JP5380982B2 - 鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板 - Google Patents
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Description
本発明者らは、上記問題点に対して、鋼板にラミネートして曲げ加工を行っても、曲面部にクラックが入らず、高い成形加工性を有するとともに、耐汚染性及び耐擦傷性を有する鋼板用化粧シートとして、2軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材上に、ウレタン系樹脂組成物からなるプライマー層と電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化させた表面保護層をこの順に積層した鋼板用化粧シートを提案した(特許文献3参照)。
(1)基材上に、着色層と凹凸付与層と易接着層と表面保護層とをこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、着色層が無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなり、凹凸付与層が平均粒径1〜10μmである凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物からなり、かつ表面保護層が凹凸付与微粒子を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものである鋼板用化粧シート、
(2)前記易接着層が凹凸付与微粒子を含まないものである上記(1)に記載の鋼板用化粧シート、
(3)前記凹凸付与層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該凹凸付与層の樹脂固形分100質量部に対して5〜60質量部である上記(1)又は(2)に記載の鋼板用化粧シート、
(4)前記表面保護層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該表面保護層の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜6質量部である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(5)前記無機顔料が酸化チタンである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(6)前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、及び
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板、
を提供するものである。
本発明の鋼板用化粧シートの典型的な構造を、図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の鋼板用化粧シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に着色層3、凹凸付与層4、易接着層5及び表面保護層6がこの順に積層されたものである。
本発明の鋼板用化粧シートにおいて、基材2は樹脂フィルムからなることが好ましく、表面保護層4のクラック発生を抑制する観点から、ポリエステルフィルムからなることがより好ましく、2軸延伸のポリエステルフィルムであることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレートなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムが基材2に用いられる場合は、該フィルムのJIS C2151に準拠して測定した引張強度が150MPa以上であることが好ましい。引張強度が150MPa以上であると、高剛性であるため、曲げ加工部において発生する局部的な伸びが抑制でき、その上層の表面保護層の伸びも抑制することができる。
これらの無機充填剤の含有量は、基材2に対して5〜60質量%の範囲が好ましい。
基材2の着色には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着体(化粧シートを接着する鋼板)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着体の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
また、紫外線吸収剤及び光安定剤については、後に詳述する本発明の表面保護層4を構成する樹脂組成物に添加し得るものと同様のものを使用することができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材2の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
本発明の化粧シートは、基材2上に着色層3、凹凸付与層4、易接着層5及び表面保護層6が順に積層した構成をとる。このような構成をとることで、本発明の化粧シートは、優れた映写性と、曲げ加工を行っても優れたマーカー消去性とを有することができる。より具体的には、例えば、時間経過とともに空気中の水分により、酸化チタンなどの無機顔料が吸水して、クラックなどの発生原因となり、マーカー消去性が著しく低下するところ、着色層と凹凸付与層と易接着層との相乗効果によって、これらを抑制し、かつ映写性を確保することもできる。
上記着色層3は、無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなる。ウレタン系樹脂組成物は柔軟性、強靭性及び弾性を兼ね備えており、このような特定の着色層3を設けることで、曲げ加工時に表面保護層6にかかる衝撃、引張力又はせん断力を緩和することができ、表面保護層6におけるクラックの発生を抑制することができる。
ここで使用されるウレタン系樹脂は、JIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上であることが好ましい。該伸び率が300%以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を十分に緩和することができる。以上の観点から、該伸び率は400%以上がさらに好ましく、500%以上がさらに好ましい。また、ガラス転移点(Tg)は、鋼板用化粧シートに必要十分な柔軟性・強靭性・弾性に加えて、低温下での曲げ加工性を付与するとの観点から、−20℃以下であることが好ましい。
熱可塑性ウレタン樹脂としては、例えば、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものが好適に挙げられる。また、水分などで硬化せず経時的安定性が良好な点で、イソシアネート基を持たない飽和熱可塑性ウレタン樹脂も好適である。
一方、耐水性が特に要求される場合などは、上記伸び率、Tgを満足しつつ、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンが好適である。
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボーネートポリオールなどが挙げられ、より具体的には、ポリエステルポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトンなどのポリエステルジオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ(テトラメチレンエーテル)などのポリエーテルジオールが挙げられ、また、ポリカーボネートポリオールとしては、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)などが挙げられる。その他、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、フッ素系ポリオール、アクリルシリコーン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
本発明における着色層で用いられるウレタン系樹脂組成物は無機顔料を含有する。無機顔料としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラックなどが挙げられ、これらを用途に応じて単独で、又は複数を組み合わせて、適宜選択して用いられるが、チタン白(酸化チタン)が用いられることが好ましい。これらの無機顔料は下地の隠蔽効果が高く、また紫外線をカットする効果もある。さらには化粧シートの生産過程において、ブロッキングを防止する効果もある。
無機顔料の粒径については、粒径が5μm以下であることが好ましい。5μm以下であると該無機粒子を起点としてクラックが入るという不具合がない。以上の点からさらに粒径は2μm以下であることが好ましい。
また、着色層を形成するウレタン樹脂組成物の塗工量は、通常0.5〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.5〜6g/m2の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜5g/m2の範囲である。
凹凸付与層4は平均粒径1〜10μmである凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物からなるものである。凹凸付与層4は、ウレタン系樹脂を採用することで、上記した着色層3及び易接着層5との相乗効果によって、表面保護層6におけるクラックの発生の抑制に寄与し、凹凸付与微粒子を含むことで、化粧シートに映写性を付与する。凹凸付与層に用いられるウレタン系樹脂としては、化粧シートに通常用いられるようなウレタン系樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
凹凸付与層に用いられる凹凸付与微粒子としては、種々のものが用いられ、無機質微粉末、有機フィラーなどが用いられる。無機質微粉末としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、ケイ酸微粉末などが挙げられ、有機フィラーとして、アクリル、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、尿素系樹脂などからなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラーなどが挙げられる。なお、ここでフィラーにはビーズも含有される。
凹凸付与層に含まれる凹凸付与微粒子の含有比率は、該凹凸付与層の樹脂固形分100質量部に対して、5〜60質量部の範囲であることが好ましく、5〜45質量部の範囲がより好ましい。凹凸付与微粒子の含有比率が上記範囲内であれば、凹凸付与層を形成する凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物の塗工性を確保しつつ、優れた映写性を得ることができる。
また、凹凸付与層を形成するウレタン樹脂組成物の塗工量は、通常0.2〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.2〜5g/m2の範囲であり、さらに好ましくは0.2〜3g/m2の範囲である。
易接着層5は、凹凸付与層4と表面保護層6との密着性の向上、及び凹凸付与層4と表面保護層6との伸縮性の違いなどによる表面保護層6におけるクラックの発生の抑制に寄与する層である。易接着層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。また、易接着層は、上記した凹凸付与層に用いられるような凹凸付与微粒子を含まないことが好ましい。これは、凹凸付与層によって表面保護層に適切な凹凸形状を付与させるようにすることができ、易接着層に凹凸付与微粒子を含有させず、かつ耐汚染性の高い樹脂を選択することで、表面保護層の劣化による微細なクラック(亀裂)などからマーカーが侵入して凹凸付与微粒子に着色することによるマーカー消去性の低下を防ぐことができ、結果としてマーカー消去性を向上しうるからである。
バインダーとしては特に制限はなく、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などから任意のものが、単独で又は複数を混合して用いられる。なかでも、着色層及び凹凸付与層との相性や、表面保護層との密着性を考慮すると、ポリエステル系樹脂が好ましい。
また、易接着層を形成するインキの塗工量は、通常0.2〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは0.2〜5g/m2の範囲であり、さらに好ましくは0.2〜3g/m2の範囲である。
本発明の化粧シートは図2に示すように、着色層の反対側に接着剤層8を介して、さらに隠蔽層7を積層することができる。基材2が透明である場合及び基材2が隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために形成することができる。
隠蔽層7を構成する材質としては特に限定されず、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィンフィルム、ポリエステルフィルムなどを用いることができる。これらのうち、表面保護層6のクラック発生を抑制する観点から、基材2と同様の樹脂フィルム、より好ましくはPETフィルム、さらに好ましくは2軸延伸PETフィルムなどのポリエステルフィルムを用いるのが好適である。また、隠蔽性、意匠性、クッション性、さらには環境を考慮すると、オレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムが好ましい。
隠蔽層7を構成するフィルムの厚さとしては、特に制限はないが25〜100μmの範囲が好ましい。25μm以上であると十分な隠蔽効果が得られ、100μm以下であると曲率の関係で表面保護層6が必要以上に伸ばされることがなく、クラック発生をより抑制することができる。
隠蔽層7の形成方法は特に制限はないが、基材2全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法などが好ましいものとして挙げられる。
接着剤層8に用いる材料としては特に制限はなく、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。具体的にはポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などの硬化性樹脂などが挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。これらのうち、熱可塑性樹脂が、クッション層としての機能を果たし、化粧鋼板の加工時に表面保護層6のクラックを抑制する効果があるため好ましい。
接着剤層8の厚さは特に制限はないが、通常、乾燥後の厚さが3〜50μmの範囲である。
本発明の化粧シートは、基材2と着色層3との間、もしくは基材2の裏側(着色層3の反対側)に絵柄模様層を設けてもよい(図示せず)。絵柄模様層は、化粧シート及び化粧鋼板に所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類などは特に制限はない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様などが挙げられる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッドなどの無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料などの有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマスなどの真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料などが挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカなどのフィラー、有機ビーズなどの体質顔料、中和剤、界面活性剤などをさらに配合してもよい。
また、溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤;水などの無機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、乾燥後の層厚で0.1〜10μm程度である。
《電離放射線硬化性樹脂組成物》
表面保護層6は、凹凸付与微粒子を含む電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物は、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を示す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマーなどに対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステルなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
本発明の化粧シートにおいて、表面保護層6は、優れた映写性を得る観点から、凹凸付与微粒子を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものであり、凹凸付与微粒子は必須の成分である。該凹凸付与微粒子の含有比率は、優れた映写性と電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工性などを得る観点から、表面保護層の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜6質量部であることが好ましく、1〜6質量部であることがより好ましく、3〜6質量部であることがさらに好ましい。
凹凸付与微粒子の平均粒径は、1〜7μmであることが好ましく、1〜5μmがより好ましい。凹凸付与微粒子の平均粒径が上記範囲内であれば、表面保護層を構成する樹脂と凹凸付与微粒子との界面から発生するクラックを抑制することができるので、優れたマーカー消去性を得ることができ、また、十分な艶消し効果を得ることができるので、優れた映写性をも得ることができる。
本発明の鋼鈑用化粧シートでは、電離放射線硬化性樹脂組成物にイソシアネート系硬化剤を含有することが好ましい。イソシアネート系硬化剤を含有することで、凹凸付与層との密着性が向上し、さらには電離放射線硬化性樹脂相互間の接着性が向上することで、表面保護層のクラック発生が抑えられ、優れたマーカー消去性が得られ、また、時間が経過しても、曲げ加工性、優れた耐汚染性及び耐擦傷性などの性能低下を抑制し得る。
ここで用いられるイソシアネート系硬化剤としては、末端イソシアネートプレポリマーが好ましく、さらにはウレタンポリカーボネート又はポリエステルウレタンが好ましい。これらを用いることで、凹凸付与層との密着性がより高くなる。
また本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが挙げられる。
架橋剤としては、例えばフッ化アクリレート、シリコーンアクリレート、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。これらのうち、特にフッ化アクリレート及びシリコーンアクリレートが好ましい。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
本発明においては、前記の電子線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電子線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
硬化後の好ましい膜厚は、1〜20μmの範囲で用いる樹脂の種類に応じて適宜決定される。樹脂組成が硬い系で構成される場合は、膜厚は比較的薄い方が表面保護層のクラックは生じにくく、逆に樹脂組成が柔らかい系である場合には、膜厚は比較的厚い方が表面保護層のクラックは生じにくい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGyの範囲で選定される。
本発明の化粧シートは、鋼板に貼着して化粧鋼板として使用される。被着体となる鋼板としては、鉄、アルミニウム、銅などの金属材料が挙げられ、これらは溶融亜鉛メッキ処理や電気亜鉛メッキ処理などの表面処理が施されていてもよい。また、被着体の形状は特に限定されず、例えば、平板、曲面板、多角柱などの形状を任意に採用できる。
また、鋼板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、被着体である鋼板は隠蔽性を付与するために、鋼板に直接着色してコーティング層を設けてもよい。
また、架橋剤を添加することもでき、具体的にはイソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。
該接着剤又は粘着剤の厚さについては、特に制限はないが、通常、1〜100μmの範囲である。
(評価方法)
1.マーカー消去性の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧鋼板に、マーカー(「Knockle(商品名)」:ぺんてる株式会社製)で筆記し、拭取りした状況を以下の評価基準で評価した。
◎:マーカーで汚染されることなく、マーカーは容易に拭取ることで拭取り可能だった。
○:マーカーは丁寧に拭取ることで拭取り可能だった。
×:マーカーを完全に拭取ることはできなかった。
2.映写性の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧鋼板について、グロスメーター(Gardner社製「micro−TRI−gloss」)を用い、入射角60度の条件でのグロス値を測定した。数字が低いほど低光沢(低艶)であることを示し、映写性が優れていることを示す。
◎:表面保護層のグロス値が30未満であった。
○:表面保護層のグロス値が30以上40未満であった。
△:表面保護層のグロス値が40以上50未満であった。
×:表面保護層のグロス値が50以上であった。
基材2として、厚さ50μmの2軸延伸透明PETフィルム(東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」)の裏側に接着剤であるポリエステルウレタン樹脂(大日精化工業(株)製「E−295L)」(商品名))を介して、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB−013」(商品名))を貼付した基材を用意した。この基材の表面側に、軟質ウレタン樹脂(伸び率780%、Tg:−41℃)をバインダーとし、チタン白(酸化チタン、粒径:0.2〜0.3μm)を50質量%含有させたインキを、塗工量3.1g/m2で塗工して着色層3を形成した。乾燥後、軟質ウレタン樹脂をバインダーとし、シリカからなるフィラー(平均粒径:1.3μm)を、該軟質ウレタン樹脂固形分100質量部に対して53質量部の割合で含有させたフィラー含有インキを、着色層上に塗工量1g/m2で塗工して、凹凸付与層4を形成させ、
ポリエステルウレタン系樹脂(主剤としてテレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸の混合物からなる多価カルボン酸とネオペンチルグリコール及びエチレングリコールからなるポリオールとを反応させて得られたポリエステルポリオール(伸び率:570%以上、ガラス転移温度:47℃)を100質量部、硬化剤として1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート3質量部)からなるプライマーインキを、凹凸付与層4上に塗工量1g/m2で塗工して、易接着層5を形成させた。
次に、易接着層5の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレート60質量部、6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1.5質量部を添加した電子線硬化性樹脂組成物に、該電子線硬化性樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して2.5質量部の割合で、尿素系樹脂からなるフィラー(平均粒径:5μm)を含有させたフィラー含有の電子線硬化性樹脂組成物を、グラビアダイレクトコータ法により2g/m2塗工した。塗工後、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層6とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シート1を得た。なお、表面保護層6の厚さは1.5μmであった。
該化粧シート1をウレタン系の接着剤を用いて厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板に貼付し、本発明の化粧鋼板を得た。
該化粧鋼板について上記方法にて評価した。評価結果を第1表に示す。
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径を第1表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第1表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径及び含有比率を第2表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第2表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第2表に示す。
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径及び含有比率を第3表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第3表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第3表に示す。
実施例1において、凹凸付与層4を形成するフィラーの粒径及び含有比率を第4表に示されるものとし、電子線硬化性樹脂組成物に含有させる尿素系樹脂からなるフィラーを、第4表に示される量を添加した以外は、実施例1と同様にして、化粧鋼板を得た。得られた化粧鋼板を、実施例1と同様にして評価した結果を第4表に示す。
2.基材
3.着色層
4.凹凸付与層
5.易接着層
6.表面保護層
7.隠蔽層
8.接着剤層
Claims (8)
- 基材上に、着色層と凹凸付与層と易接着層と表面保護層とをこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、着色層が無機顔料を含むウレタン系樹脂組成物からなり、凹凸付与層が平均粒径1〜10μmの艶消剤である凹凸付与微粒子を含むウレタン系樹脂組成物からなり、かつ表面保護層が凹凸付与微粒子として艶消剤である有機フィラーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものである鋼板用化粧シート。
- 前記易接着層が凹凸付与微粒子を含まないものである請求項1に記載の鋼板用化粧シート。
- 前記凹凸付与層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該凹凸付与層の樹脂固形分100質量部に対して5〜60質量部である請求項1又は2に記載の鋼板用化粧シート。
- 前記表面保護層に含まれる凹凸付与微粒子の含有量が、該表面保護層の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜6質量部である請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 前記無機顔料が酸化チタンである請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 凹凸付与層が、全面にわたって設けられる層である請求項1〜6のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板。
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