JP5518515B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
近年、自動車の高性能化、高馬力化が進む一方、安全性に対する意識も高まっており、タイヤに対するグリップ性能の要求も強まってきている。
グリップ性能は、ゴム組成物のヒステリシスロス特性に依存しており、従来、ゴム組成物のグリップ性能を高める手法としては、例えば、スチレンブタジエンゴムのスチレン量およびビニル量を多くしてガラス転移温度をより高くする手法が知られている。しかし、この場合、耐摩耗性が低下する傾向にあるだけでなく、低温時のグリップ性能も低下するおそれがある。また、オイルを多量に使用してグリップ性能を向上させる手法も知られている。しかし、この場合、破壊特性の低下により耐摩耗性が低下してしまう。
上記問題を解決するために、特許文献1には、イミダゾール類と、有機酸塩を配合したタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかし、イミダゾール類について詳細に検討されておらず、改善の余地がある。また、特許文献2には、特定のミクロ構造を有するスチレンブタジエンゴムに対して、特定の水素添加率を有するスチレンブタジエン共重合体を配合することで、耐摩耗性およびグリップ性能を高次にバランスさせ、さらにブリードを抑制できることが開示されている。しかし、グリップ性能の向上については、改善の余地がある。
特開2007−138101号公報 特開2005−225946号公報
本発明は、前記課題を解決し、グリップ性能を充分に向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、下記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体と、数平均分子量が1.0×10〜1.0×10、スチレン含有量が30質量%以下であるスチレンブタジエン共重合体とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
Figure 0005518515
(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)
上記式(I)で表される五員複素環式化合物において、Nの電荷密度が正の値となることが好ましい。
上記スチレンブタジエン共重合体のブタジエン部の水素添加率が20〜60モル%であることが好ましい。
上記タイヤ用ゴム組成物が、トレッドに使用されることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。上記空気入りタイヤが高性能タイヤであることが好ましい。
本発明によれば、上記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体と、特定の数平均分子量を有し、スチレン含有量が特定量以下であるスチレンブタジエン共重合体とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、グリップ性能を充分に向上でき、さらに操縦安定性も向上でき、グリップ性能、操縦安定性に優れた空気入りタイヤを提供できる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体と、特定の数平均分子量を有し、スチレン含有量が特定量以下であるスチレンブタジエン共重合体とを含む。
本発明で使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムを使用してもよい。これらジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、グリップ性能と耐摩耗性をバランスよく両立できるという理由から、SBRが好ましい。
SBRとしては、特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
SBRのスチレン含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上である。10質量%未満であると、tanδが低く、高いグリップ性能が得られないおそれがある。また、上記スチレン含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。50質量%を超えると、常温でのゴム硬度が高すぎるため、グリップ性能を発揮できないおそれがある。
本発明のゴム組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは100質量%である。50質量%未満であると、充分なグリップ性能及び操縦安定性が得られないおそれがある。
本発明では、下記式(I)で表される五員複素環式化合物が使用される。これにより、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体との間に働く相互作用に伴いエネルギーロスが発生し、グリップ性能、操縦安定性が向上する。
Figure 0005518515
(式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)
の炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、アラルキル基、アシル基、シアノアルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基などが挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きいという理由から、ベンジル基、メチルベンジル基が好ましい。
上記アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きいという理由から、アセチル基、プロパノイル基が好ましい。
上記シアノアルキル基(式−C2uCNで表される基(ただし、uは1〜9の整数))としては、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノブチル基、シアノペンチル基、シアノヘキシル基などの直鎖状シアノアルキル基や、1−シアノエチル基、1−メチルシアノエチル基、2−メチルシアノエチル基、1,1−ジメチルシアノエチル基などの分岐状シアノアルキル基等が挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きく、入手が容易であるという理由から、直鎖状シアノアルキル基が好ましく、2−シアノエチル基、シアノメチル基がより好ましい。
〜Rの炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。なかでも、性能改善効果が大きく、入手が容易であるという理由から、フェニル基、トリル基が好ましい。
〜Rのアラルキル基としては、例えば、上記Rのアラルキル基と同様の基が挙げられる。
より効果的にタイヤ走行により発生する歪みや熱などのエネルギーロスが生じ、高いグリップ性能が得られるという理由から、上記式(I)で表される五員複素環式化合物において、Nの電荷密度が正の値となることが好ましい。Nの電荷密度は、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上である。
電荷密度は、GAUSSIAN(Gaussian社)、GAMESSなどの量子化学計算ソフトを用い、静電ポテンシャルの誘導電荷から求めることができる。この際に用いる基底関数としては精度と計算速度のバランスから6−31+G(d)以上のものが好ましい。なお、本明細書の電荷密度は、後述の実施例に記載の方法により計算した値である。
上記式(I)で表される五員複素環式化合物としては、例えば、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、1−ビニルイミダゾールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせても良い。
上記式(I)で表される五員複素環式化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。0.1質量部未満であると、性能改善効果が小さく、充分なグリップ性能及び操縦安定性が得られないおそれがある。上記式(I)で表される五員複素環式化合物の含有量の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。50質量部を超えると、高コストになってしまうおそれがある。
本発明のゴム組成物は、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体を含む。これにより、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体と、五員複素環式化合物との間に働く相互作用に伴いエネルギーロスが生じ、グリップ性能が向上する。
上記プロトン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸、コハク酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸、安息香酸、安息香酸誘導体、ケイ皮酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を組み合わせても良い。なかでも、より効果的にタイヤ走行により発生する歪みや熱などのエネルギーロスが生じ、高いグリップ性能が得られるという理由から、芳香族カルボン酸が好ましく、芳香族モノカルボン酸がより好ましく、安息香酸及び安息香酸誘導体が更に好ましい。安息香酸誘導体としては、例えば、安息香酸に炭化水素基(アルキル基、アルコキシ基等)、水酸基等の官能基が導入されたものが挙げられ、具体的には、p−メチル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
上記フェノール誘導体としては、下記式(II)〜(V)に示す化合物等が挙げられる。なかでも、芳香環含有三級アミンに対して、少量でもより効果的に作用し、高いグリップ性能および操縦安定性が得られることから、ビスフェノール誘導体である下記式(V)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005518515
Figure 0005518515
Figure 0005518515
Figure 0005518515
上記式(II)〜(V)において、R〜R11は、同一又は異なって、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)の炭化水素基である。該炭化水素基としては、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルキル基、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルケニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等を挙げることができる。
nおよびn’は、同一又は異なって、0または1〜3の整数である。nおよびn’は、1〜2であることが好ましい。
mおよびm’は、同一又は異なって、1または2の整数である。mおよびm’は、1であることが好ましい。
sは、1〜3の整数である。sは、1〜2であることが好ましい。
tは、0または1〜3の整数である。tは、1〜2であることが好ましい。
Xは、酸素原子、硫黄原子およびハロゲン原子からなる群より選択される原子または該原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基またはそれらの不飽和基を挙げることができる。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基等を、また、不飽和基としてビニレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、エステル結合含有基、芳香族基等を挙げることができる。Xの好ましい具体例は、次の(1)〜(3)である。また、エステル結合含有基は、−CO−O−を含むグループであり、具体例として下記の(4)〜(7)で表されるものを例示することができる。
Figure 0005518515
上記式(II)〜(V)で表されるフェノール誘導体の具体例としては、例えば、2−tert−ブチルフェノール;2−エチル−6−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノール;4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルプロピル)フェノール;2−ブチル−6−エチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェノール;6−tert−ブチル−2,3−ジメチルフェノール;2−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;4,4'−ジヒドロキシビフェニル;4,4'−チオビスフェノール;ヒドロキノン;1,5−ヒドロキシナフタレン;4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4'−エチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4'−プロピリデンビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4'−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4'−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)等を挙げることができる。これらは単独で用いても良く、二種以上を組み合わせても良い。なかでも、窒素化合物と水素結合を形成しやすいという理由から、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が好ましい。
上記プロトン酸及び/又はフェノール誘導体は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満であると、グリップ性能向上効果が充分に得られないおそれがある。プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。50質量部を超えると、耐摩耗性の低下を招くおそれがある。
なお、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量とは、プロトン酸とフェノール誘導体を併用する場合はその合計含有量を意味する。
上記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の質量基準の配合比(「上記式(I)で表される五員複素環式化合物の含有量(質量部)」/「プロトン酸及び/又はフェノール誘導体の含有量(質量部)」)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上である。該比は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。上限を超える場合や下限未満の場合は、グリップ性能の向上効果が充分に得られないおそれがある。
本発明では、特定の数平均分子量を有し、スチレン含有量が特定量以下であるスチレンブタジエン共重合体が使用される。これにより、グリップ性能が向上する。
なお、上記スチレンブタジエン共重合体は、ゴム成分には含まれない。
スチレンブタジエン共重合体の数平均分子量(Mn)は1.0×10以上、好ましくは1.5×10以上である。Mnが1.0×10未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、スチレンブタジエン共重合体のMnは1.0×10以下、好ましくは8.0×10以下、より好ましくは3.0×10以下、更に好ましくは9.0×10以下である。Mnが1.0×10を超えると、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。なお、Mnは、後述の実施例に記載の方法により測定される。
スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。30質量%を超えると、上記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体との相互作用を阻害し、グリップ性能(特に、高温条件下でのグリップ性能)が低下する傾向がある。
また、上記スチレン含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、tanδが低く、高いグリップ性能が得られないおそれがある。なお、スチレン含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
スチレンブタジエン共重合体におけるブタジエン部の二重結合は水素添加されていることが好ましい。これにより、スチレンブタジエン共重合体とゴム成分との架橋反応(加硫)が発生しにくくなるため、グリップ性能、耐摩耗性を向上できる。水素添加反応としては、例えば、有機溶媒中で金属触媒の存在下で水素を加圧する方法、ヒドラジンを用いる方法などの従来公知の方法を用いることができる(特開昭59−161415号公報など)。
スチレンブタジエン共重合体におけるブタジエン部の二重結合に水素が添加されている場合、スチレンブタジエン共重合体のブタジエン部の水素添加率(当該スチレンブタジエン共重合体のブタジエン部に対して水素添加された割合)は、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましく、30モル%以上が更に好ましい。水素添加率が20モル%未満では、スチレンブタジエン共重合体がマトリックスであるゴム成分に架橋反応(加硫)により取り込まれ、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、水素添加率は、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましい。水素添加率が60モル%を超えると、スチレンブタジエン共重合体がブリードアウトしてしまう傾向がある。なお、水素添加率は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
スチレンブタジエン共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。3質量部未満では、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、該スチレンブタジエン共重合体の含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは70質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。150質量部を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックを配合することにより、補強性を高めることができるとともに、グリップ性能を改善できる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は80m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、120m/g以上が更に好ましく、135m/g以上が特に好ましい。80m/g未満では、グリップ性能、耐摩耗性がともに低下する傾向がある。また、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は280m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましく、160m/g以下が更に好ましい。280m/gを超えると、カーボンブラックの良好な分散が得られにくく耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
上記ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。10質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは140質量部以下である。200質量部を超えると、ゴム組成物の加工性が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカ等の補強用充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
本発明のゴム組成物は、上記スチレンブタジエン共重合体を含有するため、オイル等の軟化剤を配合しなくても良好な加工性、グリップ性能が得られる。さらに、本発明のゴム組成物は、耐摩耗性が低下するという理由から、オイル等の軟化剤を実質的に含有しないことが好ましい。
軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下、更に好ましくは0.001質量部以下、最も好ましくは0質量部(含有しない)である。なお、本明細書において、軟化剤には、上記スチレンブタジエン共重合体は含まれない。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッドに好適に使用できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として好適に用いられ、特に高性能タイヤとして好適に用いられる。
なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:高千穂化学工業(株)製
スチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製
10%パラジウムカーボン:東京化成工業(株)製
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製
製造例1(スチレンブタジエン共重合体1の合成)
十分に窒素置換した攪拌翼つきの3Lオートクレーブに、n−ヘキサン1500mL、1,3−ブタジエン46gおよびスチレン31g、テトラメチルエチレンジアミン1.6gを投入し、オートクレーブ内の温度を25℃に調整した。次に、1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液23mLを加えて昇温条件下(30℃)で60分間重合し、モノマーの転化率が99%であることを確認した。その後、10%パラジウムカーボン5gを加え、窒素置換した後、圧力が5.0kg/cmとなるように水素置換して80℃で水素添加反応を行った。その後、老化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを1.5g加え、スチレンブタジエン共重合体1を合成した。
製造例2〜8(スチレンブタジエン共重合体2〜8の合成)
表1に示す条件に従い、その他の条件については製造例1と同様にして、スチレンブタジエン共重合体2〜8を合成した。なお、製造例6では、水素添加反応を行わなかった。
得られたスチレンブタジエン共重合体1〜8について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(数平均分子量(Mn)の測定)
数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
(ミクロ構造(スチレン含有量)の測定)
25℃にてJEOL JNM−A 400NMR装置を用いてH−NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5〜7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9〜5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からミクロ構造(スチレン含有量)を決定した。
(水素添加率の測定)
水素添加率は、四塩化炭素を溶媒として用い、15質量%の濃度となるようにスチレンブタジエン共重合体を溶解し、当該溶液について、100MHzのH−NMRにより測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
Figure 0005518515
以下、参考例、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のタフデン4350(スチレン含有量:39質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(NSA:145m/g)
化合物1:アルドリッチ社製の1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(Nの電荷密度:0.155)(上記式(I)中、R:ベンジル基、R:フェニル基、R:水素原子、R:水素原子)
化合物2:アルドリッチ社製の1−アセチルイミダゾール(Nの電荷密度:0.0477)(上記式(I)中、R:アセチル基、R:水素原子、R:水素原子、R:水素原子)
酸1:川口化学(株)製のアンテージW300(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール))(フェノール誘導体)
酸2:和光純薬工業(株)製の安息香酸(プロトン酸)
スチレンブタジエン共重合体1〜8:上記製造例1〜8で調製したスチレンブタジエン共重合体1〜8
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属工業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
なお、上記化合物1,2の電荷密度は、以下の条件により計算した。
計算ソフト:GAUSSIAN03
基底関数:6−31+G(d)
解析法:CHelpG
参考例1、実施例〜10及び比較例1
表2に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄、加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間プレス加硫することで加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を製造した。
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表2に示す。
(グリップ性能)
グリップ性能は、(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いて評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片(加硫ゴム組成物)を用い、速度20km/h、荷重4kgf、路面温度50℃で路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の中の最大値を読みとった。結果は、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、グリップ性能に優れることを示す。
(操縦安定性)
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、アスファルト路面のテストコースにて実車走行を行い、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが5点満点で評価した。数値が大きいほど操縦安定性に優れることを示す。(5:良い、4:やや良い、3:普通、2:やや悪い、1:悪い)
(耐ブリードアウト性)
試験用タイヤの表面を観察し、オイル状のもののブリードの程度を目視にて判断した。
(○:ブリードなし、△:ややブリード気味、×:ブリード激しい)
Figure 0005518515
上記式(I)で表される五員複素環式化合物(化合物1,2)と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体と、特定の数平均分子量を有し、スチレン含有量が特定量以下であるスチレンブタジエン共重合体(スチレンブタジエン共重合体〜8)とを含む実施例では、グリップ性能、操縦安定性を向上できた。一方、上記式(I)で表される五員複素環式化合物(化合物1)と、フェノール誘導体と、特定の数平均分子量を有すものの、スチレン含有量が40.3質量%と特定量を超えるスチレンブタジエン共重合体1とを含む比較例では、実施例に比べて、グリップ性能、操縦安定性が劣っていた。また、水素添加率が70モル%のスチレンブタジエン共重合体5を配合した実施例4は、他の例に比べて耐ブリードアウト性が劣っていた。

Claims (6)

  1. ゴム成分と、下記式(I)で表される五員複素環式化合物と、プロトン酸及び/又はフェノール誘導体と、数平均分子量が1.0×10〜1.0×10、スチレン含有量が10〜20質量%であるスチレンブタジエン共重合体とを含むタイヤ用ゴム組成物。
    Figure 0005518515
    (式(I)中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子及び/又はハロゲン原子を有してもよい。N及びNは、窒素原子を表す。)
  2. 前記式(I)で表される五員複素環式化合物において、Nの電荷密度が正の値となる請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記スチレンブタジエン共重合体のブタジエン部の水素添加率が20〜60モル%である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. トレッドに使用される請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
  6. 高性能タイヤである請求項5記載の空気入りタイヤ。
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