JP5546043B2 - 燃焼機関の排気系統に用いられるチタン合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、平板に圧延された、またはコイル状に巻回されたストリップ製品の形式とすることができる高酸化耐性であり、高強度のチタン合金を製造する技術に関する。この技術は、高温強度および酸化耐性の複合特性が求められる自動車の排気系統の部品に使用するのに理想的な合金製品の製造に、有利に用いられる。
工業的に製造されている純粋な(CP:commercially pure)チタンを自動車の排気系統およびオートバイのマフラーに用いることは既知である。CPチタン製のこれら排気系統は、標準的なステンレス鋼で作られたものよりも軽量である。ステンレス鋼に代えてチタンを用いた場合の重量の減少率は44%と高く、系統全体に対しおよそ9.072kg(20ポンド)以上の重量減少となる。
排気系統におけるCPチタンの使用は、優れた重量減少の利点をもたらすが、その一方で、CPチタンが過剰な酸化、およびこの用途に付随する高温による柔軟化を生ずる。したがって、CPチタン薄板製品の用途は、排気系統の、相対的に低い温度に曝露される特定の部品に限られている。
排気管をチタンで作製する場合、一般的にCPチタンから製造した溶接管を含む。マフラーおよび触媒コンバータボックスの場合、部品は、CPチタン薄板の成形および溶接によって製造することができる。管およびマフラー部品用の原材料は、典型的には連続冷間圧延ストリップ製品として製造されている。チタンストリップ製品の既知の製造プロセスは、インゴットを溶融し、インゴットを熱間鋳造または圧延によって中間スラブに加工し、その後、高温状態のスラブを一連の絞りロールギャップに通過させてコイル状の薄板製品または熱間帯状コイルとなるよう圧延する工程を有する。当業界でよく知られているように、これはタンデムに組み合せた一連の圧延機またはリバース圧延機により達成することができる。
熱間帯状コイルは、典型的には熱処理または連続ライン炉でのアニールも行い、さらに、トリミングし、また表面汚染およびクラックを取り除くよう処理する。熱間帯状コイルは、その後コイル圧延機、例えばセンジミア(Sendzimir)圧延機により、最終ゲージまで冷間圧延される。圧延後、コイルは不活性ガスもしくは真空の連続ライン炉、または真空もしくは不活性ガス下のベル炉でアニールすることができ、また最終的に、冷間圧延されたコイルまたはストリップは、付加的ステップ(平滑化および酸洗いを含みうる)で販売用に仕上げる。
排気系統のパイプ部品用溶接管の製造において、冷間圧延ストリップを適切な幅でスリットを形成し、ロール成型機およびタングステン不活性ガス(TIG)、金属不活性ガス(MIG)、またはレーザー溶接などの自溶性の溶接機を有する連続管溶接ラインに送給する、またはチューブを形成すべき長さに切断し、また個別長さのものとして溶接する。これらプロセスのために、ストリップ製品の好ましい特性は、成形ツールがストリップに付着しないようにする平滑な低摩擦表面、均一な管状成形を容易にする横方向における滑らかな降伏変形湾曲、および管状成形に十分な曲げ延性である。溶接した管は、さらに、最終的な所望の排気パイプ形状に曲げるのに十分な成形性を有し、また、パイプ部品の意図した寿命にわたり、排気ガス曝露に耐える十分な機械的性能(例えば、強度)および酸化性能特性を持たなければならない。
マフラー部品および触媒コンバータボックスの製造において、一般的に、コイルまたはストリップを平坦シートに切断し、この平坦シートから個別のブランクにカットしてから成形および組立てを行うことができ、この成形および組立てとしては、必要に応じて、深絞り加工、プレス加工、曲げ加工、成形および圧延シーム継ぎ、ならびに溶接の組合せがある。マフラー部品の製造において、重要な特性は、絞り加工およびプレス加工における成形性、および優れた曲げ延性である。選択される材料は、マフラー部品の意図した寿命にわたり、排気ガス曝露に耐える十分な機械的性能(例えば、強度)および酸化性能特性を持たなければならない。
上述の製品に求められる性能特性の組合せは単純ではない。製造の観点からの理想的な選択は、チタン合金は、ASTMグレード1またはASTMグレード2などの柔軟な工業用グレードの純チタンである。しかしながら、こうした合金は、現行の車両に関しては、酸化寿命が限られており、また高温での機械性能が不十分である。さらに、次世代の燃料効率化機関には、さらに高い温度および負荷が加わる可能性がある。
改善された機械的および酸化に対する性能を有する合金の製造技術は、したがって、CPチタン薄板製品よりも高い温度下で使用可能なチタン合金に対する産業上の要請を満たす必要がある。この製品に重要な特性は、酸化耐性および871.1゜C(1600゜F)までの温度下での高温強度である。さらに、この薄板製品は様々な排気系統部品を生産するための成形および製造工程を経る必要があるため、CPチタンがもつ特性に近い冷間成形性および溶接性が求められる。
本明細書において、燃焼機関の排気系統に使用する上述のチタン合金の製造方法を開示する。
本発明の主題の、例示的な、高温および高応力環境において使用されるチタン合金の製造方法は、チタン合金の第1の熱処理を第1の温度で行う工程と、チタン合金を所望の厚さに圧延する工程と、チタン合金の第2の熱処理を第2の温度で行う工程と、チタン合金の第3の熱処理を第3の温度で行う工程と、を含む。ある実施形態において、第1の温度は、第2相粒子の十分な量の結晶粗大化をすることなく、チタン合金の再結晶化および柔軟化が最適化されるよう選択し、およそ815.6〜871.1゜C(1500〜1600゜F)とすることができる。ある実施形態において、チタン合金の圧延によって、チタン合金の厚さを少なくとも65%超減らす。
ある実施形態において、第2の温度は、第2相粒子の析出を最適化するよう選択し、およそ482.2〜593.3゜C(900〜1100゜F)とすることができる。第3の温度は、析出粒子を溶解せずにチタン合金の再結晶化を達成するよう選択し、実施形態によってはおよそ648.9〜871.1゜C(1200〜1600゜F)とすることができる。第1、第2、または第3の熱処理工程のいずれかは、空気雰囲気中で行うことができる。これに代えて、第1、第2、または第3の熱処理工程のいずれかを、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
ある実施形態において、高温および高応力環境化で使用されるチタン合金を製造方法は、チタン合金に対して、制御された歪みを付与する工程をさらに含む。ある実施形態において、チタン合金への制御された歪みの付与は、チタン合金の調質圧延で行い、他の実施形態においては、合金の張力レベリングで行う。
高温および高応力環境において使用されるチタン合金の製造を製造するための他の例示的方法は、チタン合金の第1の熱処理を第1の温度で行う工程と、チタン合金を所望の厚さに圧延する工程と、チタン合金の第2の熱処理を第1の時間にわたり、第1の温度で行う工程と、チタン合金の第3の熱処理を第2の温度で行う工程と、を含む。ある実施形態において、第1の時間は、第2の熱処理工程中、ASTM3グレードの結晶粒径とASTM6グレードの結晶粒径との間におけるチタン合金の結晶粒径が達成されるよう選択する。第1の温度は、第2相粒子の十分な量の結晶粗大化をすることなく、チタン合金の再結晶化および柔軟化が最適化されるよう選択し、およそ815.6〜871.1゜C(1500〜1600゜F)とすることができる。第1の時間はおよそ5分〜1時間とすることができる。第2の温度は、第2相粒子の析出を最適化するよう選択し、およそ482.2〜593.3゜C(900〜1100゜F)とすることができる。
本発明に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、開示される主題の好ましい実施形態を示し、開示される主題の原理を説明する役割を果たす。
すべての図面にわたり、特に記載がなければ、同じ参照符号および記号は、図示された実施形態における同様の要素、素子、部品、または部分を示す。さらに、それらの図面を参照して開示される主題を以下に詳述するが、例示的実施形態に関しても同様とする。
工業用純チタンおよび本明細書で開示する発明の代表的な合金の、応力−歪み曲線を示すグラフである。 従来技術のチタン製造方法を示すフロー図である。 本明細書に開示する本発明の例示的実施形態による方法を示すフロー図である。 (a)は本明細書に開示した発明の一例示的実施形態による、Tの温度範囲、Fe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%のTi合金におけるαおよびβ相、ならびに析出物の体積率を温度の関数としたグラフ、(b)は本明細書に開示された発明の一例示的実施形態によるTの最小温度および、Fe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%のTi合金におけるαおよびβ相、ならびに析出物の体積百分率を温度の関数としたグラフを示す。 本明細書に開示された発明の一例示的実施形態による、Tの温度範囲、Fe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%のTi合金に存在するαおよびβ相、ならびに析出物の体積百分率を温度の関数としたグラフである。 本明細書に開示された発明の一例示的実施形態による、Tの温度範囲、Fe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%のTi合金に存在するαおよびβ相、ならびに析出物の体積百分率を温度の関数としたグラフである。 本明細書に開示する発明の一例示的実施形態による、後成形用途に最適化されたSiを含む排気合金の応力−歪み曲線である。
本明細書に開示する発明は、長時間高温に曝露された後の酸化に対する優れた耐性をもち、さらに相対的に低い温度下における優れた延性をもつ高強度チタン合金を生産する技術を提供する。よって、このような技術により、長期間にわたって高温ガスに長時間曝露されることが予測される、自動車その他の燃焼機関の排気系統への使用に理想的な合金を生産する。また、相対的に低い温度下における優れた延性により、このような排気系統部品の生産コストを大幅に低減する。
したがって、本明細書に開示する発明は自動車その他の燃焼機関の排気系統への使用に適した、上述のチタン合金の冷間圧延ストリップまたは薄板製品を低コストで製造する技術を提供する。冷間圧延ストリップまたは薄板製品は、特に、排気パイプ部品またはマフラーまたは触媒コンバータ部品などのより一層複雑なパーツの製造に好適である。本明細書に開示する発明はまた、ストリップ、薄板、または最終的な排気部品を仕上げる方法を提供し、初期酸化で生ずる、排気系統の外部から見える表面における外見上の損傷および最終的な製造および実装工程における機械的損傷を制限する。
このように、本明細書に開示する発明は排気系統の実用上の動作と、自動車その他の燃焼機関の排気系統に適した合金が呈する現行の表面条件、結晶粒径、および降伏挙動に基因する製造上の制約との間で対立する要求から生じる課題に対する解決策を提供する。
さらに以下に記載するとおり、排気グレード合金といえるこれらの合金は、Fe:0.2〜0.5%、Si:0.15〜0.6%、O:0.02〜0.12%、残部Ti(Ti−XTとして知られる)、の好ましい組成をもち、改善された機械的および酸化性能を示す。一例示的実施形態において、Ti−XTの組成は他に、Fe:0.3〜0.5%、Si:0.35〜0.45%、O:0.06〜0.12%、残部Tiとしても好ましい。これらの排気グレード合金はAl、Nb、CuおよびNiを別々に、または組み合せて少量ずつ制御添加することにより、強度および酸化性能をさらに改善することができる。このような制御添加は、全体量が1.5%以下で、Al:0〜1.5%、Nb:0〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.5%の範囲であると好ましい。
上記の合金は、しかしながら、成形性がある程度制限されてしまう。これらの制限は少なくとも部分的にこれらの合金の全体的な強度および延性の組合せに起因し、鋭い降伏点および著しい降伏点降下が見られる、これらの合金の降伏挙動に部分的に起因し、また双晶化による変形または滑りによる変形に最適化される結晶粒径に部分的に起因する。このような特徴は、特定の元素、例えば鉄およびシリコンをこれらの合金に制御添加することにより生じる可能性があり、再結晶化および結晶粒成長の正常な特性に悪影響を及ぼすのに十分な量で様々な相タイプの析出物形成につながる。体心立方形状のチタンの小粒子は、一般的にβ相として知られ、多くの工業用グレードの純チタン内に生じる。β相の粒子と区別するために、本明細書において析出物として定義される別の相は、典型的にFe、Ni、Si、Cuなどの元素を添加したチタンの化合物である(例えばTiFe、TiSi、TiSi)。
図1は75ksi〜100ksiの間の強度を有する、Siを含む排気系グレードチタンの応力−歪み曲線101、およびプレス加工用途に最適化された典型的な、柔軟なCPグレードチタンの同様の曲線102を示す。排気系グレードが示す応力歪み挙動の種類は、鋭い降伏点およびそれに続く降伏点降下103が不均一な変形をもたらし、クラックまたは一貫性のない成形につながるため、成形に望ましくないと考えられる。降伏点降下103は、不純物濃度、残留応力、結晶粒径、および第2相の存在によって変化する。
特に、結晶粒径は成形性に関する重要なパラメータであり、望ましい結晶粒径は成形方法に依存する。三次元的歪みを伴うプレス加工作業については、一般的に双晶化メカニズムによる変形を促進するために、より大きい結晶粒径をもつことが望ましいと考えられている。変形双晶は、格子面に沿って起こる転位滑りとは対照的に、均一体積部分で起こる格子の単純剪断である。金属がクラックなく、三次元歪みにさらに適応するように、双晶化メカニズムは転位滑りによる変形を補う。一軸性または二軸性の歪みの場合、4つの独立した滑り機構を用いて、通常歪みを適応させることができるため、微細な結晶粒径でも許容される。排気系グレード合金において、相平衡の知識により、結晶粒径を調節および変更し、また降伏点降下を低減または解消し、成形性能を最適化する熱処理を開発することができる。降伏点降下を解消する伝統的な方法と組み合せた、調質圧延のような方法により改善された性能がもたらされる。
冷間圧延ストリップは、成形を容易にするため、通常アニールした条件の下で提供される。管成形においては、表面は典型的に多少柔軟であるため、成形ツールによる管の摩損またはスクラッチを生じ、望ましくない外観をもたらす。しかし、より複雑な成形において、製品は十分な成形性を欠き、コスト高を招き、システム設計は制約を受ける可能性がある。
さらに、Siを含む排気系グレード合金は好ましい総合的な酸化性能を有するが、それらは排気系統の最も高温となる部分において所定量の酸化物被膜を生成する。この酸化物被膜の生成は性能に影響を与える可能性があり、いずれにしても車両の所有者にとって望ましくない見映えの悪い外観を生ずるおそれがある。
したがって、上記のチタン合金の特性を改善するのに特に好適な、Siを含む排気系グレード合金製品の新規な製造方法を以下に説明する。
図2aは燃焼機関の排気系統に用いられるチタン合金を製造するための従来技術の方法を示す。図2aに示すように、従来技術のプロセスは、チタン合金の熱間圧延から始まり(熱間圧延工程201)、その後5分から1時間にわたり、およそ760〜787.8゜C(1400〜1450゜F)のターゲット温度で行われるアニールの期間が続く(アニール工程202)。第1のアニール工程202の期間後、チタン合金は、例えば、ブラスト処理、および酸洗いまたは研磨による表面調整を受け(表面調整工程203)、これに続いて冷間圧延を行い(冷間圧延工程204)、この冷間圧延工程204は、通常室温で行われるが、実施形態によっては121.1゜C(250゜F)で行うこともできる。つぎに、第2のアニール工程205を、不活性ガスまたは真空中で5分から1時間の期間にわたり、およそ704.4〜787.8゜C(1300〜1450゜F)のターゲット温度で行う。最終的に、合金は冷間成形(冷間成形工程206)で最終製品として冷間成形する。
図2bは本明細書に開示する本発明による燃焼機関の排気系統に用いられるチタン合金を製造するための例示的な方法を示す。図2bに示したとおり、チタン合金はまず、熱間圧延を受け(熱間圧延工程210)、この熱間圧延工程210は、熱間ストリップタンデム圧延機またはリバース熱間ストリップ圧延機を用いて、760〜1038゜C(1400〜1900゜F)、好ましくは871.1〜982.2゜C(1600〜1800゜F)の温度で行われる薄板を2.54〜7.62mm(0.10〜0.30インチ)の厚さに圧延する。一例示的実施形態において、合金はその後温度Tの高温アニール工程211を受ける。一例示的実施形態において、TiSi粒子などの第2相の十分な量の結晶粒巨大化または結晶粒粗大化を生ずることなく、再結晶化および柔軟化を最適化する熱処理(アニール)工程211を選択することが望ましい。このような処理は、例えば、およそ815.6〜871.1゜C(1500〜1600゜F)、好ましくは846.1〜857.2゜C(1555〜1575゜F)、最も好ましくは848.9゜C(華1560゜F)の温度Tで、また5分から1時間、または好ましくは5〜15分の期間にわたり行うことができる。
図3a〜図5において、HCPはα相粒子を表し、BCCはβ相粒子を表し、TiSiおよびFeTiは、第2相としても知られる析出相粒子を表す。
図3(a)は、Tの温度範囲、およびFe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%(すべて重量パーセント)、残部Tiの組成をもつチタン合金の相平衡の一例示的実施形態を示す。この図3aに示される例示的温度範囲Tは、急速な結晶粒成長または結晶粗大化をすることなく、完全な再結晶化を達成可能な範囲の例である。析出相が溶解し始める温度より高いが、結晶構造がβ相(BCC)の50%よりも大きくなる温度よりも低い温度で熱処理することが望ましい。一例示的実施形態において、図3(a)に示すように、Tの最小値T1minは846.1゜C(1555゜F)とすることができる。さらに図3(a)に示すように、Tの例示的最大値T1maxは857.2゜C(1575゜F)とすることができる。図3(b)は、T1minが、析出物TiSiを1%体積率(Vf)未満でと生じさせる温度であると定義することができることを示す図3(a)のグラフの拡大図を示す。
この温度範囲内では、再結晶化の推進力は改善されるが、α結晶粒(HCP)の成長はβ相(BCC)および残留する析出物の存在によって制御される。同一または別の実施形態において、熱処理工程211は、チタン合金ストリップを、その後の冷間圧延のために最適化する。本開示発明において、第1の熱処理(アニール)工程211の後、冷間圧延工程213を行い、65%超のゲージ減少させ、実施形態によっては75%のゲージ減少させる。冷却工程の期間(図示せず)を、熱処理工程211と冷間圧延工程213との間に設けることができ、この冷却工程中、合金ストリップを室温まで、または実施形態によっては少なくとも121.1゜C(250゜F)まで冷却する。図2bに示すように、表面調整工程212、例えば、ブラスト処理、および酸洗いまたは研磨は、第1の熱処理(アニール)工程211とチタン合金の冷間圧延工程213との間に介在させることができる。さらに、冷却工程の期間は表面調整工程212の前に行うことができる。
図2bにさらに示すように、冷間圧延工程213の後には、2つの熱処理(アニール)の選択肢工程220,230を設ける。強度および単純な一軸方向成形に関して製品を改善するために、結晶粒径を最小化することが望ましい。一例示的実施形態において、これは2パート熱処理(アニール)工程220によって達成される。この実施形態においては、冷間圧延工程213の後、温度Tで熱処理工程221を行い、この温度T は第2相粒子、例えば、TiSiおよび/またはFeTiの析出を最適化するよう選択する。一例示的実施形態において、Tの範囲は482.2〜593.3゜C(900〜1100゜F)、好ましくは510〜582.2゜C(950〜1080゜F)であり、熱処理工程221は5分から24時間にわたり行う。一例示的実施形態において、熱処理工程221を行う好ましい時間範囲は1〜8時間であり、別の好ましい例示的範囲は5〜15分である。
図4は、Tの例示的範囲、およびFe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%(すべて重量パーセント)の組成をもつチタン合金の相平衡を示す。図4に示す一実施形態において、Tは析出物の体積率(Vf)が増加する温度と定義され、Tは、やはりこのような析出が24時間以内に起こるような、十分に高い温度にすべきである。このように、図4ではT2minは、それ未満では第2相の粒子の効果的析出が生じないような最小温度、例えば、482.2゜C(900゜F)を表す。図4に示すように、T2maxは、それより高い温度で析出物が大幅に減少し始める最大温度、例えば582.2゜C(1080゜F)を表す。
図2bに戻り、Tでの熱処理(アニール)工程221に続いて、チタン合金は、析出物を溶解させることなく製品を再結晶化させる温度Tで再びアニールするアニール工程222を行う。一例示的実施形態において、Tの範囲は648.9〜871.1゜C(1200〜1600゜F)、好ましくは760〜871.1゜C(1400〜1600゜F)であり、Tでの熱処理工程222は5分〜1時間、好ましくは5〜15分の期間にわたり行うことができる。
図5はFe:0.2%、Si:0.45%、O:0.11%(すべて重量パーセント)、残部Tiの組成をもつチタン合金におけるTの温度範囲の一例を示す。図5に示すように、析出物のピン止め作用により、強度および一軸方向成形挙動の改善に理想的な微細な結晶粒径がもたらされることになる。図5に示した一実施形態において、Tの最大値T3maxは、効果的な粒界ピン止め作用を失い、析出物の体積率(Vf)が1%未満に減少する温度、例えば、T3max≒857.2゜C(1575゜F)、により定義される。Tの下方境界T3minは、効果的な再結晶化の可能性がなくなる温度、例えば、T3min≒648.9゜C(1200゜F)、により定義される。
一実施形態において、TおよびTでの熱処理(アニール)工程221,222は、室温への冷却とは個別に行うことができる(図示せず)。代替的実施形態において、TおよびTでの熱処理(アニール)工程221,222を組み合せて、Tでの第1の処理工程221に続いて、炉を第2の処理工程222のTまでそのまま加熱する工程222とする単一サイクルにすることができる。同一または別の実施形態において、本技術の付加要素として、初期降伏点を克服して、最適化された降伏挙動をもたらすために、例えば調質圧延工程241としての制御された歪みを付与することができる制御歪み付与工程241を付加することができる。実施形態によっては、制御歪み付与工程241による歪み付与は、当業界で知られるように、張力レベリング241によって達成することができる。別の選択肢として、制御歪み付与工程241の歪み付与は完全に省略することもできる。付与される歪みの割合は一般的に0.2%〜2%の間で、実施形態によっては、0.5〜1%の間である。応力−歪み曲線は、図6に示した、制御歪み付与工程241で歪みを付与した後の応力−歪み曲線のタイプとなる。
一実施形態における、第2の選択肢である熱処理工程230においては、双晶変形を促す粗大化した結晶粒径を生ずることが望ましい。図2bに示したように、冷間圧延工程213の後、チタン合金ストリップをTで再度熱処理する熱処理工程231を行い、この場合、ASTM3グレードの結晶粒径とASTM6グレードの結晶粒径との間におけるチタン合金の結晶粒径、例えば、直径が45〜127ミクロンとなるのに十分な時間にわたりTで再度熱処理する。一例示的実施形態において、この時間はTで5分〜1時間である。一実施形態において、この工程により、双晶化による変形を改善し、深絞り加工および複雑な成形工程を容易にする結晶粒径がもたらされる。ストリップはその後Tで、例えば5分〜24時間の間、好ましくは1〜8時間の間、アニール工程232でアニールし、使用中の結晶粒成長を防ぐために必要なケイ素化合物、例えば、TiSiおよび/またはFeTiを析出させる。
本技術な付加要素として、初期降伏点を克服し、最適化された降伏挙動をもたらすために、例えば調質圧延工程241または張力レベリング工程241によって、制御された歪みを付与することができる(制御歪み付与工程241)。さらに図2bに示したように、例えば調質圧延工程241または張力レベリング工程241による、制御された歪みの付与(制御歪み付与工程241)は、Tでの高温熱処理231とTでの低温熱処理232との間に行うことができる。別の選択肢として、制御された歪みの付与(制御歪み付与工程241)は完全に省略することもできる。歪みの割合は一般的に0.2%〜2%の間で、実施形態によっては、0.5〜1%の間である。実施形態によっては、応力−歪み曲線は、図6に示した、制御された歪みを付与した(制御歪み付与工程241)後の応力−歪み曲線のタイプとなる。
熱処理のコストを最小化するために、排気系部品の製造が優れた成形性を必要としない場合においては、T,Tおよび/またはTでの冷間圧延ストリップの熱処理工程221,222,231,232を、随意にエアラインによるアニール炉において5〜15分間実施し、この後スコッチブライト(登録商標)パッドを用いた光沢仕上げのような軽めの研磨仕上げを行って、変色を除去する。エアアニールの利点はコストにあり、この結果、不活性ガスのコストまたは真空装置の運転コストを回避する。さらに、ストリップはわずかに硬化された表面を有するようになり、これにより、成形ツールによるスクラッチおよび摩損に対してより一層耐久性をもたらし、したがって、改善された外観の仕上がりが得られる。
エアアニールの代替案としては、T,Tおよび/またはTでのアニール用の熱処理工程221,222,231,232に窒素不活性ガス雰囲気を用いる。この場合、窒素との反応により、ベース合金からケイ素と組み合わさった窒化チタンの薄い層が形成され、ケイ素と組み合わさった窒化チタンとしては、若干の種類のTi−N−Si化合物があり得る。改質された表面層は、成形ツールによるスクラッチまたは摩損を減らす硬質層として機能し、これによって改善された外観の仕上がりも得られる。くわえて、シリコンで改質された窒化物層は、稼働中、空気との初期反応を遅らせるように作用し、酸化による全体的な重量増加を低減し、耐用年数を伸ばす。
酸化率を低減するための、窒素不活性ガス混合物(例えば、5〜50体積%の窒素ガス)中でのアニールは、ケイ素を含むチタン合金から製造された排気系部品、サブアセンブリ、および完成した排気系統に対して実施することができる。ケイ素で改質した結果生じた硬質の窒化物層は、その結果酸化による重量増加を低減し、機械的損傷、例えば石はねによる損傷、に対する耐久性を改善することによって耐用年数を延ばすよう作用する。合金のケイ素含有量に応じて、表面層に存在するケイ素の分布範囲を改善するような温度、時間、及びガス混合物を選択することができる。
最終の工程要素である冷間成形工程242は図2bに示すように、加工された排気系グレード合金を、多様な用途のニーズに応じて、排気管、マフラー、または触媒コンバータ部品などの様々な形に成形する。
本発明の他の実施形態は、本明細書の記載および実施形態を考慮すれば当業者には明らかであろう。本明細書の記載および実施形態は単に例示的なものに過ぎず、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示されるものであることを意図する。
明細書および請求項の両方において、すべての百分率は重量パーセントである。

Claims (15)

  1. 高温および高応力環境において使用されるチタン合金の製造方法であって、
    重量%で、0.2〜0.5の鉄、0.02〜0.12の酸素、0.15〜0.6のケイ素、及び残部チタン、及び不可避的不純物からなるチタン合金を準備する工程と、
    次いで、前記チタン合金の第1の熱処理を、析出相が溶解し始める温度より高く、且つ、前記チタン合金の結晶構造が、体積率でβ相の50%よりも大きくなる温度よりも低い、815.6〜871.1℃(1500〜1600゜F)の第1の温度で行う工程と、
    次いで、前記チタン合金を所望の厚さに、冷間圧延する工程と、
    次いで、前記チタン合金の第2の熱処理を、前記チタン合金内で第2相析出させるために482.2〜593.3℃(900〜1100゜F)の第2の温度で行う工程と、
    次いで、前記チタン合金の第3の熱処理を、前記チタン合金を、析出粒子を溶解せずに再結晶化する、648.9〜871.1℃(1200〜1600゜F)の第3の温度で行う工程と、を含む方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、前記第1の温度は、第2相粒子の十分な量の結晶粗大化をすることなく、前記チタン合金の再結晶化および柔軟化が最適化されるよう選択する、方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、前記チタン合金の前記冷間圧延により、前記チタン合金の厚さを少なくとも65%超減らす、方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、前記第1、第2、または第3の熱処理工程のいずれかを、空気雰囲気または不活性ガス雰囲気中で行う、方法。
  5. 請求項1に記載の方法において、前記チタン合金に対して、制御された歪みを付与する工程をさらに含む、方法。
  6. 請求項5に記載の方法において、前記チタン合金に対する制御された歪みの前記付与は、前記チタン合金の調質圧延または張力レベリングで行う、方法。
  7. 高温および高応力環境において使用されるチタン合金の製造方法であって、
    重量%で、0.2〜0.5の鉄、0.02〜0.12の酸素、0.15〜0.6のケイ素、及び残部チタン、及び不可避的不純物からなるチタン合金を準備する工程と、
    次いで、前記チタン合金の第1の熱処理を、析出相が溶解し始める温度より高く、且つ、前記チタン合金の結晶構造が、体積率でβ相の50%よりも大きくなる温度よりも低い、815.6〜871.1℃(1500〜1600゜F)の第1の温度で行う工程と、
    次いで、前記チタン合金を所望の厚さに、冷間圧延する工程と、
    次いで、前記チタン合金の第2の熱処理を、ASTM3グレードの結晶粒径とASTM6グレードの結晶粒径と間におけるチタン合金の結晶粒径が達成されるように、第1の時間にわたり、前記第1の温度で行う工程と、
    次いで、使用中の結晶粒成長を防ぐためのケイ素化合物を析出するために、前記チタン合金の第3の熱処理を482.2〜593.3℃(900〜1100゜F)の第2の温度で行う工程と、を含む方法。
  8. 請求項7に記載の方法において、前記第1の温度は、第2相粒子の十分な量の結晶粗大化をすることなく、前記チタン合金の再結晶化および柔軟化が最適化されるよう選択する、方法。
  9. 請求項7に記載の方法において、前記チタン合金の前記冷間圧延により前記チタン合金の厚さを少なくとも65%超減らす、方法。
  10. 請求項7に記載の方法において、前記第1の時間は、5分〜1時間である、方法。
  11. 請求項7に記載の方法において、前記第1、第2、または第3の熱処理工程のいずれかは、空気雰囲気または不活性ガス雰囲気中で行う、方法。
  12. 請求項7記載の方法において、さらに、前記チタン合金に対して、制御された歪みを付与する工程を含む、方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、前記チタン合金に対する制御された歪みの前記付与は、前記チタン合金の調質圧延または張力レベリングで行う、方法。
  14. 高温および高応力環境において使用されるチタン合金の製造方法であって、
    前記チタン合金の第1の熱処理を、前記チタン合金の結晶構造が、体積率でβ相の50%よりも大きくなる温度よりも低い、815.6〜871.1℃(1500〜1600゜F)の第1の温度で行う工程と、
    次いで、前記チタン合金を所望の厚さに、冷間圧延する工程と、
    次いで、前記チタン合金の第2の熱処理を、前記チタン合金内で第2相を析出させるために、482.2〜593.3℃(900〜1100゜F)の第2の温度で行う工程と、
    次いで、前記チタン合金の第3の熱処理を、前記チタン合金を、析出粒子を溶解せずに再結晶化する、648.9〜871.1℃(1200〜1600゜F)の第3の温度で行う工程と、を含む方法。
  15. 高温および高応力環境において使用されるチタン合金の製造方法であって、
    前記チタン合金の第1の熱処理を、前記チタン合金の結晶構造が、体積率でβ相の50%よりも大きくなる温度よりも低い、815.6〜871.1℃(1500〜1600゜F)の第1の温度で行う工程と、
    次いで、前記チタン合金を所望の厚さに、冷間圧延する工程と、
    次いで、前記チタン合金の第2の熱処理を、ASTM3グレードの結晶粒径とASTM6グレードの結晶粒径と間におけるチタン合金の結晶粒径が達成されるように、第1の時間にわたり、前記第1の温度で行う工程と、
    次いで、使用中の結晶粒成長を防ぐためのケイ素化合物を析出するために、前記チタン合金の第3の熱処理を482.2〜593.3℃(900〜1100゜F)の第2の温度で行う工程と、を含む方法。
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