以下、本発明の再生粒子を内添した紙として、摩擦抵抗が低く搬送性に優れる性質から、電子写真記録やインクジェット記録に供される紙を例に挙げ説明する。なお、本発明に係る再生粒子内添紙は、パルプと填料として再生粒子を主原料としており、まず、本発明に用いるパルプについて説明する。
パルプの種類には特に限定がないが、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙、オフィス古紙、液体容器古紙、乗車券古紙、クラフト古紙等の古紙パルプ;針葉樹材、広葉樹材からのバージンパルプ等があげられ、これらの中から1種以上を適宜選択して用いることができる。また木材のパルプ化法にも特に限定がなく、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)といった、蒸解液によって脱リグニンされる化学的パルプ化法によるパルプや、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)といった、機械的パルプ化法によるパルプ等を適宜用いることができる。これらのパルプと再生粒子を混合して、再生粒子内添紙を製造することができる。
本形態において、例えば前記古紙パルプ100質量%からなるパルプを原料としても、バージンパルプを適宜配合しても、電子写真記録適性やインクジェット記録適性といった印刷適性及び搬送性に優れた記録用紙を得ることができるが、資源の有効活用と環境保護にも貢献することができ、低コスト化が達成されるという点から、古紙パルプを多く用いることが望ましい。
特に、古紙パルプを50質量%以上、好ましくは70質量%以上配合したパルプに、後述する再生粒子を填料として内添した記録用紙の場合は、該再生粒子が本来持つ多孔質で、パルプ繊維との親和性が高いという事項に加え、得られた再生粒子中に高温燃焼により生じる硬質物質の含有が見られず、湿式粉砕においてシャープな粒度分布の再生粒子が得られ、過大な粒径の再生粒子が生じないことから、古紙パルプに由来した、嵩高になり難く、クッション性が低いという特性の改善効果を有し、クッション性を確保し、同一坪量で比較した際により高い嵩高性が発現されるとともに、硬質物質による摩擦抵抗が高くなる問題が改善され、電子写真記録やインクジェット記録への適応性に優れるとい利点がある。
前記パルプには、填料が内添される。本形態においては、該填料のうち、特定の再生粒子が内添填料として少なくとも内添されることが大きな特徴の1つである。該特定の再生粒子は、多孔性の凝集体で、均質な粒度分布を有し、原料パルプ繊維との親和性も高いことから、特に、トナー定着性の向上による優れた電子写真記録適性と、インク乾燥性の向上による優れたインクジェット記録適性とが同時に発現され、所謂マルチペーパーとしての特性を得る。
前記再生粒子は、古紙パルプ製造工程の脱墨処理工程において排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程に供し、該燃焼工程において燃焼凝集させたものであり、その粒子構成成分として、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを含有し、該カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの質量割合(カルシウム:ケイ素:アルミニウム)が、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35であり、かつ該粒子構成成分中の、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合が、酸化物換算で90質量%以上のものである。
前記したように、本形態に用いられる再生粒子は、古紙パルプ製造工程の脱墨処理工程において排出される脱墨フロスを主原料とし、該主原料を脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程に供し、該燃焼工程において燃焼凝集させたものである。なおこれら4工程の他にも、後述するように、凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等が設けられていてもよい。また該再生粒子の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。以下の具体的説明で示す移送流路、給送流路、排送流路、循環流路、返送流路等の各種流路は、例えば管、ダクト等で構成することができる。
以下に、古紙処理工程(古紙パルプの製造工程)から排出される脱墨フロスを原料とした、本形態に用いられる再生粒子の製造方法を例示する。該脱墨フロスは再生粒子の原料として最適な例であるが、該脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜併用することもできる。また、以下の方法は再生粒子の製造方法の一例であり、該方法のみに限定されるものではなく、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜変更することが可能である。
なお、本発明でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
本発明においては、主原料の温度が300℃以上〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満で燃焼処理を行うことで、過燃焼を防止でき、原料(被燃焼物)中の有機成分を順次燃焼及び揮発させ、もって、製品の白色度が高く、かつムラがなく、硬質物質の発生も抑制できるなどの利点がもたらされる。
次に、本発明の位置付けについて説明する。
例えば、製紙用スラッジを燃焼する場合、(1)特開2003−119695号公報記載の発明では、乾燥物を炉内の酸素濃度が0.1体積%以下となる実質的に酸素が存在しない貧酸素状態で、具体的には間接加熱炉(外熱燃焼炉)によって乾燥及び炭化処理する。次に炭化物に含まれる有機物由来の炭素を酸化させて脱炭素する、具体的には間接加熱炉によって白化処理する方法が提案されている。また、同発明は、後者の白化処理については内熱ロータリーキルン炉を使用することも教示している。
他方、本出願人は、(2)特開2002−275785号として、炭化後に再燃焼のためにロータリーキルン炉を使用することも教示している。
さらに、本出願人は、(3)特許3808852号として、「原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ未燃分を含む一次燃焼物を得る一次燃焼工程と、前記サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む一次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、前記一次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる二次燃焼工程とを含む、ことを特徴とする脱墨スラッジからの白色顔料または白色填料の製造方法。」を提案した。
また、(4)特開2004−176208号においては、「塗工紙製造工程の排水処理汚泥」から填料を製造するに際し、成形汚泥を「一つのロータリーキルン炉内で乾燥、炭化、燃焼」を行うことを提案している。
上記(1)(2)及び(4)は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とするものではなく、前述の製紙スラッジを主原料とするものである。そして、得られる再生粒子は、本発明のような、再生粒子「凝集体」とは異なるものと考えられる。
一方、(3)の方法によれば、本発明によって得られるものと同様な再生粒子を得ることができると思えた。同方法ではサイクロン式流動燃焼炉を使用し、乾燥物を燃焼し、次いで二次燃焼を行っている。しかしながら、サイクロン式流動燃焼炉自体の形式に由来するものと考えられるが、サイクロン式は数十〜数百ミクロンの原料と空気を旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により空気と効果的に混合されながら燃焼させるため、原料に含有される微粒子が、排ガスとともに系外に排出され製品歩留りが低下する問題、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であることにより未燃焼分が生じやすい問題、最終的に得られる燃焼物の品質(特に形状)が一定でなく、燃焼物の白色度もバラツキが生じる場合があることが知見された。
そこで、本発明者等は、過剰燃焼させないで、品質の安定した再生粒子を得る手段について検討を重ね、燃焼工程が、第1燃焼炉と第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉を有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、前記第1燃焼炉が、300℃以上〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満で燃焼処理を行うことで、品質の安定した再生粒子を製造できることを見出している。
更に好適な態様としては、脱水後の原料の乾燥と燃焼が一連で行われ、内熱による第1次燃焼炉における燃焼時間(滞留時間)が30分を超え90分以下、より好適には40分〜80分の、最適には50分〜70分、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を再度燃焼する燃焼時間(滞留時間)が、60分以上の、より好適には60分〜240分、特には90分〜150分、最適には120分〜150分の、外熱による第2燃焼炉を用い、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、燃焼する方法を採用するものである。
また、後に図面と共に説明する実施の形態では、第1燃焼炉として内熱キルン炉、第2燃焼炉として外熱キルン炉を選択し詳説するが、これらのキルン炉としは公知の燃焼炉を使用できる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の装置を用いることができるが、本形態においては、先の第1燃焼炉を内熱で行い、後の第2燃焼炉を外熱で行う少なくとも2段階の燃焼炉であれば公知の燃焼炉を使用できる。さらに、この外熱第2燃焼炉としては重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼方法、更には、外熱と内熱の併用による燃焼方法を採用することもできる。
第1燃焼炉として好適に用いることができる内熱キルン炉によれば、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いることができる外熱キルン炉により燃焼すると、その端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。内熱による燃焼手段を併用することで前記燃焼のバラツキの更なる改善作用も認められる。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、微粉化を生じにくい。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなるのである。
従来の第1燃焼炉においては、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を35%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法が先に述べた公知文献にも記載されているものの、本発明者等の知見では、第1燃焼炉においては300℃以上〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃の従来に比して低温で加温操作することにより、原料中から、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、燃焼ガスを燃焼(酸化)させることが、得られる再生粒子の品質安定化、白色度向上に対する寄与が大きいことを見出している。
上記のとおり、乾燥、燃焼の工程を、好適には内熱キルン炉と外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉により行うことで、均一で安定的な再生粒子が得られる。
好適な燃焼炉として用いられる内熱または外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らすことなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、本発明が低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
ここで、本発明者らが好適な再生粒子を得るに当り、最も注力した燃焼炉の選択について説明する。
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別でき、本発明者らは、それぞれの焼却炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
・ ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
・ 流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生粒子へ混入し品質の低下を招く問題を有する。均一な攪拌ができない。硅砂を流動層混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離できない。硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、品質のばらつきが発生する。燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で、燃焼物が通過しながら燃焼するため灰の攪拌が不十分で幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下する。
・ サイクロン炉については、炉内を一瞬で通過するため燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず白色度の低下に繋がる、さらに、風送により細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
前記諸問題について鋭意検討を重ねた結果、燃焼炉としてはキルン炉にて燃焼させることが最も好適な燃焼手段として選択され、さらに以下の理由から、本発明において最適な実施の形態である、先の第1燃焼炉を内熱キルン、後の第2燃焼炉を外熱キルンとすることは次記の理由から好適であることを見出している。
外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、キルン炉の構造が複雑になるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるゆえに多量の熱源が必要になるため、本発明に係る、脱水後の水分率が高い原料の乾燥、燃焼処理に外熱キルン炉を先の第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が悪く、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が極めて低くなる。
また、内熱キルン炉を2次燃焼炉の主たる燃焼手段に使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また、多量の空気を投入しないと燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難であり、さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じやすい問題を呈する。さらに、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難な問題が生じる。
次に、本発明の実施の形態の一例を、図面を参照しながら説明する。
<本発明の実施の形態>
本形態の再生粒子の製造方法は、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程、粉砕工程を有するが、更に脱墨フロスの凝集工程、造粒工程や、各工程間における分級工程等を設けてもよい。
再生粒子の製造設備フローの一部構成例(乾燥・燃焼工程及び燃焼工程を含む)を、図1に示した。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、古紙中に未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が含まれていたとしても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去される。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等の、他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
ここに脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
〔脱水工程〕
古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水する。本形態における一例では、脱水手段たる例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。このスクリーンにおいて、水分率を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは、脱水手段たる例えばスクリュープレスに送り、更に所定の水分率まで脱水するのが望ましい。脱水後の原料(脱墨フロス)は、35%以上、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは45%以上70%以下、特に好ましくは50%超60%以下の高含水状態とすることが望ましい。
脱水後の原料の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めがたくなる。また、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。他方、脱水後の原料の水分率が35%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。また、脱水処理エネルギーの削減にも反する。
以上のように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
脱墨フロスの脱水工程は、再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給することもできる。
〔粉砕工程〕
脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する前に、粉砕機(又は解砕機)等により、平均粒子径40mm以下、好ましくは平均粒子径3mm〜30mm、より好ましくは平均粒子径5mm〜20mmに粒子径を揃えると好適であり、また、粒子径50mm以下の割合が70重量%以上となるように粒子径を揃えると好適である。脱墨フロスに含まれる炭酸カルシウムの熱変化を来たさない燃焼を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、他方、平均粒子径が40mmを超えると、原料芯部まで均一に燃焼を図るのが困難になる。
前記平均粒子径及び粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した値である。なお、各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、1mm単位の孔径を有する金属製の板ふるいにて測定した値である。
〔第1燃焼工程〕(乾燥及び燃焼工程)
脱水、粉砕等を行った原料10は、貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、この内熱キルン炉14の一方側から原料10が装入機15により装入される。この内熱キルン炉14においては、熱風発生炉20にて生成された熱風が、内熱キルン炉14の排出口側から原料(脱水物)10の流れと向流するように送り込まれる。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側へ順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
このように本乾燥・燃焼工程においては、脱水物10を、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼とを行うことができ、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物10の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。なお、乾燥を別工程に分割し、例えば、吹上げ式の乾燥機によって乾燥させることもできる。
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度0.1%〜20%であるのが好ましく、1%〜17%であるのがより好ましく、7%〜15%であるのが特に好ましい。この点、内熱キルン炉14内の酸素濃度は、原料10の燃焼(酸化)により酸素が消費されるため、燃焼の状況により変動が生じる。そして、酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難になる。しかしながら、熱風発生炉20等により、空気などの酸素を含有するガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度の維持、調節が可能であり、また、酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、内熱キルン炉14内の温度を細かく調節可能であり、原料10をムラなく万遍に燃焼することができる。
第1燃焼炉14の炉内温度は、300℃以上500℃未満、好ましくは400℃以上500℃未満、より好ましくは400℃以上450℃未満が好適である。第1燃焼炉14においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼し難い残カーボンの生成を抑える目的から、燃焼温度300℃以上500℃未満の温度範囲で燃焼するのが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、他方、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解によって酸化カルシウムが生成し易くなる。また、炉内燃焼温度500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物10の粒揃えが進行するよりも早くに乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と粒子内部との未燃率の差を少なく均一にするのが困難になる。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料10に配合され再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナー等により再燃焼され、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通され、誘引ファン28によって煙突30から排出される。
ここで、熱交換器26は外気を昇温し、この昇温した外気は、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14に吹き込まれる。つまり、熱交換器26は、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収する。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14は、脱水物10に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、前記条件下で、30分〜90分の滞留(燃焼)時間で燃焼させるのが好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。他方、燃焼時間が90分を超えると、原料10の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、また、得られる再生粒子が極めて硬くなる。有機物の燃焼及び生産効率の面では、40分〜80分の滞留時間で燃焼させるのが好ましい。恒常的な品質を確保するためには、50分〜70分の滞留時間で燃焼させるのが好ましい。
また、本工程の乾燥及び燃焼は、後述する第2燃焼工程に供給する燃焼物の未燃率が、2〜20質量%となるように行うのが好ましく、5〜17質量%となるように行うのがより好ましく、7〜12質量%となるように行うのが特に好ましい。未燃率が2〜20質量%となるように乾燥及び燃焼を行うことで、第2燃焼工程における燃焼を短時間に効率よく行うことができるようになるとともに、第2燃焼工程における安定した加熱により、硬度が低く白色度が通常80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができるようになる。未燃率が2質量%未満となるように乾燥及び燃焼を行うと、第1燃焼炉14におけるエネルギーコストが高いものになるとともに、燃焼物の硬度が高くなるおそれがあり、第2燃焼工程を経た燃焼物の白色度の低下等の品質低下を来たすおそれがある。
本形態においては第1燃焼工程の燃焼条件を前記条件とすることで、得られる再生粒子の摩擦抵抗低減が図れ、例えばマルチペーパーとして、電子写真記録用紙に用いた場合には搬送性、トナー定着性に優れたものになり、インクジェット記録用紙に用いた場合においては、インクジェットインクの吸収乾燥性に優れ、色むらの少ない好適な記録的性を得ることができる。
〔第2燃焼工程〕(燃焼工程)
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼した燃焼物は、移送流路等を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉にあたる外熱キルン炉32に装入する。
この外熱キルン炉32では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、燃焼物の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、更に均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉32における燃焼においては、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉14に供給される原料10の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径10mm以下となるように調整するのが好ましく、平均粒子径1〜8mmとなるように調整するのがより好ましく、平均粒子径1〜5mmとなるように調整するのが特に好ましい。第2燃焼炉32入口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径10mm超では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
また、第2燃焼炉32での安定生産を確保するためには、平均粒子径1〜8mmの燃焼物が70%以上となるように粒子径を調整しておくのが好ましい。このような調整は、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に有益である。また、このように分級(粒径の調整)を乾燥・燃焼後に行うと、小粒径の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
外熱キルン炉32の外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で、かつ長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の熱源が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32が好ましい。外熱源に電気を使用することにより、炉内の温度を細かく、かつ均一にコントロールすることができ、凝集体の形成、硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する燃焼物の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。また、電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度に保持することができ、第1燃焼炉14を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉32で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく限りなくゼロに近づけることができ、例えば重質炭酸カルシウムと比べて低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
外熱キルン炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)を用いる等して、酸素濃度5%〜20%、好ましくは10%〜20%、より好ましくは10%〜15%となるようにするのが望ましい。外熱キルン炉32内の酸素濃度が5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まないおそれがある。
外熱キルン炉32における燃焼温度は、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。第2燃焼炉32では、先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させるのが好ましく、燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることができないおそれがあり、燃焼温度が780℃を超えると、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなるおそれがある。
外熱キルン炉32における滞留(燃焼)時間は、好ましくは60分以上、より好ましくは60分〜240分、特に好ましくは90分〜150分、最適には120分〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、他方、滞留時間が240分を超えると、炭酸カルシウムが分解するおそれがある。また、燃焼物の安定生産を行うにおいては、滞留時間を60分以上、過燃焼防止、生産性確保のためには、滞留時間を240分以下とするのが好適である。
外熱キルン炉32から排出される燃焼物の平均粒子径は、10mm以下、好ましくは1mm〜8mm、より好ましくは1mm〜4mmに調整すると好適である。この調整は、例えば、外熱キルン炉の回転速度や外熱キルン炉内に設けるダム構造等により行うことができる。
第2燃焼工程を経た燃焼物は、好適には凝集体であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された後、燃焼品サイロ38に一時貯留され、再生粒子として顔料や填料等の用途先に仕向けられる。
なお、以上では、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とすることなどもできる。
以上のように、第1燃焼炉として、内部加熱燃焼炉を使用し、温度が300℃以上〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満で燃焼処理が行なわれるため、更に好適には、前記第1燃焼炉は、前記第1燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転するキルン炉であり、好適には、脱水後の原料の水分率が35%以上、前記内熱キルン炉内の酸素濃度が0.1%〜20%となるように、300℃以上で500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満の熱風を吹き込む燃焼手段をとり、前記第2燃焼工程の条件により第1燃焼工程を経た再生粒子を燃焼することで、第1燃焼炉における、低い摩擦抵抗性を有する再生粒子の品質維持が図れ、例えばマルチペーパーとして、電子写真記録用紙に用いた場合には搬送性、トナー定着性に優れたものとなり、インクジェット記録用紙に用いた場合においては、インクジェットインクの吸収乾燥性に優れ、色むらの少ない好適な記録的性を得ることができる。
〔粉砕工程〕
本形態の再生粒子の製造方法においては、公知の分散・粉砕装置等を用いて、再生粒子を適宜必要な粒子径に微細粒化することで、塗工用の顔料、内添用の填料として好適に使用することができる。
一例では、燃焼後、得られた粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途等への最適な粒子径については、本形態の再生粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm〜10.0μm、より好ましくは0.3μm〜5.0μm、特に好ましくは0.5μm〜2.0μmである。
なお、粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装製)により測定した体積平均粒子径である。
〔シリカ析出工程〕
本形態において使用する再生粒子は、粉砕工程を経ることで、そのまま内添填料として使用することが可能であるが、更に再生粒子に対し、シリカを析出(定着)させることで、再生粒子としての機能をより高めることが可能である。
再生粒子にシリカを析出させる事例を以下に記述する。
シリカを析出させる好適な方策としては、再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃、より好ましくは密閉容器内で所定の圧力に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のPHを8.0〜11.0の範囲に調整することにより、再生粒子表面にシリカを析出させることができる。再生粒子表面に析出されるシリカは、珪酸ナトリウム(水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸の希釈液と高温下で反応させ、加水分解反応と珪酸の重合化により得られる粒子径10〜20nmのシリカゾル粒子である。
珪酸ナトリウム溶液に希硫酸などの酸を添加することにより生成する数nm程度のシリカゾル微粒子を再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、シリカゾルの結晶成長にともない、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウム間で結合が生じ、再生粒子表面にシリカを析出させる。
ケイ素のより好ましい調整には、再生粒子を硅酸アルカリ水溶液中に分散後、該分散液に鉱酸を添加してPH7.0〜9.0の範囲に中和することで、再生粒子表面に硅酸由来のシリカを析出させることで調整可能である。
ここに使用する珪酸アルカリ溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手性の点で望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO2換算)で3〜10質量%が好適である。10質量%を超えると、再生粒子に析出されるシリカは、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性を阻害し、不透明性、吸油性の向上効果が低くなる。また、3質量%未満では再生粒子中のシリカ成分が低下するため、再生粒子表面へのシリカ析出が生じにくくなってしまう。
再生粒子表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子の場合には、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜62:29〜55:9〜35の質量割合とすることで、シリカ析出効果により、摩擦抵抗を引き上げる極大な粒径の再生粒子表面の被覆が行われ、過大な摩擦抵抗の発生を抑制でき、マルチペーパーとして、電子写真印刷における搬送性の改善とトナーの定着性向上、インクジェット記録におけるインクジェットインクの吸収乾燥性、不透明性を向上させることができる。
〔その他の工程〕
本形態において、再生粒子のいっそうの品質安定化を図るためには、被処理物の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロス(脱水物)を造粒することが好ましく、更には造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用できるが、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
本形態の製造方法における原料としては、再生粒子の原料と成り得るもの以外は予め除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
本形態の再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合であるのが好ましく、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合であるのがより好ましく、60〜82:9〜20:9〜20の質量割合であるのが特に好ましい。カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程のおける脱水性が良好であり、乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬さを生じる恐れを低減できる。
カルシウム、シリカ及びアルミニウムの質量割合を調整する方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
また、本形態の再生粒子の製造方法による再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製(型式 TG/DTA6200))を用い、測定条件を(1)昇温速度25〜1050℃:20℃/min、(2)供給ガス:空気(酸素濃度約5vol%)、(3)供給ガス流量:約48ml/minにて測定した示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、被処理物を燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができる。
(第2燃焼炉32のリフター)
先に採用理由と共に述べたように、第2燃焼炉32内の内壁には、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料(被燃焼物)の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
そして、特に被燃焼物の装入側から排出側に向けて、螺旋状リフターと、軸心と平行な平行リフターとをこの順で配設するのが望ましい。この構成によると、装入側から投入された被燃焼物が、まず螺旋状リフターにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、被燃焼物に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、引き続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく被燃焼物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる被燃焼物の量がコントロールされることで、平行リフター部分における被燃焼物の持ち上げ・落下が適正に行われ、被燃焼物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、被燃焼物の純度の低下がなく、その生産能力も向上する。
また、螺旋状リフター及び平行リフターを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすると、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。
さらに、第2燃焼炉32にリフターを設けることにより、硬質物質の少ない再生粒子の製造が可能になり、摩擦抵抗低減が図れ、マルチペーパーとして、例えば電子写真記録用紙に用いた場合には搬送性、トナー定着性に優れたものになり、インクジェット記録用紙に用いた場合においては、インクジェットインクの吸収乾燥性に優れ、色むらの少ない好適な記録的性を得ることができる。
上記の実施の形態例を図2によって説明すると、被燃焼物は、図2では、第2燃焼炉32の左側から装入され、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成され、他端側から排出される。
第2燃焼炉32は、円筒状の外筐32Aの内面に耐火キャスタブルや耐火レンガから成る耐火壁32Bを内張りして構成されている。第2燃焼炉32の耐火壁32Bの内面には、投入(装入)側において、第2燃焼炉32の軸心に対して45・〜70・の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター4が等間隔に突設され、さらにこの螺旋条リフター4の配設領域の他端側に、第2燃焼炉32の軸心と平行な適当長さの平行リフター5Aが周方向に等間隔置き複数(図示例では8つ)かつ軸心方向に複数列(図示例では8列)千鳥状に配列して突設されている。
また、平行リフター5Aは、図示の右側に排出部に向かって連続的に形成されている(図示せず)。この場合、装入側では低温であるので、ステンレス鋼板などの耐熱性と耐腐食性のある金属板にて形成するのが望ましく、排出部側では相対的に高温となるので、排出側の平行リフター5Aは耐火物製とすることができる。
本実施形態では、螺旋状リフター4はその長手方向に適当間隔おきに配設した取付けブラケット6に固定されて配設されている。また、各平行リフター5Aは、それぞれの取付けブラケット5Bに固定されて配設されている。なお、必要ならば、螺旋状リフターまたは平行リフターの一方のみを設けることでもよい。
本形態において得られる再生粒子は、従来の再生粒子と異なり、第1燃焼炉として、内部加熱燃焼炉を使用し、温度が300℃以上〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満で燃焼処理が行なわれ、更に好適には、前記第1燃焼炉は、前記第1燃焼炉が、本体が横置きで中心軸周りに回転するキルン炉であり、好適には、脱水後の原料の水分率が35%以上、前記内熱キルン炉内の酸素濃度が0.1%〜20%となるように、300℃以上で500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満の熱風を吹き込む燃焼手段をとるため、得られた再生粒子中に含まれる硬質物質が少なく、均等な品質を有するため、従来一般的に行われている乾式粉砕による大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった操作に於いて、シャープな粒度分布を示す再生粒子を得ることが可能に成り、過大な再生粒子や過度に微粉砕された再生粒子の発生を抑制することが可能となる。
このようにして得られた再生粒子は、高白色度で多孔質性を有し、硬質物質を含有しんないため柔軟であり、かつ、シャ−プな粒子径分布を有し、原料パルプ中にムラ無く均質に分散可能である。かくして得られる再生粒子は、湿式粉砕により極めて容易に体積平均粒子径Dを0.1〜10.0μmの範囲にて自由に制御可能であり(再生粒子の分散濃度と温度、時間による)、粒子径分布は粒子径0.5D〜1.5Dの範囲の粒子が全体の60重量%以上を占めるシャ−プなものとなる。
本形態では粒子化条件の調整により粒子径0.5D〜1.5Dの範囲の粒子が全体の60重量%以上、好ましくは62量%以上、さらに好ましくは65%以上、またさらに好ましくは68%以上のものを得ることができる。
体積平均粒子径Dが5μm未満の場合、マルチペーパーとして電子写真記録に用いた場合、紙層中の緊度が比較的高くなり、搬送時の紙送りに支障が出やすく、トナー転写時のドットの抜けが目立つ問題が顕在化し易くなる。更に、インクジェット記録においては、内添される多孔質な再生粒子のため、インクジェットインクの吸収性が高くなり、インクジェットインク中の染料や顔料が溶媒と共に用紙中に含浸され、発色濃度や鮮明さが低下する恐れがある。
体積平均粒子径Dが15μmを超えると、用紙表面に存在する比較的粒径の大きい再生粒子凝集剤の存在割合が多くなり、マルチペーパーとして電子写真記録に用いた場合、感光ドラムや搬送機器の毀損や、粉落ちの問題が生じやすくなる。更に、インクジェット記録においては、インクジェットインクのニジミや局部的なインクエットインクの吸収が生じ易くなり、記録における精細さが欠ける問題が生じる。
更に、灰分粒子の60体積%以上が粒子直径0.5D〜1.5Dの範囲を外れると、粒子分布がブロードな状態に成るが故に、電子写真記録時の搬送時の紙送りや機器の毀損、粉落ち、インクジェット記録時の記録適性が低下する問題が生じる。
本形態では、上記の如き再生粒子を単独で使用することもできるし、かかる再生粒子と内添用填料として通常使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の填料を併用することもできる。もちろん、これらの2種以上と併用することもできる。再生粒子を含む填料の添加率が40%を越えると、紙力が低下するため、内添紙中に紙灰分として再生粒子を4〜10質量%、より好ましくは5〜9質量%含むことが好ましい。
本発明において、得られる再生粒子内添紙中の、内添用填料として前記再生粒子を少なくとも含む填料の含有量は、JIS P 8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に記載の方法に準拠して測定した灰分で3%以上、さらには5%以上となるように調整することが好ましく、また20%以下、さらには18%以下となるように調整することが好ましい。
特に、再生粒子を内添用填料中に50質量%以上の割合で含有させることが、その効果を遺憾なく発揮させることができる点から好ましい。
内添用填料中の再生粒子の割合は、前記JIS P 8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に記載の方法にて灰化した後では含有量が曖昧になるため、JIS P 8220「パルプ−離解方法」に記載の方法に準拠して離解したパルプから篩い分けを行い繊維分を取り除き、残留無機粒子を凍結真空乾燥した後、X線マイクロアナライザー(型番:EMAX2770、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)の加速電圧を15kV、倍率を50倍とし、白黒「ポラロイド」(登録商標)フィルム(8.5cm×10.8cm)にて、X線マイクロアナライザーディスプレーのX線像を撮影して、再生粒子由来のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの存在部分が重なって示される白色部分の面積と他の無機成分の面積との面分析を行うことで概算算出することができる。
灰分の含有量が、3%未満であると、得られる用紙の不透明性が低下し、マルチペーパーとして、電子写真記録やインクジェット記録における記録情報の精細性が低下し、特にインクジェット記録においては記載情報が透けて見えやすい問題が生じる。20%を超えると、電子写真記録における複写機内での搬送に伴って灰分が脱落し易くなり、ハイバックグランド(転写工程で感光体に付着した紙粉中の填料が現像部で現像剤に混入すると、トナーと填料が逆極性の場合、凝集体が形成され、この凝集体が非画線部に現像される現象)や、ディリーション(感光体の暗所での電気抵抗の低下により、正常な静電潜像が得られなくなる現象)が発生する恐れがあると共に、インクジェット記録においては、フェザリングが発生し易くなったり、抄紙機におけるカレンダー処理において、平滑化の効果が発現され難くなって再生粒子内添紙の不透明度が低下し、プリントスルーが発生する恐れがあるほか、トナー定着性の効果が充分に発現されない恐れがある。更に、紙粉が落ち易くなると共に抄紙が困難になったり、紙力が低下するほか、密度が高くなり、電子写真印刷機上での走行性が低下したり、所望のサイズ効果が発現され難くなる。
また本発明の再生粒子内添紙においては、前記JIS P 8251に準拠して測定した灰分中の、酸化マグネシウムの含有量は7.5質量%以下であることが好ましい。灰分中の酸化マグネシウムは、通常、そのほとんどがいわゆるタルク(Mg2SiO3の含水物)由来の無機物質であり、古紙パルプを原料として使用する際に、市中回収古紙に紛れて処理されるチラシや上質紙に含まれるものである。
該酸化マグネシウムは、マルチペーパーとしての使用において、電子写真記録においては、酸化マグネシウムの滑り易くする性質から電子写真記録装置内で搬送トラブルや重送を起こしたり、紙粉を発生させる原因物質であると考えられ、インクジェット記録においては、インクジェットインクの吸収乾燥性を阻害し、部分的なインクの滲みを発生させる問題を生じやすくなる。
したがって、本発明の再生粒子中に含まれる硬質物質の含有量低減と共に、灰分中の酸化マグネシウムの含有量が、好ましくは7.5質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下、特に好ましくは4質量%以下となるように調整することで、得られる再生粒子内添紙に、さらに優れたマルチペーパーとしての電子写真印刷適性及びインクジェット記録適性を同時に付与することができる。
なお、灰分中の酸化マグネシウムの含有量は0質量%に近いほど好ましく、該酸化マグネシウムは、フローテーション処理等の脱墨処理での脱墨フロスの抜き出し量の加減や、比較的粒度が大きいことを利用した比重差による精選処理等で除去する方法が提案されているが、実際のところ実用的ではない。酸化マグネシウムが、多くは市中回収古紙に含まれるチラシや上質紙から混入されることを考慮すると、脱墨古紙の選別が、好適な酸化マグネシウムの含有量の調整に最も効率的かつ効果的である。
本形態において、パルプ及び填料を主原料とし、該填料のうち、前記再生粒子を少なくとも内添用填料として内添して得られる紙料スラリーには、通常紙に配合される種々の添加剤も配合することができる。紙料スラリーに添加する添加剤としては公知のものを用いることができ、例えば紙力増強剤としては澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等が、サイズ剤としてはロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水こはく酸)、中性ロジン等が、また歩留り向上剤としてポリアクリルアミド及び共重合体、ケイ酸ソーダ等が挙げられる。更に必要に応じて染料、顔料等の色料を添加してもよい。かくして調製された紙料は、公知の抄紙機によって抄造することができる。抄紙機としては、例えば長網式抄紙機、オントップ式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の通常の湿式抄紙機を使用することが可能である。
かくして得られる本発明の再生粒子内添紙は、好適にはその表面において、X線マイクロアナライザーを用いた面分析によるX線像で検出される、前記再生粒子の存在部分の面積が、前記X線像で検出される全面積の10〜100%であることが好ましい。
このように、用紙表面において、X線像で検出される、再生粒子の存在部分の面積、すなわち該再生粒子由来のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの存在部分が重なって示される白色部分の面積が、全面積の10〜100%、好ましくは50〜100%であるので、再生粒子内添紙の表面において再生粒子が満遍なく存在し、マルチペーパーとして、より優れた電子写真印刷適性とインクジェット記録適性を同時に満足させることができる。
すなわち、本発明の再生粒子の特徴である、湿式分散においてシャープな粒度分布を示し、過大な粒径の再生粒子の存在が少ないため、再生粒子が、再生粒子内添紙の表面上だけでなく、紙層中においても満遍なく存在し、好ましくは表面と内部とを比較すると、抄紙工程におけるウエットエンド調整やプレスパートでの脱水処理手段にて表面側に偏って存在させることにより、インクジェット記録においては、インクが極めて早く用紙に吸収され、インク乾燥性が向上し、それによって印刷時のドット径が必要以上に大きくならず、インクが重なって滲むことがない。したがって、より優れたインクジェット記録適性が再生粒子内添紙に付与され、鮮明なインクジェット記録を行うことが可能となる。
さらに、前記再生粒子が、前記のとおり、再生粒子内添紙の表面上だけでなく、紙層中においても満遍なく存在することにより、電子写真印刷においては、該再生粒子による断熱効果と、その多孔性とによって、トナー中の熱溶融成分の癒着が容易になり、トナー定着性が向上し、トナーの脱落やトナー汚れ、印刷後の再生粒子内添紙間でのトナーによる接着が生じ難くなる。したがって、優れた電子写真印刷適性が再生粒子内添紙に付与され、鮮明な電子写真印刷を行うことが可能となる。
かくして得られる再生粒子内添紙は、再生粒子が、紙中にJIS P 8251に準拠して得た紙灰分として4〜10質量%含有し、JIS P 8118(1998)に準拠して測定した紙の密度が、0.80g/cm3以下であり、更にJIS P 8251に準拠して得た灰分を構成する粒子をレーザー解析式粒度分布測定装置で測定した際の、体積平均粒子径Dが0.1〜10.0μmであり、灰分粒子の60体積%以上が粒子直径0.5D〜1.5Dの範囲にあるとともに、本件発明における好適な摩擦条件においては、前記再生粒子内添紙の静摩擦係数が0.40〜0.65かつ動摩擦係数が0.35〜0.60であり、ベック平滑度が20〜50秒である再生粒子内添紙を得ることができる。
静摩擦係数が0.40未満では、マルチペーパーとして、電子写真記録やインクジェット記録において重送等の搬送不良が生じやすく、静摩擦係数が0.65を超えるとマルチペーパーとして、電子写真記録やインクジェット記録においてトナーの定着不良やインクジェット記録において精細な画像が得られにくい。
なお、マルチペーパーとして、電子写真記録やインクジェット記録を高速にて行う最近の高速記録装置への適性を考慮すると、本件発明における第1燃焼炉での300℃以上から500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満での低温燃焼、更には紙中灰分を3〜20%に調整すること、第1燃焼炉に供給する原料の水分率を35%以上にすることにより得られる再生粒子を用い、再生粒子内添紙の好適な摩擦条件として、静摩擦係数が0.40〜0.65かつ動摩擦係数が0.35〜0.60であり、ベック平滑度が20〜50秒の範疇になるように、さらに公知の平坦化処理手段で再生粒子内添紙の表面性を向上すことが好ましい。
本形態の再生粒子は、再生粒子中に含有される硬質物質が少なく、過大な再生粒子の割合も少なく、得られる再生粒子の粒度分布もシャープであるため、前記、静摩擦係数が0.40〜0.65かつ動摩擦係数が0.35〜0.60であり、ベック平滑度が20〜50秒の範疇への調整が、本件発明における第1燃焼炉での300℃以上から500℃未満特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満での低温燃焼、更には紙中灰分を3〜20%に調整すること、第1燃焼炉に供給する原料の水分率を35%以上にすることにより得られる再生粒子を用いること、公知の平坦化処理手段で再生粒子内添紙の表面性を向上すことで容易に得易い。
本発明の再生粒子内添紙は、迅速熱伝導率計(型番:QTM−500、京都電子工業(株)製)にてボックス式プローブを用いて測定した熱伝導率が、坪量64.0g/m2において、0.15kcal/m・h・℃以上、さらには0.18kcal/m・h・℃以上であることが好ましく、0.40kcal/m・h・℃以下、さらには0.38kcal/m・h・℃以下であることが好ましい。熱伝導率をこのように調整することによって、特に、電子写真印刷におけるトナー定着用熱溶融性樹脂の溶融がより迅速になり、近年の高速電子写真印刷にも充分に適合した再生粒子内添紙が実現される。なお、該熱伝導率とは、JIS P 8119(1998)「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠した、20℃の条件下で湿度を65%に調湿した再生粒子内添紙についての測定値である。
熱伝導率が前記下限値未満では、トナーを用紙に固着するための、熱溶融性樹脂が再生粒子内添紙に転着し難くなり、トナー中のカーボンブラックのみが再生粒子内添紙に付着し、トナーの定着不良や再生粒子内添紙の汚れが生じる恐れがある。また逆に熱伝導率が前記上限値を超えると、用紙から熱が離散し、熱溶融性樹脂の溶融が不充分になり、やはりトナーの定着不良が生じる恐れがある。特に、近年の高速電子写真印刷においては、トナーへの加熱条件が極めて短時間になるため、用紙の熱伝導率が高過ぎると、トナーの定着不良が生じたり、印刷画像が不鮮明になる恐れが高まる。
また本発明の再生粒子内添紙の坪量には特に限定がないが、マルチペーパーとして、少なくとも再生粒子を填料として内添することによる、重送、カール等を発生させないような搬送性、トナー定着性、フェザリング、滲み等を発生させないような印刷適性といった特性の向上効果が遺憾なく発揮されるには、35〜100g/m2程度、さらには45〜80g/m2程度であることが好ましい。
本発明において、内添填料として用いられる再生粒子は、再生粒子中に含有される硬質物質が少なく、過大な再生粒子の割合も少なく、得られる再生粒子の粒度分布もシャープで多孔性でクッション性を有する凝集体であり、その多孔性がゆえに、カレンダー加工等による平坦化処理において、過度の平坦化による重送の発生を抑制することが可能であるとともに、多孔構造による吸放湿性を有し、環境の温湿度変化に伴う用紙変化に対して緩衝剤的な効果を発現する。特に、再生粒子を、再生粒子内添紙の内部よりも表層部に偏在させることで、より緩衝剤的な効果が醸し出されるので、従来の一般的な填料を内添した場合とは異なり、マルチペーパーとして、電子写真印刷においては、重送、カール等の問題やトナー定着性を改善することができ、インクジェット記録においては、染料系、顔料系といったインクの種類に関係なく、インク吸収乾燥性を向上させ、フェザリングや滲みの問題を改善することができる。
さらに、本発明に用いられる再生粒子は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを構成元素とする凝集体であるので、従来の一般的な填料とは異なり、紙中への歩留り率が高く、ウエットエンドにおける歩留り向上剤効果が発現され易く、J/W比、サクション圧の調整により容易に用紙の表層部に偏在させて抄紙することが可能であり、本発明の効果を充分に発揮させることができる。
本発明の再生粒子内添紙は、パルプに、特定の粒子構成成分を有する再生粒子が内添用の填料として内添されており、該再生粒子が、表面上では満遍なく存在し、一方、表面と内部とを比較すると好ましくは表面に偏って存在し、しかも好ましくは灰分中の酸化マグネシウムの含有量が少ないので、インクジェット記録適性に優れると同時に電子写真印刷適性に優れ、紙質強度が高く、高品質で品質安定性にも優れたものである。
再生粒子の添加は従来公知のいずれの場所でも行うことが可能であるが、原料配合チエストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子が分散しやすくなり、繊維への定着性がよくなる。その結果、填料の歩留りが向上する。また、再生粒子が繊維間の結合を阻害しないので、原紙の剛度が低下することもない。再生粒子をより均一に分散させ、繊維への定着を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で添加することがより好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔試験例1〕
各種条件を変化させて、得られた再生粒子の品質を調べた。条件及び結果を表1及び表2に示した。
結果によれば、実施例が比較例に対して優れていることがわかる。すなわち、製紙スラッジを使用する場合に比較して、脱墨フロスを使用すること、第1燃焼炉の温度が300℃以上〜500℃未満、特に400℃〜500℃未満、特に好ましくは、400℃〜450℃未満であること、第1燃焼炉及び第2燃焼炉との組み合わせによること必須であることが分かる。また、各実施例内での相対評価として脱水水分、第1燃焼炉内の酸素濃度、滞留時間、第1燃焼工程後の未燃率、第2燃焼炉の型式など、上記説明でより好適であると説明した条件において、より優れていることが判る。なお、△の評価は問題があるとしても実施可能の範囲内であることを断っておく。
なお、装置及び測定条件は、次に示すとおりである。
(内熱キルン炉):本体が横置きで中心軸周りに回転する、重油・ガスの混焼バーナーによる内熱キルン炉を用いた。
(外熱キルン炉):外熱電気キルン炉を用いた。
(未燃率):電気マッフル炉を予め600℃に昇温後、ルツボに試料を入れ約3時間で完全燃焼させ、燃焼前後の重量変化から未燃分を算出した。
(ワイヤー摩耗性):プラスチックワイヤー摩耗度(日本フィルコン製 3時間)、スラリー濃度2重量%で測定した。
(生産性):原料の脱水効率、生産性、粉砕に必要な電力を4段階評価し、最も効率の良かった条件を◎、良かったものを〇、いずれかに問題を見出したものを△、実操業困難なものを×とした。
(品質安定性):白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、上位6位までを◎、7位から18位までを〇、19位から33位を△、それ以下を×とした。
(見た目):目視で再生粒子の色を比較判断し、白色、薄灰色、暗灰色に区分した。
なお、比較例5における脱水工程では、スクリーンによって、脱水処理した製紙スラッジ(※1)をそのまま第1次燃焼炉に投入したものである。さらに比較例3〜8における「製紙スラッジ」とは、製紙工場の各製造部門から排出される総合排水処理設備における余剰汚泥を使用したものである。
〔試験例2〕
TMP(18質量%)、DIP(82質量%)のパルプ原料に対し、前記試験例1に係る再生粒子を添加し、抽出pHが6.5になるように抄紙して内添紙を得た。これらの内添紙について、各種の品質・特性を調べ、再生粒子の品質及び結果(紙質)を表3〜5に示した。
なお、測定、分析、評価等の条件は、次に示すとおりである。
(再生粒子凝集体の構成割合):X線マイクロアナライザー(EMAX・S−2150/日立堀場製)により酸化物換算の成分分析を行った。
(合計含有率):粒子中の3成分の合計含有率を示した。
(灰分):JIS P 8251に準拠して525℃で燃焼して得られた値である。
(粒子径):灰分の平均粒子径及び粒子径分布(粒度分布と表現することもある)は、次の方法によって求めた。
(1)得られた灰分10mgを、3重量%濃度のヘキサメタリン酸ナトリウム(試薬一級)水溶液200ミリリットル中に入れ、超音波分散機(出力80ワット)で3分間分散させ、3時間放置する。
(2)上記分散液をレーザー解析式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社)により、粒径分布の測定を行う。分布は粒子直径に対する体積の分布であり、累積体積の中央値(メデイアン値)に対応する粒子径を平均粒子径μmとして採用する。
(吸油度):JIS K 5101に準拠した測定した値である。
(坪量):JIS P 8124に準拠した測定した値である。
(密度):JIS P 8118に準拠した測定した値である。
(画線部明瞭性):再生粒子内添紙に、インクジェットプリンタ(Pixus850i:株式会社キャノン社製)により、黒インキで太さ1ポイントの細線を印刷した画像を目視にて画線部の明瞭性を判断した。◎:にじみ・かすれがない、○:にじみが見られるが使用に問題ない、△:にじみがはっきり分かる、×:にじみ・かすれとも多い。
(熱伝導率):JIS P 8119−1998「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠した、20℃の条件下で湿度を65%に調湿した記録用紙について、迅速熱伝導率計(型番:QTM−500、京都電子工業(株)製)にてボックス式プローブを用いて測定した。
(平滑度(ベック平滑度)):JIS P 8119に準拠した測定した値である。
(インク裏抜け):目視にて、印刷後の用紙裏面を裏面から判断した。◎:裏面へのにじみがない、○:裏面へのにじみが見られるが使用に問題ない、△:裏面へのにじみがはっきり分かる、×:裏面へのにじみが多い。
(トナー定着性):再生粒子内添紙にPPC複写機(型番:5055、富士ゼロックス(株)製)で複写した、画像濃度が約1.4の画像部に、セロハンテープ(幅:18mm、ニチバン(株)製)を、平坦な金属板上で、金属製の直径102mm、面長250mm、7500gのロールにて、300g/cmの線圧で貼付した。
次いで、このセロハンテープを約1cm/秒の速度でテンシロン万能試験機を用い剥離し、剥離後の画像濃度を測定して、剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比:画像濃度の比=剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度を求めた。これら画像濃度の測定には、マクベス反射型濃度計(型番:RD−918、Macbeth社製)を使用した。なお電子写真用転写紙としては、通常、剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比で0.7以上が必要とされる。
(静摩擦係数):JIS P 8147「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に記載の方法に準拠し、記録用紙の表面と裏面とを横方向(CD方向)同士で擦った際の静摩擦係数を測定した。
(動摩擦係数):JIS P 8147「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に記載の水平方法に準拠して、再生粒子内添紙の表裏面間の横方向(CD方向)同士の動摩擦係数を測定した。
(白色度):JIS P 8148(2001)に準拠した測定した値である。
(不透明度):JIS P 8149(2000)に準拠した測定した値である。
(粉落ち):黒色ビニール上で、B5寸法裁断試料を20枚束ねて5回軽く振ったさいの、粉落ちを目視で判断した。◎:粉落ちが見られない、〇:粉落ちは殆どない、△:粉落ちが見られる、×:粉落ちが多い。
(搬送性):
(1)インクジェット印刷
インクジェットプリンタ(型番:PM800C、セイコーエプソン(株)製)に、A4サイズの記録用紙を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で100枚連続して給紙し、紙送りの状態及び紙詰まりの有無を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙詰まりが全く生じず、紙送りがスムーズであった。
○:紙送りのスピードに一部変化が見られたが、紙詰まりは生じなかった。
△:紙送りがわるく、紙詰まりが生じた。
×:紙詰まりが著しかった。
(2)電子写真記録
電子写真印刷機(型番:DocuColor 1250、富士ゼロックス(株)製)を用い、記録用紙500枚に連続して、高精細カラーデジタル標準画像データ(ISO/JIS−SCID、日本規格協会発行)N1からN4を出力し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:搬送不良が全く生じなかった。
○:搬送不良が1回のみ生じた。
△:搬送不良が2〜5回生じた。
×:搬送不良が6回以上生じた。