JP2011207094A - インクジェット記録用紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙とする。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に、バインダー及び顔料を含有する塗工層が設けられた坪量が60g/m2以上80g/m2未満のインクジェット記録用紙であって、前記バインダーとして親水性接着剤並びに、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含み、前記顔料として湿式法シリカ並びに、炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録用紙に関するものである。特に、基材を薄物化しても、インクジェット記録適性に優れたインクジェット記録用紙に関するものである。
インクジェット記録方式は、フルカラー化が容易であり、記録時の騒音が小さいため、このインクジェット記録方式に適したインクジェット記録用紙が、汎用されている。この種のインクジェット記録用紙に対しては、滲みが少なくインク吸収性に優れること、紙面の平滑性や光沢性に優れること、印字濃度が高いこと、印字耐水性が高いことなどが要求される。
一般的にインクジェット記録用紙は、基材に顔料及びバインダーを構成成分とする塗工液を、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーターなどを用いて塗工することにより得られる。この際に使用する顔料としては、例えば、非晶質シリカや、合成シリカ、クレー、炭酸カルシウムなど、様々なものが存在するが、比表面積の大きいシリカを使用すれば、インクの吸収性が高くなるため、好ましいとされている。
例えば、特許文献1は、吸油量150〜350ml/100gの微粒子合成珪酸と水溶性高分子接着剤とを主成分とし、密度が0.70〜0.80g/cm3のインク受容性被覆層が設けられたインクジェット記録用紙を開示する。
しかしながら、これら従来のインクジェット記録用紙に、業務用のインクジェットプリンターを用いて記録する場合は、家庭用のインクジェットプリンターを用いて記録する場合と異なり、その高速性ゆえに、インクジェットインクの溶媒(水)の吸収・乾燥に時間がかかり、滲みを充分に防止できない。
そこで、インクジェットインクの吸収性向上や滲み防止のために、水等の親水性溶剤を使用した水系インクではなく、非水系溶剤に顔料(インク顔料)を溶解又は分散させて調整した非水系インクを使用し、もって高速印刷を可能にしたインクジェットプリンターが開発されている。
しかしながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンター記録においても、多量のインクジェットインクを使用した記録時には、インクジェットインクの吸収性や滲みの問題、更には、いわゆる裏抜けの問題が生じ、また、インクジェット記録用紙の波打ちが生じ易くなり、結果、インクジェットプリンターの用紙入口でインクジェット記録用紙が引っ掛かったり、ライン状のインクヘッドに擦れたりする場合がある。
また、非水系インクは、インク顔料と非水系溶剤との親和性が高いため、当該インク顔料が塗工層上に留まりにくく、非水系溶剤とともに塗工層内部、場合によっては基材にまで浸透し、インクの裏抜けや印字濃度の低下の問題を生じ易い。
この点、例えば、前述特許文献1などは、「本発明のインクジェット記録用紙は、インク受容性被覆層が低塗工量で、且つインク受容性被覆層のインク吸収性を高くするために、記録されたインクがインク受容性被覆層のみならず紙層内部に吸収され、その結果として見掛け上乾燥した状態になる」(段落[0010])としているが、非水系インクを使用すると、当該原理が逆に裏抜け等の問題点となって表れるため、インクジェット記録用紙を、「水性」インクジェット記録用紙に限定している。
このようなことから、非水系インクを使用する業務用のインクジェットプリンターを用いてインクジェット記録を行うにあたっては、インクジェット記録用紙として、坪量80g/m2以上95g/m2未満の用紙が主に使用されている(例えば、特許文献2参照。)。この引用文献2は、顔料と結着剤を主成分とするインク受理層をカーテン塗工方式又はダイ塗工方式から選ばれる少なくとも一つの塗工方式によってインク受理層の塗工量が2〜10g/m2となるように設けられ、かつ前記インク受理層に含有される顔料は吸油量150〜250ml/100gの合成非晶質シリカであることを特徴とし、段落[0034]の実施例において基材の坪量が80g/m2とされたインクジェット記録用紙が開示されている。そして、この引用文献2は、段落[0023]で「カーテン塗工方式及びダイ塗工方式は膜厚の均一な塗工層を得るのに最も適したコーターであり、また、基材の状態(すなわち表面性)が悪く、凹凸が大きかったり湿潤状態であったりしても、これらにあまり影響されることなくインク受理層を塗布することができる」とし、また、段落[0026]で「本発明においては、インク受理層を両面に設けて両面印字する際に発生する「裏抜け」とよばれる問題を防止することができる。この理由は明らかではないが、カーテン塗工方式及びダイ塗工方式で形成したインク受理層は均一であるため、インク中の着色顔料が基材中に浸透しにくくなるためと考えられる」としている。
しかしながら、坪量が80g/m2未満の低坪量のインクジェット記録用紙においては、基材の厚みが薄くなるため、均一な塗工層膜を基材上に設けるのみでは、基材表面の凹凸や基材の地合いムラにより浸透性の高い非水系インクの浸透ムラが生じ、裏抜けの問題が発現する。
なお、インクジェット記録用紙を業務用としても用いることができるようにするためには、従来から電子写真記録方式において多用されている電子写真記録用紙と同様な手肉感、作業性を有するインクジェット記録用紙とすることが肝要であり、好ましくは坪量を64g/m2程度に低減する必要がある。しかしながら、単に坪量を低減したのみでは、浸透性の高い非水系インクが塗工層を経て基材に至り易く、裏抜けの問題が発現する。
引用文献3には、水溶性高分子が結合または吸着しているインクジェット記録媒体用重合体ラテックスが、表面強度、耐水表面強度、インクジェット記録により得られる印刷物の鮮明性を有するバインダーとして紹介されている。
水溶性高分子を吸着させたラテックスをインクジェット記録用バインダーとして用いることで、インクジェット記録の改善効果がみられ、印字ムラは解消されるが、非水系インクを使用した際に塗工層中にインク顔料および染料をとどめることが不十分であり、本件発明が課題とする基材を薄物化した際の裏抜けについては改善されておらず、さらなる改善が求められている。
特開平5‐139023号公報 特開2006‐240270号公報 特開2007−098678号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、坪量が80g/m2未満と低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じない非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を提供することにある。
本発明者等は、以上の現状に鑑み鋭意研究した結果、インクジェット記録用紙の少なくとも一方の面、特に記録面に設ける塗工層の構成を特定し、塗工層の密度を高くすることにより、坪量を60g/m2以上80g/m2未満と低坪量化しても、十分な裏抜け防止効果、手肉感(剛度)が得られ、しかも印字ムラの抑制が図れ、インクジェットプリンターにおける搬送性にも優れることを見出し、次に示す本発明を完成するに至った。
なお、基材の「記録面」とは、塗工層を介してインクジェット記録される側の面を意味し、インクジェット記録等がされている面を意味するものではない。
〔請求項1記載の発明〕
基材の少なくとも一方の面に、バインダー及び顔料を含有する塗工層が設けられた坪量が60g/m2以上80g/m2未満のインクジェット記録用紙であって、
前記バインダーとして親水性接着剤並びに、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含み、
前記顔料として湿式法シリカ並びに、炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
〔請求項2記載の発明〕
前記湿式法シリカがゲル法シリカであり、かつ前記塗工層の密度が0.9〜2.0g/cm3であり、
前記塗工層中の顔料100質量部に対して、前記親水性接着剤としてポリビニルアルコール系重合体が5〜30質量部、前記脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤が10〜50質量部含有されている、請求項1記載のインクジェット記録用紙。
〔請求項3記載の発明〕
前記湿式法シリカは、二次平均粒子径が0.1〜8.0μm、吸油量が100〜300ml/100gであり、当該湿式法シリカの含有量と、前記炭酸カルシウム及び前記クレーの合計含有量とが6〜9:1〜4の質量割合とされている、
請求項1又は請求項2記載のインクジェット記録用紙。
〔請求項4記載の発明〕
製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、少なくとも3段階の熱処理工程及び粉砕工程を経て得られる再生粒子を、前記基材に含有することを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の塗工紙。
本発明によると、坪量が80g/m2未満と低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じない非水系インクに対応したインクジェット記録用紙となる。
再生粒子製造設備の概要図である。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
本形態のインクジェット記録用紙は、基材の少なくとも一方の面に、バインダー及び顔料を含有する塗工層が設けられた坪量が60g/m2以上80g/m2未満のインクジェット記録用紙であって、前記バインダーとして親水性接着剤並びに、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含み、前記顔料として湿式法シリカ並びに、炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を含有する。なお、本明細書においては、基材の塗工層が設けられる一方又は両方の面を「記録面」ともいう。
〔基材の坪量、塗工層の密度等〕
本形態のインクジェット記録用紙は、基材の坪量が65g/m2を超過する現状のインクジェト記録用紙を薄物化するために、既存の普通紙やPPC用紙に近い、基材の坪量が50〜65g/m2とされ、好ましくは基材の坪量が55〜65g/m2とされる。
一方、基材の坪量が50g/m2未満であると、インクの裏抜けが十分に防止されなくなるおそれがある。他方、基材の坪量が65g/m2を超えると、所望の手肉感が得られず、業務用の記録用紙として使用し難くなるおそれがある。また、基材の坪量が65g/m2を超えると、市場のニーズである薄物ではなくなり、しかも嵩張るため物資搬送性に劣ることになる。
本形態のように、基材の坪量を50〜65g/m2と薄物化し、浸透乾燥するインクを使用してインクジェット記録をする場合は、通常、裏抜けの問題が生じやすくなる。しかしながら、本形態では、塗工層が、バインダーとして親水性接着剤を含有し、また、顔料として炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を含有し、しかも顔料として易変形性の湿式法シリカを含有して高密度化されているため、裏抜けの問題が生じない。
このように、本発明のインクジェット記録用紙は坪量を60g/m2以上80g/m2未満、特に64g/m2以上79g/m2以下にまで低米坪化して、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターで高速印刷しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、搬送性に問題が生じない。本発明の構成を充足しない従来のインクジェット記録用紙では、坪量を60g/m2以上80g/m2未満、特に64g/m2以上79g/m2以下にまで低減させると、上述のとおり地合いムラまたはインクジェット記録用紙へのインク浸透性の低下に起因するインクの裏抜けや印字濃度の低下が発生したり、インクジェット記録用紙の波打ちが生じてインクジェットプリンターにおける搬送性が低下したりする問題がある。
なお、基材およびインクジェット記録用紙の坪量を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。塗工量も特に限定されず、坪量50〜65g/m2の基材上に、後述する塗工液を塗工し、坪量60g/m2以上80g/m2未満のインクジェット記録用紙とすればよい。
本形態の基材は、坪量が50〜65g/m2であれば、その厚さは特に限定されない。
塗工層密度は0.9〜2.0g/cm3とされ、好ましくは1.2〜1.8g/cm3、より好ましくは1.3〜1.6g/cm3である。塗工層の密度が0.90g/cm3未満では、インクの吸収性は良くなるが、インクが塗工層で広がらないためにドット径が小さくなり、裏抜けの問題や印字濃度が落ちてしまうとの問題が生じるおそれがある。他方、塗工層の密度が2.0g/cm3を超えると、インクの吸収性が悪くなるため、インクの滲みにより印字等がぼけてしまうおそれや、乾燥が遅く高速インクジェット記録においてヘッド部にインクが付着し、装置のみならず印刷物が汚れてしまうおそれがある。
なお、本発明者等は、基材の坪量を50〜65g/m2と薄物化するにおいて、浸透乾燥する非水系インクを使用するインクジェット記録手段を用いる場合は、塗工層の表層近傍で非水系インクの吸収乾燥を迅速に図ることが、課題となるインクの裏抜けや印字濃度低下に対し有効であること、また、薄物化による記録装置での搬送性低下に対しても、塗工層の構成が要点となることを知見している。
〔湿式法シリカ〕
本形態のインクジェット記録用紙は、塗工層が顔料として湿式法シリカ、好ましくはゲル法シリカを含有する。
ここで、湿式法シリカは、気相法シリカ(乾式法シリカ、ヒュームドシリカ)ともに、合成非晶質シリカに属するシリカであり、湿式法シリカは、更にゲル法シリカと沈降法シリカに大別される。
この点、湿式法シリカは、強度に関して気相法シリカに劣るが、親水性接着剤と併用した場合の塗工液安定性に優れる。そこで、本形態のようにバインダーとして親水性接着剤を含有する場合は、湿式法シリカを用いるのが好適であり、塗工液が安定化することにより、塗工層の密度や厚さを上記範囲に調節するのが容易となる。また、内部空隙の少ない気相法シリカに比べて、内部空隙に富む湿式法シリカは、塗工液中における分散性が良好であるため、塗工液の濃度を高くすることができる。したがって、湿式法シリカを用いると、塗工層の吸収性をより高くすることができるようになり、非水系インクにも対応することができるインクジェット記録用紙となる。しかも、湿式法シリカは、ポーラスな凝集構造を形成しているため、加圧に対して易変型性を有し、外圧がかかるとその形状が容易に変化する。したがって、カレンダー等による平坦化処理によって、塗工層が容易に高密度化し、基材の坪量を50〜65g/m2と薄物化する場合においても、塗工層の密度を0.9〜2.0g/cm3に容易に調節することができる。
一方、湿式法シリカは、上記のようにゲル法シリカと沈降法シリカとに大別され、吸収性という観点からは、よりポーラスな凝集構造を形成している沈降法シリカの方が、ゲル法シリカよりも優れる。しかしながら、本形態のインクジェット記録用紙においては、沈降法シリカよりもゲル法シリカを用いる方が好適である。上記したように湿式法シリカは、強度の点で気相法シリカに劣り、特に沈降法シリカはこの点が顕著になる。しかしながら、ゲル法シリカを用いることにより、塗工層の強度低下を限界づけるに好適となり、特にゲル法シリカを用いたインクジェット記録用紙であれば、例えば、小判スリット加工等にも好適に対応することができる。また、ゲル法シリカを用いると、インクの吸収力が沈降法シリカに比べ良くなり、裏抜けを防ぐのに好適である。しかし、吸収力が良くなることで非水系インクが広がらずインクドット径が狭くなり、印字濃度の低下が起こるが、本形態においては、バインダーとして親水性接着剤のほかに脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含有しており、この重合接着剤は親油性を有するため、非水系インクが使用された場合においても、当該インクが塗工層中において適度に広がることになり、当該インクの広がり、インクドット径が広がるため印字濃度を向上させることができる。
なお、本形態のインクジェット記録用紙は、気相法シリカではなく、湿式法シリカを用いるが、塗工層の強度低下対策として、顔料として炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を用い、しかもバインダーとして強固な結合力・造膜性・バリヤー性を発揮する親水性接着剤、好ましくはポリビニルアルコールを用い、加えて塗工層を高密度化する。したがって、湿式法シリカとして沈降法シリカ、ゲル法シリカの使用が可能であり、小判スリット加工時の塗工面の傷入りの恐れが無くなる。
本形態の湿式法シリカは、好ましくは嵩密度が0.15〜0.40g/cm3、吸油量が100〜300ml/100g、より好ましくは嵩密度が0.20〜0.35g/cm3、吸油量が150〜275ml/100g、特に好ましくは嵩密度が0.25〜0.30g/cm3、吸油量が200〜250ml/100gである。
湿式法シリカの嵩密度が0.05g/cm3未満であると、インクジェット記録用紙の表面強度が低くなり過ぎるおそれがある。他方、湿式法シリカの嵩密度が0.35g/cm3を超えると、塗工液の分散時に安定性を失ってしまうおそれがあり、塗工層の密度や厚さを上記範囲に調節するに好ましいものとは言えなくなるおそれがある。なお、本明細書において、嵩密度とは、JIS H 1902に準拠して測定した値である。
一方、湿式法シリカの吸油量が100ml/100g未満であると塗工層のインク吸収性が低くなり、吸収しきれなかったインクが基材にまで染み込み、裏抜けの要因となるおそれがある。他方、湿式法シリカの吸油量が300ml/100gを超えると非水系顔料インクが使用された場合に印字濃度が低くなるおそれがあり、また、塗工層の表面強度が低くなるおそれがある。なお、本明細書において、吸油量とは、JIS K 5101の顔料試験方法に準拠して測定した値である。
本形態の湿式法シリカは、平均二次粒子径が好ましくは0.1〜8.0μm、より好ましくは2.0〜5.0μm、特に好ましくは3.0〜4.0μmである。湿式法シリカの平均二次粒子径が0.1μmを下回ると、インク吸収性に劣るおそれがある。他方、湿式法シリカの二次粒子径が8.0μmを上回ると、塗工層内の空隙が多くなり、インクの吸収ムラが生じるおそれがある。なお、本明細書において、湿式法シリカの平均二次粒子径は、コールカウンター法による体積平均粒子径の測定値である。
また、本形態の湿式法シリカは、BET比表面積が好ましくは200〜800m2/g、より好ましくは300〜700m2/g、特に好ましくは400〜600m2/gである。湿式法シリカのBET比表面積が200m2/gを下回ると、インク吸収性に劣るおそれがある。他方、湿式法シリカのBET比表面積が800m2/gを上回ると、塗工液中のバインダー成分を吸収してバインダー効果が弱まるおそれがある。なお、本明細書において、BET比表面積は、JIS K 1474に準拠したBET法により測定した値である。
ここで、沈降法シリカの製造方法は特に限定されず、例えば、温水を貯留した反応槽中にpHと温度を保ちながら珪酸アルカリ水溶液と鉱酸とを所定時間添加する同時滴下法、所定濃度にあらかじめ調整して反応槽中に貯留した珪酸アルカリ水溶液(又は鉱酸)に対して鉱酸(又は珪酸アルカリ水溶液)を所定時間滴下する片側滴下法などを採用することができる。また、このような方法で析出した沈降法シリカは、その反応スラリー(シリカスラリー)中に残留するアルカリイオン、酸性イオン、塩類などを除去するために、ろ過、水洗いを行った後、乾燥、粉砕し、必要に応じて分級することにより、好適な沈降法シリカとすることができる。
一方、ゲル法シリカの製造方法も特に限定されず、例えば、珪酸アルカリ水溶液と鉱酸とをノズルを用いて急速に剪断、混合してシリカヒドロゾルを形成し、このシリカヒドロゾルを数時間放置することによりシリカヒドロゲルを得る方法などを採用することができる。この方法で得たシリカヒドロゲルは、解砕し、アルカリイオン、酸性イオン、塩類などを除去するために水洗いを行い、その後、嵩密度や細孔を調節するための水熱処理等を行い、更に乾燥、粉砕し、必要に応じて分級することにより、好適なゲル法シリカとすることができる。
〔炭酸カルシウム、クレー〕
本形態のインクジェット記録用紙においては、顔料として、湿式法シリカのほかに、炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を含有する。炭酸カルシウム及びクレーは、塗工層中において湿式法シリカの間を埋めるため(目止め性能)、顔料上にインク顔料が留まることになり、インクの裏抜けが防止される。
炭酸カルシウム及びクレーのいずれを用いるかは特に限定されず、一方又は両方を用いることができる。ただし、炭酸カルシウムは、クレーに比べてラテックスを吸収しやすい傾向にあるが、後述するように重合接着剤を顔料100質量部に対して10〜50質量部と多く含有させる場合は、ラテックスの吸収による接着性の低下は問題とならず、むしろ重合接着剤と炭酸カルシウムとの接着性を良好にできる利点がある。したがって、バインダーとして重合接着剤を用いる本形態においては、顔料として炭酸カルシウムを併用すると、クレーを併用した場合に比べて塗工層の表面強度がより向上しやすい。
本形態において用いる炭酸カルシウムの種類は特に限定されず、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムのいずれをも用いることができ、また、適宜特殊な調整がされた、例えば、特開昭57‐12486号公報、特開昭57‐129778号公報、特開昭58‐55283号公報、特開昭61‐20792号公報等に記載された特定の比表面積を有する炭酸カルシウム、特開昭63‐57277号公報、特開平4‐250091号公報等に記載された針柱状の炭酸カルシウム、特開平3‐251487号公報等に記載された特定の針状1次粒子が凝集して二次粒子を形成した炭酸カルシウム、特開平4‐250091号公報、特開平4‐260092号公報等に記載された特定の吸油量を有する針柱状の斜方晶アルゴナイト炭酸カルシウム、特開平7‐40648号公報等に記載された球状沈降性炭酸カルシウム、特開2007‐70164号公報、特開2009‐40612号公報等に記載されたシリカ複合型の炭酸カルシウムなども用いることができる。
本形態において、炭酸カルシウムやクレーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは0.1〜8.0μm、より好ましくは0.2〜5.0μm、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。平均粒子径が0.1μmを下回ると、塗工層が高密度化し、インク吸収性に劣るおそれがある。他方、平均粒子径が8.0μmを上回ると、炭酸カルシウムやクレーの上記目止め性能に劣るおそれがある。なお、炭酸カルシウム及びクレーの平均粒子径は、レーザー回折法によるメディアン径の測定値である。
本形態において、湿式法シリカに対する炭酸カルシウムやクレーの配合質量割合は特に限定されないが、湿式法シリカの含有量:炭酸カルシウム及びクレーの合計含有量が、好ましくは6〜9:1〜4、より好ましくは7〜9:1〜3、特に好ましくは8〜9:1〜2である。炭酸カルシウム及びクレーの合計含有割合が上記範囲を下回ると、前述目止め効果(性能)が得られなくなり、インクの裏抜けが生じるおそれがある。他方、炭酸カルシウム及びクレーの合計含有割合が上記範囲を上回ると、インク吸収性に劣るおそれがある。
上述のごとく、塗工層の顔料としては、粒経が0.1〜8.0μm、吸油量が100〜300ml/100gの湿式法シリカを用い、この湿式法シリカの含有量と、前記炭酸カルシウム及び前記クレーが合計含有量で、6〜9:1〜4の質量割合とすることで、本発明の課題を解決しやすいため好ましい。すなわち、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、さらにインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じない非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を得やすいため好ましい。
〔親水性接着剤〕
本形態のインクジェット記録用紙は、塗工層にバインダーとして親水性接着剤、好ましくはポリビニルアルコール系重合体を含有する。親水性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン‐ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性合成樹脂系の親水性接着剤、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉などが挙げられるが、この中でもポリビニルアルコール系重合体が前述湿式法シリカとの併用性に優れるため好ましい。ポリビニルアルコール系重合体は、その種類が特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール(PVA)が好適に選択される。
本発明者らは、塗工層の好適な構成である、微細粒子たる湿式法シリカや、後述する定着剤たるポリアミン系樹脂と、ポリビニルアルコールを組み合わせて用いるにあたり、ケン化度90%以上のポリビニルアルコールが好ましいことを知見した。ケン化度90%以上のポリビニルアルコールを用いると、その強固な結合力により、著しい造膜性が発現され、卓越した塗工層表面のバリヤー性が発揮されるようになる。そして、水性組成物(塗工液)中に含まれる沈降性シリカ、定着剤との組み合わせによる相乗効果により、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙となる。
本形態において、ポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールのほかに、例えば、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールや、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールなども用いることができる。
もっとも、本形態においては、低粘調である重合度500〜1500のポリビニルアルコールが好適である。重合度500〜1500のポリビニルアルコールを用いると、湿式法シリカの分散性に優れるため、塗工層の密度や厚さを前述範囲に調節するに好ましいものとなる。また、ポリビニルアルコールの重合度が500未満であると、インク吸収性は向上するが、非水系顔料インクが使用された場合に印字濃度が劣るおそれがある。他方、ポリビニルアルコールの重合度が1500を超えると高い粘調を呈するため、湿式法シリカの分散性に劣り、また、平坦化処理においても塗工層の密度変化が乏しくなり、塗工層を高密度化するに不利である。
本形態においては、ポリビニルアルコールとして、好ましくはケン化度90〜100%の中間ケン化または完全ケン化ポリビニルアルコールを、特に好ましくはケン化度97〜100%の完全ケン化ポリビニルアルコールを用いる。
ケン化度が90%未満の部分ケン化ポリビニルアルコールは、吸湿性や溶解度が高く、非水系インクを用いた場合に、塗工層や基材にインクが過度に浸透したり、滲んだりするおそれがある。これに対し、ケン化度が90〜100%の中間ケン化または完全ケン化ポリビニルアルコールを使用すると、その強固な結合力により、著しい造膜性が発現され、卓越した塗工層表面のバリヤー性が発揮されるようになる。また、塗工層表面が耐水性・耐熱性を持ち、被膜性にも優れることとの関係で、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いて記録した際のインクの裏抜けや印字濃度低下の問題、搬送性の問題、インク転移の問題が改善される。
本形態においては、塗工層中の顔料100質量部に対して親水性接着剤を5〜30質量部含有させるのが好ましく、8〜25質量部含有させるのがより好ましく、10〜20質量部含有させるのが特に好ましい。親水性接着剤の配合割合が5質量部を下回ると、バインダー効果が得られなくなり、表面強度が低下するおそれがある。他方、親水性接着剤の配合割合が30質量部を上回ると、相対的に全接着剤に占める重合接着剤の割合が減少し、重合接着剤に起因する親油性効果が得られにくくなるため、ドット径が小さくなり、印字濃度が低下するおそれがある。
〔重合接着剤〕
本形態のインクジェット記録用紙は、塗工層中にバインダーとして、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料(50容量%以上)とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含有する。この重合接着剤は親油性を有するため、非水系インクが使用された場合においても、当該インクが塗工層中において適度に広がる。したがって、顔料として湿式法シリカ、好ましくはゲル法シリカを用いた本形態においては、非水系インク吸収性が良好となるため高速印字を行うことができ、坪量が60g/m2以上80g/m2未満と低米坪であっても充分にインキ裏抜けを防止することができ、しかも当該インクが充分に広がるため、インクドット径が広がり印字濃度も向上しやすいため好ましい。
顔料として湿式法シリカを用いる場合、一般に、親水性接着剤、特にポリビニルアルコール系重合体は湿式法シリカに吸収され易くバインダー効果が得られにくくなるため、表面強度が低下して粉落ちが発生し易く好ましくないとされる。しかしながら、本形態のように親水性接着剤を重合接着剤と併用することで、高いバインダー効果を得ることができる。結果、本発明の課題である低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じない非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を得ることができる。
ここでいう脂肪族共役ジエン系単量体としては引用文献3のように、例えば、1,3‐ブタジエン、イソプレン、2‐クロロ‐1,3‐ブタジエン、クロロプレン等を例示することができる。また、エチレン系不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−エチルプロペンニトリル、2−プロピルプロペンニトリル、2−クロロプロペンニトリル、2−ブテンニトリル等を例示することができる。さらに、水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES)、アセチル化酸化澱粉(AOS)、酵素変性澱粉等の澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)等を例示することができる。
本発明においては、これら脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和ニトリル単量体、水溶性高分子化合物を組み合わせた重合接着剤であれば特に限定なく使用できるが、好ましくは脂肪族共役ジエン系単量体として1,3−ブタジエンを、エチレン系不飽和ニトリル単量体としてアクリルニトリルを、水溶性高分子化合物としてポリビニルアルコールを用いた重合接着剤を含有させることが好ましい。
以上のような親油性によるインク吸収性及びバインダー効果を好適なものとするために、本形態においては、塗工層中の顔料100質量部に対して重合接着剤を10〜50質量部含有させるのが好ましく、20〜45質量部含有させるのがより好ましく、30〜40質量部含有させるのが特に好ましい。重合接着剤の配合割合が10質量部を下回ると、インク吸収性に劣るおそれがある。他方、重合接着剤の配合割合が50質量部を上回ると、全接着剤に占める親水性接着剤(ポリビニルアルコール系重合体等)の割合が相対的に減少することになるため、かえってバインダー効果が得られにくくなるだけでなく、印字ムラが発生しやすくなるおそれがある。
上述のごとく、塗工層中の顔料としてゲル法シリカを用い、かつ塗工層中の顔料100質量部に対して、前記親水性接着剤としてポリビニルアルコール系重合体を5〜30質量部、前記脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を10〜50質量部含有させると、親水性接着剤、重合接着剤および湿式法シリカとの組み合わせにより、多次元的な塗工層を構成させやすいため、塗工層の密度を0.9〜2.0g/m2に調整しやすい。このため、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、さらにインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じにくい非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を得ることができる。
また、湿式法シリカとして平均二次粒子径が0.1〜8.0μm、吸油量が100〜300ml/100gであり、当該湿式法シリカの含有量と、前記炭酸カルシウム及び前記クレーの合計含有量とが6〜9:1〜4の質量割合である顔料に、親水性接着剤としてポリビニルアルコール系重合体を5〜30質量部と、前記重合接着剤を10〜50質量部含有させることにより、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、さらにインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じにくい非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を得ることができる。
加えて、製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、少なくとも3段階の熱処理工程及び粉砕工程を経て得られる再生粒子を基材に含有させ、かつ塗工層の顔料として平均二次粒子径が0.1〜8.0μm、吸油量が100〜300ml/100gである湿式法シリカを含有させ、当該湿式法シリカの含有量と、前記炭酸カルシウム及び前記クレーの合計含有量とが6〜9:1〜4の質量割合である顔料に、親水性接着剤としてポリビニルアルコール系重合体を5〜30質量部と、前記重合接着剤を10〜50質量部含有させることにより、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、特にインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じにくい非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を得ることができる。
〔その他の塗工層成分・配合割合等〕
本形態のインクジェット記録用紙においては、塗工層に上記親水性接着剤及び重合接着剤以外のバインダー成分を塗工層中の顔料100質量部に対して10質量%以下の範囲で含有させてもよく、例えば、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂などの中から1種又は2種以上を選択して含有させることができる。
また、インクの塗工層への定着性を向上させるという観点から、定着剤を含有させると、好適である。この定着剤の種類は特に限定されず、例えば、二級アミン、三級アミンや、四級アンモニウム塩としてポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルアミンアクリルアミド共重合体塩、ポリスチレンの四級アンモニウム塩等を用いることができる。これらの定着剤のなかでも変性のポリアミン系定着剤を用いると、特に非水系のインク顔料およびインク染料を塗工層中で定着させやすいため好ましく、また、2種類の性状の異なる定着剤を組み合わせて用いるのがより好適である。
さらに、塗工層中における定着剤の含有割合が多い場合(例えば、30質量%を超える場合)は、分子量が150万を超える高分子量のポリアミン系定着剤を用いるのが好ましいが、他方、定着剤の含有割合が少ない場合(例えば、30質量%未満の場合)は、分子量が150万以下の低分子量のポリアミン系定着剤を用いるのが好ましい。これにより、多種の非水系インクを組み合わせてフルカラー記録された場合においても、さらに定着性を向上させることができる。また、この形態によると、重合接着剤、親水性接着剤及び湿式法シリカとの組み合わせにより、多次元的な塗工層が構成されるため、塗工層の密度を0.9〜2.0g/m2に調整しやすいため好ましい。
なお、分子量の異なるポリアミン系定着剤としては、分子量が約100万の水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6850:星光PMC社製)や、分子量が約300万の水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6852:星光PMC社製)を例示することができる。
本形態においては、顔料100質量部に対して、親水性接着剤、特にポリビニルアルコール系重合体を10〜30質量部、定着剤を10〜50質量部含有するのが好ましく、ポリビニルアルコール系重合体を13〜25質量部、定着剤を20〜40質量部含有するのがより好ましい。
親水性接着剤、特にポリビニルアルコール系重合体の配合割合が10質量部未満では、湿式法シリカに吸収されやすく塗工層の強度が劣るため、塗工層に傷が入り易くなり、また、粉落ちが発生し易くなる。他方、親水性接着剤、特にポリビニルアルコール系重合体の配合割合が30質量部を超えると湿式法シリカの細孔を埋めやすくなりインク吸収性の向上が十分に図れなくなるおそれがある。
一方、定着剤の配合割合が10質量部未満では、インクの定着性が不十分となるおそれがあり、記録後の退色(色あせ)が発生しやすくなるおそれがある。他方、定着剤の配合割合が50質量部を超えると、塗工層中でインクが拡散し易く、記録ムラが発生するおそれがある。
本形態のインクジェット記録用紙においては、塗工層に上記湿式法シリカ及び炭酸カルシウム及びクレー以外の顔料成分を10質量%以下の範囲で含有しても良く、例えば、アルミナ、タルク、炭酸マグネシウム、過硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミナとシリカの複合体、ゼオライト、珪藻土、水酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、マイカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸鉛などの中から1種又は2種以上を選択して含有させることができる。
〔基材〕
本形態のインクジェット記録用紙において用いることができる基材としては、各種紙類を例示することができ、好ましくは木材等のパルプを主成分とする紙シート(基材)である。この基材の主成分として用いられるパルプとしては、例えば、LBKPやNBKP等の化学パルプ、GP、TMP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプなどを例示することができる。
ただし、後述する高いクラーク剛度を確保し、かつ塗工層の密度を上述のとおり0.9〜2.0g/cm3とするためには、塗工層の物性や成分を前述したように調整しつつ、濾水度が450〜550ccの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と、濾水度が500〜650ccの針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、古紙パルプ(DIP)とを、50〜70:5〜15:20〜40の質量割合で調整した濾水度400〜500ccのパルプ(原料パルプ)を用いるのが好ましい。このような原料パルプを用いることにより、平坦化処理時におけるクラーク剛度の低下を抑えつつ、塗工層の密度を所定の範囲に調整するのが容易となる。なお、本発明における濾水度とは、JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」に規定するカナダ標準濾水度である。
特に全原料パルプに対して古紙パルプを20〜40質量%の配合割合で用いると、平坦にひしゃげた古紙パルプ繊維が、その平坦性により非水系インクの浸透性を抑える効果を発現するため好ましいものとなる。古紙パルプの配合割合が20質量%未満であると、古紙パルプ配合の効果が十分に発揮されず、他方、古紙パルプの配合割合が40質量%を超えるとクラーク剛度の低下が生じるおそれがある。
基材の原材料としては、原料パルプのほかに、填料、接着剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、染料、蛍光増白剤など、必要に応じて適宜使用することができる。
基材に内添する填料としては、非晶質シリカ、焼成カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等を例示することができる。特に、後述する再生粒子は、不透明度付与、裏抜け防止、インク吸収性向上、資源の有効利用等の目的で好適に使用することができる。
〔平坦化処理〕
本形態のインクジェット記録用紙において、塗工層の密度調節方法は特に限定されないが、基材表面に塗工層を設けた後に、平坦化処理をして調節するのが好適である。この平坦化処理は、公知のカレンダー等を用いて行うことができる。
ただし、塗工層の密度調節という観点からは、柔軟な弾性ロールを多用するよりも、金属ロールと金属ロールとの組み合わせからなる多段のチルドロールや、表裏差を是正すため一部弾性ロールとの組み合わせからなる平坦化処理手段(装置)によるのが好ましい。
金属ロールについては特に限定されず、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー等の平坦化処理装置において用いられるチルドロール、合金チルドロール、鋳鉄製ロール、更にはロール表面を硬質クロムメッキした金属ロール等のなかから適宜選択して用いることができる。また、加圧ニップの形態、加圧ニップ数等も、通常の平坦化処理装置に準じて適宜決定することができる。
加圧ニップに用紙を通紙する際の加圧条件は、使用する弾性ロールの硬度、通紙スピード、ニップ数、金属ロールの温度条件などの各種の処理条件に応じて適宜調節する。ただし、塗工層の密度を従来よりも高く調節する本形態においては、塗工層をいわば押し潰す必要がある。そこで、ニップ線圧を30〜400kg/cmとするのが好ましい。ニップ線圧が30kg/cmを下回ると塗工層の密度が充分に高くなりにくくなる傾向がある。他方、ニップ線圧が400kg/cmを超えると、1000m/分を超える高速にて平坦化処理を行った際に、塗工層の密度のみならず基材の密度も高くなり過ぎる傾向があり、また、ニップロール自体の発熱現象が増大して安定操業が困難となりやすい傾向がある。
より好適には、ニップ線圧を30〜400kg/cmとし、かつ通紙スピードを1000m/分未満とする。特に好適には、ニップ線圧を30〜80kg/cmとし、かつ通紙スピードを500m/分未満とする。この範囲に調節することにより、基材、特に後述する再生粒子を填料として用いた基材の密度が過度に高くなるのを抑制することができ、再生粒子による基材の嵩高化と塗工層の前述密度調整の容易性とから、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、インクの裏抜けや印字濃度低下、搬送性の問題が生じないインクジェット記録用紙が得られる。
〔インクジェット記録用紙の物性〕
本形態のインクジェット記録用紙は、JIS P 8143に準拠して測定したクラーク剛度(横方向)が15〜30cm3/100、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度、トルエン吸油度が10〜60秒、ブリストー吸水度が200〜300mm(50mm/sec)であると好適である。より好適には、クラーク剛度(横方向)が20〜29cm3/100、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が8〜20度、トルエン吸油度が20〜50秒、ブリストー吸水度が225〜275mm(50mm/sec)である。特に好適には、クラーク剛度(横方向)が18〜24cm3/100、非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が10〜15度、トルエン吸油度が30〜40秒、ブリストー吸水度が240〜260mm(50mm/sec)である。
上述のごとく、塗工層の顔料として粒経が0.1〜8.0μm、吸油量が100〜300ml/100gのゲル法シリカと、炭酸カルシウム及び前記クレーが合計含有量で、6〜9:1〜4の質量割合であり、かつ塗工層中の顔料100質量部に対して、接着剤としてポリビニルアルコール系重合体を5〜30質量部、および脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を10〜50質量部含有させ、かつ塗工層の密度を0.9〜2.0g/m2に調整することで、低坪量でありながら、非水系インクを使用した高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、特にインクの裏抜けや印字濃度低下、プリンターでの搬送性の問題が生じにくい非水系インクに対応したインクジェット記録用紙を得ることができる。
以下、より詳細に説明する。
クラーク剛度(横方向)が15cm3/100未満であると、吸湿時の波打ちにより、印刷時における紙詰まりやインクヘッド部との接触による汚れが生じるおそれがある。他方、クラーク剛度(横方向)が30cm3/100を超えると、用紙が曲がりにくくなるため、両面印刷時などにおいてインクジェットプリンターでの搬送時に紙詰まりが生じるおそれがある。
非水系インクの滴下から1秒後の動的接触角が5〜30度であると、インクに含まれる溶剤の吸収性が適度となり、当該インク溶剤が塗工層中において広がり、当該インクに含まれるインク顔料が塗工層に留まるようになる。これに対し、動的接触角が5度未満であると、インク溶剤の吸収性が低く、インク溶剤が塗工層上において過剰に広がり滲んでしまうおそれがある。他方、動的接触角が30度を超えると、インク溶剤が基材まですぐに浸透してしまい、これに伴ってインク顔料も塗工層に留まらず、裏抜けが生じるおそれがある。なお、本明細書において、「動的接触角」は、インクジェット記録用紙の塗工層側の面に非水系インクを滴下した場合における1秒後の接触角である。より詳細には、動的接触角測定装置(DCA‐VZ 協和界面科学(株)製)を用いて、測定溶媒としてORPHIS純正専用インク「RISO Xインク」のブラックを使用し、4μl滴下したときの1秒後の接触角である。
トルエン吸油度は、非水系インクに含まれる溶媒(インク溶媒)の浸透性と、当該インクに含まれる顔料(インク顔料)の塗工層での留まり具合を好適とするためのファクターである。トルエン吸油度を10〜60秒に調節すると、非水系インクに含まれる溶媒の親油性及び塗工層の平坦化処理との相乗効果により、塗工層及びその表面上にインク顔料を留まらせることができるようになる。なお、本明細書において、「トルエン吸油度」は、試験油としてトルエン(米山薬品工業(株)製)を使用し、旧JIS P 8130の吸油度試験方法に準拠して測定した値である。
ブリストー吸水度が200mm未満であると、インクの吸収性が向上し過ぎて、裏抜けが生じるおそれがあり、また、塗工液中のバインダーが基材に浸透して塗工層の強度が低下してしまうおそれがある。他方、ブリストー吸水度が300mmを超えると、インクの吸収速度が低下し、特に混色時において滲みが生じ易くなる。なお、本明細書において、「ブリストー吸水度」とは、J.TAPPI試験法No.51に準拠して、25mm/secにて、記録用紙の塗工層側面の流れ方向で測定した長さである。
〔再生粒子〕
本形態のインクジェット記録用紙において、基材の填料や塗工層の顔料として使用可能な再生粒子は、その種類や製造方法等が特に限定されないが、以下の製造方法によって製造された再生粒子(以下、単に「本再生粒子」ともいう。)の使用を推奨する。本再生粒子は、白色度が高いため、本形態のインクジェット記録用紙において、填料や顔料として使用するに好適である。また、本再生粒子は、適度な柔らかさを有するため、インクジェット記録用紙の填料や顔料として使用すると、基材の坪量や塗工層の密度を調節するのが容易となる。
以下、本再生粒子の製造方法及びこの方法によって得られた再生粒子の物性について説明する。
(本再生粒子の製造方法の位置付け等)
再生粒子は、一般に製紙スラッジを燃焼することにより製造される。しかしながら、製紙スラッジに含有される有機物は、出所の違いや製紙工場内での抄造品種、定期修理や生産変動などにより多様に変化し、その品質変動が製紙スラッジの熱量変動を招き、燃焼温度の変動、燃焼時間の変動を来たし、最終的に得られる燃焼物(再生粒子)の品質、特に性状が一定でなくなり、また、燃焼物の白色度が不均一となる。
そこで、本発明者らは、製紙スラッジの熱量変動を所定の範囲に調整し、燃焼温度の変動、燃焼時間の変動を生じさせないで、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ねた結果、製紙スラッジを主原料とする被処理物を、脱水及び熱処理、適宜粉砕して再生粒子を製造するにあたり、「熱処理を、脱水後の被処理物を乾燥する乾燥工程と、この乾燥工程で乾燥された被処理物を熱処理する第1の熱処理工程と、この第1の熱処理工程で熱処理された被処理物を第1の熱処理温度を超える温度で熱処理する第2の熱処理工程と、この第2の熱処理工程で熱処理された被処理物を第2の熱処理温度を超える温度で熱処理する第3の熱処理工程と、を含む少なくとも4工程に分けて行う」ことで、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造できることを見出した。
また、同時に、「上記乾燥は、脱水後の被処理物を熱気流に同伴させて行う」と好適であることも見出した。「脱水後の被処理物を熱気流に同伴させて乾燥する方式(以下、単に「気流乾燥方式」ともいう。)」とすると、乾燥に伴って被処理物が解れるため、後段で行う熱処理が均一かつ確実に行われるようになり、品質が均一化した再生粒子をより安定的に製造できるようになるのである。
この点、乾燥に先立って後段の熱処理に好適な状態となるまで被処理物を均一に解すのは、現実的には困難である。また、乾燥に先立って被処理物を解すのであれば、脱水率を高めておく必要があるが、脱水率を高めると被処理物が高圧縮化され、被処理物の乾燥効率が部分的に低下するおそれがあり、乾燥処理の不均一化、ひいては製品の不均一化をまねくおそれがある。他方、乾燥後に被処理物を解すのでは、不均一な状態にある被処理物を乾燥することになるため、乾燥が均一に行われなくなり、熱処理も均一に行われなくなる。結果、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造できなくなる。
一方、本形態において、後段の熱処理を複数の工程に分ける利点は、以下のとおりである。
製紙スラッジは、各種有機物(有機成分)を含有し、この有機物のなかには、紙由来の220℃近傍で発熱量のピークをもつアクリル系有機物、320℃近傍で発熱量のピークをもつセルロース、420℃近傍で発熱量のピークをもつスチレン系有機分が含まれ、古紙等の出発原料の種類や量により変動幅が大きいものの、例えば、1000〜2000cal/gの発熱量を有する。従来の再生粒子の製造方法においては、これらの有機分を、燃焼工程(酸化工程)において、他の有機分と一緒に燃焼(酸化)させて除去する方策が取られていた。しかしながら、本発明者等は、以上の各有機物が上記温度の近傍で発熱量のピークをもつ発熱量が高い物質であること、200〜300℃で熱分解される有機分を燃焼させる際に発火・過燃焼が生じ、燃焼制御が困難となり、白色度の低下のみならず、ゲーレナイトやアノーサイトからなる硬質物質の生成をまねくことを見出し、まず、第1の熱処理工程において、所定の高発熱量成分(アクリル系有機物及びセルロース)を被処理物中から、熱処理除去することで、過燃焼を抑え、硬質物質の生成を抑制できることを見出した。
また、第1の熱処理工程と第2に熱処理工程とを別々に設ける利点は、従来の再生粒子の製造方法においては、被処理物中の微細繊維や有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水及び乾燥させ、高温で熱処理する方法を採用していた。しかしながら、本形態の製造方法においては、上記したように第1の熱処理工程において被処理物中の200〜300℃で熱分解・揮発蒸散する有機物をガス化してしまうため、第2の熱処理工程においては、安定的に熱処理を進行させることができ、被処理物の過燃焼や微粉化が抑制される。また、第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを分け、第1の熱処理工程において被処理物に含まれるアクリル系有機物及びセルロースを熱分解ガス化し、第2の熱処理工程において被処理物に含まれるスチレン系有機物を熱分解ガス化することで、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きく、均一かつ安定的に再生粒子を得ることができる。このようにして、第3の熱処理工程においては、被処理物中の残カーボン等を含む有機物を、効率良く熱処理除去することができ、また、過燃焼によって生じる硬質物質の生成を抑えることができる。さらに、セルロースの熱分解ガスの発火温度はスチレンの熱分解温度を下回るため、第1の熱処理工程においてセルロースを熱分解除去してしまい、スチレンは第2の熱処理工程において熱分解するのが好適であり、ここにも第1の熱処理工程と第2に熱処理工程とを別々に設ける利点が存在する。
ところで、本形態においては、乾燥工程を除く各熱処理工程において、キルン炉を用いるのが好適である。この理由は、次のとおりである。
従来から慣用的に用いられてきた熱処理炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者等は、それぞれの熱処理炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
ストーカー炉(固定床)は、脱墨フロス等の製紙スラッジの燃焼度合い調整が困難であり、再生粒子が不均一となるうえに、灰分の多い脱墨フロスの熱処理では、火格子間のクリアランスから落塵を生じる。火格子を通し被処理物の下から空気を吹き上げ、燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留りの低下が問題となる。ストーカー(階段状)を、所定幅で被処理物を通過させながら熱処理するため、撹拌が不十分で幅方向で熱処理にバラツキが発生する。
流動床炉は、炉内において珪砂等の粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂等が被処理物中に混入し、品質の低下をまねく問題や、均一な撹拌ができないとの問題を有する。硅砂等を流動層に混合して熱処理させた後、硅砂等と被処理物とを分離し、硅砂等は炉内へ戻し被処理物のみを取り出すが、被処理物も硅砂等と同程度の粒径であるため分離が困難である。被処理物を硅砂等と浮遊した状態で熱処理させるため、熱処理の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。硬度の高い珪砂等との摩擦、衝突により被処理物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
サイクロン炉は、被処理物が炉内を一瞬で通過するため、被処理物中の有機物を十分に熱処理することができず、白色度の低下に繋がる。また、風送によるため、細かい粒子がサイクロンで分離されず、排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留りが低下する。
以上の諸問題について鋭意検討を重ねた結果、本形態の乾燥工程を除く熱処理工程においては、内熱又は外熱キルン炉が好適な熱処理手段として選択された。
〔本再生粒子の製造例〕
次に、本再生粒子の製造例を、再生粒子の製造設備フローの一部構成例を示した図1を主に参照しながら説明する。なお、本製造設備には、各種センサーが備わっており、被処理物10や設備状態の確認、処理速度の制御等を行うことができる。
(被処理物)
本形態の被処理物10は、製紙スラッジを主成分(50質量%以上)とする。当該製紙スラッジは、例えば、パルプ等の繊維成分、澱粉や合成樹脂接着剤等の有機物、添料や塗工用顔料等の無機物などが利用されずに廃水中へ移行したもの、パルプ化工程等で発生するリグニンや微細繊維、古紙由来の填料や印刷インキ、生物廃水処理工程から生じる余剰汚泥などからなる。また、例えば、古紙パルプ製造工程において印刷インキ等を除去する脱墨工程や製紙用原料を回収して洗浄する洗浄工程に由来する固形成分等を含有していてもよい。
ただし、古紙パルプ製造工程においては、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産するために、選定、選別を行った一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類や比率、量等は、基本的に一定になる。しかも、本形態の再生粒子の製造方法において未燃率の変動要因となるビニールやフィルム等のプラスチック類が、古紙中に含まれていても、これらは脱墨フロスが生成される脱墨工程に至る前段階の例えば、パルパーやスクリーン、クリーナー等で除去される。したがって、工場排水工程や製紙原料調成工程等の他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、脱墨フロスは、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための被処理物10の好適な原料となる。
なお、本明細書において、脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程でパルプ繊維から分離されるものをいう。
被処理物10中に鉄分が含まれていると、当該鉄分の酸化により得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがあるため、当該鉄分はあらかじめ選択的に取り除くのが好ましい。さらに、各工程に用いる装置は、鉄以外の素材で設計、ライニングし、摩滅等によって鉄分が系内に混入するのを防止するとともに、各装置内等に磁石等の高磁性体を設置しておき、選択的に鉄分を除去するのが好ましい。
(脱水工程)
被処理物10は、例えば、公知の脱水装置を用いて、脱水する。本形態においては、被処理物10を、例えば、スクリーンによって水分率65〜90%まで脱水し、次いで、スクリュープレスによって水分率30〜60%まで、好ましくは30〜50%まで、より好ましくは35〜45%まで脱水する。
ここで水分率は、定温乾燥機を用い、乾燥機内に試料(被処理物)を静置し、約105℃で6時間以上保持することで質量変動を認めなくなった時点を乾燥後質量とし、下記式にて乾燥前後の質量測定結果より算出した値である。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥後質量)÷乾燥前質量×100
脱水後の被処理物10の水分率が60%を超えると、乾燥装置60における乾燥のためのエネルギーロスが大きくなる。しかも、乾燥装置60における乾燥温度の変動が大きくなるため、乾燥ムラが生じるおそれがある。さらに、乾燥が十分に進む前に被処理物10が乾燥装置60から排出されてしまうため、被処理物10が十分に解れないおそれや、第1の熱処理炉42におけるエネルギーロスの原因、熱処理変動の原因などとなるおそれがある。
他方、脱水後の被処理物10の水分率が30%未満となるまで脱水をすると、被処理物10が高圧縮により、いわば固まった状態となるため、乾燥装置60において被処理物10が解れないおそれがある。
また、本形態のように被処理物10の脱水を多段で行い、急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制することができ、しかも、被処理物10のフロックが硬くなり過ぎるのを抑制することができる。
本脱水工程においては、被処理物10を凝集させる凝集剤等の助剤を添加し、脱水効率の向上を図ることもできる。ただし、助剤としては、鉄分を含まないものを使用するのが好ましい。鉄分を含むと、当該鉄分の酸化により、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
本脱水工程の装置は、他の工程の装置に隣接して設けると生産効率の面で好ましいが、古紙パルプ製造工程の装置等に隣接して設け、脱水した被処理物10をトラックやベルトコンベア等の搬送手段によって搬送し、貯槽12や乾燥装置60に供給することもできる。
(解し工程)
脱水後の被処理物10は、貯槽12から切り出し、乾燥工程に送り、乾燥することができる。ただし、この乾燥をするに先立って、例えば、撹拌機や機械式ロール等によって、粒子径50mm以上の割合が、30〜70質量%となるように、好ましくは40〜70質量%となるように、より好ましくは50〜70質量%となるように解して(ほぐして)おくと好適である。
ここで「粒子径50mm以上の割合」は、被処理物全体の質量を100とした場合に、目穴50mmの篩を通過しなかった試料の質量割合である。この測定に際しては、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いる。
乾燥する際の被処理物10には、大きな粒子径の被処理物が存在しない方が好ましく、具体的には粒子径50mm以上の割合が70質量%以下であるのが好ましい。もっとも、本形態においては、乾燥工程においてロータリーキルン等を用いず、気流乾燥装置60を用いるため、被処理物10を過度に解す必要はなく、粒子径50mm以上の割合が30質量%未満となるまで解さなくとも、十分に均質な製品を得ることができる。
なお、被処理物10が、脱水後において既に「粒子径50mm以上の割合が70質量%以下」となっている場合は、解し工程を省略することもできる。この場合は、脱水後の被処理物10を、そのままの状態で「粒子径50mm以上の割合が70%以下」の被処理物10として、乾燥工程に送ることができる。
(乾燥工程)
脱水後の被処理物10は、適宜解す等した後、乾燥工程に備わる乾燥装置60に供給する。乾燥装置60の形態は特に限定されず、ストーカー炉、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の公知の乾燥装置を用いることができるが、本形態においては、この乾燥装置60として、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥する「気流乾燥装置」を用いる。気流乾燥装置を用いると、被処理物10が、乾燥されるのと同時に、圧縮力が加えられることなく大きな分散力(被処理物10を分散させる力)のもとで均一に解されるため、後段で行う熱処理(特に第1の熱処理)が均一かつ確実に行われるようになり、品質が均一化した再生粒子を安定的に製造することができるようになる。
乾燥装置(気流乾燥装置)60としては、被処理物10を熱気流に同伴させて乾燥することができる適宜の装置を用いることができ、例えば、新日本海重工業社製の商品名:クダケラ等の公知の装置のほか、これらを改良した気流乾燥装置等も用いることができる。
本形態の乾燥装置60は、貯槽12から脱水後の被処理物10が供給されるととともに、バーナー47Aが備わる熱風発生炉47から熱風が吹き込まれ、この吹き込まれた熱風によって生じる熱気流に供給された被処理物10が同伴するように構成されている。したがって、例えば、熱風の温度や流量、流速等を調節して熱気流を制御することにより、被処理物10の乾燥状態や解れ状態を調節することができる。
この熱気流の制御は、乾燥工程において粒子径50mm以上の被処理物10が存在しなくなるように、かつ被処理物10の平均粒子径が1〜7mmとなるように、好ましくは1〜5mmとなるように、より好ましくは1〜3mmとなるように行うと好適である。
ここで、被処理物10の「平均粒子径」は、目穴の異なる篩で篩い分けを行い、各篩い分けを行った被処理物の質量を測定し、この測定値の合計値が全体の50質量%に相当する段階における篩の目穴の大きさであり、JIS Z 8801‐2:2000に基づき、金属製の板ふるいを用いて測定した値である。なお、被処理物10の「粒子径50mm以上の割合」は、前述したとおりである。
被処理物10の平均粒子径が1mm未満であると、第1の熱処理において過剰な熱処理が生じ易くなる。他方、被処理物10の平均粒子径が7mmを超え、あるいは粒子径50mm以上の被処理物10が存在すると、被処理物10を表面部から芯部まで均一に熱処理するのが困難になる。
本形態において、熱気流の温度は、特に限定されるものではないが、熱風発生炉47からの熱風の温度を200〜600℃とし、かつ乾燥装置60からの排ガスの温度が500℃以下となるように制御するのが好ましく、熱風発生炉47からの熱風の温度を300〜500℃とし、かつ乾燥装置60からの排ガスの温度が400℃以下となるように制御するのがより好ましく、熱風発生炉47からの熱風の温度を300〜400℃とし、かつ乾燥装置60からの排ガスの温度が300℃以下となるように制御するのが特に好ましい。
この形態によると、わずか1〜3秒で被処理物10の水分率が、好ましくは0〜5%になるまで、より好ましくは0〜3%になるまで、特に好ましくは0〜1%になるまで乾燥することができる。しかも、この乾燥は、熱気流によって被処理物10が解されながら行われるため、被処理物10全体にわたって均一な水分率である。加えて、被処理物10は、水分が蒸発した次の瞬間には乾燥装置60から排出されているため、意図しない有機物の熱分解・燃焼等の熱処理が生じるおそれもない。
(第1の熱処理工程)
乾燥後の被処理物10は、第1の熱処理工程に送られ、熱分解等の熱処理をされる。
第1の熱処理工程においては、被処理物10が装入機41によって第1の熱処理炉42に装入される。この第1の熱処理炉42としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いることができる。
しかしながら、本形態の第1の熱処理炉42は、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である。この第1の熱処理炉42としては、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉や、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能であるが、本形態のように外熱キルン炉を用いるのが好ましい。第1の熱処理工程において、脱水後の被処理物10を直ちに熱処理する場合は、被処理物10の乾燥(水分の蒸発)という観点から、熱効率のよい内熱キルン炉にも大きな利点がある。しかしながら、本形態においては、第1の熱処理に先立って被処理物10を乾燥するため、熱処理温度を確実に制御することができる外熱キルン炉の方が好適である。
また、第1の熱処理工程において、脱水後の被処理物10を直ちに熱処理する場合は、第1の熱処理工程において、被処理物10の乾燥と有機物の熱分解という異質な熱処理を連続的に行うことになるため、温度制御が複雑になる。しかしながら、本形態のように、第1の熱処理に先立って被処理物10が乾燥されていると、第1の熱処理工程においては、有機物の熱分解のみを行えば足りるため、複雑な温度制御が必要とならない。
本形態において、第1の熱処理炉42は、例えば、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転とにより、炉本体内の被処理物10が重力作用で搬送方向へ徐々に移送されるようになっている。
炉本体の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属製とすることができる。
本形態の第1の熱処理炉42においては、炉本体の外表面上に、例えば、電気ヒーター等からなる外熱ジャケット44が設けられている。この外熱ジャケット44による加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット44は、炉本体の軸方向に関して適宜の数に分割し、分割された外熱ジャケットを各別に加熱することができるようにするとより好適なものとなる。
このように外熱ジャケット44を適宜の数に分割し、各別に加熱することができる外熱方式とすると、炉本体内において変化する被処理物10の性状等に応じて熱処理温度を確実に制御することができ、被処理物10の好適な熱処理を行うことができる。
本形態においては、前述したように熱処理工程を少なくとも4工程に分けることとの関係において、炉本体外表面の温度が、260〜450℃となるように加熱するのが好ましく、280〜400℃となるように加熱するのがより好ましく、300〜400℃となるように加熱するのが特に好ましい。炉本体外表面の温度が260℃を下回ると、被処理物10中のアクリル系有機物及びセルロースを十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が450℃を上回ると、被処理物10の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、多くの領域において好ましくは240〜350℃、より好ましくは270〜350℃、特に好ましくは280〜350℃に調節される。なお、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
ところで、以上のように第1の熱処理炉42は、外熱方式とするのが好ましいが、内熱方式とすることも可能であり、内熱方式とする場合は、図1中に二点鎖線で示すように、バーナー43Aが備わる熱風発生炉43から酸素含有ガスたる熱風を、供給口42Aを通して炉本体内に吹き込む(供給する)のが好ましい。当該熱風によって、供給口42Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口42B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第1の熱処理炉42内のガス(排ガス)は、排出口42Bを通して排出される。
このように熱風の供給方式を並流方式にすると、相対的に低温の状態にある被処理物10を直ちにアクリル系有機物やセルロース等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、他端(排出口側)に向けて低温化する温度勾配が生じるため、被処理物10の過剰な熱処理が防止される。ただし、この温度勾配の制御は、前述外熱方式による方が好ましい。
なお、第1の熱処理炉42を前述外熱方式とする場合においても、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。この酸素含有ガスの吹き込みは、例えば、バーナー43Aを作動させずに、熱風発生炉43を利用して行うことができ、加熱しない点を除いて熱風を吹き込む場合と同様とすることができる。そこで、以下の炉本体内の酸素濃度制御については、内熱方式の場合(熱風を吹き込む場合)を例に説明する。
第1の熱処理炉42においては、熱風の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、排ガスの酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。この酸素濃度の調節・管理は、第1の熱処理炉42を外熱方式とする場合も同様である。
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ排ガスの酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。他方、熱風の酸素濃度が5.0%未満、あるいは排ガスの酸素濃度が0.1%未満であると、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整することが困難となるおそれや、熱分解ガスの発火(燃焼)が生じているおそれがある。
炉本体内の酸素濃度は、アクリル系有機物やセルロース等の熱処理に際して酸素消費され、変動を生じるため、本形態のように、熱風の酸素濃度の調節及び排ガスの酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、内熱方式及び外熱方式のいずれにおいても、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
内熱方式とする場合、第1の熱処理炉42においては、熱風の温度を300〜420℃、好ましくは350〜410℃、より好ましくは360〜400℃に調節しつつ、排ガスの温度が250〜370℃、好ましくは300〜360℃、より好ましくは310〜350℃となるように管理すると好適である。
ここで、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、熱風の温度は、熱風発生炉43において熱電対にて温度を実測した値である。
熱風の温度が300℃以上で、かつ排ガスの温度が250℃以上であると、被処理物10中のアクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われる。また、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14及び第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、アクリル系有機物及びセルロースの熱分解・揮発が確実に行われることで、第2の熱処理炉14や第3の熱処理炉32において、スチレン系有機物や残カーボン等の有機物を緩やかに熱処理することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。
もっとも、熱風の温度が420℃を超え、あるいは排ガスの温度が370℃を超えると、熱分解ガスが発火するおそれがあり、また、第2の熱処理炉14における熱処理エネルギーが増加し、さらに、難燃性カーボンが生成し易くなり、製紙用の添料や顔料等として必要な特性を備えた再生粒子を安定して得ることができなくなるおそれがある。なお、第1の熱処理工程の前段に乾燥工程を設けない場合においては、本熱処理工程において被処理物10を乾燥させるために、熱処理温度をより高く設定する必要があり、以上のようなリスクを伴うことになる。
炉本体内の温度は、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、熱風の温度の調節及び排ガスの温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、通常250〜370℃、好ましくは300〜360℃、より好ましくは310〜350℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。また、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
第1の熱処理炉42においては、第1の熱処理炉42が外熱方式である内熱方式であるかにかかわらず、被処理物10の発熱量が20〜90%減少するように、好ましくは50〜80%減少するように、より好ましくは50〜70%減少するように熱処理するのが好ましい。
発熱量の減少率が90%以下であると、過剰な熱処理が抑えられ、硬質物質の生成が好ましくは1.5質量%以下に抑制される。この点、90%を超える発熱量の減少は、被処理物10中のスチレン系有機物までもが熱分解していることを意味し、したがって炉本体内がセルロース等の熱分解ガスが発火しうる状態(つまり、高温状態)になっていることを意味する。他方、発熱量の減少率が20%未満であると、被処理物10中の高発熱量成分であるアクリル系有機物が残留し、第2の熱処理炉14における熱処理温度の変動が大きなものとなるおそれがある。
ここで、発熱量の減少率は、第1の熱処理炉42に供給される被処理物10の発熱量と、第1の熱処理炉42から排出される被処理物10の発熱量とを比較した値である。この発熱量は、熱量計(燃研式デジタル熱量計、吉田製作所製)を用いて測定した値である。
特に第1の熱処理炉42において、アクリル系有機物、セルロースを除去し、発熱量を20〜90%減少するとともに、発熱量が1000cal/g未満、好ましくは300〜400cal/gとなるように熱処理することにより、第2の熱処理炉14における炉本体内温度の変動幅を10〜40℃の範囲に抑制し易くなり、得られる再生粒子を均質化するに有用である。この点、当該炉本体内温度の変動幅が40℃を超えると、得られる再生粒子が硬い・柔らかい等のばらつきや白色度のばらつきを有するものとなるおそれがある。他方、当該炉本体内温度の変動幅を10℃未満にまで抑制するのは、現実的ではない。
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の未燃率が13〜30質量%となるように、好ましくは14〜26質量%となるように、より好ましくは15〜23質量%となるように熱処理を行うと好適である。
ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。
未燃率が30質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第2の熱処理炉14における熱処理を緩慢に行うことができるようになる。もっとも、未燃率が13質量%未満となるまで熱処理を行うと、第1の熱処理炉42におけるエネルギーコストが高くなる。
第1の熱処理炉42においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは45〜105分、より好ましくは60〜90分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるアクリル系有機物、セルロースが緩慢に熱分解され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
ここで、滞留時間は、色で識別できる金属片を供給口42Aから炉本体内に投入し、排出口42Bから排出されるまでの実測時間である。
(第2の熱処理工程)
第1の熱処理炉42において熱処理した被処理物10は、第2の熱処理工程に送られ、熱分解や燃焼等の熱処理をされる。
被処理物10は、この第2の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を1〜7mm、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径は、通常上記の範囲内にあり、本粒子径の調節を省略することができる。
第2の熱処理工程においては、被処理物10が第2の熱処理炉14に装入される。この第2の熱処理炉14としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いることができる。しかしながら、本形態の第2の熱処理炉14は、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である。この第2の熱処理炉14としては、外熱キルン炉に変えて内熱キルン炉を用いることや、内熱及び外熱の併用キルン炉を用いることも可能であるが、本形態では、外熱キルン炉を用いるのが好ましい。
この第2の熱処理炉14も、例えば、搬送方向に向かって非常に緩やかな下り勾配を有し、この下り勾配と炉本体の回転とにより、炉本体内の被処理物10が重力作用で搬送方向へ徐々に移送されるようになっている。
炉本体の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス、チタン等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属製とすることができる。
また、本工程において用いる第2の熱処理炉14は、本形態のように第1の熱処理炉42と同形状のものを用いることもできるが、例えば、軸方向の長さが異なるキルン炉を用いて、被処理物10の滞留時間を異なるものとすることなどもできる。
本形態の第2の熱処理炉14においては、炉本体の外表面上に、例えば、電気ヒーター等からなる外熱ジャケット15が設けられている。この外熱ジャケット15による加熱により、炉本体の内表面上に堆積した被処理物10が間接的に加熱される(外熱方式)。また、外熱ジャケット15は、炉本体の軸方向に関して適宜の数に分割し、分割された外熱ジャケットを各別に加熱することができるようにするとより好適なものとなる。
このように外熱ジャケット15を適宜の数に分割し、各別に加熱することができる外熱方式とすると、炉本体内において変化する被処理物10の性状等に応じて熱処理温度を確実に制御することができ、被処理物10の好適な熱処理を行うことができる。
本形態においては、前述したように熱処理工程を少なくとも4工程に分けることとの関係において、炉本体外表面の温度が、360〜550℃となるように加熱するのが好ましく、360〜500℃となるように加熱するのがより好ましく、400〜500℃となるように加熱するのが特に好ましい。炉本体外表面の温度が360℃を下回ると、被処理物10中のスチレン系有機物を十分に熱処理(熱分解等)することができなくなるおそれがある。他方、炉本体外表面の温度が550℃を上回ると、被処理物10の過剰な熱処理が行われてしまうおそれがある。
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、多くの領域において好ましくは360〜400℃に調節される。なお、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
ところで、以上のように第2の熱処理炉14は、外熱方式とするのが好ましいが、内熱方式とすることも可能であり、内熱方式とする場合は、図1中に二点鎖線で示すように、バーナー46Aが備わる熱風発生炉46から酸素含有ガスたる熱風を、供給口14Aを通して炉本体内に吹き込む(供給する)のが好ましい。当該熱風によって、供給口14Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口14B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。この際、第2の熱処理炉14内のガス(排ガス)は、排出口14Bを通して排出される。
このように熱風の供給方式を並流方式にすると、相対的に低温の状態にある被処理物10を直ちにスチレン系有機物等の熱分解に好適な温度まで昇温することができる。しかも、他端(排出口側)に向けて低温化する温度勾配が生じるため、被処理物10の過剰な熱処理が防止される。ただし、この温度勾配の制御は、前述外熱方式による方が好ましい。
また、第1の熱処理炉42が並流方式とされている場合等においては、第2の熱処理炉14を、排出口14Bを通して炉本体内に熱風を吹き込み、炉本体内の排ガスは供給口14Aを通して排出する向流方式とするのも好ましい形態である。この形態によると、第1の熱処理炉42からの排ガスを通す配管と、第2の熱処理炉14からの排ガスを通す配管とを、例えば1つにまとめることなどができ、配管処理が容易となる。
さらに、第1の熱処理炉42と第2の熱処理炉14とを連接し、熱風発生炉43からの熱風が第1の熱処理炉42を介し、供給口14Aを通して炉本体内に吹き込まれる(供給される)とともに、バーナー46Aが備わる熱風発生炉46からの酸素含有ガスたる熱風を、供給口14Aを通して炉本体内に吹き込む(供給する)こともできる。これらの熱風によって、供給口14Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口14B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。
なお、第2の熱処理炉14を前述外熱方式とする場合においても、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。この酸素含有ガスの吹き込みは、例えば、バーナー46Aを作動させずに、熱風発生炉46を利用して行うことができ、加熱しない点を除いて熱風を吹き込む場合と同様とすることができる。そこで、以下の炉本体内の酸素濃度制御については、内熱方式の場合(熱風を吹き込む場合)を例に説明する。
第2の熱処理炉14においては、熱風の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、排ガスの酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。この酸素濃度の調節・管理は、第2の熱処理炉14を外熱方式とする場合も同様である。
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風の酸素濃度を20.0%以下に調節し、かつ排ガスの酸素濃度も20.0%以下となるように管理するのがより好ましい。もっとも、熱風の酸素濃度が5.0%未満、あるいは排ガスの酸素濃度が0.1%未満であると、スチレン系有機物等の熱処理が充分に進まず、発熱量の減少率を所定の範囲に調整するのが困難で白色化が進まないおそれがあり、また、熱分解ガスの発火(燃焼)が生じているおそれがある。他方、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。
第1の熱処理炉42を経て供給される熱風(酸素含有ガス)の酸素濃度は、被処理物10の熱処理状態等に応じて変化し、また、炉本体内の酸素濃度自体も、スチレン系有機物等の熱処理に際して酸素消費され、変動を生じる。したがって、本形態のように、熱風の酸素濃度の調節及び排ガスの酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、内熱方式及び外熱方式のいずれにおいても、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
内熱方式とする場合、第2の熱処理炉14においては、熱風の温度を350〜550℃、好ましくは380〜550℃、より好ましくは400〜500℃に調節しつつ、排ガスの温度が300〜500℃、好ましくは330〜500℃、より好ましくは350〜450℃となるように管理すると好適である。
ここで、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、熱風の温度は、熱風発生炉46において熱電対にて温度を実測した値である。
熱風の温度が350℃以上で、かつ排ガスの温度が300℃以上であると、被処理物10中のスチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われる。また、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32における熱処理制御が容易となり、白色度低下の原因となる炭化物の生成や、過燃焼による硬質物質の生成を抑制することができる。さらに、スチレン系有機物の熱分解・揮発が確実に行われることで、第3の熱処理炉32において、残カーボン等の有機物を緩やかに燃焼することができ、残カーボンの生成を抑制することができる。他方、熱風の温度が550℃以下で、かつ排ガスの温度が500℃以下であると、本工程における残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、熱風の温度が550℃を超え、あるいは排ガスの温度が500℃を超えると、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
第1の熱処理炉42を経て供給される熱風の温度は、被処理物10の熱処理状態等に応じて変化し、また、炉本体内の温度自体も、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、熱風の温度の調節及び排ガスの温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、通常300〜500℃に、好ましくは330〜500℃に、より好ましくは350〜450℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。また、被処理物10の温度も炉本体内の温度と実質的に同一になるものと推定される。
第2の熱処理炉14から排出された排ガスは、図1中に二点鎖線で示すように、再燃焼室22においてバーナー等により再燃焼し、予冷器24において予冷した後、熱交換器26を通し、誘引ファン28によって煙突30から排出することができる。ここで、熱交換器26は、外気を昇温し、この昇温した外気を、例えば、第1の熱処理炉42に吹き込まれる熱風の用に供し、排ガスの熱回収を図ることもできる。このような排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去にも有効である。
第2の熱処理炉14においては、被処理物10の滞留時間を30〜120分、好ましくは40〜100分、より好ましくは40〜80分とすると好適である。滞留時間を30分以上とすることにより、被処理物10に含まれるスチレン等由来の有機物が緩慢に熱処理され、残カーボンの生成が抑制される。この点、滞留時間を30分未満とすると、十分な熱処理が行われず、残カーボンの割合が多くなる。他方、滞留時間が120分を超えると、過剰な熱処理によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
第2の熱処理炉14においては、第2の熱処理炉14が外熱方式である内熱方式であるかにかかわらず、被処理物10の未燃率が2〜20質量%となるように、好ましくは5〜17質量%となるように、より好ましくは7〜12質量%となるように熱処理を行うと好適である。
ここで、未燃率は、約600℃に温度調整した電気炉で,2時間燃焼した際の減量割合を測定した値である。
未燃率が20質量%以下となるように熱処理を行うことにより、第3の熱処理炉32における熱処理(燃焼)を短時間で効率よく行うことができるようになり、得られる再生粒子の白色度を70%以上、好ましくは80%以上の高白色度とすることができる。もっとも、未燃率が2質量%未満となるまで熱処理を行うと、第2の熱処理炉14におけるエネルギーコストが高くなり、また、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬度が高くなるなど、再生粒子の品質低下につながるおそれがある。
(第3の熱処理工程)
第2の熱処理炉14において熱処理した被処理物10は、第3の熱処理工程に送られ、熱分解や燃焼等の熱処理をされる。
被処理物10は、この第3の熱処理工程に送るに先立って、平均粒子径を5mm以下、好ましくは1〜4mm、より好ましくは1〜3mmに調節しておくと好適である。平均粒子径が1mm未満であると、第3の熱処理炉32において被処理物10が過燃焼するおそれがある。他方、平均粒子径が5mmを超えると、残カーボンの熱処理(燃焼)が困難となり、芯部まで燃焼が進まず、得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
また、この被処理物10の粒揃えは、粒子径1〜5mmの割合が、70質量%以上となるように、好ましくは75〜95質量%となるように、より好ましくは80〜95質量%となるように行うと好適である。
ただし、本形態においては、第1の熱処理工程に先立って乾燥工程を設けており、この乾燥工程において被処理物10が解れるように構成されている。したがって、被処理物10の平均粒子径や粒揃えは、各熱処理工程を経ることにより、通常上記の範囲内となり、本平均粒子径や粒揃えの調節を省略することができる。
第3の熱処理工程においては、被処理物10が装入機31から第3の熱処理炉32に装入される。この第3の熱処理炉32としては、公知の熱処理炉を使用することができ、例えば、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等を用いることができる。しかしながら、本形態の第3の熱処理炉32は、炉本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である。
ただし、この第3の熱処理炉32としては、第1の熱処理炉42や第2の熱処理炉14と同様に、外熱ジャケットを有する外熱キルン炉を使用することもできる。外熱ジャケットは、長手方向(搬送方向、炉本体の軸方向)の温度制御が容易な電気ヒーター形式とすると好適である。
長手方向の温度制御が容易であると、任意に温度勾配を設けることができ、被処理物10を所定の時間、所定の温度に保持することができるため、被処理物10中の残留有機分や、残カーボンを限りなくゼロに近づけることができる。また、外熱キルン炉による場合は、被処理物10を所定の滞留時間をもって燃焼(熱処理)することができ、しかも外熱により被処理物10に間接的に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキが生じない。さらに、炉内表面の回転による摩擦によって被処理物10が緩やかに撹拌されるため、微粉化を生じにくい。結果、最終的な再生粒子の品質及び性状が安定したものとなる。
もっとも、外熱キルン炉は、被処理物10を間接的に熱処理するものであり、熱処理効率は内熱キルン炉に及ばない。したがって、熱処理温度を相対的に高温とする第3の熱処理工程においては、熱処理効率や生産性の観点から、本形態のように、内熱キルン炉を用いる方が好ましい。
第3の燃焼炉32においては、炉本体の内壁に設けたリフターによって被処理物10の搬送を制御し、もって被処理物10を緩慢に熱処理(燃焼)することにより、得られる再生粒子の均質化を図ることもできる。この炉本体の内壁に設けるリフターは特に限定されるものではないが、被処理物10の供給口32A側から排出口32B側に向けて、軸心に対して例えば45〜70°の傾斜角を有する複数の螺旋状リフター及び軸心と平行な複数の平行リフターをこの順で設けるのが好ましい。
この形態によると、被処理物10が、まず、螺旋状リフターにて適切な速度で搬送されつつ、持ち上げられて落下し、この落下する間に熱分解ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触する。また、被処理物10は、続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返し、この落下を繰り返す間に可燃焼ガスと効率的に接触する。したがって、熱交換効率が極めてよい。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる被処理物10の量が制御されるため、平行リフターにおける被処理物10の持ち上げ及び落下が適切に行われ、被処理物10の熱処理(燃焼)が均一かつ効率的に行われる。螺旋状リフターや平行リフターは、例えば、耐熱性を有し、伝熱効率が高いステンレス鋼板等の金属製とすると好適である。
第3の熱処理炉32の炉本体内には、例えば、被処理物10の供給口32Aを通して、バーナー45Aが備わる熱風発生炉45から酸素含有ガスたる熱風を吹き込む(供給する)。当該熱風によって、供給口32Aから供給され、炉本体の回転に伴って排出口32B側に順次移送される被処理物10の熱処理が行われる(並流方式)。また、第3の熱処理炉32内のガス(排ガス)は、例えば、排出口32Bを通して(通り抜けて)排出される。
ただし、当該熱風は被処理物10の排出口32Bを通して吹き込み、第3の熱処理炉32内のガス(排ガス)は供給口32Aを通して(通り抜けて)排出する向流方式とするのも好ましい形態である。
向流方式とすると、排ガス中の煤塵が被処理物10中に混入し、得られる再生粒子の品質が低下するのを確実に防止することができる。すなわち、供給された被処理物10中の残カーボンは直ちに燃焼されるため、向流方式とすると、残カーボンの燃焼に伴って発生する煤塵は、被処理物10の供給口32A側から排ガスとともに速やかに炉本体外に排出されることになり、被処理物10に混入するのが防止される。
なお、第3の熱処理炉32を外熱方式とする場合においても、炉本体内に酸素含有ガスを吹き込むことができる。この酸素含有ガスの吹き込みは、例えば、バーナー45Aを作動させずに、熱風発生炉45を利用して行うことができ、加熱しない点を除いて熱風を吹き込む場合と同様とすることができる。そこで、以下の炉本体内の酸素濃度制御については、内熱方式の場合(熱風を吹き込む場合)を例に説明する。
第3の熱処理炉32においては、熱風の酸素濃度を5.0〜20.0%、好ましくは6.0〜18.0%、より好ましくは7.0〜18.0%に調節しつつ、排ガスの酸素濃度が0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは3.0〜15.0%となるように管理すると好適である。この酸素濃度の調節・管理は、第3の熱処理炉32を外熱方式とする場合も同様である。
ここで、酸素濃度は、自動酸素濃度測定装置(型番:ENDA‐5250、堀場製作所製)にて各測定域からサンプリングした測定試料の酸素濃度を測定した値である。
被処理物10の過剰な熱処理の防止という観点から、低酸素濃度であるのが好ましく、熱風(酸素含有ガス)及び排ガスの酸素濃度が低くなるように管理するのがより好ましい。もっとも、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が低すぎると、残カーボンや残留有機物の熱処理が充分に進まず、また、白色化が進まないおそれがある。他方、熱風(酸素含有ガス)や排ガスの酸素濃度が高すぎると、圧縮空気及びその付加設備が必要になると共に、エネルギーコストが上昇し、また、被処理物10の燃焼や硬質化が進むおそれがある。また、排ガスの酸素濃度を高くするためには、過剰の空気を炉本体内に吹き込む必要があり、炉内温度の低下や炉内温度制御が困難になる等の問題を生じるおそれがある。
炉本体内の酸素濃度は、残カーボンや残留有機物の熱処理に際して酸素消費され変動を生じるため、本形態のように、熱風(酸素含有ガス)の酸素濃度の調節及び排ガスの酸素濃度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において酸素濃度が、内熱方式及び外熱方式のいずれにおいても、通常0.1〜20.0%、好ましくは1.0〜17.0%、より好ましくは4.0〜15.0%に調節される。
第3の熱処理炉32を内熱方式とする場合は、熱風の温度を550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節しつつ、排ガスの温度が550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃となるように管理すると好適である。
ここで、排ガスの温度は、排ガスの煙道に設置した熱電対にて温度を実測した値である。また、熱風の温度は、熱風発生炉45において熱電対にて温度を実測した値である。
熱風の温度が550℃以上で、かつ排ガスの温度も550℃以上であると、被処理物10中の残カーボンや残留有機物の熱処理が確実に行われる。他方、熱風の温度が780℃以下で、かつ排ガスの温度も780℃以下であると、残カーボンの生成を抑制することができるほか、有機物の熱処理が緩慢に行われ、被処理物10の微粉化が抑制され、また、凝集体を形成し、あるいは硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する被処理物10の熱処理度合いや粒揃えを容易に、かつ安定的に制御することができる。この点、熱風の温度が780℃を超え、あるいは排ガスの温度が780℃を超えると、被処理物10の粒揃えが進行するよりも早くに燃焼が局部的に進むため、粒子表面と芯部との未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。しかも、得られた再生粒子をスラリー化したときに、固まるおそれがある。
炉本体内の温度は、温度勾配を有し、一様ではないため、本形態のように、熱風の温度の調節及び排ガスの温度の管理によるのが好適である。ただし、このような調節及び管理を行うことにより、炉本体内の多くの領域において温度が、上記調節・管理と同様、つまり、通常550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃に調節される。なお、炉本体内の温度は、炉本体内に設置した熱電対にて実測した値である。
一方、第3の熱処理炉32を外熱方式とする場合は、炉本体外表面の温度が550〜780℃、好ましくは600〜750℃、より好ましくは650〜720℃となるように外熱ジャケット等の温度を制御すると好適である。炉本体外表面の温度が550℃以上であると、残カーボンや、第2の熱処理炉14で燃焼しきれなかったスチレン‐アクリルやスチレン等の残留有機物を確実に燃焼することができる。
なお、炉本体内表面の温度は、炉本体外表面の温度と連動しており、炉本体外表面の温度と実質的に同一の温度になる。他方、炉本体内の温度や被処理物10の温度は、上記炉本体外表面の温度制御を行うことにより、炉本体外表面や内表面の温度と実質的に同一の温度になると推定される。
第3の熱処理炉32においては、被処理物10の滞留時間を60〜240分、好ましくは90〜150分、より好ましくは120〜150分とすると好適である。滞留時間を60分以上とすることにより、被処理物10に含まれる残留有機物や残カーボンが確実に燃焼され、また、再生粒子を安定して生産することができるようになる。他方、滞留時間が240分を超えると、過燃焼によって難燃性カーボンが生成され、得られる再生粒子の白色度が低下し、あるいは硬質物質が増加するおそれがある。
この点、第1の熱処理炉42において被処理物10の発熱量が20〜90%減少し、アクリル系有機物及びセルロースが熱分解するように熱処理され、また、第2の熱処理炉14において被処理物10のスチレン系有機物が熱分解するように熱処理されていると、第3の熱処理炉32における被処理物10の滞留時間を短くすることができ、過燃焼、白色度の低下、硬質物質の増加等のリスクを低減することができる。
(硬質物質)
被処理物10の主成分となる製紙スラッジは、製紙用に供される填料や顔料としての炭酸カルシウム、カオリン、タルク、抄紙助剤としての硫酸アルミニウム等の無機物を多く含み、示差熱熱重量分析(TG/DTA6200)とX線回折(RAD2X)とによる燃焼物の分析から、被処理物10を熱処理するに際しては、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)は600〜750℃にて質量減少し、硬質かつ水溶性の酸化カルシウム(CaO)に変化し、クレー(Al2Si25(OH)4)は500℃前後で脱水により質量減少し、メタカオリンとなり、1000℃前後の高温では硬質なムライト(Al2Si213)に変化することが知見された。また、タルク(Mg3Si410(OH)2)は900℃前後で質量減少し、エンスタタイト(MgSiO3)に変化することも知見された。一方、X線回折(RAD2X)による燃焼物の分析から、燃焼物中にCa2Al2SiO7(ゲーレナイト)、CaAl2Si28(アノーサイト)の存在が確認された。
また、製紙用に供される填料や顔料と比べ、ゲーレナイトやアノーサイトは極めて硬質(硬質物質)であり、微量の存在で、製紙用具の摩耗・毀損や抄紙系内の汚れが生じ、塗工用顔料として使用した場合には、ドクター等の塗工設備の摩耗・毀損、ストリークの発生要因となることも知見された。
この点、従来、ゲーレナイトやアノーサイトは、900℃を超える高温での熱処理において生成されるものと予想されていたが、本発明者等の検討において、ゲーレナイトやアノーサイトの生成は熱処理温度が500℃前後でも生じ、熱処理温度の上昇に応じて生成量が増大することが見出された。
また、製紙スラッジ中の酸化物換算によるカルシウムの含有量が増えると、アノーサイトは減少し、ゲーレナイトは増える傾向を示すことも知見された。アノーサイトは、炭酸カルシウムの過燃焼により生じる酸化カルシウムとカオリンとの混合燃焼により生成され易く、したがって、上記各種熱処理工程においては、25〜800℃における示差熱熱重量分析において、重量減量割合が5%(TG)以上となるように熱処理を行い、酸化カルシウムの生成自体を可及的に抑制するのが好ましい。
また、水酸化カルシウムは、酸化カルシウムよりも一段とアノーサイトを生成し易いため、上記被処理物10の脱水率(水分率)や、各種熱処理における酸素濃度は、厳格に調節するのが好ましい。
また、本発明者等は、シリカがゲーレナイトやアノーサイトの生成を助長することを知見した。したがって、被処理物10は、可及的にシリカ分含有量を低減しておくのが好ましく、例えば、新聞古紙や新聞抄紙系白水の使用を抑え、比較的低融点のゲーレナイトやアノーサイトの生成を抑制するのが好ましく、得られた再生粒子をシリカ被覆するのがより好ましい。
(付帯工程)
第3の熱処理炉32から排出された被処理物10は、平均粒子径15.0μm以下、好ましくは0.1〜10.0μm、より好ましくは1.0〜5.0μmとなるように粉砕等して調節すると好適である。
ここで粉砕後の平均粒子径は、粉砕後の被処理物スラリーをレーザー回折方式の粒度分布径(型番:SA−LD−2200、島津製作所製)を用いて測定した体積平均粒子径(D50)である。
この被処理物10の粉砕方法は特に限定されるものではなく、例えば、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機などを用いることができる。
この粉砕を行った被処理物10は、好適には凝集体であり、冷却機34において冷却した後、振動篩機等の粒径選別機36により選別をし、再生粒子としてサイロ38に一時貯留し、適宜添料や顔料等の用途先に仕向ける。
(その他)
以上の第1から第3の熱処理工程において、好適な熱処理炉として用いられる内熱又は外熱キルン炉は、内壁を構成する耐火物を円周状(円筒状)ではなく、六角形状や八角形状とすることもでき、これらの形状によると被処理物10を滑らすことなく持ち上げて撹拌することができる。ただし、簡便に被処理物10の撹拌を実現するためには、耐火物等を円筒状とし、前述したようなリフターを設けるのが好ましい。
〔本再生粒子例〕
本形態の再生粒子の製造方法によって得られる再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合、好ましくは40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、より好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の割合とされていると好適である。カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合とされていると、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑制されるため、脱水性が良好である。
このカルシウム、シリカ及びアルミニウムの質量割合を調節する方法としては、被処理物10の原料構成を調節することが本筋ではあるが、第1の熱処理工程や、第2の熱処理工程、第3の熱処理工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で添加し、あるいは焼却炉スクラバー石灰を添加して、調節することもできる。例えば、カルシウムの調節には、中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調節には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量に添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調節には酸性抄紙系の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
ところで、被処理物10の原材料ともいえる古紙は、近年の中性抄紙化、ビジュアル化の進展にともなう印刷見栄えの良い塗工紙使用量の増加にともない、填料・顔料としての炭酸カルシウムの使用量増加により、製紙スラッジ中の炭酸カルシウムの含有量増加につながり、結果としてゲーレナイトやアノーサイトの生成量増加に繋がるため、再生粒子に含有されるゲーレナイトやアノーサイト、いわゆる硬質物質の含有量をできる限り減少させる必要が大きくなっている。したがって、硬質物質の含有量を減らすことができる上記再生粒子の製造方法は、極めて有用であり、この製造方法によって製造された本形態の再生粒子は、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量が1.5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とされている。
ここで、ゲーレナイト及びアノーサイトの合計含有量は、下記の方法によって測定した値である。
(測定方法)
X線回析法(理学電気製、RAD2X)によって測定する。測定条件は、Cu‐Kα‐湾曲モノクロメーター:40KV‐40mA、発散スリット:1mm、SS:1mm、RS:0.3mm、走査速度:0.8度/分、走査範囲:2シータ=7〜85度、サンプリング:0.02度とする。
以上のようにして得られた本再生粒子は、白色度が75〜85%、好ましくは80〜85%と高く、また白色度の変動が少ない。したがって、本再生粒子を本形態のインクジェット記録用紙の基材に内添すると、従来公知の再生粒子や、市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高くなる。
また、本再生粒子は、平均粒子径が公知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きく、再生粒子が繊維間に定着するため、嵩高性が向上する。しかも、再生粒子のアルミニウム分がカチオン性であるため、繊維(アニアオン性)への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減させて、嵩高性及び強度を向上させることができる。結果、低坪量でありながら、非水系インクを使用する高速インクジェットプリンターを用いてインクジェット記録しても、紙剥けを生じるおそれがない。
本発明者等は、本再生粒子を基材の全填料中の20%以上となるように、好ましくは30〜100%となるように配合すると、嵩高性、クッション性を確保するに効果的であることを知見している。ただし、この場合は、平坦化処理による塗工層の高密度化に伴って基材が潰れるのを防止するために、基材の灰分率が10〜20%となるように、好ましくは15〜20%となるように、調節するのが好適である。
〔その他〕
本形態のインクジェット記録用紙は、非水系インクを塗工層に留めるために、基材と塗工層との間にアンダー塗工層を設けることができる。アンダー塗工層を設けると、非水系インクに含まれるインク溶剤が塗工層から基材に浸透するのをより好適に防止することができ、インクの裏抜けをより抑えることができる。
このアンダー塗工層の形成方法は特に限定されず、例えば、サイズプレス等により、デンプン、ポリビニルアルコール、カチオン樹脂等を塗工・含浸させる方法等を採用することができる。このアンダー塗工層の形成にともなって、基材の表面強度を向上させたり、塗工層の吸収性を調整したり、表面や裏面の平滑性を調整したりすることもできる。
本アンダー塗工層は、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂組成物に平板結晶構造をもつ微細粒子を含有させた塗工液を基材上に塗工することで、好適に設けることができる。特に、当該水溶性樹脂組成物中に含有させる微細粒子として、例えば、クレーや、アスペクト比が50以上のデラミネーテッドクレーを用いれば、塗工層表面の平坦化、非水系インクの基材への過度の浸透防止、平坦化処理による塗工層に対する均等かつ所望の密度付与に好適である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明の作用効果を明らかにする。なお、本発明は、当然これらの例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り絶乾質量基準である。
〔実施例1〕
(基材)
濾水度500ccの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と、濾水度550ccの針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、古紙パルプ(DIP)とを60:10:30の配合割合で調整した濾水度450ccの原料パルプ100部に対して、填料として再生粒子及び炭酸カルシウムを30:70の質量割合で、基材中の灰分率が15%になるよう内填し、また、内添サイズ剤0.5質量%(対原料パルプ比)、カチオン化澱粉0.5質量%(対原料パルプ比)を配合し、これをオントップマシンで抄造し、坪量65g/m2(紙厚91μm)の基材を製造した。
(塗工層)
顔料として、平均二次粒子径3.5μm、嵩密度0.26g/m2、吸油量210ml/100g、BET比表面積450m2/gのゲル法シリカ(Nipgel BY―400 東ソー・シリカ社製)90部に対し、平均粒子径0.8μmの炭酸カルシウム(タマパールTP−121−6S、奥多摩工業(株)社製)10部、親水性接着剤としてポリビニルアルコール(PVA−110、クラレ社製、重合度1000、ケン化度97〜100%)16部、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤(PPT7651 日本ゼオン社製)30部、定着剤として水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6850 星光PMC社製)14部及び水溶性変性ポリアミン系樹脂(DK6852 星光PMC社製)16部、希釈水を適宜添加した、固形分濃度23質量%の塗工液を、ブレードコーターを用いて、乾燥塗工量が片面当たり7g/m2(両面で14g/m2)となるように基材の両面に塗工した。この塗工後、カレンダー処理を行ってインクジェット記録用紙を得た。
〔その他の実施例、比較例及び市販品〕
実施例1に対して、表1〜3に示すように各種条件を変化させてインクジェット記録用紙を得た。
なお、実施例7のゲル法シリカとしては、Nipgel BY−200(東ソー・シリカ社製)を、実施例8のゲル法シリカとしては、Nipgel BY−6A1(東ソー・シリカ社製)を、実施例9のゲル法シリカとしては、Nipgel CX−400(東ソー・シリカ社製)を、実施例10のゲル法シリカとしては、Nipgel AY−451(東ソー・シリカ社製)を、実施例15の沈降法シリカとしては、カープレックス C5−701 (エボニックデグサ社製)を、実施例16のクレーとしては、カオファイン90(白石工業(株)製)を、実施例19のゲル法シリカとしては、Nipgel BY−001(東ソー・シリカ社製)を、実施例20のゲル法シリカとしては、Nipgel AZ―400(東ソー・シリカ社製)を、それぞれ用いた。
また、比較例3のスチレンブタジエン系ラテックスとしては、L−1571(旭化成社製)を、比較例4のエチレン酢酸ビニルとしては、リカボンドBE‐814(中央理化工業社製)を、それぞれ用いた。
さらに、表中にも示すが、市販品Aは、米坪が89.1g/m2、塗工層密度が0.6、市販品Bは、米坪が97.6g/m2、塗工層密度が0.8g/cm3である。
Figure 2011207094
Figure 2011207094
Figure 2011207094
〔測定・評価〕
以上の各インクジェット記録用紙について、用紙の品質及びインクジェット適性を評価した。結果を表4に示した。
Figure 2011207094
以上において、各種測定方法及び評価方法は、下記に示す通りである。また、インクジェット記録適性の評価に際しては、理想科学工業株式会社、ORPHISX9050インクジェットプリンターを用いた。記録インクとしては、ORPHIS純正専用インク、RISO Xインクを使用した。
(基材の灰分)
JIS P 8251に準拠して測定した。
(紙厚)
JIS P 8118に準拠して測定した。
(基材及びインクジェット記録用紙の坪量)
JIS P 8124に準拠して測定した。
(シリカの嵩密度)
JIS H 1902に準拠して測定した。
(シリカの吸油量)
JIS K 5101の顔料試験方法に準拠して測定した。
(塗工層密度)
インクジェット記録用紙の任意3点について、電子顕微鏡を用いて、塗工層の厚さを測定した。また、インクジェット記録用紙を10cm四方にして3点用意し、これらについて質量を測定した後に、塗工層をカッターで基材が表出するまで削り取って再度質量を測定し、この際の質量差から塗工層の質量を求めた。そして、塗工層の質量と塗工層の厚さとから、塗工層の密度を算出した。
(クラーク剛度)
JIS P 8143に準拠して横方向の剛度を測定した。
(動的接触角)
動的接触角測定装置(DCA‐VZ 協和界面科学(株)製)を用いて、動的接触角を測定した。測定溶媒としては、ORPHIS純正専用インク、RISO Xインクのブラックを使用し、4μl滴下したときの1秒後の接触角を測定した。この測定は、表裏各10箇所について行い、その平均値を動的接触角とした。
(トルエン吸油度)
試験油としてトルエン(米山薬品工業(株)製)を使用し、旧JIS P 8130(1994)の吸油度試験方法に準拠して、表裏10箇所の吸油度を測定し、この平均値をトルエン吸油度とした。
(ブリストー吸水度)
J.TAPPI試験法No.51に準拠して、25mm/secにて、記録用紙の流れ方向に表裏各10サンプルを測定し、その測定長さの平均値をブリストー吸水度とした。
(裏抜け)
ORPHISX9050を用いて印字し、目視にて、印字部を裏面より以下の基準に従って評価した。
◎:インクの裏抜けがなく、裏面から印字が見えない。
○:インクの裏抜けはあるが、裏面からでは印字内容が分からない。
△:インクの裏抜けがあり、裏面から印字内容が分かる。
×:インクの裏抜けがあり、裏面からも印字内容がはっきり分かる。
(印字ムラ)
ORPHISX9050を用いて両面印刷し、目視にて、印字面のムラを以下の基準に従って評価した。
◎:曇りやムラが無く良好である。
○:やや曇りやムラがあるが目立たない。
△:曇りやムラが目立っている。
×:曇りやムラがかなり目立っており印字がぼけている。
(ジャム)
ORPHISX9050を用いて1000枚両面印刷し、ジャムした枚数に基づき以下の基準に従って評価した。
◎:0〜1枚(紙詰まり0〜1回)
○:2〜3枚(紙詰まり2〜3回)
△:4〜5枚(紙詰まり4〜5回)
×:6枚以上(紙詰まり6回以上)
(印字濃度(濃度マクベス))
ORPHISX9050を用いて印字し、各色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の印字濃度の合計値で評価した。
なお、印字濃度は4.00以上であれば印字濃度が高く発色に優れ、3.60以上4.00未満であれば発色が良く実使用可能であり、3.60未満では発色に劣り見栄えが悪いため実使用に耐え得ないものである。
本発明は、基材を薄物化しても、インクジェット記録適性に劣ることのないインクジェット記録用紙として適用可能である。
10…原料、12…貯槽、14…第2の熱処理炉、15,44…外熱ジャケット、22…再燃焼室、24…予冷器、26…熱交換器、28…誘引ファン、30…煙突、32…第3の燃焼炉、34…冷却機、36…粒径選別機、38…サイロ、42…第1の熱処理炉、43,45,46,47…熱風発生炉、60…乾燥装置。

Claims (4)

  1. 基材の少なくとも一方の面に、バインダー及び顔料を含有する塗工層が設けられた坪量が60g/m2以上80g/m2未満のインクジェット記録用紙であって、
    前記バインダーとして親水性接着剤並びに、脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤を含み、
    前記顔料として湿式法シリカ並びに、炭酸カルシウム及びクレーの少なくとも一方を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
  2. 前記湿式法シリカがゲル法シリカであり、かつ前記塗工層の密度が0.9〜2.0g/cm3であり、
    前記塗工層中の顔料100質量部に対して、前記親水性接着剤としてポリビニルアルコール系重合体が5〜30質量部、前記脂肪族共役ジエン系単量体及びエチレン系不飽和ニトリル単量体を主原料とし水溶性高分子化合物を結合又は吸着してなる重合接着剤が10〜50質量部含有されている、請求項1記載のインクジェット記録用紙。
  3. 前記湿式法シリカは、平均二次粒子径が0.1〜8.0μm、吸油量が100〜300ml/100gであり、当該湿式法シリカの含有量と、前記炭酸カルシウム及び前記クレーの合計含有量とが6〜9:1〜4の質量割合とされている、
    請求項1又は請求項2記載のインクジェット記録用紙。
  4. 製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、少なくとも3段階の熱処理工程及び粉砕工程を経て得られる再生粒子を、前記基材に含有することを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の塗工紙。
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