JP5506088B2 - 機械式継手 - Google Patents

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Description

本発明は、土木建築工事に用いる鋼管、例えば下鋼管及び上鋼管を接続する機械式継手に関する。
軟弱地盤を補強するため、鋼管杭が建築土木工事に多く用いられている。その鋼管杭を構成する下鋼管と上鋼管用の継手、つまり鋼管同士を連結する接合継手として一般に溶接式継手が多く採用されている。しかし、溶接式継手は、鋼管の肉厚と鋼管径が大きくなるに従い溶接に長時間を要し、その間の施工機械損料と作業者人件費が加算されコストが掛かり、また、接合箇所は鋼管本体強度と同じ強度が要求されるが、溶接作業条件は天候により大きく左右され、長時間にわたり均一に溶接を行うことは困難である。
そこで、本出願人は先に、鋼管の肉厚及び鋼管径に関わらず溶接によらず簡易な構成で、従って低コストでかつ天候等に左右されず常に確実に鋼管を接続できる継手として、生産工場屋内で鋼管に接続手段を取り付けて、施工現場ではセットするだけで上・下の鋼管を無溶接で接続できる機械式継手を提案した(特許文献1参照)。
先の出願に係る鋼管の機械式継手は、図17に示すように、鋼管下杭1の頭部内に、L字型係止溝4を複数備えた短管3を溶接し、上杭2の下部の内面に前記係止溝4に嵌合する係止駒6を設けると共に、該係止駒6を前記係止溝4に係止するための楔板7を備えた鋼管の接合継手であって、前記係止溝4は上部が開放した縦溝4aと該縦溝4aの下部から周方向に延びる横溝4bを備え、前記係止駒6は前記縦溝4aから上杭2の回転に伴って前記横溝4bに移動し、かつ前記楔板7は前記係止駒6上に載置され、かつ前記係止駒6の前記横溝4bへの移動に伴って前記係止駒6から外れて縦溝4a内を落下して前記横溝4bを塞ぎ、前記係止駒6を前記横溝4b内に係止して上・下の杭1、2を接続固定するものである。
したがって、施工現場における溶接を要することなく鋼管同士を接続することができる。
しかし、なお以下の解決を要する課題があることが分かった。
即ち、接合した鋼管を回転貫入する方式では、鋼管に回転トルクを作用させて鋼管を堅い(硬い)地盤に貫入させるが、鋼管に正回転と逆回転を反復させる際に、後述するように、楔となる楔板7(第2の円弧状矩形体に相当する)が変形しながら上方に移動して、やがてその楔係合が外れてしまうことがある。
また、上鋼管そのものの下端に係止駒6を設けるため、上鋼管の厚さが継手として必要な厚さを下回る場合があり、継手の曲げ耐力が不足する場合が生じる。
加えて、上鋼管は一般に継手部に比べると非常に長尺(例えば6m)であり、工場でその端部に継手用の係止手段(円弧状矩形板)を設ける作業は、能率を向上させるのが難しい。
特開2006−226102号公報
本発明は、上記従来の機械式継手における課題を解決するためになされたものであって、その目的は、機械式継手において、鋼管と継手部分を別体に構成することで、鋼管に正回転と逆回転を交互に与えつつ鋼管を地盤中に貫入させる際に回転時に楔となる円弧状板状体に発生するせん断応力を軽減し、かつ円弧状板状体が従来のように変形して継手から外れることがなく、しかも、その構造は簡易であるため低コストで得られ、継手の接合も極短時間で行うことができるようにすることである。
請求項1の発明は、連結すべき一方の鋼管の端部に固着される円筒状の外継手と、他方の鋼管の端部に固着される円筒状の内継手とから成り、前記外継手の内周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、第1の円弧状板状体より上部の位置で第1の円弧状板状体と同幅かそれよりも狭い幅を有する回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が第1の円弧状板状体と縦方向に位置整合して仮止めされており、前記内継手の外周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、複数の第4の円弧状板状体が、第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて第3の円弧状板状体と縦方向に位置整合して等間隔で同じ高さに固着されており、第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれの隣接縁間に、第1及び第2の円弧状板状体を挿通可能な縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体間に、前記内外継手を相対回転したとき、第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成され、前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、仮止めが解除された回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が前記縦連通路内で第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手である。
請求項2の発明は、連結すべき一方の鋼管の端部に固着される円筒状の外継手と、他方の鋼管の端部に固着される円筒状の内継手とから成り、前記外継手の内周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、第4の複数の円弧状板状体が第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて、前記第3の円弧状板状体と縦方向に位置整合して等間隔で同じ高さで固着されており、隣接する前記第3の円弧状板状体間に、回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が仮止めされており、前記内継手の外周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着され、第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれの隣接縁間に、第1の円弧状板状体が挿通可能な縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体間に、前記内外継手を相対回転したとき、第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成され、前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、仮止めが解除された回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が前記縦連通路内で第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手である。
請求項3の発明は、連結すべき一方の鋼管の端部に固着され前記鋼管と同径の円筒状の内継手と、他方の鋼管の端部に固着され前記鋼管の外径よりも大径の内径を有する円筒状の外継手と、から成り、前記外継手の内周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着され、前記内継手の外周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、複数の第4の円弧状板状体が第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて、前記第3の円弧状板状体と縦方向に整合した位置に等間隔で同じ高さに固着されており、第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれ隣接の縁間に第1の円弧状板状体及び回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が挿通可能な間隔の縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体の間に、前記内外継手を相対回転したとき第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成され、前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、外部から前記縦連通路内に挿入される回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手である。
請求項4の発明は、連結すべき一方の鋼管の端部に固着され前記鋼管と同径の円筒状の内継手と、他方の鋼管の端部に固着され、前記鋼管の外径よりも大径の内径を有する円筒状の外継手と、から成り、前記外継手の内周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、複数の第4の円弧状板状体が第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて、前記第3の円弧状板状体と縦方向に位置整合して等間隔で同じ高さに固着されており、前記内継手の外周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されており、第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれの隣接縁間に、第1の円弧状板状体及び回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が挿通可能な間隔の縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体間に、前記内外継手が相対回転したとき第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成されており、前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、外部から前記縦連通路内に挿入される回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手である。
本発明によれば、機械式継手において、鋼管と継手部分を別体に構成することで、正回転と逆回転を交互に与えつつ鋼管を地盤中に貫入させる際に回転時に作用する曲げ応力の鋼管に与える影響を軽減でき、かつ、楔となる円弧状板状体が従来のように変形して継手から外れることがなく、しかも、その構造は簡易であるため低コストで得られ、継手の接合も極短時間で行うことができる。
本発明の第1の実施形態の鋼管の継手を示す斜視図である。 第2の円弧状矩形体を相互に連結した状態を示す斜視図である。 第1の実施形態の機械式継手の円弧状矩形体の溶接による固着を説明するための図であり、図3Aは円弧状矩形体の平面図、図3Bはそのc−c’断面図である。 第1の実施形態の円環体の溶接例を示す断面図である。 図5A〜5Dは第1の実施形態の機械式継手の接合順序を示す図である。 第1の実施形態の機械式継手の平断面図である。 第1の実施形態の機械式継手の縦断面図である。 第2の実施形態の機械式継手の斜視図である。 第2の実施形態の継手部分の縦断面図である。 第3の実施形態の機械式継手の斜視図である。 第3の実施形態の機械式継手の断面図である。 第4の実施形態の機械式継手の斜視図である。 第4の実施形態の機械式継手の断面図である。 本発明の各実施形態における円弧状矩形体間のトルクの伝達を説明する図である。 従来の機械式継手における円弧状矩形体間のトルクの伝達を説明する図である。 従来の機械式継手における第2の円弧状矩形体が変形して抜け上がる状態を説明する図である。 従来の機械式継手の継手部分を一部断面で示した分解斜視図である。
以下、本発明に係る継手の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の鋼管の機械式継手の接合前における継手部分の近傍を示す斜視図、図2は、第2の円弧状矩形体を相互に連結した状態を示す斜視図、図3は、第1の実施形態の機械式継手の円弧状矩形体の溶接による固着を説明するための図であり、図3Aは円弧状矩形体の平面図、図3Bはそのc−c’断面図である。図4は、第1の実施形態の円環体の溶接例を示す断面図である。
本発明の第1の実施形態の鋼管の機械式継手は、図1に示すように、上鋼管10と、上鋼管10の下端に溶接等で一体に連結された円筒状の外継手12と、外継手12の内周面の上下方向の中央付近に同じ高さで等間隔に溶接等で固着された第1の円弧状板状体(本実施形態では円弧状矩形体)14と、第1の円弧状矩形体14の上に、例えばボルトBで仮止めされ第1の円弧状矩形体14とほぼ同じ幅を有する第2の円弧状板状体(本実施形態では円弧状矩形体)16と、下鋼管20の上端に一体に連結された円環体21と、円環体21の上面に一体に連結された内継手22と、内継手22の外周面に同じ高さで等間隔に縦方向に整列して固着された上側の第3の円弧状板状体(本実施形態では円弧状矩形体)24と、下側の第4の円弧状板状体(本実施形態では円弧状矩形体)26とから成っている。
外継手12は、上鋼管10と同じ外径の短尺鋼管であり、上鋼管10の下端部に溶着されている。外継手12の厚さは上鋼管10と同じ厚さであってもそれよりも厚くてもよく、上鋼管10の厚さに関わらず設計上適宜決定することができる。
第1の円弧状矩形体14の外径は外継手12の内径とほぼ同じであり、その内径は内継手22の外径よりも僅かに大きく形成されている。
円環体21は、極短尺の鋼製リングであり、下鋼管20と内継手22を接続する機能を有する。円環体21の外径は下鋼管20の外径とほぼ同じで、内径は内継手22の内径とほぼ同じである。
内継手22の上部外面には、第1の円弧状矩形体14と同数の第3の円弧状矩形体24が、その下部外面には同じく同数の第4の円弧状矩形体26が、既に述べたように縦方向に整列して固着されている。
第3及び第4の円弧状矩形体24、26の内径は内継手22の外径とほぼ同じであり、厚さと幅は第1の円弧状矩形体14とほぼ同じである。また、第3の円弧状矩形体24と第4の円弧状矩形体26は、その縦方向間隔が第1の円弧状矩形体14の高さよりも僅かに大きくなるように配置される。
上記外継手12と内継手22を位置合わせしたとき、第3、第4の円弧状矩形体24、26のそれぞれ隣接した端部間の間隙で構成される縦連通路30が形成され、また、上記外継手12と内継手22を嵌合した状態では、第3の円弧状矩形体24の下縁と第4の円弧状矩形体26の上縁間の間隙で構成される横連通路32と第1の円弧状矩形体14が横方向に位置整合するよう、第1の円弧状矩形体14と第3、第4の円弧状矩形体24、26が相対的に位置決めされている。
第2の円弧状矩形体16の厚さは、第1の円弧状矩形体14とほぼ同じである。その幅は、上記縦連通路30よりも僅かに小さく設定されており、上記外継手12を内継手22に被せた(嵌合させた)とき、第1の円弧状矩形板12と共に上記縦連通路30に嵌挿できるようになっている。
第2の円弧状矩形体16の高さは、第3の円弧状矩形体24の下端から第4の円弧状矩形体26の上端までの長さよりも大きく形成されており、上記外継手12と内継手22とが嵌合された状態では、第2の円弧状矩形体16が第3及び第4の円弧上板状体24、26の側縁に同時に当接可能な配置とすることで、トルク作用時に第2の円弧状矩形体16と、第3及び第4の円弧状矩形体24、26の間でトルクが確実に伝達できるようになっている。
ここで、継手接合前の第2の円弧状矩形体16は、外継手12にネジ孔を設けて外継手の外周面側からボルトB(又はピンでもよい)で、第1の円弧状矩形体14の上端面上で仮止めされている。
図2は、第2の円弧状矩形体を相互に連結した状態を示す斜視図である。
第2の円弧状矩形体16は、外継手12に固着されていないため、個々バラバラの状態では、その位置や方向がずれる虞がある。そこで、図2に示すように、その内周面にリング15を介して相互に連結しておくのが好ましい。リング15と個々の第2の円弧状矩形体16の連結は溶接で固定してもよいし、ボルトやピンで連結してもよい。また、上記ボルトBにより仮止めすることで、相互に連結された第2の円弧状矩形体16が運搬中や杭建て込み中に移動することが防止できる。
第1〜第4の円弧状矩形体14、16、24、26は、所定の外径と厚さを備えた鋼管を、例えば、バンドソー、レーザ切断機、ガス切断器等で所定寸法に切断して形成することができる。他方、円環体21は、肉厚の鋼管を短尺切断するか、厚板をリング状にガス切断して製作する。第1、第3、第4の円弧状矩形体14、24、26の外継手12の内周面及び内継手22の外周面への固着は、強力な接着材で接着しても或いは溶接によってもよい。
溶接の場合は、第1、第3、第4の円弧状矩形体14、24、26の端面を溶接すると溶接ビードが邪魔して隣接する他の円弧状矩形体との力の伝達がスムーズに行われない。そのため、例えば、図3Aに示すように、第1、第3、第4の円弧状矩形体14、24、26の板状体面を平面視矩形に切り抜き、形成した穴の内周面を利用して、つまり内周面に開先を形成して、図3Bの断面図に示すように溶接するのが好ましい。
なお、切り抜き穴の形状はどのような形状でもよく、また、下鋼管20と円環体21、円環体21と内継手22の固着は、図4に示すように、それぞれいずれか一方に開先を設けて溶接で結合して行う。その場合、どちらの側に開先を設けるかは、溶接機械やコストを考慮して適宜決定すればよい。
次に、以上で説明した機械式継手の現場における接合手順について説明する。
図5A〜5Dは、第1の実施形態の機械式継手の接合順序を示す図である。ここでは、機械式継手の各円弧状矩形体14、16、24、26の接合の原理を理解し易くするために、外継手12と内継手22を除いて、第1〜4の円弧状矩形体14、16、24、26のみを表示している。
即ち、図5Aは、先に地中に埋設した下鋼管20の上から上鋼管10を吊り降ろしている状態を示す図である。
この状態では、既に述べたように、上鋼管10の下端に連結された外継手12の内周面には、第1の円弧状矩形体14と第2の円弧状矩形体16が縦方向に整列した状態で配置されている。第1の円弧状矩形体14は、上述のように外継手12の内周面に溶接などにより固着されており、第2の円弧状矩形体16は、例えば外継手12の外周側から挿入したボルトBで第1の円弧状矩形体14の上側に仮止めされている。
図5Bは、下鋼管20上端部の内継手22に、上鋼管10の下端部の外継手12を被せ、かつ第2の円弧状矩形体16の仮止めを外した状態を示す。
この状態では、外継手12の第1、第2の円弧状矩形体14、16は、内継手22の上下に縦方向に整列して配置された第3、第4の円弧状矩形体24、26の側縁間の縦連通路30に挿入され、かつ第1の円弧状矩形体14は、第3及び第4の円弧状矩形体24、26の上下端縁間に形成された横連通路32の位置で停止させている。
図5Cは、上鋼管10を図5Bの状態から、ここでは反時計方向に回転させて、第1の円弧状矩形体14を、第3、第4の円弧状矩形体24、26間の上記横連通路32中に進入させつつある状態を示す。この状態では、仮止めボルトBの仮止めを外した第2の円弧状矩形体16は、第1の円弧状矩形体14と共に回転しようとするが、図示のように、第3の円弧状矩形体24の側辺に当接するためその回転が妨げられる。その結果、第1の円弧状矩形体14のみが矢印の方向、即ち、円周方向の連通路32中に進入していく。
図5Cの状態から、上鋼管10をさらに回転し、それに伴って、第1の円弧状矩形体14が完全に横連通路32中に入り込むと、第2の円弧状矩形体16は下方の支えを失い縦連通路30中を落下し、図5Dの状態に至る。
即ち、図5Dは、第1の円弧状矩形体14が円周方向の横連通路32中に完全に入りきった状態で、第2の円弧状矩形体16が縦連通路30中を自重で落下して円環体21に当接して停止した状態を示す。
この状態では、第2の円弧状矩形体16は図示のように横連通路32を塞いでいる。したがって、上鋼管10を回転させようとしても、横連通路32中の第1の円弧状矩形体14の側辺が第2の円弧状矩形体16の側辺に当接し、その移動が妨げられるため回転不能になる。
つまり、第2の円弧状矩形体16は上下鋼管10、20の回転止めの楔として、また、第1の円弧状矩形体14は、上下鋼管の抜け止め用の楔として機能し、内外継手22、12、したがって地中に埋設した下鋼管20に対して上鋼管10を相対移動不能に一体に連結することができる。
図6は図5Dの状態における機械式継手の断面図であり、図7は、それぞれa−b及びb−cに沿った縦断面を一図にまとめた図である。
図示のように、第1〜第4の円弧状矩形体14、16、24、26は互いに係合した状態で楔結合している。ここでは第1〜第4の円弧状矩形体14、16、24、26はそれぞれ4枚からなるが、その数に限定されず任意の複数枚数でよい。
上記第1の実施形態の鋼管用機械式継手によれば、内外継手22、12を結合して上鋼管10を回転させたとき、後述するように、楔となる第2の円弧状矩形体16は、その回転方向に関係なく、第3及び第4の円弧状矩形体24、26にその反対側縁部で当接するため、反復繰り返しのトルクを受けても、従来の機械式継手のようにその楔板(第2の円弧状矩形体に相当)が抜けることがなく、安定したトルク伝達が可能である。
また、本実施形態の鋼管用機械式継手によれば、上下の鋼管10、20と内外継手22、12を別体に構成したため、従来のように鋼管の厚みを掘削トルクを考慮して設定する必要がなく、更に、内外継手22、12は鋼管の長さに比べるとごく短尺であるため、工場内において円弧状矩形体を固着する等の加工はスペースをとらず、容易に行うことができる。そのため、加工コストも低減することができる。
次に、鋼管用機械式継手の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
図8は第2の実施形態の機械式継手部分を示す斜視図であり、図9はその縦断面図である。なお、図9中、a−b、b−cは、図6に示すa−b、b−cと同じ箇所での縦断面図であることを表す。
第2の実施形態の機械式継手は、図8に示すように外継手12の内周面に第3及び第4の円弧状矩形体24、26が形成されており、内継手22の外周面に第1の円弧状矩形体14が形成されている。また、第2の円弧状矩形体16は、第1の実施形態と同様に外継手12の内周面に例えば仮止め用のボルトBで仮止めされるが、この場合は、隣接する第3の円弧状矩形体24間に、しかもその下端が第3の円弧状矩形体24の下端と同一かそれよりわずかに上方になるように配置されている。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
第2の実施形態において、下鋼管20上端の内継手22に、上鋼管10下端の外継手12を被せて仮止めした状態では、外継手12の第2の円弧状矩形体16は、内継手22の第1の円弧状矩形体14上に配置される。その後の操作は第1の実施形態と同じである。
つまり、第2の円弧状矩形体16の仮止めを外して、上鋼管10を回転させると、第1の円弧状矩形体14が第3、第4の円弧状矩形体24、26間の横連通路32に挿入され、同時に第2の円弧状矩形体16が縦連通路30中を落下して、第1〜第4の円弧状矩形体14、16、24、26が楔係合する。
第2の実施形態の機械式継手の作用効果は、第1の実施形態の記載式継手のそれと同様である。
次に第3の実施形態の記載式継手について説明する。
図10は第3の実施形態の機械式継手を概略的に示した斜視図であり、図11はその断面図である。なお、図11中、a−b、b−cは、図6に示すa−b、b−cと同じ箇所での縦断面図であることを表す。
上記実施形態1及び2の機械式継手では継手部分の外径を鋼管本体と同径にしたのに対し、本実施形態の機械式継手では、継手部分の外径を鋼管よりも大きくしたものである。
上鋼管10の下端に固着された内継手22の外径は上鋼管10と同径とし、下鋼管20の上端に円環体21を介して固着された外継手12の内径は上下鋼管10、20の外径よりも大きくしている。外継手12と内継手22に挟まれた空間には、実施形態1と同様に第1、第3、第4の円弧状矩形体14、24、26が配置されている。また、本実施形態では、第2の円弧状矩形体16は、内継手22に仮固定されておらず、外継手12を内継手22に被せ、続いて上記各実施形態と同様に、上鋼管10を回転させて、外継手12に固着した第1の円弧状矩形体14を、内継手22の外周面に固着した上下二段の第3及び第4の円弧状矩形体24、26間に挿嵌させた状態で、第2の円弧状矩形体16を第3及び第4の円弧状矩形体24、26の側縁間に形成された縦連通路30に落とし込むことで内外継手を楔係合する。なお、本実施形態の鋼管用機械式継手は、その他の点では実施形態1と同様である。
本実施形態の鋼管用機械式継手は、第1、第2の実施形態と同様の作用効果を有すると共に、さらに以下の作用効果も有する。
(1)外継手部分12の外径を鋼管10、20よりも大きくしたため、継手部分の曲げ耐力を大きくすることができる。外継手12、内継手22の断面係数が大きくなるため、接合された継手としての曲げ耐力も大きくなる。
(2)第2の円弧状矩形体16を予め内継手22に仮固定する必要がない。外継手12と内継手22を係合して第1の円弧状矩形体14と第3及び第4の円弧状矩形体24、26の円周方向位置を合致させた後、第3及び第4の円弧状矩形体24、26間の縦連通路30に、第2の円弧状矩形体16を外から差し込むことができる。
(3)鋼管を仮設ケーシングとして用いる場合、使用後引き抜く際に第2の円弧状矩形体16を継手から引き抜いて継手接合を解除することができるため、繰り返し使用することができる。
図12は、第4の実施形態の機械式継手を概略的に示した斜視図であり、図13はその断面図である。なお、図13中、a−b、b−cは、図6に示すa−b、b−cと同じ箇所での縦断面図であることを表す。
本実施形態の機械式継手は、第3の実施形態の機械式継手と同様に継手部分の外径を鋼管よりも大きくしたものである。ただ、実施形態3と異なり、第1の円弧状矩形体14を内継手12に、第3、第4の円弧状矩形体24、26を外継手22に固着したものである。継手の基本的な機能や作用効果は第3の実施形態の機械式継手と同じである。
最後に、継手部にトルク(ねじり剪断力)が作用したときの第2の円弧状矩形体16について特許文献1に記載された従来の機械式継手と対比して説明する。
本実施形態の機械式継手では、第1の円弧状矩形体14は、第3、第4の円弧状矩形体24、26によりその上下部分が挟まれているが、特許文献1の機械式継手では第3の円弧状矩形体24に相当する部材が存在しない。
図14、図15は、それぞれ本発明の実施形態による継手と、例えば特許文献1に記載された従来の継手の二つの機械式継手にトルクが作用したとき、第2の円弧状矩形体16が他の円弧状矩形体から受ける力と、そのときの剪断力の分布を示す図である。
トルク量が同じ場合、第2の円弧状矩形体16が受ける剪断力の合計値は両者とも同じであるが、最大剪断力は、本実施形態に係る機械式継手では、図14で示すように、トルクを第3、第4の円弧状矩形体24、26で受け止めるため、第4の円弧状矩形体26のみで受け止める特許文献1に記載された機械式継手の約半分である。このため、本発明においては第2の円弧状矩形体16は特許文献1に記載された機械式継手に比べて変形し難いことが分かる。
また、特許文献1に記載された機械式継手では、上下対称ではないため、第2の円弧状矩形体16が変形すると、上下方向に移動し易くなり、反復繰り返しのトルクを受けると抜け上がることが起こる。
実験の結果、本発明による機械式継手は、反復繰り返しのトルクを受けても機械式継手は安定して上鋼管から下鋼管にトルクが伝達するが、特許文献1の機械式継手は図16に示すように大きく変形すると共に、繰り返しに伴い徐々に抜け上がってしまい、最終的にはトルクの伝達が不能になった。
以上説明した本実施形態に係る鋼管用の機械式継手によれば、継手を構成する外継手、内継手、円環体、及び4種の円弧状矩形体は、適切な外径と厚さをもつ鋼管を切断すれば製作することができるため、機械切削加工を殆ど必要としない。また、内継手の製作に肉厚の鋼管を必要としない。このため、鋼管用の機械式継手を安いコストで製作することができる。
また、鋼管に係止手段を設ける特許文献1に記載された従来の機械式継手と異なり、継手と鋼管本体を分離、つまり独立した構成としたため、設計上必要な厚さを有する外継手あるいは内継手を容易に得ることができるともに、長尺の鋼管に、継手の手段である突起等を固着する必要がないため、能率よく継手を製造することができる。
また、外継手と内継手の間のトルク伝達の機能をもつ第2の円弧状矩形体は、トルクが作用したとき下部の第4の円弧状矩形体と上部の第3の円弧状矩形体から均等な力を受けるために、大きな剪断力や曲げモーメントが作用しない。
このため、正逆反復の繰り返しトルクが作用した場合でも、第2の円弧状矩形体16は変形し難いと共に、特許文献1に記載された従来の機械式継手にように、第2の円弧状矩形体が上方にずり上がり、ついには外れるような現象が生じる虞はない。
10・・・上鋼管、12・・・外継手、14・・・第1の円弧状矩形体、15・・・リング、16・・・第2の円弧状矩形体、20・・・下鋼管、21・・・円環体、22・・・内継手、24・・・第3の円弧状矩形体、26・・・第4の円弧状矩形体、30・・・縦連通路、32・・・横連通路。

Claims (4)

  1. 連結すべき一方の鋼管の端部に固着される円筒状の外継手と、他方の鋼管の端部に固着される円筒状の内継手とから成り、
    前記外継手の内周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、第1の円弧状板状体より上部の位置で第1の円弧状板状体と同幅かそれよりも狭い幅を有する回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が第1の円弧状板状体と縦方向に位置整合して仮止めされており、
    前記内継手の外周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、複数の第4の円弧状板状体が、第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて第3の円弧状板状体と縦方向に位置整合して等間隔で同じ高さに固着されており、
    第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれの隣接縁間に、第1及び第2の円弧状板状体を挿通可能な縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体間に、前記内外継手を相対回転したとき、第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成され、
    前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、仮止めが解除された回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が前記縦連通路内で第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手。
  2. 連結すべき一方の鋼管の端部に固着される円筒状の外継手と、他方の鋼管の端部に固着される円筒状の内継手とから成り、
    前記外継手の内周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、第4の複数の円弧状板状体が第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて、前記第3の円弧状板状体と縦方向に位置整合して等間隔で同じ高さで固着されており、
    隣接する前記第3の円弧状板状体間に、回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が仮止めされており、前記内継手の外周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着され、第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれの隣接縁間に、第1の円弧状板状体が挿通可能な縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体間に、前記内外継手を相対回転したとき、第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成され、
    前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、仮止めが解除された回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が前記縦連通路内で第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手。
  3. 連結すべき一方の鋼管の端部に固着され前記鋼管と同径の円筒状の内継手と、他方の鋼管の端部に固着され前記鋼管の外径よりも大径の内径を有する円筒状の外継手と、から成り、
    前記外継手の内周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着され、前記内継手の外周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、複数の第4の円弧状板状体が第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて、前記第3の円弧状板状体と縦方向に整合した位置に等間隔で同じ高さに固着されており、
    第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれ隣接の縁間に第1の円弧状板状体及び回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が挿通可能な間隔の縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体の間に、前記内外継手を相対回転したとき第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成され、
    前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、外部から前記縦連通路内に挿入される回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手。
  4. 連結すべき一方の鋼管の端部に固着され前記鋼管と同径の円筒状の内継手と、他方の鋼管の端部に固着され、前記鋼管の外径よりも大径の内径を有する円筒状の外継手と、から成り、
    前記外継手の内周面には、複数の第3の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されていると共に、複数の第4の円弧状板状体が第3の円弧状板状体の下方に所定間隔を置いて、前記第3の円弧状板状体と縦方向に位置整合して等間隔で同じ高さに固着されており、
    前記内継手の外周面には、複数の第1の円弧状板状体が同じ高さで等間隔に固着されており、
    第3及び第4の円弧状板状体のそれぞれの隣接縁間に、第1の円弧状板状体及び回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が挿通可能な間隔の縦連通路が形成され、かつ、第3と第4の円弧状板状体間に、前記内外継手が相対回転したとき第1の円弧状板状体が挿通可能な横連通路が形成されており、
    前記内外継手の係合状態では、第1の円弧状板状体が前記横連通路に挿通され、かつ、外部から前記縦連通路内に挿入される回転止めの楔となる第2の円弧状板状体が第3及び第4の円弧状板状体に当接可能に延在して、第1の円弧状板状体の横連通路を塞ぐことを特徴とする機械式継手。
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