JP5380982B2 - 鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板 - Google Patents

鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板に関する。
鋼板に意匠を付与するために、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィン樹脂フィルム又はPETなどのポリエステル樹脂フィルムに加飾したシートを、鋼板にラミネートすることが行われている。特に、耐汚染性、成形加工性及び高硬度を有するものとしてPETフィルムラミネート鋼板が提案されている(特許文献1、特許請求の範囲参照)。また、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層及び透明性ポリエステル系樹脂層が順に積層されてなる鋼板用の化粧シートが提案されている(特許文献2参照)。
上記化粧シートは、耐汚染性が高く、高硬度ではあるが、鋼板の曲げ加工の際に、曲面部の表面にクラックが発生するという問題があった。PETなどのポリエステルフィルムを用いた場合にはクラックは起きにくく、ある程度の加工性が確保されるが、擦り傷に対する耐性が低いという問題があった。そして、PETなどに耐擦傷性を付与するために、その表面にハードコートする方法があるが、やはり曲面部でハードコートにクラックが発生するという問題が生じる。このようなクラックが発生するとクラック部分に汚れが溜まり、耐汚染性が低下する。また、水廻りなどに用いた場合には、クラック部分にカビが発生するなどの問題が生じたり、ホワイトボードなどに用いた場合には、クラック部分にマーカーが残存し、マーカー消去性が著しく低下するといった問題が生じる。
本発明者らは、上記問題点に対して、鋼板にラミネートして曲げ加工を行っても、曲面部にクラックが入らず、高い成形加工性を有するとともに、耐汚染性及び耐擦傷性を有する鋼板用化粧シートとして、2軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材上に、ウレタン系樹脂組成物からなるプライマー層と電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた表面保護層をこの順に積層した鋼板用化粧シートを提案した(特許文献3参照)。
ところで、鋼板用化粧シートを用いた鋼板のホワイトボードへの需要が高まるにつれて、より厳しいマーカー消去性が求められると同時に、ホワイトボードがOHPやスライドといったプロジェクター用反射型スクリーンとして併用されるため、その映写性が新たな性能として要求されるようになっている。しかし、特許文献1〜3に記載される鋼板用化粧シートでは、これらの性能要求に十分に対応できない場合があり、さらなる改良が求められている。
特開2000−43192号公報 特開2005−238498号公報 特開2007−290382号公報
本発明は特許文献3に記載される鋼板用化粧シートをさらに改良したものであり、優れた映写性を有しつつ、曲げ加工を行っても優れたマーカー消去性を有する鋼板用化粧シート及び化粧鋼板を提供することを目的とする。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に、特定の材料で構成される着色層と特定の凹凸付与微粒子を含む凹凸付与層と易接着層と電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化した表面保護層とをこの順に積層した鋼板用化粧シートが、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に、着色層と凹凸付与層と易接着層と表面保護層とをこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、着色層が無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなり、凹凸付与層が平均粒径1〜10μmである凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物からなり、かつ表面保護層が凹凸付与微粒子を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものである鋼板用化粧シート、
(2)前記易接着層が凹凸付与微粒子を含まないものである上記(1)に記載の鋼板用化粧シート、
(3)前記凹凸付与層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該凹凸付与層の樹脂固形分100質量部に対して5〜60質量部である上記(1)又は(2)に記載の鋼板用化粧シート、
(4)前記表面保護層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該表面保護層の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜6質量部である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(5)前記無機顔料が酸化チタンである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(6)前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、及び
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板、
を提供するものである。
本発明によれば、優れた映写性を有しつつ、曲げ加工を行っても優れたマーカー消去性を有する鋼板用化粧シート及び化粧鋼板を提供することができる。
[基材]
本発明の鋼板用化粧シートの典型的な構造を、図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の鋼板用化粧シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に着色層3、凹凸付与層4、易接着層5及び表面保護層6がこの順に積層されたものである。
本発明の鋼板用化粧シートにおいて、基材2は樹脂フィルムからなることが好ましく、表面保護層4のクラック発生を抑制する観点から、ポリエステルフィルムからなることがより好ましく、2軸延伸のポリエステルフィルムであることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレートなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、ポリエステル樹脂は各種ホモポリマーの他、樹脂の柔軟化などの目的で各種の共重合成分又は改質成分を添加した共重合ポリエステル系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどが使用できる。例えばPETであれば、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合重合反応において、ジカルボン酸成分として、例えば、セバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの長鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸を導入することができる。また、ジオール成分としてポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの両末端に水酸基を有するポリエーテル系ジオールを導入することができる。
本発明において、基材2として好ましく用いられるポリエステルフィルムは、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法などによりフィルム化され、より好ましくは2軸延伸することで調製される。2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムを基材2として用いることで、後に詳述する表面保護層4の伸びを抑制することができ、表面保護層4のクラック発生を抑制することができる。
基材2の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、25〜100μmの範囲が好適である。基材2の厚さが25〜100μmの範囲であると表面保護層4にかかる張力を十分に緩和することができる。
また、2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムが基材2に用いられる場合は、該フィルムのJIS C2151に準拠して測定した引張強度が150MPa以上であることが好ましい。引張強度が150MPa以上であると、高剛性であるため、曲げ加工部において発生する局部的な伸びが抑制でき、その上層の表面保護層の伸びも抑制することができる。
基材2に用いられる樹脂フィルムには、必要に応じて、添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。
上記添加剤のうち、特に基材2の弾性及び伸び率を向上させ、耐衝撃性を付与し、折り曲げ加工を施した際に、表面保護層に亀裂や割れを生じさせないとの観点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどの無機充填剤を含有することが好ましい。
これらの無機充填剤の含有量は、基材2に対して5〜60質量%の範囲が好ましい。
また、上記着色剤としては特に限定されず、顔料、染料などの公知の着色剤を使用することができる。着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料;イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラックなどの有機顔料(染料も含む);アルミニウム、真鍮などの金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料などが挙げられる。
基材2の着色には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着体(化粧シートを接着する鋼板)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着体の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
また、紫外線吸収剤及び光安定剤については、後に詳述する本発明の表面保護層4を構成する樹脂組成物に添加し得るものと同様のものを使用することができる。
基材2は、他の層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材2の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
[着色層]
本発明の化粧シートは、基材2上に着色層3、凹凸付与層4、易接着層5及び表面保護層6が順に積層した構成をとる。このような構成をとることで、本発明の化粧シートは、優れた映写性と、曲げ加工を行っても優れたマーカー消去性とを有することができる。より具体的には、例えば、時間経過とともに空気中の水分により、酸化チタンなどの無機顔料が吸水して、クラックなどの発生原因となり、マーカー消去性が著しく低下するところ、着色層と凹凸付与層と易接着層との相乗効果によって、これらを抑制し、かつ映写性を確保することもできる。
着色層は、全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよく、絵柄模様を形成していてもよい。絵柄模様を有する場合には絵柄の種類には特に制限はなく、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様などが挙げられる。
《ウレタン系樹脂組成物》
上記着色層3は、無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなる。ウレタン系樹脂組成物は柔軟性、強靭性及び弾性を兼ね備えており、このような特定の着色層3を設けることで、曲げ加工時に表面保護層6にかかる衝撃、引張力又はせん断力を緩和することができ、表面保護層6におけるクラックの発生を抑制することができる。
ここで使用されるウレタン系樹脂は、JIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上であることが好ましい。該伸び率が300%以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を十分に緩和することができる。以上の観点から、該伸び率は400%以上がさらに好ましく、500%以上がさらに好ましい。また、ガラス転移点(Tg)は、鋼板用化粧シートに必要十分な柔軟性・強靭性・弾性に加えて、低温下での曲げ加工性を付与するとの観点から、−20℃以下であることが好ましい。
ウレタン系樹脂としては、上記の伸び率、Tgを満足するものが好ましく、従来公知の熱可塑性ウレタン樹脂から選択することができる。例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、ポリカーボネート系などの熱可塑性ウレタン樹脂を単独使用又は混合使用する。
熱可塑性ウレタン樹脂としては、例えば、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものが好適に挙げられる。また、水分などで硬化せず経時的安定性が良好な点で、イソシアネート基を持たない飽和熱可塑性ウレタン樹脂も好適である。
一方、耐水性が特に要求される場合などは、上記伸び率、Tgを満足しつつ、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンが好適である。
このような熱可塑性ウレタン樹脂の具体例としては、水酸基を末端に有するポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させた線状高分子からなるウレタン樹脂を挙げることができる。
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボーネートポリオールなどが挙げられ、より具体的には、ポリエステルポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトンなどのポリエステルジオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ(テトラメチレンエーテル)などのポリエーテルジオールが挙げられ、また、ポリカーボネートポリオールとしては、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)などが挙げられる。その他、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、フッ素系ポリオール、アクリルシリコーン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
ジイソシアネート成分としては、ポリウレタン分野にて従来公知の脂肪族(ないしは脂環式)又は芳香族の各種ジイソシアネートが挙げられる。例えば、脂肪族(ないしは脂環式)系としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネートなどである。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
《無機顔料》
本発明における着色層で用いられるウレタン系樹脂組成物は無機顔料を含有する。無機顔料としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラックなどが挙げられ、これらを用途に応じて単独で、又は複数を組み合わせて、適宜選択して用いられるが、チタン白(酸化チタン)が用いられることが好ましい。これらの無機顔料は下地の隠蔽効果が高く、また紫外線をカットする効果もある。さらには化粧シートの生産過程において、ブロッキングを防止する効果もある。
無機顔料の含有比率としては、ウレタン系樹脂100質量部に対して5〜300質量部の範囲であることが好ましい。5質量部以上であると、無機顔料としての効果を十分に発揮することができる。一方、無機顔料の含有比率が多すぎると、ウレタン樹脂組成物の伸び率が低下するが、300質量部以下であれば、伸び率が低下しても十分な強靭性が保たれる。
無機顔料の粒径については、粒径が5μm以下であることが好ましい。5μm以下であると該無機粒子を起点としてクラックが入るという不具合がない。以上の点からさらに粒径は2μm以下であることが好ましい。
着色層の厚さは、1μm以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を緩和することができ、表面保護層6におけるクラックの発生を抑制することができる。また、10μm以下であると、化粧シートの生産過程において、ブロッキングを抑制することができ、また、印刷紙をリードするガイドロールに印刷面が接触した際に、印刷インキがガイドロールに転写するといった不都合がない。以上の点から、着色層3の厚さは、1〜6μmの範囲がより好ましく、1〜4μmの範囲がさらに好ましい。
また、着色層を形成するウレタン樹脂組成物の塗工量は、通常0.5〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.5〜6g/m2の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜5g/m2の範囲である。
[凹凸付与層]
凹凸付与層4は平均粒径1〜10μmである凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物からなるものである。凹凸付与層4は、ウレタン系樹脂を採用することで、上記した着色層3及び易接着層5との相乗効果によって、表面保護層6におけるクラックの発生の抑制に寄与し、凹凸付与微粒子を含むことで、化粧シートに映写性を付与する。凹凸付与層に用いられるウレタン系樹脂としては、化粧シートに通常用いられるようなウレタン系樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
《凹凸付与微粒子》
凹凸付与層に用いられる凹凸付与微粒子としては、種々のものが用いられ、無機質微粉末、有機フィラーなどが用いられる。無機質微粉末としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、ケイ酸微粉末などが挙げられ、有機フィラーとして、アクリル、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、尿素系樹脂などからなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラーなどが挙げられる。なお、ここでフィラーにはビーズも含有される。
凹凸付与微粒子の平均粒径は、1〜10μmであることを要し、1〜7μmが好ましく、3〜7μmがより好ましく、5〜7μmがさらに好ましい。凹凸付与微粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、優れたマーカー消去性を得ることができ、また、十分な艶消し効果を得ることができるので、優れた映写性をも得ることができる。ここで、凹凸付与微粒子の平均粒径は、コールターカウンター法もしくはレーザー回折法により測定されたものである。
凹凸付与層に含まれる凹凸付与微粒子の含有比率は、該凹凸付与層の樹脂固形分100質量部に対して、5〜60質量部の範囲であることが好ましく、5〜45質量部の範囲がより好ましい。凹凸付与微粒子の含有比率が上記範囲内であれば、凹凸付与層を形成する凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物の塗工性を確保しつつ、優れた映写性を得ることができる。
凹凸付与層の厚さは、0.5〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmの範囲がより好ましく、0.5〜3μmの範囲がさらに好ましい。凹凸付与層の厚さが上記範囲内にあれば、本発明の化粧シートに優れた映写性を付与しつつ、曲げ加工時に表面保護層6にかかる衝撃、引張力又はせん断力を緩和することができ、表面保護層6におけるクラックの発生を抑制することができるだけでなく、化粧シートの生産過程において、ブロッキングを抑制することができ、また、印刷紙をリードするガイドロールに印刷面が接触した際に、印刷インキがガイドロールに転写するといった不都合がない。
また、凹凸付与層を形成するウレタン樹脂組成物の塗工量は、通常0.2〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.2〜5g/m2の範囲であり、さらに好ましくは0.2〜3g/m2の範囲である。
[易接着層]
易接着層5は、凹凸付与層4と表面保護層6との密着性の向上、及び凹凸付与層4と表面保護層6との伸縮性の違いなどによる表面保護層6におけるクラックの発生の抑制に寄与する層である。易接着層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。また、易接着層は、上記した凹凸付与層に用いられるような凹凸付与微粒子を含まないことが好ましい。これは、凹凸付与層によって表面保護層に適切な凹凸形状を付与させるようにすることができ、易接着層に凹凸付与微粒子を含有させず、かつ耐汚染性の高い樹脂を選択することで、表面保護層の劣化による微細なクラック(亀裂)などからマーカーが侵入して凹凸付与微粒子に着色することによるマーカー消去性の低下を防ぐことができ、結果としてマーカー消去性を向上しうるからである。
バインダーとしては特に制限はなく、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などから任意のものが、単独で又は複数を混合して用いられる。なかでも、着色層及び凹凸付与層との相性や、表面保護層との密着性を考慮すると、ポリエステル系樹脂が好ましい。
易接着層の厚さは、0.5〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmの範囲がより好ましく、0.5〜3μmの範囲がさらに好ましい。易接着層の厚さが上記範囲内にあれば、優れたマーカー消去性を得ることができる。
また、易接着層を形成するインキの塗工量は、通常0.2〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.2〜5g/m2の範囲であり、さらに好ましくは0.2〜3g/m2の範囲である。
[隠蔽層]
本発明の化粧シートは図2に示すように、着色層の反対側に接着剤層8を介して、さらに隠蔽層7を積層することができる。基材2が透明である場合及び基材2が隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために形成することができる。
隠蔽層7を構成する材質としては特に限定されず、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィンフィルム、ポリエステルフィルムなどを用いることができる。これらのうち、表面保護層6のクラック発生を抑制する観点から、基材2と同様の樹脂フィルム、より好ましくはPETフィルム、さらに好ましくは2軸延伸PETフィルムなどのポリエステルフィルムを用いるのが好適である。また、隠蔽性、意匠性、クッション性、さらには環境を考慮すると、オレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムが好ましい。
隠蔽層7を構成するフィルムは隠蔽層としての機能を発揮するために、通常、着色剤を含有する。着色剤の種類としては、特に限定されず、基材2の着色に用いることのできるものと同様のものを用いることができる。
隠蔽層7を構成するフィルムの厚さとしては、特に制限はないが25〜100μmの範囲が好ましい。25μm以上であると十分な隠蔽効果が得られ、100μm以下であると曲率の関係で表面保護層6が必要以上に伸ばされることがなく、クラック発生をより抑制することができる。
隠蔽層7の形成方法は特に制限はないが、基材2全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法などが好ましいものとして挙げられる。
[接着剤層]
接着剤層8に用いる材料としては特に制限はなく、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。具体的にはポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などの硬化性樹脂などが挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。これらのうち、熱可塑性樹脂が、クッション層としての機能を果たし、化粧鋼板の加工時に表面保護層6のクラックを抑制する効果があるため好ましい。
接着剤層8の厚さは特に制限はないが、通常、乾燥後の厚さが3〜50μmの範囲である。
[絵柄模様層]
本発明の化粧シートは、基材2と着色層3との間、もしくは基材2の裏側(着色層3の反対側)に絵柄模様層を設けてもよい(図示せず)。絵柄模様層は、化粧シート及び化粧鋼板に所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類などは特に制限はない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様などが挙げられる。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤などを用いた印刷法などにより形成すればよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッドなどの無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料などの有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマスなどの真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料などが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカなどのフィラー、有機ビーズなどの体質顔料、中和剤、界面活性剤などをさらに配合してもよい。
結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
また、溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤;水などの無機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法などが挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法などの各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属などの部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いてもよい。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、乾燥後の層厚で0.1〜10μm程度である。
[表面保護層]
《電離放射線硬化性樹脂組成物》
表面保護層6は、凹凸付与微粒子を含む電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物は、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を示す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマーなどに対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステルなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
(凹凸付与微粒子)
本発明の化粧シートにおいて、表面保護層6は、優れた映写性を得る観点から、凹凸付与微粒子を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものであり、凹凸付与微粒子は必須の成分である。該凹凸付与微粒子の含有比率は、優れた映写性と電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工性などを得る観点から、表面保護層の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜6質量部であることが好ましく、1〜6質量部であることがより好ましく、3〜6質量部であることがさらに好ましい。
表面保護層に用いられる凹凸付与微粒子としては、凹凸付与層に用いられる凹凸付与微粒子を好ましく挙げることができ、一般によく用いられるシリカなどの無機系充填剤に比較して、有機フィラーがより好ましい。これは凹凸付与微粒子を添加すると表面保護層を構成する樹脂と凹凸付与微粒子の界面からクラックが発生する場合があるが、有機フィラーの方が、電離放射線硬化性樹脂との馴染みがよく、該界面に起因するクラックの発生が生じにくいためである。有機フィラーのなかでも尿素系樹脂からなるフィラーが特に好ましい。
凹凸付与微粒子の平均粒径は、1〜7μmであることが好ましく、1〜5μmがより好ましい。凹凸付与微粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、表面保護層を構成する樹脂と凹凸付与微粒子との界面から発生するクラックを抑制することができるので、優れたマーカー消去性を得ることができ、また、十分な艶消し効果を得ることができるので、優れた映写性をも得ることができる。
(イソシアネート系硬化剤)
本発明の鋼鈑用化粧シートでは、電離放射線硬化性樹脂組成物にイソシアネート系硬化剤を含有することが好ましい。イソシアネート系硬化剤を含有することで、凹凸付与層との密着性が向上し、さらには電離放射線硬化性樹脂相互間の接着性が向上することで、表面保護層のクラック発生が抑えられ、優れたマーカー消去性が得られ、また、時間が経過しても、曲げ加工性、優れた耐汚染性及び耐擦傷性などの性能低下を抑制し得る。
ここで用いられるイソシアネート系硬化剤としては、末端イソシアネートプレポリマーが好ましく、さらにはウレタンポリカーボネート又はポリエステルウレタンが好ましい。これらを用いることで、凹凸付与層との密着性がより高くなる。
(各種添加剤)
また本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらのなかでも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが挙げられる。
架橋剤としては、例えばフッ化アクリレート、シリコーンアクリレート、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。これらのうち、特にフッ化アクリレート及びシリコーンアクリレートが好ましい。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
(表面保護層の形成)
本発明においては、前記の電子線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電子線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
硬化後の好ましい膜厚は、1〜20μmの範囲で用いる樹脂の種類に応じて適宜決定される。樹脂組成が硬い系で構成される場合は、膜厚は比較的薄い方が表面保護層のクラックは生じにくく、逆に樹脂組成が柔らかい系である場合には、膜厚は比較的厚い方が表面保護層のクラックは生じにくい。
上述のようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGyの範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
このようにして、形成された表面保護層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
[化粧鋼板]
本発明の化粧シートは、鋼板に貼着して化粧鋼板として使用される。被着体となる鋼板としては、鉄、アルミニウム、銅などの金属材料が挙げられ、これらは溶融亜鉛メッキ処理や電気亜鉛メッキ処理などの表面処理が施されていてもよい。また、被着体の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱などの形状を任意に採用できる。
また、鋼板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、被着体である鋼板は隠蔽性を付与するために、鋼板に直接着色してコーティング層を設けてもよい。
被着体である鋼板と化粧シートを積層するのに用いる接着剤又は粘着剤は特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤又は粘着剤を使用できる。接着剤としては、隠蔽層7を接着するための接着剤層8で用いるものと同様のものを用いることができる。また、粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系などの粘着剤を適宜選択して用いることができる。これらのうち、耐候性などの点から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマーの重合体や共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤が好ましく、特にn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが好適である。
また、架橋剤を添加することもでき、具体的にはイソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。
該接着剤又は粘着剤の厚さについては、特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。
本発明の化粧シートを貼付した鋼板は、例えば、マーカーの消去や映写性が求められるホワイトボードや汚れやすいユニットバスの壁面などに好適に用いられ、本発明の化粧シートの特長を有効に活用する観点では、ホワイトボードに用いられることが特に好ましい。その他、壁、天井などの建築物内装材、扉、扉枠、窓枠などの建具の表面材、回縁、幅木などの造作部材の表面材、箪笥、キャビネットなどの家具の表面材などにも使用できる。また、被着材である鋼板を用いずに、化粧シート自体を建材部材に対するラミネート材、ラッピング材などとして使用することもできる。例えば、浴室などに用いられる鋼板基材の表面に本発明の化粧シートを貼着して装飾を施してもよい。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
1.マーカー消去性の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧鋼板に、マーカー(「Knockle(商品名)」:ぺんてる株式会社製)で筆記し、拭取りした状況を以下の評価基準で評価した。
◎:マーカーで汚染されることなく、マーカーは容易に拭取ることで拭取り可能だった。
○:マーカーは丁寧に拭取ることで拭取り可能だった。
×:マーカーを完全に拭取ることはできなかった。
2.映写性の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧鋼板について、グロスメーター(Gardner社製「micro−TRI−gloss」)を用い、入射角60度の条件でのグロス値を測定した。数字が低いほど低光沢(低艶)であることを示し、映写性が優れていることを示す。
◎:表面保護層のグロス値が30未満であった。
○:表面保護層のグロス値が30以上40未満であった。
△:表面保護層のグロス値が40以上50未満であった。
×:表面保護層のグロス値が50以上であった。
実施例1
基材2として、厚さ50μmの2軸延伸透明PETフィルム(東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」)の裏側に接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−295L)」(商品名))を介して、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))を貼付した基材を用意した。この基材の表面側に、軟質ウレタン樹脂(伸び率780%、Tg:−41℃)をバインダーとし、チタン白(酸化チタン、粒径:0.2〜0.3μm)を50質量%含有させたインキを、塗工量3.1g/m2で塗工して着色層3を形成した。乾燥後、軟質ウレタン樹脂をバインダーとし、シリカからなるフィラー(平均粒径:1.3μm)を、該軟質ウレタン樹脂固形分100質量部に対して53質量部の割合で含有させたフィラー含有インキを、着色層上に塗工量1g/m2で塗工して、凹凸付与層4を形成させ、
ポリエステルウレタン系樹脂(主剤としてテレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸の混合物からなる多価カルボン酸とネオペンチルグリコール及びエチレングリコールからなるポリオールとを反応させて得られたポリエステルポリオール(伸び率:570%以上、ガラス転移温度:47℃)を100質量部、硬化剤として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3質量部)からなるプライマーインキを、凹凸付与層4上に塗工量1g/m2で塗工して、易接着層5を形成させた。
次に、易接着層5の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレート60質量部、6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1.5質量部を添加した電子線硬化性樹脂組成物に、該電子線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して2.5質量部の割合で、尿素系樹脂からなるフィラー(平均粒径:5μm)を含有させたフィラー含有の電子線硬化性樹脂組成物を、グラビアダイレクトコータ法により2g/m2塗工した。塗工後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層6とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シート1を得た。なお、表面保護層6の厚さは1.5μmであった。
該化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板に貼付し、本発明の化粧鋼板を得た。
該化粧鋼板について上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例2〜10及び比較例1、2
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径を第1表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第1表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例11〜20及び比較例3、4
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径及び含有比率を第2表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第2表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第2表に示す。
実施例21〜30及び比較例5、6
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径及び含有比率を第3表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第3表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第3表に示す。
比較例7〜12
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径及び含有比率を第4表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第4表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第4表に示す。
Figure 0005380982
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本発明の鋼鈑用化粧シート及び該化粧シートを用いた鋼鈑は、優れた映写性を有しつつ、曲げ加工を行っても優れたマーカー消去性を有するものである。本発明の化粧シート及び化粧鋼板は、壁、天井などの建築物内装材、扉、扉枠、窓枠などの建具の表面材、回縁、幅木などの造作部材の表面材、箪笥、キャビネットなどの家具の表面材などにも使用できる。特に、マーカーの消去や映写性が求められるホワイトボードや汚れやすいユニットバスの壁面などに好適に用いられる。
本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。 本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
符号の説明
1.化粧シート
2.基材
3.着色層
4.凹凸付与層
5.易接着層
6.表面保護層
7.隠蔽層
8.接着剤層

Claims (8)

  1. 基材上に、着色層と凹凸付与層と易接着層と表面保護層とをこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、着色層が無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなり、凹凸付与層が平均粒径1〜10μmの艶消剤である凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物からなり、かつ表面保護層が凹凸付与微粒子として艶消剤である有機フィラーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものである鋼板用化粧シート。
  2. 前記易接着層が凹凸付与微粒子を含まないものである請求項1に記載の鋼板用化粧シート。
  3. 前記凹凸付与層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該凹凸付与層の樹脂固形分100質量部に対して5〜60質量部である請求項1又は2に記載の鋼板用化粧シート。
  4. 前記表面保護層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該表面保護層の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜6質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
  5. 前記無機顔料が酸化チタンである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
  6. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
  7. 凹凸付与層が、全面にわたって設けられる層である請求項1〜6のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板。
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