JP5528789B2 - 液体口腔用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、口腔内細菌に対する殺菌活性を有する塩化セチルピリジニウムの歯牙表面への吸着効果を促進した、透明な液体口腔用組成物に関する。
塩化セチルピリジニウムは口腔内細菌に対する殺菌活性が高いだけでなく、口腔粘膜や歯牙表面に吸着し、歯牙や口腔粘膜の表面への口腔内細菌の吸着を阻害し、口腔衛生状態を改善したり、歯垢形成を抑制したりすることが知られている。そのため、塩化セチルピリジニウムは歯周疾患、口臭の予防・改善を目的として多くの口腔用組成物に配合されている。
この塩化セチルピリジニウムのようなカチオン性殺菌剤の口腔内細菌に対する殺菌活性をさらに高めるために種々の方法が開示されている。特許文献1には、塩化セチルピリジニウムにN−長鎖アシル塩基性アミノ酸の低級アルキルエステルまたはその塩を組み合わせると塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着が促進されること、さらに特許文献2には、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸の低級アルキルエステルまたはその塩によるカチオン性殺菌剤の歯牙への吸着促進作用が、pH5.5〜6.5の領域において最も高まることが開示されている。
また、特許文献3には、カチオン性殺菌剤と非イオン性界面活性剤とを併用した口腔用組成物に対し、特定の化合物を配合すると、殺菌剤の失活が効果的に防止されることが開示されている。また、特許文献4には、塩化セチルピリジニウムに特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を組合せると他の界面活性剤と比べて塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着を阻害しないことが開示されている。さらに、特許文献5には、塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着性を高めるために、ポリビニルアルコールが用いられている。しかし、これらの技術を以ってしても、依然として満足できる程度塩化セチルピリジニウムの活性を向上させることができないという問題があった。
特開平4−36231号公報 特開平9−286712号公報 特開昭60−255717号公報 特開平4−173728号公報 特開2003−113059号公報
本発明は、口腔内細菌に対する殺菌活性を有する塩化セチルピリジニウムの歯牙表面への吸着効果を向上させることで、塩化セチルピリジニウムの活性を高めた透明な液体口腔用組成物を提供することである。
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、塩化セチルピリジニウム、油溶性成分、非イオン性界面活性剤およびと特定のカルシウム塩を配合し、油溶性成分に対する非イオン性界面活性剤の配合比率及び配合量差分が特定の範囲である場合、塩化セチルピリジニウムの歯牙表面への吸着効果が顕著に高まる透明な液体口腔用組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、特に以下の項1〜6の液体口腔用組成物を提供するものである。
項1.
グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、L−アスコルビン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、硝酸カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であるカルシウム塩と、塩化セチルピリジニウム、油溶性成分および非イオン性界面活性剤を含有し、さらに油溶性成分に対する非イオン性界面活性剤の配合比率が0.57〜3.5であり、かつ油溶性成分(A)と非イオン性界面活性剤(B)の配合量の差(A)−(B)が、−0.25〜0.15であることを特徴とする透明な液体口腔用組成物。
項2.
油溶性成分が、油溶性薬効成分および/または香料からなることを特徴とする項1に記載の透明な液体口腔用組成物。
項3.
油溶性成分を0.1〜0.5質量%含有することを特徴とする項2に記載の透明な液体口腔用組成物。
項4.
油溶性薬効成分が、トリクロサン、酢酸トコフェロール、β−グリチルレチン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、イソプロピルメチルフェノール、ニコチン酸トコフェロール及び油溶性植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする項2又は3の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
項5.
塩化セチルピリジニウムを0.01〜1.0質量%含有することを特徴とする項1〜4の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
項6.
非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であることを特徴とする項1〜5の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
項7.
エチルアルコ-ルの配合量が1質量%未満であることを特徴とする項1〜6の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
また本発明はエチルアルコールを配合しないことを特徴とする液体口腔用組成物をも提供するものである。
本発明の液体口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウムの活性をさらに高めて歯牙表面への吸着効果を促進することにより、う蝕や歯周病などを引き起こす口腔内細菌の歯牙表面への吸着を阻害して歯垢の形成を効果的に抑制することが可能となり、その上でさらに製剤上の外観透明性を保持させて溶液安定性を向上させることにより、透明な液体口腔用組成物としての良好な性能品質を確保することができる。
本発明に係る透明な液体口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウム、油溶性成分、非イオン性界面活性剤および特定のカルシウム塩を配合し、さらに油溶性成分に対する非イオン性界面活性剤の配合比率が0.57〜3.5でありかつ油溶性薬効成分と非イオン性界面活性剤の配合量の差が−0.25〜0.15であることを特徴とするものである。なお、本願明細書において配合比率は、特に断りのない限り配合質量比率を表す。
本発明に用いる塩化セチルピリジニウムは、第四級アンモニウム化合物に含まれるカチオン性殺菌剤であり、口腔用組成物分野において広く使用されているものである。かかる塩化セチルピリジニウムは、本発明の液体口腔用組成物の全量に対して0.01〜1.0質量%を配合することができ、好ましくは0.01〜0.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.3質量%、最も好ましくは0.05質量%を配合することができる。0.01質量%未満になると、塩化セチルピリジニウムの歯牙表面への吸着効果が低下してしまい、一方1.0質量%を超えると、使用時の苦味、歯の着色等の問題が生じてしまうため好ましくない。
本発明に用いる油溶性成分は、油溶性薬効成分および香料が挙げられ、これらをそれぞれ単独であるいは両方を同時に用いることができる。本発明では特に、油溶性成分として油溶性薬効成分と香料を合わせて用いることが好ましく、油溶性成分が油溶性薬効成分およびl−メントールを含む香料であることが、より好ましい。
油溶性薬効成分としては、特に限定されないが、例えば殺菌剤としてトリクロサン(2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)などのハロゲン化ジフェニルエーテルやイソプロピルメチルフェノールなどのフェノール系化合物;血行促進剤として酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのp−ヒドロキシ安息香酸エステル、グリチルレチン酸、油溶性カンゾウ、油溶性トウキ、油溶性アルニカ、油溶性カモミラ、油溶性シコンなどの油溶性溶媒で抽出された油溶性植物抽出物などが挙げられ、それぞれ単独または2種以上を組合せて本発明の液体口腔用組成物に含ませることができる。これら油溶性薬効成分のうち、口腔内細菌に対する殺菌活性をより高める観点からp−ヒドロキシ安息香酸エステルが好ましく、その中でも特にパラオキシ安息香酸メチルが好ましい。油溶性薬効成分の配合量は、組成物全量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。配合量が0.01質量%よりも少ないと、組成物における充分な殺菌力が発揮されず、また、1質量%より多いと、口腔粘膜に対して刺激性を示す恐れがあり、実用上問題となる可能性があるため好ましくない。
香料としては、特に制限されるものではないが、ミント系香料を用いるのが好ましい。ミント系香料は常法により得ることができ、例えば香料素材として、メントール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、アネトール、オイゲノール、プラムオイル、メントンなどを用いることができる。なかでもメントール、スペアミント油、ペパーミント油、メントンを好ましく用いることができる。この中でもl−メントールが最も好ましい。これら香料素材は、それぞれ単独または2種以上を配合させることができる。香料の配合量は、組成物全量に対して通常0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。配合量が0.01質量%よりも少ないと香味が低く使用性が悪くなり、また、1質量%より多いと、香味が強すぎ使用性が悪く、さらに刺激も高くなる恐れがあるため好ましくない。
なお、油溶性成分が油溶性薬効成分および/または香料からなる場合は、油溶性成分は組成物全量に対して0.1〜0.5質量%配合することが好ましく、0.1〜0.4質量%配合することがより好ましい。
本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、ショ糖脂肪酸エステルやマルトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸ジエタノールアミドのような脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ラウリルグルコシド、デシルグルコシドなどのアルキルグルコシド;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられ、それぞれ単独または2種以上を配合させることができる。これら非イオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、そのエチレンオキサイドの平均付加モル数は通常2〜150であり、中でも40〜100が好ましく、さらには40〜80が特に好ましい。非イオン性界面活性剤は、0.001〜1質量%を配合することができ、その中でも0.01〜0.5質量%とすることが好ましい。本発明においては、塩化セチルピリジニウムの有効性をより損なわない配合量の範囲と判明した0.1〜0.35質量%とすることが特に好ましい。
本発明の液体口腔用組成物では、塩化セチルピリジニウムを配合しながら、さらに油溶性成分と非イオン性界面活性剤を配合し、非イオン性界面活性剤の配合量が油溶性成分の配合量に対して、0.57〜3.5の範囲の配合比率とする。当該配合比率は、好ましくは0.67〜1.0である。また、油溶性成分の配合量から非イオン性界面活性剤の配合量を差し引いた値が、−0.25〜0.15であることが好ましく、0〜0.1であることが塩化セチルピリジニウムの滞留性が高くなるためより好ましい。上述の範囲より小さい場合は塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着量が減少する傾向が見られる。
限定的な解釈を望むものではないが、当該油溶性成分の配合量に対する非イオン性界面活性剤の配合比率が、上述の範囲より小さい場合は組成物の透明性が不良となり、逆に上述の範囲より大きい場合は塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着量が減少する傾向が見られる。
本発明に用いるカルシウム塩としては、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、L−アスコルビン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、硝酸カルシウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。このうちグルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、硝酸カルシウムが好ましく、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウムがより好ましく、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウムが最も好ましい。
本発明の透明の液体口腔用組成物は、エチルアルコールを出来る限り含有しないことが好ましい。具体的には、エチルアルコールの配合量を1質量%未満に抑えることが好ましく、エチルアルコールを配合しないことが最も好ましい。
本発明の液体口腔用組成物は、液体歯磨、洗口剤、低粘度ジェルなどの形態で提供することができる。かかる液体口腔用組成物は前記の成分に加えて、さらに組成物の形態に応じた以下のような適当な成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
例えば、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤以外にも両性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤、陰イオン界面活性剤が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、Nーラウリルジアミノエチルグリシン、NーミリスチルジエチルグリシンなどのNーアルキルジアミノエチルグリシン、NーアルキルーNーカルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウムなどが挙げられる。また、陽イオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−アシルサルコシンナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.01〜1質量%である。
香味剤としては、上記の香料以外にも水溶性香料として取り扱われるものを用いることができる。
また湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。配合量は、通常、組成物全量に対して3〜20質量%である。
さらに、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ−メトキシシンナミックアルデヒド、スクラロース、パラチノース、還元パラチノース、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなどの甘味剤を、組成物全量に対して0.001〜1質量%配合することができる。
またpH調整剤としては、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルクロン酸、フマル酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびこれらの塩や、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの成分は単独または2種以上を組合せて本発明の口腔用組成物に含ませることができる。なお、本発明の口腔用組成物は、口腔内で使用できる範囲であれば、そのpHは特に制限されないが、通常pH3.0〜10.5、好ましくはpH5.5〜8.0である。
なお、本発明の液体口腔用組成物には、薬効成分として、上記の油溶性薬効成分以外にも水溶性薬効成分を配合することができる。水溶性薬効成分としては、殺菌剤として塩化セチルピリジニウム以外にも例えば塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン性殺菌剤;ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;抗炎症剤としてグリチルリチン酸ジカリウムなどのグリチルリチン酸塩;抗プラスミン剤としてトラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸など;出血改善剤としてアスコルビン酸など;組織修復剤としてアラントインなど;その他、水溶性溶媒で抽出された植物抽出物、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、塩化亜鉛などが挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.001〜5質量%である。
さらに、本発明の液体口腔用組成物には、カチオン化ヒドロキシエチルセルロ−ス、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネ−ト;アルギン酸プロピレングリコ−ルエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギ−ナンなどのガム類;ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマ−、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの粘結剤などの1種又は2種以上を配合することができる。これらを配合する場合の配合量は、通常0.001〜1質量%程度である。
また、本発明の液体口腔用組成物には、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルまたはその塩を配合することができる。塩基性アミノ酸部分は、特に、オルニチン、リジン、アルギニンがよく、これらは光学活性体またはラセミ体のいずれであってもよい。アシル基は、炭素数8〜22の飽和または不飽和の天然または合成脂肪酸残基であり、例えば、ラウロイル基、ミリスチル基、パルミトイル基、ステアロイル基などの単一脂肪酸残基が例示され、ヤシ油脂肪酸残基、牛油脂肪酸残基などの天然系の混合脂肪酸残基であってもよい。低級アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルが例示される。これらのN−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルの塩としては、塩酸塩、硫酸塩のような無機酸塩;グルタミン酸塩、ピログルタミン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、脂肪酸塩、酸性アミノ酸塩などの有機酸塩が挙げられる。特に、グルタミン酸塩、ピログルタミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩が好適である。N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルまたはその塩としては、具体的には、N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル・ピロリドンカルボン酸塩(CAE)、N−ラウリル−L−アルギニンエチルエステル・ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルまたはその塩を配合する場合の配合量は、口腔用液体製剤全体に対し0.005〜1質量%程度が好ましい。また、塩化セチルピリジニウムに対し、重量比で1/5以上程度が好ましい。この場合の重量比の上限は特に限定されるものではないが、通常、10倍程度である。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。

<塩化セチルピリジニウムの歯牙表面への吸着試験>
歯牙のエナメル質のモデルとしてヒドロキシアパタイト粉末(BIO−RAD Lab. Hydroxyapatite Bio−Gel HTP Gel)(以下、HAと略す。)を、人の唾液中に37℃、24時間浸漬したものを使用した。唾液中に浸漬することにより、HA表面に唾液ムコ蛋白質などを吸着させ、唾液に濡れた実際の歯牙エナメル質の状態に近似させた。この唾液処理済みHAに表1に示す各試料をそれぞれ添加して37℃にて、15分間振とうさせた。その後、蒸留水ですすぎ、最終的にHAに吸着した塩化セチルピリジニウムを液体クロマトグラフィーを用いて定量し、油溶性成分に対する非イオン界面活性剤の配合比率の影響を検討した。また、その判断基準としては、以下の通りとした。ここで、塩化セチルピリジニウムの吸着量の単位はμg/HA50mgである。

◎:塩化セチルピリジニウムの吸着量が60以上
○:塩化セチルピリジニウムの吸着量が40以上60未満
×:塩化セチルピリジニウムの吸着量が40未満
なお、塩化セチルピリジニウムの吸着量は、40以上のものが好ましく、その値が大きいものほどより好ましい。吸着量が40未満のものは十分な殺菌効果を発揮することができないと考えられ、好ましくない。
<外観評価試験>
上記の通り、表1に示す各試料について調製をした後、目視により液体製剤としての透明性を調べた。その判断基準は以下の通りとした。なお、表1及び表2に示す各成分の数値は質量%を示す。

◎:無色透明である
○:やや透明である
×:白濁している
Figure 0005528789
Figure 0005528789
表1及び2に示したとおり、油溶性成分の配合量に対する非イオン界面活性剤の配合量の比率が0.57〜3.5であり、かつ油溶性成分の配合量から非イオン界面活性剤の配合量を差し引いた値が−0.25〜0.15の範囲にある場合、組成物は優れた透明性と塩化セチルピリジニウムのヒドロキシアパタイト表面への滞留性を示すことがわかった。
以下、本発明に係る透明な液体口腔用組成物の実施例の処方を挙げるが、本発明は下記の処方に限定されるものではない。成分名の後に記載した(A)および(B)は、その成分が油溶性成分(A)および非イオン性界面活性剤(B)に該当することを示すものである。
処方例1 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グルコン酸カルシウム 1.0
香料(A) 0.2
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.1
トリクロサン(A) 0.05
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.2
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
サッカリンナトリウム 0.01
N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル
・ピロリドンカルボン酸塩 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は0.57。A-B値は0.15。
処方例2 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グルコン酸カルシウム 1.5
l−メントール(A) 0.1
酢酸トコフェロール(A) 0.05
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.2
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.3
グリセリン 10.0
マルチトール 0.5
プロピレングリコール 5.0
N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル
・ピロリドンカルボン酸塩 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は0.85。A-B値は0.05。
処方例3 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グルコン酸カルシウム 1.5
l−メントール(A) 0.15
イソプロピルメチルフェノール(A) 0.05
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.25
グリセリン 13.0
キシリトール 1.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.2
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は0.83。A-B値は0.05。
処方例4 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.3
グルコン酸カルシウム 1.5
l−メントール(A) 0.05
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.15
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.15
グリセリン 10.0
還元パラチノース 1.0
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は0.75。A-B値は0.05。
処方例5 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グルコン酸カルシウム 1.5
l−メントール(A) 0.05
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.05
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(B) 0.3
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
サッカリンナトリウム 0.01
N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル
・ピロリドンカルボン酸塩 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は3。A-B値は−0.2。
処方例6 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
乳酸カルシウム 1.0
l−メントール(A) 0.05
酢酸トコフェロール(A) 0.01
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.05
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.15
グリセリン 10.0
1,3ブチレングリコール 2.0
還元パラチノース 1.0
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は1.36。A-B値は−0.04。
処方7 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
乳酸カルシウム 1.0
l−メントール(A) 0.05
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.05
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.35
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
サッカリンナトリウム 0.01
N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル
・ピロリドンカルボン酸塩 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は3.5。A-B値は−0.25。
処方例8 液体歯磨

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
塩化カルシウム 0.5
l−メントール(A) 0.15
トリクロサン(A) 0.05
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.05
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.4
グリセリン 10.0
1,3ブチレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は1.6。A-B値は−0.15。
処方例9 洗口剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
パントテン酸カルシウム 1.0
香料(A) 0.15
ニコチン酸トコフェロール(A) 0.05
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.3
グリセリン 10.0
サッカリンナトリウム 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は1.5。A-B値は−0.1。
実施例10 洗口剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
プロピオン酸カルシウム 0.5
油溶性カンゾウ(A) 0.01
l−メントール(A) 0.1
パラオキシ安息香酸メチル(A) 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(B) 0.3
グリセリン 10.0
サッカリンナトリウム 0.01
pH調整剤 適量
精製水 残部
合計 100.0
B/A値は1.42。A-B値は−0.09。

Claims (7)

  1. グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、L−アスコルビン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、硝酸カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種であるカルシウム塩と、塩化セチルピリジニウム、油溶性成分および非イオン性界面活性剤を含有し、さらに油溶性成分に対する非イオン性界面活性剤の配合比率が0.57〜3.5であり、かつ油溶性成分(A)と非イオン性界面活性剤(B)の配合量の差(A)−(B)が、−0.25〜0.15であることを特徴とする透明な液体口腔用組成物。
  2. 油溶性成分が、油溶性薬効成分および/または香料からなることを特徴とする請求項1に記載の透明な液体口腔用組成物。
  3. 油溶性成分を0.1〜0.5質量%含有することを特徴とする請求項2に記載の透明な液体口腔用組成物。
  4. 油溶性薬効成分が、トリクロサン、酢酸トコフェロール、β−グリチルレチン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、イソプロピルメチルフェノール、ニコチン酸トコフェロール及び油溶性植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
  5. 塩化セチルピリジニウムを0.01〜1.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
  6. 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
  7. エチルアルコ-ルの配合量が1質量%未満であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の透明な液体口腔用組成物。
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