JP5056692B2 - 鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板 - Google Patents
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Description
本発明者の所属する研究グループは、上記問題点に対して、鋼板にラミネートして曲げ加工を行っても、曲面部にクラックが入らず、高い成形加工性を有するとともに、耐汚染性及び耐擦傷性を有する鋼板用化粧シートとして、2軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材上に、ウレタン系樹脂組成物からなるプライマー層と電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた表面保護層をこの順に積層した鋼板用化粧シートを提案した(特許文献3参照)。
しかしながら、この鋼板用化粧シートは、加工性、平面部の耐汚染性及び耐擦傷性については、優れた効果を長期間にわたって持続させ得るものの、曲面部においては、高温高湿度環境などの過酷な条件に置くと最表面の表面保護層にクラックが生じることがあった。このクラック部分は、表面保護層の下部にあるプライマー層が表出してしまうために、例えば、該曲面部にマーカー等で筆記を行うと該プライマー層が汚染され、化粧シートの外観上の汚れが目立つという問題があった。
また曲げ加工工程における外的要因により、細かな傷がついた場合など、その傷を基点としてクラックが生じるため、上述と同様にプライマー層の汚染による汚れが目立つといった問題があった。
本発明は上記鋼板用化粧シートをさらに改良し、上記課題を解決したものであり、高温高湿度環境に置かれても、曲面部において、クラックが生じにくく、かつ当該部分の耐汚染性が極めて高い鋼板用化粧シート及び化粧鋼鈑を提供することを目的とする。
(1)基材上に、少なくともプライマー層と表面保護層をこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、該プライマー層が基材側から、無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなる第1のプライマー層と、ガラス転移温度(Tg)が45℃以上のポリエステルポリオールを主剤とし、イソシアネート系硬化剤を含有し、シリカを含有しない樹脂組成物からなる第2のプライマー層を積層したものであり、かつ表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであることを特徴とする鋼板用化粧シート、
(2)前記第2のプライマー層を構成する樹脂組成物を以下の方法で測定した際の常温での伸び率が120%以上である上記(1)に記載の鋼板用化粧シート、
伸び率の測定方法:第2のプライマー層を構成する樹脂組成物において、イソシアネート系硬化剤を添加した後、常温で24時間放置し、JIS K6732に準拠して測定する。
(3)前記無機顔料が酸化チタンである上記(1)又は(2)に記載の鋼板用化粧シート、
(4)電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(5)前記2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが25〜100μmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(6)前記第2のプライマー層が顔料を含まない上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、及び
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板、
を提供するものである。
本発明の鋼板用化粧シートは、基材2が2軸延伸ポリエステルフィルムからなる。ここで用いられるポリエステル樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムを基材2として用いることで、後に詳述する表面保護層4の伸びを抑制することができ、表面保護層4のクラック発生を抑制することができる。
また、基材2に用いられる2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムは、JIS C2151に準拠して測定した引張強度が150MPa以上であることが好ましい。
引張強度が150MPa以上であると、高剛性であるため、曲げ加工部において発生する局部的な伸びが抑制でき、その上層の表面保護層の伸びも抑制することができる。
これらの無機充填剤の含有量は、基材2に対して5〜60質量%の範囲が好ましい。
基材2の着色には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着体(化粧シートを接着する鋼板)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着体の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
また、紫外線吸収剤及び光安定剤については、後に詳述する本発明の表面保護層4を構成する樹脂組成物に添加し得るものと同様のものを使用することができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材2の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
従来の鋼鈑用化粧シートにおいては、製造過程での耐ブロッキング性能を付与するために、第2のプライマー層3−bに通常シリカなどの添加剤を加えるが、該シリカは耐汚染性を悪化させるものである。本発明の化粧シートでは、特定の樹脂組成物を用いることで、シリカを含有することなく耐ブロッキング性を維持し、極めて高い耐汚染性を達成したものである。
ここで使用されるウレタン樹脂は、JIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上であることが好ましい。該伸び率が300%以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を十分に緩和することができる。以上の観点から、該伸び率は400%以上がさらに好ましく、500%以上がさらに好ましい。また、ガラス転移点(Tg)は、鋼板用化粧シートに必要十分な柔軟性・強靭性・弾性に加えて、低温下での曲げ加工性を付与するとの観点から、−20℃以下であることが好ましい。
熱可塑性ウレタン樹脂としては、例えば、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものが好適に挙げられる。また、水分等で硬化せず経時的安定性が良好な点で、イソシアネート基を持たない飽和熱可塑性ウレタン樹脂も好適である。
一方、耐水性が特に要求される場合などは、上記伸び率、Tgを満足しつつ、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンが好適である。
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボーネートポリオール等が挙げられ、より具体的には、ポリエステルポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルジオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ(テトラメチレンエーテル)等のポリエーテルジオールが挙げられ、また、ポリカーボネートポリオールとしては、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等が挙げられる。その他、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、フッ素系ポリオール、アクリルシリコーン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
無機顔料の含有量としては、ウレタン系樹脂100質量部に対して5〜300質量部の範囲であることが好ましい。5質量部以上であると、無機顔料としての効果を十分に発揮することができる。一方、無機顔料の含有量が多すぎると、ウレタン樹脂組成物の伸び率が低下するが、300質量部以下であれば、伸び率が低下しても十分な強靭性が保たれる。
無機顔料の粒径については、粒径が5μm以下であることが好ましい。5μm以下であると該無機粒子を起点としてクラックが入るという不具合がない。以上の点からさらに粒径は2μm以下であることが好ましい。
これらのポリエステルポリオールは、イソシアネート化合物との反応に際し、単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いられてもよい。
伸び率の測定方法:第2のプライマー層を構成する樹脂組成物において、イソシアネート系硬化剤を添加した後、常温で24時間放置し、JIS K6732に準拠して測定する。
該常温での伸び率が、120%以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を十分に緩和することができる。以上の観点から、該伸び率は300%以上がさらに好ましく、400%以上が特に好ましく、500%以上が最も好ましい。
また、第2のプライマー層には、本発明の効果を阻害しない範囲で紫外線吸収剤を含んでもよい。紫外線吸収剤を含む場合は、経時による表面の変色を防止する点で好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物などが好ましく挙げられる。
また、プライマー層を形成するウレタン樹脂組成物の塗工量は、第1のプライマー層3−aについては、通常0.5〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは2〜5g/m2の範囲である。一方、第2のプライマー層3−bについては、通常0.2〜5.0g/m2の範囲であり、より好ましくは0.5〜2.0g/m2の範囲である。
隠蔽層6を構成する材質としては特に限定されず、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。これらのうち、表面保護層4のクラック発生を抑制するとの観点からは、基材2と同様の2軸延伸PETフィルム等のポリエステルフィルムを用いるのが好適である。また、隠蔽性、意匠性、クッション性、さらには環境を考慮すると、オレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムが好ましい。
隠蔽層6を構成するフィルムの厚さとしては、特に制限はないが25〜100μmの範囲が好ましい。25μm以上であると十分な隠蔽効果が得られ、100μm以下であると曲率の関係で表面保護層4が必要以上に伸ばされることがなく、クラック発生をより抑制することができる。
隠蔽層6の形成方法は特に制限はないが、基材2全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
接着剤層5の厚さは特に制限はないが、通常、乾燥後の厚さが3〜50μmの範囲である。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等をさらに配合してもよい。
また、溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、乾燥後の層厚で0.1〜10μm程度である。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
ここで用いられるイソシアネート系硬化剤としては、前述したものを用いることができ、また、上述した第2のプライマー層3−bを構成するポリエステルウレタンを含有することが好ましい。これらを用いることで、プライマー層3、特には直接接する第2のプライマー層3−bとの密着性がより高くなる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが挙げられる。
架橋剤としては、例えばフッ化アクリレート、シリコーンアクリレート、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。これらのうち、特にフッ化アクリレート及びシリコーンアクリレートが好ましい。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
硬化後の好ましい膜厚は、1〜20μmの範囲で用いる樹脂の種類に応じて適宜決定される。樹脂組成が硬い系で構成される場合は、膜厚は比較的薄い方が表面保護層のクラックは生じにくく、逆に樹脂組成が柔らかい系である場合には、膜厚は比較的厚い方が表面保護層のクラックは生じにくい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGyの範囲で選定される。
本発明においては、一般によく用いられるシリカ等の無機系充填剤に比較して、有機フィラーがより好ましい。これはマット剤を添加すると表面保護層を構成する樹脂とマット剤の界面からクラックが発生する場合があるが、有機フィラーの方が、電離放射線硬化性樹脂との馴染みがよく、該界面に起因するクラックの発生が生じにくいためである。有機フィラーの中でも特に尿素系樹脂からなるフィラーが好ましい。
また、マット剤の平均粒径については、表面保護層を構成する樹脂とマット剤の界面から発生するクラックを抑制するために、平均粒径8μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。一方、十分な艶消し効果を得るためには、マット剤の平均粒径は1μm以上が好ましい。なお、十分な艶消し効果が得られ、かつ表面物性を損なわないという点から、マット剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜7質量部の範囲が好ましく、0.5〜4質量部の範囲がさらに好ましい。
また、鋼板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、被着体である鋼板は隠蔽性を付与するために、鋼板に直接着色してコーティング層を設けてもよい。
また、架橋剤を添加することもでき、具体的にはイソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。
該接着剤又は粘着剤の厚さについては、特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。
(評価方法)
(1)曲げ加工性(化粧鋼板の曲げ試験)
各実施例及び比較例にて製造した化粧鋼板について、JIS K6744に準拠し、試験温度25±5℃、外側半径1.50mm及び1.75mmでの90度曲げ試験を実施した。その後、曲げ試験を行った試験体を、50℃、相対湿度95%の条件で12時間放置し、各試験体における評価を以下の評価基準で行った。
◎;クラックは全く発生しなかった。
○;後処理を行なったことで表面保護層4にマイクロサイズのクラックが発生したが、表面意匠を損なうほどではなかった。
△;後処理を行なったことで表面保護層4にクラックが発生し、かつ表面保護層4がプライマー層3から剥離した。
×;曲げ加工時点でクラックが発生した。
JIS K−5701−1に準拠して耐ブロッキング性を評価した。測定用試料は、各実施例及び比較例において、基材の表面側にプライマー層3−a及び3−bを塗工し、該プライマー塗工面に、基材に用いるPETフィルムを重ね合わせ、1cm2あたり2kgの荷重をかけ、室温にて24時間放置することで作製した。該測定用試料をプライマー界面で剥離し、シート間の密着の強度を観察した。評価は以下の基準で行った。
○;プライマー層が重ねたPETフィルム側に移ることなく、容易に剥離可能である。
×;重ねたPETフィルムが密着しており、該PETフィルムを剥離した際にプライマー層が該PETフィルム側に一部移る。
各実施例及び比較例において、基材の表面側にプライマー層3−a及び3−bを塗工した該プライマー塗工面に、ホワイトボードマーカーで筆記した。筆記後1分間室温にてマーカーを乾燥させた後、表面を拭き取った後の外観を以下の評価基準にて評価した。
○;プライマー層がマーカーで汚染されること無く、マーカーが容易に拭き取り可能であった。
△;プライマーがマーカーにより若干汚染されるが、大半は拭き取り可能であった。
×;プライマーが完全にマーカーにより汚染され、全く拭き取ることが出来なかった
基材2として、厚さ50μmの2軸延伸透明PETフィルム(東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」)の裏側に接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−295L)」(商品名))を介して、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))を貼付した基材を用意した。この基材の表面側に、軟質ウレタン樹脂(伸び率780%、Tg −41℃)をバインダーとし、チタン白(酸化チタン、粒径0.2〜0.3μm)を50質量%含有させたプライマーインキを、塗工量2.1g/m2で塗工して第1のプライマー層3−aを形成した。乾燥後、ポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−256−40」(商品名)、テレフタル酸、イソフタル酸、及びセバシン酸の混合物からなる多価カルボン酸とネオペンチルグリコール及びエチレングリコールからなるポリオールを反応させて得られたポリエステルポリオール(伸び率570%以上、Tg47℃)100質量部、硬化剤として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3質量部、及び溶剤として酢酸エチルをプライマーインキ全量に対して70質量%含有したもの)からなるプライマーインキをプライマー層3−a上に、塗工量1.0g/m2で塗工して、第2のプライマー層3−bを形成させた。
次に、第2のプライマー層3−bの上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、シリコーンアクリレートプレポリマー1.5質量部、及び平均粒径5μmの尿素系樹脂からなるフィラーを5質量部添加した電子線硬化性樹脂組成物をグラビアダイレクトコータ法により3.5g/m2塗工した。塗工後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層4とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シート1を得た。なお、表面保護層4の厚さは3.0μmであった。
該化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板に貼付し、本発明の化粧鋼板を得た。
該化粧鋼板について上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例1において、第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキの組成を以下のように代えたこと以外は実施例1と同様にして化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキの組成;強靭性ポリエステル(ザ・インクテック(株)製「PT−60」、伸び率570%、Tg37℃)100質量部に対して、硬化剤として、ザ・インクテック(株)製「FG−700」を4質量部含有し、溶剤として酢酸エチルをプライマーインキ全量に対して20質量%含有する。
比較例1において、第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキ中にシリカを強靭性ポリエステル100質量部に対して4質量部添加したこと以外は比較例1と同様にして化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキの組成を以下のように代えたこと以外は実施例1と同様にして化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキの組成;ポリウレタンカーボネート(ザ・インクテック(株)製「PT−58」)100質量部に対して、硬化剤として、ザ・インクテック(株)製「FG−700」を4質量部含有し、溶剤として酢酸エチルをプライマーインキ全量に対して20質量%含有する末端イソシアネートプレポリマーとメタクリル酸メチルとの共重合体(メタクリル酸メチルの含有量30質量%)からなるプライマーインキである。
比較例3において、第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキ中にシリカを末端イソシアネートプレポリマーとメタクリル酸メチルとの共重合体100質量部に対して4質量部添加したこと以外は比較例3と同様にして化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、第2のプライマー層3−bを構成するプライマーインキとして、ポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−295L」(商品名)、イソフタル酸とアジピン酸の混合物からなる多価カルボン酸と1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールからなるポリオールを反応させて得られたポリエステルポリオール(伸び率570%以上、Tg40℃)100質量部、硬化剤として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3質量部、及び溶剤として酢酸エチルをプライマーインキ全量に対して70質量%含有したもの)を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、平均粒径5μmの尿素系樹脂からなるフィラーの含有量を1質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第2表に示す。
比較例1〜5において、平均粒径5μmの尿素系樹脂からなるフィラーの含有量を1質量部としたこと以外は、それぞれ比較例1〜5と同様にして、化粧鋼板を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第2表に示す。
本発明の化粧シート及び化粧鋼板は、壁、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具の表面材などにも使用できる。特に、汚れやすいユニットバスの壁面やマーカーの消去が求められるホワイトボードなどに好適に用いられる。
2.基材
3.プライマー層
3−a.第1のプライマー層
3−b.第2のプライマー層
4.表面保護層
5.接着剤層
6.隠蔽層
Claims (7)
- 基材上に、少なくともプライマー層と表面保護層をこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、該プライマー層が基材側から、無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなる第1のプライマー層と、ガラス転移温度(Tg)が45℃以上のポリエステルポリオールを主剤とし、イソシアネート系硬化剤を含有し、シリカを含有しない樹脂組成物からなる第2のプライマー層を積層したものであり、かつ表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであることを特徴とする鋼板用化粧シート。
- 前記第2のプライマー層を構成する樹脂組成物を以下の方法で測定した際の常温での伸び率が120%以上である請求項1に記載の鋼板用化粧シート。
伸び率の測定方法:第2のプライマー層を構成する樹脂組成物において、イソシアネート系硬化剤を添加した後、常温で24時間放置し、JIS K6732に準拠して測定する。 - 前記無機顔料が酸化チタンである請求項1又は2に記載の鋼板用化粧シート。
- 電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 前記2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが25〜100μmである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 前記第2のプライマー層が顔料を含まない請求項1〜5のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板。
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