JP5531581B2 - 光検知器 - Google Patents
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Description
量子ドット型赤外線検知器は、例えば、InAs量子ドットがAlGaAs障壁層で挟み込まれた構造を有する。通常、赤外線を検知する検知効率を高めるために、量子ドットを障壁層で挟み込んで構成される量子ドット層を複数積層させるようにしている。
このような量子ドット型赤外線検知器では、図10に示すように、外部から赤外線が入射すると、量子ドットの伝導帯側の量子準位に束縛されている電子が、サブバンド間励起される。電極間に電位差が与えられているため、ある量子ドットで赤外線によってサブバンド間励起された電子は、高電位側の電極まで輸送され、電流が流れることとなる。そして、この電流を検知することで、外部から入射する赤外線を検知することができるようになっている。
検知効率は、量子ドットの量子準位に束縛されているキャリア量やサブバンド間励起されたキャリアの電極までの輸送効率に関係する。このため、高性能な量子ドット型光検知器を実現するためには、キャリア量と輸送効率を共に高めることが必要となる。
しかしながら、一般的な量子ドットでは、3次元方向に量子閉じ込めがなされていることから量子準位の離散化が進んでいる。このため、緩和確率は十分に高くはなく、束縛準位への電子供給は不十分な状態にある。したがって、十分に高い検知効率が得られていない。
しかしながら、このような構造では、一の量子ドット層よりも低電位側に位置する量子ドット層(図12中、左の方向にある別の量子ドット層)においてサブバンド間励起された電子も、一の量子ドット層の近傍で停留してしまうことになる。このため、高電位側の電極への電子の輸送効率が低下してしまうことになる。したがって、このような構造においても十分に高い検知効率が得られないと考えられる。
そこで、輸送効率を低下させずに、量子ドットの束縛準位へのキャリア供給を十分に行なえるようにして、十分に高い検知効率が得られるようにしたい。
また、本光検知器は、量子ドットと、量子ドットを挟む障壁層とを備える複数の量子ドット層を含む光検知素子と、光検知素子を駆動する駆動回路とを備え、入射する光に応じて光検知素子に流れる電流を検知する検知期間に高電位となる側の障壁層のエネルギ障壁は、バイアス電圧を印加していない状態で、検知期間に低電位となる側の障壁層のエネルギ障壁よりも高くなっており、駆動回路が、検知期間以外の期間に、検知期間に印加するバイアス電圧と極性が同じで値が小さい電圧を光検知素子に印加して、検知期間に流れる電流とは同じ向きの電流を光検知素子に流すためのキャリア供給回路を含むことを要件とする。
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる光検知器について、図1〜図6を参照しながら説明する。
本実施形態では、本発明を、例えば赤外線の入射量に応じて光電流を発生しうる赤外線検知器であって、量子ドットを赤外線吸収部として用いる量子ドット型赤外線検知器(Quantum Dot Infrared Photodetector;QDIP)に適用した場合を例に説明する。
本実施形態では、赤外線検知素子5は、GaAs基板7上に、下部n型GaAs電極層8(コンタクト層)、InAs量子ドット1の上下をAlGaAs障壁層2,3で挟み込んでなる複数の量子ドット層4、上部n型GaAs電極層9(コンタクト層)を積層した構造になっている。つまり、下部AlGaAs障壁層2上に形成されたInAs量子ドット1を上部AlGaAs障壁層3によって埋め込むことによって各量子ドット層4が形成されており、これらの量子ドット層4を挟み込むように両側にn型GaAs電極層8,9が設けられている。また、下部n型GaAs電極層8及び上部n型GaAs電極層9には、それぞれ、AuGe/Au電極10,11が取り付けられている。そして、これらの電極10,11は駆動回路6に接続されている。
特に、本実施形態では、一の量子ドット層4を構成する両側のAlGaAs障壁層2,3、即ち、InAs量子ドット1を挟む一側及び他側のAlGaAs障壁層2,3は、AlとGaの組成を連続的に変化させた材料からなる。
このようにして、本実施形態では、図2(A)に示すように、伝導帯エネルギーバンド構造において、一の量子ドット層4を構成する量子ドット1の一側の障壁層2のエネルギ障壁が、バイアス電圧を印加していない状態で、量子ドット1の他側の障壁層3のエネルギ障壁よりも高くなるようにしている。つまり、一の量子ドット層4[図2(A)中、右側]を構成する量子ドット1の検知期間に低電位となる側[図2(A)中、左側]の障壁層2のエネルギ障壁が、バイアス電圧を印加していない状態で、量子ドット1の検知期間に高電位となる側[図2(A)中、右側]の障壁層3のエネルギ障壁よりも高くなるようにしている。なお、図2(A)では、障壁層2,3の組成が連続的に変化することによって、障壁層2,3の伝導帯端のエネルギーレベルが連続的に変化している様子を示している。このように、量子ドット1を挟む両側の障壁層2,3のエネルギ障壁の高さが非対称性を有するものとなっている。
これに対し、本実施形態では、量子ドット1の束縛準位へのキャリア供給を十分に行なえるようにすべく、検知期間以外の期間(ここでは読出期間)に、検知期間に印加するバイアス電圧の向きと逆向きのバイアス電圧を印加するようにしている。これにより、検知期間以外の期間に、検知期間に流れる電流とは逆向きの電流が赤外線検知素子5に流れることになる。
このため、本実施形態では、図3に示すように、駆動回路6が、検知期間以外の期間に、検知期間に流れる電流とは向きが異なる電流を赤外線検知素子5に流すためのキャリア供給回路12(電流切替回路)を含む。
まず、検知期間の動作について説明する。
図4に示すように、検知期間において、コントローラからの指令に基づいて、スイッチG0はOFFにされ、スイッチG1はONにされる。
つまり、検知期間の開始時点でスイッチG1がONにされる。これにより、蓄積容量Cの両端に印加されている電圧V0(V0>0)が赤外線検知素子5に加わり、赤外線検知素子5に正の電流(図3中、矢印で示す向きの電流I)が流れる。
検知期間が終了する時点では、蓄積容量Cに蓄積されている電荷は検知期間の開始時点よりも減少しているため、接点Xの電圧V0は電圧降下を起こしている。
次に、読出期間の動作について説明する。
読出期間の開始時点でスイッチG1はOFFにされ、接点Xの電圧V0の電圧値が出力端子から読み出される。検知期間に赤外線の入射量に応じて赤外線検知素子5に流れる電流が増加し、これに応じて接点Xの電圧V0の電圧値が変わるため、接点Xの電圧V0の電圧値を読み出すことで、赤外線の入射量を検知することができる。
そして、読出期間の終了時点でスイッチG0はOFFにされる。
このような検知期間の動作及び読出期間の動作は、交互に繰り返されることになる。
つまり、図4に示すように、読出期間において、コントローラからの指令に基づいて、スイッチG2はONにされる。これにより、赤外線検知素子5に、検知期間に印加されるバイアス電圧V1とは逆向きのバイアス電圧V2(V2<0)が加わり、赤外線検知素子5に負の電流(図3中、矢印で示す向きの電流Iに対して逆向きの電流)が流れる。この結果、量子ドット1の束縛準位への電子の供給が十分に行なわれる。
一方、検知期間においては、コントローラからの指令に基づいて、スイッチG2はOFFにされる。このため、赤外線検知素子5に流れる電流は、駆動回路6にキャリア供給回路12が備えられていない場合と同じである。
次に、本実施形態にかかる量子ドット型赤外線検知器の製造方法について説明する。
まず、例えば分子線エピタキシャル法によって、GaAs基板7上に、n型GaAs電極層8(コンタクト層)を、例えば基板温度600℃で成長させる(図1参照)。
ここでは、厚さは例えば1000nmとし、n型不純物として、例えばSiを用い、その濃度は例えば2×1018/cm3としている。
ここでは、厚さは例えば50nmとしている。また、成長中にAl組成比を例えば0.2から例えば0.3まで連続的に変化させて傾斜組成AlGaAs障壁層を成長させている。このような組成の変化は、例えばAlあるいはGaのセルの温度を時間的に変化させることにより実現することができる。
そして、基板温度を例えば500℃に維持したまま、成長速度が例えば0.2ML/s(原子層/秒)となるように、InAsを2ML供給する。この供給過程でInAsに加わる圧縮歪が増し、InAsが3次元成長してInAs量子ドット1が形成される(自己組織化形成法)(図1参照)。
ここでは、上述のAlGaAs障壁層2を形成する場合と同様に、成長中にAl組成比を例えば0.2から例えば0.3まで連続的に変化させて傾斜組成AlGaAs障壁層を成長させている。
そして、最後のAlGaAs障壁層3を成長させている間に、基板温度を例えば500℃から例えば600℃に上昇させる。
次に、例えば基板温度600℃で、n型GaAs電極層9(コンタクト層)を成長させる(図1参照)。
このようにして、複数の量子ドット層4がn型GaAs電極層8,9によって挟み込まれた積層構造が形成される(図1参照)。
その後、例えばフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって、基板側に位置するn型GaAs電極層8までの一部を除去する加工を行なう(図1参照)。
そして、このようにして形成された2つのAuGe/Au電極10,11を、例えばCMOSなどの駆動回路6に接続する(図1参照)。これにより、図1に示すような量子ドット型赤外線検知器が製造される。
したがって、本実施形態にかかる光検知器によれば、輸送効率を低下させずに、量子ドット1の束縛準位へのキャリア供給を十分に行なうことができ、十分に高い検知効率が得られるという利点がある。
[第2実施形態]
第2実施形態にかかる光検知器(量子ドット型赤外線検知器)について、図7を参照しながら説明する。
つまり、上述の第1実施形態では、駆動回路6が、入射する赤外線に応じて赤外線検知素子5に流れる電流を検知する検知期間以外の期間に、検知時間に流れる電流とは向きが異なる電流を赤外線検知素子5に流すためのキャリア供給回路12(電流切替回路)を含むようにしている。
ここでは、上述の第1実施形態の駆動回路6(図3参照)において、スイッチG1と赤外線検知素子5との間に接続するスイッチG2を介して、赤外線検知素子5とバイアス電源(バイアス電圧V1の向きと同じ向きで大きさが異なるバイアス電圧V2;V2>0かつV2<V1)とが接続されるようにしている。このように、駆動回路6は、検知期間以外の期間に、検知期間に印加するバイアス電圧と極性が同じで値が異なる電圧を赤外線検知素子5に印加するためのスイッチG2を含むキャリア供給回路12を備えるものとしている。
本実施形態では、AlGaAs障壁層2,3を、低電位側となる面がAl0.25Ga0.75Asからなり、高電位側となる面がAl0.2Ga0.8Asからなり、低電位側から高電位側へ向けてAl組成を0.25から0.20まで連続的に変化させた傾斜組成AlxGa1−xAs(0.20≦x≦0.25)層としている。
したがって、本実施形態にかかる光検知器によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、輸送効率を低下させずに、量子ドット1の束縛準位へのキャリア供給を十分に行なうことができ、十分に高い検知効率が得られるという利点がある。
[第3実施形態]
第3実施形態にかかる光検知器(量子ドット型赤外線検知器)について、図8,図9を参照しながら説明する。
つまり、上述の第1実施形態(図1参照)では、量子ドット1を挟む両側の障壁層2,3を、同一の傾斜組成AlGaAs障壁層としているのに対し、本実施形態では、図8に示すように、量子ドット1を挟む両側の障壁層2A,3Aを、組成を変化させずに、互いに異なる材料からなるものとし、2層構造にしている点が異なる。なお、図8では、上述の第1実施形態のものと同一のものには同一の符号を付している。
なお、本量子ドット型赤外線検知器を構成する各結晶層は例えば分子線エピタキシー(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法による結晶成長によって形成される。
まず、GaAs基板7上に、n型GaAs電極層8(コンタクト層)を、例えば基板温度600℃で成長させる(図8参照)。
次いで、n型GaAs電極層8上に、AlGaAs障壁層2Aを成長させる(図8参照)。
ここでは、厚さは例えば50nmとし、Al組成比を例えば0.1とする。また、AlGaAs障壁層2Aを成長させている間に、基板温度を例えば600℃から量子ドット1の自己組織化形成が起こり得る温度、例えば500℃まで低下させる。
次いで、InAs量子ドット1を覆うように、例えば厚さ25nmのGaAs障壁層3Aを成長させる(図8参照)。
その後、上述のようなInAs量子ドット1の形成工程と、GaAs障壁層3Aの形成工程と、AlGaAs障壁層2Aの形成工程とを、例えば8回繰り返す(図8参照)。
そして、最後のInAs量子ドット1を形成した後、InAs量子ドット1を覆うように、例えば厚さ50nmのGaAs障壁層3Aを成長させる(図8参照)。
次に、例えば基板温度600℃で、n型GaAs電極層9(コンタクト層)を成長させる(図8参照)。
ここでは、厚さは例えば1000nmとし、n型不純物として、例えばSiを用い、その濃度は例えば2×1018/cm3としている。
その後、例えばフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって、基板側に位置するn型GaAs電極層までの一部を除去する加工を行なう(図8参照)。
引き続き、例えば金属蒸着法によって、2つのn型GaAs電極層8,9上に、それぞれ、AuGe/Au電極10,11を形成する(図8参照)。
なお、その他の詳細は、上述の第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
つまり、外部より入射した赤外線に対する量子ドット1の応答として発生する電流を検知する機能を有する量子ドット型赤外線検知器において、赤外線検知素子5に含まれる量子ドット層4が非対称性を有し、また、駆動回路6がキャリア供給回路12を備える。このため、量子ドット1の束縛準位への電子供給が十分に行われた状態から電流を検知する時間が開始され、検知時間においてサブバンド間励起された電子は高電位側の電極へ高い効率で輸送されることとなる。これにより、高い検知効率を持つ量子ドット型赤外線検知器を実現することができる。
[その他]
なお、量子ドットを挟む両側の障壁層の構成は、上述の各実施形態のものに限られるものではなく、バイアス電圧を印加していない状態で、量子ドットを挟む両側の障壁層のエネルギ障壁の高さが非対称になっていれば良い。
また、上述の各実施形態では、アンドープの量子ドット層をn型コンタクト層で挟み込むようにしているが、これに限られるものではない。例えば、量子ドット層に不純物を添加しても良い。また、例えば、n型不純物(Si)に代えてp型不純物(Be)を添加して、n型コンタクト層をp型コンタクト層にしても良い。この場合、キャリアは正孔になり、価電子帯エネルギーバンド構造を利用することになる。
また、上述の各実施形態では、量子ドット層を10層にしているが、量子ドット層数は任意であり、数層から30層程度の範囲内で適宜選択すれば良い。
2,2A,3,3A 障壁層
4,4A 量子ドット層
5 赤外線検知素子(光検知素子)
6 駆動回路
7 GaAs基板
8 n型GaAs電極層
9 n型GaAs電極層
10,11 AuGe/Au電極
12 キャリア供給回路
C 蓄積容量
G0 スイッチ
G1 スイッチ
G2 スイッチ
X 接点
Claims (5)
- 量子ドットと、前記量子ドットを挟む障壁層とを備える複数の量子ドット層を含む光検知素子と、
前記光検知素子を駆動する駆動回路とを備え、
入射する光に応じて前記光検知素子に流れる電流を検知する検知期間に低電位となる側の前記障壁層のエネルギ障壁は、バイアス電圧を印加していない状態で、前記検知期間に高電位となる側の前記障壁層のエネルギ障壁よりも高くなっており、
前記駆動回路が、前記検知期間以外の期間に、前記検知期間に印加するバイアス電圧と極性が異なる電圧を前記光検知素子に印加して、前記検知期間に流れる電流とは逆向きの電流を前記光検知素子に流すためのキャリア供給回路を含むことを特徴とする光検知器。 - 量子ドットと、前記量子ドットを挟む障壁層とを備える複数の量子ドット層を含む光検知素子と、
前記光検知素子を駆動する駆動回路とを備え、
入射する光に応じて前記光検知素子に流れる電流を検知する検知期間に高電位となる側の前記障壁層のエネルギ障壁は、バイアス電圧を印加していない状態で、前記検知期間に低電位となる側の前記障壁層のエネルギ障壁よりも高くなっており、
前記駆動回路が、前記検知期間以外の期間に、前記検知期間に印加するバイアス電圧と極性が同じで値が小さい電圧を前記光検知素子に印加して、前記検知期間に流れる電流とは同じ向きの電流を前記光検知素子に流すためのキャリア供給回路を含むことを特徴とする光検知器。 - 前記量子ドットの一側及び他側の前記障壁層は、互いに異なる材料からなることを特徴とする、請求項1又は2記載の光検知器。
- 前記量子ドットの一側及び他側の前記障壁層は、組成を連続的に変化させた材料からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光検知器。
- 前記キャリア供給回路は、前記検知期間以外の期間に前記バイアス電圧とは極性が異なる電圧又は極性が同じで値が小さい電圧を前記光検知素子に印加するためのスイッチを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光検知器。
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