本発明は、本明細書で定義される式(I’)または(I)の化合物1つまたは複数(したがって、化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の1つまたは複数の特定の塩またはその結晶形態を包含する)と1つまたは複数の補助化合物とを含有する(または実質的それらからなる)組合せ、前記組合せの調製方法、および前記組合せの様々な治療上の使用に関する。また、前記組合せを含む医薬組成物を提供する。
化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基およびその様々な塩は、2005年12月30日に出願したUSSN60/640,475およびGB0428552.4に基づく優先権を主張する、我々の先の国際特許出願においてサイクリン依存性キナーゼ(CDKキナーゼ)、オーロラキナーゼおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK3)の阻害剤として開示されている。
プロテインキナーゼは、細胞内における様々なシグナル伝達過程の制御に関与する構造的に関連する酵素の大きなファミリーを形成している(ハーディー(Hardie, G.)およびハンクス(Hanks, S.)、1995年、ザ・プロテインキナーゼ・ファクトブックI・アンド・II(The Protein Kinase Facts Book, I and II)アカデミックプレス(Academic Press)、サンディエゴ、カリフォルニア)。前記キナーゼは、それらがリン酸化する基質により、各ファミリーに分類される(例えば、タンパク質‐チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質など)。これらキナーゼファミリーの各々に通常対応する配列モチーフが特定されてきた(例えば、ハンクス(Hanks, S.K.)、ハンター(Hunter, T.)、米国実験生物学協会誌(FASEB J.)、9:576−596、1995年;ナイトン(Knighton)ら、サイエンス(Science)、253:407−414、1991年;ハイルズ(Hiles)ら、セル(Cell)、70:419−429、1992年;クンツ(Kunz)ら、セル(Cell)、73:585−596、1993年;ガルシア−ブストス(Garcia-Bustos)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、13:2352−2361、1994年)。
プロテインキナーゼはそれらの調節メカニズムにより特徴付けられる。これらのメカニズムには、例えば、自己リン酸化、他のキナーゼによるリン酸基転移、タンパク質−タンパク質相互作用、タンパク質−脂質相互作用、およびタンパク質−ポリヌクレオチド相互作用がある。個々のプロテインキナーゼは2種以上のメカニズムにより調節されることもある。
キナーゼは、リン酸基を標的タンパク質へ付加することにより、増殖、分化、アポトーシス、運動、転写、翻訳、および他のシグナル伝達作用に限定されないが、それらを含めた多くの異なる細胞過程を調節している。これらのリン酸化現象は、標的タンパク質の生物学的機能を修飾または調節しうる分子オン/オフスイッチとして作用する。標的タンパク質のリン酸化は、様々な細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、増殖、および分化因子など)、細胞周期現象、環境ストレス、または栄養ストレスなどに反応して生じる。適切なプロテインキナーゼは、例えば、代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャンネルまたはイオンポンプ、または転写因子を(直接的または間接的に)活性化または不活性化するために、シグナル伝達経路において機能する。タンパク質リン酸化の制御の欠陥に起因する制御されないシグナルは、例えば、炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾患および症状、中枢神経系の疾患および症状、および血管新生を含む、多くの疾患に関与している。
サイクリン依存性キナーゼ
真核細胞分裂のプロセスは、G1、S、G2およびMと呼ばれる一連の連続する段階に大きく分割できる。細胞周期の様々な段階の正しい進行は、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)として知られているタンパク質ファミリーおよびサイクリンと呼ばれるそれらの同系統タンパク質パートナーの多様なセットの空間的そして時間的調節に決定的に依存していることが示されている。cdkは、配列依存的に様々なポリペプチドのリン酸化において基質としてATPを利用することができるcdc2(cdk1としても知られている)相同セリン−スレオニンキナーゼタンパク質である。サイクリンは、特定のcdkパートナータンパク質への結合およびそれに対する選択性の規定に使用される「サイクリンボックス」と呼ばれる約100のアミノ酸を含む相同領域によって特徴付けられるタンパク質ファミリーである。
細胞周期全体を通じて様々なcdkおよびサイクリンの発現レベル、分解率および活性化レベルが修飾されることで、cdkが酵素的に活性化されている一連のcdk/サイクリン複合体の周期的な形成がもたらされる。これらの複合体の形成により、個々の細胞周期チェックポイントの通過が制御され、これにより細胞分裂のプロセスが継続し得る。既定の細胞周期チェックポイントで必須の生化学的基準を満たさない、すなわち、必要とするcdk/サイクリン複合体を形成できないと、細胞周期の停止および/または細胞アポトーシスがもたらされることがある。癌において現れるような異常な細胞増殖は、多くの場合、正しい細胞周期制御の欠如に起因し得る。したがって、cdk酵素活性の阻害により、異常に分裂する細胞が、それらの分裂の停止および/または死滅を生じ得る手段が提供される。cdkおよびcdk複合体の多様性ならびに細胞周期を仲介するそれらの重要な役割により、定義された生化学的根拠に基づいて選択される広範囲の可能性のある治療標的が提供される。
細胞周期のG1期からS期への進行は、D型およびE型サイクリンのメンバーとの結合を介して、主としてcdk2、cdk3、cdk4およびcdk6により調節される。D型サイクリンは、G1制限点を超えさせるのに役立つと思われ、一方cdk2/サイクリンE複合体はG1期からS期への移行に重要である。続くS期を経た進行およびG2期への進入には、cdk2/サイクリンA複合体が必要であると思われる。有糸分裂と、それを引き起こすG2期からM期への移行はどちらも、cdk1とA型サイクリンとの複合体およびcdk1とB型サイクリンとの複合体により調製される。
G1期において、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)およびp130のような関連するポケットタンパク質は、cdk(2、4、および6)/サイクリン複合体の基質である。G1からの進行は、1つには、cdk(4/6)/サイクリン−D複合体によるRbおよびp130の過剰リン酸化、したがって不活性化、により促進される。Rbおよびp130の過剰リン酸化により、E2Fなどの転写因子の放出が起こり、したがってG1からの進行さらにはS期への進入のために必要なサイクリンE遺伝子などの遺伝子の発現が起こる。サイクリンEの発現により、Rbのさらなるリン酸化を介してE2Fレベルを増幅または維持するcdk2/サイクリンE複合体の形成が促進される。また、このcdk2/サイクリンE複合体は、ヒストン生合成に関与するNPATなどの、DNA複製に必要な他のタンパク質もリン酸化する。また、G1の進行およびG1/S移行は、cdk2/サイクリンE経路につながるマイトジェンによって刺激されたMyc経路を介しても調節される。また、cdk2は、p21レベルのp53調節を介して、p53が仲介するDNA損傷応答経路にも接続される。p21は、cdk2/サイクリンEのタンパク質阻害剤であり、したがって、G1/S移行を遮断または遅延させることができる。したがって、cdk2/サイクリンE複合体は、Rb、Mycおよびp53経路からの生化学的刺激がある程度統合される点を表す可能性がある。したがって、cdk2および/またはcdk2/サイクリンE複合体は、異常に分裂する細胞において細胞周期を停止させる、または細胞周期の制御を回復させるように設計される治療の良い標的となる。
細胞周期におけるcdk3の厳密な役割は明らかになっていない。同系統サイクリンパートナーはまだ同定されていないが、ドミナントネガティブ型のcdk3がG1における細胞を遅延させ、このことは、cdk3がG1/S移行を調節する役割を有することを示唆している。
ほとんどのcdkが細胞周期の調節に関与しているが、cdkファミリーの特定のメンバーが、他の生化学的過程に関与している証拠がある。この一例は、正確な神経発生に必要であり、かつ、Tau、NUDE−1、シナプシン1、DARPP32およびMunc18/シンタキシン1A複合体などのいくつかの神経タンパク質のリン酸化にも関与するCDK5である。神経のcdk5は、通常、p35/p39タンパク質への結合により活性化される。しかしながら、cdk5活性は、p35の短縮型であるp25の結合により脱調節され得る。p35からp25への変換および続いてのcdk5活性の脱調節は、虚血、興奮毒性およびβ−アミロイドペプチドにより誘導することができる。その結果、p25は、アルツハイマー病などの神経変性疾患の病因に関与しており、したがって、これらの疾病に対する治療標的として注目される。
cdk7は、cdc2CAK活性を有し、かつ、サイクリンHに結合する核タンパク質である。cdk7は、RNAポリメラーゼIIC末端ドメイン(CTD)活性を有するTFIIH転写複合体の成分として同定されている。これは、Tatが仲介する生化学経路を介したHIV−1転写の調節に関与する。cdk8はサイクリンCと結合し、RNAポリメラーゼIIのCTDのリン酸化に関連付けられている。同様に、cdk9/サイクリン−T1複合体(P−TEFb複合体)は、RNAポリメラーゼIIの伸張制御に関連付けられている。また、PTEF−bは、サイクリンT1との相互作用を介したウイルス性トランス活性化因子TatによるHIV−1ゲノムの転写の活性化に必要とされる。したがって、cdk7、cdk8、cdk9およびP−TEFb複合体は、抗ウイルス治療の可能性のある標的となる。
分子レベルで、cdk/サイクリン複合体活性の仲介には、一連の促進的および阻害的リン酸化または脱リン酸化の事象が必要である。cdkのリン酸化は、cdk活性化キナーゼ群(CAK)および/またはwee1、Myt1およびMik1などのキナーゼによって行われる。脱リン酸化は、cdc25(aおよびc)、pp2aまたはKAPなどのホスファターゼによって行われる。
cdk/サイクリン複合体活性は、さらに、Kip/CipファミリーまたはINKファミリーという、内因性の細胞タンパク性阻害剤の2つのファミリーにより調節され得る。INKタンパク質は、cdk4およびcdk6と特異的に結合する。p16ink4(MTS1としても知られている)は多数の原発性癌において変異または欠失している腫瘍抑制遺伝子の可能性がある。Kip/Cipファミリーは、p21Cip1,Waf1、p27Kip1およびp57kip2などのタンパク質を含む。上記したように、p21はp53により誘導され、cdk2/サイクリン(E/A)複合体およびcdk4/サイクリン(D1/D2/D3)複合体を不活性化することができる。乳癌、結腸癌および前立腺癌においては、変則的に低レベルのp27発現が観察されている。逆に、固形癌におけるサイクリンEの過剰発現は、患者の予後の悪さと相関性があることが示されている。サイクリンD1の過剰発現は、食道癌、乳癌、扁平上皮癌および非小細胞性肺癌と関連する。
増殖細胞において細胞周期を統括および駆動する上でのcdkおよびそれらの関連タンパク質の中枢的役割については上記で概要を述べた。cdkが重要な役割を果たす生化学的経路のいくつかについても記載してきた。したがって、全般的なcdkまたは特定のcdkを標的とした治療薬を用いた、癌などの増殖性疾患の治療に向けた単剤療法の開発は、極めて望ましい可能性がある。cdk阻害剤は、とりわけウイルス感染、自己免疫疾患および神経変性疾患などの他の症状を治療するのにも使用できると考えられる。また、cdkを標的とした治療も、既存の治療薬または新しい治療薬との併用療法に用いた場合に、上記の疾病の治療において臨床的利益をもたらし得る。cdkを標的とする抗癌療法は、DNAと直接相互作用せず、したがって、二次腫瘍の発生の危険性を軽減するはずであることから、現行の多くの抗腫瘍剤に優る利点を持つ可能性がある。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
細胞周期の進行はサイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、および負の細胞周期調節因子であるCDK阻害剤(CDKi)の作用の組合せによって調節される。p27KIP1は細胞周期調節の鍵となるCDKiであり、G1/S移行にはその分解が必要とされる。増殖中のリンパ球ではp27KIP1の発現が欠如しているにもかかわらず、いくつかの侵攻性B細胞リンパ腫は、変則的なp27KIP1染色を示すことが報告されている。この種のリンパ腫では異常に高いp27KIP1発現が見られた。これらの知見の臨床的意義の分析から、単変量解析と多変量解析の双方で、この種の腫瘍における高レベルのp27KIP1発現が予後の悪さのマーカーとなることが示された。これらの結果は、有害な臨床的有意性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)において異常なp27KIP1発現があることを示し、このことはこの変則的なp27KIP1タンパク質が他の細胞周期調節因子タンパク質との相互作用を介して非機能性となり得ることを示唆している(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br. J Cancer)、1999年7月、80(9):1427−34)。p27KIP1はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫で異常な発現を示し、有害臨床転帰と関連する(サエス(Saez A)、サンチェス(Sanchez E)、サンチェス−ベアト(Sanchez-Beato M)、クルス(Cruz MA)、チャコン(Chacon I)、ムニョス(Munoz E)、カマチョ(Camacho FI)、マルチネス−モンテロ(Martinez-Montero JC)、モリエホ(Mollejo M)、ガルシア(Garcia JF)、ピリス(Piris MA)、病理学科(Department of Pathology)、バージンデラサルド病院(Virgen de la Salud Hospital)、トレド、スペイン)。
慢性リンパ性白血病
B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)は西半球で最も多い白血病であり、毎年およそ10000例の新たな症例が診断されている(パーカー(Parker SL)、トン(Tong T)、ボールデン(Bolden S)、ウィンゴ(Wingo PA):キャンサースタティスティクス(Cancer statistics)、1997年、CAキャンサージャーナル・フォー・クリニシャンズ(Ca. Cancer J. Clin.)、47:5(1997年))。他の形態の白血病に比べ、CLLの予後は全体的に良好であり、最も進行した病期の患者でも平均生存期間は3年である。
従来用いられているアルキル化剤に基づく療法に比べ、症候性CLL患者に対する初期療法としてフルダラビンを付加するとより高い完全奏功率(3%に対して27%)と無増悪生存期間(17ヶ月に対して33ヶ月)をもたらした。治療後に完全臨床奏功を得ることはCLLにおける生存率を向上させる第一段階であるが、大多数の患者は完全寛解が得られないか、またはフルダラビンに応答することができない。さらに、フルダラビンで治療した総てのCLL患者がやがて再発に至り、その単剤としての役割は全く緩和剤的なものとなる(ライ(Rai KR)、ピーターソン(Peterson B)、イリアス(Elias L)、シェパード(Shepherd L)、ハインズ(Hines J)、ネルソン(Nelson D)、チェソン(Cheson B)、コリッツ(Kolitz J)、シファー(Schiffer CA):過去に未治療の慢性リンパ球性白血病を有する患者に対するフルダラビンおよびクロラムブシルの無作為比較、CALGB SWOG、CTG/NCI−CおよびECOGのグループ間研究、ブラッド(BLOOD)88:141a、1996年(アブストラクト552、付録1)。したがって、この疾病の治療法にさらなる進展が実現されるとすれば、フルダラビンの細胞傷害性を相補し、内在性のCLL薬剤耐性因子によって誘導される耐性を無効にする新規作用機序を有する新薬剤を同定することが必要である。
最も包括的に研究されている、CLL患者の不十分な治療応答と生存率の悪さの一様な推定因子は、点変異または染色体17p13の欠失を特徴とするような異常なp53機能である。実際、異常なp53機能を有するCLL患者に関する複数の単一施設症例シリーズにおいてアルキル化剤またはプリン類似体のいずれかによる療法に対する応答は実証されたことがない。CLLにおけるp53変異に関連する薬剤耐性を克服する能力を有する治療薬を導入することは、この疾病の治療に大きな進展をもたらす可能性がある。
サイクリン依存性キナーゼの阻害剤であるフラボピリドールおよびCYC202は、インビトロにおいてB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)由来の悪性細胞のアポトーシスを誘導する。
フラボピリドールへの暴露はカスパーゼ3活性の刺激、ならびにB−CLLにおいて過剰発現される、細胞周期の負の調節因子p27(kip1)のカスパーゼ依存性切断をもたらす(ブラッド(Blood)、1998年11月15日;92(10):3804−16、bcl−2修飾または機能性p53依存の証拠を呈することなくフラボピリドールはカスパーゼ−3の活性化を通して慢性リンパ球性白血病細胞のアポトーシスを誘発する、バード(Byrd JC)、シン(Shinn C)、ワセレンコ(Waselenko JK)、フュックス(Fuchs EJ)、リーマン(Lehman TA)、ニューエン(Nguyen PL)、フリン(Flinn IW)、ディール(Diehl LF)、ソースビル(Sausville E)、グレバー(Grever MR))。
オーロラキナーゼ
比較的最近、細胞周期のG2期とM期に関与し、有糸分裂の重要な調節因子である、オーロラキナーゼとして知られるセリン/スレオニンキナーゼの新しいファミリーが発見された。
オーロラキナーゼの正確な役割はまだ解明されていないが、それらは有糸分裂のチェックポイントの制御、染色体ダイナミクスおよび細胞質分裂に役割を果たしている(アダムス(Adams)ら、トレンズ・イン・セルバイオロジー(Trends Cell Biol.)、11:49−54、2001年)。オーロラキナーゼは分裂間期の細胞の中心体、二極紡錘体の分裂極、および分裂装置の中央体に存在する。
これまでに哺乳動物でオーロラキナーゼファミリーの3つのメンバーが発見されている(ニグ(E. A. Nigg)、ナショナルレビュー・オブ・モレキュラーセルバイオロジー(Nat. Rev. Mol. Cell Biol.)、2:21−32、2001年)。それらは、
オーロラA(前記文献ではオーロラ2とも呼ばれている);
オーロラB(前記文献ではオーロラ1とも呼ばれている);および
オーロラC(前記文献ではオーロラ3とも呼ばれている)。
オーロラキナーゼは相同性の高い触媒ドメインを有するが、そのN末端部分で著しく異なる(カタヤマ(Katayama H)、ブリンクリー(Brinkley WR)、セン(Sen S);オーロラキナーゼ:細胞形質転換および腫瘍形成における役割(The Aurora kinases:role in cell transformation and tumorigenesis)、キャンサーメタスタシスレビュー(Cancer Metastasis Rev.)、2003年12月、22(4):451−64)。
オーロラキナーゼAおよびBの基質は、キネシン様モータータンパク質、紡錘体装置タンパク質、ヒストンH3タンパク質、動原体タンパク質および腫瘍抑制タンパク質p53を含むものと同定されている。
オーロラAキナーゼは紡錘体の形成に関与し、それらが紡錘体関連タンパク質をリン酸化するG2期初期に中心体に局在すると考えられている(プライジェント(Prigent)ら、セル(Cell)、114:531−535、2003年)。ヒロタ(Hirota)ら、(セル(Cell)、114:585−598、2003年)により、オーロラAプロテインキナーゼを枯渇させた細胞は有糸分裂に進入することができないことが見出された。さらに、様々な種におけるオーロラA遺伝子の変異または破壊は、中心体の分離および成熟の欠陥、紡錘体異常ならびに染色体分離の欠陥を含む、有糸分裂異常をもたらすことが見出されている(アダムス(Adams)、2001年)。
オーロラキナーゼは、一般に、胸腺および精巣のような分裂細胞の割合の高い組織を除く、大部分の正常組織において低レベルで発現される。しかしながら、多くのヒト癌において高レベルのオーロラキナーゼが見出されている(ギート(Giet)ら、ジャーナル・オブ・セルサイエンス(J. Cell. Sci.)112:3591−361、1999年およびカタヤマ(Katayama)、2003年)。さらに、オーロラAキナーゼは、多くのヒト癌で増幅されることがしばしば見出されている染色体20q13領域にもマッピングされている。
このように、例えば、ヒト乳癌、卵巣癌、および膵臓癌において有意なオーロラAの過剰発現が検出されている(シュウ(Zhou)ら、ネイチャージェネティクス(Nat. Genet.)、20:189−193、1998年、タナカ(Tanaka)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Res.)、59:2041−2044、(1999)およびハン(Han)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Res.)、62:2890−2896、2002年、参照)。
さらに、イソラ(Isola)、アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(American Journal of Pathology)147、905−911、1995年は、オーロラA遺伝子座(20q13)の増幅がリンパ節転移陰性乳癌を有する患者の予後不良と相関していることを報告している。
ヒト膀胱癌ではオーロラ−Aの増幅および/または過剰発現が観察され、異数性および侵攻性の臨床特性にオーロラ−Aの増幅が関連している(セン(Sen)ら、米国国立癌研究所誌(J. Natl. Cancer Inst..)94:1320−1329、2002年、参照)。
オーロラ−Aの高い発現は、結腸直腸癌(ビショフ(Bischoff)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、17:3052−3065、1998年、およびタカハシ(Takahashi)ら、日本癌学会誌(Jpn. J. Cancer Res.)、91:1007−1014、2000、参照)、卵巣癌(グリツコ(Gritsko)ら、クリニカルキャンサーリサーチ(Clin. Cancer Res.)、9:1420−1426、2003年、参照)、および胃癌(サカクラ(Sakakura)ら、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(British Journal of Cancer)、84:824−831、2001年)の50%を超えるもので検出されている。
タナカ(Tanaka)ら(キャンサーリサーチ(Cancer Research)59:2041−2044、1999年)は、浸潤性乳管腺癌の94%でオーロラAの過剰発現の証拠を見出した。
また、腎臓癌、子宮頸癌、神経芽腫、黒色腫、リンパ腫、膵臓癌および前立腺癌細胞株でも、高レベルのオーロラAキナーゼが見出されている(ビショフ(Bischoff)ら1998年、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、17:3052−3065、1998年;キムラ(Kimura)、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)、274:7334−7340、1999年;シュウ(Zhou)ら、ネイチャージェネティクス(Nature Genetics)、20:189−193、1998年;リ(Li)ら、クリニカルキャンサーリサーチ(Clin.Cancer Res.)、9(3):991−7、2003年)。
オーロラ−Bは白血病細胞をはじめとする複数のヒト腫瘍細胞株で発現が高い(カタヤマ(Katayama)ら、ジーン(Gene)244:1−7)。原発性結腸直腸癌では、この酵素のレベルはデュークステージ(Duke’s Stage)の臨床病期の関数として増加する(カタヤマ(Katayama)ら、国立癌研究所誌(J. Natl. Cancer Inst.)、91:1160−1162、1999)。
オーロラ−3(オーロラ−C)は、正常組織の生殖細胞に限定される傾向があるが、いくつかの腫瘍細胞株において高レベルのこのキナーゼが検出された(キムラ(Kimura)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(Journal of Biological Chemistry、274:7334−7340、1999年、参照)。結腸直腸癌の約50%でオーロラ−3が過剰発現することが、タカハシ(Takahashi)ら、日本癌学会誌(Jpn. J. Cancer Res.)、91:1007−1014、2001、参照)により文献で報告されている。
増殖性疾患におけるオーロラキナーゼの役割に関する他の報告は、ビショフ(Bischoff)ら、トレンズ・イン・セルバイオロジー(Trends in Cell Biology)9:454−459、1999年;ギート(Giet)ら、ジャーナル・オブ・セルサイエンス(Journal of Cell Science)、112:3591−3601、1999年)およびデュテルトル(Dutertre)ら、オンコジーン(Oncogene)、21:6175−6183、2002年に見出すことができる。
ロイス(Royce)らは、原発性乳癌の約4分の1でオーロラ2遺伝子(STK15またはBTAKとしても知られている)の発現が示されることを報告している(ロイス(Royce ME)、シャ(Xia W)、サヒン(Sahin AA)、カタヤマ(Katayama H)、ジョンストン(Johnston DA)、ホルトバージ(Hortobagyi G)、セン(Sen S)、フン(Hung MC);原発性乳癌におけるSTK15/オーロラ−A発現は核階級と関連するが、予後とは無関係である;キャンサー(Cancer)、2004年1月、1;100(1):12−9)。
子宮内膜癌(EC)は少なくとも2つのタイプの癌を含んでいる。類内膜癌(EEC)はエストロゲン依存性腫瘍であり、多くの場合正倍数性であり、予後も良好である。非類内膜癌(NEEC;漿液性型および明細胞型)はエストロゲン非依存性で、多くの場合異数性であり、臨床上は侵攻性である。また、オーロラはNEECの55.5%では増幅されているが、EECでは増幅されていないことも判明した(P≦0.001)(モレノ−ブエノ(Moreno-Bueno G)、サンチェス−エステベス(Sanchez-Estevez C)、カッシャ(Cassia R)、ロドリゲス−ペラレス(Rodriguez-Perales S)、ディアス−ウリアルテ(Diaz-Uriarte R)、ドミンゲス(Dominguez O)、ハーディション(Hardisson D)、アンデュジャー(Andujar M)、プラット(Prat J)、マティアス−ギウ(Matias-Guiu X)、シグドサ(Cigudosa JC)、パラシオス(Palacios J)、癌研究(Cancer Res.)2003年9月、15;63(18):5697−702)。
ライハルト(Reichardt)ら(オンコロジーリポート(Oncol Rep.)、2003年、9〜10月、10(5):1275−9)は、グリオーマにおけるオーロラ増幅を調べるためのPCRによる定量的DNA分析により、WHO病期の異なる16の腫瘍のうち5つ(31%)(1つがグレードII、1つがグレードIII、3つがグレードIV)が、オーロラ2遺伝子のDNA増幅を示したことを明らかにした。オーロラ2遺伝子の増幅は、腫瘍形成の遺伝的経路に役割を果たす、ヒトグリオーマにおけるランダムでない遺伝子変化である可能性があるとの仮説が立てられた。
また、ハマダ(Hamada)ら(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・へマトロジー(Br. J. Haematol.)、2003年5月、121(3):439−47)による結果は、オーロラ2が非ホジキンリンパ腫の疾病活性だけでなく、非ホジキンリンパ腫の腫瘍形成を示すために有効な候補であることも示唆している。この遺伝子の機能を制限することから起こる腫瘍細胞増殖の遅延は非ホジキンリンパ腫の治療手法となり得る。
グリツコ(Gritsko)ら(臨床癌研究(Clin. Cancer Res.、2003年4月、9(4):1420−6)による研究では、原発性卵巣癌を有する92名の患者においてオーロラAのキナーゼ活性およびタンパク質レベルが調べられた。インビトロキナーゼ分析では、44症例(48%)で高いオーロラAキナーゼ活性が明らかになった。52検体(57%)で高いオーロラAタンパク質レベルが検出された。オーロラAの高いタンパク質レベルはキナーゼ活性の上昇とよく相関していた。
リ(Li)ら(臨床癌研究(Clin. Cancer Res.)、2003年3月、9(3):991−7)によって得られた結果は、膵臓腫瘍および膵臓癌細胞株でオーロラA遺伝子が過剰発現されることを示し、オーロラAの過剰発現が膵臓癌形成に役割を果たし得ることを示唆している。
同様に、オーロラA遺伝子の増幅およびそれがコードする有糸分裂キナーゼの、関連する発現の増加が、ヒト膀胱癌の異数性および侵攻性の臨床特性と関連していることが示された(国立癌研究所誌(J. Natl. Cancer Inst..)、2002年9月、4;94(17):1320−9)。
いくつかのグループによる研究(デュテルトル(Dutertre S)、プライジェント(Prigent C)、オーロラ−A過剰発現は動原体と微小管との接合チェックポイントの無効化をもたらす、モレキュラーインターベンション(Mol.Interv.)2003年5月、3(3):127−30およびアナンド(Anand S)、ペンリン・ロウ(Penrhyn-Lowe S)、ベンキタラマン(Venkitaraman AR.)、オーロラ−A増幅は、紡錘体形成チェック ポイントを無効化し、タキソールに対する耐性を誘発する、キャンサーセル(Cancer Cell)、2003年1月、3(1):51−62)は、オーロラキナーゼ活性の過剰発現がいくつかの現行癌治療に対する耐性に関連していることを示唆している。例えば、マウス胚線維芽細胞におけるオーロラAの過剰発現は、タキサン誘導体の細胞毒性に対するこれらの細胞の感受性を低下させ得る。したがって、オーロラキナーゼ阻害剤は、既存の治療に耐性を発達させた患者において特に使用が見出せる。
これまでに行われた研究に基づけば、オーロラキナーゼ、特にオーロラキナーゼAおよびオーロラキナーゼBの阻害が腫瘍成長を停止させる有効な手段であるとわかるだろう。
ハリントン(Harrington)ら(ネイチャーメディシン(Nat Med.)2004年5月;10(3):262−7)は、オーロラキナーゼの阻害剤が腫瘍増殖を抑制し、インビボで腫瘍退縮を誘導することを実証した。この研究では、オーロラキナーゼ阻害剤は癌細胞の増殖を遮断し、また、白血病細胞株、結腸直腸細胞株および乳房細胞株を含む様々な癌細胞株において細胞死を誘導した。さらに、オーロラキナーゼ阻害剤は白血病細胞でのアポトーシスの誘導による白血病の治療の可能性を示した。VX−680は治療抵抗性の原発性急性骨髄性白血病(AML)細胞を患者から強力に破壊した(アンドリューズ(Andrews)、オンコジーン(Oncogene)、2005、24、5005−5015)。
最近の報告ではオーロラキナーゼAおよびオーロラキナーゼBがヒト白血病細胞で過剰表現されること、低分子オーロラキナーゼ阻害剤が、インビトロで原発性急性骨髄性細胞の増殖に対して活性があることが示されている(ハリントン(Harrington)ら、2004)。さらに、急性前骨髄球性白血病においてt(15:17)転座(PML3)によって破壊されるPML遺伝子産物が、オーロラAと相互作用しそのキナーゼ活性を抑えることが最近報告されている。PMLが腫瘍抑制因子であり、その破壊は白血病に限定されず、リンパ腫およびいくつかの固形腫瘍においても一般的であり得るというさらなる証拠が出現している(シュ(Xu)ら、モレキュラーセル(Molecular Cell)17:721−732、2005)。
オーロラ阻害剤に特に影響されやすい癌としては、乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、グリオーマおよび非類内膜性子宮内膜癌が挙げられる。オーロラ阻害剤に特に影響されやすい白血病としては、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞リンパ腫(マントル細胞)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)が挙げられる。その他、白血病は急性前骨髄球性白血病を含む。
オーロラキナーゼAの過剰発現は、髄芽細胞腫、小脳の極めて悪性の未分化神経外胚葉性腫瘍、の患者において予後不良の独立予測因子であると見なされている(ネベン(Neben)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Research)、64:3103−3111(2004)。
グリコーゲンシンターゼキナーゼ
グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK3)は、ヒトにおいて普遍的に発現する2つのアイソフォーム(GSK3αとGSK3β)として生じるセリン−スレオニンキナーゼである。GSK3は胚発生、タンパク質合成、細胞増殖、細胞分化、微小管動力学、細胞運動および細胞アポトーシスに役割を有するとされている。このようなGSK3は糖尿病、癌、アルツハイマー病、卒中、癲癇、運動神経性疾患および/または頭部外傷などの病態の進行に関与する。系統的にGSK3はサイクリン依存性キナーゼ(CDK)に最も近い。
GSK3により認識されるコンセンサスペプチド基質配列は(Ser/Thr)−X−X−X−(pSer/pThr)であり、ここで、Xは任意のアミノ酸であり((n+1)、(n+2)、(n+3)の位置)、pSerおよびpThrはそれぞれホスホ−セリンおよびホスホ−スレオニンである(n+4)。GSK3は(n)の位置の最初のセリン、またはスレオニン、をリン酸化する。(n+4)の位置のホスホ−セリン、またはホスホ−スレオニンは、基質ターンオーバーを最大にするためGSK3をプライミングするのに必要であると思われる。GSK3αのSer21におけるリン酸化、またはGSK3βのSer9におけるリン酸化は、GSK3の阻害をもたらす。変異誘発およびペプチド競合研究は、GSK3のリン酸化されたN末端が、自己阻害機構を介してホスホ−ペプチド基質(S/TXXXpS/pT)と競合し得るというモデルを導いた。また、GSK3αおよびGSKβがそれぞれチロシン279およびチロシン216のリン酸化により敏感に調節され得るということを示唆するデータもある。これらの残基のPheへの変異により、インビボキナーゼ活性の低下が起こった。GSK3βのX線結晶構造はGSK3の活性化および調節のあらゆる局面を解明するのに役立っている。
GSK3は哺乳動物インスリン応答経路の一部をなし、グリコーゲンシンターゼをリン酸化することで、これを不活性化することができる。GSK3の阻害によるグリコーゲンシンターゼ活性のアップレギュレーションおよびそれによるグリコーゲン合成はII型すなわち、身体の組織がインスリン刺激に耐性となる状態であるインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)に対処する、可能性ある手段であると考えられてきた。肝組織、脂肪組織または筋肉組織における細胞のインスリン応答は、細胞外インスリン受容体に結合するインスリンにより誘発される。これがリン酸化をもたらし、次に、インスリン受容体基質(IRS)タンパク質の原形質膜への動員が起こる。これらのIRSタンパク質がさらにリン酸化されれば、原形質膜へのホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)の動員が始まり、そこでは、第二のメッセンジャーであるホスファチジルイノシチル3,4,5−3リン酸(PIP3)の放出が可能である。これは3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)とプロテインキナーゼB(PKBまたはAkt)の膜への共局在を助け、そこでPDK1はPKBを活性化する。PKBはリン酸化され、その結果Ser9またはser21のリン酸化によりそれぞれGSK3αおよび/またはGSKβを阻害することができる。このGSK3の阻害は、次に、グリコーゲンシンターゼ活性のアップレギュレーションを誘発する。したがって、GSK3を阻害することができる治療薬は、インスリン刺激に対して見られるものと同様の細胞応答を誘導し得る可能性がある。GSK3のさらなるインビボ基質として、真核生物タンパク質合成開始因子2B(eIF2B)がある。eIF2Bはリン酸化によって不活性化され、したがって、タンパク質の生合成を抑制することができる。したがって、例えば「ラパマイシンの哺乳動物標的」タンパク質(mTOR)の不活性化によるGSK3の阻害はタンパク質生合成をアップレギュレートすることができる。最後に、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ活性化プロテインキナーゼ1(MAPKAP−K1またはRSK)などのキナーゼによるGSK3のリン酸化を経るマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を介したGSK3活性の調節の証拠がいくつかある。これらのデータは、GSK3活性が有糸分裂促進刺激、インスリン刺激および/またはアミノ酸刺激によって修飾され得ることを示唆する。
また、GSK3βが脊椎動物Wntシグナル伝達経路の重要な成分であることも示されている。この生化学経路は、正常な胚発生に重要であり、正常組織における細胞増殖を調節することが示されている。GSK3はWnt刺激に応答して阻害されるようになる。これにより、アキシン、腺腫様多発結腸ポリープ(APC)遺伝子産物およびβカテニンなどのGSK3基質の脱リン酸化をもたらし得る。Wnt経路の調節の異常は多くの癌に関連している。APCおよび/またはβカテニンの変異は結腸直腸癌および他の腫瘍に共通している。また、βカテニンは細胞接着に重要であることも示されている。したがって、GSK3もまたある程度細胞接着過程を修飾し得る。すでに記載した生化学経路とは別に、サイクリン−D1のリン酸化を介した細胞分裂の調節、c−Jun、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBPα)、c−Mycなどの転写因子および/または活性化T細胞の核因子(NFATc)、熱ショック因子−1(HSF−1)およびc−AMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)などの他の基質のリン酸化にGSK3を関連づけるデータもある。また、GSK3は、組織特異的ではあるが、細胞アポトーシスの修飾にも役割を果たしていると思われる。プロアポトーシス機構を介した細胞アポトーシスの調整におけるGSK3の役割は、神経アポトーシスが起こり得る医学的状態に特に関連がある可能性がある。これらの例としては、頭部外傷、卒中、癲癇、アルツハイマー病、および運動神経性疾患、進行性の核上麻痺、皮質基底核変性症、およびピック病がある。インビトロにおいては、GSK3は微小管関連タンパク質Tauを過剰リン酸化することができることが示されている。Tauの過剰リン酸化は微小管との正常な結合を破壊し、細胞内Tau線維の形成ももたらす可能性がある。これらの線維の進行的な蓄積は、最終的に神経の機能不全および変性をもたらすと考えられている。したがって、GSK3の阻害によるTauリン酸化の阻害は、神経変性作用を制限し、かつ/または防ぐ手段となり得る。
c−Abl
BCRにコードされる配列を短縮されたc−abl遺伝子へ融合させる染色体転座事象はC−ablのチロシンキナーゼ活性を大幅に増加させ、慢性骨髄性白血病(CML)患者全体の95%で変換因子となる。この転座は染色体9と22の間に生じ、細胞遺伝学的方法によって識別することができる改変染色体22(フィラデルファア(Ph+)染色体)になる。BCRとAb1の遺伝子配列の融合はBcr−Abl遺伝子産物のオリゴマー化、トランス−自己リン酸化および活性化をもたらす。遺伝子融合の結果として、c−ablタンパク質の自己阻害ドメインも削除される。c−ablの細胞内局在性も遺伝子融合の結果として影響をうける。Bcr−Ablの発癌効果は複雑ではあるが、Ras、ErkおよびJun経路の活性化を通じてG1期からS期移行への誘導に関連していると考えられる。Bcr−Ablは、さらにPI3K/Akt経路を通じて細胞生存に影響を及ぼす。Bcr−Ablの発癌効果は動物モデルで実証されおり、それはBcr−Ablタンパク質がマウス中でCMLの症状を確立できることを示す。
CMLは死に至る病であり、それには、慢性期、加速期および急性転化期、という3つの段階を進む。CMLは、初期段階においては、最終分化した好中球の増殖によって特徴付けられる。疾病が進行するにつれて、過剰数の骨髄性前駆細胞またはリンパ前駆細胞が生産される。前記疾病のこの慢性期は急性転化期に進行する前に何年も続く場合があり、多数のさらなる遺伝子変異に特徴付けられる。CMLは主に成人に起こり、病気が明らかになった後5年の平均生存期間がある。CMLは初期段階では、C−ablのATP競合的阻害剤、イマチニブ(グリベック)、によって結果よく治療されている。第1相臨床試験に於いてこの薬では95%の寛解率が実証された。イマチニブへの持続的反応が慢性期のCML患者で観察されている。しかしながら、急性転化期での寛解は2〜6か月続くだけである。残念ながら、CML患者におけるイマチニブへの獲得耐性の発生は年間15%程と推測される。
BCR−ABL中のキナーゼドメイン変異は、症例の50%〜90%で起こり、イマチニブに対する獲得耐性の最も一般的なメカニズムを示している。直接あるいは間接的にイマチニブ結合に影響する、c−ablキナーゼドメインでの点変異の発生がイマチニブ耐性の最も一般的な原因である。25を超える明確なAb1キナーゼドメイン変異がイマチニブ治療を受けるCML患者中で確認され、それらがイマチニブに対する臨床上の耐性に関与する(ヘマトロジーシャー(Hematology Shah)2005年、(1):183)。これらの変異にはイマチニブに対する様々な程度の感受性がある。イマチニブは不活性型構造もしくは閉じた構造のABLキナーゼドメインへ結合すること、また結合時にタンパク質への様々な構造変化を誘導することが示されている。直接イマチニブとの接触に関係するアミノ酸位置である程度の耐性関連変異が生じる一方で、大多数はキナーゼドメインがイマチニブが結合する特定の構造をとることを妨げると考えられる。研究では、いくつかの変異は弱い耐性しかもたらさず、結果として、いくつかの症例で反応性を取り戻すための投与量増加が予測される。第二世代BCR−ABL阻害剤(例えば、BMS354825、AMN−107)の同時投与が多くのイマチニブ耐性c−abl変異体を有効に阻害することが示されている。しかしながら、臨床では最もイマチニブに耐性のc−abl変異体、すなわちT315I、に対して効果が示される薬剤はない。
フィラデルフィア染色体も急性リンパ芽球性白血病(ALL)という形態で見出される。このALLという形態はCMLと同じ染色体および分子のメカニズムによるものである可能性が高いようである。
FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)
FLT3(FMS様チロシンキナーゼ3の短縮)は、血小板由来増殖因子(PDGF)、コロニー刺激因子1(CSF1)およびKITリガンド(KL)の受容体と構造上関連のあるクラスIII受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。FLT3は、キナーゼ挿入物と呼ばれる特定の親水性挿入物によって2つに分割される細胞内チロシンキナーゼドメインを含んでいる。
FLT3およびその特異的リガンドであるFLT3−リガンド(FL)は造血前駆細胞の調節に役割を果たし、多能性前駆細胞、骨髄性前駆細胞およびBリンパ前駆細胞に対応するCD34陽性骨髄細胞を含む造血細胞や単球細胞に発現される。
FLT3の活性化変異は急性骨髄性白血病で観察される最も頻繁に観察される変異の1つである。最も頻繁に起こる変異は線変異(LM)あるいは遺伝子内タンデム重複(ITD)と呼ばれ、重複配列、もしくはエキソン11に属し時にはイントロン11およびエキソン12を含む挿入物からなる。
FLT3遺伝子における遺伝子内タンデム重複および/又は挿入ならびに希に欠失は、急性骨髄性白血病(AML)全体の20〜25%および骨髄異形成症候群(MDS)の5〜10%、そして急性リンパ芽球性白血病(ALL)のいくらかの症例と関連がある。
FLT3タンパク質の変異は、負の調節ドメインの破壊によりチロシンキナーゼ活性の構成的活性化を引き起こす。この活性化はraf−MEK−ERK経路を含むいくつかの増殖因子依存性経路の刺激を生じ、また白血病細胞の増殖および生存の一因となる。したがって、FLT3のキナーゼ活性の抑制は、FLT3活性に依存する上述されたような疾病の有効な治療法になる。
3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)
3−ホスホイノシチド依存性プロテインキナーゼ1(PDK1)は、プロテインキナーゼのAGCサブファミリーに属する多くのキナーゼの活性を調節する重要な役割を果たす(アレジ(Alessi, D.)ら、バイオケミカルソサエティー・トランザクションズ(Biochem. Soc. Trans)、29、p.1−14、2001)。これらはプロテインキナーゼB(PKB/AKT)、p70リボソームS6キナーゼ(S6K)(アブルッチ(Avruch, J.)ら、プログレス・イン・モレキュラー・アンド・サブセルラー・バイオロジー(Prog. Mo1. Subcell. Biol.)、2001、115−154ページ、2001年)およびp90リボソームS6キナーゼ(フロディン(Frodin,M.)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、19、p.2924−2934、2000年)を含む。血清およびグルココルチコイド調節キナーゼ(SGK)のキナーゼ活性はPDK−1によってリン酸化され活性化することができる。他に可能性のある基質としては、プロテインキナーゼC、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)、PRK1およびプロテインキナーゼGが挙げられる。
PDK1が仲介シグナル伝達は、インシュリンおよび増殖因子ならびに細胞外マトリックスへの細胞の付着(インテグリンシグナル伝達)の結果として活性化される。一旦活性化されると、これらの酵素は、細胞生存、成長、増殖およびグルコース調節などの過程を制御する重要な役割を果たす重要な調節タンパク質をリン酸化することにより、多くの様々な細胞的事象を仲介する(ローラー(Lawlor, M.A.)ら、ジャーナル・オブ・セルサイエンス(J. Cell Sci.)、114、2903−2910、2001年)、(ローラー(Lawlor, M.A.)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、21、3728−3738ページ、2002年)。したがって、PDK1阻害剤は、糖尿病と癌などの疾病の新しい治療法を提供する可能性がある。
PDK1はN末端触媒ドメインおよびC末端プレクストリン相同(PH)ドメインを有する556個のアミノ酸からなるタンパク質であり、それらの活性化ループにおいてこれらキナーゼをリン酸化することによってその基質を活性化する(ベラム(Belham, C.)ら、カレントバイオロジー(Curr. Biol.)、9、pR93−96、1999)。前立腺癌やNSCLを含む多くのヒト癌は、PTENの変異あるい特定の主要な調節タンパク質の過剰発現のような多くの個別の遺伝的事象に起因する上昇したPDK1シグナル伝達経路機能を示す(グラフ(Graff, J.R.)、エキスパートオピニオン・オン・セラピューティックターゲット(Expert Opin. Ther. Targets、6、103−13ページ、2002年)、(ブロナード(Brognard, J.)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Res.)、61、3986−97ページ、2001年)。癌を治療する可能性のある機序としてのPDK1の阻害は、PDK1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによるPTEN陰性ヒト癌細胞株(IJ87MG)のトランスフェクションによって証明された。その結果として起こるPDK1タンパク質レベルの減少は、細胞増殖と生存の減少につながった(フリン(Flynn, P.)ら、カレントバイオロジー(Curr. Biol.)、10、1439−42ページ、2000年)。したがって、PDK1の阻害は、癌治療のため、魅力的な標的になるかもしれない。
刺激をうけていない細胞では、大部分が不活性型で存在するPKB/AKTは、PDK1が仲介するPKB/AKTのリン酸化によりPKB/AKTは触媒的に活性型に変わる。これはAKT2のスレオニン309およびAKT1のスレオニン308でのAKTの活性化ループドメインのリン酸化によって生じる。AKTは、正常な刺激されていない細胞では低い基礎レベルの活性化を示すが、AKTはしばしば腫瘍細胞中で構成的に活性化されている。これは、様々な異なるシグナル伝達分子のアップレギュレーション、あるいはP1−3キナーゼ、増殖因子受容体(例えば,EGFRファミリーメンバー)、Ras、SrcおよびBCR−ABLの活性化のようなAKTの活性化を促進可能な癌細胞で一般に見つけられる発癌性変異の存在を通じて生じる。腫瘍抑制因子PTENの欠損は癌細胞のAKT活性を大幅に増加させる別の手段である(ベッソン(Besson, A.)ら、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur. J. Biochem.)、1999年、第263巻、第3号、pp.605−611)。PTEN変異あるいはPTENタンパク質のダウンレギュレーションは多くの腫瘍や癌細胞株で見られる。PTENは、フォスファチジルイノシトール3,4,5−トリスホスファートやホスファチジリノシトール3,4−ビスホスファートなどのP1−3キナーゼ産物からD−3リン酸塩を取り除くホスファターゼである(マイヤーズ(Myers, M.P.)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci.)、米国、1998年、第95巻、第23号、13513−13518ページ;スタンボリック(Stambolic, V.)ら、セル(Cell)、1998年、95号、29−39ページ)。したがって、PTENの欠損はP1−3キナーゼ産物を増加しAKTの構成的活性化を促進する効果がある。高度にアップレギュレートされたAKTレベルの癌は、PDK−1/AKT経路阻害剤の効果に特に感受性が高い。
したがってPDK1は、成長、増殖および生存を含む様々な細胞機能を調節するPI3Kシグナル経路の重要なメディエータである。それゆえ、PDK1阻害剤が非常に広範囲のヒト癌の成長に影響があると予想されるなど、この経路の阻害が癌進行に必要な多くの決定的な条件に影響し得る。
血管内皮細胞増殖因子(VEGFR)
慢性増殖性疾患はしばしば顕著な血管新生を伴い、この血管新生が炎症状態および/または増殖状態を維持するかまたは血管の侵襲性増殖を介して組織破壊を招く(フォークマン(Folkman)、1997年、EXS、第79巻、1−81ページ;フォークマン(Folkman)、1995年、ネイチャーメディシン(Nature Medicine)、第1巻、27−31ページ;フォークマン(Folkman)およびシン(Shing)、1992年、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)、第267巻、10931ページ)。
血管新生は一般に、新しい血管もしくは置換された血管の発生または新血管新生を記載するのに用いられる。これは、胚における血管系の確立に必要かつ生理的な正常過程である。血管新生は、排卵、月経および創傷治癒の部位を除くと、一般に、ほとんどの正常な成人組織においては起こらない。しかし、多くの疾患は持続的かつ無制御な血管新生により特徴付けられる。例えば、関節炎では新しい毛細血管が関節に浸入しそして軟骨を破壊する(コルビル−ナッシュ(Colville-Nash)およびスコット(Scott)、1992年、リウマチ性疾患年報(Ann. Rhum. Dis.)、第51巻、919ページ)。糖尿病(および多くの様々な眼疾患)では、新しい血管が黄斑または網膜または他の眼構造に浸入して、失明を起こしうる(ブルックス(Brooks)ら、1994年、セル(Cell)、第79巻、1157ページ)。アテローム性動脈硬化症の過程は血管新生につながる(カーロン(Kahlon)ら、1992年、カナディアン・ジャーナル・オブ・カーディオロジー(Can. J. Cardiol.)第8巻、60ページ)。腫瘍増殖と転移は血管新生依存性であることがわかっている(フォークマン(Folkman)、1992年、キャンサーバイオロジー(Cancer Biol.)、第3巻、65ページ;デネカンプ(Denekamp)、1993年、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ラジオロジー(Br. J. Rad.)、第66巻、181ページ;フィドラー(Fidler)およびエリス(Ellis)、1994年、セル(Cell)、第79巻、185ページ)。
主な疾患における血管新生の関与は、血管新生の阻害剤を同定しかつ開発する研究に関連して認識されてきた。これらの阻害剤の分類は、一般に、血管新生カスケードにおける個々の標的、例えば、血管新生シグナルによる内皮細胞の活性化;分解酵素の合成と放出;内皮細胞の遊走;内皮細胞の増殖;および毛細血管の形成など、に対応して行われている。このように、血管新生は多くの段階に起こり、これらの様々な段階における血管新生の妨害に作用する化合物を見出しかつ開発する試みが進められている。
様々な文献が色々な機構で作用する血管新生の阻害剤を教示しており、これらは、癌および転移(オライリー(O’Reilly)ら、1994年、セル(Cell)、第79巻、315ページ;イングバー(Ingber)ら、1990年、ネイチャー(Nature)、第348巻、p.555)、眼疾患(フリードランダー(Friedlander)ら、1995年、サイエンス(Science)、第270巻、1500ページ)、関節炎(ピーコック(Peacock)ら、1992年、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタルメディシン(J. Exp. Med.)、第175巻、1135ページ;(ピーコック(Peacock)ら、1995年、セルラーイミュノロジー(Cell. Immun.)、第160巻、178ページ)および血管腫(タラボレッティ(Taraboletti)ら、1995年、米国国立癌研究所誌(J. Natl. Cancer Inst.)、第87巻、293ページ)などの疾患に対して有益である。
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は細胞の細胞膜を超える生化学的シグナルの伝達に重要である。これらの膜貫通分子は、特徴として、細胞内チロシンキナーゼドメインへ細胞膜内セグメントを介して結合した細胞外リガンド結合ドメインから成る。リガンドの受容体との結合は、受容体に結びついたチロシンキナーゼ活性を刺激して、受容体および他の細胞内タンパク質の両方のチロシン残基のリン酸化を導いて様々な細胞応答を引き起こす。今日まで、アミノ酸配列相同性により規定された少なくとも19種の個別のRTKサブファミリーが同定されている。
ポリペプチドの血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮細胞に対してインビトロで分裂促進性がありかつインビボで血管新生応答を刺激する。VEGFはまた、不適当な血管新生にも関係している(ピネド(Pinedo,H.M.)ら、2000年、オンコロジスト(Oncologist)、第5巻(90001)、1−2ページ)。VEGFRはタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)である。PTKは細胞増殖、生存および分化の調節に関わるタンパク質の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する(ウィルクス(Wilks, A.F.)、1990年、増殖因子研究の進歩(Progress in Growth Factor Research)、第2巻、97−111ページ;コートニッジ(Courtneidge, S.A.)、1993年、DevelopmentSupplement誌(Dev. Supp. l)、57−64ページ;クーパー(Cooper, J.A.)、1994年、セミナーズ・イン・セルバイオロジー(Semin. Cell Biol.)、第5(6)巻、377−387ページ;ポールソン(Paulson, R.F.)、1995年,セミナーズ・イン・イミュノロジー(Semin. Immunol.)、第7(4)巻、267−277ページ;チャン(Chan, A.C.)、1996年、カレントオピニオン・イン・イミュノロジー(Curr. Opin. Immunol.)、第8(3)巻、394−401ページ)。
VEGFに対する3種のPTK受容体が同定されている:すなわちVEGFR−1(F1t−1)、VEGFR−2(F1k−1またはKDR)、およびVEGFR−3(F1t−4)。これらの受容体は血管新生に関わりかつシグナル伝達に関与する(ムストネン(Mustonen, T.)ら、1995年、ジャーナル・オブ・セルバイオロジー(J. Cell Biol.)、第129巻、895−898ページ)。
特に興味深いのは、主に内皮細胞に発現される膜貫通受容体PTKである、VEGFR−2である。VEGFによるVEGFR−2の活性化は、腫瘍血管新生を開始するシグナル伝達経路の重要なステップである。VEGF発現は、腫瘍細胞にとって構成的であってもよいし、またある特定の刺激に応答してアップレギュレートされ得る。かかる刺激の1つは低酸素であり、その場合、VEGF発現は腫瘍および付随する宿主組織の両方でアップレギュレートされる。VEGFリガンドはVEGFR−2の細胞外VEGF結合部位との結合によりVEGFR−2を活性化する。この結合はVEGFRの受容体二量体化およびVEGFR−2の細胞内キナーゼドメインにおけるチロシン残基の自己リン酸化を起こす。キナーゼドメインはリン酸をATPからチロシン残基へ転移する作用をし、そしてVEGFR−2の下流のシグナル伝達タンパク質のための結合部位を提供して、最終的に血管新生の開始に導く(マクマホン(McMahon, G.)、2000年、オンコロジスト(Oncologist、第5(90001)巻、3−10ページ)。
VEGFR−2のキナーゼドメイン結合部位における阻害はチロシン残基のリン酸化を妨害して血管新生の開始を中断させる。
血管新生は、血管新生因子と呼ばれる様々なサイトカインが仲介する新しい血管の形成の生理的過程である。固形腫瘍における血管新生の考えられる病態生理的役割は30年間以上にわたって広く研究されているが、慢性リンパ球性白血病(CLL)や他の悪性血液疾患における血管新生の増加は、より最近になってから認知されてきた。増加した血管新生レベルは、CLLの患者の骨髄およびリンパ節の両方で様々な実験的方法を使い実証されている。この疾病の病態生理における血管新生の役割は今後に十分な解明を待つが、実験データによっていくつかの血管新生因子が疾患進行に役割を果たすことを示唆されている。血管新生の生物学的マーカーもCLLの予後に関連があることが示された。これは、VEGFR阻害剤もCLLなどの白血病の患者に有益である可能性を示している。
ヤヌスキナーゼ(JAK)
ヤヌスキナーゼ(JAK)は、4つの公知の哺乳動物ファミリー、すなわちJAK1、JAK2、JAK3およびTYK2から成り、細胞内チロシンキナーゼである。JAK−STAT経路は特定の膜結合受容体によって活性化される。サイトカインおよび増殖因子の結合に際して、JAKは受容体の細胞内ドメインに動員され、シグナル伝達物質および転写活性化因子(STAT)を含む細胞質タンパク質をリン酸化する。特異的なサイトカイン受容体はJAKタンパク質とSTATタンパク質との個別のペアを動員し活性化する。STATはリン酸化時に二量体化し、核移行後に直接的に転写を活性化する。
JAK2はエリスロポイエチン(EPO)によって活性化される主要なチロシンキナーゼで、最終的な赤血球形成にとって不可欠である(パルガナス(Parganas)ら、セル(Cell)、1998年、93(3)385−95)。
JAK2活性の脱調節をもたらす点変異などのメカニズムによるJAK−STAT経路の構成的活性化は、リガンド非依存性の生存および過感受性をもたらすことが示されており、いくつかの白血病細胞タイプで観察されている(ラバイン(Levine)ら、2005年;イェリネック(Jelinek)、2005年;スタルク(Staerk)ら、2005年)。
チロシンキナーゼJAK2における活性化変異は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症および骨髄様化生を伴う骨髄線維症中で観察されている(ラバイン(Levine)ら、キャンサーセル(Cancer Cell.)、2005年、7、387−97)。JAK2変異の1849G>Tは急性白血病においては希であるが、CMML、フィラデルフィア染色体陰性CMLおよび巨核球性白血病で見られる(イェリネック(Jelinek)、ブラッド(Blood)2005年、106:3370−3)。慢性骨髄単球性白血病(CMML)には次の2つのタイプがある:CMMLと呼ばれる成人型、および若年性骨髄単球性白血病(JMML)あるいは若年型慢性骨髄性白血病(JCML)と呼ばれる小児白血病型である。CMML白血病には骨髄性白血病の特徴が見られる。CMMLは過去に骨髄異形成症候群(MDS)の一種として分類、言及されることがあった。CMMLは、「典型的な」慢性骨髄性白血病より急速に進行し、急性骨髄単球性白血病として知られている急性白血病の一種より緩やかに進行する。若年性骨髄単球性白血病は成人型CMMLといくつかの点で異なる。
骨髄増殖性障害(MPD;(真性多血症、本態性血小板増加症、特発性骨髄線維症)患者の多く(>50%)は、JAK2のJH2キナーゼ様ドメインにドミナント機能獲得型V617F変異を有する。大多数の真性赤血球増加症(PV)患者は、構成的シグナル伝達をもたらす、JAK2のキナーゼ様ドメイン中の特有の体細胞変異(V617F)を有する(スタルク(Staerk)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)、10.1074/jbc.C500358200)。この変異は、キナーゼ活性の脱調節、そして構成的チロシンリン酸化活性をもたらす。別の研究ではV617F変異の発生率は、真性多血症では65〜97%、本態性血小板増加症患者では41〜57%、そして特発性骨髄線維症患者では23〜95%である。MPDにおける変異は、ほとんどの患者でヘテロ接合で起こり、マイナーな集団においてのみホモ接合的である。有糸分裂組み換えは恐らく9pのLOHおよびヘテロ接合性からホモ接合性への変化の両方を引き起こす。同一の変異は、Ph陰性異型CMLの約20%、CMMLの10%以上、巨核球性AML(AML M7)患者の約15%、および若年性骨髄単球性白血病(JMML)の1/5の患者でも見られた。V617F変異は、もっぱら骨髄性の造血性悪性腫瘍で生じるようである。
真性多血症(PV)、本態性血小板増加症(ET)および骨髄様化生を合併する骨髄線維症(MMM)を含む古典的なBCR/ABL陰性MPDにおける、JAK2の新規な体細胞点変異(コドン617でのバリンのフェニルアラニンへの置換をもたらすエキソン12のヌクレオチド1849におけるG−CからT−Aへのトランスバージョン;JAK2V617F)が記載されている(ブラッド(Blood)、2005年11月15日、第106巻、第10号、3335−3336ページ)。JAK2V617Fの比較的高い発生率(PVでは65%〜97%、ETでは23%〜57%、そしてMMMでは35%〜57%)を報告した相次ぐ初期の研究に続き、はるかに低い変異頻度(3%〜33%)ではあったが、後の研究では異型MPDの範囲そして骨髄異形成症候群(MDS)で同一の変異の発生が示された。これら後の研究の1つでは、JAK2V617FならびにBCR/ABLおよびFIP1L1−PDGFRAを含む他の癌形成性キナーゼ変異は、相互排反事象であることが示された。
チェックポイントキナーゼ1(Chk1)およびチェックポイントキナーゼ2(Chk2)
チェックポイントキナーゼ1(Chk1)およびチェックポイントキナーゼ2(Chk2)は、G2M境界のDNA損傷チェックポイントに関与する互いに無関係なセリン/スレオニンキナーゼである(オコネル(M.J. O’Connell)ら、欧州分子生物学機構誌(EMBO J.)、1997年、16、545−554)。Chk1は必須のDNA損傷および複製のチェックポイントキナーゼである。Chk1は、DNAの損傷処理中に誘発される一本鎖DNAおよび他のDNA傷害(および複製ストレス)の形成に応答して、毛細血管拡張性失調症変異およびRad3関連キナーゼ(ATR)によってリン酸化される。このリン酸化はG2期の細胞を停止するChk1の能力と相関する(ウォルワース(Walworth)およびバーナーズ(Bernards)1996年)。Chk1は、Cdc25ホスファターゼをリン酸化し、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)上の2つの不活性化ホスファートの除去を阻害し(ゼン(Zeng)ら、ネイチャー(Nature)、1998、395、507−510)、細胞周期停止を引き起こす。p53依存性の細胞周期停止およびアポトーシスを引き起こす臨床において利用可能なDNA損傷剤のp53腫瘍細胞に対する有効性は少ないかもしれない。Chk1活性もp53陰性癌で阻害する場合、DNAの損傷に応答して停止し、DNAを修復する能力はすべて失われ、有糸分裂に破滅をもたらしDNA損傷剤の効果を増強する(コニアラス(Koniaras)ら、オンコジーン(Oncogene)2001年、20(51):7453−63)。
したがって、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化薬、代謝拮抗物質、DNA結合剤、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビンマイトマイシンCなどのDNA標的剤および放射線療法とCHK1/2の阻害とを組み合わせることは、現行の化学療法を回避する癌細胞により使用されるいくつかのメカニズムを克服できることで有益であると考えられる。
Chk2は同様に、二本鎖切断および毛細血管拡張性失調症変異キナーゼ(ATM)を介して、DNA損傷チェックポイントに重要な役割を果たす。したがって、Chk2阻害も、いくつかの化学療法剤から正常な感受性の組織を防護することができる。Chk1とChk2を標的とすることは、臨床において利用可能なDNA損傷剤の治療濃度域を著しく増加させる可能性がある。
FGFR
タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)受容体の線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーは、有糸分裂誘発、創傷治癒、細胞分化および血管新生を含む一連の様々な生理的機能、および発生を調節する。正常および悪性両方の成長ならびに増殖は、オートクリンそしてパラクリンとしても作用するこれら細胞外シグナル伝達分子の局所濃度の変化に影響される。オートクリンFGFシグナル伝達は、ステロイドホルモン依存性癌のホルモン非依存状態への進行に特に重要である(パワーズ(Powers)ら、エンドクリン関連癌(Endocr. Relat. Cancer)、7、165−197、2000年)。
FGFとそれらの受容体はいくつかの組織および細胞株で高レベルで発現し、過剰発現は悪性表現型の一因となると考えられる。さらに、多くの癌遺伝子は増殖因子受容体をコードする遺伝子のホモログである。また、ヒト膵臓癌でのFGF依存性シグナル伝達の異常活性化を引き起こす可能性がある(オザワ(Ozawa)ら、催奇性発癌性変異(Teratog. Carcinog. Mutagen.)、21、27−44、2001年)。
2つの原型のメンバーは、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGFまたはFGF1)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF2)である。また、現在まで、少なくとも20の異なるFGFファミリーメンバーが確認されている。FGFに対する細胞の反応は、1〜4(FGFR1〜FGFR4)と番号付けされた、4つのタイプの高親和性膜貫通型タンパク質チロシンキナーゼ線維芽細胞増殖因子受容体を介して伝達される。リガンド結合に際して、受容体は二量体化し、最終的に核転写因子エフェクターを調節する細胞内シグナルを伝達するために細胞質の特異的なチロシン残基を自己リン酸化もしくはトランスリン酸化する。
FGFR1は多くの腫瘍の型で活性化されるので、FGFR1経路の破壊は、内皮細胞増殖に加えて、腫瘍細胞増殖に影響するはずである。腫瘍に関連する血管系中のFGFR1の過剰発現および活性化は、腫瘍血管新生におけるこれらの分子の役割を示唆している。
線維芽細胞増殖因子受容体2は、酸性線維芽細胞増殖因子および/または塩基性線維芽細胞増殖因子に、そしてケラチノサイト増殖因子リガンドに対して、高親和性を有している。線維芽細胞増殖因子受容体2はまた、骨芽細胞の増殖および分化中にFGFの強力な骨形成作用を伝播する。複雑な機能的変化をもたらす線維芽細胞増殖因子受容体2の変異は、頭蓋縫合の異常骨化(頭蓋骨癒合症)を誘発することが示され、これは膜性骨形成におけるFGFRシグナル伝達の主要な役割を示唆している。例えば、早期の頭蓋縫合骨化で特徴付けられるアペール(AP)症候群では、ほとんどの症例は、機能獲得型線維芽細胞増殖因子受容体2を引き起こす点変異と関連がある(ルモニエ(Lemonnier)ら、ジャーナル・オブ・ボーン・アンド・ミネラルリサーチ(J.Bone Miner.Res.)、16、832−845、(2001))。
アペール症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群を含むヒトの骨格発生でのいくつかの重篤な異常は、線維芽細胞増殖因子受容体2での変異の出現に関連性がある。パイフェル症候群(PS)の、すべてでないにしても、ほとんどの症例も、線維芽細胞増殖因子受容体2遺伝子のデノボ変異によって引き起こされ(マイヤーズ(Meyers)ら、アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマンジェネティクス(Am. J. Hum. Genet.)、58、491−498、1996年;(プロンプ(Plomp)ら、アメリカン・ジャーナル・オブ・メディカルジェネティクス(Am. J. Med. Genet.)、75、245−251、1998年)、また、線維芽細胞増殖因子受容体2中の変異がリガンド特異性を決定する基本的なルールの1つを犯すことが最近示された。すなわち、線維芽細胞増殖因子受容体の2つの変異によるスプライシング型(FGFR2cおよびFGFR2b)が、異型のFGFリガンドに結合しそして活性化される能力を獲得した。このリガンド特異性の損失は異常なシグナル伝達をもたらすとともに、これらの疾病症候群の重篤な表現型が線維芽細胞増殖因子受容体2の異所性のリガンド依存性活性化に起因することを示唆する(ユー(Yu)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci.)、米国、97、14536−14541、2000年)。
染色体転座あるいは点変異のようなFGFR3受容体チロシンキナーゼの遺伝的な異常は、異所的に発現するか脱調節された構成的に活性のあるFGFR3受容体に帰着する。そのような異常は、多発性骨髄腫の一部や、膀胱癌、肝細胞癌、口腔扁平細胞癌および子宮頚癌に関連している(パワーズ(Powers, C.J.)ら、エンドクリン・リレーテッド・キャンサー(Endocr. Rel. Cancer)、7、165、2000年);チウ(Qiu, W.)ら、ワールド・ジャーナル・オブ・ガストロエンテロロジー(World Journal Gastroenterol)、11(34)、2005年)。したがって、FGFR3阻害剤は、多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌の治療に役立つ。
それゆえ、前記化合物は、特に血管新生の阻害により、新生物および腫瘍の増殖を阻害するあるいはアポトーシスを誘導する手段の提供に有益である。前記化合物は、癌などの増殖性疾患の治療または予防に有用である。特に、受容体チロシンキナーゼの活性化変異体あるいは受容体チロシンキナーゼのアップレギュレーションを伴う腫瘍は、前記阻害剤に特に感受性がある可能性がある。本明細書で検討されている特異的なのRTKのアイソフォームのうちのいずれかの活性化変異体を有する患者にも、RTK阻害剤を使用した治療が特に有益である可能性がある。
FGFR4の過剰発現は、前立腺癌と甲状腺癌の両方の予後不良に関連付けられている(エザット(Ezzat, S.)ら、ジャーナル・オブ・クリニカルインベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)、109、1、2002年;ワン(Wang)ら、クリニカルキャンサーリサーチ(Clinical Cancer Research)、10、2004年)。さらに、生殖細胞系列多型(Gly388Arg)は、肺癌、乳癌、結腸癌および前立腺癌の罹患率増加に関連している(ワン(Wang)ら、クリニカルキャンサーリサーチ(Clinical Cancer Research)、10、2004年)。
最近の研究は、古典的小葉癌(CLC)においてFGFR1発現と癌形成性の関連性を示している。CLCは、乳癌全体の10〜15%を占めており、一般に、エストロゲン受容体の発現を保持する一方でp53およびHer2の発現を欠く。8p12〜p11.2の遺伝子増幅はCLC症例の〜50%で実証され、これはFGFR1の発現増加に関連することが示された。FGFR1に対するsiRNA、すなわち受容体の低分子阻害剤、の予備的研究は、この増幅を有する細胞株がこのシグナル伝達経路の阻害に特に感受性があること示した(レイス−フィルホ(Reis-Filho)ら、臨床癌研究(Clin. Cancer Res.)、2006年、12(22):6652−6662)。
線維化病態は、線維組織の異常蓄積もしくは過剰蓄積に起因する主要な医学的問題である。これは自然創傷治癒だけではなく、肝硬変、糸球体腎炎、肺線維症、全身性線維症、関節リウマチを含む、多くの疾病で生じる。病理学的な線維症のメカニズムは完全には理解されていないが、線維芽細胞の増殖および細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲンとフィブロネクチンを含む)の沈着に関係する様々なサイトカイン(腫瘍壊死因子(TNF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)および形質転換増殖因子β(TGFβ)を含む)の作用に起因すると思われる。これは組織構造と組織機能および後の病状の変化をもたらす。
多くの前臨床試験は、肺線維症の前臨床モデルで線維芽細胞増殖因子のアップレギュレーションを実証した(イノウエ(Inoue)ら、1997&2002;バリオス(Barrios)ら、1997年))。TGFβ1およびPDGFが繊維形成過程に関係することが報告され (アタマス(Atamas)およびホワイト(White)による総説、2003年)、さらなる出版済み研究は、FGFの上昇および結果としての線維芽細胞増殖の増加は高レベルのTGFβ1に対する応答であることを示唆している(カリル(Khalil)ら、2005年)。線維症状態に対するこの経路の治療上の関連性の可能性は、特発性肺線維症(IPF)に対するピルフェニドンの報告された臨床効果によって示唆されている(アラタ(Arata)ら、2005年)。
特発性肺線維症(特発性間質性肺炎とも呼ばれる)は肺瘢痕性の進行性疾患である。徐々に、肺嚢が線維症の組織に置換され、厚くなり、組織の血流への酸素運搬能力は不可逆に失われる。この疾患の症状は息切れ、慢性の空咳、疲労、胸痛、および急速な体重減少をもたらす食欲不振を含む。この疾患は5年後の死亡率がおよそ50%とという非常に重篤なものである。
RET
RET癌原遺伝子は、末梢神経系および中枢神経系ならびに腎臓を含む様々な組織の発生中に発現される受容体チロシンキナーゼをコードする。RETマウスにおける異常は、RETが、後腸への腸ニューロンの移動および神経支配、ならびに腎臓発生中で尿管芽上皮の増殖および分岐に非常に重要であることを示唆する(ネイチャー(Nature)367、380−383、1994年)。
RET受容体チロシンキナーゼにおける変異は、様々な疾病での表現型不均一性の古典的な例を提供する。RETの機能獲得型変異はヒト癌に関連し、特に遺伝性および非遺伝性の甲状腺癌を引き起こす。RETのチロシンキナーゼドメインを非相同遺伝子パートナーに並列する遺伝子再配置は、散発性甲状腺乳頭癌(PTC)で見られる。これら再配置はキメラのRET/PTC癌遺伝子を生成する。生殖細胞系癌では、RETの点変異は、多発性内分泌腺腫2型(MEN2Aおよび2B)および家族性甲状腺髄様癌(FMTC)の原因である。MEN2変異およびPTC遺伝子再配置のいずれも、RETの内因性のチロシンキナーゼ活性を促進し、最終的に、RETの下流の標的を活性化する。
したがって、RETの体細胞遺伝子再配置は甲状腺乳頭癌(PTC)でみられ、生殖細胞系点変異は多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2Bならびに家族性甲状腺髄様癌(FMTC)でみられる。一方、機能欠損型変異は、腸神経系の先天性奇形である、ヒルシュスプルング病の成長の原因である(アサイナオヤ(Naoya Asai)ら、パソロジーインターナショナル(Pathology International)、第56巻、164ページ、2006年4月)。
Eph
受容体チロシンキナーゼ(RTK)の最大のサブファミリーであるEphファミリー、およびそのリガンド(エフリン)は生理的および病理的な血管過程に重要な役割を果たす。Eph(受容体)とエフリン(リガンド)はいずれもAサブファミリーとBサブファミリーの2群に分類される(Eph命名委員会(Eph Nomenclature Committee、1997年)。エフリンリガンドのEph受容体への結合は細胞間相互作用に依存する。最近になり、エフリンとEphの相互作用は、双方向シグナル伝達を介して機能することが示されている。Eph受容体に結合するエフリンは、Eph受容体の細胞質ドメインの特異的なチロシン残基でリン酸化を開始する。Eph受容体結合に応答して、エフリンリガンドもまた、チロシンリン酸化、いわゆる「逆」シグナル伝達を受ける(ホランド(Holland, S. J.)ら、ネイチャー(Nature)、383、722−725、1996年;ブルックナー(Bruckner)ら、サイエンス(Science)275:1640−1643、1997年)。
EphRTKおよびそれらのエフリンリガンドは胚の血管発生に重要な役割を果たす。特異的なEph受容体とリガンド(エフリン−B2を含む)を破壊すると、血管再構築、組織化および出芽に欠陥が生じ、その結果、胚の死をもたらす(ワン(Wang, H.U.)ら、セル(Cell)、93:741−753、1998年;アダムス(Adams, R.H.)ら、遺伝子と発生(Genes Dev.)、13、295−306、1999;ゲール(Gale)およびヤンコプーロス(Yancopoulos)、遺伝子と発生(Genes Dev.)、13、1055−1066、1999年;ヘルブリング(Helbling, P.M.)ら、発生(Development)、127、269−278、2000年)。Eph/エフリン系の協調発現は胚の血管構造の表現型を決定する、すなわちエフリン−B2は動脈の内皮細胞(EC)に存在し、EphB4は静脈のECに存在するゲール(Gale)およびヤンコプーロス(Yancopoulos)、遺伝子と発生(Genes Dev.)、13、1055−1066、1999、;シン(Shin, D.)ら、発生生物学(Dev. Biol.)、230、139−150、2001年)。最近になって、特異的なEphとエフリンが腫瘍増殖および血管新生に関連づけられている。
Ephおよびエフリンは、多くのヒト腫瘍で過剰発現することが分かっている。特に、小細胞肺癌(タン(Tang, X.X.)ら、臨床癌研究(Clin. Cancer Res.)、5、455−460(1999年))、ヒト神経芽腫(タン(Tang, X.X.)ら、クリニカルキャンサーリサーチ(Clin. Cancer Res.)、5、1491−1496、1999年)および結腸直腸癌(リュー(Liu, W.)ら、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Brit. J. Canc.)、90、1620−1626、2004年)でEphB2の役割が確認されており、EphB2をはじめEphおよびエフリンのより高い発現は、より侵攻性が高くより転移性が高い腫瘍と相関することが分かっている(ナカモト(Nakamoto, M.)およびベルゲマン(Bergemann, A.D.)、マイクロスコピーリサーチ・アンド・テクノロジー(Microsc. Res. Tech.)、59、58−67、2002年)。
結果として、EphB2の阻害は血管新生、特に、過剰発現が見られる特定の腫瘍での血管新生を妨げる。
上述のように、様々な文献が色々な機構で作用する血管新生の阻害剤を教示しており、これらは、癌および転移(オライリー(O’Reilly)ら、セル(Cell)、第79巻、315、1994年;イングバー(Ingber)ら、ネイチャー(Nature)、348、555、1990年)、眼疾患(フリードランダー(Friedlander)ら、サイエンス(Science)、270、1500、1995年)、関節炎(ピーコック(Peacock)ら、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタルメディシン(J. Exp. Med.)、175、1135、1992年;(ピーコック(Peacock)ら、セルラーイミュノロジー(Cell. Immun.)、160、178、1995年)および血管腫(タラボレッティ(Taraboletti)ら、1995年、米国国立癌研究所誌(J. Natl. Cancer Inst.)、第87巻、293ページなどの疾患に有益である。
SRC
Srcファミリーのキナーゼ(SFK)は9つのメンバーを含み、その中の3つ(Src、Fyn、Yes)は普遍的に発現している。Src自体はヒト悪性腫瘍の病因と関連付けられている。c−Srcの活性化変異体は、培養においてヒト細胞を形質転換することができ、Srcタンパク質発現および/または活性は上皮癌で増加する。結腸癌では、隣接する正常粘膜と比較してSrc活性の常習的な上昇がある。更に、Srcの活性化は、原発性腫瘍と比較して、転移癌でしばしば上昇しており、これはこのタンパク質が浸潤と転移に役割を担っている可能性があることを示唆する。さらに、Srcの発現は疾患進行と強く関連している。同様に、Srcの発現および活性化は、正常組織と比較して、乳癌、膵臓癌、食道癌、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌および胃癌においても上昇している。
EGFRおよびPDGFR
悪性腫瘍は脱制御された細胞増殖よるものである。細胞増殖は、増殖促進因子および増殖抑制因子間の微妙なバランスによって制御される。正常組織では、これらの因子の産生および活性が、分化した細胞の制御され、調節された様式での増殖をもたらし、それは臓器の正常な全体性や機能を維持する。悪性細胞はこの制御を逃れ、生来のバランスが(様々なメカニズムを介して)乱され、調節されないで異常な細胞増殖が生じる。増殖を促す1つのドライバーは表皮増殖因子(EGF)であり、EGFの受容体(EGFR)は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、頭頸部癌を含む、多くのヒト固形腫瘍の発生および進行に関連付けられている。EGFRは4つの受容体、すなわちEGFR(HERlおよびErbl)、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)ならびにErbB4(HER4)、からなるファミリーのメンバーである。これらの受容体は細胞膜に存在する巨大タンパク質であり、それぞれ特異的な外部リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼ酵素活性がある内部ドメインを有する。EGFがEGFRに結合すると、チロシンキナーゼを活性化し、細胞を増殖させ分裂させる反応を引き起こす。EGFRは多くのタイプの癌細胞の表面で異常に高いレベルで見られ、前記癌細胞はEGFの存在下で過度に分裂する可能性がある。EGFR活性の阻害はしたがって癌の治療における化学療法研究の標的となっている。このような阻害は、例えば、抗体の使用、またはその後のチロシンキナーゼ活性の阻害によって細胞表面上の標的EGFRに対する直接的な干渉によって果たすことができる。
EGFRチロシンキナーゼ活性を標的とする薬剤の例はチロシンキナーゼ阻害剤のゲフィチニブおよびエルロチニブを含む。4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリンという化学名を有するゲフィチニブは非小細胞肺癌の治療に使用され、また乳癌と結腸直腸癌のようなEGF受容体を過剰発現する他の固形腫瘍に向け開発中である。N−(3−エチニル−フェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンという化学名を有するエルロチニブも非小細胞肺癌の治療に使用されており、また膵臓癌のような様々な他の固形腫瘍の治療のために開発中である。
腫瘍発生に重要な他の増殖因子は、細胞表面チロシンキナーゼ受容体(PDGFR)によってシグナル伝達し、成長、増殖および分化を含む様々な細胞機能を刺激するペプチド増殖因子のファミリーを含む血小板由来増殖因子(PDGF)である。PDGF発現はグリア芽腫および前立腺癌を含む多くの異なった固形腫瘍で実証されている。4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−イルピリジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルフォネートという化学名を有するチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブメシレートは、Bcr−Abl癌タンパク質および細胞表面チロシンキナーゼ受容体c−Kitの活性を遮断し、そのようなものとして、慢性骨髄性白血病と消化管間質性腫瘍の治療のために承認されている。イマチニブメシレートはまたPDGFRキナーゼの強力な阻害剤で、慢性骨髄単球性白血病と多形性グリア芽腫においてPDGFR中での活性化変異の証拠に基づいて、慢性骨髄単球性白血病と多形性グリア芽腫の治療のために現在査定されている。さらに4−(4−(3−(4−クロロ−3(トリフルオロメチル)フェニル)ウレイド)フェノキシ)−N2−メチルピリジン−2−カルボキサミドという化学名を有するソラフェニブ(BAY43−9006)は細胞増殖を阻害するためにRafシグナル伝達経路および腫瘍血管新生を阻害するためにVEGFR/PDGFRシグナル伝達カスケードの両方を標的にする。ソラフェニブは、肝臓癌と腎臓癌を含む多くの癌の治療のために研究されている。
高好酸球症候群のようなPDGFRの活性化に依存する症状がある。PDGFR活性化は、慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含む他の悪性腫瘍とも関連性がある。別の疾患、隆起性皮膚線維肉腫、浸潤性皮膚腫瘍では、PDGF−Bリガンドをコードする遺伝子が関与する相互転座は、キメラリガンドの構成的分泌および受容体活性化をもたらす。公知のPDGFR阻害剤であるイマチニブはこれら3つ疾病すべてに対して活性がある。
式(I’)の化合物
詳細に以下に記載されるように、様々な式(I’)の化合物が発明の組合せにおいて適用される。
したがって本発明の組合せで用いる式(I’)の化合物には、本明細書に記載する化合物の類(a)および(b)が含まれる(したがってWO2005/002552およびWO2006/070195に記載の式(I’)の化合物に対応するそれら公報の化合物ならびにそのサブグループ、実施形態および例(それら公報でまた定義されている)を含む)。式(I’)の化合物の様々なサブグループ、実施形態および例を記載するPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)の内容は参照により本書に援用され、WO2006/070195に記載される式(I’)の化合物もまた同様である(その内容は参照により本書に援用される)。
補助化合物
詳細に以下に記載されるように、様々な補助化合物が本発明の組合せにおいて適用される。補助化合物は抗癌剤であってもよい。
本発明の組合せに用いられる特に好ましい補助化合物は、チェックポイント標的剤(本明細書で定義される)である。
デュポン(Du Pont)社のWO02/34721には、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤としてのある種のインデノ[1,2−c]ピラゾール−4−オンが開示されている。
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol Myers Squibb)社のWO01/81348には、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤としての5−チオ−、スルフィニル−およびスルホニルピラゾロ[3,4−b]−ピリジンの使用が記載されている。
またブリストル・マイヤーズ・スクイブ社のWO00/62778には、ある種のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤が開示されている。
サイクラセル(Cyclacel)社のWO01/72745A1には、2−置換4−ヘテロアリール−ピリミジンおよびそれらの製造方法、それらを含有する医薬組成物、ならびにサイクリン依存性キナーゼ(cdk)の阻害剤としての前記化合物の使用、そして癌、白血病、乾癬などの増殖性疾患の治療における前記化合物の使用が記載されている。
アゴーロン(Agouron)社のWO99/21845には、CDK1、CDK2、CDK4、およびCDK6などのサイクリン依存性キナーゼ(cdk)を阻害するための4−アミノチアゾール誘導体が記載されている。この発明はまた、そのような化合物を含有する医薬組成物の治療的使用または予防的使用、ならびにそのような化合物の有効量を投与することによる悪性腫瘍および他の疾患の治療方法をも対象としている。
アゴーロン社のWO01/53274には、窒素含有へテロ環基に結合したアミド置換ベンゼン環を含みうる特定の種類の化合物をCDKキナーゼ阻害剤として開示している。
WO01/98290(ファルマシア・アンド・アップジョン(Pharmacia & Upjohn)社)には、プロテインキナーゼ阻害剤としての、ある種の3−アミノカルボニル−2−カルボキサミドチオフェン誘導体が開示されている。これらの化合物は複数のプロテインキナーゼ活性を有すると記載されている。
アゴーロン社のWO01/53268およびWO01/02369には、サイクリン依存性キナーゼまたはチロシンキナーゼなどのプロテインキナーゼの阻害により細胞増殖を仲介または阻害する化合物が開示されている。これらAgouronの化合物は、直接的またはCH=CHもしくはCH=N基を介してインダゾール環の3位と結合したアリールまたはヘテロアリール環を有する。
WO00/39108およびWO02/00651(いずれもデュポンファーマシューティカルズ(Du Pont Pharmaceuticals)社)は、トリプシン様セリンプロテアーゼ酵素、特に第Xa因子およびトロンビンの阻害剤である広範な種の複素環式化合物を記載している。これらの化合物は抗凝固薬として、または血栓塞栓性疾患の予防に有用であるとされている。
また、第Xa因子に対して活性を有する複素環式化合物がUS2002/0091116(シュウ(Zhu)ら)、WO01/1978およびWO01/64642にそれぞれ開示されている。
WO03/035065(アベンティス(Aventis)社)は、プロテインキナーゼ阻害剤として広範な種のベンゾイミダゾール誘導体を開示しているが、CDKキナーゼまたはGSKキナーゼに対する活性に関しては開示していない。
WO97/36585およびUS5,874,452(いずれもメルク(Merck)社)は、ファルネシルトランスフェラーゼの阻害剤である二ヘテロアリール化合物を開示している。
WO03/066629(ベルテックス(Vertex)社)は、GSK−3阻害剤としてのベンズイミダゾリルピラゾールアミンを開示している。
WO97/12615(ワーナーランバート(Warner Lambert)社)は、15−リポキシゲナーゼ阻害剤としてのベンゾイミダゾールを開示している。
WO2004/54515(スミスクラインビーチャム社(SmithKline Beecham Corporation))は、トロンボポイエチン模倣薬としてある種のベンゾイミダゾールを開示している。
WO2004/41277(メルク(Merck)社)は、アンドロゲン受容体モジュレーターとしてある種のアミノ−ベンゾイミダゾールを開示している。
WO2005/028624(プレクシコン(Plexxikon))は、プロテインキナーゼに対する活性を有する化合物の分子足場を開示している。
WO2005/002552(アステックステクノロジーリミテッド(Astex Technology Limited)社)は、サイクリン依存性キナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3およびオーロラキナーゼにより仲介される癌などの病態および症状の治療に使用する、前記キナーゼの阻害剤としての活性を有する様々な式(I’)の化合物を開示している。
WO2006/070195(アステックスセラピューティクスリミテッド(Astex Therapeutics Limited))は、サイクリン依存性キナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3およびオーロラキナーゼの阻害剤としての活性を有する様々な式(I”)の化合物を開示している。
第1の態様において本発明は、補助化合物および式(I’)の化合物を含む(または本質的にこれらから成る)組合せを提供し、前記式(I’)の化合物は乳酸塩およびクエン酸塩およびこれらの混合物から選ばれる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩である。
別の態様において本発明は、補助化合物および化合物を含む(または本質的にこれら成る)組合せを提供し、前記化合物は、
(I)PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)における式(I)に対応する式(I’)の化合物ならびにWO2005/002552において定義されるそのサブグループ、実施形態および例、
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中と同義である)、あるいは
(II)式(I”)で表される化合物、
またはその塩、溶媒和物、互変異性体もしくはN−オキシドであり、
式中、MはD1基およびD2基から選ばれ、
そして、
(A)MはD1基の場合:
Xは、O、NHおよびNCH
3から選ばれ、
Aは、結合およびNR
2基から選ばれ、ここでR
2は水素またはメチルであり、
Eは、結合、CH
2、CH(CN)およびC(CH
3)
2から選ばれ、
R
1は下記のものから選ばれる:
(i)ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている3〜5環員を有するシクロアルキル基、
(ii)O、N、SおよびSO
2から選ばれる1もしくは2個のヘテロ原子環員を有する4〜6環員を有する飽和複素環基(前記複素環基はC
1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されているが、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、ならびに非置換および1−置換ピペリジン−4−イルを除く)、
(iii)下記式で表される2,5−置換フェニル基、
式中、(a)XがNHまたはN−CH
3の場合、R
3は塩素およびシアノから選ばれ、(b)XがOの場合、R
3はCNである、
(iv)CR
6R
7R
8基(R
6及びR
7はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R
8は、水素、メチル、C
1−4アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノから選ばれる)、
(v)メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリダジン−4−イル基、
(vi)置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基、
(vii)場合により置換されている1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルまたは場合により置換されている2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基(各々の場合の置換基はハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれ、ここで前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、
(viii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されている3−ピリジル(前記C
1−
4アルキルおよびC
1−
4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されているが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−(ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−アミドおよび2,6−ジメトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ニコチンアミドを除く)、
(ix)ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシド(前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、また、
E−AがNR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(x)2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニル、およびtert−ブチル、
(xi)NR
10R
11基(R
10およびR
11はそれぞれC
1−4アルキルあるいはR
10およびR
11は結合してNR
10R
11がO、N、SおよびSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を場合により含む4〜6環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基はC
1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されている)、
(xii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2、CONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリドン(前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、
E−AがC(CH
3)
2NR
2またはCH
2−NR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xiii)非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニル、また、
E−AがC(CH
3)
2NR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xiv)非置換フェニル、また、
EがCH
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xv)非置換テトラヒドロピラン−4−イル、そして、
(B)MがD2基である場合:
Aは、結合およびNR
2基から選ばれ、ここでR
2は水素またはメチルであり、
Eは、結合、CH
2、CH(CN)およびC(CH
3)
2から選ばれ、
R
1は下記から選ばれる:
(xvi)下記式で表される2−置換3−フリル基、
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれるか、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和環はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている、
(xvii)下記式で表される5−置換2−フリル基、
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれるか、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている、ただし、前記化合物は5−ピペリジン−1−イルメチル−フラン−2−カルボン酸[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドではない、
(xviii)下記式で表される基、
式中、R
9は、水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;Gは、CH、O、S、SO、SO
2またはNHであり、前記基はC
1−4ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C
1−4ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−およびジ−C
1−4アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により場合により置換されており(前記C
1−4ヒドロカルビルおよびC
1−4ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4アルキルアミノで場合により置換されている)、そして
(xix)下記式で表される3,5−二置換フェニル基、
式中、Xは、O、NHおよびNCH
3から選ばれる、また、
(C)MがD1基の場合:
XはOであり;AはNR
2基であり、ここでR
2は水素であり;Eは結合であり;R
1は2,6−ジフルオロフェニルであり;したがって、式(I)の化合物は下記からなる群より選ばれる酸と形成された塩から選ばれる酸付加塩である:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、αオキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば、(+)−L−乳酸および(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸。
別の態様において本発明は、補助化合物と、L−乳酸塩およびクエン酸塩およびこれらの混合物から選ばれる1種または2種以上の対イオンでプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素とを含む凍結乾燥された製剤(例えば、医薬組成物の形態)を含む(または本質的にこれらから成る)組合せであって、任意に(i)1種または2種以上の塩化物イオンなどのさらなる対イオンおよび/または(ii)1種または2種以上の等張化剤などの静注用賦形剤(例えば、グルコース、好ましくはD−グルコースなどのヘキソース糖)を含む組合せを提供する。
別の態様において本発明は、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用を提供する。
別の態様において本発明は、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、本発明の組合せをその必要のある被験体に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、本発明の組合せをその必要のある被験体に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、本発明の組合せを異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、本発明の組合せを異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、本発明の組合せをcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、本発明の組合せをcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の阻害方法であって、前記キナーゼと本発明のキナーゼ阻害組合せとを接触させることを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、本発明の組合せを使用してサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の活性を阻害することによる、細胞過程(例えば、細胞分裂)の修飾方法を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、本発明の組合せの使用を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療方法であって、本発明の組合せを投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、本発明の組合せを投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、癌に罹患しているまたは罹患していると疑われる患者における癌の予防または治療(あるいは癌の罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)患者がオーロラA遺伝子のIle31変異体を有しているかどうかを判定すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)患者が前記変異体を有することを示した場合に、その後、患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する本発明の組合せを投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)オーロラキナーゼのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)診断試験がオーロラキナーゼのアップレギュレーションを示す場合に、その後、患者に本発明の組合せを投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、(a)CDKキナーゼの過剰活性化および/または(b)正常なCDK活性への経路の感作および/または(c)サイクリンEのアップレギュレーションにより特徴付けられる病態または症状の予防または治療(あるいはこれらの罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)(a)および/または(b)および/または(c)に特徴的なマーカーを検出すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)診断試験が(a)および/または(b)および/または(c)を示す場合に、その後、患者にCDKキナーゼ阻害活性を有する本発明の組合せを投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、治療方法、医療上の使用または使用のための化合物を提供し、ここで本発明の組合せは、本明細書に記載の診断試験のいずれか1つまたは複数によって前記化合物による治療に感受性がある疾病または症状を有していると確認された患者の亜母集団に投与(例えば、治療上有効な量で)される。
別の態様において本発明は、本発明の組合せおよび薬学的に許容される担体を含む様々な医薬組成物を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物による治療を受けている被験体においてサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための本明細書で定義される式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物をその必要のある被験体(被験体は補助化合物による治療を受けている)に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物をその必要のある被験体(被験体は補助化合物による治療を受けている)に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物(哺乳動物は補助化合物による治療を受けている)において異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物を異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物(哺乳動物は補助化合物による治療を受けている)において異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の緩和または低減方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物を異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物(哺乳動物は補助化合物による治療を受けている)における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物をcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物(哺乳動物は補助化合物による治療を受けている)における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物をcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物による治療を受けている被験体におけるサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の阻害方法であって、前記キナーゼと本明細書で定義される式(I’)の化合物とを接触させることを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物による治療を受けている被験体における細胞過程(例えば、細胞分裂)の修飾方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物を使用してサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の活性を阻害することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物による治療を受けている被験体における、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物による治療を受けている被験体における、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる癌の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラA遺伝子のIle31変異体を有し補助化合物で治療を受けている亜母集団から選ばれる患者における癌の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラA遺伝子のIle31変異体を有し補助化合物で治療を受けている亜母集団の一部分を形成していると診断された患者における癌の予防または治療用薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療方法であって、補助化合物による治療を受けている被験体に本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、補助化合物による治療を受けている被験体に本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、癌に罹患しているまたは罹患していると疑われる患者(患者は補助化合物による治療を受けている)における癌の予防または治療(あるいは癌の罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)患者がオーロラA遺伝子のIle31変異体を有しているかどうかを判定すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)患者が前記変異体を有する場合、その後、患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)オーロラキナーゼのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出すべく患者(患者は補助化合物による治療を受けている)を診断試験に供すること、および(ii)診断試験がオーロラキナーゼのアップレギュレーションを示す場合に、その後、患者に本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、(a)CDKキナーゼの過剰活性化および/または(b)正常なCDK活性への経路の感作および/または(c)サイクリンEのアップレギュレーションにより特徴付けられる病態または症状の予防または治療(あるいはこれらの罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)(a)および/または(b)および/または(c)に特徴的なマーカーを検出すべく患者(患者は補助化合物による治療を受けている)を診断試験に供すること、および(ii)診断試験が(a)および/または(b)および/または(c)を示す場合に、その後、患者にCDKキナーゼ阻害活性を有する本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、本明細書で定義される式(I’)の化合物が、本明細書に記載の診断試験のいずれか1つまたは複数によって前記化合物による治療に感受性がある疾病または症状を有していると確認された患者(患者は補助化合物による治療を受けている)の亜母集団に投与(例えば、治療上有効な量で)される治療方法、医療上の使用または使用のための化合物を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物による治療を受けている被験体における本明細書に記載の病態の予防または治療用薬剤の製造のための、式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、例えば、本明細書で記載される病態の予防または治療において、補助化合物による治療を受けている被験体における薬剤に用いるための式(I’)の化合物を提供する。
別の態様において本発明は、本明細書に記載の病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、哺乳動物(哺乳動物は補助化合物による治療を受けている)に治療に有効な量の本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、本明細書で定義される式(I’)の化合物との併用療法に用いられる補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)との併用療法に用いられる、本明細書で定義される式(I’)の化合物を提供する。
別の態様において本発明は、本明細書で定義される式(I’)の化合物による治療を受けている患者の治療または予防で用いる薬剤の製造のための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)の使用を提供する。
別の態様において本発明は、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)による治療を受けている患者の治療または予防で用いる薬剤の製造のための、本明細書で定義される式(I’)の化合物の使用を提供する。
別の態様において本発明は、ヒトなどの温血動物における癌の治療方法であって、有効量の補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)を、有効量の本明細書で定義される式(I’)の化合物と順次(例えば、前後に)または同時に前記動物に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において本発明は、治療上有効な量の補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)および治療上有効な量の本明細書で定義される式(I’)の化合物を投与することを含む、哺乳動物における癌の併用療法の方法を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率を緩和または低減させるための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)との併用療法で用いる本明細書で定義される式(I’)の化合物を提供する。
別の態様において本発明は、哺乳動物における腫瘍増殖を阻害するための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)との併用療法で用いる本明細書で定義される式(I’)の化合物を提供する。
別の態様において本発明は、その必要のある患者における癌を予防、治療または管理するための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)との併用療法で用いる本明細書で定義される式(I’)の化合物を提供する。
別の態様において本発明は、癌に罹患する患者(患者は補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)による治療を受けている)における反応率を促進または増加させるために用いる本明細書で定義される式(I’)の化合物を提供する。
別の態様において本発明は、癌に罹患する患者(患者は補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選択される補助化合物)による治療を受けている)における反応率を促進または増加させる方法であって、本明細書で定義される式(I’)の化合物を補助化合物と組合せて患者に投与することを含む方法。
本発明の組合せは、2種以上の補助化合物を含んでもよい。そのような実施形態において、前記2種以上の補助化合物は独立して本明細書に記載のいずれの補助化合物から選ばれてもよい。
別の態様において本発明は、式(I’)の化合物を補助化合物と組合せることを含む、本発明の組合せの製造方法を提供する。
別の態様において本発明は、式(XXVII)または(XXVIII)の化合物あるいはその塩を含む本発明の組合せの調製方法を提供し、
前記方法は、式(XXIX)の化合物(式中PGはアミン保護基である)と、
式(XXXI)の化合物とを、
有機溶媒中EDCおよびHOBtなどのカップリング剤の存在下で反応させることを含む。
別の態様において本発明は、3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンまたはその塩を含む本発明の組合せの調製方法を提供し、前記方法は、
(i)式(XXVIIa)または(XXVIIIa)の化合物を
場合により加熱と共に、溶媒中において酸で処理すること、および
(ii)反応物を中和することを含む。
別の態様において本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩を含む本発明の組合せの調製方法を提供し、前記方法は、
(i)請求項158で定義する式(XXVIIa)の化合物を、場合により加熱と共に、溶媒中において酸で処理すること、
(ii)反応物を中和すること、
(iii)工程(ii)の生成物とカルボニル化試薬とを反応させること、および
(iv)工程(iii)の生成物とシクロプロピルアミンとを反応させることを含む。
別の態様において本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を含む本発明の組合せの調製方法を提供し、前記方法は式(XXVIII)または式(XXVIIIa)の化合物
をシクロプロピルアミンと反応させ、その後、場合により酸付加塩を形成することを含む。
式(I’)の化合物は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であってもよく、前記塩は結晶性であり、下記の任意の1つまたは複数(どのような組合せでもよい)またはすべてパラメーターによって特性決定される。すなわち、前記塩は、
(a)図4および図5に示される結晶構造を有する、かつ/または
(b)WO2006/070195の205〜209ページの実施例71における表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、かつ/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、かつ/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、かつ/または
(e)斜方晶系空間群P212121(#19)に属する結晶構造を有する、かつ/または
(f)17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的にはさらに12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30°の回折角(2θ)および/または5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的にはさらに7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53,4.07および3.26Åの面間隔(d)における主要なピークの存在を特徴とする粉末X線回折パターンを有する、かつ/または
(g)WO2006/070195の図6または209〜211ページの実施例72における表5(その内容は参照により本書に援用される)に示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、前記ピークは任意に図6または表5(参照により本書に援用される)におけるピークと同様の相対強度を有する、かつ/または
(h)実質的に図6に示す粉末X線回折パターンを有する、かつ/または
(i)無水で、DSCに供された場合190℃で始まりを示しかつ/または194〜197℃で吸熱ピークを示す、かつ/または
(j)KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す。
別の態様において本発明は、下記のものの予防または治療(例えば、予防または緩和)のための本発明の組合せを提供する、
A.BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2もしくはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1もしくはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2もしくはEphB4)またはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが仲介する病態または症状、あるいは
B.癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)イマチニブ耐性変異、または
(d)ニロチニブ耐性変異、または
(e)ダサチニブ耐性変異、または
(f)KITにおけるT670I変異、または
(g)PDGFRにおけるT674I変異、または
(h)EGFRにおけるT790M変異、または
(i)ablにおけるT315I変異
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌、あるいは
C.BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌、あるいは
D.他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I’)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えば、c−abl、c−kit、PDGFR(PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含む)およびErbBフェミリーのメンバー(EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4など)、エフリン受容体ファミリーのメンバー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6など)、c−Src、およびJAKファミリーのキナーゼ(TYK2など)から選ばれる変異キナーゼが仲介する疾病。
別の態様において本発明は、下記のための本発明の組合せを提供する。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが仲介する病態または症状の予防または治療。
BCR−abl、VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが仲介する病態または症状の予防または治療。
BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の治療または予防。
悪性腫瘍がフィラデルフィア染色体陽性の悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病)および骨髄増殖性症候群から選ばれる、BCR−ablに起因する悪性腫瘍の病態または症状の治療または予防。
VEGFRが仲介する病態または症状の治療または予防。
病態または症状が加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫から選ばれる病態および症状などの眼疾患または症状である、VEGFRが仲介する病態または症状の治療または予防。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
病態または症状が真性多血症、本態性血小板増加症、特発性骨髄線維症、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、巨核球性白血病、巨核球性AML(AML M7)、フィラデルフィア染色体陰性CMLおよびイマチニブ耐性CMLから選ばれる1つまたは複数の疾病または症状(どのような組合せでもよい)である、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
病態または症状が真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症などの骨髄増殖性障害(MPD)から選ばれる、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2であるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
病態または症状が甲状腺乳頭癌、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、ヒルシュスプルング病、アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)、多発性骨髄腫、頭頸部癌および上皮癌から選ばれる(どのような組合せでもよい)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
病態または症状がアペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常から選ばれる、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
病態または症状が甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌から選ばれる、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはcSrcであるキナーゼが仲介する病態または症状の治療または予防。
癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)イマチニブ耐性変異、または
(d)ニロチニブ耐性変異、または
(e)ダサチニブ耐性変異、または
(f)KITにおけるT670I変異、または
(g)PDGFRにおけるT674I変異、または
(h)EGFRにおけるT790M変異、または
(i)ablにおけるT315I変異
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防。
癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異、または
(d)KITにおけるT670I変異、または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、または
(f)EGFRにおけるT790M変異
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防。
癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異、または
(d)KITにおけるT670I変異、または
(e)PDGFRにおけるT674I変異
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造。
薬剤が、消化管間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の1つまたは複数(どのような組合せでもよい)の治療または予防用であって、癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)イマチニブ耐性変異、または
(d)ニロチニブ耐性変異、または
(e)ダサチニブ耐性変異、または
(f)KITにおけるT670I変異、または
(g)PDGFRにおけるT674I変異、または
(h)EGFRにおけるT790M変異、または
(i)ablにおけるT315I変異
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防用薬剤の製造。
薬剤が、ニロチニブ耐性、ダサチニブ耐性またはイマチニブ耐性CMLの治療または予防用であって、癌細胞が、
(c)イマチニブ耐性変異、または
(d)ニロチニブ耐性の変異、または
(e)ダサチニブ耐性の変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療または予防。
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療または予防。
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I’)の組合せと結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えば、c−abl、c−kit、PDGFR(PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含む)、およびErbBフェミリーのメンバー(EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4など)、エフリン受容体ファミリーのメンバー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6など)、c−Src、およびJAKファミリーのキナーゼ(TYK2など)から選ばれる変異キナーゼが仲介する疾病の治療または予防。
眼疾患または症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;ニロチニブ耐性CML;ダサチニブ耐性CML;消化管間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病から選ばれる疾病および症状のいずれか1つまたは複数(どのような組合せでもよい)の予防または治療。
眼疾患または症状(加齢黄斑変性症[例えば、湿潤型加齢黄斑変性症];虚血性増殖性網膜症[例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症];および血管腫);骨髄増殖性障害(MPD)(真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症など);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む);フィラデルフィア染色体陰性CML;イマチニブ耐性CML;消化管間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫;フィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍(例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病);骨髄増殖性症候群;多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群、パイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など);およびヒルシュスプルング病から選ばれる疾病および症状のいずれか1つまたは複数(どのような組合せでもよい)の治療または予防。
加齢黄斑変性症(例えば、湿潤型加齢黄斑変性症);虚血性増殖性網膜症(例えば、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症);および血管腫から選ばれる疾病および症状(どのような組合せでもよい)などの眼疾患または症状のいずれか1つまたは複数の治療または予防。
真性多血症、本態性血小板増加症および骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む特発性骨髄線維症などの骨髄増殖性障害(MPD);若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;およびイマチニブ耐性CMLから選ばれる疾病および症状のいずれか1つまたは複数(どのような組合せでもよい)の治療または予防。
BCR−ablによりもたらされた悪性腫瘍、特にフィラデルフィア染色体陽性悪性腫瘍、例えば、フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなどのフィラデルフィア染色体陽性白血病の治療または予防。
骨髄増殖性症候群の治療または予防。
アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)などのヒトの骨格発生異常、甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型などの甲状腺癌ならびにヒルシュスプルング病から選ばれる疾病および症状のいずれか1つまたは複数(どのような組合せでもよい)の治療または予防。
消化管間質性腫瘍(GIST);多形性グリア芽腫、慢性骨髄単球性白血病(CMML)などのグリア芽腫;高好酸球症候群;隆起性皮膚線維肉腫から選ばれる病態または症状の治療または予防。
イマチニブ耐性CML、ニロチニブ耐性CMLおよびダサチニブ耐性CMLから選ばれる病態または症状の治療または予防。
イマチニブ耐性CMLの治療または予防。
骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症の治療または予防。
加えて、本発明はまた次のものの治療のための本発明の組合せを提供する。
加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、および血管腫などの眼疾患ならびにフィラデルフィア染色体陽性ALL。
真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AMM M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML、イマチニブ耐性CML、消化管間質性腫瘍(GIST)、高好酸球症候群または隆起性皮膚線維肉腫(そのような治療を必要とする患者に有効量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義される式(I)の組合せもしくは式(I’)の組合せを投与することによる)。
加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、および血管腫、などの眼疾患ならびにフィラデルフィア染色体陽性ALL(そのような治療を必要とする患者に有効量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)で定義される式(I)の組合せもしくは式(I’)の組合せを投与することによる)。
加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症などの虚血性増殖性網膜症ならびに血管腫などの眼疾患。
加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症などの虚血性増殖性網膜症ならびに血管腫などの眼疾患(そのような治療を必要とする患者に有効量の本明細書およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)に定義する式(I)の組合せもしくは式(I’)の組合せを投与することによる)。
フィラデルフィア染色体陽性ALLの治療。
多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など)、およびヒルシュスプルング病の治療。
多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など)、またはヒルシュスプルング病の治療。
多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など)、またはヒルシュスプルング病の治療。
本発明はまた下記請求項に開示されるさらなる組合せ、使用、方法、化合物およびプロセスを提供する。
図1は、WO2006/070195の実施例69に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基二水和物の熱振動楕円体図である(その内容は参照により本書に援用される)。
図2は、WO2006/070195の実施例69に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基二水和物のパッキング図を示す(その内容は参照により本書に援用される)。
図3は、WO2006/070195の実施例70に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基の粉末X線回折パターンを示す(その内容は参照により本書に援用される)。
図4は、WO2006/070195の205〜209ページの実施例71に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩の熱振動楕円体図である(その内容は参照により本書に援用される)。
図5は、WO2006/070195の205〜209ページの実施例71に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩のパッキング図である(その内容は参照により本書に援用される)。
図6は、WO2006/070195の209〜211ページの実施例72に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩の出発および安定性試験試料の粉末X線回折パターンを示す(その内容は参照により本書に援用される)。
図7は、WO2006/070195の209〜211ページの実施例72に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基(FB1)の出発および安定性試験試料の粉末X線回折パターンを示す(その内容は参照により本書に援用される)。
図8は、WO2006/070195の209〜211ページの実施例72に記載の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基二水和物(FB2)の出発および安定性試験試料の粉末X線回折パターンを示す(その内容は参照により本書に援用される)。
図9は、本明細書中の実施例に記載の化合物I(0.01μM)の存在下および非存在下で3種類の濃度のタキソールについて、HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイの結果を示す。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
図10は、本明細書中の実施例に記載の化合物I(0.01μM)の存在下および非存在下で3種類の濃度のシスプラチンについて、HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイの結果を示す。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
図11は、本明細書中の実施例に記載の化合物I(0.01μM)の存在下および非存在下で3種類の濃度の5−FUについて、HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイの結果を示す。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
図12は、本明細書中の実施例に記載の化合物I(0.01μM)の存在下および非存在下で3種類の濃度のビンブラスチンについて、HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイの結果を示す。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
発明の具体的説明
一般的な好ましい選択肢および定義
本明細書において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、式(I’)に関する言及は本明細書で定義される式(I)、(I”)ならびにその他の全てのサブグループ、選択肢および例(例えば、式(II”)〜(VIII”)の化合物)に関する言及を含むと解釈される。さらに、下記に説明するように、本明細書における式(I”)に対するいかなる言及もまた、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、式(II”)〜(VIII”)についての言及および式(I”)に包含される化合物の他のいずれのサブグループについての言及と理解される。
本明細書では、「修飾」なる語は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、オーロラキナーゼおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK、例えばGSK−3)および/または本明細書に記載される他のいかなるキナーゼの活性に関して使用される場合、前記キナーゼの生物学的活性のレベルの変化を意味することを意図している。したがって、修飾は、関連するキナーゼ活性の増加または減少をもたらす生理学的変化を包含する。後者の場合では、修飾は「阻害」として記載されてもよい。修飾は、直接的または間接的に生じてもよく、任意のメカニズムによりそして任意の生理学的レベル(例えば、遺伝子発現のレベル(例えば、転写、翻訳および/または翻訳後修飾を含む)、キナーゼ活性(例えば、オーロラキナーゼ、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の活性および/または本明細書に記載の他のいかなるキナーゼの活性)のレベルに直接的または間接的に作用する調節エレメントをコードする遺伝子の発現レベル、または酵素(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の活性および/または本明細書に記載の他のいかなるキナーゼ)のレベルを含む)において仲介されてもよい(例えば、アロステリック機構、拮抗的阻害、活性部位不活性化、フィードバック抑制性経路の摂動などにより)。したがって、調節は、変異による((脱)活性化を含む)プロテインキナーゼ(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)および/または本明細書に記載の他のいかなるキナーゼ)の遺伝子増幅(すなわち複数の遺伝子コピー)および/または転写効果による増加した発現または減少した発現そして過剰活性(または低活性)および(脱)活性化を含む、キナーゼ(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)または本明細書に記載の他のいかなるキナーゼ)の増加した/抑制された発現または過剰発現もしくは低発現を意味してもよい。「修飾された」、「修飾している」および「修飾する」なる語は適宜解釈されるべきである。
本明細書では、「オーロラキナーゼのアップレギュレーション」なる語は、遺伝子増幅(すなわち複数の遺伝子コピー)および転写効果による発現増加を含む、オーロラキナーゼの発現上昇または過剰発現、ならびに変異による活性化を含むオーロラキナーゼの過活性および活性化を含むと定義される。
本明細書では、例えば、本明細書に記載のキナーゼ(例えば、本明細書に記載のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3))に関して使用される(そして、例えば、様々な生理的なプロセス、疾病、状態、症状、処置、治療あるいは介入に対して使用される)「仲介される」なる語は、制限的に作用することを意味し、その用語が使用される様々なプロセス、疾病、状態、症状、治療および介入において前記キナーゼ(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3))が生物学的役割を果たすものである。その用語が疾病、状態または症状に対して使用される場合、キナーゼ(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3))が奏する生物学的役割は直接的あるいは間接的であってもよく、その疾病、状態または症状(またはその病因または進行)の発現に必要および/または十分な程度である。したがって、キナーゼ活性(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の活性)(そして特に、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の異常な活性レベル、例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の過剰発現)は、必ずしも前記疾病、状態あるいは症状の近因である必要はなく、むしろ、キナーゼが仲介する疾病、状態または症状(例えば、CDKおよび/またはGSK(例えば、GSK−3−)が仲介する疾病、状態または症状)は多要因的な病因や複雑な進展を有するものを含み、その中でキナーゼ(例えば、CDKおよび/またはGSK−3)は部分的にのみ関係していると理解される。前記用語が治療、予防あるいは介入(例えば、本発明の「CDKにより仲介される治療」および「GSK−3により仲介される治療)に対して使用される場合、キナーゼ(例えば、CDKおよび/またはGSK−3)が奏する役割は直接的あるいは間接的であってもよく、また、治療、予防の作用または介入の成果に必要および/または十分な程度である。したがって、キナーゼ(例えば、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)および/またはオーロラキナーゼおよび/または本明細書に記載の他のいかなるキナーゼ)が仲介する病態または症状は、ある特定の抗癌剤あるいは治療に対する耐性(特に本明細書に記載される1つまたは複数の補助化合物に対する耐性を含む)の発生の結果として起こる病態または状態を含む。
「介入」なる語は、任意のレベルで生理学的変化をもたらす任意の作用を定義するために本明細書において使用される技術用語である。したがって介入は、任意の生理的なプロセス、事象、生化学的経路または細胞の事象/生化学的事象の誘導または抑制を含んでもよい。本発明の介入は、典型的には、疾病または症状の療法、治療または予防を行う(またはそれらに寄与する)。
本発明の組合せは、個別に投与された場合の個々の化合物の治療上の効果と比較して、治療上有効な効果を生じる可能性がある。
「有効な」なる語は、相加作用、相乗作用、副作用の減少、毒性の減少、疾患進行に要する時間の増加、生存時間の増加、別の薬剤に対するある薬剤の感作もしくは再感作、または反応率改良のような有利な効果を含む。有利には、有効な効果により、同一の治療効果がもたらされるおよび/または維持される一方で、患者に対して投与されるべき各々またはいずれかの成分の用量が減少でき、その結果として化学療法の毒性が減少する。
本文脈における「相乗的な」効果は、組合せの成分が個別に提供された場合の治療上の効果の合計よりも大きい、組合せによりもたらされる治療上の効果を指す。
本文脈における「相加的な」効果は、組合せの成分のいずれかが個別に提供された場合の治療上の効果よりも大きい、組合せによりもたらされる治療上の効果を指す。
本明細書で用いる「反応率」なる語は、固形腫瘍の場合では所定の時点(例えば、12週)での腫瘍サイズの減少の程度を指す。したがって、例えば、50%の反応率は、腫瘍サイズの50%の減少を意味する。本明細書における「臨床反応」への言及は50%以上の反応率を指す。「部分反応」は50%よりも少ない反応率として本明細書において定義される。
本明細書では、「組合せ」なる語は、2種以上の化合物および/または薬剤(本明細書において成分とも呼ばれる)に対して使用されたとき、物質の中で前記2種以上の化合物/薬剤が結合していることを意味することを意図している。この文脈における「組合せた」および「組合せる」なる語は適宜解釈されるべきである。
組合せ中の2種以上の化合物/薬剤の結合は物理的または非物理的であってもよい。物理的に結合された組合せ化合物/薬剤の例としては以下のものが挙げられる。
混合剤(例えば、同一の単位用量内に)中に2種以上の化合物/薬剤を含む組成物(例えば、一体型の製剤)、
2種以上の化合物/薬剤が化学的に/物理化学的に結合している(例えば、架橋、分子的な凝集または共通の賦形剤部分への結合により)物質を含む組成物、
2種以上の化合物/薬剤が化学的に/物理化学的に共にパックされている(例えば、脂質小胞、粒子(例えば、ミクロ粒子またはナノ粒子)またはエマルジョン滴上に、またはそれらの内部に配置された)物質を含む組成物、
2種以上の化合物/薬剤が共にパックされているか、または共に提供されている(例えば、一連の単位用量の一部として)、薬学的キット、薬学的パックまたは患者パック。
非物理的に結合された組合せ化合物/薬剤の例としては以下のものが挙げられる。
2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方と、前記2種以上の化合物/薬剤の物理的結合を形成するための、前記少なくとも一方の化合物の即時結合のための説明書とを含む物質(例えば、非一体型の製剤)、
2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方と、前記2種以上の化合物/薬剤による併用療法のための説明書とを含む物質(例えば、非一体型の製剤)、
2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方と、前記2種以上の化合物/薬剤の他方が投与された(または投与されている)患者集団への投与のための説明書とを含む物質、
2種以上の化合物/薬剤のうちの少なくとも一方を、前記2種以上の化合物/薬剤の他方と組合せて使用するために特に適した量または形態で含む物質。
本明細書では、「併用療法」なる語は、2種以上の化合物/薬剤(上記に定義された)の組合せの使用を含む療法を意味することを意図している。したがって、本明細書における「併用療法」、「組合せ」への言及、および化合物/薬剤の「組合せ」の使用は、全体として同一の治療計画の一部として投与される化合物/薬剤を指してもよい。それゆえ、2種以上の化合物/薬剤の各々の薬量は異なってもよく、各々は同時にまたは異なる時間で投与されてもよい。したがって、当然のことであるが、組合せの化合物/薬剤は順次に(例えば、前後して)または同時に投与されてもよい(同一の医薬製剤(すなわち一緒に)、または異なる医薬製剤(すなわち個別に)のどちらかにおいて)。同一の製剤での同時投与は一体型の製剤であるが、異なる医薬製剤での同時投与は非一体型である。併用療法の2種以上の化合物/薬剤の各々の薬量はまた投与経路に関連して異なってよい。
本明細書では「薬学的キット」なる語は、任意にすべて共通の外装内に含まれる、投薬手段(例えば、計測装置)および/または送達手段(例えば、吸入器またはシリンジ)と共にある、医薬組成物の1つまたは複数の単位用量の一群を意味する。2種以上の化合物/薬剤の組合せを含む薬学的キットにおいて、個々の化合物/薬剤は一体型の製剤または非一体型の製剤のいずれであってもよい。単位用量はブリスターパック内に含まれてもよい。薬学的キットは任意に使用説明書をさらに含んでもよい。
本明細書では「薬学的パック」なる語は、任意に共通の外装内に含まれる、医薬組成物の1つまたは複数の単位用量の一群を意味する。2種以上の化合物/薬剤の組合せを含む薬学的パックにおいて、個々の化合物/薬剤は、一体型の製剤または非一体型の製剤であってもよい。単位用量はブリスターパック内に含まれていてもよい。薬学的パックは任意に使用説明書をさらに含んでもよい。
本明細書では「患者パック」なる語は、治療コース全体に対する医薬組成物を含む、患者に対して処方されたパッケージを定義する。患者パックは通常1つまたは複数のブリスターパックを含んでいる。患者パックは、薬剤師がバルク供給から患者の処方分の医薬品を分ける伝統的処方と比較して、伝統的処方では通常は同封されていない、患者パック中に含まれる添付文書を患者が常に利用できるという点において優れている。添付文書の含有は、医師の指示に対する患者のコンプライアンスを改善することが示されている。
本発明の組合せは、別々に投与された場合の個々の化合物/薬剤の治療上の効果と比較して、治療上有効な効果をもたらし得る。
本明細書では「補助化合物」なる語は、本明細書で定義される式(I’)の化合物と組合せた場合、有効な組合せ(本明細書で定義されるような)をもたらす化合物を定義し得る。補助化合物はしたがって、本明細書で定義される式(I’)の化合物に対する補助剤として作用し得るか、さもなくば組合せの有効性に寄与し得る(例えば、本明細書で定義されるように相乗効果または付加効果を奏するか反応率を向上させることによる)。
本明細書では「チェックポイント標的剤」なる語は、細胞周期チェックポイントの活性化を開始する作用をする薬剤または複製腫瘍細胞における細胞周期チェックポイントの正常な作用を干渉するまたは修飾する薬剤の機能的な類を定義するため用いられる。前記用語はしたがって、細胞周期チェックポイントを標的とする様々な薬剤(例えば、白金化合物、ヌクレオシドアナログ、CDK阻害剤、タキサン、エポチロン、ビンカアルカロイド、ポロ様キナーゼ阻害剤、CHKキナーゼ阻害剤、BUBキナーゼファミリーの阻害剤およびキネシン阻害剤が挙げられる)を包含する。特に好ましいチェックポイント標的剤は、タキサンおよびビンカアルカロイドなどの有糸分裂チェックポイントを破壊するものである。チェックポイントの標的化はいかなるメカニズムにより仲介されてもよく、例えば、紡錘体微小管の固定化によること(したがって、例えば、様々なタキサンにより仲介されるように、紡錘体収縮を阻止する)または紡錘体形成の阻止によること(例えば、様々なビンカアルカロイドにより仲介されるように)または細胞成分に対して傷害を引き起こす薬剤によること(例えば、白金化合物またはヌクレオシドアナログにより引き起こされるようなDNA)が挙げられ、これにより細胞増殖中にチェックポイントの活性化が引き起こされる。したがってチェックポイント標的剤は、腫瘍アポトーシスをもたらす染色体の不整合または早期細胞質分裂を典型的に引き起こす。チェックポイント標的剤は、細胞周期動態学を評価するために当業者に公知の様々な技術により同定することができ(例えば、多核細胞化事象の検出のためのもの)、例えば、フローサイトメトリー、DNA染色、細胞周期マーカー(例えば、サイクリン)用ウエスタンブロット分析および様々な顕微鏡技術(例えば、局所顕微鏡観察法)による直接可視化が挙げられる。
式(I’)の化合物
以下に詳細に記載されるように幅広い種類の式(I’)の化合物が本発明の組合わに適用される。したがって、本発明の組合せで用いる式(I’)の化合物は次の化合物の類(a)および(b)を含む。
(a)WO2005/002552の化合物
WO2005/002552の化合物は、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)に記載の式(I)のものならびにWO2005/002552で定義されるそのサブグループ、実施形態および例に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中と同義である。式(I)の化合物の様々なサブグループ、実施形態および例を記載するPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)の内容は参照により本書に援用される。
PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)の式(I)は本明細書では式(I’)として言及され、本明細書での式(I’)への言及は適宜解釈されるべきである。
したがって、本発明の組合せで用いる式(I’)の化合物は次式で表され、
PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)における式(I)ならびにWO2005/002552において定義されるそのサブグループ、実施形態および例に対応し、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中と同義である。
本発明の組合せで用いる式(I’)の好ましい化合物は、式(I”)の化合物、
またはその塩、溶媒和物、互変異性体もしくはN−オキシドであり、式中、MはD1基およびD2基から選ばれ、
そして、
(A)MはD1基の場合:
Xは、O、NHおよびNCH
3から選ばれ、
Aは、結合およびNR
2基から選ばれ、ここでR
2は水素またはメチルであり、
Eは、結合、CH
2、CH(CN)およびC(CH
3)
2から選ばれ、
R
1は下記のものから選ばれる:
(i)ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている3〜5環員を有するシクロアルキル基、
(ii)O、N、SおよびSO
2から選ばれる1もしくは2個のヘテロ原子環員を有する4〜6環員を有する飽和複素環基(前記複素環基はC
1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されているが、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、ならびに非置換および1−置換ピペリジン−4−イルを除く)、
(iii)下記式で表される2,5−置換フェニル基、
式中、(a)XがNHまたはN−CH
3の場合、R
3は塩素およびシアノから選ばれ、(b)XがOの場合、R
3はCNである、
(iv)CR
6R
7R
8基(R
6及びR
7はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R
8は、水素、メチル、C
1−4アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノから選ばれる)、
(v)メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリダジン−4−イル基、
(vi)置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基、
(vii)場合により置換されている1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルまたは場合により置換されている2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基(各々の場合の置換基はハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれ、ここで前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、
(viii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されている3−ピリジル(前記C
1−
4アルキルおよびC
1−
4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されているが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−(ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−アミドおよび2,6−ジメトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ニコチンアミドを除く)、
(ix)ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2またはCONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシド(前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、また、
E−AがNR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(x)2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニル、およびtert−ブチル、
(xi)NR
10R
11基(R
10およびR
11はそれぞれC
1−4アルキルあるいはR
10およびR
11は結合してNR
10R
11がO、N、SおよびSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を場合により含む4〜6環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基はC
1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されている)、
(xii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C
1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH
2、CONH−C
1−4アルキル、C
1−4アルキルならびにC
1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリドン(前記C
1−4アルキルおよびC
1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、
E−AがC(CH
3)
2NR
2またはCH
2−NR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xiii)非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニル、また、
E−AがC(CH
3)
2NR
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xiv)非置換フェニル、また、
EがCH
2の場合、R
1はさらに下記から選ばれる:
(xv)非置換テトラヒドロピラン−4−イル、そして、
(B)MがD2基である場合:
Aは、結合およびNR
2基から選ばれ、ここでR
2は水素またはメチルであり、
Eは、結合、CH
2、CH(CN)およびC(CH
3)
2から選ばれ、
R
1は下記から選ばれる:
(xvi)下記式で表される2−置換3−フリル基、
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれるか、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和環はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている、
(xvii)下記式で表される5−置換2−フリル基、
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれるか、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている、ただし、前記化合物は5−ピペリジン−1−イルメチル−フラン−2−カルボン酸[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドではない、
(xviii)下記式で表される基、
式中、R
9は、水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;Gは、CH、O、S、SO、SO
2またはNHであり、前記基はC
1−4ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C
1−4ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−およびジ−C
1−4アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により場合により置換されており(前記C
1−4ヒドロカルビルおよびC
1−4ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4アルキルアミノで場合により置換されている)、そして
(xix)下記式で表される3,5−二置換フェニル基、
式中、Xは、O、NHおよびNCH
3から選ばれる、また、
(C)MがD1基の場合:
XはOであり;AはNR
2基であり、ここでR
2は水素であり;Eは結合であり;R
1は2,6−ジフルオロフェニルであり;したがって、式(I)の化合物は下記からなる群より選ばれる酸と形成された塩から選ばれる酸付加塩である:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、αオキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば、(+)−L−乳酸および(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸。
(b)式(I)の化合物:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素およびそのアナログ
本発明の組合せで用いる式(I’)の化合物は、式(I)で表される1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基であってもよい。
式(I)の化合物は本明細書においてその化学名1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素として言及されるか、あるいは便宜上「化合物I」または「式(I)の化合物」として言及される可能性がある。これらの同義語はそれぞれ、上記式(I)で表される化合物を指し、化学名1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素で表される。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩およびクエン酸塩は、本発明の組合せで用いる好ましい式(I)の化合物である。
化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基およびその乳酸塩またはクエン酸塩またはこれらの混合物に関する言及はそれらの範囲内にすべての溶媒和物、互変異性体および同位体ならびに文脈が許す場合はN−オキシド、他のイオン形態およびプロドラッグを含む。したがって、式(I)で表される代替となる互変異性体1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素への言及は、化合物(I)に言及すると理解すべきである。
式(I)の化合物は、WO2006/070195において包括的そして詳細に記載されている。この内容は参照により本書に援用される。
具体的および好ましい式(I’)の化合物
式(I’)の化合物は、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)に記載の式(I)のものならびにWO2005/002552で定義されるそのサブグループ、実施形態および例に対応し、式中、R1、R2、R3、R4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中と同義である。式(I)の化合物の様々なサブグループ、実施形態および例を記載するPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)の内容は参照により本書に援用される。
PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)の式(I)は本明細書では式(I’)として言及され、本明細書での式(I’)への言及は適宜解釈されるべきである。
したがって、本発明の組合せで用いる式(I’)の化合物は次式で表され、
PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)における式(I)ならびにWO2005/002552において定義されるそのサブグループ、実施形態および例に対応し、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中と同義である。具体的な式(I’)の化合物は、例えばPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)における式(II)〜(IXa)の化合物およびそのいずれのサブグループ、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)において列挙された化合物、およびPCT/GB2004/002824(WO2005/002552)における実施例部分で例示された化合物で定義されたものである。
式(I’)の化合物
本発明の組合せで用いる式(I’)の化合物は次式で表される、
またはその塩、溶媒和物、互変異性体もしくはN−オキシドであり、
式中、
X’は、CR
5’またはNであり、
A’は、結合または−(CH
2)
m−(B’)
n−であり、
B’は、C=O、NR
g(C=O)またはO(C=O)であり、ここでR
gは、水素または、ヒドロキシもしくはC
1−4アルコキシで場合により置換されているC
1−4ヒドロカルビルであり、
mは、0、1または2であり、
nは、0または1であり、
R
0’は、水素であるか、または存在する場合にはNR
gと一緒になって−(CH
2)
p−基(pは2〜4である)を形成し、
R
1’は、水素、3〜12環員を有する炭素環式基もしくは複素環式基、または場合により置換されているC
1−8ヒドロカルビル基であり、
R
2’は、水素、ハロゲン、メトキシ、またはハロゲン、ヒドロキシルもしくはメトキシで場合により置換されているC
1−4ヒドロカルビル基であり、
R
3’およびR
4’は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、3個までがN、OおよびSから選ばれるヘテロ原子であり得る5〜7環員を有する、場合により置換されている縮合炭素環式環または複素環式環を形成し、
R
5’は、水素、R
2’基またはR
10’基であり、ここでR
10’は、ハロゲン、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基、R
a−R
b基であり(R
aは、結合、O、CO、X
1C(X
2)、C(X
2)X
1、X
1C(X
2)X
1、S、SO、SO
2、NR
c、SO
2NR
cまたはNR
cSO
2であり、R
bは、水素、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基、ならびにヒドロキシ、オキソ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、カルボキシ、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4ヒドロカルビルアミノ、3〜12環員を有する炭素環式基および複素環式基から選ばれる1つまたは複数の置換基で場合により置換されているC
1−8ヒドロカルビル基から選ばれ、前記C
1−8ヒドロカルビル基の1つまたは複数の炭素原子はO、S、SO、SO
2、NR
c、X
1C(X
2)、C(X
2)X
1またはX
1C(X
2)X
1で場合により置換されていてもよい)、
R
cは、水素およびC
1−4ヒドロカルビルから選ばれ、
X
1は、O、SまたはNR
cであり、X
2は、=O、=Sまたは=NR
cであり、
ならびにその塩、N−オキシド、互変異性体および溶媒和物である、あるいは
本発明で使用する具体的な式(I’)の化合物はWO2005/002552からの式(III)の化合物であり、
式中、R
1、R
2およびR
6〜R
9はWO2005/002552と同義である。
本発明で使用するさらなる化合物群はWO2005/002552の式(Va)で表すことができ、
式中、R
6a〜R
9a、R
13、R
14およびR
16ならびにそのサブグループは、WO2005/002552と同義である。
本発明で使用する他の化合物群はWO2005/002552の式(VII)および(VIIa)の化合物であり、
式中、R
1dはWO2005/002552において定義されたR
1、R
1a、R
1bまたはR
1c基である。
下記に概説される式(I’)の例示物は、WO2005/002552の109〜257ページに記載されているように調製することができる。
好ましい式(I’)の化合物は、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素ならびにその塩、N−オキシド、互変異性体および溶媒和物であり、特にその塩である。
式(I”)の化合物に関する一般的な好ましい選択肢および定義
次の一般的な好ましい選択肢および定義が、文脈上他の意味を表す場合を除き、式(I”)におけるD1、D2,A、E、X、XaおよびR1〜R9部分の各々、ならびにそれらの様々なサブグループ、部分定義、例および実施形態に適用される。
本明細書において式(I”)に対するいずれの言及もまた、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、式(II”)〜(VIII”)に関する言及および式(I”)に包含される化合物の他のいずれのサブグループに関する言及であると理解される。
本明細書では「飽和」なる語は、環原子間に多重結合がない環を意味する。
本明細書では「ヒドロカルビル」なる語は、その用語が単独で使用されていても「ヒドロカルビルオキシ」のように複合語の一部分として使用されていても、骨格の全てが炭素である脂肪族基および脂環式基を含む包括的な用語である。ヒドロカルビル基の例としては、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキルが挙げられる。具体的なヒドロカルビル基としては、アルキルおよびシクロアルキル基などの飽和基がある。
ヒドロカルビルオキシ基の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルケノキシ、アルケニロシキ、アルキニロキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルケニルアルキルオキシが挙げられる。具体的なヒドロカルビルオキシ基としては、アルコキシのような飽和基がある。
本明細書で用いる接頭語「C1−n」(nは整数)はその基における炭素原子数を表す。したがって、C1−4ヒドロカルビル基は1〜4個の炭素原子を有し、一方C1−3ヒドロカルビルオキシ基は1〜3個の炭素原子を有しており、他のものも同様である。
C1−4ヒドロカルビル基の例としては、C1−3ヒドロカルビル基またはC1−2ヒドロカルビル基が挙げられ、具体例としてはC1、C2、C3およびC4ヒドロカルビル基から選ばれる個々の値または値の組合せがある。
「アルキル」なる語は、直鎖および分岐鎖両方のアルキル基を包含する。アルキル基の例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルがある。
シクロアルキル基の例としては、シクロプロパン、シクロブタンおよびシクロペンタン由来のものがある。
アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、ブテニル、およびブタ−1,4−ジエニルがある。
シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニルおよびシクロブテニルがある。
アルキニル基の例としては、エチニルおよび2−プロピニル(プロパルギル)基がある。
シクロアルキルアルキルおよびシクロアルケニルアルキルの例としては、シクロプロピルメチルが挙げられる。
アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシおよびtert−ブトキシがある。
アルキル基がモノ−アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基の一部を形成する場合、アルキル基は上述したアルキル基の例のいずれであってもよい。具体的なアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノおよびi−ブチルアミノがある。具体的なアルキル−およびジアルキルアミノ基としては、メチルアミノおよびジメチルアミノがある。
本明細書で用いる「飽和複素環基」なる語は、隣接する環員の間に多重結合を含まない複素環基を意味する。飽和複素環基は、O、SおよびNから選ばれる1または2個のヘテロ原子環員を含んでいてもよい。
文脈によっては複素環基は、例えば、環状エーテル部分(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサンの場合)、環状チオエーテル部分(例えば、テトラヒドロチオフェンおよびジチアンの場合)、環状アミン部分(例えば、ピロリジンの場合)、環状アミド部分(例えば、ピロリドンの場合)、環状チオアミド、環状チオエステル、環状尿素(例えば、イミダゾリジン−2−オンの場合)、環状エステル部分(例えば、ブチロラクトンの場合)、環状スルホン(例えば、スルホランおよびスルホレン)、環状スルホキシド、環状スルホンアミドおよびその組合せ(例えば、チオモルホリン)を含み得る。
飽和複素環基は、特に明記しない限り、典型的には単環式で通常4、5あるいは6環員を有する。
4環員を有する飽和複素環基の具体例としては、アゼチジン基がある。
5環員を有する飽和複素環基の例としては、ピロリジン(例えば、1−ピロリジニル、2−ピロリジニルおよび3−ピロリジニル)、ピロリドン、テトラヒドロフラン、およびテトラヒドロチオフェンが挙げられる。
6環員を有する飽和複素環基の例としては、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド、ピペリジン(例えば、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニルおよび4−ピペリジニル)、ピペリドン、ジオキサン、テトラヒドロピラン(例えば、4−テトラヒドロピラニル)、ピペラゾン、ピペラジン、およびN−メチルピペラジンなどのN−アルキルピペラジンが挙げられる。
式(I”)のサブグループ(A)および(B)におけるD1、D2、A、E,R1〜R9およびXに関する具体的な実施形態および好ましい選択肢
1つの一般的な実施形態では、MはD1基である。
他の一般的な実施形態では、MはD2基である。
Xは、O、NHおよびNCH3から選ばれる。ある具体的な実施形態では、XはOである。
Aは結合およびNR2基から選ばれ、ここでR2は水素またはメチルである。
一実施形態では、Aは結合である。
別の実施形態では、AはNR2であり、ここでR2は水素またはメチルである。
Eは、結合、CH2、CH(CN)およびC(CH3)2から選ばれる。
化合物の1つのサブグループでは、Eは結合である。
化合物の他のサブグループでは、EはCH2である。
化合物のさらなるサブグループでは、EはCH(CN)である。
化合物のもう一つのサブグループでは、EはC(CH3)2である。
MがDl基である場合、R1は基(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、(xiv)および(xv)から選ぶことができる。
基(i)〜(xv)の一覧のそれぞれの基は、本発明の組合せで用いる独立した実施形態を表わす。
実施形態(i)では、R1は、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルで場合により置換されている3〜5環員のシクロアルキル基である。
具体的なシクロアルキル基としては、場合により置換されているシクロプロピル基およびシクロブチル基があり、より典型的には場合により置換されているシクロプロピル基である。好ましい実施形態では、R1は非置換シクロプロピル基である。
実施形態(ii)では、R1は、O、N、SおよびSO2から選ばれる1または2個のヘテロ原子環員を含む4〜6環員の飽和複素環基であり、前記複素環基は場合によりC1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで置換されているが、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、ならびに非置換および1−置換ピペリジン−4−イルは除く。
飽和複素環基の例は、上記「一般的な好ましい選択肢および定義」の項に記載した通りである。
飽和複素環基の具体例としては、次のものが挙げられる、
O、NおよびSから選ばれる1個のヘテロ原子環員を含有する5員環(非置換2−ピロリジニルを除く)、
O、NおよびSから選ばれる2個のヘテロ原子環員を含有する6員環(非置換4−モルホリニルを除く)。
飽和複素環基は置換されていても置換されていなくてもよい。一実施形態では、飽和複素環基は非置換である。別の実施形態では、飽和複素環基は、1または2個のC1−4アルキル基、例えば、1または2個のメチル基で置換されている。
ある具体的な複素環基は、場合により置換されているテトラヒドロフラン基(例えば、テトラヒドロフラン−2−イルおよびテトラヒドロフラン−3−イル)であり、より好ましくは非置換テトラヒドロフラン基である。
実施形態(iii)では、R
1は下記式で表される2,5−置換フェニル基であり、
式中(a)XがNHまたはN−CH
3である場合、R
3は塩素とシアノ基から選ばれ、(b)XがOの場合、R
3はCNである。
実施形態(iii)の化合物の1つのサブグループでは、XはN−CH3であり、R3は塩素とシアノから選ばれる。
実施形態(iii)の化合物の他のサブグループでは、XはOであり、R3はCNである。
実施形態(iv)では、R1はCR6R7R8基であり、ここでR6およびR7はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R8は水素、メチル、C1−4アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノから選ばれる。
実施形態(iv)の範囲内で、R1の具体例は、メチル、シアノメチル、HOCH2C(CH3)2−、および2−メチルスルホニルエチルである。
実施形態(iv)の範囲内で、R1のさらに具体的な例は、メチルおよびイソプロピルである。
実施形態(v)では、R1は、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリダジン−4−イル基である。ピリダジニル基はピリダジン−3−イルまたはピリダジン−4−イルであってもよいが、典型的にはピリダジン−4−イルである。具体的な置換基としてはメトキシ基であり、例えば、ピリダジニル基は2個のメトキシ置換基を有してもよい。
実施形態(vi)では、R1は、置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基である。具体的な置換基はメチルである。
実施形態(vii)では、R1は、場合により置換されている1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルまたは場合により置換されている2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基であり、ここで各々の場合の置換基は、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシである(前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)。
具体的な置換基は、メチル、エチル、フッ素、塩素(好ましくは、ジヒドロインドールまたはジヒドロイソインドールのアリール環上にのみ)、CONH2、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、およびメトキシから選ばれる。
実施形態(vii)の化合物の1つのサブグループでは、前記ジヒドロイソインドールまたはジヒドロインドールは各々非置換である。
実施形態(viii)では、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基で場合により置換されている3−ピリジル(前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)であるが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドおよび2,6−ジメトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ニコチンアミドを除く)。
一実施形態では、R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選ばれる1あるいは2個の置換基で場合により置換されている3−ピリジル(前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)であるが、R1が3−ピリジル、XがO、Aが結合、Eが結合である場合、ピリジルは、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルおよびC2−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基を有し、ここで前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている。
具体的な置換基は、メチル、エチル、フッ素、塩素、CONH2、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノおよびメトキシから選ばれる。さらに具体的な置換基は、メチル、エチル、フッ素、塩素、CONH2、アミノ、メチルアミノおよびジメチルアミノから選ばれる。
化合物の1つのサブグループでは、前記3−ピリジル基は非置換である。
実施形態(ix)では、R1は、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2またはCONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシドである(前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)。
化合物の1つのサブグループでは、前記チオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシドは非置換である。
実施形態(x)では、E−AはNR2であり、R1は2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニルおよびtert−ブチルから選ばれる。
実施形態(xi)では、E−AはNR2であり、R1はNR10R11基であり、ここでR10およびR11はそれぞれC1−4アルキル、またはR10およびR11は結合してNR10R11がO、N、SおよびSO2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を場合により含む4〜6環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基はC1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されている。
この実施形態の範囲内で、化合物の1つのサブグループは、R10およびR11がそれぞれC1−4アルキル、特にメチルである化合物群である。
化合物の他のサブグループとしては、R10およびR11は結合してNR10R11がO、N、SおよびSO2から選ばれる第2のヘテロ原子環員を場合により含む4〜6環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基はC1−4アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されている化合物群がある。前記飽和複素環基は、上記「一般的な好ましい選択肢および定義」の項で記述された窒素含有飽和複素環基のいずれかであり得るが、具体的な飽和複素環基としては、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニルおよびN−C1−4アルキル−ピペラジニル基が挙げられる。そのような基は典型的には非置換もしくは1または2個のメチル基により置換されており、ある具体的な実施形態では、非置換である。
実施形態(xii)では、E−AはNR2であり、R1はヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C1−4モノ−およびジアルキルアミノ、CONH2、CONH−C1−4アルキル、C1−4アルキルならびにC1−4アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリドン基である(前記C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)。
前記ピリドン基は、例えばメチルなどのアルキル基でN−置換されていてもよく、そうでなければ非置換である。
実施形態(xiii)では、E−AはC(CH3)2NR2またはCH2−NR2であり、R1は非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニルから選ばれる。
実施形態(xiv)では、E−AはC(CH3)2NR2であり、R1は非置換フェニルである。
実施形態(xv)では、EはCH2であり、R1は非置換テトラヒドロピラン−4−イルである。
MがD2基である場合、R1は基(xvi)、(xvii)、(xviii)および(xix)から選ぶことができる。
基(xvi)〜(xix)の一覧のそれぞれの基は、本発明の組合せで用いる別々の実施形態を表わす。
実施形態(xvi)では、R
1は下記式の2−置換3−フリル基であり、
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれるか、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和環はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている。
一実施形態では、R
1は下記式の2−置換3−フリル基であり、
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれるか、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和環はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されていてもよいが、Aが結合でEが結合である場合、R
4およびR
5は結合しておらず、NR
4R
5は非置換ピペリジンを形成する。
具体的な飽和複素環基は「一般的な好ましい選択肢および定義」の項で上記に記載した通りであるが、具体的な飽和複素環基としては、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニルおよびN−C1−4アルキル−ピペラジニル基が挙げられる。そのような基は典型的には非置換あるいは1または2個のメチル基で置換されており、1つの具体的な実施形態では非置換である。
R4およびR5が水素およびC1−4アルキルから選ばれる化合物の具体例としては、メチルアミノおよびジメチルアミノ基があり、より典型的にはジメチルアミノ基である。
実施形態(xvii)では、R
1は下記式の5−置換2−フリル基である。
式中、R
4およびR
5は同一または異なって水素およびC
1−4アルキルから選ばれる、あるいはR
4およびR
5は結合しておりNR
4R
5がO、NH、NMe、SまたはSO
2から選ばれる第2のヘテロ原子または基を有してもよい5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている、ただし、前記化合物は5−ピペリジン−1−イルメチル−フラン−2−カルボン酸[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドではない。
具体的な飽和複素環基は「一般的な好ましい選択肢および定義」の部分で上記に記載した通りであり、特定の飽和複素環基にはピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニルおよびN−C1−4アルキル−ピペラジニル基が挙げられる。そのような基は典型的には非置換あるいは1または2個のメチル基で置換されており、1つの特定の実施形態では、非置換である。
実施形態(xviii)では、R
1は下記式で表される基である。
式中、R
9は水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;GはCH、O、S、SO、SO
2またはNHであり、前記基はC
1−4ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C
1−4ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−およびジ−C
1−4アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により場合により置換されている(前記C
1−4ヒドロカルビルおよびC
1−4ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C
1−4アルキルアミノで場合により置換されている)。
実施形態(xix)の範囲内の化合物の1つのサブグループでは、GはOおよびCHから選ばれる。
実施形態(xviii)では、R1基は典型的には非置換あるいは1または2個のメチル基により置換されており、より典型的には非置換である。
実施形態(xix)では、R
1は下記式の3,5−二置換フェニル基である。
式中、X
aはXと同様にO、NHおよびNCH
3から選ばれる。
好ましくは、XaはN−CH3である。
R
1−A−部分の具体例は表Xに示されており、星印はR
1−E−A−C(=O)−NH−基におけるカルボニル基C=Oへの結合地点を表す。
表Xにおいて、好ましいR
1−E−A−基としては、A1、A4、A10、A11、A13、A20、A22、A23、A24、A29、A30、A31、A32、A38、A42、A43、A44、A46、A47、A49、A54およびA56が挙げられる。
別の実施形態では、R1−E−AはA57、A58またはA59である。
R1−E−A−の好ましいサブセットとしては、A1、A4、A20、A24、A30、A44、A46およびA54が挙げられる。このサブセットの中で、1つの具体的なR1−A−基としては、A24である。
本発明の組合せで用いる化合物の1つのサブグループは、式(II”)で表わされる。
式中、R
1、E、AおよびXは本明細書で定義した通りである。
式(II”)の範囲内で、化合物の1つサブセットは、XがOであるサブセットである。
式(II”)の化合物の1つのサブグループは、式(III”)により表わすことができる。
式(III)の範囲内で、化合物の1つのサブセットは、Eが結合であるサブセットである。
式(III”)の範囲内の化合物の他のサブセットは、EがCH2またはC(CH3)2であるサブセットである。
式(III”)の範囲内の1つの特に好ましい実施形態では、Eは結合であり、R2はH、そしてR1は本明細書で定義されるシクロアルキル基(i)である。一実施形態では、シクロアルキル基はシクロプロピルまたはシクロブチルであり得る。より好ましくは、R1はシクロプロピル基である。
誤解を避けるため記述すると、R1基の一般的なおよび具体的な好ましい選択肢、実施形態および例のそれぞれは、R2および/またはR3および/またはR4および/またはR5および/またはR6および/またはR7および/またはR8および/またはR9および/またはR10および/またはR11および/またはD1および/またはD2および/またはAおよび/またはEおよび/またはXおよび/またはXaの一般的なおよび具体的な好ましい選択肢、実施形態および例ならびに本明細書で定義されるそれらのサブグループと組合わされてもよいと理解するべきであって、そのような組合せはすべて本明細書に包含される。
式(I’)の化合物を構成する様々な官能基および置換基は、典型的には、式(I’)の化合物の分子量が1000を超えないように選ばれる。より通常は、化合物の分子量は750未満、例えば、700未満、650未満、600未満、または550未満になる。より好ましくは、分子量は525未満、例えば、500以下である。
式(I”)のサブグループ(C)の化合物
式(I”)の化合物の1つのサブグループ(すなわち式(I”)のサブグループ(C))において、MはD1基であり、XはOであり、AはNR2基(R2は水素)であり、Eは結合であり、R1は2,6−ジフルオロフェニルである、そして前記化合物は、選択された酸の群から形成された酸付加塩である。
したがって、一実施形態では、前記組合せは下記の群から選ばれる酸から形成される1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の酸付加塩を含有する:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、αオキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば(+)−L−乳酸および(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸。
一実施形態では、前記酸付加塩は下記の群から選ばれる酸から形成される:アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、αオキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、ラウリルスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、セバシン酸、ステアリン酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸およびキナホイック酸。
一実施形態では、前記酸付加塩は下記の群から選ばれる酸から形成される:酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、クエン酸、DL−乳酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、塩酸、グルタミン酸、DL−リンゴ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸(エシル酸)、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸および酒石酸。
さらなる実施形態では、前記酸付加塩は下記の群から選ばれる酸から形成される:アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルコン酸、馬尿酸、グルタミン酸、セバシン酸、ステアリン酸および酒石酸。
他の具体的な実施形態では、前記化合物は塩酸と形成される酸付加塩である。
好ましい塩としては、所定の液体担体(例えば、水)での溶解度が前記液体担体(例えば、水)に対して25mg/mlより大きく、より典型的には50mg/mlより大きく、好ましくは100mg/mlより大きい塩である。そのような塩は、液体形態(例えば、注射または点滴によって)での投与に特に有利である。
本発明の組合せで用いる溶解度が25mg/mlより大きい塩としては、D−グルクロン酸塩、メシル酸塩、エシル酸塩およびDL−乳酸塩が挙げられる。後者3つの塩の溶解度は100mg/mlを越える。
したがって1つの具体的な実施形態では、前記組合せは1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のメシル酸塩を含有する。
他の具体的な実施形態では、前記組合せは1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のエシル酸(エタンスルホン酸)塩を含有する。
さらなる具体的な実施形態では、前記組合せは1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のDL−乳酸塩を含有する。一実施形態では、前記乳酸塩はL−乳酸塩である。
式(I’)のサブグループ(C)の化合物(すなわち酸付加塩)が由来する遊離塩基または親化合物は式(IA)で表される。
本発明の組合せで用いる具体的な化合物は、下記の実施例において示された通りである。
本発明の組合せで用いる1つの好ましい化合物は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素ならびにその塩(例えば、乳酸塩またはクエン酸塩またはこれらの混合物)、溶媒和物および互変異性体である。
一実施形態では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩は、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩または塩酸塩であってもよい。
式(I)の乳酸塩およびクエン酸塩ならびにこれらの混合物および結晶
本発明はとりわけ、補助化合物と、1つまたは複数の化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩および/またはクエン酸塩(またはその結晶形態)とを含む組合せを提供する。
本発明はまた、前記化合物、その乳酸塩および結晶形態を含む組合せの新規な調製方法を提供する。
本発明はさらに、前記組合せの治療上の使用を提供する。
したがって、第一の態様において、本発明は補助化合物と、乳酸塩、クエン酸塩およびこれらの混合物から選ばれる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩とを含む組合せを提供する
前記塩が由来する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基は式(I)で表される。
式(I)の化合物は、本明細書ではその化学名1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素として言及されるか、または便宜上「化合物(I)」または「式(I)の化合物」として言及される可能性がある。これらの同義語はそれぞれ、上記式(I)で表される化合物を指し、化学名1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を有する。
化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基およびその乳酸塩またはクエン酸塩あるいはこれらの混合物に関する言及はそれらの範囲内にすべての溶媒和物、互変異性体および同位体ならびに文脈が許す場合は、N−オキシド、他のイオン形態およびプロドラッグを含む。したがって、式(I)で表される代替となる互変異性体1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素への言及は化合物(I)に言及すると理解されるべきである。
本発明はまた、下記請求項に開示されるようなさらなる組合せ、使用、方法およびプロセスを提供する。
便宜上、L−乳酸およびクエン酸から形成される塩は、本明細書ではそれぞれ、L−乳酸塩およびクエン酸塩と呼ばれる可能性がある。
1つの具体的な実施形態では、塩はL−乳酸塩またはD−乳酸塩であり、好ましくはL−乳酸塩である。
別の実施形態では、塩はクエン酸から形成される塩である。
より具体的には、塩はL−乳酸塩およびクエン酸塩の混合物である。
固体の状態では、本発明の組合せで用いる乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、結晶性またはアモルファスまたはその混合物であってもよい。
一実施形態では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩はアモルファスである。
アモルファス固体では、結晶形態で通常存在する3次元構造は存在せず、アモルファス形態での分子のお互いに対する位置は実質的にランダムである。例えば、ハンコック(Hancock)ら、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカルサイエンス(J. Pharm. Sci.)、1997年、86、1参照。
別の実施形態では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は実質的に結晶性である、すなわち、これら塩は50%〜100%結晶性、より具体的には、これら塩は少なくとも50%結晶性、または少なくとも60%結晶性、または少なくとも70%結晶性、または少なくとも80%結晶性、または少なくとも90%結晶性、または少なくとも95%結晶性、または少なくとも98%結晶性、または少なくとも99%結晶性、または少なくとも99.5%結晶性、または少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性であってもよい。
さらなる実施形態では、乳酸塩またはクエン酸塩は、50%〜100%結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩から成る群から選ばれる、例えば、少なくとも50%結晶性、少なくとも60%結晶性、少なくとも70%結晶性、少なくとも80%結晶性、少なくとも90%結晶性、少なくとも95%結晶性、少なくとも98%結晶性、少なくとも99%結晶性、少なくとも99.5%結晶性、少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性である。
より好ましくは、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、95%〜100%結晶性のものであってもよい(または95%〜100%結晶性のものから成る群から選ばれてもよい)、例えば、少なくとも98%結晶性、または少なくとも99%結晶性、または少なくとも99.5%結晶性、または少なくとも99.6%結晶性、または少なくとも99.7%結晶性、または少なくとも99.8%結晶性、または少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性である。
実質的に結晶性の塩の一例は、L−乳酸で形成された結晶塩である。
実質的に結晶性の塩の他の例は、クエン酸で形成された結晶塩である。
本発明の組合せで用いる塩は、固体の状態で、溶媒和されていても(例えば、水和)溶媒和されていなくてもよい(例えば、無水)。
一実施形態では、塩は溶媒和されていない(例えば、無水)。
溶媒和されていない塩のさらなる例は、本明細書で定義される乳酸(特にL−乳酸)で形成された結晶塩である。
一実施形態では、式(I’)の塩の結晶形態は、L−乳酸塩およびクエン酸塩(特に、L−乳酸塩)から選ばれる。
本明細書で用いる「無水」なる語は、塩(例えば、塩の結晶)のまわり、またはその中にいくらかの水分が存在する可能性を排除しない。例えば、塩(例えば、塩結晶)の表面に存在するいくらかの水分、あるいは塩(例えば、結晶)の塊の中に少量の水分が存在してもよい。典型的には、無水形態は、化合物の分子1個当たり水分子を0.4個未満の含んでおり、より好ましくは化合物の分子1個当たり水分子を0.1個未満、例えば、水の分子を0個含んでいる。
別の実施形態では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は溶媒和されている。塩が水和されている場合、塩は例えば結晶水の分子を3個まで、より通常は水の分子を2個まで、例えば水の分子1個または水の分子2個を含み得る。存在する水の分子の数が1未満すなわち非整数である非化学量論的水和物が形成される可能性がある。例えば1個未満の水の分子が存在する場合、例えば、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9個の水の分子が化合物の分子1個当たりに存在する可能性がある。
他の溶媒和物としては、エタノラートやイソプロパノラートのようなアルコラートが挙げられる。
一実施形態では、乳酸塩(特にL−乳酸塩)は、例えば、水および/またはエタノールで溶媒和される。
本発明の組合せで用いる乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、「医薬用塩:特性、選択および使用(Pharmaceutical Salts: Properties,Selection,and Use)」、ハインリヒスタール(P.Heinrich Stahl)(編者)、カミールワーマス(Camille G.Wermuth)(編者)、ISBN:3−90639−026−8、ハードカバー、388ページ、2002年8月、に記載されている方法のような従来の化学的方法により親化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素から合成することができる。そのような塩は一般的に、水、有機溶媒、またはそれら2つの混合物(一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が使用される)中で適切な酸と親化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を反応させることにより調製することができる。
前記組合せは、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩を調製する工程を含む方法により調製されてもよく、前記方法は溶媒(典型的には有機溶媒)または混合溶媒中で1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の溶液を形成する工程および酸で前記溶液を処理して塩の沈澱物を形成する工程を含む。
前記酸は、遊離塩基が溶解している溶媒と混和性がある溶媒に溶液として加えられてもよい。遊離塩基がまず溶解される溶媒は、その塩が不溶性のものであってもよい。あるいは、遊離塩基がまず溶解される溶液は、塩が少なくとも部分的に溶解するものであってもよく、塩が溶液から析出するように、塩がそれほど可溶でない別の溶媒が続いて加えられる。
塩を形成する別の方法では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は揮発性酸および場合により共溶媒を含む溶媒に溶解し、これにより揮発性酸との塩の溶液を形成し、得られた溶液をその後に濃縮または蒸発させて塩を単離する。
前記組合せは、本明細書で定義される1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩を形成する工程を含む方法により調製されてもよく、前記方法は式(I)で表される化合物
を有機溶媒中で本明細書で定義される有機または無機酸で処理する工程、および場合により、このようにして形成された塩を単離する工程を含む。
乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、典型的には有機溶媒から形成されると共に析出し、したがって溶液から固体の分離(例えば、濾過)により単離することができる。
本発明のある塩形態は、当業者に公知の方法により遊離塩基および場合により他の塩形態に変換することができる。例えば、遊離塩基はアミン固定相(例えば、ストラタ(Strata)−NH2カラム)を有するカラムに塩溶液を通すことにより形成することができる。あるいは、塩の水溶液を重炭酸ナトリウムで処理し、塩を分解し遊離塩基を沈殿させることができる。その後、遊離塩基は上述または本明細書の他の箇所に記載された方法の1つにより酸と組合されてもよい。
乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩は、対応する遊離塩基と比較して多くの長所を有する。例えば、塩は遊離塩基と比較して下記の1つまたはそれ以上の利点がある。
溶解度が大きい、特に水溶液において溶解度がより高く、したがって静脈内投与(例えば、点滴によって)により適している、
溶液のpHの制御を可能にし、したがって静脈内投与により適している、
より安定性が高い、例えば、熱安定性(例えば、より長い保存期間)、
製造に関して利点がある、
より優れた物理化学的特徴がある、
向上した抗癌活性があり得る、そして
向上した治療係数を持ち得る。
本発明の組合せで用いる結晶性乳酸塩(特にL−乳酸塩)は、下記の理由で特に有利である。
非吸湿性である、
無水性であり水和物を形成しない、
単一の多形相である、
結晶性である、
保管安定性がある、
明確な融点を有し、DSC実験で形態変化を起こさない、
水に対して優れた溶解性を有し、緩衝系でより優れた溶解性を付与する。
本明細書で用いる「安定」または「安定性」なる語は、化学的安定性と固体状態(物理的)安定性を含む。「化学的安定性」なる語は、化合物が単離された形態で保存できることを意味するか、または化合物が、例えば、本明細書に記載される薬学的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントとともに混合物として提供される製剤の形態で、通常の貯蔵条件下で、ほとんどもしくは全く化学的に劣化または分解しないことを意味する。「固体状態安定性」は、化合物が単離された形態で保存できることを意味するか、または化合物が、例えば、本明細書に記載される薬学的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントとともに混合物として提供される固体製剤の形態で、通常の貯蔵条件下で、ほとんどもしくは全く固体変換(例えば、水和、失水、溶媒和物化、脱溶媒和物化、結晶化、再結晶化または固体相転移)しないことを意味する。
液体(例えば、水性)医薬組成物の調製に用いる好ましい塩は、任意の液体担体(例えば、水または緩衝系)での溶解度が液体担体(例えば、水)に対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、さらにより典型的には20mg/mlより大きい、そして好ましくは25mg/mlより大きい式(I)および(I’)の塩(すなわち、本明細書で定義される乳酸塩、クエン酸塩またはそれら混合物)である。
他の態様では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩またはこれらの混合物を、例えば、液体担体(例えば、水または緩衝系)に対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、より典型的には20mg/mlより大きい、および好ましくは25mg/mlより大きい濃度で含有する水溶液に基づく組合せを含む医薬組成物が提供される。
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩を、液体担体(例えば、水)に対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、典型的には20mg/mlより大きい、および好ましくは25mg/mlより大きい濃度で含有する水溶液に基づく組合せを含む。
他の態様では、本発明は1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩またはこれらの混合物の水溶液に基づく組合せを提供し、前記水溶液のpHは2〜6、例えば2〜5、そしてさらに詳細には4〜6、例えば4〜5である。
上記に定義された水溶液では、塩は本明細書に記載のいずれの塩でもよいが、1つの好ましい実施形態ではL−乳酸塩である。1つの好ましい実施形態では、塩はL−乳酸塩およびクエン酸塩の混合物である。
本発明はまた、1種または2種以上の対イオンおよび場合により1種または2種以上のさらなる対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液に基づく組合せを提供する。一実施形態では、対イオンのうちの1種は乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる。別の実施形態では、対イオンのうちの1種はクエン酸塩などの本明細書に記載されているような製剤用緩衝剤に由来する。さらなる実施形態では、塩化物イオン(例えば、食塩水からの)などの1種または2種以上のさらなる対イオンが存在してもよい。
本発明はしたがって、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1種または2種以上の対イオンおよび場合により1種または2種以上のさらなる塩化物イオンなどの対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液に基づく組合せを提供する。
1種を超える対イオンがある状況では、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液は、対イオンの混合物、例えばL−乳酸塩対イオンとクエン酸塩対イオンと場合により1種または2種以上のさらなる対イオン(塩化物イオンなど)との混合物含む可能性がある。
本発明はしたがって、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1種または2種以上の対イオンおよび場合により1種または2種以上のさらなる対イオン(塩化物イオンなど)とのプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の、およびこれらの混合物の水溶液に基づく組合せを提供する。
本発明はまた、1種または2種以上の対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と場合により1種または2種以上の静注用賦形剤(等浸透圧製剤を達成するための希釈のため)との水溶液に基づく組合せを提供する。一実施形態では、対イオンの1種はL−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる。別の実施形態では、対イオンのうちの1種はクエン酸塩などの本明細書に記載される製剤用緩衝剤に由来する。さらなる実施形態では、1種または2種以上のヘキソース糖、例えば、デキストロース(D−グルコース)などの米国薬局方および英国医学会薬学会共同編集処方集で詳述されるような静注用賦形剤が存在していてもよい。本発明はしたがって、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1種または2種以上の対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と、場合により1種または2種以上のデキストロースなどの静注用賦形剤との水溶液に基づく組合せを提供する。1種を超える対イオンがある状況では、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液は、対イオンの混合物、例えば、乳酸塩対イオンとクエン酸塩対イオンととの混合物および場合により1種または2種以上のデキストロースなどの静注用賦形剤を含む可能性がある。本発明はしたがって、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1種または2種以上の対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と場合により1種または2種以上のさらなるデキストロースなどの静注用賦形剤との、およびこれらの混合物との水溶液に基づく組合せを提供する。
水溶液はとりわけクエン酸塩イオン(例えば、クエン酸塩緩衝剤)の溶液中に乳酸塩を溶解することにより、または乳酸塩イオンの溶液中にクエン酸塩を溶解することにより形成することができる。乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンは溶液中に乳酸塩:クエン酸塩比で10:1以下、例えば10:1〜1:10、より好ましくは8:1未満、または7:1未満、または6:1未満、または5:1未満、または4:1未満、または3:1未満、または2:1未満、または1:1未満、より具体的には1:1〜1:10までで存在してもよい。一実施形態では、乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンは溶液中に乳酸塩:クエン酸塩比で1:1〜1:10、例えば1:1〜1:8、または1:1〜1:7、または1:1〜1:6、または1:1〜1:5、例えばほぼ1:4.4で存在する。
塩の水溶液は緩衝化されていても緩衝化されていなくてもよく、一実施形態では緩衝化されている。
他の態様では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩またはこれらの混合物を含有する凍結乾燥された製剤を含む医薬組成物に基づく組合せが提供され、前記製剤のpHは2〜6、例えば2〜5、より具体的には4〜6、例えば4〜5である。
上記に定義された凍結乾燥された製剤の1つの好ましい実施形態では、塩はL−乳酸塩である。
本発明はまた、1種または2種以上の対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の凍結乾燥された製剤に基づく組合せを提供する。一実施形態では、対イオンの一種はL−乳酸である。別の実施形態では、対イオンのうちの1種はクエン酸塩などの本明細書に記載される製剤用緩衝剤に由来する。
本発明はしたがって、L−乳酸塩およびクエン酸塩から選ばれる1種または2種以上の対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の凍結乾燥された製剤に基づく組合せを提供する。1種を超える対イオンがある状況では、プロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の水溶液は、対イオンの混合物、例えば、L−乳酸塩およびクエン酸塩対イオンの混合物を含む可能性がある。
本発明はしたがって、乳酸塩、クエン酸塩およびこれらの混合物から選ばれる1種または2種以上の対イオンとによってプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の凍結乾燥された製剤に基づく組合せを提供する。
上記に定義された凍結乾燥された製剤の1つの好ましい実施形態では、塩はL−乳酸塩であり、緩衝塩はクエン酸塩である。
一実施形態では、乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンは、凍結乾燥された製剤に乳酸塩:クエン酸塩比で10:1以下、例えば10:1〜1:10、より好ましくは8:1未満、または7:1未満、または6:1未満、または5:1未満、または4:1未満、または3:1未満、または2:1未満、または1:1未満、より具体的には1:1〜1:10、例えば1:1〜1:8、または1:1〜1:7、または1:1〜1:6、または1:1〜1:5、例えばほぼ1:4.4で存在する。
塩の凍結乾燥された製剤は、緩衝化されていても緩衝化されていなくてもよく、一実施形態では緩衝化されている。
乳酸で形成された塩という文脈では、好ましい緩衝剤は、クエン酸から形成されNaOHまたはHClで適正なpH(例えば、溶液においてほぼpH4.5)へ調整された緩衝剤である。このpHでおよびクエン酸塩緩衝剤中では、遊離塩基はそれぞれ約80mg/mlの溶解度を有する。
凍結乾燥された製剤はその後、食塩水またはデキストロース(好ましくはデキストロース)などの静注用賦形剤を含有する無菌水溶液へ再構成される。
本発明の組合せに用いる塩は、典型的には薬学上許容される塩であり、薬学上許容される塩の例は、ベルジュ(Berge)ら、1977年、「薬学的許容塩(Pharmaceutically Acceptable Salts)」、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカルサイエンス(J. Pharm. Sci.)、第66巻、1〜19ページで検討されている。しかしながら、医薬上許容されない塩も中間体として製造してもよく、これをその後薬学上許容される塩に変換してもよい。このような医薬上許容されない塩の形態もまた本発明により適用される。
化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素はまた、N−オキシドを形成し得る。N−オキシドは、過酸化水素または過酸(例えば、ペルオキシカルボン酸)などの酸化剤で対応するアミンを処理することにより形成できる(例えば、機能化学特論(Advanced Organic Chemistry)、ジェリーマーチ(Jerry March)、第4版、ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ページ、参照)。より具体的には、N−オキシドはデディー(L.W.Deady)(シンセティックコミュニケーションズ(Syn. Comm.)、1977年、7、509〜514)の方法により製造することができ、この方法ではアミン化合物を、例えばジクロロメタンなどの不活性溶媒中でm−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)と反応させる。
本発明で用いる乳酸塩またはクエン酸塩が由来する化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は、多数の異なる互変異性型で存在する可能性があり、本明細書中での前記化合物への言及はこのような形態の全てを含むものである。
より具体的には、本発明の組合せで用いる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩およびクエン酸塩において、ベンゾイミダゾール基は以下の2つの互変異性型AおよびBのいずれをとってもよい。便宜上、一般式(I)はA型を示すが、この式には4つすべての互変異性体型が含まれるものとみなされる。
さらに、1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩の文脈では、すなわち別の互変異性体への言及は、明らかに1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素と同一の化合物の乳酸またはクエン酸塩への言及である。
ピラゾール環もまた互変異性を示すことがあり、下記の2つの互変異性型CおよびDで存在し得る。
さらに、尿素のシスとトランス配座も可能である。
本発明の組合せで用いる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(例えば、L−乳酸塩)またはクエン酸塩および塩への言及はまた、1つまたは複数の同位体置換による変形を含み、特定の元素への言及はその範囲内に元素の全ての同位体を含む。例えば、水素への言及はその範囲内に
1H、
2H(D)および
3H(T)を含む。同様に、炭素と酸素への言及はそれらの範囲内にそれぞれ
12C、
13Cおよび
14Cならびに
16Oおよび
18Oを含む。
同位体は放射性であってもよいし非放射性であってもよい。一例では、前記化合物は放射性同位体を含まない。そのような化合物は治療上の使用に好ましい。他の場合にはしかしながら、前記化合物は1つまたは複数の放射性同位体を含んでもよい。そのような放射性同位体を含んでいる化合物は診断の場合に役立つ。
また1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素および塩への言及には、それらのいかなる多形相、溶媒和物(例えば、水和物)、錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体または包接化合物、あるいは金属との錯体)を包含する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶構造
上述のように、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸は、アモルファスでも実質的に結晶性でもよい。1つの具体的な実施形態では、乳酸塩またはクエン酸塩は実質的に結晶性である。「実質的に結晶性」なる語は上記に定義した意味を有する。特に1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は実質的に結晶性である。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)が実質的に結晶性の場合、単一の結晶形態が支配的である可能性がある、しかし他の結晶形態は僅かに、好ましくは無視できる量で存在してもよい。
結晶形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は約5重量%以下の他の結晶形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を含んでおり、特に約1重量%以下の他の結晶形態のもの含んでいる。
好ましい実施形態では、本発明は実質的に結晶性の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩(例えば、本明細書で定義される乳酸塩(特にL−乳酸塩))に基づく組合せ(前記塩の単一の結晶形態を含み、前記塩の他のどのような結晶形態も5重量%以下でのみ含まれる)を提供する。
好ましくは、単一の結晶形態には、他の結晶形態が4重量%未満または3重量%未満または2重量%未満伴われ、特に他の結晶形態は約1重量%以下で含まれる。より好ましくは、単一の結晶形態には、他の結晶形態が0.9重量%未満または0.8重量%未満または0.7重量%未満または0.6重量%未満または0.5重量%未満または0.4重量%未満または0.3重量%未満または0.2重量%未満または0.1重量%未満または0.05重量%未満または0.01重量%未満、例えば0重量%未満伴われる。
結晶およびその結晶構造は、単結晶X線結晶学、粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量測定法(DSC)および赤外線分光法、例えば、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を含む多くの手法を使い特性決定できる。様々な湿度条件下での結晶の性質は重量蒸気収着法によって、またXRPDによって分析することができる。
化合物の結晶構造の測定は、X線結晶学的方法により行なうことができ、本明細書や「結晶学の基礎(Fundamentals of Crystallography)」、ジャコバッツォ(C. Giacovazzo)、モナコ(H. L. Monaco)、ビテルボ(D. Viterbo)、スコルダリ(F. Scordari)、ジリ(G. Gilli)、ザノッティ(G. Zanotti)およびキャッティ(M. Catti)、(国際結晶学連合(International Union of Crystallography)/オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、1992年、ISBN0−19−855578−4(p/b)、0−19−85579−2(h/b))に記載されたような従来の方法によって行なうことができる。この手法は、単結晶のX線回折の分析および解釈を伴う。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩および二水和物遊離塩基の結晶構造は、WO2006/070195に記載されているようにX線結晶学的手法によって測定されている。
WO2006/070195の表2および表4は1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶の座標データを示し、該データはCrystallographic Information File(CIF)形式である(ホール(Hall)、アレン(Allen)およびブラウン(Brown)、アクタ・クリスタログラフィカ(Acta Cryst.)、1991年、A47、655−685;http://www.iucr.ac.uk/iucr-top/cif/home.html参照)。PDBファイル形式(例えば、EBI巨大分子構造データベース(EBI Macromolecular Structure Database)(ヒンクストン、英国)に整合性を有する形式)のような他のファイル形式も当業者に使用され、また好まれることがある。しかしながら、WO2006/070195(その内容は参照により本書に援用される)の表の座標を示したり操作するための異なったファイル形式の使用は、本発明の範囲内であることが明からである。表中のカッコ内の数値は偏差(s.u.、標準不確かさ)を表わす。乳酸塩の結晶構造はWO2006/070195の図4および図5に示されている。
一実施形態では、本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供し、前記乳酸塩は結晶性であり、WO2006/070195の205ページの実施例71の表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標に定義されるような結晶構造を有する。
別の実施形態では、本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供し、前記乳酸塩は結晶性でありWO2006/070195の図4および図5に記載のような結晶構造を有する。
別の実施形態では、本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供し、前記乳酸塩は結晶性であり、斜方晶系空間群P212121(#19)に属し97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する。
別の実施形態では、本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供し、前記乳酸塩は結晶性であり、室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する。
したがって、別の実施形態では、本発明は、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供し、前記乳酸塩は結晶性であり:
(a)図4および図5に示される結晶構造を有する、かつ/または
(b)WO2006/070195の205〜209ページの実施例71の表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、かつ/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、かつ/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、かつ/または
(e)斜方晶系空間群P212121(#19)に属する結晶構造を有する。
実質的に結晶性の塩には、例えば、塩を再結晶させるかそうでなければ精製するために使用される有機溶媒あるいは水などの他の溶媒が実質的に残存していないことが好ましい。
一実施形態では、式(I)の化合物の乳酸塩(特にL−乳酸塩)、特に1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩の結晶は、残存溶媒(例えば、水または有機溶媒)が10重量%未満、例えば5%未満の残存溶媒が含まれている結晶である。
一実施形態では、結晶塩(例えば、乳酸塩、特にL−乳酸塩)は無水であり、「無水」なる語は上記に定義した意味を有する。
別の実施形態では、結晶性の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩は、残存有機溶媒(例えば、エタノール)を約0〜5重量%の範囲で(例えば、約2重量%のエタノールを)含有する。
あるいは、結晶構造は粉末X線回折(XRPD)固体法により分析することができる。XRPDは、WO2006/070195および粉末X線回折入門(Introduction to X-ray Powder Diffraction)、(ロンジェンキンス(Ron Jenkins)およびロバートスナイダー(Robert L. Snyder)(ジョンワイリー&サンズ、ニューヨーク、1996年)に記載のような従来の方法にしたがって行なうことができる。XRPD回折図中で明確なピーク(ランダムなバックグラウンドノイズとは対照的に)の存在は、化合物が結晶化度を有していることを示す。
化合物の粉末X線図形は、X線回折スペクトルの回折角(2θ)パラメーターおよび面間隔(d)パラメーターで特性決定される。これらは、ブラッグの式、nλ=2dSinθ(ここでn=l、λ=使用されるカソードの波長、d=面間隔、およびθ=回折角)により関連づけられる。本明細書では、面間隔、回折角および全体的な図形は、データの特徴により、粉末X線回折における結晶の識別のために重要である。結晶成長の方向、粒径および測定条件によって相対強度は変わりうるので、相対強度は厳密に解釈されるべきでない。さらに、回折角は通常2θ±0.2°の範囲内で一致する角度を意味する。ピークは主要ピークを意味し、上述した以外の回折角で半分までの大きさのピークを含む。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩形態および遊離塩基形態の両方はXRPDで特性決定されている。それぞれの場合、粉末X線回折パターンは、回折角(2θ)、面間隔(d)および/または相対強度によって表される。WO2006/070195の表3、表5および表6(その内容は参照により本書に援用される)は、遊離塩基形態、乳酸塩形態および二水和物遊離塩基形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の回折角値に相当するX線回折スペクトルの面間隔(d)値を示す。
したがって、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素は、本質的にWO2006/070195の図3、図6、図7または図8および/または表3、表5または表6(その内容は参照により本書に援用される)に示される粉末X線回折パターンを有する。
本発明はしたがって、実質的にWO2006/070195の図3、図6、図7または図8に示される粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩(例えば、乳酸塩、特にL−乳酸塩)の結晶に基づく組合せを提供する。好ましくは、本発明の組合せに使用される化合物は、WO2006/070195の図3、図6、図7または図8および/またはWO2006/070195の204〜205ページの実施例70の表3(その内容は参照により本書に援用される)および/またはWO2006/070195の209〜210ページの実施例72の表5(その内容は参照により本書に援用される)および/またはWO2006/070195の211ページの実施例72の表6(その内容は参照により本書に援用される)で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、任意に同様の相対強度を有する化合物である。
本発明はさらに、本質的にWO2006/070195の図6に示される粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶に基づく組合せを提供する。したがって、別の実施形態では、本発明は、図6で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示す1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供する。好ましくは、ピークは図6のピークと同様の相対強度を有する。したがって、本発明は、実質的に図6で示される粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供する。
前記乳酸塩の粉末X線回折パターンは、回折角(2θ)および面間隔(d)でのピークの存在、および好ましくはWO2006/070195の実施例72の表5(その内容は参照により本書に援用される)に示される強度によって特性決定され得る。
したがって本発明は、WO2006/070195の実施例72の表5(その内容は参照により本書に援用される)の回折角(2θ±1.0°、例えば±0.2°、特に±0.1°)に特徴的ピークを有する粉末X線回折パターンを示すシクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供する。
本発明はまた、17.50、18.30、19.30、19.60および21.85±1.0°、例えば±0.2°、特に±0.1°の回折角2θに主要なピークを示すシクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶に基づく組合せを提供する。
したがって本発明は、一実施形態では12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30±1.0°の2θでのX線回折パターンにおけるピークによって特徴付けられるシクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶形態に基づく組合せを提供する。
シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶はまた、特徴的粉末X線回折パターンは格子面間の間隔(表5のd(Å)(参照により本書に援用される))により表わされるという点で特性決定される。
さらなる実施形態では、本発明は、その特徴的ピークが5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的には、7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53、4.07および3.26Åの粉末X線回折の格子面間隔(d)として現われる粉末X線回折パターンを有するシクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特にL−乳酸塩)の結晶に基づく組合せを提供する。
したがって別の実施形態では、本発明は、17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的には12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85、27.30°の回折角(2θ)ならびに5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的には7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53、4.07および3.26Åの面間隔(d)における主要なピークの存在により特性決定される粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性の乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供する。
さらなる実施形態では、本発明は、前記回折角(2θ)および面間隔(d)でのピークの存在ならびに好ましくはWO2006/070195の実施例72の表5(その内容は参照により本書に援用される)に示される強度によって特性決定される粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の実質的に結晶性のL−乳酸塩に基づく組合せを提供する。
本発明の組合せで用いる結晶性の塩はまた、示差走査熱量測定法(DSC)によって特性決定できる。
前記乳酸塩はDSCにより分析されており、190℃で始まりを示し、194〜197℃でピークを示す。
それ故、他の態様では本発明は、無水でありDSCにかけられた場合190℃で始まりを示しかつ/または194〜197℃で吸熱ピークを示すその乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供する。
したがって本発明のさらなる態様は、図6、図7または図8で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示しさらに熱分析(DSC)による始まりが190℃を示しかつ/または194〜197℃でピーク近傍に分解を伴う吸熱ピークを示す1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩(特に、L−乳酸塩)に基づく組合せである。
高湿度条件での本発明の組合せで用いる塩の性質は、例えばWO2006/070195の実施例68に記載されているような標準的な重量蒸気収着(GVS)法によって分析することができる。
前記乳酸塩は、高相対湿度条件で安定した無水結晶形態で存在することができ、そのような状況下で結晶構造に変化が起こらない。
本発明の組合せで用いる塩はさらに、赤外線分光法、例えばFTIRによって特性決定できる。
前記乳酸塩の赤外線スペクトル(KBrディスク法)は、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する。
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の(好ましくは実質的に結晶性の)乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく組合せを提供する。
上記の段落から明らかなように、本発明の組合せで用いる乳酸塩(特にL−乳酸塩)は多くの異なった物理化学パラメーターによって特性決定することができる。したがって、好ましい場合において、本発明の組合せは、結晶性で下記の任意の1つまたは複数(どのような組合せでもよい)またはすべてパラメーターによって特性決定される1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩(特にL−乳酸塩)に基づく。
(a)図4および図5に示される結晶構造を有する、かつ/または
(b)本明細書においてはWO2006/070195の実施例71の表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、かつ/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、かつ/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、かつ/または
(e)斜方晶系空間群P212121(#19)に属する結晶構造を有する、かつ/または
(f)17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的には12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30°の回折角(2θ)および/または5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的には7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53,4.07および3.26Åの面間隔(d)における主要なピークの存在を特徴とする粉末X線回折パターンを有する、かつ/または
(g)場合によりWO2006/070195の図6または実施例72の表5(その内容は参照により本書に援用される)のピークと同様の相対強度を有する、図6または表5(参照により本書に援用される)で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示す、かつ/または
(h)実質的に図6に示される粉末X線回折パターンを有する、かつ/または
(i)無水でありDSCに供された場合190℃で始まりを示しかつ/または194〜197℃で吸熱ピークを示す、かつ/または
(j)KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基の結晶構造
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基も、アモルファスまたは実質的に結晶性であってよい。1つの具体的な実施形態では、遊離塩基は実質的に結晶性であり、「実質的に結晶性」なる語は上記に定義した意味を有する。一実施形態では、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基は、二水和物結晶形態で存在する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の二水和物遊離塩基の結晶構造は、X線結晶学的手法によって測定されている。
一実施形態では本発明は、結晶性であり(i)WO2006/070195の203〜204ページの実施例69の表2(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有しかつ/または(ii)結晶が単斜晶系空間群P21/n(#14)に属しa=7.66(10)、b=15.18(10)、c=17.71(10)Å、β=98.53(2)°、α=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の二水和物遊離塩基に基づく組合せを提供する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基形態はXRPDで特性決定されている。その結果、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基形態は、実質的にWO2006/070195の図3、図6、図7または図8および/または実施例70および72の表3、表5または表6(その内容は参照により本書に援用される)に示される粉末X線回折パターンを有する。
したがって一実施形態では本発明は、WO2006/070195の図3、図6、図7または図8および/または実施例70〜72の表3および/または表5および/または表6(その内容は参照により本書に援用される)で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピーク(前記ピークは場合により同じ相対強度を有する)を有する粉末X線回折パターンを示す1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶に基づく組合せを提供する。
本発明はまた、WO2006/070195のページ204〜205の実施例70の表3(その内容は参照により本書に援用される)の回折角(2θ±1.0°、例えば±0.2°、特に±0.1°)に特徴的ピークを有する粉末X線回折パターンを示す1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶に基づく組合せを提供する。
さらなる実施形態では本発明は、その特徴的ピークがWO2006/070195のページ204〜205の実施例70の表3(その内容は参照により本書に援用される)の格子面間隔(d)として現われる粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶に基づく組合せを提供する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基は、図3および/または表3(参照により本書に援用される)で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、さらに熱分析(DSC)によれば193℃近傍に分解を伴う発熱ピークを示す。
さらなる実施形態では本発明は、その特徴的ピークがWO2006/070195のページ204〜205の実施例70の表3(その内容は参照により本書に援用される)の格子面間隔(d)として現われる粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基の結晶に基づく組合せを提供する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基は、図3および/または表3(参照により本書に援用される)で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、さらに熱分析(DSC)によれば193℃近傍に分解を伴う発熱ピークを示す。
生物学的活性
本発明の組合せで用いる化合物はオーロラキナーゼの阻害剤である。例えば、前記化合物はオーロラAおよび/またはオーロラBを阻害する。
本発明の組合せで用いる化合物はまた、サイクリン依存性キナーゼに対する活性を有する。例えば、前記化合物は、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6およびCDK9キナーゼ、特にCDK2に対する活性を有する。本発明の組合せで用いる化合物はまた、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)に対して活性を有する。
CDKおよびオーロラキナーゼおよびグリコーゲンシンターゼキナーゼを修飾または阻害する前記化合物の活性の結果として、前記化合物は異常に分裂する細胞の細胞周期を停止させる、またはその制御を回復させる手段を提供する組合せの構成要素として有用である。前記化合物は、癌などの増殖性疾患の治療または予防のための組合せの構成要素として有用であると証明されることとなる。本発明の組合せの構成要素はまた、ウイルス感染、II型またはインスリン非依存性糖尿病、自己免疫疾患、頭部損傷、卒中、癲癇、神経変性疾患(アルツハイマー病など)、運動神経性疾患、進行性の核上麻痺、皮質基底核変性症およびピック病、例えば、自己免疫疾患および神経変性疾患などの症状の治療に有用となる。
前記化合物が本発明の組合せの構成要素として有用になる病態および症状のサブグループとしては、ウイルス感染、自己免疫疾患および神経変性疾患が挙げられる。
CDKは、細胞周期、アポトーシス、転写、分化およびCNS機能の調節に役割を果たす。したがってCDK阻害剤は、癌などの増殖、アポトーシスまたは分化に障害がある疾病の治療に有用であり得る。特に、RB+ve腫瘍は特にCDK阻害剤に感受性があり得る。PB−ve腫瘍もCDK阻害剤に感受性があり得る
阻害可能な癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、例えば、膀胱癌、乳癌、結腸癌(例えば、直腸腺癌および直腸腺腫などの結腸直腸癌)、腎臓癌、表皮癌、肝臓癌、肺癌、例えば、腺癌、小細胞性肺癌および非小細胞性肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、例えば、外分泌膵臓癌、胃癌、子宮頚癌、甲状腺癌、前立腺癌または皮膚癌、例えば、扁平上皮癌;リンパ系の造血系腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞性リンパ腫またはバーケットリンパ腫;骨髄系の造血系腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群または前骨髄球性白血病;甲状腺瀘胞癌;間葉由来の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉種;中枢または末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、グリオーマまたは神経鞘腫;メラノーマ;精上皮腫;奇形癌;骨肉種;色素性乾皮症;角化棘細胞種;甲状腺濾胞癌;またはカポジ肉腫が挙げられる。さらに、リンパ系の造血系腫瘍には小リンパ球性リンパ腫が含まれ得る。
前記癌は、任意の1つまたは複数のサイクリン依存性キナーゼの阻害に感受性のある癌であってもよい。
特定の癌がサイクリン依存性キナーゼまたはオーロラキナーゼによる阻害に感受性のあるものかどうかは、以下の実施例で示すような細胞増殖アッセイにより、または「診断方法」と題した項で示されるような方法により判定することができる。
CDKはまた、アポトーシス、増殖、分化および転写においても役割を果たすことが知られており、したがってCDK阻害剤は、癌以外の以下の疾病の治療のための組合せの構成要素としても有用でありうる:ウイルス感染、例えば、ヘルペスウィルス、ポックスウィルス、エプスタイン・バーウィルス、シンドビスウィルス、アデノウィルス、HIV、HPV、HCVおよびHCMV;HIV感染個体におけるAIDS発現の予防;慢性炎症性疾患、例えば、全身性紅斑性狼瘡、自己免疫仲介糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患および自己免疫性糖尿病;心血管系疾患、例えば、心肥大、再狭窄、アテローム性動脈硬化症;神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、AIDS関連痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮および小脳変性症;糸球体腎炎;骨髄異形成症候群、虚血傷害関連心筋梗塞、卒中および再灌流障害、不整脈、アテローム性動脈硬化症、毒素誘発またはアルコール関連肝疾患、血液疾患、例えば、慢性貧血および再生不良性貧血;筋骨格系の変性疾患、例えば、骨粗鬆症および関節炎、アスピリン感受性鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患および癌性疼痛。
いくつかのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤も、他の抗癌剤と組み合わせて使用できることが分かった。例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤フラボピリドールは、併用療法において他の抗癌剤とともに使用されてきた。
したがって、異常細胞増殖を含む疾病または症状を治療するための本発明の医薬組成物、使用または方法において、一実施形態における異常細胞増殖を含む疾病または症状は癌である。
癌の一群としては、ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜性乳癌)およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。さらに、他の癌としては、結腸直腸癌および子宮内膜癌がある。
癌の他のサブセットとしては、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、食道癌、扁平上皮癌および非小細胞肺癌が挙げられる。
本発明の組合せで用いる化合物はオーロラキナーゼに対して活性を有するので、本発明のオーロラキナーゼ阻害化合物が有用になる癌の具体例としては、ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜性乳癌);卵巣癌(例えば、原発性卵巣癌);膵臓癌;ヒト膀胱癌;結腸直腸癌(例えば、原発性結腸直腸癌);胃癌;腎臓癌;子宮頸癌;神経芽腫;メラノーマ;リンパ腫;前立腺癌;白血病;非類内膜性子宮内膜癌;グリオーマ;および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。
オーロラ阻害剤に特に反応性の高い癌としては、乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、グリオーマおよび非類内膜性子宮内膜癌が挙げられる。
オーロラ阻害剤に特に反応性の高い癌の具体的なサブセットは、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、胃癌および前立腺癌から成る。
オーロラ阻害剤が特に適用可能な癌の他のサブセットは、血液の癌、特に白血病である。したがって、さらなる実施形態では、前記化合物は、血液の癌、特に白血病を治療するために使用される組合せの構成要素として使用される。具体的な白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞リンパ腫(マントル細胞)および急性リンパ芽球性白血病(ALL、別名:急性リンパ性白血病)から選ばれる。一実施形態では、白血病は、再発性または治療抵抗性急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病から選ばれる。他の白血病としては急性前骨髄球性白血病が挙げられる。
癌の一群としては、ヒト乳癌(例えば、原発性乳癌、リンパ節転移陰性乳癌、浸潤性乳管癌、非類内膜性乳癌)およびマントル細胞リンパ腫が挙げられる。さらに、他の癌としては、結腸直腸癌および子宮内膜癌がある。
癌の他のサブセットとしては、リンパ系の造血系腫瘍、例えば、白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫およびB細胞リンパ腫(びまん性大B細胞リンパ腫)が挙げられる。
ある具体的な癌としては慢性リンパ性白血病がある。
もう1つの具体的な癌としてはマントル細胞リンパ腫がある。
他の具体的な癌としてびまん性大B細胞リンパ腫がある。
オーロラキナーゼ阻害活性を有する本発明の組合せは、高レベルのオーロラキナーゼの存在が伴うまたは高レベルのオーロラキナーゼの存在を特徴とするタイプの癌、例えば、この文脈で本明細書の導入の項で言及された癌の治療または予防に特に有用である。そのような癌は髄芽細胞腫を含む。
本発明の組合せで用いる化合物はVEGFR活性の阻害剤である。さらに、前記化合物はEpHおよびFGFR活性の阻害剤でもある。それゆえ、前記化合物は、特に血管新生の阻害により、組織異常増殖を防ぐもしくは組織異常増殖にアポトーシスを誘発する手段の提供に有用である。本発明の組合せは、癌などの増殖性疾患の治療または予防に有用である。特に、VEGFRの活性化変異体またはVEGFRのアップレギュレーションを伴う腫瘍、および高レベルの血清乳酸脱水素酵素を有する患者は、前記阻害剤に特に感受性がある可能性がある。本明細書で検討されているような特定のVEGFRのアイソフォームのうちのいずれの活性化変異体を有する患者にも、VEGFR阻害剤による治療が特に有益である可能性がある。例えば、クローン前駆細胞がVEGFRを発現する可能性がある急性白血病細胞でのVEGFRの過剰発現である。また、FGFR2またはFGFR3などのFGFRのアイソフォームのうちのいずれの活性化変異体、アップレギュレーションまたは過剰発現を伴う特定の腫瘍は、本発明の組合せに特に感受性がある可能性があり、そのような特定の腫瘍を有する本明細書で検討されるような患者にも本発明の組合せを使用した治療が特に有益である可能性がある。前記治療は上述されたような受容体チロシンキナーゼの変異型に関係するかまたは対象とすることが好ましい。
Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2阻害活性を有する本発明の組合せで用いる化合物は、次の疾病および白血病の治療または予防に特に有用である:真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7);巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;慢性骨髄性白血病(CML);イマチニブ耐性CML;急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);および急性リンパ芽球性白血病(ALL)。
したがってさらなる実施形態では、本発明の組合せは次の疾病を治療するために使用される:真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球AML(AML M7);巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CML;またはイマチニブ耐性CML。
さらなる実施形態では本発明の組合せは、真性多血症、本態性血小板増加症および特発性骨髄線維症(骨髄様化生(MMM)を伴う骨髄線維症を含む)などの骨髄増殖性障害(MPD)を治療するために使用される。
さらに本発明の組合せは、悪性腫瘍がBCR−ablに起因する疾病、特にフィラデルフィア染色体陽性の治療に使用され得る。さらなる実施形態では、式(I)の化合物の乳酸塩またはクエン酸塩は、骨髄増殖性症候群およびフィラデルフィア染色体陽性白血病(フィラデルフィア染色体陽性CMLおよびフィラデルフィア染色体陽性ALLなど)を治療するために使用される。特に本発明の組合せは、フィラデルフィア染色体陽性ALLを治療するために使用される。
VEGFR阻害活性を有する本発明の組合せは、加齢黄斑変性症(AMD)、特に湿潤型加齢黄斑変性症、虚血性増殖性網膜症(未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症など)および血管腫などの眼疾患の治療または予防に特に有用である。したがってさらなる実施形態では、本発明の組合せは、加齢黄斑変性症、特に湿潤型加齢黄斑変性症、虚血性増殖性網膜症(未熟児網膜症(ROP)および糖尿病性網膜症など)および血管腫などの眼疾患の治療に使用される。
前記治療は、上述されたようなキナーゼの変異型に関連するかまたは対象とすることが好ましい可能性がある。そのような変異を伴う腫瘍の診断は、RTPCRおよびFISHなどの当業者に公知および本明細書に記載のような技術を使用して行なうことができる。
サイクリン依存性キナーゼ、オーロラキナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3、VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2の阻害剤としての本発明の組合せで用いる化合物の活性は、下記実施例において記載されたアッセイを使用して測定することができ、ある化合物が示す活性のレベルはIC50値として決定することができる。
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEphあるいはcSrc阻害活性を有する本発明の組合せで用いる化合物は、次の疾病の治療および予防に特に有用である:甲状腺乳頭癌;多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型;家族性甲状腺髄様癌(FMTC);ヒルシュスプルング病;アペール(AP)症候群;クルーゾン症候群;ジャクソン・ワイス症候群;ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群;パイフェル症候群(PS);および多発性骨髄腫。さらに、前記化合物は、頭頸部癌および上皮癌の治療に特に有用である。
したがってさらなる実施形態では、本発明の組合せは、多発性骨髄腫、上皮癌、頭頸部癌、ヒトの骨格発生異常(アペール(AP)症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベーレ・スティーブンソン脳回状頭皮症候群およびパイフェル症候群(PS)など)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)、多発性内分泌腺腫(MEN)2A型および2B型など)およびヒルシュスプルング病の治療に使用される。
本発明の組合せはFGFRに対する活性を有するので、具体的な癌としては、多発性骨髄腫、膀胱癌、肝細胞性癌、口腔扁平細胞癌、頚部癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌、乳癌および結腸癌が挙げられる。FGFR1などのFGFR阻害活性を有する本発明の組合せは、乳癌、特に古典的小葉癌(CLC)の治療または予防に特に有用になる。FGFR2またはFGFR3などのFGFR阻害活性を有する本発明の組合せは、骨疾患の治療または予防に特に有用になる。
さらに、FGFR1、FGFR2またはFGFR3などのFGFR阻害活性を有する本発明の組合せは、進行性線維症が症状である病状の治療または予防に特に有用になる。本発明の化合物が治療に有用である可能性のある線維性疾患はとしては、例えば、肝硬変、糸球体腎炎、肺線維症、全身性線維症、関節リウマチ、そして自然創傷治癒過程における線維組織の異常または過剰蓄積示す疾病が挙げられる。特に本発明の組合せはまた、肺線維症、特に特発性肺線維症の治療に有用となる可能性が有る。
本発明の組合せはPDGFRを阻害するので、本発明の組合せはまた、多形性グリア芽腫などのグリア芽腫、前立腺癌、消化管間質性腫瘍、肝臓癌、腎臓癌、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、そして高好酸球症候群、希な増殖性血液疾患(rare proliferative hematological disorder)、隆起性皮膚線維肉腫および浸透性皮膚腫瘍を含む多くの腫瘍および白血病タイプの治療に有用である可能性がある。
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEphあるいはcSrcの阻害剤としての本発明の組合せで用いる化合物の活性は、下記実施例において記載されたアッセイを使用して測定することができ、ある化合物が示す活性のレベルはIC50値として決定することができる。
さらなる態様では、本発明は以下のものを提供する、
VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2が仲介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそれが必要な被検者に治療上有効な量の本発明の組合せを投与することを含む方法、
VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2が仲介する病態または症状の予防または治療に用いる本発明の組合せ、
VEGFR、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1またはChk2が仲介する病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用、
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEph、あるいはcSrcが仲介する病態または症状の予防または治療方法であって、前記方法はそれが必要な被検者に治療上有効な量の本発明の組合せを投与することを含む方法、
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEph、あるいはcSrcが仲介する病態または症状の予防または治療に用いる本発明の組合せ、
FGFR3などのFGFR、Ret、EphB2またはEphB4などのEph、あるいはcSrcが仲介する病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用。
変異キナーゼ
キナーゼ阻害剤で治療されている患者集団で発生する薬剤耐性キナーゼ変異は、部分的には、治療で用いる特定の阻害剤に結合するか相互に作用するタンパク質の領域で起こり得る。そのような変異は問題のキナーゼに結合してそのキナーゼを阻害する阻害剤の能力を縮小させる。これは、阻害剤と相互に作用するか、標的への前記阻害剤の結合をサポートにするために重要なアミノ酸残基のうちのいずれにおいても起こり得る。変異したアミノ酸残基との相互作用を必要とせずに、標的キナーゼに結合する他の阻害剤は、前記変異に影響されなくことなく前記酵素の有効な阻害剤であり続けると考えられる(カーター(Carter)ら、米国科学アカデミー紀要(PNAS)、2005年、102、31、11011−110116)。
薬剤耐性変異の1つの好発部位はいわゆるゲートキーパー残基である。この特定の残基は、いくつかのキナーゼ阻害剤とそれらのそれぞれの標的との相互作用のための重要な部位を構成する。例えばイマチニブ(グリベック)は、ablキナーゼドメインのゲートキーパー残基であるスレオニン315と部分的に結合する。T315I変異は、イマチニブで治療を受けるCML患者で発生する薬物耐性の主形態のうちの1つであり、急性リンパ芽球性白血病の患者でも観察され得る。したがって、有効な標的阻害のためのT315との相互作用を必要としないBCR−abl阻害剤は、依然T315Iイマチニブ耐性変異の有効な阻害剤である。
イマチニブはabl活性を妨害することに加えて、受容体c−kitおよびPDGF−Rのチロシンキナーゼ活性を阻害する。したがってこの薬剤は、胃腸の腫瘍および高好酸球症候群に用いられており、これらはそれぞれc−kitおよびPDGFRの活性化に依存性の病状である。PDGF−R活性化は、異なった分子の状況下でイマチニブに応答する他の悪性腫瘍に関与している。これら他の悪性腫瘍は、慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含む。他の疾患では、隆起性皮膚線維肉腫、浸透性皮膚腫瘍、PDGF−Bリガンドをコードする遺伝子を伴う相互転座は、キメラリガンドの構成性分泌および受容体の活性化をもたらす。グリベックはこれら3つ疾病すべてに対して活性がある。
CMLで観察されるT315I耐性疾患に加えて、類似のゲートキーパー変異による耐性はc−kitおよびPDGFrの両方でイマチニブで治療される患者において観察されている。したがってKITにおけるT670I変異およびPDGFRにおけるT674I変異は、BCR−ablにおけるT315I変異とホモログであり、3つの変異はすべてBMS−354825(ダサタニブ(dasatanib))およびAMN−107(ニロチニブ)を含む臨床ステージのATP拮抗キナーゼ阻害剤に対する耐性を与える。この変異は今日まで患者におけるsrc/Abl阻害剤に対する耐性の主要なメカニズムを示しているように見え、この変異の臨床上の重要性は相当に大きくなる可能性がある。現在スレオニンゲートキーパー変異を伴う患者へのキナーゼを標的にした有効な治療法はない。
さらに、EGFRにおけるT790M変異はBCR−ablにおけるT315I変異とホモログであり、この変異はまた臨床ステージのATP拮抗キナーゼ阻害剤に対する耐性を与える可能性がある。したがって他の臨床ステージのATP拮抗キナーゼ阻害剤としては、EGFR阻害剤イレッサ(ゲフィチニブ)、タルセバ(エルロチニブ)、SU−11248(スニチニブマレエート、ステント)、PDGFrおよびc−kit阻害剤、ならびにソラフェニブなどの他のPDGFR阻害剤が挙げられる。
オーロラキナーゼはキナーゼ活性部位のゲートキーパー領域にスレオニンを含んでいない。したがって、本発明のものを含む多くのオーロラキナーゼ阻害剤は、キナーゼ活性の阻害を支持するのにこの相互作用に依存しない。したがって、abl、kit、PDGFRまたは他のキナーゼに対する交差反応性を有するオーロラキナーゼ阻害剤は、薬剤耐性ゲートキーパー変異、特にスレオニンゲートキーパー変異、同じく野生型変異体にも抑制的であり、ゲートキーパー−領域での変異により発生する耐性疾患に対して有効である。
本発明の組合せはしたがって、BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体、ErbB2などの変異した分子標的を発現する癌に関して特に適用される。そのような変異を伴う腫瘍の診断は、当業者に公知の手法ならびにRTPCRおよびFISHのような本明細書に記載された手法を使って行なうことができる。
したがってオーロラキナーゼは、ゲートキーパースレオニンを有するキナーゼに相当するものではないので、オーロラ阻害剤はタンパク質のその領域における変異のための既存の治療法に耐性がある適応症の治療に有用である。そのような適応症としては、消化管間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群、希な増殖性血液疾患および隆起性皮膚線維肉腫(浸透性皮膚腫瘍)が挙げられる。
本発明の一態様は、他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)の化合物とは結合または相互作用しないタンパク質の領域に変異を含んでいるキナーゼの阻害のための、本発明の組合せの使用である。
本発明のさらなる態様は、他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または式(I’)または式(I0)の化合物とは結合または相互作用しないタンパク質の領域に変異を含んでいるキナーゼが仲介する疾病を本発明の組合せによって治療する方法である。
阻害対象である具体的なキナーゼとしては、c−abl、c−kit、PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含むPDGFRならびにEGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4などのErbBフェミリーのメンバーが挙げられ、特に、c−abl、c−kitおよびPDGFRである。
さらなるキナーゼとしては、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6などのエフリン受容体ファミリーのメンバー、c−Src、ならびにTYK2などのJAKファミリーのメンバーなど本明細書で記述されたものが挙げられる。
他の抗癌剤としては、グリベック、BMS−354825、AMN−107、SU−11248(スニチニブマレエート、ステント)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、イレッサ(ゲフィチニブ)およびタルセバ(エルロチニブ)などのATP拮抗キナーゼ阻害剤、特にグリベック、BMS−354825(ダサチニブ)およびAMN−107(ニロチニブ)が挙げられる。さらなるキナーゼ阻害剤は、デービース(Davies)ら、バイオケミカルジャーナル(Biochemical Journal)、2000年、351、95〜105;およびマキネス(McInnes C)、フィッシャー(Fischer P. M.)、カレントファーマシューティカルデザイン(Curr. Pharm. Des.)、2005年、11:14(1845−1863)で検討されている。
他の抗癌剤と結合または相互作用する具体的な領域としては、キナーゼ活性部位、ATP結合部位およびゲートキーパー領域が挙げられ、特にablにおけるT315、KITにおけるT670、PDGFRにおけるT674およびEGFRにおけるT790を含むスレオニンゲートキーパー残基である。ATP結合ポケットを含むキナーゼ活性部位の具体的な領域は、ブルペッティ(Vulpetti A.)、ボソッティ(Bosotti R.)、ファルマコ(Farmaco)、2004年、59:10(759−765);ナイト(Knight)ら、ケミストリーアンドバイオロジー(Chemistry & Biology)、12、621−637;およびチェリー(Cherry M.)、ウィリアムス(Williams D.H.)、カレントメディシナルケミストリー(Curr. Med. Chem.)、2004年、11:6(663−673)で検討されている。
本発明のさらなる態様は、スレオニンゲートキーパー残基(すなわちablにおけるT315、T670におけるKIT、PDGFRにおけるT674)に変異を含むc−abl、c−kitおよびPDGFRの阻害のための、本発明の組合せの使用に関する。
したがって、本発明のさらなる実施形態では、本発明の組合せは、消化管間質性腫瘍(GIST)、多形性グリア芽腫などのグリア芽腫、高好酸球症候群または隆起性皮膚線維肉腫を治療するために使用される。
上記の段落に従って、さらなる態様では、本発明は下記のものを提供する、
癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異、または
(d)KITにおけるT670I変異、または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療に用いる本明細書で定義される本発明の組合せ、
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療に用いる本明細書で定義される本発明の組合せ、
消化管間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の治療に用いる本発明の組合せ、
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)のすべての化合物、式(I)の1つの化合物、と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えば、c−abl、c−kit、PDGFR(PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含む)およびErbBフェミリーのメンバー(EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4など)、特に、c−abl、c−kit、PDGFR、エフリン受容体ファミリーのメンバー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6を含む)、c−Src、およびJAKファミリーのキナーゼ(TYK2など)から選ばれる変異キナーゼが仲介する疾病の治療に用いる本発明の組合せ、
癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異、または
(d)KITにおけるT670I変異、または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌の治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用、
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用。
消化管間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用、
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)のすべての化合物、式(I)の1つの化合物、と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えば、c−abl、c−kit、PDGFR(PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含む)およびErbBフェミリーのメンバー(EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4など)、特に、c−abl、c−kit、PDGFR、エフリン受容体ファミリーのメンバー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6を含む)、c−Src、およびJAKファミリーのキナーゼ(TYK2など)から選ばれる変異キナーゼが仲介する疾病の治療用薬剤の製造のための本発明の組合せの使用、
癌細胞が、
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)T315Iイマチニブ耐性変異、または
(d)KITにおけるT670I変異、または
(e)PDGFRにおけるT674I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌に罹患している患者を治療する方法であって、前記方法は本発明の組合せを患者に投与することを含む方法、
BCRabl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌の治療方法であって、前記方法は本発明の組合せを治療が必要な患者に投与することを含む方法、
消化管間質性腫瘍(GIST)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、高好酸球症候群および隆起性皮膚線維肉腫の治療方法であって、前記方法は本発明の組合せを治療が必要な患者に投与することを含む方法、
他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)のすべての化合物、式(I)の1つの化合物、と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えば、c−abl、c−kit、PDGFR(PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含む)およびErbBフェミリーのメンバー(EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4など)、特に、c−abl、c−kit、PDGFR、エフリン受容体ファミリーのメンバー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6を含む)、c−Src、およびJAKファミリーのキナーゼ(TYK2など)から選ばれる変異キナーゼが仲介する疾病の治療方法であって、前記方法は本発明の組合せを治療が必要な患者に投与することを含む方法。
さらなる態様では、本発明は、若年性骨髄単球性白血病(JMML)または慢性骨髄単球性白血病(CMML)の治療で用いる本発明の組合せを提供する。
本発明はさらに、真性多血症、本態性血小板増加症または特発性骨髄線維症の治療に用いる本発明の組合せを提供する。
本発明はさらに、巨核球性白血病(巨核球性AML(AML M7)を含む)またはフィラデルフィア染色体陰性CMLまたはイマチニブ耐性CMLの治療に用いる本発明の組合せを提供する。
真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CMLまたはイマチニブ耐性のCMLの治療において本発明の組合せが使用され得る
また、真性多血症;本態性血小板増加症;特発性骨髄線維症;若年性骨髄単球性白血病(JMML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);巨核球性AML(AML M7)を含む巨核球性白血病;フィラデルフィア染色体陰性CMLまたはイマチニブ耐性のCMLの治療方法が提供され、前記治療方法はそのような治療を必要とする患者に本発明の組合せを投与することによる。
本発明はまた、ニロチニブ耐性CMLまたはダサチニブ耐性CMLの治療に用いる本発明の組合せを提供する。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(式(I)の化合物)の利点
式(I)の化合物は従来の化合物に比べて多くの利点を有する。例えば、式(I)の化合物はJak2、T315IablおよびVEGFRキナーゼ(表A参照)などの癌の増殖および維持に関わるキナーゼを含む様々なキナーゼに対するその活性がより強力かつ選択的であり、特にオーロラキナーゼAおよびオーロラキナーゼBに対して増強した選択性および効能を示す。前記化合物が標的とする他のキナーゼの多くは腫瘍形成性のシグナル伝達経路にあり、それらキナーゼ(PDK1、Flt3、VEGFR2)は前記化合物の抗腫瘍作用に積極的に寄与する可能性を有している。さらに、JAK2およびc−ablT315I変異体に対する効能は、グリベック耐性CMLおよび真性多血症を含む白血病や骨髄増殖性疾患に関して潜在的に興味深いものである可能性がある。
表A:生体外でのキナーゼの阻害
さらに、前記化合物が標的とする他のキナーゼは、特に血管新生および甲状腺癌(表B)に関して興味深いものである可能性がある。
表B:生体外での他のキナーゼの阻害
式(I)の化合物はまた、P450酵素(表C)に対して異なる感受性を有している点で従来の化合物に対して有利である。
表C:生体外での発現させたシトクロムP450アイソフォームの阻害
さらに、本発明の組合せで用いる化合物はまた、薬物代謝と薬物速度論的特性に関して向上を示す点で従来の化合物に比べて有利である。特に、前記化合物は減少した血漿タンパク結合を示す。実施例24、62、63および64の化合物の血漿タンパクへの結合は、ラットでは61%、マウスでは82%の範囲であり、試験された種類のすべてにわたって同じように中程度であった。これは、遊離薬物の治療効果が発揮されるように遊離薬物を適切な作用部位に到達させるため、より多くの遊離薬物を体循環中に確保しておくことの利点を示している可能性がある。腫瘍中で薬理作用を発揮するための増加された遊離分画は、向上した有効性をもたらす可能性があり、これにより投与される量の低減を可能する。
本発明の組合せで用いる式(I)の化合物はまた、増殖アッセイおよびクローンアッセイにおいて向上した細胞活性を示し(例えば、実施例16および実施例17に記載のアッセイ)、これより広範囲の固形腫瘍および白血病細胞株(表D)に対する向上した抗癌活性を示す。
表D:腫瘍細胞コロニー形成に対する妨害作用
*:+は、野生型p53の発現を示す;−は、p53の発現が無かったかp53が機能性でなかったことを示す。
式(I)の化合物は減少した毒性を有し、したがってより大きな治療濃度域を有する。初代ヒト乳房上皮細胞を使用した生体外研究では、正常細胞の処理後、腫瘍細胞と比較して、処理後に多核化または死亡した細胞がより少なかった。その代わりに一旦処理を止めれば、細胞周期に再び入る前に可逆的にG2/M停止を受けることが示された。データは、化合物処理は正常細胞と比較して腫瘍細胞に対して異なった効果があることを示す。チェックポイント不全腫瘍細胞では、オーロラキナーゼ阻害を介した、有糸分裂の破壊、細胞質分裂の阻害および紡錘体チェックポイントの迂回により化合物処理が多核細胞化を引き起こす。この多核細胞化が細胞死をもたらすようである。対照的に、化合物処理された正常なチェックポイントコンピテント細胞では、24時間の化合物処理後に、多核化または死亡した細胞はより少なく、その代わりに、より多くの割合の細胞が、一旦化合物が取り除かれれば可逆的にG2/M停止を受け、再び細胞周期に入る。これらの効果の違いは、正常細胞はもし正確な染色体分離が起こらない場合、細胞周期を停止させるために、有糸分裂後のp53依存性チェックポイントなどのチェックポイントを機能させるという事実を反映している可能性がある。腫瘍細胞ではこれらのチェックポイントは不在であり、有糸分裂が進み多核細胞化が起こり得る。
さらに、式(I)の化合物の塩形態は、水溶液において向上した溶解度を示し、よりよい物理化学的特性(例えば、より低いlogD)を示す。
式(I’)の化合物の調製方法
式(I’)の化合物は、当業者に周知の合成方法に従って製造することができる。
前記方法は、WO2005/002552およびWO2006/070195に記載の通りであり、それらの内容は参照により本書に援用される。特に、関連する方法に関係するWO2005/002552の88〜96ページの内容が参照により本書に援用される。特に、関連する方法に関係するWO2006/070195の90〜101ページの内容が参照により本書に援用される。
例えば、式(I’)の化合物は、WO2005/002552に記載のように調製されてもよく、その内容は参照により本書に援用される。したがって「式(I)の化合物」に関する言及は「式(I’)の化合物」に関する言及であると解釈すべきことを除けば、WO2005/002552の88〜96ページの開示は参照により本書に援用される。
式(I”)の化合物の調製方法
式(I”)の化合物は、当業者に周知の合成方法に従って製造することができる。
例えば、式(I”)の化合物は、WO2006/070195に記載のように調製されてもよく、その内容は参照により本書に援用される。特にWO2006/070195の式(I)の化合物の調製に関連するWO2006/070195の90〜101ページの内容が本明細書における式(I”)の化合物に適用できる。したがって、「式(I)の化合物」に関する言及は「式(I”)の化合物」に関する言及であると解釈すべきことを除けば、WO2006/070195の90〜101ページの開示は参照により本書に援用される。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の製造方法
該方法はWO2006/070195に記載の通りであり、その内容は参照により本書に援用される。特に、関連する方法に関係する2006/070195の102〜109ページの内容が参照により本書に援用される。
本発明は、4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニル)−アミドまたは4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(2−アミノ−5−モルホリン−4−イルメチル−フェニル)−アミドおよびそれらの保護された形態を化学中間体として提供する工程を含む本発明の組合せの調製方法を包含する。WO2006/070195の式(XXVII)の具体的な好ましい化学中間体の1つは[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルである。WO2006/070195の式(XXVIII)の特に好ましい化学中間体の1つは[3−(2−アミノ−5−モルホリン−4−イルメチルフェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルである。
3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンまたはその塩の製造方法あるいは1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩の製造方法におけるWO2006/070195の式(XXVIIa)の化合物は下記の工程を含む方法によって製造することができる、
(i)PGが酸で除去可能なアミン保護基すなわちAPGである式(XXIX)の化合物と、
(ii)EDCおよびHOBtなどのカップリング剤の存在下、有機溶媒中で式(XXXI)の化合物とを反応させる工程。
本明細書に記載の方法は任意に結晶形態(例えば、本明細書に定義される結晶形態)を得るために塩を再結晶させるさらなる工程を有する。
精製方法
WO2006/070195と同様であり、その内容は参照により本書に援用される。特に、生成に関するWO2006/070195の109〜111ページの内容が参照により本書に援用される。
再結晶
WO2006/070195と同様であり、その内容は参照により本書に援用される。特に、再結晶に関するWO2006/070195の110〜111ページの内容が参照により本書に援用される。
本発明による使用のための補助化合物
任意の幅広い種類の補助化合物が本発明の組合せにおいて使用されてもよい。補助化合物は抗癌剤であってもよい。
この項において、また本明細書の他の項において、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、式(I’)への言及は、本明細書で定義される式(I)、(I”)ならびにそのサブグループ、好ましい選択肢および例を含む(例えば、式(II”)〜式(VIII”)の化合物)。さらに、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、下記に説明するように、本明細書における式(I’)へのいかなる言及もまた、式(II”)〜(VIII”)および式(I”)に包含されるいかなる他のサブグループに言及するものと解釈される。
好ましくは、本発明の組合せで用いる補助化合物は、以下の類のリストから選択される。
リストA
1.ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤(コルチコステロイド、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよびGNRAを含む)、
2.サイトカインおよびサイトカイン活性化剤、
3.レチノイドおよびレキシノイド、
4.モノクローナル抗体(例えば、細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体)、
5.カンプトテシン化合物および他のトポイソメラーゼI阻害剤、
6.代謝拮抗剤、
7.ビンカアルカロイドおよび他のチューブリン標的化剤、
8.タキサン、
9.エポチロン
10.白金化合物、
11.DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤(アントラサイクリン誘導体を含む)、
12.アルキル化剤(アジリジン、ナイトロジェンマスタードおよびニトロソウレアアルキル化剤を含む)、
13.シグナル伝達阻害剤(PKA/PKB阻害剤およびPKB経路の阻害剤を含む)、
14.CDK阻害剤(補助CDK阻害剤を含む)、
15.COX−2阻害剤、
16.HDAC阻害剤、
17.選択的免疫反応モジュレーター
18.DNAメチル基転移酵素阻害剤、
19.プロテアソーム阻害剤、
20.オーロラ阻害剤(補助オーロラ阻害剤を含む)、
21.Hsp90阻害剤、
22.チェックポイント標的剤、
23.DNA修復阻害剤、
24.Gタンパク質共役受容体阻害剤。
本発明の組合せが1つまたは複数の補助化合物を含む実施形態において、該補助化合物はそれぞれ好ましくはリストA(上記)の類(1)(特に、コルチコステロイド)、(4)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(13)、(17)、(18)、(19)、(23)および(24)から選ばれる。最も好ましくは、1つまたは複数の補助化合物はそれぞれリストA(上記)の類(1)(特にコルチコステロイド)、(4)、(6)、(8)、(10)、(11)、(12)、(13)、(18)、(19)および(24)から選ばれる。
本発明の組合せが2種以上の補助化合物を含む実施形態において、そのときは2種以上の補助化合物はそれぞれ、好ましくは上述のリストAの類(1)〜(24)から選ばれる。
本発明の組合せが2種以上の補助化合物を含む実施形態において、そのときは2種以上の補助化合物はそれぞれ、好ましくは上述のリストAの類(1)特にコルチコステロイド、(2)、(3)、(17)、(22)、(23)および(24)から選択される。
リストB
実施形態によっては、式(I)の化合物と組合せて使用される補助化合物は、以下の類から選択される。
1.ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤(抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよびGNRAを含む)、
2.サイトカインおよびサイトカイン活性化剤、
3.レチノイド、
4.モノクローナル抗体(例えば、細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体)、
5.カンプトテシン化合物および他のトポイソメラーゼI阻害剤、
6.代謝拮抗剤、
7.ビンカアルカロイドおよび他のチューブリン標的化剤、
8.タキサン、
9.エポチロン
10.白金化合物、
11.DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤(アントラサイクリン誘導体を含む)、
12.アルキル化剤(アジリジン、ナイトロジェンマスタードおよびニトロソウレアアルキル化剤を含む)、
13.シグナル伝達阻害剤(PKA/PKB阻害剤およびPKB経路の阻害剤を含む)、
14.CDK阻害剤、
15.COX−2阻害剤、
16.HDAC阻害剤、
17.DNAメチル化酵素阻害剤、
18.プロテアソーム阻害剤、
19.オーロラ阻害剤(補助オーロラ阻害剤を含む)、
20.Hsp90阻害剤、
21.チェックポイント標的剤、
22.前述の類(1)〜(3)の2つまたはそれ以上の組合せ、
23.前述の類(6)、(8)および/または(13)の2つまたはそれ以上の組合せ、
24.前述の類(5)〜(11)および/または(13)の2つまたはそれ以上の組合せ、
25.前述の類(12)および/または(14)〜(18)の2つまたはそれ以上の組合せ、
26.前述の類(1)および(4)〜(18)の2つまたはそれ以上の組合せ、
27.前述の類(1)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)および(17)の2つまたはそれ以上の組合せ、
28.前述の類(1)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)および(12)の2つまたはそれ以上の組合せ、
29.前述の類(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)および(12)の2つまたはそれ以上の組合せ、
30.前述の類(6)、(8)、(9)および(10)の2つまたはそれ以上の組合せ、
31.前述の類(18)および(19)の2つまたはそれ以上の組合せ、
32.前述の類(6)、(7)、(8)、(9)および(10)の2つまたはそれ以上の組合せ。
本発明の組合せが2種以上の補助化合物を含む実施形態において、そのときは2種以上の補助化合物はそれぞれ、好ましくは上述のリストBの類1〜21から選択される。
本明細書における特定の補助化合物に関する言及は、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、そしてより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を包含するように意図される。
上記の各種化合物/化合物類は、これからより詳細に記述し、ここで化合物類の番号はリストA(上記)で使用されたもの対応する。
1.ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤
定義:本明細書で用いる「コルチコステロイド」、「抗アンドロゲン」、「抗エストロゲン」、「抗アンドロゲン剤」および「抗エストロゲン剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、そしてより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、本明細書において記載されるものおよびそのアナログを指す。
生物学的活性:本明細書において記載される1つまたは複数の薬理作用によって作用する、ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤(抗アンドロゲン剤および抗エストロゲン剤を含む)は、適切な抗癌剤として同定されている。「ホルモン療法」なる用語は、ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤に言及する目的で総称として使用される。
技術背景:乳房および前立腺などのホルモンによる増殖制御に感受性のある組織において腫瘍が形成される特定のタイプの癌の治療において、ホルモン療法は重要な役割を果たす。したがって、例えば、エストロゲンは、特定の乳癌の増殖を促進し、テストステロンは、前立腺癌の増殖を促進する。そのような腫瘍の増殖は特異的なホルモンに依存するので、身体の中の特定のホルモンのレベルを増加または減少させることで腫瘍増殖に影響することが可能かどうかを調べるために、多くの研究が行なわれている。ホルモン療法は、ホルモン活性の操作によってこれらのホルモン感受性組織における腫瘍増殖を制御することを試みるものである。
リンパ球前駆細胞またはある種の白血病、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫などの成熟リンパ球に由来する癌はしばしば、プレドニゾロン、プレジソン(predisone)、デキサメタゾンを含むコルチコステロイドによる治療に対する感受性を保持する(成熟リンパ球により示された)。結果として、1つまたは複数のコルチコステロイドによる治療がこれらの疾病の治療にしばしば組み入れられる。したがって、本発明との使用が考えられるものはコルチコステロイドである。
乳癌に関して、腫瘍増殖はエストロゲンにより刺激され、したがって抗エストロゲン剤はこのタイプの癌の治療について提案され広く使用されている。そのような薬剤の最も広く使用されるものの1つは、エストロゲン受容体(ER)に結合するエストラジオールの拮抗型阻害剤であるタモキシフェンである。タモキシフェンは、ERに結合した場合、受容体の立体的な形状の変化を誘導し、DNA上のエストロゲン応答エレメントに対する結合を阻害する。正常な生理学的条件下では、エストロゲン刺激は、形質転換増殖細胞b(TGF−b)(腫瘍細胞増殖のオートクライン阻害剤)の腫瘍細胞の産生を増加させる。タモキシフェン治療の正味の効果は、これらの経路の遮断により、乳癌増殖のオートクライン刺激を減少させることである。さらに、タモキシフェンは、周囲の組織によるインスリン様成長因子(IGF−1)の局所的産生を減少させる:IGF−Iは乳癌細胞に対するパラクライン増殖因子である(ジョーダン(Jordan)およびマーフィー(Murphy)、「エンドクリンリビューズ(Endocr.Rev.)」、1990年、1 1;578〜610)。疾病の管理への他の手法としては、アロマターゼ(エストラジオールの産生に決定的な酵素)の阻害によるエストラジオールの血中濃度を下げることである。アナストラゾール、レトロゾールおよびエキサメスタン(examestane)を含むタモキシフェンおよびアロマターゼ阻害剤は両方とも、アジュバント療法および転移性という環境(例えば、転移性乳癌)において閉経後の女性の乳癌の治療において広く使用される。タモキシフェンはまた、ER陽性腫瘍に罹患した更年期前の女性において使用される。長期的なタモキシフェン治療については、様々な潜在的な副作用(例えば、子宮内膜癌の可能性および血栓塞栓症の発生)がある。アロマターゼ阻害剤は一般にタモキシフェンよりもよく許容されるが、患者はしばしば、筋骨格系疼痛および骨粗鬆症をもたらす著しい骨損失に悩む。
タモキシフェンと広く同様の作用を有する他のエストロゲン受容体アンタゴニスト(または選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM))としては、トレミフェンおよびラロキシフェンが挙げられる。トレミフェンは、化学名が2−(4−[(Z)−4−クロロ−1,2−ジフェニル−1−ブテニル]−フェノキシ)−N,N−ジメチルエチルアミンであり、転移性乳癌の治療のために使用される非ステロイド性のSERMであり、副作用としては火照り、悪心およびめまいが挙げられる。ラロキシフェンは、化学名が[6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]チエン−3−イル]−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]−フェニル]−メタノン塩酸塩であり、乳癌の治療を目的として研究されているベンゾチオフェンSERMであり、副作用としては火照りおよび下肢痙攣が挙げられる。
腫瘍組織中のERの発現を減少させることにより作用する、化学名が7−α−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)−ノニル]エストラ−1,3,5−(10)−トリエン−3,17−ベータ−ジオールであるフルベストラントはしばしばタモキシフェンとアロマターゼ阻害剤による治療に続いて使用される(例えば、進行性乳癌の二次治療として)。副作用としては火照りおよび子宮内膜の刺激が挙げられる。
前立腺癌細胞はほぼ必ずアンドロゲン受容体を過剰発現しており、したがって該疾病の治療では抗アンドロゲンが広く使用される。抗アンドロゲンは、アンドロゲン受容体に結合し、ジヒドロテストステロンの結合を妨げるアンドロゲン受容体アンタゴニストである。ジヒドロテストステロンは、癌性前立腺細胞を含む前立腺細胞の新たな増殖を刺激する。抗アンドロゲンの一例としては、化学名(R,S)−N−(4−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3−(トリフルオロメチル)プロパンアミドと呼ばれるビカルタミドがあり、進行性前立腺癌の治療のために黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログとの組合せにおける使用について承認されており、副作用としては火照り、骨痛、血尿症および胃腸病徴が挙げられる。ジヒドロテストステロンの血中濃度を下げる別の手段は、フルタミドを用いてテストステロンからのジヒドロテストステロンの産生を直接的に阻害することである。
一実施形態では、ホルモン療法剤としては、フルベストラント、トレミフェンおよびラロキシフェンが挙げられる。
ホルモンによる癌治療のさらなる型は、プロゲスチンアナログの使用を含む。プロゲスチンはプロゲステロンの合成型であり、卵巣および子宮内膜の裏打ちによって分泌されるホルモンである。プロゲステロンは、エストロゲンと共に作用して、乳房の発達および月経周期の間の子宮内膜細胞の増殖を促進する。プロゲスチンは、副腎(特に閉経後の女性の代替供給源)のエストロゲンの産生の抑制により、エストロゲン受容体レベルを低下させるか、または腫瘍ホルモン代謝を変化させて作用するであろうと考えられている。
プロゲスチンアナログは子宮癌(例えば、進行性子宮癌)または腎臓癌の管理において使用される。多数の抗エストロゲン治療の選択肢が利用可能であるために、この使用はそれほど一般的ではないが、プロゲスチンアナログはまた進行性乳癌の治療のために使用することができる。プロゲスチンアナログは、ホルモン療法剤として前立腺癌のために時々使用される。プロゲスチンアナログの一例としては、酢酸メゲストロール(別名:酢酸メゲストレル(megestrel))であり、化学名が17α−アセチルオキシ−6−メチルプレグナ−4,6−ジエン−3,20−ジオンであり、下垂体ゴナドトロピン産生の推定上の阻害剤であり、結果としてエストロゲン分泌を減少させる。当該薬剤は、進行性乳癌または進行性子宮内膜癌(すなわち再発性疾患、手術不能疾患または転移性疾患)の待期的療法のために使用され、副作用としては浮腫および血栓塞栓症発作が挙げられる。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:本発明による使用のための特に好ましい抗エストロゲン剤はタモキシフェンである。タモキシフェンは、例えば、商品名ノルバデックス(Nolvadex)としてアストラゼネカ(AstraZeneca)社から市販されており、例えば、英国特許明細書第1064629号および第1354939号に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
さらに他の好ましい抗エストロゲン剤はドロロキシフェンである。フルベストラントは、例えば、商品名ファスロデックス(Faslodex)としてアストラゼネカ社から市販されており、例えば欧州特許明細書第138504号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ラロキシフェンは、例えば、商品名エビスタ(Evista)としてイーライ・リリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company)社から市販されており、例えば米国特許明細書第4418068号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。トレミフェンは、例えば、商品名フェアストン(Fareston)としてシェーリング(Schering)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4696949号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。抗エストロゲン剤ドロロキシフェンは、例えば、米国特許明細書5047431号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよく、本発明に従って使用することもまた可能である。
本発明よる使用のために好ましい抗アンドロゲンはビカルタミドであり、例えば商品名カソデックス(Casodex)としてアストラゼネカ社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第100172号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。本発明による使用のための他の好ましい抗アンドロゲンとしては、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、レトラゾール(letrazole)、アナストラゾール、エキセメスタン、ビカルタミド、ルプロリド(luprolide)、酢酸メゲストロール/メゲストレル、アミノグルテチミド(あるいはアミノグルテタミドとも綴る)およびフルタミドが挙げられる。
本発明よる使用のための他の好ましいホルモン療法剤としては、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、レトラゾール、アナストラゾール、エキセメスタン、ビカルタミド、ルプロリド、酢酸メゲストロール/メゲストレル、アミノグルテチミドおよびベキサロテンが挙げられる。
好ましいプロゲスチンアナログは酢酸メゲストロール/メゲストレルであり、例えば、商品名メゲース(Megace)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol Myers Squibb)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第2891079号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
したがって、本発明の組合せに使用されるこれらの抗癌剤の具体的な実施形態としては以下のものが挙げられる:タモキシフェン;トレミフェン;ラロキシフェン;メドロキシプロゲステロン;メゲストロール/メゲストレル;アミノグルテチミド;レトロゾール;アナストロゾール;エキセメスタン;ゴセレリン;ルプロリド;アバレリクス;フルオキシメストロン(fluoxymestrone);ジエチルスチルベストロール;ケトコナゾール;フルベストラント;フルタミド;ビカルチミド(bicalutimide);ニルタミド;シプロテロンおよびブセレリン。
したがって、抗アンドロゲンおよび抗エストロゲンが、本発明の組合せにおける使用のために検討される。
別の実施形態において、ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストまたはホルモン調節剤は、フルベストラント、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、メゲストロール/メゲストレルおよびフルタミドである。
別の実施形態において、ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストまたはホルモン調節剤は、フルベストラント、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、メゲストロール/メゲストレルおよびベキサロテンである。
一実施形態において、ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤としては、コルチコステロイド、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよびGNRAが挙げられる。別の実施形態において、ホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤としては、抗アンドロゲン、抗エストロゲンおよびGNRAが挙げられる。
薬量:抗アンドロゲンまたは抗エストロゲン剤は、特定の薬剤および治療されている症状に応じて、有利には約1〜100mgの1日投与量で投与される。タモキシフェンは、有利には、5〜50mg、好ましくは1日2回10〜20mg(または1日1回20mg)の用量で経口的に投与され、治療上の効果を達成および維持するのに十分な期間で該療法剤が継続される。
他の好ましい抗エストロゲン剤に関しては、フルベストラントは、有利には毎月250mg注入の形式で投与され(毎月250〜750mgの用量もまた用いられてもよいが);トレミフェンは、有利には、1日1回約60mgの用量で経口的に投与され、治療上の効果を達成および維持するのに十分な期間で該療法剤が継続され;ドロロキシフェンは、有利には、1日1回約20〜100mgの用量で経口的に投与され;ラロキシフェンは、有利には、1日1回約60mgの用量で経口的に投与される。
好ましい抗アンドロゲンであるビカルタミドに関して、これは一般的に1日に50mgの経口投与量で投与される。
好ましいプロゲスチンアナログである酢酸メゲストロール/メゲストレルに関して、これは一般的に1日4回40mgの経口投与量で投与される。
上記の用量は、一般的に例えば治療の1過程あたり、1回、2回またはそれ以上投与されてもよく、例えばそれを毎日あるいは7、14、21または28日ごとに(とりわけ7、14、21または28日ごとに)繰り返してもよい。
アロマターゼ阻害剤
本発明の組合せに用いるホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤のうちで、好ましいものはアロマターゼ阻害剤である。
閉経後の女性における循環エストロゲンの主要な供給源は、副腎のアンドロゲン(アンドロステンジオンおよびテストステロン)のエストロゲン(エストロンおよびエストラジオール)への末梢組織中のアロマターゼ酵素による変換からである。アロマターゼの阻害または不活性化を介するエストロゲン枯渇は、閉経後のいくらかの患者のための、ホルモン依存性乳癌の効果的および選択的な治療である。そのようなホルモン調節剤の例としては、エキセメスタン、アナストロゾール、レトロゾールおよびアミノグルテチミドなどの、アロマターゼ阻害剤または不活性化因子が挙げられる。
エキセメスタン(化学名6−メチレンアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン)は、タモキシフェン療法後に疾患が進行した閉経後の女性における進行性乳癌の治療のために使用され、副作用としては火照りおよび悪心が挙げられる。アナストロゾール(化学名α,α,α’,α’−テトラメチル−5−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1,3−ベンゼンジアセトニトリル)は、ホルモン受容体陽性早期乳癌に罹患した閉経後の女性の補助治療のために、およびホルモン受容体陽性またはホルモン受容体不明の局所的進行性乳癌または転移性乳癌に罹患した閉経後の女性の一次治療のためにも、および閉経後の女性におけるタモキシフェン療法後の疾患進行をともなう進行性乳癌の治療のために使用される。アナストゾールの投与は、通常、胃腸障害、筋骨格系疼痛、発疹および頭痛を含む副作用をもたらす。レトロゾール(化学名4,4’−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチレン)−ジベンゾニトリル)は、ER陽性乳癌のアジュバント療法のために、そしてホルモン受容体陽性またはホルモン受容体不明の局所的進行性乳癌または転移性乳癌に罹患した閉経後の女性の一次治療のために、そして閉経後の女性における抗エストロゲン療法後の疾患進行をともなう進行性乳癌の治療のために使用され、可能性のある副作用としては時折の一時的な血小板減少および肝臓トランスアミナーゼ上昇が挙げられる。
アミノグルテチミド(化学名3−(4−アミノフェニル)−3−エチル−2,6−ピペリジンジオン)は、乳癌の治療のためにもまた使用されるが、副作用は皮疹ならびに血小板減少および白血球減少症(それほど一般的ではない)が生ずる。
好ましいアロマターゼ阻害剤としては、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタンおよびアミノグルテチミドが挙げられる。レトロゾールは、例えば、商品名フェマーラ(Femara)としてノバルティス(Novartis)社から市販されており、例えば米国特許明細書第4978672号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。アナストロゾールは、例えば、商品名アリミデックス(Arimidex)としてアストラゼネカ社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4935437号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。エキセメスタンは、例えば、商品名アロマシン(Aromasin)としてファルマシア社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4978672号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。アミノグルテチミドは、例えば、商品名シタドレン(Cytadren)としてノバルティス社から市販されており、例えば、米国特許明細書第2848455号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。アロマターゼ阻害剤のボロゾールは、例えば、欧州特許明細書第293978号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されよもく、本発明に従って使用することもできる。
好ましいアロマターゼ阻害薬に関して、これらは一般的に1〜1000mgの範囲の1日経口投与量で投与され、例えば、レトロゾールは1日1回約2.5mgの用量;アナストロゾールは1日1回約1mgの用量;エキセメスタンは1日1回約25mgの用量;およびアミノグルテチミドは1日2〜4回250mgの用量である。
特に好ましいのは、本明細書において記載される薬剤、例えば、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタンおよびアミノグルテチミドから選択されるアロマターゼ阻害剤である。
GNRA
本発明の組合せで用いるホルモン、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニストおよびホルモン調節剤のうちで、好ましいものはGNRAクラスの薬剤である。
定義:本明細書では「GNRA」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは、溶媒和物)と共に、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストおよびGnRHアンタゴニスト(以下に記載されるものを含む)を定義するように意図される。
技術背景:ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストは、脳の視床下部から放出された場合、ゴナドトロピンを生ずるように脳下垂体を刺激する。ゴナドトロピンは、精巣のアンドロゲン合成および卵巣のエストロゲン合成を刺激するホルモンである。GnRHアゴニストが初めて投与された場合、該GnRHアゴニストはゴナドトロピン放出の増加を引き起こし得るが、継続的な投与により、GnRHはゴナドトロピン放出を遮断し、したがってアンドロゲンおよびエストロゲンの合成を減少させることになる。GnRHアナログは転移性前立腺癌を治療するために使用される。GnRHアナログは更年期前の女性の転移性乳癌の治療のためにも承認されている。GnRHアナログの例としては、酢酸ゴセレリンおよび酢酸ロイプロリドが挙げられる。これとは対照的に、アベレリクス(aberelix)などのGnRHアンタゴニストは、アゴニスト効果を持たないので、初期のGnRH上昇を引き起こさない。しかしながら、GnRHアンタゴニストは治療指数の幅が狭いために、GnRHアンタゴニストの使用は現在のところGnRHアゴニストおよび抗アンドロゲンなどの他のホルモン療法に耐性のある進行性前立腺癌に限定される。
酢酸ゴセレリンは、LHRHまたはGnRHの合成デカペプチドアナログであり、化学構造はピロ−Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Ser(Bu)−Leu−Arg−Pro−Azgly−NH2アセテートであり、乳癌および前立腺癌および子宮内膜症の治療のために使用され、副作用としては火照り、気管支炎、不整脈、高血圧症、不安および頭痛が挙げられる。酢酸ロイプロリドは、GnRHまたはLHRHの合成ノナペプチドアナログであり、化学名は5−オキソ−L−プロリル−L−ヒスチジル−L−トリプトフィル−L−セリル−L−チロシル−D−ロイシル−L−ロイシル−L−アルギニル−N−エチル−L−プロリンアミドアセテートである。酢酸ロイプロリドは、前立腺癌、子宮内膜症および乳癌の治療のために使用され、副作用は酢酸ゴセレリンの副作用に類似する。
アバレリクスは、合成デカペプチドAla−Phe−Ala−Ser−Tyr−Asn−Leu−Lys−Pro−Alaであり、化学名はN−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−N−メチル−L−チロシル−D−アスパラギニル−L−ロイシル−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリル−D−アラニンアミドである。アバレリクスはロエスキ(R.W.Roeske)、WO9640757に従って調製することができる(1996年、インディアナ大学基金(Indiana Univ. Found.))。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:本発明による使用のために好ましいGnRHアゴニストおよびアンタゴニストとしては、特にゴセレリン、ロイプロリド/ロイポレリン(leuporelin)、トリプトレリン、ブセレリン、アバレリクス、酢酸ゴセレリンおよび酢酸ロイプロリドを含む本明細書において記載されるGNRAのいずれもが挙げられる。特に、ゴセレリンおよびロイプロリドが好ましい。酢酸ゴセレリンは、例えば、商品名ゾラデックス(Zoladex)としてアストラゼネカ社から市販されており、例えば、米国特許明細書第5510460号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。酢酸ロイプロリドは、例えば、商品名リュプロン(Lupron)としてタップ・ファーマシュティカルズ(TAP Pharmaceuticals)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第3914412号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ゴセレリンは商品名ゾラデックスとしてアストラゼネカ社から市販されており、例えば、ICI社の特許公報US4100274またはヘキスト(Hoechst)社の特許公報EP475184中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ロイプロリドは、アメリカにおいては商品名リュプロンとしてタップ・ファーマシュティカルズから、およびヨーロッパにおいては商品名プロスタップ(Prostap)としてワイス(Wyeth)社から市販されており、例えばアボット(Abbott)社の特許公報US4005063中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。トリプトレリンは商品名トレルスター(Trelstar)としてワトソン・ファルマ(Watson Pharma)社から市販されており、例えば、チュレーン(Tulane)社の特許公報US5003011中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ブセレリンは商品名スプレファクト(Suprefact)として市販されており、例えばヘキスト社の特許公報US4024248中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。アバレリクスは商品名プレナキシス(Plenaxis)としてプラエシス・ファーマシューティカルズ(Praecis Pharmaceuticals)社から市販されており、例えばジャン(Jiang)ら、ジャーナルオブメディカルケミストリー(J. Med. Chem.)(2001年)、44(3)、453〜467またはポリペプチド・ラボラトリーズ(Polypeptide Laboratories)社の特許公報WO2003055900記載されるように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
本発明よる使用のための他のGnRHアゴニストおよびGnRHアンタゴニストとしては、オーソ・ファーマシューティカル(Ortho Pharmaceutical)からのヒストレリン、ロシュ(Roche)社からの酢酸ナファレリン、およびシレ・ファーマシューティカルズ(Shire Pharmaceuticals)社からのデスロレリンが挙げられるが、これらに限定されない。
薬量:GnRHアゴニストおよびGnRHアンタゴニストは、有利には、1.8mg〜100mgの用量で(例えば、ゴセレリンについては毎月3.6mgまたは3か月ごとに10.8mg、あるいはロイプロリドについては毎月7.5mg、3か月ごとに22.5mgまたは4か月ごとに30mg)投与される。
好ましいGnRHアナログに関しては、これらは一般的には以下の用量で、すなわち、酢酸ゴセレリンは4週ごとに3.6mg皮下インプラントとして、およびロイプロリドは毎月の7.5mg筋肉内デポーとして投与される。
2.サイトカインおよびサイトカイン活性化剤
定義:「サイトカイン」なる語は技術用語であり、本明細書におけるサイトカインに関する言及は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)に加えて、サイトカインそれ自体を包含するように意図される。「サイトカイン活性化剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)に加えて、内因性サイトカインの産生またはインビボにおけるその活性を(直接または間接的に)誘導、強化、刺激、活性化または促進する任意の薬剤を包含するように意図される。
技術背景:サイトカインは、二次細胞の機能を制御する能力を有する、免疫系の細胞によって主に産生されるタンパク質またはポリペプチドの類である。抗癌療法に関しては、サイトカインは増殖を制御するかまたは癌細胞を直接的に殺し、腫瘍の増殖を制御するために免疫系をより効果的に修飾するために使用される。
インターフェロン(IFN)アルファおよびインターロイキン−2などのサイトカインは、増殖停止または細胞死を誘導する。INF−アルファは、悪性メラノーマ、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞性白血病およびカポジ肉腫の治療に使用される。インターロイキン−2は、単独で、またはIFN−アルファとの組合せのどちらかで、悪性メラノーマおよび腎細胞癌に使用される。
サイトカインは、腫瘍細胞と戦うために免疫細胞を刺激することを含む様々な異なるメカニズムを介して抗腫瘍作用を示す。例えば、T細胞増殖因子であるIL−2は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を促進する。インターフェロンおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)などの他のサイトカインは抗原提示細胞に作用し、鍵となる免疫のエフェクターB細胞およびエフェクターT細胞の活性化を促進する。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:特にインターフェロン(インターフェロン−γおよびインターフェロンαなど)およびインターロイキン(例えば、インターロイキン2)を含む、本明細書において記載されるいずれのサイトカインおよびサイトカイン調節剤も、本発明に適用される可能性がある。インターフェロンα−2b(組換え)は、イントロン(INTRON)(登録商標)Aの商品名でシェリング・プラウ(Schering Plough)社から市販されている。
他の好ましいインターフェロンとしては、ロフェロン(ROFERON)の商品名でロシュ社から入手可能なインターフェロンα−2aが挙げられる。
特に好ましいインターロイキンは、カイロン(Chiron)社から入手可能なプロロイキン(PROLEUKIN)(登録商標)IL−2(アルデスロイキン)である。
薬量:インターフェロンは具体的な兆候に応じたスケジュールでの注射によって投与される。悪性メラノーマのイントロンA治療のためには、1週あたり連続して5日間2000万IU/m2の用量での静脈内点滴として誘導療法を4週間、続いて1週あたり3回の1000万IU/m2の用量での皮下(SC)注射として維持療法を48週間で含むスケジュールが好ましい。非ホジキンリンパ腫のイントロンA治療のためには、アントラサイクリン含有化学療法レジメンと併用して、最大18か月間までの1週あたり3回の500万IUの皮下注射のスケジュールが好ましい。
CMLのためにロフェロンAの推奨される初回用量は、皮下注射または筋肉注射として毎日9MIUの投与である。臨床経験に基づいて、短期の耐性は、投与の第一週の間における毎日3日間の3MIU〜毎日3日間の6MIUから、治療期間の間に毎日9MIUの標的用量まで、徐々にロフェロンAの用量を増加させることにより改善され得る。毛様細胞白血病のためのロフェロンAの導入用量は、16〜24週間、毎日3MIUを皮下注射または筋肉注射として投与されるものである。皮下投与は、血小板減少の患者(血小板数<50000)、または出血のリスクがある患者のために特に提案されるが、これらに限定されない。推奨される維持用量は、3MIUを1週あたり3回(tiw)である。
プロロイキンについては、以下のスケジュールが、転移性腎細胞癌(転移性RCC)または転移性メラノーマに罹患する成人患者を治療するために使用さている(各治療過程は、休止期間によって分割される2つの5日間の治療サイクルからなる):600000IU/kg(0.037mg/kg)用量を、最大で14用量で15分間の静脈内点滴によって8時間ごとに投与する。9日間の休止に続いて、もう1回14用量(耐えられる限り、一過程あたり最大で28用量)でスケジュールを繰り返す。
サイトカイン活性化剤:好ましいサイトカイン活性化剤としては以下のものが挙げられる:(a)中外製薬(Chugai Pharmaceuticals)からのピシバニール(癌治療のためのIFN−ガンマ誘導分子);(b)第一製薬(Daiichi)からのロムルチド(コロニー刺激因子放出の刺激によってサイトカインネットワークを活性化する);(c)科研製薬(Kaken Pharmaceutical)からのシゾフィラン(マイトーゲン刺激された末梢血単核細胞によるIFN−ガンマおよびIL−2の産生を刺激し、子宮頚部腫瘍および肺腫瘍治療において有用である、スエヒロタケから単離されたベータ1−3、ベータ1−6D−グルカン);(d)ローラス・セラピューティクス(Lorus Therapeutics)からのビルリジン(肉腫、メラノーマ、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、肺腫瘍およびカポジ肉腫の治療のための、IL−17合成およびIL−12放出を刺激する、NKアゴニストおよびサイトカイン放出モジュレーター);および(e)非小細胞肺癌、肝細胞癌、メラノーマ、癌腫、肺腫瘍、脳腫瘍および腎腫瘍の治療において有用であるチモシンアルファ1(主としてTh1サイトカインの増産のための免疫反応促進へ向けられる複数の生物学的活性を有する28合成アミノ酸ペプチド)。
3.レチノイドおよびレキシノイド
定義:「レチノイド」なる語は、本明細書において開示された具体的なレチノイドだけでなく、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)もまた包含する広い意味で本明細書で用いる技術用語である。「レキシノイド」なる語は、レチノイドX受容体に特異的に結合する合成薬剤を意味する。
技術背景:トレチノインは、レチノールの内在性代謝物質である。トレチノインは、ヒト骨髄細胞株を含むいくつかの造血系前駆細胞株において最終分化を誘導する。急性前骨髄球性白血病(APL)は、第15染色体と第17染色体との間の特異的な転座と関連しており、レチノイン酸受容体−αは第17染色体に位置する。転座は分化を阻害し発癌をもたらすようであり、トレチノインが高用量で使用された場合、これを克服する可能性がある。トレチノインは、通常、治療の8〜119日の間の寛解までの時間で、APL患者の64〜100%に寛解を誘導する。治療の間の獲得耐性は特に持続的投薬(4〜6か月)で一般的である。
アリトレチノインは、レチノイド受容体のRXRサブファミリーに選択的と考えられる9−cis−レチノイン酸誘導体である。この選択性は、胎児暴露での先天性欠損、皮膚表面および粘膜表面のかぶれまたは骨格異常を含むレチノイド治療の著しい副作用を低減する一方で、治療上の抗腫瘍効果を維持し得る。局所用のアリトレチノインはカポジ肉腫の治療のために米国では承認されている。ベキサロテン(ターグレチン;LGD−1069)(レチノイドX受容体(RXR)に選択的な抗腫瘍レチノイド)の経口製剤およびゲル(局所用)製剤は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の治療のために利用可能である。
US6,127,382、WO01/70668、WO00/68191、WO97/48672、WO97/19052およびWO97/19062(すべてアラガン)は各々、癌を含む様々な過剰増殖性疾患の治療に使用されるレチノイド様活性を有する化合物を記載している。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:本発明による使用のために好ましいレチノイドとしては、特にトレチノイン(オールトランス型レチノイン酸)、アリトレチノインおよびベキサロテンを含む本明細書において開示されるレチノイドのいずれもが挙げられる。トレチノイン(レタクニル(Retacnyl)、アクノテン(Aknoten)、トレチン(Tretin)M)は、商品名ベサノイド(Vesanoid)としてロシュ社から市販されており、例えば、ヴァンドープ(D.A. van Dorp)、アレンス(J.R. Arens)、Rec.Trav.Chim.65、338(1946);ローブソン(C.D. Robeson)ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J. Am. Chem. Soc.)77、4111(1955);マーベット(R. Marbet)、DE2061507;US3746730(1971年、1973年、両方ともホフマン・ラ・ロシュ(Hoffmann-La Roche)社)中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。アリトレチノイン(9−cis−トレチノイン、パンレキシン(Panrexin))は、商品名パンレチン(Panretin)としてリガンド・ファーマシューティカルズ(Ligand Pharmaceuticals)社から市販されており、例えば、ローブソン(C.D.Robeson)ら、ジャーナル・オブ・アメリカンケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)77、4111(1955);マツイ(M. Matsui)ら、ジャーナル・オブ・ビタミノロジー(J. Vitaminol.)4、178(1958);べーム(M.F. Boehm)ら、ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)37、408(1994)中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ベキサロテン(ターグレキシン(Targrexin)、ターグレット(Targret))は、商品名ターグレチンとしてエーザイから市販されており、例えば、べーム(M.F.Boehm)ら、WO9321146(1993年、リガンド・ファーマシューティカルズ);ドーソン(M.L.Dawson)ら、US5466861(1995年、SRI Int;ラ・ホーヤ癌研究所基金(La Jolla Cancer Res.Found.))中に記載されているように、またはそれに類似した類似した方法によって調製されてもよい。
薬量:トレチノインは、有利には、完全寛解後の30日間、または最大90日まで、2つの分割された用量で経口で25mg/m2/日〜45mg/m2/日の用量で投与される。アリトレチノインゲル0.1%は、有利には、皮膚のカポジ肉腫障害へ1日当たり2回の適用によって初期投与される。
ベキサロテンは、有利には、300mg/m2/日で毎日、単一の経口用量として初期投与される。用量は200mg/m2/日に、次に100mg/m2/日に調整されてもよく、または毒性のために必要であれば一時的に中断される。8週間の治療後に腫瘍反応がないならば、そして300mg/m2/日の初回用量が良好な耐容性を示すならば、注意深くモニターしながら用量を400mg/m2/日まで高めてもよい。ベキサロテンゲルは、有利には、第一週の間には最初に一日おきに1回適用される。適用頻度は、個々の障害耐性に従って、毎日1回、次に毎日2回、次に毎日3回、および最終的に毎日4回まで一週間間隔で増加されてもよい。
4.モノクローナル抗体
どのようなモノクローナル抗体(例えば、限定されるものではないが、1つまたは複数の細胞表面抗原に対する)も本発明の組合せで使用されてもよい。抗体特異性は、当業者に周知の様々な技術のいずれかを使用して分析または測定されてもよい。
定義:本明細書で用いる「モノクローナル抗体」なる語は、任意のソースからの抗体を指し、したがって完全ヒト型抗体、およびさらに他の種に由来する構造または特異性を決定する要素を含む抗体を含む(およびそれらは、例えばキメラ抗体またはヒト化抗体と呼ぶことができる)。
技術背景:モノクローナル抗体は高特異性であり、したがって疾患特異的標的に結合して作用することができ、それによって正常細胞を救い、従来の化学療法よりも少ない副作用をもたらすので、モノクローナル抗体の使用は現在、抗癌性化学療法において広く認められている。
様々な癌の治療のための抗体化学療法の標的として研究されてきた細胞の一群は、腫瘍細胞において過剰発現または異常発現されるクラスター分類(CD)分子、例えば腫瘍細胞表面上で(最も顕著には、造血系起源の腫瘍において)過剰発現されるCD20、CD22、CD33およびCD52を含む、細胞表面抗原を有する細胞である。これらのCD標的に対する抗体(抗CD抗体)としては、モノクローナル抗体のリツキシマブ(別名:リツキサマブ)、トシツモマブおよびゲムツズマブ・オゾガミシンが挙げられる。
リツキシマブ/リツキサマブは、再発、治療耐性、低悪性度または濾胞性リンパ腫を含む、B細胞非ホジキンリンパ腫の治療のために広範囲に使用される、マウス/ヒトキメラ抗CD20モノクローナル抗体である。この製品は慢性リンパ性白血病および関節リウマチを含む様々な他の徴候のためにも開発されている。リツキシマブ/リツキサマブの副作用としては、低酸素症、肺浸潤、急性呼吸窮迫症候群、心筋梗塞、心室細動または心原性ショックが挙げられ得る。トシツモマブは、非ホジキンリンパ腫およびリンパ性白血病の治療のために、ヨウ素−131で標識された細胞特異的な抗CD20抗体である。トシツモマブで起こりうる副作用としては、血小板減少および好中球減少を含む。ゲムツズマブ・オゾガミシンは、CD33に対して特異的なヒトモノクローナル抗体に結合された細胞毒性薬(カリケアマイシン)である。カリケアマイシンは、アドリアマイシンよりも1000倍以上強力である非常に強力な抗腫瘍剤である。いったん細胞の内部に放出されたならば、カリケアマイシンはDNAのマイナーグルーブへ配列特異的に結合し、リアレンジメントを受け、フリーラジカルを露出し、二本鎖DNAの切断を引き起こし、アポトーシス(プログラム細胞死)をもたらす。ゲムツズマブ・オゾガミシンは急性骨髄性白血病の二次治療として使用され、起こりうる副作用としては、アナフィラキシーなどの重症の過敏性反応が挙げられ、肝毒性も挙げられる。
アレムツズマブ(ミレニアム・ファーマシューティカルズ(Millennium Pharmaceuticals)、キャンパス(Campath)としても知られる)はCD52に対するヒト化モノクローナル抗体であり、TNF−アルファ、IFN−ガンマおよびIL−6の分泌を誘導し、慢性リンパ性白血病および非ホジキンリンパ腫の治療のために有用である。
好ましい選択肢:本発明による使用のために好ましいモノクローナル抗体としては、アレムツズマブ、CD20、CD22およびCD33を含む抗CD抗体が挙げられる。特に好ましいのは、上記のような抗CD抗体(例えばCD20、CD22、CD33)を含む、細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体である。他の好ましいモノクローナル抗体としてはインターロイキン6(IL−6)を標的とするものが挙げられる。
具体的な実施形態:一実施形態において、モノクローナル抗体は、クラスター分類のCD分子(例えばCD20、CD22、CD33およびCD52)に対する抗体である。別の実施形態では、細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体は、リツキシマブ/リツキサマブ、トシツモマブおよびゲムツズマブ・オゾガミシンから選択される。本発明に従って使用されてもよい他のモノクローナル抗体としては、ベバシズマブが挙げられる。
例示的な製剤:本明細書において記載されるように、本発明による使用のための細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体としては、CD52抗体(例えばアレムツズマブ)および他の抗CD抗体(例えば、CD20、CD22およびCD33)が挙げられる。組合せのうちの個々の構成要素により示されるそれぞれの効果と比較して、例えば、腫瘍細胞増殖に対して有利で有効な効果を示す細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体(例えば、抗CD抗体(例えば、CD20、CD22およびCD33))を含む治療上の組合せが好ましい。
CD52選択性も、特定のリガンドと細胞内放出されるジフテリア毒素(デニロイキンディフィトクス(denileukin difitox);オンタック)との組合せによって達成された。この手法は皮膚T細胞リンパ腫の治療における使用に関して認可されており、他の種類の非ホジキンリンパ腫の治療に関して研究中である。
さらに、癌治療において腫瘍細胞自体以外のストラクチャーを標的とすることも有効であることが示された。この手法は、循環する血管内皮細胞増殖因子に対するモノクローナル抗体であるベバクジマブ(bevacuzimab)を使用して新血管形成を阻害するのに最も効果的である。この手法は広範囲の悪性腫瘍の治療に有用である可能性がある。
細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体(抗CD抗体)の好ましい例としては、リツキシマブ/リツキサマブ、トシツモマブおよびゲムツズマブ・オゾガミシンが挙げられる。リツキシマブ/リツキサマブは、商品名マブセラ(Mabthera)としてFホフマン・ラ・ロシュ社から市販されており、またPCT特許明細書第WO94/11026号中に記載されているように得てもよい。トシツモマブは商品名ベキサール(Bexxar)としてグラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)社から市販されており、また米国特許明細書第5595721中に記載されるように得てもよい。ゲムツズマブ・オゾガミシンは商品名マイロターグ(Mylotarg)としてワイス・リサーチ(Wyeth Research)社から市販されており、また米国特許明細書第5,877,296号中に記載されているように得てもよい。
生物学的活性:モノクローナル抗体(例えば1つまたは複数の細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体)は、適切な抗癌剤として同定されている。抗体は様々なメカニズムを介して効果を奏する。抗体は重要な細胞の増殖因子または受容体を遮断するか、直接アポトーシスを誘導するか、標的細胞に対して結合するか、放射性同位元素および毒素のような細胞毒性負荷を送達することができる。
薬量:抗CD抗体は、例えば、体表面の1平方メートルあたり5〜400mg(mg/m2)の用量で投与されてもよく、特にゲムツズマブ・オゾガミシンは、例えば約9mg/体表面m2の用量で投与されてもよく、リツキシマブ/リツキサマブは、例えば4用量で静脈内点滴として約375mg/m2の用量で週に一度投与されてもよく、トシツモマブの用量は、放射性同位体の適切な送達を確保するため、患者の年齢、体重、性別および症状などの通常の臨床的指標に従って、各患者について個別に量を定めなくてはならない。
これらの用量は、例えば、治療の1過程あたり1回、2回またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば、7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
5.カンプトテシン化合物
定義:本明細書で用いる「カンプトテシン化合物」なる語は、カンプトテシンそれ自体、または上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、本明細書において記載されるカンプトテシンのアナログを指す。
技術背景:カンプトテシン化合物は、中国の樹木カンプトテシン・アクミナタ(Camptothecin acuminata)およびインドの樹木クサミズキ(Nothapodytes foetida)に由来する非水溶性アルカロイドである親化合物カンプトテシンに関連または由来する化合物である。カンプトテシンは、DNA合成に対する強力な阻害活性を有しており、様々な実験系において腫瘍細胞増殖に対する高い活性が示されてきた。しかしながら抗癌治療におけるカンプトテシンの臨床用途は、高い毒性により著しく制限され、カンプトテシンの抗腫瘍の効果の有効性を保持しながらその毒性を減少させようと様々なアナログが開発されている。そのようなアナログの例としては、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。
これらの化合物は、DNAトポイソメラーゼIの特異的阻害剤であることが分かっている。トポイソメラーゼは、真核生物細胞のDNAトポロジーを変化させることができる酵素である。トポイソメラーゼは重要な細胞機能および細胞増殖について重大である。真核生物細胞には、2つの類のトポイソメラーゼ(すなわちタイプI、タイプII)がある。トポイソメラーゼIはおよそ100000の分子量を有する単量体酵素である。当該酵素はDNAに結合して一時的な一本鎖切断を導入し、二重らせんをほどき(またはそれをほどくことを可能にし)、続いてDNA鎖から分離する前に切断をふさぐ。
イリノテカン(すなわち、7−エチル−10−(4−(1−ピペリジノ)−1−ピペリジノ)カルボニルオキシ−(20S)−カンプトテシン)およびその塩酸塩(別名:CPT11)には、向上した有効性、減少された毒性および優れた水溶性が見出されている。イリノテカンは、様々な癌(特に結腸直腸癌)の治療において臨床的有効度を有することが分かっている。他の重要なカンプトテシン化合物は、臨床試験においていくつかの固形腫瘍(特に、卵巣および子宮頸癌ならびに肺小細胞癌、あるいは卵巣癌および非小細胞肺癌)に対する有効性を示すトポテカン(すなわち、(S)−9−ジメチルアミノメチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン)である。
例示的な製剤:注射投与用非経口医薬製剤でカンプトテシン化合物を含むものは、0.9%滅菌生理食塩水の10ml中に、カンプトテシン化合物の水溶性塩(例えばEP0321122、特にその中の実施例中に記載されている化合物)100mgを溶解し、次に溶液を滅菌し、溶液を適切な容器に入れることによって調製することができる。
生物学的活性:本発明の組合せのカンプトテシン化合物は、上記のようにDNAトポイソメラーゼIの特異的阻害剤であり、様々な癌に対する活性を有している。
先行技術文献:WO01/64194(ヤンセン(Janssen))は、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤およびカンプトテシン化合物の組合せを開示している。EP137145(ローヌ・プーラン・ローラー(Rhone Poulenc Rorer)社)は、イリノテカンを含むカンプトテシン化合物を開示している。EP321122(スミスクライン・ビーチャム(SmithKline Beecham)社)は、トポテカンを含むカンプトテシン化合物を開示している。
問題:カンプトテシン化合物はヒトにおいて化学療法剤として広く使用されているが、それらはすべての患者において、またはすべての型の腫瘍に対して治療上効果的なわけではない。したがって腫瘍増殖に対するカンプトテシン化合物の抑制的有効性を増加させ、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるためにカンプトテシン化合物のより低用量の使用のための手段もまた提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のための好ましいカンプトテシン化合物としては、上記のイリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。イリノテカンは、例えば商品名「カンプト(Campto)」としてローヌ・プーラン・ローラー社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第137145号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。トポテカンは、例えば、商品名「ハイカムチン(Hycamtin)」としてスミスクライン・ビーチャム社から市販で入手可能であり、例えば欧州特許番号第321122号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。他のカンプトテシン化合物は、例えば、イリノテカンおよびトポテカンについて上記のものと類似した方法によって、従来の方法で調製されてもよい。
具体的な実施形態:一実施形態において、カンプトテシン化合物はイリノテカンである。別の実施形態では、カンプトテシン化合物は、イリノテカン以外のカンプトテシン化合物、例えば、トポテカンなどのカンプトテシン化合物である。
薬量:カンプトテシン化合物は、有利には、治療の1過程あたり、体表面積1平方メートルあたり、0.1〜400mg(mg/m2)、例えば1〜300mg/m2の用量で、特にイリノテカンについては約100〜350mg/m2の用量で、およびトポテカンについては約1〜2mg/m2の用量で投与される。これらの用量は治療の1過程あたり例えば1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、これを毎日あるいは7、14、21または28日ごと、とりわけ7、14、21または28日ごとに繰り返してもよい。
6.代謝拮抗剤
定義:「抗代謝化合物」および「代謝拮抗剤」なる語は同義語として使用され、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、抗代謝化合物または本明細書で記載されるような抗代謝化合物のアナログを定義する。したがって、本明細書において言及される抗代謝化合物(他には代謝拮抗剤として知られる)は、癌細胞の生理現象および増殖に不可欠な代謝プロセスを妨害する抗癌剤の大きなグループを構成する。そのような化合物としては、DNA合成を阻害するヌクレオシド誘導体(ピリミジンヌクレオシドアナログまたはプリンヌクレオシドアナログのいずれか)、およびチミジル酸シンターゼおよび/またはジヒドロ葉酸還元酵素の阻害剤が挙げられる。
技術背景:代謝拮抗剤(または抗代謝化合物)は、癌細胞の生理現象および増殖に不可欠な代謝プロセスを妨害する抗癌剤の大きなグループを構成する。そのような化合物としては、DNA合成を阻害するヌクレオシド誘導体(ピリミジンヌクレオシドアナログまたはプリンヌクレオシドアナログのいずれか)、およびチミジル酸シンターゼおよび/またはジヒドロ葉酸還元酵素酵素の阻害剤が挙げられる。抗腫瘍のヌクレオシド誘導体は長年様々な癌の治療のために使用されてきた。これらの誘導体の最も古くそして最も広く使用されるものの中に5−フルオロウラシル(5−FU)があり、これは結腸直腸腫瘍、乳房腫瘍、肝腫瘍および頭頸部腫瘍のような多数の癌を治療するために使用されている。
5−FUの細胞傷害効果を促進するために、得られるチミジル酸シンターゼ/5−FU複合剤を安定させるため(これによりその阻害が高まる)ロイコボリンが使用されてきた。しかしながら、様々な要因(例えば、腫瘍耐性、胃腸への影響および血液学的影響を含む毒性、静脈内投与の必要性)から、5−FUの使用は制限される。これらの短所を克服するため様々な手法が採用されてきた。当該手法には、全身毒性の減少による、または腫瘍に到達する活性薬物量を増加させることによってのいずれかで5−FUの生体利用率の低さを克服し、さらに5−FUの治療指数を改善させる提案が含まれる。
5−FUを超える良好な治療上の利点を提供するような化合物の1つはカペシタビン(化学名:[1−(5−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−5−フルオロ−1,2−ジヒドロ−2−オキソ−4−ピリミジニル]−カルバミン酸ペンチルエステル)である。カペシタビンは5−FUのプロドラッグであり、経口服用後に十分に吸収され、腫瘍に対する薬理学的活性のある濃度の5−FUを送達する。カペシタビンは5−FUに比べて潜在的に優れた活性を提供することに加えて、長期投与による経口治療にもまた使用することができる。
ゲムシタビンは、化学名が2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロ−シチジンであり、非小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌および膵臓癌、特に非小細胞肺癌および膵臓癌含む様々な癌の治療において使用されてきたヌクレオシドアナログである。さらなる抗腫瘍ヌクレオシドとしては、シタラビンおよびフルダラビンが挙げられる。化学名が1−β−Dアラビノフラノシルシトシンであるシタラビン(別名:アラ−C)は、急性白血病、慢性骨髄性白血病および赤白血病の治療において有用であることが分かっている。化学名が1−β−Dアラビノフラノシルシトシンであるシタラビン(別名:アラ−C)は、急性骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病(急性転化期)、急性リンパ性白血病および赤白血病の治療において有用であることが見出されている。フルダラビンは、DNA合成阻害剤であり、化学名が9−β−D−アラビノフラノシル−2−フルオロ−アデニンであり、治療耐性のB細胞慢性リンパ性白血病の治療のために使用される。抗癌性化学療法において使用される他の抗葉酸代謝拮抗剤としては、酵素阻害剤のラルチトレキセド、ペメトレキセドおよびメトトレキサートが挙げられる。ラルチトレキセド(化学名N−[5−[N−[(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソ−6−キナゾリニル)−メチル−N−メチルアミノ]−2−テノイル]−L−グルタミン酸)は、葉酸系チミジル酸シンターゼ阻害剤であり、進行性結腸直腸癌の治療において使用される。ペメトレキセド(化学名N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル]−L−グルタミン酸、二ナトリウム塩)は、チミジル酸シンターゼおよびトランスフェラーゼの阻害剤であり、以前に治療された患者における中皮腫および局所的進行性または転移性非小細胞肺癌(SCLC)の治療のために使用される。メトトレキサート(化学名N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]−エチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸)は、ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害を介してDNA複製を阻害することによって細胞分裂を妨げ、結果として細胞死をもたらす代謝拮抗剤であり、急性リンパ性白血病の治療のために、ならびにさらに乳癌、頭頸部の類表皮癌、肺癌(特に肺扁平上皮癌および小細胞肺癌)および進行期の非ホジキンリンパ腫、特に乳癌、頭頸部の類表皮癌および進行期の非ホジキンリンパ腫の治療において使用される。
生物学的活性:本発明の組合せの抗代謝化合物は、上記のような癌細胞の生理現象および増殖に不可欠な代謝プロセスを妨害し、様々な癌に対する活性を有する。
問題:これらの抗癌剤は多数の副作用(特に骨髄抑制、およびいくつかの症例において悪心および下痢)がある。したがって、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、より低用量での使用のための手段を提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のために好ましい抗代謝化合物としては、本明細書において言及される、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、シタラビンおよびフルダラビンなどの抗腫瘍のヌクレオシド、ならびにラリトレキセド(ralitrexed)、ペメトレキセドおよびメトトレキサートなどの酵素阻害剤が挙げられる。したがって本発明による使用のために好ましい抗代謝化合物としては、本明細書において言及される、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、シタラビンおよびフルダラビンを含む抗腫瘍のヌクレオシド誘導体が挙げられる。本発明による使用のために好ましい他の抗代謝化合物としては、ラリトレキセド、ペメトレキセドおよびメトトレキサートを含む酵素阻害剤が挙げられる。
5−フルオロウラシルは広く市販されているか、または例えば、米国特許明細書第2802005号において記載されているように調製されてもよい。ゲムシタビンは、例えば、商品名ジェムザール(Gemzar)としてイーライ・リリー・アンド・カンパニー社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第122707号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。カペシタビンは、例えば、商品名ゼローダ(Xeloda)としてホフマン・ラ・ロシュ社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第698611号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。シタラビンは、例えば、商品名サイトサール(Cytosar)として、ファルマシア・アンド・アップジョン(Pharmacia and Upjohn)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第3116282号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。フルダラビンは、例えば、商品名フルダラ(Fludara)としてシェーリング社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4357324号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ラリトレキセドは、例えば、商品名トミュデックス(Tomudex)としてアストラゼネカ社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第239632号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ペメトレキセドは、例えば、商品名アリムタ(Alimta)としてイーライ・リリー・アンド・カンパニー社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第432677号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。メトトレキサートは、例えば、商品名メトトレキサート−レダリー(Methotrexate-Lederle)としてレダリー・ラボラトリーズ(Lederle Laboraories)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第2512572号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。本発明の組合せで用いる他の代謝拮抗剤としては、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、クラドリビン、2’−デオキシコフォルマイシンおよびヒドロキシウ
レアが挙げられる。
具体的な実施形態:一実施形態では、抗代謝化合物はゲムシタビンである。別の実施形態では、抗代謝化合物は、5−フルオロウラシルまたはフルダラビン以外の抗代謝化合物、例えば、ゲムシタビン、カペシタビン、シタラビン、ラリトレキセド、ペメトレキセドまたはメトトレキサートなどの抗代謝化合物である。
薬量:代謝拮抗剤化合物は、上述の要因に応じた用量で投与されることになる。具体的な好ましい代謝拮抗剤の用量の例を具体例として以下に示す。抗腫瘍ヌクレオシドに関して、有利には、体表面積1平方メートルあたり10〜2500mg(mg/m2)、例えば700〜1500mg/m2、特に5−FUについては200〜500mg/m2、ゲムシタビンについては800〜1200mg/m2、カペシタビンについては1000〜1200mg/m2、シタラビンについては100〜200mg/m2、およびフルダラビンについては10〜50mg/m2の1日投与量で投与される。
以下の酵素阻害剤に関して、可能な用量の例を示す。ラルチトレキセドは約3mg/m2の用量で、ペメトレキセドは500mg/m2の用量で、およびメトトレキサートは30〜40mg/m2の用量で投与することができる。
上述の用量は、一般的に治療の1過程あたり例えば1回、2回、それ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
7.ビンカアルカロイド
定義:本明細書で用いる「ビンカアルカロイド」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、ビンカアルカロイド化合物または本明細書において記載されるビンカアルカロイド化合物のアナログを指す。
技術背景:本発明の組合せで用いるビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウ(ビンカ・ロセア(Vinca rosea))の抽出物に関連しているか、またはそれらに由来する抗腫瘍のビンカアルカロイドである。これらの化合物の中で、ビンブラスチンおよびビンクリスチンは、白血病、リンパ腫および精巣癌の治療のために重要な臨床的薬剤であり、ビノレルビンは肺癌および乳癌に対する活性を有する。
生物学的活性:本発明の組合せのうちのビンカアルカロイド化合物は、チューブリン標的化剤であり、様々な癌に対する活性を有する。
問題:ビンカアルカロイドによる治療は著しい毒性を伴う。例えば、ビンブラスチンは、薬剤投与後7〜10日で最下点(ナディア)に達する白血球減少症を引き起こし、その後に7日以内に回復が続いて起こるが、一方ビンクリスチンではいくつかの神経学的な毒性(例えば、肢のしびれおよび震え、深部腱反射の喪失、ならびに遠位四肢筋肉組織の衰弱)を示す。ビノレルビンはある程度の毒性を果粒球減少の形態で有するが、緩やかな血小板減少および他のビンカアルカロイドよりも少ない神経毒性のみがある。したがって、腫瘍増殖に対する抗腫瘍ビンカアルカロイドの抑制的有効性を増加させ、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、抗腫瘍ビンカアルカロイドのより低用量の使用のための手段もまた提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のための好ましい抗腫瘍ビンカアルカロイドとしては、ビンデシン、ビンベシル(vinvesir)、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが挙げられる。本発明による使用のための特に好ましい抗腫瘍ビンカアルカロイドとしては、上述のビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが挙げられる。ビンブラスチンは、商品名ベルバン(Velban)としてイーライ・リリー社から、例えば、注射用硫酸塩として市販されており、例えば、ドイツ特許明細書第2124023号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ビンクリスチンは、商品名オンコビン(Oncovin)としてイーライ・リリー社から例えば注射用硫酸塩として市販されており、例えば、上記のドイツ特許明細書第2124023号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ビンクリスチンは名称オンコ(Onco)−TCS(商標)としてリポソーム製剤としてもまた入手可能である。ビノレルビンは、例えば、商品名ナベルビン(Navelbine)としてグラクソ・ウエルカム(Glaxo Wellcome)社から注射用酒石酸塩として市販されており、例えば、米国特許明細書第4307100号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。他の抗腫瘍のビンカアルカロイドは従来の方法で、例えば、ビノブラスチン(vinoblastine)、ビンクリスチンおよびビノレルビンについて上記のものと類似した方法によって調製されてもよい。
他の好ましいビンカアルカロイドはビンデシンである。ビンデシンはカサランサス(catharanthus)属由来の二量体アルカロイドのビンブラスチンの合成誘導体であり、商品名エルディシン(Eldisine)としてリリー(Lilly)社、および商品名フィルデシン(Fildesin)として塩野義製薬(Shionogi)から入手可能である。ビンデシンの合成の詳細は、リリー社の特許DE2415980(1974年)中に、およびバーネット(C. J. Burnett)ら、ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)21、88(1978年)によって記載されている。
具体的な実施形態:一実施形態においてビンカアルカロイド化合物は、ビノブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンから選ばれる。別の実施形態では、ビンカアルカロイド化合物はビノブラスチンである。
薬量:抗腫瘍のビンカアルカロイドは、有利には、治療の1過程あたり、体表面積1平方メートルあたり2〜30mg(mg/m2)の用量で、特にビンブラスチンについては約3〜12mg/m2の用量で、ビンクリスチンについては約1〜2mg/m2の用量で、およびビノレルビンについては約10〜30mg/m2の用量で投与される。これらの用量は、治療の1過程あたり、例えば1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば1、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
8.タキサン(タキソイド)
定義:本明細書で用いる「タキサン化合物」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくは塩または互変異性体またはそのN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、タキサン化合物または本明細書において記載されるタキサン化合物のアナログを指す。
技術背景:タキサンはタキサン環系を有する化合物の類であり、イチイ(イチイ属(Taxus))樹木の特定の種からの抽出物に関連または由来する。これら化合物は、腫瘍細胞増殖に対する活性を有することが見出され、この類の特定の化合物は病院において様々な癌の治療のために使用されてきた。したがって、例えば、パクリタキセルは、セイヨウイチイ(タクサス・ブレビホリア(Taxus brevifolia))の樹皮から単離されたジテルペンであり、10−アセチルバクシン(acetylbacctin)(イチイ針葉および小枝から得られた前駆物質)からの部分合成、または全合成によって産生することができる、ホールトン(Holton)ら、ジャーナル・オブ・アメリカンケミカルソサエティー(J. Am. Chem. Soc.)116;1597〜1601(1994年)およびニコラウ(Nicholau)ら、ネイチャー(Nature)367:630(1994年)を参照。パクリタキセルは抗新生物活性を示し、より最近では、パクリタキセルの抗腫瘍の活性は微小管重合の促進に起因することが証明されている(クマール(Kumar N. J.)、バイオロジカルケミストリ−(Biol. Chem.)256:1035〜1041(1981);ロウィンスキー(Rowinsky)ら、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J. Natl. Cancer Inst..)82:1247〜1259(1990年);およびシフ(Schiff)ら、ネイチャー(Nature)277:655〜667(1979年))。パクリタキセルは、臨床試験でいくつかのヒト腫瘍における有効性が現在実証されている(マクガイア(McGuire)ら、アメリカ内科学会誌(Ann.Int.Med.)、111:273〜279(1989年);ホームズ(Holmes)ら、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J. Natl. Cancer Inst.)83:1797〜1805(1991年);コーン(Kohn)ら、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J. Natl. Cancer Inst..)86:18〜24(1994年);およびコーン(Kohn)ら、米国臨床腫瘍学会(American Society for Clinical Oncology、12(1993年))。パクリタキセルは、卵巣癌、乳癌および肺癌の治療のために使用され、特に、例えば卵巣癌およびさらに乳癌の治療のために使用されている。
より最近では、アルブミンと複合体化されたパクリタキセルのナノモル製剤は、パクリタキセルのみと少なくとも同じくらい有効であり、骨髄抑制的ではないことが示されている。(APP;アブラキサン)。パクリタキセルのグルタミン酸とのm複合体(mconjugates)もまた開発中である。
病院で用いられている他のタキサン化合物は、進行性乳癌の治療において特定の有効性を有することが示されてきたドセタキセルである。ドセタキセルは、賦形剤系中でパクリタキセルよりも高い溶解度を示し、したがってこれにより医薬組成物中での扱い易さおよび使い易さが増す。
生物学的活性:本発明の組合せのタキサン化合物はチューブリン標的化剤であり、様々な癌に対する活性を有する。
問題:タキサンの臨床的な使用は、タキサンの使用に関連した副作用を許容できない多くの患者が存在することから、治療指数の幅が狭いことを実証した。したがって、腫瘍増殖に対するタキサン化合物の抑制的有効性を増加させ、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、タキサン化合物のより低用量の使用のための手段もまた提供する必要がある。水溶液中でのさらに高い溶解度を有するタキサンの開発もまた望ましいだろう。
好ましい選択肢:本発明による使用のための好ましいタキサン化合物としては、本明細書において言及されるパクリタキセルアブラキサンまたはドセタキセルが挙げられる。パクリタキセルは、例えばブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から商品名タキソール(Taxol)として市販されており、ドセタキセルは、サノフィ・アベンティス社(以前はローヌ・プーラン・ローラー社)から商品名タキソテール(Taxotere)として市販されている。双方の化合物および他のタキサン化合物は従来の方法、例えば、EP253738、EP253739およびWO92/09589中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
具体的な実施形態:一実施形態において、タキサン化合物はパクリタキセルである。別の実施形態では、タキサン化合物はドセタキセルである。
薬量:タキサン化合物は、有利には、治療の1過程あたり、体表面積1平方メートルあたり50〜400mg(mg/m2)、例えば75〜250mg/m2の用量で、特にパクリタキセルについては約175〜250mg/m2の用量で、およびドセタキセルについては約75〜150mg/m2の用量で投与される。これらの用量は、治療の1過程あたり例えば1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
9.エポチロン
定義:本明細書では「エポチロン」なる語は、パクリタキセルと同様の作用機序を有するが、前臨床モデルにおいて耐タキサン環境中で活性の潜在的利点を有する細胞毒性マクロライドの類を定義するために使用される。エポチロンであるイクサベピロン、パツピロン(patupilone)、BMS−310705、KOS−862およびZK−EPOは癌治療に関する早期臨床試験が行われている。パツピロンによる初期研究では下痢が用量規定的に起こることが示されたが、第1相試験ではエポチロンの用量規定毒性は一般に神経毒性と好中球減少であることが示された。イクサベピロンにより誘導されたニューロパチーはスケジュール依存性である可能性がある。タキサン耐性の転移性乳癌における反応率は比較的低いが、イクサベピロンおよびパツピロンはホルモン耐性の転移性前立腺癌においておよびタキサン耐性の卵巣癌で有望な有効性を示した。
技術背景:エポチロンAおよびBはもともと粘液細菌Sorangium cellulosumの抗菌発酵産物として単離された。その後すぐに、これらの薬剤は微小管を安定させ核分裂停止を誘導することが実証された。これらの薬剤の細胞毒性活性はタキサンの細胞毒性活性と同様のメカニズムに依存するが、エポチロンは2つの鍵となる利点を有する。第1に、これらの薬剤は多剤耐性ポンプP−糖タンパク質に対する基質ではない。第2に、これらの薬剤は、産生(細菌起源のために)そして操作の両方が容易である。これらの薬剤の分子およびそれらアナログの完全なまたは部分的な化学合成は、修飾を可能にしてこれらの有効性を増強する(マニ(Mani)ら、抗癌剤(Anticancer Drugs)2004年、15(6):553−8)。いくつかのエポチロンまたはエポチロン誘導体は、細胞株および腫瘍異種移植片に対して効果的であることが示されており、現在臨床試験中である(グッディン(Goodin)ら、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J. Clin. Oncol.)2004年、22(10):2015−25)。思いがけない微小管安定化剤の同定源は海産生物であった。ラウリマリド(laulimalide)およびイソラウリマリド(isolaulimalide)は、P−糖タンパク質を発現する細胞株に対してでさえも強いパクリタキセル様活性を有する海産海綿Cacospongia mycofijiensisの天然産物である。両方の点で類似したエレウテロビン(eleutherobin)はエレウテロビア(Eleutherobia)種の軟質サンゴの産物である。
生物学的活性:微小管の形成は、ヒト細胞中に存在するα−チューブリンおよびβ−チューブリン両方の複数のアイソフォームを備えたヘテロ二量体性α/β−チューブリンサブユニットの重合を伴う。完全な微小管機能は、紡錘体の形成および機能に必要であり、チューブリンサブユニットまたは重合された微小管のいずれかと結合する薬剤で処理された細胞は、紡錘体形成における変化、ならびにアポトーシスの誘導に関連する細胞周期G2/M期での停止を示す。微小管を標的にする化合物は、様々な植物種および海産種による微小管標的性化合物の収斂進化により例示される強力な細胞毒性剤である。現在の臨床開発における3種のエポチロン(エポチロンB、アザ−エポチロンBおよびデゾキシエポチロン)に関する公開済みの研究は、これらの化合物が細胞培養モデルおよび異種移植片において広範囲の抗腫瘍活性を有するということを示す。さらに、エポチロンは、細胞培養研究においてパクリタキセルより一般に細胞毒性が高く、IC50値は様々な腫瘍細胞株においてナノモル未満または低ナノモル範囲である(ボラグ(Bollag)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Res)55:2325−2333、1995年;リー(Lee)ら、クリニカルキャンサーリサーチ(Clin Cancer Res)7:1429−1437、2001年;チヨウ(Chou)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci)米国、95:9642−9647、1998年;ニューマン(Newman)ら、キャンサーケモセラピー・アンド・ファーマコロジー(Cancer Chemother Pharmacol)48:319−326、2001年)。前臨床試験ではまたエポチロンとタキサンとの間で薬剤耐性メカニズムに関して重要な違いが示された。特に、P−糖タンパク質の過剰発現は、細胞培養モデル中のエポチロンB、アザ−エポチロンBおよびデゾキシエポチロンの細胞毒性に対する影響は少ない。P−糖タンパク質を過剰発現する細胞株でのエポチロンB、アザ−エポチロンBおよびデゾキシエポチロンBの細胞毒性の比較は、デゾキシエポチロンBは最も影響されないが、アザ−エポチロンBはP−糖タンパク質の発現により最も影響を受けるということを示唆する。しかしながら注目すべきことは、P−糖タンパク質を過剰発現する細胞株中でのこれらの化合物のIC50値間の差は、これらの細胞株中でのこれらIC50値とパクリタキセルのIC50値との間の差と比較して小さいということである。タキサンに対する臨床的耐性におけるP−糖タンパク質発現の重要性は依然として不明確であるが、これらの結果は、高レベルのP−糖タンパク質発現に特徴付けられる悪性腫瘍を有する患者ではエポチロンはタキサンより活性がある可能性があることを示唆する。生体内研究では、様々なスケジュールを使用して、パクリタキセル感受性およびパクリタキセル耐性の腫瘍モデルにおいてエポチロンは活性があることが示されている。間欠的に毎日のまたは毎週のスケジュールを使用してマウスに静脈内投与した場合、アザ−エポチロンBは卵巣、結腸、および乳房異種移植において高い活性があり、パクリタキセル耐性の卵巣異種移植片モデル(Pat−7)において治癒をもたらす。特に、パクリタキセルとは異なり、アザ−エポチロンBは臨床前モデルで経口投与された場合に効果的である。この現象は腸粘膜におけるP−糖タンパク質の発現に関連する可能性が高く、その結果エポチロンではなくパクリタキセルの低吸収をもたらす。
問題:エポチロンに関して感覚性ニューロパチーおよび骨髄抑制が文書に記載されている。
好ましい選択肢:現存する構造活性データはエポチロンと微小管との間の相互作用に対するいくつかの洞察を提供する。数グループからの結果によると、C12−13エポキシドにおけるまたはその近傍での修飾が微小管安定化活性に影響を与え得ることを示す(ワートマン(Wartmann)およびアルトマン(Altmann)、カレントメディシナルケミストリー−アンチキャンサーエージェント(Curr Med Chem Anti-Canc Agents)2:123−148、2002年)。例えば、メチル基がエポチロンAのC12位に付加すると、エポチロンBになり、これは生体外チューブリン重合の誘導においてエポチロンAまたはパクリタキセルより約2倍も強力である(コワルスキー(Kowalski)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)272:2534−2541、1997年;ニコラウ(Nicolaou)ら、ネイチャー387:268−272、1997年、アブストラクト428)。さらに、デゾキシエポチロンB(別名:エポチロンDまたはKOS−862)はC12−13エポキシドを欠き、エポチロンAまたはBより生体外においてより強力な微小管安定剤であるので、C12−13におけるエポキシドが微小管結合に必要ではないことは明らかである。エポチロンの他の領域を修飾することの効果に関する入手可能なデータは少ない。C9−C12領域を改変させることにより(分子モデリングに基づいて)微小管結合を改善する試みにもかかわらず、この部分における改変は細胞毒性活性の喪失をもたらした。対照的に、エポチロンBのラクトン中の酸素をラクタムで置換(アザ−エポチロンB、別名:BMS−247550)することは、微小管重合活性または細胞毒性を損なわない。様々な他のエポチロンアナログが合成されているが、注目すべきは微小管安定化活性を高めることが常に細胞毒性の増加をもたらすとは限らないということである、これは細胞内蓄積および代謝安定性などの他の変数の重要性のためと推測される(ワートマン(Wartmann)およびアルトマン(Altmann)、カレントメディシナルケミストリー−アンチキャンサーエージェント(Curr Med Chem Anti-Canc Agents)2:123−148、2002年)。実際、デゾキシエポチロンBのC12位のメチル基をプロパノール基で置換することは、白血病細胞株CCRF−CEMに対するデゾキシエポチロンBと同程度に効果的な化合物をもたらすが、P−糖タンパク質を過剰発現するサブ株に対しては活性が著しく少ない(IC50は、デゾキシエポチロンBについて17nmol/Lであり、プロパノール誘導体については167nmol/Lである)(チヨウ(Chou)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci)95:9642−9647、1998年)。自然発生するエポチロンのさらなる修飾(エポチロンBのC−21置換誘導体であるBMS−310705など)は溶解度を改善するために行われている(リー(Lee)ら、米国癌学会会報(Proc Am Assoc Cancer Res)43:a3928、2002年)。
具体的な実施形態:一実施形態では、エポチロン化合物はBMS−247550である。別の実施形態では、エポチロン化合物はデゾキシエポチロンであり、また別の実施形態では、エポチロン化合物はBMS−310705である。
薬量:BMS−247550は、21日ごとに3時間にわたって40mg/m2、または3週ごとに5日間毎日1時間にわたって6mg/m2の量で投与される。単回投与で3週ごとのスケジュールに従う最初の患者18人において粘膜炎および好中球減少が頻発したため、投与量を32mg/m2に減少させた。EPO906は、1試行において毎週2.5mg/m2で3週間その後に1週間の休薬期間、または3週ごとに6mg/m2を一度の用量で投与される。KOS−862は、3週ごとの単回投与、3週ごとに1日量の3倍、3週ごとに一定割合の用量、および1週量を3週間と1週間の休薬期間の投薬計画が行われる。
10.白金化合物
定義:本明細書で用いる「白金化合物」なる語は、白金配位化合物を含む、腫瘍細胞増殖を阻害するいずれの白金化合物も指し、化合物は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、イオン形態の白金および本明細書で記載されるような白金化合物のアナログを提供する。
技術背景:癌の化学療法治療において、シスプラチン(cis−ジアミノジクロロ白金(II))は、様々なヒト固形悪性腫瘍(例えば、精巣癌、卵巣癌、頭頸部癌、膀胱癌、食道癌、肺癌)の治療において長年結果よく使用されてきた。
より最近では、他のジアミノ−白金錯体(例えば、カルボプラチン(ジアミノ(1,1−シクロブタン−ジカルボキシラト)白金(II))もまた様々なヒト固形悪性腫瘍の治療において化学療法剤としての有効性が示されており、カルボプラチンは卵巣癌および肺小細胞癌の治療、とりわけ卵巣癌の治療について承認されている。さらなる抗腫瘍白金化合物は、化学名が(1,2−ジアミノシクロヘキサン)オキサラト−白金(II)であるオキサリプラチン(L−OHP)(第3世代のジアミノ−シクロヘキサン白金系の細胞毒性薬)である。オキサリプラチンは、シスプラチンと比較して癌の前臨床モデルにおける腎毒性の欠如およびより高い有効性に基づいて、例えば、転移性結腸直腸癌の治療のために使用される。オキサリプラチンは5−FUと組合せて転移性結腸直腸癌の治療に使用され、上部消化管癌の治療に関し研究中である。経口白金誘導体は前立腺癌の治療に関し研究中である。
生物学的活性:本発明の組合せの白金化合物は様々な癌に対する活性を有する。
問題:シスプラチンおよび他の白金化合物はヒトにおける化学療法剤として広く使用されているが、それらはすべての患者においてまたはすべての型の腫瘍に対して治療上効果的なわけではない。さらに、腎臓障害、骨髄抑制およびニューロパチーなどの毒性の問題を引き起こし得る比較的高い投与量レベルでそのような化合物を投与する必要がある。さらに、そして特にシスプラチンでは、当該化合物は、白血球減少、貧血および血小板減少に加えて、様々な程度の悪心および嘔吐を患者にもたらす。したがって有効性を増加させ、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、より低用量の使用のための手段もまた提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のための好ましい白金化合物としては、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンが挙げられる。他の白金化合物としては、クロロ(ジエチレンジアミノ)−白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミノ)−白金(II)、スピロプラチン、イプロプラチン、ジアミノ(2−エチルマロナト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II)、(4−カルボキシフタロ)−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−(イソシトラト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−cis−(ピルバト)白金(II)、オンナプラチン(onnaplatin)、およびテトラプラチンが挙げられる。シスプラチンは、水、滅菌生理食塩水または他の適切な賦形剤による構成用粉末として、例えば、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から商品名プラチノール(Platinol)として市販されている。シスプラチンは、例えば、カウフマン(G. B. Kauffman)およびコーワン(D. O. Cowan)、「無機合成(Inorg. Synth.)」7、239(1963年)によって記載されるように、またはそれに類似した方法によってもまた調製されてもよい。カルボプラチンは、例えば、商品名パラプラチン(Paraplatin)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4140707号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。オキサリプラチンは、例えば、商品名エロキサチン(Eloxatin)としてサノフィ・サンテラボ(Sanofi-Synthelabo)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4169846号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。他の白金化合物およびそれらの医薬組成物は、市販されており、かつ/または従来の技術によって調製することができる。
具体的な実施形態:一実施形態において、白金化合物は、クロロ(ジエチレンジアミノ)−白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミノ)−白金(II)、スピロプラチン、イプロプラチン、ジアミノ(2−エチルマロナト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II)、(4−カルボキシフタロ)−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−(イソシトラト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−cis−(ピルバト)白金(II)、オンナプラチン、テトラプラチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選ばれる。別の実施形態では、白金化合物はシスプラチン以外の白金化合物、例えば、クロロ(ジエチレンジアミノ)−白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミノ)−白金(II)、スピロプラチン、イプロプラチン、ジアミノ(2−エチルマロナト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II)、(4−カルボキシフタロ)−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−(イソシトラト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−cis−(ピルバト)白金(II)、オンナプラチン、テトラプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンなどの白金化合物であり、好ましくはカルボプラチンおよびオキサリプラチンから選ばれる。
薬量:白金配位化合物は、有利には、体表面積1平方メートルあたり1〜500mg(mg/m2)、例えば50〜400mg/m2または500mg/m2(例えば、50〜400mg/m2)、特にシスプラチンについては約75mg/m2の用量で、カルボプラチンについては約300〜500mg/m2(例えば、300mg/m2)の用量で、およびオキサリプラチンについては約50〜100mg/m2の用量で投与される。これらの用量は、治療の1過程あたり例えば1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、例えばそれは7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
11.トポイソメラーゼ2阻害剤
定義:本明細書で用いる「トポイソメラーゼ2阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、トポイソメラーゼ2阻害剤または上記のようなトポイソメラーゼ2阻害剤のアナログを指す。
技術背景:抗癌剤の重要な類は、DNA転写および翻訳の間に蓄積する緊張を解放するために二本鎖切断を誘導する酵素トポイソメラーゼ2の阻害剤からなる。したがってこの酵素の機能を阻害する化合物は、細胞毒性であり抗癌剤として有用である。
開発されており癌化学療法で用いるトポイソメラーゼ2阻害剤の中には、ポドフィロトキシンがある。当該薬剤は、DNAトポイソメラーゼ2との相互作用によるDNA鎖切断の誘導またはフリーラジカルの形成を含む作用機序によって作用する。ポドフィロトキシン(マンドレーク植物から抽出される)は、小児白血病、小細胞肺癌、精巣腫瘍、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を含むいくつかのヒト新生物において有意な治療上の活性を示す、2つの配糖体が開発されている親化合物である。ポドフィロトキシンは、小児白血病、小細胞肺癌、精巣腫瘍、ホジキン病および大細胞型リンパ腫において活性を有する。これらの誘導体は、化学名が4’−デメチルエピポドフィロトキシン9−[4,6−O−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]であるエトポシド(VP−16)、および化学名が4’−デメチルエピポドフィロトキシン9−[4,6−O−(R)−2−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]であるテニポシド(VM−26)である。
しかしながらエトポシドおよびテニポシドの両方には、特定の毒性の副作用、特に骨髄抑制がある。他の重要な類のトポイソメラーゼ2阻害剤は、重要な抗腫瘍剤であり、グリコシド結合によって結合される希な糖(ダウノサミン)を持ったテトラサイクリン環構造を有することによって特徴づけられる、真菌のストレプトミセスピューティクス変種カエシウス(Streptomyces peuticus var. caesius)から得られる抗生物質およびそれらの誘導体を含むアントラサイクリン誘導体である。これらの化合物の中で、最も広く使用されるものとしては、ダウノルビシン(化学名7−(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−lyxo−へキソシルオキシ(hexosyloxy))−9−アセチル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,9,11−トリヒドロキシ−4−メトキシ−5,12−ナフタセンキノン)、ドキソルビシン(化学名10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシルアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)およびイダルビシン(ザベドス(登録商標))(化学名9−アセチル−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−lyxo−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,9,11−トリヒドロキシ−5,12−ナフタセンジオン)であるが挙げられる。
ダウノルビシンおよびイダルビシンは主として急性白血病の治療のために使用されてきたが、ドキソルビシンは様々な固形腫瘍(特に乳癌)に対して広く試験されている。癌化学療法において有用である別のアントラサイクリン誘導体はエピルビシンである。エピルビシン(化学名(8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−アラビノ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)は、肝臓中のウリジン二リン酸−グルクロノシルトランスフェラーゼによるグルクロン酸化に関与する異化代謝経路を有するドキソルビシンアナログであり(ドキソルビシンとは異なり)、これはより短い半減期および減少した心毒性の原因であると考えられる。この化合物は、子宮頸癌、子宮内膜癌、進行性乳癌および膀胱癌を含む様々な癌の治療のために使用されるが、骨髄抑制および心毒性の副作用がある。後者の副作用は、一般的により高蓄積量で深刻な心筋症を示すアントラサイクリン誘導体に典型的である。さらなるタイプのトポイソメラーゼ2阻害剤は、ミトキサントロン(化学名1,4−ジヒドロキシ−5,8−ビス[[2−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エチル]アミノ]−9,10−アントラセンジオンを有する)によって代表され、多発性硬化症、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、乳房腫瘍、前立腺腫瘍および肝腫瘍の治療のために使用される。他のものとしては、ロソキサントロンおよびアクチノマイシンDが挙げられる(後者の薬剤の別名はダクチノマイシンおよびコスメゲンリオバック(Cosmegen Lyovac)(登録商標))。
ミトキサントロンの投与からの副作用としては、骨髄抑制、悪心、嘔吐、口内炎および脱毛が挙げられる。
生物学的活性:本発明の組合せのトポイソメラーゼ2阻害剤は上記のような様々な癌に対して活性を有する。
問題:上述のように、この類の細胞毒性化合物は副作用に関連している。したがって、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、より低用量の使用のための手段を提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のための好ましいトポイソメラーゼ2阻害剤化合物としては、本明細書で定義されるような、アントラサイクリン誘導体、ミトキサントロンおよびポドフィロトキシン誘導体が挙げられる。
本発明による使用のための好ましい抗腫瘍アントラサイクリン誘導体としては、上述の、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシンおよびエピルビシンが挙げられる。ダウノルビシンは、例えば、商品名セルビジン(Cerubidine)としてベッドフォード・ラボラトリーズ(Bedford Laboratories)からの塩酸塩として市販で入手可能であり、例えば、米国特許明細書第4020270号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。急性骨髄性白血病におけるダウノルビシンの治療指数は、リポソーム(ダウノキソーム(Daunoxome)、ギレアデ(Gilead)/ディアトス(Diatos)社)中に分子を閉じ込めることにより向上され得る。ドキソルビシンは、例えば、商品名アドリアマイシン(Adriamycin)として、ファルマシア・アンド・アップジョン社から市販で入手可能であり、例えば、米国特許明細書第3803124号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ドキソルビシン誘導体は、PEG付加された塩酸ドキソルビシンおよびリポソーム封入ドキソルビシンクエン酸塩を含んでいる。PEG付加された塩酸ドキソルビシンは、商品名カエリクス(Caeylx)としてシェーリング・プラウ・ファーマシューティカルズ(Schering-Plough Pharmaceuticals)社から市販されており、PEG付加されていないリポソーム封入ドキソルビシンクエン酸塩は、例えば商品名ミオセット(Myocet)としてセファロン(Cephalon)社から市販されている。イダルビシンは、例えば、商品名イダマイシン(Idamycin)として、ファルマシア・アンド・アップジョン社から塩酸塩として市販されており、例えば、米国特許明細書第4046878号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。エピルビシンは、例えば、商品名ファルモルビシン(Pharmorubicin)として、ファルマシア・アンド・アップジョン社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4058519号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ミトキサントロンは、例えば、商品名ノバントロン(Novantrone)として、OSI・ファーマシューティカルズ(OSI Pharmaceuticals)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4197249号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
他の抗腫瘍アントラサイクリン誘導体は、従来の方法で、例えば、具体的なアントラサイクリン誘導体について上記したものと類似した方法で調製されてもよい。
本発明による使用のための好ましい抗腫瘍抗腫瘍ポドフィロトキシン誘導体としては、上述のエトポシドおよびテニポシドが挙げられる。エトポシドは、例えば、商品名ベプシド(VePesid)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第111058号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。テニポシドは、例えば、商品名ブモン(Vumon)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から商業上入手可能であるか、または、例えばPCT特許明細書第WO93/02094号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。他の抗腫瘍のポドフィロトキシン誘導体は、従来の方法で、例えば、エトポシドおよびテニポシドについて上記したものと類似した方法によって調製されてもよい。
具体的な実施形態:一実施形態では、トポイソメラーゼ2阻害剤は、アントラサイクリン誘導体、ミトキサントロンまたはポドフィロトキシン誘導体である。別の実施形態では、トポイソメラーゼ2阻害剤は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシンおよびエピルビシンから選ばれる。さらなる実施形態では、トポイソメラーゼ2阻害剤は、エトポシドおよびテニポシドから選ばれる。したがって、好ましい実施形態では、トポイソメラーゼ2阻害剤はエトポシドである。別の実施形態では、トポイソメラーゼ2阻害剤はドキソルビシン以外のアントラサイクリン誘導体、例えば、ダウノルビシン、イダルビシンおよびエピルビシンなどのトポイソメラーゼ2阻害剤である。
薬量:抗腫瘍のアントラサイクリン誘導体は、有利には、体表面積1平方メートルあたり10〜150mg(mg/m2)、例えば15〜60mg/m2の用量で、特にドキソルビシンについては約40〜75mg/m2の用量で、ダウノルビシンについては約25〜45mg/m2の用量で、イダルビシンについては約10〜15mg/m2の用量で、およびエピルビシンについては約100〜120mg/m2の用量で投与される。
ミトキサントロンは、有利には、短期の静脈内点滴として約12〜14mg/m2の用量で約21日ごとに投与される。
抗腫瘍ポドフィロトキシン誘導体は、有利には、30〜300mg/m2体表面積、例えば、50〜250mg/mの用量で、特にエトポシドについては約35〜100mg/mの用量で、およびテニポシドについては約50〜250mg/m2の用量で投与される。
上述の用量は、一般的に治療の1過程あたり例えば1回、2回、それ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
12.アルキル化剤
定義:本明細書で用いる「アルキル化剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、アルキル化剤または本明細書で記載されるようなアルキル化剤のアナログを指す。
技術背景:癌化学療法で用いるアルキル化剤は、DNAなどの生物学的に重要な高分子に対して生理学的条件下でアルキル基を提供する能力を持つ、共通する特徴を有する化学物質の多様な群を包含する。ナイトロジェンマスタードおよびニトロソウレアなどのより重要な薬剤の大部分では、活性のあるアルキル化部分は、複雑な分解反応(それらのいくつかは酵素的である)後に生体内で生成される。アルキル化剤の最も重要な薬理作用は、細胞増殖(特にDNA合成および細胞分裂)に関係する基本的機構を妨害するものである。急速に増殖する組織におけるDNAの機能および全体性を妨害するアルキル化剤の能力は、治療上の適用および多くの有毒性についての基礎を提供する。したがって類としてのアルキル化剤は、抗腫瘍の活性について研究されており、当該化合物の特定のものは広く抗癌治療で使用されてきたが、それらは共通して骨髄成分に対して用量規定毒性をもたらし、より少ない程度であるが腸粘膜に対して用量規定毒性をもたらす傾向がある。
アルキル化剤の中で、ナイトロジェンマスタードは、ビス−(2−クロロエチル)系列の存在によって特徴づけられ、シクロホスファミド(化学名2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリンオキサイド)およびクロラムブシル(化学名4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−ベンゼンブトイック(benzenebutoic)酸)を含む、抗腫瘍の化合物の重要なグループを代表する。シクロホスファミドは、広範囲の臨床活性を有しており、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、バーキットリンパ腫および乳癌に関する多くの効果的な組合せ薬物の構成要素として使用される。シクロホスファミドはまた、悪性リンパ腫に関する組合せの構成要素として使用されている。
イホスファミド(Ifosfamide)(別名:イホスファミド(ifosphamide))は、シクロホスファミドの構造的アナログであり、その作用機序は同一であると推測される。イホスファミドは化学名が3−(2−クロロエチル)−2−[(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン−2−オキサイドであり、子宮頸癌、肉腫および精巣癌の治療に対して使用されるが、重度の尿毒性効果がある可能性がある。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病および非ホジキンリンパ腫に関して使用されている。クロラムブシルはまた、CLLおよび悪性リンパ腫(リンパ肉腫を含む)の治療に関して使用されている。
別の重要な類のアルキル化剤は、2−クロロエチルカルボニウムイオンの形成により自発的な非酵素的分解を行う能力によって特徴づけられるニトロソウレアである。そのようなニトロソウレア化合物の例としては、カルムスチン(BiCNU(登録商標)またはBCNU)(化学名1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素)およびロムスチン(CCNU)(化学名1−(2−クロロエチル)シクロヘキシル−1−ニトロソ尿素)が挙げられる。カルムスチンおよびロムスチンはそれぞれ脳腫瘍および消化管新生物の治療における重要な治療上の役割を有するが、それらの治癒的価値を限定する深刻で累積的な骨髄抑制を引き起こす。
別の類のアルキル化剤は、化学名が1,4−ブタンジオールジメタンスルフォナートであり、慢性の骨髄由来性(骨髄性、骨髄球性または顆粒球性)白血病の治療のために使用される化合物のブスルファンによって代表されるビス−アルカンスルホネート基を有する二官能性アルキル化剤によって代表される。しかしながらそれは、重症の骨髄機能不全を誘導し、重篤な汎血球減少症を結果として生じ得る。この特性は、血液幹細胞移植に先立つ調整剤としての広範囲の使用につながっている。
別の類のアルキル化剤は、DNAに結合することにより架橋ならびにDNAの合成および機能の阻害を引き起こす抗腫瘍薬剤として作用する、含窒素3員環を含むアジリジン化合物である。そのような薬剤の一例は、ストレプトマイセス・カエスピトーサス(Streptomyces caespitosus)から単離され、化学名が7−アミノ−9α−メトキシマイトサンである抗生物質であるマイトマイシンである。
マイトマイシンは、胃腺癌、膵臓腺癌、結腸腺癌および乳腺腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ならびに放射線との組合せで頭頸部癌を治療するために使用され、副作用としては骨髄抑制、腎毒性、間質性肺臓炎、悪心および嘔吐が挙げられる。
生物学的活性:本発明と組合せるアルキル化剤の最も重要な薬理作用の1つは、上記に本明細書で定義されるように、細胞増殖に関する基本的機構を妨害する能力である。急速に増殖する組織におけるDNAの機能および全体性を妨害するこの能力は、様々な癌に対する治療上の適用のための基礎を提供する。
問題:上述のように、この類の細胞毒性化合物は副作用と関連している。したがって、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、より低用量の使用のための手段を提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のために好ましいアルキル化剤としては、上述のナイトロジェンマスタード化合物であるシクロホスファミド、イホスファミドおよびクロラムブシル、ならびにニトロソウレア化合物であるカルムスチンおよびロムスチンが挙げられる。本発明による使用のための好ましいナイトロジェンマスタード化合物としては、上述のシクロホスファミド、イホスファミドおよびクロラムブシルが挙げられる。シクロホスファミドは、例えば、商品名サイトキサン(Cytoxan)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されており、例えば英国特許明細書第1235022号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。クロラムブシルは、例えば、商品名リューケラン(Leukeran)としてグラクソ・スミスクライン社から市販されており、例えば、米国特許明細書第3046301号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。イホスファミドは、例えば、商品名ミトキサナ(Mitoxana)としてバクスター・オンコロジー(Baxter Oncology)社から市販されており、例えば、米国特許明細書第3732340号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。本発明による使用のために好ましいニトロソウレア化合物としては、上述のカルムスチンおよびロムスチンが挙げられる。カルムスチンは、例えば、商品名ビックヌー(BiCNU)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されており、例えば、欧州特許明細書第902015号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ロムスチンは、例えば、商品名シーヌー(CeeNU)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されており、例えば、米国特許明細書第4377687号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ブスルファンは、例えば、商品名ミレラン(Myleran)としてグラクソ・スミスクライン社から市販されており、例えば、米国特許明細書第2917432号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。マイトマイシンは、例えば、商品名ムタマイシン(Mutamycin)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されている。他のものとしては、エストラムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ビスクロロエチルニトロスウレア(bischloroethylnitrosurea)、シクロヘキシルクロロエチルニトロスウレア(cyclohexylchloroethylnitrosurea)、メチルシクロヘキシルクロロエチルニトロスウレア(methylcyclohexylchloroethylnitrosurea)、ニムスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾリマイド(temozolimide)およびチオテパが挙げられる。
具体的な実施形態:一実施形態では、アルキル化剤は、シクロホスファミド、イホスファミドおよびクロラムブシルから選択されるナイトロジェンマスタード化合物である。別の実施形態では、アルキル化剤はカルムスチンおよびロムスチンから選択されるニトロスウレア(nitrosurea)である。さらなるアルキル化剤としてはブスルファンが挙げられる。一実施形態では、アルキル化剤は、上記で本明細書で定義されるように、マイトマイシンCまたはシクロホスファミド以外のものである。
薬量:ナイトロジェンマスタードまたはニトロソウレアのアルキル化剤は、有利には、体表面積1平方メートルあたり100〜9000、例えば100〜2500mg(mg/m2)、例えば100〜5000、100〜2500または120〜500mg/m2の用量で、特にシクロホスファミドについては約100〜5000、例えば100〜500mg/m2の用量で、イホスファミドについては500〜9000mg/m2、例えば500〜2500mg/m2の用量で、クロラムブシルについては約0.1〜0.2mg/kgの用量で、カルムスチンについては約150〜200mg/m2の用量で、およびロムスチンについては約100〜150mg/m2の用量で投与される。ブスルファンなどのビス−アルカンスルホネート化合物については、典型的な用量は1〜2mg/m2(例えば、約1.8mg/m2)であってもよい。
マイトマイシンのようなアジリジンアルキル化剤は、例えば15〜25mg/m2、好ましくは約20mg/m2の用量で投与することができる。
上述の用量は、治療の1過程あたり例えば1回、2回、それ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
13.本発明による使用のためのシグナル伝達阻害剤
定義:本明細書で用いる「シグナル伝達阻害剤」(または「シグナル変換阻害剤」)なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、シグナル伝達阻害剤または本明細書で記載されるようなシグナル伝達阻害剤のアナログを指す。
技術背景:悪性腫瘍は、制御されない細胞増殖の結果である。細胞増殖は、増殖促進因子と増殖抑制因子との間での微妙なバランスによって制御される。正常組織において、これらの因子の産生および活性は、器官の正常な全体性および機能を維持するような、制御および調節された形で増殖する分化細胞をもたらす。悪性細胞はこの制御を回避し、自然なバランスは妨害され(様々なメカニズムによる)、無秩序で異常な細胞増殖が生じる。
増殖を促す1つの原動力は表皮増殖因子(EGF)であり、EGFの受容体(EGFR)は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、頭頸部癌を含む多くのヒト固形腫瘍の発生および進行に関連付けられている。EGFRは4つの受容体、すなわちEGFR(HERlまたはErbl)、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)およびErbB4(HER4)からなるファミリーのメンバーである。これらの受容体は細胞膜に存在する巨大タンパク質であり、それぞれ特異的な外部リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼ酵素活性がある内部ドメインを有する。EGFがEGFRに結合すると、チロシンキナーゼを活性化し、細胞を増殖させ分裂させる反応を引き起こす。EGFRは多くのタイプの癌細胞の表面で異常に高いレベルで見られ、前記癌細胞はEGFの存在下で過度に分裂する可能性がある。EGFR活性の阻害はしたがって癌の治療における化学療法研究の標的となっている。そのような阻害は、例えば、抗体の使用またはその後のチロシンキナーゼ活性の阻害によって細胞表面上の標的EGFRに対する直接的な干渉によって果たすことができる。
EGRFを標的とする抗体の例としては、モノクローナル抗体であるトラスツズマブおよびセツキシマブが挙げられる。原発性乳腺癌におけるヒト表皮増殖因子受容体2タンパク質(HER2)の増幅は、特定の患者についての臨床予後の悪さと相関することが示されてきた。トラスツズマブは、HER2受容体の細胞外ドメインに高親和性および高特異性で結合し、高度に精製された、組換DNAに由来するヒト化IgG1カッパモノクローナル抗体である。生体外および生体内の前臨床試験から、トラスツズマブ単独の投与またはパクリタキセルもしくはカルボプラチンとの組合せにおける投与は、HER2遺伝子産物を過剰発現する乳房腫瘍に由来する細胞株の増殖を著しく阻害することが示されてきた。臨床試験では、トラスツズマブは乳癌の治療において臨床活性を有することが示されてきた。トラスツズマブの最も一般的な副作用は、発熱および悪寒、疼痛、衰弱、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、呼吸困難、鼻炎および不眠症である。特に厄介なことは、大多数の患者における可逆的心筋症の発症である。トラスツズマブは、HER2タンパク質の過剰発現を示す初期および転移性乳癌、特に転移性乳癌の治療に関して承認されている。
セツキシマブは、イロテカン(irotecan)治療耐性の結腸直腸癌(CRC)の治療、および放射線療法と組合せて頭頸部癌の治療に使用されてきた。セツキシマブは、転移性膵臓癌および非小細胞肺癌を含む様々な他の癌の治療に使用される単一薬剤および他の薬剤との組合せの両方としてもまた評価されている。セツキシマブの投与は、呼吸困難および低血圧を含む深刻な副作用を引き起こし得る。
本発明の組合せで用いる他の適切なモノクローナル抗体はパニツムマブである。アムジェン(Amgen)(もとはイミュネックス・アンド・アブジェニクス)は(腎臓癌、非小細胞肺癌の単独療法、およびCRCでは一次治療として標準的な化学療法との組合せ、進行性CRCでは三次治療として、特に転移性結腸直腸癌(MCC)を治療するためそして標準的な化学療法が上手くいかなかった患者においてなどの癌治療の可能性に関連して)パニツムマブ(ABX−EGF)(EGFレセプターに対する完全ヒトモノクローナル抗体)を開発している。したがって、ABX−EGFは、癌治療のため単独療法として投与できまた独立した手法を補完するため化学療法および放射線療法と共に投与することができる。
ABX−EGFは、ヒトEGFRに対する完全ヒト化IgG2モノクローナル抗体である。ABX−EGFなどの完全ヒトモノクローナル抗体は、キメラ抗体(多量のマウスタンパク質を含む)に比べいくつかの利点を有する。該抗体はヒト抗マウス抗体(HAMA)を生ぜず、従って患者における過敏性反応を誘導する危険性は減少し、抗体は増加した生体内寿命を示すであろう。そのような検討は長期投与にとって重要であり得る。
前記抗体はWO98/50433に記載されているように、およびそれと類似した方法で調製することができる。
パニツムマブは、静脈内注入により0.01〜5.0mg/kgの範囲の用量で週に一度、6.0mg/kgで2週ごとに一度、または9.0mg/kgで3週ごとに一度投与されてもよい。
結腸直腸癌患者における三次単独療法としてパニツムマブを試験する極めて重要な第3相試験において、患者は2週ごとにパニツムマブを投与された。
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤であるティピファニブ(tipifarnib)はrasに仲介される経路を通るシグナル伝達を防ぎ、骨髄性白血病の治療に関して研究中である。
EGRFチロシンキナーゼ活性を標的とする薬剤の例としては、チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブおよびエルロチニブが挙げられる。ゲフィチニブ(化学名4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン)は、非小細胞肺癌の治療のために使用される。ゲフィチニブはまた、EGF受容体を過剰発現する乳癌および結腸直腸癌などの他の固形腫瘍のに関して研究されている。ゲフィチニブを投与された患者が、間質性肺疾患および目の炎症を発症する可能性があることが見出されている。エルロチニブ(化学名N−(3−エチニル−フェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンを有する)も非小細胞肺癌の治療のために使用され、膵臓癌などの様々な他の固形腫瘍の治療のために開発されており、最も一般的な副作用は、発疹、食欲不振および疲労であり、報告されているさらに深刻な副作用は間質性肺疾患である。
抗癌性研究の標的として注目される別の増殖因子は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である。VEGFは、創傷治癒、網膜症、乾癬、炎症性障害、腫瘍増殖および転移を含む血管新生の過程の間の血管形成の鍵となる調節因子である。VEGFの過剰発現がヒト悪性疾患における浸潤および転移に強く関連していることが、研究から示されてきた。
細胞の表面上のVEGF抗原を標的とする抗体の一例としては、VEGFに結合して阻害する組換えヒト化モノクローナルIgG1抗体であるモノクローナル抗体ベバシズマブである。ベバシズマブは、化学療法剤(例えば、5−フルオロウラシル)との組合せで結腸直腸癌の治療のために使用されてきた。ベバシズマブは、転移性乳癌、転移性非小細胞肺癌および腎細胞癌などの他の固形腫瘍に対して見込みのある治療として開発されている。ベバシズマブに関連する最も重篤な有害事象としては、胃腸穿孔、高血圧性クリーゼ、ネフローゼ症候群およびうっ血性心不全が挙げられる。この成長因子により開始されるシグナル伝達カスケード中の別の場所においてVEGFの作用を標的とする開発中の他の治療薬としては、スーゲン/ファイザー社によりスーテントの商品名で市販され、VEGF受容体のキナーゼ活性を阻害するスニチニブが挙げられる。スーテントは、消化管間質性腫瘍における第三相試験において有効性を示した。
腫瘍発生に重要な他の増殖因子は、細胞表面チロシンキナーゼ受容体(PDGFR)によってシグナル伝達し、成長、増殖および分化を含む様々な細胞機能を刺激するペプチド増殖因子のファミリーを含む血小板由来増殖因子(PDGF)である。PDGF発現はグリア芽腫および前立腺癌を含む多くの異なった固形腫瘍で実証されている。チロシンキナーゼ阻害剤イマチニブメシレート(化学名4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−イルピリジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルフォネート)は、Bcr−Abl癌タンパク質および細胞表面チロシンキナーゼ受容体c−Kitの活性を遮断し、それ自身、慢性骨髄性白血病と消化管間質性腫瘍の治療のために承認されている。イマチニブメシレートはまたPDGFRキナーゼの強力な阻害剤であり、慢性骨髄単球性白血病と多形性グリア芽腫においてPDGFR中での活性化変異の証拠に基づいて、慢性骨髄単球性白血病と多形性グリア芽腫の治療のために現在評価されている。最も頻繁に報告される当該薬物に関連する有害事象は、浮腫、悪心、嘔吐、痙攣および筋腱系疼痛であった。
癌化学療法のためのさらなる増殖因子の標的は、細胞増殖を引き起こす生体の連鎖的な化学反応において鍵となる酵素であるRafの阻害である。この経路の異常な活性化は、メラノーマの2/3を含む大部分の癌の進行における共通因子である。Rafキナーゼの作用の遮断によって、これらの腫瘍の進行を覆すことは可能かもしれない。そのような阻害剤の1つは、化学名が4−(4−(3−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ウレイド)フェノキシ)−N2−メチルピリジン−2−カルボキサミドであるソラフェニブ(別名:BAY43−9006およびネクサバール)である。ソラフェニブは、細胞増殖を阻害するためにRafシグナル伝達経路、および腫瘍血管新生を阻害するためにVEGFR/PDGFRシグナル伝達カスケードの両方を標的とする。RafキナーゼはRas経路の特異的酵素である。ras遺伝子中の変異は、膵臓癌の90%、結腸癌の50%および非小細胞肺癌の30%を含む、すべてのヒト癌のおよそ20%において生じる。ソラフェニブは、肝臓癌および腎臓癌を含む多数の癌の治療に関して研究されている。ソラフェニブの最も一般的な副作用は、疼痛、腫れおよび手および/または足の発赤ならびにさらに発疹、疲労および下痢である。
生物学的活性:本発明の組合せのシグナル伝達阻害剤は、上記のような細胞シグナル伝達タンパク質の特異的な阻害剤であり、様々な癌に対して活性を有する。シグナル伝達阻害剤と式Iの化合物の組合せは、多くの型の癌の治療および診断に有用であり得る。シグナル伝達阻害剤(例えば、イレッサ(Iressa)、アバスチン(Avastin)またはハーセプチン(herceptin)またはグリベック(Gleevec)(商標))などの分子的に標的化された薬剤との組合せは、EGF受容体、VEGF受容体、ErbB2、BCRabl、c−kit、PDGFなどの関連する分子標的が発現または活性化された癌に関して特に適用される可能性がある。当業者に公知の技術、およびRT−PCRおよびFISHなどの本明細書において記載される技術を使用して、そのような腫瘍の診断を行なうことができる。
問題:腫瘍増殖に対するシグナル伝達阻害剤の抑制性の有効性を増加させ、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、シグナル伝達阻害剤のより低用量の使用のための手段もまた提供する必要がある。
好ましい選択肢:本発明による使用のための好ましいシグナル伝達阻害剤としては、本明細書において言及される、モノクローナル抗体であるトラスツズマブおよびセツキシマブなどのEGFR標的化抗体、ゲフィチニブおよびエルロチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、VEGF標的化抗体などのベバシズマブ、メシル酸イマチニブなどのPDGFR阻害剤、ならびにソラフェニブなどのRaf阻害剤が挙げられる。
好ましいEGFR標的化抗体としては、モノクローナル抗体であるトラスツズマブおよびセツキシマブが挙げられる。トラスツズマブは、商品名ハーセプチンとしてジェネンテック(Genentech)社から市販されており、また米国特許明細書第5821337号に記載されているように得てもよい。セツキシマブは、商品名エルビタックス(Erbitux)としてブリストル・マイヤーズ・スクイブ社から市販されており、またPCT特許明細書第WO96/40210号に記載されているように得てもよい。
好ましいEGFRチロシンキナーゼ阻害剤としては、ゲフィチニブおよびエルロチニブが挙げられる。ゲフィチニブは、商品名イレッサとしてアストラゼネカ社から市販されており、またPCT特許明細書第WO96/33980号に記載されているように得てもよい。エルロチニブは、商品名タルセバ(Tarceva)としてジェネンテック/ロシュ社から市販されており、またPCT特許明細書第WO96/30347号に記載されているように得てもよい。
好ましいVEGF標的化抗体はベバシズマブであり、商品名アバスチンとしてジェネンテック社から市販されており、またPCT特許明細書第WO94/10202号に記載されているように得てもよい。
好ましいPDGFR阻害剤はメシル酸イマチニブであり、商品名グリベック(Gleevec)(商標)(別名:グリベック(Glivec)(登録商標))としてノバルティス社から市販されており、また欧州特許明細書第564409号に記載されているように得てもよい。
好ましいRaf阻害剤はソラフェニブであり、バイエル(Bayer)社から市販されており、またPCT特許明細書第WO00/42012号に記載されているように得られてもよい。
具体的な実施形態:一実施形態では、シグナル伝達阻害剤はゲフィチニブ(イレッサ)である。別の実施形態では、シグナル伝達阻害剤は、トラスツズマブ、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ベバシズマブ、メシル酸イマチニブおよびソラフェニブから選ばれる。
本発明のさらなる組合せとしては、次のシグナル伝達阻害剤が挙げられる:ダサチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、バンデタニブ、バタリニブ(vatalinib)およびCHIR−258、特にダサチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、バンデタニブおよびバタリニブ(vatalinib)。
BMSはダサチニブ(スプライセル(Sprycel)またはBMS−354825)(経口多重標的キナーゼ阻害剤)を慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)急性リンパ芽球性白血病(ALL)および固形腫瘍の1日に2回投与する治療の可能性に関して開発している。該薬物はまた、多発性骨髄腫(MM)および他の血液悪性腫瘍に関して調査中である。ダサタニブ(Dasatanib)は、Ph+CMLおよびAMLにおいて50〜90mgで1日に2回投与する臨床試験、そしてまたイマチニブ耐性患者において効果的であることが証明された。血小板減少と好中球減少はダサチニブの臨床評価中で観察される副作用であった。
Src/Ablキナーゼ阻害剤であるダサチニブの構造は下記のとおりである。
ダサチニブはWO00/062778、WO2005/076990およびWO2005/077945に記載の方法またはそれらと類似した方法で調製することができる。
ノバルティス社は、白血病の治療の可能性に関して、ニロチニブ(AMN−107)(BCR−ABL、c−kitおよびPDGFを標的とする経口投与可能なシグナル伝達阻害剤)を開発している。該化合物は、慢性骨髄性白血病(CML)ならびに再発性または治療抵抗性急性リンパ芽球性白血病(ALL)、全身性肥満細胞症または慢性好酸球性白血病(高好酸球症候群)、治療抵抗性消化管間質性腫瘍(GIST)に関して研究されている。有害事象としては、血液学的有害事象、頭痛、疲れ、筋痙縮および悪心嘔吐が挙げられる。初期の臨床研究において、1日2回の投与で約400mgの用量が、CML、AMLおよびALLを治療するのに効果的であることが証明された。
ニロチニブの構造を下記に示す。WO2004/005281およびWO2005/049032に記載の方法またはそれらと類似した方法で調製することができる。
バタラニブ(Vatalanib)(PTK787/ZK222584)は、結腸直腸癌の治療の可能性に関してノバルティス(かつてはチバ・ガイギー)社およびシェーリング社により開発中であるVEGF受容体チロシンキナーゼ血管形成阻害剤である。該化合物は、転移性結腸直腸癌(未治療および前治療された転移性結腸直腸癌患者)の第一および第二選択薬として、結腸直腸癌に関して試験に入った。シェーリング社およびノバルティス社はまた、他の固形腫瘍、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)(再発しているまたは一次治療に治療抵抗性のIIIb/IV期の疾患を有する患者における二次治療単独療法として)、腎細胞癌および膠芽腫、ならびに可能性として前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌および肺小細胞癌においてバタラニブを研究している。さらに、バタラニブはまた、加齢黄斑変性症(AMD)に関して研究されている。バタラニブは、臨床研究において毎日1250mgまでの投与量で判定されている。有害事象としては、悪心/嘔吐、疲れ、運動失調、倦怠、高血圧、頭痛、めまい、下痢、高血圧に加えて意識喪失および神経毒性が挙げられる。
バタラニブ(構造を下記に示す)は、WO98/35958に記載の方法またはそれと類似した方法で調製することができる。
トシル酸ラパチニブ(lapatinib ditosylate)(タイカーブ(Tykerb)またはGW2016/572016)(ErbB2およびEGFRのデュアルチロシンキナーゼ阻害剤)は、固形腫瘍の治療の可能性に関してグラクソ・スミスクライン(GSK)社により開発されている。
トシル酸ラパチニブは、乳癌、肺癌、胃癌、膀胱癌および頭頸部癌、特に、腫瘍がHER−2を発現する治療抵抗性、進行性または転移性乳癌を有し、以前に単一薬剤としてそしてカぺシタビンおよびパクリタキセルを含む他の療法剤との組合せで効果の無かった患者の治療に関してを含む様々な腫瘍に関して研究中である。該化合物はまた、腎細胞癌、進行性および転移性非小細胞肺癌(NSCLC)に関してならびに乳癌に関連した脳転移の治療において試験に入った。初期の臨床評価において、ラパチニブは、500〜1500mgの範囲にわたる用量で1日2回および1日1回のスケジュールで、および750〜1250mgの用量で1日2回投与で評価されている。副作用としては、胃腸のガス症状、発疹、頭痛および肝機能検査異常が挙げられる。
キナゾリン化合物、および二トシル酸塩、無水物または水和物形態(例えば、下記に示した構造のもの(ラパチニブ))は、WO00/202552およびWO99/35146に記載の方法またはそれと類似した方法を用いて合成することができる。
バンデタニブ(vandetanib)(ZD−6474、ザクティマ(zactima)、かつてはAZD−6474)は、甲状腺、肺、乳房、頭頸部、脳(すなわちグリオーマ)および多発性骨髄腫を含む固形および血液腫瘍の1日1回の経口治療の可能性に関してアストラゼネカ社により開発中である。バンデタニブは、EGFおよびRET受容体チロシンキナーゼに対する活性も有する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体チロシンキナーゼの一連の阻害剤のうちの1つである。臨床研究では、単独療法としておよび併用療法において、1日に100〜300mgの範囲でバンデタニブの用量を研究している。観察される一般的な副作用は、発疹、疲れ、悪心、下痢、無症性の補正QT間隔の延長であった。
ZD−6474は、WO01/32651に記載の方法またはそれと類似した方法で調製することができる。
CHIR−258(GFKI−258、構造を示す)は、様々な種類の癌の経口治療の可能性がある、強力なVEGF、FGFおよびPDGF受容体キナーゼ阻害剤である。ノバルティス社(かつてはカイロン(Chiron)社)は、急性骨髄性白血病(AML)患者および多発性骨髄腫(MM)における研究を開始した。
CHIR−258は、WO02/22598およびWO2005/046590に記載の方法またはそれと類似した方法で調製することができる。
本発明の組合せで用いる別の適切なシグナル伝達阻害剤はアキシチニブ(axitinib)(AG−013736)である。ファイザー社は、癌の治療の可能性に関する抗血管形成剤として、ファイザー社の完全所有子会社であるアゴーロン・ファーマシューティカルズ社により発見されたVEGF、PDGFおよびCSF−1受容体チロシンキナーゼの経口阻害剤であるアキシチニブ(AG−13736、AG−013736)を開発している。アキシチニブは、乳癌、腎細胞癌(RCC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、メラノーマおよび癌腫に関して研究されている。該化合物はまた、急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群(MDS)の治療に関して調査されている。
アキシチニブは、WO2004/087152、WO2006/048746およびWO2006/048745に記載の方法またはそれと類似した方法で調製することができる。アキシチニブは1日2回5mgで経口投与される。
薬量:EGFR抗体に関して、当該抗体は一般的に体表面積1平方メートルあたり1〜500mg(mg/m2)の用量で投与され、トラスツズマブは有利には1〜5mg/m2体表面積、特に2〜4mg/m2の用量で投与され、セツキスマブ(cetuxumab)は有利には約200〜400mg/m2、好ましくは約250mg/m2の用量で投与される。
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に関して、当該阻害剤は一般的に100〜500mgの一日経口投与量で投与され、例えばゲフィチニブは約250mgの用量で、およびエルロチニブは約150mgの用量で投与される。
VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブに関して、これは一般的に約1〜10mg/kg、例えば約5mg/kgの用量で投与される。
PDGF阻害剤であるイマチニブに関して、これは一般的に1日あたり約400〜800mg、好ましくは1日あたり約400mgの用量で投与される。
Raf阻害剤であるソルフェニブ(sorfenib)に関して、これは1日約800mgの用量で投与される。
これらの用量は、治療の1過程あたり、例えば1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
PKA/PKB阻害剤およびPKB経路阻害剤
本発明の組合せで用いる別の好ましい類のシグナル伝達阻害剤は、PKA/PKB阻害剤およびPKB経路阻害剤である。
PKB経路阻害剤は、PKBの活性化(キナーゼ自体の活性)を阻害するか、または下流の標的を修飾し、経路の増殖効果および細胞生存効果を遮断するものである。経路における標的酵素としては、フォスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、PKBそれ自体、哺乳動物のラパマイシン標的タンパク質(MTOR)、PDK−1およびp70 S6キナーゼならびにフォークヘッド転座因子が挙げられる。PI3−キナーゼ/PKB/PTEN経路のうちのいくつかの構成要素は腫瘍形成に関係する。増殖因子受容体チロシンキナーゼに加えて、インテグリン依存性細胞接着およびGタンパク質共役受容体は、アダプター分子を介してPI3−キナーゼを直接的および間接的に活性化する。PTEN(p53に次いで癌において最も一般的には変異する腫瘍抑制遺伝子)の機能喪失、PI3−キナーゼにおける腫瘍形成性変異、PI3−キナーゼの増幅、およびPKBの過剰発現は、多くの悪性腫瘍で実証されている。さらに、インスリン様増殖因子受容体の刺激によるPI3−キナーゼ/PKB経路を介する持続的なシグナリングは、表皮増殖因子受容体阻害剤に対する耐性メカニズムである。
広範囲にわたるヒト腫瘍においてp110αをコードする遺伝子中のランダムでない体細胞変異が見出されたことから、変異したPI3−キナーゼ酵素に関する腫瘍形成性の役割が示唆される(サミュエルズ(Samuels)ら、サイエンス(Science)、304 554、2004年4月)。それ以来、p110αにおける変異は次のヒト腫瘍で検出されている:結腸癌(32%)、肝細胞癌(36%)ならびに子宮内膜(endometroid)癌および明細胞癌(20%)。p110αは現在乳房腫瘍(25〜40%)において最も一般的に変異している遺伝子である。フォークヘッドファミリーの転座がしばしば急性白血病で生じる。
そのような薬剤が増殖を阻害し癌細胞における細胞毒性剤に対する耐性を克服すると予想されるので、PI3−キナーゼ/PKB/PTEN経路はこのように抗癌剤の開発のための魅力的な標的である。
PKB経路阻害剤の例としては、セマフォア(Semaphore)などのPI3K阻害剤、SF1126、およびラパマイシンアナログなどのMTOR阻害剤が挙げられる。ノバルティス社からのRAD001(エベロリムス)は、化合物ラパマイシンの経口投与可能な誘導体である。該化合物は、免疫抑制剤および抗癌剤としての適用がある抗増殖性の薬物として開発されている新規なマクロリドである。RAD001は、細胞内受容体タンパク質(FKBP−12)に対する高親和性を介して増殖因子依存性細胞増殖に対する活性を発揮する。結果として生じるFKBP−12/RAD001複合体は、次にmTORと結合して、下流のシグナル伝達事象を阻害する。該化合物は、現在様々な腫瘍学的徴候に対して臨床開発の最中である。ワイス・ファーマシューティカルズ(Wyeth Pharmaceuticals)からのCCI 779(テムシロレムス(temsirolemus))およびアリアド・ファーマシューティカルズ(Ariad Pharmaceuticals)からのAP23573もまたラパマイシンアナログである。アリアド・ファーマシューティカルからのAP23841およびAP23573もmTORを標的とする。ハーバード(Harvard)からのカルモデュリン阻害剤は、フォークヘッド転座阻害剤である(Nature Reviews drug discovery、抗癌剤探索のためのPI3K/AKT経路の利用(Exploiting the PI3K/AKT Pathway for Cancer Drug Discovery)、へネシー(Bryan T. Hennessy),スミス(Debra L.Smith)、ラム(Prahlad T.Ram)、ルー(Yiling Lu)およびミルズ(Gordon B.Mills)、2005年12月、第4巻;988〜1004ページ)。
定義:「PKA/PKB阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、プロテインキナーゼB(PKB)および/またはプロテインキナーゼA(PKA)の抑制活性または調節活性を有する化合物を定義するために本明細書で用いる。
「PKB経路阻害剤」なる語は、PKBの活性化(キナーゼそれ自体の活性)を阻害するかまたは下流の標的を修飾(経路の増殖効果および細胞生存効果を遮断)する化合物を定義するために本明細書で用いる(フォスファチジルイノシトール−3キナーゼ(PI3K)、PKBそれ自体、哺乳動物のラパマイシン標的タンパク質(MTOR)、PDK−1およびp70 S6キナーゼならびにフォークヘッドの転座を含む本明細書で記載されるようなこの経路中の1つまたは複数の標的酵素を含む)。
技術背景:KRX−0401(ペリフォシン(Perifosine)/NSC639966)は、主として細胞膜に標的化されるシグナル伝達経路で作用する(PKBリン酸化の阻害を含む)、合成の置換ヘテロ環アルキルフォスフォコリンである。KRX−0401は、可能性のある経口抗癌剤として第1相試験において評価されている。用量規定毒性は、悪心、嘔吐および疲労を含んでいた。胃腸毒性はより高用量で増加した。治療耐性の肉腫における第II相試験が計画されている。
API−2/TCNは、腫瘍細胞におけるPKBシグナル経路の低分子阻害剤である。API−2/TCNの第I相および第II相の臨床試験は進行性腫瘍に対して行われている。API−2/TCNは、肝毒性、高トリグリセリド血症、血小板減少および高血糖を含むいくつかの副作用を示した。
RX−0201は、固形腫瘍の治療のためのAKTプロテインキナーゼ阻害薬として開発されている。第I相試験は進行悪性腫瘍患者において2004年7月に開始された。この試験からのデータは、RX−0201はAktの過剰発現を阻害し、脳腫瘍、乳房腫瘍、子宮頸部腫瘍、肝腫瘍、肺腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍および胃腫瘍における癌増殖を抑制し、耐容性が良好であることを示した。2005年3月までに、米国オーファンドラッグステータスが、いくつかの固形腫瘍タイプについてRX−0201に与えられた。
塩酸エンザスタウリン(LY317615)は、血管新生を抑制し、抗血管新生の活性に基づいた臨床開発のために推進された。それは選択的PKCβ阻害剤として記載される。塩酸エンザスタウリンはまた直接的な抗腫瘍効果を有し、GSK3βのリン酸化を抑制する。塩酸エンザスタウリンは、グリオーマおよび非ホジキンリンパ腫の治療に関して現在研究されている。
SR−13668は、生体外および生体内の両方で乳癌細胞におけるリン酸化AKTを著しく阻害する経口活性のある特異的なAKT阻害剤であると主張されている。マウスにおける生体内評価から、抗腫瘍の活性のために必要な用量よりも10倍多い用量であっても副作用がないことが示された。
PX−316は、PKBのPHドメインに結合するD−3−デオキシ−ホスファチジル−ミオ−イノシトールであり、細胞質中でPKBを捕らえ、したがってPKB活性化を阻害する。抗腫瘍活性は初期の異種移植片において見られ、耐容性は良好だった。
2,3−ジフェニルキノキサリン核または5,6−ジフェニルピラジン−2(1H)−オン核に基づいた、PKBのアロステリックな選択的阻害剤が開発されてきた(メルク社)。
KRX−0401:ヨーロッパにおいて行なわれた毎週投薬される第I相試験において、推奨される第II相の用量は600/mg/週であった。米国において行なわれた後続研究は、用量が分けられて4〜6時間の間隔で投与される場合、はるかに高用量でも耐容性が良好であることを示した。さらに、KRX−0401は、100時間の範囲で非常に長い半減期を有することが示されてきた。これにより、比較的非毒性の断続的な投薬スケジュールの可能性が非常に妥当性のあるものになる。
API−2の第I相試験は、5日間の連続的な点滴スケジュールを使用して行われた。用量レベルは、10mg/m2/日×5日〜40mg/m2/日×5日にわたった。最初に、過程は3〜4週ごとに繰り返された。累積的な毒性が示されるようになると、過程間の間隔は6週ごとに変更された。第II相試験のために推奨されるスケジュールは、6週ごとに20mg/m2/日を5日間行なうものである。TCN−Pの第II相試験は、5日間の連続的な点滴スケジュールを使用して、転移性または再発性子宮頚部扁平上皮癌において行われた。開始用量は35mg/m2×5日であり、過程は6週ごとに繰り返された。
さらなるPKB阻害剤としては、ケリックス・バイオファーマシューティカルズ(Keryx Biopharmaceuticals)からのペリフォシンが挙げられる。ペリフォシンは、ヒト腫瘍細胞株に対して著しい細胞傷害効果を発揮し、現在主要なヒト癌の治療のためにいくつかの第II相試験において検査されている、経口のAkt阻害剤である。KRX−0401(ペリフォシン/NSC639966)は以下の構造を有する。
KRX−0401は、アステ・メディカ(Aste Medica)の特許公報DE4222910またはゼノポート(Xenoport)の特許公報US2003171303に従って調製することができる。
API−2/TCN(トリシリビン)は以下の構造を有する。
API−2/TCNは、ボドー(Bodor)の特許公報WO9200988またはリバファーム(Ribapharm)の特許公報WO2003061385に従って調製することができる。
エンザスタウリン塩酸塩は以下の構造を有する。
エンザスタウリン塩酸塩は、イーライ・リリー社の特許公報WO2004006928に従って調製することができる。
SR13668は以下の構造を有する。
SR13668は、SRIインターナショナルの特許公報US2004043965に従って調製することができる。
NL−71−101は以下の構造を有する。
NL−71−101は、バイオケミストリー(Biochemistry)(2002年)、41(32)、10304〜10314、またはペプトー(Peptor)の特許公報WO2001091754に従って調製することができる。
デベロジェン(DeveloGen)(かつてはペプトー)は、癌治療の可能性に関して、NL−71−101(プロテインキナーゼB(PKB)阻害剤)を研究している[466579]、[539004]。2003年の初めに、リード化合物の最適化が行なわれていた[495463]。2004年2月までに、該会社は、プロテインキナーゼBプログラムに対する特定の開発権をアウトライセンスしようとしていた[523638]。
NL−71−101は、PKA、PKGおよびPKC(それぞれ9、36および104μMのIC50値で)と比べ、PKB(3.7μMのIC50値で)活性を阻害することを示すデータが2002年に発表された。NL−71−101は、PKBが50および100μMの濃度で増幅されるOVCAR−3腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導した[466579]。この化合物は以下の構造を有する。
具体的な実施形態:検討される実施形態としては、抗癌剤が上記の1つまたは複数の具体的な化合物から選択されるPKB阻害剤である組合せが挙げられる。
14.CDK阻害剤
本発明の組合せにおける補助薬剤として使用する好ましいCDK阻害剤は、本明細書で定義される式(I’)の化合物である。しかしながら本発明の組合せで使用するCDK阻害剤はとしてはまた、サイクリン依存性キナーゼ阻害または修飾活性および/またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK3)阻害または修飾活性を有する下記でより詳細に記載される補助CDK阻害剤が挙げられる。本発明の組合せはしたがって、2種以上の本明細書で定義される式(I’)の化合物を含んでもよい(または本質的にそれらから成ってもよい)。
本明細書の式(I’)のCDK化合物に加えて、本発明の組合せは1つまたは複数の補助CDK阻害剤またはモジュレーターを含んでいてもよい。そのような補助CDK阻害剤またはモジュレーターは本明細書に記載の様々なCDK阻害剤から選ばれてもよく、好ましい補助CDK阻害剤は下記でより詳細に検討される。
定義:本明細書において「CDK阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性を阻害または修飾する化合物を指す。
本明細書において「補助CDK阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)を阻害または修飾し、本明細書で定義される式(I’)の構造に一致しない化合物を指す。
技術背景:CDKは、細胞周期、アポトーシス、転写、分化および中枢神経系機能の調節において役割を果たす。したがって、CDK阻害剤は、癌などの、増殖、アポトーシスまたは分化の障害がある疾患の治療に適用される可能性がある。特に、RB+ve腫瘍は、CDK阻害剤に対して特に感受性があり得る。RB−ve腫瘍もまたCDK阻害剤に対して感受性があり得る。
本発明による組合せにおいて使用され得るCDK阻害剤の例としては、セリシクリブ(seliciclib)、アルボシジブ(alvocidib)、7−ヒドロキシ−スタウロスポリン、JNJ−7706621、BMS−387032(別名:SNS−032)、PHA533533、PD332991、ZK−304709およびAZD−5438が挙げられる。
セリシクリブ(ロスコビチン(roscovitine)のR異性体であり、他にはCYC202として知られる)は、化学名が(2R)−2−[[9−(1−メチルエチル)−6−[(フェニルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イル]アミノ]−1−ブタノールである。セリシクリブは、リンパ性白血病、非小細胞肺癌、糸球体腎炎、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫および乳癌を含む様々な癌の治療の可能性に関して、臨床試験において評価されている。臨床試験において観察される毒性としては、悪心/嘔吐ならびに衰弱、皮疹および低カリウム血症が挙げられる。他の毒性としては、可逆的な腎機能障害およびトランスアミナーゼ上昇、ならびに嘔吐が挙げられた。
アルボシジブ(他にはフラボピリドール、HMR1275またはL86−8275として知られ、化学名5,7−ジヒドロキシ−8−(4−N−メチル−2−ヒドロキシピリジル)−6’−クロロフラボンである)は、食道癌、胃癌、前立腺癌、肺癌および結腸癌、ならびにさらに慢性リンパ性白血病、および多発性骨髄腫、リンパ腫を含む様々な癌の治療の可能性に関して臨床試験において研究されており、観察される最も一般的な毒性は、下痢、腫瘍疼痛、貧血、呼吸困難および疲労であった。
7−ヒドロキシスタウロスポリン(他にはUCN−01として知られる)は、慢性リンパ性白血病、膵臓腫瘍および腎腫瘍を含む様々な癌の治療の可能性に関して臨床試験において評価されており、観察される有害事象としては、悪心、頭痛および高血糖が挙げられた。
JNJ−7706621(化学名N3−[4−(アミノスルホニル)−フェニル]−1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジアミン)は、メラノーマおよび前立腺癌の治療の可能性に関して前臨床試験の対象である。BMS−387032(化学名N−[5−[[[5−(1,1−ジメチルエチル)−2−オキサゾリル]−メチル]チオ]−2−チアゾリル]−4−ピペリジンカルボキサミド)は、腎細胞癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌および平滑筋肉腫などの転移性固形腫瘍に罹患する患者のための見込みのある抗癌剤として、第I相試験において評価されている。この薬物は、一次毒性として示される一時的な好中球減少があり、耐容性は良好であった。他の副作用としては、一時的な肝臓アミナーゼ上昇、胃腸毒性、悪心、嘔吐、下痢および食欲不振を含んでいた。PHA533533(化学名(αS)−N−(5−シクロプロピル−1H−ピラゾール−3−イル)−α−メチル−4−(2−オキソ−1−ピロリジニル)−ベンゼン−アセトアミド)は、前立腺腫瘍、結腸腫瘍および卵巣腫瘍などの様々な癌の治療の可能性に関して前臨床試験の対象である。PD332991(化学名8−シクロヘキシル−2−[[4−(4−メチル−1−ピペラジニル)フェニル]アミノ]−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン)は、様々な癌の治療の可能性に関して前臨床試験の対象である。前臨床データは、生体内モデルにおける著しい腫瘍退縮を実証し、PD332991が高度に選択的で強力なCDK4阻害剤であることを示唆する。
ZK−304709は、PCT特許明細書第WO02/096888号中に記載された、経口の2重特異性CDKおよびVEGFRキナーゼの阻害剤であり、様々な癌の治療の可能性に関して前臨床試験の対象である。AZD−5438は、選択的サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤であり、固形癌の治療について前臨床開発中である。セリシクリブは、例えば、PCT特許明細書第WO97/20842号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。アルボシジブは、例えば、米国特許明細書第4900727号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。7−ヒドロキシスタウロスポリンは、例えば、米国特許明細書第4935415号中記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。JNJ−7706621は、例えば、PCT特許明細書第WO02/057240号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。BMS−387032は、例えば、PCT特許明細書第WO01/44242号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。PHA533533は、例えば、米国特許明細書第6455559号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。PD332991は、例えば、PCT特許明細書第WO98/33798号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。ZK−304709は、例えば、PCT特許明細書第WO02/096888号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:検討される実施形態としては、抗癌剤が、1つまたは複数の上記の具体的な化合物から選択されるCDK阻害剤である組合せが挙げられる。したがって、本発明による組合せで用いる好ましいCDK阻害剤としては、セリシクリブ、アルボシジブ、7−ヒドロキシスタウロスポリン、JNJ−7706621、BMS−387032、PHA533533、PD332991およびZK−304709が挙げられる。本発明よる組合せで用いる具体的なCDK阻害剤としては、セリシクリブ、アルボシジブ、7−ヒドロキシスタウロスポリン、JNJ−7706621、BMS−387032、PHA533533、PD332991およびZK−304709が挙げられる。
薬量:CDK阻害剤は、例えば1日に、0.5〜2500mg/kg、より好ましくは10〜1000mg/kg、あるいは0.001〜300mg/kg、より好ましくは0.01〜100mg/kgの用量で、特にセリシクリブについては10〜50mgの用量で、アルボシジブについては上述の米国特許明細書第4900727号に従う用量で、7−ヒドロキシスタウロスポリンについては0.01〜20mg/kgの用量で、JNJ−7706621については0.001〜300mg/kgの用量で、BMS−387032については0.001〜100mg/kg、より好ましくは0.01〜50mg/kg、および最も好ましくは0.01〜20mg/kgの用量で、PHA533533については10〜2500mgの用量で、PD332991については1〜100mg/kgの用量で、およびでZK−304709については0.5〜1000mg、好ましくは50〜200mgの用量で投与されてもよい。
これらの用量は、治療の1過程あたり例えば1回、2回、それ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
15.COX−2阻害剤
定義:「COX−2阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)酵素の活性を阻害または修飾する化合物を定義するために本明細書で使用される。
生物学的活性:本明細書で記載されるような1つまたは複数の薬理作用を介して作用するCOX−2阻害剤は、適切な抗癌剤として同定されてきた。
技術背景:最近では、癌化学療法における研究は、癌の病因学におけるシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)酵素の役割に焦点を合わせてきた。疫学的調査から、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば関節炎などの症状を治療するアスピリンおよびイブプロフェンを繰り返し服用する人は、結腸直腸ポリープ、結腸直腸癌および結腸直腸癌に起因する死亡が低率であることが示されている。NSAIDは、炎症過程において生体によって産生され前癌組織によってもまた産生されるシクロオキシゲナーゼ酵素を阻害する。例えば結腸癌において、COX−2レベルの劇的な増加が観察される。腫瘍増殖のための鍵となる要因の1つは、腫瘍の増加したサイズを維持する血液の供給である。多くの腫瘍が、癌の周囲に網目状に新しい血管を生成するように生体を誘発する化学経路(血管新生と呼ばれる過程)を利用することができる。COX−2はこの過程において役割を持つと考えられる。したがって、COX−2の阻害が癌の治療のために効果的であろうことが結論付けられ、COX−2阻害剤がこの目的のために開発されている。例えば、セレコキシブ(化学名4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド)は、膀胱癌および食道癌、腎細胞癌、子宮頸癌、乳癌、膵臓癌、非ホジキンリンパ腫ならびに非小細胞肺癌を含む様々な癌の治療のために研究されている選択的なCOX−2阻害剤である。
薬量:COX−2阻害剤(例えばセレコキシブ)は、100〜200mgのような用量で、例えば毎日、投与することができる。
前記用量は、例えば治療の1過程あたり1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
問題:最も一般的な副作用は、頭痛、腹痛、消化不良、下痢、悪心、鼓腸および不眠症である。患者に対する有害な毒性副作用についての可能性を減少させるように、COX−2阻害剤のより低用量の使用のための手段を提供する必要がある。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:一実施形態では、COX−2阻害剤はセレコキシブである。セレコキシブは、例えば商品名セレブレックス(Celebrex)としてファイザー社から市販されており、また例えばPCT特許明細書第WO95/15316号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
市販されている他の2つのCOX−2阻害剤は、アルコキシア(Arcoxia)(メルク社からのエトリコキシブ(etoricoxib))およびノバルティス社のCOX−2阻害剤ルミラコキシブ(Prexige)である。
16.HDAC阻害剤
定義:「HDAC阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の活性を阻害または修飾する化合物を定義するために本明細書で使用される。
生物学的活性:本明細書で記載されるような1つまたは複数の薬理作用を介して作用するHDAC阻害剤は、適切な抗癌剤として同定されている。
技術背景:ヒストンの可逆的アセチル化は、DNAに対する転写因子のアクセシビリティーを変化させることによって作用する、遺伝子発現の主要な調節因子である。正常細胞において、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)およびヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HDA)は共に、バランスを維持するために、ヒストンのアセチル化のレベルを制御する。HDAの阻害は過アセチル化されたヒストンの蓄積をもたらし、それは様々な細胞反応をもたらす。HDAの阻害剤(HDAI)は、癌細胞へのHDAの阻害剤の治療上の効果について検討されてきた。HDAI研究の分野における最近の進展は、腫瘍の治療のために適切な活性化合物を提供した。
蓄積した証拠から、HDAIは他の化学療法剤との組合せで使用された場合により有効であることが示唆されている。有効性および安全性の両方について、相乗的および相加的な長所がある。HDAIとの化学療法剤の組合せの治療上の効果は、組合せにおける各構成要素のより低い安全用量域をもたらすことができる。
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤の研究は、ヒストン脱アセチル化酵素が細胞増殖および分化において重要な役割を果たすことを示す。阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)はG1およびG2期の両方で細胞周期の停止を引き起こし、異なる細胞株の形質転換した表現型を復帰させて、フレンド白血病細胞および他のものの分化を誘導する。TSA(およびスベロイラニリド(suberoylanilide)ヒドロキサム酸(SAHA))は、細胞増殖を阻害、最終分化を誘導、そしてマウスにおける腫瘍の形成を阻害することが報告されている(フィニン(Finnin)ら、ネイチャー(Nature)、401:188〜193、1999年)。
トリコスタチンAが線維化(例えば肝臓線維化、肝硬変)の治療において有用であることもまた報告されている。(ヘールツ(Geerts)ら、1998年3月11日に公開の欧州特許出願EP0 827 742)。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:本発明による使用のための好ましいHDAC阻害剤は、TSA、SAHA、JNJ−16241199、LAQ−824、MGCD−0103およびPXD−101(上述)から選ばれる。
したがって、本発明での使用に適したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の合成阻害剤としては、ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson and Johnson)からのJNJ−16241199、ノバルティス社からのLAQ−824、メチルジーン(MethylGene)からのMGCD−0103、およびプロリフィックス(Prolifix)からのPXD−101が挙げられる。
JNJ−16241199は以下の構造を有する。
MGCD−0103は以下の構造を有する。
LAQ−824は以下の構造を有する。
本発明での使用に適したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の他の阻害剤としては、限定されるものではないが、アボット・ラボラトリーズからのペプチドのクラミドシン(chlamydocin)およびA−173もまた挙げられる。
A−173は以下の構造を備えたスクシンイミド大環状化合物である。
薬量:一般的には、HDAC阻害剤については、治療上効果的な量は、0.005mg/kg体重〜100mg/kg体重、および特に0.005mg/kg体重〜10mg/kg体重と予測される。1日を通じて適切な間隔で2、3または4回以上のサブ用量として必要な用量を投与することが適切かもしれない。前記サブ用量は、例えば0.5〜500mgを含む単位用量形態、および特に単位用量形態あたり10mg〜500mgの有効成分として製剤化されてもよい。
17.選択的免疫反応モジュレーター
選択的免疫反応モジュレーターとしてはレナリドマイドおよびサリドマイドが挙げられる。
レナリドマイド(レブリミド)は、セルジーン(Celgene)により開発された経口サリドマイド誘導体であり、TNF−アルファおよびインターロイキン−1ベータの強力な阻害剤であり、5q−骨髄異形成症候群多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病グリオーマ、皮膚T細胞リンパ腫および上皮性卵巣癌の治療に関して開発されている。
レナリドマイド(3−(4−アミノ−1−オキソイソインドリン−2−イル)ピペリジン−2,6−ジオン)は次の構造を有する。
サリドマイドは、その催奇形効果の報告の結果として広く認知されるようになった(最も顕著なものは、1960年代にヨーロッパおよびカナダにおいてサリドマイドの投与を受けた女性に生まれた12000人に及ぶ子供における四肢奇形)鎮静および制吐薬である。セルジーンは、サリドマイドを経口TNF−アルファ阻害剤として開発および発売した(ファーミオン(Pharmion)に売却)。いくつかの種の腫瘍形成におけるサリドマイドの抗腫瘍活性の可能性に関する広範囲な臨床上の証拠(再発性/治療抵抗性多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)および骨髄異形成症候群(MDS)における顕著な活性)が蓄積されている。また、急性骨髄性白血病、骨髄様化生を伴う骨髄繊維症、腎細胞癌、悪性グリオーマ、前立腺癌、カポジ肉腫および結腸直腸癌における生物学的活性の証拠がある。
サリドマイド(1,3−ジオキソ−2−(2,6−ジオキソピペリジン−3−イル)イソインドリン)は次の構造を有する。
薬量:サリドマイドは、有利には、耐えられる限り連続的に100〜800mg/日の用量で投与されてもよい。レナリドマイドは、有利には、耐えられる限り連続的に5〜40mgの用量で投与さてもよい。
18.DNAメチル化酵素阻害剤
本明細書では「DNAメチル化酵素阻害剤」または「DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、直接的または間接的にDNAのメチル化を混乱、破壊、遮断、修飾または阻害する化合物を指す。それらはまた「低メチル化剤(hypomethylating agents)」とも呼ばれる。
生物学的活性:本明細書で記載されるような1つまたは複数の薬理作用を介して作用するDNAメチル化酵素阻害剤は、適切な抗癌剤として同定されてきた。
技術背景:癌化学療法のための標的の1つはDNA合成であり、これは腫瘍DNAの適切なメチル化に依存する可能性がある。直接的または間接的にDNAのメチル化を混乱、破壊、遮断、調節または阻害する化合物は有用な抗癌剤であり得る。
DNAメチル化酵素阻害剤のテモゾロマイドは、多形性神経膠芽腫の治療のために使用され、進行した転移性悪性メラノーマ(進行した転移性悪性メラノーマに罹患する患者の一次治療など)に罹患する患者の一次治療に使用される、また初回再発の悪性グリオーマの治療に関して研究および使用されている。この化合物は、生理的なpHで、活性化合物(グアニン残基のO6位でのDNAのメチル化の原因であるモノメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド(MTIC))への迅速な化学変換を受ける(それはDNAメチルトランスフェラーゼの発現抑制を引き起こし、そのため低メチル化を生ずると思われる)。
問題:テモゾロマイド治療に関連した最も一般的な副作用は、悪心、嘔吐、頭痛、疲労、血小板減少および便秘である。DNAメチル化酵素阻害剤の抑制性の有効性を増加させ、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、シグナル伝達阻害剤のより低用量の使用のための手段を提供する必要がある。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:一実施形態では、DNAメチル化酵素阻害剤は、テモゾロマイド(3,4−ジヒドロ−3−メチル−4−オキソイミダゾ[5,1−d]−as−テトラジン−8−カルボキサミド)である。テモゾロマイドは、例えば、商品名テモダール(Temodar)としてシェーリング社から市販されており、また例えば、ドイツ特許明細書第3231255号中に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
本発明の組合せで使用するさらなるDNAメチル化酵素阻害剤は、下記に示す構造を有するデシタビン(別名:ダコジェン(Dacogen))である。
スーパージェンおよびMGIファーマはデシタビン(ダコジェン)(DNA上のシトシン残基のメチル化を防ぎ、遺伝子プロモーターの低メチル化を起こし、これにより抑制された遺伝子を再活性化するDNAメチル化酵素の阻害剤)を開発した。デシタビン/ダコジェンは、生体外で広範囲の悪性細胞に細胞毒性がある。これは、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)および骨髄異形成症候群(MDS)に対する有意な活性を示す。デシタビン/ダコジェンは、骨髄異形成症候群(MDS)および二次性MDS(慢性骨髄単球性白血病、不応性貧血、環状鉄芽球性不応性貧血、芽球増加性不応性貧血および移行期芽球増加性不応性貧血を含む)の治療に関して示唆されている。
デシタビン/ダコジェンはデオキシシチジン(2’−デオキシ−5−アザシチジンのベータ−D−アノマー)のアナログである。これは、窒素によるピリミジン環の第5位の置換によりデオキシシチジンと異なる。デシタビンは、関連するアナログであるファーミコンの5−アザシチジン(ビダザ(Vidaza))(リボース糖を含む)とは対照的に、デオキシリボースを含んでいる。デシタビンはしたがって、デオキシリボヌクレオシドであり、RNAに組み込まれる5−アザシチジンとは対照的に、DNA(RNAではなく)に組み込まれる。デシタビンおよび5−アザシチジンは、ピリミジン環の第5位での修飾により、シトシンアラビノシドおよびゲムシタビンなど他のピリミジンアナログと異なる。これらの後者の薬剤にはないこの顕著な特徴は、DNAメチル化酵素の阻害の原因である。シュードイソシチジン(Pseudoisocytidine)および5−フルオロ−2’−デオキシシチジン(ピリミジン環の第5位の修飾を有する別のアナログ)もまた脱メチル化を阻害する。
デシタビン/ダコジェンは、治療サイクルとして6週ごとに3日間8時間ごとに3時間の期間にわたって15mg/m2投与されるか、サイクルとして通常6週ごとに1週間または2週間1日当たり20mg/m2で送達される1時間の注入という1日の服薬スケジュールで投与される。
中毒量ではデシタビン/ダコジェンは、白血球減少症、血小板減少および体重減少をもたらす。デシタビンの主要な毒性は骨髄抑制であり、これは治療剤の投与量および継続期間に比例する。効果は高投与量(>200mg/m2/日)で顕著であり、骨髄抑制は他の細胞毒性剤の同時投与により増強される。好中球減少性感染および骨髄抑制の他の合併症は致命的であると判明した。非血液学的な副作用としては、悪心、嘔吐、粘膜炎および脱毛が挙げられる。
デシタビン/ダコジェンおよび他のアナログは、スーパージェンのUS−03432549で概説されるようにそしてWO006/017278およびWO2006/037024でさらに検討されているように調製することができる。
本発明の組合せで用いるさらなるDNAメチル化酵素阻害剤は、アザシチジン(azacytidine)(別名:5−アザシチジン(azacitidine)、5−アザシチジン(azacytidine)またはビダザ)であり、皮下投与される低メチル化剤でありDNAメチル化酵素阻害剤である。これは、不応性貧血(RA)または環状鉄芽球性RA、芽球増加性RA、移行期芽球増加性RAおよび慢性骨髄単球性白血病を含むすべての骨髄異形成症候群(MDS)サブタイプの治療に用いられる。
5−アザシチジン(ビダザ)は、MDS治療に関して1日2回皮下にまたは静脈経路投与を通して投与することができる。
これは、チェコスロバキア科学アカデミー(Ceskoslovenska Akademie Ved)からのDE1922702、GB1227691およびFR2008048ならびにファーミオンからのWO2004082618、WO2004082619およびWO2004082822に記載されているように、ならびにそれらに類似した方法により調製することができる。
薬量:DNAメチル化剤(例えばテモゾロマイド)は、体表面積1平方メートルあたり0.5〜2.5mg(mg/m2)、特に約1.3mg/m2のような用量で投与することができる。これらの用量は、治療の1過程あたり例えば1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
19.プロテアソーム阻害剤
定義:本明細書では「プロテアソーム阻害剤」なる語は、細胞周期に関与する生物学的過程などの、多くの短期間の生物学的過程の半減期を直接的または間接的に混乱、破壊、遮断、修飾または阻害する化合物を指す。該用語はしたがって、プロテアソーム(他の細胞タンパク質のターンオーバーに関与する巨大タンパク質複合体)の作用を遮断する化合物を包含する。該用語はまた、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を包含する。
生物学的活性:本明細書で記載されるような1つまたは複数の薬理作用を介して作用するプロテアソーム阻害剤は、適切な抗癌剤として同定されてきた。
技術背景:別の類の抗癌剤はプロテアソーム阻害剤である。プロテアソームは、細胞周期に関与する生物学的過程などの、多くの短期間の生物学的過程の半減期を制御する。したがって、プロテアソームの機能不全は、細胞周期の異常制御および抑制されない細胞増殖を引き起こしうる。
細胞周期は、正のシグナルおよび負のシグナルによって制御される。正常細胞において、プロテアソームは、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤などの細胞周期を阻害するタンパク質を破壊する。プロテアソーム機能の阻害は、細胞周期停止および細胞死を引き起こす。ひとつには腫瘍細胞はより急速に分裂するので、そしてひとつには腫瘍細胞の正常な制御経路の多くは破壊されているので、腫瘍細胞は正常細胞よりもプロテアソーム機能の阻害の効果に対してより感受性がある。プロテアソーム阻害に対する正常細胞と癌細胞の分化応答についてのメカニズムは完全には理解されていない。全体として、癌細胞はプロテアソーム阻害剤に対してより感受性があり、その結果プロテアソームの阻害剤は特定の癌の効果的な治療になり得る。
そのようなプロテアソーム阻害剤の1つはボルテジミブ(bortezimib)であり、その化学名は[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]−ボロン酸である。ボルテジミブは、プロテアソームの触媒部位内の鍵となるアミノ酸(すなわちスレオニン)と特異的に相互作用する。ボルテジミブは、多発性骨髄腫および他の多くの癌(白血病およびリンパ腫、ならびに前立腺癌、膵臓癌および結腸直腸癌を含む)の治療のために使用されている。さらに、ベルケイド(Velcade)は非ホジキンリンパ腫の治療に有用である。
問題:ボルテジミブによる最も一般的な副作用は、悪心、疲労感、下痢、便秘、血小板数減少、発熱、嘔吐および食欲減退である。ボルテジミブはまた末梢神経障害を引き起こしうる。したがって、患者に対する有害な毒性の副作用の可能性を減少させるように、より低用量の使用のための手段を提供する必要がある。
好ましい選択肢および具体的な実施形態:本発明による使用のための好ましいプロテアソーム阻害剤としては、ボルテジミブが挙げられる。ボルテジミブは、例えば、商品名ベルケイドとしてミレニアム・ファーマシューティカルズ社から市販されており、また例えば、PCT特許明細書第WO96/13266号に記載されているように、またはそれに類似した方法によって調製されてもよい。
薬量:プロテアソーム阻害剤(ボルテジミブなど)は、100〜200mg/m2のような用量で投与することができる。前記用量は、例えば治療の1過程あたり1回、2回、またはそれ以上投与されてもよく、それは例えば7、14、21または28日ごとに繰り返されてもよい。
抗生物質のブレオマイシンもまた、本発明による抗癌剤として細胞毒性薬として使用されすることができる。
20.オーロラ阻害剤
本発明の一実施形態では、補助化合物はオーロラキナーゼの阻害剤である。本発明の組合せにおける補助薬剤として使用する好ましいオーロラ阻害剤は、本明細書で定義される式(I’)の化合物である。しかしながら、本発明の組合せで使用するオーロラ阻害剤はまた、下記により詳細に記載される補助オーロラ阻害剤を含む。したがって、本発明の組合せは2種以上の本明細書に定義される式(I’)の化合物を含んでもよい(または本質的にそれらから成ってもよい)。
本明細書に定義される式(I’)のオーロラ阻害剤に加えて、本発明の組合せは1つまたは複数の補助オーロラ阻害剤またはモジュレーターーを含んでもよい。そのような補助オーロラ阻害剤またはモジュレーターは本明細書に記載される様々なオーロラ阻害剤から選ばれてもよく、好ましい補助オーロラ阻害剤は下記により詳細に検討される。
定義:本明細書では「オーロラキナーゼ阻害剤」なる語(または単に「オーロラ阻害剤」)は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、本明細書に記載されるオーロラキナーゼアイソフォームA、Bおよび/またはCのいずれの活性を阻害または修飾する化合物を指す。
「補助オーロラ阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、本明細書に記載されるオーロラキナーゼアイソフォームA、Bおよび/またはCのいずれの活性を阻害または修飾し、本明細書で定義される式(I’)の構造に一致しない化合物を指す。
技術背景:オーロラキナーゼは、細胞周期の制御に、および特に細胞の有糸分裂の過程において役割を果たす(オーロラキナーゼは細胞周期の分裂期において重要な役割を有する)。したがって、オーロラキナーゼ阻害剤は、癌などの増殖、細胞分裂、分化の障害がある疾患の治療に適用される可能性がある。特に有糸分裂およびまたは紡錘体欠陥を伴う腫瘍は、CDK阻害剤に感受性がある可能性ある。
オーロラキナーゼの阻害は有糸分裂過程を実質的に破壊することが示されており、オーロラAの阻害からは初期の有糸分裂効果、およびオーロラBの阻害によれば後期の細胞質分裂異常に導く。有糸分裂または細胞周期チェックポイントを活性化、妨害、修飾する薬剤とオーロラキナーゼ阻害剤とを組合せることは、細胞毒性に対する細胞の感受性を高めることができ、有益な組合せ効果が観察できると考えられている(アナンド(Anand S)、ペンリン・ロウ(Penrhyn-Lowe S)、ベンキタラマン(Venkitaraman AR.)、キャンサーセル(Cancer Cell.)2003年1月;3(1):51−62)。この文脈では、タキサン、エポチロンまたはビンカアルカロイドとオーロラキナーゼ阻害剤との組合せが有益であろうと予想される。特定のタキサン、エポチロンおよびビンカアルカロイドは本明細書に記載されている。
補助オーロラキナーゼ阻害剤の例としては、AZD1152、MK0457(VX680)、PHA−739358、MLN−8054、MP−235、特にMK0457(VX680)、PHA−739358、MLN−8054、MP−235が挙げられる。AZD1152は臨床評価を受けている。AZD1152は、血漿中で活性部分AZD1152−HQPA(AZD−1152ヒドロキシ−QPA、構造を下記に示す)に急速に変換されるプロドラッグである。進行した悪性固形腫瘍を有する患者における初期の研究において、週に2時間AZD1152を注入すると、p53非依存性の細胞の多核化および倍数性が誘導され、結果としてアポトーシスを生じた。これらの初期の研究は、好中球減少は用量制限的毒性(ASCO 2006)であることを示す。
AZD1152およびAZD1152−HQPAは、WO02/00649に記載されているように、またはそれに類似した方法により合成することができる。
MK0457(VX−680)は臨床評価を受けている。MK0457は、28日ごとに連続的な5日間の注入で治療抵抗性悪性腫瘍を有する患者に投与されている。これらの初期の研究は、好中球減少が用量制限的毒性(ASCO 2006)であることを示す。
MK0457は、ハリントン(Harrington)ら、ネイチャーメディシン(Nat Med.)2004年5月;10(3):262−7)ならびにWO02/057259、WO02/059111、WO02/059112、WO02/062789、WO02/068415、WO02/066461、WO02/050065、WO02/050066そして特にWO2004/000833に記載されているように、およびそれらに類似した方法により合成することができる。
PHA−739358(構造を下記に示す)は現在、第1相用量漸進多施設臨床試験においてネルビアノ・メディカル・サイエンス(Nerviano Medical Sciences Srl)により評価されている。
PHA−739358は、ファンチェリ(Fancelli)ら、ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)(2005年)、48(8)、3080−3084およびWO02/12242に記載されているように、およびそれらに類似した方法により合成することができる。
MLN−8054(化学名4−[9−クロロ−7−(2,6−ジフルオロ−フェニル)−5H−ベンゾ[c]ピリミド[4,5−e]アゼピン−2−イルアミノ]−安息香酸)は現在、第1相用量漸進多施設臨床試験において、リンパ腫を含む治療抵抗性固形腫瘍に罹患する患者で評価されている。
MLN−8054は、WO2005/111039に記載されているように、およびそれに類似した方法により合成することができる。
スーパージェンは2006年4月のモンティジェン(Montigen)の買収に続き、膵臓癌を含む様々な癌の治療の可能性に関して、MP−235(HPK−62)(4−(6,7−ジメトキシ−9H−1,3,9−トリアザ−フルオレン−4−イル)−ピペラジン−1−カルボチオ酸[4−(ピリミジン−2−イルスルファモイル)−フェニル]−アミド(構造を示す))を含む、アポトーシスを誘導し細胞分裂を阻害する一連の低分子オーロラ−2キナーゼ阻害剤を研究している。MP−235は、WO2005/037825に記載されているように、およびそれに類似した方法により合成することができる。
さらなるオーロラ化合物としては、式(I’)の追加の化合物、式(I”)のさらなる化合物を含む本明細書に記載のものが挙げられ、WO2005/002552(PCT/GB2004/002824)の式(I)において記載されたものも挙げられる。WO2005/002552は参照により本書に援用され、そこに記載の式(I)の化合物に関連する。
21.Hsp90阻害剤
定義:本明細書で用いる「Hsp90阻害剤」なる語は、本明細書に記載される熱ショックタンパク質90の活性を阻害または修飾する化合物を意味する。
技術背景:熱、毒素、放射線、感染、炎症および酸化体を含む細胞ストレスに応答して、すべての細胞は共通の一連の熱ショックタンパク質(Hsp)を産生する(マカリオ(Macario)およびデマカリオ(de Macario)2000年)。大部分の熱ショックタンパク質は分子シャペロンとして作用する。シャペロンは、折りたたみの中間段階でタンパク質と結合し安定させ、タンパク質がその機能的状態に折りたたまれることを可能にする。Hsp90は正常条件下で最も豊富にあるサイトゾルHspである。Hsp90には、主な型であるHsp90αおよび少量の型であるHsp90βの2種類のヒトアイソフォームがある。Hsp90は折りたたみの後期でタンパク質を結合し、そのタンパク質基質のほとんどがシグナル伝達に関与するという点で他のHspsと区別される。Hsp90のN末端ポケットで結合したATPは加水分解されていることが示されている。このATPアーゼ活性は、クライアントタンパク質における構造変化を可能にするために必要とされるHsp90における構造変化をもたらす。
Hsp90の活性化は、様々な他のシャペロンタンパク質との相互作用によってさらに調節され、Hsp70、Hip、Hop、p23およびp50cdc37を含む他のシャペロンとの複合体で単離することができる。他の多くのコシャペロンタンパク質もHsp90と結合することが実証されている。Hsp90は、正常細胞中の「潜在的」複合体とは対照的に、腫瘍細胞中の「活性化」マルチシャペロン複合体内で主に見出されるといういくつかの証拠がある。
癌表現型に関連した遺伝的不安定性が増加すると、変性タンパク質または変異タンパク質の産生が増加する。ユビキチン経路はまた、変性タンパク質または誤った折りたたみ構造のタンパク質から細胞を保護する働きをする(プロテアソーム分解のためにこれらのタンパク質を標的化することにより)。変異タンパク質は本来的に変性しており、したがって構造不安定性を示す可能性およびシャペロン系に対する必要条件が大きい(ジャンニーニ(Giannini)ら、モレキュラーセルバイオロジー(Mol.Cell Biol.)2004年;24(13):5667−76)。
報告されているHsp90クライアントタンパク質の数は現在100を超える。そのクライアントタンパク質の多くが細胞シグナル伝達、増殖および生存に関与するので、Hsp90は腫瘍学の対象として大きな関心を得ている。細胞増殖および生存に関与することが示されたHsp90プロテインキナーゼクライアントタンパク質は次のものを含む:細胞Src(c−Src)、ErbB2(Her2/neu)、ポロ様キナーゼ(Plks)、Akt(PKB)、c−Raf、B−RAF、Mek、上皮成長因子レセプター(EGFR)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、c−met、Cdk1、Cdk2、Cdk4およびCdk6、Wee−1、変異p53、低酸素誘引因子−1a(HIF−1a)。
Hsp90阻害剤の例としては、ハービマイシン(herbimycin)、ゲルダナマイシン(geldanamycin)(GA)、17−AAG(例えば、Kos−953およびCNF−1010)、17−DMAG(Kos−1022)、CNF−2024(経口プリン)およびIPI−504、特に17−AAG(例えば、Kos-953およびCNF−1010)、17−DMAG(Kos−1022)、CNF−2024およびIPI−504が挙げられる。好ましい化合物は、17−AAG(例えば、Kos−953およびCNF−1010)、17−DMAG(Kos−1022)およびIPI−504などのゲルダナマイシンアナログである。
アンサマイシン抗生物質ハービマイシン、ゲルダナマイシン(GA)および17−アリルアミノ−17−デスメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)は、ATPの結合をブロックし成熟した複合体への変換を防ぐATP結合部位阻害剤である(グレナート(Grenert)ら、1997年、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)、272:23834−23850)。Hsp90は遍在的に発現されているにもかかわらず、GAおよびそのアナログは、正常細胞株に比べて腫瘍細胞株に由来したHsp90に高い結合親和性を有する(カマル(Kamal)ら、ネイチャー、2003年;425:407−410)。GAはまた、腫瘍細胞においてさらに強力な細胞毒性活性を示し、異種移植マウスモデルにおいて腫瘍内でさらに高い濃度で隔離されている(ブラジデック(Brazidec)、ジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)2004年、47、3865−3873)。さらに、Hsp90のATPアーゼ活性は癌細胞の中で増加しており、癌細胞中のストレスレベルの増加を示している。Hsp90遺伝子増幅もまた、癌の後期に起こることが報告されている(ジョリー(Jolly)およびモリモト(Morimoto)、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(JNCI)第92巻、第19号、1564−1572、2000年)。
17−AAG(NSC−330507、17−アリルアミノゲルダナマイシン)はゲルダナマイシンの注射可能な半合成誘導体であり、癌の治療の可能性に関して国立癌研究所(NCI)および英国癌研究所と共同でコーサンバイオサイエンシズ(Kosan Biosciences)により開発中の、メリーランド大学にて同定されたHsp90のポリケチド阻害剤である。17−AAGの研究は、メラノーマ、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)およびホジキンリンパ腫(HL)において、および慢性骨髄性白血病(CML)に関してはイマチニブ(qv)との併用療法として開始されている。
17−AAGの構造は下記に概説される。17−AAGはWO02/36574に記載されているように、およびこれに類似の方法で調製することができる。
KOS−953は、元の製剤中に使用されるDMSO−卵レシチン賦形剤を置換する、患者の耐容性の向上およびより高い安定性を提供する目的でコーサンにより開発された17−AAG製剤である。これは、WO2005/110398に記載されているように、およびこれに類似の方法で調製することができる。
コンフォーマ(Conforma)は、癌の静注治療の可能性に関して、17−AAG(qv)の有機溶媒を含まない脂質ベースの製剤であるCNF−1010を開発している。これは、WO03/026571、WO02/069900およびWO2006/050333に記載されているように、およびこれらに類似の方法で調製することができる。17−AAGの経口製剤はコンフォーマによりUS2006/0067953中で記載されている。
17−DMAG(17−ジメチルアミノエチルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン塩酸塩、NSC−707545、構造を示す)は17−AAG(qv)のアナログである。これは水溶性のゲルダナマイシン誘導体であり、進行性の固形腫瘍に関して研究されている。コーサンは、国立癌研究所(NCI)からのライセンスを受け、固形腫瘍の治療の可能性に関してKOS−1022(17−DMAG)の静注用製剤を開発している。コーサンはまた、同じ適応に関してKOS−1022(qv)の経口製剤を開発している。
17−DMAGはWO03/013430に記載されているように、およびこれに類似の方法で調製することができる。
インフィニティー(Infinity)は、癌の治療の可能性に関して、静脈投与用水性製剤中で可溶な17−AAG(qv)のさらなるアナログであるHsp90阻害剤IPI−504を開発している。インフィニティーは、多発性骨髄腫(MM)および消化管間質性腫瘍(GIST)におけるIPI−504の研究を開始し、該化合物には他の血液癌および固形腫瘍に対して見込みがある。
IPI−504の構造(18,21−ジデヒドロ−17−デメトキシ−18,21−ジデオキシ−18,21−ジヒドロキシ−17−(2−プロペニルアミノ)−ゲルダナマイシンモノ塩酸塩と呼ばれる17−AAGの還元形態は)を下記に示す。これはWO2005/063714に記載されているように、およびこれに類似の方法で調製することができる。
コンフォーマセラピューティクスは、癌の治療の可能性に関して、CNF−2024(合成経口Hsp90阻害剤)を開発している。CNF−2024は経口プリンアナログである。
これはジャーナル・オブ・メディシナルケミストリー(J. Med. Chem.)2006年、49:817−828に記載されているように調製することができる。
22.チェックポイント標的剤
細胞増殖周期は複雑なプロセスであり、このプロセスの間は細胞はまずその染色体を複製し、その後細胞分裂または細胞質分裂を受ける。この周期の様々な段階で全ての適切な事象が起こるまでこの周期を経るさらなる進行を妨ぐためのメカニズムが存在する。これにより、必須の連続的な方式で細胞が該周期を経て進行し、細胞のDNAの全体性が確保される。そのようなチェックポイントの一つは有糸分裂において起こることが知られている。これは有糸分裂チェックポイントまたは紡錘体チェックポイントなどと様々に呼ばれる。すべての染色体がこれらの中心体を介して紡錘体に適切に結合されるまで細胞はこのチェックポイントで保持される。このチェックポイントにおける欠陥は、癌細胞に特有である異数性の表現型、または娘細胞における染色体の不均衡を導く。いくつかの癌治療はこのチェックポイントの破壊により作用する(染色体の誤った配置または早期の細胞質分裂を引き起こし、これにより腫瘍細胞の優先的な死をもたらすチェックポイントの活性化を導く)ことが知られている。例えば、タキサンおよびエポチロンは、紡錘体微小管の安定化を引き起こし正常な紡錘体収縮過程を妨げる類の薬剤である。ビンカアルカロイドは、微小管中の主要なタンパク質であるチューブリンに対する作用を通じて紡錘体形成を妨げる作用をする別の類の薬剤である。白金化合物およびヌクレオシドアナログ(5−FUなど)を含むDNAの損傷を引き起こすまたはDNA複製を破壊する薬剤は、チェックポイントにおける細胞停止およびその後の細胞死をもたらす。これら薬剤はしたがって、これらの治療上の作用のために、機能しているチェックポイントを必要とする。
オーロラキナーゼには細胞周期の有糸分裂期における重要な役割がある。オーロラキナーゼの阻害は、オーロラAの阻害からは初期の有糸分裂効果、およびオーロラBの阻害からは後期の細胞質分裂異常を導く有糸分裂過程の実質的な破壊をもたらすことが示されている。有糸分裂または細胞周期チェックポイントを活性化、妨害、修飾する薬剤とオーロラキナーゼ阻害剤とを組合せることは、細胞毒性に対する細胞の感受性を高めることができ、有益な組合せ効果が観察できると考えられている(アナンド(Anand S)、ペンリン・ロウ(Penrhyn-Lowe S)、ベンキタラマン(Venkitaraman AR.)、キャンサーセル(Cancer Cell)2003年、1月;3(1):51−62)。この文脈において、タキサン、エポチロンまたはビンカアルカロイドとオーロラキナーゼ阻害剤との組合せが有益であろうと予想される。特定のタキサン、エポチロンおよびビンカアルカロイドは本明細書に記載されている。
さらなるチェックポイント標的剤は、シスプラチンなどの白金化合物および5−FUなどのヌクレオシドアナログを含むDNAの損傷を引き起こしまたはDNA複製を破壊してチェックポイントにおける細胞停止およびその後の細胞死をもたらすものである。この文脈において、白金化合物およびヌクレオシドアナログとオーロラキナーゼ阻害剤との組合せは、細胞毒性に対する細胞の感受性を高めることができ、有益であろう予想される。特定の白金化合物およびヌクレオシドアナログは本明細書に記載されている。
本発明のオーロラ阻害剤と組合せて使用して特に有益であると予想される、細胞周期チェックポイントを活性化、妨害または修飾するさらなるチェックポイント標的化薬剤としては、ポロ様キナーゼ阻害剤(Plk)、CHKキナーゼ阻害剤、BUBキナーゼファミリー阻害剤およびキネシン阻害剤が挙げられる。ポロ様キナーゼは、M期中での細胞周期進行の重要な調節因子である。Plkは、紡錘体装置の集合におよびCDK/サイクリン複合体の活性化に関与する。Plk1は、Cdc25Cのリン酸化および活性化によってCDKのチロシン脱リン酸化を調節する。CDK1活性化は、次に紡錘体形成およびM期への進入を引き起こす。Chk1およびChk2などのチェックポイントキナーゼの重要性は本明細書に記載されている。
したがって、有糸分裂チェックポイントを破壊して作用し、よって本発明の化合物と組合せて有益であり得る開発中の他の薬剤としては、ポロ様キナーゼ阻害剤(例えば、BI−2536)、CHKキナーゼ阻害剤(例えば、イロフルベン(Irofulven)(CHK2阻害剤)、7−ヒドロキシスタウロスポリン(CHK1およびPCK両方の阻害剤であるUCN−01)、およびPD−321852)、BUBキナーゼファミリー阻害剤、ならびにCK0106023、CK−0060339およびSB−743921(下記に構造を示す)などのキネシン阻害剤(別名:有糸分裂キネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤)。
CK0106023、CK−0060339およびSB−743921はWO01/30768およびWO01/98278に記載されているように、およびこれらに類似の方法で調製および使用することができる。
CHKキナーゼ阻害剤としては、イロフルベン、UCN−01およびPD−321852が挙げられる。イロフルベン(構造を示す)は、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、乳癌、肺癌、結腸癌およびグリオーマを含む治療抵抗性および再発性腫瘍の治療の可能性に関する、イルジンS(illudin S)(Omphalotus illudens種のキノコからの毒素)に由来の半合成化合物である。イロフルベンはWO98/05669に記載されているように、またはこれに類似の方法で調製することができる。
PD−321852(チェックポイントキナーゼChkI阻害剤)(構造を示す)は、癌の治療の可能性に関してファイザー社により研究されている。
PD−321852は、WO01/53274、WO01/53268および特にWO03/091255に記載されているように、またはこれらに類似の方法で調製および使用することができる。
BI−2536(下記に構造を示す)は、固形腫瘍の治療の可能性に関する、セリン−スレオニンキナーゼのポロ様キナーゼ−1(PLK−1)の阻害剤である。BI−2536はWO2004/076454、WO2006/018220、WO2006/018221およびWO2006/018222に記載されているように、またはこれらに類似の方法で調製および使用することができる。
さらに、G2/M期の細胞を停止するチェックポイント標的剤もまた、同様の有益な効果を得るために本発明のオーロラキナーゼ阻害剤と組合せられ得る。したがって、白金化合物およびCDK阻害剤はしたがって、本発明の組合せと組合せて有益であろうことが予想され、よってそれらはさらなるチェックポイント標的剤となる。特定の白金化合物およびCDK阻害剤は本明細書に記載されている。
したがって、本発明による使用のためのチェックポイント標的剤の例としては、白金化合物、ヌクレオシドアナログ、CDK阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、ポロ様キナーゼ阻害剤、CHKキナーゼ阻害剤、BUBキナーゼファミリー阻害剤およびキネシン阻害剤、特に白金化合物、ヌクレオシドアナログ、タキサンおよびビンカアルカロイド、より具体的には、タキサンおよびビンカアルカロイドなどの有糸分裂チェックポイントを標的とするチェックポイント標的剤が挙げられる。本発明の具体的な組合せは、シスプラチンまたはビンブラスチンまたはタキソールまたは5FU、特にタキソールを含む。
23.DNA修復阻害剤
DNA修複阻害剤としてはPARP阻害剤が挙げられる。
定義:本明細書では「PARP阻害剤」なる語は、上記のように、そのイオン、塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、N−オキシド、エステル、プロドラッグ、アイソトープおよび保護形態(好ましくはその塩または互変異性体または異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物、およびより好ましくはその塩または互変異性体またはN−オキシドまたは溶媒和物)を含む、ポリアデノシン二リン酸リボース(ポリ(ADP−リボース))核酵素のファミリーの活性を阻害または修飾する化合物を定義するために使用される。また、PARP阻害剤はまた「DNA修複阻害剤」と呼ばれ得る。
生物学的活性:PARP阻害剤は、化学療法増感剤としての役割があり(例えば、抗癌療法後にDNA修複を妨げることによる)、抗癌治療に対する患者の全体的な応答の増強における役割を有する可能性がある。PARP阻害剤はまた、DNA修複における内因的欠損のある主要を有する患者における抗ガン剤として独立して作用し得る。
技術背景:PARP酵素は、200個を超えるADP−リボース単位からなる分枝ポリマーであるポリ(ADP−リボース)を合成する。ポリ(ADPリボース)のタンパク質アクセプターは、DNAの全体性を維持することに直接的または間接的に関与する。該タンパク質アクセプターとしては、ヒストン、トポイソメラーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、DNAリガーゼならびにCa2’およびMg2依存性エンドヌクレアーゼが挙げられる。PARPタンパク質は多くの組織中、最も顕著には免疫系、心臓、脳および生殖系列細胞中で高レベルで発現される。正常な生理学的条件下では、PARP活性は最小限である。しかしながら、DNAの損傷は500倍に及ぶPARPの即時活性化を引き起こす。
PARPは、損傷を受けたDNAフラグメントにより活性化され、一旦活性化されると、ヒストンおよびPARP自体を含む様々な核タンパク質への最大100個のADPリボース単位の付加を触媒する。3−アミノベンズアミドなどのPARP阻害剤が、例えば過酸化水素または電離放射線に応答して全体的なDNA修複に影響を及ぼすことも公知である。DNA鎖切断の修復におけるPARPの極めて重要な役割は、特に電離放射線により直接的にまたは、メチル化剤(特にテモゾラミド(temozolamide)、トポイソメラーゼI阻害剤ならびにシスプラチンおよびブレオマイシンなどの他の化学療法剤)により誘導されたDNA損傷の酵素的修復の後に間接的に引き起こされた場合において十分に確証されている。ノックアウトマウス、トランスドミナント阻害モデル(DNA結合ドメインの過剰発現)、アンチセンスおよび低分子量阻害剤を使用した様々な研究は、DNA損傷の誘発の後に修復および細胞生存におけるPARPの役割を実証した。PARP酵素活性の阻害は、DNA損傷治療に対する腫瘍細胞の感受性増加を引き起こすはずである。
PARP阻害剤は、恐らくDNA鎖切断の再結合を妨げるPARP阻害剤の能力によりおよびいくつかのDNA損傷シグナル伝達経路に影響を及ぼすことにより、(低酸素)腫瘍細胞に放射線感受性を与えるのに効果的であり、腫瘍細胞が放射線療法後にDNAの致死および亜致死であり得る損傷からの回復を妨げるのに効果的であるということが報告されている。PARP阻害剤は癌を治療するために使用されている。先端技術の最近の包括的な検討は、インベスティゲーショナルドラッグス(IDrugs)2001年、4(7):804においてリ(Li)およびジャン(Zhang)により発表された。
好ましい選択肢および実施形態:本発明による使用のために好ましいPARP阻害剤は、バイエル社から市販のベンダムスチン(5−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−1−メチル−2−ベンズイミダゾール酪酸またはα−[1−メチル−5−[ビス(βクロロエチル)アミノ]−2−ベンズイミダゾリル]酪酸)、イノテックファーマシューティカルズ(Inotek Pharmaceuticals)からのINO−1001(パーデックス(Pardex))、バイパーサイエンシズ(BiPar Sciences)からのBSI−201、ファイザー社からのAG−014699、および小野薬品工業からのONO−2231(N−[3−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1−フタラジニル)フェニル]−4−モルホリンブタンアミドメタンスルフォネート)から選ばれる。
薬量:PARP阻害剤は、有利には、20〜100mgの1日投与量(例えば、ベンダムスチンに関しては21日サイクルにわたり30〜60分の注入で80〜120mg/m2(静脈内))で投与される。重要なPARP阻害剤は、転移性悪性メラノーマにおいて第3相併用試験が行われているファイザー社の製品である。これは、21日サイクルの投与のうちの1〜5日目に静脈内投与される。
24.Gタンパク質共役型受容体阻害剤(GPCR)
好ましいGPCRは、アトラセンタン(Atrasentan)(3−ピロリジンカルボン酸,4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−1−[2−(ジブチルアミノ)−2−オキソエチル]−2−(4−メトキシフェニル)−,[2R−(2α,3β,4α)]−)。アボット・ラボラトリーズからのアトラセンタンは、前立腺腫瘍の治療のための強力かつ選択的なエンドセリンA受容体拮抗剤である。また、グリオーマ、乳房腫瘍、肺腫瘍、脳腫瘍、卵巣腫瘍、結腸直腸腫瘍および腎腫瘍など他の癌型においての生物学的活性の証拠がある。
薬量:アトラセンタンは、有利には、例えば毎日10mgの用量で経口投与されてもよい。
抗癌剤の組合せ
本発明の組合せは、2つまたはそれ以上の補助化合物を含んでもよい。そのような実施形態において、補助化合物は抗癌剤であってもよい。そのような実施形態において、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、カルボプラチン、シスプラチン、タキソール、タキソテール、ゲムシタビンおよびビノレルビンから選ばれてもよい。好ましくは、前記2つまたはそれ以上のさらなる抗癌剤は、カルボプラチン、タキソールおよびビノレルビン、またはカルボプラチンおよびタキソールである。
カルボプラチン、タキソールおよびビノレルビンと式(I)または(I’)の化合物との組合せ、あるいはカルボプラチンおよびタキソールと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、非小細胞肺癌の治療のために特に適している。
あるいは、式(I)または(I’)の化合物と白金薬剤、タキソール、タキソテール、ゲムシタビン、ペメトレキセド、マイトマイシン、イホスファミド、ビノレルビン、エルロチニブおよびベバシズマブとの組合せ、あるいは、式(I)または(I’)の化合物とカルボプラチンおよびタキソールとのまたはシスプラチンおよびゲムシタビンとの組合せは、非小細胞肺癌の治療のために特に適している。
一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、5−FU、ロイコボリン、オキサリプラチン、CPT11およびベバシズマブから選ばれる。好ましくは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は、5−FU、ロイコボリンおよびCPT11、または5−FU、ロイコボリンおよびオキサリプラチンである。
5−FU、ロイコボリンおよびCPT11と式(I)または(I’)の化合物との組合せ、あるいは5−FU、ロイコボリンおよびオキサリプラチンと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、結腸癌の治療のために特に適している。さらに、5−FU、ロイコボリンおよびCPT11と式(I)または(I’)の化合物との組合せ、あるいは5−FU、ロイコボリンおよびオキサリプラチンと式(I)または(I’)の化合物との組合せ(それぞれの組合せはベバシズマブと共に)は、結腸癌の治療のために特に適している。
一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、メトトレキサート、タキサン、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン)、ハーセプチン、ラパチニブ、ベバシズマブ、ミトザントロン、エポチロン、5−FUおよびシクロホスファミドから選ばれる。別の実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、メトトレキセート、タキサン、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン)、ハーセプチン、5−FUおよびシクロホスファミドから選ばれる。一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、タキサン、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン)、ハーセプチン、5−FUおよびシクロホスファミドから選ばれる。一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、5−FU、メトトレキサート、シクロホスファミド、ドキソルビシンから選ばれる。好ましくは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は、5−FU、メトトレキサートおよびシクロホスファミド、または5−FU、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド、またはドキソルビシンおよびシクロホスファミドである。
5−FU、メトトレキサートおよびシクロホスファミドと式(I)または(I’)の化合物との組合せ、あるいは5−FU、ドキソルビシンおよびシクロホスファミドと式(I)または(I’)の化合物との組合せ、あるいはドキソルビシンおよびシクロホスファミドと式(I)または(I’)の化合物との組合せは乳癌の治療のために特に適している。
一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチンおよびプレドニゾンから選ばれる。別の実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチン、ボルテゾミブ、リツキシマブおよびプレドニゾンから選ばれる。好ましくは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチンおよびプレドニゾン、またはシクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾンであり、リツキシマブがあってもなくてもよい。好ましくは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチンおよびプレドニゾン、またはシクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾンである。
シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチンおよびプレドニゾンと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、非ホジキンリンパ腫(特に高悪性度非ホジキンリンパ腫)の治療のために特に適している。シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチン、リツキシマブおよびプレドニゾンと式(I)の化合物との組合せはまた、非ホジキンリンパ腫(特に高悪性度非ホジキンリンパ腫)の治療のために特に適している。
シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾンと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、非ホジキンリンパ腫(特に低悪性度非ホジキンリンパ腫)の治療のために特に適している。シクロホスファミド、ビンクリスチン、リツキシマブおよびプレドニゾンと式(I)との化合物との組合せはまた、非ホジキンリンパ腫(特に低悪性度非ホジキンリンパ腫)の治療のために特に適している。
一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンから選ばれる。別の実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ビンクリスチン、サリドマイド、ドキソルビシン、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンから選ばれる。好ましくは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンである。
ビンクリスチン、ドキソルビシン、サリドマイドおよびデキサメタゾンと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、多発性骨髄腫の治療のために特に適している。さらに、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、多発性骨髄腫の治療のために特に適している。
一実施形態では、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、(a)フルダラビンおよびリツキサマブまたは(b)フルダラビン、アルメンツザマブおよびリツキサマブから選ばれる。好ましくは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は、フルダラビンおよびリツキサマブである。
フルダラビンおよびリツキサマブと式(I)または(I’)の化合物との組合せは、慢性リンパ球性白血病の治療のために特に適している。
一実施形態では、本発明の組合せは次から選ばれる2つまたはそれ以上の抗癌剤(シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イリノテカン、フルダラビン、5FU、タキサンおよびマイトマイシンCなどのトポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、DNA結合剤、モノクローナル抗体、シグナル伝達阻害剤、および微小管阻害剤(チューブリン標的化剤))の組合せを場合により含まない。
一実施形態では、本発明の組合せは、抗アンドロゲン、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、DNAメチル化阻害剤およびCDK阻害剤から選ばれる少なくとも1つの抗癌剤を含む。
疾患特異的抗癌剤の組合せ
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫の治療に特に適するのは、式(I)の化合物と次のものとの組合せである:(a)モノクローナル抗体(例えば、インターロイキン6を標的とするもの)、(b)プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、(c)プロテアソーム阻害剤およびコルチコステロイド(例えば、ベルケイドおよびデキサメタゾン)、ならびに(d)コルチコステロイド、アルキル化剤およびレノリダミド/サリドマイド(例えば、プレドニゾロン、メルファランおよびサリドマイド)。
メラノーマ
メラノーマの治療に特に適するのは、式(I)の化合物と次のものとの組合せである:(a)DNAメチル化酵素阻害剤/低メチル化薬剤(例えば、テモゾラミド)、(b)アルキル化薬(例えば、ダカルバジンまたはフォテムスチン(fotemustine))、ならびに(c)DNAメチル化酵素阻害剤/低メチル化薬剤(例えば、テモゾラミド)およびDNA修複阻害剤/PARP阻害剤。
乳癌
乳癌の治療に特に適するのは、式(I)の化合物と次のものとの組合せである:(a)モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブおよびベビシザマブ(bevicizamab))、(b)モノクローナル抗体(例えば、トラスツズマブおよびベビシザマブ)およびタキサン、ならびに(c)代謝拮抗剤(例えば、カペシタビン)およびシグナル伝達阻害剤(例えば、ラパチニブ)。
前立腺癌
前立腺癌の治療に特に適するのは、式(I)の化合物とホルモンおよびGタンパク質共役受容体阻害剤との組合せである。
非小細胞肺癌(NSCLC)
NSCLCの治療に特に適するのは、式(I)の化合物と次のものとの組合せである:(a)白金化合物およびタキサン、ならびに(b)白金化合物および代謝拮抗剤。
具体的な本発明の組合せ
具体的な本発明による組合せとしては、式(I)または(I’)の化合物およびそのサブグループと併せて次の2つまたはそれ以上の抗癌剤とが挙げられる。
癌(および特に急性骨髄白血病)の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、アントラサイクリン、Ara C(別名:シタラビン)、6−メルカプトプリン、チオプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、ゲムツズマブ・オゾガミシンおよび顆粒球コロニー刺激因子の2つまたはそれ以上から選ばれる。さらに、癌(および特に急性骨髄白血病)の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、アントラサイクリン、Ara C(別名:シタラビン)、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ダウノルビシン、イダルビシン、ゲムツズマブ・オゾガミシンおよび顆粒球コロニー刺激因子の2つまたはそれ以上から選ばれる。あるいは、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、アントラサイクリン、Ara C(別名:シタラビン)、ダウノルビシン、イダルビシン、ゲムツズマブ・オゾガミシンおよび顆粒球コロニー刺激因子の2つまたはそれ以上から選ばれてもよい。
癌(および特に乳癌)の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ベバシズマブ、タキサン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェン、ドキソルビシン、ハーセプチン、5−フルオロウラシル、シクロホスファミド、エピルビシンおよびカペシタビン、特に5−FU、メトトレキサートおよびシクロホスファミド;5FU、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド;またはドキソルビシンおよびシクロホスファミドから選ばれる。好ましくは、癌(および特に乳癌)の治療に関して、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤はまた独立して、タキサン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェン、ドキソルビシン、ハーセプチン、5−フルオロウラシル、シクロホスファミド、エピルビシンおよびカペシタビン、特に5−FU、メトトレキサートおよびシクロホスファミド;5FU、ドキソルビシンおよびシクロホスファミド;またはドキソルビシンおよびシクロホスファミドから選ばれてもよい。
典型的な投薬レジメンは以下のものを含む:
シクロホスファミドを1日100mg/m2経口×14日間、ドキソルビシンを30mg/m2静注で1日目および8日目に、およびフルオロウラシルを500mg/m2静注で1日目および8日目に、以上を28日ごとに、例えば最大6サイクル繰り返す。
シクロホスファミドを600mg/m2静注で1日目に、およびドキソルビシンを60mg/m2静注で1日目に、以上を21日ごとに、例えば最大4サイクル繰り返す。
癌(および特に慢性リンパ球性白血病(CLL))の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、アレムツズマブ、クロラムブシル、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレジニゾロン(predinisolone)、フルダラビン、ミトキサントロンおよびリツキシマブ/リツキサマブ、特にフルダラビンおよびリツキサマブから選ばれる。好ましくは、癌(特に慢性リンパ球性白血病(CLL))の治療に関して、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、クロラムブシル、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレジニゾロン、フルダラビン、ミトキサントロンおよびリツキシマブ/リツキサマブ、特にフルダラビンおよびリツキサマブから選ばれる。
癌(および特に慢性骨髄性白血病(CML))の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ヒドロキシウレア、シタラビンおよびイマチニブから選ばれる。さらに、癌(および特に慢性骨髄性白血病(CML))の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ヒドロキシウレア、シタラビン、インターフェロン−アルファおよびイマチニブから選ばれる。あるいは、癌(および特に慢性骨髄性白血病(CML))の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ヒドロキシウレア、シタラビン、ダサチニブ、ニロチニブおよびイマチニブから選ばれる。
癌(および特に結腸癌治療)に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、セツキシマブ、5−フルオロウラシル、パンツズマブ(pantuzumab)、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン、ラルチレキセド(raltirexed)、カペシタビン、ベバシズマブ、オキサリプラチン、CPT11から選ばれる。あるいは、癌(および特に結腸癌治療)に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、セツキシマブ、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン、ラルチレキセド、カペシタビン、ベバシズマブ、オキサリプラチン、CPT11、特に5−フルオロウラシル、ロイコボリンおよびCPT11、またはフルオロウラシル、ロイコボリンおよびオキサリプラチンから選ばれる。
あるいは、癌(および特に結腸癌治療)に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン、ラルチレキセド、カペシタビン、ベバシズマブ、オキサリプラチン、CPT11およびアバスチン、特に5−フルオロウラシル、ロイコボリンおよびCPT11、またはフルオロウラシル、ロイコボリンおよびオキサリプラチンから選ばれる。
典型的な投薬レジメンは以下のものを含む:
フルオロウラシルを400〜425mg/m2静注で1〜5日目に、およびロイコボリンを20mg/m2静注で1〜5日目に、以上を28日ごとに、例えば6サイクル繰り返す。
イリノテカンを100〜125mg/m2静注で90分にわたって1、8、15および22日目に、フォリン酸を20mg/m2静注で1、8、15および22日目に、ならびにフルオロウラシルを400〜500mg/m2静注で1、8、15および22日目に、以上を42日ごとに疾患進行まで繰り返す。
オキサリプラチンを500mLのD5W中85mg/m2静注で120分にわたって1日目に、フォリン酸を200mg/m2の120分にわたる静注で1および2日目に、フォリン酸の後にフルオロウラシルを400mg/m2静注ボーラス投与で1および2日目に、次にフルオロウラシルを600mg/m2持続静注で22時間にわたって1および2日目に、以上を12日ごとに最大12サイクル繰り返す。
癌(および特に多発性骨髄腫治療)に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ビンクリスチン、ドキソルビシン、サリドマイド、デキサメタゾン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、エトポシド、パミドロネート、ゾレドロネートおよびボルテゾミブ、特にビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンから選ばれる。あるいは、癌(および特に多発性骨髄腫治療)に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メルファラン、プレドニゾン、シクロホスファミド、エトポシド、パミドロネート、ゾレドロネートおよびボルテゾミブ、特にビンクリスチン、ドキソルビシンおよびデキサメタゾンから選ばれる。
癌(および特に非ホジキンリンパ腫治療)に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、シクロホスファミド、ドキソルビシン/ヒドロキシダウノルビシン、ビンクリスチン/Onco−TCS(V/O)、プレドニゾロン、メトトレキサート、シタラビン、ブレオマイシン、エトポシド、リツキシマブ/リツキサマブ、フルダラビン、シスプラチンおよびイホスファミド(ifosphamide)、特に高悪性度非ホジキンリンパ腫には、シクロホスファミド、ドキソルビシン(ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチンおよびプレドニゾン、または低悪性度非ホジキンリンパ腫には、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾンから選ばれる。
癌(および特に非小細胞肺癌(NSCLC))の治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ベバシズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、マイトマイシン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンおよびビノレルビン、特にタキソール、ビノレルビンおよびカルボプラチン、またはタキソールおよびカルボプラチンから選ばれてもよい。あるいは、癌(および特に非小細胞肺癌(NSCLC))治療に関して、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ベバシズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンおよびビノレルビンから選ばれてもよい。癌(および特に非小細胞肺癌(NSCLC))治療に関して特に好ましくは、2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、マイトマイシン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンおよびビノレルビン、特にタキソール、ビノレルビンおよびカルボプラチン、またはタキソールおよびカルボプラチンから選ばれる。特に、前記2つまたはそれ以上の抗癌剤は独立して、ゲムシタビンおよびシスプラチンから選ばれる。
典型的な投薬レジメンは以下のものを含む:
ゲムシタビンを1000mg/m2静注で1、8および15日目に、ならびにシスプラチンを75〜100mg/m2静注で1日目に、以上を28日ごとに4〜6のサイクル繰り返す。
パクリタキセルを135〜225mg/m2静注で3時間にわたって1日目に、およびカルボプラチンを血中濃度曲線下面積6.0で静注で1日目に、以上を21日ごとに4〜6のサイクル繰り返す。
ドセタキセルを75mg/m2静注で1日目に、およびカルボプラチンを血中濃度曲線下面積5または6で静注で1日目に、以上を21日ごとに4〜6のサイクル繰り返す。
ドセタキセルを75mg/m2の静注で1日目に、およびシスプラチンを75mg/m2の静注で1日目、以上を21日ごとに4〜6サイクル繰り返す。
癌(および特に卵巣癌)の治療に関して、2種以上の抗癌剤は独立して、白金化合物(例えばシスプラチン、カルボプラチン)、タキソール、ドキソルビシン、リポソームのドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、メルファランおよびミトキサントロンから選ばれる。
癌(および特に前立腺癌)の治療に関して、2種以上の抗癌剤は独立して、ミトキサントロン、プレドニゾン、ブセレリン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、酢酸シプロテロン、メゲストロール/メゲストレル、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、パクリタキセル、ゾレドロン酸およびタキソテールから選ばれる。あるいは、癌(および特に前立腺癌)の治療に関して、2種以上の抗癌剤は独立して、ミトキサントロン、プレドニゾン、ブセレリン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、酢酸シプロテロン、メゲストロール/メゲストレル、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、パクリタキセル、ゾレドロン酸、プレドニゾロンおよびタキソテールから選ばれる。
医薬製剤
前記組合せ中の活性化合物(例えば、式(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはそのすべての塩(乳酸塩またはクエン酸塩など)を単独で投与することもできるが、1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、フィラー、緩衝剤、安定剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知の他の物質と、任意で他の治療または予防剤(例えば、化学療法に伴う副作用のいくつかを減少または緩和する薬剤)と一緒に、少なくとも1種の本発明の活性化合物を含有する医薬組成物(例えば、製剤)として提供することが好ましい。このような薬剤の具体例としては、制吐剤、および化学療法に伴う好中球減少の持続性を防止または減少させる薬剤、および赤血球レベルまたは白血球レベルの減少から生じる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が挙げられる。
従って、本発明はさらに、上記に定義される医薬組成物ならびに、本明細書に定義される1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、緩衝剤、アジュバント、安定剤、または他の物質と一緒に、上記に定義される式(I)または(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはそのすべての塩(乳酸塩またはクエン酸塩など)を混合することからなる、医薬組成物の製造方法を提供する。
本明細書において「薬学上許容される」なる語は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なく、被験体(例えば、ヒト)の組織との接触に用いるのに好適であり、妥当な利益/リスク比で釣り合いがとれた化合物、物質、組成物および/または投与形態を意味する。担体、賦形剤などの各々はまた、その製剤の他の成分と適合するという点で「許容される」ものでなければならない。
したがって、さらなる態様において本発明は本明細書で定義される1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩またはクエン酸塩またはこれらの混合物を医薬組成物の形態で提供する。
前記医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、鼻腔内投与、点眼投与、点耳投与、直腸投与、膣内投与または経皮投与に好適ないずれの形態であってもよい。前記組成物が非経口投与を意図したものである場合、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与用に処方することもできるし、あるいは注射、注入または他の送達手段により標的臓器または組織に直接送達するために処方することもできる。送達はボーラス注射、短時間注入または長時間注入によるものとすることもでき、また、受動的送達であっても、または好適な注入ポンプの利用を介したものでもよい。
非経口投与に適した医薬製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有していてもよい水性および非水性無菌注射液;ならび懸濁化剤および増粘剤を含有していてもよい水性および非水性無菌懸濁R.G. Strickly)、経口および注射製剤における賦形剤の溶解(Solubilizing Excipients in oral and injectable formulation)、ファーマシューティカルリサーチ(Pharmaceutical Research)、第21巻2号、2004年、201−230ページに記載されている。さらに、前記医薬製剤は共溶媒、有機溶媒混合物、シクロデキストリン複合体形成剤、乳化剤(エマルション製剤を形成および安定化するため)、リポソーム形成のためのリポソーム成分、高分子ゲルを形成するためのゲル化可能なポリマー、凍結乾燥保護剤、ならびにとりわけ有効成分を可溶形態で安定化させるための薬剤、および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする薬剤の組合せを含んでもよい。該製剤は単回用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供することもできるし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。
イオン性の薬剤分子は、その薬剤のpKaが製剤のpH値と十分に離れている場合には、pH調整により所望の濃度まで可溶化させることができる。許容される範囲は、静脈内投与および筋肉内投与ではpH2〜12であるが、皮下ではpH2.7〜9.0である。溶液のpHは塩形態の薬剤、塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの強酸/塩基、緩衝剤溶液(限定されるものではないが、グリシン、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、または炭酸塩が挙げられる)のいずれかにより制御される。
注射製剤では多くの場合、水溶液と水溶性有機溶媒/界面活性剤(すなわち、共溶媒)との組合せが用いられる。注射製剤に用いられる水溶性有機溶媒および界面活性剤としては、限定されるものではないが、プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP;ファーマソルブ(Pharmasolve))、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ソルトール(Solutol)HS15、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベート80が挙げられる。このような製剤は、必ずというわけではないが、通常、注射前に希釈される。
プロピレングリコール、PEG300、エタノール、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベート80は市販の注射製剤に用いられている、完全に水混和性の有機溶媒および界面活性剤であり、互いに併用が可能である。得られる有機注射製剤は通常、静脈内ボーラスまたは静脈内注入前に少なくとも2倍希釈される。
あるいは、水に対する溶解度の上昇はシクロデキストリンとの分子複合体形成によっても達成することができる。
リポソームは外側の脂質二重膜および内側の水性核からなる、閉じられた球状小胞であり、全体の直径が100μm未満である。疎水性の程度によって、中程度の疎水性薬剤であれば、薬剤をリポソーム内に封入またはインターカレーションした場合に、リポソームにより可溶化させることができる。疎水性薬剤はまた、薬剤分子を脂質二重膜の一体部分とした場合にも、リポソームにより可溶化させることができ、この場合、この疎水性薬剤は脂質二重膜の脂質部分に溶解される。典型的なリポソーム製剤はリン脂質を5〜20mg/mlで含む水、等張剤、pH5〜8の緩衝液、および必要に応じてコレステロールを含む。
前記製剤は単回用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供することもできるし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することもできる。
前記医薬製剤は、本明細書に定義される式(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその乳酸塩またはクエン酸塩などのすべての塩を凍結乾燥させることにより製造することができる。凍結乾燥とは、組成物をフリーズドライする手順をさす。よって、本明細書においてフリーズドライと凍結乾燥は同義語として用いられる。典型的な方法としては、化合物を可溶化させ、得られた製剤を明澄化し、濾過除菌し、凍結乾燥に適当な容器(例えば、バイアル)に無菌的に移すことである。バイアルの場合には、リオストッパー(lyo-stopper)で軽く栓をする。製剤は標準条件下で凍結するまで冷却し、凍結乾燥を行った後に密閉キャップをし、安定な凍結乾燥製剤を形成させることができる。この組成物は典型的には残留水分含量が低く、例えば、凍結乾燥物の重量の5重量%未満、例えば1重量%未満である。
前記凍結乾燥製剤は、他の賦形剤、例えば、増粘剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、保存剤および張力調整剤を含み得る。典型的な緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩およびグリシンが挙げられる。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオ尿素、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソールおよびエチレンジアミン四酢酸塩が挙げられる。保存剤としては、安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラ−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化セチルピリジニウムが挙げられる。必要に応じて張力調整のために、上述の緩衝剤ならびにデキストロースおよび塩化ナトリウムを使用することができる。
凍結乾燥技術では一般に、プロセスを容易にするため、かつ/または凍結乾燥塊に嵩および/または機械的強度をもたせるために増量剤を用いる。増量剤は、前記化合物またはその塩とともに凍結乾燥した際に物理的に安定な凍結乾燥塊を生じ、より好適な凍結乾燥プロセスとし、さらに、迅速かつ完全な再構成をもたらす、水溶性の高い固体粒子希釈剤を意味する。増量剤はまた溶液を等張とするためにも利用することができる。
水溶性増量剤は、凍結乾燥に典型的に用いられる薬学上許容される不活性の固体材料のいずれのものであってもよい。このような増量剤としては、例えば、グルコース、マルトース、スクロースおよびラクトースなどの糖類、ソルビトールまたはマンニトールなどのポリアルコール、グリシンなどのアミノ酸、ポリビニルピロリジンなどのポリマー、ならびにデキストランなどの多糖類が挙げられる。
有効化合物の重量に対する増量剤の重量比は典型的には、約1〜約5の範囲、例えば、約1〜約3、例えば、約1〜2の範囲である。
あるいは、医薬製剤は、濃縮および適当なバイアルへの密封が可能な溶液の形態で提供することもできる。投与形態の滅菌は、製剤過程の適当な段階で、濾過によるか、またはバイアルとその内容物とをオートクレーブ処理することにより行うことができる。供給された製剤は、例えば、適切な無菌注入パック中に希釈するなど、送達前にさらなる希釈または調製が必要な場合がある。
即時調合注射溶液および懸濁液は無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
非経口注射剤用の本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容される無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳液、加えて使用直前に無菌注射溶液または分散液へ再構成される無菌粉末を含む。適当な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒あるいは賦形剤の例としては、水、エタノール、多価アルコール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適当な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用、分散液の場合は必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。
本発明の組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含んでいてもよい。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗黴剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など、を含有することにより確保されてもよい。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含有することも望ましい可能性がある。注射可能な剤型での持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤の含有によりもたらされてもよい。
水性媒体中で安定でない、または水性媒体に溶解度が低い化合物の場合、前記化合物は有機溶媒中に濃縮物として処方することができる。濃縮物はその後、水系でより低濃度に薄めることができ、投薬中の短期間は十分に安定でありうる。したがって、他の態様では、完全に1種または2種以上の有機溶媒からなる非水溶液を含有する医薬組成物が提供される、そして前記組成物はそのまま投与できるが、より一般には投与の前に適当な静脈内賦形剤(生理食塩水、デキストロース;緩衝もしくは無緩衝で)で薄めることができる(Solubilizing Excipients in oral and injectable formulation)、薬学研究(Pharmaceutical Research)、第21巻2号、2004年、201−230ページ)。溶媒と界面活性剤の例としては、プロピレングリコール、PEG300、PEG400、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、ファーマソルブ(Pharmasolve))、グリセリン、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベートが挙げられる。具体的な非水溶液は70〜80%のプロピレングリコールおよび20〜30%のエタノールからなる。1つの具体的な非水溶液は70%のプロピレングリコールおよび30%のエタノールからなる。他のものは80%のプロピレングリコールおよび20%のエタノールである。普通はこれらの溶媒は組み合わせて使用され、通常静脈内ボーラスまたは静脈内注入の前に少なくとも2倍に薄められる。ボーラス静注製剤用の典型的な量は、グリセリン、プロピレングリコール、PEG300、PEG400に関しては〜50%、そしてエタノールに関しては〜20%である。静注製剤用の典型的な量はグリセリンが〜15%、DMAが〜3%、そしてプロピレングリコール、PEG300、PEG400およびエタノールが〜10%である。
本発明の好ましい一実施形態では、前記医薬組成物は、例えば注射またはインフュージョンによる静注投与に適切な形態である。静脈内投与には、前記溶液はそのまま投与でき、また投与前に(0.9%生理食塩水または5%デキストロースのような薬学的に許容される賦形剤を含む)輸液バッグに注入することもできる。
別の好ましい実施形態では、前記医薬組成物は皮下(s.c.)投与に好適な形態である。
経口投与に好適な医薬投与形としては、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、ウエハー剤またはパッチ剤ならびにバッカルパッチ剤が挙げられる。
式(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその乳酸塩またはクエン酸塩などの全ての塩を含有する医薬組成物は、公知の技術にしたがって処方することができる。例えば、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、マック(Mack)出版社、イーストン、ペンシルベニア、米国、参照。
したがって、錠剤組成物は、単位用量の有効化合物を、不活性希釈剤または担体、例えば、糖または糖アルコール(ラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトールなど)、および/または非糖由来希釈剤(炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムまたはセルロースもしくはその誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン(コーンスターチなど)など)とともに含有することができる。錠剤はまた、標準的な成分、例えば、結合剤および造粒剤、例えば、ポリビニルピロリドン、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩)、保存剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤(例えば、クエン酸塩/重炭酸塩混合物)を含有してもよい。このような賦形剤は公知であり、ここでは詳細に記載する必要はない。
カプセル製剤は、硬質ゼラチン種であっても軟質ゼラチン種であってもよく、固体、半固体または液体状の有効成分を含有することができる。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成もしくは植物由来の均等物から形成することができる。
固形投与形態(例えば、錠剤、カプセル剤など)はコーティングを施しても施さなくともよいが、典型的には例えば、保護フィルムコーティング(例えば、ワックスまたはワニス)または放出制御コーティングを有する。前記コーティング(例えば、オイドラギット(Eudragit)(商標)型ポリマー)は、胃腸管内の所望の位置で有効成分が放出されるように設計することができる。したがって、コーティングは胃腸管内の特定のpH条件下で分解するように選択することができ、これにより選択的に胃または回腸もしくは十二指腸で化合物を放出する。
コーティングの代わりにまたはコーティングに加えて、放出制御剤、例えば、胃腸管において酸性度またはアルカリ性度が変化する条件下で化合物を選択的に放出するようにすることができる放出遅延剤を含んでなる固体マトリックス中に薬剤を提供してもよい。あるいは、マトリックス材料または放出遅延コーティングは、投与形態が胃腸管を通過するにつれて実質的に連続的に崩壊する崩壊性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態をとることができる。さらなる別法としては、有効化合物を、化合物の放出の浸透圧制御をもたらす送達系に処方することもできる。浸透圧放出性および他の遅延放出性または徐放性製剤は当業者に周知の方法にしたがって製造することができる。
前記医薬組成物は、有効成分を約1%から約95%まで、好ましくは約20%から約90%含む。本発明による医薬組成物は、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、タブレットまたはカプセル形態などの単位用量形態であってもよい。
経口投与用医薬組成物は、有効成分と固体担体とを組み合わせ、所望であれば得られた混合物を粒状にし、所望または必要であれば適当な賦形剤の添加後、混合物を錠剤、糖衣錠コアまたはカプセルへ加工することにより得られる。また、前記経口投与用医薬組成物を、一定量の有効成分を拡散させたり放出させたりする可塑性の担体に組み入れることも可能である。
局所使用のための組成物としては、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が挙げられる。このような組成物は、公知の方法にしたがって処方することができる。
非経口投与用の組成物は典型的には無菌水性もしくは油性溶液または微細懸濁液として提供されるか、あるいは注射用無菌水で即時構成できる微細無菌粉末の形態で提供されてもよい。
直腸投与または膣内投与用の製剤の例としては、ペッサリーおよび坐剤が挙げられ、これらは、例えば、有効化合物を含有する付形成形材またはワックス材から形成することができる。
吸入投与用組成物は、吸入可能な粉末組成物または液状もしくは粉末スプレーの形態をとってもよく、粉末吸入装置またはエアゾールディスペンシング装置を用いた標準的な形態で投与することができる。このような装置は周知である。吸入投与用の粉末製剤は、典型的には有効化合物をラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤とともに含む。
前記医薬製剤は単一のパッケージ、通常はブリスターパック中に全コースの治療薬を含んだ「患者パック」として患者に提供することができる。患者パックは、調剤師がバルク供給から患者分の医薬を分配する従来の処方箋調剤に優る利点があり、患者は患者パックに入っている、患者の処方箋調剤では見ることができない添付文書をいつでも見ることができる。添付文書を包含しておけば、患者が医師の指示をよりよく遵守することが示されている。
前記組合せまたはその構成要素(例えば、式(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはそのすべての塩(乳酸塩またはクエン酸塩など))は一般的には単位投与形態で提供され、それ自体、所望の生物活性レベルを与えるのに十分な化合物を典型的に含んでいる。例えば、経口投与を意図した製剤は0.1ミリグラム〜2グラムの有効成分、または1ナノグラム〜2ミリグラムの有効成分を含んでいてもよい。この範囲内での化合物の具体的な部分範囲としては、0.1ミリグラム〜2グラムの有効成分(より通常は、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜500ミリグラム)、または1マイクログラム〜20ミリグラム(例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム、例えば、0.1ミリグラム〜2ミリグラムの有効成分)である。
経口投与用の組成物に関しては、単位投与形態は1ミリグラム〜2グラム、より典型的には、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜1グラム、例えば、100ミリグラム〜1グラムの有効化合物を含んでいてもよい。
有効化合物は、投与を必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与する。
治療方法
本発明の組合せは、サイクリン依存性キナーゼ、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3およびオーロラキナーゼにより仲介される様々な病態または症状の予防または治療において有用である。そのような病態および症状の例は上述されている。
上記組合せは、一般的にこのような投与を必要とする被験体(例えば、ヒトまたは動物の患者、好ましくはヒト)に対して投与される。
上記組合せは、治療上または予防上有用であり一般的に毒性のない量で典型的に投与されることになる。しかしながら、特定の状況において(例えば、生命を脅かす疾病の場合には)、本発明の組合せを投与する利点は、いかなる毒性効果または副作用の短所に勝ることがあり、この場合には組合せを毒性を伴う量で投与することが望ましいと考えられる可能性がある。
本発明の組合せの構成成分化合物は、有用な治療上の効果を維持するために長期間にわたって投与されてもよいし、または短期間のみ投与されてもよい。あるいは、該化合物はパルス的投与または継続的投与されてもよい。
組合せ中に存在する式(I)または(I’)の化合物の典型的な1日量は、体重1キログラムあたり100ピコグラム〜100ミリグラム、より典型的には体重1キログラムあたり5ナノグラム〜25ミリグラム、およびより通常には体重1キログラムあたり10ナノグラム〜15ミリグラム(例えば、10ナノグラム〜10ミリグラム、およびより典型的には1キログラムあたり1マイクログラム〜1キログラムあたり20ミリグラム、例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム)の範囲でありえるが、必要な場合はより高用量またはより低用量で投与されてもよい。前記化合物は、例えば、毎日、または2もしくは3もしくは4もしくは5もしくは6もしくは7もしくは10もしくは14もしくは21もしくは28日ごとに繰り返し投与することができる。
本発明の組合せの構成成分化合物は、様々な用量で経口投与されてもよく、例えば、1〜1500mg、2〜800mgまたは5〜500mg、例えば、2〜200mgまたは10〜1000mg、投与量の具体例としては10、20、50および80mgが挙げられる。化合物は、1日1回または1回以上投与されてもよい。化合物は、連続的に投与する(すなわち、治療レジメンの期間中途切れずに毎日服用する)ことができる。あるいは、化合物は間欠的に投与すること(すなわち、治療レジメンの期間を通じて、1週のような規定の期間連続的に服用し、次に1週のような期間中止され、次に1週のような別の期間連続的に服用される)ができる。間欠投与を伴う治療レジメンの例としては、投与が、1週間服用、1週間中止;または2週間服用、1週間中止;または3週間服用、1週間中止;または2週間服用、2週間中止;または4週間服用、2週間中止;または1週間服用、3週間中止のサイクルで、1または複数サイクル(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10またはそれ以上のサイクル)でのレジメンが挙げられる。
前記化合物の一日量の一例としては、本明細書で定義される式(I)または(I’)の化合物(例えば、化合物Iの乳酸塩)を開始用量1mg/m2/日〜100mg/m2/日、特に1mg/m2/日〜10mg/m2/日、より具体的には3〜6mg/m2/日(遊離塩基2.5〜5mg/m2/日に相当)あるいは化合物Iの乳酸塩を有効用量2.5mg/m2/日〜1.5g/m2/日/、特に25mg/m2/日〜600mg/m2/日、より具体的には200〜500mg/m2/日、例えば、250mg/m2/日、または45〜200mg/m2/日、例えば、45〜150mg/m2/日もしくは56〜185mg/m2/日、(遊離塩基45〜150mg/m2/日に相当)で投与することを含むが、必要であればより高用量または低用量で投与してもよい。
1つの具体的な服薬スケジュールでは、患者は前記化合物またはその塩(例えば、式(I)の化合物)の連続的静注を2時間から120時間の間、例えば2〜96時間、特に24〜72時間受け、治療は毎週〜3週間ごとなどの所望の間隔で繰り返される。
より具体的には、患者は前記化合物またはその塩の連続的静注を24時間毎日5日間受けその治療を毎週繰り返してもよい、あるいは24時間受けその治療は毎週繰り返してもよい、あるいは48時間受けその治療を2週間ごとに繰り返してもよい、あるいは72時間受けその治療を3週間ごとに繰り返してもよい。
別の具体的な服薬スケジュールでは、患者は、2時間にわたって1日1回毎週または2もしくは3週間ごとに、あるいは2時間にわたって毎週または2もしくは3週間に1度静脈内ボーラスとして前記化合物の注入を受ける。
頻繁な治療中止期間を設け毎週または2週間ごとに24〜48時間の連続的静注を施すような投与計画を使用して1.5g/m2/dayのようなより高用量で投与されてもよい。より低用量での投与は、2〜3週間ごとに48から72時間の連続的静注を施すようなより継続的な投薬(しかし、なお周期的な治療期間/治療中止期間を設けて)を含んだ投与計画を使用してなされる。
特に、式(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその乳酸塩もしくはクエン酸塩のようなすべての塩は3週間ごとに250mg/m2/日で72時間の連続的静注により患者に投与することができる。
別の実施形態では、式(I’)の化合物または1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその乳酸塩もしくはクエン酸塩のようなすべての塩は5日間の治療サイクルにわたり患者に投与することができる。
しかしながら、投与する化合物の量、投与レジメンおよび用いる組成物の種類は、治療する疾病または生理状態の性質と見合うものとなり、医師の裁量によることになる。
したがって当業者は、通常の知識により、用いるべき投与レジメンおよび併用療法が分かるであろう。当然のことながら、投与の好ましい方法および順序ならびに前記組合せの個々の構成要素それぞれの投与量および投与レジメンは、投与されている式(I’)の特定の化合物および2種以上のその他の抗癌剤、それらの投与経路、治療されている特定の腫瘍および治療されている特定のホストに依存する。最適な投与の方法および順序および投与量および投与レジメンは、従来の方法を用い本明細書に開示される情報を考慮して当業者により容易に決定することができる。
本明細書で定義される本発明の組合せは、さらに特定の病態(例えば、上記で定義される癌などの新生物疾患)の治療用の1つまたは複数の別の化合物と組合せること、および/またはそれらと共に投与することができる。本発明の組合せとともに投与されてもよい(同時にまたは異なる時間間隔であるかどうかにかかわらず)、他の治療用薬剤または治療の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる。
トポイソメラーゼI阻害剤
代謝拮抗剤
チューブリン標的化薬剤
DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤
アルキル化剤
モノクローナル抗体
抗ホルモン
シグナル伝達阻害剤
プロテアソーム阻害剤
DNAメチルトランスフェラーゼ
サイトカインおよびレチノイド
クロマチン標的化療法
放射線療法、および、
他の治療剤または予防薬;例えば、化学療法に伴う副作用のいくつかを減少または緩和する薬剤。そのような薬剤の具体的な例としては、制吐剤、および化学療法に伴う好中球減少の持続性を防止または減少させる薬剤、および赤血球レベルまたは白血球レベルの減少から生じる合併症を予防する薬剤、例えば、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が挙げられる。また、ビスフォスフォネート剤(例えば、ゾレドネート、パミドロネートおよびイバンドロネート)などの骨吸収を阻害する薬剤、炎症反応を抑制する薬剤(デキサメタゾン、プレドニゾンおよびプレドニゾロンなど)、および天然ホルモンのソマトスタチンの薬理学的特性を模倣する薬理学的特性を備えた長時間作用性のオクタペプチドである酢酸オクトレオチドを含む、脳ホルモンソマトスタチンの合成型のような、先端肥大症患者において成長ホルモンおよびIGF−Iの血中濃度を減少させるために使用される薬剤が挙げられる。さらには、ロイコボリン(葉酸レベルを減少させる薬剤に対する解毒剤として使用される)またはフォリン酸それ自体などの薬剤、および浮腫および血栓塞栓症発作を含む副作用の治療のために使用することができる酢酸メゲストロールのような薬剤が挙げられる。
本発明の組合せ中に存在する化合物の各々は、個別に違う用量スケジュールで、および異なる経路を通じて投与されてもよい。
式(I)の化合物および補助化合物は、同時にまたは順次にであってもよい。順次に投与される場合、それらは短い間隔で(例えば、5〜10分の期間にわたって)、またはより長い間隔(例えば、1、2、3、4時間またはそれ以上離れて、または必要とされる場合には、さらにより長い期間離れて)で投与することができるが、正確な投与レジメンは治療用薬剤の特性に対応する。
本発明の組合せはまた、放射線療法、光力学療法、遺伝子療法などの非化学療法的治療;手術および栄養制限食と併用して投与されてもよい。
補助化合物との併用療法における使用に関して、式(I)の化合物および1、2、3、4つまたはそれ以上の補助化合物は、例えば、2、3、4つまたはそれ以上の補助化合物を含む投薬形態で、ともに製剤化することができる。あるいは、本発明の組合せの構成成分化合物は個別に製剤化され、キットの形態で一緒に提供されてもよく、任意でそれらの使用説明書が添付される。
当業者は、通常の知識により、用いる投与レジメンおよび組合せ療法が分かるであろう。
診断方法
本発明の組合せの投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、オーロラおよび/またはサイクリン依存性キナーゼに対する活性を有する化合物による治療に対して感受性のある疾病または症状であるかどうかを決定するために患者をスクリーニングしてもよい。
例えば、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病がCDKの過剰な活性化または正常なCDK活性への経路の感作をもたらす遺伝的異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。CDK2シグナルの活性化または感作をもたらすこのような異常の例としては、サイクリンEのアップレギュレーション(ハーウェル(Harwell RM)、マル(Mull BB)、ポーター(Porter DC)、ケヨマルシ(Keyomarsi K.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)2004年3月、26;279(13):12695−705)またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の存在(ラジャゴパラン(Rajagopalan H)、ジャレパリ(Jallepalli PV)、ラゴ(Rago C)、ベルクレスク(Velculescu VE)、キンズラー(Kinzler KW)、ボーゲルスタイン(Vogelstein B)、レンガウアー(Lengauer C.);ネイチャー(Nature)、2004年3月4;428(6978):77−81)が挙げられる。CDC4の変異体またはサイクリンEのアップレギュレーション、特に過剰発現、またはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、特にCDK阻害剤に対して感受性がある可能性がある。代わりに、あるいは、さらに、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病がオーロラキナーゼのアップレギュレーションを特徴とするもの、したがってオーロラ阻害剤に特に感受性がある可能性があるかどうかを判定することができる。アップレギュレーションなる語には、遺伝子増幅(すなわち複数の遺伝子コピー)および転写効果による発現増加、ならびに変異による活性化を含む過活性および活性化が包含される。
よって、患者は、オーロラキナーゼ過剰発現、アップレギュレーションまたは活性化に特徴的なマーカーを検出するための診断試験に供されてもよく、あるいは患者は、サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体の存在に特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。診断なる語はスクリーニングも含む。本発明者らはマーカーに、例えば、オーロラまたはCDC4の変異を同定するためのDNA組成の指標をはじめとする遺伝マーカーも含める。マーカーなる語はまた、オーロラまたはサイクリンEの酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルを含むオーロラまたはサイクリンEのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含む。サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、特にCDK阻害剤に対して感受性がある可能性がある。腫瘍は治療の前にサイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損に関して優先的にスクリーニングすることができる。よって、患者はサイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損に特徴的なマーカーを検出するための診断試験に供することができる。
診断試験は典型的には、腫瘍生検サンプル、血液サンプル(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹水または尿から選ばれる生体サンプルに対して行う。
STK遺伝子(オーロラキナーゼAの遺伝子)のIle31変異体を有する亜母集団の一部を形成している個体が、ある形態の癌に高い感受性を有する可能性があることが判明した(エワート・トーランド(Ewart-Toland)ら、ネイチャージェネティクス(Nat. Genet.)2003年8月;34(4):403−12参照)。したがって、このような癌を患っている個体にはオーロラキナーゼ阻害活性を有する化合物の投与が有益となる。したがって、癌を患っている、または患っている疑いのある患者を、患者がIle31変異体亜母集団の一部を形成するかどうかを判定すべくスクリーニングすることができる。さらに、ラジャゴパラン(Rajagopalan)ら(ネイチャー(Nature)2004年3月4;428(6978):77−81)は、ヒト結腸直腸癌および子宮内膜癌(スプルック(Spruck)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Res.)2002年8月15;62(16):4535−9)に、CDC4に存在する変異(別名:Fbw7またはアーキペラゴ(Archipelago))があることを見出した。CDC4に変異を有する個体の同定は、その患者がCDK阻害剤による治療に特に好適であることを意味し得る。腫瘍は、治療前にCDC4変異体の存在に関して優先的にスクリーニングすることができる。このスクリーニング方法は典型的には、直接配列決定、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析、または変異体特異的抗体を含む。
オーロラの活性化変異またはオーロラ(そのいずれのアイソフォームも含む)のアップレギュレーションを伴う腫瘍はオーロラ阻害剤に特に感受性がある可能性がある。治療前にオーロラのアップレギュレーションに関して、またはIle31変異体を有するオーロラに関して、腫瘍を優先的にスクリーニングできる(エワート・トーランド(Ewart-Toland)ら、ネイチャージェネティクス(Nat. Genet.)2003年8月;34(4):403−12)。エワート・トーランドらは、ヒト結腸腫瘍において優先的に増幅され、異数性の程度と関連があるSTK15の共通の遺伝変異体(アミノ酸置換F31Iを生じる)を同定した。これらの結果は、ヒト癌感受性におけるSTK15のIle31変異体に関する重要な役割と一致している。特に、オーロラAにおけるこの多型性は、乳癌発症に関する遺伝的修飾因子であると示唆されている(ソン(Sun)ら、発癌(Carcinogenesis)、2004年、25(11)、2225−2230)。
オーロラA遺伝子は、多くの癌、例えば、乳癌、膀胱癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、でしばしば増幅されている染色体20q13領域にマッピングされている。この遺伝子増幅を伴う腫瘍を有する患者は、オーロラキナーゼ阻害を標的とする治療に特に感受性が高い可能性がある。
タンパク質、例えばオーロラアイソフォーム、の変異およびアップレギュレーションならびに染色体20q13の増幅の同定および分析方法は当業者に公知である。スクリーニング方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーションハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
RT−PCRによるスクリーニングでは、腫瘍におけるmRNAのレベルは、該mRNAのcDNAコピーを作成した後、該cDNAをPCRにより増幅することにより評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は当業者に公知である。核酸の操作およびPCRは、例えば、オースベル(Ausubel, F. M.)ら(編者)、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、2004年、ジョンワイリー&サンズ、またはイニス(Innis, M. A.)ら(編者)、PCRプロトコル:方法および応用の手引き(PCR Protocols:a guide to methods and applications)、1990年、アカデミックプレス(Academic Press)、サンディエゴ、に記載のような標準的な方法により行う。核酸技術に関する反応および操作はまた、サムブルック(Sambrook)ら、2001年、第3版、モレキュラークローニング:レボラトリーマニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている。あるいは、RT−PCR用の市販キット(例えば、ロシュモレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)社)、または米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号;第5,272,057号;第5,882,864号および第6,218,529号に開示の方法が使用でき、これらは参照により本書に援用される。
mRNAの発現を評価するためのin situハイブリダイゼーション技術の例として、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)がある(アンゲラー(Angerer)、1987年、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Meth. Enzymol)、152:649参照)。
一般に、in situハイブリダイゼーションは以下の主要な工程を含む:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸の接近性を高めるためそして非特異的結合を軽減するためのサンプルのプレハイブリダイゼーション処理;(3)核酸混合物と生物学的構造または組織中の核酸とのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄;および(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出。このような用途に用いるプローブは典型的には、例えば、放射性同位元素または蛍光リポーターで標識される。好ましいプローブは、ストリンジェント条件下で標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能とするに十分な長さ、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。FISHを行うための標準的な方法は、オースベル(Ausubel, F. M.)ら(編者)、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、2004年、ジョンワイリー&サンズ、およびバートレット(John M. S. Bartlett)による、in situハイブリダイゼーションにおける蛍光:癌の分子診断、方法およびプロトコルにおける技術的概観(Fluorescence In Situ Hybridization: Technical Overview in Molecular Diagnosis of Cancer,Methods and Protocols、第2版;ISBN:1−59259−760−2;2004年3月、077−088ページ;シリーズ:分子医学における方法(Series: Methods in Molecular Medicine)に記載されている。
あるいは、mRNAから発現されたタンパク質産物を、腫瘍サンプルの免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いる固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、フローサイトメトリーおよび特定のタンパク質を検出するための当技術分野で公知の他の方法により評価することができる。検出方法には、部位特異的抗体の使用が含まれる。当業者ならば、サイクリンEのアップレギュレーション、またはp21もしくはp27の欠損の検出、またはCDC4変異体、オーロラアップレギュレーションおよびオーロラの変異を検出するためのこのような公知の技術はすべて本発明の場合に適用可能であることを認識しているであろう。
したがって、これらの技術はいずれも、本発明の化合物による治療に特に好適な腫瘍を同定するために使用することができる。
CDC4の変異体、またはサイクリンEのアップレギュレーション、特に過剰発現、あるいはp21もしくはp27の欠損を伴う腫瘍は、本発明の組合せの構成要素としてのCDK阻害剤に対して特に感受性がある可能性がある。腫瘍は治療前にサイクリンEのアップレギュレーション、特に過剰発現に関して(ハーウェル(Harwell RM)、マル(Mull BB)、ポーター(Porter DC)、ケヨマルシ(Keyomarsi K.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー(J. Biol. Chem.)2004年3月、26;279(13):12695−705)、またはp21もしくはp27の欠損、またはCDC4変異体に関して(ラジャゴパラン(Rajagopalan H)、ジャレパリ(Jallepalli PV)、ラゴ(Rago C)、ベルクレスク(Velculescu VE)、キンズラー(Kinzler KW)、ボーゲルスタイン(Vogelstein B)、レンガウアー(Lengauer C.);ネイチャー、2004年3月4;428(6978):77−81)優先的にスクリーニングすることができる。
マントル細胞リンパ腫(MCL)を有する患者については、本明細書で概略を示した診断試験を用い、本発明の化合物による治療が適用できるかを選定することができる。MCLは、CD5およびCD20の共発現、侵攻性および治療抵抗性の臨床経過、および頻繁なt(11;14)(q13;q32)の転座を伴う小型〜中型のリンパ球の増殖を特徴とする非ホジキンリンパ腫の明瞭な臨床病理態である。マントル細胞リンパ腫(MCL)で観察されるサイクリンD1mRNAの過剰発現が重要な診断マーカーとなる。ヤタベ(Yatabe)ら(ブラッド(Blood)、2000年4月1;95(7):2253−61)は、MCLの標準的な判定基準の1つとしてサイクリンD1陽性を含めるべきこと、およびこの新たな判定基準に基づいてこの難病の革新的療法を探索すべきであることを提案している。ジョーンズ(Jones)ら(ジャーナル・オブ・モレキュラーダイアグノスティクス(J. Mol. Diagn.)2004年5月;6(2):84−9)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の診断の助けとなるよう、サイクリンD1(CCND1)発現のリアルタイム定量的逆転写PCRアッセイを開発した。ホウ(Howe)ら(クリニカルケミストリー(Clin Chem.)2004年1月;50(1):80−7)は、リアルタイム定量的RT−PCRを用いてサイクリンD1mRNAの発現を評価し、CD19mRNAに対して正規化したサイクリンD1mRNAの定量的RT−PCRが血液、骨髄および組織におけるMCLの診断に使用できることを見出した。あるいは、乳癌患者については、上記で概略を示した診断試験を用い、本発明の組合せによる治療が適用できるかを選定することができる。腫瘍細胞は共通してサイクリンEを過剰発現し、乳癌でもサイクリンEが過剰発現することが示されている(ハーウェル(Harwell)ら、キャンサーリサーチ(Cancer Res)2000年、60、481−489)。従って、乳癌は特に本明細書で提供されるCDK阻害剤で治療可能である。
本発明の組合せの投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が:
A.BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2もしくはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1もしくはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2もしくはEphB4)またはSrc(例えば、cSrc)であるキナーゼが仲介する病態または症状、あるいは
B.癌細胞が:
(a)スレオニンゲートキーパー変異、または
(b)薬剤耐性ゲートキーパー変異、または
(c)イマチニブ耐性変異、または
(d)ニロチニブ耐性変異、または
(e)ダサチニブ耐性変異、または
(f)KITにおけるT670I変異、または
(g)PDGFRにおけるT674I変異、または
(h)EGFRにおけるT790M変異、または
(i)ablにおけるT315I変異、
である薬剤耐性キナーゼ変異を含む癌、あるいは
C.BCR−abl、c−kit、PDGF、EGF受容体またはErbB2の変異型である変異分子標的を発現する癌、あるいは
D.他の抗癌剤と結合または相互作用するが式(I)または(I’)の化合物と結合または相互作用をしないタンパク質の領域に変異を有するキナーゼ、例えば、c−abl、c−kit、PDGFR(PDGFR−ベータおよびPDGFR−アルファを含む)およびErbBフェミリーのメンバー(EGFR(ErbBl)、HER2(ErbB2)、ErbB3およびErbB4など)、エフリン受容体ファミリーのメンバー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB5、EphB6など)、c−Src、およびJAKファミリーのキナーゼ(TYK2など)から選ばれる変異キナーゼが仲介する疾病、
であるかどうかならびに、本発明の組合せによる治療に感受性がある病態または症状かどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。
特定の実施形態では、本発明の組合せの投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されるその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼ、に対して活性を有する本発明の組合せによる治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。
患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病がキナーゼの過剰活性化または正常キナーゼ活性への経路の感作をもたらす遺伝的異常(例えば、上記キナーゼの変異型を含む)または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。あるいは、または、さらに、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病が特定のキナーゼのアップレギュレーションを特徴とするもの、したがってそのキナーゼの阻害剤に特に感受性があるかどうかを判定することができる。アップレギュレーションなる語は、遺伝子増幅(すなわち、複数の遺伝子コピー)および転写効果による発現の増加をはじめとする発現上昇または過剰発現、ならびに変異による活性化をはじめとする活性亢進および活性化が包含される。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)キナーゼあるいは本明細書で定義されるその変異型の場合、患者から採取した生体サンプルを分析し、その患者が罹患している、または罹患している可能性のある癌などの症状または疾病が、前記キナーゼのレベルもしくは活性のアップレギュレーションまたは正常なキナーゼ活性への経路の感作、あるいはキナーゼリガンドレベルもしくはキナーゼリガンド活性などのキナーゼシグナル伝達経路のアップレギュレーションまたはキナーゼ活性化の下流にある生化学経路のアップレギュレーションをもたらす遺伝的異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定することができる。
キナーゼシグナルの活性化または感作を引き起こすそのような異常の例としては、アポトーシス経路の欠損または阻害、受容体またはリガンドのアップレギュレーション、あるいは、PTK変異体などの受容体またはリガンドの変異体の存在が挙げられる。
FGFR1、FGFR2またはFGFR3の変異体あるいはFGFR1のアップレギュレーション、特に過剰発現、あるいはFGFR2またはFGFR3の機能獲得型変異体を伴う腫瘍は特にFGFR阻害剤に感受性がある可能性がある。
例えば、FGFR2において機能獲得を引き起こす点変異は多くの症状で確認されている(レモニエ(Lemonnier)ら、ジャーナル・オブ・ボーン・アンド・ミネラルリサーチ(J. Bone Miner. Res.)、16、832−845(2001年))。さらに、異所的に発現または脱調節されて構成的に活性のあるFGFR3受容体をもたらす染色体転座または点変異などのFGFR3受容体チロシンキナーゼの遺伝的異常が確認されており、多発性骨髄腫、膀胱癌および子宮頚癌の一部に関連付けられている(パワーズ(Powers, C.J.)ら、エンドクリンリレイテッドキャンサー(Endocr. Rel. Cancer)、7、165(2000年))。PDGF受容体の特定の変異T674Iはイマチニブで治療される患者において確認されている。
さらに、8p12〜p11.2の遺伝子増幅はCLC症例の〜50%で実証され、これはFGFR1の発現増加に関連することが示された。FGFR1に対するsiRNA(すなわち該受容体の低分子阻害剤)の予備的研究は、この増幅を有する細胞株がこのシグナル伝達経路の阻害に特に感受性があることを示した(レイス−フィルホ(Reis-Filho)ら、臨床癌研究(Clin. Cancer Res.) 2006年12(22):6652−6662。
あるいは、患者から採取した生体サンプルは、特定のキナーゼ(例えば、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)あるいはSrc(例えば、cSrc))あるいは本明細書で定義されるその変異体、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼの負の調節因子または抑制因子の欠損に関して分析することができる。本文脈において、「欠損」なる語は、調節因子もしくは抑制因子をコードする遺伝子の欠失、遺伝子の切断(例えば、変異による)、遺伝子の転写産物の切断、または転写産物の不活性化(例えば、点変異による)もしくは他の遺伝子産物による隔離を包含する。
よって、患者に対して、キナーゼの過剰発現、アップレギュレーションおよび活性化に特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。診断なる語はスクリーニングを包含する。本発明者らはマーカーに、例えば、特定のキナーゼの変異を同定するためのDNA組成の測定を含む遺伝子マーカーも含める。マーカーなる語はまた、上記タンパク質の酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルをはじめ、キナーゼの活性のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含む。アップレギュレーションなる語には、遺伝子増幅(すなわち、複数の遺伝子コピー)および転写効果による発現の増加をはじめとする発現上昇または過剰発現、ならびに変異による活性化をはじめとする活性亢進および活性化が包含される。
診断試験は典型的には、腫瘍生検サンプル、血液サンプル(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹水、頬内からの塗抹標本、生検または尿から選ばれる生体サンプルに対して行なわれる。
より具体的には、患者に対して、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されるその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験を行うことができる。診断なる語はスクリーニングを包含する。本発明者らはマーカーに、例えば、特定のキナーゼの変異を同定するためのDNA組成の測定を含む遺伝マーカーも包含する。マーカーなる語はまた、上記タンパク質の酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルをはじめ、キナーゼの活性のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを包含する。
タンパク質の変異およびアップレギュレーションの同定および分析の方法は当業者に公知である。スクリーニング方法としては、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のようなin situハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられる。
BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されるその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼ、などのキナーゼに変異を有する個体の同定は、その患者が問題となっているキナーゼの阻害剤による治療に特に適することを意味し得る。腫瘍は、治療前にキナーゼ変異体の存在に関して優先的にスクリーニングすることができる。スクリーニング過程は典型的には、直接配列決定、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析、または変異体特異的抗体を伴う、あるいは上述のRT−PCRおよびFISH技術を用いる。
さらに、例えば、BCR−abl、VEGFR、PDGFR、EGFR、Flt3、JAK(例えば、JAK2またはJAK3)、C−abl、PDK1、Chk(例えば、Chk1またはChk2)、FGFR(例えば、FGFR3)、Ret、Eph(例えば、EphB2またはEphB4)、Src(例えば、cSrc)あるいは本明細書で定義されるその変異型、ならびに特にC−ablおよびJAKキナーゼなどのキナーゼの変異型は、例えば、上記に記載のPCRを用いた腫瘍生検の直接配列決定およびPCR産物を直接配列決定する方法により同定することができる。当業者であれば、前記タンパク質の過剰発現、活性化または変異の検出に用いるそのような周知の技術がこの場合に適用可能であることを認識しているであろう。
特に、本発明の組合せの投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2に対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。これらの手法はまた、Flt3、JAK、C−abl、PDK1、Chk1およびChk2キナーゼのアップレギュレーションまたは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用できる。これらの手法はまた、VEGFRキナーゼのアップレギュレーションあるいは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用でき、限定されるものではないが、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーションなどの標準的な方法を含む。
別の実施形態では、本発明の組合せの投与前に、患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾病または症状が、FGFR、ret、Eph、cSrc、VEGFR、PDGFRキナーゼに対して活性を有する本発明の組合せによる治療に感受性があるものかどうかを判定するために患者をスクリーニングすることができる。これらの手法はまた、GFR、ret、Eph、cSrc、VEGFR、PDGFRキナーゼのアップレギュレーションあるいは変異体が原因の疾病または症状のスクリーニングのために使用できる。
さらに、例えばVEGFR2の変異型は、上記に記載のようにPCRおよびPCR産物を直接配列する方法を用いることによって、例えば腫瘍生検の直接配列決定により同定することができる。当業者であれば、前記タンパク質の過剰発現、活性化または変異の検出に用いるそのような公知の技術が本発明の場合に適用可能であることを認識しているであろう。
VEGFRなどのタンパク質の異常なレベルは、標準的な酵素アッセイ、例えば、本明細書に記載されるアッセイを用いて測定することができる。活性化または過剰発現はまた、腫瘍サンプル、例えば腫瘍組織において、ケミコンインターナショナル(Chemicon International)から入手可能のものなどのアッセイでチロシンキナーゼ活性を測定することにより検出することができる。対象とするチロシンキナーゼをサンプル溶解物から免疫沈降させ、その活性を測定する。
アイソフォームを含むVEGFRの過剰発現または活性化の測定の別法としては、微細血管密度の測定が挙げられる。これは例えば、オッレ(Orre)およびロジャース(Rogers)(インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(Int. J. Cancer)1999年、84(2)、101−8)により記述されている方法を用いて測定することができる。アッセイ方法はまた、例えば、VEGFRの場合にはマーカーの使用を含み、これらのマーカーとしてはCD31、CD34およびCD105(ミネオ(Mineo)ら、ジャーナル・オブ・クリニカルパソロジー(J. Clin. Pathol.)2004年、57(6)591−7)が挙げられる。
FLT3の活性化変異は、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)およびいくつかの急性リンパ芽球性白血病(ALL)の症例で頻繁に観察される。FLT3の活性化変異体を伴う癌患者には、FLT3阻害剤に最も感受性のある変異の指標として線変異または遺伝子内タンデム重複変異の存在のスクリーニングをすることができる。
チロシンキナーゼJAK2における活性化変異は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症および骨髄様化生を併う骨髄線維症において観察されている。本明細書に記載の方法はこれらの変異を有する患者を同定するために使用することができる可能性がある。
BCR−abl(例えば、T315I)の耐性変異体を発現する細胞を有する腫瘍がある患者は、本明細書に記載の方法を用いて同定することができる。
したがって、さらに、本明細書に記載の方法はJAK2(例えば、V617F)の変異、FLT3の活性化変異、C−AbI(例えば、T315I)の変異体を診断するために使用することができる可能性がある。
さらなる実施形態では、本発明の化合物は、患者および/または腫瘍および/またはフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病を治療するためにを使用することができる可能性がある。これは、染色体9と染色体22の間に起こる転座であり、変化した染色体22をもたらす。しばしばBCR−abl転座と呼ばれる前記転座は、細胞遺伝学的方法、例えば本明細書に記載の方法、特にFISHを含む当業者に公知の方法により識別することができ、本発明の組合せによる治療に適した患者を同定するために使用できる。
本発明の組合せは有糸分裂チェックポイント欠陥と直接関連するオーロラキナーゼの阻害剤を含有するので、本発明の組合せは染色体の完全性の欠損、紡錘体欠陥または疾患進行の兆候として倍数性を示す白血病に罹患している患者の治療に特に適している可能性がある。
遺伝的不安定性は多くの白血病での共通の特徴であり、異数性をもたらす。中心体異常は最近、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ホジキンリンパ腫に加えて非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病および多発性骨髄腫を含むいくつかの異なる血液悪性腫瘍に関連して記述されている。多くの固形腫瘍と同様、骨髄性悪性腫瘍、慢性リンパ球性白血病および少なくともいくつかのタイプの非ホジキンリンパ腫において、一方では中心体異常と他方では核型異常および臨床侵攻性との間に相関性があるようである。
複雑な染色体異常は、原発性骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)の患者の30%までで存在し、予後不良に関連する。複雑な核型の特定の変化を従来の細胞遺伝学のみで定義するのは難しい。骨髄サンプルに選択プローブを用いるスペクトル核型分析(SKY)および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)が使用される場合、再発異常についてのより総合的な見解を得ることができる(キャンサージェネティクス・アンド・シトジェネティクス(Cancer Genet. Cytogenet)、2006年、165(1)、51−63、(トロスト(Trost D)ら)。特定の切断点および欠失の詳細な分析は、既知の癌抑制遺伝子または癌遺伝子を有する特定の染色体バンドの再発性関与を示すことができる。SKYとFISHを用いた同様の詳細な方法でのMDSとAMLの多くの症例の分析は、これらの遺伝的変化によって新規なサブグループが同定できるかどうかを示す。臨床的指標との相関性は、これらの遺伝子サブグループの予後的意義を示している可能性がある。例えばMDSでは、国際予後判定システムは、芽球の割合、核型および減少した血球数を組み合わせ、MDSを患う患者の生存率および急性骨髄性白血病への進行の危険性を確実に予測する判定システムを作成する。より完全な臨床像および可能な限り正確な予後評価を提供するため、広く一般に受け入れるられているこの判定システムはFABまたは世界保健機関の形態学的基準としばしば組み合わされる(セミナーズ・イン・オンコロジー(Semin. Oncol.)2005年8月;32(4、付録5):S3−10、ベネット(Bennett))。
遺伝的不安定性は、急性骨髄性白血病(AML)で共通の特徴である(ブラッド(Blood)、2003年、101(1)、289−91、(ネベン(Neben)ら)、そして中心体異常が多くのヒト腫瘍での異数性の考えられる原因として記載されている。中心体異常がAMLにおける細胞遺伝学的所見と相関するかどうか調査するため、一連のAMLサンプルはぺリセントリンに対する中心体特異抗体を使用して試験された。分析したAMLサンプルは、末梢血単核細胞と比較して、中心体の数と構造の異常を示した。正常な染色体数のAMLサンプルと比較して、中心体の数と構造の異常の程度は、染色体数の変化を有するサンプルではより高かった。細胞遺伝学的に定義されたリスクグループにおける中心体異常の頻度を分析した時、相関性は中心体異常の程度との間で3つのリスクグループすべてでみられた。これらの結果は、中心体欠陥が染色体異常の獲得、そしてAMLにおける予後、に寄与している可能性を示す。
このように、腫瘍または白血病が染色体異常に関連していたかどうかを決定するために、当業者に公知の多くの手法が使用できる。
したがって、本発明の一態様は、患者が染色体異常を示す疾病、特に癌、に罹患しているかどうか検出し、本発明の組合せで染色体異常を治療する方法である。
本発明はさらに、患者が染色体異常を示す白血病に罹患しているかどうかを診断し、本発明の組合せを投与する方法を提供する。
本発明のさらなる態様は、癌に罹患している、または罹患していると疑われる患者における癌の予防および治療(あるいは癌の発生率の軽減または減少)方法である。前記方法は(i)患者が染色体異常を有しているかどうかを判定すべく患者に診断試験を行うこと、および(ii)患者が前記染色体異常を有することが示された場合に、その後、患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する本明細書で定義される本発明の組合せを投与することを含む。
抗真菌剤としての使用
さらなる態様において本発明は、本明細書で定義される補助化合物および式(I)または(I’)の化合物およびそのサブグループを含む(または本質的にこれらから成る)組合せの抗真菌剤としての使用を提供する。
本発明の組合せは、動物用医薬において(例えば、ヒトなどの哺乳動物の治療において)、または植物の治療において(例えば、農業および園芸において)、または抗真菌剤全般、例えば保存剤および殺菌剤として使用してもよい。
一実施態様では、本発明は、ヒトなどの哺乳動物における真菌感染の予防または治療に使用される本明細書で定義される組合せを提供する。
また、ヒトなどの哺乳動物における真菌感染の予防または治療用薬剤の製造のための本明細書で定義される組合せの使用も提供される。
例えば、本発明の組合せは、生物のなかでもとりわけ、カンジダ属(Candida)種、白癬菌属(Trichophyton)種、小胞子菌属(Microsporum)種または表皮糸状菌属(Epidermophyton)種により生じる局所的真菌感染、またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)により生じる粘膜感染(例えば、鵞口瘡および膣カンジダ症)に罹患しているか、またはその感染のリスクのあるヒト患者に投与することができる。本発明の組合せはまた、例えば、カンジダ・アルビカンス、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・フラーブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオデス(Coccidiodies)、パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)、ヒストプラスマ(Histoplasma)またはブラストミセス(Blastomyces)により生じる全身性真菌感染の治療または予防のために投与することもできる。
別の態様において、本発明は本明細書で定義される式(I)または(I’)の化合物およびそのサブグループを補助薬剤と農学的に許容される希釈剤または担体とともに含んでなる、農業(園芸を含む)用途の抗真菌組成物を提供する。
本発明はさらに、真菌感染を有する動物(ヒトなどの哺乳動物を含む)、植物または種子の治療方法であって、前記動物、植物もしくは種子、または前記植物もしくは種子が存在する場所を有効量の本明細書で定義される組合せで処理することを含む方法を提供する。
本発明はまた、植物または種子における真菌感染の治療方法であって、前記植物または種子を抗真菌的に有効な量の本明細書で定義される組合せを含有する抗真菌組成物で処理することを含む方法を提供する。
ディファレンシャルスクリーニングアッセイを使用して、非ヒトCDK酵素に対して特異性を有する化合物を選ぶことができる。真核生物病原体のCDK酵素に対して特異的に作用する化合物を、抗真菌剤または抗寄生虫剤として使用することができる。カンジダCDKキナーゼの阻害剤であるCKSIは、カンジダ症の治療に使用することができる。抗真菌剤は、上記で定義した種類の感染、または衰弱した患者や免疫抑制患者、例えば、白血病およびリンパ腫を有する患者、免疫抑制療法を受けている者、ならびに糖尿病またはAIDSなど疾病素因条件を有する患者において一般的に発生する日和見感染症に対して、またさらには非免疫抑制患者に対しても使用することができる。
当該技術分野で記載されているアッセイを使用して、真菌症、例えば、カンジダ症、アスペルギルス症、ムコール症、ブラストミセス症、ゲオトリクム症、クリプトコックス症、クロモブラストミセス症、コクシジオイデス症(coccidiodomycosis)、分生胞子症(conidiosporosis)、ヒストプラスマ症、マズラ菌症、リノスポリジウム症、ノカイジオシス(nocaidiosis)、パラアクチノミセス症、ペニシリウム症、モニリア症(monoliasis)またはスポロトリクス症に関与する少なくとも1種の真菌を抑制するのに有用であり得る薬剤をスクリーニングすることができる。ディファレンシャルスクリーニングアッセイを使用して、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)またはアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)などの酵母からクローニングしたCDK遺伝子を利用することにより、アスペルギルス症の治療において治療的価値を有し得る抗真菌剤を同定することができ、あるいは、真菌感染症がムコンニコシスである場合には、CDKアッセイは、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、アブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、アブシディア・ラモサ(Absidia ramosa)またはムコルプシルス(Mucorpusillus)などの酵母に由来するものであり得る。他のCDK酵素の供給源としては、病原体ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)が挙げられる。
例として、これら化合物の抗真菌活性の生体外評価は、最小発育阻止濃度(MIC)(適切な培地において特定の微生物の増殖が起こらない試験化合物の最低濃度)を測定することにより行うことができる。実際には、各々試験化合物を特定の濃度で配合した一連の寒天プレートに、例えば、カンジダ・アルビカンスの標準培養物を接種した後、各プレートを37℃で適切な期間培養する。次にこれらのプレートを、真菌の増殖の有無について試験し、適切なMIC値を記録する。あるいは液体培養物において濁度アッセイを行うこともでき、このアッセイの一例を示すプロトコルは下記実施例に示されている。
これらの化合物の生体内評価は、真菌、例えば、カンジダ・アルビカンスまたはアスペルギルス・フラーブス菌株を接種したマウスに、一連の用量レベルで、腹腔内または静脈内注射によるか、または経口投与により行うことができる。化合物の活性は、処置マウス群と非処置マウス群において真菌感染の増殖をモニタリングすることにより(組織学によるか、または感染部分から真菌を回収することにより)評価することができる。この活性は、化合物が感染の致死作用に対して50%防御を示す用量レベル(PD50)として測定することができる。
ヒト抗菌用途に関して、本明細書で定義される組合せは単独で投与してもよいし、または意図する投与経路および標準的な薬務に従って選択される医薬担体と混合して投与してもよい。従って、例えば、前記組合せは上記の「医薬製剤」と題する項で記載した処方により、経口投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与することができる。
ヒト患者に対する経口および非経口投与に関して、一日の投与量レベルは、とりわけ経口または非経口経路のいずれかで投与した際の組合せの有効性に応じて0.01〜10mg/kg(分割投与)であってよい。組合せのまたはその構成要素化合物の錠剤またはカプセル剤は、例えば、適宜一回投与または複数回投与するための投与用活性化合物5mg〜0.5gを含有してもよい。いずれの場合でも医師が個々の患者に最適な実際の投与量(有効量)を決定し、それは個々の患者の年齢、体重および応答によって異なる。
あるいは、前記抗真菌組合せを、坐剤またはペッサリーの形態で投与してもよいし、またはローション剤、液剤、クリーム、軟膏または粉剤の形態で局所適用してもよい。例えば、前記抗真菌組合せをポリエチレングリコールまたは流動パラフィンの水性エマルションからなるクリームに配合することができ、または1〜10%の濃度で、白蝋または白色軟質パラフィン基剤からなる軟膏に、必要に応じて安定剤および保存剤とともに配合することができる。
上記の治療用途に加え、このようなディファレンシャルスクリーニングアッセイにより開発された抗真菌剤は、例えば、食品の保存剤、家畜の体重増加を促進するための飼料補助剤、または非生物の処理、例えば、診療器具および診療室を消毒するための殺菌処方物に使用することができる。同様に、哺乳動物CDKおよび昆虫CDK、例えば、ショウジョウバエCDK5遺伝子(ヘルミッヒ(Hellmich)ら、(1994年)、フェデレーション・オブ・ヨーロピアン・バイオサイエンス・ソサエティーズ・レターズ(FEBS Lett)356:317−21)の阻害を並列比較することにより、本明細書における阻害剤である化合物、ヒト/哺乳動物と昆虫酵素を識別する阻害剤を選択することができる。したがって、本発明は、ミバエ(fruit fly)のような昆虫の防除に使用するなど、殺虫剤における本発明の組合せの使用および配合を明確に意図するものである。
さらに別の実施態様では、哺乳動物酵素よりも植物CDKに対しての阻害特異性に基づいて、本発明の組合せで使用する特定の対象CDK阻害剤を選択することができる。例えば、植物CDKは、1つまたは複数のヒト酵素を用いたディファレンシャルスクリーンに配置して、植物酵素の阻害に対して最大の選択性を示す化合物を選択することができる。したがって、本発明は枯れ葉剤などの形態におけるような農業用途の対象CDK阻害剤の処方物を特に意図するものである。
農業および園芸目的では、本発明の組合せは、特定の使用および意図する目的に応じて処方した組成物の形態で使用することができる。該化合物はしたがって、粉剤または顆粒剤、種子粉衣、水溶液、分散液または乳剤、浸漬剤、噴霧剤、エアゾール剤またはくん煙剤の形態で適用することができる。組成物はまた、分散性粉剤、顆粒剤または粒剤、あるいは使用前に希釈される濃縮物の形態で供給されてもよい。このような組成物は、農業および園芸において知られ許容される通常の担体、希釈剤またはアジュバントなどを含有してもよく、該組成物は常法に従って製造することができる。該組成物はまた、他の有効成分、例えば、除草活性もしくは殺虫活性を有する化合物またはさらなる殺真菌剤を配合してもよい。該化合物および組成物は多数の方法で適用でき、例えば、植物の葉、茎、枝、種子もしくは根または土壌や他の育成媒体に直接適用することができ、これらは病害を根絶するためのみならず、植物または種子を攻撃から予防的に保護するためにも使用できる。例えば、該組成物は、有効成分を0.01〜1重量%含有してもよい。圃場使用では、考えられる有効成分の散布量は50〜5000g/ヘクタールであり得る。
本発明はまた、木材腐朽菌の防除および植物が生育する土壌、苗床、または潅漑用水の処理に本発明の組合せ使用することも意図する。本発明はまた、貯蔵穀物および他の植物性ではない場所に真菌が蔓延するのを防ぐことを目的とした本明細書で定義される組合せの使用も意図する。
以下の実施例に記載される具体的実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、WO2006/070195(その内容は参照により本書に援用される)に記載の略語が使用される(特に136〜137ページ参照)。
分析用LC−MSシステムおよび方法の記述
調製された化合物は、WO2006/070195(その内容は参照により本書に援用される)に記載のシステムおよび操作条件を用いて液体クロマトグラフィーおよび質量分析により特性決定した。使用した操作条件もまたWO2006/070195に記載されている(特に137〜144ページ参照)。
下記の各実施例の出発物質は特に断りのない限り市販のものである。
様々な例示的な式(I’)の化合物は、WO2006/070195(その内容は参照により本書に援用される)に記載のように調製されてもよい。特に、136〜214ページの実施例1〜77に記載の化合物の合成に関連するWO2006/070195の内容は参照により本書に援用され、したがって次の化合物の調製の例が本明細書で特に記載される。
5−シアノ−2−メトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ベンズアミド
6−メチル−イミダゾール[2.1−b]チアゾール−5−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]アミド
2−シアノ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダキソール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]アセトアミド
2−シアノ−2−シクロプロピル−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アセトアミド
N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−2−モルホリンカルボキサミド−トリフルオロ酢酸塩
N−[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−4イソプロピル−2−モルホリンカルボキサミド
N−[3−(5,6−ジメトキシ−H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−rac−1−メチル−ピペリジン 3−カルボキサミド
3−クロロ−N−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル−5−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンズアミド
5−クロロ−2−メトキシ−N−{3−[5(4−メチル−ピペラジン−1−イルメチル)−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル]−1H−ピラゾール−4−イル}−ベンズアミド
1−(2,6−ジフルオロ−ベンジル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素
1−[3−(5モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−3−ピリジン−3−イル−尿素
チオモルホリン−4−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミド
1−(4−フルオロフェニル)−1−メチル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素
1−(4−フルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素
1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基および塩
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶遊離塩基および結晶塩形態
下記表に示す化合物
1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の酸付加塩の溶解度の測定
これはWO2006/070195の173〜175ページの実施例61に記載のように行なわれた(この文献の内容は参照により本書に援用される)。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の遊離塩基および塩の溶解度の測定
これはWO2006/070195の176〜178ページの実施例63に記載のように行なわれた(その内容は参照により本書に援用される)。
(実施例A)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩の調製
EtOAc−MeOH中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(0.7g、1.83mmol)溶液に、L−乳酸(166mg、1.85mmol)を加えた。この混合物を周囲温度で撹拌し、その後真空内で減量した。この固形物を沸騰しているEtOH(20mL)から再結晶により精製し、乾燥後に、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(0.48g)を得た。
(実施例B)
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩の合成
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩は下記スキームに示される合成経路により調製されてもよい。
ステージ1:(3,4−ジニトロ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの合成
THF(100mL)中の3,4−ジニトロ安息香酸(10g、47mmol、1当量)とDMF(0.1mL)との溶液を、塩化チオニル(4.5mL、62mmol、1.3当量)で処理し、2.5時間加熱して還流した。この混合物を氷中で冷却し、その後トリエチルアミン(10mL、71mmol、1.1当量)を、内部温度を<5℃に維持しながら20分間にわたり加えた。得られた粘性の黄色い懸濁液にモルホリン(6.2mL、71mmol、1.5当量)を、内部温度を<10℃に維持ながら15分間にわたり加えた。氷浴を除去し、混合物を室温まで温めた。15分後、さらなる分量のモルホリン(1mL、11mmol、0.24当量)を加え、混合物を一晩撹拌した。
混合物を水(250mL)で希釈し、氷中で冷却した。ベージュ色の固形物を吸引濾過し、さらなる分量の冷水(25mL)で洗浄し、真空乾燥して、表題化合物(12.7g、96%)を得た。
ステージ2:4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリンの合成
水素化ホウ素ナトリウム(3.36g、89mmol、2.1当量)を粉砕し、窒素置換したフラスコに入れ、THF(120mL)中に懸濁した。〜0℃に冷却後、三弗化硼素エーテラート(11.3mL、89mmol、2.1当量)を注射器を通して加えた。この反応はやや発熱性であり、ある程度の水素放出が認められた。4−(3,4−ジニトロベンゾイル)モルホリン(11.91g、42mmol、1.0当量)をひとかたまりの分量で固形物として加え、追加の分量のTHF(20mL)で容器をすすいだ。氷浴を除去し、懸濁液を室温で3時間撹拌して、再び氷中で冷却した。メタノール(100mL)を慎重に加え(水素放出)、その後混合物を1時間還流した。この混合物を真空濃縮し、次に残渣を酢酸エチル(100mL)と1:1飽和重炭酸ナトリウム溶液/水(100mL)とで分液した。有機相を分離し、水(50mL)および塩水(100mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO
4)。先の重炭酸塩洗浄液に酢酸エチル(50mL)で2度目の抽出をし、この抽出物を次に1度目の抽出に使用したものと同じ水性の洗浄剤で洗浄し、乾燥(MgSO
4)させ、合わせてから濃縮して、10.97gの粗物質を得た。メタノール(45mL、10mL洗浄)からの再結晶で表題化合物(9.34g、83%)を得た。
ステージ3:4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1.2−ジアミンの合成
4−(3,4−ジニトロベンジル)モルホリン(21g、101mmol)をエタノール(0.9L)に懸濁し、容器を窒素パージした。10%パラジウム炭素(1.05g)をエタノール(25mL)に懸濁し、基質に添加した。この混合物を氷中で冷却し、その後、雰囲気を水素置換した。混合物を15〜20℃まで温め、水素添加を雰囲気圧で2日間で継続した。容器を窒素パージし、その後、混合物をセライト濾過し、複数の分量に分けたエタノール(0.3L)ですすいだ。濃縮させて表題化合物(15.8g、97%)を得た。
ステージ4:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの合成
デジタル温度計および撹拌機を装備した20L反応容器に、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.117Kg、7.11mol、1wt)およびメタノール(8.950L、8vol)を仕込んだ。この反応混合物を窒素下で撹拌し、0〜5℃まで冷却し、塩化チオニル(0.581L、8.0mol、0.52vol)を180分間にわたって加え、得られた混合物を18〜22℃まで温め、その温度で一晩撹拌し、その後、
1H NMR分析(d
6−DMSO)は反応完了を示した。反応混合物を減圧下40〜45℃で濃縮し、残渣をトルエンで処理し、減圧下40〜45℃で再濃縮(3×2.250L、3×2vol)して4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.210Kg、99.5%th)をオフホワイト色の固形物として得た。
ステージ5:4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの合成
デジタル温度計および撹拌機を装備した20L反応容器に、窒素下でパラジウム炭素(10%ウェットペースト、0.170Kg、0.14wt)を仕込んだ。別の容器で、エタノール(12.10L、10vol)中の4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.210Kg、7.07mol、1wt)のスラリーを30〜35℃まで温め溶解し、この溶液を窒素下で触媒に添加した。窒素−水素パージシーケンスに続いて、水素雰囲気を導入し、
1H NMR分析(d
6−DMSO)により反応完了(5〜10時間)が認められるまで反応混合物を28〜30℃に維持した。パージサイクルに続いて、窒素下の反応混合物を濾過し、また、濾液を減圧下で濃縮して、4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(0.987Kg、98.9%th)を得た。
ステージ6:4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸の合成
ジオキサン(500mL)中の4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(50.0g、355mmol)の混合物に2M NaOH水溶液(213mL、426mmol)を加え、この混合物を50℃まで加熱し、5時間撹拌した。この混合物にその後、ジオキサン洗浄(100mL)を用いて(BOC)
2O(81.4g、373mmol)を加え、この混合物を50℃でさらに5時間加熱し、その後周囲条件で14時間撹拌した。ジオキサンを真空除去し、水(1L)を加えた。混合物は濃縮HCl水溶液を使用してpH〜2にし、生成した固形物を濾取し、フィルター上で乾燥した。この固形物をトルエンとの共沸(×3)および真空オーブン中でさらに乾燥して、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(70.0g、87%)をバイオレット色の固形物として得た。
ステージ7:[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
DMF(150mL)中の、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(10.0g、44.1mmol)と4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−l,2−ジアミン(10.0g、48.5mmol)とEDC(10.14g、52.9mmol)とHOBt(7.15g、52.9mmol)との混合物を、周囲温度で20時間撹拌し、溶媒の大部分を真空除去した。残渣をEtOAc(150mL)と飽和NaHCO
3水溶液(150mL)とに分液し、各層を分離し、有機画分を塩水で洗浄、MgSO
4で乾燥、真空下で減量して、[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを茶色の固形物(17.6g、96%)として得た。LC/MS分析は、生成物がジアミドを〜15%含んでいることを示す。これは
1H NMRの中でおよそ5%程度のレベルとして示される。ジアミドは次のステップで開裂される。
ステージ8:3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンの合成
[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(12.0g、28.8mmol)と2M HCl水溶液(50mL)との混合物を85℃で14時間加熱し、その後、周囲温度まで冷却した。混合物がpH〜8.5になるまで固形Na
2CO
3を慎重に加えて溶液を飽和した。暗色の粘着性の液体が形成された。この混合物を静置し、溶媒をデカントした。残りの残渣にEtOH(60mL)を加え、この混合物を還流下で1時間加熱し、熱時濾過し、EtOH(2×20mL)で洗浄して、無機の残渣を除去した。濾液を真空減量し、ガラス状固形物を得、これをその後Et
2O(60mL)中で1時間撹拌し、生成した紫色の粉末を濾取し、真空乾燥して3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(6.8g、80%、〜90%純度)を得た。
ステージ9:7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−1,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オンの合成
無水THF(50mL)中の3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(3.2g、10.7mmol)の混合物に周囲温度で撹拌下、1,1’−カルボニルジイミダゾール(1.78g、11mmol)を加えた。この混合物を、還流下14時間加熱し、その後周囲温度まで冷却した。形成された固形物を濾取し、THF(20mL)で洗浄し、真空乾燥して7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(2.34g、67%)をピンク色の固形物として得た。
ステージ10:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の合成
NMP(65mL)中の7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(10.7g、32.9mmol)の混合物にシクロプロピルアミン(6.9mL、99mmol)を加えた。この混合物を100℃で5時間加熱した。LC/MS分析は〜75%までの生成物への変換を示した、よって更なる分量のシクロプロピルアミン(2.3mL、33mmol)を加え、混合物を100℃で4時間加熱し、その後周囲温度まで冷却した。混合物を水(100mL)で希釈しEtOAc(100mL)で抽出した。有機画分を飽和NH
4Cl水溶液(2×50mL)および塩水(50mL)で洗浄し、その後水性画分をEtOAc(3×100mL)で再抽出した。合わせた有機画分をMgSO
4で乾燥し、真空減量して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素をオレンジ色のガラス状固形物(9.10g)として得た。
ステージ11:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の合成
EtOAc−iPrOH(1:1、90mL)中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素(9.10g、24mmol)の溶液にL−乳酸(2.25g、25mmol)を加えた。この混合物を周囲温度で24時間撹拌し、その後真空内で減量した。残渣をトルエン(100mL)およびEt
2O(100mL)を使用して連続スラリー(consecutive slurries)にし、生成する固形物を採取し乾燥した(8.04g)。
この固形物を沸騰するiPrOH(200mL)から再結晶により精製し、乾燥後、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(5.7g)をベージュ色の固形物として得た。
(実施例C)
ステージ1:(3,4−ジニトロフェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの調製
3,4−ジニトロ安息香酸(1.000Kg、4.71mol、1.0wt)、テトラヒドロフラン(10.00L、10.0vol)およびジメチルホルムアミド(0.010L、0.01vol)を窒素下でフラスコに仕込んだ。塩化チオニル(0.450L、6.16mol、0.45vol)を20〜30℃で加え、反応混合物を65〜70℃まで加熱した。
1H NMR分析(d
6−DMSO)により反応が完了したことを判定した、典型的には3時間であった。反応混合物を0〜5℃に冷却しトリエチルアミン(1.25L、8.97mol、1.25vol)を0〜10℃で加えた。モルホリン(0.62L、7.07mol、0.62vol)を0〜10℃で反応混合物に仕込み、そのスラリーを30分間0〜10℃で撹拌した。
1H NMR分析(d
6−DMSO)により反応が完了したことを判定した。反応混合物を15〜20℃まで温め、水(4.00L、4.0vol)を加えた。この混合物を次に15〜25℃で水(21.00L、21.0vol)を含む40Lフランジフラスコに仕込み、生成物が沈殿した。フラスコの内容物を0〜5℃に冷却し0〜5℃で1時間熟成し、固形物を濾取した。濾過ケーキを水(4×5.00Lおよび4×5.0vol)で洗浄し、最終洗浄液のpHはpH7であるとわかった。トリエチルアミン塩酸塩の存在を確認するため、湿っている濾過ケーキを
1H NMRにより分析した。濾過ケーキを、KFによる含水率が<0.2%w/wまで、真空下で40〜45℃で乾燥して、(3,4−ジニトロフェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(1.286Kg、97.0%、KF0.069%w/w)を黄色の固形物として得た。
ステージ2:4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリンの調製
(3,4−ジニトロフェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(0.750Kg、2.67mol、1.0wt)およびテトラヒドロフラン(7.50L、10.0vol)を窒素下でフラスコに仕込み、0〜5℃まで冷却した。三弗化硼素エーテラート(0.713L、5.63mol、0.95vol)を0〜5℃で加え、その懸濁液をこの温度で15〜30分間撹拌した。水素化硼素ナトリウム(0.212Kg、5.60mol、0.282wt)を等しい分量で6つに分けて90〜120分間にわたって加えた(最初の分量を添加した10〜15分後に遅延発熱が認められた。一旦これが始まり反応混合物が再度冷却されてから、他の分量を、混合物が添加と添加の間で冷却されるように10〜15分の間隔で添加した)。反応混合物を0〜5℃で30分間撹拌した。反応の完了を
1H NMR分析(d
6−DMSO)で判定した。メタノール(6.30L、8.4vol)を0〜10℃で滴下し反応混合物を停止した(急速なガス発生、ある程度の発泡)。停止された反応混合物を、0〜10℃で25〜35分間撹拌し、その後、ガス発生が遅くなるまで20〜30℃に温め20〜30℃で撹拌した(発熱、固形物の溶解時ガス/エーテル発生)。この混合物を65〜70℃まで熱し65〜70℃で1時間撹拌した。混合物を30〜40℃まで冷却し、真空下で40〜45℃で濃縮して、4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン粗生成物(0.702Kg、98.4%)を黄色/オレンジ色の固形物として得た。
4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(2.815kg、10.53mol、1.0wt)とメタノール(12.00L、4.3vol)とを窒素下でフラスコに仕込み、65〜70℃まで加熱した。前記温度を完全溶解まで維持した。混合物をその後0〜5℃に冷却し0〜5℃で1時間熟成した。固形物を濾過により単離した。濾過ケーキをメタノール(2×1.50L、2×0.5vol)で洗浄し、真空下で35〜45℃で乾燥して、4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(2.353Kg、ステージ2の投入量に基づいて83.5%、ステージ1の物質の全投入量に基づいた総収率82.5%)を黄色の固形物として得た。
ステージ3:4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミンの製造
4−(3,4−ジニトロ−ベンジル)−モルホリン(0.800Kg、2.99mol、1.0wt)とエタノール(11.20L、14.0vol)とを適切なフラスコに仕込み、15〜25℃で撹拌し、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。10%パラジウム炭素(10%Pd/C、50%ウェットペースト、0.040Kg、0.05wt含水重量)をエタノール(0.80L、1.0vol)中でスラリーにし、反応物に加えた。この混合物を10〜20℃まで冷却し、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。真空/水素パージサイクルを3回実施し、反応物を水素雰囲気下10〜20℃で撹拌した。反応完了を
1H NMR分析(d
6−DMSO)により判定した、典型的には14〜20時間であった。真空/窒素パージサイクルを3回実施し、反応混合物を窒素下でグラスマイクロファイバーペーパーで濾過した。濾過ケーキをエタノール(3×0.80L、3×l.0vol)で洗浄し、合わせた濾液と洗浄液を真空下で35〜45℃で濃縮乾固して、4−モルホリン−4−イルメチル−ベンゼン−1,2−ジアミン(0.611Kg、98.6%)を茶色の固形物として得た。
ステージ4:4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの調製
4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.00kg、6.37mol、l.0wt)およびメタノール(8.00L、8.0vol)を機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。この懸濁液を窒素下で0〜5℃まで冷却し、塩化チオニル(0.52L、7.12mol、0.52vol)をこの温度で加えた。この混合物を15〜25℃まで16〜24時間にわたって温めた。反応完了を
1H NMR分析(d
6−DMSO)により判定した。混合物を真空下で35〜45℃で濃縮した。トルエン(2.00L、2.0vol)を残渣に仕込み、真空下で35〜45℃で除去した。トルエン(2.00L、2.0vol)を使用して共沸を2度繰り返して、4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.071Kg、98.3%)をオフホワイト色の白色の固形物として得た。
ステージ5:4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの調製
4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.084Kg、6.33mol、1.0wt)とエタノール(10.84L、10.0vol)との懸濁液を30〜35℃に加熱し、完全溶解が起こるまで30〜35℃に維持した。10%パラジウム炭素(10%Pd/Cウェットペースト、0.152Kg、0.14wt)を窒素下で別のフラスコに仕込み、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。エタノール中の4−ニトロ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステルの溶液を前記触媒に仕込み、真空/窒素パージサイクルを3回実施した。真空/水素パージサイクルを3回実施し、反応物を水素雰囲気下に置いた。
1H NMR分析(d
6−DMSO)により完全に反応したと見なされるまで、反応混合物を28〜30℃で撹拌した。混合物を窒素下で濾過し、真空下で35〜45℃で濃縮して、4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(0.883Kg、98.9%)を紫色の固形物として得た。
ステージ6:4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸の調製
4−アミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸メチルエステル(1.024Kg、7.16mol、1.0wt)とジオキサン(10.24L、10.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。2M水酸化ナトリウム水溶液(4.36L、8.72mol、4.26vol)を15〜25℃で仕込み、この混合物を45〜55℃まで加熱した。反応完了(
1H NMR分析(d
6−DMSO)により判定)まで温度を45〜55℃に維持した。ジ−tert−ブチルジカルボン酸塩(Boc無水物、1.667Kg、7.64mol、1.628wt)を45〜55℃で加え、混合物を55〜65分間撹拌した。
1H NMR分析(d
6−DMSO)は9%未反応中間体の存在を示した。追加のジ−tert−ブチルジカルボン酸塩(Boc無水物、0.141Kg、0.64mol、0.14wt)を55℃で加え、混合物を55〜65分間撹拌した。反応完了は
1H NMR分析(d
6−DMSO)により判定した。ジオキサンを真空下35〜45℃で除去し、水(17.60L、20.0vol)を残渣に添加した。pHを2M塩酸水溶液(4.30L、4.20vol)でpH2までに調整し、混合物を濾過した。濾過ケーキを20〜30分間水(10.00L、9.7vol)でスラリーにし、混合物を濾過した。濾過ケーキをヘプタン(4.10L、4.0vol)で洗浄し、パッド上で16〜20時間乾燥した。固形物をトルエン(5×4.00Lおよび5×4.6vol)で共沸し、その後真空下で35〜45℃で乾燥して、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(1.389Kg、85.4%)を紫色の固形物として得た。
ステージ7:[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1H−ピラゾール−3−カルボン酸(0.750Kg、3.30mol、1.0wt)と4−モルホリン−4イル−メチルベンゼン−1,2−ジアミン(0.752Kg、3.63mol、1.0wt)とN,N’ジメチルホルムアミド(11.25L、15.0vol)とを機械式撹拌機および温度計を装備したフランジフラスコに窒素下で仕込んだ。1−ヒドロキシべンゾトリアゾール(HOBT、0.540Kg、3.96mol、0.72wt)を15〜25℃で加えた。N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC、0.759Kg、3.96mol、1.01wt)を15〜25℃で添加し、混合物をこの温度で16〜24時間撹拌した。反応完了は
1H NMR分析により判定した。反応混合物を真空下35〜45℃で濃縮した。残渣を酢酸エチル(7.50L、l0.0vol)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(8.03L、10.7vol)とに分液し、各層を分離した。有機相を塩水(3.75L、5.0vol)で洗浄し、硫酸マグネシウム(1.00Kg、1.33wt)で乾燥し、濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(1.50L、2.0vol)で洗浄した。合わせた濾液と洗浄液とを真空下35〜45℃で濃縮して、[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.217Kg、88.6%)を暗褐色の固形物として得た。
ステージ8:3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンの調製
[3−(2−アミノ−4−モルホリン−4−イルメチル−フェニルカルバモイル)−1H−ピラゾール−4−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.350Kg、3.24mol、1.0wt)とエタノール(6.75L、5.0vol)とを、機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。濃縮塩酸水溶液(1.10L、13.2mol、0.80vol)を窒素下で15〜30℃で加え、内容物をその後70〜80℃まで加熱し、16〜24時間この温度で維持した。2つ目の分量の塩酸(0.11L、1.32mol、0.080vol)を70〜80℃で添加し、反応物をさらに4時間加熱した。反応完了はHPLC分析により判定した。反応混合物を10〜20℃に冷却し、炭酸カリウム(1.355Kg、9.08mol、1.0wt)をこの温度でいくつかの分量に分けて仕込んだ。懸濁液をガス発生がなくなるまで撹拌しその後濾過した。濾過ケーキをエタノール(1.35L、l.0vol)で洗浄し、濾液を保持した。濾過ケーキをエタノール(4.00L、3.0vol)で15〜25℃で20〜40分間スラリーにし、この混合物を濾過した。濾過ケーキをエタノール(1.35L、1.0vol)で洗浄し、合わせた濾液全体を真空下で35〜45℃で濃縮した。エタノール(4.00L、3.0vol)を残渣に仕込み、真空下で35〜45℃で除去した。テトラヒドロフラン(5.90L、4.4vol)を残渣に添加し、10〜20分間15〜25℃で撹拌した。得られた溶液を濾過し、濾過ケーキをテトラヒドロフラン(1.35L、1.0vol)で洗浄し、合わせた濾液を真空下で35〜45℃で濃縮した。テトラヒドロフラン(5.40L、4.0vol)を濃縮物に仕込み、真空下で35〜45℃で除去した。テトラヒドロフラン(5.40L、4.0vol)を濃縮物に仕込み、真空下で35〜45℃で除去して、所望の生成物3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(0.924Kg、95.5%、HPLC面積で82.84%)を紫色の発砲体として得た。
ステージ9:7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オンの調製
3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミン(0.993Kg、3.33mol、1.0wt)とテトラヒドロフラン(14.0L、15.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。内容物を窒素下で15〜25℃で撹拌し、1,1’−カルボニルジイミダゾール(0.596Kg、3.67mol、0.60wt)を添加した。内容物をその後60〜70℃まで加熱し、この温度で16〜24時間撹拌した。反応完了はTLC分析により判定した。混合物を15〜20℃まで冷却そして濾過した。濾過ケーキをテトラヒドロフラン(4.00L、4.0vol)で洗浄し、15〜30分間乾燥した。固形物を真空下で35〜45℃で乾燥し、7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(0.810Kg、75.0%th、HPLC面積で92.19%)を紫色の固形物として得た。
ステージ10:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素の調製
7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(0.797Kg、2.46mol、1.0wt)と1−メチル−2−ピロリジノン(2.40L、3.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。シクロプロピルアミン(0.279Kg、4.88mol、0.351wt)を窒素下で15〜30℃で添加した。内容物を95〜105℃まで加熱し、この温度で16〜24時間撹拌した。反応完了を
1H NMR分析により判定した。反応混合液を10〜20℃まで冷却し、酢酸エチル(8.00L、10.0vol)および飽和塩化ナトリウム水溶液(2.50L、3.0vol)を仕込み、混合物を2〜5分間撹拌し、各層を分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(5.00L、6.0vol)と共に25〜35分間撹拌し、混合物を濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(0.40L、0.5vol)で洗浄した。濾過ケーキを保持し、濾液を分液漏斗へ移し、各層を分離した。この操作をさらに3回繰り返し、保持した固形物を有機相と合わせ、混合物を真空下で35〜45℃で濃縮乾固した。濃縮物を45〜55℃でプロパン−2−オール(8.00L、10.0vol)に溶解し、活性炭(0.080Kg、0.1wt)を仕込んだ。混合物を45〜55℃で30〜40分間攪拌し、次いで45〜55℃で熱時濾過し、濾過ケーキをプロパン−2−オール(0.40L、0.5vol)で洗浄した。活性炭(0.080L、0.1wt)を合わせた濾液および洗浄液に仕込み、この混合物を45〜55℃で30〜40分間撹拌した。混合物を45〜55℃で熱時濾過し、濾過ケーキをプロパン−2−オール(0.40L、0.5vol)で洗浄した。濾液および洗浄液を真空下で35〜45℃で濃縮した。酢酸エチル(8.00L、10.0vol)および水(2.20L、3.0vol)を25〜35℃で濃縮物に仕込み、この混合物を1〜2分間撹拌した。各層を分離し、有機相を真空下で35〜45℃で濃縮した。酢酸エチル(4.00L、5.0vol)を残渣に仕込み、真空下で35〜45℃で濃縮した。酢酸エチル(4.00L、5.0vol)を残渣に仕込み、混合物を2〜20時間15〜25℃で撹拌した。混合物を0〜5℃まで冷却して0〜5℃で90〜120分間熟成し、その後濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(0.80L、1.0vol)で洗浄し、15〜30分間乾燥した。固形物を真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素(0.533Kg、56.8%、HPLC面積で93.20%)を茶色の固形物としてを得た。
数バッチのステージ9の生成物をこのように処理した。各バッチにおける出発物質および生成物の量の詳細を表1Aに示す。
表1A−尿素形成工程の収率−ステージ10
ステージ11:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の調製
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素(1.859Kg、4.872mol、1.0wt)とプロパン‐2‐オール(9.00L、5.0vol)と酢酸エチル(8.00L、4.5vol)とを機械式撹拌機および温度計を装備したフランジフラスコに仕込んだ。内容物を窒素下で撹拌し、L‐乳酸(0.504Kg、5.59mol、0.269wt)を15〜25℃で加え、次いで酢酸エチル(0.90L、0.5vol)でラインリンスした。混合物を15〜25℃で120〜140分間撹拌した。固形物を濾過により単離し、濾過ケーキを酢酸エチル(2×2.00L、2×1.0vol)で洗浄し、20〜40分間乾燥した。濾過ケーキを75〜85℃でエタノール(33.00L、17.7vol)に溶解し、65〜70℃まで冷却し、溶液をグラスマイクロファイバーペーパーで清澄化した。濾液を15〜25℃まで冷却して15〜25℃で2〜3時間熟成した。結晶化した固形物を濾過により単離し、濾過ケーキをエタノール(2×1.00L、2×0.5vol)で洗浄し、少なくとも30分間乾燥した。固形物を真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩(1.386Kg、58.7%th、HPLC面積で99.47%)を暗いピンクの均一固形物として得た。
1H NMRデータ(400MHz、CD3OD)δ8.08(s、1H、ピラゾール−CH)、7.66(s、1H、アリール−CH)、7.60(d、J=8.0Hz、1H、アリール−CH)、7.29(d、J=8.5Hz、1H、アリール−CH)、4.15(q、J=7.0Hz、1H、乳酸塩−CH)、3.96(s、2H、ベンジル−CH2)、3.79−3.77(m、4H、モルホリノ−(CH2)2)、2.82−2.80(m、4H、モルホリノ−(CH2)2)、2.74−2.68(m、1H、シクロプロピル−CH)、1.38(d、J=7.0Hz、3H、乳酸塩−CH3)、0.98(br s、2H、シクロプロピル−CH2)、0.68(br s、2H、シクロプロピル−CH2)。
乳酸塩の赤外線スペクトル(KBrディスク法)は3229、2972および1660cm−1に特徴的ピークを含んでいた。
特定の理論に拘束されるものではないが、赤外線ピークは下記のような塩の構造要素に基づくものであると考えられる。
ピーク: 原因:
3229cm−1 N‐H
2972cm−1 脂肪族C‐H
1660cm−1 尿素C=O
(実施例D)
WO2006/070195の実施例66に記載され、上記で概説された、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の調製は、実施例(i)および(ii)中で下記に概説される修正された手順を用いて仕上げることができる。
(実施例(i))
WO2006/070195の実施例66に追加して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の調製は、下記に概説される修正される手順を用いて仕上げることができる。
ステージ1:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素の調製
7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−1,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(1.0wt、WO2006/070195の実施例66で概説されるように調製)とn−ブタノール、ブチロニトリル、グリコールまたはトルエンなどの溶媒(3.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備したフランジフラスコに仕込んでもよい。シクロプロピルアミン(0.351wt)を15〜30℃のような温度で不活性雰囲気(例えば窒素)下で添加してもよい。内容物を40〜105℃、特に40〜80℃に加熱し、この温度で16〜24時間撹拌してもよい。反応完了は1H NMR分析により決定することができる。反応混合物をその後10〜20℃に冷却してもい。生成物をその後実施例66で上記に概説されたような有機相−水相抽出法により単離することができる、または、反応混合物に貧溶媒、例えばn−ヘプタンを添加するような別の単離方法を使用してもよい。この方法は反応生成物を沈殿させることができ、次に濾過で単離することができる。固形物を次に真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を得ることができる。このステージでは、固形物を適切な溶媒、好ましくはクラス2もしくはクラス3溶媒1からの再結晶により精製することができる。さらに、再結晶に加えて、フラッシュカラムクロマトグラフィーあるいはシリカゲルまたは逆相シリカゲルプラグによる濾過のような別の精製方法を生成物の精製に使用してもよい。
1:クラス3およびクラス2溶媒は、産業Q3C不純物に関するガイドラインにおけるQ3C−表およびリスト:残留溶媒(Q3C-Tables and List in Guidance for Industry Q3C Impurities: Residual Solvents)(2003年11月、CDER、CBER、FDA、ICH)に概説されたとおりであり、残留溶媒に関するガイドライン(Guideline for Residual Solvents)(1997年、ICH)にさらに概説されたとおりである。
ステージ2:1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の調製
クラス2またはクラス3溶媒、特にエタノール水溶液(5.0〜10.0vol)などのクラス3溶媒中の1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素(1.0wt)を機械式撹拌機および温度計を装備したフランジフラスコに仕込むことができる。内容物を不活性雰囲気(例えば、窒素)下で撹拌し、L‐乳酸(0.269wt)を15〜25℃で添加し、次いでエタノール水溶液(0.5vol)などの適切な溶媒でラインリンスすることができる。混合物を15〜25℃で120〜140分間撹拌できる。固形物を濾過により単離し、またはn−ブタノールなどの貧溶媒の添加を用いて溶液から塩を析出し、その後濾過により単離してもよい。濾過ケーキを適切な溶媒(2×2.00L、2×1.0vol)で洗浄し、20〜40分間乾燥させることができる。濾過ケーキをその後クラス2またはクラス3の溶液、特にクラス3の溶媒(〜3〜60vol)で40〜150℃で溶解し、40〜70℃まで冷却し、溶液をグラスマイクロファイバーペーパーで清澄化できる。濾液を15〜25℃まで冷却して15〜25℃で2〜3時間熟成することができる。結晶化した固形物を濾過により単離し、濾過ケーキを適切な溶媒(2×0.5〜2vol)で洗浄し、少なくとも30分間乾燥できる。固形物をその後真空下で35〜45℃で乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩を得ることができる。さらに、再結晶に加えて、フラッシュカラムクロマトグラフィーあるいはシリカゲルまたは逆相シリカゲルプラグによる濾過などの別の精製方法を生成物の精製に使用してもよい。
(実施例(ii))
WO2006/070195の実施例66に追加して、1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H‐ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の調製は、下記に概説される修正された手順を用いて完了することができる。
ステージ1:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の調製
7−モルホリン−4−イルメチル−2,4−ジヒドロ−l,2,4,5a,10−ペンタアザ−シクロペンタ[a]フルオレン−5−オン(1.0wt、WO2006/070195の実施例66で上記に概説されるように製造)と1−メチル−2−ピロリジノン(3.0vol)とを機械式撹拌機、コンデンサーおよび温度計を装備した適切なサイズのフランジフラスコに仕込む。シクロプロピルアミン(0.351wt)を窒素下で15〜30℃で加える。内容物をその後95〜105℃まで加熱し、反応が1H NMR分析により完了していると判定されるまでこの温度で撹拌する。完了したら、反応混合物を16〜25℃まで冷却し、混合物を16〜25℃に維持しながら、撹拌された約13%w/w塩化ナトリウム溶液(11.5vol)にゆっくりと(ほぼ2〜3時間)添加する。沈澱物が形成する。反応混合物の移動は16〜25℃で1−メチル−2−ピロリジノン(0.5vol)でリンスすることにより完了する。沈殿した固形物を濾取し、水(0.5vol)で洗浄し、取り扱いに適当であると見なされるまでフィルター上で乾燥する。固形物を酢酸エチル(5.0vol)および水(6.0vol)に懸濁し、16〜25℃で60〜70分間撹拌する。固形物を濾取し、酢酸エチル(1.0vol)および混合ヘプタン(2×2.0vol)で順次洗浄し、取り扱いに適当であると見なされるまでフィルター上で乾燥させる。固形物を酢酸エチル(4.0vol)に懸濁し、15〜25℃で少なくとも60分間撹拌する。固形物を濾取し、酢酸エチル(1.0vol)で洗浄し、フィルター上で乾燥させて、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の粗生成物(60〜80%w/w)を暗褐色/赤色の固形物として得る。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の粗生成物(1.0wt)を45〜55℃でプロパン−2−オール(15vol)に溶解し、活性炭(ダルコ(DARCO)KB)(0.2wt)を仕込む。混合物を45〜55℃で60〜70分間撹拌し、その後45〜55℃で熱時濾過する。濾過ケーキをプロパン−2−オール(2.5vol)で洗浄する。活性炭(ダルコ(DARCO)KB)(0.2wt)を、合わせた濾液と洗浄液とに仕込み、混合物を45〜55℃で60〜70分間撹拌する。混合物を45〜55℃で熱時濾過し、濾過ケーキをプロパン−2−オール(2.5vol)で洗浄する。合わせた濾液と洗浄液とを真空下で35〜45℃で濃縮して、所望の生成物、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を茶色の発泡体として65〜100%w/wの収率で得る。
ステージ2:1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L‐乳酸塩の調製
実施例Bのステージ1(上記)の別の手法から生成された物質を使用して、WO2006/070195の実施例66Aのステージ11でのような造塩手順を実施して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩をオフホワイト色の固形物として得ることができる。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の結晶遊離塩基および結晶塩形態の合成
A 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の調製
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の粗生成物の試料を実施例60で概説したように調製し、まずシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりEtOAc−MeOH(98:2〜80:20)で溶出して精製した。得られた遊離塩基の試料を次に高温のメタノールから再結晶化し、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の結晶物質を得た。
B 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基二水和物の調製
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の粗生成物の試料をTHFに溶解し、次いで真空内で最小容量(〜4vol)まで濃縮した。溶液が混濁するまで溶液に水(2〜4vol)を滴下した。少量のTHFを添加して溶液を再び清澄にし、混合物を一晩放置して結晶物質を得、これを風乾して1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基二水和物を得た。
C 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩酸塩の調製
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の粗生成物の試料を最小量のMeOHに溶解し、次いでEtOAcで希釈した。この溶液0℃に1.1当量のHCl(ジオキサン中4M溶液)をゆっくりと添加した。添加に続いて固形物が溶液から析出し、これを濾取した。この固形物にMeOHを添加し、混合物を真空内で減量した。微量の残留MeOHを除去するために、残渣を水から蒸発し、次いで60℃/0.1mbarで乾燥して塩酸塩を得た。
D 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素エタンスルホン酸塩の調製
MeOH−EtOAc中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基の溶液に1当量のエタンスルホン酸を添加した。この混合物を周囲温度で撹拌し、その後真空内で減量した。残渣をMeOHに溶解し、この溶液にEt2Oを添加した。混合物を72時間放置し、形成された固形物を濾取および乾燥して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素エタンスルホン酸塩を得た。
E 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素メタンスルホン酸塩の調製
MeOH−EtOAc中の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基(394mg)の溶液に1当量のメタンスルホン酸(67μL)を添加した。固形物が形成され、これを濾取しEtOAcで洗浄した。この固形物を最小量の高温のMeOHに溶解し、冷却し、その後Et2Oで粉状化した。この固形物を72時間放置し、次いで濾取しMeOHで洗浄して、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素メタンスルホン酸塩を得た。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基および塩の特性決定
様々な形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の特性決定を行った。特性決定のために選択した形態は、主に多形性および塩安定性の度合いを調査した研究から特定した。さらなる特性決定に選択された塩はL‐乳酸塩、遊離塩基二水和物、エシル酸塩、遊離塩基および塩酸塩であった。
A1 示差走査熱量測定法(DSC):
サーモグラムは50ポジションオートサンプラーを装備したTAインスツルメント(TA Instrument)Q1000で収集した。エネルギーおよび温度の較正基準はインジウムとした。試料を10℃/分の割合で10℃から250℃に加熱した。30mL/分の窒素パージを試料に対して維持した。2〜10mgの試料を(特に断らない限り)使用し、蓋にピンホールを付したアルミニウムパンに全試料を入れた。
A2 さらなる示差走査熱量測定法(DSC):
サーモグラムは、メトラートレド(Mettler Toledo)821e示差走査熱量計で収集した。試料を10℃/分の割合で40℃から300℃に加熱した。80ml/分の窒素パージをサンプルに対して維持した。ほぼ5〜10mgの試料を使用し、適切な高圧パン(例えば、小型アルミニウムパン、中圧アルミニウムパンまたは高圧金メッキパン)に全試料を入れた。
B 熱重量分析(TGA):
サーモグラムはTAインスツルメント(TA Instruments)Q500で収集した。試料を10℃/分の割合で加熱した。100mL/分の窒素パージを試料に対して維持した。典型的には5〜20mgの試料を風袋計測オープンアルミニウムパンへ入れた。
C 偏光顕微鏡法
試料を、撮影用デジタルカメラを装備したライカ(Leica)LM/DM顕微鏡で観察した。少量の試料をスライドガラス上の浸漬油に載せ、カバースリップガラスで覆った。個別の粒子をできるだけ離し、λ波プレートへ接続して50〜500×倍率および部分的に交直する偏光で検査した。
D XRPD(粉末X線回折)
D5000
CuKα線(40kV,40mA)、θ−θゴニオメーター、自動発散および受光スリット、グラファイト二次モノクロメーターおよびシンチレーションカウンターを用いるシーメンス(Siemens)D5000回折計でXRPD検査を行った。0.02°2θまたは0.005°2θの工程サイズおよび1秒の工程時間を用いる連続走査モードで2°〜30°2θの角度範囲にわたりデータを収集した。
試料を周囲条件下でランし、粉砕せずに受け取ったままの粉末を用いて平板試料として調製した。ほぼ25〜50mgの試料を、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェーハー(ザ ジェムダグアウト(The Gem Dugout、1652 プリンストンドライブ、ペンシルベニア州立大学、ペンシルベニア州16803、米国)に切り込まれた直径12mm、深さ0.5mmのキャビティーに、静かに詰めた。
全XRPD分析は、ディフラクプラスXRDコマンダー(Diffrac Plus XRD Commander)ソフトウェアv2.3.1を使用して行った。
ブルカー(Bruker)AXS C2 GADDS回折計(GVSから回収された試料に使用)
CuKα線(40kV,40mA)、自動XYZステージ、自動試料位置決め用のレーザービデオ顕微鏡およびHiStar二次元面積検出器を用いたブルカー(Bruker)AXS C2 GADDS回折計で、試料の粉末X線回折パターンを取得した。X線光学機器は0.3mmのピンホールコリメーターと接続された単一Gobel多層ミラーからなる。
ビーム発散、すなわち試料上でのX線ビームの有効サイズは、ほぼ4mmであった。3.2〜29.8°の有効2θ角度を呈する20cmの試料対検出器距離でθ−θ連続走査モードを用いた。試料の典型的な露光時間は120秒である。
粉砕せずに受け取ったままの粉末を用いて平板試料として試料を調製した。平らな表面を得るために、ほぼ1〜2mgの試料をスライドガラスに軽く押しつけた。
XRPDトレースをL‐乳酸塩および遊離塩基について記録した。トレースは良好なシグナル対ノイズ比を示し、結晶性の物質を表わす。
E 重量蒸気収着(GVS):
全試料を、CFRSorpソフトウェアを実行するハイデン(Hiden)IGASorp水分収着分析器でランした。試料サイズは約10〜25mgであった。水分吸着/脱離等温処理を下記に概説するように行った。試料を室内湿度および室温(約40%RH、25℃)で出し入れし、その後XRPD(ブルカー(Bruker)AXS C2 GADDSシステム使用)により分析した。
標準等温ランは40%RHで開始させる単一サイクルであった。
湿度は下記のように変化させた。
40、50、60、70、80、90
85、75、65、55、45、35、25、15、5、0
10、20、30、40
(i)L‐乳酸塩
L‐乳酸塩のGVS等温処理では、試料が吸湿挙動を示さず水和物を形成しないことを示している。GVS実験後における試料のXRPDトレースは投入物質のものと一致し、実験中に相変化が生じなかったことを示している。
(ii)遊離塩基
実験中、0%RH〜95%RHで試料重量はほぼ9%異なる。これは試料が性質上吸湿性であることを示している。
X線回折による1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素二水和物遊離塩基の測定
これは、WO2006/070195の201〜204ページの実施例69(その内容は参照により本書に援用される)に記載のように行なわれた。
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素遊離塩基のXRPDパターンの測定
これは、WO2006/070195の204〜205ページの実施例70(その内容は参照により本書に援用される)で記載のように行なわれた。
1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素乳酸塩の結晶構造の測定
これは、WO2006/070195の205〜209ページの実施例71(その内容は参照により本書に援用される)で記載のように行なわれた。
1−シクロプロピル−3−[3−(5‐モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2‐イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素塩の40℃、75%RHでの安定性
これは、WO2006/070195の209〜211ページの実施例72(その内容は参照により本書に援用される)で記載のように行なわれた。
生物学的活性
活性化CDK2/サイクリンAキナーゼ阻害活性アッセイ(IC50)の測定
本発明の化合物を、WO2006/070195の211〜212ページの実施例73(その内容は参照により本書に援用される)に記載のプロトコルを用いてキナーゼ阻害活性について試験した。
活性化CDK1/サイクリンBキナーゼ阻害活性アッセイ(IC50)の測定
WO2006/070195の212〜213ページの実施例74(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
オーロラAキナーゼアッセイ
WO2006/070195の213ページの実施例75(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
オーロラBキナーゼアッセイ
WO2006/070195の214ページの実施例76(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
GSK3‐Bキナーゼ阻害活性アッセイ
WO2006/070195の214ページの実施例77(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
A 他のキナーゼ阻害活性アッセイ
これらの酵素に対する阻害活性をアップステートディスカバリー(Upstate Discovery Ltd.)においてアッセイした。酵素は酵素用緩衝液(下記表で記載されている通り)中で10×最終濃度に調製した。次いで酵素を表に記載されているような様々な基質および33P‐ATP(〜500cpm/pmol)と共にアッセイ用緩衝液中でインキュベーションした。
反応をMg/ATPの添加により開始した。反応を40分間室温で進行させ、5μLの3%リン酸溶液で停止した。10μLの反応液ミックスをフィルターマットAまたはP30フィルターマットのどちらかに移し、75mMリン酸で3回およびメタノールで1回洗浄し、その後シンチレーション計数のために乾燥させた。
化合物を全キナーゼに対して下記に詳述した濃度でデュプリケートで試験し、コントロールと比較した活性パーセントを計算した。阻害が高い場合はIC
50を求めた。
酵素用緩衝液は次のとおりであった。
A:20mM MOPS pH7.0、1mM EDTA、0.1%β−メルカプトエタノール、0.01%Brij−35、5%グリセロール、1mg/ml BSA
B:50mM Tris pH7.5、0.05%β−メルカプトエタノール、1mg/ml BSA
アッセイ用緩衝液は次のとおりであった。
A:8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、10mM 酢酸Mg
B:50mM Tris pH7.5、0.1%β−メルカプトエタノール、10mM 酢酸Mg
B さらなるキナーゼ阻害活性アッセイ
これらの酵素に対する阻害活性をアップステートディスカバリーにてアッセイした。酵素は酵素用緩衝液(下記表で記載されている通り)で10×最終濃度に調製した。次いで酵素を表に記載されているような様々な基質および33P‐ATP(〜500cpm/pmol)と共にアッセイ用緩衝液中でインキュベーションした。
反応をMg/ATPの添加により開始した。反応を40分間室温で進行させ、5μLの3%リン酸溶液で停止した。10μLの反応液ミックスをフィルターマットAまたはP30フィルターマットのどちらかに移し、75mMリン酸で3回およびメタノールで1回洗浄し、その後シンチレーション計数のために乾燥させた。
化合物を全キナーゼに対して下記に詳述した濃度でデュプリケートで試験し、コントロールと比較した活性パーセントを計算した。
酵素用緩衝液は次のとおりだった。
A:20mM MOPS pH7.0、1mM EDTA、0.1%β−メルカプトエタノール、0.01%Brij−35、5%グリセロール、1mg/ml BSA
アッセイ用緩衝液は次のとおりだった。
A:8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、10mM 酢酸Mg
C:8mM MOPS pH7、0.2mM EDTA、10mM MnCl2、10mM酢酸Mg
C EGFRおよびPDGFRキナーゼ阻害活性アッセイ
EGFRおよびPDGFR−β酵素に対する阻害活性を測定した。酵素(アップステートより)を1×キナーゼアッセイ用緩衝液(下記に記載)中で2×最終濃度に調製した。酵素を次に試験化合物、ビオチン化Flt3基質(ビオチン−DNEYFYV)(セルシグナリングテクノロジー(Cell Signalling Technology Inc.)およびATPでインキュベーションした。60μl反応物を室温および900rpmのプレート振盪機上で60分間(EGFR)または2.5時間(PDGFR−β)反応進行させ、その後20μlのpHが8である55mM EDTAで停止した。次に、20μlの5×検出ミックス(pH7.5の50mM HEPES、0.5M KF、0.1%BSA、11.34nM Eu−抗−pY(PT66)(パーキンエルマー(PerkinElmer))、94nM SA−XL665(シスバイオ(Cisbio))を各ウェルに加え、プレートを密閉し、室温で1時間プレート振盪機上で900rpmでインキュベーションした。プレートをその後、TRFモードのパッカードフュージョン(Packard Fusion)プレートリーダーで読み取った。
キナーゼアッセイ用緩衝液は次のとおりだった。
A:20mM HEPES pH7.5、10mM MnCl2、0.1mg/ml BSA、0.01% TritonX−100、1mM DTT、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム
B:20mM MOPS pH7.0、10mM MnCl2、0.01%TritonX−100、1mM DTT、0.1mMオルトバナジウム酸ナトリウム
シトクロムP450に対する有効性の測定
WO2006/070195の220〜221ページの実施例81(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
抗増殖活性
WO2006/070195の217〜218ページの実施例79(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
A 一般的なコロニー形成アッセイプロトコル
WO2006/070195の218ページの実施例80(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
B 1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のコロニー形成アッセイプロトコル
WO2006/070195の218〜220ページの実施例80(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
腫瘍細胞コロニー形成に対する阻害作用
* +は、野生型p53の発現を示す;−は、p53の発現が無かったかp53が機能性でなかったことを示す。
抗真菌活性の測定
WO2006/070195の224〜225ページの実施例83(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
生体内全植物真菌感染の対照の生物学的評価のプロトコル
WO2006/070195の225ページの実施例84(その内容は参照により本書に援用される)に記載のとおりである。
赤白血病(HEL)および慢性骨髄性白血病(K562)細胞におけるJAK2(例えば、Stat5)およびBcr−Abl(例えば、CRKL)の下流基質のリン酸化の阻害を測定するためのウェスタンブロットアッセイ
0.1%最終DMSO濃度での化合物処理に続いて、細胞を採取し、氷冷トリトン溶解バッファー中で溶解した。溶解物を遠心分離により除去し、上清をタンパク質定量のために取り除いた。対応量のタンパク質溶解物にSDS試料緩衝液およびDTTを添加し5分間煮沸した。
試料をSDS−PAGEにより分解し、ニトロセルロースフィルターにブロットし、5%脱脂乳または同等のブロッキング緩衝液でブロックし、リン酸化および非リン酸化タンパク質対する特定の抗体と共に4℃で一晩インキュベーションした。使用した二次抗体は、抗ウサギおよび抗ネズミIgG、HRP結合抗体(セルシグナリングテクノロジー)であり、検出はECLPLUS試薬(アマシャムバイオサイエンス(Amersham Bioscience))を使用して達成した。他に使用した二次抗体は、IRDye(登録商標)結合抗体で、検出はオデッセイ赤外線イメージングシステム(Odyssey Infrared Imaging System)(LI−CORバイオサイエンス(LI-COR Biosciences))を使用して達成した。
このプロトコルの使用により、細胞が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素で処理される場合、赤白血病(HEL)および慢性骨髄性白血病(K562)細胞ではそれぞれJAK2(例えば、Stat5)およびBcr−Abl(例えば、CRKL)の直接下流の基質のリン酸化が阻害されることが示された。結果を下記の表に示す。
医薬製剤
(i)錠剤製剤
式(I)または(I’)の化合物を含有する錠剤組成物は、化合物50mgと、希釈剤としてのラクトース(BP)197mgと、滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgとを混合し、公知の方法で打錠することにより製造される。
(ii)カプセル製剤
カプセル製剤は、式(I)または(I’)の化合物100mgとラクトース100mgとを混合し、得られた混合物を標準的な不透明硬ゼラチンカプセルに充填することにより製造される。
(iii)注射用製剤I
注射投与用の非経口組成物は、式(I)または(I’)の化合物(例えば、塩形態で)を、10%プロピレングリコールを含有する水に溶解し、有効化合物濃度1.5重量%とすることにより製造することができる。この溶液は次に濾過除菌され、アンプルに充填および密閉される。
(iv)注射用製剤II
注射用の非経口組成物は、式(I)または(I’)の化合物(例えば、塩形態で)(2mg/mL)およびマンニトール(50mg/mL)を水に溶解し、溶液を濾過滅菌し、密封可能な1mLバイアルまたはアンプルに充填することにより製造される。
(v)注射用製剤III
注射または注入による静脈内送達用の製剤は、水に式(I)または(I’)の化合物(例えば、塩形態で)を20mg/mLで溶解することにより製造できる。次いで、バイアルは密封され、オートクレーブ処理により滅菌される。
(vi)注射用製剤IV
注射または注入による静脈内送達用の製剤は、緩衝剤(例えば、0.2M酢酸 pH4.6)を含有した水に式(I)または(I’)の化合物(例えば、塩形態で)を20mg/mLで溶解することにより製造できる。次いで、バイアルは密封され、オートクレーブ処理により滅菌される。
(viii)凍結乾燥製剤I
本明細書で定義される式(I)または(I’)の処方化合物またはその塩のアリコートを50mLバイアルへ入れ凍結乾燥する。凍結乾燥の間、−45℃でワンステップ凍結プロトコルを用いて組成物を凍結する。温度をアニーリングのために−10℃に上げ、次いで低下させて−45℃で凍結し、次いでほぼ3400分かけて+25℃で一次乾燥させ、徐々に50℃まで昇温して二次乾燥を行う。一次乾燥および二次乾燥中の圧力は80ミリトルに設定する。
(viii)凍結乾燥製剤II
本明細書で定義される式(I)または(I’)の処方化合物またはその塩のアリコートを50mLバイアルへ入れ凍結乾燥する。凍結乾燥の間、−45℃でワンステップ凍結プロトコルを用いて組成物を凍結する。温度をアニーリングのために−10℃に上げ、次いで低下させて−45℃で凍結し、次いでほぼ3400分かけて+25℃で一次乾燥させ、徐々に50℃まで昇温して二次乾燥を行う。一次乾燥および二次乾燥中の圧力は80ミリトルに設定する。
(ix)静脈内投与用凍結乾燥製剤III
水酸化ナトリウムまたは塩酸でpH4.5に調整された0.02Mクエン酸緩衝液に12.86mg/mLの濃度で1−シクロプロピル‐3‐[3‐(5‐モルホリン‐4‐イルメチル‐1H‐ベンゾイミダゾール‐2‐イル)‐1H‐ピラゾール‐4‐イル]−尿素L‐乳酸塩を溶解することにより水性緩衝液を調製する。
濾過により粒子状物質を除去して緩衝液を容器(例えば、クラス1ガラスバイアル)へ充填し、次いでこれを(例えば、Florotecストッパーにより)部分的に密封する。化合物および製剤が十分に安定であれば、適切な時間121℃でオートクレーブ処理することにより製剤を滅菌する。製剤がオートクレーブ処理に安定でなければ、適切なフィルターを用いて滅菌し、無菌条件下で無菌バイアルへ充填してもよい。この溶液は適切なサイクルを用いて凍結乾燥される、例えば:
凍結:2時間にわたり−40℃まで冷却し、−40℃で3時間保持する。
一次乾燥:8時間にわたり−40℃から−30℃まで昇温し、−30℃で7時間保持する。
二次乾燥:4時間にわたり+30℃まで昇温し、+30℃で8〜10時間保持する。
凍結乾燥サイクルの完了時に、バイアルを窒素で大気圧まで逆充填し、栓で塞ぎ、固定(例えば、アルミニウムクリンプで)する。静脈内投与のために、凍結乾燥された固形物は0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤で再構成できる。この溶液はそのまま投与しても、または投与前に注入バッグ(0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤を含有)へ注入してもよい。
(x)皮下注射製剤
皮下投与用組成物は、本明細書で定義される式(I)または(I’)の化合物またはその塩を医薬級のコーン油と混合して濃度5mg/mlとすることにより製造される。この組成物を滅菌し、適切な容器に充填する。
(xi)静脈内投与用凍結乾燥製剤IV
2M水酸化ナトリウム水溶液または2M塩酸水溶液でpH4.5に調整された無水クエン酸緩衝液20mg/mLに13mg/mlの1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(遊離塩基10mgに相当)を溶解することにより水性緩衝液を調製する。
pH4.5のほぼ100mM(例えば、104mM)クエン酸塩緩衝液中の5mlの1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩の溶液(52mgの遊離塩基に相当する65.9mgのL−乳酸塩を含有)を20mlタイプ1ガラスバイアルに充填し凍結乾燥する。この溶液を適切なサイクルを用いて凍結乾燥する、例えば:
凍結乾燥サイクルの完了時に、バイアルを窒素で大気圧程度(例えば、95%をわずかに下回る)まで逆充填し、栓で塞ぎ、固定(例えば、アルミニウムクリンプで)する。静脈内投与のため、凍結乾燥された固形物は0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤で再構成できる。この溶液はそのまま投与しても、または投与前に注入バッグ(0.9%塩水または5%デキストロースのような薬学上許容される賦形剤を含有)へ注入してもよい。
治療効果アッセイ
補助化合物(化合物II)と組合せた式(I)または(I’)の化合物(化合物I)の効果は以下技術を用いて評価できる。
IC50シフトアッセイ
ヒト細胞株(例えば、HCT116、U87MG、A549)からの細胞は、それぞれ2.5×103、6.0×103または4.0×103細胞/ウェルの濃度で96ウェル組織培養プレート上に播種された。細胞を48時間回復させ、その後以下のように化合物または対照賦形剤(0.35%DMSO)を添加した。
化合物を96時間同時に加えた。
合計96時間の化合物のインキュベーションに続いて、細胞を氷冷された10%(w/v)トリクロロ酢酸により氷上で1時間固定し、次にプレート洗浄機(ラボシステムズ・ウェルウォッシュ・アセント(Labsystems Wellwash Ascent))を使用して、蒸留水により4回洗浄し、風乾した。次に細胞を室温で1%酢酸中の0.4%(w/v)スルホロダミンB(シグマ)により20分間染色し、次に1%(v/v)酢酸により4回洗浄し、風乾させ、色素を可溶化するために10mMトリス緩衝液を添加した。色測的結果は、ワラック・ビクター
2(Wallac Victor
2)プレートリーダー(1420多重標識カウンター、パーキン・エルマー・ライフサイエンス(Perkin Elmer Life Sciences))で吸光度490nmでの読み取りによって定量された。様々な用量の化合物Iの存在下で、化合物IIのIC
50が決定された。無効用量の化合物Iの存在下でIC
50が下方へシフトする場合、相乗作用と決定された。化合物IIおよび化合物Iをともに投与したものに対する反応が、2つの化合物を個別に投与したものの合計と同等の効果をもたらした場合、相加作用と決定された。拮抗作用は、IC
50を上方へシフトにさせるもの、すなわち2つの化合物に対する反応が、2つの化合物の個別の効果の合計よりも少なかった場合のものとして定義された。
組合せの効果の一般的な評価方法
1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩(「化合物I」)と任意の補助薬剤(「化合物II〜IV」)との組合せの効果は、以下の技術を用いて評価することができる。
1.組合せスクリーニングアッセイ
ヒト結腸癌細胞株HCT116(ECACC No.91091005)の細胞を、1ウェルにつき2×10
4細胞/mlの濃度および200μlで96ウェル組織培養プレートに播種した。以下の化合物または溶媒対照(0.2%DMSO)の添加の前に、細胞を一晩回復させた。
化合物を次のスケジュールのうちの1つに従い添加した。
a)72時間同時に。
b)化合物Iを24時間、次に化合物II、IIIまたはIVをさらに48時間添加。
c)化合物II、IIIまたはIVを24時間、次に化合物Iをさらに48時間添加。
合計72時間の化合物のインキュベーションに続いて、アラマーブルー(商標)を10%(v/v)の最終濃度まで添加し、37℃で6時間インキュベーションした。蛍光生成物をフュージョンリーダー(パーキンエルマー)上でd535/25x(励起)およびd590/20m(発光)で読みとることにより定量した。
様々な濃度の化合物Iの存在下で化合物II、IIIまたはIVにより処理された細胞サンプルについて、蛍光を溶媒対照(0.2%DMSO)の百分率として測定した。個々の薬剤がそれぞれ直線的な用量反応曲線を示すと仮定する多重法を用いてデータを分析した。この仮定によれば多重線と呼ばれる理論曲線を作成することができ、これは予想される相加的反応を表わす。
化合物Iと合わせた化合物II、IIIまたはIVに対する反応が、2つの化合物の結果から個別に計算した理論上の多重線とほぼ同等な効果を生じた場合は相加作用とした。組合せ薬剤に対して観察される反応が理論上の多重線より大きかった場合は相乗作用とした。組合せ薬剤に対して観察される反応が理論上の多重線より低かった場合は拮抗作用とした。
様々な補助化合物と組合せた化合物1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(「化合物I」)の効果
5FU、ビンブラスチン、パクリタキセルおよびシスプラチンと組合せた化合物1−シクロプロピル−3−[3−(6−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素L−乳酸塩(「化合物I」)の効果。この実施例において、パクリタキセルの使用は他のタキソール由来の治療剤の代表的なものと見なされ、シスプラチンの使用は他の白金系治療剤の代表的なものと見なされる。さらに、タキサンおよびプラチンの使用は、本明細書に記載される他のチェックポイント標的剤の代表的なものであると見なされる。
1.組合せスクリーンニングアッセイ
ヒト結腸癌細胞株HCT116(ECACC No.91091005)の細胞を、1ウェルにつき2×10
4細胞/mlの濃度および200μlで96ウェル組織培養プレートに播種した。以下のような化合物または溶媒対照(0.2%DMSO)の添加の前に、細胞を一晩回復させた。
化合物を次のスケジュールのうちの1つに従い添加した。
a)72時間同時に。
b)化合物Iを24時間、次に化合物II、IIIまたはIVをさらに48時間添加。
c)化合物II、IIIまたはIVを24時間、次に化合物Iをさらに48時間添加。
合計72時間の化合物のインキュベーションに続いて、アラマーブルー(商標)を10%(v/v)の最終濃度まで添加し、37℃で6時間インキュベーションした。蛍光生成物をフュージョンリーダー(パーキンエルマー)上でd535/25x(励起)およびd590/20m(発光)で読みとることにより定量した。
様々な濃度の化合物Iの存在下で化合物II、IIIまたはIVにより処理された細胞サンプルについて、蛍光を溶媒対照(0.2%DMSO)の百分率として測定した。個々の薬剤がそれぞれ直線的な用量反応曲線を示すと仮定する多重法を用いてデータを分析した。この仮定によれば多重線と呼ばれる理論曲線を作成することができ、これは予想される相加的反応を表わす。
化合物Iと合わせた化合物II、IIIまたはIVに対する反応が、2つの化合物の結果から個別に計算した理論上の多重線とほぼ同等な効果を生じた場合は相加作用とした。組合せ薬剤に対して観察される反応が理論上の多重線より大きかった場合は相乗作用とした。組合せ薬剤に対して観察される反応が理論上の多重線より低かった場合は拮抗作用とした。
1.タキソール
HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイにおいて、化合物Iとタキソールとの組合せは、スケジュールに依存して相加的または相乗的であったが拮抗的ではないことが示された。0.01μMの化合物Iの存在下および非存在下における3種類の濃度のタキソールについて、一例が図9に示されている。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
2.シスプラチン
HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイにおいて、化合物Iとシスプラチンとの組合せは、スケジュールに依存して相加的または相乗的であったが拮抗的ではないことが示された。0.01μMの化合物Iの存在下および非存在下における3種類の濃度のシスプラチンについて、一例が図10に示されている。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
3.5FU
HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイにおいて、化合物Iと5−FUとの組合せは、スケジュールに依存して相加的または潜在的に相乗的であったが拮抗的ではないことが示された。0.01μMの化合物Iの存在下および非存在下における3種類の濃度の5−FUについて、一例が図11に示されている。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
4.ビンブラスチン
HCT116細胞中で行なわれた組合せスクリーンニングアッセイにおいて、化合物Iとビンブラスチンとの組合せは、スケジュールに依存して相加的であり拮抗的ではないことが示された。0.01μMの化合物Iの存在下および非存在下における3種類の濃度のビンブラスチンについて、一例が図12に示されている。比較のため、計算された理論上の多重線を示す。
異種移植研究
式(I)の化合物(1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素)は、単剤としてまたは一般的に使用される細胞毒性剤(例えばタキサン)と組合せて使用された場合、ヒト腫瘍由来細胞株を皮下移植したヌードマウスにおいて抗腫瘍作用を有する。式(I)の化合物と例えばパクリタキセルとを交互に投与する投薬スケジュールでの治療は、そのような異種移植片における腫瘍成長の阻害を引き起こす。該化合物とパクリタキセルとの組合せ(個々の投与量は至適用量未満)は、腫瘍成長阻害の改善を達成し、一旦治療を停止すると腫瘍再成長までの時間が延びた。該2種類の薬剤の個々の効果と比較して、組合されたそれら薬剤の耐容量は減少しなかった。これは、該化合物との併用療法は、より低用量で抗腫瘍活性を高める可能性を有し、したがって治療指数が向上することを示す。効果的な組合せのスケジュールの一例としては、毎週、週の1日目にパクリタキセルを投与することと、週の2〜5日目に該化合物を投与する毎週4回投与のサイクルとを併せることであった。
均等
上記の実施例は、本発明を説明する目的で記載したものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。上記に記載し、また、実施例で示す本発明の特定の実施形態に対して、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改変および変更をなし得ることは容易に明らかである。このような改変および変更は総て本明細書に含まれるものとする。
また、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)補助化合物および式(I’)の化合物を含む(または本質的にこれらから成る)組合せであって、前記式(I’)の化合物は乳酸塩およびクエン酸塩ならびにこれらの混合物から選ばれる1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の塩である組合せ。
(2)前記塩がL−乳酸塩である、(1)に記載の組合せ。
(3)前記塩がクエン酸塩である、(1)に記載の組合せ。
(4)前記塩がL−乳酸塩およびクエン酸塩の混合物である、(1)に記載の組合せ。
(5)前記乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩が実質的に結晶性、すなわち、これら塩は50%〜100%結晶性、より具体的には、少なくとも50%結晶性、または少なくとも60%結晶性、または少なくとも70%結晶性、または少なくとも80%結晶性、または少なくとも90%結晶性、または少なくとも95%結晶性、または少なくとも98%結晶性、または少なくとも99%結晶性、または少なくとも99.5%結晶性、または少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性である、(1)〜(4)のいずれかに記載の組合せ。
(6)前記乳酸塩(特にL−乳酸塩)またはクエン酸塩が95%〜100%結晶性、例えば少なくとも98%結晶性、または少なくとも99%結晶性、または少なくとも99.5%結晶性、または少なくとも99.6%結晶性、または少なくとも99.7%結晶性、または少なくとも99.8%結晶性、または少なくとも99.9%結晶性、例えば100%結晶性のものである、(5)に記載の組合せ。
(7)前記塩が無水である、(1)〜(6)のいずれかに記載の組合せ。
(8)前記塩が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であって、前記塩が結晶性であり、WO2006/070195の実施例71の表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、(6)に記載の組合せ。
(9)前記塩が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であって、前記塩が結晶性であり本明細書の図4および図5に記載される結晶構造を有する、(6)または(8)に記載の組合せ。
(10)前記塩が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であって、前記塩が結晶性であり、斜方晶系空間群P2 1 2 1 2 1 (#19)に属し97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、(6)、(8)または(9)のいずれかに記載の組合せ。
(11)前記塩が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であって、前記塩が結晶性であり、室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、(6)、(8)、(9)または(10)のいずれかに記載の組合せ。
(12)前記塩が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であって、前記塩が結晶性であり、
(a)図4および図5に示される結晶構造を有する、および/または
(b)WO2006/070195の実施例71の表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、および/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、および/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、および/または
(e)斜方晶系空間群P2 1 2 1 2 1 (#19)に属する結晶構造を有する、
(6)、(8)、(9)、(10)または(11)のいずれかに記載の組合せ。
(13)実質的に図6に示される粉末X線回折パターンを有する1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩の結晶形態である、(6)、(8)、(9)、(10)、(11)または(12)のいずれかに記載の組合せ。
(14)前記塩が、実質的に結晶性の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であり、図6で示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、好ましくは前記ピークは図6におけるピークと同じ相対強度を有する、(6)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)または(13)のいずれかに記載の組合せ。
(15)前記塩が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であり、前記塩が結晶性であって、下記の任意の1つまたは複数(どのような組合せでもよい)またはすべてのパラメーターによって特性決定される、すなわち前記塩は、
(a)図4および図5に示される結晶構造有する、および/または
(b)WO2006/070195の205〜209ページの実施例71の表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、および/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、および/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、および/または
(e)斜方晶系空間群P2 1 2 1 2 1 (#19)に属する結晶構造を有する、および/または
(f)17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的にはさらに12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30°の回折角(2θ)および/または5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的にはさらに7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53,4.07および3.26Åの面間隔(d)における主要なピークの存在を特徴とする粉末X線回折パターンを有する、および/または
(g)WO2006/070195の図6または209〜211ページの実施例72における表5(その内容は参照により本書に援用される)に示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、前記ピークは任意に図6または表5(参照により本書に援用される)におけるピークと同様の相対強度を有する、および/または
(h)実質的に図6に示す粉末X線回折パターンを有する、および/または
(i)無水で、DSCに供された場合190℃で始まりを示し、かつ/もしくは194〜197℃で吸熱ピークを示す、および/または
(j)KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm −1 に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す、
(6)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)または(14)のいずれかに記載の組合せ。
(16)補助化合物および化合物を含む(または本質的にこれら成る)組合せであって、前記化合物は、
(I)PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)における式(I)に対応する式(I’)の化合物ならびにWO2005/002552に記載されるそのサブグループ、実施形態および例、
式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、AおよびXは、PCT/GB2004/002824(WO2005/002552)中と同義である、あるいは
(II)式(I”)の化合物、
またはその塩、溶媒和物、互変異性体もしくはN−オキシドであり、
式中、MはD1基およびD2基から選ばれ、
そして、
(A)MはD1基の場合:
Xは、O、NHおよびNCH 3 から選ばれ、
Aは、結合およびNR 2 基から選ばれ、ここでR 2 は水素またはメチルであり、
Eは、結合、CH 2 、CH(CN)およびC(CH 3 ) 2 から選ばれ、
R 1 は下記のものから選ばれる:
(i)ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている3〜5環員を有するシクロアルキル基、
(ii)O、N、SおよびSO 2 から選ばれる1もしくは2個のヘテロ原子環員を有する4〜6環員を有する飽和複素環基(前記複素環基はC 1−4 アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されているが、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、ならびに非置換および1−置換ピペリジン−4−イルを除く)、
(iii)下記式で表される2,5−置換フェニル基、
式中、(a)XがNHまたはN−CH 3 の場合、R 3 は塩素およびシアノから選ばれ、(b)XがOの場合、R 3 はCNである、
(iv)CR 6 R 7 R 8 基(R 6 及びR 7 はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R 8 は、水素、メチル、C 1−4 アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノから選ばれる)、
(v)メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリダジン−4−イル基、
(vi)置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基、
(vii)場合により置換されている1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルまたは場合により置換されている2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基(各々の場合の置換基はハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 またはCONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシから選ばれ、ここで前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、
(viii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 またはCONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されている3−ピリジル(前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されているが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボン酸[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−(ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル)−アミドおよび2,6−ジメトキシ−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−ニコチンアミドを除く)、
(ix)ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 またはCONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシド(前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、また、
E−AがNR 2 の場合、R 1 はさらに下記から選ばれる:
(x)2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニル、およびtert−ブチル、
(xi)NR 10 R 11 基(R 10 およびR 11 はそれぞれC 1−4 アルキルあるいはR 10 およびR 11 は結合してNR 10 R 11 がO、N、SおよびSO 2 から選ばれる第2のヘテロ原子環員を場合により含む4〜6環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基はC 1−4 アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されている)、
(xii)ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 、CONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリドン(前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている)、
E−AがC(CH 3 ) 2 NR 2 またはCH 2 −NR 2 の場合、R 1 はさらに下記から選ばれる:
(xiii)非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニル、また、
E−AがC(CH 3 ) 2 NR 2 の場合、R 1 はさらに下記から選ばれる:
(xiv)非置換フェニル、また、
EがCH 2 の場合、R 1 はさらに下記から選ばれる:
(xv)非置換テトラヒドロピラン−4−イル、そして、
(B)MがD2基である場合:
Aは、結合およびNR 2 基から選ばれ、ここでR 2 は水素またはメチルであり、
Eは、結合、CH 2 、CH(CN)およびC(CH 3 ) 2 から選ばれ、
R 1 は下記から選ばれる:
(xvi)下記式で表される2−置換3−フリル基、
(式中、R 4 およびR 5 は同一または異なって水素およびC 1−4 アルキルから選ばれる、あるいはR 4 およびR 5 は結合しておりNR 4 R 5 がO、NH、NMe、SまたはSO 2 から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和環はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている)、
(xvii)下記式で表される5−置換2−フリル基、
(式中、R 4 およびR 5 は同一または異なって水素およびC 1−4 アルキルから選ばれる、あるいはR 4 およびR 5 は結合しておりNR 4 R 5 がO、NH、NMe、SまたはSO 2 から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている、ただし、前記化合物は5−ピペリジン−1−イルメチル−フラン−2−カルボン酸[3−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−アミドではない)、
(xviii)下記式で表される基、
(式中、R 9 は、水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;Gは、CH、O、S、SO、SO 2 またはNHであり、前記基はC 1−4 ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C 1−4 ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−およびジ−C 1−4 アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により場合により置換されており、ここで前記C 1−4 ヒドロカルビルおよびC 1−4 ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C 1−4 アルキルアミノで場合により置換されている)、また
(xix)下記式で表される3,5−二置換フェニル基、
(式中、Xは、O、NHおよびNCH 3 から選ばれる)、そして、
(C)MがD1基の場合:
XはOであり;AはNR 2 基であり、ここでR 2 は水素であり;Eは結合であり;R 1 は2,6−ジフルオロフェニルであり;したがって、式(I)の化合物は下記からなる群より選ばれる酸と形成された塩から選ばれる酸付加塩である:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば、(+)−L−乳酸および(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸、である組合せ。
(17)前記化合物が式(I’)の化合物である、(16)に記載の組合せ。
(18)前記化合物が1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩である、(17)に記載の組合せ。
(19)前記化合物が(16)の(A)節および(B)節に記載の式(I”)の化合物である、(16)に記載の組合せ。
(20)MがD1基である、(19)に記載の組合せ。
(21)Xが、O、NHおよびNCH 3 から選ばれる、(19)または(20)に記載の組合せ。
(22)XがOである、(21)に記載の組合せ。
(23)AがNR 2 基であり、ここでR 2 は水素またはメチルである、(19)〜(22)のいずれかに記載の組合せ。
(24)Aが結合である、(19)〜(22)のいずれかに記載の組合せ。
(25)Eが結合である、(19)〜(24)のいずれかに記載の組合せ。
(26)EがCH 2 である、(19)〜(24)のいずれかに記載の組合せ。
(27)EがCH(CN)である、(19)〜(24)のいずれかに記載の組合せ。
(28)EがC(CH 3 ) 2 である、(19)〜(24)のいずれかに記載の組合せ。
(29)R 1 が、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルで場合により置換されている3〜5環員のシクロアルキル基である、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(30)前記シクロアルキル基が、場合により置換されているシクロプロピルおよびシクロブチル基であり、より典型的には場合により置換されているシクロプロピル基である、(29)に記載の組合せ。
(31)R 1 が非置換シクロプロピル基である、(30)に記載の組合せ。
(32)R 1 が、O、N、SおよびSO 2 から選ばれる1または2個のヘテロ原子環員を含む4〜6環員の飽和複素環基であり、前記複素環基は場合によりC 1−4 アルキル、アミノまたはヒドロキシで置換されているが、非置換4−モルホリニル、非置換テトラヒドロピラン−4−イル、非置換2−ピロリジニル、ならびに非置換および1−置換ピペリジン−4−イルは除く、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(33)R 1 が下記式で表される2,5−置換フェニル基である
(式中(a)XがNHまたはN−CH 3 である場合、R 3 は塩素とシアノから選ばれ、(b)XがOの場合、R 3 はCNである)、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(34)R 1 がCR 6 R 7 R 8 基であり、ここでR 6 およびR 7 はそれぞれ水素およびメチルから選ばれ、R 8 は水素、メチル、C 1−4 アルキルスルホニルメチル、ヒドロキシメチルおよびシアノから選ばれる、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(35)R 1 が、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリダジン−4−イル基である、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(36)R 1 が、置換基がメチル、エチル、アミノ、フッ素、塩素、アミノおよびメチルアミノから選ばれる、置換イミダゾチアゾール基である、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(37)R 1 が、場合により置換されている1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イルまたは場合により置換されている2,3−ジヒドロ−インドール−1−イル基であって、ここで各々の場合の置換基は、ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 またはCONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシであり、ここで前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(38)R 1 が、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 またはCONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシから選ばれる1または2個の置換基で場合により置換されている3−ピリジルである、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(39)R 1 が、ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 またはCONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているチオモルホリンあるいはそのS−オキシドまたはS,S−ジオキシドであり、ここで前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(40)E−AがNR 2 であり、R 1 が2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、2,5−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2−メトキシフェニル、5−クロロ−2−メトキシフェニル、シクロヘキシル、非置換4−テトラヒドロピラニルおよびtert−ブチルから選ばれる、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(41)E−AがNR 2 であり、R 1 がNR 10 R 11 基であり、ここでR 10 およびR 11 はそれぞれC 1−4 アルキル、またはR 10 およびR 11 は結合してNR 10 R 11 がO、N、SおよびSO 2 から選ばれる第2のヘテロ原子環員を場合により含む4〜6環員を有する飽和複素環基を形成し、前記複素環基はC 1−4 アルキル、アミノまたはヒドロキシで場合により置換されている、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(42)E−AがNR 2 であり、R 1 がヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、C 1−4 モノ−およびジアルキルアミノ、CONH 2 、CONH−C 1−4 アルキル、C 1−4 アルキルならびにC 1−4 アルコキシから選ばれる1または2個の置換基により場合により置換されているピリドン基であり、ここで前記C 1−4 アルキルおよびC 1−4 アルコキシ基は、ヒドロキシ、メトキシまたはアミノで場合により置換されている、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(43)E−AがC(CH 3 ) 2 NR 2 またはCH 2 −NR 2 であり、R 1 が非置換2−フリルおよび2,6−ジフルオロフェニルから選ばれる、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(44)E−AがC(CH 3 ) 2 NR 2 であり、R 1 が非置換フェニルである、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(45)EがCH 2 であり、R 1 が非置換テトラヒドロピラン−4−イルである、(19)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(46)MがD2基である、(19)および(21)〜(28)のいずれかに記載の組合せ。
(47)R 1 が下記式の2−置換3−フリル基である(46)に記載の組合せ
(式中、R 4 およびR 5 は同一または異なって水素およびC 1−4 アルキルから選ばれるか、あるいはR 4 およびR 5 は結合しておりNR 4 R 5 がO、NH、NMe、SまたはSO 2 から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和環はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている)。
(48)R 1 が下記式の5−置換2−フリル基である、(46)に記載の組合せ:
(式中、R 4 およびR 5 は同一または異なって水素およびC 1−4 アルキルから選ばれるか、あるいはR 4 およびR 5 は結合しておりNR 4 R 5 がO、NH、NMe、SまたはSO 2 から選ばれる第2のヘテロ原子または基を場合により含有する5または6員飽和複素環基を形成し、前記5または6員飽和複素環基はヒドロキシ、フッ素、アミノ、メチルアミノ、メチルまたはエチルにより場合により置換されている)。
(49)R 1 が下記式で表される基である、(46)に記載の組合せ:
(式中、R 9 は水素、メチル、エチルまたはイソプロピルであり;GはCH、O、S、SO、SO 2 またはNHであり、前記基はC 1−4 ヒドロカルビル、ヒドロキシ、C 1−4 ヒドロカルビルオキシ、フッ素、アミノ、モノ−およびジ−C 1−4 アルキルアミノから選ばれる1、2または3個の置換基により場合により置換されており、ここで前記C 1−4 ヒドロカルビルおよびC 1−4 ヒドロカルビルオキシ基はそれぞれ、ヒドロキシ、フッ素、アミノ、モノ−またはジ−C 1−4 アルキルアミノで場合により置換されている)。
(50)R 1 が下記式の3,5−二置換フェニル基である、(46)に記載の組合せ:
(式中、X a はXと同様にO、NHおよびNCH 3 から選ばれる)。
(51)前記R 1 −E−A−部分が本明細書中の表1に示されている基から選ばれる、(19)に記載の組合せ。
(52)前記R 1 −E−A−基が、A1、A4、A10、A11、A13、A20、A22、A23、A24、A29、A30、A31、A32、A38、A42、A43、A44、A46、A47、A49、A54およびA56から選ばれる、(51)に記載の組合せ。
(53)前記R 1 −E−A−基が、A1、A4、A20、A24、A30、A44、A46およびA54から選ばれ、好ましくはA24基である、(52)に記載の組合せ。
(54)前記式(I”)の化合物が式(II)で表される、(19)に記載の組合せ
(式中、R 1 、E、AおよびXは、(1)〜(53)のいずれかと同義である)。
(55)XがOである、(54)に記載の組合せ。
(56)前記式(I”)の化合物が式(III)で表される、(19)に記載の組合せ
(式中、R 1 、R 2 およびEは、(1)〜(55)のいずれかと同義である)。
(57)Eが結合である、(56)に記載の組合せ。
(58)EがCH 2 またはC(CH 3 ) 2 である、(56)に記載の組合せ。
(59)Eが結合、R 2 がH、およびR 1 がシクロアルキル基である、(57)に記載の組合せ。
(60)R 1 がシクロアルキル基であり、前記化合物が化合物1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩である、(59)に記載の組合せ。
(61)前記式(I”)の化合物が、塩、溶媒和物またはN−オキシドの形態である、(19)〜(60)のいずれかに記載の組合せ。
(62)前記化合物が、(16)の(C)節に記載の式(I”)の化合物であり(MはD1基であり;XはOであり;AはNR 2 基であり、ここでR 2 は水素であり;Eは結合であり;およびR 1 は2,6−ジフルオロフェニルである)、前記化合物は次のものから成る群から選ばれる酸:酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸(例えば(+)−L−乳酸および(±)−DL−乳酸)、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸(例えば、ナフタレン−2−スルホン酸)、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、吉草酸およびキナホイック酸と形成された塩から選ばれる酸付加塩である、(16)に記載の組合せ。
(63)前記酸付加塩が、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、アスパラギン酸(例えば、L−アスパラギン酸)、安息香酸、ショウノウ酸(例えば、(+)ショウノウ酸)、カプリン酸、カプリル酸、炭酸、シクラミン酸、ドデカン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、ラウリルスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、セバシン酸、ステアリン酸、酒石酸(例えば、(+)−L−酒石酸)、チオシアン酸およびキナホイック酸からなる群から選ばれる酸から形成される、(62)に記載の組合せ。
(64)前記酸付加塩が、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、クエン酸、DL−乳酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、塩酸、グルタミン酸、DL−リンゴ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸(エシル酸)、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸および酒石酸からなる群から選ばれる酸から形成される、(62)に記載の組合せ。
(65)前記酸付加塩が、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、グルコン酸、馬尿酸、グルタミン酸、セバシン酸、ステアリン酸および酒石酸からなる群から選ばれる酸から形成される、(62)に記載の組合せ。
(66)前記酸付加塩が塩酸と形成される、(62)に記載の組合せ。
(67)前記酸付加塩が、25mg/mlより大きく、より典型的には50mg/mlより大きく、好ましくは100mg/mlより大きい水への溶解度を有する、(62)に記載の組合せ。
(68)前記塩が、D−グルクロン酸塩、メシル酸塩、エシル酸塩およびDL−乳酸塩から選ばれる、(67)に記載の組合せ。
(69)前記塩が、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のメシル酸塩である、(68)に記載の組合せ。
(70)前記塩が、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のエシル酸(エタンスルホン酸)塩である、(68)に記載の組合せ。
(71)前記塩が、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−N−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のDL−乳酸塩である、(68)に記載の組合せ。
(72)補助化合物と、1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩またはクエン酸塩またはこれらの混合物を液体担体(例えば、水または緩衝系)対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、さらにより典型的には20mg/mlより大きい、好ましくは25mg/mlより大きい濃度で含有する水溶液(例えば、医薬組成物の形態で)とを含む(または実質的にこれらから成る)、組合せ。
(73)(i)前記L−乳酸塩または(ii)前記L−乳酸塩およびクエン酸塩の混合物を含む、(72)に記載の組合せ。
(74)pHが2〜6、例えば2〜5、さらに具体的には4〜6、例えば4〜5である、(72)または(73)に記載の組合せ。
(75)緩衝化されている、(74)に記載の組合せ。
(76)1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素の乳酸塩とクエン酸塩緩衝剤とを含み、前記溶液が例えばほぼ4.5の溶液pHを有する、(75)に記載の組合せ。
(77)補助化合物と、L−乳酸塩およびクエン酸塩およびこれらの混合物から選ばれる1種または2種以上の対イオンでプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素とを含む(または本質的にこれらから成る)組合せであって、任意に(i)1種または2種以上の塩化物イオンなどのさらなる対イオンおよび/または(ii)1種または2種以上の等張化剤などの静注用賦形剤(例えば、グルコース、好ましくはD−グルコースなどのヘキソース糖)を含む、組合せ。
(78)前記乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンが溶液中に乳酸塩:クエン酸塩比で10:1以下、例えば10:1〜1:10、より好ましくは8:1未満、または7:1未満、または6:1未満、または5:1未満、または4:1未満、または3:1未満、または2:1未満、または1:1未満、より具体的には1:1〜1:10で存在する、(77)に記載の組合せ。
(79)前記乳酸塩イオンおよびクエン酸イオンが溶液中に乳酸塩:クエン酸塩比で1:1〜1:10、例えば1:1〜1:8、または1:1〜1:7、または1:1〜1:6、または1:1〜1:5、例えばほぼ1:4.4で存在する、(78)に記載の組合せ。
(80)(72)〜(79)のいずれかに記載の組合せを凍結乾燥することにより形成された凍結乾燥された製剤である、組合せ。
(81)補助化合物と、L−乳酸塩およびクエン酸塩およびこれらの混合物から選ばれる1種または2種以上の対イオンでプロトン化された形態の1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を含む凍結乾燥製剤(例えば、医薬組成物の形態で)とを含む(または本質的にこれらから成る)組合せであって、任意に(i)1種または2種以上の塩化物イオンなどのさらなる対イオンおよび/または(ii)1種または2種以上の等張化剤などの静注用賦形剤(例えば、グルコース、好ましくはD−グルコースなどのヘキソース糖)を含む、組合せ。
(82)前記補助化合物および式(I’)の化合物が物理的に結合した、(1)〜(81)のいずれかに記載の組合せ。
(83)前記補助化合物および式(I’)の化合物が、(a)混合剤(例えば、同一の単位用量内に)である、(b)化学的に/物理化学的に結合された(例えば、架橋、分子的な凝集または共通の賦形剤部分への結合による)、(c)化学的に/物理化学的に共にパックされた(例えば、脂質小胞、粒子(例えば、ミクロ粒子またはナノ粒子)またはエマルジョン滴上に、またはそれらの内部に配置された)、(d)混合されていないが共にパックされたか、または共に提供された(例えば、一連の単位用量の一部として)、(82)に記載の組合せ。
(84)前記補助化合物および式(I’)の化合物が非物理的に結合されている、(1)〜(81)のいずれかに記載の組合せ。
(85)前記組合せが(a)化合物の少なくとも一方と、他方の化合物との物理的結合を形成するための、前記少なくとも一方の化合物の即時結合のための説明書とを、または(b)化合物の少なくとも一方と、他方の化合物との組合せ療法のための説明書とを、または(c)化合物の少なくとも一方と、他方の化合物が投与された(または投与されている)患者集団への投与のための説明書とを、または(d)化合物の少なくとも一方を、他方の化合物と組合せて使用するのために特に適した量または形態で含む、(84)に記載の組合せ。
(86)薬学的パック、キットまたは患者パック形態である、(1)〜(85)のいずれかに記載の組合せ。
(87)サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの使用。
(88)サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを、その必要のある被験体に投与することを含む方法。
(89)サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを、その必要のある被験体に投与することを含む方法。
(90)哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法。
(91)哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法。
(92)哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せをcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法。
(93)哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せをcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む方法。
(94)サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の阻害方法であって、前記キナーゼと(1)〜(86)のいずれかに記載のキナーゼ阻害組合せとを接触させることを含む方法。
(95)(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを使用してサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の活性を阻害することによる、細胞過程(例えば、細胞分裂)の修飾方法。
(96)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの使用。
(97)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる癌の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの使用。
(98)オーロラA遺伝子のIle31変異体を有する亜母集団から選ばれる患者における癌の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの使用。
(99)オーロラA遺伝子のIle31変異体を有する亜母集団の一部分を形成していると診断された患者における癌の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの使用。
(100)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを投与することを含む方法。
(101)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを投与することを含む方法。
(102)癌に罹患しているまたは罹患していると疑われる患者における癌の予防または治療(あるいは癌の罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)患者がオーロラA遺伝子のIle31変異体を有しているかどうかを判定すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)前記患者が前記変異体を有する場合、その後、前記患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを投与することを含む方法。
(103)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)オーロラキナーゼのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)前記診断試験がオーロラキナーゼのアップレギュレーションを示す場合に、その後、前記患者に(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを投与することを含む方法。
(104)(a)CDKキナーゼの過剰活性化および/または(b)正常なCDK活性への経路の感作および/または(c)サイクリンEのアップレギュレーションにより特徴付けられる病態または症状の予防または治療(あるいはこれらの罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)(a)および/または(b)および/または(c)に特徴的なマーカーを検出すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)前記診断試験が(a)および/または(b)および/または(c)を示す場合に、その後、前記患者にCDKキナーゼ阻害活性を有する、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを投与することを含む方法。
(105)(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せが、本明細書に記載の診断試験のいずれか1つまたは複数によって前記化合物による治療に感受性がある疾病または症状を有していると確認された患者の亜母集団に投与(例えば、治療上有効な量で)される、治療方法、医療上の使用または使用のための化合物。
(106)本明細書に記載の病態の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの使用。
(107)薬剤に用いるための(例えば、本明細書に記載の病態の予防または治療において)、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せ。
(108)本明細書に記載の病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、治療に有効な量の(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを前記哺乳動物に投与することを含む方法。
(109)(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
(110)水溶液形態で投与するための(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを含む医薬組成物であって、式(I’)の化合物は1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、さらにより典型的には20mg/mlより大きい、好ましくは25mg/mlより大きい水への溶解度を有する塩の形態である、医薬組成物。
(111)水溶液形態で投与するための(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを含む医薬組成物であって、式(I’)の化合物は25mg/mlより大きく、典型的には50mg/mlより大きく、好ましくは100mg/mlより大きい水への溶解度を有する塩の形態である、医薬組成物。
(112)(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを含む水溶液を含む医薬組成物であって、式(I’)の化合物は25mg/mlより大きく、典型的には50mg/mlより大きく、好ましくは100mg/mlより大きい濃度を有する塩の形態である、医薬組成物。
(113)(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せを含む水溶液を含む医薬組成物であって、式(I’)の化合物は液体担体(例えば、水)に対して1mg/mlより大きい、典型的には5mg/mlより大きい、より典型的には15mg/mlより大きい、さらにより典型的には20mg/mlより大きい、好ましくは25mg/mlより大きい濃度を有する塩の形態である、医薬組成物。
(114)前記塩が、酢酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、DL−乳酸塩、アジピン酸塩、D−グルクロン酸塩、D−グルコン酸塩および塩酸塩からなる群から選ばれる、(109)〜(113)のいずれかに記載の医薬組成物。
(115)前記塩がL−乳酸塩である、(109)〜(113)のいずれかに記載の医薬組成物。
(116)液体組成物である、(109)〜(115)およびそれらに従属するものに記載の医薬組成物。
(117)水中溶解用に乾燥された(例えば、凍結乾燥された)形態である、(109)〜(115)およびそれらに従属するものに記載の医薬組成物。
(118)例えば注射(例えば、静脈内または皮下注射)または点滴による非経口投与に適した、(109)〜(117)のいずれかに記載の医薬組成物。
(119)補助化合物による治療を受けている被験体におけるサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(120)サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の予防または治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を、その必要のある被験体(被験体は補助化合物による治療を受けている)に投与することを含む、方法。
(121)サイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3により仲介される病態または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を、その必要のある被験体(被験体は補助化合物による治療を受けている)に投与することを含む、方法。
(122)補助化合物による治療を受けている哺乳動物において異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
(123)補助化合物による治療を受けている哺乳動物において異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を異常な細胞増殖を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む、方法
(124)補助化合物による治療を受けている哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の治療方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物をcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
(125)補助化合物による治療を受けている哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物をcdkキナーゼ(cdk1またはcdk2など)またはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3活性を阻害するのに有効な量で前記哺乳動物に投与することを含む、方法。
(126)補助化合物による治療を受けている被験体におけるサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の阻害方法であって、前記キナーゼと(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)のキナーゼ阻害化合物とを接触させることを含む、方法。
(127)補助化合物による治療を受けている被験体における細胞過程(例えば、細胞分裂)の修飾方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を使用してサイクリン依存性キナーゼまたはグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3の活性を阻害することを含む、方法。
(128)補助化合物による治療を受けている被験体におけるオーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(129)補助化合物による治療を受けている被験体におけるオーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる癌の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(130)オーロラA遺伝子のIle31変異体を有し補助化合物で治療を受けている亜母集団から選ばれる患者における癌の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(131)オーロラA遺伝子のIle31変異体を有し、補助化合物で治療を受けている亜母集団の一部分を形成していると診断された患者における癌の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(132)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の予防または治療方法であって、補助化合物による治療を受けている被験体に(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む方法。
(133)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる疾病または症状の罹患率の緩和または低減方法であって、補助化合物による治療を受けている被験体に(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む方法。
(134)癌に罹患しているまたは罹患していると疑われる補助化合物による治療を受けている患者における癌の予防または治療(あるいは癌の罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)患者がオーロラA遺伝子のIle31変異体を有しているかどうかを判定すべく患者を診断試験に供すること、および(ii)前記患者が前記変異体を有する場合、その後、前記患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む方法。
(135)オーロラキナーゼ(例えば、オーロラAキナーゼおよび/またはオーロラBキナーゼ)のアップレギュレーションにより特徴づけられる病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)オーロラキナーゼのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出すべく、補助化合物による治療を受けている患者を診断試験に供すること、および(ii)前記診断試験がオーロラキナーゼのアップレギュレーションを示す場合に、その後、前記患者にオーロラキナーゼ阻害活性を有する(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む、方法。
(136)(a)CDKキナーゼの過剰活性化および/または(b)正常なCDK活性への経路の感作および/または(c)サイクリンEのアップレギュレーションにより特徴付けられる病態または症状の予防または治療(あるいはこれらの罹患率の緩和または低減)方法であって、(i)(a)および/または(b)および/または(c)に特徴的なマーカーを検出すべく、補助化合物による治療を受けている患者を診断試験に供すること、および(ii)前記診断試験が(a)および/または(b)および/または(c)を示す場合に、その後、前記患者にCDKキナーゼ阻害活性を有する(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む方法。
(137)(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物が、本明細書に記載の診断試験のいずれか1つまたは複数によって前記化合物による治療に感受性がある疾病または症状を有していると確認された補助化合物による治療を受けている患者の亜母集団に投与(例えば、治療上有効な量で)される、治療方法、医療上の使用または使用のための化合物。
(138)補助化合物による治療を受けている被験体における本明細書に記載の病態の予防または治療用薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(139)補助化合物による治療を受けている被験体における(例えば、本明細書で記載される病態の予防または治療において)薬剤で用いるための(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物。
(140)本明細書に記載の病態または症状の予防または治療(あるいはその罹患率の緩和または低減)方法であって、補助化合物による治療を受けている哺乳動物に治療に有効な量の(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む方法。
(141)(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物との併用療法に用いる、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)。
(142)補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)との併用療法に用いる、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物。
(143)前記併用療法が(1)〜(142)のいずれかに記載の予防、治療または方法を含む、(141)または(142)に記載の化合物。
(144)(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物による治療を受けている患者の治療または予防で用いる薬剤の製造のための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)の使用。
(145)補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)による治療を受けている患者の治療または予防で用いる薬剤の製造のための、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物の使用。
(146)ヒトなどの温血動物における癌の治療方法であって、有効量の補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)を、有効量の(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物と順次(例えば、前後に)または同時に前記動物に投与することを含む、方法。
(147)治療上有効な量の補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)および治療上有効な量の(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を投与することを含む、哺乳動物における癌の併用療法の方法。
(148)哺乳動物における異常な細胞増殖からなる、またはそれから生じる疾病または症状の罹患率を緩和または低減させるための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)との併用療法で用いる、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物。
(149)哺乳動物における腫瘍増殖を阻害するための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)との併用療法で用いる、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物。
(150)癌を予防、治療または管理する必要のある患者における癌を予防、治療または管理するための、補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)との併用療法で用いる、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物。
(151)補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)による治療を受けている癌に罹患する患者における反応率を促進または増加させるために用いる、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物。
(152)補助化合物(例えば、本明細書で開示される補助化合物のいずれかから選ばれる補助化合物)による治療を受けている癌に罹患する患者における反応率を促進または増加させる方法であって、(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物を前記補助化合物と組合せて患者に投与することを含む方法。
(153)前記組合せが2種以上の補助化合物を含む、(1)〜(152)のいずれかに記載の発明。
(154)前記2種以上の補助化合物がそれぞれ独立して本明細書に記載の補助化合物のいずれかから選ばれる、(153)に記載の発明。
(155)式(I’)の化合物を補助化合物と組合せることを含む、(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの製造方法。
(156)式(XXVII)または(XXVIII)の化合物あるいはその塩を含む(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの調製方法であって、前記方法は
式(XXIX)の化合物(式中PGはアミン保護基である)と、
式(XXXI)の化合物とを、
有機溶媒中EDCおよびHOBtなどのカップリング剤の存在下で反応させることを含む方法。
(157)前記式(XXIX)の化合物が、下記式(XXXII)の化合物である、(156)に記載の方法。
(158)3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イルアミンまたはその塩を含む(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの調製方法であって、前記方法は
(i)式(XXVIIa)または(XXVIIIa)の化合物を
場合により加熱と共に、溶媒中において酸で処理すること、および
(ii)反応物を中和することを含む、方法。
(159)1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素またはその塩を含む(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの調製方法であって、前記方法は
(i)(158)に記載の式(XXVIIa)の化合物を、場合により加熱と共に、溶媒中において酸で処理すること、
(ii)反応物を中和すること、
(iii)工程(ii)の生成物とカルボニル化試薬とを反応させること、および
(iv)工程(iii)の生成物とシクロプロピルアミンとを反応させることを含む、方法。
(160)前記カルボニル化試薬が、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)あるいは、トリホスゲンまたはホスゲンなどのホスゲン均等物、好ましくは1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)である、(117)に記載の方法。
(161)1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素を含む(1)〜(86)のいずれかに記載の組合せの調製方法であって、前記方法は式(XXVIII)または式(XXVIIIa)の化合物
をシクロプロピルアミンと反応させ、その後、場合により酸付加塩を形成することを含む方法。
(162)前記(1)〜(86)のいずれかに記載の式(I’)の化合物が1−シクロプロピル−3−[3−(5−モルホリン−4−イルメチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]−尿素のL−乳酸塩であり、前記塩は結晶性で、下記の任意の1つまたは複数(どのような組合せでもよい)またはすべてパラメーターによって特性決定される、すなわち前記塩は、
(a)図4および図5に示される結晶構造を有する、および/または
(b)WO2006/070195の205〜209ページの実施例71における表4(その内容は参照により本書に援用される)の座標により定義される結晶構造を有する、および/または
(c)97(2)Kで、a=9.94(10)、b=15.03(10)、c=16.18(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、および/または
(d)室温で、a=10.08(10)、b=15.22(10)、c=16.22(10)Å、α=β=γ=90°の結晶格子パラメーターを有する、および/または
(e)斜方晶系空間群P2 1 2 1 2 1 (#19)に属する結晶構造を有する、および/または
(f)17.50、18.30、19.30、19.60および21.85°、より具体的にはさらに12.40、15.20、15.60、17.50、18.30、18.50、19.30、19.60、21.85および27.30°の回折角(2θ)および/または5.06、4.85、4.60、4.53および4.07、より具体的にはさらに7.13、5.83、5.68、5.06、4.85、4.79、4.60、4.53,4.07および3.26Åの面間隔(d)における主要なピークの存在を特徴とする粉末X線回折パターンを有する、および/または
(g)WO2006/070195の図6または209〜211ページの実施例72における表5(その内容は参照により本書に援用される)に示される粉末X線回折パターンのものと同様の回折角でピークを示し、前記ピークは任意に図6または表5(参照により本書に援用される)におけるピークと同様の相対強度を有する、および/または
(h)実質的に図6に示す粉末X線回折パターンを有する、および/または
(i)無水で、DSCに供された場合190℃で始まりを示しおよび/または194〜197℃で吸熱ピークを示す、および/または
(j)KBrディスク法を用いて分析された場合、3229、2972および1660cm −1 に特徴的ピークを有する赤外線スペクトルを示す、(1)〜(161)のいずれかに記載の発明。
(163)前記補助化合物が、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルから選ばれるタキサン化合物を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(164)前記補助化合物が、ゲムシタビン、カペシタビン、シタラビン、ラリトレキセド、ペメトレキセドおよびメトトレキセートから選ばれる抗代謝化合物である、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(165)前記補助化合物が、トラスツズマブ、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ベバシズマブ、メシル酸イマチニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、バンデタニブ、バタリニブ、アキシチニブおよびCHIR−258から選ばれるシグナル伝達阻害剤である、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(166)前記補助化合物が、サイトカイン、サイトカイン活性化剤またはレチノイド(例えば、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γおよびインターフェロンα)、インターロイキン(例えば、インターロイキン2)、トレチノイン、アリトレチノインおよびベキサロテンから選ばれる)である、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(167)前記補助化合物がカンプトテシン化合物を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(168)前記カンプトテシン化合物が、カンプトテシン、イリノテカンおよびトポテカンから選ばれる、(167)に記載の発明。
(169)前記カンプトテシン化合物がトポテカンである、(168)に記載の発明。
(170)前記カンプトテシン化合物がイリノテカンである、(168)に記載の発明。
(171)前記補助化合物が、例えば、ビノレルビン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンから選ばれるビンカアルカロイド化合物を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(172)前記ビンカアルカロイド化合物がビノレルビンである、(171)に記載の発明。
(173)前記ビンカアルカロイド化合物がビンブラスチンである、(171)に記載の発明。
(174)前記ビンカアルカロイド化合物がビンクリスチンである、(171)に記載の発明。
(175)前記補助化合物が、例えば、クロロ(ジエチレンジアミノ)−白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミノ)−白金(II)、スピロプラチン、イプロプラチン、ジアミノ(2−エチルマロナト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II)、(4−カルボキシフタロ)−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−(イソシトラト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−cis−(ピルバト)白金(II)、オンナプラチン、テトラプラチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選ばれる白金化合物を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(176)前記白金化合物が、クロロ(ジエチレンジアミノ)−白金(II)クロリド、ジクロロ(エチレンジアミノ)−白金(II)、スピロプラチン、イプロプラチン、ジアミノ(2−エチルマロナト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II)、(4−カルボキシフタロ)−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−(イソシトラト)白金(II)、(1,2−ジアミノシクロヘキサン)−cis−(ピルバト)白金(II)、オンナプラチン、テトラプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンから選ばれる、(175)に記載の発明。
(177)前記白金化合物がカルボプラチンまたはオキサリプラチンである、(176)に記載の発明。
(178)前記白金化合物がカルボプラチンである、(177)に記載の発明。
(179)前記補助化合物が、例えば、アントラサイクリン誘導体、ミトキサントロンおよびポドフィロトキシン誘導体から選ばれるトポイソメラーゼ2阻害剤を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(180)前記トポイソメラーゼ2阻害剤が、ダウノルビシン、イダルビシンおよびエピルビシンから選ばれる、(179)に記載の発明。
(181)前記トポイソメラーゼ2阻害剤が、エトポシドおよびテニポシドから選ばれる、(179)に記載の発明。
(182)前記トポイソメラーゼ2阻害剤がエトポシドである、(181)に記載の発明。
(183)前記補助化合物が抗アンドロゲンまたは抗エストロゲンである、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(184)前記抗アンドロゲンがアロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタンおよびアミノグルテチミド)である、(183)に記載の発明。
(185)前記抗アンドロゲンが、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、レトラゾール、アナストラゾール、エキセメスタン、ビカルタミド、ルプロリド、酢酸メゲストロール、アミノグルテチミドおよびベキサロテンから選ばれる、(183)に記載の発明。
(186)前記補助化合物がGnRHアナログ(例えば、ゴセレリンまたはルプロリド)である、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(187)前記補助化合物が細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体(または抗CD抗体)である、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(188)前記細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体が、CD20、CD22、CD33およびCD52から選ばれる、(187)に記載の発明。
(189)前記細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体が、リツキシマブ、トシツモマブおよびゲムツズマブから選ばれる、(187)または(188)に記載の発明。
(190)前記細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体が、完全ヒト抗体およびキメラ抗体を包含する、(187)〜(189)のいずれかに記載の発明。
(191)前記補助化合物が、例えば、ナイトロジェンマスタード化合物、ニトロソウレア化合物およびブスルファンから選ばれるアルキル化剤を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(192)前記アルキル化剤がイホスファミドおよびクロラムブシルから選ばれる、(191)に記載の発明。
(193)前記アルキル化剤がカルムスチンおよびロムスチンから選ばれる、(191)に記載の発明。
(194)前記アルキル化剤がブスルファンである、(191)に記載の発明。
(195)前記補助化合物が、例えば、TSA、SAHA、JNJ−16241199、LAQ−824、MGCD−0103およびPXD−101から選ばれるHDAC阻害剤を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(196)前記補助化合物がCOX−2阻害剤、例えばセレコキシブを含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(197)前記補助化合物が、例えば、テモゾロマイド、デシタビンおよび5−アザシチジンであるDNAメチル化酵素阻害剤を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(198)前記補助化合物がプロテアソーム阻害剤、例えばボルテジミブを含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(199)前記補助化合物が、例えば、セリシクリブ、アルボシジブ、7−ヒドロキシスタウロスパリン(hydroxystaurosparine)、JNJ−7706621、BMS−387032、Pha533533、PD332991、ZK−304709およびAZD−5438から選ばれるCDK阻害剤を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(200)前記CDK阻害剤が、JNJ−7706621、BMS−387032、Pha533533、PD332991、ZK−304709およびAZD−5438から選ばれる、(199)に記載の発明。
(201)前記CDK阻害剤がJNJ−7706621である、(200)に記載の発明。
(202)抗代謝化合物、タキサン化合物、エポチロン、Hsp90阻害剤、シグナル伝達阻害剤、カンプトテシン化合物、ビンカアルカロイド化合物、白金化合物、トポイソメラーゼ2阻害剤、抗アンドロゲン、モノクローナル抗体(例えば、1つまたは複数の細胞表面抗原に対する)、アルキル化剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、DNAメチル化阻害剤、CDK阻害剤、オーロラ阻害剤およびチェックポイント標的剤から独立して選ばれる2種以上の補助化合物を含む(1)〜(162)のうちのいずれかに記載の発明。
(203)前記2種以上の補助化合物の1種が、抗アンドロゲン、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、DNAメチル化阻害剤およびさらなるCDK阻害剤から選ばれる、(202)に記載の発明。
(204)前記2種以上の補助化合物が、5−FU、メトトレキセート、シクロホスファミドおよびドキソルビシンから選ばれる、(202)に記載の発明。
(205)前記2種以上の補助化合物がフルダラビンおよびリツキサマブを含む、(202)に記載の発明。
(206)前記2種以上の補助化合物がオーロラ阻害剤およびチェックポイント標的剤を含む、(202)に記載の発明。
(207)前記補助化合物がオーロラ阻害剤である、(1)〜(162)のうちのいずれかに記載の発明。
(208)前記補助化合物がチェックポイント標的剤である、(1)〜(162)のうちのいずれかに記載の発明。
(209)前記チェックポイント標的剤が、白金化合物、ヌクレオシドアナログ、CDK阻害剤、タキサン、エポチロン、ビンカアルカロイド、ポロ様キナーゼ阻害剤、CHKキナーゼ阻害剤、BUBキナーゼファミリー阻害剤およびキネシン阻害剤から選ばれる、(208)に記載の発明。
(210)前記チェックポイント標的剤が、(a)紡錘体微小管を安定化させ正常な紡錘体収縮を妨げる薬剤(例えば、タキサンおよびエポチロン)、(b)紡錘体形成を妨げる薬剤(例えば、ビンカアルカロイド)および(c)DNA損傷を引き起こすまたはDNA複製を破壊する薬剤(例えば、白金化合物またはヌクレオシドアナログ(5−FUなど))から選ばれる、(208)に記載の発明。
(211)前記チェックポイント標的剤がタキサン(例えば、パクリタキセル)である、(210)に記載の発明。
(212)レキシノイド、選択的免疫反応モジュレーター、DNA修複阻害剤およびGタンパク質共役受容体阻害剤から独立して選ばれる1種または2種以上を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。
(213)選択的免疫反応モジュレーター、DNA修複阻害剤およびGタンパク質共役受容体阻害剤から独立して選ばれる1種または2種以上を含む、(1)〜(162)のいずれかに記載の発明。