JP5176445B2 - 耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材および、その製造方法ならびに、その合金材を用いた排気装置 - Google Patents

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本発明は、四輪車、二輪車等自動車用の排気装置として使用されるチタン材料に関するものであり、メインマフラー部はもとより、600℃以上の高温に曝され、特に耐熱性、耐酸化性が要求されるエキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプや触媒マフラー等の部位に使用可能な軽量かつ耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材と本チタン合金材を用いた排気装置に関するものである。
チタン材料は、軽量でありながら高強度で耐食性も良好であることから自動車の排気装置にも使用されている。自動車やバイクのエンジンから排出される燃焼ガスは、エキゾーストマニホールドにより一つにまとめられ、エキゾーストパイプにより車両後方の排気口から排出される。エキゾーストパイプは、途中に触媒やマフラー(消音器)を入れるためいくつかに分割されて構成される。本明細書では、エキゾーストマニホールドからエキゾーストパイプ、排気口までの全体を通して排気装置と称する。
こうした排気装置の素材は現在、耐食性に優れたステンレス鋼が主に使われているが、車輌軽量化の観点から最近二輪車を中心としてチタンが使われるようになってきた。現在使用されているチタン製マフラーの材料は、大部分がJIS2種の工業用純チタンである。排気ガスの温度は、およそ700℃以上と言われており、純チタンは、600℃以上の温度では通常強度が大きく低下するが、マフラー部分はエンジンの排気ガス出口からは遠い上、外気に触れているため、600℃以上となることは少なく、600℃以上になっても長時間その温度にさらされることはないため、純チタンでも十分に使用が可能であった。
しかし、近年、よりエンジンの排気口に近い部分まで軽量化したいニーズや、排気ガスの有害成分除去のため、高温で使用する触媒を搭載したマフラーが出てきており、より高温強度が高く、耐酸化特性に優れるチタン合金が求められている。
600℃以上の高温において強度が高いという観点では、Ti−3Al−2.5V合金やTi−6Al−4V合金が適している。
また、特許文献1では、冷間加工性と室温での成形加工性と高温強度を併せ持つチタン合金が提案されている。
特許文献2では、耐酸化性および耐食性に優れたチタン合金が、特許文献3では、冷間加工性に優れる耐熱チタン合金板およびその製造方法がそれぞれ提案されている。また、特許文献4では、表面に保護膜を被覆したチタン合金が提案されている。
特開2001−234266号公報 特開2005−290548号公報 特開2005−298970号公報 特開2007−100171号公報
しかしながら、上記Ti−3Al−2.5V合金は室温における強度が強すぎ、成形加工性に乏しいこと、また、700℃付近の温度における酸化増量が大きいこと、冷間加工は可能であるが、耳割れを生じ易く中間焼鈍を何度も入れる必要があり加工コストがかかること等の問題があった。また、Ti−6Al−4V合金は、冷間加工が困難で薄板にすることができないため、排気装置用素材として不適当である。
一方、特許文献1に記載の発明は、0.5〜2.3質量%のAlを含むチタン合金であるが、700℃付近の酸化増量が大きくスケール剥離が顕著であるため、スケール剥離後の表面が再度酸化されては、そのスケールが剥離することが繰り返され、不均一でかつ、顕著な減肉を引き起こし、より高温となる部位での使用は難しいのが現状である。
また、特許文献1、段落18では、温間〜熱間域での耐熱強度向上効果を有する元素としてW,Ta,Nb,希土類元素などを添加することも可能であることが記載されているが、これは一般的な耐熱強度向上元素としての添加を意図したものであり、耐熱性を向上させる元素として必要な添加量の記載は一切なく、これらの元素を添加した合金の実施例もない。また、Al以外に耐酸化性を向上させる元素の記載はない。
また、特許文献2に記載の発明は、Alを0.30〜1.50%、Siを0.10〜1.0%、さらにNbを0.1〜0.5%含有するチタン合金であるが、Alを0.3〜1.5%含むチタン合金は、成形加工性、特に肉厚が減じる方向で加工が起こる張り出し成形性が悪い。Siは主に結晶粒成長抑制に効果があり、Alと複合添加されることにより、高温強度の向上、耐高温酸化性の向上が得られるとしている。Nbは耐スケールロス性、耐酸素拡散層形成性を高める元素として添加されているが、Alの0.30〜1.50%の含有を前提としたチタン合金では、成形加工性の低下は避けられない。
特許文献3では、質量%で、0.3〜1.8%のCu、0.18%以下の酸素、0.30%以下のFe、必要に応じて、さらに、Sn、Zr、Mo、Nb、Crの少なくとも1種または2種以上を、合計で0.3〜1.5%含有し、残部Tiおよび0.3%未満の不純物元素からなるチタン合金であるが、800℃における耐酸化性において必ずしも十分ではなかった。
特許文献4では、Siを15〜55質量%、Cを10〜45質量%含有し、さらにAlを20〜60質量%含有する保護膜が被覆するTi−Cu合金、またはTi−Cu−Nb合金板が提案されているが、チタン合金板に保護膜を塗布する場合、塗布後に加工すると保護膜が剥がれてしまう問題、また、加工後に保護膜を塗布すると均一な厚さに塗布できず耐酸化性が不十分となる箇所が出来てしまう問題があった。
そこで、本発明は、700℃以上の高温に曝されるエキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプや触媒マフラー等の部位に使用可能な、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材およびその合金材を用いた排気装置を提供することを目的とするものである。
本発明者は、Ti−Cu二元系チタン合金に様々な元素を添加し高温酸化増量に対する効果を調査した。その結果、適量のSiを添加することにより、700℃以上の高温における酸化増量が著しく減少すること、600℃以上の高温強度が上昇すること、およびNbを複合添加すると、より耐酸化性が向上すること。室温における0.2%耐力はNbを添加しないものに比べ、同等かやや高い程度であること、伸びは、Nbを添加しないものと同等かやや小さい程度であり、室温における加工性にほとんど影響を与えないことを見出した。
本発明はこのような知見に基づくものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1) 質量%で、Cu:0.5〜1.8%、酸素:0.1%以下、Si:0.1〜0.6%を含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材。
(2)前記チタン合金が、さらに、質量%で、Nbを0.1〜1.0%含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、(1)に記載の耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材。
(3)溶解、熱延、冷延、最終焼鈍の工程を経て製造されるチタン合金板の製造方法において、前記溶解での成分調整を(1)または(2)に記載の成分組成に調整するとともに、前記最終焼鈍を700〜830℃の温度域にて行うことを特徴とする冷間加工性に優れる、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材。
(4)溶解、熱延、熱延板焼鈍、冷延、最終焼鈍の工程を経て製造されるチタン合金板の製造方法において、前記溶解での成分調整を(1)または(2)に記載の成分組成に調整するとともに、前記熱延板焼鈍を700〜830℃の温度域にて行い、あるいは、前記最終焼鈍を630〜700℃の温度で行うことの一方又は両方とすることを特徴とする、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材の製造方法。
(5)エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒、マフラーのいずれか1または2以上の部品が、(1)または(2)に記載のチタン合金材で構成されていることを特徴とする排気装置。
本発明によれば、軽量かつ高温で十分な強度があり、耐酸化性に優れ、かつ室温における加工性の良好なチタン合金を、溶解・圧延により製造、提供することが可能になり、四輪車、二輪車等自動車の排気装置の軽量化が大きく進み、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明におけるチタン合金では、ベースとなる合金元素としてCuを選択した。Cuは790℃の高温において、チタンに2.1質量%まで固溶する。冷却の過程でTi2Cuを析出するが、その析出は遅く、多くのCuを固溶できるため、高い高温強度が得られる。Cu添加は、チタンの変形の元となる双晶変形を抑制しないため延性を劣化させず、また、固溶強化作用により強度を上げる代わりに、延性を低下させる酸素の含有量も低く抑えているため、室温における成形加工性は純チタン並みに良好である。高温酸化は、添加されたSiが高温に晒された際にシリコン酸化物を表層に形成し、バリアーとなるため、酸素のチタン内部へ拡散が抑制され、優れた耐酸化性を示す。さらに、酸化を抑制する元素として周期律表で言えばVa属のNbを選ぶことにより、特に600℃〜700℃における耐酸化性向上を目指した。Nbはチタンの酸化膜中に固溶し、チタンが4価であるのに対し、5価であるため、酸化膜中の酸素の空孔濃度が低下し、酸化膜中の酸素の拡散が抑制される。チタンの酸化は、酸化膜中を酸素が拡散して表面のチタンと結びつくことにより起こるいわゆる内方拡散と呼ばれる酸化形態をとるため、酸素の拡散が抑制されれば酸化が抑制される。しかし、理由は不明であるが、同じVa属の元素であっても、Vは耐酸化性には特に有効性はなかった。一方、Nbの適量添加は高温での強度上昇に効果があるものの室温における加工性には影響を与えない。すなわち、Ti−Cu−Si合金にNbを適量添加すると、室温における加工性にほとんど影響を与えず、高温強度が高く、耐酸化性に優れたチタン合金が得られる。
本発明のチタン合金は、高温、特に700℃における強度と室温における加工性が良好であること、および700℃以上における耐酸化性を第一の要件としている。高温強度および室温強度の目安は、JIS2種の工業用チタンの700℃における圧延方向の0.2%耐力の1.5倍、すなわち30N/mm2以上で、排気系部品の高温化対応または軽量化に資して、その優位性が明確となり、また、室温における圧延方向の0.2%耐力は、純チタン2種材と同等の300N/mm2以下、かつ室温における圧延方向の伸びは純チタン2種材と同等の28%以上であることで、排気系部品を製造する際に必要とされる冷間加工性が確保される。耐酸化性の目安は、酸素の内方拡散律速によって、表面酸化層の成長速度が放物線則にほぼ従い、その成長が実質的に飽和して、表面酸化層の剥離がほとんど生じない厚さに保たれると考えられる指標である、700℃における200時間の加熱で酸化増量が15g/m2以下、800℃における酸化増量が65g/m2以下であることである。
請求項1に記載の本発明では、質量%で、Cu:0.5〜1.8%、酸素:0.1%以下、Si:0.1〜0.6%を含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする排気系部品用チタン合金材とした。Cu、Si、酸素の添加量を限定した理由は、以下の通りである。
Cuの添加量が0.5%よりも少ないと700℃における0.2%耐力が30N/mm2以上とならないためであり、1.8%よりも多いと溶解の際に凝固偏析が起こり、均質な材料が得られない。
Siの添加量が0.1%よりも少ないと700℃、200時間連続酸化における酸化増量が15g/m2以下、800℃、200時間連続酸化における酸化増量が65g/m2以下とならないためであり、0.6%よりも多いと酸化増量抑制効果は飽和するだけでなく、室温における0.2%耐力が300N/mm2を超え、伸びが28%を下回るためである。
請求項2に記載の本発明では、さらに、質量%で、Nbを0.1〜1.0%添加した。Siと複合添加された場合、特に耐高温酸化性が向上する。耐酸化性の向上には、0.1%以上の添加が必要であり、上限の1.0%はこれを超えて添加しても効果が飽和する添加量である。
さて、請求項3または4に記載の本発明(以下、本発明(3)、(4))は、特に自動車の排気系で多用される薄板の製造方法に関するものである。すなわち、本発明(3)は、溶解、熱延、冷延の工程を経て製造される、本発明(1)または(2)のチタン合金成分を有する薄板の製造方法において、700〜830℃の温度域にて焼鈍を行うことを特徴とする、本発明(1)または(2)のチタン合金板の製造方法である。これは、加工性と高温強度の観点から、固溶Cu量をできるだけ増やすことを狙った条件である。もちろん、この温度範囲外で焼鈍等の熱処理を行っても、本発明(1)または(2)の成分であれば、本発明の効果は十分に発揮されるが、この温度範囲で焼鈍を行うと、本発明の効果をさらに高めることができる。すなわち、700〜830℃はTi2Cuの生成量が少なく、α相中への固溶Cu量が大きくなる温度範囲であり、この温度域で焼鈍することにより、冷間加工性を損なうことなしに、必要な高温強度を確保できる。
なお、焼鈍後の冷却中にTi2Cuが生成すると、それによる析出強化等で、焼鈍による延性の向上効果が損なわれてしまうことが懸念されるが、Ti2Cuの析出はきわめて遅く、空冷や炉冷程度の冷却速度では、焼鈍効果が損なわれてしまうほどのTi2Cuが生成することはない。
また、いったん700〜830℃の温度範囲で焼鈍を行う、または、その後冷間加工し、700℃以下の温度で再度焼鈍を行っても、Ti2Cuの析出が遅いことから、実際的な熱処理時間内ではTi2Cuはほとんど生成せず、α相中に多量に固溶したCuを維持することができる。すなわち、最終の冷間圧延前の焼鈍(熱延板焼鈍)を700〜830℃の温度範囲で行う、または、冷間圧延後の最終焼鈍を、700℃以下の温度で行えば、α相中に多量に固溶したCuを維持することができる。最終の冷間圧延前の焼鈍(熱延板焼鈍)を700〜830℃の温度範囲で行い、さらに、冷間圧延後の最終焼鈍を700℃以下の温度で行えばより好ましい。この製造方法を適用したのが、請求項4に記載の本発明である。十分に歪が除去されて軟化し、かつ、結晶粒径が粗大にならないよう、冷間圧延後の最終焼鈍温度は、630〜700℃が望ましい。
請求項5に記載の本発明では、請求項1、または請求項2に記載のチタン合金材を用いて排気装置を製作したものである。本発明のチタン合金材は、JIS2種の工業用チタンに準じた加工性、溶接性を有しているので、JIS2種の工業用チタンに準じた方法により、溶解、圧延、成形が可能であり、冷延焼鈍された薄板を管状に湾曲してTIG溶接し、各パーツを溶接することにより排気装置とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明の構成と作用効果をより具体的に説明する。
VAR(真空アーク溶解)にて表1に示す組成のチタン材を溶解し、これを熱間鍛造によりスラブとし、860℃に加熱した後、熱間連続圧延ミルにて板厚3.5mmの熱間圧延ストリップとした。この熱延ストリップの酸化スケールをショットブラスト及び酸洗により除去し、続いて、1mm厚の冷延ストリップとした。その後、750℃×1時間、炉冷の真空焼鈍(最終焼鈍)を行った。
これらの供試材からJIS13号Bの試験片を切出し、室温引張試験を行った。また、700℃においてJISG0567に準拠の高温引張試験を行った。高温の酸化試験は20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700、800℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。
Figure 0005176445
測定結果を表1にまとめて示す。表1において、No.1からNo.4は、請求項1に記載の本発明の実施例である。いずれも700℃における圧延方向の0.2%耐力は、JIS2種の工業用チタンの1.5倍、すなわち30N/mm2以上であり、室温における圧延方向の0.2%耐力は300N/mm2以下、かつ室温における圧延方向の伸びは28%以上であった。耐酸化性では、700℃における200時間の加熱での酸化増量は15g/m2以下、800℃における酸化増量は60g/m2以下であり、室温における十分な加工性と高温における十分な耐力、かつ高温における優れた耐酸化性を示している。
Nb添加したNo.5からNo.8は、室温の0.2%耐力や伸び、700℃における耐力はNo.1から4と同等であるが、700℃および800℃200時間加熱後の酸化増量が減少し、耐酸化性が向上している。
一方、SiおよびNbの添加のないNo.9では、700℃及び800℃における酸化増量が著しく高く、耐酸化特性に劣る。Cuの含有量が少ないNo.10では700℃における0.2%耐力が目標値に達せず、Si含有量が本発明の上限を超えるNo.11では室温における0.2%耐力が400MPaを超えて硬化し、また伸びが目標値とする28%よりも低下した。酸素含有量が本発明の上限を超えるNo.12でも室温における0.2%耐力が400MPaを超えて硬化し、また伸びが目標値とする28%よりも低下した。
また、Vを1.3質量%、または2.5質量%含むNo.13は700℃における0.2%耐力が高く、高温強度の観点で優れているが、室温における延性が不十分であり、かつ700℃および800℃における酸化増量もそれぞれ、40g/m2、270g/m2を超え、十分な耐酸化性を有していない。
VAR(真空アーク溶解)にて表2に示す組成のチタン材を溶解し、これを熱間鍛造によりスラブとし、860℃に加熱した後、熱間連続圧延ミルにて板厚3.5mmの熱間圧延ストリップとした。この熱延ストリップを、720℃×2分、空冷の連続焼鈍(熱延板焼鈍)し、さらに酸化スケールをショットブラスト及び酸洗により除去し、続いて、1mm厚の冷延ストリップとした。その後、680℃×4時間、炉冷の真空焼鈍(最終焼鈍)を行った。
これらの供試材からJIS13号Bの試験片を切出し、室温引張試験を行った。また、700℃においてJISG0567に準拠の高温引張試験を行った。高温の酸化試験は20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700、800℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。
Figure 0005176445
測定結果を表2にまとめて示す。表2において、No.14からNo.17は、請求項1に記載の本発明の実施例である。いずれも700℃における圧延方向の0.2%耐力は、JIS2種の工業用チタンの1.5倍、すなわち30N/mm2以上であり、室温における圧延方向の0.2%耐力は300N/mm2以下、かつ室温における圧延方向の伸びは28%以上であった。耐酸化性では、700℃における200時間の加熱での酸化増量は15g/m2以下、800℃における酸化増量は60g/m2以下であり、室温における十分な加工性と高温における十分な耐力、かつ高温における優れた耐酸化性を示している。
Nb添加したNo.18からNo.21は、室温の0.2%耐力や伸び、700℃における耐力はNo.14から17と同等であるが、700℃および800℃200時間加熱後の酸化増量が減少し、耐酸化性が向上している。
表1の試験番号2、および5の素材を製造する際の中間製品である厚さ3.5mmの熱間圧延ストリップから平板を採取し、おのおの表3に示した条件で熱延板焼鈍を行い、さらに酸化スケールをショットブラスト及び酸洗により除去し、続いて、1mm厚の冷延板とした。その後、表3に記した条件で冷延板焼鈍(最終焼鈍)を行い、これらの供試材からJIS13号Bの試験片を切出し、室温引張試験を行った。また、700℃においてJISG0567に準拠の高温引張試験を行った。高温の酸化試験は20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700または、800℃のいずれかの温度で大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。
Figure 0005176445
測定結果を表3にまとめて示す。No.22〜25については、請求項4に示す温度での熱延板焼鈍及び最終焼鈍により、α相中に多量に固溶したCuが維持され、700℃における高温強度が向上した。
なお、No.26、27は、熱延板焼鈍温度が、請求項4に記載の熱延板焼鈍温度範囲に入らないが、最終焼鈍温度である冷延板焼鈍温度が、請求項4に記載の最終焼鈍温度範囲に入る場合の結果を示している。一方、No.28は、熱延板焼鈍温度が、請求項4に記載の熱延板焼鈍温度範囲に入るが、最終焼鈍温度である冷延板焼鈍温度が、請求項4に記載の最終焼鈍温度範囲に入らない場合の結果を示している。
これらNo.26〜28は、請求項4の条件を満たすものの、No.22〜25に比べ、700℃高温強度(耐力)が劣り、同化学成分どうしでは、700℃または800℃のいずれかの温度で大気中に200h暴露後の酸化増量がわずかに大きい。しかし、No.26〜28は、700℃高温強度(耐力)で、30N/mm2以上が得られ、700℃または800℃大気中200h保持後の酸化増量も実用上問題のない低いレベルに抑えられた。
表1のNo.6に示す成分のチタン合金を真空アーク溶解炉で溶製し、熱間鍛造スラブとし、860℃に加熱した後、熱間連続圧延ミルで、厚さ4mmの熱延ストリップとした。この熱延ストリップを、720℃×2分、空冷の連続焼鈍(熱延板焼鈍)し、さらに酸化スケールをショットブラスト及び酸洗により除去し、厚さ1mmまで冷間圧延し、680℃、8時間の熱処理を施した。
上記薄板を幅120mmで切り出し、外径38mmの溶接管を製造した。湾曲加工後、TIG溶接で溶接管を製造した。溶接管の製造工程は、JIS2種の工業用チタンに準じた薄板を用いて製造する場合と同様とした。
溶接管端部に60°の円錐形コーンを押し込み、初期直径の1.3倍まで押し広げたところ、溶接部に割れは生じず、良好な押し広げ特性を有していた。また、本溶接管を半径90mmで90°曲げ加工したしたところ、割れや皺などは生じなかった。
本発明のチタン合金材は、高温強度が高く、かつ耐酸化性に優れ、室温における延性も良好で、溶接管の製造が従来の純チタン材並に容易であり、四輪車や二輪車等自動車のメインマフラー部はもとより、エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプや触媒マフラー等の排気装置用部材に利用することが可能である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    Cu:0.5〜1.8%、
    Si:0.1〜0.6%、
    酸素:0.1%以下を含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材。
  2. 前記チタン合金が、さらに、質量%で、
    Nbを0.1〜1.0%含有し、残部Tiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載の耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材。
  3. 溶解、熱延、冷延、最終焼鈍の工程を経て製造されるチタン合金板の製造方法において、前記溶解での成分調整を請求項1または2に記載の成分組成に調整するとともに、前記最終焼鈍を700〜830℃の温度域にて行うことを特徴とする、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材の製造方法。
  4. 溶解、熱延、熱延板焼鈍、冷延、最終焼鈍の工程を経て製造されるチタン合金板の製造方法において、前記溶解での成分調整を請求項1または2に記載の成分組成に調整するとともに、
    前記熱延板焼鈍を700〜830℃の温度域にて行う、あるいは、その後の前記最終焼鈍を630〜700℃の温度で行うことの一方又は両方とすることを特徴とする、耐酸化性および成形性に優れた排気系部品用チタン合金材の製造方法。
  5. エキゾーストマニホールド、エキゾーストパイプ、触媒、マフラーのいずれか1または2以上の部品が、請求項1または、請求項2に記載のチタン合金材で構成されていることを特徴とする排気装置。
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