JP4408937B2 - ガラスの製造方法およびこのガラスから得られる精密プレス成形用プリフォームと光学素子 - Google Patents

ガラスの製造方法およびこのガラスから得られる精密プレス成形用プリフォームと光学素子 Download PDF

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本発明は、ガラスの製造方法、特にフツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸含有ガラスの製造方法、およびその方法で製造されたガラス、並びに精密プレス成形用プリフォームと光学素子およびそれらの製造方法に関する。
フツリン酸塩ガラスやリン酸塩ガラスなどのリン含有ガラスは、高屈折率高分散ガラス、低分散ガラスなどの光学ガラス、色感度補正用フィルタガラスなど広範な用途に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
光学ガラスなどの高品質が求められるガラスを作製するには、超高温状態にある熔融ガラスに不純物が溶け込まないよう、清澄、均質化を白金あるいは白金合金製の容器内で行い、白金あるいは白金合金製のノズルから流出して成形する方法が適している。
しかし、この方法においては、ガラスを製造する際、流出したガラスがノズル下端から外周面へと濡れ上がり、濡れ上がったガラスは高温状態で長く外気に曝されるため変質し、流出するガラスがこの変質したガラスを取り込むことによりガラスの品質が低下するという問題があった。同様の問題がホウ酸含有ガラスにもある。
特表平3−500162号公報
本発明は、このようなリン含有ガラスやホウ酸含有ガラスがもつ上述の濡れ上がり問題を解決し、高品質の光学ガラス、特にリン含有ガラス、ホウ酸含有ガラス、前記ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームおよび光学素子、ならびにそれぞれの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、白金または白金合金製の熔融ガラス流出ノズル周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入することにより、高品質のガラス、例えば、リン含有ガラスやホウ酸含有ガラスが得られ、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含むガラスの製造方法において
素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とするガラスの製造方法、
(2) 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラスであることを特徴とする上記(1)項に記載のガラスの製造方法、
(3) 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラスであることを特徴とする上記(1)項に記載のガラスの製造方法。
(4) 前記流出ノズルが白金または白金合金により作製されたものであり、前記ガラスが、ホウ酸含有ガラスであることを特徴とする上記(1)項に記載のガラスの製造方法、
前記ハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を前記流出ノズル周辺に導入することを特徴とする上記(1)項に記載のガラスの製造方法、
) 上記(1)〜()項のいずれかに記載の方法によりガラスを作製し、このガラスを加工して精密プレス成形用プリフォームを作製する精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
) 白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して熔融ガラス塊を得、熔融ガラス塊が冷却する過程で精密プレス成形用プリフォームに成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において
素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
) 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラスであることを特徴とする上記()項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
) 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラスであることを特徴とする上記()項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
10) 前記ガラスが、ホウ酸含有ガラスであることを特徴とする上記()項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
11前記ハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を前記流出ノズル周辺に導入することを特徴とする上記(7)項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
12) 上記(1)〜()項のいずれかに記載の方法によりガラスを作製し、このガラスを加工して光学素子を作製する光学素子の製造方法、
13) 上記()〜(11)項のいずれかに記載の方法により精密プレス成形用プリフォームを作製し、このプリフォームを加熱し、精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、高品質のガラス、例えば、フツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸含有ガラスの製造方法、前記方法により作製したガラスから精密プレス成形用プリフォームおよび光学素子を製造する方法を提供することができる。
本明細書においては、リン含有(カチオニック%で、P5+を、通常10%以上含有)ガラスの中で、フッ素含有量がアニオニック%で25%以上のガラスをフツリン酸塩ガラスと呼称し、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満のガラスをリン酸塩ガラスと呼称する。
以下の説明では、白金製流出ノズルと白金合金製流出ノズルを一括して白金流出ノズルということがある。また、金製流出ノズルと金合金製流出ノズルを一括して金流出ノズルということがある。
また、白金合金、金合金については、ガラスの製造分野において通常、使用するものを用いればよい。
フツリン酸塩ガラスやリン酸塩ガラスなどのリン含有ガラスは、白金流出ノズル外周面に濡れ上がりやすいという性質を有するが、本発明者は適量の塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を、白金流出ノズル外周面あるいは金流出ノズル外周面に導入することにより、濡れ上がり量が抑制され、高品質のフツリン酸塩ガラスおよびリン酸塩ガラスが得られることを見出した。ホウ酸含有ガラスも上記濡れ上がりにより品質が低下しやすいガラスであるが、ホウ酸含有ガラスについても前記気体の導入により、濡れ上がり量が抑制され、高品質のホウ酸含有ガラスが得られることも見出した。
ハロゲン種としては、塩素<臭素<ヨウ素の順に効果が大きい。フッ素ガスあるいはフッ化物気体はむしろ濡れを助長するので不適である。また、ガラスそのものにハロゲン元素を導入しても同様の効果を奏するが、ハロゲン元素の揮発による組成変動により、品質が不安定になるおそれがある。また、ガラス中に銅イオンなどの着色剤を導入している場合も発色が変化して使用しにくい。これに対し、ガラス流出雰囲気のみに、ハロゲンガスやハロゲン化物の気体を導入することは、ガラスの特性に変化を与えることなしに濡れ上がりを防止することができる。
ハロゲンガスやハロゲン化物の気体を導入する方法としては、塩素ガスボンベを使用して塩素ガスを導入する方法、液化臭素から臭素蒸気を導入する方法、ヨウ素結晶からヨウ素蒸気を導入する方法、ジヨードメタンなどの揮発性化合物を導入する方法などを用いることができる。
これらの方法の中で、ヨウ素は、常温常圧で固体であり、昇華性を有し、蒸気の発生が容易であるため使用しやすい上、毒性が比較的低く、濡れの抑制効果が最も大きいことから、特に好適である。
本発明全般において、白金流出ノズル周辺もしくは金流出ノズル周辺の雰囲気中の前記ハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体濃度、あるいは、白金流出ノズル周辺もしくは金流出ノズル周辺に導入される、ガス中の前記ハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体濃度としては、ハロゲン元素の種類にもよるが、濡れ上がり抑制効果の点から、ハロゲン元素として、通常10容量ppm以上、好ましくは10〜1000容量ppm、より好ましくは10〜500容量ppm、さらに好ましくは10〜200容量ppmである。
本発明のガラスの製造方法は、ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含むガラスの製造方法において、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とする。すなわち、本発明は、ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含む、ガラスの製造方法であって、前記流出ノズル周辺に、前述したように、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入する。
本発明は、製造対象のガラスによって次の代表的な3つの態様に分類される。
第1の態様は、前記ガラスがフッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラスであることを特徴とする製造方法であり、第2の態様は、前記ガラスがフッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラスであることを特徴とする製造方法であり、第3の態様は、前記流出ノズルが白金または白金合金で作製されたものであり、前記ガラスがホウ酸含有ガラスであることを特徴とする製造方法である。
すなわち、 第1の態様は、ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含むガラスの製造方法であって、前記ガラスがフッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラスであり、前記流出ノズル周辺に、前述したように、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入することを特徴とするガラスの製造方法である。
上記流出ノズルの材料の中で、白金、白金合金のほうが、金、金合金よりも耐熱性に優れているので、ノズルの耐久性を勘案すると白金または白金合金製の流出ノズルを使用することが好ましい。
本発明はまた、前記方法で製造されたフツリン酸塩ガラス(以下、第1のガラスと称することがある。)をも提供する。
[フツリン酸塩ガラス]
このフツリン酸塩ガラスは、Fをアニオニック%で25%以上含むと共に、通常P5+を、カチオニック%で10%以上含むものであって、低分散ガラスを実現するガラスとして好適なものである。このガラスは主要成分として融液状態で極めて高い揮発性を示すフッ素を含む。そのため、白金ノズル外周面に濡れ上がったガラスからの揮発が著しく、濡れ上がりによるガラスの品質低下も大きい。したがって、本発明をフツリン酸塩ガラスに適用することにより得られる効果は非常に大きい。
当該フツリン酸塩ガラスとしては、例えばカチオニック%表示で、P5+ 10〜45%、Al3+ 5〜35%、Mg2+ 0〜20%、Ca2+ 0〜25%、Sr2+ 0〜30%、Ba2+ 0〜33%、Li 1〜30%、Na 0〜10%、K 0〜10%、Y3+ 0〜5%、B3+ 0〜15%、を含有するとともに、FとO2−の合計量に対するFの含有量のモル比F/(F+O2−)が0.25〜0.85であるガラスを挙げることができる。
当該フツリン酸塩ガラスにおける好ましい光学恒数は、屈折率(nd)が1.40〜1.58、アッベ数(νd)が67〜90である。
前記カチオニック%表示は、各カチオン成分の割合を、モル比をベースにしたものであり、アニオニック%表示は、各アニオン成分の割合を、モル比をベースにしたものである。
なお、以下、ことわりのない限り、カチオンの%はカチオニック%を示し、アニオンの%はアニオニック%を示す。
5+はガラスのネットワークフォーマーとして重要なカチオン成分であり、10%未満ではガラスの安定性が低下し、45%超ではP5+は酸化物原料で導入する必要があるため酸素比率が大きくなり目標とする光学特性を満たさない。したがって、その量を、通常10〜45%とする。好ましい範囲は10〜40%である。
Al3+はフツリン酸塩ガラスの安定性を向上させる成分であり、5%未満では安定性が低下し、また35%超ではガラス転移温度(Tg)および液相温度(LT)が大きく上昇するため、成形温度が上昇し成形時の表面揮発による脈理が強く生じるため均質なガラス成形体、特にプレス成形用プリフォームができなくなる。したがって、その量を、通常5〜35%とする。好ましい範囲は5〜30%である。
2価カチオン成分(R2+)であるMg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+の導入は安定性の向上に寄与するが、それぞれを単独で導入するよりも2種以上、より好ましくはCa2+、Sr2+およびBa2+のうち2種以上導入する。2価カチオン成分(R2+)の導入効果をより高める上から、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量を1%以上とすることが好ましい。またそれぞれの上限値を超えて導入すると安定性は急激に低下する。Ca2+、Sr2+は比較的多量に導入できるがMg2+、Ba2+は多量の導入は特に安定性を低下させる。しかしBa2+は低分散を保ちつつ高屈折率を実現できる成分であるため安定性を損なわない範囲で多く導入するのが好ましい。したがって、Mg2+の量を、通常0〜20%、好ましくは0〜15%、より好ましくは1〜15%とする。また、Ca2+の量を、通常0〜25%、好ましくは0〜20%、より好ましくは1〜20%とし、Sr2+の量を、通常0〜30%、好ましくは0〜25%、より好ましくは1〜25%とし、Ba2+の量を、通常0〜33%、好ましくは0〜30%、より好ましくは1〜30%、さらに好ましくは4〜30%とする。
Liは安定性を損なわずにガラス転移温度(Tg)、熔融温度を下げる働きをするが、30%超ではガラスの耐久性を損ない同時に加工性も低下する。したがって、その量を、通常1〜30%とする。好ましい範囲は1〜25%、より好ましい範囲は5〜25%である。
Na、KはそれぞれLiと同様にガラス転移温度(Tg)を低下させる効果があるが同時に熱膨張率をLiに比べてより大きくする傾向がある。またNaF、KFは水に対する熔解度がLiFに比べて非常に大きい事から耐水性の悪化ももたらすため、Na、Kの量をそれぞれ、通常0〜10%とする。Na、Kともに好ましい範囲はそれぞれ0〜5%、0〜5%であり、より好ましくは、それぞれ0〜3%、0〜3%である。
3+はガラスの安定性、耐久性を向上させる効果があるが、5%超では安定性が逆に悪化し、ガラス転移温度(Tg)も大きく上昇するため、その量を、通常0〜5%とする。好ましい範囲は0〜3%である。
3+はBFとして熔解中に揮発しやすく、脈理の原因となるため、その量を、通常0〜15%とするが、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜5%である。
なお、高品質な光学ガラスを安定して製造する上から、P5+、Al3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、LiおよびY3+の合計量をカチオニック%で80%超とすることが好ましく、90%超とすることがより好ましい。
上記ガラスは、上記したカチオン成分以外にTi、Zr、Zn、La、Gdなどのランタノイドなどをカチオン成分として本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
アニオン成分の割合は、所望の光学特性を実現しつつ、優れた安定性を有する光学ガラスを得るために、F-とO2-の合計量に対するF-の含有量のモル比F-/(F-+O2-)を、通常0.25〜0.80、好ましくは0.3〜0.8とする。
第1のガラスは、着色剤を添加する場合を除いて、可視光域において高い透過率を示す。第1のガラスは、両面が平坦かつ互いに平行な厚さ10mmの試料に、前記両面に対して垂直方向から光を入射したときの波長400nm〜2000nmにおける透過率(試料表面における反射損失を除く)が、通常90%以上、好ましくは95%以上の光透過率特性を示す。
第1のガラスはリン含有ガラスの中でも比較的ガラス転移温度が低い。そのため、精密プレス成形用のガラスとして使用することができるが、精密プレス成形温度が高温側に変動するとガラスが発泡したり、表面にくもりが生じ、低温側に変動するとガラスが割れるなどして生産性が低下する。そこで、ガラス転移温度をさらに低下させることにより、精密プレス成形温度の適正範囲を広くでき、精密プレス成形の生産性を向上することができる。このような観点から、第1のガラスとしてはガラス転移温度(Tg)が470℃以下のものが好ましく、430℃以下のものがより好ましい。このような低転移温度のガラスを実現するには、カチオン成分としてLiを導入することが好ましく、その量を5〜30%とすることがより好ましい。
第1のガラスにおいて、アルカリ金属イオンのうちLiを積極的に含有させたガラスは、熱膨張率が比較的小さく、また比較的優れた耐水性を示す。したがって、ガラスを研磨してプレス成形用プリフォームに加工したり、光学素子に加工することによって、ガラス表面を滑らかで高品質に仕上げることもできる。
また、5%以上のLiを含む第1のガラスによれば、Liを含まない場合と同等の光学恒数を有し、熔解温度を50℃程度低下することができるので、熔解時の容器からの白金溶け込みによるガラスの着色、泡の混入、脈理といった不具合もよりいっそう低減、解消することができる。
次に、本発明の第2の態様は、ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含む、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラスを製造するにあたり、前記流出ノズル周辺に、前述したように、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入することを特徴とする。
本発明はまた、前記方法で製造されたリン酸塩ガラス(以下、第2のガラスと称することがある。)をも提供する。
なお、リン酸塩ガラスの熔解温度はフツリン酸塩ガラスの熔解温度よりも高いので、流出ノズルの材料としては耐熱性に優れた白金または白金合金が好ましい。
[リン酸塩ガラス]
このリン酸塩ガラスには、以下に示す第2−aのガラスと第2−bのガラスがある。
第2−aのリン酸塩ガラスは特に低分散ガラスとして好適なものであり、アッベ数(νd)が60〜70の範囲を実現するガラスとして特に好ましい。
当該リン酸塩ガラスは、F-の含有量がアニオニック%で25%未満であって、通常P5+を、カチオニック%で20%以上含むものであり、例えばカチオニック%表示で、PO2.5 20〜50%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜15%、BaO 0〜25%、ZnO 0〜15%、LiO0.5 0〜25%、NaO0.5 0〜10%、KO0.5 0〜15%、BO1.5 0〜40%、AlO1.5 0〜10%、GdO1.5 0〜10%、SbO1.5 0〜1%を含むガラスを挙げることができる。
上記組成のガラスは、屈折率(nd)が1.55〜1.65のガラスを実現するガラスとして好適である。
上記組成において、PO2.5は、ガラスの網目構造の形成物であり、ガラスに製造可能な安定性を持たせるための必須成分である。しかし、PO2.5の含有量は50%を超えると、ガラスの転移温度や屈伏点温度の上昇、屈折率や耐候性の悪化を招くのに対し、20%未満では、ガラスの失透傾向が強くなりガラスが不安定となるので、PO2.5の含有量は、通常20〜50%の範囲とする。好ましくは25〜45%の範囲である。
MgOはガラスの耐候性を高める働きをし、少量のMgOの導入でガラスの転移温度、屈伏点温度、液相温度を低下させる効果もある。しかし、多量に導入すると、ガラスの失透安定性が著しく悪化し、液相温度も逆に高くなる恐れがある。従って、MgO導入量を、通常0〜20%とする。好ましくは5〜25%の範囲である。
CaOはガラスの安定性を改善し、液相温度を低下させる働きをするが、過剰量の導入によりガラスの耐久性が低下し、屈折率も低下するため、その導入量を、通常0〜20%、好ましくは0〜15%とする。
SrOもガラスの安定性を改善し、液相温度を低下させる働きをするが、過剰量の導入によりガラスの耐久性が低下し、屈折率も低下するため、その導入量を、通常0〜15%、好ましくは0〜10%とする。
BaOはガラスの屈折率を高め、失透安定性を向上させ、液相温度を低下させる成分である。しかし、過剰に導入するとガラスが不安定となるばかりでなく、液相温度、転移温度、屈伏点温度も高くなるので、その導入量は、通常0〜25%の範囲とする。好ましくは0〜20%の範囲である。
ZnOはガラス転移温度を大きく低下させ、安定性を高める働きをする。しかし、過剰に導入すると、アッベ数が急激に小さくなり、低分散ガラスを得にくくなる。そのため、その導入量は、通常0〜15%の範囲とする。好ましくは0〜10%の範囲である。
LiO0.5はガラスの転移温度および屈伏点温度を低め、光学素子をプレス成形(精密プレス成形を含む)する際、プレス成形温度を低下させるために用いられる成分である。少量のLiO0.5を導入すると、ガラスの転移温度は大幅に低下する。但し、多く導入する場合、ガラスの耐候性と安定性が悪化し、屈折率も急激に低下してしまう恐れがあるため、その導入量は、通常0〜25%とする。好ましくは5〜20%の範囲である。
NaO0.5、およびKO0.5などのアルカリ金属酸化物は、いずれもガラスの耐失透性を良くし、屈伏点温度や液相温度を低下させ、ガラスの高温熔融性をよくするために導入される成分である。適当量のNaO0.5およびKO0.5の導入はガラスの安定性を改善し、液相温度や転移温度の低下につながるが、NaO0.5を10%超、KO0.5を15%超導入すると、ガラスの安定性が悪くなるばかりでなく、耐候性も著しく悪化する。したがって、NaO0.5の導入量は、通常0〜10%とし、好ましくは0〜5%とする。また、KO0.5の導入量は、通常0〜15%とし、好ましいは0〜10%とする。
BO1.5は、ガラスの熔融性の向上やガラスの均質化に非常に有効な成分であると同時に、少量のBO1.5の導入でガラス内部にあるOHの結合性を変え、プレス時にガラスを発泡させない非常に有効な成分である。しかし、BO1.5を過剰に導入すると、ガラスの耐候性が悪くなり、安定性も悪化するため、その導入量は、通常0〜40%の範囲とする。好ましくは5〜35%の範囲である。
AlO1.5は、ガラスの耐候性を向上させるため効果のある成分として用いられる。しかし、過剰に導入すると、ガラス転移温度が高くなり、安定性も悪化し、高温熔解性も悪くなる一方、屈折率も低下してしまう恐れがある。そこで、その導入量は、通常0〜10%とする。好ましくは0〜5%である。
GdO1.5はガラスの耐候性や屈折率を大幅に改善する働きをするが、過剰の導入により、アッベ数が減少し、ガラスの安定性も悪化してしまう恐れがある。そこで、その導入量を、通常0〜10%とする。好ましくは0〜5%である。
SbO1.5はガラスの清澄剤として有効である。しかし、1%を超えて添加すると、ガラスが着色したり、精密プレス成形時にガラスが発泡しやすくなるので、その導入量を、通常0〜1%とする。
なお、SiO、YO1.5、ZrO、TaO2.5、BiO1.5、TeO、NbO2.5、WO、TiO、LaO1.5などの成分も当該第2のガラスの特徴を損なわない程度であれば0〜2%までの導入が可能ではある。但し、環境への影響を考えるとTeO、PbO、AsO1.5を使用しないことが好ましい。
上記ガラスを精密プレス成形に用いる場合は、転移温度(Tg)が550℃以下であることが好ましく、530℃以下であることがより好ましい。
次に、第2−bのリン酸塩ガラスは、F-の含有量がアニオニック%で25%未満であって、通常P5+をカチオニック%で15%以上含み、特に高屈折率高分散ガラスとして好適なものである。
この第2−bのガラスは、高分散特性を実現するのに適したリン酸塩ガラスであり、アッベ数(νd)が35以下、好ましくは20〜30を得るのに適している。当該第3のガラスとしては、カチオニック%表示で、PO2.5 15〜40%、NbO2.5 3〜30%、TiO 0〜15%、WO 0〜30%、BiO1.5 0〜15%、BO1.5 0〜25%、BaO 0〜20%、ZnO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜20%、LiO0.5 5〜30%、NaO0.5 0〜30%、KO0.5 0〜15%、AlO1.5 0〜10%、SiO 0〜10%、LaO1.5 0〜10%、GdO1.5 0〜10%、YbO1.5 0〜10%、ZrO 0〜10%、TaO2.5 0〜10%を含むガラスを例示することができる。
PO2.5は、ガラスの網目構造の形成物であり、ガラスに製造可能な安定性を持たせるための必須成分である。しかし、PO2.5の含有量が40%を超えると、ガラスの転移温度が上昇し、耐候性も悪化する傾向がある。また15モル%未満では、ガラスの失透傾向が強くなりガラスが不安定となるので、PO2.5の含有量を15〜40%の範囲とすることが好ましく、20〜35モル%の範囲とするのがより好ましい。
NbO2.5は、上記のように高屈折率・高分散などの特性を持たせるために欠かせない成分である。しかし、その導入量が30%を超えると、ガラス転移温度や屈伏点が高くなり、安定性も悪化、高温熔解性も悪くなり、精密プレス時に発泡や着色しやすくなるという傾向がある。これに対し、その導入量が3%未満では、ガラスの耐久性が悪化し、所要の高屈折率を得にくくなるため、その導入量を3〜30%の範囲にするのが好ましく、3〜25%の範囲にするのがより好ましい。
LiO0.5は、上記のようにガラス転移温度を下げるのに効果的な成分であり、他のアルカリに比べ、屈折率を低下させにくく、耐久性を悪化させない。しかし、30%を超えると、ガラスの安定性が著しく悪化し、耐久性も悪くなるため、LiO0.5の導入量を5〜30%の範囲にするのが好ましい。より好ましくは5〜25%の範囲である。
TiOは、高屈折率高分散性を付与し、失透安定性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が15%を超えると、ガラスの失透安定性や透過率が急激に悪化し、屈伏点や液相温度も急上昇し、精密プレス成形時にガラスが着色しやすくなる。したがって、その導入量を0〜15%とするのが好ましく、0〜5%にするのがより好ましい。
WOは、高屈折率・高分散特性と低温軟化性を付与する上で効果的な成分である。WOはアルカリ金属酸化物と同様にガラスの転移温度や屈伏点を下げる働きや、屈折率を上げる働きをする。そして、ガラスとプレス成形型との濡れ性を抑制する効果があるため、精密プレス成形の際にガラスの離型性が非常に良くなるという効果を奏する。しかし、WOの過剰導入、例えば30%を超えて導入すると、ガラスが着色しやすくなる一方、ガラスの高温粘性も低くなるので、熱間成形が難しくなる。したがって、その含有量を0〜30%とすることが好ましく、0〜25%の範囲とすることがより好ましい。
BiO1.5は、高屈折率・高分散性を付与する成分であり、ガラスの生成領域を大幅に拡大し、安定化させる効果のある成分であり、また、ガラスの耐候性を高める成分である。したがって、BiO1.5を導入することにより、PO2.5の含有量の少ないガラスでもガラス化を可能にする。しかし、その導入量が15%超えると、ガラスは逆に失透しやすくなると同時に着色しやすくなる恐れがあるため、BiO1.5の含有量は0〜15%とすることが好ましく、0〜10%とすることがより好ましい。
BO1.5は、ガラスの熔融性の向上やガラスの均質化に有効な成分であると同時に、少量の導入でガラス内部にあるOHの結合性を変え、精密プレス成形時におけるガラスの発泡を抑制する効果が得られる。しかし、BO1.5を25%より多く導入すると、ガラスの耐候性が悪化したり、ガラスが不安定になるため、その導入量を0〜25%の範囲にすることが好ましい。より好ましい範囲は0〜20%の範囲である。
BaOは、高屈折率を付与し、失透安定性を向上させ、液相温度を低下させる効果のある成分である。WO3を導入する場合、特に多量のWOを導入する場合、BaOの導入でガラスの着色を抑え、失透安定性を高める効果が大きく、PO2.5含有量の少ない場合、ガラスの耐候性を高める効果もある。しかし、BaOの導入量が20%を超えると、ガラスが不安定となるばかりでなく、転移温度も屈伏点も高くなるので、BaOの導入量を0〜20%にするのが好ましく、0〜15%にするのがより好ましい。
ZnOはガラスの屈折率や分散を高めるために導入し得る成分で、少量のZnOの導入でガラス転移温度や屈伏点、液相温度を低下させる効果もある。しかし、過剰に導入すると、ガラスの失透安定性が著しく悪化し、液相温度も逆に高くなる恐れがある。したがって、ZnO導入量を0〜10%にすることが好ましく、0〜5%の範囲がより好ましい。
MgO、CaO、SrOはガラスの安定性や耐候性を調整するために導入し得る成分であるが、あまりにも多く導入すると、ガラスが非常に不安定となるので、導入量をそれぞれ0〜10%にするのが好ましく、0〜5%がより好ましい。
NaO0.5は、ガラスの耐失透性を向上させるとともに、ガラス転移温度、液相温度を低下させ、ガラスの熔融性を改善するために導入し得る成分である。しかし、NaO0.5が過剰だとガラスの安定性が悪くなるばかりでなく、ガラスの耐候性や耐久性が悪くなる恐れがあるため、NaO0.5の導入量を0〜30%にするのが好ましく、0〜25%にするのがさらに好ましい。
KO0.5は、ガラスの耐失透性を向上させるとともに、ガラス転移温度、液相温度を低下させ、ガラスの熔融性を改善するために導入し得る成分である。しかし、KO0.5が過剰だとガラスの安定性が悪くなるばかりでなく、ガラスの耐候性や耐久性が悪くなる恐れがあるため、KO0.5の導入量を0〜15%にするのが好ましく、0〜10%にするのがさらに好ましい。
AlO1.5、SiO、LaO1.5、GdO1.5、YbO1.5、ZrO、TaO2.5は、ガラスの安定性や光学恒数を調整するときに導入し得る成分である。AlO1.5の含有量は0〜10%、SiOの含有量は0〜10%、LaO1.5の含有量は0〜10%、GdO1.5の含有量は0〜10%、YbO1.5の含有量は0〜10%、ZrOの含有量は0〜10%、TaO2.5の含有量は0〜10%の範囲とするのが好ましい。
ただし、精密プレス成形用に使用する場合は、上記成分のすべてはガラス転移温度を高めるので、精密プレス成形用ガラスにおいてはAlO1.5の含有量を0〜5%、SiOの含有量を0〜5%、LaO1.5の含有量を0〜1.5%、GdO1.5の含有量を0〜5%、YbO1.5の含有量を0〜5%、ZrOの含有量を0〜5%、TaO2.5の含有量を0〜5%の範囲とすることが好ましい。
SbO1.5はガラスの清澄剤として有効であるが、1%超えて添加すると、精密プレス成形時にガラスが発泡しやすくなるので、その導入量は0〜1%とするのがよい。
TeOは毒性があるため、環境影響上から使用しないことが望ましく、同様にPbO、AsO1.5、CdO、TlO0.5や放射性物質、Cr、Hgなどの化合物も使用しないことが望ましい。また、AgO0.5も特別、必要もないので導入しないことが好ましい。
当該第2−bのガラスにおいて好ましい光学恒数の範囲は、屈折率(nd)が1.65以上であり、屈折率(nd)が1.75以上の範囲がより好ましく、1.8以上がさらに好ましい。屈折率(nd)の上限は特に限定しないが、2.1を目安にすればよい。一方、アッベ数(νd)については、35以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。アッベ数(νd)の下限は特に限定しないが、15を目安にすればよい。
当該第2−bのガラスを精密プレス成形用として用いる場合は、ガラス転移温度(Tg)が600℃以下のものが好ましい。
第2−aのガラス、第2−bのガラスとも、揮発性のあるアルカリ金属成分を多く含む場合、本発明の適用によって、より顕著な効果を得ることができる。このようなガラスとしては、精密プレス成形用のガラス、あるいはアルカリ金属酸化物を合計で5〜40モル%程度含むガラスがある。
前記第1および第2のガラスの熔融では、清澄、好ましくは熔解、均質化の各工程を窒素のような不活性雰囲気中で行うことが好ましく、特に密閉した容器内に乾燥した不活性ガスを流しながら行うことが望ましい。
次に、本発明のフツリン酸塩ガラスおよびリン酸塩ガラスの具体的な製造方法について説明する。
[フツリン酸塩ガラスの具体的な製造方法]
リン酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物などの原料を適宜用いて、所望の組成になるよう原料を秤量し、耐熱坩堝中にて900〜1200℃程度にて熔解する。水酸化物や水和物などはフッ素の揮発を促進するため使用しない方が良い。また熔解時には、耐熱蓋を用いることが望ましい。熔融状態のガラスを撹拌、清澄を行った後、白金または白金合金製の流出ノズルから熔融ガラスを流出して、ガラスを成形する。成形されたガラスは予めガラスの転移点付近に加熱されたアニール炉に移し、室温まで冷却することにより、ガラス成形体を製造する。なお、前記熔融ガラスの流出は、前述したように、白金流出ノズル周辺もしくは金流出ノズル周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入しながら行う。
[リン酸塩ガラスの具体的な製造方法]
リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酸化物、場合によりフッ化物などの原料を適宜用いて、所望の組成になるように原料を秤量し、ガラス原料を調合する。以下、前記フツリン酸塩ガラスの製造方法と同様にして、ガラスを成形してガラス成形体を製造する。
本発明の第3の態様は、ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含むガラスの製造方法において、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とする。すなわち、前記第3の態様は、ガラス原料を熔融し、白金または白金合金製の流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含むガラスの製造方法であって、前記ガラスがホウ酸含有ガラスであり、前記流出ノズル周辺に、前述したように、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入するガラスの製造方法である。
ガラスの熔解温度は、フツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸含有ガラスの順に高くなる傾向がある。そのため、ホウ酸含有ガラスを製造する本態様では、耐熱性の高い白金または白金合金製の流出ノズルを使用する。
本発明はまた、前記方法で製造されたホウ酸含有ガラス(以下、第3のガラスと称することがある。)をも提供する。
[ホウ酸含有ガラス]
本発明におけるホウ酸含有ガラスの典型的なものは、B23を5〜70モル%含むガラスである。ホウ酸含有ガラスの屈折率を高めるため、さらにLa23を5〜30モル%含むガラスも実用的である。さらに、光学特性を調整したり、ガラス転移温度を低下させて加熱、軟化により成形する際の加熱温度を低下させたりするために、さらにZnOを1〜50モル%含むガラスも実用的である。このようなB23−La23−ZnO含有ガラスの例として以下のガラスを示すことができる。
モル%表示において、ガラス成分として、
23 5〜70%、
SiO2 0〜50%、
ZnO 1〜50%、
La23 5〜30%、
Gd23 0〜22%、
23 0〜10%、
Yb23 0〜10%、
Li2O 0〜20%、
Na2O 0〜10%、
2O 0〜10%、
MgO 0〜10%、
CaO 0〜10%、
SrO 0〜10%、
BaO 0〜10%、
ZrO2 0〜15%、
Ta25 0〜20%、
WO3 0〜20%、
Nb25 0〜15%、
TiO2 0〜40%、
Bi23 0〜10%、
GeO2 0〜10%、
Ga23 0〜10%、
Al23 0〜10%、
を含むガラス。
上記ガラスについて、以下に説明する。尚、以下、特記しない限り各成分の量はモ
ル%にて表示するものとする。
23はガラス網目を形成する酸化物の役割を果たす。La23などの高屈折率成分を多く導入する場合、ガラスの形成のためにB23を5%以上導入して主なネットワーク構成成分とし、失透に対する十分な安定性を付与するとともに、ガラスの熔融性を維持する必要があるが、70%を超えて導入すると、ガラスの屈折率が低下し、高屈折率ガラスを得るという目的に適さなくなる。したがって、B23の導入量は5〜70%、好ましくは10〜65%、より好ましくは10〜60%、更に好ましくは15〜60%である。
SiO2は、La23などの希土類酸化物成分を多量に含有するガラスに対して、ガラスの液相温度を低下させ、高温粘性を向上させ、さらにガラスの安定性を大きく向上させるが、過剰の導入により、ガラスの屈折率が下がることに加え、ガラス転移温度が高くなり精密プレス成形が困難になる。そのため、SiO2の導入量は0〜50%、好ましくは0〜40%、より好ましくは0〜30%、更に好ましくは0〜25%である。
ZnOは、ガラスの熔融温度や液相温度および転移温度を低下させ、屈折率の調整にも欠かせない。その含有量が1%未満だと上記効果が弱く、50%を超えて導入すると、分散が大きくなり、失透に対する安定性も悪化し、化学的耐久性も低下するので、その導入量は1〜50%の範囲とし、好ましい範囲は3〜45%、より好ましい範囲は5〜40%、更に好ましい範囲は10〜35%である。
La23は、ガラスの失透に対する安定性を低下させずに、または分散を高めずに、屈折率を高くし、化学的耐久性を向上させる。しかし、5%未満では十分な効果が得られず、30%を超えると失透に対する安定性が著しく悪化するため、その導入量は5〜30%、好ましくは5〜25%、より好ましくは5〜22%、更に好ましくは5〜20%とする。
Gd23は、La23と同様、ガラスの失透に対する安定性や低分散性を悪化させずにガラスの屈折率や化学的耐久性を向上させる成分である。Gd23は、22%を超えて導入すると失透に対する安定性が悪化し、ガラス転移温度が上昇して精密プレス成形性が悪化する傾向があるため、その導入量は0〜22%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜18%、更に好ましくは0〜15%とする。
23、Yb23は、高屈折率・低分散なガラスを実現する任意成分であり、少量導入する場合、ガラスの安定性を高め、化学的耐久性を向上させるが、過剰の導入によりガラスの失透に対する安定性を大きく損ない、ガラス転移温度や屈伏点温度を上昇させる。そのため、Y23の含有量は0〜10%とし、Yb23の含有量は0〜10%とする。
Li2Oはガラス転移温度を低下させる効果が大きいが、過剰導入により屈折率が低下するとともに、ガラス安定性も低下する。したがって、Li2Oの量を0〜20%、好ましくは0〜15%、より好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜8%とする。なお、低温軟化性の付与を優先させる場合はLi2Oの量を0.1%以上とする。
Na2O、K2Oは熔融性を改善させる働きがあるが、過剰導入により屈折率やガラス安定性が低下するため、それぞれの導入量を0〜10%とする。
MgO、CaO、SrOも熔融性を改善させる働きがあるが、過剰導入により屈折率やガラス安定性が低下するため、それぞれの導入量を0〜10%とする。
BaOは屈折率を高める働きをするが過剰導入により、ガラス安定性が低下するため、その導入量を0〜10%とする。
ZrO2は、高屈折率なガラスを実現し、かつガラスの低分散性を維持するために使われる必須成分である。ZrO2を導入することにより、ガラスの屈折率を低下させずに、高温粘性や失透に対する安定性を改善する効果が得られるが、15%を超えて導入すると液相温度が急激に上昇し、失透に対する安定性も悪化するので、その導入量は0〜15%、好ましくは0〜12%、より好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜8%とする。
Ta25は、高屈折率・低分散なガラスを実現する任意成分である。Ta25を導入することにより、ガラスの屈折率を低下させずに、高温粘性や失透に対する安定性を改善する効果があるが、20%を超えて導入すると液相温度が急激に上昇し、分散が増大するので、その導入量は0〜20%、好ましくは0〜17%、より好ましくは0〜14%、更に好ましくは0〜10%とする。
WO3は、ガラスの安定性、熔融性を改善し、屈折率を向上させるために適宜導入される成分であるが、その導入量が20%を超えると、分散が大きくなり、必要な分散特性が得られなくなり、ガラスの着色も増大するため、その導入量は0〜20%、好ましくは0〜18%、より好ましくは0〜16%、更に好ましくは0〜14%とする。
Nb25は、ガラスの安定性を維持しつつ屈折率を高める任意成分であるが、過剰導入により分散が増大するため、その導入量は0〜15%、好ましくは0〜13%、より好ましくは0〜10%、更に好ましくは0〜8%とする。
TiO2は、ガラスの屈折率の向上のため導入可能な任意成分であるが、過剰の導入によって分散が大きくなり、目的とする光学恒数を得ることができなくなったり、ガラスの着色が増大するため、その導入量は0〜40%。好ましくは0〜35%、より好ましくは0〜30%、更に好ましくは0〜25%とする。
Bi23は、ガラスの屈折率を高め、ガラスの安定性を向上する働きをする任意成分であるが、過剰導入によりガラスの安定性が低下し、液相温度が上昇する。そのため、その導入量は0〜10%とする。
GeO2は、ガラスの屈折率を高めるとともに、ガラスの安定性を向上させる働きをする任意成分であり、その導入量は0〜10%とし、0〜8%とするのが好ましい。ただし、他の成分に比べて桁違いに高価であるため導入しないことがより好ましい。
Ga23も、ガラスの屈折率を高めるとともに、ガラスの安定性を向上させる働きをする任意成分であり、その導入量は0〜10%とし、0〜8%とするのが好ましい。ただし、他の成分に比べて桁違いに高価であるため導入しないことがより好ましい。
Al23は、ガラスの高温粘性を高めるとともに液相温度を低下させ、ガラスの成形性を向上する働きをし、化学的耐久性を向上させる働きもする任意成分である。しかし過剰導入により屈折率が低下し、失透に対する安定性も低下するので、その導入量は0〜10%とする。
この他、Sb23が脱泡剤として任意に添加されるが、全ガラス成分の合計含有量に対してSb23の添加量が1重量%を超えると、精密プレス成形時にプレス成形型の成形面が損傷を受けるおそれが生じるため、Sb23は全ガラス成分の合計含有量に対して0〜1重量%添加することが好ましく、0〜0.5重量%添加することがより好ましく、0〜0.1重量%添加することがさらに好ましい。
一方、ガラス成分として導入しないことが好ましいものとして、PbOが挙げられる。PbOは有害であるとともに、PbOを含むガラスからなるプリフォームを非酸化性雰囲気中で精密プレス成形すると、成形体の表面に鉛が析出して光学素子としての透明性が損なわれたり、析出した金属鉛がプレス成形型に付着するといった問題が生じる。
Lu23は、0〜3%と少量であれば導入することができる。しかし、一般に光学ガラスの成分としては、他の成分に比べて使用頻度が少なく、また、希少価値が高く光学ガラス原料としては高価であるため、コスト面から導入しないことが好ましい。
カドミウム、テルルなどの環境上問題となる元素、トリウムなどの放射性元素、ヒ素などの有毒な元素も導入しないことが望ましい。また、ガラス熔融時の揮発などの問題からフッ素も導入しないことが望ましい。
上記範囲の組成を有するガラスは、アッベ数νdが35以上かつ屈折率ndが1.70以上の光学特性、または、アッベ数νdが35未満であって、屈折率ndの値が下記(1)式を満たす光学特性を実現するためのガラスとして好適である。
nd≧2.4−0.02×νd …… (1)
こうした範囲の所望の光学特性を得るため、上記説明にしたがって、上記組成範囲内で各成分の導入量を定めればよい。
次に、本発明のホウ酸含有ガラスの具体的な製造方法について説明する。
[ホウ酸含有ガラスの具体的な製造方法]
炭酸塩、硝酸塩、酸化物などの原料を適宜用いて、所望の組成になるよう原料を秤量し、耐熱坩堝中に導入して加熱、熔融する。熔融状態のガラスを撹拌、清澄を行った後、白金または白金合金製の流出ノズルから熔融ガラスを流出して、ガラスを成形する。成形されたガラスは予めガラスの転移点付近に加熱されたアニール炉に移し、室温まで冷却することにより、ガラス成形体を製造する。なお、前記熔融ガラスの流出は、前述したように、白金流出ノズル周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入しながら行う。
本発明の製造方法で得られたガラス成形体は適宜、切断、研削、研磨が施される。必要に応じて、ガラス成形体を切断し加熱プレスを行うこともできるし、精密プレス用プリフォームを作製し、加熱し非球面形状などに精密プレス成形することもできる。このようにして所望の光学素子を製造することができる。
[精密プレス成形用プリフォームの製造方法]
本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法には2つの態様がある。
第1の態様は、上記本発明のガラスの製造方法により作製したガラスを加工して精密プレス成形用プリフォームを作製する精密プレス成形用プリフォームの製造方法である。例えば、アニールしたガラスをカットピースと呼ばれるガラス片に分割し、得られたガラス片を研削、研磨して平滑な表面を有する所望形状のプリフォームを作製する。
第2の態様は、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して熔融ガラス塊を得、熔融ガラス塊が冷却する過程で精密プレス成形用プリフォームに成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とする。すなわち、第2の態様は、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料により作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して熔融ガラス塊を得、熔融ガラス塊が冷却する過程で精密プレス成形用プリフォームに成形する方法であって、前記流出ノズル周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入する。
第2の態様も、フッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラス、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラス、ホウ酸含有ガラスのいずれかからなる精密プレス成形用プリフォームの製造に好適である。前記各ガラスの詳細は前述のとおりである。なお、ホウ酸含有ガラス製プリフォームの製造に使用する流出ノズルは白金または白金合金製とし、フツリン酸塩ガラス製プリフォームの製造、リン酸塩ガラス製プリフォームの製造に使用する流出ノズルは耐熱性を勘案すると、白金または白金合金製とすることが好ましい。
精密プレス成形用プリフォーム(以下、単にプリフォームと記すことがある。)は、精密プレス成形品に等しい重量のガラス成形体であって、精密プレス成形に適した形状に予め成形された予備成形体である。プリフォームの形状としては、球、一つの対称軸を有する回転体などを例示することができる。前記回転体としては、前記対称軸を含む任意の断面において角や窪みがない滑らかな輪郭線をもつもの、例えば上記断面において短軸が回転対称軸に一致する楕円を輪郭線とするものがある。また、前記断面におけるプリフォームの輪郭線上の任意の点と対称軸上にあるプリフォームの重心を結ぶ線と、前記輪郭線上の点において輪郭線に接する接線とのなす角の一方の角の角度をθとしたとき、前記点が回転対称軸上から出発して輪郭線上を移動するときに、θが90°から単調増加し、続いて単調減少した後、単調増加して輪郭線が対称軸と交わる他方の点において90°になる形状が好ましい。プリフォームは、プレス成形可能な粘度になるよう、加熱してプレス成形に供される。
上記プリフォームには、必要に応じて離型膜などの薄膜を表面に備えていてもよい。離型膜としては炭素含有膜、自己組織化膜などを例示することができる。上記プリフォームは、所要の光学恒数を有する光学素子のプレス成形が可能である。
次に、本発明のプリフォームの製造方法の第2の態様について具体的に説明する。本態様は、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料により作製されたノズルから流出する熔融ガラスを分離して得たガラス塊を前記ガラスが冷却する過程で成形して精密プレス成形用プリフォームを製造する。なお、前記熔融ガラスの流出は、前述したように、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料により作製された流出ノズル周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入しながら行う。このような流出ノズル周辺へのハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体導入により、流出ノズル外周面への熔融ガラスの濡れ上がりを抑制することができる。なお、上記材料のうち、いずれの材料を選択するかは、使用するガラスにより決めればよい。ノズルの材料とガラスとの関係は前述のとおりである。
この製造方法には、切断、研削、研磨などの機械加工が不要という利点がある。機械加工が施されたプリフォームでは、機械加工前にアニール処理を行うことによって破損しない程度にまでガラスの歪を低減しておかなければならない。しかし、当該プリフォームの製造方法によれば、破損防止用アニール処理は不要である。また表面が滑らかなプリフォームを成形することもできる。さらに全表面が熔融状態のガラスが固化して形成された面であるため、研磨による微細な傷や潜傷も存在しない。したがって、ガラス自体の優れた化学的耐久性や耐候性に加え、表面が滑らかなのでプリフォーム表面積も傷があるものと比べると小さい。そのため、大気中に置かれても表面の変質が進みにくいので、成形された直後の清浄な表面状態を長期にわたり保つこともできる。
さらに、当該プリフォームの製造方法において、滑らかなで清浄な表面を付与するという観点から、プリフォームは風圧が加えられた浮上状態で成形することが好ましい。上記製造方法において、熔融ガラスを分離する際に切断刃によって切断、分離を行うとシアマークと呼ばれる切断痕が発生してしまう。プリフォームのシアマークが精密プレス成形品に残存すると、その部分は欠陥となってしまうため、シアマークができない分離が望まれる。切断刃を用いず、シアマークが生じない熔融ガラスの分離方法としては、流出パイプから熔融ガラスを滴下する方法、あるいは流出パイプから流出する熔融ガラス流の先端部
を支持し、所定重量の熔融ガラス塊を分離できるタイミングで上記支持を取り除く方法(降下切断法という。)などがある。降下切断法では、熔融ガラス流の先端部側と流出パイプ側の間に生じたくびれ部でガラスを分離し、所定重量の熔融ガラス塊を得ることができる。続いて、得られた熔融ガラス塊が軟化状態にある間にプレス成形に供するために適した形状に成形することでプリフォームが得られる。
熔融ガラス塊を冷却する過程でプリフォームに成形する場合、成形過程で生じた表面欠陥、例えば失透や脈理などは、そのままプリフォームの表面、ひいてはそのプリフォームを精密プレス成形して得られた光学素子の表面にも残ってしまう。中でもフツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸含有ガラスはノズル外周面への濡れ上がりによる品質低下がおきやすいガラスである。本発明によれば前記濡れ上がりが抑制され、プリフォームの欠陥発生を防止することができ、高品質のプリフォームを効率的に生産することができる。
[光学素子の製造方法]
本発明の光学素子の製造方法には2つの態様がある。第1の態様は、上記本発明のガラスの製造方法で作製したガラスを加工して光学素子を作製する光学素子の製造方法であり、第2の態様は、上記本発明の精密プレス成形用プリフォームの製造方法により作製した精密プレス成形用プリフォームを加熱し、精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法である。
本発明の光学素子の製造方法によれば、高品質の光学素子、例えば、上記フツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸含有ガラスのいずれかからなる光学素子を効率的に生産することができる。
第1の態様の具体例を以下に示す。第1の例では、熔融ガラスを鋳型に鋳込んでブロック状に成形した後、アニールし、切断あるいは割断してカットピースと呼ばれるガラス片に分割する。そして、当該ガラス片を研削し、もしくは研削および研磨してプレス成形用ガラス素材とする。このガラス素材を加熱、軟化しプレス成形して光学素子形状に近似した光学素子ブランクを作製する。当該ブランクをアニールしてから研削、研磨して光学素子に仕上げる。第2の例では、第1の例で得られたブロック状のガラスをアニールし、切断、研削、研磨して光学素子にする。第3の例では、第1の例で得たガラス片を加熱、軟化し、複数の回転するローラーでプレスして丸棒状に成形する。そして、得られた丸棒ガラスをアニール後、長手方向に対して垂直に切断する。得られたガラス片を研削および研磨して光学素子を得る。第4の例では、第3の例で得たガラス片を研削、もしくは研削および研磨してプレス成形用ガラス素材とし、このガラス素材を加熱、軟化し、プレス成形して光学素子ブランクを得る。得られた光学素子ブランクをアニールした後、研削、研磨して光学素子に仕上げる。第5の例では、熔融ガラスをプレス成形型に供給し、当該ガラスが冷却、固化する前にプレス成形して光学素子ブランクを得、研削、研磨により光学素子に仕上げる。第6の例では、熔融ガラスを筒状の鋳型に鋳込んで棒状に成形し、アニールした後、切断もしくは割断してガラス片を得、このガラス片を研削、研磨して光学素子を得る。第7の例では、第6の例で得たガラス片を加熱、軟化し、プレス成形して光学素子ブランクを得、さらに研削、研磨して光学素子を得る。第8の例では、第1の例または第4の例で研削、研磨により得たプレス成形用ガラス素材をプリフォームとし、このプリフォームを加熱、精密プレス成形して光学素子を得る。なお、第8の例で精密プレス成形品の非光学機能面を研削、もしくは研磨、または研削および研磨して光学素子に仕上げてもよい。例えば精密プレス成形で非球面レンズを作製し、芯取り加工により仕上げてもよい。
本発明の方法で作製される光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズなどの各種のレンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイ、プリズムなどを例示することができる。
なお、この光学素子には必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることもできる。
次に、第1の態様の第8の例および第2の態様における精密プレス成形について説明する。
精密プレス成形法はモールドオプティクス成形法とも呼ばれ、既に当該発明の属する技術分野においてはよく知られたものである。
光学素子の光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面と呼ぶ。例えばレンズを例にとると非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する。精密プレス成形法はプレス成形型の成形面をガラスに精密に転写することにより、プレス成形で光学機能面を形成する方法である。つまり光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。
したがって、この方法は、レンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学素子の製造に好適であり、特に非球面レンズを高生産性のもとに製造する際に最適である。
精密プレス成形法に使用するプレス成形型としては公知のもの、例えば炭化珪素、超硬材料、ステンレス鋼などの型材の成形面に離型膜を設けたものを使用することができるが、炭化珪素製のプレス成形型が好ましい。離型膜としては炭素含有膜、貴金属合金膜などを使用することができるが、耐久性、コストの面などから炭素含有膜が好ましい。
精密プレス成形法では、プレス成形型の成形面を良好な状態に保つため成形時の雰囲気を非酸化性ガスにすることが望ましい。非酸化性ガスとしては窒素、窒素と水素の混合ガスなどが好ましい。
次にプリフォームを用いる光学素子の製造方法に特に好適な精密プレス成形法について説明する。
[精密プレス成形法1]
この方法は、プレス成形型に前記プリフォームを導入し、前記成形型と前記プリフォームを一緒に加熱し、精密プレス成形することを特徴とする(精密プレス成形法1という)。
精密プレス成形法1において、プレス成形型と前記プリフォームの温度をともに、プリフォームを構成するガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
また前記ガラスが1012dPa・s以上、より好ましくは1014dPa・s以上、さらに好ましくは1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してから精密プレス成形品をプレス成形型から取り出すことが望ましい。
上記の条件により、プレス成形型成形面の形状をガラスにより精密に転写することができるとともに、精密プレス成形品を変形することなく取り出すこともできる。
[精密プレス成形法2]
この方法は、プレス成形型に予熱したプリフォームを導入し、精密プレス成形することを特徴とする(精密プレス成形法2という)。
この方法によれば、前記プリフォームをプレス成形型に導入する前に予め加熱するので、サイクルタイムを短縮化しつつ、表面欠陥のない良好な面精度の光学素子を製造することができる。
なおプレス成形型の予熱温度をプリフォームの予熱温度よりも低く設定することが好ましい。このようにプレス成形型の予熱温度を低くすることにより、前記型の消耗を低減することができる。
精密プレス成形法2において、前記プリフォームを構成するガラスが10dPa・s以下、より好ましくは105.5〜10dPa・sの粘度を示す温度に予熱することが望ましい。また、前記プリフォームを浮上しながら予熱することが好ましい。
さらに、プレス開始と同時またはプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
なおプレス成形型の温度は、前記プリフォームの予熱温度よりも低い温度に調温させるが、前記ガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度を目安にすればよい。
この方法において、プレス成形後、前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上にまで冷却してから離型することが好ましい。
精密プレス成形された光学素子はプレス成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。成形品がレンズなどの光学素子の場合には、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
フツリン酸塩ガラスやリン酸塩ガラスなどのリン含有ガラスは、白金流出ノズル外周面、金流出ノズル外周面に濡れ上がりやすいという性質を有するが、本発明のように白金流出ノズル周辺、金流出ノズル周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入することにより濡れ上がりを低減することができ、しかも白金ブツの混入や着色を回避することができるので、高品質のフツリン酸塩ガラスやリン酸塩ガラス、およびこれらのガラスからなる高品質の光学素子を提供することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
ガラスの原料として、各ガラス成分に相当するリン酸塩、フッ化物などを使用し、表1−1、表1−2、表1−3、表1−4、表2−1、表2−2、表2−3、表3−1、表3−2、表3−3、表3−4、表3−5、表3−6に示す組成を有するガラスとなるように前記原料を秤量した。これらの表において各カチオン成分、Oアニオン成分およびFアニオン成分は得られたガラス中の存在割合量を示す。前記原料を十分混合した後、白金坩堝に投入して電気炉で850〜950℃の温度範囲で攪拌しながら大気中で1〜3時間かけて加熱熔解した。均質化、清澄されたガラス融液を、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のノズルから一定の流量で流出させ、カーボン製金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、転移温度付近で1時間アニールし、アニール炉内で室温まで徐冷して、各光学ガラスを得た。
なお、白金合金製のノズル周辺に、ヨウ素結晶中を通過し、ヨウ素ガスを含んでいる窒素を導入した。この際、窒素ガス中には50容量ppmのヨウ素が含まれていることを確認した。この結果、ヨウ素ガスを導入しない場合は、いずれのガラス組成においても、白金ノズル全周に濡れ上がりが見られ、濡れ上がり部分が結晶化した。ヨウ素を導入した場合には、いずれのガラス組成においても、濡れ上がりは全く見られなかった。
得られた各ガラスを顕微鏡によって拡大観察したところ、結晶の析出や原料の熔け残りは認められなかった。
得られた光学ガラスについて、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、ガラス転移温度(Tg)を、以下のようにして測定した結果を表1−1、表1−2、表1−3、表1−4、表2−1、表2−2、表2−3、表3−1、表3−2、表3−3、表3−4、表3−5、表3−6に示す。
なお、フツリン酸塩ガラスについては、金合金製の流出ノズルを用いて同様の結果を得ることができる。
(1)屈折率(nd)およびアッべ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
理学電機株式会社の熱機械分析装置(サーモ プラス TMA 8310)により昇温速度を4℃/分にして測定した。
Figure 0004408937
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表1−1、表1−2、表1−3、表1−4、表2−1、表2−2、表2−3、表3−1、表3−2、表3−3、表3−4、表3−5、表3−6に示すように、いずれの光学ガラスも、所望の屈折率、アッベ数、ガラス転移温度を有し、優れた低温軟化性、熔解性を示し、精密プレス成形用の光学ガラスとして好適なものであった。
次に表1−1、表1−2、表1−3、表1−4、表2−1、表2−2、表2−3、表3−1、表3−2、表3−3、表3−4、表3−5、表3−6に示される各組成を有する、清澄、均質化した各熔融ガラスを、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のノズルから一定の流量で流出させ、滴下または支持体を用いて熔融ガラス流先端を支持した後、支持体を急降下してガラス塊を分離する方法にて目的とするプリフォームの重量の熔融ガラス塊を分離した。次いで、得られた各熔融ガラス塊をガス噴出口を底部に有する受け型に受け、ガス噴出口からガスを噴出してガラス塊を浮上しながら成形し、プレス成形用プリフォームを作製した。プリフォームの形状は、熔融ガラスの分離間隔を調整、設定することにより、球状や扁平球状とした。得られた各プリフォームの重量は設定値に精密に一致しており、いずれも表面が滑らかなものであった。なお、白金合金製のノズルの周辺には、前記と同様にしてヨウ素ガスを導入した。
その際、白金合金製パイプのガラス流出口からパイプ外周面へのガラス融液の濡れ上がりは認められなかった。
また別の方法として、成形した球状のプリフォームの全表面を公知の方法で研磨加工し、全表面層を除去して光学的に均質なプリフォームを得た。
また、別途、ガラス融液を、周辺にヨウ素ガスが導入された白金合金製のノズルから鋳型に鋳込んで板状ガラスや円柱棒状に成形し、アニールした後、これを切断して得たガラス片の表面を研削、研磨して、全表面が滑らかなプリフォームを得た。
いずれの方法においても、白金合金製パイプのガラス流出口からパイプ外周面へのガラス融液の濡れ上がりは認められなかった。
上記のようにして得た、プリフォームを、図1に示すプレス装置を用いて精密プレス成形して非球面レンズを得た。具体的にはプリフォーム4を、上型1、下型2および胴型3からなるプレス成形型の下型2と上型1の間に設置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーターに通電して石英管11内を加熱した。プレス成形型内部の温度を、成形されるガラスが10〜1010dPa・sの粘度を示す温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型1を押して成形型内にセットされたプリフォームをプレスした。プレスの圧力は8MPa、プレス時間は30秒とした。プレスの後、プレスの圧力を解除し、プレス成形されたガラス成形品を下型2および上型1と接触させたままの状態で前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上になる温度まで徐冷し、次いで室温まで急冷してガラス成形品を成形型から取り出し非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するものであった。
なお、図1において、参照数字9は支持棒、参照数字10は下型、胴型ホルダー、参照数字14は熱電対である。
精密プレス成形により得られた非球面レンズには、必要に応じて反射防止膜を設けた。
次に上記各プリフォームと同じプリフォームを上記の方法とは別の方法で精密プレス成形した。この方法では、先ず、プリフォームを浮上しながら、プリフォームを構成するガラスの粘度が10dPa・sになる温度にプリフォームを予熱した。一方で上型、下型、胴型を備えるプレス成形型を加熱して、前記プリフォームを構成するガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度にし、上記予熱したプリフォームをプレス成形型のキャビティ内に導入して、10MPaで精密プレス成形した。プレス開始とともにガラスとプレス成形型の冷却を開始し、成形されたガラスの粘度が1012dPa・s以上となるまで冷却した後、成形品を離型して非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するものであった。
精密プレス成形により得られた非球面レンズには必要に応じて反射防止膜を設けた。
このようにして、内部品質の高いガラス製光学素子を生産性よく、しかも高精度に得ることができた。
次に、上記の各フツリン酸塩ガラス、リン酸塩ガラスが得られるようにガラスを熔融し、熔融ガラスを鋳型に鋳込んでブロック状に成形した後、アニールし、切断あるいは割断してガラス片に分割した。そして、これらガラス片を研削してプレス成形用ガラス素材とし、加熱、軟化、プレス成形して光学素子形状に近似した光学素子ブランクを作製した。さらに、得られた光学素子ブランクをアニールしてから研削、研磨して球面レンズを作製した。
次に、上記ブロック状のガラスをアニールし、切断、研削、研磨して球面レンズ、プリズムなどを作製した。
さらに、上記ラス片を加熱、軟化し、複数の回転するローラーでプレスして丸棒状に成形し、アニールした後、長手方向に対して垂直に切断し、得られたガラス片を研削および研磨して球面レンズを作製した。
次に、上記丸棒ガラスから得たガラス片を研削してプレス成形用ガラス素材とし、このガラス素材を加熱、軟化し、プレス成形し、アニールした後、研削、研磨して球面レンズを得た。
次に、前記熔融ガラスをプレス成形型に供給し、当該ガラスが冷却、固化する前にプレス成形して光学素子ブランクを得、研削、研磨により球面レンズを作製した。
また、上記熔融ガラスを筒状の鋳型に鋳込んで棒状に成形し、アニールした後、割断してガラス片を得、このガラス片を研削、研磨して球面レンズ、プリズムを得た。
さらに、上記棒状ガラスから得たガラス片を加熱、軟化し、プレス成形して光学素子ブランクを得、さらに研削、研磨して球面レンズ、プリズムを得た。
次に、上記ブロック状ガラスおよび丸棒状ガラスをアニール、切断、研削、研磨して得たプリフォームを加熱、精密プレス成形して非球面レンズを得た。
上記各例では、球面レンズ、非球面レンズ、プリズムの作製をあげたが、この他、マイクロレンズなどの各種のレンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイなどの各種光学素子も作製することができる。
なお、これら光学素子には必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることもできる。

実施例2
ガラスの原料として、各ガラス成分に相当するホウ酸、酸化物、炭酸塩、硝酸塩などを使用し、表4−1、表4−2に示す組成を有するガラスとなるように前記原料を秤量した。前記原料を十分混合した後、白金坩堝に投入して電気炉で攪拌しながら大気中で1〜3時間かけて加熱熔解した。均質化、清澄されたガラス融液を、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のノズルから一定の流量で流出させ、カーボン製金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、転移温度付近で1時間アニールし、アニール炉内で室温まで徐冷して、各光学ガラスを得た。
なお、白金合金製のノズル周辺に、ヨウ素結晶中を通過し、ヨウ素ガスを含んでいる窒素を導入した。この際、窒素ガス中には50容量ppmのヨウ素が含まれていることを確認した。この結果、ヨウ素ガスを導入しない場合は、いずれのガラス組成においても、白金ノズル全周に濡れ上がりが見られ、濡れ上がり部分が結晶化した。ヨウ素を導入した場合には、いずれのガラス組成においても、濡れ上がりは全く見られなかった。
得られた各ガラスを顕微鏡によって拡大観察したところ、結晶の析出や原料の熔け残りは認められなかった。
得られた光学ガラスについて、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、ガラス転移温度(Tg)を、以下のようにして測定した結果を表4−1、表4−2に示す。
(1)屈折率(nd)およびアッベ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/時にして得られた光学ガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
理学電機株式会社の熱機械分析装置(サーモ プラス TMA 8310)により昇温速度を4℃/分にして測定した。
Figure 0004408937
Figure 0004408937
表4−1、表4−2に示すように、いずれの光学ガラスも、所望の屈折率、アッベ数、ガラス転移温度を有し、優れた低温軟化性、熔解性を示し、精密プレス成形用の光学ガラスとして好適なものであった。
次に表4−1、表4−2に示される各組成を有する、清澄、均質化した各熔融ガラスを、ガラスが失透することなく、安定した流出が可能な温度域に温度調整された白金合金製のノズルから一定の流量で流出させ、滴下または支持体を用いて熔融ガラス流先端を支持した後、支持体を急降下してガラス塊を分離する方法にて目的とするプリフォームの重量の熔融ガラス塊を分離した。次いで、得られた各熔融ガラス塊をガス噴出口を底部に有する受け型に受け、ガス噴出口からガスを噴出してガラス塊を浮上しながら成形し、プレス成形用プリフォームを作製した。プリフォームの形状は、熔融ガラスの分離間隔を調整、設定することにより、球状や扁平球状とした。得られた各プリフォームの重量は設定値に精密に一致しており、いずれも表面が滑らかなものであった。なお、白金合金製のノズルの周辺には、前記と同様にしてヨウ素ガスを導入した。
その際、白金合金製パイプのガラス流出口からパイプ外周面へのガラス融液の濡れ上がりは認められなかった。
また別の方法として、成形した球状のプリフォームの全表面を公知の方法で研磨加工し、全表面層を除去して光学的に均質なプリフォームを得た。
また、別途、ガラス融液を、周辺にヨウ素ガスが導入された白金合金製のノズルから鋳型に鋳込んで板状ガラスや円柱棒状に成形し、アニールした後、これを切断して得たガラス片の表面を研削、研磨して、全表面が滑らかなプリフォームを得た。
いずれの方法においても、白金合金製パイプのガラス流出口からパイプ外周面へのガラス融液の濡れ上がりは認められなかった。
上記のようにして得た、プリフォームを、図1に示すプレス装置を用いて精密プレス成形して非球面レンズを得た。具体的にはプリフォーム4を、上型1、下型2および胴型3からなるプレス成形型の下型2と上型1の間に設置した後、石英管11内を窒素雰囲気としてヒーターに通電して石英管11内を加熱した。プレス成形型内部の温度を、成形されるガラスが10〜1010dPa・sの粘度を示す温度に設定し、同温度を維持しつつ、押し棒13を降下させて上型1を押して成形型内にセットされたプリフォームをプレスした。プレスの圧力は8MPa、プレス時間は30秒とした。プレスの後、プレスの圧力を解除し、プレス成形されたガラス成形品を下型2および上型1と接触させたままの状態で前記ガラスの粘度が1012dPa・s以上になる温度まで徐冷し、次いで室温まで急冷してガラス成形品を成形型から取り出し非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するものであった。
なお、図1において、参照数字9は支持棒、参照数字10は下型、胴型ホルダー、参照数字14は熱電対である。
精密プレス成形により得られた非球面レンズには、必要に応じて反射防止膜を設けた。
次に上記各プリフォームと同じプリフォームを上記の方法とは別の方法で精密プレス成形した。この方法では、先ず、プリフォームを浮上しながら、プリフォームを構成するガラスの粘度が10dPa・sになる温度にプリフォームを予熱した。一方で上型、下型、胴型を備えるプレス成形型を加熱して、前記プリフォームを構成するガラスが10〜1012dPa・sの粘度を示す温度にし、上記予熱したプリフォームをプレス成形型のキャビティ内に導入して、10MPaで精密プレス成形した。プレス開始とともにガラスとプレス成形型の冷却を開始し、成形されたガラスの粘度が1012dPa・s以上となるまで冷却した後、成形品を離型して非球面レンズを得た。得られた非球面レンズは、極めて高い面精度を有するものであった。
精密プレス成形により得られた非球面レンズには必要に応じて反射防止膜を設けた。
このようにして、内部品質の高いガラス製光学素子を生産性よく、しかも高精度に得ることができた。
次に、上記の各ホウ酸含有ガラスが得られるようにガラスを熔融し、熔融ガラスを鋳型に鋳込んでブロック状に成形した後、アニールし、切断あるいは割断してガラス片に分割した。そして、これらガラス片を研削してプレス成形用ガラス素材とし、加熱、軟化、プレス成形して光学素子形状に近似した光学素子ブランクを作製した。さらに、得られた光学素子ブランクをアニールしてから研削、研磨して球面レンズを作製した。
次に、上記ブロック状のガラスをアニールし、切断、研削、研磨して球面レンズ、プリズムなどを作製した。
さらに、上記ラス片を加熱、軟化し、複数の回転するローラーでプレスして丸棒状に成形し、アニールした後、長手方向に対して垂直に切断し、得られたガラス片を研削および研磨して球面レンズを作製した。
次に、上記丸棒ガラスから得たガラス片を研削してプレス成形用ガラス素材とし、このガラス素材を加熱、軟化し、プレス成形し、アニールした後、研削、研磨して球面レンズを得た。
次に、前記熔融ガラスをプレス成形型に供給し、当該ガラスが冷却、固化する前にプレス成形して光学素子ブランクを得、研削、研磨により球面レンズを作製した。
また、上記熔融ガラスを筒状の鋳型に鋳込んで棒状に成形し、アニールした後、割断してガラス片を得、このガラス片を研削、研磨して球面レンズ、プリズムを得た。
さらに、上記棒状ガラスから得たガラス片を加熱、軟化し、プレス成形して光学素子ブランクを得、さらに研削、研磨して球面レンズ、プリズムを得た。
次に、上記ブロック状ガラスおよび丸棒状ガラスをアニール、切断、研削、研磨して得たプリフォームを加熱、精密プレス成形して非球面レンズを得た。
上記各例では、球面レンズ、非球面レンズ、プリズムの作製をあげたが、この他、マイクロレンズなどの各種のレンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイなどの各種光学素子も作製することができる。
なお、これら光学素子には必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜などの光学薄膜を設けることもできる。
本発明のガラスの製造方法によれば、白金流出ノズルの周辺に、塩素、臭素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を導入することにより、前記白金ノズル外周への濡れ上がりを低減することができ、高品質のガラスを得ることができる。
本発明のプレス成形用プリフォームの精密プレス成形例を示す図である。
符号の説明
1 上型
2 下型
3 胴型
4 プリフォーム
9 支持棒
10 下型、胴型ホルダー
11 石英管
13 押し棒
14 熱電対

Claims (13)

  1. ガラス原料を熔融し、白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して成形する工程を含むガラスの製造方法において
    素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とするガラスの製造方法。
  2. 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラスであることを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  3. 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラスであることを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  4. 前記流出ノズルが白金または白金合金で作製されたものであり、前記ガラスが、ホウ酸含有ガラスであることを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  5. 前記ハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を前記流出ノズル周辺に導入することを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の方法によりガラスを作製し、このガラスを加工して精密プレス成形用プリフォームを作製する精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  7. 白金、白金合金、金、金合金のいずれかの材料で作製された流出ノズルから、熔融ガラスを流出して熔融ガラス塊を得、熔融ガラス塊が冷却する過程で精密プレス成形用プリフォームに成形する精密プレス成形用プリフォームの製造方法において
    素およびヨウ素の中から選ばれる元素を有するハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を含む雰囲気中に置かれた流出ノズルから熔融ガラスを流出することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  8. 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%以上であるフツリン酸塩ガラスであることを特徴とする請求項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  9. 前記ガラスが、フッ素含有量がアニオニック%で25%未満であるリン酸塩ガラスであることを特徴とする請求項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  10. 前記流出ノズルが白金または白金合金で作製されたものであり、前記ガラスが、ホウ酸含有ガラスであることを特徴とする請求項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  11. 前記ハロゲンガスおよび/またはハロゲン化物の気体を前記流出ノズル周辺に導入することを特徴とする請求項7に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
  12. 請求項1〜のいずれかに記載の方法によりガラスを作製し、このガラスを加工して光学素子を作製する光学素子の製造方法。
  13. 請求項11のいずれかに記載の方法により精密プレス成形用プリフォームを作製し、このプリフォームを加熱し、精密プレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
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