以下に、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
本発明の新聞用紙の製造方法は、パルプ及び填料を含有する原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、この原料スラリーを抄紙する抄紙工程とを有する。また、この新聞用紙の製造方法に用いられる図1の抄紙装置は、プレタンク1、受入チェスト2、配合チェスト3、第1流送ポンプ4、マシンチェスト5、種箱送りポンプ6、種箱7、第1ファンポンプ8、クリーナー9、第2ファンポンプ10、スクリーン11、及び抄紙機12をこの順に備える。原料となるパルプは、配合チェスト3に投入され、その後、第1流送ポンプ4によりマシンチェスト5に送られ、種箱送りポンプ6により種箱7へ送られ、第1ファンポンプ8でクリーナー9に送られ異物を除去した後、第2ファンポンプ10でスクリーン11へ送られ、その後抄紙機12で抄紙される。このように、プレタンク1〜スクリーン11により原料スラリー調製工程を行い、抄紙機12により抄紙工程を行う。
<原料スラリー調製工程>
原料スラリー調製工程とは、新聞用紙の主原料となるパルプを含有するパルプスラリーに填料、凝結剤及び凝集剤、並びに必要に応じて、サイズ剤、紙力増強剤、染料等を配合して原料スラリーを調製する工程である。この原料スラリー調整工程は、以下に説明する填料添加工程及び填料歩留向上工程をこの順に有する。さらに、上記原料スラリー調製工程は、必要に応じてスクリーン11の後に無機系歩留向上剤を添加する後述の最終調整工程を有してもよいし、原料として古紙パルプを用いる場合には、填料添加工程前に後述の凝結剤添加工程を有していても良いし、複数種の原料パルプを用いる場合は、上記填料添加工程の前にパルプ配合工程を有してもよいし、原料として古紙パルプを用いる場合は、この古紙パルプにあらかじめ凝結剤を添加してもよい。
<填料添加工程>
填料添加工程とは、原料パルプを含有するパルプスラリーに、填料を添加する工程である。
(原料パルプ)
上記原料パルプは公知のもので良く、その種類及び組み合わせは適宜設定できる。具体的には、古紙パルプ、バージンパルプ、又はこれらの併用が挙げられる。上記古紙パルプは、いずれの原料由来でも良く、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。また、上記バージンパルプはいずれの原料由来でも良く、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ又は針葉樹亜硫酸パルプなどの化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)又はサーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ;ケナフ、麻、葦又は竹等の非木材繊維を原料として化学的もしくは機械的に製造されたパルプ等が挙げられる。これらのパルプのなかでも、古紙パルプ及びバージンパルプの併用が好ましく、新聞古紙由来の古紙パルプとサーモメカニカルパルプ(TMP)の併用がより好ましい。構成成分の変動が少なくそのパルプ性状が均質化されている新聞古紙由来の古紙パルプと新聞用紙の強度の調整に好適なサーモメカニカルパルプ(TMP)とを併用することにより、新聞用紙の抄紙に好適な原料スラリーを得ることができる。
(パルプスラリー)
スラリーとは、液体の中に固形分を懸濁させた流動体を意味し、当該製造方法におけるパルプスラリーとは、水に上記原料パルプや填料等の固形原料を懸濁させたものを意味する。原料スラリーに含まれる原料パルプの含有量の上限としては、5質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、3.5質量%がさらに好ましい。また、上記含有量の下限としては、0.8質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、2.5質量%がさらに好ましい。上記原料スラリーに含まれる原料パルプの含有量を上記範囲とすることにより、後の抄紙工程に適した原料スラリーを得ることができる。
(填料)
填料とは、紙の不透明度、平滑度、印刷適性及び白色度を向上させるために添加するものであり、当該製造方法に用いられる填料としては、製紙スラッジを主原料として得られる再生粒子を用いると良い。この再生粒子以外の填料として、必要に応じて、クレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、ホワイトカーボン等を併用してもよい。以下、上記「再生粒子」について詳述する。
(再生粒子)
上記「再生粒子」とは、主原料として製紙スラッジを、好ましくは古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離される填料又は顔料を含んだ脱墨フロスを主原料に用いて、この主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て再資源化したものであり、特に燃焼工程が少なくとも3段階であることが好ましい。また、上記「製紙スラッジ」とは、抄紙工程でワイヤーを通過して流出した固形分、パルプ化工程での洗浄過程で発生する排水から回収した固形分、排水処理工程において沈殿・浮上作用等を利用して固形分分離装置により分離若しくは回収した固形分、又は、古紙処理工程で除去された固形分等が混在したものである。この再生粒子は、単一の素材からなる粒子でも複数の素材からなる粒子でもよく、体積平均粒子径aを有する再生粒子Aと、体積平均粒子径aより大きい体積平均粒子径bを有する再生粒子Bとを含むことが好ましい。当該新聞用紙に用いられる上記再生粒子の体積平均粒子径aとしては、1μm以上3μm未満が好ましく、また、体積平均粒子径bとしては、3μm以上10μm以下が好ましい。ここで、「体積平均粒子径」とは、再生粒子の体積換算値の平均粒子径を表わすものであり、原理的には、一定体積の粒子を小さいものから順に篩分けし、その50%体積に当たる粒子が分別された時点での粒子径を意味する。体積平均粒子径の測定は市販の電気的、光学的粒子径測定装置を用いることによって自動的に測定可能である。また、「体積平均粒子径の異なる2種類の再生粒子」とは、当該製造方法に用いる全再生粒子の粒径分布において、二つの異なる極大値を有するものを意味する。上記、再生粒子A及び再生粒子Bを混合した再生粒子の粒径分布には、1μm以上3μm未満の範囲と3μm以上10μm以下の範囲にそれぞれ極大値を有する。
このように、体積平均粒子径の異なる2種類の再生粒子A及び再生粒子Bを含むことにより、粒子径の大きい再生粒子Bでは埋められないパルプ繊維間の小さな空間に、粒子径の小さい再生粒子Aが入り込み、空隙をより緻密に充填することができる。このようにパルプ繊維間の空隙を緻密に充填することにより、高い不透明度及び吸油性を備える新聞用紙を得ることができる。また、このように体積平均粒子径が異なる再生粒子A及び再生粒子Bが混在する填料を用いることで、パルプ繊維間の空隙への填料固着性が高まり、製造工程等において一度固着した粒子がこぼれ落ちる現象、すなわち紙粉の発生を減少させることができる。その結果、マシン系内の汚れが低減し、清掃回数が減ることでマシンの操業性を向上させることができる。
上記再生粒子A及び再生粒子Bの割合は、要求される充填率等を考慮して適宜決めればよく特に制限されないが、再生粒子B100質量部に対する再生粒子Aの割合の上限として、例えば、500質量部が好ましく、400質量部がより好ましく、350質量部がさらに好ましい。また、上記下限としては、例えば、100質量部が好ましく、200質量部がより好ましく、250質量部がさらに好ましい。再生粒子B100質量部に対する再生粒子Aの割合が500質量部を超えると、生じる空隙の容積に対して、添加量が多すぎるため、強固な固着ができず、填料の脱落が生じてしまう。更に、填料の過剰な添加はパルプ繊維間の密着性を弱めるため、当該新聞用紙の強度の低下を招来することとなる。また、再生粒子B100質量部に対する再生粒子Aの割合が100質量部を下回ると、パルプ繊維間の空隙を埋めきることができず、不透明度の向上機能が充分に発揮されない。
上記再生粒子に含まれるシリカの割合は、再生粒子の体積平均粒子径及びその元素構成に依存するが、上限としては、例えば、酸化物換算で35質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、上記下限としては、例えば、9質量%が好ましい。また、同様に、上記再生粒子に含まれるカルシウムの割合の上限としては、例えば、酸化物換算で82質量%が好ましく、一方、上記下限としては、30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。また、同様に再生粒子に含まれるアルミニウムの割合の上限としては、例えば、酸化物換算で35質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、上記下限としては、9質量%が好ましい。上記各成分は、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて、15KVの加速電圧にて元素分析を行うことで算出することができる。
再生粒子に含まれるシリカ、カルシウム及びアルミニウムの質量割合を上記割合に調整する方法としては、例えば、脱墨フロスの原料構成を調整する方法や、後述する第1熱処理工程、第2熱処理工程及び第3熱処理工程において、出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で添加する方法、又は焼却炉スクラバー石灰を添加する方法等が挙げられる。具体的に、再生粒子に含まれるシリカの量を調整するには、例えば、不透明度向上剤としてホワイトカーボン等が多量に配合されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用いればよく、同様にカルシウムの量を調整するには、例えば、中性抄紙系の排水スラッジ又は塗工紙製造工程の排水スラッジを用いればよく、また同様にアルミニウムの量を調整するには、例えば、酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用されている抄紙系の排水スラッジや、タルクの多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いればよい。なお、この再生粒子の製造方法は後に詳述するが、当該新聞用紙の製造方法においては、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を経て得られる再生粒子を用いることにより、得られる新聞用紙の白色度及び不透明度等が向上する。
(シリカ複合再生粒子)
上記再生粒子は、再生粒子の表面にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子であることが好ましい。再生粒子の表面にシリカを複合させることで、再生粒子の有するカチオン性とシリカの有するアニオン性により、パルプ繊維間の結合が適度に阻害され、得られる新聞用紙の嵩を高くすることができる。また、シリカを複合させることにより、填料としての白色度を向上させることができる。さらに、シリカ複合再生粒子は高い吸油量を示すため、新聞印刷用の吸収乾燥型印刷インキを新聞用紙表面で保持乾燥でき、軽量な新聞用紙の印刷不透明度をさらに向上させることができる。また、上記シリカ複合再生粒子は、元来ポーラスな再生粒子の表面をシリカで複合したものであることから比表面積が大きく、これを内添用の填料として使用することで、白色度及び不透明度に優れ、嵩高い紙を得ることができる。
上記シリカ複合再生粒子に含まれるシリカの割合は、再生粒子の体積平均粒子径及びその元素構成に依存するが、上限としては、例えば、酸化物換算で50質量%が好ましく、49質量%がより好ましく、48質量%がさらに好ましい。一方、上記下限としては、例えば10質量%が好ましく、41質量%がより好ましく、42質量%がさらに好ましい。シリカ成分の比率が10質量%未満では、十分にシリカ被覆が行なえていないため、吸油量、不透明度の向上が得られず、一方、シリカ成分の比率が50質量%を超えると、微細なシリカ粒子の充填が過度となり、吸油量及び不透明度の低下をまねく問題が生じる場合がある。上記シリカ複合再生粒子に含まれるシリカの割合は、再生粒子に含まれるシリカの割合と同様の上述の元素分析を行うことで算出することができる。
上記シリカ複合再生粒子の吸油量は、50ml/100g以上180ml/100g以下が好ましい。このようにシリカ複合再生粒子の吸油量を上記範囲とすることで、得られる新聞用紙に含まれるシリカ複合再生粒子が、紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収し、新聞用紙の印刷不透明度の低下を抑制する。また、シリカ複合再生粒子の吸油量を上記範囲とすることで、インクの乾燥が速く、インクの沈みこみやニジミを防止する効果が得られる。なお、上記吸油量は、JIS−K5101−13−1(2004)「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に準拠して測定した数値である。
シリカ複合再生粒子の上記吸油量は、後述するシリカ複合再生粒子の製造方法におけるシリカ複合工程の反応温度、添加時間、保留時間、pH、粘度、用いる再生粒子の燃焼手段、粒子径などにより適宜調整可能であるが、例えば、シリカ複合工程において10,000Å以下の細孔容積を0.5cc/g以上1.5cc/g以下となるように調整することで、高い吸油量を示すシリカ複合再生粒子を得ることができる。
また、上記シリカ複合再生粒子は、填料の表面がシリカで被覆されているため抄紙工程のワイヤー(網部)の磨耗を低減し、ワイヤーの寿命を延ばすことができる。紙に内添する填料の粒子が硬いと抄紙機12のワイヤーを傷つけやすくなり、ワイヤー寿命を縮めるため好ましくないが、上記シリカ複合再生粒子は適度な硬度を有するため、ワイヤーの磨耗を低減し、ワイヤーの寿命を延長させることができる。
上記填料添加工程における填料の添加場所は、抄紙機12のワイヤーパートからの白水によってパルプスラリーが希釈された後の第2ファンポンプ10の前が好ましい。
当該製造方法において、パルプスラリーに含まれる上記填料の添加量の上限としては原料パルプに対して、固形分換算で9質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。また、上記添加量の下限としては、2質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。填料の添加量が上記下限より小さいと、パルプ繊維間の空隙を埋めきることができず、不透明度の向上機能が充分に発揮されない。逆に、填料の添加量が上記上限を超えると、パルプ繊維間の空隙の容積に対して填料が多すぎるため、空間に強固に固着できず、填料の脱落が生じてしまう。更に、填料の過剰な添加はパルプ繊維間の密着性を弱めるため、得られる新聞用紙の強度の低下を招来することとなる。
<填料歩留向上工程>
填料歩留向上工程とは、上記填料添加工程で得られたパルプスラリーに凝結剤及び凝集剤を同時に添加する工程である。
(凝結剤)
凝結剤とは、パルプ繊維や填料表面の負電荷を中和し、ファンデルワールス力による自発的なソフトフロック生成を利用した歩留り剤の一種である。凝結剤を添加することにより、古紙パルプ由来の極めて微細な填料やパルプ繊維が凝結して小さなフロックを形成する。このような凝結剤としては、水溶性のポリマーであってポリマー分子内にカチオン基を含有し、パルプへの添加使用時にカチオン性を示すものであれば特に制限はなく、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)又はポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝結剤;硫酸バンド又はポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤等が挙げられる。これらの中でも、PAM、PDADMAC、PAm及びPEIが好ましく、特に、PEIはカチオン密度が高く、アニオン性の微細成分を効率的に集める作用が高いため、凝集剤とあいまって填料や微細繊維の歩留りを向上できるため好ましい。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記原料スラリーに含まれる凝結剤の添加量の上限としては、純分で固形分のパルプに対し1000ppmが好ましく、800ppmがさらに好ましい。一方、上記添加量の下限としては、300ppmが好ましく、500ppmがさらに好ましい。原料スラリーに含まれる凝結剤の添加量が300ppm未満では、填料や微細繊維が充分に凝結せず、新聞用紙の抄紙に好適なフロックを形成する効果が得られない恐れがあり、一方、1000ppmを超えると、他の抄紙薬品の効果を阻害する恐れがある。
上記凝結剤の重量平均分子量の上限としては、500万が好ましく、350万がより好ましく、200万がさらに好ましい。一方、上記下限としては50万が好ましく、75万がより好ましく、100万がさらに好ましい。重量平均分子量が50万未満であると、アニオン性の填料や微細繊維を十分に吸着できなくなり、填料及び微細繊維の歩留りが悪化し、異物欠陥が増加する恐れがある。また、平均分子量が500万を超過すると、紙力剤やサイズ剤など他の抄紙薬品の効果を阻害する恐れがあるため好ましくない。なお、上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定した数値である。
上記凝結剤のカチオン電荷密度の上限としては、13meq/gが好ましく、12meq/gがより好ましく、11.5meq/gがさらに好ましい。一方、上記カチオン電荷密度の下限としては9meq/gが好ましく、10meq/gがより好ましく、10.5meq/gがさらに好ましい。凝結剤のカチオン電荷密度を上記範囲とすることで、アニオン性のパルプ繊維とのフロック生成作用が向上し、填料の歩留性を向上させることができる。カチオン電荷密度が9meq/gを下回ると、填料および微細繊維の歩留りが低下する恐れがあり、また、13meq/gを超過すると、微細繊維を集めすぎて地合が低下する恐れがあるため好ましくない。なお、上記カチオン電荷密度は、規定液にアニオン性高分子を用いるコロイド滴定法によって測定した数値である。
(凝集剤)
凝集剤とは、歩留り剤の一種であり、凝集剤に含まれる高分子量ポリマーによって原料スラリー中の填料やパルプ繊維が互いに吸着・架橋されて大きなフロックを形成する。このような凝集剤としては、水溶性の高分子量ポリマーであって吸着・架橋作用を示すものであれば特に制限はなく、具体的には、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の有機高分子系凝集剤、カチオン化澱粉等があげられる。これらの中でも、PAM、PDADMAC、PAm及びPEIの少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの中でも填料の歩留り効果が高いカチオン性凝集剤であるポリアクリルアミド(PAM)系凝集剤が特に好ましい。
上記原料スラリーに含まれる凝集剤の添加量の上限としては、純分で固形分のパルプに対し1000ppmが好ましく、800ppmがより好ましい。一方、上記添加量の下限としては300ppmが好ましく、500ppmがより好ましい。添加量が300ppm未満だと、所定の凝集効果が充分に発現されず、填料や微細繊維の歩留りが低下する恐れがあり、一方、1000ppmを超えると、フロックが大きくなり地合を崩す恐れがあるため好ましくない。
上記凝集剤の重量平均分子量の上限としては、1300万が好ましく、1200万がより好ましく、1100万がさらに好ましい。一方、上記重量平均分子量の下限としては700万が好ましく、800万がより好ましく、900万がさらに好ましい。凝集剤の重量平均分子量が700万未満であると、凝集剤の効果が充分に発現されず、填料や微細繊維の歩留りが低下する恐れがあり、一方、1300万よりも大きいと、フロックが大きくなり地合を崩す恐れがあるため好ましくない。なお、重量平均分子量の測定方法は、上記凝結剤の重量平均分子量の測定方法と同様である。
(凝結剤及び凝集剤の添加方法)
上記填料歩留向上工程において、上記凝結剤及び凝集剤は同時に添加する。凝結剤及び凝集剤の添加場所は、上記填料添加工程後であって、後述する抄紙工程前であればいずれの場所でも良く、例えば、ファンポンプ10と抄紙機12の間が挙げられ、特にスクリーン11の前が好ましい。凝結剤及び凝集剤の添加場所を上記範囲とすることで、添加した凝結剤及び凝集剤がパルプスラリーに均一に分散し、凝結剤のカチオン電荷による填料の凝集と、高分子量の凝集剤によって凝集した填料の繊維への固着がほぼ同時に行われることで、填料の歩留まりが向上する。凝集剤の添加だけでは、従来困難であった高灰分の新聞用紙を、地合を崩すことなく得ることができ、不透明度が高く、印刷時のインキの濃淡ムラのない新聞用紙が得られる。特に再生粒子は、アニオン性と部分的なカチオン性を有するため、凝結剤と凝集剤の併用によるフロック形成と繊維への定着を行うことにより、より歩留まりを高めることができる。そして、填料の歩留まりが向上することにより、得られる新聞用紙の原料コストを削減することができる。なお、上記「同時」とは、物理的に厳密な同時を意味するものではなく、比較的短時間のうちに凝結剤及び凝集剤を原料スラリーに添加することを意味し、例えば凝結剤を添加した後に直ちに凝集剤を添加しても良いし、凝集剤を添加した後に直ちに凝結剤を添加しても良いし、凝結剤及び凝集剤を予め別の容器で混合した後で、これをパルプスラリーに添加しても良い。
<最終調整工程>
当該製造方法は、さらに最終調整工程を有していても良い。この最終調整工程とは、上記填料歩留向上工程後のパルプスラリーを、スクリーン11にてスクリーニングして異物を除去した後に、無機系歩留向上剤を添加する工程である。
(無機系歩留向上剤)
無機系歩留向上剤とは、歩留向上剤の一種であって無機系原料からなるものであり、例えば、ベントナイト、コロイダルシリカ等が挙げられる。
原料スラリーに含まれる上記無機系歩留向上剤の添加量の上限としては、固形分のパルプ1トンに対し固形分で1.5kgが好ましく、1.3kgがより好ましく、1.1kgがさらに好ましい。一方、上記添加量の下限としては、0.5kgが好ましく、0.7kgがより好ましく、0.9kgがさらに好ましい。無機系歩留向上剤の添加量が1.5kgを超えると、更なる歩留り向上効果が得られずコスト増となる恐れがあり、添加量が0.5kgを下回ると填料及び微細繊維の歩留りが低下する恐れがあるため好ましくない。上記無機系歩留向上剤の添加場所は、スクリーン11の後等が挙げられる。
<凝結剤添加工程>
当該製造方法は、原料スラリー調製工程として凝結剤添加工程を有しても良い。凝結剤添加工程とは、填料添加工程前の古紙パルプスラリーに凝結剤を添加する工程である。このように填料添加前にあらかじめ古紙パルプスラリーに凝結剤を添加することで、古紙パルプ由来の微細なパルプ繊維や微細な填料が凝結剤の電気的作用によってフロック状の塊を形成し、填料の歩留まりがより向上する。この凝結剤添加工程において添加される凝結剤としては、特に制限はなく、例えば、上述した各種凝結剤が挙げられる。
上記凝結剤添加工程における凝結剤の添加量の上限としては、純分で固形分のパルプに対して2500ppmが好ましく、2200ppmがより好ましい。一方、上記添加量の下限としては、1500ppmが好ましく、1800ppmがより好ましい。凝結剤の添加量が1500ppm未満では、古紙パルプ由来の極めて微細な填料やパルプ繊維の凝結が不充分となる恐れがあり、2500ppmを超えると、他の抄紙薬品の効果を阻害する恐れがある。
上記凝結剤添加工程で用いられる凝結剤の重量平均分子量の上限としては、500万が好ましく、350万がより好ましく、200万がさらに好ましい。一方、上記下限としては50万が好ましく、75万がより好ましく、100万がさらに好ましい。重量平均分子量が50万未満であると、古紙パルプ由来のアニオン性の填料や微細繊維を十分に吸着できなくなり、填料や微細繊維の歩留りが悪化し、異物欠陥が増加する恐れがある。また、平均分子量が500万を超過すると、紙力剤やサイズ剤など他の抄紙薬品の効果を阻害する恐れがあるため好ましくない。なお、重量平均分子量の測定方法は、上述した重量平均分子量の測定方法と同様である。
上記凝結剤のカチオン電荷密度の上限としては、13meq/gが好ましく、12meq/gがより好ましく、11.5meq/gがさらに好ましい。一方、上記カチオン電荷密度の下限としては9meq/gが好ましく、10meq/gがより好ましく、10.5meq/gがさらに好ましい。カチオン電荷密度が9meq/gを下回ると、填料および微細繊維の歩留りが低下する恐れがあり、また、13meq/gを超過すると、微細繊維を集めすぎて地合が低下する恐れがあるため好ましくない。上記凝結剤の添加場所は、填料添加工程前であればどこでもよく、例えば、プレタンク1にて古紙パルプを含むスラリーに添加することが挙げられる。なお、カチオン電荷密度の測定方法は、上述したカチオン電荷密度の測定方法と同様である。
<パルプ配合工程>
当該製造方法は、原料に複数種類の原料パルプを用いる場合、パルプ配合工程を有してもよい。このパルプ配合工程とは、填料添加工程前の古紙パルプスラリーにさらに各種のパルプスラリーを添加する工程である。このパルプ配合工程において各種パルプを添加することにより目的とする紙質に合わせた原料スラリーを調整することができる。このパルプ配合工程において添加されるパルプとしては、特に制限はなく、例えば、上述した各種原料パルプが挙げられる。得られる紙の強度を向上するためには、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等を添加すればよいし、紙の不透明度を向上させ嵩を高くするためには、例えば、サーモメカニカルパルプ(TMP)等を添加すればよい。
<凝集剤添加工程>
当該製造方法は、上記パルプ配合工程の後に、さらに凝集剤添加工程を有しても良い。この凝集剤添加工程とは、上記パルプ配合工程後のパルプスラリーに凝集剤を添加する工程である。この凝集剤添加工程において、古紙パルプ及び各種パルプを含むパルプスラリーに凝集剤を添加することにより、スラリーに含まれる古紙パルプ由来の填料や微細なパルプ繊維が凝集剤によって吸着・架橋されて比較的大きなフロックを形成する。このような凝集剤としては、水溶性の高分子量ポリマーであって吸着・架橋作用を示すものであれば特に制限はなく、例えば、上述した各種凝集剤が挙げられる。
上記凝集剤添加工程における凝集剤の添加量の上限としては、純分として固形分のパルプに対し900ppmが好ましく、700ppmより好ましい。一方、上記添加量の下限としては200ppmが好ましく、300ppmがより好ましい。原料スラリーに含まれる凝集剤の添加量が200ppm未満だと、古紙由来の填料や微細繊維の凝集効果が充分に発現されず、古紙由来の填料や微細繊維の歩留りが低下する恐れがあり、一方、900ppm超えると、フロックが大きくなり地合を崩す恐れがあるため好ましくない。
上記凝集剤添加工程で用いられる凝集剤の重量平均分子量の上限としては、1300万が好ましく、1200万がより好ましく、1100万がさらに好ましい。一方、上記平均分子量の下限としては、700万が好ましく、800万がより好ましく、900万がさらに好ましい。凝集剤の重量平均分子量が700万未満であると、凝集剤の効果が充分に発現されず、填料や微細繊維の歩留りが低下する恐れがあり、一方、1300万よりも大きいと、フロックが大きくなり地合を崩す恐れがあるため好ましくない。上記凝集剤添加工程における凝集剤の添加場所は、パルプ配合工程の後が好ましく、例えば、マシンチェスト5等が挙げられる。本発明では、填料添加工程前に凝結剤添加工程と凝集剤添加工程とを有することにより、填料添加前に古紙パルプ由来の微細な填料及び微細繊維を事前に凝集させて繊維と固着させているため、填料添加工程で添加した填料を効率良く繊維に歩留らせることができる。
<抄紙工程>
当該製造方法における抄紙工程としては、従来公知の抄紙工程を適宜用いればよい。具体的には、例えば、上記原料スラリー調製工程で調製した原料スラリーを公知の抄紙機12によって抄紙した後、新聞用紙の表裏面にサイズ剤を塗工し、さらに必要に応じてカレンダー装置に通紙して、加圧及び平滑化処理等を施すこと等が挙げられる。
(サイズ剤)
上記抄紙工程に用いるサイズ剤としては、一般的に用いられるサイズ剤を適宜用いれば良く、このようなサイズ剤としては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、ロジン、トール油とフタル酸等のアルキド樹脂ケン化物、石油樹脂とロジンのケン化物等のアニオン性低分子化合物、イソジアネート系ポリマー等のカチオン性ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、水溶性高分子が好ましく、澱粉がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって低分子量化され分子中へカルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基等が導入された加工澱粉が更に好ましい。上記サイズ剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらのサイズ剤を添加することにより、コールドセット型オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収され、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現され、また、填料が確実に繊維に固着されるため、填料の脱落を防止し、優れた印刷不透明度、印刷適性等を確保することができる。
また、上記サイズ剤の効果を更に向上させ、オフセット輪転印刷におけるインキとの相性、及び填料の脱落防止を向上するためにスチレン系ポリマーをサイズ剤と併用することが好ましい。スチレン系ポリマーをサイズ剤と併用することにより、サイズ剤を均一に塗工することができ、紙の表面強度を向上させ、填料の脱落を防止できる。サイズ剤とスチレン系ポリマーの配合比としては、固形分でサイズ剤100部に対しスチレン系ポリマー10部以上15部以下が好ましい。スチレン系サイズが10部を下回ると、紙のサイズ性及び表面強度の向上が充分に得られにくく、15部を上回ると、コスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招く恐れがある。
上記スチレン系ポリマーとしては、例えば、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/またはメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等が挙げられる。
上記サイズ剤の塗工量としては、片面あたり0.1g/m2以上1.0g/m2以下が好ましく、0.2g/m2以上0.75g/m2以下が特に好ましい。表面サイズ剤の塗工量が上記範囲より小さいと、充分な被膜性が得られず、表面強度を充分に向上させにくい。一方、表面サイズ剤の塗工量が上記範囲を超えると、塗布設備周辺に表面サイズ剤を含んだ塗工液のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じる恐れがある。
上記サイズ剤の塗工手段としては、特に限定されず、例えば、トランスファロールコーター、エアドクタコーター、ブレードコーター、ロッドコーター等が挙げられる。これらのコーターの中でも、トランスファロールコーター方式の塗布装置が好ましく、ゲートロールコーターが特に好ましい。ゲートロールによる塗工は、他の塗工方法とは異なり、低塗工量でも新聞用紙表面に被覆性の高い層を形成可能で、また塗工液に急激なせん断力がかからないので、循環使用する塗工液の安定性に優れ、高速で均質な被膜を得ることができる。
さらに、当該製造方法ではスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備で平坦化処理を施してもよい。かかる平坦化処理を施すことにより得られる新聞用紙の印刷適性をさらに向上することができる。カレンダー設備としては、特に限定されず、例えば、古紙パルプの配合割合が高い新聞用紙では、低ニップ圧で同一緊度であり、高い平滑性ひいては軽量化及びカラー印刷適性に優れるソフトカレンダーが好ましい。
<再生粒子の製造方法>
ここで、上述した再生粒子の製造方法を図2及び図3を参照しつつ以下に詳述する。図2の再生粒子の製造設備は主に、貯槽21、乾燥装置22、第1熱処理炉(外熱キルン炉)24、第2熱処理炉(外熱キルン炉)25、及び第3熱処理炉(内熱キルン炉)27を備えている。この再生粒子の製造方法は、乾燥工程及び少なくとも3段階の熱処理工程を有する。原料20となる製紙スラッジは貯槽21からバーナー36A及び熱風発生炉36を備える乾燥装置22へ送られ、装入機23を経て供給口24Aから第1熱処理炉24へ送られる。バーナー37A及び熱風発生炉37を備える第1熱処理炉24で熱処理された原料20は排出口24Bから排出され、続く第2熱処理炉25へ供給口25Aから投入される。バーナー38A及び熱風発生炉38を備える第2熱処理炉25で熱処理された原料20は排出口25Bから排出され、続いて第3熱処理炉27へ供給口27Aから投入される。バーナー39A及び熱風発生炉39を備える第3熱処理炉27で熱処理された原料20は排出口27Bから排出され、冷却機28、粒径選別機29を経てサイロ30に貯められる。また、第2熱処理炉25の排出口25Bから排出される燃焼ガスは再燃焼室31、予冷器32、熱交換器33、誘引ファン34を経て煙突35から排出される。なお、必要に応じて乾燥工程の前に、後述する脱水工程、解し(ほぐし)工程を有してもよいし、第3熱処理工程の後に後述する粉砕・選別工程を有していてもよい。図2中、実線は原料20の流れを示し、二点鎖線は熱風又は燃焼ガス等の気体の流れを示す。
以下に詳述する再生粒子の製造方法は、乾燥工程、第1熱処理工程、第2熱処理工程、第3熱処理工程の順に熱処理温度が高くなるように設定し、好ましくは、脱水後の原料20を熱気流に同伴させて乾燥することで、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造することができる。また、乾燥工程と3段階の熱処理工程とをそれぞれ分けて行うことで、目的に応じた熱処理温度を確実に区別し制御することができる。
[再生粒子の原料]
再生粒子の原料20は、主原料として製紙スラッジを、好ましくは古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離される填料又は顔料を含んだ脱墨フロスを主原料に用いることが好ましい。この製紙スラッジは由来となる古紙パルプ製造工程等において、古紙パルプの選定又は選別が行われている品質の安定したものを使用することが好ましい。これにより、未燃率の変動要因となるビニールやフィルム等のプラスチック類の混入を防ぐことができ、上記古紙パルプ製造工程に由来する無機物等の種類、比率、及び量等が一定となり、再生粒子の製造に好適な原料20を得ることができる。
また、この原料20に鉄分が含まれていると、得られる再生粒子の白色度低下の原因となるため、鉄分はあらかじめ選択的に取り除くことが好ましい。具体的には、各工程に用いる装置を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等によって鉄分が系内に混入するのを防止したり、各装置内等に磁石等の高磁性体を設置することで選択的に鉄分を除去すること等が挙げられる。
[脱水工程]
上記原料20は、一般的に95質量%〜98質量%の水分を含有しているため、公知の脱水装置を用いて脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理は原料20を、例えば、スクリーン等によって水分率65質量%以上90質量%以下まで脱水し、次いで、スクリュープレス等によって水分率の上限として60質量%、好ましくは50質量%、より好ましくは45質量%、また水分率の下限として30質量%、好ましくは35質量%まで脱水することが挙げられる。ここで水分率とは、公知の定温乾燥機を用いて原料20を乾燥させ、質量変動を認めなくなった時点の質量を乾燥後質量とし、下記式(1)にて算出した値である。
水分率(質量%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100 ・・・(1)
このように上記脱水工程を行うことにより、無機物の流出を抑制し、後の乾燥工程や熱処理工程におけるエネルギーロスを抑え、乾燥ムラを防止し、原料20のフロックが硬くなり過ぎて解し難くなることを抑制することができる。脱水工程においては、原料20を凝集させる凝集剤等の助剤を添加して脱水効率の向上を図ることもできるが、助剤としては鉄分を含まないものを使用することに留意する。助剤に鉄分が含まれていると、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがあるからである。
[解し(ほぐし)工程]
脱水工程後の原料20は貯槽21から切り出して解し(ほぐし)工程に付してもよい。解し工程は、例えば、撹拌機や機械式ロール等の公知の装置を用いて原料20を解せばよい。解し工程後の原料20は、粒子径50mm以上の割合の上限として70質量%が好ましい。一方、粒子径50mm以上の割合の下限としては30質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。「粒子径50mm以上の割合」とは、原料20全体における目穴50mmの篩を通過しなかった原料20の質量割合を意味し、JIS−Z8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」に基づく値である。このように解し工程を行うことにより、後の乾燥工程に適した粒子径の原料20を得ることができる。
[乾燥工程]
脱水工程後の原料20は、上記の解し工程を適宜経た後、乾燥工程に付される。乾燥工程で用いる乾燥装置22としては、原料20を熱気流に同伴させて乾燥することができる気流乾燥装置を用いることが好ましい。この気流乾燥装置は、原料20を乾燥すると同時に、熱気流の大きな分散力によって原料20を均一に解すことができ、また、水分が蒸発した次の瞬間には乾燥装置22から原料20が排出されるため意図しない有機物の熱分解・燃焼等が生じるおそれがないためである。このような乾燥装置22としては、例えば、新日本海重工業社製の商品名「クダケラ」等の公知の装置の他、これらを改良した気流乾燥装置等が挙げられる。本実施形態における乾燥工程では、貯槽21から脱水後の原料20を乾燥装置22に供給するとともに、バーナー36Aを備える熱風発生炉36から熱風が吹き込まれ、この熱風によって生じる熱気流に同伴させることで原料20を乾燥させている。この脱水工程における熱風の温度、流量、流速等を調節して熱気流を制御することにより、原料20の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。
上記乾燥工程後は、粒子径50mm以上の原料20が存在せずに、かつ平均粒子径の上限としては7mmが好ましく、5mmがより好ましく、3mmがさらに好ましい。一方、平均粒子径の上記下限としては1mmが好ましい。「平均粒子径」とは、JIS−Z8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」に基づいて、目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った原料の質量を測定して、測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、「粒子径50mm以上の割合」は前述したとおりである。原料20の平均粒子径が1mm未満であると、第1熱処理炉において過剰な熱処理が生じ易くなる。他方、原料20の平均粒子径が7mmを超え、あるいは粒子径50mm以上の原料20が存在すると、原料10を表面部から芯部まで均一に熱処理するのが困難になる。
乾燥工程における上記熱気流の温度は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風発生炉36からの熱風温度の上限として600℃、好ましくは500℃、より好ましくは400℃とし、熱風温度の下限として200℃、好ましくは300℃とすることが挙げられる。また、乾燥装置22からの排ガスの温度は500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。乾燥工程における熱気流及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、わずか1〜3秒で再生粒子の製造に好適な水分率を均一に有する原料20を得ることができる。
上記乾燥工程後の原料20の水分率の上限としては5%が好ましく、3%がより好ましく、1%がさらに好ましい。一方、水分率の上記下限としては0%が好ましい。乾燥工程後の原料20の水分率を上記範囲とすることにより、続く熱処理工程(特に第1熱処理工程)での熱処理がより効果的にムラなく行われ、均一な品質を有する再生粒子を安定して得ることができる。また、上記乾燥工程と以下の第1熱処理工程とを分けて行うことにより、目的に応じた熱処理温度を確実に区別して制御することができる。
[熱処理工程]
[第1熱処理工程]
第1熱処理工程では、上記乾燥工程を経た原料20が装入機23によって第1熱処理炉24に装入される。この第1熱処理炉24としては、公知の熱処理炉を適宜使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等が挙げられる。本実施形態では、第1熱処理炉24として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を採用しているが、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能である。本実施形態においては、第1熱処理工程に先立って原料20を乾燥し水分を予め除去しているため、熱処理温度を確実に制御できる点で外熱キルン炉の方が好適である。また、キルン炉は、原料20の燃焼度合いの調整が容易で、原料20の歩留まり性に優れ、充分に撹拌ができる点で有機物の熱処理にバラツキが発生せず、得られる再生粒子が均一で白色度が優れる点においても好適である。
本実施形態では、第1熱処理炉24は、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転作用及び重力作用によって原料20が搬送方向へ徐々に移送される構造を有している。本実施形態における第1熱処理炉24の外表面上には、電気ヒーター等からなる外熱ジャケット24Cが設けられており、この外熱ジャケット24Cにより炉本体の内表面上に堆積した原料20が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット24Cは、炉本体の軸方向に沿って数個に分割されており、分割された外熱ジャケットを個別に加熱することで、熱処理温度を細やかに制御することができ、原料20の性質及び状態に応じた的確な熱処理を行うことができる。
第1熱処理炉24の炉本体内表面温度の上限としては、450℃が好ましく、400℃がより好ましい。一方、上記炉本体内表面温度の下限としては260℃が好ましく、280℃がより好ましく、300℃がさらに好ましい。また、炉本体内の温度の上限としては350℃が好ましく、上記炉本体の温度の下限としては240℃が好ましく、270℃がより好ましく、280℃がさらに好ましい。炉本体外表面の温度が260℃を下回ると、原料20中のアクリル系有機物及びセルロースを十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が450℃を上回ると、原料20の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。なお、上記炉本体内表面温度は炉本体内表面に設置した熱電対にて実測した値であり、炉本体内の温度は炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。
また、上記第1熱処理炉24は上記のような外熱方式以外に、例えば、酸素を含有する熱風を適宜供給する内熱方式とすることもできる。内熱方式の場合、熱風はバーナー37Aを備える熱風発生炉37から供給口24Aを通して炉本体内に供給すればよく、当該熱風によって供給口24Aから入り炉本体の回転に伴って排出口24Bへ順次移送される原料20の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第1熱処理炉24内のガスは排出口24Bを通して排ガスとして排出される。このような内熱方式では、第1熱処理炉24に供給された原料20を直ちにアクリル系有機物やセルロース等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、排出口24B側に向かう程低温化する温度勾配が生じるため、原料20の過剰な熱処理を防止することができる。なお、このような温度勾配の設定は上記外熱方式でも可能である。第1熱処理炉24は外熱方式と内熱方式を併用することも可能であり、併用する場合は、例えば、バーナー37Aを用いずに熱風発生炉37のみを用いて第1熱処理炉24内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。
上記内熱方式の場合、供給する熱風に含まれる酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、18.0容量%がより好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、5.0容量%が好ましく、6.0容量%がより好ましく、7.0容量%がさらに好ましい。また、排ガスの酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、17.0容量%がより好ましく、15.0容量%がさらに好ましい。一方、上記排ガスの酸素濃度の下限としては、0.1容量%が好ましく、1.0容量%がより好ましく、3.0容量%がさらに好ましい。上記酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(堀場製作所製の型番「ENDA−5250」)にて測定した値である。原料20の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ排ガスの酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。他方、熱風の酸素濃度が5.0%未満、あるいは排ガスの酸素濃度が0.1%未満であると、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整することが困難となるおそれや、熱分解ガスの発火(燃焼)が生じているおそれがある。また、熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、炉本体内における酸素濃度の上限としては通常20.0容量%、好ましくは17.0容量%、より好ましくは15.0容量%に調節され、一方、下限としては通常0.1容量%、好ましくは1.0容量%、より好ましくは4.0容量%に調節される。上記酸素濃度は、外熱方式の場合も同様であり、外熱方式及び内熱方式を併用した場合も同様である。
また、上記内熱方式の場合、第1熱処理炉24に供給する熱風の温度の上限としては、420℃が好ましく、410℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては、300℃が好ましく、350℃がより好ましく、360℃がさらに好ましい。また、排ガスの温度の上限としては370℃が好ましく、360℃がより好ましく、350℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては250℃が好ましく、300℃がより好ましく、310℃がさらに好ましい。ここで熱風の温度は熱風発生炉37の熱電対にて実測した値であり、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて実測した値である。熱風の温度が300℃以上で、かつ排ガスの温度が250℃以上であると、原料20中のアクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われる。また、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2熱処理炉25及び第3熱処理炉27における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2熱処理炉25や第3熱処理炉27において、スチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することができ残カーボンの生成を抑制することができる。もっとも、熱風の温度が420℃を超え、あるいは排ガスの温度が370℃を超えると、熱分解ガスが発火するおそれがあり、また、第2熱処理炉25における熱処理エネルギーが増加し、さらに、難燃性カーボンが生成し易くなり、製紙用の添料や顔料等として必要な特性を備えた再生粒子を安定して得ることができなくなるおそれがある。また、熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、炉本体内における温度の上限としては通常370℃、好ましくは360℃、より好ましくは350℃に調節され、一方、下限としては、通常250℃、好ましくは300℃、より好ましくは310℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値であり、原料20の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。なお、上記炉本体内の温度は、供給口24Aから排出口24Bに向けて温度勾配があり一様ではないため、熱風の温度調節及び排ガスの温度管理により制御することが好ましい。
第1熱処理炉24においては、原料20の発熱量が20%〜90%減少するように、好ましくは50%〜80%減少するように、より好ましくは50%〜70%減少するように熱処理することが好ましい。発熱量の減少率が90%以下であると、過剰な熱処理が抑えられ、硬質物質の生成が好ましくは1.5質量%以下に抑制される。この点、90%を超える発熱量の減少は、原料20中のスチレン系有機物までもが熱分解していることを意味し、したがって炉本体内がセルロース等の熱分解ガスが発火しうる状態(つまり、高温状態)になっていることを意味する。他方、発熱量の減少率が20%未満であると、原料20中の高発熱量成分であるアクリル系有機物が残留し、第2熱処理炉25における熱処理温度の変動が大きなものとなるおそれがある。なお、発熱量の減少率は、第1熱処理炉24に供給される原料20の発熱量と、第1熱処理炉24から排出される原料20の発熱量とを比較した値であり、この発熱量は、熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて測定した値である。特に、第1熱処理炉24において、アクリル系有機物及びセルロースを除去して上記発熱量を20%〜90%減少するとともに、発熱量が1000cal/g未満、好ましくは300cal/g以上400cal/g以下となるように熱処理することにより、第2熱処理炉25における炉本体内温度の変動幅を10℃以上40℃以下の範囲に抑制し易くなり得られる再生粒子を均質化することができる。第2熱処理炉25における炉本体内温度の変動幅を上記範囲とすることにより、得られる再生粒子の硬度及び白色度のバラツキを防止することができる。
第1熱処理炉24における原料20の未燃率の上限としては、30質量%が好ましく、26質量%が好ましく、23質量%がより好ましい。一方、上記未燃率の下限としては、13質量%が好ましく、14質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。ここで、未燃率とは、約600℃に温度調整した電気炉で2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。未燃率が30質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第2熱処理炉25における熱処理を緩慢に行うことができるようになる。もっとも、未燃率が13質量%未満となるまで熱処理を行うと第1熱処理炉24におけるエネルギーコストが高くなる。
第1熱処理炉24における原料20の滞留時間の上限としては、120分が好ましく、105分がより好ましく、90分がさらに好ましい。一方、滞留時間の下限としては、30分が好ましく、45分がより好ましく、60分がさらに好ましい。滞留時間を30分以上とすることにより、原料20に含まれるアクリル系有機物、セルロースが緩慢に熱分解され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。なお、滞留時間は、原料20と色が異なることにより識別できる金属片を供給口24Aから炉本体内に投入し、排出口24Bから排出されるまでの実測時間である。
上記第1熱処理工程によって、220℃近傍に発熱量のピークを有するアクリル系有機物及び320℃近傍に発熱量のピークを有するセルロース等の製紙スラッジ由来の高発熱量成分を原料中から熱処理除去することができる。その結果、続く第2熱処理工程での過燃焼を抑制し、再生粒子として不適切なゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)やアノーサイト(CaAl2Si2O8)等の硬質物質の生成を抑制することができる。
[第2熱処理工程]
上記第1熱処理炉24において熱処理された原料20は、第2熱処理工程に送られ熱分解や燃焼等の熱処理に付される。
原料20は、この第2熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を1mm以上7mm以下、好ましくは1mm以上5mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下に調節しておくことが好適である。
第2熱処理工程において、原料20は第2熱処理炉25に装入される。この第2熱処理炉25としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等が挙げられる。本実施形態では、第2熱処理炉25として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉を採用しているが、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能である。本実施形態の第2熱処理炉25は、第1熱処理炉24と同形状のものを採用しているが、例えば、第1熱処理炉24と軸方向の長さが異なるキルン炉を用いて、原料20の滞留時間を異なるものとしてもよい。本発明の第2熱処理炉25の外表面上には、第1熱処理炉24と同様に電気ヒーター等からなる外熱ジャケット25Cが設けられており、この外熱ジャケット25Cにより炉本体の内表面上に堆積した原料20が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット25Cは、炉本体の軸方向に沿って数個に分割されており、分割された外熱ジャケットを個別に加熱することで熱処理温度を細やかに制御することができ、原料20の性質及び状態に応じた的確な熱処理を行うことができる。
第2熱処理炉25の炉本体内表面温度の上限としては、550℃が好ましく、500℃がより好ましい。一方、上記炉本体内表面温度の下限としては360℃が好ましく、380℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。また、炉本体内の温度の上限としては400℃が好ましく、上記炉本体の温度の下限としては360℃が好ましい。炉本体外表面の温度が360℃を下回ると、原料20中のスチレン系有機物を十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が550℃を上回ると、原料20の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。原料20の温度は、炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。なお、上記炉本体内表面温度の測定方法は第1熱処理炉24と同様である。
また、上記第2熱処理炉25は第1熱処理炉24と同様に、内熱方式とすることもできる。内熱方式の場合、熱風はバーナー38Aを備える熱風発生炉38から供給口25Aを通して炉本体内に供給すればよく、当該熱風によって供給口25Aから入り炉本体の回転に伴って排出口25Bへ順次移送される原料20の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第2熱処理炉25内のガスは排出口25Bを通して排ガスとして排出される。このような内熱方式では、第2熱処理炉25に供給された原料20を直ちにスチレン系有機物等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、排出口25B側に向かう程低温化する温度勾配が生じるため原料20の過剰な熱処理を防止することができる。なお、このような温度勾配の設定は第1熱処理炉24と同様に上記外熱方式でも可能である。第1熱処理炉24は外熱方式と内熱方式を併用することも可能であり、併用する場合は、例えば、バーナー38Aを用いずに熱風発生炉38のみを用いて第2熱処理炉25内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。
また、上記第1熱処理炉24が並流方式の場合等においては、第2熱処理炉25において、排出口25Bから炉本体内に熱風を吹き込み、排ガスを供給口25Aを通して排出する向流方式としてもよい。これにより第1熱処理炉24からの排ガスを通す配管と、第2熱処理炉25からの排ガスを通す配管とを、例えば1つにまとめることができ配管処理が容易となる。さらに、第1熱処理炉24と第2熱処理炉25とを連接し、熱風発生炉37からの熱風を、第1熱処理炉24を介した後、供給口25Aを通して第2熱処理炉25内に供給するとともに、バーナー38Aが備わる熱風発生炉38からの酸素を含有する熱風を供給口25Aを通して第2熱処理炉25内に供給してもよい(並流方式)。
上記内熱方式の場合、供給する熱風に含まれる酸素濃度の上限としては20.0容量%が好ましく、18.0容量%がより好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、5.0容量%が好ましく、6.0容量%がより好ましく、7.0容量%がさらに好ましい。また、排ガスの酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、17.0容量%がより好ましく、15.0容量%がさらに好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、0.1容量%が好ましく、1.0容量%がより好ましく、3.0容量%がさらに好ましい。上記酸素濃度は自動酸素濃度測定装置(堀場製作所製の型番「ENDA−5250」)にて測定した値である。熱風の酸素濃度が5.0%未満、あるいは排ガスの酸素濃度が0.1%未満であると、スチレン系有機物等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整するのが困難で白色化が進まないおそれがあり、また、熱分解ガスの発火(燃焼)が生じているおそれがある。他方、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、原料20の燃焼や硬質化が進むおそれがある。また、熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、炉本体内における酸素濃度の上限としては通常20.0容量%、好ましくは17.0容量%、より好ましくは15.0容量%に調節され、一方、下限としては通常0.1容量%、好ましくは1.0容量%、より好ましくは4.0容量%に調節される。
また、内熱方式の場合、第2熱処理炉25に供給する熱風の温度の上限としては、550℃が好ましく、530℃がより好ましく、500℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては350℃が好ましく、380℃がより好ましく、400℃がさらに好ましい。また、排ガスの温度の上限としては、500℃が好ましく、470℃がより好ましく、450℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては300℃が好ましく、330℃がより好ましく、350℃がさらに好ましい。ここで熱風の温度は熱風発生炉38の熱電対にて実測した値であり、排ガスの温度は排ガスの煙道に設置した熱電対にて実測した値である。熱風の温度が350℃以上で、かつ排ガスの温度が300℃以上であると、原料20中のスチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われる。また、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3熱処理炉27における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3熱処理炉27において、残カーボン等の有機物を緩やかに燃焼することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。他方、熱風の温度が550℃以下で、かつ排ガスの温度が500℃以下であると、本工程における残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、原料20の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する原料20の熱処理度合いや粒揃えを容易にかつ安定的に制御することができる。この点、熱風の温度が550℃を超え、あるいは排ガスの温度が500℃を超えると、原料20の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。また、熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、炉本体内における温度の上限としては通常500℃、好ましくは470℃、より好ましくは450℃に調節され、一方、下限としては、通常300℃、好ましくは330℃、より好ましくは350℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値であり、原料20の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。なお、上記炉本体内の温度は、第1熱処理炉24と同様に供給口25Aから排出口25Bに向けて温度勾配があり一様ではないため、熱風の温度調節及び排ガスの温度管理により制御することが好ましい。
第2熱処理炉25から排出された排ガスは、再燃焼室31においてバーナー等により再燃焼し、予冷器32において予冷した後、熱交換器33を通して誘引ファン34によって煙突35から排出することができる。ここで、熱交換器33は、外気を昇温し、この昇温した外気を、例えば、第1熱処理炉24に吹き込まれる熱風の用に供し、排ガスの熱回収を図ることもできる。このような排ガスの処理は排ガス中に含まれる有害物質の除去にも有効である。
第2熱処理炉25における原料20の滞留時間の上限としては、120分が好ましく、100分がより好ましく、80分がさらに好ましい。一方、滞留時間の下限としては、30分が好ましく、40分がより好ましい。滞留時間を30分以上とすることにより、原料20に含まれるスチレン等由来の有機物が緩慢に熱処理され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
第2熱処理炉25における原料20の未燃率の上限としては、20質量%が好ましく、17質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。一方、上記未燃率の下限としては、2質量%が好ましく、5質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。ここで、未燃率とは約600℃に温度調整した電気炉で2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。原料20の未燃率が20質量%以下となるように熱処理を行うことで、第3熱処理炉27における熱処理(燃焼)を短時間で効率よく行うことができるようになり、得られる再生粒子の白色度を70%以上、好ましくは80%以上の高白色度とすることができる。もっとも、未燃率が2質量%未満となるまで熱処理を行うと、第2熱処理炉25におけるエネルギーコストが高くなり、また、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬度が高くなるなど、再生粒子の品質低下につながるおそれがある。
上記第2熱処理工程によって、製紙スラッジ由来の420℃近傍に発熱量のピークを有するスチレン系有機物を熱分解ガス化させ、除去することができる。その結果、続く第3熱処理工程での過燃焼を抑制し、再生粒子として不適切なゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)やアノーサイト(CaAl2Si2O8)等の硬質物質の生成を抑制することができ、均一かつ安定的に白色度の優れた再生粒子を得ることができる。
[第3熱処理工程]
第2熱処理炉25において熱処理された原料20は、第3熱処理工程に送られ熱分解や燃焼等の熱処理に付される。
原料20は、この第3熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を5mm以下、好ましくは1mm以上4mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下に調節しておくことが好ましい。平均粒子径が1mm未満であると、第3熱処理炉27において原料20が過燃焼するおそれがある。他方、平均粒子径が5mmを超えると、残カーボンの熱処理(燃焼)が困難となり、芯部まで燃焼が進まず、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
また、第3熱処理工程に供給する原料20の粒揃えは、粒子径1mm以上5mm以下の割合が、70質量%以上となるように、好ましくは75質量%以上95質量%以下となるように、より好ましくは80質量%以上95質量%以下とすることが好ましい。
第3熱処理工程において、原料20は装入機26から第3熱処理炉27に装入される。この第3熱処理炉27としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等が挙げられる。本実施形態では、第3熱処理炉27として、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を熱処理効率が外熱キルン炉よりも優れる点で採用しているが、第1熱処理炉24や第2熱処理炉25と同様に、外熱ジャケットを有する外熱キルン炉を使用することもできる。外熱ジャケットは、長手方向(搬送方向、炉本体の軸方向)の温度制御が容易な電気ヒーター形式とすると好ましく、このように、長手方向に温度制御が容易であると任意に温度勾配を設けることが可能となり、原料20を所定の時間、所定の温度に保持することができ、原料20に含まれる残留有機分や、残カーボンを限りなくゼロに近づけ除去できる点で好ましい。第3熱処理炉27に外熱キルン炉を採用する場合は、原料20を所定の滞留時間をもって熱処理することができ、原料20に間接的に均一な熱が加わることで燃焼が均一なものとなり、炉内表面の回転による摩擦によって原料20が緩やかに撹拌されるため微粉化を生じ難く、品質及び性状が安定した再生粒子を得ることができる。
第3熱処理炉27においては、炉本体の内壁に設けた各種リフターによって原料20の搬送速度を制御し、原料20を緩慢に熱処理することで、得られる再生粒子の均質化を図ることができる。この炉本体の内壁に設ける各種リフターは特に限定されず、例えば、第3熱処理炉27内の内壁に、原料20の供給口27A側から排出口27B側に向けて図3(a)及び(b)に示すような螺旋状リフター50及び/又は軸心と平行な複数の平行リフター51をこの順に設けること等が挙げられる。
本実施形態では、この第3熱処理炉27は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に供給口27Aが、他端部に排出口27Bが設けられ、他端又は両端には外筺52内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー(図示せず)が配設されている。外筺52の供給口27A側における耐火壁53の内面には、外筺52の軸心に対して45°以上70°以下の傾斜角を有する複数条の螺旋状リフター50が取付ブラケット54を介して等間隔に突設されており、この他端側には、外筺52の軸心に対して平行な平行リフター51が周方向に取付ブラケット55を介して突設されている。
なお、耐火壁53は、耐火キャスタブル又は耐火レンガ等で構成することが好ましく、また、螺旋状リフター50と平行リフター51を、例えば、耐熱性を有するステンレス鋼板等の金属製とすることで高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できる。また、これらのリフターは耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター50と平行リフター51とは、上記のとおり、供給口27Aから排出口27Bに向けてこの順で配設するのが望ましい。
上記のように構成された第3熱処理炉27によれば、供給口27Aから投入された内容物が、まず螺旋状リフター50にて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料20に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触することができる。さらに、引き続いて平行リフター51にて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター50にて平行リフター51に送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター51部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上できる。
なお、上記の実施形態では、螺旋状リフター50と平行リフター51とを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。また、これらのリフターは、第1熱処理炉及び第2熱処理炉にも適宜適用することができる。
上記第3熱処理炉27が内熱方式の場合、熱風はバーナー39Aを備える熱風発生炉39から供給口27Aを通して炉本体内に供給すればよく、当該熱風によって供給口27Aから入り炉本体の回転に伴って排出口27Bへ順次移送される原料20の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第3熱処理炉27内のガスは、例えば、排出口27Bを通して排ガスとして排出される。また、熱風を原料20の排出口27Bを通して吹き込み、第3熱処理炉27内のガス(排ガス)を、供給口27Aを通して排出する向流方式としてもよい。このように向流方式とすると、排ガス中の煤塵が原料20中に混入することを防止でき、得られる再生粒子の品質の低下を防止することができる。すなわち、原料20に含まれる残カーボンが直ちに燃焼され、この残カーボンの燃焼に伴い発生する煤塵が供給口27A側から排ガスとともに速やかに炉本体外に排出されるため、排出口27Bから排出される原料20に混入することを防止することができる。また、第3熱処理炉27を外熱方式とする場合は、例えば、バーナー39Aを用いずに熱風発生炉39のみを用いて第3熱処理炉27内に酸素含有ガスを吹き込めばよい。
上記第3熱処理炉27が内熱方式の場合、供給する熱風に含まれる酸素濃度の上限としては、20.0容量%が好ましく、18.0容量%がより好ましい。一方、上記酸素濃度の下限としては、5.0容量%が好ましく、6.0容量%がより好ましく、7.0容量%がさらに好ましい。また、排ガスの酸素濃度の上限としては20.0容量%が好ましく、17.0容量%がより好ましく、15.0容量%がさらに好ましい。一方、上記排ガスの酸素濃度の下限としては、0.1容量%が好ましく、1.0容量%がより好ましく、3.0容量%がさらに好ましい。上記酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(堀場製作所製の型番「ENDA−5250」)にて測定した値である。熱風に含まれる酸素濃度は、原料20の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風(酸素含有ガス)及び排ガスの酸素濃度が低くなるように管理するのがより好ましい。もっとも、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が低すぎると、残カーボンや残留有機物の熱処理が充分に進まず、また、白色化が進まないおそれがある。他方、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、原料20の燃焼や硬質化が進むおそれがある。また、排ガスの酸素濃度を高くするためには、過剰の空気を炉本体内に吹き込む必要があり、炉内温度の低下や炉内温度制御が困難になる等の問題を生じるおそれがある。また、熱風に含まれる酸素濃度及び排ガスの酸素濃度を上記範囲とすることにより、炉本体内における酸素濃度の上限としては通常20.0容量%、好ましくは17.0容量%、より好ましくは15.0容量%に調節され、一方、下限としては、通常0.1容量%、好ましくは1.0容量%、より好ましくは4.0容量%に調節される。
また、第3熱処理炉27が内熱方式の場合、供給する熱風の温度の上限としては、780℃が好ましく、750℃がより好ましく、720℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては550℃が好ましく、600℃がより好ましく、650℃がさらに好ましい。また、排ガスの温度の上限としては、780℃が好ましく、750℃がより好ましく、720℃がさらに好ましい。一方、上記下限としては550℃が好ましく、600℃がより好ましく、650℃がさらに好ましい。ここで、熱風の温度は熱風発生炉39の熱電対にて実測した値であり、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて実測した値である。熱風の温度が550℃以上で、かつ排ガスの温度も550℃以上であると、原料20中の残カーボンや残留有機物の熱処理が確実に行われる。他方、熱風の温度が780℃以下で、かつ排ガスの温度も780℃以下であると、残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、原料20の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する原料20の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、熱風の温度が780℃を超え、あるいは排ガスの温度が780℃を超えると、原料20の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。しかも、得られた再生粒子をスラリー化したときに、固まるおそれがある。熱風及び排ガスの温度を上記範囲とすることにより、炉本体内における温度の上限としては通常780℃、好ましくは750℃、より好ましくは720℃に調節され、一方、下限としては、通常550℃、好ましくは600℃、より好ましくは650℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値であるが、上記炉本体内の温度は、第1熱処理炉24及び第2熱処理炉25と同様に供給口27Aから排出口27Bに向けて温度勾配があり一様ではないため、熱風の温度調節及び排ガスの温度管理により制御することが好ましい。
一方、第3熱処理炉27が外熱方式の場合は、炉本体外表面の温度の上限が780℃、好ましくは750℃、より好ましくは720℃となるように、一方、上記下限として550℃、好ましくは600℃、より好ましくは650℃となるように外熱ジャケット等の温度を制御することが好ましい。炉本体外表面の温度が550℃以上であると、残カーボンや、第2熱処理炉25で燃焼しきれなかったスチレン−アクリルやスチレン等の残留有機物を確実に燃焼することができる。なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しているため、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度となり、炉本体内の温度や原料20の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、炉本体外表面や内表面の温度と実質的に同一の温度になると推定される。
第3熱処理炉27における原料20の滞留時間の上限としては、240分が好ましく、150分がより好ましい。一方、滞留時間の下限としては、60分が好ましく、90分がより好ましく、120分がさらに好ましい。滞留時間を60分以上とすることにより、原料20に含まれる残留有機物や残カーボンが確実に燃焼され、また、再生粒子を安定して生産することができるようになる。他方、滞留時間が240分を超えると、過燃焼によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
上記第3熱処理工程によって、原料10に含まれる残カーボン等の有機物を効率よく熱処理除去することができる。また、第3熱処理工程では過燃焼を抑制することができるため、再生粒子として不適切なゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)やアノーサイト(CaAl2Si2O8)等の硬質物質の生成を抑制することができ、均一かつ安定的に白色度、不透明度の優れた再生粒子を得ることができる。
上記第1〜第3熱処理工程において熱処理炉として用いられる内熱又は外熱キルン炉は内壁を構成する耐火物を円周状(円筒状)、六角形状及び八角形状等に構成することができるが、簡便に原料20を撹拌するためには、耐火物等を円筒状として前述したようなリフターを設ける構成を採用することが好ましい。熱処理炉をこのような構成とすることにより、原料20を滑らすことなく持ち上げて充分に撹拌することができる。
なお、「硬化物質」とは、硬度が高く、微量の存在で製紙用具の摩耗・毀損や抄紙系内の汚れが生じ、塗工用顔料として使用した場合にはドクター等の塗工設備の摩耗・毀損、ストリークの発生要因となる物質のことで、具体的には、ゲーレナイト(Ca2Al2SiO7)やアノーサイト(CaAl2Si2O8)等が挙げられる。これは、原料20の主成分となる製紙スラッジは、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、抄紙助剤としての硫酸アルミニウム等の無機物を多く含んでいる。この中でも、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)は、熱処理の際に600℃以上750℃以下の温度で質量が減少し、硬質で水溶性の酸化カルシウム(CaO)に変化し、また、クレー(Al2Si2O5(OH)4)は、500℃前後で脱水により質量減少し、メタカオリンとなり、1000℃前後の高温では硬質なムライト(Al2Si2O13)に変化する。また、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)は、900℃前後で質量減少し、エンスタタイト(MgSiO3)に変化する。これらの変化は示差熱熱重量分析(TG/DTA6200)とX線回折(RAD2X)とによる燃焼物の分析によって確認できる。また、X線回折(RAD2X)によって、熱処理後の燃焼物中にはゲーレナイトやアノーサイトが存在することが確認できる。これらのゲーレナイトやアノーサイトは、熱処理温度が500℃前後でも生じ、熱処理温度の上昇に応じて生成量が増大する。また、製紙スラッジ中の酸化物換算によるカルシウムの含有量が増えると、アノーサイトは減少し、ゲーレナイトは増える傾向を示す。アノーサイトは、炭酸カルシウムの過燃焼により生じる酸化カルシウムとカオリンとの混合燃焼により生成され易く、したがって、上述の各種熱処理工程においては、25℃〜800℃における示差熱熱重量分析において、重量減量割合が5%(TG)以上となるように熱処理を行い、酸化カルシウムの生成自体を可及的に抑制するのが好ましい。また、水酸化カルシウムは、酸化カルシウムよりも一段とアノーサイトを生成し易いため、原料20の脱水率(水分率)や、各種熱処理における酸素濃度は、厳格に調節するのが好ましい。また、シリカにはゲーレナイトやアノーサイトの生成を助長する作用があるため、原料20に含まれるシリカを可能な限り低減しておくのが好ましく、その為には、例えば、新聞古紙や新聞抄紙系白水の使用を抑えることで、比較的低融点のゲーレナイトやアノーサイトの生成を抑制したり、得られた再生粒子をシリカで被覆することが挙げられる。
[粉砕・選別工程]
第3熱処理炉27から排出された原料20は、平均粒子径15μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下となるように、粉砕等して平均粒子径を調節することが好ましい。粒子径が1μmよりも小さいと歩留りが悪く抄紙機13の系内において異物化しやすくなる恐れがあり、15μmよりも大きいと地合が悪化したり、強度(引張強度や引裂強度)が低下する恐れがあり好ましくない。粉砕後の平均粒子径は、レーザー回折方式の粒度分布径(型番:SA−LD−2200、島津製作所製)を用いて測定した体積平均粒子径(D50)である。粉砕方法は特に限定されず、例えば、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機等が挙げられる。
粉砕後の原料20は、好適には凝集体であり、冷却機28において冷却後、振動篩機等の粒径選別機29により選別し、再生粒子としてサイロ30に貯留される。
[シリカ複合再生粒子の製造方法]
上述した再生粒子の表面にシリカを複合させる方法としては、例えば、特許第3907688号公報、又は特許第4087431号公報に記載の方法等を適宜用いることができる。但し、より不透明性に優れたシリカ複合再生粒子が得られる点で以下の製造方法が好ましい。
シリカ複合再生粒子の製造方法としては、上記再生粒子の製造方法で得られた再生粒子を、珪酸アルカリ水溶液に添加・分散してスラリーとし、撹拌しながら50℃以上100℃以下の温度範囲で鉱酸を添加する方法が好ましい。中でも、少なくとも2段階に分けて鉱酸を添加してシリカ複合の反応を行うことがより好ましい。この製造方法について以下に詳述する。
シリカ複合再生粒子の製造方法には、体積平均粒子径が1.0μm以上10.0μm以下の再生粒子を用いることが好ましい。なお、上記体積平均粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により再生填料の粒子径を測定し平均化した値である。用いる再生粒子の体積平均粒子径を上記範囲とすることで、得られるシリカ複合再生粒子が填料として適度な粒子径を有する。
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる珪酸アルカリ水溶液は、特に限定されず、例えば、容易に入手可能な珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)等が挙げられる。珪酸アルカリ溶液の濃度は、水溶液中の珪酸分(SiO2換算)として3質量%以上10質量%以下が好ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度を上記範囲とすることで、シリカのホワイトカーボン化を防止し、再生粒子表面を均一にシリカで被覆することができる。
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加及び分散してスラリーを調製する場合のスラリー濃度は8質量%以上14質量%以下が好ましい。スラリー濃度を上記範囲に調整することで、形成されるシリカ複合再生粒子の粒径をコントロールすると同時に再生粒子とシリカの組成比率を調整することができる。
また、上記再生粒子に対する珪酸アルカリ水溶液の固形分比としては、再生粒子100質量部に対して5質量部以上20質量部以下が好ましい。再生粒子に対する珪酸アルカリ水溶液の固形分比を上記範囲とすることで、シリカ複合再生粒子表面に十分なシリカの析出が得られ、インクの沈み込みを防止するとともに、新聞用紙の不透明性を向上させることができる。
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加する際の珪酸アルカリ水溶液の温度は、特に制限されないが、例えば、珪酸アルカリ水溶液の液温を予め50℃以上とした後に再生粒子を添加しても良いし、再生粒子を添加した後に適宜加熱しても良い。中でも、珪酸アルカリ水溶液を予め50℃以上に加温した状態で再生粒子を添加すると、加温によって流動性が向上し、スラリーが容易に均質化されるため好ましい。熱源としては、公知の熱源を適宜利用すればよく、例えば、工場内の生蒸気(例えば、13kg/cm2、120℃等)を吹き込むことにより、昇温時間の短縮及びエネルギー効率の向上が図れる。
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる鉱酸としては、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸等が挙げられ、中でも、価格が安くハンドリングが容易な点で希硫酸が好ましい。鉱酸の濃度としては、例えば、希硫酸を使用する場合は4N以上10N以下の濃度が好ましい。希硫酸の濃度を上記範囲とすることで、十分な反応速度を保ちつつ、ムラなくシリカの複合反応が進む。また、鉱酸の添加量が多いほど短時間でシリカが複合するため目的とする条件に合わせて添加量を適宜調整すればよい。しかし、芯材として用いる再生粒子は、カルシウム、アルミニウム、シリカを含有しているため、過度の鉱酸添加は再生粒子の変質を生じる恐れがあるため注意が必要である。
上記鉱酸の添加方法としては、連続して添加しても良いが、2段階以上に分けて添加することが望ましい。
鉱酸を連続して添加する場合は、pHが1低下するのに鉱酸の添加時間が40分以上となるように添加量を設定することが好ましい。
鉱酸を2段階以上に分けて添加する場合は、均質なシリカの複合が得られるように各段階における鉱酸の添加量を均等にすることが好ましい。第1段階目の添加としては、例えば、珪酸アルカリ水溶液の中和率が20%以上50%以下となるまで鉱酸を添加すればよく、この第1段階目の添加終了後に、5分以上20分以下の間鉱酸の添加を止めてシリカ複合反応に保留状態を設けることで、再生粒子の表面にシリカを均質に複合させることができる。続いて、更なる第2段階目の鉱酸添加により、さらにシリカの積層複合化を促進させ再生粒子の表面にシリカをより均一に複合させることができる。
上記第1段階目の鉱酸の添加においては、鉱酸の添加にかかる時間が10分以上45分以下となるように鉱酸の添加量を設定することが好ましく、第2段階目以降の添加においては、pHが1低下するのに鉱酸の添加にかかる時間が10分以上120分以下となるように設定することが好ましい。このように鉱酸の添加量を設定することにより、再生粒子の表面に均質にシリカを複合させることができる。
鉱酸を連続して添加する際の反応温度は、例えば、スラリー液温の上限としては100℃が好ましく、98℃がより好ましい。一方、上記液温の下限としては、50℃が好ましい。このスラリー液温はシリカの生成、結晶成長速度及び得られるシリカ複合再生粒子の力学的強度に影響を及ぼすため、スラリー液温を上記範囲とすることにより、再生粒子の表面にシリカを均一に複合させることができ、また十分な強度を有するシリカ複合再生粒子を得ることができる。なお、上記スラリー液温が100℃を超えると、過度に反応が進み、シリカ複合再生粒子の形態が緻密になり、得られるシリカ複合再生粒子としての不透明度が低下するため注意が必要である。
また、鉱酸を2段階以上に分けて添加する場合の反応温度は、例えば、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー液温を50℃以上75℃以下と設定し、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー液温を少なくとも第1段階目の添加時よりも10℃以上高く設定することが好ましい。より具体的には、例えば、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー液温を50℃以上75℃以下と設定し、続く第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー液温を70℃以上100℃以下と設定し、反応の最終段階でスラリー液温を90℃以上98℃以下と設定することが好ましい。このように鉱酸添加時のスラリー液温を上記範囲とすることで、再生粒子にシリカがより均質に複合したシリカ複合再生粒子を得ることができる。
上記シリカ複合再生粒子の製造方法において、最終反応液のpHの上限としては11が好ましく、10がより好ましく、9がさらに好ましい。一方、上記pHの下限としては8が好ましく、8.3がより好ましく、8.5がさらに好ましい。上記pHが8.0未満となるまで鉱酸を添加すると、再生粒子に含まれるカルシウム成分が水酸化カルシウムに変化しやすくなり、得られるシリカ複合再生粒子の粒子径が過度に低下したり、形状が不均質になり、紙への歩留り低下や紙粉の発生、十分な不透明性が得られ難くなるため好ましくない。一方、上記pHが11を超えると、珪酸アルカリと鉱酸の反応が鈍り、再生粒子の表面にシリカが複合し難くなり、十分な不透明性が得られ難くなるため好ましくない。
上記製造方法により得られるシリカ複合再生粒子の体積平均粒子径は、シリカと複合させる再生粒子の粒子径にもよるが、体積平均粒子径の上限としては10μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、上記下限としては1.7μmが好ましく、3μmがより好ましい。シリカ複合再生粒子の粒子径が1.7μm未満では、シリカ複合の効果が十分に発現できず、吸油量及び不透明度の向上効果が得難く、一方、10μmを超えると、パルプ繊維同士が相互に作り出す網目構造の目のサイズと比して大きくなるため、この部分に入り込んで固着することが困難となるため好ましくない。
上記製造方法においては、スラリー全体に均一に反応が進むように、例えば、撹拌槽内の撹拌羽根を逆転させて乱流を生じさせる、又は邪魔板を撹拌槽内に設ける等の撹拌手段を適宜採用することが好ましい。
上記シリカ複合再生粒子の製造方法によって、走査型電子顕微鏡による実測の粒子径として10nm以上20nm以下のシリカゾル粒子が再生粒子の表面に形成される。このシリカゾル粒子の粒子径は、反応時の撹拌条件又は鉱酸の添加条件等によりコントロールすることができる。
また、上記製造方法によって得られるシリカ複合再生粒子の細孔半径は10,000オングストローム以下であることが好ましく、上記シリカ複合再生粒子の細孔容積は水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用いた測定値における10,000オングストローム以下の領域の細孔容積の上限として1.5cc/gが好ましく、1.45cc/gがより好ましく、1.35cc/gがさらに好ましい。一方、上記細孔容積の下限としては、0.5cc/gが好ましく、0.68cc/gがより好ましく、0.70cc/gがさらに好ましい。このように細孔容積を上記範囲とすることで、十分な吸油量及び不透明度を有するシリカ複合再生粒子を得ることができる。
<新聞用紙>
上記製造方法は填料の歩留性が高いため、不透明度や白色度等の印刷特性に優れた新聞用紙が得られる。その結果、当該製造方法で得られる新聞用紙は、高速のオフセット輪転印刷に好適に用いることができる。
当該新聞用紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS−P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した数値の下限として38g/m2が好ましく、40g/m2がより好ましく、一方、上記上限としては48g/m2が好ましく、46g/m2がより好ましい。坪量を上記範囲とすることにより、高速オフセット輪転印刷機における強度確保が容易となり、紙の重量の増加を防止することができる。
当該新聞用紙の白色度は、読者の眼精疲労をきたさないように、JIS−P8148に測定した場合の数値で53%以上とすることが好ましく、54%以上58%以下とすることがさらに好ましい。白色度を上記範囲とすることにより、印刷前の白紙外観が低下することなく、オフセット印刷後、特にカラー印刷後の印刷物の見映えが良い新聞用紙が得られる。
当該新聞用紙の不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度はより高いものが望ましく、例えば、JIS−P8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した数値の上限として96%が好ましく、95%がより好ましい。一方、上記不透明度の下限として90%が好ましく、93%がより好ましい。不透明度を上記範囲とすることにより、裏抜けが生じることなく、必要な填料の増加を抑制し、パルプ繊維間の密着性が高く強度に優れた新聞用紙が得られる。また、体積平均粒子径の異なる再生粒子を組み合わせ、さらに填料添加工程後のパルプスラリーに凝結剤及び凝集剤を同時に添加することで、パルプ繊維の隙間を埋めるように再生粒子が抄紙されることに加え、填料歩留りが向上し、光散乱性が上がると共に光透過性が下がるため、当該新聞用紙は極めて高い不透明度を得ることができる。
当該新聞用紙の印刷不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から、印刷不透明度はより高いものが望ましく、例えば、後述する印刷不透明度試験方法に準拠して測定した数値の下限として90%が好ましく、92%がより好ましい。また、不透明度の上記上限としては、95%が好ましく、94%がより好ましい。印刷不透明度を上記範囲とすることにより、裏抜けが生じることなく、必要な填料の増加を抑制し、パルプ繊維間の密着性が高く強度に優れた新聞用紙が得られる。また、紙表面からの填料の脱落が減少することにより、印刷時の紙紛の増加を防ぎ、製造工程におけるマシン系内の汚れを抑制することができる。また、体積平均粒子径の異なる再生粒子を組み合わせ、さらに填料添加工程後のスラリーに凝結剤及び凝集剤を同時に添加することで、パルプ繊維の隙間を埋めるように再生粒子が抄紙され、これらの填料歩留りが向上し、光散乱性が上がると共に光透過性が下がるため、当該新聞用紙は極めて高い印刷不透明度を得ることができる。
また新聞用紙の密度は、JIS−P8118(1998)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した数値として0.56g/cm3以上0.70g/cm3以下が好ましい。密度を上記範囲とすることにより、紙の強度の低下を防ぎ、高速輪転印刷における断紙を防止し、紙粉の発生を抑制することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳説するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、表2中、「kg/トン」とは、固形分パルプ1トンあたりの量(kg)を意味する。
<再生粒子の製造>
(製造例1〜10)
古紙パルプを製造する古紙処理工程由来の製紙スラッジを主原料として用い、脱水工程終了後の水分率が35質量%となるように原料を脱水した後、粒子径50mm以上の割合が50質量%となるように原料を解し、さらに平均粒子径が3mmとなるように乾燥装置(新日本海重工業株式会社製「クダケラ」)を用いて気流乾燥させ、続いて、第1熱処理工程(炉本体内温度280℃、炉本体内酸素濃度12容量%)、第2熱処理工程(炉本体内温度380℃、炉本体内酸素濃度12容量%)及び第3熱処理工程(供給熱風温度700℃、炉本体内酸素濃度12容量%)を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子凝集体を得た。
なお、上記第1及び第2熱処理工程において用いた外熱キルン炉は、内部に平行リフター及び螺旋状リフターを有する外熱電気方式のキルン炉を採用し、また、上記第3熱処理工程では、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用い、この内熱キルン炉一端の原料供給口から脱墨フロス等の原料を供給するとともに熱風を吹き込む並流方式を採用した。
得られた上記再生粒子凝集体を、セラミックボールミルを用いて湿式粉砕処理し、以下の表1に示す製造例1〜10の再生粒子を得た。
(製造例11)
また、上記製造例2において第1熱処理工程を省略した以外は製造例2と同様にして製造例11の再生粒子を得た。
<新聞用紙の製造>
(実施例1)
〔原料スラリー調製工程〕
原料スラリー調製工程はプレタンク、受入チェスト、配合チェスト、マシンチェスト、種箱、第1ファンポンプ、クリーナー、第2ファンポンプ、スクリーンをこの順に備える装置を用いて行った。原料パルプは、配合チェストに投入され、流送ポンプによりマシンチェストに送られ、種箱送りポンプにより種箱へ送られ、第1ファンポンプでクリーナーに送られ異物を除去した後、第2ファンポンプでスクリーンへ送り、目的とする原料スラリーを調製した。以下に原料スラリー調製工程を詳述する。
〔パルプ配合率〕
原料パルプとしては以下のパルプを用いた。
新聞古紙由来の脱墨パルプ(NDIP) 85質量%
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP) 5質量%
サーモメカニカルパルプ(TMP) 10質量%
(工程1)
プレタンクに、新聞古紙由来の脱墨パルプ(NDIP)を投入し、凝結剤としてBASFジャパン株式会社製の商品名「カチオファストSF」(ポリエチレンイミン誘導体、固形分25%、カチオン電荷密度11.0meq/g、重量平均分子量150万)を純分で固形分のパルプに対し2000ppm添加した(凝結剤添加工程)。
(工程2)
受入チェストに上記(工程1)で得られたパルプスラリー、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)を投入、混合し(パルプ配合工程)、この混合パルプスラリーを配合チェストへ流送した。
(工程3)
配合チェストの混合パルプスラリーを、流送ポンプでマシンチェストに送り、さらに、硫酸バンドでpHを6〜7になるように調整後、凝集剤としてBASFジャパン株式会社製の商品名「ポリミンPR8150」(カチオン性ポリアクリルアミド、固形分53%、カチオン電荷密度1.6meq/g、重量平均分子量1000万)を純分で固形分のパルプに対し500ppm添加した。
(工程4)
上記マシンチェストの混合パルプスラリーを、種箱送りポンプで種箱に送り、このパルプスラリーに、パルプ固形分1tに対してアルキルケテンダイマーサイズ剤(日本PMC株式会社製、商品名「AD−1624」)0.3kg(固形分)を添加した。
(工程5)
さらに、第1ファンポンプでクリーナーに送り異物を除去した後、第2ファンポンプ前で上記製造方法により得られた再生粒子及びホワイトカーボンを表2の配合割合で添加した。さらに、スクリーンの手前で、凝結剤(上記「カチオファストSF」、添加量:650ppm(純分対固形分パルプ)及び凝集剤(上記「ポリミンPR8150」、添加量:650ppm(純分対固形分パルプ)を同時に添加した(填料歩留向上工程)。
(工程6)
スクリーンを通して異物を除去した後、さらに歩留向上剤としてベントナイト(BASFジャパン株式会社製、商品名「マイクロフロックSW」)を固形分のパルプ1トンに対し1.0kg(固形分)となるように添加して原料スラリーを調製した。
〔抄紙工程〕
上記原料スラリー調製工程で得られた原料スラリーを、ツインワイヤー抄紙機で抄紙して坪量42g/m2の基紙を得た。更に、上記基紙の表面にサイズ剤として酸化澱粉及びスチレン系ポリマー(星光PMC株式会社製、商品名「SS2712」)を、固形分換算で酸化澱粉100部に対しスチレン系ポリマーが15部となるように混合して水を加えて濃度を調整した後、乾燥質量で片面あたり0.5g/m2(両面で1.0g/m2)となるように上記基紙に塗工して実施例1の新聞用紙を得た。
(実施例2〜14)
填料添加工程の填料、填料歩留向上工程の凝結剤と凝集剤、及び凝結剤添加工程の凝結剤を表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜14の新聞用紙を得た。
(比較例1〜6)
填料添加工程の填料、填料歩留向上工程の凝結剤と凝集剤、及び凝結剤添加工程の凝結剤を表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1〜6の新聞用紙を得た。
<物性評価>
上記実施例及び比較例で得られた新聞用紙の各物性を以下の方法にて測定した。これらの結果を表3に示す。
(a)坪量
坪量は、JIS−P8124(1998)「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
(b)灰分
灰分は、JIS−P8251(2003)「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
(c)印刷不透明度
印刷不透明度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.45:2000「新聞用紙−印刷後不透明度試験方法」に準拠して測定した。
(d)不透明度
不透明度は、JIS−P8149(2000)「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した。
(e)白色度
白色度は、JIS−P8148(2001)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
(f)密度
密度は、JIS−P8124(1998)「紙及び板紙−坪量測定方法」及びJIS−P8118(1998)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
(g)インキ濃度
RI印刷適性試験機(石川島産業機械株式会社製、型番「RI−2型」)を使用して、金属ロールとゴムロールとの間隙に、オフセット印刷インキ(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「ニューズゼットナチュラリス(墨)」)を0.85ml塗布した後、CD方向50mm、MD方向100mmの試験片に30rpmの速度で印刷し、JIS−P8111(1998)「紙、板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態」に準拠した恒室状態で24時間乾燥させた。この試験片から無作為に選択した印刷部位25箇所のインキ濃度をマクベス濃度計にて測定し、これらの平均値を求めた。
なお、オフセット輪転印刷に好適なインキ濃度は1.25以上1.36以下である。
<品質評価>
また、上記実施例及び比較例で得られた各新聞用紙の品質を以下の試験例1〜5に基づき調べた。結果を表4に示す。
〔試験例1:インキセット性〕
RI印刷適性試験機(石川島産業機械株式会社製、型番「RI−2型」)を使用し、新聞用インキ(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「ニューズゼットナチュラリス(墨))にてベタ印刷した後、コート紙を印刷面に重ねて一定圧力で圧着した。コート紙へのインキの転移状況を目視にて観察し、以下の評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
◎:コート紙表面全体に全く汚れが生じていない。
○:コート紙表面の一部に僅かに汚れが生じているが、実用上問題がない。
△:コート紙表面全体に汚れが認められる。
×:コート紙表面全体の汚れが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
〔試験例2:インキ着肉性〕
オフセット印刷機(株式会社小森コーポレーション製、型番「小森SYSTEMC−20」)を使用し、新聞インキ(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「ニューズゼットナチュラリス(墨)」)にて、16万部/時の速度で連続して1万部の印刷を行った。得られた印刷物の画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
○:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
△:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
×:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
〔試験例3:表面強度〕
JIS−K5701−1(2000)「平版インキ−第1部:試験方法」に準拠して、転色試験機(石川島産業機械株式会社製、型番「RI−1型」)を使用し、インキタック18の1回刷りの条件で印刷した。新聞用紙表面の取られを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:新聞用紙表面全体に全く取られがない。
○:新聞用紙表面の一部に僅かに取られが生じているが、実用上問題がない。
△:新聞用紙表面全体に取られが認められる。
×:新聞用紙表面全体に取られが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
〔試験例4:インキ吸収ムラ〕
オフセット印刷機(株式会社小森コーポレーション製、型番「小森SYSTEMC−20)を使用し、新聞インキ(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名「ニューズゼットナチュラリス(墨)」)にて、16万部/時の速度で印刷を行った。得られた印刷物について、インキ濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インキ濃度ムラが全くなく、均一で鮮明な画像である。
○:インキ濃度ムラが殆どなく、均一な画像である。
△:一部に、インキ濃度ムラが認められ、画像が不鮮明な箇所がある。
×:全体的に、インキ濃度ムラが著しく、不鮮明な画像である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
〔試験例5:印刷操業性〕
(1)剣先詰まり
オフセット輪転印刷機(三菱重工業株式会社製、型番「LITHOPIA BTO−N4」)を使用し、50連巻きの新聞用紙にて、印刷を行った。剣先詰まり発生の有無を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剣先詰まりが全く発生しなかった。
○:巻き取り1本で剣先詰まりが1回しか発生しなかった。
△:巻き取り1本で剣先詰まりが2〜3回発生した。
×:巻き取り1本で剣先詰まりが4回以上発生した。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(2)紙粉パイリング
紙粉パイリングは、オフセット輪転印刷機(三菱重工業株式会社製、型番「LITHOPIA BTO−4」)を使用して50連巻きの新聞用紙にて両出し10万部の印刷を行い、ブランケット非画像部における紙粉の発生・堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生がわずかに認められるがブランケット上での堆積は全く認められない。
△:紙粉の発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
×:ブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
(3)ネッパリ性(ブランケット粘着性)
新聞用紙を幅約4cm×長さ約6cmの大きさに切断したサンプル2枚を用意し、水に10秒間浸漬した後、これらサンプル2枚を素早く密着させた。これをカレンダーに線圧100kg/cmで通紙し、24時間室温乾燥した後、手作業にてサンプル2枚の剥離(Tピール剥離試験模倣官能試験)を行い、剥離の度合いを以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剥離するまでもなく、全く接着していなかった。
○:一部僅かに接着していたが、容易に剥離することができた。
△:接着しており、剥離し難い箇所があった。
×:全体的に接着しており、剥離時に接着面からの繊維の毛羽立ちが認められた。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
上記結果より、填料歩留向上工程において、凝結剤及び凝集剤を同時に添加することで填料の歩留性を向上させ、印刷特性に優れる新聞用紙が得られることがわかる(実施例1〜14)。一方、凝結剤及び凝集剤のいずれか一方のみを用いた場合(比較例1、比較例2)や、填料歩留向上工程を設けなかった場合(比較例3〜5)及び填料として再生粒子を用いなかった場合(比較例6)は、いずれも充分な効果が得られないことが分かる。