JP5551364B2 - 光学ガラス - Google Patents

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Description

本発明は光学ガラスに係り、特に高屈折率、高分散特性を有する光学ガラスに関する。
近年、デジタルカメラの登場により光学系を使用する機器の高集積化、高機能化が急速に進められる中で、光学系に対する高精度化、軽量・小型化の要求もますます強まっており、この要求を実現するために、非球面レンズを使用した光学設計が主流となりつつある。そこで、高機能性ガラスを使用した非球面レンズを低コストで大量に安定供給するために、研削・研磨工程を必要とせず、直接に光学面を形成するモールド成形技術が注目され、高機能性(例えば、高屈折率・低分散/高屈折率・高分散等)を有するモールド成形に適した光学ガラスに対する要求が年々増え続けている。
ガラスの精密プレス成形は、所定形状のキャビティを有する成形型を用いて、ガラス成形予備体(ガラスプリフォーム)を高温下で加圧成形することにより、最終製品形状又はそれに極めて近い形状及び面精度を有するガラス成形品を得る手法であり、精密プレス成形によれば、所望形状の成形品を高い生産性の下に製造することが可能である。このため、現在では球面レンズ、非球面レンズ、回折格子等、種々の光学ガラス部品が精密プレス成形によって製造されている。当然、精密プレス成形により光学ガラス部品を得るためには、上記のようにガラスプリフォームを高温下で加圧成形することが必要であるので、プレスに使用される成形型が高温に曝され、かつ高圧が加えられる。このため、ガラスプリフォームについては、プレス成形の高温環境によって成形型自体や成形型の内側表面に設けられている離型膜の損傷を抑制するという観点から、ガラス転移点(Tg)をなるべく低くすることが望まれている。また、ガラスプリフォームを作製するのに高い耐失透性を有するガラスが強く求められる。
従来、高屈折率、高分散領域の光学ガラスは酸化鉛を多量に含有する組成系が代表的であり、ガラスの安定性がよく、かつガラス転移点(Tg)が低いため、精密モールドプレス成形用として使用されてきた。例えば、特許文献1には酸化鉛を多量に含有する精密モールドプレス用の光学ガラスが開示されている。
しかしながら精密モールドプレス成形を実施する場合の環境は金型の酸化防止のために還元性雰囲気に保たれているため、ガラス成分に酸化鉛を含有しているとガラス表面から還元された鉛が析出し、これが金型表面に付着して、金型の精密面を維持できなくなるという問題点があった。また、酸化鉛は環境に対して有害であり、含有しないことが望まれてきた。
その要望に応えて、高屈折率、高分散領域で酸化鉛を含有しないプレス成形用光学ガラスとして、B、La等を必須成分とする種々のガラスが開発されており、例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4等に開示されている。
しかしながら、これらの特許文献に開示されているガラス組成のうち、光学設計上非常に有用である屈折率(nd)が1.78以上、かつアッベ数νdが16以上となるような組成には、低ガラス転移点化に有効とされるZnO、あるいはLiO、NaO等のアルカリ金属酸化物がほとんど含有されていないため、ガラス転移点(Tg)が高くモールドプレス成形に対する適性は低かった。
特開平01−308843号公報 特開2000−128570号公報 特開2002−362939号公報 特開2005−239506号公報
本発明は、屈折率(nd)が1.78〜2.2、アッベ数(νd)が16〜40未満の範囲であり、ガラス転移点が低くて精密モールドプレス成形に適した新規の光学ガラスを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、「B」、「TiO及び/又はNb」、及び「WO」を所定の範囲にすることによって、鉛を含有しなくとも、上記特定範囲の光学定数を有した光学ガラスを得ることができ、しかもそれは精密プレス成形が可能な低いガラス転移点(Tg)を有するため、精密プレス成形に好適なガラスプリフォーム材が容易に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 酸化物基準のモル%でBを25〜60%、TiO及び/又はNbの合計量を2〜45%、WOを1〜25%含有し、屈折率ndが1.78〜2.2、アッベ数νdが16〜40未満である光学ガラス。
この態様によれば、ガラスの溶融性、安定性や耐失透性に優れ、また、高い屈折率と高分散を有する光学ガラスとなる。これらは、ガラス形成酸化物として欠くことができない成分で、ガラスの失透性及び液相温度に対する粘性を高くするのに効果があるBを多量含有し、ガラスの屈折率を高め、高分散化させるのに有効なTiO、Nb、WOを必須成分として含有しているためである。
(2) 酸化物基準のモル%でLaを5〜35%及び/又はZnOを1〜40%含有する(1)に記載の光学ガラス。
この態様によれば、ガラスの溶融性、安定性や耐失透性がより向上し、さらにより幅広い屈折率と分散を持ち、また、ガラス転移点(Tg)も低くて、精密プレス成形性により優れる光学ガラスとなる。これは、上記(1)のガラス成分に加えて、さらにガラスの屈折率を高め、幅広い分散を付与させるのに有効なLa成分、及び/又はガラス転移点(Tg)を低下させるのに効果のあるZnO成分を含有しているためである。
(3) 酸化物基準のモル%で、
RnO(RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す)
0〜15%及び/又は
RO(RはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す)
0〜20%及び/又は
GeO0〜20%及び/又は
0〜10%及び/又は
Yb0〜20%及び/又は
Ta0〜10%及び/又は
ZrO0〜10%及び/又は
TeO0〜30%及び/又は
Bi0〜10%及び/又は
Sb及び/又はAsの合計量 0〜5%
を含有する、屈折率(nd)が1.78〜2.2、アッベ数(νd)が16〜40未満の範囲の光学定数を有し、ガラス転移点(Tg)が700℃以下である光学ガラスである。
RnO(RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す)やRO(RはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す)等の成分を含有することで、より一層ガラスの溶融性に優れ、より低いガラス転移点(Tg)を有することになる。また、Yb、Ta、ZrO2、TeO、Ta、Bi等は、ガラスの屈折率や高分散化をより向上させる。従って、この態様によれば、ガラスの溶融性、耐失透性、化学的耐久性等により優れ、ガラスの屈折率や高分散化をより向上し、ガラス転移点もより低下した光学ガラスとなる。
(4) SiO及びGaを含有しない(1)から(3)いずれかに記載の光学ガラス。
この態様によれば、これらの成分はガラスの安定性を低下させるので、含まないことで、より安定性が得られる。
(5) ガラス転移点(Tg)が700℃以下である(1)から(4)いずれかに記載の光学ガラス。
この態様によれば、ガラス転移点(Tg)が700℃以下であるので、比較的低い温度で、精密プレス成形が可能である。このため、精密プレス成形に用いる成形型がプレス成形の高温環境による損傷が抑制され、また、成形型の内側表面に設けられている離型膜の損傷を抑制されることになる。
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス用成形用プリフォーム。
(7) (6)に記載の精密プレス用成形用プリフォームを精密プレス成形してなる光学素子。
(6)及び(7)の態様によれば、(1)から(5)に記載の光学ガラスは精密プレス成形が可能な低いガラス転移点(Tg)を有するため、精密プレス成形用のプリフォームとして効果的であり、当該精密プレス成形用のプリフォームを精密プレス成形した光学素子を製造することが容易になる。
本発明は、屈折率(nd)が1.68〜2.2、アッベ数(νd)が16〜40未満の範囲の光学定数を有する光学ガラスを得ることができ、さらに該光学ガラスはガラス転移点(Tg)が700℃以下であるので、精密プレス成形に使用するガラスプリフォーム材、及び精密プレス成形に適している。また、従来の光学ガラスに比べて、安定性が高く、アッベ数(νd)が小さい、すなわち高分散性であり、上述した近年の光学設計上の要求を満たすため、産業上非常に有用である。
発明を実施するための形態
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の光学ガラスに含有できる成分について説明する。以下、特に断りのない限り各成分の含有率はモル%で表すものとする。
本発明の光学ガラスは、必須成分としてBを25〜60%、TiO及び/又はNbの合計量を2〜45%、WOを1〜25%の酸化物換算組成の各成分を含有し、さらに好ましくは、Laを5〜35%、及び/又はZnOを1〜40%含有する。また、より好ましくは任意成分として
RnO(RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す)
0〜15%及び/又は
RO(RはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す)
0〜20%及び/又は
GeO0〜20%及び/又は
0〜10%及び/又は
Yb0〜20%及び/又は
Ta0〜10%及び/又は
ZrO0〜10%及び/又は
TeO0〜30%及び/又は
Bi0〜10%及び/又は
Sb及び/又はAsの合計量 0〜5%
を含有する、屈折率(nd)が1.78〜2.2、アッベ数(νd)が16〜40未満の範囲の光学定数を有し、ガラス転移点(Tg)が700℃以下である光学ガラスである。
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有率は特に断りがない場合はすべてモル%で表示されるものとする。尚、本願明細書中において%で表されるガラス組成はすべて酸化物基準でのモル%で表されたものである。ここで、「酸化物基準」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、硝酸塩等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、該生成酸化物の質量の総和を100モル%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
上記本発明のガラスにおいて、B成分はガラス形成酸化物として欠くことができない成分であり、またガラスの失透性改善及び液相温度における粘性を高くする効果がある成分である。しかし、その量が少なすぎると耐失透性が不十分となり、多すぎると目的の屈折率が得られ難くなる。従って、下限は好ましくは25%、より好ましくは30%、最も好ましくは35%とし、上限は好ましくは60%、より好ましくは55%、最も好ましくは50%として含有することができる。
La成分は、ガラスの安定性の向上に寄与し、さらに屈折率を高め、分散を幅広く持たせるのに効果的な任意成分である。しかしその量が少なすぎるとこれらの効果が不十分であり、多すぎると耐失透性が急激に悪化し易い。従って、目的の光学定数及び良好な耐失透性を得るためには、下限は好ましくは5%、より好ましくは8%、最も好ましくは9%とし、上限は好ましくは35%、より好ましくは30%、最も好ましくは25%として含有することができる。
ZnO成分は、ガラスの安定性を向上し、さらにガラス転移点(Tg)を低くする効果が大きい成分であるが、その量が多すぎると目的の屈折率を維持することが難しくなり、耐失透性も悪化し易い。従って、良好な耐失透性を維持しつつガラス転移点(Tg)を低くするためには、下限は好ましくは1%、より好ましくは3%、最も好ましくは6%とし、上限は好ましくは40%、より好ましくは30%、最も好ましくは22%未満として含有することができる。
TiO成分及び/又はNb成分は、ガラスの屈折率を高め、高分散を寄与し、ガラスの失透性と化学耐久性を向上させるのに効果的な成分であるが、その量が多すぎるとガラスの溶融性と安定性がかえって悪化し易い傾向とある。従って、合計量で下限は好ましくは2%、より好ましくは3%、最も好ましくは5%とし、上限は好ましくは45%、より好ましくは40%、最も好ましくは35%として含有することができる。この二つの成分は単独でガラス中に導入しても本発明の目的の達成が可能であるが、Nbがより効果的であるため含有することが望ましい。
TiO成分は、ガラスの屈折率を高め、高分散を寄与し、液相温度を下げるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎると逆にガラスの失透性が増す傾向にある。従って、ガラス中に導入する場合には、下限は好ましくは2%、より好ましくは3%、最も好ましくは4%とし、上限は好ましくは35%、より好ましくは25%、最も好ましくは20%として含有することができる。
Nb成分は、ガラスの屈折率を高め、高分散を寄与し、ガラスの失透性を改善させるのには効果的な成分であるが、その量が多すぎるとガラスの溶融性が悪化する傾向にある。従って、ガラス中に導入する場合には、下限は好ましくは2%、より好ましくは3%、最も好ましくは5%とし、上限は好ましくは35%、より好ましくは30%、最も好ましくは25%として含有することができる。
WO成分は、ガラスの安定性を向上し、屈折率を高め、高分散に寄与し、ガラスの転移点(Tg)を下げるのに効果的な任意成分であるが、その量が多すぎるとガラスの分相が増す傾向となり易い。従って、下限は好ましくは1%、より好ましくは3%、最も好ましくは5%とし、上限は好ましくは25%、より好ましくは22%、最も好ましくは20%として含有することができる。
RnO(RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す)成分は、ガラス転移点(Tg)を大幅に下げ、かつ、混合したガラス原料の溶融を促進する効果を有する任意成分である。しかし、その量が多すぎると耐失透性が急激に悪化し易くなる。従って、良好なガラス転移点(Tg)、又は耐失透性を維持するためには、含有量の上限を15%とすることが好ましく、12%とすることがより好ましく、8%とすることが最も好ましい。
RO(RはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す)成分はガラスの溶融性、耐失透性の向上及び化学的耐久性の向上に効果がある任意成分である。しかし、その量が多すぎるとガラスの安定性が急激に悪化し易くなる。従って、ガラスの安定性を維持し易くするためには、含有量の上限を20%とすることが好ましく、15%とすることがより好ましく、10%とすることが最も好ましい。
GeO成分はガラスの安定性と屈折率の向上に効果があり、さらに高分散に寄与する任意成分であり、Bの一部と置き換える形でガラス中に導入することがより好ましい。しかし、高価であるため、さらには、Tgを500〜700℃に維持し易くするためには、含有量の上限を20%とすることが好ましく、15%とすることがより好ましく、10%とすることが最も好ましい。
成分は、ガラス安定性を向上し、ガラスの転移点を下げるのに効果がある任意成分である。しかし、その量が多すぎるとガラスの分相が増す傾向となり易い。従って、含有量の上限を10%とすることが好ましく、5%とすることがより好ましく、3%とすることが最も好ましい。
Yb成分は、ガラスの屈折率を高め、高分散させるのに効果がある任意成分である。しかし、その量が多すぎるとガラスの耐失透性を悪化させる。従って、本発明における所望の光学定数を維持しつつ良好な耐失透性を維持し易くするために、その含有量の上限は20%とすることが好ましく、10%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。
Ta成分は、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を改善させるのには効果がある任意成分である。しかし、その量が多すぎるとガラスの分相が増す傾向となり易い。従って、本発明における所望の光学定数を維持しつつ良好な化学的耐久性を維持し易くするために、その含有量の上限を10%とすることが好ましく、5%とすることがより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
ZrO成分は、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を改善させるのには効果がある任意成分であるが、ガラスの安定性が低下し易くなるので、その量は多くても10%で、5%以下とすることがより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
TeO成分は、ガラス化範囲を大幅に広げ、しかも、ガラス転移点を低下させ、屈折率を高める効果がある任意成分である。しかし、その量が多すぎるとガラスの熱膨張係数を大きくする傾向がある。また、白金製の坩堝や、溶融ガラスと接する部分が白金で形成されている溶融槽でガラス原料を溶融する際、テルルと白金が合金化し易く、もし合金となった場合はその箇所の耐熱性が低下し、その箇所に穴が開き溶融ガラスが流出する事故がおこる危険性が憂慮される。従って、その含有量の上限を30%とすることが好ましく、20%とすることがより好ましく、15%とすることが最も好ましい。
Bi成分は、ガラスの安定性の向上、高屈折率、高分散化及びガラス転移点(Tg)を下げる効果がある任意成分である。しかし、その量が多すぎるとガラス安定性が損なわれる。従って、その含有量の上限を10%とすることが好ましく、8%とすることがより好ましく、5%とすることが最も好ましい。
Sb、及び/又はAs成分は、ガラス溶融の脱泡のために任意に添加することができるが、その量は5%までで十分である。特に、As成分は、ガラスを製造、加工、及び廃棄をする際に環境対策上の措置を講ずる必要があるため、含有させないことが好ましい。
尚、SiO、Ga、Gd、Y成分は含有されないことが好ましい。
SiO成分は、化学耐久性と粘性の向上に効果があるが、少量の添加でもガラスの安定性が低下し、ガラス転移点(Tg)が上がり易くなるので、添加する場合は、上限を4%とすることが好ましく、2%とすることがより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。ここでいう実質的に含有しないとは、不純物として混入される場合を除き、人為的に含有させないことを意味する。
また、Ga成分は、屈折率の向上に効果があるが、ガラスの安定性を著しく損ない易いため、実質的に含有しないことが好ましい。
また、Gd、Y成分は、ガラスの屈折率を高め、分散の調整に有効な成分である。しかし、ガラスの安定性を低下させ、ガラス転移点(Tg)を高くし易いので、添加する場合、上限として5%以下とすることが好ましく、3%とすることがより好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
<含有させるべきでない成分について>
次に本発明の光学ガラスにおいて含有させるべきでない成分について説明する。
鉛化合物は、精密プレス成形時に金型と融着し易い成分であるという問題並びにガラスの製造のみならず、研磨等のガラスの冷間加工からガラスの廃棄に至るまで、環境対策上の措置が必要となる。この様に環境負荷が大きい成分であるという問題があるため、本発明の光学ガラスに含有させないことが好ましい。
カドミウム及びトリウムは、共に、環境に有害な影響を与え、環境負荷の非常に大きい成分であるため、本発明の光学ガラスに含有させるべきではない。
さらに本発明の光学ガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Eu、Nd、Sm、Tb、Dy、Er等の着色成分は、含有しないことが好ましい。但し、ここでいう含有しないとは、不純物として混入される場合を除き、人為的に含有させないことを意味する。
<物性>
次に、本発明の光学ガラスの物性について説明する。
本発明の光学ガラスは、上記範囲の光学定数を必要とする用途に使用され、さらに加熱軟化させて精密プレス成形によってガラス成形品を得るためのガラスプリフォーム材としても使用される。従って、この時に使用する金型の損傷や劣化を抑制し、金型の高精度な成形面を長く維持し、かつ、低い温度での精密プレス成形を可能にするために、できるだけ低いガラス転移点(Tg)を有することが望まれている。そのため、上記特定範囲の組成を用いることにより、所望のガラス転移点(Tg)を実現させたものである。
本発明の光学ガラスのガラス転移点(Tg)は、700℃以下であるのが好ましい。さらには、上限として700℃、好ましくは660℃、最も好ましくは640℃と、下限として好ましくは480℃、より好ましくは510℃、最も好ましくは540℃であるのが好ましい。その理由はTgが低すぎると化学的耐久性が悪化し易く同時に耐失透性も低下し易く、その結果安定した生産を行うことが困難になり易い。また、Tgが高くなりすぎるとモールドプレス性が悪化し易くなるだけでなく溶融性が低下し溶け残り等が発生し易くなる。さらに溶け残り防止のために溶融温度を高くすると溶融容器からの白金溶け込み量が増し光線透過性が悪化してしまう傾向となり易い。
本発明の光学ガラスでは、モールドプレス成形(精密プレス成形)を行うにあたっては、モールドプレスの上限温度とガラス転移点の他にガラス屈伏点(Ts)とも相関性があり、ガラス屈伏点(Ts)の温度も低ければ低い程金型の表面酸化の進行が抑えられ、金型の寿命の観点からも好ましい。このため、ガラス屈伏点(Ts)は、好ましくは720℃以下、より好ましくは690℃以下、最も好ましくは670℃以下であるのがよい。ここで、「ガラス屈伏点(Ts)」とは、ガラスを昇温した時に、ガラスの伸びが止まり、次に収縮が始まる温度であり、本発明においては、熱膨張測定機で昇温速度8℃/minにて測定した。
上述のとおり、本発明の光学ガラスはプレス成形用のガラスプリフォーム材として使用することができ、あるいは溶融ガラスをダイレクトプレスすることも可能である。ガラスプリフォーム材として使用する場合、その製造方法及び熱間成形方法は特に限定されるものではなく、公知の製造方法及び成形方法を使用することができる。ガラスプリフォーム材の製造方法としては、例えば特開平8−319124に記載のガラスゴブの成形方法や特開平8−73229に記載の光学ガラスの製造方法及び製造装置のような溶融ガラスから直接ガラスプリフォーム材を製造することもでき、またストリップ材を冷間加工して製造してもよい。
尚、ガラスプリフォーム材の熱間成形方法を特に限定するものではないが、例えば特公昭62−41180に記載の光学素子の成形方法のような方法を使用することができる。また、本発明の光学ガラスからガラスプリフォーム材を作製し、ガラスプリフォーム材をプレスして光学素子を製造してもよいし、又はガラスプリフォーム材を経ることなく溶融、軟化した光学ガラスを直接プレスして光学素子を製造するダイレクトプレスによるものでもよい。尚、光学素子とは、例えば両凸、両凹、平凸、平凹、メニスカス等の各種レンズ、ミラー、プリズム、回折格子等として用いられる。
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、通常の光学ガラスを製造する方法であれば、特に限定されないが、例えば、以下の方法により製造することができる。
各出発原料(酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物塩等)を所定量秤量し、均一に混合する。混合した原料を石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入し、粗溶融の後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に投入し、溶解炉で850〜1250℃で1〜10時間熔解する。その後、撹拌、均質化した後、適当な温度に下げて金型等に鋳込み、ガラスを製造する。
次に、製造した板状のガラスを所定の大きさにカットし、略立方体の加工片を形成する。これを研磨装置に投入し、研磨することにより研磨ボールを製造する。具体的には、ガラスを略立方体に切断し、バレル加工を行い、略立方体のガラスの角を取る。その後、オスカー加工機に投入し、粗丸目加工、仕上げ丸目加工、研磨を実施することにより製造する。
本発明の光学ガラスは、典型的にはレンズ、プリズム、ミラー用途に使用される。また、本発明の光学素子製造においては、溶融状態のガラスを白金等の流出パイプの流出口から滴下させていわゆる球状のガラスプリフォームを作製することもできる。研磨ボール及びガラスプリフォームは精密プレス成形方法によって所望の形状の光学素子が製造される。
以下、本発明の実施例について述べるが、下記実施例はあくまで例示の目的であり、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜34>
本発明に係る光学ガラスの実施例(No.1〜No.34)の組成と共に、これらのガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、ガラス転移点(Tg)及びガラス屈伏点(Ts)を表1〜表4に示した。このうち、実施例(No.3〜No.11No.21、No.22、No.25、No.31、No.33)は本発明の参考例である。本発明の光学ガラスは、各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、フッ化物等の通常の光学ガラス用原料を使用して、各実施例の組成の割合となるように秤量し、混合して調合原料と成し、これを白金坩堝に投入し、組成による溶融性に応じて、1000〜1350℃で、3〜5時間溶融、清澄、撹拌して均質化した後、金型等に鋳込み徐冷することにより製造した。尚、表中、各成分の組成はモル%で表示するものとする。
屈折率(n)及びアッベ数(ν)については、ガラス転移点(Tg)付近で2時間保持した後、徐冷降温速度を−25℃/Hrとして得られたガラスを、JOGIS01−2003に基づき測定した。
ガラス転移点(Tg)及びガラス屈伏点(Ts)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS08−2003(光学ガラスの熱膨張の測定方法)に記載された方法により測定した(熱膨張測定機で昇温速度を8℃/minにして測定)。ただし、試料片として長さ50mm、直径4mmの試料を使用した。
<比較例1>
また、比較例1の光学ガラスの組成と共に、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、ガラス転移点(Tg)、及びガラス屈伏点(Ts)を測定し、結果を表4に示した。比較例1の光学ガラスは、実施例と同様に、各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、フッ化物等の通常の光学ガラス用原料を使用して、比較例1の組成の割合となるように秤量し、混合して調合原料と成し、これを白金坩堝に投入し、1380℃で、2時間溶融、清澄、撹拌して均質化した後、金型等に鋳込み徐冷することにより製造した。
尚、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、ガラス転移点(Tg)及びガラス屈伏点(Ts)について、実施例と同様の方法で測定した。
Figure 0005551364
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Figure 0005551364
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表1〜表4に見られるとおり、本発明の実施例の光学ガラス(No.1〜No.34)はすべて、上記特定範囲内の光学定数、すなわち、屈折率(nd)が1.78〜2.2、及びアッベ数(νd)が16以上40未満を有し、また、ガラス転移点(Tg)が700℃以下であり、ガラス屈伏点(Ts)が700℃以下であり、精密プレス成形に使用するガラスプリフォーム材、及び精密プレス成形に適していることが確認された。

Claims (5)

  1. 酸化物基準のモル%でBを25〜60%、TiO及び/又はNbの合計量を2〜45%、WOを1〜25%、Laを5〜35%、ZnOを1〜40%含有し、RnOの合計含有量が0〜2.5%であり(RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す)、屈折率(nd)が1.887〜2.2、アッベ数(νd)が24.432.8、ガラス転移点(Tg)が700℃以下である光学ガラス(但し、Gdを1モル%以上含有するものを除く。)
  2. 酸化物基準のモル%で、
    RO(RはBa、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す)
    0〜20%及び/又は
    GeO 0〜20%及び/又は
    0〜10%及び/又は
    Yb 0〜20%及び/又は
    Ta 0〜10%及び/又は
    ZrO 0〜10%及び/又は
    TeO 0〜30%及び/又は
    Bi 0〜10%及び/又は
    Sb及び/又はAsの合計量 0〜5%
    を含有する請求項1に記載の光学ガラス。
  3. SiO及びGaを含有しない請求項1又は2に記載の光学ガラス。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。
  5. 請求項4に記載の精密プレス成形用プリフォームを精密プレス成形してなる光学素子。
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