JP5509047B2 - 発泡トレーの製造方法 - Google Patents
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Description
この種の発泡トレーは、容器底部と該容器底部の外周から立ち上がる周側壁とで被収容物を収容させるための収容凹部が構成されており、多くの場合、前記周側壁は、外向きに傾斜した状態で備えられている。
この種の容器には強度と軽量性とを両立させることが求められており、例えば、前記発泡トレーを食品収容用容器として使用するような場合においては、ラップ掛けされることがあるため、容器側方からの力に対する変形の抑制が求められている。
より具体的には、前記ラップ掛けに際して、周側壁が起き上がる方向に容易に変形してしまうとラップフィルムに緩みを生じ内部の食品に対する外部からの視認性を低下させてしまうおそれがあることから、このような変形を生じさせないことが求められている。
このラップ掛けに際して求められるような発泡トレーに対して側方から加わる力に対する強度は、“腰強度”などと呼ばれており、食品収容用容器のみならず発泡トレー全般に広く求められている。
しかし、単に、用いる発泡シートの厚みを薄くして、周側壁のみならず全体の厚みを薄くすると同時に強度も低下させるおそれを有する。
このことに対し、容器底部を形成させるための形成面の外周に沿って複数の真空孔が環状配置されている雄型と雌型とを用いて、該雄型と雌型とで樹脂発泡シートを挟んで熱成形するのに際して、前記容器底部の外表面側を雌型の真空孔で真空引きするとともに内面側を前記雄型の真空孔で真空引きする所謂“両面真空”を実施することによって容器底部の厚みを増大させる方法が検討されている。
しかし、両面真空を行う熱成形においては、腰強度において製品間のバラツキを生じ易く、発泡トレーの強度を安定させることが難しいという問題を有しており、この問題に対する解決策はいまだ確立されていない。
すなわち、この種の発泡トレーの製造方法においては、従来、発泡トレーに付与する強度を安定化させることが困難であるという問題を有している。
したがって、容器底部の厚みを両面真空によって十分厚くすることができるとともに製品間における容器底部の厚みのバラツキを抑制させ得る。
このことによって製造する発泡トレーに優れた腰強度を安定的に付与させ得る。
本実施形態において作製される発泡トレーは、熱可塑性樹脂が用いられてなる樹脂発泡シートが熱成形されたものであり、図1に示す斜視図のような形状を有している。
すなわち、図にも示されているように、本実施形態の発泡トレー1には、容器底部11と、該容器底部11の外周から立ち上がる周側壁12とによって被収容物を収容するための収容凹部10が形成されており、前記周側壁12の上端縁13から外側に向けて突出したフランジ部14がさらに備えられている。
この容器底部11は、その内面が、前記収容凹部10の底面を形成するものであり、外面が発泡トレーの接地面を形成させるものである。
なお、本実施形態の容器底部11は、容器底部11の中央部に切頭楕円錐形状に隆起した隆起部11aを有しており、該隆起部11aは、発泡シートを外面側から凹入させることにより形成されたものである。
したがって、前記発泡トレー1を平坦な箇所に置いた際には、前記隆起部14aの外面は接地することなく、その周囲の環状の領域を接地させることになる。
本実施形態の発泡トレー1には、平坦な台上に載置された場合などにおいて不用意に回転したりすることがないようにこのような構成が採用されている。
この周側壁12は、容器底部11の外周からの立ち上がりはじめにおいては、殆ど水平状態で、その後、前記開口縁13に向かうにしたがって立ち上がり角度を徐々に増大させており、この立ち上がり角度を変化させている区間(以下「立上部12a」ともいう)においては断面円弧状となっている。
この断面円弧状の立上部12aに続く前記開口縁13までの領域においては、前記周側壁12は、その立ち上がり角度を一定させているが、前記開口縁13に近い部分に段差部12xが形成され、該段差部12xを介して上方側が、下方側に比べて一回り大きく拡径された状態となっている。
したがって、この部分の断面形状は、容器底部11の外周からの立ち上がりはじめにおける円弧状の部分に続けて直線的なものとなっているものの、一旦、前記段差部12xにおいて外側にオフセットされた状態になっている。
以下、この立上部12aから段差部12xまでの直線的な領域を「直線部12b」ともいう。
また、前記段差部12xから前記開口縁13までの部分を「拡径部12c」ともいう。
また、ここでは詳述しないが、本実施形態に係る発泡トレー1とは形状を異ならせる、例えば、平面視円形、楕円形などの発泡トレーについても、一般的には、上記と同様な寸法とされる。
なお、図1のX−X線断面図である図2に示されているように、前記容器底部11は、前記周側壁12よりも厚く形成されており、食品収容用容器などとして広く利用されているポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形した発泡トレーであれば、周側壁12の厚みは、通常、2.0mm〜3.5mm程度とされ、容器底部11の厚みは3.0mm〜4.0mm程度とされる。
すなわち、同じ厚みの周側壁を設ける場合でも、周側壁を外向きに大きく傾倒させた構造の方がスタック高さが低くなり、ロースタック性において有利となる。
一方で、収容凹部10の開口面積が同じであれば、周側壁12の傾斜角を大きくすると、容器底部の面積が小さくなり、収容凹部の容積も小さくなってしまう。
このような観点から図2において符号“θ”で示されている周側壁12が外向きに傾斜する角度(垂直面と周側壁の直線部12bとがなす角度)は、35度以上40度以下であることが好ましい。
したがって、この部分の厚みが設計通りとなるように発泡トレー1を作製することが、同じ設計の発泡トレーどうしの間における腰強度のバラツキを抑制する上で重要となる。
なお、積層構造を有する樹脂発泡シートを用いる場合であれば、例えば、前記熱可塑性樹脂を押出発泡するとともに該熱可塑性樹脂と熱溶融時における相溶性に優れた樹脂を非発泡状態で共押出しして得られるものや、発泡層のみの単層構造の樹脂発泡シートに別途樹脂フィルムをドライラミネート、或いは、熱ラミネートして得られるものなどを本実施形態における発泡トレーの原材料として採用することができる。
また、積層構造を有する樹脂発泡シートであれば、厚み10μm〜200μm程度の厚みのフィルム層を上記発泡層とともに有するものを採用することができる。
なお、作製する発泡トレーに対して優れた腰強度を安定した状態で付与させる上において、前記雄型と前記雌型との真空孔が、直径0.8mm〜1.0mmの大きさを有し、中心間距離が5mm〜15mmのピッチで環状配置されていることが重要である。
図3は、前記雄型の構造を示した図であり、(a)は型面の構造を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A’線断面図、(c)は(a)のB−B’線断面図である。
この図に示すように、前記雄型20は、型周囲に設けられた雌型との合せ面21を基準面として、作製する発泡トレー1の内面形状(収容凹部10)に相当する隆起部を中央部に有している。
先に述べたように、前記容器底部11の平面視における形状が横長長方形となっているため、この複数の真空孔27もその配置が横長長方形となるように環状配置されている。
なお、本実施形態における雄型20は、この容器底部11の外周に相当する位置に沿って環状配置された複数の真空孔27のさらに内側に環状配置された真空孔27が備えられている(以後、外側の真空孔を「外側真空孔27a」、内側の真空孔を「内側真空孔27b」ともいう)。
ただし、先にも述べたように、少なくとも、容器底部11の外周に相当する位置に沿って設けられた外側真空孔27aは、雄型20の形成面における開口径(直径)が0.8mm〜1.0mmで、中心間距離が5mm〜15mmのピッチとなるように配置されることが重要である。
また、開口径が過大な場合には、製品間の腰強度にバラツキを生じさせるおそれを有する上に真空引きによって当該真空孔の痕跡を製品に残してしまい、発泡トレーの商品価値を損なうおそれをも有する。
さらに、上記のようなピッチで配置されることが重要なのは、外側真空孔27aの直径が上記の範囲内であっても、その中心間距離が余りに離れてしまうと小さな直径(開口径)の真空孔を設けた場合などと同じく真空引きによる容器底部11の厚肉化が十分になされないおそれを有するためである。
一方で、型内部における真空孔の拡径に伴って、隣り合う真空孔がつながった状態になると型の強度を大きく低下させるおそれを有する。
例えば、型表面から背面側に向けてのある程度の区間において個々の真空孔を独立させていると、真空孔間の壁が型表面に加わる応力を支えてくれることになるが、型表面近傍において隣り合う真空孔どうしが連結する状態になるとこのような効果を期待することが難しく、型表面に衝撃が加わるなどした際に変形が生じて金型としての寿命を終えさせてしまうおそれを有する。
即ち、容器底部11の厚肉化をより確実に実施させる上においては、真空孔の中心間距離を5mm以上確保する必要性は低いものの、真空孔どうしを連結させることなく当該真空孔をいち早く型内部において拡径させることができ、金型寿命の長期化と動力負荷の削減との両立を図る上において本実施形態においては、前記中心間距離の下限値を5mmとしている。
なお、外側真空孔27a、内側真空孔27bは、全ての真空穴を同じ直径とする必要はなく、同じピッチで配置する必要もない。
例えば、図3(a)において横長長方形に環状配置されている外側真空孔27aの長辺側のピッチ(P1)と、短辺側のピッチ(P2)とを異ならせていてもよい。
また、このL1と、その外側に示されているL2との間は、前記直線部12bを形成するための形成面24であり、L2とL3との間は、段差部12xを形成させるための形成面である。
さらに、L3とL4との間の領域は、拡径部12cを形成させるための形成面25であり、L4とL5との間は、前記フランジ部14を形成させるための形成面26である。
図4は、前記雌型の構造を示した図であり、(a)は型面の構造を示す平面図であり、(b)は(a)のC−C’線断面図、(c)は(a)のD−D’線断面図である。
この図に示すように、前記雌型30は、型周囲に設けられた雄型との合せ面31を基準面として、作製する発泡トレー1の外面形状に相当する掘り込みを中央部に有しており、当該掘り込みは、前記雄型20の中央部に設けられた隆起部の大きさ、並びに、高さに比べて、一回り大きく、且つ、深くなるように形成されている。
また、この容器底部11の外周に沿って環状配置された複数の真空孔37のさらに内側に別の真空孔が備えられている点についても雄型20と共通している。
より詳しくは、外側真空孔37aが形成している横長長方形の中央部を通って左右に横断するよう直線状に配置された1列の真空孔37b(以下「横断真空孔37b」ともいう)と、該真空孔37bが描く直線に直交するように外側真空孔37aが形成している横長長方形を縦断する2列の真空孔37c(以下「縦断真空孔37c」ともいう)とを有している点において、当該雌型30は前記雄型20と相違している。
なお、このさらなる真空孔37d(以下、「外周部真空孔37d」ともいう)は、段差部、ならびにフランジ部14を成形するのに際して真空吸引を実施して、容器外周に対して厚み強度を付与するために設けられたものである。
従って、周側壁12と容器底部11との境界部における厚みをこの容器底部11の外周を周回する方向において均一なものとすることができる。
しかも、本実施形態における雄型20と雌型30とは、外側真空孔27a,37aの配置を略共通させている上に、内側真空孔の配置を大きく異ならせており、真空孔の並んでいる列が雄型20と雌型30とで交差するように配置されている。
このことによって雄型側と雌型側とで真空吸引が強く作用する箇所を容器底部11の全域に分散させることができ、容器底部11の外周部分のみならず、隆起部11aなどの内部の領域においても両面真空による厚みの増大効果を均一に発揮させることができる。
なお、雄型と雌型とにおいて加えられる真空引きの程度については、作製する発泡トレーの材質や大きさにもよるが、通常、ポリスチレン系樹脂発泡シートを用いて、一般的な大きさの発泡トレーを作製する場合であれば、−0.1MPa〜−0.5MPa程度の真空度とすればよい。
したがって、樹脂発泡シートのロットが切り替わって、例えば、発泡剤の残存量が異なり、2次発泡性能などが異なる樹脂発泡シートが熱成形に供給された場合でも、先のロットの樹脂発泡シートによって得られた製品と、同じような容器底部の厚みを有する製品が得られることになる。
すなわち、本実施形態に係る製造方法を採用することで、製造する発泡トレーの強度の安定化が可能となる。
なお、本発明に係る発泡トレーの製造方法は、上記実施形態に示した具体的な例示に限定されるものではない。
図1に示すような、長方形の発泡トレーを作製した。
なお、作製する発泡トレーの外形寸法(設計値)は、下記の通り。
長辺側寸法(長さ):196mm、短辺側寸法(幅):120mm、容器深さ:30mm、角部の面取り(アール):半径20mm、フランジ部厚み:1.5mm
上記発泡トレーの製造には、以下の3種類の樹脂発泡シートを用いた。
・S1:
厚み1.70mm、坪量105g/m2のポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡層単層品)の片面に厚み18μmのポリスチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層タイプのポリスチレン系樹脂発泡シート
・S2:
厚み1.94mm、坪量115g/m2のポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡層単層品)の片面に厚み18μmのポリスチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層タイプのポリスチレン系樹脂発泡シート
・S3:
厚み2.05mm、坪量130g/m2のポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡層単層品)の片面に厚み18μmのポリスチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層タイプのポリスチレン系樹脂発泡シート
上記樹脂発泡シートの熱成形に際しては、概ね図3、図4に示すものと同様の構造を有する雄型と雌型とを用いた。
ただし、真空孔の直径(直径)、中心間距離(ピッチ)、周側壁を形成させる形成面の傾斜角度(傾斜角)等を異ならせた複数種類の成形型を用いて発泡トレーを作製した。
なお、雄型については、図3における外側真空孔27a、内側真空孔27bに相当する真空孔のピッチを共通させるとともに雌型についても図4における外側真空孔37a、横断真空孔37b、縦断真空孔37c、及び、外周部真空孔37dに相当する真空孔のピッチを共通させた。
また、組み合わせて用いる雄型と雌型とは、真空孔の直径、ピッチを互いに共通させるとともに、傾斜角も雄型と雌型とで共通させた。
用いた成形型(雄型及び雌型)の真空孔の直径とピッチ、並びに、周側壁形成面の傾斜角は下記の通りである。
・成形型O:
(真空孔)直径:0.8mm、ピッチ:16mm
(傾斜角)短辺側:30度、長辺側:30度
・成形型A0:
(真空孔)直径:0.4mm、ピッチ:8mm
(傾斜角)短辺側:37度、長辺側:35度
・成形型A1:
真空孔の直径:0.8mm。その他は「成形型A0」に同じ。
・成形型A2:
真空孔の直径:1.0mm。その他は「成形型A0」に同じ。
・成形型A3:
真空孔の直径:1.2mm。その他は「成形型A0」に同じ。
・成形型B0:
(真空孔)直径:0.4mm、ピッチ:8mm
(傾斜角)短辺側:39度、長辺側:36度
・成形型B1:
真空孔の直径:0.8mm。その他は「成形型B0」に同じ。
・成形型B2:
真空孔の直径:1.0mm。その他は「成形型B0」に同じ。
・成形型B3:
真空孔の直径:1.2mm。その他は「成形型B0」に同じ。
・成形型C0:
(真空孔)直径:0.4mm、ピッチ:8mm
(傾斜角)短辺側:39度、長辺側:37度
・成形型C1:
真空孔の直径:0.8mm。その他は「成形型C0」に同じ。
・成形型C2:
真空孔の直径:1.0mm。その他は「成形型C0」に同じ。
・成形型C3:
真空孔の直径:1.2mm。その他は「成形型C0」に同じ。
上記樹脂発泡シートを、上記成形型で両面真空を実施しつつ熱成形を行って得られた発泡トレーの各部寸法や腰強度等を測定した。
なお、熱成形は、樹脂発泡シートの樹脂フィルムをラミネートした側がトレー内側となるように実施した。
結果を下記表1〜3に示す。
なお、上記表に示した「腰強度」は、応力検出器に接続された先端形状φ15mmの測定端子を発泡トレーの長辺側の中央部においてフランジ部に接触させ、該端子で発泡トレーの外側から中心方向に向けた力をフランジ部に加え、発泡トレーが所定の変形を示した際の応力を測定することにより求めた。
具体的には、前記測定端子と同形状の固定端子を用意し、前記測定端子を接触させるフランジ部と対向するフランジ部の中央部において前記固定端子をフランジ部に接触させて該固定端子と前記測定端子の間に発泡トレーを挟み込んだ状態にし、前記測定端子を前記固定端子側に20mm接近させた際に発生する応力を温度20℃において測定した。
なお、表中には、合計7個の発泡トレーについて腰強度を測定した際の平均値(算術平均)と最大値、最小値を示している。
また、腰強度と、そのバラツキの値を見ればわかるように、直径0.8mm〜1.0mmの大きさを有する真空孔を、容器底部を形成させる形成面の外周に沿って中心間距離が8mmとなるピッチで環状配置した雄型と雌型とを用いることにより、腰強度を高い値とし、且つ、バラツキの少ないものとすることができる。
即ち、上記表1〜3に示した結果からも、本発明によれば、両面真空を実施しつつ製造する発泡トレーの強度の安定化が可能な発泡トレーの製造方法が提供されうることがわかる。
Claims (2)
- 容器底部の外周から立ち上がる周側壁を外向きに傾斜させた状態で備えている発泡トレーを作製すべく、前記容器底部を形成させるための形成面の外周に沿って複数の真空孔が環状配置されている雄型と雌型との間に樹脂発泡シートを挟んで該樹脂発泡シートを両面側から真空引きしつつ熱成形する発泡トレーの製造方法であって、
前記雄型と前記雌型との真空孔が、直径0.8mm〜1.0mmの大きさを有し、中心間距離が5mm〜15mmのピッチで前記環状配置されていることを特徴とする発泡トレーの製造方法。 - 作製する発泡トレーの前記周側壁の傾斜角度が35度以上40度以下である請求項1記載の発泡トレーの製造方法。
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