JP5056690B2 - 鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板 - Google Patents
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一方、鋼板と化粧シートを接着させる方法として、化粧シートの隠蔽層側に裏面プライマー層を形成し、鋼板に特定のポリエステル系接着剤を10〜20μmもの厚さを有する接着剤層を形成させた上で接着させていた。しかし上記の厚みを有した接着剤は乾燥後のタックが非常に大きいことから、鋼板と化粧シートをラミネートする際に異物が接着層に付着してしまい、貼り合わせ後の意匠性を大きく損なう場合があった。
本発明は、上記課題を解決し、鋼板との接着性が高く、かつ意匠性に優れた鋼板用化粧シート及びこれを用いた化粧鋼板を提供することを目的とする。
(1)基材の表面に、少なくとも表面プライマー層と表面保護層をこの順に積層してなり、基材の裏面に、少なくとも隠蔽層と裏面プライマー層をこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、表面プライマー層がウレタン系樹脂組成物からなり、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、裏面プライマー層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂を主剤とし、アロファネート変性ポリイソシアネートを硬化剤とする組成物からなることを特徴とする鋼板用化粧シート、
(2)前記裏面プライマー層を形成するための組成物において、アロファネート変性ポリイソシアネートの含有量が0.5〜4質量%である上記(1)に記載の鋼板用化粧シート、
(3)前記裏面プライマー層の塗布量が0.1〜1.8g/m2である上記(1)又は(2)に記載の鋼板用化粧シート、
(4)前記ウレタン系樹脂のJIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(5)前記ウレタン系樹脂組成物に無機顔料を含む上記(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(6)電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、
(7)前記2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが25〜100μmである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の鋼板用化粧シート、及び
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板
を提供するものである。
本発明の鋼板用化粧シートは、基材2が2軸延伸ポリエステルフィルムからなる。ここで用いられるポリエステル樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムを基材2として用いることで、後に詳述する表面保護層4の伸びを抑制することができ、表面保護層4のクラック発生を抑制することができる。
また、基材2に用いられる2軸延伸されたポリエステル樹脂フィルムは、JIS C2151に準拠して測定した引張強度が150MPa以上であることが好ましい。
引張強度が150MPa以上であると、高剛性であるため、曲げ加工部において発生する局部的な伸びが抑制でき、その上層の表面保護層の伸びも抑制することができる。
これらの無機充填剤の含有量は、基材2に対して5〜60質量%の範囲が好ましい。
基材2の着色には、透明着色と不透明着色(隠蔽着色)があり、これらは任意に選択できる。例えば、被着体(化粧シートを接着する鋼板)の地色を着色隠蔽する場合には、不透明着色を選択すればよい。一方、被着体の地模様を目視できるようにする場合には、透明着色を選択すればよい。
また、紫外線吸収剤及び光安定剤については、後に詳述する本発明の表面保護層4を構成する樹脂組成物に添加し得るものと同様のものを使用することができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材2の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
ここで使用されるウレタン樹脂は、JIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上であることが好ましい。該伸び率が300%以上であると、曲げ加工時に表面保護層4にかかる衝撃、引張力又はせん断力を十分に緩和することができる。以上の観点から、該伸び率は400%以上がさらに好ましく、500%以上がさらに好ましい。また、ガラス転移点(Tg)は、鋼板用化粧シートに必要十分な柔軟性・強靭性・弾性に加えて、低温下での曲げ加工性を付与するとの観点から、−20℃以下であることが好ましい。
熱可塑性ウレタン樹脂としては、例えば、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものが好適に挙げられる。また、水分等で硬化せず経時的安定性が良好な点で、イソシアネート基を持たない飽和熱可塑性ウレタン樹脂も好適である。
一方、耐水性が特に要求される場合などは、上記伸び率、Tgを満足しつつ、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンが好適である。
ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボーネートポリオール等が挙げられ、より具体的には、ポリエステルポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチルアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ブチレンアゼラエート)、ポリ(ブチレンセバケート)、ポリカプロラクトン等のポリエステルジオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ(テトラメチレンエーテル)等のポリエーテルジオールが挙げられ、また、ポリカーボネートポリオールとしては、ポリ(ブチレンカーボネート)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等が挙げられる。その他、アクリルポリオール、ウレタンポリオール、フッ素系ポリオール、アクリルシリコーン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
これらの着色剤うち、チタン白(酸化チタン)などの無機顔料が好ましい。これらの無機顔料は下地の隠蔽効果が高く、また紫外線をカットする効果もある。さらには化粧シートの生産過程において、ブロッキングを防止する効果もある。
無機顔料の含有量としては、ウレタン系樹脂100質量部に対して5〜300質量部の範囲であることが好ましい。5質量部以上であると、無機顔料としての効果を十分に発揮することができる。一方、無機顔料の含有量が多すぎると、ウレタン樹脂組成物の伸び率が低下するが、300質量部以下であれば、伸び率が低下しても十分な強靭性が保たれる。
無機顔料の粒径については、粒径が5μm以下であることが好ましい。5μm以下であると該無機粒子を起点としてクラックが入るという不具合がない。以上の点からさらに粒径は2μm以下であることが好ましい。
また、表面プライマー層を形成するウレタン樹脂組成物の塗工量は、通常1〜10g/m2の範囲であり、より好ましくは2〜5g/m2の範囲である。
本発明では、隠蔽層6を構成する材質として、塩化ビニル樹脂フィルム、オレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。これらのうち、オレフィンフィルム、特にポリプロピレンフィルムを好適に用いることできる。ポリプロピレンフィルムは柔軟性があるため、例えば異物かみが発生しても、それを目立たなくすることができ、高い意匠性を得ることができるとともに、化粧シートに高いクッション性を付与することができる。また、同等の性能を有するフィルムとして塩化ビニル樹脂フィルムがあるが、環境上の問題から、ポリプロピレンフィルムが優れる。
隠蔽層6を構成するフィルムの厚さとしては、特に制限はないが25〜100μmの範囲が好ましい。25μm以上であると十分な隠蔽効果、意匠性、及びクッション性が得られ、100μm以下であると曲率の関係で表面保護層4が必要以上に伸ばされることがなく、クラック発生をより抑制することができる。
隠蔽層6の形成方法は特に制限はないが、基材2全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
接着剤層5の厚さは特に制限はないが、通常、乾燥後の厚さが3〜50μmの範囲である。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、塩化ビニル成分の含有率が80〜97質量%の範囲であることが好ましく、分子量としては、200〜800程度のものが好適に用いられる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、塩化ビニル及び酢酸ビニル以外の他の共重合成分を含んでいてもよく、例えば、ビニルアルコール、マレイン酸などを含有していてもよい。
ジオール化合物としては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(数平均分子量200〜800程度)などが好適に挙げられる。
また、有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
アロファネート化触媒としては、各種のアロファネート化触媒を用いることができるが、通常はカルボン酸の金属塩、具体的には、ジルコニウムのカルボン酸塩、スズのカルボン酸塩などが挙げられる。
また、裏面プライマー層7を形成するための組成物の塗布量は、0.1〜1.8g/m2の範囲が好ましい。塗布量がこの範囲内であると、十分な接着強度を有し、かつ長時間経過後も鋼板との密着性が低下しないなどの利点がある。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等をさらに配合してもよい。
また、溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、乾燥後の層厚で0.1〜10μm程度である。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが挙げられる。
架橋剤としては、例えばフッ化アクリレート、シリコーンアクリレート、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。これらのうち、特にフッ化アクリレート及びシリコーンアクリレートが好ましい。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
硬化後の好ましい膜厚は、1〜20μmの範囲で用いる樹脂の種類に応じて適宜決定される。樹脂組成が硬い系で構成される場合は、膜厚は比較的薄い方が表面保護層のクラックは生じにくく、逆に樹脂組成が柔らかい系である場合には、膜厚は比較的厚い方が表面保護層のクラックは生じにくい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGyの範囲で選定される。
本発明においては、一般によく用いられるシリカ等の無機系充填剤に比較して、有機フィラーがより好ましい。これはマット剤を添加すると表面保護層を構成する樹脂とマット剤の界面からクラックが発生する場合があるが、有機フィラーの方が、電離放射線硬化性樹脂との馴染みがよく、該界面に起因するクラックの発生が生じにくいためである。有機フィラーの中でも特に尿素系樹脂からなるフィラーが好ましい。
また、マット剤の平均粒径については、表面保護層を構成する樹脂とマット剤の界面から発生するクラックを抑制するために、平均粒径8μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。一方、十分な艶消し効果を得るためには、マット剤の平均粒径は1μm以上が好ましい。なお、十分な艶消し効果が得られ、かつ表面物性を損なわないという点から、マット剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜7質量部の範囲が好ましく、0.5〜4質量部の範囲がさらに好ましい。
また、鋼板の厚さについては特に制限はないが、通常0.2〜1mm程度である。なお、被着体である鋼板は隠蔽性を付与するために、鋼板に直接着色してコーティング層を設けてもよい。
(評価方法)
(1)鋼板の接着強度
各実施例及び比較例で得られた鋼板用化粧シートを、接着剤として、ポリ塩化ビニル用接着剤として知られる以下のものを用いて、厚さ0.4mmの亜鉛メッキ鋼板に、140又は160℃で貼付し、化粧鋼板を得た(初期接着)。また、化粧シートを80℃で3日間養生した後、同様の亜鉛メッキ鋼板に、同様に貼付し、化粧鋼板を得た(養生後接着)。初期接着及び養生後接着した鋼鈑について、以下の方法で接着強度を測定した。
接着剤;主剤 ポリエステル樹脂(横浜ゴム(株)製「ハマタイトY−6255−A」)
硬化剤 ポリイソシアネート系硬化剤(横浜ゴム(株)製「ハマタイトY−6255−B」)
接着強度測定方法;試験片を2.5cm幅に切断し、テンシロン型引っ張り試験機を用いて試験速度100mm/min、180°の条件で剥離を行なう。
評価基準;
◎;剥離強度4.0kg/インチ以上であり、かつ素材の破壊が生じる
○;剥離強度4.0kg/インチ以上であるが、素材の破壊が生じない
△;剥離強度が4.0kg/インチ以下
×;全く接着しておらず、機械による測定が不可能
(2)異物かみ
上記(1)にて作製した鋼板について、異物の有無を目視にて確認し、以下の評価基準により評価した。
○;A4の鋼板サイズ(30×21cm2)中に直径2mm以上の異物噛みが2つ以上存在しない
×;A4の鋼板サイズ(30×21cm2)中に直径2mm以上の異物噛みが2つ以上存在する
基材2として、厚さ50μmの2軸延伸透明PETフィルム(東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」)の裏側に接着剤である2液硬化型ポリエステル接着樹脂(大日精化(株)製「セイカボンド E-295L(C-55)」(商品名))を介して、厚さ60μmのポリプロピレンフィルム(三菱化学MKV(株)製「PB-013」(商品名))を貼付した基材を用意した。この基材の表面側に、軟質ウレタン樹脂(伸び率780%、Tg −41℃)をバインダーとし、チタン白(酸化チタン、粒径0.2〜0.3μm)を50質量%含有させたプライマーインキを、基材2の片面に塗工量3.5g/m2で塗工して表面プライマー層3を得た。
次に、表面プライマー層3の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、シリコーンアクリレートプレポリマー1質量部、及び平均粒径5μmの尿素系樹脂からなるフィラーを5質量部添加した電子線硬化性樹脂組成物をグラビアダイレクトコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層4とした。次いで、70℃で24時間の養生を行った。なお、表面保護層4の厚さは10μmであった。
次に、基材2の裏面側隠蔽層であるポリプロピレンフィルムに、主剤である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(塩化ビニル成分の含有率95質量%)に、アロファネート変性ポリイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートの反応物を硬化剤として3質量%含有する組成物を1.0g/m2塗工し、裏面プライマー層7を形成して、鋼板用化粧シートを得た。上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、裏面プライマー層7を形成するための組成物における硬化剤の含有量を5質量%としたこと以外は実施例1と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、裏面プライマー層7を形成するための組成物の塗布量を2.0g/m2としたこと以外は実施例1と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1〜3において、平均粒径5μmの尿素系樹脂からなるフィラーの含有量を1質量部としたこと以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、アロファネート変性ポリイソシアネートに代えて、イソシアヌレートタイプのポリイソシアネート(ザ・インクテック(株)製「UM−F(75))を硬化剤として用いたこと以外は実施例1と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、主剤である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂に代えて、ブチラール樹脂を用い、アロファネート変性ポリイソシアネートに代えて、イソシアヌレートタイプのポリイソシアネートを硬化剤として用いたこと以外は実施例1と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例1において、主剤である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂に代えて、ポリエステルウレタン樹脂(ザ・インクテック(株)製「PUC-3プライマー」)を用い、アロファネート変性ポリイソシアネートに代えて、イソシアヌレートタイプのポリイソシアネート(ザ・インクテック(株)製「UM−F(75))を硬化剤として用いたこと以外は実施例1と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。この化粧シートを用い、鋼板との接着剤として接着強度の高い、以下の接着剤を用いて、上記評価方法(1)鋼板の接着強度と同様に評価した。結果を第1表に示す。
接着剤;主剤 飽和共重合ポリエステル樹脂(東亜合成化学工業(株)製「アロンメルトPES−320SAM40」)
硬化剤 変性ポリイソシアネート系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」)
比較例1〜3において、平均粒径5μmの尿素系樹脂からなるフィラーの含有量を1質量部としたこと以外は、それぞれ比較例1〜3と同様にして、鋼板用化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
*2 ヌレートタイプ;イソシアヌレートタイプのポリイソシアネート(ザ・インクテック(株)製「UM−F(75)」)
*3 ポリエステル樹脂;ザ・インクテック(株)製「PUC-3プライマー」
2.基材
3.表面プライマー層
4.表面保護層
5.接着剤層
6.隠蔽層
7.裏面プライマー
Claims (8)
- 基材の表面に、少なくとも表面プライマー層と表面保護層をこの順に積層してなり、基材の裏面に、少なくとも隠蔽層と裏面プライマー層をこの順に積層してなる鋼板用化粧シートであって、基材が2軸延伸ポリエステルフィルムからなり、表面プライマー層がウレタン系樹脂組成物からなり、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、裏面プライマー層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂を主剤とし、アロファネート変性ポリイソシアネートを硬化剤とする組成物からなることを特徴とする鋼板用化粧シート。
- 前記裏面プライマー層を形成するための組成物において、アロファネート変性ポリイソシアネートの含有量が0.5〜4質量%である請求項1に記載の鋼板用化粧シート。
- 前記裏面プライマー層の塗布量が0.1〜1.8g/m2である請求項1又は2に記載の鋼板用化粧シート。
- 前記ウレタン系樹脂のJIS K6732に準拠して測定した常温での伸び率が300%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 前記ウレタン系樹脂組成物に無機顔料を含む請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項1〜5のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 前記2軸延伸ポリエステルフィルムの厚さが25〜100μmである請求項1〜6のいずれかに記載の鋼板用化粧シート。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シートを鋼板に貼付した化粧鋼板。
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