JP5527149B2 - 金属板用化粧シート及びこれを用いた化粧金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、金属板用化粧シート及びこれを用いた化粧金属板に関する。
金属板に意匠を付与するために、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィン樹脂フィルム又はPETなどのポリエステル樹脂フィルムに加飾した化粧シートを、金属板にラミネートすることが行われている。特に、耐汚染性、成形加工性及び高硬度を有するものとしてPETフィルムラミネート鋼板が提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。また、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層及び透明性ポリエステル系樹脂層が順に積層されてなる鋼板用の化粧シートが提案されている(特許文献2参照)。
上記化粧シートは、耐汚染性が高く、高硬度ではあるが、鋼板の曲げ加工の際に、曲面部の表面にクラックが発生するという問題があった。PETなどのポリエステルフィルムを用いた場合にはクラックは起きにくく、ある程度の加工性が確保されるが、擦り傷に対する耐性が低いという問題があった。そして、PETなどに耐擦傷性を付与するために、その表面にハードコートする方法があるが、やはり曲面部でハードコートにクラックが発生するという問題が生じる。このようなクラックが発生するとクラック部分に汚れが溜まり、耐汚染性が低下する。また、水廻りなどに用いた場合には、クラック部分にカビが発生するなどの問題が生じたり、ホワイトボードなどに用いた場合には、クラック部分にマーカーが残存し、マーカー消去性が著しく低下するといった問題が生じる。
マーカー消去性を向上させたホワイトボートとして、電離放射線硬化型樹脂とシリコーン化合物を含有する塗被層を設けたホワイトボードが提案されている(特許文献3参照)。しかし、マーカー消去性を向上させるために用いるシリコーン化合物が、リフティング、すなわち表面配向をおこし、塗被層の最表面近傍に集中してしまうため、表面に微細な凹凸が多数生じてしまい、表面の平滑性が低下しまう、いわゆるゆずだく感が発生してしまい、またマーカー筆記性が低下してしまうという問題があった。
特開2000−43192号公報 特開2005−238498号公報 特開平5−318982号公報
本発明は、このような状況下で、折り曲げ加工をしても最表面の表面保護層にクラックが発生することがなく、優れたマーカー消去性と筆記性を有する金属板用化粧シート及びこれを用いた化粧金属板を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、最表面の表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中に、酢酸ビニル変性シリコーン化合物とナノシリカ微粒子を添加することにより、上記課題を解決しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.基材上に、プライマー層、及び電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層をこの順に積層し、該電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂及び酢酸ビニル−シリコーン樹脂を含有し、該酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量が電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部である金属板用化粧シート。
2.電離放射線硬化性樹脂組成物が、平均一次粒子径1〜100nmのナノシリカ微粒子を含み、該ナノシリカ微粒子の含有量が電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜25質量部である上記1に記載の金属板用化粧シート。
3.上記1又は2に記載の化粧シートを金属板に貼付した化粧金属板。
折り曲げ加工をしても最表面の表面保護層にクラックが発生することがなく、優れたマーカー消去性と筆記性を有する金属板用化粧シート及びこれを用いた化粧金属板を提供することができる。
本発明の金属板用化粧シートの断面を示す概念図である。 本発明の化粧金属板の断面を示す概念図である。
[金属板用化粧シート]
本発明の鋼板用化粧シートの構成について、図1を用いて、以下詳細に説明する。図1に示される鋼板用化粧シート10は、本発明の化粧シートの好ましい態様の一例を示すものであり、基材11上に、プライマー層12及び表面保護層13をこの順に積層してなり、基材11及びプライマー層12は二層構成を有している。
《基材11》
本発明の鋼板用化粧シートで用いる基材11は、通常使用されるプラスチックフィルムであれば特に制限はなく、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフ
タレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル樹脂;ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース樹脂;セロファン;ポリスチレン;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂等が挙げられる。
これらのうち、ポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。ポリエステル樹脂としては、上述のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに加えて、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが、ハンドリングが容易で、コストの観点から特に好ましい。
また、ポリエステル樹脂は各種ホモポリマーの他、樹脂の柔軟化等の目的で各種の共重合成分又は改質成分を添加した共重合ポリエステル系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が使用できる。例えばPETであれば、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合重合反応において、ジカルボン酸成分として、例えば、セバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の長鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸を導入することができる。また、ジオール成分としてポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の両末端に水酸基を有するポリエーテル系ジオールを導入することができる。
本発明において、基材11として用いるポリエステルフィルムは、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム化され、2軸延伸することで調製される。
2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムを基材11として用いることで、後に詳述する表面保護層14の伸びを抑制することができ、表面保護層14のクラック発生を抑制することができる。
また、本発明において、基材11は、二つ以上の樹脂フィルムを積層した複層構成の基材も好ましく用いられる。例えば、図1の基材11A及び11Bに示されるような二層構成の基材である場合、これらの基材を形成する樹脂フィルムに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよい。なかでも、基材11Aにはポリエステル樹脂フィルムを用い、基材11Bにはポリオレフィン樹脂フィルムを用いることが好ましい。このような構成とすることで、優れた強度と柔軟性とを兼ね備え、折り曲げ加工をしても最表面の表面保護層にクラックが発生することがないという、優れた折り曲げ加工特性を有する化粧シートとすることができる。
基材11の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、25〜100μmの範囲が好適である。基材11の厚さが25〜100μmの範囲であると表面保護層14にかかる張力を十分に緩和することができる。また、基材11が複層構成の場合は、各層の厚さを合計した厚さが上記範囲内にあれば、各層の厚さは同じでも異なっていてもよい。
また、基材11に好ましく用いられる2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムは、JIS C2151に準拠して測定した引張強度が150MPa以上であることが好ましい。
引張強度が150MPa以上であると、高剛性であるため、曲げ加工部において発生する局部的な伸びが抑制でき、その上層の表面保護層の伸びも抑制することができる。
基材11に用いられる合成樹脂には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。
上記添加剤のうち、特に基材11の弾性及び伸び率を向上させ、耐衝撃性を付与し、折り曲げ加工を施した際に、表面保護層に亀裂や割れを生じさせないとの観点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の無機充填剤を含有することが好ましい。
これらの無機充填剤の含有量は、基材11に対して1〜60質量%の範囲が好ましい。
上記着色剤としては特に限定されず、顔料、染料等の公知の着色剤を使用できる。例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。また、基材11が複層構成の場合は、いずれの層が着色されていてもよく、意匠性の観点からは、表面保護層に近い基材が透明であり、金属板に近い基材が着色されていることが好ましい。例えば、図1に示される態様の場合は、基材11Aが着色され、基材11Bが透明であることが好ましい。
上記紫外線吸収剤としては、無機系及び有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが好ましく挙げられる。本発明においては、紫外線吸収能が高く、また紫外線等の高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが好ましく挙げられる。
なお、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
基材11は、他の層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理などの易接着処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
本発明においては、化学的表面処理として易接着コート処理を好適に用いることができる。易接着コート処理とは、基材上に樹脂層などをコーティングすることで、接着性を向上させるものであり、例えば、ポリウレタン系樹脂層を設けるなどの方法がある。
ポリウレタン系樹脂層としては、通常のウレタン樹脂のほかウレタン尿素樹脂なども使用できる。また、塗布量としては、通常、0.01〜0.5g/m2程度であり、好ましくは0.03〜0.3g/m2である。
該ポリウレタン系樹脂層は架橋されていることが好ましく、架橋剤としては、メラミン系架橋剤やエポキシ系架橋剤等が挙げられる。
基材11が複層構成である場合、各層各々に上記した易接着処理を施すことができる。また、各層の積層はポリエステル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、あるいはポリエステルウレタン樹脂系の接着剤などを用いて貼り合わせればよい。
《プライマー層12》
本発明の金属板用化粧シートは、基材11と表面保護層13との間にプライマー層12を設けることを要する。プライマー層12を設けることで、表面保護層13と下層の基材11との密着性を向上させることができ、また時間経過に伴う、加工性、耐汚染性及び耐擦傷性の低下を抑制することができる。
プライマー層12は無色、若しくは半透明乳白色であることが好ましい。
該プライマー層12はウレタン系樹脂組成物からなることが好ましく、該ウレタン系樹脂のJIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上であることが好ましい。
ウレタン系樹脂組成物は柔軟性、強靭性及び弾性を兼ね備えており、このような特定のプライマー層12を設けることで、曲げ加工時に表面保護層13にかかる衝撃、引張力又はせん断力を緩和することができ、表面保護層13におけるクラックの発生を抑制することができる。
以上の観点から、該ウレタン系樹脂のJIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率は400%以上がさらに好ましく、500%以上がさらに好ましい。
ここで用いられるウレタン樹脂としては、上記の伸び率を満足するものであれば特に制限はなく、従来公知の熱可塑性ウレタン樹脂から選択することができる。例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、ポリカーボネート系等の熱可塑性ウレタン樹脂を単独使用又は混合使用することができる。
熱可塑性ウレタン樹脂としては、例えば、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものが好適に挙げられる。また、水分等で硬化せず経時的安定性が良好な点で、イソシアネート基を持たない飽和熱可塑性ウレタン樹脂も好適である。
一方、耐水性が特に要求される場合などは、上記伸び率を満足しつつ、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンが好適である。
このような熱可塑性ウレタン樹脂の具体例としては、水酸基を末端に有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させた線状高分子からなるウレタン樹脂を挙げることができる。
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボーネートポリオール等が挙げられ、より具体的には、ポリエステルポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルジオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ(テトラメチレンエーテル)等のポリエーテルジオールが挙げられ、また、ポリカーボネートポリオールとしては、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等が挙げられる。その他、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、フッ素系ポリオール、アクリルシリコーン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
ジイソシアネート成分としては、ポリウレタン分野にて従来公知の脂肪族(又は脂環式)又は芳香族の各種ジイソシアネートが挙げられる。例えば、脂肪族(又は脂環式)系としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート等である。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明におけるプライマー層12で用いるウレタン系樹脂組成物には、本発明の鋼板用化粧シートの生産過程におけるブロッキングを抑制するために、平均粒径が1〜10μmの微粒子を含有させることができる。微粒子としては、特に制限はなく、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの無機粒子、アクリルビーズなどの有機粒子が好ましく挙げられる。これらのうち、ブロッキング防止の観点及び製造コストの点などから、表面未処理のシリカが好ましい。
また、プライマー層12における該微粒子の含有量は、プライマー層を構成する樹脂の固形分100質量部に対して0.5〜7質量部であることが好ましい。該微粒子の含有量が0.5質量部以上であると、十分にブロッキング性能を付与することができ、7質量部以下であると鋼板用化粧シートの曲げ加工性が良好となる。以上の観点から、プライマー層における該微粒子の含有量は、1〜4質量部の範囲であることがさらに好ましい。
また、プライマー層12は、その効果をより向上させる観点から、複層構成を有することが好ましい。図1に示されるような、プライマー層12A及び12Bの二層構成である場合は、その一方(本明細書においてプライマー層12Aとする。)を上記した熱可塑性ウレタン樹脂で形成することが好ましく、他方(本明細書においてプライマー層12Bとする。)は、末端イソシアネートプレポリマーを主成分とする樹脂組成物により形成することが好ましい。
末端イソシアネートプレポリマーは、ポリオール化合物とイソシアネート化合物から得られ、通常、空気中の水分や被着体表面の水分と反応して硬化するので、1液硬化型接着剤と称されるものである。
ここで用いられるポリオール化合物としては、公知のポリオール化合物を用いることができ、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。本発明においては、特にポリカーボネートポリオールを用いることが好ましく、炭素数4〜12のアルキレン基を有するアルキレンジオールの1種または2種以上と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネートなど)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートジオールが挙げられる。具体的には、ポリブチレンカーボネートポリオール、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、ポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオール等が挙げられる。また、イソシアネート化合物としては、プライマー層12で用いられるものとして例示したイソシアネート化合物と同様のものを使用することができる。
プライマー層12Bを形成するためのプライマーインキ中には、上記末端イソシアネートプレポリマーの他に、アクリルを含有させることが好ましい。ここで用いられるアクリルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、これらは末端イソシアネートプレポリマーと共重合させてもよく、また、混合させてもよい。
該アクリルの含有量は、末端イソシアネートプレポリマー100質量部に対して、5〜50質量部添加することが好ましく、さらには20〜40質量部の範囲であることがより好ましい。
また、プライマー層12Bには、本発明の効果を阻害しない範囲で上記顔料含んでもよい。顔料を含む場合は、より隠蔽効果に優れる点で好ましいが、顔料を含まない場合は、クラックの起点となる要因が無くなるため、クラックの発生が抑制されるという点でより好ましい。
プライマー層12の厚さについては特に制限はないが、1〜10μmの範囲が好ましい。プライマー層12の厚さが上記範囲内であると、効率よく、表面保護層13と下層の基材11との密着性を向上させることができ、また時間経過に伴う、加工性、耐汚染性及び耐擦傷性の低下を抑制することができる。以上の観点から、プライマー層12の厚さは、1〜5μmの範囲がより好ましい。
また、プライマー層12の塗工方法としては、特に制限はなく、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式を用いることができる。
《表面保護層13》
表面保護層13は、本発明の化粧シートに優れた耐候性や耐汚染性といった表面特性のほか、マーカー消去性と筆記性を付与するものであり、また折り曲げ加工をしてもクラックが発生しないという特性を有する層である。該表面保護層13は、電離放射線硬化性樹脂及び酢酸ビニル−シリコーン樹脂を含み、該酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量が電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.05〜5重量部である電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。
(電離放射線硬化性樹脂)
ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
前記重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する、すなわち官能基数が2以上の(メタ)アクリレートであればよく、好ましくは官能基数3〜6のものである。
このような多官能性(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
本発明における電離放射線硬化性樹脂は、その平均官能基数が3〜5の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.1〜4.5であり、さらに好ましくは3.1〜3.8である。平均官能基数が3以上であると、十分な架橋硬化が進行し、金属板用化粧シートの表面物性、具体的には耐汚染性及び耐光性が良好となる。一方、平均官能基数が5以下であると、上記表面物性を維持しつつ、優れた加工性を得ることができる。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定される。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
(酢酸ビニル−シリコーン樹脂)
前記酢酸ビニル−シリコーン樹脂は、下記一般式で示される構成単位及び酢酸ビニルを構成単位とする共重合体であり、本発明の化粧シートに優れたマーカー消去性とともに、マーカー筆記性を付与する。この共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいはグラフト共重合体のいずれであってもよい。
ここで、R1及びR2は、水素原子、水酸基又は一価の有機基を示す。有機基としては、一価のものであれば特に制限はないが、例えば通常シリコーンオイルのポリシロキサンの一部に導入して変性シリコーンオイルを生成しうる一価の有機基などが好ましく挙げられる。本発明において一価の有機基としては、例えば、置換基を有していても良いアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、ビニル基又は2−プロペニル基のほか、アミノ基、イミノ基などの含窒素官能基、メルカプト基などを含む含硫黄官能基、あるいはエポキシ構造を含む官能基などが好ましく挙げられる。
酢酸ビニル−シリコーン樹脂の数平均分子量は、5,000〜50,000であることが好ましい。数平均分子量が上記範囲内であると、該樹脂と電離放射線硬化性樹脂との相溶性が低下することなく、電離放射線硬化性樹脂組成物の安定性が向上する。同様の観点から、より好ましくは、10,000〜30,000であり、さらに好ましくは、12,000〜25,000である。
電離放射線硬化性樹脂組成物中の酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.05〜5重量部である。酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量が上記範囲内であると、優れたマーカー消去性と筆記性とが得られる。この観点より、酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量は、0.1〜4質量部が好ましく、0.5〜3.5質量部がより好ましい。
(ナノシリカ微粒子)
本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、平均一次粒子径1〜100nmのナノシリカ微粒子を好ましく含有する。ナノシリカ微粒子が存在することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物中における酢酸ビニル−シリコーン樹脂の安定性が向上するため、表面保護層13の表面に微細な凹凸が多数生じることがなく、表面の平滑性が維持されるので、いわゆるゆずだく感の発生を抑えることができる。これと同様の観点から、ナノシリカ微粒子の平均一次粒子径は、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜50nmのシリカ粒子が好ましい。ここで、上記平均一次粒子径は、レーザ散乱法により測定した値である。具体的には、微粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザ光線を当てて得られた散乱光を捕捉し、演算することにより、得られる平均粒子径である。
ナノシリカ微粒子はシランカップリング剤などにより表面処理が施されたもの、表面未処理のもの、いずれも使用することが可能である。コストの観点からは表面未処理のものが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物中のナノシリカ微粒子の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜25質量部であることが好ましい。ナノシリカ微粒子の含有量が上記範囲内であると、電離放射線硬化性樹脂組成物における酢酸ビニル−シリコーン樹脂の安定性は優れたものとなる。これと同様の観点から、ナノシリカ微粒子の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましい。
(各種添加剤)
また、電離放射線硬化性樹脂組成物中には、その性能を阻害しない範囲で、各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などの紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(上記したヒンダードアミン系など)、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが好ましく挙げられる。
(破断伸び率)
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物は、特定の条件下での引張試験において、破断伸び率が25%〜45%であることが好ましい。この破断伸び率が25%以上であると、鋼板用化粧シートにおいて、好適な曲げ加工性が得られる。以上の観点から、破断伸び率は30%以上であることが好ましい。
一方、十分な耐汚染性を得るためには、破断伸び率が45%以下であることが好ましい。以上の観点から破断伸び率は35%以下であることが好ましい。
引張試験の方法としては、厚さ90μmのポリプロピレンフィルムに電離放射線硬化性樹脂組成物を厚さ3.5μmとなるように塗工・硬化させた後、温度25℃、引張速度50mm/分で引張試験を行い破断する際の伸び率を測定するものである。硬化の条件としては、用いる電離放射線樹脂に応じ、完全硬化する条件を選択すればよい。また、引張試験に用いる装置としては、例えば、「RTC−1250A(型番)」(ORIENTEC社製)を用いることができる。
また、本発明の金属板用化粧シートは、表面の鉛筆硬度が2B以上であることが好ましい。鉛筆硬度が2B以上であると、良好な耐擦傷性が得られるとともに入力端末である先端が硬質な電子ペンなどのペン先で筆記した場合の筆圧による凹みがつき難い。以上の観点から、鉛筆硬度はB以上がさらに好ましい。
(表面保護層13の形成)
表面保護層13を形成するための、前記した重合性モノマーや重合性オリゴマーなどの電離放射線硬化性樹脂、酢酸ビニル−シリコーン樹脂、所望により添加するナノシリカ微粒子あるいは各種添加剤を、所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製する。該樹脂組成物の塗工は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、優れた耐候性とその持続性、さらには透明性と防汚性とを得る観点から、硬化後の厚さは、好ましくは2〜20μmである。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して架橋硬化することで、表面保護層13となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
このようにして形成された表面保護層13には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮断コート機能、赤外線遮断コート機能などを付与することができる。
《隠蔽層21》
本発明の化粧シートは図2に示すように、基材11の耐候性付与層の反対側に接着剤層23を介して、さらに隠蔽層21を積層することができる。隠蔽層21を設けることによって、基材11が透明である場合に金属板30を隠蔽することができ、また基材11が隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化することができる。
隠蔽層21を構成する材質としては特に限定されず、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。これらのうち、表面保護層13のクラック発生を抑制するとの観点からは、基材11で好ましく用いられる2軸延伸PETフィルム等のポリエステルフィルムを用いるのが好適である。また、隠蔽性、意匠性、クッション性、さらには環境を考慮すると、オレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムが好ましい。
隠蔽層21を構成するフィルムは隠蔽層としての機能を発揮させるために、通常、着色剤を含有する。着色剤の種類としては、特に限定されず、基材11の着色に用いることのできるものと同様のものを用いることができる。
隠蔽層21を構成するフィルムの厚さとしては、特に制限はないが25〜100μmの範囲が好ましい。25μm以上であると十分な隠蔽効果が得られ、100μm以下であると曲率の関係で表面保護層13が必要以上に伸ばされることがなく、クラック発生をより抑制することができる。
また、隠蔽層21の形成方法は特に制限はないが、基材11全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
《金属板接着用プライマー層22》
本発明の化粧シートにおいて、隠蔽層21と金属板30との接着性を向上させるため、所望により金属板接着用プライマー層22を設けることができる。プライマー層の形成に用いられる材料としては特に限定されず、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ウレタンアクリル系樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが好ましく挙げられる。
金属板接着用プライマー層22の厚さは、通常1〜5μm程度であり、1〜3μmであることが好ましい。厚さが上記範囲内であると、効率よく、プライマー層としての優れた性能を得ることができる。
《接着層23》
接着剤層23に用いる材料としては特に制限はなく、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。具体的にはポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。これらのうち、熱可塑性樹脂が、クッション層としての機能を果たし、化粧鋼板の加工時に表面保護層14のクラックを抑制する効果があるため好ましい。
接着剤層23の厚さは特に制限はないが、通常、乾燥後の厚さが3〜50μmの範囲である。
本発明の化粧シートにおいては、基材11と接着剤層23の間、もしくは基材11の裏側(プライマー層12の反対側)に絵柄模様層を設けてもよい(図示せず)。絵柄模様層は、化粧シート及び化粧鋼板に所望の絵柄による意匠性を付与するものである。絵柄としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)をバインダー樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等をさらに配合してもよい。
バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
また、溶剤(又は分散媒)としては、例えば、石油系有機溶剤;エステル系有機溶剤;アルコール系有機溶剤;ケトン系有機溶剤;エーテル系有機溶剤;塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いてもよい。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、乾燥後の層厚で0.1〜10μm程度である。
《金属板30》
本発明の化粧シート10は、金属板30に貼着して化粧金属板40として使用される。被着体となる金属板としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料からなる金属板が挙げられ、これらは溶融亜鉛メッキ処理や電気亜鉛メッキ処理などの表面処理が施されていてもよい。また、被着体の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱等の形状を任意に採用できる。
また、金属板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、被着体である金属板は隠蔽性を付与するために、金属板に直接着色してコーティング層を設けてもよい。
被着体である金属板と化粧シートを積層するのに用いる接着剤又は粘着剤は特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤又は粘着剤を使用できる。接着剤としては、隠蔽層21を接着するための接着剤層23で用いるものと同様のものを用いることができる。また、粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系などの粘着剤を適宜選択して用いることができる。これらのうち、耐候性などの点から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等のアクリル系モノマーの重合体や共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤が好ましく、特にn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが好適である。
また、架橋剤を添加することもでき、具体的にはイソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。
該接着剤又は粘着剤の厚さについては、特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。
本発明の化粧シートを貼付した化粧金属板は、例えば、汚れやすいユニットバスの壁面やマーカーの消去が求められるホワイトボードなどに好適に用いられる。その他、壁、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具の表面材などにも使用できる。また、被着材である金属板を用いずに、化粧シート自体を建材部材に対するラミネート材、ラッピング材等として使用することもできる。例えば、浴室等に用いられる金属板基材の表面に本発明の化粧シートを貼着して装飾を施してもよい。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)曲げ加工性
各実施例及び比較例にて製造した化粧金属板について、JIS K6744に準拠し、試験温度25±5℃、外側半径1.50mmでの90度曲げ試験を実施した後、曲げ試験を行った試験体を以下の評価基準で評価した。
◎;クラックは全く発生しなかった。
○;表面保護層にマイクロサイズのクラックが発生したが、表面意匠を損なうほどではなかった。
△;表面保護層にマイクロサイズのクラックが発生し、時間経過と共にクラックが拡大した。
×;曲げ加工時点でクラックが発生した。
(2)表面の意匠性の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧金属板について、表面の状態を以下の評価基準で評価した。
○ :表面の状態は平滑であった。
△ :表面が若干ゆず肌状となったが、実用上問題なかった。
× :表面のゆず肌状が著しかった(ゆずだく状)。
(3)マーカー筆記性(マーカーはじき)の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧金属板に、「ホワイトボードマーカー ノックル 太字丸芯 黒」(ぺんてる株式会社製)を用いて、文字や図を描画した際の状態について、以下の評価基準で評価した。
○ :マーカーを弾くことなく、正しく描画できた。
△ :マーカーを若干弾くものの、正しく描画できた。
× :マーカーの弾きが著しく、正しく描画できなかった。
(4)マーカー消去性
各実施例及び比較例にて製造した化粧金属板に、「ホワイトボードマーカー ノックル 太字丸芯 黒」(ぺんてる株式会社製)を用いて描画した後、室温環境下で1分間乾燥させた。次いで、イレーサーとして「マグネットイレーザー(商品名)」(株式会社マグエックス製)を用いて、荷重50g/cm2で3往復回消去した後の、マーカーの残存状態について、以下の評価基準で評価した。
○ :表面上にマーカーが残らなかった。
△ :表面上のマーカー残存率が50%以下だった。
× :表面上のマーカー残存率が50%以上だった。
(5)繰り返し消去性
各実施例及び比較例にて製造した化粧金属板に、「ホワイトボードマーカー ノックル 太字丸芯 黒」(ぺんてる株式会社製)を用いて描画した後、室温環境下で24時間乾燥させた。次いで、イレーサーとして「マグネットイレーサー(商品名)」(株式会社マグエックス製)を用いて、荷重50g/cm2で消去した。この作業を100回繰り返した後の、表面の汚染度合いについて、試験開始前の表面をブランクとして、色差(ΔE)を測定し、以下の評価基準で評価した。
◎ :ΔEが0.5未満だった。
○ :ΔEが0.5以上1.0未満だった。
△ :ΔEが1.0以上2.0未満であり、実用上問題なかった。
× :ΔEが2.0以上だった。
実施例1
(1)金属板用化粧シートの製造
基材11として、2軸延伸透明PETフィルム(「コスモシャインA4300(商品名)」,東洋紡績(株)製,厚さ:50μm)の裏側に、接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(「E−295L(商品名)」,大日精化工業(株)製)を介して、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(「PB−013(商品名)」,三菱化学MKV(株)製)を貼付した基材を用意した。この基材11の表面側に、チタン白(酸化チタン、粒径:0.2〜0.3μm)を50質量%含有させたウレタン系プライマーインキ(「ILPA(白)(商品名)」,DIC株式会社製)を塗工量2.1g/m2で塗工し、プライマー層12Aを形成した。次いで、ポリエステルポリオール(「E−256−40(商品名)」,大日精化工業(株)製,伸び率:570%以上、Tg:47℃,テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸からなる多価カルボン酸とネオペンチルグリコール、エチレングリコールからなるポリオールを反応させて得られたものである。)、イソシアネート系硬化剤(「C−55(商品名)」,大日精化工業(株)製)3質量部、及びシリカ粒子(粒径:5μm,表面未処理)2質量部からなるウレタン系樹脂組成物を塗工して、熱可塑性ウレタン樹脂からなる軟質プライマー層12Bを得た。
次に、軟質プライマー層12Bの上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部からなる電離線硬化性樹脂(合計100質量部)、酢酸ビニル−シリコーン樹脂(「WBWシリコーン添加剤(商品名)」,DICグラフィックス製,固形分:30質量%,溶剤分(酢酸エチル):70質量%)を3質量部、及びナノシリカ微粒子(平均一次粒子径:10〜100nm)10質量部及び硬化剤を(「UMF(商品名)」,DIC株式会社製,HMDI系)3質量部を添加して得られた電子線硬化性樹脂組成物(平均官能基数:3.4,破断伸び率:31%)をグラビアダイレクトコータ法により塗工量2.0g/m2で塗工した。塗工後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層13とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、本発明の金属板用化粧シート10を得た。
(2)化粧鋼板の製造
厚さ60μmの白色ポリプロピレンフィルム(「PB−013(商品名)」,三菱化学MKV(株)製、隠蔽層21)の裏面に、金属板接着用プライマー22として塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(「WBSプライマー(商品名)」,DICグラフィックス製)を1.2g/m2塗工した。
次いで、上記(1)で製造した金属板用化粧シート10の裏面と隠蔽層21とを接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(「E−295L(商品名)」,大日精化工業(株)製,接着剤層23)を介してラミネートし、さらにウレタン系の接着剤を用いて(図示せず)、前記金属板接着用プライマー22を介して、厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板(金属板30)に貼付し、本発明の化粧金属板40を得た。該化粧金属板について上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例2〜10,比較例1及び2
実施例1において、第1表に示される酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量、ナノシリカ微粒子の含有量、及び微粒子の種類とした以外は、実施例1と同様にして、金属板用化粧シート及び化粧金属板を製造した。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
本発明の化粧シートを貼付した化粧金属板は、例えば、汚れやすいユニットバスの壁面やマーカーの消去が求められるホワイトボードなどに好適に用いられる。その他、壁、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具の表面材などにも使用できる。また、被着材である金属板を用いずに、化粧シート自体を建材部材に対するラミネート材、ラッピング材等として使用することもできる。例えば、浴室等に用いられる金属板基材の表面に本発明の化粧シートを貼着して装飾を施してもよい。
10:金属板用化粧シート
11:基材
11A:基材A
11B:基材B
12:プライマー層
12A:プライマー層A
12B:プライマー層B
13:表面保護層
21:隠蔽層
22:金属板接着用プライマー層
23:接着剤層
30:金属板
40:化粧金属板

Claims (8)

  1. 基材上に、プライマー層、及び電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層をこの順に積層し、該電離放射線硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂及び酢酸ビニル−シリコーン樹脂を含有し、該酢酸ビニル−シリコーン樹脂の含有量が電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部である金属板用化粧シート。
  2. 電離放射線硬化性樹脂組成物が、平均一次粒子径1〜100nmのナノシリカ微粒子を含み、該ナノシリカ微粒子の含有量が電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜25質量部である請求項1に記載の金属板用化粧シート。
  3. 電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂の平均官能基数が3〜5である請求項1又は2に記載の金属板用化粧シート。
  4. 電離放射線硬化性樹脂組成物の下記の条件の引張試験により測定した破断伸び率が25〜45%である請求項1〜3のいずれかに記載の金属板用化粧シート。
    引張試験;厚さ90μmのポリプロピレンフィルムに電離放射線硬化性樹脂組成物を厚さ3.5μmとなるように塗工・硬化させた後、温度25℃、引張速度50mm/分で引張試験を行い破断する際の伸び率を測定する。
  5. プライマー層が、ウレタン系樹脂組成物からなり、該ウレタン系樹脂のJIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の金属板用化粧シート。
  6. 前記ウレタン系樹脂組成物が、平均粒径0.5〜10μmの微粒子を含み、該微粒子の含有量が樹脂の固形分100質量部に対して1〜7質量部である請求項5に記載の金属板用化粧シート。
  7. 基材が、厚さ25〜100μmの2軸延伸ポリエステルフィルムからなる請求項1〜6のいずれかに記載の金属板用化粧シート。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートを金属板に貼付した化粧金属板。
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