しやすく、ムラが発生する。
本形態においては、沈降性シリカ100質量部に対して、ポリビニルアルコール系重合体10〜30質量部、定着剤10〜50質量部を組み合わせて用いることにより、沈降性シリカの塗工層中での保持や記録的性向上が図れ、これらの相乗効果により、課題である低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙を得ることができる。
〔インクジェット記録用紙の物性〕
本形態のインクジェット記録用紙は、JIS P 8143に準拠したクラーク剛度(横方向)が15〜30cm3/100で、かつ、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度であり、また、トルエン吸油度が30〜100秒、ブリストー吸水度が200〜300mm(50mm/sec)であると好適である。より好適には、クラーク剛度(横方向)が20〜29cm3/100、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が8〜20度、トルエン吸油度が40〜80秒、ブリストー吸水度が225〜275mm(50mm/sec)である。特に好適には、クラーク剛度(横方向)が18〜22cm3/100、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が10〜15度、トルエン吸油度が50〜60秒、ブリストー吸水度が240〜260mm(50mm/sec)である。
このように各種物性を特定するとともに、ポリビニルアルコール系重合体をバインダー成分として含有し、沈降性シリカを充填剤として含有し、定着剤を所定の割合で含有する塗工層を設け、坪量を60〜75g/m2とし、塗工層の密度を0.9〜2.0g/cm3とすることで、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いて記録した際のインクの裏抜けや印字濃度低下の問題、インクジェットプリンターでの搬送性の問題が改善された、薄物のインクジェット記録用紙となる。
より詳細には、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度であると、インクに含まれる溶剤の吸収性が適度となり、塗工層にインクが広がり、インクに含まれる顔料が塗工層に留まるようになる。これに対し、動的接触角が5度未満であると、インクに含まれる溶剤の吸収性が低過ぎて、インクが塗工層上において過剰に広がり滲んでしまうおそれがある。他方、動的接触角が30度を超えると、インクに含まれる溶剤が基材にすぐに浸透してしまい、インクに含まれる顔料が塗工層に留まらず、裏抜けの要因となる。
なお、本形態において、動的接触角とは、インクジェット記録用紙の塗工層側の面に非水系インクを滴下した場合における1秒後の接触角であり、より詳細には、動的接触角測定装置(DCA‐VZ 協和界面科学(株)製)を用いて、測定溶媒としてORPHIS純正専用インク、RISO X インクのブラックを使用し、4μl滴下したときの1秒後の接触角である。
本形態において、トルエン吸油度は、非水系インクに含まれる溶媒の浸透性と、当該インクに含まれる顔料の塗工層中への留まり具合を好適とするためのものである。トルエン吸油度を30〜100秒に調節することで、非水系インクに含まれる溶剤の親油性及び塗工層の平坦化処理との相乗効果により、塗工層及びその表面上にインクに含まれる顔料を留まらせることができるようになる。
なお、本形態において、トルエン吸油度とは、試験油としてトルエン(米山薬品工業(株)製)を使用し、旧JIS P 8130の吸油度試験方法に準拠して、測定した値である。
一方、ブリストー吸水度が200mm未満であると、インクの吸収性が向上し過ぎて、裏抜けが生じるおそれがあり、また、塗工液中のバインダーが基材に浸透して塗工層の強度が低下してしまうおそれがある。他方、ブリストー吸水度が300mmを超えると、インクの吸収速度が低下し、特に混色時において滲みが生じ易くなる。
なお、本形態において、ブリストー吸水度とは、J.TAPPI試験法No.51に準拠して、25mm/secにて、記録用紙の塗工層側面の流れ方向で測定した、測定長さの値である。
さらに、クラーク剛度(横方向)が15cm3/100未満であると、吸湿時の波打ちにより、印刷時における紙詰まりやインクヘッド部との接触による汚れが生じるおそれがある。他方、クラーク剛度(横方向)が30cm3/100を超えると、用紙が曲がりにくくなるため、両面印刷時などにおいてインクジェットプリンターでの搬送時に紙詰まりが生じるおそれがある。
なお、本形態において、クラーク剛度とは、JIS P 8143に準拠して測定した値である。
〔基材〕
本形態のインクジェット記録用紙において用いることができる基材としては、紙類を例示することができ、好ましくは木材等のパルプを主成分とする紙シートである。この基材の主成分として用いられるパルプとしては、例えば、LBKPやNBKP等の化学パルプ、GP、TMP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプなどを例示することができる。
本形態において好適に使用できる原料パルプの構成においては、所定の剛度を確保しながら塗工層の密度を0.9〜2.0g/cm3とするために、塗工層がポリビニルアルコール系重合体をバインダーとして含有し、沈降性シリカを充填剤として含有し、より好適には沈降性シリカ100質量部に対して、ポリビニルアルコール系重合体を10〜30質量部、定着剤を10〜50質量部含有する構成を採用すると共に、濾水度が450〜550ccの広葉樹晒クラフトパルプと、濾水度が500〜650ccの針葉樹晒クラフトパルプと、古紙パルプとを、50〜70:5〜15:20〜40の割合の範囲で調整した濾水度400〜500ccの原料パルプを用いることが、平坦化処理時における剛度の低下を抑えながら塗工層の密度を所定の範囲に調整するにおいて好ましい。特に本形態においては、全原料パルプに対し古紙パルプを20〜40質量%の割合で用いることで、古紙パルプ特有の形状である平坦にひしゃげた古紙パルプ繊維が、その平坦性により非水系インクの浸透性を抑える効果を発現するため好ましい。古紙パルプの配合割合が20質量%未満では古紙パルプ配合効果が十分に発揮されず、他方、配合割合が40質量%を超えると剛度低下が生じるため好ましくない。
本形態の基材は、用紙の坪量が60〜75g/m2であれば、その厚さが特に限定されないが、基材を紙類とする場合は、JIS P 8118に準拠した紙厚を70〜90μmとするのが好ましく、紙厚を75〜85μmとするのが特に好ましい。紙厚が90μmを超えると、基材のクッション性が高くなり過ぎるため、後述する平坦化処理において、塗工層の密度を調節するのが難しくなり、部位によって塗工層の密度にばらつきのあるインクジェット記録用紙となるおそれがある。他方、紙厚が75μm未満であると、手肉感がなくなりペラペラとした腰のない紙となりインクジェット印刷機内での搬送性不良や業務用の書類として取扱い難い用紙となるおそれがある。
基材の原材料としては、パルプの他に、填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、染料、蛍光増白剤等が適宜使用される。
填料としては、非晶質シリカ、焼成カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、後述する再生填料等が、不透明度付与、インクの裏抜け防止、インク吸収性の付与等の目的で配合される。好適には、塗工層を所定の密度に調整しながら、手肉感を維持するため、クッション性が高く、比較的アスペクト比が低い、好ましくは再生填料やアスペクト比50未満の炭酸カルシウムを内添する。そこで、以下、基材に内添することができる填料である再生填料について説明する。
(再生填料)
本形態において使用することができる再生填料の製造方法は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とし、この主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕の各工程を経て、再生填料を得る方法であって、前記脱水工程後の原料の乾燥(工程)と燃焼(工程)とを一連で行う先の第1燃焼炉(好ましくは内熱キルン炉)と、この第1燃焼炉にて燃焼された原料を再度燃焼する後の第2燃焼炉とを含む、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、その後に粉砕(工程)し、再生填料を得るものである。
そして、前記燃焼工程は、第1燃焼炉(内熱キルン炉)において、炉内の酸素濃度を0.2〜20%とし、燃焼温度を300〜500℃として燃焼処理し、第2燃焼炉において、第1燃焼炉からの燃焼物を550〜780℃の温度で再燃焼処理すると好適である。
この点、本形態において使用する再生填料の主原料となる、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスは、無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や、塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含む。このため、燃焼工程の燃焼処理においては、脱墨フロスそのものが燃焼反応(酸化)するため、熱風等による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を引き起こすことを、本発明者等は、知見した。
このような過剰な燃焼は、(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く、(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質が生じやすくなって抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する、(3)原料の溶融により凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率の低下が生じる、(4)原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留し、結果として白色度の低下を招く等の問題を生じさせる。
そこで、このような問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、燃焼工程を第1燃焼炉及び第2燃焼炉の少なくとも2段階で構成し、第1燃焼炉の燃焼温度(炉内温度)を、主原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるに必要なだけの温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることで、前記問題を解決できることを見出し、本インクジェット記録用紙に使用することができる再生填料を完成するに到ったものである。
また、第1燃焼炉内において、主原料である脱墨フロスを燃焼させるために必要な酸素濃度0.2〜20%を確保する。これにより、脱墨フロス中に含有される有機物の未燃焼や過剰燃焼を抑制する炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼による硬質物質の発生や難燃性のカーボンブラックの発生を抑制しやすくなる。
さらに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、主原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。より具体的には、主原料となる脱墨フロスは、脱水(工程)後の水分率が40〜90%、好ましくは40〜70%、より好ましくは45〜70%の高含水状態で、第1燃焼工程の第1燃焼炉内に供給されることが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。
すなわち、主原料である脱墨フロスを、第1燃焼工程の第1燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1燃焼炉内において水分が蒸発し、これにより第1燃焼炉内の温度が低下する。この結果、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進することができ、過剰な燃焼を抑制することができるものと考えられる。
また、第1燃焼工程の後の燃焼工程である第2燃焼工程の第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することが好ましく、これにより、原料を均一に燃焼することができ、再生填料の品質の均一化を図ることができる。
すなわち、上述したように、第1燃焼工程の第1燃焼炉では、300〜500℃という低い燃焼温度で、主原料である脱墨フロスの燃焼処理を行い、原料中から、原料に含有される有機物を燃焼ガス化し、この燃焼ガスを燃焼(酸化)させて、均質な第1燃焼炉の燃焼物を得るものであり、その後の第2燃焼工程では、白色度を低下させる原因となる、残留する炭素分をできる限り燃焼させる必要がある。このため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2燃焼工程の第2燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフターを用い、原料の搬送速度を調整する。もっとも、公知のリフターは、一般的に鉄素材で製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有されてしまい、この結果、鉄の酸化により白色度が低下し、再生填料の品質が低下するという問題を招く。そこで、ステンレス製のリフターを第2燃焼炉に設けることで、鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、均一な品質を有する高品質の再生填料を製造する。
ここで第2燃焼炉としては、外熱キルン炉及び内熱キルン炉のどちらをも適宜採用することができる。ただし、外熱キルン炉はバーナーの直火が原料に直接晒されないため、原料の過剰燃焼を防止でき、第2燃焼炉の燃焼物を均一な焼成品質とすることができ、また高い白色度が得られるという利点がある。他方、内熱キルン炉は、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できる利点がある。したがって、第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて外熱キルン炉又は内熱キルン炉のいずれかを適宜選択できるが、いずれの方式についてもリフターを設けることが好適である。
また、本形態において、より好適には、先の第1燃焼炉として内熱のものを用い、後の第2燃焼炉として外熱のものを用いる。そして、当該燃焼炉としては、従来から慣用的に用いられてきた、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の種々のものを用いることができる。しかしながら、これらの燃焼炉を使用して再生填料製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
まず、ストーカー炉(固定床)は、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一となるうえに、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵が生じるため適さない。また、火格子を通して燃焼物の下から空気を吹き上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留りの低下が問題となる。さらに、燃焼物が燃焼炉のストーカ(階段状)を所定幅で通過しながら燃焼されるため、灰の撹拌が不十分となり、幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、珪砂は硬度が高いため、摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
また、流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、流動媒体が再生填料中に混入し品質の低下を招く問題が生じる。しかも、流動媒体として珪砂を使用した場合、珪砂は再生填料より硬度が高いため、均一に粉砕するのが難しい。また、硅砂を流動層に混合して燃焼させた場合、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すのが好ましいが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離することが難しい。しかも、硅砂の上に再生填料が浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼度合いの調整が困難であり、得られた燃焼物の品質にばらつきが発生してしまう。
さらに、サイクロン炉については、燃焼物が炉内を一瞬で通過してしまうため、燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず、再生填料の白色度の低下に繋がる。また、風送により、細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に送られるため歩留りが低下する。
以上の各炉の諸問題を考慮した結果、本形態において使用する再生填料の製造に用いる燃焼炉としては、キルン炉、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の種々の燃焼炉を用いることができるものの、キルン炉を用いることが好適である。また、外熱の第2燃焼炉として、重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼炉を採用することもできる。
本形態の製造方法において、好適には、脱水工程を経た後の原料を、乾燥工程と燃焼工程とが一連の工程で行われる第1の燃焼工程に送る。この第1燃焼工程における燃焼炉においては、燃焼時間(滞留時間)が30〜90分、好ましくは40〜80分、より好ましくは50〜70分とされ、また、燃焼炉として、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉が用いられ、脱水工程を経た後の原料の乾燥及び第1燃焼を行う。
また、第2燃焼工程の第2燃焼炉においては、燃焼時間(滞留時間)が60分以上、好ましくは60〜240分、より好ましくは90〜150分、特に好ましくは120〜150分とされ、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に好ましくは燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉が用いられ、第1燃焼炉で得られた燃焼物を再度燃焼する。
以上のように、第1燃焼炉として、乾燥及び燃焼を1つの炉で行うことができる内熱キルン炉を用いると、第1燃焼炉の供給口から排出口に至るまで、緩やかに、かつ安定的に乾燥及び燃焼が進行し、燃焼物の微粉化を抑制することができる。また、第2燃焼炉として外熱キルン炉を用いると、第1燃焼された燃焼物を所定の滞留時間をもって他端部の排出口から排出でき、しかも、外熱により燃焼物に対して均一に熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキが生じない。加えて、キルン炉の内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに撹拌されるため、燃焼物の微粉化をより抑制することができる。結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなる。
以上のように、乾燥工程及び燃焼工程を少なくとも2つの燃焼炉を用いて、好適には内熱キルン炉及び外熱キルン炉を用いて、2段階で行うことで、均一で、白色度の高い再生填料を得ることができる。
外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成であり、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるために多量の熱源が必要になる。したがって、第1燃焼炉として外熱キルン炉を用いると、脱水工程を経た後の原料は、上述したように高含水状態であるため、乾燥・燃焼効率が低くなる。結果、再生填料の生産性が悪くなるとともに、温度の制御が難しく、また、多大なエネルギーコストを必要とし、費用に対する効果が極めて低くなる。
他方、第2燃焼炉として内熱キルン炉を用いると、第1燃焼炉で得られた燃焼物の残カーボンを燃焼するにおいて、多量の希釈空気を投入しないと、燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることができず、炉内温度の調整が難しい。したがって、燃焼物の過剰燃焼や、燃焼物の燃焼ムラが生じやすく、均一な焼成物を得にくく、再生填料の白色度が低下するという問題が発生する。また、通常、内熱キルン炉の加熱には重油バーナーが用いられるが、重油バーナーを用いると、重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等の白色度の低い粒子が発生し、得られる再生填料の白色度の低下や、バラツキが生じ、均一な品質とすることが難しくなる。
本形態において、好適な第1燃焼炉や第2燃焼炉として用いられる内熱キルン炉や外熱キルン炉は、内部耐火物を、円周状でなく、六角形や八角形とすることができ、これにより、燃焼物を滑らせることなく持ち上げて撹拌することができる。しかしながら、現実には、キルン炉は円筒形であるため、燃焼物撹拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼を行い、品質の均一化を図ることができる点で好適である。これは、第1燃焼炉において、原料を300〜500℃という低温でじっくり原料全体を燃焼することと同様に、第2燃焼炉においても原料を緩慢に適度に撹拌しながら燃焼処理を施すためである。
次に、本形態において使用することができる再生填料の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
〔概要〕
図1は、本インクジェット記録用紙の基材に内添される再生填料の、一実施形態に係る製造設備フロー図である。なお、以下に説明するように、この再生填料の製造工程は、脱水工程、乾燥・燃焼工程、及び粉砕工程を有するが、この他、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程、更には各工程間に分級工程等を設けてもよい。また、本設備には、各種センサーが備わっており、原料(被燃焼物)や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
図示しない古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により、水分率が40〜90%、好ましくは45〜70%、より好ましくは50〜60%の高含水状態となるように脱水される。この脱水後の原料10は、図示しない粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径となるように粉砕しておくことが望ましい。
かかる原料10は、貯槽12から切り出されて、装入機15により、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である第1燃焼炉14の一方側から、第1燃焼炉14に装入される。また、第1燃焼炉14の一方側には排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。熱風が、排出チャンバー18を通り抜けて、第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている(向流方式)。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度は300〜500℃、好ましくは400〜500℃、より好ましくは400〜450℃である。熱風はバーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼され、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通り、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14に吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で、長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適である。したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の燃焼炉であることが望ましい。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)を利用するなどして酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%となるように調整して燃焼する。燃焼温度は、550〜780℃、好ましくは600〜750℃である。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は60分以上、好ましくは60〜240分、より好ましくは90〜150分、特に好ましくは120〜150分であり、この範囲であると残カーボンを完全に燃焼させるに望ましいものとなる。
燃焼が終了した原料である燃焼物は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
なお、以上では、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料としてもよい。また、以上では、再生填料の製造工程の概要を説明したが、次に、その詳細及び応用例を説明する。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生填料の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生填料を製造するための原料となる。
本明細書でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
脱墨フロスの脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスは、例えばスクリーン等の脱水手段によって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送られ、さらに所定の水分率に、好ましくは水分率40〜70%に脱水することが好適である。
脱水後の原料10の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉14における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料10の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めにくくなる。また、水分率が70%を超えると、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策を必要とする再燃焼処理の効率が低下し、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題が生じる。他方、脱水後の原料10の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。
以上のように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制でき、脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。また、脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分を含むと、鉄分の酸化により、再生填料の白色度が下がる問題が生じる。
脱墨フロスの脱水工程は、本インクジェット記録用紙に使用する再生填料の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行ったものを搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給することもできる。
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径を40mm以下、好ましくは3〜30mm、より好ましくは5〜20mmの範囲になるように調整される。また、平均粒子径が50mm以下の割合が70重量%以上になるように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化をきたさない燃焼処理を図るため、原料の平均粒子径が均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、他方、40mmを超えると、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難になるという問題を有する。
前記平均粒子径と粒子径の割合は、撹拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した値である。各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した値である。
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、内熱キルン炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉14は、熱風発生炉20にて生成された熱風を内熱キルン炉14の排出口側から、原料10の流れと向流するように送り込まれる。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料(脱水物)10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
本乾燥・燃焼工程は、原料10を、本体が横置きで中心軸周りに回転する、内熱キルン炉14によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、乾燥を別工程に分割し、吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%、好ましくは1〜17%、より好ましくは7〜15%となるようにする。
酸素濃度は、原料10の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動が生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。燃焼炉14内の酸素は、原料10の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生炉20により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、更に酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼炉14内の温度を細かく調節可能であり、原料10をムラなく万遍に燃焼することができる。
第1燃焼炉14の炉内温度としては、300〜500℃、好ましくは400〜500℃、より好ましくは400〜450℃である。第1燃焼炉14においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300〜500℃の範囲に調整することが好ましい。過度に温度が低いと有機物の燃焼が不十分になり、他方、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。また、炉内温度が500℃を超えると、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
第1燃焼炉14において、熱風は、バーナー20Aが備わる熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが排出され、この排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料10に配合され再利用される。
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼され、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通り、誘引ファン28により煙突30から排出される。熱交換器26は外気を昇温し、この昇温された外気が熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14に吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱が回収される。
第1燃焼炉14は、原料10中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30〜90分の滞留時間で燃焼させる。有機物の燃焼と生産効率の面からは40〜80分がより好ましく、恒常的な品質を確保する面からは50〜70分の範囲が特に好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると、原料の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生填料が極めて硬くなる。
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2〜20質量%、好ましくは5〜17質量%、より好ましくは7〜12質量%となるように乾燥・燃焼する。未燃率を2〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉32における安定した加熱により、硬度が低く白色度が80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。未燃物が2質量%未満では、先の第1燃焼炉14におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉32出口における白色度の低下等の品質低下を来たす場合がある。
〔第2燃焼工程〕
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉にあたる外熱キルン炉32に装入される。この燃焼炉では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉32内壁に設けたリフターにより、原料10の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉32における燃焼においては、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉14において供給される原料10の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が10mm以下、好ましくは1〜8mm、より好ましくは1〜5mmとなるように調整する。第2燃焼炉32入口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、他方、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生填料の白色度が低下する問題を引き起こす。
第2燃焼炉32での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1〜8mmの燃焼物が70%以上に成るように粒子径を調整することが好ましい。この範囲内であると、得られる再生填料の品質が均一になり、実用的である。
また、本形態のように、分級を乾燥後に行うと、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
外熱キルン炉32での外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32であることが望ましい。
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する原料10の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉14を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉32で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生填料を得ることができる。
外熱キルン炉32においては、酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%となるようにする。酸素濃度は、第2焼成炉32に適宜の手段により酸素または空気を投入するにあたり、その投入量をコントロールすることによって行うことができる(具体的な形態の図示は省略してある)。外熱キルン炉32内の酸素濃度が5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。他方、酸素濃度が20%を超えると、炭酸カルシウムの酸化が進み、酸化カルシウムに変化する傾向になる。このため、水に溶出しやすくなり、抄紙系内にスケール汚れが発生するおそれがある。
第2燃焼炉32の燃焼温度は、550〜780℃、好ましくは600〜750℃である。第2燃焼炉32は先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させることが好ましい。より詳細には、第2燃焼炉32の燃焼温度が550℃未満では十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、他方、燃焼温度が780℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなるという問題が生じる。
第2燃焼炉32での滞留時間は、60分〜240分、好ましくは90分〜150分、より好ましくは120分〜150分である。燃焼物の安定生産を行うという観点からは滞留時間を60分以上とし、他方、過燃焼の防止、生産性の向上という観点からは滞留時間を240分以下とすることが好適である。なお、特に残カーボンの燃焼をするにあたっては、炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に行う必要があるが、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、他方、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
外熱キルン炉32から排出される燃焼物の平均粒子径は、10mm以下、好ましくは1〜8mm、より好ましくは1〜5mmである。
燃焼が終了した再生填料は好適には凝集体(再生填料凝集体)であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。なお、以上では、脱墨フロスを原料10として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
〔粉砕工程〕
本形態に基づく再生填料の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒子化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。一例では、燃焼後に得られた粒子を、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいはアトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。
填料、顔料用途等への好適な粒子径は、平均粒子径2〜5μmである。この範囲であると、従来の炭酸カルシウムよりも平均粒子径が大きいため、嵩高効果が向上する。なお、タルクやクレーは本再生填料より平均粒子径が大きく、嵩高効果を期待できるが、酸性抄紙となるため黄変化しやすく、実用的ではない。
粉砕工程後における再生填料の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)により体積平均粒子径を測定した値である。
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生填料の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、撹拌式、押出し式等の設備が好適である。
本製造方法の原料10としては、再生填料の原料と成り得るもの以外は予め除去しておくことが好ましい。例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で、砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化することにより微粒子の白色度を低下させる起因物質となる。したがって、鉄分の混入を避けるために、鉄分を選択的に取り除くことが推奨される。このため、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
本形態に基づく再生填料の製造方法による再生填料は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35、好ましくは40〜82:9〜30:9〜30、より好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の質量割合となる。カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合とすることで、比重が軽く、過度な水溶液吸収を抑えることができるため、脱水工程における脱水性が良好となり、また乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬化を生じるおそれを低減できる。
以上の質量割合に調整するためには、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させ、あるいは焼却炉スクラバー石灰を含有させて調整することも可能である。具体的には、例えば、原料として、脱墨フロスを主原料として用いつつ、再生填料中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
また、上述したような製造方法で得られる再生填料は、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、本形態に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができる。
〔第2燃焼炉(外熱キルン炉)のリフターについて〕
先に採用理由と共に述べたように、第2燃焼炉(外熱キルン炉)32内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料10の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
第2燃焼炉(外熱キルン炉)32には、図2(a)にその内部構造を、図2(b)にその内面の展開図を示すような公知の回転式燃焼装置が好適に用いられる。
この第2燃焼炉(外熱キルン炉)32は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部(装入側)に投入部が、他端部に排出部(図示せず)が設けられ、他端部には筒状本体内に燃焼ガスを導入する助燃のための燃焼バーナー(図示せず)が配設されてもよい。
筒状本体の投入部側における耐火壁32Aの内面32Bには、筒状本体の軸心に対して45度〜70度の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター4がブラケット6を介して等間隔に突設されており、この他端側には、筒状本体の軸心に対して平行な適当な長さの平行リフター5Aが周方向に等間隔置きに複数(図示例では8つ)、軸心方向に複数列(図示例では8列)ブラケット5Bを介して突設されている。
本形態において、耐火壁32Aは、耐火キャスタブルあるいは耐火レンガで構成することが好ましく、また、螺旋状リフター4と平行リフター5Aを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすることにより、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター4と平行リフター5Aとは、上記のとおり、原料10の投入部側から排出側に向けてこの順で配設するのが望ましい。
このように構成された第2燃焼炉(外熱キルン炉)32によれば、投入部側から投入された原料10が、まず螺旋状リフター4にて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料10に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフター5Aにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター4にて平行リフター5Aに送り込まれる原料10の量がコントロールされることで、平行リフター5A部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、原料10の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷のおそれがないことから、燃焼物の純度の低下がなく、その生産能力も向上させることができる。なお、上記の形態では、螺旋状リフター4と平行リフター5Aとを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。
以上のようにして得られた再生填料は白色度が75〜85%、好ましくは80〜85%と高く、また白色度の変動が少ない。また、以上に記載の製造方法によって得られた再生填料を本インクジェット記録用紙の基材に用いると、従来公知の再生粒子および市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高く、嵩高であり、印刷時の紙剥けがないインクジェット記録用紙を得ることができる。
上述した製造方法によって得られた再生填料は、平均粒子径が従来既知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きく、再生填料が繊維間に定着することで嵩高効果が向上し、また、再生填料のアルミニウムがカチオン性であるために繊維への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減できるため、灰分率を下げることができ、嵩高効果及び表面強度が向上し、その結果、基材表面に設けるポリビニルアルコール系重合体をバインダーとして含有する塗工層、好適には塗工層中に沈降性シリカを含有させる構成との相乗効果による、基材中の再生填料による嵩高性と塗工層の密度調整の容易性から、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙を得ることができる。
また、再生填料を内填させることにより、塗工層密度を所定の範囲に調整するにあたり、後述する平坦化処理において、基材の密度が高くなる問題を是正でき、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙の提供においてさらに好適になる。
〔基材灰分〕
本件発明者等の知見によると、好適な基材の構成においては、前記再生填料を灰分要素として好適に用いることが可能であり、灰分成分中に再生填料を20%以上配合することが嵩高性、クッション性確保のため効果的であり、より好ましくは30〜100%(全量再生填料)とすることが好ましい。基材の灰分としては、平坦化処理による基材の潰れを防止するため、基材の灰分率は、10〜20%とするのが好ましく、15〜20%とするのがより好ましい。
〔アンダー塗工層〕
本形態のインクジェット記録用紙は、非水系インクを塗工層に留めるために、基材と塗工層との間にアンダー塗工層を設けると好適である。アンダー塗工層を設けることにより、非水系インクに含まれる溶剤が塗工層から基材に浸透するのを更に防ぐことができ、インクの裏抜けを抑えることができる。
アンダー塗工層の形成方法は、特に限定されないが、サイズプレス等により、デンプン、ポリビニルアルコール、カチオン樹脂等を塗工・含浸させる方法を挙げることができ、このアンダー塗工層の形成にともなって、表面強度を向上させたり、塗工層の浸透性を調整したり、表面や裏面の平滑性を調整したりすることもできる。
また、このアンダー塗工層は、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂組成物に平板結晶構造をもつ微細粒子を含有させた塗工液を基材上に塗工することで、好適に設けることができる。特に、当該水溶性樹脂組成物中に含有させる微細粒子として、例えば、クレーや、アスペクト比が50以上のデラミネーテッドクレーを用いれば、前述塗工層表面の平坦化、非水系インクの基材への過度の浸透防止、平坦化処理による塗工層に対する均等かつ所望の密度付与に好適である。
〔平坦化処理〕
本形態のインクジェット記録用紙において、前述塗工層の密度調節方法は、特に限定されないが、基材表面に塗工層を設けた後に、平坦化処理して調節するのが好適である。この平坦化処理は、公知のカレンダーを用いて行うことができる。
ただし、塗工層の密度調節という観点からは、柔軟な弾性ロールを多用するよりも、金属ロールと金属ロールとの組み合わせからなる多段のチルドロールや、表裏差を是正すため一部弾性ロールとの組み合わせからなる平坦化によるのが好ましい。
金属ロールについては特に限定されず、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダーなどの平坦化処理装置で用いられるチルドロール、合金チルドロール、鋳鉄製ロール、さらにはロール表面を硬質クロムメッキした金属ロール等が適宜選択して用いられる。また、加圧装置の形態、加圧ニップの数等も通常の平坦化処理装置に準じて適宜調節される。
加圧ニップに用紙を通紙する際の加圧条件は、使用される弾性ロールの硬度、通紙スピード、ニップ数、金属ロールの温度条件など各種の処理条件に応じて適宜調節されるが、塗工層の密度を従来よりも高く調節する本形態においては、いわゆる塗工層を押し潰す必要がある。そこで、ニップ線圧を30〜400kg/cmとするのが好ましい。ニップ線圧が30kg/cmよりも低くなると以上の効果を得難く、他方、ニップ線圧が400kg/cmを超えると、1000m/分を超える高速にて平坦化処理を行っても、塗工層のみならず基材の密度が過度に高くなる問題が生じるとともに、ロール自体の発熱現象が増大して安定操業が困難となる。
より好適には、ニップ線圧を30〜400kg/cmとし、かつ通紙スピードを1000m/分未満とする。さらに好適には、ニップ線圧を30〜80kg/cmとし、かつ通紙スピードを500m/分未満とする。この範囲に調節することにより、基材、特に再生填料を填料として用いた基材の密度が過度に高くなるのを抑制し、基材表面にポリビニルアルコール系重合体をバインダーとして含有する塗工層を設け、好適には塗工層中に沈降性シリカを含有させることで、基材中の再生填料による嵩高性と塗工層の密度調整の容易性から、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙を得ることができる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明の作用効果を明らかにするが、本発明は、当然これらの例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例において示す「部」は、特に明示しない限り絶乾質量部を示す。
〔実施例1〕
(基材)
濾水度500ccの広葉樹晒クラフトパルプと、濾水度550ccの針葉樹晒クラフトパルプと、古紙パルプとを60:10:30の配合割合で調整した濾水度450ccの原料パルプ100部に対して、填料として再生填料及び炭酸カルシウムを表1に記載の条件に従って内填し、また、内添サイズ剤0.5質量%(対原料パルプ比)、カチオン化澱粉0.5質量%(対原料パルプ比)を配合し、これをオントップマシンで抄造し、サイズプレスにてPVA0.5質量%及び表面サイズ剤0.65質量%(対原料パルプ比)からなるアンダー塗工層を設け、坪量64.2g/m2の基材を製造した。
(塗工層)
微粒子充填剤として沈降性シリカ(カープレックス80D エボニック デグサ社製:嵩密度0.09g/cm3、平均粒子径8.1μm、吸油量250ml/100g)を用い、この沈降性シリカ100部に対して、合成樹脂としてポリビニルアルコール(PVA‐110 クラレ社製)16部、定着剤として水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6850 星光PMC社製)15部、2種類目の水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6852 星光PMC社製)15部の計30部を配合し、更に助剤としてエチレン酢酸ビニルエマルジョン(BE‐814 中央理化工業製)23部、及び、希釈水を適宜添加し、固形分濃度23質量%の塗工液を得た。この塗工液を、ブレードコータを用いて、乾燥塗工量が片面当たり5g/m2となるように基材の両面に塗工した。この塗工後、カレンダー処理を行ってインクジェット記録用紙を得た。
〔その他の実施例及び比較例〕
その他の実施例及び比較例は、実施例1の構成を、表1及び表2に記載の条件及び下記の条件に従って変更した。
(実施例5)
微粒子充填剤として、嵩密度が0.15g/cm3、吸油量が120ml/100gの沈降性シリカ(Nipsil E‐743 東ソー・シリカ社製)を使用した。
(実施例6)
微粒子充填剤として嵩密度が0.08g/cm3、吸油量が300ml/100gの沈降性シリカ(Nipsil K−500)を使用した。
(実施例7)
微粒子充填剤として嵩密度が0.09g/cm3、吸油量が275ml/100gの沈降性シリカ(カープレックス FP5‐2 エボニック デグサ社製)を使用した。
(実施例8)
微粒子充填剤として嵩密度が0.05g/cm3、吸油量が260ml/100gの沈降性シリカ(エリエールケミカル社製)、合成樹脂として重合度1700のポリビニルアルコール(PVA‐117 クラレ社製)を使用した。
(実施例9)
合成樹脂として重合度1500のポリビニルアルコール(PVA‐115 クラレ社製)を使用した。
(実施例10)
合成樹脂として重合度500のポリビニルアルコール(PVA‐105 クラレ社製)を使用した。
(比較例1及び2)
微粒子充填剤として嵩密度が0.35g/cm3、吸油量が200ml/100gの沈降性シリカ(Nipsil E‐1030 エボニック デグサ社製)を使用した。
(比較例3及び4)
沈降性シリカの代わりにクレーを用いた。比較例3では合成樹脂として重合度300のポリビニルアルコール(PVA‐103 クラレ社製)を、比較例4では合成樹脂として重合度2000のポリビニルアルコール(PVA‐120 クラレ社製)を使用した。
(比較例5)
合成樹脂としてSBRラテックスを用い、微粒子充填剤として嵩密度が0.35g/cm3、吸油量が150ml/100gの沈降性シリカ(Nipsil E‐743 エボニック デグサ社製)を使用した。
(比較例6)
沈降性シリカの代わりに気相法シリカ(商品名:アエロジル300 日本アエロジル工業(株)製)を用い、合成樹脂として重合度200のポリビニルアルコール(PVA‐102 クラレ社製)を使用した。
〔市販品A〕
米坪が89.1g/m2で、塗工層密度が0.6g/cm3である市販品を用いた。
〔市販品B〕
米坪が97.6g/m2で、塗工層密度が0.5g/cm3である市販品を用いた。
以上の各インクジェット記録用紙について、用紙の品質及びインクジェット適性を評価した。結果を表3に示した。なお、測定及び評価方法は、下記に示す通りである。
〔測定・評価方法〕
インクジェット記録適性の評価に際しては、理想科学工業株式会社、ORPHISX9050インクジェットプリンターを用いた。記録インクとしては、ORPHIS純正専用インク、RISO X インクを使用した。
(坪量(米坪))
JIS P 8124に準拠して測定した。
(塗工層密度)
インクジェット記録用紙の任意3点について、電子顕微鏡を用いて、塗工層の厚さを測定した。また、インクジェット記録用紙を10cm四方にして3点用意し、これらについて質量を測定した後に、塗工層をカッターで基材が表出するまで削り取って再度質量を測定し、この際の質量差から塗工層質量を求めた。そして、塗工層質量と塗工層厚さとから、塗工層密度を算出した。
(動的接触角)
インクジェット記録用紙について、動的接触角測定装置(DCA‐VZ 協和界面科学(株)製)を用いて、動的接触角を測定した。測定溶媒としては、ORPHIS純正専用インク、RISO X インクのブラックを使用し、4μl滴下したときの1秒後の接触角を測定した。この測定は、表裏各10箇所について行い、その平均値を動的接触角とした。
(トルエン吸油度)
インクジェット記録用紙について、試験油としてトルエン(米山薬品工業(株)製)を使用し、旧JIS P 8130(1994)の吸油度試験方法に準拠して、表裏10箇所の吸油度を測定し、この平均値をトルエン吸油度とした。
(ブリストー吸水度)
インクジェエト記録用紙について、J.TAPPI試験法No.51に準拠して、25mm/secにて、記録用紙の流れ方向に表裏各10サンプルを測定し、その測定長さの平均値をブリストー吸水度とした。
(剛度)
インクジェット記録用紙について、JIS P 8143に準拠して横方向の剛度を測定した。
(裏抜け)
インクジェット記録用紙について、ORPHISX9050を用いて印字し、黙視にて、印字部を裏面より以下の基準に従って評価した。
◎:インクの裏抜けがなく、裏面から印字が見えない。
○:インクの裏抜けはあるが、裏面からでは印字内容が分からない。
△:インクの裏抜けがあり、裏面から印字内容が分かる。
×:インクの裏抜けがあり、裏面からも印字内容がはっきり分かる。
(印字ムラ)
インクジェット記録用紙について、ORPHISX9050を用いて両面印刷し、目視にて、印字面のムラを以下の基準に従って評価した。
◎:曇りやムラが無く良好である。
○:やや曇りやムラがあるが目立たない。
△:曇りやムラが目立っている。
×:曇りやムラがかなり目立っており印字がぼけている。
(ジャム)
インクジェット記録用紙について、ORPHISX9050を用いて1000枚両面印刷し、ジャムした枚数に基づき以下の基準に従って評価した。
◎:0〜1枚(紙詰まり0〜1回)
○:2〜3枚(紙詰まり2〜3回)
△:4〜5枚(紙詰まり4〜5回)
×:6枚以上(紙詰まり6回以上)
(印字濃度(濃度マスベスク))
インクジェット記録用紙について、ORPHISX9050を用いて印刷し、各色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の印字濃度の合計値で評価した。
(その他)
なお、基材の灰分はJIS P 8251に準拠して測定した値で、不透明度はJIS P 8149に準拠して測定した値であり、沈降性シリカの嵩密度はJIS H 1902に準拠して測定した値で、吸油量はJIS K 5101の顔料試験方法に準拠して測定した値である。
Figure 0005552273
Figure 0005552273
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本発明は、基材を薄物化しても、インクジェット記録適性に劣ることのないインクジェット記録用紙として適用可能である。
10…原料、12…貯槽、14…第1燃焼炉(内熱キルン炉)、20…熱風発生炉、22…再燃焼室、26…熱交換器、28…誘引ファン、30…煙突、31…外熱ジャケット、32…第2燃焼炉(外熱キルン炉)、34…冷却機、36…粒径選別機。

Claims (3)

  1. 基材の少なくとも記録面に塗工層を有する坪量60〜75g/m2非水系インク用のインクジェット記録用紙であって、
    前記塗工層は、ポリビニルアルコール系重合体をバインダーとして含有し、沈降性シリカを微粒子充填剤として含有し、かつ、前記塗工層の密度が0.9〜2.0g/cm3であり、
    JIS P 8143に準拠したクラーク剛度(横方向)が15〜30cm3/100で、かつ、
    下記条件で測定した、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度、
    トルエン吸油度が30〜100秒、
    ブリストー吸水度が200〜300mm(50mm/sec)である、
    ことを特徴とする非水系インク用のインクジェット記録用紙。
    [動的接触角]
    非水系インクとして「ORPHIS純正専用インク、RISO X インクのブラック」を使用し、4μl滴下したときの1秒後の接触角
    [トルエン吸油度]
    試験油としてトルエン(米山薬品工業(株)製)を使用し、旧JIS P 8130の吸油度試験方法に準拠して、測定した値
    [ブリストー吸水度]
    J.TAPPI試験法No.51に準拠して、25mm/secにて、記録用紙の塗工層側面の流れ方向で測定した、測定長さの値
  2. 前記基材中に、填料として古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とし、この主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕の各工程を経て得られる再生填料が含有されている請求項1記載の非水系インク用のインクジェット記録用紙。
  3. 前記沈降性シリカは、嵩密度が0.05〜0.20g/cm3、吸油量が100〜300ml/100gであり、
    前記ポリビニルアルコール系重合体は、重合度が500〜1500の完全ケン化ポリビニルアルコールである、
    請求項1又は請求項2記載の非水系インク用のインクジェット記録用紙。
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